説明

リンホトキシンβ経路の遮断によるウイルス誘導性全身性ショックおよび呼吸窮迫の逆転

【課題】個体におけるウイルス誘導性全身性ショックおよび呼吸窮迫を処置するための新規の方法の提供。
【解決手段】個体における抗ウイルス応答を誘導する方法で、LT−Bブロック剤の有効量および薬学的に受容可能なキャリアを個体に投与する工程を包含する。特に、ウイルス誘導性全身性ショックおよび呼吸窮迫を処置するための方法であり、個体における抗ウイルス応答を誘導する方法であって、リンホトキシン−βのそのレセプターへの結合をブロックする薬剤の有効量および薬学的に受容可能なキャリアを該個体に投与する工程を包含する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
これは、1998年10月9日に提出された、先の米国仮出願第60/103,662号の一部の継続出願である。先に出願された仮特許出願の教示は本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、個体における抗ウイルス応答を誘導する方法に関する。特に、本発明は、個体におけるウイルス誘導性全身性ショックおよび呼吸窮迫を処置するための方法を提供する。この方法は、特定の「リンホトキシンβブロック剤」の投与を含む。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
いくつかのウイルス(シンノンブル(Sin Nombre)(SNV)、エボラ、マールブルグ、ラッサおよびデング熱を含む)はすべて、以下の症状の多くを伴う急性疾患を引き起こす;迅速な発症、発熱、全身性ショックおよび肺窮迫(非特許文献1)。これらの感染の中の別の共通性は、ウイルス感染の全身分布、内皮細胞およびマクロファージを標的としていることである(非特許文献1)。SNVを除く、これらの顕現性ウイルスのほとんどは、何十年も前に初めて同定された。これらの発見から何年もして、これらの病原が世界中で大発生して再出現してきた。1998年6月現在で、シロアシネズミ(deer mouse)集団の増加に起因して、米国南西部においてSNV(ハンタウイルス肺ショック症候群の原因因子)の確認された183の症例が存在する。これらの症例のうちわずか55%が、感染後生き残った(非特許文献2)。現在、これらのウイルスの病因も、毎年全世界でウイルス誘導性全身性ショックおよび呼吸窮迫を患う何千人もの感染患者を有効に治療する方法についてもほとんど知られていない。
【0004】
従って、個体におけるウイルス誘導性全身性ショックおよび呼吸窮迫を処置するための新規の方法を同定する必要が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Lacyら(1997)Adv.Ped.Inf.Dis.12:21
【非特許文献2】Centers for Disease Control and Prevention.MMWR.47,449(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、上記で言及される問題を、薬学的組成物および個体におけるウイルス誘導性全身性ショックおよび呼吸窮迫を処置するための方法を提供することにより解決する。
【0007】
本発明の方法および組成物は、特定の薬剤(本明細書中に、リンホトキシン−β(LT−B)ブロック剤として定義される)が個体におけるウイルス誘導性全身性ショックおよび呼吸窮迫を処置する際に使用され得るという発見を一部利用する。一つの実施態様において、LT−Bブロック剤は、リンホトキシン−βレセプター(LT−B−R)ブロック剤である。好ましい実施態様において、このLT−B−Rは、リンホトキシン−Bレセプターまたは可溶性リンホトキシン−Bレセプターに対する抗体である。最も好ましい実施態様において、LT−B−Rブロック剤は、免疫グロブリン重鎖定常ドメインと融合されたLT−B−R細胞外リガンド結合ドメインを有する組換えLT−B−R融合タンパク質である。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1) 個体における抗ウイルス応答を誘導する方法であって、該方法は、リンホトキシン−βのそのレセプターへの結合をブロックする薬剤の有効量および薬学的に受容可能なキャリアを該個体に投与する工程を包含する、方法。
(項目2) 上記薬剤がLT−β−Rブロック剤である、項目1に記載の方法。
(項目3) 上記薬剤が、リンホトキシン−βレセプターまたは可溶性リンホトキシン−βレセプターに対する抗体である、項目2に記載の方法。
(項目4) 上記薬剤が、リンホトキシン−βレセプター/Ig融合タンパク質である、項目3に記載の方法。
(項目5) 上記薬剤が、可溶性リンホトキシン−β、またはリンホトキシン−βに対する抗体である、項目1に記載の方法。
(項目6) 個体における抗ウイルス応答を誘導する方法であって、該方法はリンホトキシン−βレセプターおよび/またはHVEMシグナル伝達経路をブロックする薬剤の有効量を該個体に投与する工程を包含する、方法。
(項目7) 上記個体がシンノンブルウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサウイルスまたはデング熱ウイルスに感染する、項目1〜6に記載の方法。
(項目8) 上記薬剤がリンホトキシン−β−R/Ig融合タンパク質である項目7に記載の方法。
【0008】
本発明の前述および他の目的、特徴、局面および利点ならびに本発明それ自体が、以下の好ましい実施態様の記載からより十分に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、NZBマウスにクローン13LCMVが感染すると死に至ることを示す。LCMV−13に感染したNZBマウス(n=14)の死亡率曲線およびLCMV−13に感染したマウスの感染後6日目の種々の組織(n=7)におけるウイルス力価。
【図2−1】図2は、NZBマウスにおけるLCMV−13感染の組織学的プロフィールを示す。(A)(100×、H+E)における正常肺、(B)感染後5日目の肺における単核細胞浸潤および肺胞壁肥厚を伴う間質性肺炎(100×、H+E)、(C)脾臓におけるリンパ枯渇、細胞壊死および小胞構造の閉塞(25×、H+E)(D)脾臓における細胞壊死および核崩壊砕片(karyorrhectic debris)を示すより高倍率の図(158、H+E)、(E)肺におけるLCMV−13陽性内皮細胞(矢印)およびマクロファージ(白矢印)(100×、IHC)、(F)脾臓におけるLCMV−13陽性内皮細胞(矢印)および中皮細胞(矢じり)およびマクロファージ(白矢印)(50×、IHC)、(G)心臓におけるLCMV−13陽性内皮細胞(100×、IHC)、(H)肝臓におけるLCMV−13陽性クッパー細胞および洞様管壁細胞(100×、IHC)。
【図2−2】図2は、NZBマウスにおけるLCMV−13感染の組織学的プロフィールを示す。(A)(100×、H+E)における正常肺、(B)感染後5日目の肺における単核細胞浸潤および肺胞壁肥厚を伴う間質性肺炎(100×、H+E)、(C)脾臓におけるリンパ枯渇、細胞壊死および小胞構造の閉塞(25×、H+E)(D)脾臓における細胞壊死および核崩壊砕片(karyorrhectic debris)を示すより高倍率の図(158、H+E)、(E)肺におけるLCMV−13陽性内皮細胞(矢印)およびマクロファージ(白矢印)(100×、IHC)、(F)脾臓におけるLCMV−13陽性内皮細胞(矢印)および中皮細胞(矢じり)およびマクロファージ(白矢印)(50×、IHC)、(G)心臓におけるLCMV−13陽性内皮細胞(100×、IHC)、(H)肝臓におけるLCMV−13陽性クッパー細胞および洞様管壁細胞(100×、IHC)。
【図2−3】図2は、NZBマウスにおけるLCMV−13感染の組織学的プロフィールを示す。(A)(100×、H+E)における正常肺、(B)感染後5日目の肺における単核細胞浸潤および肺胞壁肥厚を伴う間質性肺炎(100×、H+E)、(C)脾臓におけるリンパ枯渇、細胞壊死および小胞構造の閉塞(25×、H+E)(D)脾臓における細胞壊死および核崩壊砕片(karyorrhectic debris)を示すより高倍率の図(158、H+E)、(E)肺におけるLCMV−13陽性内皮細胞(矢印)およびマクロファージ(白矢印)(100×、IHC)、(F)脾臓におけるLCMV−13陽性内皮細胞(矢印)および中皮細胞(矢じり)およびマクロファージ(白矢印)(50×、IHC)、(G)心臓におけるLCMV−13陽性内皮細胞(100×、IHC)、(H)肝臓におけるLCMV−13陽性クッパー細胞および洞様管壁細胞(100×、IHC)。
