説明

リン及び窒素含有エポキシ樹脂

【課題】難燃性と硬化物の物性が飛躍的に向上した新規な難燃性樹脂の提供。
【解決手段】(イ)下記式で示されるリン化合物と、(ロ)シアヌル酸と、(ハ)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける測定において二核体含有率が15面積%以下、三核体含有率が15面積%〜60面積%であり、数平均分子量が350〜700である分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂との反応により得られるリン及び窒素を分子内に含有するエポキシ樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分子骨格にリン原子と窒素原子を含有するハロゲンフリー難燃性エポキシ樹脂及び、該エポキシ樹脂を必須成分とするエポキシ樹脂組成物、更には該エポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂の難燃化は従来テトラブロモビスフェノールAを原料とした臭素化エポキシ樹脂に代表されるようにハロゲン化により行われていた。しかし、ハロゲン化エポキシ樹脂を用いた場合、硬化物の燃焼時に熱分解反応により毒性の強いハロゲン化物の生成がみられるといった問題があった。これに対して近年リン化合物を利用したハロゲンフリー難燃技術が検討され、特許文献1〜特許文献4で開示されたリン化合物を応用するという提案がされている。しかし、これらのリン化合物はエポキシ樹脂や溶剤との溶解性が低く、エポキシ樹脂に配合したり溶剤に溶解して用いることが困難であったため、特許文献5〜特許文献10で開示されているようにあらかじめエポキシ樹脂類と反応することによってリン含有エポキシ樹脂、リン含有フェノール樹脂として溶剤溶解性を付与して使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭47-016436号公報
【特許文献2】特開昭60-126293号公報
【特許文献3】特開昭61-236787号公報
【特許文献4】特開平05-331179号公報
【特許文献5】特開平04-11662号公報
【特許文献6】特開2000-309623号公報
【特許文献7】特開平11-166035号公報
【特許文献8】特開平11-279258号公報
【特許文献9】特開2001-123049号公報
【特許文献10】特開2003-040969号公報
【特許文献11】特開2002-194041号公報
【特許文献12】特開2007-126683号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】西沢仁著「ポリマーの難燃化」P60、P166 1992年 大成社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リン化合物による難燃化は、難燃性を更に向上しようとするとリン含有率を高めるしかなく、分子量が大きくなり架橋密度が低下してしまうことや、高価なリン含有化合物を使用しなければならなかった。これに対して本発明者らは非特許文献1に記載されているリンと窒素の難燃性に対する相乗効果に着目し、国際公開第2008/143309号が出願されている。窒素化合物としてアミン化合物を使用したものであり窒素を導入することで難燃性を向上することが出来た。しかし、エポキシ樹脂とアミン化合物の反応を行う為、窒素の導入量を高めようとすると、リン含有率を高める場合と同様に分子量が大きくなり、樹脂粘度が高くなるため含浸性などの向上が更に求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明者はエポキシ樹脂の中でも特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂とシアヌル酸を用いてリン及び窒素含有エポキシ樹脂を合成することでリン含有率を著しく低減しても難燃性が得られることと、リン及び窒素含有エポキシ樹脂の硬化物物性が良好であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)一般式(1)で示されるリン化合物とシアヌル酸とエポキシ樹脂(a)を反応して得られるリン及び窒素を分子内に含有するエポキシ樹脂(A)において、エポキシ樹脂(a)としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける測定において二核体含有率が15面積%以下、三核体含有率が15面積%〜60面積%であり、数平均分子量が350〜700である分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂(b)を必須として用いることを特徴とするリン及び窒素を分子内に含有するエポキシ樹脂(A)、
(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定条件)
東ソー株式会社製 TSKgelG4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXLを直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはテトラヒドロフランを用い、1ml/minの流速とし、検出器はRI(示差屈折計)検出器を用いた。サンプル0.1gを10 mlのTHFに溶解した。標準ポリスチレンによる検量線により数平均分子量を測定する。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中R1及びR2は炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、リン原子と共にR1及びR2が環状構造をとっても良い。式中Xは水素原子又は一般式2を表し、nは0または1を表す。)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中Aは炭素数6から20のアリーレン基及び/またはトリイル基を表わす。)
(2)上記(1)記載のリン及び窒素を分子内に含有するエポキシ樹脂(A)と硬化剤を必須成分とし、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基1当量に対して硬化剤の官活性基を0.4当量〜2.0当量を配合してなるエポキシ樹脂組成物、
