説明

リンパ球系・血球系細胞へ遺伝子導入するためのプロモーターおよびその利用方法

【課題】本発明は、リンパ球などの免疫担当細胞・血球系細胞において、選択的に、強力に発現を誘導するプロモーターを提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題は、本発明において、HHV6のMIEプロモーター、HHV7MIEプロモーターおよびHHV7U95プロモーターが、予想外に、Tリンパ球などの免疫担当細胞・血球系細胞において特異的な発現を誘導することを見出したことによって解決された。これらを利用して、DNAワクチンの選択的送達などが実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンパ球系・血球系細胞へ遺伝子導入するためのプロモーターおよびその利
用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ球細胞を標的とする種々の疾患、例えば、白血病、ヒト免疫不全ウイルス(HI
V)感染の治療のために、リンパ球細胞に対して遺伝子治療を行うための技術の確立が望
まれているが、いまだ、リンパ球細胞に所望の遺伝子を導入するためのプロモーターとし
て十分なものは開発されていない。
【0003】
ヘルペスウイルス(herpesvirus;HHV)とは、ヘルペスウイルス科に属
するウイルスの総称である。ヒトヘルペスウイルス6 あるいは7(HHV−6あるいは
HHV−7)は、いずれもヘルペスウイルス科βヘルペスウイルス亜科に属する2本鎖D
NA ウイルスであり、突発性発疹(Exanthom subitum)の原因ウイル
スである。(非特許文献1および非特許文献2) HHV−6にはHHV−6AおよびH
HV−6Bの2つの株が存在する。乳児期に罹患することが多く、突然の高熱と解熱前後
の発疹を特徴とするウイルス感染症で、予後は一般に良好である。HHV−7 はHHV
−6 よりも遅れて感染する傾向がある(非特許文献3)ため、HHV−7による突発性
発疹は臨床的には二度目の突発性発疹として経験されることが多い。HHV−6、HHV
−7 の血清疫学調査からは、2〜3歳頃までにほとんどの小児が抗体陽性となることが
判明しており、不顕性感染は20〜40%と報告されている。
【0004】
HHV−7は、1990 年にFrenkelらが健常人末梢血のCD4T リンパ
球を培養しているときに細胞変性効果が起こって新たに見いだされたヘルペスウイルスで
ある(非特許文献4)。ヒト末梢血単核球から分離されたウイルスであり、HHV−6、
HHV−7はともにCD4Tリンパ球向性ウイルスである。HHV−7が感染する際の
細胞側レセプターはCD4であり、ヒトTリンパ球においてのみ増殖可能である。ゆえに
ヒトTリンパ球の遺伝子改変に使用し得るウイルスである。
【0005】
HHV−7のゲノムは、二本鎖DNAであって、約145kbpからなる。全塩基配列
は、Nicholasらによって決定されており、ゲノム上には少なくとも101の遺伝
子が存在することが知られている(非特許文献5)。
【0006】
しかし、これらのHHVについては、そのプロモーター活性について詳細な解析がされ
ていない。しかも、ウイルスがリンパ球指向性なのは、細胞側のレセプターとの相互作用
、およびヒトTリンパ球においてのみ増殖可能であるという生活環に起因していた。
【0007】
また、これらウイルス、特にHHV−7ウイルスは、健常人に害を及ぼさないとされて
いるとはいえ、ウイルス自体を使用すると、変異などによって有害化するおそれもあるこ
とから、その特性を利用し安全性を増した発現系の開発が望ましいことはいうまでもない
。また、ワクチンとして用いる場合、その継代培養とともに、遺伝子型が変化することは
、品質管理および品質保証の点から、好ましくない。そのため、ワクチンとして組換えウ
イルスを使用する場合は、単一の組換え遺伝子型由来のウイルスを安定的に供給する必要
がある。そのため、単一の遺伝子型を有するシステムを作製する方法の開発が望まれてい
る。
【0008】
さらに、Tリンパ球細胞株SupT1細胞におけるHIV感染とTリンパ球向性ヒトヘ
ルペスウイルス(HHV−6A(U1102株)、HHV−7(MRK、MSO株))と
の相互関係について検討されている。CD4が細胞側のレセプターであるHHV−7株は
、SupT1細胞では良好な増殖を示すものの、SupT1/HIV細胞には感染を成立
できなかった。これに対して、HHV−6A 株は、HIV持続感染SupT1(Sup
−T1/HIV)細胞に感染し明瞭なCPEを認めている(非特許文献6)。
【0009】
理想的なHIVワクチンは、全ての型のHIVに対して完全かつ長期の保護を示すこと
である。しかし、従来の不活化HIVワクチンの利点および欠点のいくつかは以下のとお
りである。リコンビナントワクチンの製造方法は常法を駆使するが、免疫原性を維持する
ことが困難なため(低免疫原性のため)、高い抗原負荷、アジュバントと頻回接種が要求
される。そして、その安全性が最大の関心事である。また、ネーティブまたはリコンビナ
ントのサブユニットのどちらかを含むサブユニットワクチンは安全であるかもしれないが
、サブユニットの選択および免疫原性が低いことから制限を受ける。このようなHIVワ
クチンなどの免疫担当細胞の処置に使用可能なワクチンを開発することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Yamanishi Kら “Identification of human herpesvirus 6 as a casual agent for exanthem subitum.”Lancet 1988;i:1065〜1067頁
【非特許文献2】Tanaka Kら “ Human herupesvirus 7:Another casual agent for roseola(exanthem subitum)”J pediatr.1994;125:1〜5頁
【非特許文献3】Tnanaka−Taya Kら“Seroepidemiological study of human herpesvirus−6 and −7 in children of different ages and detection of those two viruses in throat swabs by polymerase chain reaction” Jounal of Medical Virology. 1996;48:88〜94頁
【非特許文献4】Frankel Nら、“Isolation of a new herpesvirus from human CD4+T cells.”ProNAS USA 87:749−752,ProNAS USA 87:749−752,1990
【非特許文献5】John N.ら、Journal of Virology,Sep.1996,5975〜5989頁
【非特許文献6】山田雅夫らHIV持続感染Sup−T1細胞へのHHV−6および−7重複感染の試み、演題番号122、第7回日本エイズ学会総会演題抄録集、1993年、東京
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、リンパ球などの免疫担当細胞・血球系細胞において、選択的に、強力に発現
を誘導するプロモーターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、本発明において、HHV6のMIEプロモーター、HHV7MIEプロモ
ーターおよびHHV7U95プロモーターが、予想外に、Tリンパ球などの免疫担当細胞
・血球系細胞において特異的な発現を誘導することを見出したことによって解決された。
【0013】
新テクノロジーとして着目されているDNAワクチン開発においては、強力な発現プロ
モーターが必要不可欠である。現在までの事例では、ヒトサイトメガロウイルス(HCM
V)の前初期(IE)プロモーターがDNAワクチンに汎用されている。その根拠は、H
CMVIEプロモーターが一般的に種々の細胞において強い活性を示すと考えられている
ことによる。しかし、リンパ球系細胞での発現効率が低いことや、メチル化による不活化
等の現象が見られることも他方では報告されている。また、HHV IEプロモーターの
DNAワクチンヘの利用については、種々の制約が実現性を抑制している問題点もある。
【0014】
HCMVは、感染可能な細胞が非常に限られており、繊維芽細胞や血管内被細胞等に感
染することが知られている。一方、HHV−6は、ヒトの乳幼児期に感染して、突発性発
疹を引き起こすことが明らかとなっており、ヒトのリンパ球系細胞、特にT細胞で良く増
殖する事が知られている。本発明者らは本発明において、HCMVと同じヒトヘルペスウ
イルス属βウイルス亜科に属するHHV−6の主要前初期遺伝子(MIE)のプロモータ
ーが強い活性を示すことを明らかにした。本発明者らは、このMIE遺伝子プロモーター
のDNAワクチンにも利用可能なことを明らかにした。HHV−7もまた、CD4Tリ
ンパ球向性ウイルスであり、そのプロモーターを利用して例えば、DNAワクチンを開発
すれば、CD4Tリンパ球に関する疾患の予防または治療に応用可能である。本発明者
らは、HHV7MIEプロモーターおよびHHV7U95プロモーターの有用性を本発明
において明らかにし、従って、DNAワクチンにも利用可能なことを明らかにした。
【0015】
従って、本発明は、以下を提供する。
【0016】
(1) HHV6BのMIEプロモーター。
【0017】
(2) 上記プロモーターは、配列番号1に示す配列のうち、少なくとも8の連続する
ヌクレオチド配列を含む、項目1に記載のプロモーター。
【0018】
(3) 上記プロモーターは、配列番号1に示す配列のうち、少なくともR3領域また
はその機能的改変体を含む、項目1に記載のプロモーター。
【0019】
(4) 上記プロモーターは、配列番号1に示す配列のうち、転写開始点より少なくと
も−574〜−427(配列番号13)の配列を含む、項目1に記載のプロモーター。
【0020】
(5) 上記プロモーターは、配列番号1に示す配列のうち、転写開始点より少なくと
も−1051〜−427(配列番号14)の配列を含む、項目1に記載のプロモーター。
【0021】
(6) 上記プロモーターは、NF−κBおよびAP−1のモチーフを含む、項目1に
記載のプロモーター。
【0022】
(7) 上記プロモーターは、配列番号1に示す配列を含む、項目1に記載のプロモー
ター。
【0023】
(8) 上記プロモーターは、
(a)配列番号1に記載の塩基配列もしくはそれに対応する塩基配列またはそのフラグメ
ント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号1に記載の塩基配列もしくはそれに対応する塩基配列の対立遺伝子変異体
またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(c)(a)〜(b)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハ
イブリダイズし、かつ、生物学的活性を有するポリヌクレオチド;または
(d)(a)〜(c)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同
一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリヌク
レオチド、
を含む、
項目1に記載のプロモーター。
【0024】
(9)少なくとも10の連続するヌクレオチド長を有する、項目1に記載のプロモータ
ー。
【0025】
(10) 上記生物学的活性は、プロモーター活性である、項目8に記載のプロモータ
ー。
【0026】
(11) 項目1に記載のプロモーターを含む、核酸構築物。
【0027】
(12) 上記プロモーターとは異なる由来の外来遺伝子をコードする配列を、上記プ
ロモーターの配列に対して作動可能に連結されて、含む、項目11に記載の核酸構築物。
【0028】
(13) 上記外来遺伝子は、RNAi分子、薬剤、欠損される劣性遺伝子、選択マー
カーをコードする、項目12に記載の核酸構築物。
【0029】
(14)上記選択マーカーは、上記核酸構築物が導入される宿主の培地での選択を可能
にする、項目13に記載の核酸構築物。
【0030】
(15)上記選択マーカーは、上記核酸構築物が導入される宿主での視覚での選択を可
能にする、項目13に記載の核酸構築物。
【0031】
(16)上記選択マーカーは、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラ
ーゼ(hprt)、または緑色蛍光プロテイン(GFP)、青色蛍光プロテイン(CFP
)、黄色蛍光プロテイン(YFP)および赤色蛍光プロテイン(dsRed)からなる群
より選択される蛍光マーカーを含む、項目13に記載の核酸構築物。
【0032】
(17)上記選択マーカーは、上記核酸構築物が導入される宿主に対して実質的に毒性
を示さない、項目13に記載の核酸構築物。
【0033】
(18)上記欠損される劣性遺伝子は、ADA遺伝子、PNP遺伝子、γc鎖遺伝子、
TAP遺伝子、MHC II遺伝子、X連鎖WASP、CD40リガンド、PI3K類似
遺伝子およびDNAヘリカーゼからなる群より選択される、項目13に記載の核酸構築物

【0034】
(19)上記薬剤は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、タンパク質ホルモン、ペ
プチドホルモン(インターフェロン[IFN]−α,IFN−γ,インターロイキン[I
L]−2,IL−12,顆粒球コロニー刺激因子[G−CSF],顆粒球マクロファージ
コロニー刺激因子[GM−CSF])からなる群より選択される、項目13に記載の核酸
構築物。
【0035】
(20) 上記プロモーターは、上記外来遺伝子の血球系細胞、特にTリンパ球での特
異的発現を誘導する、項目12に記載の核酸構築物。
【0036】
(21) 項目11に記載の核酸構築物を含む発現ベクター。
【0037】
(22)項目11に記載の核酸構築物を含む、細胞。
【0038】
(23)上記細胞は、上記プロモーター配列とは異種である、項目22に記載の細胞。
【0039】
(24)項目11に記載の核酸構築物を含む、組織。
【0040】
(25)項目11に記載の核酸構築物を含む、臓器。
【0041】
(26)項目11に記載の核酸構築物を含む、生物。
【0042】
(27)項目1に記載のプロモーターおよび抗原をコードする配列を含む、薬学的組成
物。
【0043】
(28)DNAワクチンである、項目27に記載の薬学的組成物。
【0044】
(29)リンパ球特異的な処置が所望される疾患、障害または状態を処置するための薬
学的組成物であって、項目1に記載のプロモーターおよび上記処置のための核酸配列を含
む、薬学的組成物。
【0045】
(30)上記処置のための核酸配列はサイトカインをコードする核酸配列、ケモカイン
をコードする核酸配列、増殖因子をコードする核酸配列、タンパク質ホルモンをコードす
る核酸配列、ペプチドホルモンをコードする核酸配列、リボザイム、RNAi(HIV−
1 gp41: AATAAGACAGGGCTTGGAAAGACACTTTCCAA
GCCCTGTCTTATTTTT(配列番号33)/HIV−1 tat: AAGC
ATCCAGGAAGTCAGCCTACAAGGCTGACTTCCTGGATGCT
TTTT(配列番号34)/HTLV−1 tax: GAACATTGGTGAGGA
AGGCACAGCCTTCCTCACCAATGTTCTTTTT(配列番号35))
を含む、項目29に記載の薬学的組成物。
【0046】
(31)リンパ球特異的にタンパク質を発現させる方法であって、
A)項目1に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に
連結させた核酸構築物を作製する工程;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する工程、
を包含する、方法。
【0047】
(32)リンパ球特異的にタンパク質を発現させるキットであって、
A)項目1に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に
連結させた核酸構築物;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する手段、
を包含する、キット。
【0048】
(33)リンパ球特異的にタンパク質を発現させるキットであって、
A)項目1に記載のプロモーター;および
B)上記プロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた
核酸構築物を作製するための手段;
を包含する、キット。
【0049】
(34)リンパ球特異的にタンパク質を発現させることを必要とする疾患、障害または
状態を処置または予防するための方法であって、
A)項目1に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に
連結させた核酸構築物を作製する工程;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する工程、
を包含する、方法。
【0050】
(35)リンパ球特異的にタンパク質を発現させることを必要とする疾患、障害または
状態を処置または予防するためのキットであって、
A)項目1に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に
連結させた核酸構築物;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する手段、
を包含する、キット。
【0051】
(36)リンパ球特異的にタンパク質を発現させることを必要とする疾患、障害または
状態を処置または予防するためのキットであって、
A)項目1に記載のプロモーター;および
B)上記プロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた
核酸構築物を作製するための手段;
を包含する、キット。
【0052】
(37) タンパク質を生産する方法であって、
A)項目1に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に
連結させた核酸構築物を作製する工程;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する工程、
を包含する、方法。
【0053】
(38) タンパク質を生産するためのキットであって、
A)項目1に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に
連結させた核酸構築物;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する手段、
を包含する、キット。
【0054】
(39) タンパク質を生産するためのキットであって、
A)項目1に記載のプロモーター;および
B)上記プロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた
核酸構築物を作製するための手段;
を包含する、キット。
【0055】
(40) 項目1に記載のプロモーターの、リンパ球特異的な処置が所望される疾患、
障害または状態を処置するための薬学的組成物の製造における使用。
【0056】
(41) HHV7のMIEプロモーター。
【0057】
(42) 上記プロモーターは、配列番号2に示す配列のうち、少なくとも8の連続す
るヌクレオチド配列を含む、項目41に記載のプロモーター。
【0058】
(43) 上記プロモーターは、配列番号2に示す配列のうち、少なくともR2領域ま
たはその機能的改変体を含む、項目41に記載のプロモーター。
【0059】
(44) 上記プロモーターは、配列番号2に示す配列のうち、少なくとも+22〜−
233の配列を含む、項目41に記載のプロモーター。
【0060】
(45) 上記プロモーターは、配列番号2に示す配列のうち、少なくとも+22〜−
388の配列を含む、項目41に記載のプロモーター。
【0061】
(46) 上記プロモーターは、R2領域に存在するNF−κB結合モチーフを含む、
項目41に記載のプロモーター。
【0062】
(47) 上記プロモーターは、配列番号15に示す配列を含む、項目41に記載のプ
ロモーター。
【0063】
(48) 上記プロモーターは、
(a)配列番号2に記載の塩基配列もしくはそれに対応する塩基配列またはそのフラグメ
ント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載の塩基配列もしくはそれに対応する塩基配列の対立遺伝子変異体
またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(c)(a)〜(b)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハ
イブリダイズし、かつ、生物学的活性を有するポリヌクレオチド;または
(d)(a)〜(c)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同
一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリヌク
レオチド、
を含む、
項目41に記載のプロモーター。
【0064】
(49)少なくとも10の連続するヌクレオチド長を有する、項目41に記載のプロモ
ーター。
【0065】
(50) 上記生物学的活性は、プロモーター活性である、項目48に記載のプロモー
ター。
【0066】
(51) 項目41に記載のプロモーターを含む、核酸構築物。
【0067】
(52) 上記プロモーターとは異なる由来の外来遺伝子をコードする配列を、上記プ
ロモーターの配列に対して作動可能に連結されて、含む、項目51に記載の核酸構築物。
【0068】
(53) 上記外来遺伝子は、RNAi分子、薬剤、欠損される劣性遺伝子、選択マー
カーをコードする、項目52に記載の核酸構築物。
【0069】
(54)上記選択マーカーは、上記核酸構築物が導入される宿主の培地での選択を可能
にする、項目53に記載の核酸構築物。
【0070】
(55)上記選択マーカーは、上記核酸構築物が導入される宿主での視覚での選択を可
能にする、項目53に記載の核酸構築物。
【0071】
(56)上記選択マーカーは、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラ
ーゼ(hprt)、または緑色蛍光プロテイン(GFP)、青色蛍光プロテイン(CFP
)、黄色蛍光プロテイン(YFP)および赤色蛍光プロテイン(dsRed)からなる群
より選択される蛍光マーカーを含む、項目53に記載の核酸構築物。
【0072】
(57)上記選択マーカーは、上記核酸構築物が導入される宿主に対して実質的に毒性
を示さない、項目53に記載の核酸構築物。
【0073】
(58)上記欠損される劣性遺伝子は、ADA遺伝子、PNP遺伝子、γc鎖遺伝子、
TAP遺伝子、MHC II遺伝子、X連鎖WASP、CD40リガンド、PI3K類似
遺伝子、DNAヘリカーゼからなる群より選択される、項目53に記載の核酸構築物。
【0074】
(59)上記薬剤は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、タンパク質ホルモン、ペ
プチドホルモン(IFN−α,IFN−γ,IL−2,IL−12,G−CSF,GM−
CSF)からなる群より選択される、項目53に記載の核酸構築物。
【0075】
(60) 上記プロモーターは、上記外来遺伝子の血球系細胞、特にTリンパ球での特
異的発現を誘導する、項目52に記載の核酸構築物。
【0076】
(61) 項目51に記載の核酸構築物を含む発現ベクター。
【0077】
(62)項目51に記載の核酸構築物を含む、細胞。
【0078】
(63)上記細胞は、上記プロモーター配列とは異種である、項目62に記載の細胞。
【0079】
(64)項目51に記載の核酸構築物を含む、組織。
【0080】
(65)項目51に記載の核酸構築物を含む、臓器。
【0081】
(66)項目51に記載の核酸構築物を含む、生物。
【0082】
(67)項目41に記載のプロモーターおよび抗原をコードする配列を含む、薬学的組
成物。
【0083】
(68)DNAワクチンである、項目67に記載の薬学的組成物。
【0084】
(69)リンパ球特異的な処置が所望される疾患、障害または状態を処置するための薬
学的組成物であって、項目41に記載のプロモーターおよび上記処置のための核酸配列を
含む、薬学的組成物。
【0085】
(70)上記処置のための核酸配列は、サイトカインをコードする核酸配列、ケモカイ
ンをコードする核酸配列、増殖因子をコードする核酸配列、タンパク質ホルモンをコード
する核酸配列、ペプチドホルモンをコードする核酸配列、リボザイム、RNAi(HIV
−1 gp41: AATAAGACAGGGCTTGGAAAGACACTTTCCA
AGCCCTGTCTTATTTTT(配列番号33)/HIV−1 tat: AAG
CATCCAGGAAGTCAGCCTACAAGGCTGACTTCCTGGATGC
TTTTT (配列番号34)/HTLV−1 tax: GAACATTGGTGAG
GAAGGCACAGCCTTCCTCACCAATGTTCTTTTT(配列番号35
))を含む、項目69に記載の薬学的組成物。
【0086】
(71)リンパ球特異的にタンパク質を発現させる方法であって、
A)項目41に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能
に連結させた核酸構築物を作製する工程;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する工程、
を包含する、方法。
【0087】
(72)リンパ球特異的にタンパク質を発現させるキットであって、
A)項目41に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能
に連結させた核酸構築物;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する手段、
を包含する、キット。
【0088】
(73)リンパ球特異的にタンパク質を発現させるキットであって、
A)項目41に記載のプロモーター;および
B)上記プロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた
核酸構築物を作製するための手段;
を包含する、キット。
【0089】
(74)リンパ球特異的にタンパク質を発現させることを必要とする疾患、障害または
状態を処置または予防するための方法であって、
A)項目41に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能
に連結させた核酸構築物を作製する工程;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する工程、
を包含する、方法。
【0090】
(75)リンパ球特異的にタンパク質を発現させることを必要とする疾患、障害または
状態を処置または予防するためのキットであって、
A)項目41に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能
に連結させた核酸構築物;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する手段、
を包含する、キット。
【0091】
(76)リンパ球特異的にタンパク質を発現させることを必要とする疾患、障害または
状態を処置または予防するためのキットであって、
A)項目41に記載のプロモーター;および
B)上記プロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた
核酸構築物を作製するための手段;
を包含する、キット。
【0092】
(77) タンパク質を生産する方法であって、
A)項目41に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能
に連結させた核酸構築物を作製する工程;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する工程、
を包含する、方法。
【0093】
(78) タンパク質を生産するためのキットであって、
A)項目41に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能
に連結させた核酸構築物;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する手段、
を包含する、キット。
【0094】
(79) タンパク質を生産するためのキットであって、
A)項目41に記載のプロモーター;および
B)上記プロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた
核酸構築物を作製するための手段;
を包含する、キット。
【0095】
(80) 項目41に記載のプロモーターの、リンパ球特異的な処置が所望される疾患
、障害または状態を処置するための薬学的組成物の製造における使用。
【0096】
(81) HHV7のU95プロモーター。
【0097】
(82) 上記プロモーターは、配列番号12に示す配列のうち、少なくとも8の連続
するヌクレオチド配列を含む、項目81に記載のプロモーター。
【0098】
(83) 上記プロモーターは、配列番号12に示す配列のうち、少なくともR2領域
またはその機能的改変体を含む、項目81に記載のプロモーター。
【0099】
(84) 上記プロモーターは、配列番号12に示す配列のうち、少なくとも+16〜
−304の配列を含む、項目81に記載のプロモーター。
【0100】
(85) 上記プロモーターは、配列番号12に示す配列のうち、少なくとも+16〜
−379の配列を含む、項目81に記載のプロモーター。
【0101】
(86) 上記プロモーターは、R2領域に存在するNF−κB結合モチーフを含む、
項目81に記載のプロモーター。
【0102】
(87) 上記プロモーターは、配列番号16に示す配列を含む、項目81に記載のプ
ロモーター。
【0103】
(88) 上記プロモーターは、
(a)配列番号12に記載の塩基配列もしくはそれに対応する塩基配列またはそのフラグ
メント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号12に記載の塩基配列もしくはそれに対応する塩基配列の対立遺伝子変異
体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(c)(a)〜(b)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハ
イブリダイズし、かつ、生物学的活性を有するポリヌクレオチド;または
(d)(a)〜(c)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同
一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリヌク
レオチド、
を含む、
項目81に記載のプロモーター。
【0104】
(89)少なくとも10の連続するヌクレオチド長を有する、項目81に記載のプロモ
ーター。
【0105】
(90) 上記生物学的活性は、プロモーター活性である、項目88に記載のプロモー
ター。
【0106】
(91) 項目81に記載のプロモーターを含む、核酸構築物。
【0107】
(92) 上記プロモーターとは異なる由来の外来遺伝子をコードする配列を、上記プ
ロモーターの配列に対して作動可能に連結されて、含む、項目91に記載の核酸構築物。
【0108】
(93) 上記外来遺伝子は、RNAi分子、薬剤、欠損される劣性遺伝子、選択マー
カーをコードする、項目92に記載の核酸構築物。
【0109】
(94)上記選択マーカーは、上記核酸構築物が導入される宿主の培地での選択を可能
にする、項目93に記載の核酸構築物。
【0110】
(95)上記選択マーカーは、上記核酸構築物が導入される宿主での視覚での選択を可
能にする、項目93に記載の核酸構築物。
【0111】
(96)上記選択マーカーは、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラ
ーゼ(hprt)、または緑色蛍光プロテイン(GFP)、青色蛍光プロテイン(CFP
)、黄色蛍光プロテイン(YFP)および赤色蛍光プロテイン(dsRed)からなる群
より選択される蛍光マーカーを含む、項目93に記載の核酸構築物。
【0112】
(97)上記選択マーカーは、上記核酸構築物が導入される宿主に対して実質的に毒性
を示さない、項目93に記載の核酸構築物。
【0113】
(98)上記欠損される劣性遺伝子は、ADA遺伝子、PNP遺伝子、γc鎖遺伝子、
TAP遺伝子、MHC II遺伝子、X連鎖WASP、CD40リガンド、PI3K類似
遺伝子、DNAヘリカーゼからなる群より選択される、項目93に記載の核酸構築物。
【0114】
(99)上記薬剤は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、タンパク質ホルモン、ペ