【図3】図3は、LTβRシグナル伝達経路の遮断は、クローン13感染NZBマウスの生存率を有意に改善することを示す。記載されるような処置をされたクローン13感染NZBマウスについての死亡率曲線をここに提示する。NZBマウスには2.5×106pfu Cl 13 i.v.が与えられ、次にエンドトキシンを含まないPBS(参考文献S参照)中に250μgのTN3−19.12抗体を含むi.p.注入を感染後1日目および4日目の2回行った。コントロールマウスには、同じ日に抗体を含まない同じ容量のPBSが注入された。マウスは、参考文献Rに記載されるように処置された。3重処置群に関して、TNFR55−IgおよびLTβR−Igタンパク質が感染後0および3日目に200μg量でi.p.で与えられた。コントロールマウスには、これらの融合タンパク質(AY1943−29)の合成の際に使用されるヒト抗体が同じ日に同じ量で与えられた。LTβR−Igのみを与えたマウスをTNFR55−Ig注入を省略したこと以外は、同様に処置した。データは、いくつかの実験(抗TNF(TN3−19.12)単独)、LTβR−Ig単独についてはn=16、3重処置群についてはn=10(3重処置群についてはn=10、LTβR−Ig単独についてはn=22、LTβR−Ig+TNFR55−Ig群についてはn=10、抗TNFおよびTNFR55−Ig処置群についてはn=5、抗TNF(TN3−19.12)単独についてはn=6、およびコントロールについてはn=25)からまとめられた。
【図4】図4は、LTβR経路の遮断がCD8 T細胞機能の減少を生じることを示す。異なる処置群におけるマウス由来の脾細胞を感染後6日目に収集し、以前に記載されたようにNP118 9マーペプチドを含むLdテトラマーで染色した。生じた値を非特異的バックグランド染色について調整した。同じペプチドに応答したインターフェロンγ産生をモニターするために、細胞を、最終濃度0.1μg/mlのNP118およびIL−2の存在下で37℃5時間インキュベートした。ここで生じた値をペプチドの非存在下におけるバックグランドレベルについて調整した。コントロールヒトIgで処置された3匹のマウス由来の脾細胞を、2匹のLTβR−Igマウス(LTβ#2/3)由来の脾細胞と同じようにプールした。他のすべての結果は、個々のマウス由来である。
【図5】図5は、CD4+T細胞ではなく、CD8+T細胞の枯渇がNZBマウスにおけるLCMV−13感染の致命的効果を逆転させることを示す。マウスをインビボの細胞集団の枯渇について記載されるように処置した。死亡率曲線は、処置された各々の群(n=4)について示されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
(定義)
より明確かつ簡潔に本願発明の主題を指摘するために、以下の記述および添付される特許請求の範囲において使用される特定の用語について以下の定義を提供する。
【0011】
リンホトキシン−β(LT−β)は、TNFファミリーのリガンドのメンバーであり、これはまた、Fas、CD27、CD30、CD40、OX−40および4−1BBレセプターに対するリガンドを含む(Smithら、Cell、76、959〜62頁(1994))。TNF、LT−α、LT−βおよびFas−canを含むTNFファミリーのいくつかのメンバーによるシグナル伝達は、腫瘍細胞死を壊死またはアポトーシス(プログラム細胞死)により誘導する。非腫瘍形成細胞において、TNFおよび多くのTNFファミリーリガンド−レセプター相互作用は、免疫系の発達および種々の免疫攻撃に対する応答に影響を及ぼす。
【0012】
リンホトキシン−β(p33とも呼ばれる)は、Tリンパ球、T細胞株、B細胞株、およびリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞の表面上で同定された。LT−βは、1992年1月9日にWO92/00329として公開された出願人の同時系属中の国際出願PCT/US91/04588、;および1994年6月23日にWO94/13808として公開されたPCT/US93/11669の主題であり、これらは本明細書中に参考として援用される。
【0013】
LT―βレセプター(TNFファミリーのレセプターのメンバー)は、表面のLTリガンドに特異的に結合する。LT−β−RはLTヘテロマー複合体(主に、LT−α1/β2およびLT−α2/β1)に結合するが、TNFにもLT−αにも結合しない(Croweら、Science、264、707〜10頁(1994))。LT−β−Rによるシグナル伝達は、末梢のリンパ器官の発達および体液性免疫応答において役目を果たし得る。
【0014】
LT−β−RのmRNAはヒト脾臓、胸腺および他の主要器官において見出される。LT−β−Rの発現パターンは、LT−β−Rは末梢血T細胞およびT細胞株上で欠損しているということを除いて、p55−TNF−Rについて報告される発現パターンと類似している。
【0015】
用語「LT−βブロック剤」とは、LT−βに対するリガンド結合、細胞表面LT−βクラスター形成もしくはLT−βシグナル伝達を減少させ得るか、または細胞内でLT−βシグナルがどのように解釈されるかについて影響を与え得る薬剤を言う。LT−βブロック剤の例としては、抗LT−β、可溶性LT−β−R−Fc分子、および抗LT−α、抗LT−α/βおよび抗LT−β−R Abが挙げられる。好ましくは、この抗体は、分泌形態のLT−αと交差反応しない。
【0016】
用語「LT−β−レセプターブロック剤」とは、LT−β−Rに対するリガンド結合、細胞表面LT−β−Rクラスター形成もしくはLT−β−Rシグナル伝達を減少させ得るか、または細胞内でLT−β−Rシグナルがどのように解釈されるかについて影響を与え得る薬剤を言う。LT−β−Rブロック剤の例としては、可溶性LT−β−R−Fc分子、および抗LT−β−R Abが挙げられる。好ましくは、この抗体は、分泌形態のLT−αと交差反応を起しない。
【0017】
用語「抗LT−βレセプター抗体」とは、LT−βレセプターの少なくとも一つのエピトープに特異的に結合する任意の抗体を言う。
【0018】
用語「抗LT抗体」とは、LT−α、LT−βまたはLT−α/β複合体の少なくとも一つのエピトープに特異的に結合する任意の抗体を言う。
【0019】
用語「LTリガンド」とは、LT−βレセプターに特異的に結合し得るLTヘテロマー複合体またはその誘導体を言う。
【0020】
用語「LT−β−Rシグナル伝達」とは、LT−β−R経路に関連する分子反応および引き続いてそこから生じる分子反応を言う。
【0021】
用語「LT−β−Rリガンド結合ドメイン」とは、LTリガンドの特異的認識およびLTリガンドとの相互作用に関与する、LT−β−Rの一部分を言う。
【0022】
用語「LT−α/βヘテロマー複合体」および「LTヘテロマー複合体」とは、少なくとも一つのLT−αと、一つ以上のLT−βサブユニット(一つ以上のサブユニットの可溶性形態、変異体形態、改変形態、およびキメラ形態を含む)との間の安定な会合を言う。このサブユニットは、静電的相互作用、ファンデルワールス相互作用または共有結合相互作用を介して会合し得る。好ましくは、LT−α/62ヘテロマー複合体は少なくとも2つの隣接するLT−βサブユニットを有し、そして隣接するLT−αサブユニットを欠損する。LT−α/βヘテロマー複合体が細胞増殖アッセイにおいてLT−β−R活性化薬剤として役立つ場合、この複合体は好ましくは可溶性であり、そして化学量論的な(stoichiometry)LT−α1/β2を有する。
【0023】
可溶性LT−α/62ヘテロマー複合体は、膜貫通ドメインを欠損し、そしてLT−αおよび/またはLT−βサブユニットを発現するように操作された適切な宿主細胞によって分泌され得る(Croweら、J.Immunol. Methods、168、79〜89頁(1994))。
【0024】
用語「表面LT−α/62複合体」および「表面LT複合体」とは、細胞表面上に提示される、LT−αおよび膜結合LT−βサブユニット(一つ以上のサブユニットの変異体形態、改変形態およびキメラ形態を含む)を含む複合体を言う。「表面LTリガンド」とは、LT−βレセプターと特異的に結合し得る表面LT複合体またはその誘導体を言う。
【0025】
「有効量」は、有益または所望される臨床結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与において投与され得る。本発明の目的のために、リンホトキシン−Bのレセプターへのリンホトキシン−Bの結合をブロックする薬剤の有効量は、ウイルス応答の発達を改善、安定化または遅延させるために十分な薬剤の量である。特に、ウイルス誘導性全身性ショックおよび呼吸窮迫の発達を改善、安定化または遅延させるために十分な薬剤。これらの有効性の指標の検出および測定は、当業者に公知である。
【0026】
「個体」とは、脊椎動物、特に哺乳動物種のメンバーを言い、そして飼育動物、競技用動物およびヒトを含む霊長類を含むが、これらに限定されない。
【0027】
アミノ酸残基の「機能的同等物」とは(i)機能的同等物により置換されたアミノ酸残基と類似した反応特性を有するアミノ酸;(ii)本発明のアンタゴニストのアミノ酸であり、このアミノ酸は、機能的同等物により置換されたアミノ酸残基と類似する特性を有する;(iii)機能的同等物により置換されたアミノ酸残基と類似する特性を有する非アミノ酸分子。
【0028】
本発明のタンパク質性アンタゴニストをコードする第1のポリヌクレオチドは、少なくとも一つの以下の条件を満足する場合、アンタゴニストタンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドと比較して「機能的に同等」である。
【0029】