(3)上記(2)記載のエポキシ樹脂組成物を基材に含浸してなるプリプレグ、
(4)上記(2)記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物、
(5)上記(2)記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる積層板、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、特定の窒素含有化合物と特定のリン化合物を特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂と反応することによって得られるリン及び窒素を含有するエポキシ樹脂であり、特定の窒素化合物と、特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂を使用することにより、高価なリン化合物の量を低減することが出来、含浸性などの作業性は損なわずに硬化物の物性の向上が可能であった
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】汎用型の分子量分布を持つフェノールノボラック型エポキシ樹脂YDPN-638のGPCチャートを示す。横軸に溶出時間を示し、左縦軸に検出強度を示す。右縦軸に数平均分子量Mをlog(常用対数)で示す。用いた標準物質の数平均分子量の測定値を黒丸でプロットしており検量線としている。Aで示すピークが二核体、Bで示すピークが三核体である。
【図2】合成例2で得られたノボラック型エポキシ樹脂(b)のGPCチャートを示す。Aで示すピークが二核体、Bで示すピークが三核体である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明の一般式(1)で示されるリン化合物は、具体的にはジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(HCA 三光株式会社製)、ジメチルホスフィンオキサイド、ジエチルホスフィンオキサイド、ジブチルホスフィンオキサイド、ジフェニルホスフィンオキサイド、1,4−シクロオクチレンホスフィンオキサイド、1,5−シクロオクチレンホスフィンオキサイド(CPHO 日本化学工業株式会社製)、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(三光株式会社製 商品名HCA-HQ)、10−(1,4−ジオキシナフタレン)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(以下HCA-NQと記す)、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン(北興化学工業株式会社製 商品名PPQ)、ジフェニルホスフェニル−1,4−ジオキシナフタリン、1,4−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール(日本化学工業株式会社製 商品名CPHO-HQ)、1,5−シクロオクチレンホスフィニル−1,4−フェニルジオール(日本化学工業株式会社製 商品名CPHO-HQ)等が挙げられる。これらのリン化合物は単独でも2種類以上混合して使用しても良く、これらに限定されるものではない。
【0015】
本発明において、シアヌル酸とは互変異性であるs−トリアジン−2,4,6−トリオール及びs−トリアジン−2,4,6−トリオンを示すものであり比率については特に規定は無い。
【0016】
シアヌル酸は窒素系難燃剤として添加される技術が開示されているが、溶剤溶解性が無く、融点も330℃以上で分解することから、添加剤としての使用に限られていた。エポキシ樹脂と反応することで、エポキシ樹脂組成物中に均一となるため、安定した難燃性が得られるのである。
【0017】
一般的に、ノボラック型エポキシ樹脂は、フェノール類とアルデヒド類の反応生成物であるノボラック樹脂とエピハロヒドリンとを反応して得られる多官能のノボラック型エポキシ樹脂である。使用されるフェノール類としてはフェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、スチレン化フェノール、クミルフェノール、ナフトール、カテコール、レゾルシノール、ナフタレンジオール、ビスフェノールAなどが挙げられ、アルデヒド類としてはホルマリン、ホルムアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドなどが挙げられる。また、アルデヒド類の代わりにキシリレンジメタノール、キシリレンジクロライド、ビスクロロメチルナフタレン、ビスクロロメチルビフェニルなどを用いたアラルキルフェノール樹脂も本発明ではノボラック型フェノール樹脂に含む。前述のノボラック型フェノール樹脂にエピハロヒドリンを用いてエポキシ化することでノボラック型エポキシ樹脂が得られる。
【0018】
ノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、エポトートYDPN-638(新日鐵化学株式会社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エピコート152、エピコート154(三菱化学株式会社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エピクロンN-740、エピクロンN-770、エピクロンN-775(DIC株式会社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトートYDCN-700シリーズ(新日鐵化学株式会社製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、エピクロンN-660、エピクロンN-665、エピクロンN-670、エピクロンN-673、エピクロンN-695(DIC株式会社製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、EOCN-1020、EOCN-102S、EOCN-104S(日本化薬株式会社製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトートZX-1071T、ZX-1270、ZX-1342(新日鐵化学株式会社製 アルキルノボラック型エポキシ樹脂)、エポトートZX-1247、GK-5855(新日鐵化学株式会社製 