説明

リン含有エポキシ樹脂およびリン含有エポキシ樹脂組成物、その製造方法と該樹脂および該樹脂組成物を用いた硬化性樹脂組成物および硬化物

【課題】電子回路基板に用いられる銅張積層板や電子部品に用いられる封止材、成形材、注型材、接着剤、電気絶縁塗料用材料、電気絶縁シート、樹脂付き銅箔、プリプレグ、電気積層板などに適した、反応性の高いリン含有エポキシ樹脂及びリン含有エポキシ樹脂組成物の提供。
【解決手段】下記一般式(2)で示されるリン含有フェノール化合物を用いる際に、式(2)のフェノール性水酸基を1のみ含有するリン含有フェノール化合物の含有率を2.5%以下とすることにより硬化反応性の高いリン含有エポキシ樹脂。


n:0又は1R1,R2は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でも良く、直鎖状、分岐鎖状、環状であっても良い。また、R1とR2が結合し、環状構造となっていても良い。Bはベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン及びこれらの炭化水素置換体のいずれかを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子回路基板に用いられる銅張積層板、フィルム剤、樹脂付き銅箔などを製造するエポキシ樹脂組成物や電子部品に用いられる封止材、成形材、注型材、接着剤、電気絶縁塗装材料などとして有用なリン含有エポキシ樹脂およびリン含有エポキシ樹脂組成物、その製造方法と該樹脂を用いた硬化性樹脂組成物および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は接着性、耐熱性、成形性に優れていることから電子部品、電気機器、自動車部品、FRP、スポーツ用品などに広範囲に使用されている。中でも電子部品、電気機器に使用される銅張積層板や封止材には火災の防止、遅延などといった安全性が強く要求されていることから、これまでこれらの特性を有する臭素化エポキシ樹脂などが使用されている。比重が大きいという問題を有しているものの、エポキシ樹脂にハロゲン、特に臭素を導入することにより難燃性が付与されること、エポキシ基は高反応性を有し、優れた硬化性が得られることから臭素化エポキシ樹脂類は有用な電子、電気材料として位置づけられている。
【0003】
しかし最近の電子機器を見ると、いわゆる軽薄短小を最重要視する傾向が次第に強くなってきている。このような社会的要求下において、比重の大きいハロゲン化物は最近の軽量化傾向の観点からは好ましくない材料であり、また、高温で長期にわたって使用した場合、ハロゲン化物の解離が起こり、これによって配線腐食の発生のおそれがある。さらに使用済みの電子部品、電気機器の燃焼の際にハロゲン化物などの有害物質を発生し、環境安全性の視点からもハロゲンの利用が問題視されるようになり、これに代わる材料が研究されるようになった。
【0004】
特許請求の範囲に記載の一般式1で示される化合物に関する公知文献として、参考文献1にはHCA−HQ(三光株式会社製 10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド)とエポキシ樹脂類とを所定のモル比で反応させて得られる熱硬化性樹脂が開示されている特許文献2には少なくとも2個以上のエポキシ樹脂を有するエポキシ化合物をジフェニルホスフィルヒドロキノンとを反応させてなるリン含有エポキシ樹脂の製造方法が開示されている。特許文献3にはエポキシ樹脂、リン原子上に芳香族基を有するホスフィン化合物およびキノン化合物を有機溶媒存在化に反応させることを特徴とする難燃性エポキシ樹脂の製造方法が開示されている。特許文献4には一般式2で表されるリン含有多価フェノール化合物とエポキシ樹脂を反応させて得られるリン含有エポキシ樹脂、リン含有難燃性エポキシ樹脂組成物が開示されている。参考文献5には9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドと1,4−ベンゾキノンおよび/または1,4−ナフトキノンを反応系内の総水分量が、反応に用いる9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド全量に対して0.3重量%以下になるように制御して反応させて反応組成物を得る工程1と工程1で得られた反応組成物を精製することなく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはビスフェノールF型エポキシ樹脂と反応させる工程2をおこなってリン含有難燃性ビスフェノール型エポキシ樹脂を製造する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平04−11662号公報
【特許文献2】特開平05−214070公報
【特許文献3】特開2000−309624公報
【特許文献4】特開2002−265562公報