(a):「機能的同等物」は、標準的なハイブリダイゼーション条件下で第2のポリヌクレオチドにハイブリダイズする、そして/または第1のポリヌクレオチド配列に対して縮重している第1のポリヌクレオチドである。最も好ましくは、機能的同等物は、インテグリンアンタゴニストタンパク質の活性を有する変異タンパク質をコードする。
【0030】
(b)「機能的同等物」は、第2のポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列についての発現をコードする第1のポリヌクレオチドである。
【0031】
アミノ酸残基の「機能的同等物」とは(i)機能的同等物により置換されたアミノ酸残基と類似した反応特性を有するアミノ酸;(ii)本発明のアンタゴニストのアミノ酸であり、このアミノ酸は、機能的同等物により置換されたアミノ酸残基と類似する特性を有する;(iii)機能的同等物により置換されたアミノ酸残基と類似する特性を有する非アミノ酸分子。
【0032】
本発明のタンパク質性アンタゴニストをコードする第1のポリヌクレオチドは、それが少なくとも一つの以下の条件を満足する場合、アンタゴニストタンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドと比較して「機能的に同等」である。
【0033】
(a):「機能的同等物」は、標準的なハイブリダイゼーション条件下で第2のポリヌクレオチドにハイブリダイズする、そして/または第1のポリヌクレオチド配列に対して縮重している、第1のポリヌクレオチドである。最も好ましくは、機能的同等物は、インテグリンアンタゴニストタンパク質の活性を有する変異タンパク質をコードする。
【0034】
(b)「機能的同等物」は、第2のポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列についての発現をコードする第1のポリヌクレオチドである。
【0035】
本発明において使用されるLT−Bブロック剤は、本明細書中に列挙される薬剤ならびにそれらの機能的同等物を含むが、それらに限定されない。本明細書中で使用される場合、従って、用語「機能的同等物」とは、機能的同等物であると考えられる、レシピエント(recipient)に対して、LT−Bブロック剤と同じかもしくは改善された有益な効果を有するLT−Bブロック剤またはLT−Bブロック剤をコードするポリヌクレオチドを言う。当業者において理解されるように、機能的に同等なタンパク質は、例えば、「機能的に同等なDNA」を発現させることにより、組換え技術によって産生され得る。従って、本発明は、天然に存在するDNAによりコードされるLT−Bブロック剤ならびに天然に存在するDNAによりコードされるものと同じタンパク質をコードする天然に存在しないDNAによりコードされるLT−Bブロック剤を含む。ヌクレオチドコード配列の縮重に起因して、他のポリヌクレオチドを使用して、LT−Bブロック剤をコードし得る。これらは、配列内の同じアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換により改変される上記の配列のすべてまたは一部を含み、従って、サイレントな変化を生じる。このような改変配列は、これらの配列の同等物とみなされる。例えば、Phe(F)は、2つのコドン(TTCまたはTTT)によりコードされており、Tyr(Y)は、TACまたはTATによりコードされており、そしてHis(H)は、CACまたはCATによりコードされる。他方、Trp(W)は、一つのコドン(TGG)によりコードされる。従って、特定のインテグリンをコードする所定のDNA配列に対して、そのインテグリンをコードする多くのDNA縮重配列が存在することが理解される。これらの縮重DNA配列は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0036】
用語「融合物」または「融合タンパクシ質」とは、同一線上に並んだ(co−liner)、個々のペプチド骨格を介して、最も好ましくは2つ以上のタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子の遺伝子発現を介した、2つ以上のタンパク質またはそのフラグメントの共有結合物を言う。このタンパク質またはそのフラグメントは異なる供給源由来であることが好ましく、ゆえにこの型の融合タンパク質は「キメラ」分子と呼ばれる。従って、好ましい融合タンパク質は、LT−Bブロック剤ではない第2の部分と共有結合したLT−Bブロック剤またはフラグメントを含むキメラタンパク質である。本発明の好ましい融合タンパク質は、抗原結合特異性を保持するインタクトな抗体の部分を含み得、例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、F(v)フラグメント、重鎖の単量体または二量体、軽鎖の単量体または二量体、一つの重鎖および一つの軽鎖からなる二量体、などが挙げられる。
【0037】
最も好ましい融合タンパク質は、キメラタンパク質であり、そして免疫グロブリン軽鎖、重鎖、またはその両方のヒンジ領域および定常領域の全てまたは一部分に融合したか、またはそうでなければそれと連結したLT−Bブロック剤部分を含む。従って、本発明は、以下を含む分子を特徴とする:(1)LT−Bブロック剤部分、(2)第2のペプチド(例えば、LT−Bブロック剤部分の可溶性またはインビボ寿命を増加させるもの、例えば、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーまたはそのフラグメントもしくは一部分、例えば、IgGの一部分もしくはフラグメント、例えば、ヒトIgG重鎖定常領域(例えば、CH2、CH3、およびヒンジ領域))。具体的には、「LT−BまたはLT−B−R/Ig融合物」は本発明の生物学的に活性なLT−Bブロックを含むタンパク質である(例えば、可溶性LT−B−R)か、または免疫グロブリンのN末端の一部がLT−Bブロック剤と置き換わっている免疫グロブリン鎖のN末端に連結したその生物学的に活性なフラグメントである。LT−BまたはLT−B−R/Ig融合物の種は、「LT−B−R/Fc融合物」であり、これは、免疫グロブリンの定常ドメインの少なくとも一部分に連結された、本発明のLT−B−Rを含むタンパク質である。好ましいFc融合物は、免疫グロブリン重鎖のC末端ドメインを含む抗体のフラグメントに連結された、本発明のLT−Bブロック剤を含む。
【0038】
「標準的なハイブリダイゼーション条件」−塩および温度条件は、0.5×SSC〜約5×SSCおよび65℃(ハイブリダイゼーションおよび洗浄の両方について)に実質的に等価にする。従って、本明細書中で使用される場合、用語「標準的なハイブリダイゼーション条件」は、操作上の規定であり、そしてハイブリダイゼーション条件の範囲を含む。より高いストリンジェンシー条件は、例えば、プラークスクリーン緩衝液(0.2% ポリビニルピロリドン、0.2% Ficoll 400;0.2%ウシ血清アルブミン、50mM Tris−HCl(pH7.5);1M NaCl;0.1% リン酸ナトリウム;1% SDS);10% 硫酸デキストラン、および100μg/ml 変性超音波処理サケ精子DNAと、65℃で12〜20時間、ハイブリダイゼーションする工程、および75mM NaCl/7.5mM クエン酸ナトリウム(0.5×SSC)/1% SDSで、65℃で洗浄する工程を包含し得る。より低いストリンジェンシー条件は、例えば、プラークスクリーン緩衝液、10% 硫酸デキストランおよび110μg/ml 変性超音波処理サケ精子DNAと、55℃で12〜20時間ハイブリダイゼーションする工程、および300mM NaCl/30mM クエン酸ナトリウム(2.0×SSC)/1% SDSで55℃で洗浄する工程を包含し得る。Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.,New York,6.3.1〜6.3.6節(1989)もまた参照のこと。
【0039】
「治療的組成物」は、本明細書中で使用される場合、本発明のタンパク質および他の生物学的に適合性の成分を含むと規定される。この治療的組成物は、賦形剤(例えば、水、鉱物およびタンパク質のようなキャリア)を含み得る。
【0040】
(II.好適な実施態様の説明)
本発明は、LT−Bブロック剤が個体において抗ウイルス応答を誘発し得るという発見に一部依存する。ウイルスに感染した個体を処置することは、個体の生存率を大きく増大させ得ることが見出された。具体的には、LCMV−13に感染したNZBマウスをLT−Bブロック剤(例えば、LTβR−Ig融合タンパク質)で処置することは、彼らの生存率を73%増大させることが示された。
【0041】