プチドホルモン(IFN−α,IFN−γ,IL−2,IL−12,G−CSF,GM−
CSF)からなる群より選択される、項目93に記載の核酸構築物。
【0115】
(100) 上記プロモーターは、上記外来遺伝子の血球系細胞、特にTリンパ球での
特異的発現を誘導する、項目92に記載の核酸構築物。
【0116】
(101) 項目91に記載の核酸構築物を含む発現ベクター。
【0117】
(102)項目91に記載の核酸構築物を含む、細胞。
【0118】
(103)上記細胞は、上記プロモーター配列とは異種である、項目102に記載の細
胞。
【0119】
(104)項目91に記載の核酸構築物を含む、組織。
【0120】
(105)項目91に記載の核酸構築物を含む、臓器。
【0121】
(106)項目91に記載の核酸構築物を含む、生物。
【0122】
(107)項目81に記載のプロモーターおよび抗原をコードする配列を含む、薬学的
組成物。
【0123】
(108)DNAワクチンである、項目107に記載の薬学的組成物。
【0124】
(109)リンパ球特異的な処置が所望される疾患、障害または状態を処置するための
薬学的組成物であって、項目81に記載のプロモーターおよび上記処置のための核酸配列
を含む、薬学的組成物。
【0125】
(110)上記処置のための核酸配列は、サイトカインをコードする核酸配列、ケモカ
インをコードする核酸配列、増殖因子をコードする核酸配列、タンパク質ホルモンをコー
ドする核酸配列、ペプチドホルモンをコードする核酸配列、リボザイム、RNAi(HI
V−1 gp41: AATAAGACAGGGCTTGGAAAGACACTTTCC
AAGCCCTGTCTTATTTTT(配列番号33)/HIV−1 tat: AA
GCATCCAGGAAGTCAGCCTACAAGGCTGACTTCCTGGATG
CTTTTT (配列番号34)/HTLV−1 tax: GAACATTGGTGA
GGAAGGCACAGCCTTCCTCACCAATGTTCTTTTT(配列番号3
5))を含む、項目109に記載の薬学的組成物。
【0126】
(111)リンパ球特異的にタンパク質を発現させる方法であって、
A)項目81に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能
に連結させた核酸構築物を作製する工程;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する工程、
を包含する、方法。
【0127】
(112)リンパ球特異的にタンパク質を発現させるキットであって、
A)項目81に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能
に連結させた核酸構築物;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する手段、
を包含する、キット。
【0128】
(113)リンパ球特異的にタンパク質を発現させるキットであって、
A)項目81に記載のプロモーター;および
B)上記プロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた
核酸構築物を作製するための手段;
を包含する、キット。
【0129】
(114)リンパ球特異的にタンパク質を発現させることを必要とする疾患、障害また
は状態を処置または予防するための方法であって、
A)項目81に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能
に連結させた核酸構築物を作製する工程;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する工程、
を包含する、方法。
【0130】
(115)リンパ球特異的にタンパク質を発現させることを必要とする疾患、障害また
は状態を処置または予防するためのキットであって、
A)項目81に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能
に連結させた核酸構築物;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する手段、
を包含する、キット。
【0131】
(116)リンパ球特異的にタンパク質を発現させることを必要とする疾患、障害また
は状態を処置または予防するためのキットであって、
A)項目81に記載のプロモーター;および
B)上記プロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた
核酸構築物を作製するための手段;
を包含する、キット。
【0132】
(117) タンパク質を生産する方法であって、
A)項目81に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能
に連結させた核酸構築物を作製する工程;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する工程、
を包含する、方法。
【0133】
(118) タンパク質を生産するためのキットであって、
A)項目81に記載のプロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能
に連結させた核酸構築物;
B)上記核酸構築物を、上記プロモーターが上記タンパク質をコードする核酸配列の発
現を誘導させる条件下に配置する手段、
を包含する、キット。
【0134】
(119) タンパク質を生産するためのキットであって、
A)項目81に記載のプロモーター;および
B)上記プロモーターに上記タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた
核酸構築物を作製するための手段;
を包含する、キット。
【0135】
(120) 項目81に記載のプロモーターの、リンパ球特異的な処置が所望される疾
患、障害または状態を処置するための薬学的組成物の製造における使用。
【0136】
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該分野に
おける周知慣用技術からその実施形態などを適宜実施することができ、本発明が奏する作
用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
【発明の効果】
【0137】
本発明によって、Tリンパ球などの免疫担当細胞においてタンパク質の発現を選択的に
誘導するプロモーターが提供された。本発明のプロモーターを利用して、先天性免疫不全
症候群などの免疫疾患を効果的に予防または治療するための方法および医薬が提供された
。本発明はまた、効率よく遺伝子治療を行うための技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】図1は、接着細胞でのプロモーター活性の比較したものを示す。横軸には、種々のプロモーターを並列させ、1つのプロモーターについてVero細胞、HEL細胞、L929細胞、293細胞、U373細胞でのプロモーター活性をLog(RLU)/β−galで対数表示したものを示す。
【図2】図1は、リンパ球系細胞でのプロモーター活性の比較したものを示す。横軸には、種々のプロモーターを並列させ、1つのプロモーターについてTHP−1細胞、SupT1細胞、U937細胞でのプロモーター活性をLog(RLU)/β−galで対数表示したものを示す。
【図3】図3は、TPAで細胞を刺激した場合のHHV−6MIE領域のプロモーター活性を示す(Vero細胞)。横軸には、種々のプロモーターを並列させ、1つのプロモーターについてTPAの有無でのプロモーター活性をLog(RLU)/β−galで対数表示したものを示す。
【図4】図4は、TPAで細胞を刺激した場合のHHV−6MIE領域のプロモーター活性を示す(L929細胞)。横軸には、種々のプロモーターを並列させ、1つのプロモーターについてTPAの有無でのプロモーター活性をLog(RLU)/β−galで対数表示したものを示す。
【図5】図5は、HHV6Bのプロモーター領域の種々の欠失改変体の模式図を示す。上には、プロモーター領域を示し、そのプロモーター領域中の種々のモチーフを示す。
【図6】図6は、プロモーター活性の測定系の模式図を示す。
【図7】図7は、HHV6Bのプロモーター領域の種々の欠失改変体の模式図とともにプロモーター活性(相対ルシフェラーゼ活性)を示す。
【図8】図8は、HHV7のプロモーター領域に関する前初期(IE)遺伝子およびプロモーターの領域の模式図を示す。左欄は、上から順に7MIEプロモーター(−493)、7MIEプロモーター(−388)、7MIEプロモーター(−233)を示し、右欄は、上から7U95プロモーター(−484)、7U95プロモーター(−379)、7U95プロモーター(−304)を示す。
【図9】図9は、HHV7のIEプロモーターのリンパ球系細胞株における活性を示す。左上は、Jurkat細胞、右上はMolt−3細胞、左下はSupT1細胞、右下はSAS−413細胞を示す。各グラフ中は、各々左からCMVP、6MIEP、6U95P、7MIE(−493)、7U95P(−484)を示す。
【図10】図10は、プロモーター活性に対するR2欠失の効果を示す。左上は、Jurkat細胞、右上はMolt−3細胞、左下はSupT1細胞、右下はSAS−413細胞を示す。各グラフ中は、各々上から、7MIEプロモーター(−493)、7MIEプロモーター(−388)、7MIEプロモーター(−233)、7U95プロモーター(−484)、7U95プロモーター(−379)、7U95プロモーター(−304)を示す。
【図11】図11は、末梢血単核球(PBMC)におけるプロモーター活性を示す。左上、右上および下の順に、系統1、系統2および系統3を示す。
【発明を実施するための形態】
【0139】
以下に本発明の好ましい形態を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、
特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、
単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など、他の言語にお
ける対応する冠詞、形容詞など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むこ
とが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない
限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したが
って、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用
語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0140】
(定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0141】
本明細書において使用される「HHV」とは、ヒトヘルペスウイルス(human h
erpesvirus)をいい、そのタイプによって、1型、2型、3型、4型、5型、
6型、7型、8型などが存在する。
【0142】
本明細書において使用される場合、用語「ヘルペスウイルス」とは、HHV−6A、H
HV−6B、およびHHV−7の全てを包含し、かつ、特に言及されない限り、これらウ
イルスの野生型、組換え型のいずれをも含む。また、本明細書において使用される場合、
用語「HHV−6(ヒトヘルペスウイルス6)」は、HHV−6AおよびHHV−6Bを
包含し、かつ、特に言及されない限り、これらウイルスの野生型、組換え型のいずれをも
含む。HHV6は、サイトメガロウイルスHHV−5と同じくβ亜科に属し、HHV−6
Bは突発性発疹の原因ウイルスであり、日本ではほぼ全員が2歳までに感染するといわれ
ている。本明細書において使用される場合、用語「HHV−7(ヒトヘルペスウイルス7
)」は、この型のヘルペスウイルスに属する任意のヘルペスウイルスを言う。HHV7も
突発性発疹の病原体とされているが、HHV6−Bに比べると、頻度は少なく、感染する
年齢もより高い。HHV−6と同じくβ亜科に属し、CD4+T細胞に感染、ジベルばら
色粃糠疹の発症に関連するともいわれており、日本人では2歳までにほぼ全員が感染する
といわれている。
【0143】
本明細書においてヘルペスウイルスの「野生株」とは、人工的な改変を受けていない、
天然より単離されたヘルペスウイルス株をいう。野生株の例としては、JI株が挙げられ
るが、これに限定されない。
【0144】
本明細書においてHHV−6Aの「野生株」とは、人工的な改変を受けていない、天然
より単離されたHHV−6A株をいう。野生株の例としては、U1102株が挙げられる
が、これに限定されない。
【0145】
本明細書において「変異株」とは、野生株であるウイルス株に、変異誘発、多数回の継
代培養などによって変異誘発をしたヘルペスウイルス株をいう。ヘルペスウイルス株に変
異誘発する場合、この変異誘発は、ランダムな変異導入であっても、部位特異的変異導入
であってもよい。
【0146】
本明細書においてHHV−6Bの「野生株」とは、人工的な改変を受けていない、天然
より単離されたヘルペスウイルス株をいう。HHV−6B野生株の例としては、HST株
が挙げられるが、これに限定されない。
【0147】
本明細書において使用される用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチ
ド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ
酸のポリマーをいう。
【0148】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」およ
び「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリ
マーをいう。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示さ
れた配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および
相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ
以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/または
デオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batze
rら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuk
aら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rosso
liniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。
【0149】
本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一
定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定する遺伝子を構造遺伝子といい、
その発現を左右する領域を調節エレメントという。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリ
ヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/あるいは「タンパク
質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」をさすことがある。本明
細書において遺伝子の「オープンリーディングフレーム」または「ORF」とは、遺伝子
の塩基配列を3塩基ずつに区切った時の3通りの枠組の1つであって、開始コドンを有し
、そして途中に終止コドンが出現せずある程度の長さを持ち、実際にタンパク質をコード
する可能性のある読み枠をいう。ヘルペスウイルスゲノムは、その全塩基配列が決定され
ており、少なくとも101個の遺伝子が同定されており、その遺伝子の各々がオープンリ
ーディングフレーム(ORF)を有することが公知である。
【0150】
本明細書において「RNAi」とは、RNA interferenceの略称で、二
本鎖RNA(dsRNAともいう)のようなRNAiを引き起こす因子を細胞に導入する
ことにより、相同なmRNAが特異的に分解され、遺伝子産物の合成が抑制される現象お
よびそれに用いられる技術をいう。本明細書においてRNAiはまた、場合によっては、
RNAiを引き起こす因子と同義に用いられ得る。
【0151】
本明細書において「RNAiを引き起こす因子」とは、RNAiを引き起こすことがで
きるような任意の因子をいう。本明細書において「遺伝子」に対して「RNAiを引き起
こす因子」とは、その遺伝子に関するRNAiを引き起こし、RNAiがもたらす効果(
例えば、その遺伝子の発現抑制など)が達成されることをいう。そのようなRNAiを引
き起こす因子としては、例えば、標的遺伝子の核酸配列の一部に対して少なくとも約70
%の相同性を有する配列またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含
む、少なくとも10ヌクレオチド長の二本鎖部分を含むRNAまたはその改変体が挙げら
れるがそれに限定されない。ここで、この因子は、好ましくは、3’突出末端を含み、よ
り好ましくは、3’突出末端は、2ヌクレオチド長以上のDNA(例えば、2〜4ヌクレ
オチド長のDNAであり得る。
【0152】
理論に束縛されないが、RNAiが働く機構として考えられるものの一つとして、ds
RNAのようなRNAiを引き起こす分子が細胞に導入されると、比較的長い(例えば、
40塩基対以上)RNAの場合、ヘリカーゼドメインを持つダイサー(Dicer)と呼
ばれるRNaseIII様のヌクレアーゼがATP存在下で、その分子を3’末端から約
20塩基対ずつ切り出し、短鎖dsRNA(siRNAとも呼ばれる)を生じる。本明細
書において「siRNA」とは、short interfering RNAの略称で
あり、人工的に化学合成されるかまたは生化学的に合成されたものか、あるいは生物体内
で合成されたものか、あるいは約40塩基以上の二本鎖RNAが体内で分解されてできた
10塩基対以上の短鎖二本鎖RNAをいい、通常、5’−リン酸、3’−OHの構造を有
しており、3’末端は約2塩基突出している。このsiRNAに特異的なタンパク質が結
合して、RISC(RNA−induced−silencing−complex)が
形成される。この複合体は、siRNAと同じ配列を有するmRNAを認識して結合し、
RNaseIII様の酵素活性によってsiRNAの中央部でmRNAを切断する。si
RNAの配列と標的として切断するmRNAの配列の関係については、100%一致する
ことが好ましい。しかし、siRNAの中央から外れた位置についての塩基の変異につい
ては、完全にRNAiによる切断活性がなくなるのではなく、部分的な活性が残存する。
他方、siRNAの中央部の塩基の変異は影響が大きく、RNAiによるmRNAの切断
活性が極度に低下する。このような性質を利用して、変異をもつmRNAについては、そ
の変異を中央に配したsiRNAを合成し、細胞内に導入することで特異的に変異を含む
mRNAだけを分解することができる。従って、本発明では、siRNAそのものをRN
Aiを引き起こす因子として用いることができるし、siRNAを生成するような因子(
例えば、代表的に約40塩基以上のdsRNA)をそのような因子として用いることがで
きる。
【0153】
また、理論に束縛されることを希望しないが、siRNAは、上記経路とは別に、si
RNAのアンチセンス鎖がmRNAに結合してRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdR
P)のプライマーとして作用し、dsRNAが合成され、このdsRNAが再びダイサー
の基質となり、新たなsiRNAを生じて作用を増幅することも企図される。従って、本
発明では、siRNA自体およびsiRNAが生じるような因子もまた、有用である。実
際に、昆虫などでは、例えば35分子のdsRNA分子が、1,000コピー以上ある細
胞内のmRNAをほぼ完全に分解することから、siRNA自体およびsiRNAが生じ
るような因子が有用であることが理解される。
【0154】
本発明においてsiRNAと呼ばれる、約20塩基前後(例えば、代表的には約21〜
23塩基長)またはそれ未満の長さの二本鎖RNAを用いることができる。このようなs
iRNAは、細胞に発現させることにより遺伝子発現を抑制し、そのsiRNAの標的と
なる病原遺伝子の発現を抑えることから、疾患の治療、予防、予後などに使用することが
できる。
【0155】
本発明において用いられるsiRNAは、RNAiを引き起こすことができる限り、ど
のような形態を採っていてもよい。
【0156】
別の実施形態において、本発明のRNAiを引き起こす因子は、3’末端に突出部を有
する短いヘアピン構造(shRNA;short hairpin RNA)であり得る
。本明細書において「shRNA」とは、一本鎖RNAで部分的に回文状の塩基配列を含
むことにより、分子内で二本鎖構造をとり、ヘアピンのような構造となる約20塩基対以
上の分子をいう。そのようなshRNAは、人工的に化学合成される。あるいは、そのよ
うなshRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖のDNA配列を逆向きに連結したヘア
ピン構造のDNAをT7 RNAポリメラーゼによりインビトロでRNAを合成すること
によって生成することができる。理論に束縛されることは希望しないが、そのようなsh
RNAは、細胞内に導入された後、細胞内で約20塩基(代表的には例えば、21塩基、
22塩基、23塩基)の長さに分解され、siRNAと同様にRNAiを引き起こし、本
発明の処置効果があることが理解されるべきである。このような効果は、昆虫、植物、動
物(哺乳動物を含む)など広汎な生物において発揮されることが理解されるべきである。
このように、shRNAは、siRNAと同様にRNAiを引き起こすことから、本発明
の有効成分として用いることができる。shRNAはまた、好ましくは、3’突出末端を
有し得る。二本鎖部分の長さは特に限定されないが、好ましくは約10ヌクレオチド長以
上、より好ましくは約20ヌクレオチド長以上であり得る。ここで、3’突出末端は、好
ましくはDNAであり得、より好ましくは少なくとも2ヌクレオチド長以上のDNAであ
り得、さらに好ましくは2〜4ヌクレオチド長のDNAであり得る。
【0157】
本発明において用いられるRNAiを引き起こす因子は、人工的に合成した(例えば、
化学的または生化学的)ものでも、天然に存在するものでも用いることができ、この両者
の間で本発明の効果に本質的な違いは生じない。化学的に合成したものでは、液体クロマ
トグラフィーなどにより精製をすることが好ましい。
【0158】
本発明において用いられるRNAiを引き起こす因子は、インビトロで合成することも
できる。この合成系において、T7 RNAポリメラーゼおよびT7プロモーターを用い
て、鋳型DNAからアンチセンスおよびセンスのRNAを合成する。これらをインビトロ
でアニーリングした後、細胞に導入すると、上述のような機構を通じてRNAiが引き起
こされ、本発明の効果が達成される。ここでは、例えば、リン酸カルシウム法でそのよう
なRNAを細胞内に導入することができる。
【0159】
本発明のRNAiを引き起こす因子としてはまた、mRNAとハイブリダイズし得る一
本鎖、あるいはそれらのすべての類似の核酸アナログのような因子も挙げられる。そのよ
うな因子もまた、本発明の処置方法および組成物において有用である。
【0160】
本明細書において「対応する」アミノ酸および核酸とは、それぞれあるポリペプチドお
よび核酸分子において、比較の基準となるポリペプチドおよび核酸分子における所定のア
ミノ酸および核酸と同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸およ
び核酸をいい、例えば、ユビキチンにおいては、リジンとの連結を担う配列(例えば、C
末端のグリシン)と同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸およびそれ
をコードする核酸をいう。例えば、核酸配列であれば、その核酸配列またはそれがコード
する特定の部分と同様の機能を発揮する部分であり得る。
【0161】
本明細書において「対応する」遺伝子(例えば、ポリペプチド、核酸分子など)とは、
ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、ま
たは有することが予測される遺伝子をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在す
る場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子の対応する遺伝子
は、その遺伝子のオルソログであり得る。したがって、ヘルペスウイルス6B型の配列、
癌抗原などの遺伝子に対応する遺伝子は、他の生物(ヘルペスウイルス7型など)におい
ても見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を
用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物における対応する遺伝子は
、対応する遺伝子の基準となる遺伝子(例えば、ヘルペスウイルス−6AのMIEプロモ
ーター配列)の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えばヘルペスウイルス6B)
の配列データベースを検索することによって、またはウェットの実験でライブラリーをス
クリーニングすることによって見出すことができる。
【0162】
本明細書において「単離された」物質(例えば、核酸またはタンパク質などのような生
物学的因子)とは、その物質が天然に存在する環境(例えば、生物体の細胞内)の他の物
質(好ましくは、生物学的因子)(例えば、核酸である場合、核酸以外の因子および目的
とする核酸以外の核酸配列を含む核酸;タンパク質である場合、タンパク質以外の因子お
よび目的とするタンパク質以外のアミノ酸配列を含むタンパク質など)から実質的に分離
または精製されたものをいう。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製
方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。したがって、単離された核酸
およびタンパク質は、化学的に合成した核酸およびタンパク質を包含する。
【0163】
本明細書において「精製された」物質(例えば、核酸またはタンパク質などのような生
物学的因子)とは、その物質に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものを
いう。したがって、通常、精製された物質におけるその物質の純度は、その物質が通常存
在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
【0164】
本明細書において「精製された」および「単離された」とは、好ましくは少なくとも7
5重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95
重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の物質が存在することを意
味する。
【0165】
本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一
性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性
または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、ま
たは核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べら
れ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表
的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、
より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99
%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。
【0166】
本明細書において「ストリンジェントなハイブリダイズ条件」とは、当該分野で慣用さ
れる周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドを
プローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーシ
ョン法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのよ
うなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、ストリンジェントな条件でハイ
ブリダイズするポリヌクレオチドは、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化し
たフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼー
ションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citr
ate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM
クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同
定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular
Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Mo
lecular Biology,Supplement 1−38、DNA Clon
ing 1:Core Techniques,A Practical Approa
ch,Second Edition,Oxford University Pres
s(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ス
トリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまた
はT配列のみを含む配列が除外される。「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは
、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる
ポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、本
発明で具体的に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配
列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の
相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌ
クレオチドを挙げることができる。
【0167】
本明細書では塩基配列の同一性の比較および相同性の算出は、配列分析用ツールである
BLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。同一性の検索は例えば、
NCBIのBLAST 2.2.9 (2004.5.12 発行)を用いて行うことが
できる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件
でアラインした際の値をいう。ただし、パラメーターの変更により、より高い値が出る場
合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうち
の最も高い値を同一性の値とする。
【0168】
本明細書において、「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、
ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列
を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et a
l.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、FASTA(P
earson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA
85:2444−2448(1988))、Smith and Waterman法(