スチレン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトートZX-1142L(新日鐵化学株式会社製 ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、ESN-155、ESN-185V、ESN-175(新日鐵化学株式会社製 βナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、ESN-300シリーズのESN-355、ESN-375(新日鐵化学株式会社製 ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、ESN-400シリーズのESN-475V、ESN-485(新日鐵化学株式会社製 αナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらのエポキシ樹脂は、本発明で用いるノボラック型エポキシ樹脂(b)の特徴である特定の分子量分布を有していない。
【0019】
本発明で用いる特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂(b)を得るにはフェノール類とアルデヒド類のモル比を調整することと、得られたフェノールノボラック樹脂から低分子量成分を除去する方法によって得ることが出来る。また、特許文献11、特許文献12に示すような製造方法によりフェノールノボラック樹脂を製造たものをエポキシ化しても良い。
【0020】
フェノール類とアルデヒド類のモル比はアルデヒド類1モルに対するフェノール類のモル比で示され1以上の比率で製造されるが、モル比が大きい場合は二核体、三核体が多く生成され、モル比が小さい場合は高分子量体が多く生成し、二核体、三核体は少なくなる。
【0021】
本発明で用いる分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂(b)を得るには、得られたノボラック樹脂類から二核体を各種溶媒の溶解性差を利用して除去する方法、アルカリ水溶液に二核体を溶解して除去する方法などによって得ることが出来き、その他の公知の分離方法によっても良い。
【0022】
分子量を制御したノボラック樹脂に公知のエポキシ化の手法を用いて特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂(b)を得ることが出来る。あるいは市販のノボラック型エポキシ樹脂から二核体エポキシ樹脂成分を各種方法により除去することによっても特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂(b)を得ることが出来る。その他公知の分離方法によっても良い。
【0023】
本発明で用いる特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂(b)は、二核体含有率が15面積%以下、好ましくは5面積%〜12面積%が好ましい。少量の二核体が含有することで、接着力などの物性を向上することが出来る。三核体含有率は15面積%〜60面積%であり、好ましくは20面積%〜50面積%が好ましい。数平均分子量は350〜700、好ましくは380〜600が好ましい。分子量分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜2.8のものが使用することができ、好ましい範囲は1.2〜2.5、より好ましくは1.2〜2.3であり、1.1未満では耐熱性などの物性に劣り、2.8を超える場合は難燃性や接着性などが低下する恐れがある。
【0024】
一般式(1)で示されるリン化合物とシアヌル酸と特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂との反応は公知の方法で行われる。合成手順としてエポキシ樹脂とシアヌル酸を反応後、リン化合物を反応しても良く、エポキシ樹脂とリン化合物を反応後、シアヌル酸を反応しても良く、更にはエポキシ樹脂とリン化合物とシアヌル酸を同時に反応しても良い。
【0025】
反応温度はエポキシ樹脂の合成に通常設定されている温度で良く、100℃〜250℃、好ましくは120℃〜200℃である。
【0026】
反応には時間短縮や反応温度低減の為、触媒を使用しても良い。使用できる触媒は特に制限は無く、エポキシ樹脂の合成に通常使用されているものが使用できる。例えば、ベンジルジメチルアミン等の第3級アミン類、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類、2メチルイミダゾール、2エチル4メチルイミダゾール等のイミダゾール類等各種触媒が使用可能であり、単独で用いても2種類以上併用してもよく、これらに限定されるものではない。また、分割して数回に分けて使用しても良い。
【0027】
触媒量は特に限定されないが、リン含有エポキシ樹脂(A)に対して5%以下、より好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下である。触媒量が多いと場合によってはエポキシ基の自己重合反応が進行するため、樹脂粘度が高くなり好ましくない。
【0028】
一般式(1)で示されるリン化合物と特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂(b)とシアヌル酸を反応する際に、必要に応じて本発明の特性を損なわない範囲で各種エポキシ樹脂変性剤を併用しても良い。変性剤としてはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、テトラブチルビスフェノールA、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシスチルベン類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、テルペンフェノール樹脂、重質油変性フェノール樹脂、臭素化フェノールノボラック樹脂などの種々のフェノール類や、種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂や、アニリン、フェニレンジアミン、トルイジン、キシリジン、ジエチルトルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジフェニルケトン、ジアミノジフェニルスルフィド、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(アミノフェニル)フルオレン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノベンズアニリド、ジアミノビフェニル、ジメチルジアミノビフェニル、ビフェニルテトラアミン、ビスアミノフェニルアントラセン、ビスアミノフェノキシベンゼン、ビスアミノフェノキシフェニルエーテル、ビスアミノフェノキシビフェニル、ビスアミノフェノキシフェニルスルホン、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン、ジアミノナフタレン等のアミン化合物が挙げられるがこれらに限定されるものではなく2種類以上併用しても良い。