本明細書中で言及される、エボラ、デング熱、SNVおよび他のウイルスについての現在の処置は、疾患の伝播に関して、教育を介して予防されている。これらの非常に病原性のウイルスに対するワクチンは、存在しない。リバビリン(グアニジンアナログ)は、これらの感染のいくつかに対する一般的抗ウイルス薬物として使用されてきたが、再生可能な成功は、その疾患に対して初期に使用された場合に、ラッサ熱の処置において記載されたにすぎなかった(M.D.LacyおよびR.A.Smego,Adv.Ped.Inf.Dis.12,21(1997))。本発明者らのデータは、これらのウイルスに関連する病理のいくつかが、免疫媒介性であり得ることを示す。LT系の遮断は、ウイルス特異的CD8+T細胞数およびその機能性を一時的に低減させることによって、生存の機会を大きく増大させ得る。TNFα経路を遮断するいくつかの手段を用いる臨床試験は、いくつかの病気の処置のために既に施行されている(H.I.Pass,D.Mew.H.A.Passら、Chest Surg.Clin.N.Amer.5:73(1995))。本発明者らは、LTβR−Ig処置が、急性の、急速に進行するウイルス感染(ショックおよび/または肺窮迫を含む)を有する患者を含むヒト治験において実際に使用するために、動物モデルにおいてさらに試験することについて考慮されるべきであると考える。
【0042】
(LT−Bブロック剤)
本発明の1つの実施態様において、LT−βブロック剤は、LT−βシグナル伝達を阻害するLT−βに対する抗体(Ab)を含む。好ましくは、抗LT−β−R Abは、モノクローナル抗体(mAb)である。阻害性抗LT−β Abおよび他のLT−βブロック剤は、1つ以上の薬剤が、LTリガンドに結合する能力、または細胞に対するLT−βシグナル伝達の効果を阻害する能力を検出するスクリーニング方法を用いて同定され得る。
【0043】
本発明の別の実施態様において、LT−βブロック剤は、LT−βレセプター(LT−B−R)ブロック剤を含む。好ましい実施態様において、LT−B−Rブロック剤は、LT−β−Rシグナル伝達を阻害するLT−β−Rに対する抗体(Ab)である。好ましくは、抗LT−β−R Abは、モノクローナル抗体(mAb)である。1つのこのような阻害性の抗LT−β−RmAbは、BDA8 mAbである。阻害性の抗LT−β−RAbおよび他のLT−β−Rブロック剤は、1つ以上の薬剤が、LT−β−RもしくはLTリガンドに結合するか、または細胞に対するLT−β−Rシグナル伝達の効果を阻害するかのいずれかの能力を検出するスクリーニング法を用いて同定され得る。
【0044】
1つのスクリーニング法は、LT−β−Rを有する腫瘍細胞に対するLT−β−Rシグナル伝達の細胞傷害性効果を利用する。腫瘍細胞を1つ以上のLT−β−R活性化薬剤に曝露して、LT−β−Rシグナル伝達を誘導する。LT−β−R活性化薬剤としては、IFN−γの存在下でのLT−α/62ヘテロマー複合体(好ましくは、可溶性LT−α1/β2)、または抗LT−β−R Abを活性化する薬剤が挙げられる(以下を参照のこと;出願人らの同時係属中の米国特許出願第08/378,968号にも記載される)。
【0045】
LT−β−Rシグナル伝達を遮断し得る抗体および他の薬剤は、以下のアッセイにおいて腫瘍細胞に対するLT−β−Rシグナル伝達の細胞傷害性効果を阻害するそれらの能力に基づいて選択される:
1)腫瘍細胞(例えば、HT29細胞)を、培地、および試験される薬剤の段階希釈物の存在下または非存在下で少なくとも1つのLT−β−R活性化薬剤を含む一連の組織培養ウェルにおいて3〜4日間培養する;
2)MTTのようなミトコンドリア機能を測定する生存色素(vital dye)染色を腫瘍細胞混合物に添加し、そして数時間反応させる;
3)各ウェルにおける混合物の光学密度を550nm波長の光(OD550)で定量する。OD550は、LT−β−R活性化薬剤および各ウェルにおける試験LT−β−Rブロック剤の存在下で残存する腫瘍細胞の数と比例する。LT−β−R活性化腫瘍細胞の細胞傷害性をこのアッセイにおいて少なくとも20%低減し得る薬剤または薬剤の組み合わせは、本発明の範囲内のLT−β−Rブロック剤である。
【0046】
LT−β−Rシグナル伝達を活性化する薬剤または薬剤の組み合わせを上記のアッセイにおいて使用して、LT−β−Rブロック剤を同定し得る。LT−β−Rシグナル伝達を誘導するLT−β−R活性化薬剤(例えば、抗LT−β−R mAbを活性化する)は、それらの能力単独、または上記の腫瘍細胞アッセイを用いて腫瘍細胞の細胞傷害性を増強する他の薬剤との組み合わせに基づいて選択され得る。
【0047】
LT−β−Rブロック剤を選択する別の方法は、推定薬剤がLTリガンド−レセプター結合を直接妨害する能力をモニターすることである。リガンド−レセプター結合を少なくとも20%遮断し得る薬剤または薬剤の組み合わせは、本発明の範囲内のLT−β−Rブロック剤である。
【0048】
リガンド−レセプター結合の強度を測定する、任意の多くのアッセイを用いて、推定LT−β−Rブロック剤を用いる競合アッセイを行い得る。レセプターとリガンドとの間の結合の強度は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA)を用いて測定され得る。特異的結合はまた、抗体−抗原複合体を蛍光標識すること、および蛍光活性化セルソーティング(FACS)分析を行うことにより、または他のこのような免疫検出法を行うことにより測定され得る。これらの全ては、当該分野で周知の技術である。
【0049】
リガンド−レセプター結合相互作用はまた、プラスモン共鳴検出(Zhouら、Biochemistry,32,8193〜98頁(1993);FaegerstramおよびO’Shannessy,「Surface plasmon resonance detection in affinity technologies」Handbook of Affnity Chromatography,229〜52頁,Marcel Dekker,Inc.,New York(1993))を利用するBIAcoreTM機器(Pharmacia Biosensor)で測定され得る。
【0050】
BIAcoreTM技術は、金表面にレセプターを結合させ、そしてそれに対してリガンドを流動させることを可能にする。プラスモン共鳴検出は、リアルタイムで表面に結合した質量の直接的定量を与える。この技術は、オン速度およびオフ速度両方の定数をもたらし、従って、推定LT−β−Rブロック剤の存在下および非存在下で、リガンド−レセプター解離定数および親和性定数が直接決定され得る。
【0051】
レセプター−リガンド相互作用を測定するための任意のこれらの技術または他の技術を用いると、LT−β−Rブロック剤が、単独でまたは他の薬剤との組み合わせで、表面もしくは可溶性のLTリガンドの、表面もしくは可溶性LT−β−R分子への結合を阻害する能力を評価し得る。やはりこのようなアッセイを用いて、LT−β−Rブロック剤またはこのような薬剤の誘導体(例えば、融合物、キメラ、変異体、および化学的に改変された形態)を、単独で、またはその改変された薬剤がLT−β−R活性化を遮断する能力を最適化する組み合わせで試験し得る。
【0052】
LT−β−Rブロック剤は、本発明の1つの実施態様において、可溶性LT−βレセプター分子を含む。ヒトLT−β−Rの細胞外部分の配列(リガンド結合ドメインをコードする)は、米国特許第5,925,351号(本明細書中に参考として援用される)の図1に示される。米国特許第5,925,351号の図1における配列情報および当該分野で周知の組換えDNA技術を用いて、LT−β−Rリガンド結合ドメインをコードする機能的フラグメントをベクターにクローニングし得、そして適切な宿主において発現させて、可溶性LT−β−R分子を生成し得る。本明細書中に記載されるアッセイに従うLTリガンド結合についてネイティブなLT−βレセプターと競合し得る可溶性LT−β−R分子は、LT−β−Rブロック剤として選択される。
【0053】
米国特許第5,925,351号の図1に示される配列から選択されたアミノ酸配列を含む可溶性LT−βレセプターは、レセプター融合タンパク質のインビボ安定性を増大させるか、またはその生物学的活性もしくは位置を調節するために1つ以上の異種タンパク質ドメイン(融合ドメイン)に結合され得る。好ましくは、安定な血漿タンパク質(これは、代表的には、循環中で20時間を超える半減期を有する)を用いて、レセプター融合タンパク質を構築する。このような血漿タンパク質としては、以下が挙げられるが、それらに限定されない:免疫グロブリン、血清アルブミン、リポタンパク質、アポリポタンパク質およびトランスフェリン。可溶性LT−β−R分子を特定の細胞もしくは組織型に標的化し得る配列はまた、LT−β−Rリガンド結合ドメインに結合して、具体的に位置決定された可溶性LT−β−R融合タンパク質を作製し得る。LT−β−Rリガンド結合ドメインを含むLT−β−R細胞外領域の全てまたは機能的部分(米国特許第5,925,351号の図1)は、ヒトIgG1重鎖のFcドメインのような免疫グロブリン定常領域に融合され得る(Browningら、J.Immunol.154,33〜46頁(1995))。可溶性レセプター−IgG融合タンパク質は、一般的な免疫試薬であり、そしてそれらの構築方法は、当該分野で公知である(例えば、米国特許第5,225,538号を参照のこと)。機能的LT−β−Rリガンド結合ドメインは、IgG1以外の免疫グロブリンクラスまたはサブクラスに由来する免疫グロブリン(Ig)Fcドメインに融合され得る。異なるIgクラスまたはサブクラスに属する抗体のFcドメインは、異なる二次的エフェクター機能を活性化し得る。このFcドメインがコグネイトFcレセプターによって結合される場合に活性化が生じる。二次的エフェクター機能としては、補体系を活性化する能力、胎盤を横切る能力および種々の微生物タンパク質を結合する能力が挙げられる。免疫グロブリンの種々のクラスおよびサブクラスの特性は、Roittら、Immunology,4.8頁(Mosby−Year Book Europe Ltd.,第3版、1993)に記載される。補体酵素カスケードは、抗原結合IgG1、IgG3およびIgM抗体のFcドメインにより活性化され得る。IgG2のFcドメインは、あまり効果的でないようであり、そしてIgG4、IgA、IgDおよびIgEのFcドメインは、補体を活性化するには非効率的である。従って、その関連する二次的エフェクター機能が特定の免疫応答またはLT−β−R Fc融合タンパク質で処置される疾患のために所望されるか否かに基づいてFcドメインを選択し得る。LT−リガンド保有標的細胞を傷つけるかまたは殺傷するために有利であれば、LT−β−R−Fc融合タンパク質を作製するために特に活性なFcドメイン(IgG1)を選択し得る。あるいは、LT−β−R−Fc融合物を補体系を誘発することなく細胞に標的化することが所望される場合、不活性IgG4 Fcドメインが選択され得る。