Smith and Waterman,J.Mol.Biol.147:195−19
7(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needle
man and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(197
0))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジ
ェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマク
ロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PC
Rおよび in situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定され
ない。本明細書において、本発明において使用されるプロモーターとしては、このような
電子的検索、生物学的検索によって同定された対応する配列も含まれるべきであることが
意図される。
【0169】
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その
遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、
遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になるこ
とをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一態様であり得る。より
好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり
得る。
【0170】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Bioch
emical Nomenclature Commissionにより推奨される1文
字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に受
け入れられた1文字コードにより言及され得る。
【0171】
その文字コードは以下のとおりである。
アミノ酸
3文字記号 1文字記号 意味
Ala A アラニン
Cys C システイン
Asp D アスパラギン酸
Glu E グルタミン酸
Phe F フェニルアラニン
Gly G グリシン
His H ヒスチジン
Ile I イソロイシン
Lys K リジン
Leu L ロイシン
Met M メチオニン
Asn N アスパラギン
Pro P プロリン
Gln Q グルタミン
Arg R アルギニン
Ser S セリン
Thr T トレオニン
Val V バリン
Trp W トリプトファン
Tyr Y チロシン
Asx アスパラギンまたはアスパラギン酸
Glx グルタミンまたはグルタミン酸
Xaa 不明または他のアミノ酸。
【0172】
塩基
記号 意味
a アデニン
g グアニン
c シトシン
t チミン
u ウラシル
r グアニンまたはアデニンプリン
y チミン/ウラシルまたはシトシンピリミジン
m アデニンまたはシトシンアミノ基
k グアニンまたはチミン/ウラシルケト基
s グアニンまたはシトシン
w アデニンまたはチミン/ウラシル
b グアニンまたはシトシンまたはチミン/ウラシル
d アデニンまたはグアニンまたはチミン/ウラシル
h アデニンまたはシトシンまたはチミン/ウラシル
v アデニンまたはグアニンまたはシトシン
n アデニンまたはグアニンまたはシトシンまたはチミン/ウラシル、不明、または他
の塩基。
【0173】
本明細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチ
ド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長を有するポリペプチドまたはポリヌク
レオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、
例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、
10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここ
で具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として
適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,2
0、25、30、40、50、75、100、200、300、400、500、600
、600、700、800、900、1000およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ
、ここで具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限
として適切であり得る。
【0174】
本発明において使用されるポリペプチドは、天然型のポリペプチドと実質的に同一の作
用を有する限り、アミノ酸配列中の1以上(例えば、1または数個)のアミノ酸が置換、
付加および/または欠失していてもよく、糖鎖が置換、付加および/または欠失していて
もよい。
【0175】
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然
として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパ
ク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、
疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、およ
び±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の
置換は効率的であることが当該分野において理解される。親水性指標もまた、改変体作製
において考慮される。米国特許第4、554、101号に記載されるように、以下の親水
性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.
0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0
.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオ
ニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−
0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロ
イシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラ
ニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を
有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される
。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1
以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
【0176】
本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換さ
れるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換
をいう。保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:
アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン
;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、な
どが挙げられるがこれらに限定されない。
【0177】
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなど
の物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改
変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体
などが挙げられる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別
される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対
して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。「種相同体またはホモログ(homolo
g)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、
相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、
90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する
方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、
オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子があ
る共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグ
ロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトとマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソロ
グであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子とβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重
複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用であることから、本
発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
【0178】
本明細書において「機能的改変体」とは、基準となる配列が担う生物学的活性(特に、
プロモーター活性)を保持する改変体をいう。
【0179】
本明細書において「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列
の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一の
または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコー
ドしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的
に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、
GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニン
がコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変
更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核
酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」であ
る。核酸においては、保存的置換は、例えば、プロモーター活性を測定しながら確認する
ことができる。
【0180】
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドをコードする遺伝子を作製するため
に、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができ
る。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは
1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加と
は、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ま
しくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチド
から1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のア
ミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、
ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチ
ル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然
のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然
のアミノ酸が好ましい。
【0181】
本明細書において発現されるべきポリペプチドの核酸形態は、そのポリペプチドのタン
パク質形態を発現し得る核酸分子をいう。この核酸分子は、発現されるポリペプチドが天
然型のポリペプチドと実質的に同一の活性を有する限り、上述のようにその核酸の配列の
一部が欠失または他の塩基により置換されていてもよく、あるいは他の核酸配列が一部挿
入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合して
いてもよい。また、ポリペプチドをコードする遺伝子をストリンジェントな条件下でハイ
ブリダイズし、そのポリペプチドと実質的に同一の機能を有するポリペプチドをコードす
る核酸分子でもよい。このような遺伝子は、当該分野において公知であり、本発明におい
て利用することができる。
【0182】
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもで
きる。これらの方法に、例えば、部位特異的変異誘発法、ハイブリダイゼーション法など
を組み合わせてもよい。
【0183】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」
とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくは
その代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わるこ
とまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野
において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げ
られる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、
その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能が保持される限り、多
くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましく
は、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以
下などであり得る。
【0184】
(プロモーター)
本明細書において「プロモーター」(またはプロモーター配列)とは、遺伝子の転写の
開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、通常RNA
ポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。したがって、本明細書においてあ
る遺伝子のプロモーターの働きを有する部分を「プロモーター部分」という。プロモータ
ーの領域は、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領
域を予測すれば、プロモーター領域を推定することができる。推定プロモーター領域は、
構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構
造遺伝子の下流にもあり得る。
【0185】
本明細書において、「MIEプロモーター」とは、主要前初期プロモーター(majo
r immediate early promoter)のプロモーターのことをいい
、ウイルス感染後,宿主由来またはビリオン由来の転写因子によって直ちに転写される遺
伝子のプロモーターをいう。MIE遺伝子は、シクロヘキシミド(CHX)処理感染細胞
から抽出したRNAを用いたRT−PCRによって同定することができる。
【0186】
本明細書において「U95プロモーター」とは、前初期遺伝子U95のプロモーターを
いう。このU95もまた、前初期遺伝子であるので、ウイルス感染後,宿主由来またはビ
リオン由来の転写因子によって直ちに転写される。
【0187】
本発明において、プロモーターの同定方法は、以下の通りである。すなわち、構造遺伝
子の周辺の配列をいくつかスクリーニングし(例えば、実施例に記載されるような発現カ
セットを用いる)、遺伝子発現促進活性を持つ配列をマッピングする。これによって、有
意な促進活性を有する配列を同定することができる。通常は、上流に配置されていること
がおおいが、それに限定されない。
【0188】
本明細書において「HHV6BのMIEプロモーター」は、配列番号1におけるプロモ
ーター活性を有する任意の配列をいう。好ましくは、配列番号1における転写開始点より
−814位〜0位を有する。そのような配列は、配列番号1またはそれに対応する配列な
どが挙げられるがそれらに限定されない。HHV6B遺伝子の発現制御には、転写開始点
から上流−574〜−427の領域、好ましくは−1051〜−427の領域があること
が好ましく、その塩基配列としては、配列番号15、16に示される配列などが挙げられ
る。その中でも、NF−κBおよびAP−1のモチーフ(転写開始点を起点とすれば−6
03〜−594がNF−κBモチーフ配列であり、−488〜−478、および−249
〜−239がAP−1のモチーフ配列である)がモチーフとなることが、塩基配列置換の
実験から明らかになった。従って、好ましくは、本発明のHHV6BのMIEプロモータ
ーは、(a)配列番号1に記載の塩基配列もしくはそれに対応する塩基配列またはそのフ
ラグメント配列を有するポリヌクレオチド;(b)配列番号1に記載の塩基配列もしくは
それに対応する塩基配列の対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレ
オチド;(c)(a)〜(b)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条
件下でハイブリダイズし、かつ、生物学的活性を有するポリヌクレオチド;または(d)
(a)〜(c)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が
少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリヌクレオチ
ド、を含む。
【0189】
本明細書において「HHV7のMIEプロモーター」とは、配列番号2におけるプロモ
ーター活性を有する任意の配列をいう。好ましくは、配列番号2における−493位〜+
22位を有する。そのような配列は、配列番号2またはそれに対応する配列などが挙げら
れるがそれらに限定されない。HHV7遺伝子の発現制御には、転写開始点から上流−3
88の領域、好ましくは−493の領域があることが好ましく、その塩基配列としては、
配列番号2に示される配列などが挙げられる。その中でも、NF−κBのモチーフ(転写
開始点を起点とすれば−464〜−455、および−359〜−350がNF−κBモチ
ーフ配列である)がモチーフとなることが、塩基配列置換の実験から明らかになった。従
って、好ましくは、本発明のHHV7のMIEプロモーターは、(a)配列番号2に記載
の塩基配列もしくはそれに対応する塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌ
クレオチド;(b)配列番号2に記載の塩基配列もしくはそれに対応する塩基配列の対立
遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;(c)(a)〜(b)
のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ
、生物学的活性を有するポリヌクレオチド;または(d)(a)〜(c)のいずれか1つ
のポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配
列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリヌクレオチド、を含む。
【0190】
本明細書において「HHV7のU95プロモーター」とは、配列番号12におけるプロ
モーター活性を有する任意の配列をいう。好ましくは、配列番号12における−484位
〜+16位を有する。そのような配列は、配列番号2またはそれに対応する配列などが挙
げられるがそれらに限定されない。HHV7遺伝子の発現制御には、転写開始点から上流
−379の領域、好ましくは−484の領域があることが好ましく、その塩基配列として
は、配列番号2に示される配列などが挙げられる。その中でも、NF−κBのモチーフ(
転写開始点を起点とすれば−478〜−469、および−373〜−364がNF−κB
モチーフ配列である)がモチーフとなることが、塩基配列置換の実験から明らかになった
。従って、好ましくは、本発明のHHV7のU95プロモーターは、(a)配列番号12
に記載の塩基配列もしくはそれに対応する塩基配列またはそのフラグメント配列を有する
ポリヌクレオチド;(b)配列番号12に記載の塩基配列もしくはそれに対応する塩基配
列の対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;(c)(a)
〜(b)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズ
し、かつ、生物学的活性を有するポリヌクレオチド;または(d)(a)〜(c)のいず
れか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%であ
る塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリヌクレオチド、を含む。
【0191】
本明細書において、本発明のプロモーターの発現が「構成的」(constructive)である
とは、生物のすべての組織において、その生物の発生のいずれの段階にあってもほぼ一定
の量で発現される性質をいう。具体的には、本明細書の実施例と同様の条件でノーザンブ
ロット分析したとき、例えば、任意の時点で(例えば、2点以上(例えば、5日目および
15日目))の同一または対応する部位のいずれにおいても、ほぼ同程度の発現量がみら
れるとき、本発明の定義上、発現が構成的であるという。構成的プロモーターは、通常の
生育環境にある生物の恒常性維持に役割を果たしていると考えられる。これらの性質は、
生物の任意の部分からRNAを抽出してノーザンブロット分析で発現量を分析することま
たは発現されたタンパク質をウェスタンブロットにより定量することにより決定すること
ができる。
【0192】
本明細書において「エンハンサー」は、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ
得る。動物細胞において使用する場合、エンハンサーとしては、SV40プロモーター内
の上流側の配列を含むエンハンサー領域が好ましい。エンハンサーは複数個用いられ得る
が1個用いられてもよいし、用いなくともよい。プロモーター中のプロモーター活性を強
める領域もまたエンハンサーと呼ばれることがある。
【0193】
本明細書において使用する場合、「作動可能に連結された(る)」(operative linked)
とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エン
ハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺
伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配
置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
【0194】
(核酸構築物)
本明細書において、「核酸構築物」または「遺伝子カセット」とは、交換可能に用いら
れ、遺伝子をコードする核酸分子(例えば、DNA、RNA)と、これに必要に応じて作
動可能に(すなわち、その核酸の発現を制御し得るように)連結された制御配列(例えば
、プロモーター)とを含む核酸配列、ならびに、必要に応じて制御配列(例えば、プロモ
ーター)と、これに作動可能に(すなわち、インフレームに)連結された異種遺伝子とを
含む核酸分子をいう。このカセットまたは構築物は、必要に応じて他の調節エレメントと
組み合わせて使用することもまた、本発明の範囲に含まれる。好ましい発現カセットは、
特定の制限酵素で切断され、容易に回収され得る遺伝子カセットまたは核酸構築物である

【0195】
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」とは、目的のポリヌクレ
オチド配列を目的の細胞へと移入させることができるものをいう。そのようなベクターと
しては、原核生物細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体
等の宿主細胞において自律複製が可能であるか、または染色体中への組込みが可能で、本
発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示さ
れる。本明細書では、例えば、BACベクターを用いることができる。BACベクターと
は、大腸菌のFプラスミドをもとにして作製されたプラスミドで、約300kb以上の巨
大なサイズのDNA断片をも大腸菌などの細菌内で安定に保持し増殖させることが可能な
ベクターである。BACベクターは、少なくともBACベクターの複製に必須の領域を含
む。その複製に必須の領域としては、例えば、Fプラスミドの複製開始点であるoriS
またはその改変体が挙げられる。
【0196】
本明細書において使用する場合、「選択マーカー」とは、核酸構築物、ベクターを含む
宿主細胞を選択する指標として機能する遺伝子をいう。選択マーカーとしては、蛍光マー
カー、発光マーカー、および薬剤選択マーカーが挙げられるが、これらに限定されない。
「蛍光マーカー」としては、緑色蛍光プロテイン(GFP)、青色蛍光プロテイン(CF
P)、黄色蛍光プロテイン(YFP)および赤色蛍光プロテイン(dsRed)のような
蛍光タンパク質をコードする遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。「発光マー
カー」としては、ルシフェラーゼのような発光タンパク質をコードする遺伝子が挙げられ
るが、これらに限定されない。「薬剤選択マーカー」としてはヒポキサンチングアニンホ
スホリボシルトランスフェラーゼ(hprt)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、グルタミ
ンシンセターゼ遺伝子、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、メタロチオネイン(MT)
、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、AMPデアミナーゼ(AMPD1,2)、キサンチ
ン−グアニン−ホスホリボシルトランスフェラーゼ、UMPシンターゼ、P−グリコプロ
テイン、アスパラギンシンテターゼ、およびオルニチンデカルボキシラーゼ。これら薬剤
選択マーカーと使用される薬剤との組み合わせは、例えば、以下のとおりである:ジヒド
ロ葉酸還元酵素遺伝子(DHFR)とメソトレキセート(MTX)との組み合わせ、グル
タミンシンセターゼ(GS)遺伝子とメチオニンスルホキシミン(Msx)との組み合わ
せ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)遺伝子とN−ホスホンアセチル−L−
アスパラギン酸(N−phosphonacetyl−L−aspartate)(PA
LA)との組み合わせ、MT遺伝子とカドミウム(Cd2+)との組み合わせ、アデノシ
ンデアミナーゼ(ADA)遺伝子とアデノシン、アラノシン、2’−デオキシコホルマイ
シンとの組み合わせ、AMPデアミナーゼ(AMPD1,2)遺伝子とアデニン、アザセリ
ン、コホルマイシンとの組み合わせ、キサンチン−グアニン−ホスホリボシルトランスフ
ェラーゼ遺伝子と、マイコフェノール酸との組み合わせ、UMPシンターゼ遺伝子と6−
アザウリジン、ピラゾフラン(pyrazofuran)との組み合わせ、P−グリコプ
ロテイン(P−gp,MDR)遺伝子と多剤薬剤との組み合わせ、アスパラギンシンテタ
ーゼ(AS)遺伝子とβ−アスパルチルヒドロキサム酸またはアルビジイン(albiz
ziin)との組み合わせ、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)遺伝子とα−ジフ
ルオロメチル−オルニチン(DFMO)などのタンパク質をコードする遺伝子が挙げられ
るが、これらに限定されない。
【0197】
本明細書において使用する場合、「発現ベクター」は、構造遺伝子およびその発現を調
節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連
結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐
性遺伝子(例えば、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子など)のよう
な選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、動物)の発現ベクター
のタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは
、当業者に周知の事項である。
【0198】
本明細書において使用する場合、「組換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配
列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとして
は、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体等の宿主
細胞において自律複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレ
オチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。
【0199】
本明細書において「ターミネーター」は、遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流
に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する
配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及
ぼすことが知られている。ターミネーターとしては、AATAAAを含む配列などが挙げ
られるが、これに限定されない。
【0200】
本明細書において「外来遺伝子」とは、ある生物において、その生物には天然には存在
しない遺伝子をいう。そのような外来遺伝子は、その生物に天然に存在する遺伝子を改変
したものであってもよく、天然において他の生物に存在する遺伝子(例えば、ADA遺伝
子)であってもよく、人工的に合成した遺伝子であってもよく、それらの複合体(例えば
、融合体)であってもよい。そのような外来遺伝子を含む生物は、天然では発現しない遺
伝子産物を発現し得る。例えば、欠損される劣性遺伝子(例えば、ADA遺伝子、PNP
遺伝子、γc鎖遺伝子、TAP遺伝子、MHC II遺伝子、X連鎖WASP、CD40
リガンド、PI3K類似遺伝子、DNAヘリカーゼ)を外来遺伝子として使用することが
できる。
【0201】
本発明においては、外来遺伝子はサイトカインであっても良い。本明細書において使用
される「サイトカイン」は、当該分野において用いられる最も広義の意味と同様に定義さ
れ、細胞から産生され同じまたは異なる細胞に作用する生理活性物質をいう。サイトカイ
ンは、一般にタンパク質またはポリペプチドであり、免疫応答の制御作用、内分泌系の調
節、神経系の調節、抗腫瘍作用、抗ウイルス作用、細胞増殖の調節作用、細胞分化の調節
作用などを有する。本明細書では、サイトカインはタンパク質形態または核酸形態あるい