【0029】
一般式(1)で示されるリン化合物と特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂(b)とシアヌル酸を反応する際に、必要に応じて各種エポキシ樹脂を本発明の特性を損なわない程度に使用することもできる。具体的にはエポトート YDC-1312、ZX-1027(新日鐵化学株式会社製 ハイドロキノン型エポキシ樹脂)、YX-4000(三菱化学株式会社製)、ZX-1251(新日鐵化学株式会社製 ビフェノール型エポキシ樹脂)、エポトート YD-127、エポトート YD-128、エポトート YD-8125、エポトート YD-825GS、エポトート YD-011、エポトート YD-900、エポトート YD-901(新日鐵化学株式会社製 BPA型エポキシ樹脂)、エポトート YDF-170、エポトート YDF-8170、エポトート YDF-870GS、エポトート YDF-2001(新日鐵化学株式会社製 BPF型エポキシ樹脂)、エポトート YDPN-638(新日鐵化学株式会社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトート YDCN-701(新日鐵化学株式会社製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、ZX-1201(新日鐵化学株式会社製 ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂)、NC-3000(日本化薬株式会社製 ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂)、EPPN-501H、EPPN-502H(日本化薬株式会社製 多官能エポキシ樹脂)、ZX-1355(新日鐵化学株式会社製 ナフタレンジオール型エポキシ樹脂)、ESN-155、ESN-185V、ESN-175(新日鐵化学株式会社製 βナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、ESN-355、ESN-375(新日鐵化学株式会社製 ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、ESN-475V、ESN-485(新日鐵化学株式会社製 αナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)等の多価フェノール樹脂等のフェノール化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、エポトート YH-434、エポトート YH-434GS(新日鐵化学株式会社製 ジアミノジフェニルメタンテトラグリシジルエーテル)等のアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、YD−171(新日鐵化学株式会社製 ダイマー酸型エポキシ樹脂)等のカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく2種類以上併用しても良い。
【0030】
反応には不活性溶媒を使用しても良い。具体的にはヘキサン、へプタン、オクタン、デカン、ジメチルブタン、ペンテン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の各種炭化水素、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、アミルフェニルエーテル、エチルベンジルエーテル、ジオキサン、メチルフラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が使用できるが、これらに限定されるものではなく、2種類以上混合して使用しても良い。
【0031】
本発明のリン及び窒素含有エポキシ樹脂(A)は硬化剤を配合することにより、硬化性のリン及び窒素含有エポキシ樹脂組成物とすることが出来る。硬化剤としては各種フェノール樹脂類や酸無水物類、アミン類、ヒドラジッド類、酸性ポリエステル類等の通常使用されるエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができ、これらの硬化剤は1種類だけ使用しても2種類以上使用しても良い。これらのうち、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物が含有する硬化剤としてはジシアンジアミドまたはフェノール系硬化剤が好ましい。本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂の官能基であるエポキシ基1当量に対して硬化剤の官能基0.4〜2.0当量が好ましく、0.5〜1.5当量がより好ましく、特に好ましくは0.5〜1.0当量である。