【0054】
Fcレセプターへの結合および補体活性化を低減または排除するFcドメインにおける変異が記載された(S.Morrison,Annu.Rev.Immunol.,10,239−65頁(1992))。これらのまたは他の変異を単独でまたは組み合わせで使用して、LT−β−R−Fc融合タンパク質を構築するために使用されるFcドメインの活性を最適化し得る。
【0055】
ヒト免疫グロブリンFcドメインに融合されたリガンド結合配列を含む可溶性のヒトLT−β−R融合タンパク質(hLT−β−R−Fc)の生成は、米国特許第5,925,351号(本明細書中に参考として援用される)の実施例1に記載される。hLT−β−R−Fcを分泌する、実施例1に従って作製された1つのCHO株は、「hLT−β;R−hG1 CHO#14」とよばれる。この株のサンプルは、ブタペスト条約の規定に従って、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(Rockville,Md.)に1995年7月21日に寄託され、そしてATCC受託番号CRL11965を割り当てられた。
【0056】
可溶性のマウスLT−β−R融合分子(mLT−β−R−Fc)は、米国特許第5,925,351号(本明細書中に参考として援用される)の実施例2に記載される。mLT−β−R−Fcを分泌する、米国特許第5,925,351号の実施例2に従って作製されたCHO株は、「mLTβ;R−hG1 CHO#1.3.BB」とよばれる。この株のサンプルは、ブタペスト条約の規定に従って、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(Rockville,Md.)に1995年7月21日に寄託され、そしてATCC受託番号CRL11964を割り当てられた。
【0057】
レセプター−Ig融合タンパク質の接合点を形成する異なるアミノ酸残基は、可溶性LT−βレセプター融合タンパク質の構造、安定性および最終的な生物学的活性を変更させ得る。1つ以上のアミノ酸は、選択されたLT−β−RフラグメントのC末端に付加されて、選択された融合ドメインを有する接合点を改変し得る。
【0058】
LT−β−R融合タンパク質のN末端はまた、選択されたLT−β−R DNAフラグメントが組換え発現ベクターへの挿入のためにその5’末端で切断される位置を変更することにより変化され得る。各LT−β−R融合タンパク質の安定性および活性は、慣用的な実験法および本明細書中に記載のLT−β−Rブロック剤を選択するためのアッセイを用いて試験され得、そして最適化され得る。
【0059】
図1に示される細胞外ドメイン内のLT−β−Rリガンド結合ドメイン配列を使用すると、アミノ酸配列改変体がまた構築されて、LTリガンドに対する可溶性LT−βレセプターまたは融合タンパク質の親和性を改変し得る。本発明の可溶性LT−β−R分子は、表面LTリガンド結合に関して、内因性細胞表面LT−βレセプターと競合し得る。LTリガンド結合に関して細胞表面LT−βレセプターと競合し得るLT−β−Rリガンド結合ドメインを含む任意の可溶性分子は、本発明の範囲内に入るLT−β−Rブロック剤であると想定される。
【0060】
本発明の別の実施態様において、ヒトLT−βレセプターに対する抗体(抗LT−β−R Ab)は、個体(ヒトを含む)をウイルス誘導性全身性ショックおよび呼吸窮迫にあるか、またはその危険に置く状態を処置する際における使用のためのLT−β−Rブロック剤として機能する。本発明の抗LT−β−R Abは、ポリクローナルであっても、またはモノクローナル(mAb)であってもよく、そしてLT−β−Rシグナル伝達を遮断する能力、インビボでのそれらのバイオアベイラビリティー、安定性または他の所望の形質を最適化するように改変され得る。
【0061】
ヒトLT−βレセプターに対するポリクローナル抗体血清は、ヤギ、ウサギ、ラット、ハムスターまたはマウスのような動物に、完全フロイントアジュバント中のヒトLT−βレセプター−Fc融合タンパク質(米国特許第5,925,351号の実施例1)を皮下注射し、次いで、不完全フロイントアジュバント中で腹腔内または皮下でブースター注射することによる従来の技術を用いて調製される。LT−βレセプターに対する所望の抗体を含むポリクローナル抗血清は、従来の免疫学的手順によってスクリーニングされる。
【0062】
ヒトLT−βレセプター−Fc融合タンパク質に対するマウスモノクローナル抗体(mAb)は、米国特許第5,925,351号の実施例5に記載されるように調製される。マウス抗ヒトLT−β−R mAb BDA8を生成するハイブリドーマ細胞株(BD.A8.AB9)は、ブタペスト条約の規定に従ってアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(10801 University Boulevard,Manassas,Va.20110−2209)に、1995年1月12日に寄託し、そしてATCC受託番号HB11798を割り当てられた。
【0063】
抗LT−β−R抗体の種々の形態はまた、標準的な組換えDNA技術(WinterおよびMilstein,Nature,349,293〜99頁(1991))を用いて作製され得る。例えば、「キメラ」抗体が構築され得、ここでは、動物の抗体由来の抗原結合ドメインがヒト定常ドメインに連結される(例えば、Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,81,6851〜55頁(1984))。キメラ抗体は、ヒトの臨床処置において使用される場合に動物抗体により誘発される、観察される免疫原性応答を低減する。さらに、LT−β−Rを認識する組換え「ヒト化抗体」が合成され得る。ヒト化抗体は、大部分のヒトIgG配列を含むキメラであり、そこに、特異的抗原結合を担う領域が挿入される(例えば、WO94/04679)。動物を所望の抗原で免疫し、対応する抗体を単離し、そして特異的抗原結合を担う可変領域配列の一部を取り出す。次いで、動物由来の抗原結合領域をヒト抗体遺伝子の適切な位置にクローニングし、ここで、この抗原結合領域が欠失される。ヒト化抗体は、ヒト抗体中の異種(種間)配列の使用を最小にし、そして処置される被験体における免疫応答を惹起する可能性が低い。
【0064】
異なるクラスの組換え抗LT−β−R抗体の構築はまた、抗LT−β−R可変ドメインおよび異なるクラスの免疫グロブリンから単離されたヒト定常ドメイン(CH1、CH2、CH3)を含むキメラ抗体またはヒト化抗体を作製することによって達成され得る。例えば、増大した抗原結合部位結合価を有する抗LT−β−R IgM抗体は、ヒトμ鎖定常領域を有するベクターに抗原結合部位をクローニングすることにより組換え的に生成され得る(Arulanandamら、J.Exp.Med.,177,1439〜50頁(1993);Laneら、Eur.J.Immunol.,22,2573〜78頁(1993);Trauneckerら、Nature,339,68〜70頁(1989))。さらに、標準的な組換えDNA技術を用いて、抗原結合部位の付近のアミノ酸残基を改変することにより、組換え抗体とそれらの抗原との結合親和性を改変し得る。ヒト化抗体の抗原結合親和性は、分子モデリングに基づいた変異誘発により増大され得る(Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,86,10029〜33頁(1989);WO94/04679)。
【0065】
標的とされる組織型または想定される特定の処置スケジュールに依存して、LT−β−Rに対する抗LT−β−R Abの親和性を増大または減少させることが所望され得る。例えば、半予防的な処置のためにLT−β経路を介してシグナル伝達する低減した能力を有する、一定レベルの抗LT−β−R Abで患者を処置することは有利であり得る。同様に、LT−β−Rに対する増大した親和性を有する阻害性の抗LT−β−R Abは、短期間の処置に関して有利であり得る。
【0066】