は他の形態であり得るが、実際に作用する時点においては、サイトカインは通常はタンパ
ク質形態を意味する。本明細書において用いられる「増殖因子」とは、細胞の増殖を促進
または制御する物質をいう。増殖因子は、成長因子または発育因子ともいわれる。増殖因
子は、細胞培養または組織培養において、培地に添加されて血清高分子物質の作用を代替
し得る。多くの増殖因子は、細胞の増殖以外に、分化状態の制御因子としても機能するこ
とが判明している。サイトカインには、代表的には、インターロイキン類、ケモカイン類
、コロニー刺激因子のような造血因子、腫瘍壊死因子、インターフェロン類が含まれる。
増殖因子としては、代表的には、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EG
F)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝実質細胞増殖因子(HGF)、血管内皮増殖因
子(VEGF)のような増殖活性を有するものが挙げられる。
【0202】
本発明において、発現されるべき外来遺伝子は、上述の天然型の外来遺伝子と相同性の
あるものが使用され得る。そのような相同性を有する外来遺伝子としては、例えば、Bl
astのデフォルトパラメータを用いて比較した場合に、比較対照の外来遺伝子に対して
、少なくとも約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%
、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%
の同一性または類似性を有する核酸配列を含む核酸分子または少なくとも約30%、約3
5%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約7
5%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%の同一性または類似性を有す
るアミノ酸配列を有するポリペプチド分子が挙げられるがそれらに限定されない。
【0203】
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなど遺伝子産物の「発現」
とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好
ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形
態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一形態であり
得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けた
ものであり得る。
【0204】
従って、本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」の
「減少」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が
有意に減少することをいう。好ましくは、発現の減少は、ポリペプチドの発現量の減少を
含む。本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」の「増
加」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が有意
に増加することをいう。好ましくは、発現の増加は、ポリペプチドの発現量の増加を含む
。本明細書において遺伝子の「発現」の「誘導」とは、ある細胞にある因子を作用させて
その遺伝子の発現量を増加させることをいう。したがって、発現の誘導は、まったくその
遺伝子の発現が見られなかった場合にその遺伝子が発現するようにすること、およびすで
にその遺伝子の発現が見られていた場合にその遺伝子の発現が増大することを包含する。
【0205】
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、植物の特定の
部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現
されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(特異的部位)にのみ発現してもよ
く、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、
ある部位においてのみ発現することをいう。
【0206】
本明細書において使用される場合、組換えベクターの導入方法としては、DNAを導入
する方法であればいずれも用いることができ、例えば、塩化カルシウム法、エレクトロポ
レーション法[Methods.Enzymol.,194,182(1990)]、リ
ポフェクション法、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.US
A,84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,15
3,163(1983)]、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1
929(1978)記載の方法などが例示される。
【0207】
本明細書において使用されるゲノムまたは遺伝子座などを除去する方法において用いら
れる、Cre酵素の一過的発現、染色体上でのDNAマッピングなどは、細胞工学別冊実
験プロトコールシリーズ「FISH実験プロトコール ヒト・ゲノム解析から染色体・遺
伝子診断まで」松原謙一、吉川 寛 監修 秀潤社(東京)などに記載されるように、当
該分野において周知である。
【0208】
本明細書において遺伝子発現(たとえば、mRNA発現、ポリペプチド発現)の「検出
」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法
を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、
ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば
、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体
法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては
、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロ
テインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては
、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説され
ている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32
Suppl:526−32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加え
て、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステ
ム、インビトロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析
方法は、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔 羊土
社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考とし
て援用される。
【0209】
本明細書において「発現量」とは、目的の細胞などにおいて、ポリペプチドまたはmR
NAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELIS
A法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測
定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベル
での発現量、またはノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学
的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレ
ベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子
生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタン
パク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。
【0210】
本発明において使用する場合、用語「形質転換」、「形質導入」および「トランスフェ
クション」は、特に言及しない限り互換可能に使用され、宿主細胞への核酸の導入を意味
する。形質転換方法としては、宿主細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いる
ことができ、例えば、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用い
る方法、リン酸カルシウム法などの種々の周知の技術が挙げられる。
【0211】
「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部
をいう。形質転換体としては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞等が例示
される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿
主などともいわれ、本明細書においてそれらの形態をすべて包含するが、特定の文脈にお
いて特定の形態を指し得る。
【0212】
原核細胞としては、エシェリヒア属、セラチア属、バチルス属、ブレビバクテリウム属
、コリネバクテリウム属、ミクロバクテリウム属、シュードモナス属等に属する原核細胞
、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、Escherich
ia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1、Es
cherichia coli MC1000、Escherichia coli K
Y3276、Escherichia coli W1485、Escherichia
coli JM109、Escherichia coli HB101、Esche
richia coli No.49、Escherichia coli W3110
、Escherichia coli NY49、Escherichia coli
BL21(DE3)、Escherichia coli BL21(DE3)pLys
S、Escherichia coli HMS174(DE3)、Escherich
ia coli HMS174(DE3)pLysS、Serratia ficari
a、Serratia fonticola、Serratia liquefacie
ns、Serratia marcescens、Bacillus subtilis
、Bacillus amyloliquefaciens、Brevibacteri
um ammmoniagenes、Brevibacterium immariop
hilum ATCC14068、Brevibacterium saccharol
yticumATCC14066、Corynebacterium glutamic
um ATCC13032、Corynebacterium glutamicum
ATCC14067、Corynebacterium glutamicum ATC
C13869、Corynebacterium acetoacidophilum
ATCC13870、Microbacterium ammoniaphilum A
TCC15354、Pseudomonas sp.D−0110などが例示される。
【0213】
動物細胞としては、臍帯血単核球、末梢血単核球、およびSup-T1細胞などを挙げ
ることができる。
【0214】
本明細書において「動物」は、当該分野において最も広義で用いられ、脊椎動物および
無脊椎動物を含む。動物としては、哺乳綱、鳥綱、爬虫綱、両生綱、魚綱、昆虫綱、蠕虫
綱などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0215】
本明細書において、生物の「組織」とは、細胞の集団であって、その集団において一定
の同様の作用を有するものをいう。従って、組織は、臓器(器官)の一部であり得る。臓
器(器官)内では、同じ働きを有する細胞を有することが多いが、微妙に異なる働きを有
するものが混在することもあることから、本明細書において組織は、一定の特性を共有す
る限り、種々の細胞を混在して有していてもよい。
【0216】
本明細書において、「器官(臓器)」とは、1つ独立した形態をもち、1種以上の組織
が組み合わさって特定の機能を営む構造体を形成したものをいう。動物では、胃、肝臓、
腸、膵臓、肺、気管、鼻、心臓、動脈、静脈、リンパ節(リンパ管系)、胸腺、卵巣、眼
、耳、舌、皮膚等が挙げられるがそれらに限定されない。
【0217】
本明細書において、「トランスジェニック」とは、特定の遺伝子をある生物に組み込む
ことまたはそのような遺伝子が組み込まれた生物(例えば、植物または動物(マウスなど
)を含む)をいう。トランスジェニック生物のうち、ある遺伝子が欠失または抑制されて
いるものをノックアウト生物という。
【0218】
本発明の生物が、動物の場合、トランスジェニック生物は、マイクロインジェクション
法(微量注入法)、ウィルスベクター法、ES細胞法(胚性幹細胞法)、精子ベクター法
、染色体断片を導入する方法(トランスゾミック法)、エピゾーム法などを利用したトラ
ンスジェニック動物の作製技術を使用して作製することができる。そのようなトランスジ
ェニック動物の作成技術は当該分野において周知である。
【0219】
本明細書において使用される場合、「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性
質をもつ物質、あるいは宿主細胞またはウイルスなどを、特定の操作および/または評価
方法で多数の候補から選抜することをいう。本発明では、所望の活性を有するスクリーニ
ングによって得られたウイルスもまた、本発明の範囲内に包含されることが理解される。
【0220】
本明細書において「チップ」または「マイクロチップ」は、互換可能に用いられ、多様
の機能をもち、システムの一部となる超小型集積回路をいう。チップとしては、例えば、
DNAチップ、プロテインチップ、細胞チップなどが挙げられるがそれらに限定されない

【0221】
本発明のヘルペスウイルスのプロモーターは、リンパ系または血液系の疾患、免疫系疾
患、感染症の処置、予防、および/または治療のための薬学的組成物の成分としても使用
することが可能である。
【0222】
本明細書において薬剤の「有効量」とは、その薬剤が目的とする薬効を発揮することが
できる量をいう。本明細書において、そのような有効量のうち、最小の濃度を最小有効量
ということがある。そのような最小有効量は、当該分野において周知であり、通常、薬剤
の最小有効量は当業者によって決定されているか、または当業者は適宜決定することがで
きる。そのような有効量の決定には、実際の投与のほか、動物モデルなどを用いることも
可能である。本発明はまた、このような有効量を決定する際に有用である。
【0223】
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬のような農薬
を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。
そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、以下が挙げられるがそれらに
限定されない:抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、
溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、賦形剤および/または農学的もしくは
薬学的アジュバント。
【0224】
本発明の処置方法において使用される薬剤の種類および量は、本発明の方法によって得
られた情報(例えば、疾患に関する情報)を元に、使用目的、対象疾患(種類、重篤度な
ど)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、投与される被験体の部位の形態または種類など
を考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明のモニタリング方法を被験体
(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患
者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定す
ることができる。疾患状態をモニタリングする頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1
回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)のモニタリングが挙げられる。1週間−1ヶ
月に1回のモニタリングを、経過を見ながら施すことが好ましい。
【0225】
本明細書において「指示書」は、本発明の治療方法などを医師、患者など投与を行う人
に対して記載したものである。この指示書は、本発明の医薬などを例えば、放射線治療直
後または直前(例えば、24時間以内など)に投与することを指示する文言が記載されて
いる。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働
省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その
監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(packa
ge insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば
、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような
形態でも提供され得る。
【0226】
必要に応じて、本発明の治療では、2種類以上の薬剤が使用され得る。2種類以上の薬
剤を使用する場合、類似の性質または由来の物質を使用してもよく、異なる性質または由
来の薬剤を使用してもよい。このような2種類以上の薬剤を投与する方法のための疾患レ
ベルに関する情報も、本発明の方法によって入手することができる。
【0227】
本発明で使用される培養方法は、例えば、動物培養細胞マニュアル、瀬野ら編著、共立
出版、1993年などに記載され支持されており、本明細書においてこのすべての記載を
援用する。
【0228】
(ポリペプチドの製造方法)
本発明のポリペプチドをコードするDNAを組み込んだ組換え体ベクターを保有する微
生物、動物細胞などに由来する形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、本発明の
ポリペプチドを生成蓄積させ、本発明の培養物より本発明のポリペプチドを採取すること
により、本発明のポリペプチドを製造することができる。
【0229】
本発明の形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従
って行うことができる。大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得ら
れた形質転換体を培養する培地としては、本発明の生物が資化し得る炭素源、窒素源、無
機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地
のいずれを用いてもよい。
【0230】
炭素源としては、それぞれの微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラ
クトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等
の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール
類を用いることができる。
【0231】
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウ
ム、リン酸アンモニウム等の各種無機酸または有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素物
質、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水
分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いること
ができる。
【0232】
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫
酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム
等を用いることができる。培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で
行う。
【0233】
培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中pH
は、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、
尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。また培養中必要に応じて、アンピシ
リンまたはテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0234】
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物
を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、l
acプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプ
ロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクタ
ーで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加しても
よい。遺伝子を導入した植物の細胞または器官は、ジャーファーメンターを用いて大量培
養することができる。培養する培地としては、一般に使用されているムラシゲ・アンド・
スクーグ(MS)培地、ホワイト(White)培地、またはこれら培地にオーキシン、
サイトカイニン等、植物ホルモンを添加した培地等を用いることができる。
【0235】
例えば、動物細胞を用いる場合、本発明の細胞を培養する培地は、一般に使用されてい
るRPMI1640培地[The Journal of the American
Medical Association,199,519(1967)]、Eagle
のMEM培地[Science,122,501(1952)]、DMEM培地[Vir
ology,8,396(1959)]、199培地[Proceedings of
the Society for the Biological Medicine,
73,1(1950)]またはこれら培地にウシ胎児血清等を添加した培地等が用いられ
る。
【0236】
培養は、通常pH6〜8、25〜40℃、5%CO存在下等の条件下で1〜7日間行
う。また培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生
物質を培地に添加してもよい。本発明のポリペプチドをコードする核酸配列で形質転換さ
れた形質転換体の培養物から、本発明のポリペプチドを単離または精製するためには、当
該分野で周知慣用の通常の酵素の単離または精製法を用いることができる。例えば、本発
明のポリペプチドが本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞外に本発明のポリペプ
チドが分泌される場合には、その培養物を遠心分離等の手法により処理し、可溶性画分を
取得する。その可溶性画分から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒によ
る沈澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION H
PA−75(三菱化学)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sep
harose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラ
フィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマト
グラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロ
マトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用い、精製標品を得る
ことができる。
本発明のポリペプチドが本発明のポリペプチド製造用形質転換体の細胞内に溶解状態で蓄
積する場合には、培養物を遠心分離することにより、培養物中の細胞を集め、その細胞を
洗浄した後に、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモジナイザー、ダイ
ノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。その無細胞抽出液を遠心分離するこ
とにより得られた上清から、溶媒抽出法、硫安等による塩析法脱塩法、有機溶媒による沈
澱法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−Sepharose、DIAION HPA
−75(三菱化学)等樹脂を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepha
rose FF(Pharmacia)等の樹脂を用いた陽イオン交換クロマトグラフィ
ー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等の樹脂を用いた疎水性クロマトグラ
フィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマト
フォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を用いることによって、精製
標品を得ることができる。
【0237】
また、本発明のポリペプチドが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞
を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈澱画分より、通常の方法により本
発明のポリペプチドを回収後、そのポリペプチドの不溶体をポリペプチド変性剤で可溶化
する。この可溶化液を、ポリペプチド変性剤を含まないあるいはポリペプチド変性剤の濃
度がポリペプチドが変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、本発明のポリ
ペプチドを正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得
ることができる。
【0238】
また、通常のタンパク質の精製方法[J.Evan.Sadlerら:Methods
in Enzymology,83,458]に準じて精製できる。また、本発明のポ
リペプチドを他のタンパク質との融合タンパク質として生産し、融合したタンパク質に親
和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを利用して精製することもで
きる[山川彰夫,実験医学(Experimental Medicine),13,4
69−474(1995)]。例えば、Loweらの方法[Proc.Natl.Aca
d.Sci.,USA,86,8227−8231(1989)、GenesDevel
op.,4,1288(1990)]に記載の方法に準じて、本発明のポリペプチドをプ
ロテインAとの融合タンパク質として生産し、イムノグロブリンGを用いるアフィニティ
ークロマトグラフィーにより精製することができる。
【0239】
また、本発明のポリペプチドをFLAGペプチドとの融合タンパク質として生産し、抗
FLAG抗体を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる[
Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,86,8227(1989)、Ge
nes Develop.,4,1288(1990)]。
【0240】
さらに、本発明のポリペプチド自身に対する抗体を用いたアフィニティークロマトグラ
フィーで精製することもできる。本発明のポリペプチドは、公知の方法[J.Biomo
lecular NMR,6,129−134、Science,242,1162−1
164、J.Biochem.,110,166−168(1991)]に準じて、in
vitro転写・翻訳系を用いてを生産することができる。
【0241】
上記で取得されたポリペプチドのアミノ酸情報を基に、Fmoc法(フルオレニルメチ
ルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法
によっても本発明のポリペプチドを製造することができる。また、Advanced C
hemTech、Applied Biosystems、Pharmacia Bio
tech、Protein Technology Instrument、Synth
ecell−Vega、PerSeptive、島津製作所等のペプチド合成機を利用し
化学合成することもできる。
【0242】
精製した本発明のポリペプチドの構造解析は、タンパク質化学で通常用いられる方法、
例えば遺伝子クローニングのためのタンパク質構造解析(平野久著、東京化学同人発行、
1993年)に記載の方法により実施可能である。
【0243】
(変異型ポリペプチドの作製方法)
本発明ポリペプチドのアミノ酸の欠失、置換もしくは付加は、出願前周知技術である部
位特異的変異誘発法により実施することができる。かかる1もしくは数個のアミノ酸が欠
失、置換もしくは付加は、Molecular Cloning,A Laborato
ry Manual,Second Edition,Cold Spring Har
bor Laboratory Press(1989)、Current Proto
cols in Molecular Biology,Supplement 1〜3
8,JohnWiley & Sons(1987−1997)、Nucleic Ac
ids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Aca
d.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(198
5)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、
Proc.Natl.Acad.Sci USA,82,488(1985)、Proc
.Natl.Acad.Sci.,USA,81,5662(1984)、Scienc
e,224,1431(1984)、PCT WO85/00817(1985)、Na
ture,316,601(1985)等に記載の方法に準じて調製することができる。
【0244】
(遺伝子治療)
特定の実施形態において、抗体またはその機能的誘導体をコードする配列を含む核酸は
、本発明のポリペプチドの異常な発現および/または活性に関連した疾患または障害を処
置、阻害または予防するために、遺伝子治療の目的で投与される。遺伝子治療とは、発現
されたか、または発現可能な核酸の、被験体への投与により行われる治療をいう。本発明
のこの実施形態において、核酸は、それらのコードされたタンパク質を産生し、そのタン
パク質は治療効果を媒介する。
【0245】
当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法が、本発明に従って使用され得る
。例示的な方法は、以下のとおりである。
【0246】
遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspielら,Clinica
l Pharmacy 12:488−505(1993);WuおよびWu,Biot
herapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.
Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulli
gan,Science 260:926−932(1993);ならびにMorgan
およびAnderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1
993);May,TIBTECH 11(5):155−215(1993)を参照の
こと。遺伝子治療において使用される一般的に公知の組換えDNA技術は、Ausube
lら(編),Current Protocols in Molecular Bio
logy,John Wiley & Sons,NY(1993);およびKrieg
ler,Gene Transfer and Expression,A Labor
atory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載さ
れる。
【0247】
(治療活性または予防活性の証明)
本発明の化合物または薬学的組成物は、好ましくは、ヒトでの使用の前にインビトロで
、そして次いでインビボで、所望の治療活性または予防活性について試験される。例えば
、化合物または薬学的組成物の、治療有用性または予防有用性を証明するためのインビト
ロアッセイとしては、細胞株または患者組織サンプルに対する化合物の効果が挙げられる
。細胞株および/または組織サンプルに対する化合物または組成物の効果は、当業者に公
知である技術(細胞溶解アッセイが挙げられるがこれらに限定されない)を利用して決定
され得る。本発明に従って、特定の化合物の投与が示されるか否かを決定するために用い
られ得るインビトロアッセイとしては、インビトロ細胞培養アッセイが挙げられ、このア
ッセイでは、患者組織サンプルが培養物において増殖し、そして化合物に曝されるか、そ
うでなければ化合物が投与され、そして、組織サンプルに対するそのような化合物の効果
が観察される。
【0248】
(治療/予防のための投与および組成物)
本発明は、被験体への有効量の本発明のプロモーターを含む成分または薬学的組成物の
投与による処置、阻害および予防の方法を提供する。好ましい局面において、プロモータ
ーを含む成分は実質的に精製されたものであり得る(例えば、その効果を制限するかまた
は望ましくない副作用を生じる物質が実質的に存在しない状態が挙げられる)。被験体は
好ましくは、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなどの動物が挙げられるがそれら
に限定されない動物であり、そして好ましくは哺乳動物であり、そして最も好ましくはヒ
トである。
【0249】
本発明の核酸分子またはポリペプチドが医薬として使用される場合、そのような組成物
は、薬学的に受容可能なキャリアなどをさらに含み得る。本発明の医薬に含まれる薬学的
に受容可能なキャリアとしては、当該分野において公知の任意の物質が挙げられる。
【0250】
そのような適切な処方材料または薬学的に受容可能なキャリアとしては、抗酸化剤、保
存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩
衝剤、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または薬学的アジュバント挙げられるがそ
れらに限定されない。代表的には、本発明の医薬は、単離された多能性幹細胞、またはそ
の改変体もしくは誘導体を、1つ以上の生理的に受容可能なキャリア、賦形剤または希釈
剤とともに含む組成物の形態で投与される。例えば、適切なビヒクルは、注射用水、生理
的溶液、または人工脳脊髄液であり得、これらには、非経口送達のための組成物に一般的
な他の物質を補充することが可能である。
【0251】
本明細書で使用される受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤は、レシピエントに
対して非毒性であり、そして好ましくは、使用される投薬量および濃度において不活性で
あり、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸;アスコルビン酸、α−トコフ
ェロール;低分子量ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまた
は免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例
えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);モノサッカリ
ド、ジサッカリドおよび他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを
含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたは
ソルビトール);塩形成対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン
性表面活性化剤(例えば、Tween、プルロニック(pluronic)またはポリエ
チレングリコール(PEG))などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0252】
例示の適切なキャリアとしては、中性緩衝化生理食塩水、または血清アルブミンと混合
された生理食塩水が挙げられる。好ましくは、その生成物は、適切な賦形剤(例えば、ス
クロース)を用いて凍結乾燥剤として処方される。他の標準的なキャリア、希釈剤および
賦形剤は所望に応じて含まれ得る。他の例示的な組成物は、pH7.0−8.5のTri
s緩衝剤またはpH4.0−5.5の酢酸緩衝剤を含み、これらは、さらに、ソルビトー
ルまたはその適切な代替物を含み得る。
【0253】
本発明の医薬は、経口的または非経口的に投与され得る。あるいは、本発明の医薬は、
静脈内または皮下で投与され得る。全身投与されるとき、本発明において使用される医薬
は、発熱物質を含まない、薬学的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学
的に受容可能な組成物の調製は、pH、等張性、安定性などを考慮することにより、当業
者は、容易に行うことができる。本明細書において、投与方法は、経口投与、非経口投与
(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内
投与、患部への局所投与、皮膚投与など)であり得る。そのような投与のための処方物は
、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤
、徐放剤が挙げられる。
【0254】
本発明の医薬は、必要に応じて生理学的に受容可能なキャリア、賦型剤または安定化剤
(日本薬局方第14版、その追補またはその最新版、Remington’s Phar
maceutical Sciences,18th Edition,A.R.Gen
naro,ed.,Mack Publishing Company,1990などを
参照)と、所望の程度の純度を有する糖鎖組成物とを混合することによって、凍結乾燥さ
れたケーキまたは水溶液の形態で調製され保存され得る。
【0255】
本発明の処置方法において使用される糖鎖組成物の量は、使用目的、対象疾患(種類、
重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して
、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被験体(または患者)に対
して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性
別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。頻
度としては、例えば、毎日〜数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回〜1ヶ月に1回)の投
与が挙げられる。1週間〜1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。
【0256】
(免疫治療)
本明細書において「ワクチン」とは、身体中に投与されて、活性な免疫を生成する、通
常感染性因子または感染因子のある部分またはそのような因子または部分を生成すること
ができる因子(例えば、遺伝子配列など)を含む組成物(例えば、懸濁液または溶液)を
いう。ワクチンを構成する抗原性部分は、微生物(例えば、ウイルスまたは細菌など)ま
たは微生物から精製された天然の産生物、合成生成物または遺伝子操作したタンパク質、
ペプチド、多糖または同様な産生物、あるいはそのようなタンパク質をコードする核酸配
列を含む核酸分子であり得る。ワクチンは、中和抗体を生起することによって、その効果
を発現する。
【0257】
本明細書において「遺伝子ワクチン」とは、ワクチンのうち、投与される被験体におい
て発現され、その発現物がワクチンの作用を有するような因子(代表的には、核酸分子)
を含む組成物(例えば、懸濁液または溶液など)をいう。代表的な遺伝子ワクチンは、抗
原性を有する遺伝子産物をコードする核酸配列を含む核酸分子(例えば、ベクター、プラ
スミド、Naked DNAなど)であり得る。
【0258】
本明細書においてワクチンの免疫学的な効果は、当該分野において公知の任意の方法を
用いて確認することができる。そのような方法としては、例えば、CTL前駆細胞頻度分
析、ELISPOT法、テトラマー法、リアルタイムPCR法などが挙げられるがそれら
に限定されない。例示的な説明として、CTL前駆細胞頻度分析では、末梢血リンパ球ま
たは抗原ペプチドおよびIL−2存在下で培養したリンパ球を限界希釈し、IL−2とフ
ィーダー細胞との共存下で培養し、増殖したウェルをワクチンまたはその候補で刺激し、
IFN−γ産生の有無をELISAなどで測定する。ここで陽性ウェルをポアソン分析に
従ってCTL前駆細胞の頻度を算出し、ワクチンの効力を評価することができる。ここで
、陽性の細胞数が抗原特異的CTL数であり、その数が多いほどワクチンとして効力が高
いといえる。
【0259】
本発明は、癌ワクチンとしても使用され得る。そのような場合、癌抗原を外来遺伝子と
して組み込むことができる。
【0260】
本明細書において「癌抗原」とは、正常細胞が癌化するに伴って新たに発現するように
なる抗原分子をいう。そのような癌抗原としては、例えば、以下のようなものが挙げられ
るがそれらに限定されない:
(1)癌ウイルス由来抗原(例えば、アデノウイルス、ポリオーマウイルス、SV40など
のDNA型腫瘍ウイルスに由来するT抗原など)。ヒト、マウスのRNA型腫瘍ウイルスでは、
ウイルスのエンベロープタンパク質が細胞表面に発現される;
(2)癌特異移植抗原(tumor specific transplantati
on antigen,TSTA);この抗原は、同系の癌細胞に対して特異的免疫応答
が成立する結果、その癌細胞が拒絶される場合、その標的抗原となるものが該当する。遺
伝子変異により、癌細胞内に変異タンパク質が作られると、他の細胞内正常タンパク質と
同様に、ペプチド断片として細胞内で、主要組織適合抗原遺伝子複合体(MHC)の分子
と会合し癌細胞表面に発現されるようになる。;
(3)癌関連抗原(tumor associated antigen,TAA)。
癌細胞に必ずしも特異的でないが,癌化に伴って特徴的な発現を示す抗原。例えば、肝癌
におけるα−フェトプロテイン、腸癌などにおける胎児性癌抗原(carcinoemb
ryonic antigen,CEA)などが該当する。これらは、元来は正常の胎児
だけに存在するタンパク質であり、成人の組織には認められない。しかし、これらのタン
パク質は、癌化に伴って再発現を示すので癌胎児抗原(oncofetal antig
en)と呼ばれる。
【0261】
本明細書において使用される場合、癌抗原としては、どのような形態のものであっても
用いることができるが、特に、癌関連抗原と呼ばれる形態のものが好ましく用いられる。
MHCとの会合によって、癌細胞の表面に発現されるようになるからである。
【0262】
本明細書において「アジュバント」とは、投与された免疫原と混合するとき、免疫応答
を増加するか、あるいはそうでなければ変更する物質である。アジュバントは、例えば、
鉱物、細菌、植物、合成または宿主の産生物に場合に応じて分類される。
【0263】
本明細書において「病原体」とは、宿主に対して疾患または障害を発生し得る生物また
は因子をいう。
【0264】
本明細書において「予防」(prophylaxisまたはprevention)と
は、ある疾患または障害について、そのような状態が引き起こされる前に、そのような状
態が起こらないように処置することをいう。
【0265】
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害について、そのような状態になっ
た場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好まし
くは、軽減、さらに好ましくは消長させることをいう。
【0266】
このような治療活性または予防活性は、本発明のワクチンについて判定されるとき、好
ましくは、ヒトでの使用の前にインビトロで、そして次いでインビボで試験される。例え
ば、本発明の遺伝子ワクチンの、治療有用性または予防有用性を証明するためのインビト
ロアッセイとしては、細胞株または患者組織試料に対するワクチンの特異的結合の効果が
挙げられる。そのような試験は、当業者に公知である技術(例えば、ELISAなどの免
疫学的アッセイ)を利用して決定され得る。インビボ試験としては、例えば、中和抗体を
惹起する能力があるかどうかを試験する方法が挙げられるがそれらに限定されない。
【0267】
本明細書において「被験体」とは、本発明の処置が適用される生物をいい、「患者」と
もいわれる。患者または被験体は好ましくは、ヒトであり得る。
【0268】
本発明は、被験体への有効量の本発明の遺伝子ワクチンの投与による処置、阻害および
予防の方法を提供する。好ましい局面において、本発明の遺伝子ワクチンは実質的に精製
されたものであり得る(例えば、その効果を制限するかまたは望ましくない副作用を生じ
る物質が実質的に存在しない状態が挙げられる)。
【0269】
本明細書中、「投与する」とは、本発明のワクチンなどまたはそれを含む医薬組成物を
、単独で、または他の治療剤と組み合わせて処置が意図される宿主に与えることを意味す
る。組み合わせは、例えば、混合物として同時に、別々であるが同時にもしくは並行して
;または逐次的にかのいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療混
合物としてともに投与される提示を含み、そして組み合わせた薬剤が、別々であるが同時
に(例えば、同じ個体へ別々の粘膜を通じての場合)投与される手順もまた含む。「組み
合わせ」投与は、第1に与えられ、続いて第2に与えられる化合物または薬剤のうちの1
つを別々に投与することをさらに含む。
【0270】
本発明におけるワクチンの投与は、どのような手法を用いて行ってもよいが、好ましく
は、針無し注射を用いることが有利である。患者に過度の負担を与えることなく投与を行
えるからである。
【0271】
ここで本発明における針無注射器とは、注射針を用いずに、ガス圧または弾性部材の弾
力によりピストンを移動させて薬液を皮膚に噴射し、薬剤成分を皮下、より好ましくは皮
下の細胞内に投与する医療機器を意味する。
【0272】
具体的には例えば、シマジェットTM (島津製作所製)、メディ・ジェクター ビジ
ョン(Medi−Jector Vision)TM (Elitemedical社製
)、ペンジェット(PenJet)TM (PenJet社製)などが市販されている。
なお遺伝子銃(パーティクルガン)とは、DNAを被覆した金やタングステン等の高密度
粒子をヘリウム等のガス圧を利用して加速し、in vivo遺伝子導入が可能な医療/
実験機器である。遺伝子銃の利点は、少量のDNAでも効率良く細胞導入できることと、
異なる操作者でも安定した結果が得られることである。
【0273】
具体的には、例えば米国Bio−Rad社製のHelios Gene Gunなどが
市販されており、利用することができる。
【0274】
本明細書において「指示書」は、本発明の医薬などを投与する方法または診断する方法
などを医師、患者など投与を行う人、診断する人(患者本人であり得る)に対して記載し
たものである。この指示書は、本発明の診断薬、予防薬、医薬などを投与する手順を指示
する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、
日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に
従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる
添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それ
に限定されず、例えば、瓶に貼り付けられたフィルム、電子媒体(例えば、インターネッ
トで提供されるホームページ(ウェブサイト)、電子メール)のような形態でも提供され
得る。
【0275】
本発明の方法による予防処置の終了の判断は、市販のアッセイもしくは機器使用によっ
て惹起される抗体を確認することによって行うことができる。
【0276】
本発明はまた、本発明の医薬を含む容器を備える薬学的パッケージまたはキットを提供
する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形
式の通知が、このような容器に任意に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造
、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。
【0277】
(本明細書において用いられる一般的技術)
本明細書において使用される技術は、そうではないと具体的に指示しない限り、当該分
野の技術範囲内にある、糖鎖科学、マイクロフルイディクス、微細加工、有機化学、生化
学、遺伝子工学、分子生物学、微生物学、遺伝学および関連する分野における周知慣用技
術を使用する。そのような技術は、例えば、以下に列挙した文献および本明細書において
他の場所おいて引用した文献においても十分に説明されている。
【0278】
微細加工については、例えば、Campbell,S.A.(1996).The S
cience and Engineering of Microelectroni
c Fabrication,Oxford University Press;Za
ut,P.V.(1996).Micromicroarray Fabricatio
n:a Practical Guide to Semiconductor Pro
cessing,Semiconductor Services;Madou,M.J
.(1997).Fundamentals of Microfabrication
,CRC1 5 Press;Rai−Choudhury,P.(1997).Han
dbook of Microlithography,Micromachining
,& Microfabrication:Microlithographyなどに記
載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0279】
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法、糖鎖
科学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Mania
tis,T.et al.(1989).Molecular Cloning:A L
aboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその
3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.,et al. eds,Cu
rrent Protocols in Molecular Biology,Joh
n Wiley & Sons Inc.,NY,10158(2000);Innis
,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Met
hods and Applications,Academic Press;Inn
is,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Acade
mic Press;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR A
pplications:Protocols for Functional Gen
omics,Academic Press;Gait,M.J.(1985).Oli
gonucleotide Synthesis:A Practical Appro
ach,IRL Press;Gait,M.J.(1990).Oligonucle
otide Synthesis:A Practical Approach,IRL
Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotide
s and Analogues:A Practical Approac ,IRL
Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Bioche
mistry of the Nucleic Acids,Chapman & Ha
ll;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Org
anic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim
;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acid
s in Chemistry and Biology,Oxford Univer
sity Press;Hermanson,G.T.(1996).Bioconju
gate Techniques,Academic Press;Method in
Enzymology 230、242、247、Academic Press、1
994;別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載され
ており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用さ
れる。
【0280】
(好ましい実施形態の説明)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本
発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。
当業者はまた、以下のような好ましい実施例を参考にして、本発明の範囲内にある改変、
変更などを容易に行うことができることが理解されるべきである。
【0281】
1つの局面において、本発明は、HHV6(HHV6AおよびHHV6Bを含み、特に
、HHV6B)、HHV7のMIEプロモーターおよび/またはHHV7のU95プロモ
ーターを提供する。特に、このHHV6BのMIEプロモーター、HHV7のMIEプロ
モーターおよびHHV7のU95プロモーターは、予想外に、HCMVのIEプロモータ
ーよりも、リンパ球への選択性が高まっていたことが見出された。特に、付着性細胞(2
93細胞、Vero細胞など)では、HCMVのIEプロモーターの100分の1程度の
活性しかMIEプロモーターは示さなかったのに対して、SupT1、U937などのリ
ンパ球系細胞では、数倍高い発現効率が得られた。このような選択性、特異性の高さは、
DNAワクチン、遺伝子治療として特にリンパ球をターゲットとした医薬の開発に応用で
きることを明らかにした。また、インビボにおける発現系では、メチレースの作用によっ
てCMVプロモーターなどの強力な活性を持つものでも活性が減弱されることから、血球
系・リンパ球系細胞でのインビボでの発現量の確保のために、本発明のプロモーターを用
いることができることが理解される。遺伝病、がんの遺伝子治療などにおいて、レトロウ
イルスベクターが一般的に使用されているが、プロモーターとしてのLTRの活性はあま
り強くないことから、発現させようとする遺伝子の上流に本発明のプロモーターを導入す
ることによって、血球系細胞において強い発現を得ることができる。白血病などの血液細
胞の疾患をターゲットにした遺伝子治療において本発明は有用である。さらに、遺伝子発
現をノックアウトする方法としてRNAiを用いて、ヘアピン型RNA発現ベクターのプ
ロモーターとして本発明のプロモーターを用いることによって、血球系の発現抑制効果を
より効率よいものにすることができる。生体の末梢血よりマクロファージまたは樹状細胞
などをフローサイトメトリーによって分離精製し、これらの細胞に本発明のプロモーター
制御下で癌特異的抗原および腫瘍壊死因子(TNF)遺伝子などを発現させるように構築
したプラスミドをトランスフェクトし、がん抗原の発現を確認した後に元の生体に戻すこ
とによって、クラスI−HLAを介した癌抗原特異的CTLを効率的に活性化させて癌の
遺伝子治療を実現することができる。
【0282】
1つの実施形態において、本発明のプロモーターは、配列番号1に示す配列のうち、少
なくとも8の連続するヌクレオチド配列を含む。好ましくは、本発明のプロモーターは、
配列番号1に示す配列のうち、少なくともR3領域またはその機能的改変体を含む。さら
に好ましくは、本発明のプロモーターは、配列番号1に示す配列のうち、転写開始点を起
点として少なくとも−574〜−427の配列、さらにより好ましくは、転写開始点を起
点として少なくとも−1051〜−427の配列を含む。これらの領域にエンハンサー活
性がある領域があると予測されるからである。
【0283】
1つの実施形態において、本発明のプロモーターは、NF−κBおよびAP−1のモチ
ーフを含む。
【0284】
好ましい実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号1に示す配列を含み、より
好ましくは、配列番号1に示す配列から実質的に構成される。
【0285】
1つの実施形態では、本発明のプロモーターは、(a)配列番号1に記載の塩基配列も
しくはそれに対応する塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号1に記載の塩基配列もしくはそれに対応する塩基配列の対立遺伝子変異体
またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;(c)(a)〜(b)のいずれか1
つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ、生物学的活
性を有するポリヌクレオチド;または(d)(a)〜(c)のいずれか1つのポリヌクレ
オチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、
かつ、生物学的活性を有するポリヌクレオチド、を含む。ここで、この生物学的活性は、
プロモーター活性および/またはエンハンサー活性であり得るがそれに限定されない。プ
ロモーター活性およびエンハンサー活性は、当該分野において周知の技法を用いて測定す
ることができ、そのような技法は、本明細書においても記載されており、実施例において
例示されている。
【0286】
1つの好ましい実施形態において、本発明のプロモーターは、上記(a)〜(d)にお
いて置換、付加または欠失を含んでいてもよい。このような置換、付加および欠失の数は
、限定され得、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下
、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下であることが好ま
しい。より少ない数の置換、付加および欠失が好ましいが、生物学的活性を保持する(好
ましくは、HHV6BのMIEプロモーターと類似するかまたは実質的に同一の活性を有
する)限り、多い数であってもよい。
【0287】
好ましい実施形態において、上記(a)〜(d)のいずれか1つのポリヌクレオチドま
たはその相補配列に対する同一性は、少なくとも約80%であり得、より好ましくは少な
くとも約90%であり得、さらに好ましくは少なくとも約98%であり得、もっとも好ま
しくは少なくとも約99%であり得る。
【0288】
好ましい実施形態において、本発明の核酸分子は、少なくとも8の連続するヌクレオチ
ドであり得る。本発明の核酸分子は、本発明の使用目的によってその適切なヌクレオチド
長が変動し得る。より好ましくは、本発明の核酸分子は、少なくとも10の連続するヌク
レオチド長であり得、さらに好ましくは少なくとも15の連続するヌクレオチド長であり
得、なお好ましくは少なくとも20の連続するヌクレオチド長であり得る。これらのヌク
レオチド長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、9、11
、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...