エポキシ基1当量に対して硬化剤が0.4当量に満たない場合、あるいは2.0当量を超える場合は硬化が不完全になり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0032】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に用いることが出来るフェノール系硬化剤の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールC、ビスフェノールK、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールZ、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)等のビスフェノール類、また、カテコール、レゾルシン、メチルレゾルシン、ハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、モノ−tert−ブチルハイドロキノン、ジ−tert−ブチルハイドロキノン等ジヒドロキシベンゼン類、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、トリヒドロキシナフタレン等ヒドロキシナフタレン類、フェノールノボラック樹脂、DC-5(新日鐵化学株式会社製 クレゾールノボラック樹脂)、ナフトールノボラック樹脂などのフェノール類及び/又はナフトール類とアルデヒド類との縮合物、SN-160、SN-395、SN-485(新日鐵化学株式会社製)等のフェノール類及び/又はナフトール類とキシリレングリコールとの縮合物、フェノール類及び/又はナフトール類とイソプロペニルアセトフェノンとの縮合物、フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンとの反応物、フェノール類及び/又はナフトール類とビフェニル系縮合剤との縮合物等のフェノール化合物等が例示される。
【0033】
上記の、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、ノニルフェノール、ブチルメチルフェノール、トリメチルフェノール、フェニルフェノール等が挙げられ、ナフトール類としては、1−ナフトール、2−ナフトール等が挙げられる。
【0034】
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロルアルデヒド、ブロムアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド、ピメリンアルデヒド、セバシンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、サリチルアルデヒド、フタルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等が例示される。
【0035】
ビフェニル系縮合剤としてビス(メチロール)ビフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニル、ビス(エトキシメチル)ビフェニル、ビス(クロロメチル)ビフェニル等が例示される。
【0036】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に用いることが出来るその他の公知慣用の硬化剤としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、メチルナジック酸等の酸無水物類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジフェニルエーテル、ジシアンジアミド、ダイマー酸等の酸類とポリアミン類との縮合物であるポリアミドアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。
【0037】
更には、エポキシ基の重合を引き起こして硬化せしめる硬化剤としてトリフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラフェニルホスフォニウムブロマイド等のホスホニウム塩、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類及びそれらとトリメリット酸、イソシアヌル酸、硼素等との塩であるイミダゾール塩類、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミン類、トリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類、ジアザビシクロ化合物及びそれらとフェノール類、フェノールノボラック樹脂類等との塩類3フッ化硼素とアミン類、エーテル化合物等との錯化合物、芳香族ホスホニウム又はヨードニウム塩などが例示できる。これら硬化剤は、単独でも良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物に使用されるその他の公知慣用のエポキシ樹脂硬化剤の配合割合は、エポキシ基1当量当たり硬化剤の官能基が0.4〜2.0当量であり、0.5〜1.5当量が好ましく、望ましくは0.8〜1.2当量の割合である。また、エポキシ基の重合を引き起こし硬化せしめる硬化剤の配合割合はエポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部、より好ましくは、0.2〜5重量部である。
【0039】
本発明のリン含有エポキシ樹脂(A)を含んでなる難燃性エポキシ樹脂組成物には、粘度調整用として有機溶剤も用いることができる。用いることが出来る有機溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、これらの溶剤のうちの一又は複数種を混合したものを、エポキシ樹脂濃度として30〜80重量%の範囲で配合することができる。
【0040】
本発明組成物には必要に応じて硬化促進剤を使用することができる。使用できる硬化促進剤の例としては2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボランなどのホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物が挙げられる。硬化促進剤は本発明のエポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂成分100重量部に対して0.02〜5.0重量部が必要に応じて用いられる。硬化促進剤を用いることにより、硬化温度を下げたり、硬化時間を短縮することが出来る。
【0041】
本発明組成物には必要に応じてフィラーを用いることが出来る。具体的には水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、焼成タルク、クレー、カオリン、ベーマイト、酸化チタン、ガラス粉末、シリカバルーン等の無機フィラーが挙げられるが、顔料等を配合しても良い。一般的無機充填材を用いる理由として、耐衝撃性の向上が挙げられる。また、水酸化アルミ、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を用いた場合、難燃助剤として作用し、リン含有量が少なくても難燃性を確保することが出来る。