ヒトLT−βレセプターに対する他の抗体を試験することにより、ヒトにおいてLT−β−Rブロック剤として機能する、さらなる抗LT−β−R抗体が、個体(ヒトを含む)をウイルス誘導性全身性ショックおよび呼吸窮迫にさせるか、またはその危険に置く状態を処置するために、本明細書中に記載の従来の実験法およびアッセイを用いて同定され得ることを予測する。
【0067】
本発明の別の好ましい実施態様は、LT−β−Rブロック剤として機能するLTリガンドに対する抗体を含む組成物および方法を包含する。抗LT−β−R Abに関して上記で記載されるように、LT−β−Rブロック剤として機能する抗LTリガンド抗体は、ポリクローナルであっても、またはモノクローナルであってもよく、そしてそれらの抗原結合特性およびそれらの免疫原性を調節するために慣用的な手順に従って改変され得る。本発明の抗LT抗体は、2つのLTサブユニット個々の内のいずれか一方に対して惹起され得、これらのLTサブユニットとしては、可溶性形態、変異形態、改変形態およびキメラ形態のLTサブユニットが挙げられる。LTサブユニットが抗原として使用される場合、好ましくは、それらは、LT−βサブユニットである。LT−αサブユニットが使用される場合、(米国特許第5,925,351号の実施例3に記載されるアッセイに従って)得られる抗LT−α抗体が表面LTリガンドに結合し、そして分泌されたLT−αと交差反応もせず、TNF−R活性を調節もしないことが好ましい。
【0068】
あるいは、1つ以上のLTサブユニットを含む、ホモマー(LT−β)またはヘテロマー(LT−α/62)複合体に対する抗体が惹起され得、そしてLT−β−Rブロック剤としての活性についてスクリーニングされ得る。好ましくは、LT−α1/β2複合体を抗原として用いる。上記で議論されるように、得られる抗LT−α1/β2抗体が、分泌されたLT−αに結合することなく、かつTNF−R活性に影響を及ぼすことなく表面LTリガンドに結合することが好ましい。
【0069】
ポリクローナル抗ヒトLTα抗体の産生は、出願人らの同時係属中の出願(WO94/13808)において記載される。モノクローナル抗LTα抗体およびモノクローナル抗LTβ抗体もまた、記載される(Browningら、J.Immmunol.,54,33〜46頁(1995))。マウス抗ヒトLTβmAbは、米国特許第5,925,351号の実施例6に記載されるように調製された。マウス抗ヒトLTβ−R mAb B9を産生するハイブリドーマ細胞株(B9.C9.1)は、ブダペスト条約の規定に従って、1995年7月21日にAmerican Type Culture Collection(ATCC)(10801 University Boulevard,Manassas,Va.20110−2209)に寄託され、ATCC受託番号11962を割り当てられた。
【0070】
モノクローナルハムスター抗マウスLTα/62抗体は、米国特許第5,925,351号の実施例7に記載されるように調製された。ハムスター抗マウスLTα/62 mAb BB.F6を産生するハイブリドーマ細胞株(BB.F6.1)は、ブダペスト条約の規定に従って、1995年7月21日にAmerican Type Culture Collection(ATCC)(10801 University Boulevard,Manassas,Va.20110−2209)に寄託され、ATCC受託番号MB11963を割り当てられた。
【0071】
蛍光活性化細胞選別(FACS)アッセイが、米国特許第5,925,351号の実施例6および7において記載されるように、LTβ−Rブロック剤として作用し得るLTサブユニットおよびLT複合体に対して指向される抗体についてスクリーニングするために開発された。このアッセイにおいて、可溶性のヒトLTβ−R−Fc融合タンパク質は、試験抗体の増加量の存在下で表面LT複合体(Browningら、J.Immunol.154,33〜46頁(1995))を発現する、PMA活性化II−23細胞に添加される。LTβレセプター−リガンド相互作用を少なくとも20%阻害し得る抗体は、LTβ−Rブロック剤として選択される。
【0072】
動物を免疫するための抗原としてLTサブユニットではなくLTα/β複合体を使用することは、より効率的な免疫をもたらし得るか、または表面LTリガンドについてのより高い親和性を有する抗体を生じ得る。LTα/62複合体を用いる免疫によって、LTαサブユニットおよびLTβサブユニットの両方上のアミノ酸残基(例えば、LTα/62間隙を形成する残基)を認識する抗体が単離される得るということが考えられる。ヒトLTα/62ヘテロマー複合体に対して指向される抗体を試験することによって、ヒトにおいてLTβ−Rブロック剤として機能するさらなる抗LT抗体が、慣用的な実験および本明細書中に記載されるアッセイを使用して同定され得る。
【0073】
(投与) 本明細書中に記載される組成物は、個体におけるウイルス誘導性全身性ショックおよび呼吸窮迫を処置するための方法において有効用量で投与される。好ましい薬学的処方物および所定の適用のための治療的に有効な用量レジメの決定は、例えば、患者の状態および体重、所望の処置の程度、および処置についての患者の耐性を考慮に入れて、十分に当業者の範囲内である。可溶性LTβ−Rの約1mg/kgの用量が、最適の処置用量のための適切な開始点であると予想される。
【0074】
治療的に有効な用量の決定はまた、標的細胞(ブロック剤に依存してLTβ−RまたはLTリガンド陽性細胞)を1〜14日間コートするのに必要なLTβ−Rブロック剤の濃度を測定するインビトロ実験を実行することによって評価され得る。本明細書中に記載されるレセプター−リガンド結合アッセイが使用されて、細胞コート反応をモニターし得る。LTβ−RまたはLTリガンド陽性細胞は、FACSを使用して活性化されたリンパ球集団から分離され得る。これらのインビトロ結合アッセイの結果に基づいて、適切なLTβ−Rブロック剤濃度の範囲は、本明細書中に記載されるアッセイに従って、動物において試験されるために選択され得る。
【0075】
本発明の可溶性LTβ−R分子、抗LTリガンド、および抗LTβ−R Abの投与(単独でまたは組み合わせて、抗体もしくは複合体の単離されそして精製された形態、それらの塩またはその薬学的に受容可能な誘導体を含む)は、免疫抑制活性を示す薬剤の、従来的に受容されてきた投与の様式のいずれかを使用して達成され得る。
【0076】
これらの療法において使用される薬学的組成物はまた、種々の形態にあり得る。これらには、例えば、錠剤、丸剤、散剤、液体溶液もしくは懸濁剤、坐剤、ならびに注射可能な溶液および注入可能な溶液のような、固体、半固体、および液体投与量形態が含まれる。好ましい形態は、意図される投与の様式および治療的適用に依存する。
【0077】
投与の様式は、経口、非経口、皮下、静脈内、病変内、または局所的投与を含み得る。本発明の可溶性LTβ−R分子、抗LTリガンド、および抗LTβ−R Abは、例えば、取り込みまたは安定性を刺激する補因子を伴うかまたは伴わない、滅菌の、等張性処方物中に配置され得る。その処方物は、好ましくは液体であるか、または凍結乾燥した粉末であり得る。例えば、本発明の可溶性LTβ−R分子、抗LTリガンド、および抗LTβ−R Abは、5.0mg/ml クエン酸一水和物、2.7mg/ml クエン酸三ナトリウム、41mg/ml マンニトール、1mg/ml グリシン、および1mg/ml ポリソルベート20を含む処方緩衝液を用いて希釈され得る。この溶液は、凍結乾燥され、冷蔵下で保存され、そして滅菌Water−For−Injection(USP)を用いて、投与の前に再構築され得る。
【0078】
この組成物はまた、好ましくは、当該分野で周知の従来的な薬学的に受容可能なキャリアを含む(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、1980、Mac Publishing Companyを参照のこと)。このような薬学的に受容可能なキャリアは、他の医薬的薬剤、キャリア、遺伝子キャリア、アジュバント、賦形剤など(例えば、ヒト血清アルブミンまたは血漿調製物)を含み得る。この組成物は、好ましくは、単位用量の形態にあり、そして通常1日に1回以上投与される。
【0079】
本発明の薬学的組成物はまた、罹患した組織または血流中に配置されるか、その近くに配置されるか、またはさもなくばそれと連絡するように配置される、ミクロスフェア、リポソーム、他の微小粒子送達系、または徐放性処方物を使用して投与され得る。徐放性キャリアの適切な例には、成型品(例えば、坐剤または微小カプセル)の形態にある半透性のポリマーマトリックスが含まれる。移植可能なまたは微小カプセルの徐放性マトリックスには、ポリアクチド(米国特許第3,773,319号;EP58,481)、L−グルタミン酸およびエチル−L−グルタミン酸のコポリマー(Sidmanら、Biopolymers,22,547〜56頁(1985);ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはエチレンビニルアセテート(Langerら、J.Biomed.Mater.Res.,15,167−277頁(1981);Langer,Chem.Tech.,12,98〜105頁(1982)))が含まれる。
【0080】