30、など)であってもよい。本発明の核酸分子は、目的とする用途(例えば、プロモー
ター)として使用することができる限り、その上限の長さは、制限されない。ストリンジ
ェンシーは、高くても、中程度であっても、低くてもよく、程度は、当業者が適宜状況に
応じて決定することができる。
【0289】
別の実施形態において、本発明のプロモーターは、配列番号2に示す配列のうち、少な
くとも8の連続するヌクレオチド配列を含む。好ましくは、本発明のプロモーターは、配
列番号2に示す配列のうち、少なくともR2領域またはその機能的改変体を含む。さらに
好ましくは、本発明のプロモーターは、配列番号2に示す配列のうち、転写開始点を起点
として少なくとも−388〜+22の配列、さらにより好ましくは、転写開始点を起点と
して少なくとも−493〜+22の配列を含む。これらの領域にエンハンサー活性がある
領域があると予測されるからである。
【0290】
1つの実施形態において、本発明のプロモーターは、NF−κB(配列番号2における
−464〜−455、および−359〜−350の配列領域。)のモチーフを含む。
【0291】
好ましい実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号2に示す配列を含み、より
好ましくは、配列番号2に示す配列から実質的に構成される。
【0292】
1つの実施形態では、本発明のプロモーターは、(a)配列番号2に記載の塩基配列も
しくはそれに対応する塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に記載の塩基配列もしくはそれに対応する塩基配列の対立遺伝子変異体
またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;(c)(a)〜(b)のいずれか1
つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ、生物学的活
性を有するポリヌクレオチド;または(d)(a)〜(c)のいずれか1つのポリヌクレ
オチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、
かつ、生物学的活性を有するポリヌクレオチド、を含む。ここで、この生物学的活性は、
プロモーター活性および/またはエンハンサー活性であり得るがそれに限定されない。プ
ロモーター活性およびエンハンサー活性は、当該分野において周知の技法を用いて測定す
ることができ、そのような技法は、本明細書においても記載されており、実施例において
例示されている。
【0293】
1つの好ましい実施形態において、本発明のプロモーターは、上記(a)〜(d)にお
いて置換、付加または欠失を含んでいてもよい。このような置換、付加および欠失の数は
、限定され得、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下
、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下であることが好ま
しい。より少ない数の置換、付加および欠失が好ましいが、生物学的活性を保持する(好
ましくは、HHV7のMIEプロモーターと類似するかまたは実質的に同一の活性を有す
る)限り、多い数であってもよい。
【0294】
好ましい実施形態において、上記(a)〜(d)のいずれか1つのポリヌクレオチドま
たはその相補配列に対する同一性は、少なくとも約80%であり得、より好ましくは少な
くとも約90%であり得、さらに好ましくは少なくとも約98%であり得、もっとも好ま
しくは少なくとも約99%であり得る。
【0295】
好ましい実施形態において、本発明の核酸分子は、少なくとも8の連続するヌクレオチ
ドであり得る。本発明の核酸分子は、本発明の使用目的によってその適切なヌクレオチド
長が変動し得る。より好ましくは、本発明の核酸分子は、少なくとも10の連続するヌク
レオチド長であり得、さらに好ましくは少なくとも15の連続するヌクレオチド長であり
得、なお好ましくは少なくとも20の連続するヌクレオチド長であり得る。これらのヌク
レオチド長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、9、11
、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...
30、など)であってもよい。本発明の核酸分子は、目的とする用途(例えば、プロモー
ター)として使用することができる限り、その上限の長さは、制限されない。ストリンジ
ェンシーは、高くても、中程度であっても、低くてもよく、程度は、当業者が適宜状況に
応じて決定することができる。
【0296】
別の実施形態において、本発明のプロモーターは、配列番号12に示す配列のうち、少
なくとも8の連続するヌクレオチド配列を含む。好ましくは、本発明のプロモーターは、
配列番号12に示す配列のうち、少なくともR2領域またはその機能的改変体を含む。さ
らに好ましくは、本発明のプロモーターは、配列番号12に示す配列のうち、転写開始点
を起点として少なくとも−379〜+16の配列、さらにより好ましくは、転写開始点を
起点として少なくとも−484〜+16の配列を含む。これらの領域にエンハンサー活性
がある領域があると予測されるからである。
【0297】
1つの実施形態において、本発明のプロモーターは、NF−κB(配列番号12におけ
る−478〜−469、および−373〜−364の配列領域。)のモチーフを含む。
【0298】
好ましい実施形態では、本発明のプロモーターは、配列番号12に示す配列を含み、よ
り好ましくは、配列番号12に示す配列から実質的に構成される。
【0299】
1つの実施形態では、本発明のプロモーターは、(a)配列番号12に記載の塩基配列
もしくはそれに対応する塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド
;(b)配列番号12に記載の塩基配列もしくはそれに対応する塩基配列の対立遺伝子変
異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;(c)(a)〜(b)のいずれ
か1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ、生物学
的活性を有するポリヌクレオチド;または(d)(a)〜(c)のいずれか1つのポリヌ
クレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からな
り、かつ、生物学的活性を有するポリヌクレオチド、を含む。ここで、この生物学的活性
は、プロモーター活性および/またはエンハンサー活性であり得るがそれに限定されない
。プロモーター活性およびエンハンサー活性は、当該分野において周知の技法を用いて測
定することができ、そのような技法は、本明細書においても記載されており、実施例にお
いて例示されている。
【0300】
1つの好ましい実施形態において、本発明のプロモーターは、上記(a)〜(d)にお
いて置換、付加または欠失を含んでいてもよい。このような置換、付加および欠失の数は
、限定され得、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、10以下
、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下であることが好ま
しい。より少ない数の置換、付加および欠失が好ましいが、生物学的活性を保持する(好
ましくは、HHV7のU95プロモーターと類似するかまたは実質的に同一の活性を有する
)限り、多い数であってもよい。
【0301】
好ましい実施形態において、上記(a)〜(d)のいずれか1つのポリヌクレオチドま
たはその相補配列に対する同一性は、少なくとも約80%であり得、より好ましくは少な
くとも約90%であり得、さらに好ましくは少なくとも約98%であり得、もっとも好ま
しくは少なくとも約99%であり得る。
【0302】
好ましい実施形態において、本発明の核酸分子は、少なくとも8の連続するヌクレオチ
ドであり得る。本発明の核酸分子は、本発明の使用目的によってその適切なヌクレオチド
長が変動し得る。より好ましくは、本発明の核酸分子は、少なくとも10の連続するヌク
レオチド長であり得、さらに好ましくは少なくとも15の連続するヌクレオチド長であり
得、なお好ましくは少なくとも20の連続するヌクレオチド長であり得る。これらのヌク
レオチド長の下限は、具体的に挙げた数字のほかに、それらの間の数(例えば、9、11
、12、13、14、16など)あるいは、それ以上の数(例えば、21、22、...
30、など)であってもよい。本発明の核酸分子は、目的とする用途(例えば、プロモー
ター)として使用することができる限り、その上限の長さは、制限されない。ストリンジ
ェンシーは、高くても、中程度であっても、低くてもよく、程度は、当業者が適宜状況に
応じて決定することができる。
【0303】
別の局面において、本発明は、本発明のプロモーター(HHV−6のMIEプロモータ
ー、HHV−7のMIEプロモーター、HHV−7のU95プロモーターなど)を含む核
酸構築物を提供する。ここで、このような核酸構築物は、リンパ球特異的な発現を誘導さ
せる性質を有しており、その有用性は高く、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)のI
Eプロモーターに比べて予想外に高い選択性を示す。
【0304】
従って、1つの実施形態において、本発明の核酸構築物は、本発明のプロモーターとは
異なる由来の外来遺伝子をコードする配列を、本発明のプロモーターの配列に対して作動
可能に連結されて、含む。
【0305】
このような外来遺伝子としては、例えば、RNAi分子、薬剤、欠損される劣性遺伝子
、選択マーカーをコードするものが挙げられるがそれらに限定されない。
【0306】
好ましくは、本発明において使用される選択マーカーは、本発明の核酸構築物が導入さ
れる宿主の培地での選択を可能にするものが好ましく、例えば、この選択マーカーは、前
記核酸構築物が導入される宿主での視覚での選択を可能にするものであってもよく、例示
的には、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hprt)、また
は緑色蛍光プロテイン(GFP)、青色蛍光プロテイン(CFP)、黄色蛍光プロテイン
(YFP)および赤色蛍光プロテイン(dsRed)などを挙げることができる。
【0307】
本発明の核酸構築物において含まれる選択マーカーは、好ましくは、本発明の核酸構築
物が導入される宿主に対して実質的に毒性を示さないものであることが有利である。治療
、予防目的で本発明を用いる場合、有害作用は皆無であることが好ましいからである。
【0308】
本発明の核酸構築物において含まれるものとしては、例えば、欠損される劣性遺伝子が
ある。ここで欠損される劣性遺伝子とは、欠損されると疾患状態を呈示する任意の劣性遺
伝子をいい、例えば、ADA遺伝子(重症複合免疫不全症(SCID)に関連する)、P
NP遺伝子(重症複合免疫不全症(SCID)に関連する)、γc鎖遺伝子(重症複合免
疫不全症(SCID)に関連する)、TAP遺伝子(MHC I欠損症に関連する)、M
HC II遺伝子(MHC II欠損症に関連する)、X連鎖WASP(Wiskott
−Aldrich症候群に関連する)、CD40リガンド(X連鎖性高IgM症候群に関
連する)、PI3K類似遺伝子(毛細血管拡張性失調症に関連する)、DNAヘリカーゼ
(Bloom’s症候群が関連する)などを挙げることができる。
【0309】
好ましい実施形態では、本発明の核酸構築物において含まれる薬剤は、サイトカイン、
ケモカイン、増殖因子、タンパク質ホルモン、ペプチドホルモン(IFN−α,IFN−
γ,IL−2,IL−12,G−CSF,GM−CSF)等のタンパク質性の薬剤であり
得る。
【0310】
1つの実施形態では、本発明の核酸構築物では、本発明のプロモーターは、外来遺伝子
の血球系細胞、特にTリンパ球での特異的発現を誘導するために用いられる。
【0311】
他の局面において、本発明は、本発明の核酸構築物を含む発現ベクターを提供する。こ
のような発現ベクターには、本発明の核酸構築物に存在していないかもしれない、発現に
必須のエレメント、例えば、ターミネーター、エンハンサー配列などをいずれも作動可能
に連結された状態で含み、宿主での発現を可能にする。
【0312】
別の好ましい実施形態では、選択マーカーは、不死化遺伝子(例えば、bcl−2)で
あり得る。あるいは、選択マーカーは、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラー
ゼ(HPRT)、毒性産物をコードする遺伝子、自殺基質と組合せて条件により活性な毒
性遺伝子産物(例えば、アシクロビル(acyclovir)と組合せた単純ヘルペスウ
イルスチミジンキナーゼ(HSV−TK))であり得る。
【0313】
別の局面において、本発明は、本発明の核酸構築物を含む、細胞を提供する。このよう
な細胞は、リンパ球である場合、外来遺伝子にコードされたタンパク質の発現が亢進され
ている。
【0314】
好ましくは、本発明の細胞は、本発明のプロモーター配列とは異種の細胞であることが
有利である。異種であってもプロモーター活性を有することは驚くべき効果のひとつとい
ってもよい。本発明の核酸分子を細胞に導入する方法は、当該分野において周知であり、
本明細書において上記節において詳述されている。あるいは、そのような細胞は、細胞を
含むサンプル中において、その核酸分子を含む細胞をスクリーニングすることによって、
同定することができる。本発明の核酸分子を含む細胞は、好ましくは、未分化状態であり
得る。本発明の核酸分子が発現している細胞は、通常未分化状態である。したがって、そ
のような核酸分子が制御可能に発現されるように導入された細胞は、その未分化状態を制
御することができる。あるいは、そのような細胞を用いて、本発明の核酸分子を大量に生
産することができる。そのような生産方法は、当該分野において周知であり、本明細書に
おいて記載された文献に記載されている。
【0315】
別の局面において、本発明は、本発明の核酸構築物を含む、組織を提供する。そのよう
な核酸配列は、制御配列に作動可能に連結されることが好ましい。そのような組織は、動
物組織であってもよく、他の生物(例えば、植物)の組織であってもよい。あるいは、そ
のような組織を用いて、本発明の核酸分子を大量に生産することができる。そのような生
産方法は、当該分野において周知であり、本明細書において記載された文献に記載されて
いる。
【0316】
他の局面において、本発明は、本発明の核酸構築物を含む、臓器を提供する。そのよう
な核酸配列は、制御配列に作動可能に連結されることが好ましい。そのような臓器または
器官は、動物臓器または器官であってもよく、他の生物(例えば、植物)の臓器または器
官であってもよい。あるいは、そのような臓器または器官を用いて、本発明の核酸分子を
大量に生産することができる。そのような生産方法は、当該分野において周知であり、本
明細書において記載された文献に記載されている。
【0317】
なお他の局面において、本発明は、本発明の核酸構築物を含む、生物を提供する。その
ような生物は、動物であってもよく、他の生物(例えば、植物)であってもよい。あるい
は、そのような生物を用いて、本発明の核酸分子を大量に生産することができる。そのよ
うな生産方法は、当該分野において周知であり、本明細書において記載された文献に記載
されている。
【0318】
別の局面において、本発明は、本発明のプロモーターおよび抗原をコードする配列を含
む、薬学的組成物を提供する。ここで、抗原としては、宿主に免疫反応を惹起することが
所望される任意のタンパク質を使用することができる。そのような抗原としては、例えば
、がん抗原などを挙げることができるがそれらに限定されない。従って、本発明の薬学的
組成物は、好ましくはDNAワクチンであり得る。
【0319】
他の局面において、本発明は、リンパ球特異的な処置が所望される疾患、障害または状
態を処置するための薬学的組成物であって、本発明のプロモーターおよび該処置のための
核酸配列を含む、薬学的組成物を提供する。ここで、この薬学的組成物のターゲットとし
ては、リンパ球特異的な処置が所望される任意の疾患、障害、状態などが適切であり、例
えば、先天性免疫不全症候群を例示することができる。先天性免疫不全症候群としては、
例えば、重症複合免疫不全症(SCID)、MHC I欠損症、MHC II欠損症、W
iskott−Aldrich症候群、X連鎖性高IgM症候群、毛細血管拡張性失調症
、Bloom’s症候群などを挙げることができるがそれらに限定されない。理論に束縛
されないが、先天性免疫不全症候群は、何らかの劣性遺伝子の欠損によっておこる(ここ
では、欠損される劣性遺伝子ともいう)。患者から採取した骨髄細胞にこの欠損遺伝子を
導入して再び患者に戻してやる体細胞遺伝子治療(somatic gene ther
apy)を実施することが可能である。この際、本発明のHHV6B MIEプロモータ
ーを利用して、T細胞、マクロファージなどに分化した細胞での遺伝子発現効率の上昇が
見込める。このような遺伝子構築物の導入は、例えば、レトロウイルスなどによって行う
ことができる。
【0320】
好ましい実施形態では、本発明において使用されるべき処置のための核酸配列は、サイ
トカインをコードする核酸配列、ケモカインをコードする核酸配列、増殖因子をコードす
る核酸配列、タンパク質ホルモンをコードする核酸配列、ペプチドホルモンをコードする
核酸配列、リボザイム、RNAi(HIV−1 gp41: AATAAGACAGGG
CTTGGAAAGACACTTTCCAAGCCCTGTCTTATTTTT(配列番
号33)/HIV−1 tat: AAGCATCCAGGAAGTCAGCCTACA
AGGCTGACTTCCTGGATGCTTTTT(配列番号34)/HTLV−1
tax: GAACATTGGTGAGGAAGGCACAGCCTTCCTCACCA
ATGTTCTTTTT(配列番号35))を含む。
【0321】
別の局面において、本発明は、リンパ球特異的にタンパク質を発現させる方法であって
、A)本発明のプロモーターに該タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させ
た核酸構築物を作製する工程;B)該核酸構築物を、該プロモーターが該タンパク質をコ
ードする核酸配列の発現を誘導させる条件下に配置する工程、を包含する。
【0322】
本発明はまた、リンパ球特異的にタンパク質を発現させるキットであって、A)本発明
のプロモーターに該タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた核酸構築物
;B)該核酸構築物を、該プロモーターが該タンパク質をコードする核酸配列の発現を誘
導させる条件下に配置する手段、を包含する、キットを提供する。
【0323】
本発明はさらに、リンパ球特異的にタンパク質を発現させるキットであって、A)本発
明のプロモーター;およびB)該プロモーターに該タンパク質をコードする核酸配列を作
動可能に連結させた核酸構築物を作製するための手段;を包含する、キットを提供する。
【0324】
別の局面において、本発明は、リンパ球特異的にタンパク質を発現させることを必要と
する疾患、障害または状態を処置または予防するための方法であって、A)本発明のプロ
モーターに該タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた核酸構築物を作製
する工程;B)該核酸構築物を、該プロモーターが該タンパク質をコードする核酸配列の
発現を誘導させる条件下に配置する工程、を包含する、方法を提供する。
【0325】
本発明はまた、リンパ球特異的にタンパク質を発現させることを必要とする疾患、障害
または状態を処置または予防するためのキットであって、A)本発明のプロモーターに該
タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた核酸構築物;B)該核酸構築物
を、該プロモーターが該タンパク質をコードする核酸配列の発現を誘導させる条件下に配
置する手段、を包含する、キットを提供する。
【0326】
本発明はさらに、リンパ球特異的にタンパク質を発現させることを必要とする疾患、障
害または状態を処置または予防するためのキットであって、A)本発明のプロモーター;
およびB)該プロモーターに該タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた
核酸構築物を作製するための手段;を包含する、キットを提供する。
【0327】
別の局面において、本発明は、タンパク質を生産する方法であって、A)本発明のプロ
モーターに該タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた核酸構築物を作製
する工程;B)該核酸構築物を、該プロモーターが該タンパク質をコードする核酸配列の
発現を誘導させる条件下に配置する工程、を包含する、方法を提供する。
【0328】
本発明はまた、タンパク質を生産するためのキットであって、A)本発明のプロモータ
ーに該タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた核酸構築物;
B)該核酸構築物を、該プロモーターが該タンパク質をコードする核酸配列の発現を誘
導させる条件下に配置する手段、を包含する、キットを提供する。
【0329】
本発明はさらに、タンパク質を生産するためのキットであって、A)本発明のプロモー