【特許文献5】特開2006−342217公報 しかしいずれの特許文献でも硬化剤と硬化性に関しては記載がない。
【0005】
特許文献6には、一般式2で示される化合物である構造式3を含む一官能性の有機リン化合物類の記載があり、「エポキシ基と反応して、樹脂中にいわゆるペンダントを形成するためにエポキシ樹脂類の架橋密度が減少して硬化速度の遅延、耐熱性の低下または機械的強度の低下などの弊害が大きく、難燃線を十分に発現する程度の量を使用することは困難である。」と記載されており、反応型の有機リン化合物として一官能性の有機リン化合物類を十分に難燃性を発揮する程度の量(一般的には十数重量%〜数十重量%)を使用すると架橋密度が減少し、硬化速度の遅延等の問題があることが記載されている。
【特許文献6】特開2000−154234公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、各種のリン含有エポキシ樹脂の硬化剤との反応性につき検討した結果、得られたリン含有エポキシ樹脂により著しい反応性の差があることを見いだした。エポキシ樹脂の反応性の指標であるゲルタイムが長い場合は、たとえば積層圧着時の硬化の際には樹脂が流れすぎてしまい、得られる積層板は樹脂分が不足することにより接着力低下、マイグレーションの発生、ハンダ浸漬時のふくれなどの不具合が生じてしまう。また、ゲルタイムを硬化触媒の配合量を増やすことにより調整した場合においては、プリプレグの貯蔵安定性が悪くなり、長期保存ができない等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は前記の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、一般式1で示される化合物とエポキシ樹脂類とを反応して得られるリン含有エポキシ樹脂において、反応前の系における一般式2で示される化合物の含有率(重量%)を、反応して得られるリン含有エポキシ樹脂のリン含有率(重量%)で除することにより得られた値が0.3を越える場合にエポキシ樹脂の硬化反応性が著しく損なわれることを見いだし、本願発明のリン含有エポキシ樹脂を完成したものであり、前記の課題を解決するための手段はその特許請求の範囲に記載した下記のようなものである。
【0008】
(1)一般式1で示される化合物とエポキシ樹脂類とを反応して得られるリン含有エポキシ樹脂において、反応前の系における一般式2で示される化合物の含有率(重量%)を、反応して得られるリン含有エポキシ樹脂のリン含有率(重量%)で除することにより得られた値が0.3以下となることを特徴とするリン含有エポキシ樹脂の製造方法。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

式(1)及び式(2)において、R1,R2は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でも良く、直鎖状、分岐鎖状、環状であっても良い。また、R1とR2が結合し、環状構造となっていても良く、Bはベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン及びこれらの炭化水素置換体のいずれかを示す。nは0または1である。
(2)前記(1)に記された方法により得られたリン含有エポキシ樹脂。
(3)前記(2)に記載のリン含有エポキシ樹脂を用いることを特徴とするリン含有ビニルエステル樹脂。
(4)前記(2)のリン含有エポキシ樹脂を必須成分とし、硬化剤を配合してなるリン含有エポキシ樹脂組成物。
(5)前記(3)のリン含有ビニルエステル樹脂を必須成分とし、ラジカル重合開始剤および/または硬化剤を配合してなるラジカル重合性樹脂組成物。
(6)前記(4)記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を用いて得られる電子回路基板用材料。
(7)前記(4)記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を用いて得られる封止材。
(8)前記(4)記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を用いて得られる注型材。
(9)前記(4)から(8)のいずれかに記載のリン含有エポキシ樹脂組成物、ラジカル重合性樹脂組成物、電子回路基板用材料、封止材、注型材を硬化してなる硬化物。
【発明の効果】
【0011】