本発明の可溶性LTβ−R分子、抗LTリガンド、および抗LTβ−R Abを含むリポソームは、単独でまたは組み合わせて、周知の方法によって調製され得る(例えば、DE3,218,121;Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,82,3688〜92頁(1985);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,77,4030〜34頁(1980);米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号を参照のこと)。通常、リポソームは小さな(約200〜800Å)単層型のものであり、ここで脂質含量は、約30モル%コレステロールより多い。コレステロールの比率は、可溶性のLTβ−R分子、抗LTリガンド、および抗LTβ−R Ab放出の最適な割合を制御するために選択される。
【0081】
本発明の可溶性LTβ−R分子、抗LTリガンド、および抗LTβ−R Abはまた、LTβ−Rブロッキング活性を調節するために、他のLTβ−Rブロック剤、免疫抑制剤、またはサイトカインを含むリポソームに結合され得る。LTβ−R分子、抗LTリガンド、および抗LTβ−R Abのリポソームへの結合は、毒素または化学療法剤を標的化された送達のために抗体にカップリングするために広範に使用されてきた任意の公知の架橋試薬(例えば、ヘテロ二官能性架橋剤)によって達成され得る。リポソームへの結合体化もまた、炭水化物指向性の架橋試薬4−(4−マレイニドフェニル)酪酸ヒドラジド(MPBH)(Duzgunesら、J.Cell.Biochem.Abst.Suppl.16E77(1992))を用いて達成され得る。
【0082】
本発明の組成物および方法のLTβ−Rブロック剤は、処置される状態、障害、または疾患に依存して、LTβ−Rシグナル伝達の所望のレベルを得るために改変され得る。LTβ−Rシグナル伝達の絶対的なレベルは、それらのそれぞれの分子標的についてのLTβ−Rブロック剤の濃度および親和性を操作することによって、細かく調整され得ることが想定される。例えば、本発明の1つの実施態様において、可溶性LTβ−R分子を含む組成物が、被験体に投与される。可溶性LTβレセプターは、表面LTリガンドを結合することについて、細胞表面LTβレセプターと有効に競合し得る。表面LTリガンドと競合する能力は、可溶性かつ細胞表面のLTβ−R分子の相対的濃度、およびリガンド結合についてのそれらの相対的親和性に依存する。
【0083】
表面LTリガンドとの変異体可溶性LTβ−Rの結合親和性を増加または減少させる変異を有する可溶性LTβ−R分子は、当業者に周知の標準的な組換えDNA技術を使用して作製され得る。部位特異的変異またはランダムな変異を有する多くの分子は、本明細書中に記載される慣用的な実験および技術を使用して、LTβ−Rブロック剤として機能するそれらの能力について試験され得る。同様に、本発明の別の実施態様において、抗体は、LTβ−Rブロック剤としてのLTβレセプターまたは1つ以上のLTリガンドサブユニット機能のいずれかに対して指向された。LTβレセプターシグナル伝達をブロックするこれらの抗体についての能力は、変異、化学修飾によって、または被験体に送達される抗体の有効な濃度または活性を変化させ得る他の方法によって改変させ得る。
【0084】
(用途)
一般的な問題として、本発明の方法は、個体において抗ウイルス応答を誘導するために利用され得、これは、LT−Bブロック剤および薬学的に受容可能なキャリアの有効量を個体に投与する工程を包含する。処置されるウイルス応答は、かなり多数の公知のウイルスの任意の数によって引き起こされ得、これらには、シンノンブル(SNV)、エボラ、マールブルグ、ラッサ、およびデング熱が含まれるがそれらに限定されない。
【0085】
(等価物)
本発明は、その意図または本質的な性質から逸脱することなく、他の特定の形態において具体化され得る。従って、前述の実施態様は、本明細書中に開示された本発明に限定するのではなく、例示するすべての点において考慮される。従って、本発明の範囲は、前述の記載によるのではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、そして特許請求の範囲の意味の中でのすべての変更、およびその等価物の範囲は、そこに含まれることが意図される。
【実施例】
【0086】
(実施例)
腫瘍壊死因子(TNFα)は、ウイルス感染および他の免疫原に対する急性ショック応答を容易にする際に鍵となる役割を果たす(K.C.F.Sheehan,N.H.Ruddle、およびR.D.Schreiber,J.Immunol.142,3884(1989);G.W.H.WongおよびD.V.Goeddel Nature 323,819(1986);B.Beutler,I.W.Milsark,A.Cerami,Science 229,869(1985);F.Mackay,P.R.Bourdon,D.A.Griffithsら、J.Immunol.159,3299(1997);P.D.Crowe,T.L.VanArsdale,B.N.Walterら、Science 264,707(1994))。ショックを含むデング熱のエピソードの間、患者からの血清のTNFαのレベルは、可溶性TNFR−75のレベルと同様に上昇する(D.Hoberら、J.Trop.Med.Hyg.,48,324(1993);D.B.Bethell,K.Flobbe,C.X.T.Phuongら、J.Infect.Dis.,177,778(1998))。本発明者らは、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルスの改変体、LCMV、クローン13(LCMV−13)(HH,II)で感染させたマウスの血清中のTNFαレベルを測定した。LCMV−13で感染させたマウスの血清中のTNFαレベルを、感染後4日までアッセイについて検出のレベルの少し上にあることを見出した(血清TNFαレベルを、ELISAアッセイ(Genzyme Corporation,カタログ番号80−2802−00)によって測定した)。5日目および6日目に、その疾患がそのピークにある場合、血清中の可溶性TNFαレベルは、正常の3〜6倍に増大した(データは示さず)。従って、本発明者らは、モノクローナル抗体、TN3−19.12を使用することによって、TNFα機能をブロックすることを選択した。この抗体は、分泌されたTNFαの両方に結合することが公知であり、従って、ELISAによって確認されるようなマウスからのその枯渇を引き起こす(K.C.F.Sheehan,N.H.RuddleおよびR.D.Schreiber,J.Immunol.142,3884(1989)G.W.H.WongおよびD.V.Goeddel Nature 323,819(1986);B.Beutler,I.W.Milsark,A.Cerami,Science 229,869(1985);F.Mackay,P.R.Bourdon,D.A.Griffithら、J.Immunol.159,3229(1997);P.D.Crowe,T.L.VanArsdale,B.N.Walterら、Science 264,707(1994);D.Hoberら、J.Trop.Med.Hyg.,48,324(1993);D,B,Bethell,K.Flobbe,C.X.T.Phuongら、J.Infect.Dis.,177,778(1998))。血清TNFαレベルを、ELISAアッセイによって測定した(GenzymeCorporation,カタログ番号80−2802−00)。NZBマウスに2.5×106pfu Cl 13をi.v.で与え、続いて感染後1日目および4日目に、エンドトキシンを含まないPBS(参考文献Sを参照のこと)中の250μgのTN3−19.12抗体を含む2回のi.p.注射を行った。コントロールマウスには、同じ日に抗体を含まない同じ容量のPBSを注射した。この処置(抗TNF)は、これらのマウスの生存率にほとんど効果を有さなかった(図3)。リンホトキシンα(LTα)(TNFβとしても知られるが、これは、同じレセプターおよびその生物学的効果の多くを、TNFαと共有する)は、この抗体によって認識されない(F.Mackay,P.R.Bourdon,D.A.Griffithsら、J.Immunol.159,3299(1997))。TNFαおよびLTαの両方を標的化することが、生存率を増加させるために必要とされることがあり得る。この仮説を試験するために、本発明者らは、上記のTN3−19.12 mAbおよびヒトIgG1のCH2ドメインおよびCH3ドメインにTNFp55レセプターの細胞外ドメインを融合させたレセプター融合タンパク質(TNFR55−Ig)を使用した(W.R.Force,B.N.Walter,C.Hessionら、J.Immunol.,155,5280(1995);G.T.Miller,P.S.Hochman,W.Meierら、JEM.,178,211(1993);J.L.Browning,I.Dougas,A.Ngam−ekら、J.Immunol.,154:33(1995))。マウスを、参考文献Rに記載されるように処置した。三重で処置した群について、TNFR55−Igタンパク質およびLTβR−Igタンパク質を、感染後0日目および3日目に、200μg量で、i.p.