ター;およびB)該プロモーターに該タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結
させた核酸構築物を作製するための手段;を包含する、キットを提供する。
【0330】
別の局面において、本発明は、本発明のプロモーターの、リンパ球特異的な処置が所望
される疾患、障害または状態を処置するための薬学的組成物の製造における使用を提供す
る。
【0331】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体
が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0332】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に
、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的
のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は
、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲に
よってのみ限定される。
【実施例】
【0333】
以下の実施例で用いた動物の取り扱いは、大阪大学において規定される基準を遵守した

【0334】
(実施例1:HHV6Bプロモーターの探索とDNAワクチンの開発)
HHV−6の前初期タンパク質(immediate early protein)
のプロモーター(大きさの異なる9U、20U、MIE、U95、MIE/3K、U95
/3K)について、その活性をサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターと比較した
。方法は、pGL3−Basic Vector(Promega)のルシブェラーゼ遺
伝子の上流に各プロモーター領域を挿入し、各種の細胞にトランスフェクションしてルシ
フェラーゼ活性を指標に活性を比較した。以下に材料および方法の詳細を記載する。
【0335】
(材料および方法)
(概略)
HHV−6BのMIE遺伝子のプロモーター領域(約1.2Kbp)をクローニングし
、さらにその下流に日本脳炎ウイルス北京−1株の外皮糖タンパク遺伝子cDNAを連結
したプラスミドp9u/JEVenv)を構築した。緑色蛍光タンパク質発現プラスミド
pEGFP−N1は市販のものを使用した(Clontechから入手可能)。
【0336】
pcDNA3.1Zeo+ベクターのHCMV−IEプロモーター下流にJEVenv
を連結したプラスミド(pcDNA3.1/JEVenv)を対照に構築した。緑色蛍光
タンパク質発現プラスミドpEGFP−N1は市販のもの(BD Bioscience
sから入手可能)を使用した。また、ルシフェラーゼ発現プラスミドは既に構築したもの
を用いた(pGL3−Basic;Promegaから入手可能)。
【0337】
これらプラスミドを293細胞(ヒト腎臓由来)、Vero細胞(サル腎臓由来)、S
upT1細胞(ヒトTリンパ球由来)、U937細胞(ヒト単球由来)等(これらの細胞
は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)、理化学研究所の細胞バンク
、遺伝子バンクなどから入手可能。)にリポフェクション法で導入した。細胞内での外皮
糖タンパクの発現は、抗JEVポリクローナル抗体を用いた間接蛍光抗体法、細胞抽出液
のウエスタンブロット法で検討した。
【0338】
HHV−6MIEプロモータ領域をルシフェラーゼベクターpGL3−Basic(プ
ロメガ)のホタルルシフェラーゼ遺伝子上流に挿入したプラスミドp9uを基にし、MI
Eプロモーター領域の上流からMung Bean Exonucleaseで塩基を削
ることによって短縮ミュータントを作製した。
【0339】
これらの短縮ミュータントとトランスフェクション効率補正用のウミシイタケルシフェ
ラーゼ発現プラスミド(phRL−SV40)をVero細胞に、リポフェクション法で
トランスフェクションした。トランスフェクションから24時間後に細胞を回収し、細胞
溶解液を加えた。次いでこのライセート中の、ホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケ
ルシフェラーゼの発光量を測定した。なお、トランスフェクションの効率を補正するため
に、ホタルルシフェラーゼによる発光量をウミシイタケルシフェラーゼによる発光量で除
した。
【0340】
1)細胞
プロモーター活性測定には、以下の8種類の細胞株を用いた。
【0341】
(1)Vero細胞(サル腎臓由来)
(2)HEL細胞(ヒト胎児繊維芽細胞)
(3)L929細胞(マウス繊維芽細胞由来)
(4)293細胞(ヒト腎臓由来)
(5)U373細胞(ヒトグリオーマ由来)
(6)THP−1細胞(ヒト単球由来)
(7)SupTl細胞(ヒトT細胞由来)
(8)U937細胞(ヒト単球由来)
(これらの細胞は、それぞれアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から
入手可能である。)。
【0342】
2)プロモーター活性測定用プラスミド
プロモーター活性の測定には、ホタル・ルシフェラーゼ遺伝子を持つpGL3−Bas
ic(Promega)を用いた。このプラスミドは、真核細胞のプロモーター配列とエ
ンハンサー配列を持たないため、種々の塩基配列をルシフェラーゼ遺伝子の上流に挿入し
、発現したルシフェラーゼ量を測定することにより挿入配列のプロモーター活性を測定す
ることができる。
【0343】
3)pGL3−Basicに組み込んだプロモーター配列
測定には、以下に示すように、HHV−6MIEプロモーター領域、HHV−6の前初
期遺伝子であるU95遺伝子のプロモーター領域および市販の発現ベクターに使用されて
いるHCMV MIEプロモーター領域を用いた。
【0344】
HHV−6のプロモーター領域はPCRで増幅したものをpGL3−Basicに挿入
した。
【0345】
(1)20u[HHV−6MIEプロモーター領域(139381←140624:1
243bp)を挿入したもの](配列番号5)
(2)9u[HHV−6MIEプロモーター領域(139381←140427:10
46bp)を挿入したもの](配列番号6)
(3)MIE[HHV−6MIEプロモーター領域(139457←140211:7
54bp)を挿入したもの](配列番号7)
(4)U95[HHV−6U95遺伝子のプロモーター領域(141823→1425
78:756bp)を挿入したもの](配列番号8)
(5)CMV[市販の発現ベクター(pcDNA3.1)から切り出したHCMV M
IEプロモーターを挿入したもの:750bp](配列番号9)
(6)MIE/3K[HHV−6MIEプロモーター領域(139443←14257
8:3136bp)を挿入したもの](配列番号10)
(7)U95/3K[HHV−6MIEプロモーター領域(139443→14257
8:3136bp)(を挿入したもの](配列番号11) なおコントロールとして塩基
配列を挿入していないインタクトのpGL3−Basicを用いた。
【0346】
さらに、種々の欠失改変体を作製した。これらの模式図は、図5に示す。改変体として
は、図5に示されるように、以下の物を調製した。
【0347】
(1)9u: −1051〜+1(配列番号5)
(2)9u−d2−7: −814〜+1(配列番号17)
(3)9u−d1−4: −574〜+1(配列番号18)
(4)9u−d1−5: −427〜+1(配列番号19)
(5)9u−d1−7: −350〜+1(配列番号20)
(6)9u−d3−7: −276〜+1(配列番号21)
(7)9u−d5: −240〜+1(配列番号22)
(8)9u−d6: −212〜+1(配列番号23)
(9)9u−d7: −116〜+1(配列番号24)
(10)9u−d8: −77〜+1(配列番号25)。
【0348】
4)細胞へのプラスミドのトランスフェクション
トランスフェクションは、SuperFect(QIAGEN)を用いたリポフェクシ
ョン法により行なった。
【0349】
トランスフェクション効率の補正のために、β−ガラクトシダーゼの発現プラスミド(
pCH110、Pharmacia)を同時に細胞に導入し、β−ガラクトシダーゼ活性
を測定した。pCH110は、SV40初期プロモーターの制御下に、β−ガラクトシダ
ーゼを発現する。
【0350】
pGL3construct 8μlとpCH110 0.2μlを混合し、Supe
rfect試薬8μlを加えてトランスフェクションを行なった。
【0351】
5)ルシフェラーゼ活性の測定
ルシフェラーゼ活性の測定には、Luciferase Assay System(
Promega)を用いた。
【0352】
pGL3constructおよびpCH110をco−transfectし48時
間後に細胞を回収した。PBSで2回洗浄した後、細胞溶解液150μlに溶解した。細
胞溶解液の上清20μlにルシフェラーゼ基質液100μlを添加し、30秒後にルミノ
メー夕ーで発光量を測定した。
【0353】
6)β−ガラクトシダーゼ活性の測定
β−ガラクトシダーゼ活性の測定は、β−gal reporter system(
Clontech)を使用した。ルシフェラーゼ活性測定と同様に調製した細胞溶解液の
上清20μlに発光基質液100μlを添加し、1時間後にルミノメーターで発光量を測
定した。
【0354】
7)TPAで細胞を活性化した条件下でのプロモーター活性の測定
Vero細胞とL929細胞にプラスミドをトランスフェクションし、24時間後にT
PA(25ng/ml)存在下または非存在下で、さらに24時間培養した。その後に細
胞を回収して、ルシフェラーゼおよびβ−ガラクトシダーゼの活性を測定した。
【0355】
(結果)
1)HHV−6MIE領域のプロモーター活性
HHV−6MIE領域のプロモーター活性およびHCMVMIEプロモーター活性は上
皮様の接着細胞とリンパ球系細胞で異なった挙動を示した。
【0356】
(1)接着細胞でのプロモーター活性の比較(図1)
HHV−6MIE領域のプロモーター配列は、接着細胞において、HCMVと比べると
弱いが、ある程度のプロモーター活性を示した。HHV−6の前初期遺伝子であるU95
のプロモーターには、あまり活性が認められなかった。一方、HCMV、MIEプロモー
ターは、接着細胞においてはHHV−6MIEプロモーターの約10倍から50倍の活性
を示した。特にHCMV増殖許容細胞である、HEL細胞およびU373細胞では強い活
性を示した。
【0357】
HHV−6MIE領域のプロモーター活性は、プロモーター領域の長さが、0.7kb
から1.2kbまではほぼ同じ活性を示したが、3kbの配列では活性の減少が認められ
た。
【0358】
(2)リンパ球系細胞でのプロモーター活性の比較(図2)
HHV−6の増殖許容細胞であるリンパ球系細胞では、HHV−6MIE領域はHCM
Vの約10倍のプロモーター活性を示した。特に、単球のマクロファージ系の細胞株であ
るTHP−1およびU937で強い活性を示した。HCMV MIEプロモーターはリン
パ球系細胞では、あまり強い活性を示さなかった。
【0359】
HHV−6MIE領域のプロモーター活性は、プロモーター領域が0.7kbから1.
2kbと長くなるに従って活性が増強したが、3kbの長さではプロモーター活性が低下
した。
【0360】
2)TPAで細胞を刺激した場合のHHV−6MIE領域のプロモーター活性(図3〜
4)
Vero細胞を12−O−テトラデカノイルホルボール13−アセテート(TPA)刺
激して、HHV−6MIEプロモーター活性を測定したところ、すべてのプロモーター活
性は.上昇し、HCMVMIEプロモーターとほぼ同程度の活性を示した(図3)。
【0361】
しかし、L929細胞では、TPA刺激による細胞活性化でのプロモーター活性の上昇
は、見られなかった(図4)。これは、細胞種によるTPAの反応性が異なる事によると
考えられた。
【0362】
Vero細胞では、TPAにより、種々の転写活性化因子が、多量に誘導されることに
よりHHV−6MIEプロモーター活性が上昇したと考えられた。則ち、HHV−6MI
Eプロモーターの最大活性は、HCMV MIEプロモーターとほぼ同程度であると思わ
れる。従って、本発明のプロモーターの特異性、選択性が実証された。
【0363】
このように、本発明において、Vero細胞、HEL細胞、L929細胞、293細胞
、U373細胞の付着性の細胞では、CMVプロモーターの方がHHV−6のプロモータ
ーより10倍以上強い活性を示した(図1)。しかし、THP−1細胞、SupT1細胞
、U937細胞のヒト由来リンパ球系の細胞では数倍HHV−6プロモーターの方が活性
が強く、しかも短いものの方が強い傾向が認められた(図2)。
【0364】
HHV−6の有望なプロモーターが確認でき、これらの結果からこのプロモーターは、
DNAワクチン(ムンプス(Mumps)ワクチン)に応用することができ、非常に有望
であることが理解される。
【0365】
HCMVのIEプロモーターをコントロールにして、本発明者らのクローニングしたH
HV−6BのMIEプロモーターの活性をルシフェラーゼ発現系で比較検討した。その結
果、293細胞、Vero細胞など付着性の細胞では、HHV−6MIEプロモーターは
HCMHEプロモーターの1/10程度の活性しか示さなかった。しかし、SupTIや
U937等のリンパ系細胞においては数倍高い発現効率が得られた。そこで、このプロモ
ーター下流にJEVcDNAを連結したp9u/JEVenvによるJEVの外皮糖タン
パクの発現を検索したところ、トランスフェクション48時間後の付着性細胞、浮遊リン
パ系細胞の何れにおいてもJEVタンパクの発現が検知されなかった。
【0366】
他方、HCMVのIEプロモーターを用いたpCDNA3.1/JEVenvではJE
Vタンパク質の発現が確認された。
【0367】
また、陽性対照としたJEV感染Vero細胞では、外皮糖タンパクが容易に検出され
た。原因解明のため、GFPタンパク発現プラスミドを用いてトランスフェクション効率
の確認を行った。その結果、SupT1細胞での導入効率は0.1%以下と低い値であっ
たが、付着性の293細胞とVero細胞ではそれぞれ45%、20%と高い導入効率で
あった。クローニングされたHHV−6MIEプロモーターが、リンパ系細胞でHCMV
MIEプロモーターの数倍の発現活性を示した。しかし、発現遺伝子をJEVの外皮糖
蛋白遺伝子に変換するとその活性が検出されなかった。
【0368】
クローニングされたHHV−6MIEプロモーターがリンパ系細胞でHCMV−IEプ
ロモーターの数倍の発現活性を示したことは興味深い。しかし、発現遺伝子をレポーター
遺伝子からJEVの外皮糖タンパク遺伝子に変換したときに、その活性が検出されなかっ
た点は不可解な結果であった。そこで、発現JEVタンパク質がフィードバックして、逆
にプロモーター活性が抑制されたのか、発現抗原がこれらの細胞では不安定なのか、原因
の解明に努めた。
【0369】
本実施例をまとめると以下のようになる。
【0370】
1)HHV−6MIEプロモーターは、リンパ球系細胞、特に、単球/マクロファージ
系細胞でHCMV MIEプロモーターの10倍程度の活性を示した。
【0371】
2)上皮系の接着細胞では、HHV−6MIEプロモーター活性は、HCMV MIE
プロモーター活性の約1/10であった。
【0372】
3)HHV−6MIEプロモーターは、種々の転写活性化因子が、多量に誘導された条
件下においては、HCMV、MIEプロモーターと同程度の活性を示すことが示唆された

【0373】
以上のように、本実施例では、レポータープラスミドとして、HHV−6Bの主要前初
期(MIE)遺伝子の上流約12kbp(6MIEP)とU95遺伝子の上流約700b
p(6U95Pを、pGL3Basicベクター(Promega)のルシフェラーゼ遺
伝子上流に挿入したものを用いた。従来のプロモーターと比較して、これらのIEプロモ
ーターのDNAワクチンヘの利用の可能性を検討するために、ヒトサイトメガロウイルス
(HCMV)のIEエンハンサープロモーター(CMVP)との活性の比較を、血球系細
胞を用いて行った。本実施例では、ヒトヘルペスウイルス6B(HHV−6B)がコード
する前初期(IE)プロモーターは血球系細胞において非常に高い活性を持つことを実証
した。
【0374】
4)さらに、図7に示すように、各々のフラグメントでの活性を調べたところ、少なく
とも開始点から上流の−574〜−427、特に−1051〜−427が強力なプロモー
ター活性に好ましいエンハンサー活性があることが明らかになった。−427〜+1の部
位はプロモーター活性に必要であるが、特異性を担保するためには、このエンハンサー活
性が必要であるようである。上記エンハンサー活性をになう部分には、NF−κBおよび
AP−1のモチーフがあることが明らかになった。従って、これらのモチーフを有するこ
とが、リンパ球での特異性を強めるのに役割を果たしているようである。
【0375】
(実施例2:HHV−7のMIEおよびU95プロモーター)
次に、HHV−7のプロモーターに関する実験を行った。
【0376】
HHV−7の2種類の前初期プロモーター(7MIEP、7U95P)の活性を、サイ
トメガロウイルス(CMV)プロモーターとHHV−6のIEプロモーター(9U、U9
5)の活性と比較した。比較の方法はpGL3 Basicベクター(Promega)
のルシフェラーゼ遺伝子の上流にIEプロモーター領域を挿入し、各種の細胞にトランス
フェクションしてルシフェラーゼ活性を測定することによって行った。また各プロモータ
ー上流に存在するR2領域の影響を検討するために、各々欠失変異体を作製し、プロモー
ター活性を測定した。
【0377】
(概要)
レポータープラスミドとして、HHV−7のMIEとu95遺伝子のそれぞれの上流約
500bp(7MIEPと7U95P)を、pGL3Basicベクター(Promeg
a)のルシフェラーゼ遺伝子上流に挿入したものを用いた。
【0378】
T細胞株であるJurkat、Molt-3、SupT-1と骨髄系細胞株であるSAS-413にリポフェクショ
ン法によって、また末梢血単核球(PBMC)にエレクトロポレーション法によって、レポータ
ープラスミドを導入し、ルシフェラーゼの活性を測定した。その結果、HCMVMIEプロモー
ターとの比較では、T細胞株では概ねHHV-7MIEプロモーターとHHV-7 U95プロモーターの
方が数倍高い活性を示したが、SAS-413細胞ではHCMVMIEプロモーター活性の方が10倍以上
高かった。3ロットのPBMCに導入した実験では、HHV-7MIEプロモーターおよびHHV-7 U95
プロモーターの方が活性が低かった。HHV-6のIEプロモーター(9UおよびU95)との比較では
、いずれの細胞種においてもHHV-7の両プロモーターの方が活性が低かった。またHHV-7MI
EプロモーターおよびHHV-7U95プロモーターのそれぞれの欠失変異体を用いた実験によっ
て、細胞種によって程度の差はあるもののR2領域が両プロモーターに対して主要なエンハ
ンサー活性を担っていることも明らかとなった。本実施例では、ヒトヘルペスウイルス7
(HHV-7)がコードする前初期(IE)プロモーターは血球系細胞において非常に高い活性を持
つことを実証した。
【0379】
以下に材料および方法の詳細を記載する。
【0380】
(材料および方法)
1)細胞
プロモーター活性測定には、以下の5種類の細胞を用いた。
【0381】
(1) Jurkat細胞(ヒトT細胞由来)
(2) Molt−3細胞(ヒトT細胞由来)
(3) SupT1細胞(ヒトT細胞由来)
(4) SAS−413細胞(ヒト骨髄細胞由来)
(5) 末梢血単核球(PBMC)
2) プロモーター活性測定用プラスミド
プロモーター活性の測定には、ホタルルシフェラーゼ遺伝子を持つpGL3 Basi
c(Promega)を用いた。
【0382】
3) pGL3 Basicに挿入したプロモーター配列
HHV−7 MIE遺伝子プロモーター領域(7MIEP)およびHHV−7 U95
遺伝子プロモーター領域(7U95P)の各々約500bpをPCRによって増幅し、各
々について欠失変異体を作製した。これらの模式図は図8に示す。
【0383】
(1) 7MIEP(−493)[HHV−7 MIE遺伝子の転写開始点より上流4
93bpから下流22bpまでを挿入したもの](配列番号26)
(2) 7MIEP(−388)[HHV−7 MIE遺伝子の転写開始点より上流3
88bpから下流22bpまでを挿入したもの](配列番号27)
(3) 7MIEP(−233)[HHV−7 MIE遺伝子の転写開始点より上流2
33bpから下流22bpまでを挿入したもの](配列番号28)
(4) 7U95P(−484)[HHV−7 U95遺伝子の転写開始点より上流4
84bpから下流16bpまでを挿入したもの](配列番号29)
(5) 7U95P(−379)[HHV−7 U95遺伝子の転写開始点より上流3
79bpから下流16bpまでを挿入したもの](配列番号30)
(6) 7U95P(−304)[HHV−7 U95遺伝子の転写開始点より上流3
04bpから下流16bpまでを挿入したもの](配列番号31)
なおコントロールとしてプロモーター配列を挿入していないpGL3 Basicを用
いた。
【0384】
4) 細胞へのプラスミドのトランスフェクション
トランスフェクションは、Jurkat細胞、Molt−3細胞、SupT1細胞、お
よびSAS−413細胞に対してはLipofectamine 2000(Invit
rogen)を用いたリポフェクション法により行い、PBMCに対してはNucleo
fector(amaxa)を用いたエレクトロポレーション法により行った。
【0385】