一般式(1)で示される化合物とエポキシ樹脂類とを反応して得られるリン含有エポキシ樹脂において、反応前の系における一般式(2)で示される化合物の含有率(重量%)を、反応して得られるリン含有エポキシ樹脂のリン含有率(重量%)で除することにより得られた値が0.3以下となることを特徴とするリン含有エポキシ樹脂を用いることにより、ゲルタイムを遅延することなく接着力、耐マイグレーション、耐ハンダ浸漬性、プリプレグでの貯蔵安定性に優れたリン含有エポキシ樹脂および電子回路基板用材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のリン含有エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂類と一般式(1)で示される化合物を反応して得られるが、反応前の系における一般式(2)で示される化合物の含有率(重量%)を、反応して得られるリン含有エポキシ樹脂のリン含有率(重量%)で除することにより得られた値が0.3以下、好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.05以下である。一般式(1)および一般式(2)で示される化合物は、エポキシ樹脂類と反応して構造が変化し更にリン元素を含有することから、反応前の系における一般式(2)で示される化合物の含有率(重量%)を反応後のリン含有エポキシ樹脂のリン含有率(重量%)で除することにより、得られるリン含有エポキシ樹脂に含有される一般式(2)で示される化合物の誘導体の含有割合を、反応前の含有率として前以て規定することにより、リン含有エポキシ樹脂の硬化反応性を制御するための指標として用いることができるである。更に一般式(1)で示されるリン含有化合物以外に、他のリン含有化合物(例えばシクロフェノキシホスファゼンなど)の少なくとも1種を併用する場合であっても、リン含有化合物全体中に占める一般式(2)で示される化合物の含有率を前以て規定することにより、リン含有エポキシ樹脂の硬化反応性を制御するための指標として有用に用いることができるものである。
【0013】
本発明で用いる一般式(1)で示される化合物は、たとえば、非特許文献1やロシアの一般的な雑誌である非特許文献2や特許文献7特許文献8,特許文献9,特許文献10に示される方法により得られる。特許文献7,特許文献8、特許文献9ではキノン化合物に対してHCA(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド)を常に当量以上存在する状態で反応することが記載されており、反応後は洗浄溶媒として反応溶媒を用いることが記載されている。これは過剰に用いたリン化合物を除去する目的である。
【非特許文献1】I.G.M.Campbell and I.D.R. Stevens, Chemidal Communications, 第505-506頁(1966年)
【非特許文献2】(Zh. Obshch.Khim.), 42(11), 第2415-2418頁(1972)
【特許文献7】特開昭60−126293号公報
【特許文献8】特開昭61−236787号公報
【特許文献9】特開平5−331179号公報
【特許文献10】特開平05−39345号公報
【0014】
また、一般式(1)で示される化合物は、非特許文献1、非特許文献2、特許文献7〜10で開示されている方法により製造され、洗浄、再結晶などの精製手段によって製造コストを上昇させ、純度99%以上としたものが知られている。その際に一般式(2)で示される化合物が他の不純物とともに副生される。その反応式を式1に示す。反応式1は一般式(1)で示される化合物と一般式(2)で示される化合物の生成を例示するが、反応式1中で示される一般式(3)の化合物が残存する例である。
【0015】
反応式1
【0016】
【化3】


式中、R1,R2は水素または炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でもよく、直鎖状、分岐鎖状、環状であってもよい。また、R1とR2が結合し、環状構造となっていてもよい。Bはベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、フェナントレンおよびこれらの炭化水素置換体のいずれかを示す。nは0または1である。
【0017】
本発明者は、一般式(2)で示される化合物を不純物成分として含有する一般式(1)で示される化合物を使用して得られたエポキシ樹脂は、架橋密度が減少するほどの量ではないわずかな量の一般式(2)で示される化合物の含有率であっても、反応速度が著しく遅延する事を見いだし、本発明に至ったものであり、従来の単官能フェノールでは考えられないほどエポキシ樹脂の反応速度の遅延効果が特異的に大きいことがわかった。したがって、一般式(1)で示される化合物を必要以上の製造コストをかけて精製して高純度とする以外に、この一般式(2)で示される化合物の成分の管理が電子回路基板、封止材、注型材などに使用された場合の不具合を解決できるのである。
【0018】