【0042】
特に配合量が10%以上でないと、耐衝撃性の効果は少ない。しかしながら、配合量が150%を越えると積層板用途として必要な項目である接着性が低下する。また、ガラス繊維、パルプ繊維、合成繊維、セラミック繊維等の繊維質充填材や微粒子ゴム、熱可塑性エラストマーなどの有機充填材を上記樹脂組成物に含有することもできる。
【0043】
本発明のリン及び窒素含有エポキシ樹脂組成物を硬化することによってリン及び窒素含有エポキシ樹脂硬化物を得ることが出来る。硬化の際には例えば樹脂シート、樹脂付き銅箔、プリプレグなどの形態とし、積層して加熱加圧硬化することで積層板としてのリン及び窒素含有エポキシ樹脂硬化物を得ることが出来る。
【0044】
本発明のリン及び窒素含有エポキシ樹脂(A)を用いたリン及び窒素含有エポキシ樹脂組成物を作成し、加熱硬化により積層板のリン及び窒素含有エポキシ樹脂硬化物を評価した結果、リン化合物とシアヌル酸と特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂を反応したリン及び窒素含有エポキシ樹脂(A)は、従来公知のリン化合物とエポキシ樹脂類から得られるリン含有エポキシ樹脂と比較して高い難燃性を示し、その結果リン含有率の低減が可能となり、硬化物物性を向上することが出来た。
【実施例】
【0045】
実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は重量部を表し、「%」は重量%を表す。測定方法はそれぞれ以下の方法により測定した。
実施例及び比較例で合成されたエポキシ樹脂のエポキシ当量はJIS K 7236にて測定を行った。
【0046】
窒素含有率は窒素化合物の窒素含有率から、リン及び窒素含有エポキシ樹脂に対する重量比を算出した。
【0047】
実施例及び比較例で合成されたエポキシ樹脂のリン含有率は以下の方法で測定を行った。すなわち、試料150 mgに硫酸3mlを加え30分加熱する。室温に戻し、硝酸3.5 ml及び過塩素酸0.5 mlを加えて内容物が透明又は黄色になるまで加熱分解する。この液を100 mlメスフラスコに水で希釈する。この試料液10 mlを50 mlメスフラスコに入れ、フェノールフタレイン指示薬を1滴加え、2 mol/lアンモニア水を微赤色になるまで加える。50%硫酸液2mlを加え、水を加える。2.5g/lのメタバナジン酸アンモニウム水溶液を5ml及び50g/lモリブデン酸アンモニウム水溶液5mlを加えた後、水で定容とする。室温で40分放置した後、分光光度計を用いて波長440 nmの条件で水を対照として測定する。リン酸二水素カリウム水溶液にて検量線を作成しておき吸光度からリン含有量を求める。
【0048】
ガラス転移温度DSC:示差走査熱量測定装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製 EXSTAR6000 DSC6200)にて10℃/分の昇温条件で測定を行った時のDSC外挿値の温度で表した。
ガラス転移温度TMA:熱機械分析装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製 EXSTAR6000 TMA/SS120U)にて5℃/分の昇温条件で測定を行った時のTMA外挿値の温度で表した。
【0049】
銅箔剥離強さはJIS C 6481 5.7に準じて、層間接着力はJIS C 6481 5.7に準じてプリプレグ1枚と残りのプリプレグの間で剥離を行い測定した。
【0050】
燃焼性:UL94(Underwriters Laboratories Inc.の安全認証規格)に準じた。5本の試験片について試験を行い、1回目と2回目の接炎(5本それぞれ2回ずつで計10回の接炎)後の有炎燃焼持続時間の合計時間を秒で表した。
【0051】
ゲルパーミエーションクロマトグラフ:二核体含有率、三核体含有率、数平均分子量、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて分子量分布を測定し、二核体含有率、三核体含有率はピークの面積%から、数平均分子量は標準の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製 A-500、A-1000、A-2500,A-5000、F-1、F-2、F-4,F-10,F-20,F−40)より求めた検量線より換算した。具体的には、本体(東ソー株式会社製 HLC-8220GPC)にカラム(東ソー株式会社製 TSKgelG4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXL)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはテトラヒドロフランを用い、1ml/minの流速とし、検出器はRI(示差屈折計)検出器を用いた。
【0052】
使用したエポキシ樹脂を次に示す。
YDPN-638(新日鐵化学株式会社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率22.1面積%、三核体含有率10.7面積%、数平均分子量463、重量平均分子量1003、分散度2.17、エポキシ当量176g/eq)。
YDF-170(新日鐵化学株式会社製 ビスフェノールF型エポキシ樹脂 エポキシ当量170g/eq)。
YDF-2001(新日鐵化学株式会社製 ビスフェノールF型エポキシ樹脂 エポキシ当量469g/eq)。
【0053】
合成例1
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、フェノール 2500部、シュウ酸二水和物 7.5部を仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌を行い、加熱を行って昇温した。37.4%ホルマリン 474.1部を80℃で滴下を開始し、30分で滴下を終了した。更に反応温度を92℃に保ち3時間反応を行った。昇温を行い反応生成水を系外に除去しながら110℃まで昇温した。残存フェノールを160℃にて減圧下回収を行い、フェノールノボラック樹脂を得た。更に温度を上げて二核体の一部を回収した。得られたフェノールノボラック樹脂の二核体含有率はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で10面積%であった。