で与えた。コントロールマウスには、同じ日に同じ量で、これらの融合タンパク質(AY1943−29)の合成において使用されるヒト抗体を与えた。LTβR−Igのみを受容したマウスを、TNFR55−Ig注射が除外された以外は、同様に処置した。この処置はまた、LCMV−13感染したNZBマウスにおいて、生存率を有意に変化させなかった(抗TNFおよびTNFR55−Ig群を参照のこと)。膜型のリンホトキシン、LTαのヘテロマー、およびLTβは、TNFR−75またはTNFR−55を認識しなかったが、むしろLTβR(15)と呼ばれる第3のレセプターに結合する。本発明者らは、ヒトIgG1(LTβR−Ig)のCH2ドメインおよびCH3ドメインにもまた結合している、LTβR細胞外ドメインを含む融合タンパク質を使用することを選択した。抗TNFα mAb、TNFR55−IgおよびLTβR−Igでのマウスの処置(三重処置またはTNFR55−IGおよびLTβR−Ig)は、生存の劇的な増加を生じた(それぞれ、80%および70%まで)。対照的に、抗TNFα mAbおよびTNFR55−Igで処置したマウスの20%のみが、感染で生存した。最近、LTβRについての第2のリガンド、LIGHTが同定された(D.N.Mauri,R.Ebner,R.I.Montgomeryら、Immunity 8,21(1998);R.I.Montgomery,M.S.Warner,B.Lumら、Cell 87,427(1996))。LIGHTはまた、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)を結合することが示されており、これは、活性化されたCD4 T細胞およびCD8 T細胞上で発現されるTNFRファミリーのメンバーと有意な相同性を有するI型膜貫通タンパク質である(D.N.Mauri,R.Ebner,R.I.Montgomeryら、Immunity 8,21(1998);R.I.Montgomery,M.S.Warner,B.Lumら、Cell 87,427(1996))。本明細書に提供された結果に基づく、LTβR−IgによるLTβ2α1およびLIHGTの結合による、LTβRシグナル伝達および潜在的なHVEMシグナル伝達の阻止は、三重処置群において見られる効果の大部分の原因であるようであった。本発明者らは、LCMV−13感染NXBマウスをLTβR−Ig融合タンパク質で処置することによって、この仮説を確認した。この群のマウスの生存率(73%)は、三重処置群とほぼ同じ高さであった(図3)。総合すれば、これらのデータは、LTβRおよび/またはHVEMシグナル伝達経路が、全身性ショックおよび呼吸窮迫を含む急性の致死性の疾患の統合に関与することの最初の実証を表す。
【0087】
LTβ遮断処理後の生存の機構を決定する目的において、NP118特異的T細胞についてのCD8/テトラマーの両方の同時染色、NZB LDシステムにおけるドミナントCD8エピトープ、およびNP118ペプチドで刺激された脾臓細胞によって産生されるインターフェロンγについての細胞内染色を、コントロール抗体、LTβR−Ig単独で、または三重処置した、LCMV−13感染させたNZBマウス由来のサンプル上で実行した。図4は、三重処置したマウスにおいて見られた最大の効果を有する、NP118特異的CD8 T細胞の数の減少を例証する。コントロール抗体で処置したマウスにおいて、10%のテトラマー陽性細胞のみが活性にINFγを産生した。LCMV−13感染の間のアネルギー性T細胞の出現は、以前に実証され、そしてこれはマウスにおける高いレベルのウイルス抗原に起因するようである(図1)。LTβR−Ig処置マウスにおいてNP118特異的細胞の数が減少しただけでなく、INFγを産生する細胞の割合もまた減少した。この効果は、三重処置群においてなおさらに顕著であった。従って、CD8画分は、LCMV−13感染へのこの致死的なNZB応答の供給源であり得る。活性化されたCD8が、LTβ2α1を提示することが既知であるという事実は、この仮説と一致する(Y.Abe,A.Horiuchi,Y.Osukaら、Lymph.Ctyok.Res.,11,115(1992);C.F.Ware,P.D.Crowe,M.H.Graysonら、J.Immunol.,149,3881(1992);J.L.Browning,A.Ngam−ek,P.Lawtonら、Cell,72,847(1993))。この主張を支持するために、本発明者らは、感染したNZBマウスで、インビボでCD8陽性T細胞またはCD4陽性T細胞を枯渇させた(雄性NZBマウスに2.5×106pfu LCMV−13をi.v.で与え、続いて、抗T細胞抗体の500μl i.p.注射を2回行った。mAb Lyt2.43を使用して、CD8+T細胞を枯渇させた。一方、CD4+T細胞枯渇のためにGK1.5(M1)抗体を使用した。両方の抗体を、ハイブリドーマ上清からの硫酸アンモニウム沈殿、続いてPBSに対する透析によって調製した。FACS分析を使用して、いくつかのマウスにおける枯渇を確認した。)。CD4 T細胞枯渇は、生存を増加させなかった。対照的に、CD8 T細胞の枯渇は、LTβR−Ig処置マウスとは異なり、疾患症状の非存在下において100%の生存を生じた(図5)。CD8枯渇マウスのいくつかの組織におけるウイルス力価は、処置していないマウスよりも高かったので、死は、ウイルス感染による組織の破壊からではなく、CD8 T細胞によって媒介される毒性の免疫応答から生じるようである。
【0088】
本発明者らは、本明細書で、静脈投与の高用量のLCMV−13で感染させたNZBマウスが、エボラ感染、マールブルグ感染、ラッサ感染、デング熱感染、およびシンノンブル感染といくつかの共通の特徴を共有する、急性の、迅速に進行する疾患を発症することを報告した。この病気の致死率は、活性化された場合に、TNFα、LTα、およびLTβを発現することが知られているCD8+T細胞の存在に依存した。これは、希望を与える知見であるが、CD8+T細胞の枯渇によるウイルス感染の処置は、的を得ていない。このような処置は、他の日和見感染に対して、患者を無防備なままにし得る。さらに、ウイルスのクリアランスは、CTLの非存在下においてではないようなので、CD8+画分の再構築の際のウイルスに対する患者の耐性のリスクは非常に現実的である。本発明者らは、LTβR−Igの投与によるLTβR/HVEM経路の遮断は、一旦処置を停止した場合、ホメオスタシスへの迅速な回復を伴う、天然においては一過性の、強力な処置であることを示す(MackayおよびBrowning、未公開)。この様式において処置した生存しているマウスは、最終的に、試験された組織からウイルスを取り除き(データは示さず)、そしてもはや疾患の徴候を示さない。
【0089】
これらのデータは、LTβRがシグナル伝達が、抗ウイルス応答およびCD8 T細胞機能において重要な役割を果たすことの最初の実証であることを表す。リンホトキシン系は、多分、T細胞およびB細胞組織を方向付けるいくつかのケモカインの発現の制御を介してリンパ系構造の組織と密接に関連している(Chaplinら、Curr.Opin.Immunol.10,289(1998),J.Cyster,印刷中)。濾胞性樹状細胞(follicular dendritic cell)の成熟機能状態は、定常的なB細胞シグナル伝達によって維持され、そしてこれらの細胞は、LTβRシグナル伝達の停止に際して1日以内に消失する。これらの細胞は、B細胞画分およびT細胞画分への抗原の提示のために決定的である。合理的な推測は、CD8細胞への抗原提示のいくつかの局面または成熟の間のケモカイン勾配におけるこれらの細胞の適切な配置(positioning)が、LTβRシグナル伝達の破壊によって妨害されることである。LT機能の以前の研究は、主としてB細胞の生物学に焦点を当てており、そしてT細胞機能における関与は予期されなかった。LTはさらなる機能を有するか、またはこれらのデータは、新規なリガンドLIGHTについての役割を反映するかのいずれかである。本明細書で実証した疾患の進行においてHVEMおよびLIGHTが何の役割を果たし得るかは、現在のところわからない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−155852(P2010−155852A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35451(P2010−35451)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【分割の表示】特願2000−575531(P2000−575531)の分割
【原出願日】平成11年10月8日(1999.10.8)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【出願人】(500228207)エモリー ユニバーシティ (1)
【氏名又は名称原語表記】Emory University
【住所又は居所原語表記】Office of Technology Transfer, 2009 Ridgewood Drive, Atlanta, Georgia 30322, United States of America
【Fターム(参考)】