反応前の系における一般式2で示される化合物の含有率(重量%)を、反応して得られるリン含有エポキシ樹脂のリン含有率(重量%)で除することにより得られた値が0.3以下となることを特徴とし、得られたリン含有エポキシ樹脂は硬化剤との反応性に与える影響が少ない。すなわち、一般式(2)で示される化合物の含有率(重量%)をリン含有率(重量%)で除した値を0.3以下、好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.1以下、望ましくは0.05以下とし、反応してエポキシ樹脂を得る。一般式(2)で示される化合物が、その含有率(重量%)をリン含有率(重量%)で除した値が0.3を越えて含有するエポキシ樹脂類は硬化剤との反応性が著しく遅延することから実用性に劣るものとなる。
【0019】
本発明で用いられる一般式(1)で示される化合物は非特許文献1〜2、特許文献7〜10で開示されている方法により製造することができ、製造後の抽出、洗浄、再結晶、蒸留などの精製操作などにより一般式2で示される化合物を低減することができる。また、これらの方法によらず一般式1で示される化合物の反応条件により一般式(2)で示される化合物を低減してもよい。
【0020】
一般式(1)で示される化合物の具体例としては、構造式1で表されるHCA−HQ(三光株式会社製 10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド)、構造式2で表されるHCA−NQ(10−(2,7−ジヒドロキシナフチル)−10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド)、PPQ(北興化学工業株式会社 ジフェニルホスフィニルハイドロキノン)、ジフェニルホスフィニルナフトキノン、CPHO−HQ(日本化学工業株式会社製 シクロオクチレンホスフィニル−1,4−ベンゼンジオール)、シクロオクチレンホスフィニル−1,4−ナフタレンジオール、特開2002−265562で開示されているリン含有フェノール化合物等が挙げられるが、2種類以上併用しても良い。
構造式1
【0021】
【化4】

構造式2
【0022】
【化5】

【0023】
一般式(1)で示される化合物と反応をおこなうエポキシ樹脂類はグリシジルエーテル基をもったものが望ましい。具体的にはエポトート YDC−1312、ZX−1027(東都化成株式会社製 ハイドロキノン型エポキシ樹脂)、ZX−1251(東都化成株式会社製 ビフェノール型エポキシ樹脂)、エポトート YD−127、エポトート YD−128、エポトート YD−8125、エポトート YD−825GS、エポトート YD−011、エポトート YD−900、エポトート YD−901(東都化成株式会社製 BPA型エポキシ樹脂)、エポトート YDF−170、エポトート YDF−8170、エポトート YDF−870GS、エポトート YDF−2001(東都化成株式会社製 BPF型エポキシ樹脂)、エポトート YDPN−638(東都化成株式会社製 フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、エポトート YDCN−701(東都化成株式会社製 クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、ZX−1201(東都化成株式会社製 ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂)、NC−3000(日本化薬株式会社製 ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂)、EPPN−501H、EPPN−502H(日本化薬株式会社製 多官能エポキシ樹脂)ZX−1355(東都化成株式会社製 ナフタレンジオール型エポキシ樹脂)、ESN−155、ESN−185V、ESN−175(東都化成株式会社製 βナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、ESN−355、ESN−375(東都化成株式会社製 ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)、ESN−475V、ESN−485(東都化成株式会社製 αナフトールアラルキル型エポキシ樹脂)等の多価フェノール樹脂等のフェノール化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、エポトート YH−434、エポトート YH−434GS(東都化成株式会社製 ジアミノジフェニルメタンテトラグリシジルエーテル)等のアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂、YD−171(東都化成株式会社製 ダイマー酸型エポキシ樹脂)等のカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるエポキシ樹脂などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく2種類以上併用しても良い。ただし、反応前の系における一般式2で示される化合物の含有率(重量%)を、反応して得られるリン含有エポキシ樹脂のリン含有率(重量%)で除することにより得られた値を0.3以下、好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.1以下、望ましくは0.05以下となるように仕込まなければならない。