【0054】
合成例2
合成例1と同様な装置に、合成例1のフェノールノボラック樹脂 665.8部、エピクロロヒドリン 2110.8部、水 17部を仕込み、攪拌しながら50℃まで昇温した。49%水酸化ナトリウム水溶液 14.2部を仕込み3時間反応を行った。64℃まで昇温し、水の還流が起きる程度に減圧を引き、49%水酸化ナトリウム水溶液 457.7部を3時間かけて滴下し反応をおこなった。温度を70℃まで上げ脱水を行い、温度を135℃として残存するエピクロロヒドリンを回収した。常圧に戻し、MIBK 1232部を加えて溶解した。イオン交換水1200部を加え、攪拌静置して副生した食塩を水に溶解して除去した。次に49%水酸化ナトリウム水溶液 37.4部を仕込み80℃で90分間攪拌反応して精製反応を行った。MIBKを追加、水洗を数回行いイオン性不純物を除去した。溶剤を回収し、ノボラック型エポキシ樹脂を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定で二核体含有率9面積%、三核体含有率37.0面積%、数平均分子量440、重量平均分子量605、分散度1.38、エポキシ当量176g/eqであった。
【0055】
実施例1
合成例1と同様な装置に合成例2のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 859部、HCA(三光株式会社製 9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド リン含有率14.2重量%)134部、シアヌル酸(東京化成工業株式会社製)8部を仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌を行い、加熱を行って昇温した。130℃にてトリフェニルホスフィンを触媒として0.14部を添加して160℃で3時間反応を行った。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は249g/eq、リン含有率は1.9%であった。結果を表1にまとめる。
【0056】
実施例2
合成例2のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 873部、HCA 120部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は240g/eq、リン含有率は1.7%であった。結果を表1にまとめる。
【0057】
実施例3
合成例2のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 743部、HCA 120部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。反応終了後、YDF-170 130部を添加し、均一になるまで攪拌を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は236g/eq、リン含有率は1.7%であった。結果を表1にまとめる。
【0058】
実施例4
合成例2のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 759部、HCA 134部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。反応終了後、YDF-2001 100部を添加し、均一になるまで攪拌を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は273g/eq、リン含有率は1.9%であった。結果を表1にまとめる。
【0059】
実施例5
合成例1と同様な装置に合成例2のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 842部、HCA 100部、HCA-HQ 50部、シアヌル酸 8部を仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌を行い、加熱を行って昇温した。130℃にてトリフェニルホスフィンを触媒として0.15部を添加して160℃で3時間反応を行った。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は265g/eq、リン含有率は1.9%であった。結果を表1にまとめる。
【0060】
【表1】

【0061】
比較例1
合成例2のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりにYDPN-638 803部、HCA 197部、シアヌル酸 0部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は283g/eq、リン含有率は2.8%であった。結果を表1にまとめる。
【0062】
比較例2
合成例2のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりにYDPN-638 817部、HCA 183部、シアヌル酸 0部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は275g/eq、リン含有率は2.6%であった。結果を表1にまとめる。
【0063】
比較例3
合成例2のフェノールノボラック型エポキシ樹脂の代わりにYDPN-638 824部、HCA 176部、シアヌル酸 0部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は251g/eq、リン含有率は2.5%であった。結果を表1にまとめる。
【0064】
比較例4
合成例2のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 859部、HCA 141部、シアヌル酸 0部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は236g/eq、リン含有率は2.0%であった。結果を表1にまとめる。
【0065】
比較例5