トランスフェクション効率の補正のために、ウミシイタケルシフェラーゼの発現プラス
ミド(pRL−TK、Promega)を同時に細胞に導入し、ウミシイタケルシフェラ
ーゼ活性を測定した。pRL−TKは単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(TK)
プロモーターの制御下に、ウミシイタケルシフェラーゼを発現する。
【0386】
1.2μgのpGL3レポーターと50ngのpRL−TKを混合し、2μlのLip
ofectamine 2000を加えてトランスフェクションを行った。
【0387】
5) ルシフェラーゼ活性の測定
ルシフェラーゼ活性の測定には、Dual−Luciferase Reporter
Assay System(Promega)を用いた。
【0388】
トランスフェクション後16時間後に細胞を回収し、細胞溶解液100μlに溶解した
。細胞溶解液の上清5μlにホタルルシフェラーゼ基質液25μlを添加し、直後にルミ
ノメーターで発光量を測定した。次に、測定後のサンプルにウミシイタケルシフェラーゼ
基質液25μlを添加し、直後にルミノメーターで発光量を測定した。
【0389】
(結果)
1)HHV−7 MIEプロモーター領域の活性
4種類の細胞株を用いた実験の結果、CMVプロモーターの活性と比較した場合、7M
IEP(−493)は、Molt−3細胞およびSupT1細胞では約6〜7倍高く、J
urkat細胞では同等、SAS−413細胞では約1/11の活性であった。またHH
V−6のIEプロモーター(9U、U95)と比較した場合、いずれの細胞種においても
7MIEP(−493)の方が活性が低かった。(図9)
【0390】
3ロットのPBMCを用いた実験の結果、7MIEP(−493)の活性はCMVプロ
モーターおよび9Uと同等か、やや低く、またHHV−6 U95と同等か、やや高い活
性を示した。(図10)
【0391】
2)HHV−7 U95プロモーター領域の活性
4種類の細胞株を用いた実験の結果、CMVプロモーターの活性と比較した場合、7U
95P(−484)は、Jurkat細胞で2.5倍、Molt−3細胞で4倍、Sup
T1細胞で20倍高い活性を示したが、SAS−413細胞では約1/8の活性であった
。またHHV−6のIEプロモーターと比較した場合、SupT1細胞ではU95よりも
若干高い活性を示したものの、9Uの活性の約1/2に留まり、またそれ以外の細胞でも
7U95P(−484)の方が活性が低かった。(図9)
【0392】
3ロットのPBMCを用いた実験では、7U95P(−484)は他のプロモーターの
約1/2〜1/4の活性に留まった。(図10)
【0393】
3)R2領域のプロモーター活性への影響
7MIEPおよび7U95Pの各欠失変異体を4種類の細胞株に導入して実験を行った
結果、R2の欠失によってプロモーター活性が低下するかどうかは、細胞株に依存するこ
とが明らかとなった。具体的には、7MIEPはJurkat細胞ではR2欠失による影
響を示さなかったが、それ以外の細胞株では活性が約1/5〜1/2まで減少した。また
7U95PはSAS−413細胞ではR2欠失による影響を示さなかったが、それ以外の
細胞株では活性が約1/7〜1/2まで減少した。(図11)
【0394】
(総括)
本実験例をまとめると以下のようになる。
【0395】
1) 7MIEP(−493)、7U95P(−484)ともに、T細胞株においては
概ねCMVプロモーターよりも強い活性を示したが、骨髄系細胞株であるSAS−413
細胞では逆に活性が低かった。PBMCでは、7MIEP(−493)はCMVプロモー
ターとほぼ同等の活性を示し、7U95P(−484)はCMVプロモーターより活性が
低かった。
【0396】
2) HHV−6のIEプロモーターとの比較では、いずれの細胞種においても概ねH
HV−6の2種類のIEプロモーター(9U、U95)の方が、7MIEP(−493)
および7U95P(−484)よりも高い活性を示した。
【0397】
3) R2領域は、多くの細胞で7MIEPと7U95Pに対して、エンハンサーとし
て機能していることが明らかとなった。R2領域に結合する転写因子は未同定であるが、
HHV−6のR3領域がNF−κBを結合してU95プロモーターのエンハンサーとして
機能していることを考慮すると、R2領域内に繰り返し存在するNF−κB結合モチーフ
がR2領域のエンハンサー活性を担っている可能性が高い。(図8)
【0398】
(実施例3:特異的欠失システムの構築)
血球系細胞における遺伝子発現のノックアウトをIEプロモーターおよびRNAi法を
使用して実施する。IEプロモーターは血球系細胞で発現量が非常に多いため、解析に有
利である。
【0399】
1)細胞の調製(マクロファージの場合)
健常人末梢血を採取し、Ficoll・Hypaqueを使用した密度勾配によりPB
MCを分離精製する。AIM V serum medium(Life Techno
logies)に100U/mlのM−CSF(R&D Systems)を加えて上記
PBMCを培養する。培地は、3日ごとに交換し、培養6または7日後のマクロファージ
を実験に使用する。
【0400】
2)siRNA発現レトロウイルスベクターの作製
・ヘアピン型RNAを発現させるために「センス鎖標的配列」、「ループ配列」、「アン
チセンス鎖標的配列」および「ターミネーター配列」を含む合成オリゴDNAを作製する
。このようなセンス鎖標的配列、ループ配列、アンチセンス標的配列、ターミネーター配
列は、当該分野において周知の技術を用いて実現することができる。当業者は、実際に使
用する場合は、その状況に応じて適切な配列を採用することができることが理解され得る

【0401】
IE配列下流に上記オリゴDNAを繋ぎ、レトロウイルスの複製に必要なgag、po
lおよびenvを欠失させ、Neo遺伝子を含んだプラスミドベクターに制限酵素配列
等を利用して上記DNAを組み込む。作製したプラスミドベクター10μlを100μl
のコンピテントセルに加え形質転換し、LBAmpプレートにまき37℃で16時間培養
する。形質転換により得られたコロニーをLBAmp液体培地で37℃で16時間培養し
、培養液より常法にてプラスミドを抽出精製する。
【0402】
gag、po1およびenvを発現しているレトロウイルスパッケージング細胞を直径
10cmのシャーレに播き、トランスフェクション試薬を開いて、10μgの上記プラス
ミドをトランスフェクションする。24〜48時間後、細胞をG418含有培地(500
μg/ml)に段階希釈後、継代する。
【0403】
3〜4日ごとにG418培地を交換し約2週間培養する。コロニーを回収し、6ウエル
プレートにコンフルエントに生育したところで、(G418を含まない培地に交換し、2
4時間後、上清を回収する。また、細胞はストックする。
【0404】
上清中に含まれるレトロウイルスベクターを段階希釈し、NIH/3T3細胞に感染さ
せ、生育したコロニーをカウントすることにより、感染価を算出する。
【0405】
3)レトロウイルスベクターを用いた遺伝子導入実験
1)で調製したマクロファージ等血球系細胞にレトロウイルスベクターを感染させる。
洗浄後ただちに、0.5〜2.5×10細胞/cmとなるようにプレートに播く。感
染後24時間でG418含有培地と交換し、3〜4日ごとに培地を交換する。約2週間後
、遺伝子導入細胞を得る。この細胞を使用し、目的ノックアウト遺伝子の発現量を確認す
る。
【0406】
これらの実験を行うことによって、遺伝子導入後、実際に本発明のプロモーターでのリ
ンパ球特異的外来遺伝子発現がノックアウトされることが確認される。
【0407】
(実施例4:特異的発現)
実施例3におけるRNAiに代えて発現が所望される遺伝子(例えば、TGFβなどの
サイトカイン)をコードする核酸分子を導入する。
【0408】
その結果、実施例3と同様の実験を行うことによって、遺伝子導入後、実際に本発明の
プロモーターがリンパ球特異的外来遺伝子発現を誘導することが確認される。
【0409】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は
、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明
細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に
記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきである
ことが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0410】
本発明によって、Tリンパ球などの免疫担当細胞においてタンパク質の発現を選択的に
誘導するプロモーターが提供された。本発明のプロモーターは、先天性免疫不全症候群な
どの免疫疾患を効果的に予防または治療するための方法および医薬において有用である。
本発明はまた、効率よく遺伝子治療を行うための技術においても有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0411】
(配列表の説明)
配列番号1は、HHV6BのMIEプロモーター配列である。
配列番号2は、HHV7のMIEプロモーター配列である。
配列番号3は、HHV6AのMIEプロモーター配列である。
配列番号4は、HHV6BのR3領域配列である。
配列番号5は、実施例1で使用された20uの配列である。
配列番号6は、実施例1で使用された9uの配列である。
配列番号7は、実施例1で使用されたMIEの配列である。
配列番号8は、実施例1で使用されたU95の配列である。
配列番号9は、実施例1で使用されたCMVの配列である。
配列番号10は、実施例1で使用されたMIE/3K領域の配列である。
配列番号11は、実施例1で使用されたU95/3K領域の配列である。
配列番号12は、HHV7のU95プロモーター配列である。
配列番号13は、HHV−6BのMIEの、転写開始点より−574〜−427の配列
である。
配列番号14は、HHV−6BのMIEの、転写開始点より−1051〜−427の配
列である。
配列番号15は、HHV−7のMIEの、転写開始点より+22〜−493の配列であ
る。
配列番号16は、HHV−7のU95の、転写開始点より+16〜−484の配列であ
る。
配列番号17は、実施例1で使用された9u−d2−7の配列である。
配列番号18は、実施例1で使用された9u−d1−4の配列である。
配列番号19は、実施例1で使用された9u−d1−5の配列である。
配列番号20は、実施例1で使用された9u−d1−7の配列である。
配列番号21は、実施例1で使用された9u−d3−7の配列である。
配列番号22は、実施例1で使用された9u−d5の配列である。
配列番号23は、実施例1で使用された9u−d6の配列である。
配列番号24は、実施例1で使用された9u−d7の配列である。
配列番号25は、実施例1で使用された9u−d8の配列である。
配列番号26は、実施例2で使用された7MIEP(−493)の配列である。
配列番号27は、実施例2で使用された7MIEP(−388)の配列である。
配列番号28は、実施例2で使用された7MIEP(−233)の配列である。
配列番号29は、実施例2で使用された7U95P(−484)の配列である。
配列番号30は、実施例2で使用された7U95P(−379)配列である。
配列番号31は、実施例2で使用された7U95P(−304)の配列である。
配列番号32は、実施例2で使用されたpGL3 Basicの配列である。
配列番号33は、HIV−1 gp41のRNAiの例である。
配列番号34は、HIV−1 tatのRNAiの例である。
配列番号35は、HTLV−1 taxのRNAiの例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HHV7のU95プロモーター。
【請求項2】
前記プロモーターは、配列番号12に示す配列のうち、少なくとも8の連続するヌクレ
オチド配列を含む、請求項に記載のプロモーター。
【請求項3】
前記プロモーターは、配列番号12に示す配列のうち、少なくともR2領域またはその
機能的改変体を含む、請求項に記載のプロモーター。
【請求項4】
前記プロモーターは、配列番号12に示す配列のうち、少なくとも+16〜−304の
配列を含む、請求項に記載のプロモーター。
【請求項5】
前記プロモーターは、配列番号12に示す配列のうち、少なくとも+16〜−379の
配列を含む、請求項に記載のプロモーター。
【請求項6】
前記プロモーターは、R2領域に存在するNF−κB結合モチーフを含む、請求項に記載のプロモーター。
【請求項7】
前記プロモーターは、配列番号16に示す配列を含む、請求項に記載のプロモーター。
【請求項8】
前記プロモーターは、
(a)配列番号12に記載の塩基配列もしくはそれに対応する塩基配列またはそのフラグ
メント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号12に記載の塩基配列もしくはそれに対応する塩基配列の対立遺伝子変異
体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(c)(a)〜(b)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハ
イブリダイズし、かつ、生物学的活性を有するポリヌクレオチド;または
(d)(a)〜(c)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同
一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリヌク
レオチド、
を含む、
請求項に記載のプロモーター。
【請求項9】
少なくとも10の連続するヌクレオチド長を有する、請求項に記載のプロモーター。
【請求項10】
前記生物学的活性は、プロモーター活性である、請求項に記載のプロモーター。
【請求項11】
請求項に記載のプロモーターを含む、核酸構築物。
【請求項12】
前記プロモーターとは異なる由来の外来遺伝子をコードする配列を、前記プロモーター
の配列に対して作動可能に連結されて、含む、請求項11に記載の核酸構築物。
【請求項13】
前記外来遺伝子は、RNAi分子、薬剤、欠損される劣性遺伝子、選択マーカーをコー
ドする、請求項12に記載の核酸構築物。
【請求項14】
前記選択マーカーは、前記核酸構築物が導入される宿主の培地での選択を可能にする、請求項13に記載の核酸構築物。
【請求項15】
前記選択マーカーは、前記核酸構築物が導入される宿主での視覚での選択を可能にする、請求項13に記載の核酸構築物。
【請求項16】
前記選択マーカーは、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hprt)、または緑色蛍光プロテイン(GFP)、青色蛍光プロテイン(CFP)、黄色蛍光プロテイン(YFP)および赤色蛍光プロテイン(dsRed)からなる群より選択される蛍光マーカーを含む、請求項13に記載の核酸構築物。
【請求項17】
前記選択マーカーは、前記核酸構築物が導入される宿主に対して実質的に毒性を示さない、請求項13に記載の核酸構築物。
【請求項18】
前記欠損される劣性遺伝子は、ADA遺伝子、PNP遺伝子、γc鎖遺伝子、TAP遺伝子、MHC II遺伝子、X連鎖WASP、CD40リガンド、PI3K類似遺伝子、DNAヘリカーゼからなる群より選択される、請求項13に記載の核酸構築物。
【請求項19】
前記薬剤は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、タンパク質ホルモンおよびペプチドホルモンからなる群より選択される、請求項13に記載の核酸構築物。
【請求項20】
前記プロモーターは、前記外来遺伝子の血球系細胞、特にTリンパ球での特異的発現を
誘導する、請求項12に記載の核酸構築物。
【請求項21】
請求項11に記載の核酸構築物を含む発現ベクター。
【請求項22】
請求項11に記載の核酸構築物を含む、細胞。
【請求項23】
前記細胞は、前記プロモーター配列とは異種である、請求項22に記載の細胞。
【請求項24】
請求項11に記載の核酸構築物を含む、組織。
【請求項25】
請求項11に記載の核酸構築物を含む、臓器。
【請求項26】
請求項11に記載の核酸構築物を含む、生物。
【請求項27】
請求項に記載のプロモーターおよび抗原をコードする配列を含む、薬学的組成物。
【請求項28】
DNAワクチンである、請求項27に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
リンパ球特異的な処置が所望される疾患、障害または状態を処置するための薬学的組成物であって、請求項に記載のプロモーターおよび該処置のための核酸配列を含む、薬学的組成物。
【請求項30】
前記処置のための核酸配列は、サイトカインをコードする核酸配列、ケモカインをコードする核酸配列、増殖因子をコードする核酸配列、タンパク質ホルモンをコードする核酸配列、ペプチドホルモンをコードする核酸配列、リボザイムおよびRNAiからなる群より選択される配列を含む、請求項29に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
リンパ球特異的にタンパク質を発現させる方法であって、
A)請求項に記載のプロモーターに該タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた核酸構築物を作製する工程;
B)該核酸構築物を、該プロモーターが該タンパク質をコードする核酸配列の発現を誘
導させる条件下に配置する工程、
を包含する、方法。
【請求項32】
リンパ球特異的にタンパク質を発現させるキットであって、
A)請求項に記載のプロモーターに該タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた核酸構築物;
B)該核酸構築物を、該プロモーターが該タンパク質をコードする核酸配列の発現を誘
導させる条件下に配置する手段、
を包含する、キット。
【請求項33】
リンパ球特異的にタンパク質を発現させるキットであって、
A)請求項に記載のプロモーター;および
B)該プロモーターに該タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた核酸
構築物を作製するための手段;
を包含する、キット。
【請求項34】
リンパ球特異的にタンパク質を発現させることを必要とする疾患、障害または状態を処置または予防するための方法であって、
A)請求項に記載のプロモーターに該タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた核酸構築物を作製する工程;
B)該核酸構築物を、該プロモーターが該タンパク質をコードする核酸配列の発現を誘
導させる条件下に配置する工程、
を包含する、方法。
【請求項35】
リンパ球特異的にタンパク質を発現させることを必要とする疾患、障害または状態を処置または予防するためのキットであって、
A)請求項に記載のプロモーターに該タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた核酸構築物;
B)該核酸構築物を、該プロモーターが該タンパク質をコードする核酸配列の発現を誘
導させる条件下に配置する手段、
を包含する、キット。
【請求項36】
リンパ球特異的にタンパク質を発現させることを必要とする疾患、障害または状態を処置または予防するためのキットであって、
A)請求項に記載のプロモーター;および
B)該プロモーターに該タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた核酸
構築物を作製するための手段;
を包含する、キット。
【請求項37】
タンパク質を生産する方法であって、
A)請求項に記載のプロモーターに該タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた核酸構築物を作製する工程;
B)該核酸構築物を、該プロモーターが該タンパク質をコードする核酸配列の発現を誘
導させる条件下に配置する工程、
を包含する、方法。
【請求項38】
タンパク質を生産するためのキットであって、
A)請求項に記載のプロモーターに該タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた核酸構築物;
B)該核酸構築物を、該プロモーターが該タンパク質をコードする核酸配列の発現を誘
導させる条件下に配置する手段、
を包含する、キット。
【請求項39】
タンパク質を生産するためのキットであって、
A)請求項に記載のプロモーター;および
B)該プロモーターに該タンパク質をコードする核酸配列を作動可能に連結させた核酸
構築物を作製するための手段;
を包含する、キット。
【請求項40】
請求項に記載のプロモーターの、リンパ球特異的な処置が所望される疾患、障害または状態を処置するための薬学的組成物の製造における使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−65663(P2012−65663A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248895(P2011−248895)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【分割の表示】特願2007−534434(P2007−534434)の分割
【原出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000173692)一般財団法人阪大微生物病研究会 (23)
【Fターム(参考)】