【0024】
合成方法としては通常の多官能フェノール類とエポキシ樹脂類の反応と同様に、一般式(1)で示される化合物とエポキシ樹脂類を仕込み、加熱溶融して反応をおこなう。ただし、反応前の系における一般式(2)で示される化合物の含有率(重量%)を、反応して得られるリン含有エポキシ樹脂のリン含有率(重量%)で除することにより得られた値を0.3以下、好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.1以下、望ましくは0.05以下となるように仕込まなければならない。反応温度として100℃〜200℃より好ましくは120℃〜180℃で攪拌下、反応を行う。この反応の速度が遅い場合、必要に応じて触媒を使用して生産性の改善を計ることができる。具体的な触媒としてはベンジルジメチルアミン等の第3級アミン類、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等各種触媒が使用可能である。また、反応時の粘度によっては反応溶媒を使用しても良い。具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、2種類以上使用しても良い。
【0025】
必要に応じて各種エポキシ樹脂変性剤を併用しても良い。ただし、反応前の系における一般式2で示される化合物の含有率(重量%)を、反応して得られるリン含有エポキシ樹脂のリン含有率(重量%)で除することにより得られた値を0.3以下、好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.1以下、望ましくは0.05以下となるように仕込まなければならない。変性剤としてはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、テトラブチルビスフェノールA、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシスチルベン類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、テルペンフェノール樹脂、重質油変性フェノール樹脂、臭素化フェノールノボラック樹脂などの種々のフェノール類や、種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂や、アニリン、フェニレンジアミン、トルイジン、キシリジン、ジエチルトルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジフェニルケトン、ジアミノジフェニルスルフィド、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(アミノフェニル)フルオレン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノベンズアニリド、ジアミノビフェニル、ジメチルジアミノビフェニル、ビフェニルテトラアミン、ビスアミノフェニルアントラセン、ビスアミノフェノキシベンゼン、ビスアミノフェノキシフェニルエーテル、ビスアミノフェノキシビフェニル、ビスアミノフェノキシフェニルスルホン、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン、ジアミノナフタレン等のアミン化合物が挙げられる。
【0026】
本発明で用いるリン含有エポキシ樹脂のリン含有量は好ましくは0.3〜4重量%、より好ましくは0.5〜3.6重量%、更に好ましくは1.0〜3.1重量%であり、リン含有エポキシ樹脂を含んでなるリン含有エポキシ樹脂組成物中の有機成分中のリンの含有量は好ましくは0.2〜4重量%、より好ましくは0.4〜3.5重量%、更に好ましくは0.6〜3重量%である。リン含有エポキシ樹脂組成物中の有機成分中のリンの含有量が0.2重量%以下になると難燃性の確保が難しくなり、5重量%以上だと耐熱性に悪影響を与える為に、0.2重量%から4重量%に調整することが望ましい。
【0027】
また、本発明で用いるリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は好ましくは200〜1500g/eq、より好ましくは250〜1000g/eq、更に好ましくは300〜800g/eqである。エポキシ当量が200g/eq未満の場合は接着性に劣り、1500g/eqを越えると耐熱性に悪影響を与えるために200〜1500g/eqに調整することが望ましい。
【0028】