合成例2のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 866部、HCA 134部、シアヌル酸 0部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は234g/eq、リン含有率は1.9%であった。結果を表1にまとめる。
【0066】
比較例6
合成例2のフェノールノボラック型エポキシ樹脂 880部、HCA 120部、シアヌル酸 0部とした以外は実施例1と同様な操作を行なった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は226g/eq、リン含有率は1.7%であった。結果を表1にまとめる。
【0067】
実施例6〜実施例10及び比較例7〜比較例12
実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例6のエポキシ樹脂と、硬化剤としてジシアンジアミドを表2の処方で配合し、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミドなどの溶剤に溶解してエポキシ樹脂組成物を得た。
【0068】
得られた樹脂ワニスをガラスクロスWEA 7628 XS13(日東紡績株式会社製 0.18 mm厚)に含浸した。含浸したガラスクロスを150℃の熱風循環炉で8分間乾燥を行い、プリプレグを得た。得られたプリプレグ8枚を重ね、上下に銅箔(三井金属鉱業株式会社製 3EC)を重ね、130℃×15分及び170℃×20 kg/cm2 ×70分間加熱、加圧を行い積層板を得た。
【0069】
積層板のTMA、DSCによるガラス転移温度、銅箔剥離強さ、層間接着力、難燃性試験の結果を表2にまとめる。
【0070】
【表2】

【0071】
表1、表2で示したように一般式(1)で示されるリン化合物とシアヌル酸と特定の分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂類(b)を反応して得られるリン及び窒素を分子内に含有するエポキシ樹脂(A)は、シアヌル酸を変性しない比較例のリン含有エポキシ樹脂と比較して、低いリン含有率でも難燃性が得られており、且つ特定の分子量分布を持たないフェノールノボラック型エポキシ樹脂を用いた場合よりも低いリン含有率で難燃性が得られている。
【0072】
また、ガラス転移温度、接着力に関しても実施例での硬化物の物性は比較例に比べ高い値を示している。これは、ノボラック型エポキシ樹脂の構成成分である二官能エポキシ樹脂は、リン化合物と反応した際にエポキシ基を持たない誘導体成分を生成するが、本発明で用いるエポキシ樹脂類(a)は二核体成分が少なく、エポキシ基を持たない誘導体成分の低減が出来ること、また、リン化合物が反応した場合に構造的に嵩高い高分子量誘導体成分となる4核体以上の高分子量成分が低減されていることから、得られるエポキシ樹脂(A)は立体障害等による硬化反応性を悪化させることがなく、難燃性と硬化物の物性が飛躍的に向上したものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、特定のリン化合物とシアヌル酸と特定の分子量分布を持つフェノールノボラック型エポキシ樹脂を反応して得られるリン及び窒素を分子内に含有するエポキシ樹脂(A)であって難燃性、耐熱性、接着性に優れた電子回路基板用のエポキシ樹脂として利用することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

[式中、
R1及びR2は炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよく、リン原子と共にR1,R2が環状構造をとってもよく、
nは0または1を表し、そして
Xは水素原子又は一般式2:
【化2】

(式中Aは炭素数6から20のアリーレン基及び/またはトリイル基を表わす。)]
で示されるリン化合物とシアヌル酸とエポキシ樹脂(a)を反応して得られるリン及び窒素を分子内に含有するエポキシ樹脂(A)において、前記エポキシ樹脂(a)が、下記条件下でのゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおける測定において二核体含有率が15面積%以下、三核体含有率が15面積%〜60面積%であり、数平均分子量が350〜700である分子量分布を持つノボラック型エポキシ樹脂(b)である、ことを特徴とするリン及び窒素を分子内に含有するエポキシ樹脂(A)。
(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定条件)
東ソー株式会社製 TSKgelG4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXLを直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にし、また、溶離液にはテトラヒドロフランを用い、1ml/minの流速とし、検出器はRI(示差屈折計)検出器を用い、サンプル0.1gを10 mlのTHFに溶解する。標準ポリスチレンによる検量線により数平均分子量を測定する。
【請求項2】
請求項1に記載のリン及び窒素を分子内に含有するエポキシ樹脂(A)と硬化剤を必須成分とし、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基1当量に対して硬化剤の官活性基を0.4当量〜2.0当量を配合してなるエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物を基材に含浸してなるプリプレグ。
【請求項4】
請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物。
【請求項5】
請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる積層板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−107980(P2013−107980A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253863(P2011−253863)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000006644)新日鉄住金化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】