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物の硬化剤としては、各種フェノール樹脂類や酸無水物類、アミン類、ヒドラジッド類、酸性ポリエステル類等の通常使用されるエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができ、これらの硬化剤は1種類だけ使用しても2種類以上使用しても良い。
【0029】
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物には必要に応じて第3級アミン、第4級アンモニウム塩、ホスフィン類、イミダゾール類等の硬化促進剤を配合することができる
【0030】
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物には、粘度調整用として有機溶剤も用いることができる。用いることが出来る有機溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、これらの溶剤のうちの1種類だけ使用しても2種類以上使用しても良く、エポキシ樹脂濃度として30〜80重量%の範囲で配合することができる。
【0031】
本発明のリン含有エポキシ樹脂組成物で用いられるフィラーとしては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、焼成タルク、クレー、カオリン、酸化チタン、ガラス粉末、微粉末シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、シリカバルーン等の無機フィラーが挙げられるが、顔料等を配合しても良い。一般的無機充填材を用いる理由として、耐衝撃性の向上が挙げられる。また、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を用いた場合、難燃助剤として作用し、リン含有量が少なくても難燃性を確保することが出来る。特に配合量が10%以上でないと、耐衝撃性の効果は少ない。しかしながら、配合量が150%を越えると積層板用途として必要な項目である接着性が低下する。また、シリカ、ガラス繊維、パルプ繊維、合成繊維、セラミック繊維等の繊維質充填材や微粒子ゴム、熱可塑性エラストマーなどの有機充填材を上記樹脂組成物に含有することもできる。
【0032】
上記のようなリン含有エポキシ樹脂組成物にて得られる電子回路基板用材料としては、樹脂シート、樹脂付き金属箔、プリプレグ、積層板が挙げられる。樹脂シートを製造する方法としては、特に限定するものではないが、例えばポリエステルフィルム、ポリイミドフィルムなどのエポキシ樹脂組成物に溶解しないキャリアフィルムに、上記のようなリン含有エポキシ樹脂組成物を好ましくは5〜100μmの厚みに塗布した後、100〜200℃で1〜40分加熱乾燥してシート状に成型する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で樹脂シートが形成されるものである。このときリン含有エポキシ樹脂組成物を塗布するシートにはあらかじめ離型剤にて表面処理を施しておくと、成型された樹脂シートを容易に剥離することが出来る。ここで樹脂シートの厚みは5〜80μmに形成することが望ましい。
【0033】
次に、上記のようなリン含有エポキシ樹脂組成物にて得られる樹脂付き金属箔について説明する。金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。厚みとして9〜70μmの金属箔を用いることが好ましい。リン含有エポキシ樹脂を含んでなる難燃性樹脂組成物及び金属箔から樹脂付き金属箔を製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば上記金属箔の一面に、上記リン含有エポキシ樹脂組成物を溶剤で粘度調整した樹脂ワニスをロールコーター等を用いて塗布した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)して樹脂層を形成することにより得られるものである。樹脂成分を半硬化するにあたっては、例えば100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥することができる。ここで、樹脂付き金属箔の樹脂部分の厚みは5〜110μmに形成することが望ましい。
【0034】
次に、上記のようなリン含有エポキシ樹脂組成物を用いて得れらるプリプレグについて説明する。シート状基材としては、ガラス等の無機繊維や、ポリエステル等、ポリアミン、ポリアクリル、ポリイミド、ケブラー等の有機質繊維の織布又は不織布を用いることができるがこれに限定されるものではない。リン含有エポキシ樹脂組成物及び基材からプリプレグを製造する方法としては、特に限定するものではなく、例えば上記基材を、上記エポキシ樹脂組成物を溶剤で粘度調整した樹脂ワニスに浸漬して含浸した後、加熱乾燥して樹脂成分を半硬化(Bステージ化)して得られるものであり、例えば100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥することができる。ここで、プリプレグ中の樹脂量は、樹脂分30〜80重量%とすることが好ましい。
【0035】
次に、上記のような樹脂シート、樹脂付き金属箔、プリプレグ等を用いて積層板を製造する方法を説明する。プリプレグを用いて積層板を形成する場合は、プリプレグを一又は複数枚積層し、片側又は両側に金属箔を配置して積層物を構成し、この積層物を加熱・加圧して積層一体化する。ここで金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の単独、合金、複合の金属箔を用いることができる。積層物を加熱加圧する条件としては、エポキシ樹脂組成物が硬化する条件で適宜調整して加熱加圧すればよいが、加圧の圧力があまり低いと、得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気的特性が低下する場合があるため、成形性を満足する条件で加圧することが好ましい。例えば温度を160〜220℃、圧力を49.0〜490.3N/cm2(5〜50kgf/cm2)、加熱加圧時間を40〜240分間にそれぞれ設定することができる。更にこのようにして得られた単層の積層板を内層材として、多層板を作製することができる。この場合、まず積層板にアディティブ法やサブトラクティブ法等にて回路形成を施し、形成された回路表面を酸溶液で処理して黒化処理を施して、内層材を得る。この内層材の、片側又は両側の回路形成面に、樹脂シート、樹脂付き金属箔、又はプリプレグにて絶縁層を形成すると共に、絶縁層の表面に導体層を形成して、多層板を形成するものである。樹脂シートにて絶縁層を形成する場合は、複数枚の内層材の回路形成面に樹脂着シートを配置して積層物を形成する。あるいは内層材の回路形成面と金属箔の間に樹脂シートを配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成形することにより、樹脂シートの硬化物を絶縁層として形成すると共に、内層材の多層化を形成する。あるいは内層材と導体層である金属箔を樹脂シートの硬化物を絶縁層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層材として用いられる積層板に用いたものと同様のものを用いることもできる。また加熱加圧成形は、内層材の形成と同様の条件にて行うことができる。積層板に樹脂を塗布して絶縁層を形成する場合は、内層材の最外層の回路形成面樹脂をリン含有エポキシ樹脂組成物またはリン含有エポキシ樹脂を含んでなる難燃性エポキシ樹脂組成物を好ましくは5〜100μmの厚みに塗布した後、100〜200℃で1〜90分加熱乾燥してシート状に成形する。一般にキャスティング法と呼ばれる方法で形成されるものである。乾燥後の厚みは5〜80μmに形成することが望ましい。このようにして形成された多層積層板の表面に、更にアディティブ法やサブトラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成をほどこして、プリント配線板を形成することができる。また更にこのプリント配線板を内層材として上記の工法を繰り返すことにより、更に多層の多層板を形成することができるものである。また樹脂付き金属箔にて絶縁層を形成する場合は、内層材の回路形成面に、樹脂付き金属箔を、樹脂付き金属箔の樹脂層が内層材の回路形成面と対向するように重ねて配置して、積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成形することにより、樹脂付き金属箔の樹脂層の硬化物を絶縁層として形成すると共に、その外側の金属箔を導体層として形成するものである。ここで加熱加圧成形は、内層材の形成と同様の条件にて行うことができる。またプリプレグにて絶縁層を形成する場合は、内層材の回路形成面に、プリプレグを一枚又は複数枚を積層したものを配置し、更にその外側に金属箔を配置して積層物を形成する。そしてこの積層物を加熱加圧して一体成形することにより、プリプレグの硬化物を絶縁層として形成すると共に、その外側の金属箔を導体層として形成するものである。ここで、金属箔としては、内層板として用いられる積層板に用いたものと同様のものを用いることもできる。また加熱加圧成形は、内層材の形成と同様の条件にて行うことができる。このようにして形成された多層積層板の表面に、更にアディティブ法やサブトラクティブ法にてバイアホール形成や回路形成をほどこして、プリント配線板を形成することができる。また更にこのプリント配線板を内層材として上記の工法を繰り返すことにより、更に多層の多層板を形成することができるものである。
【0036】
本発明のリン含有エポキシ樹脂と該組成物を使用して得られた積層板の特性の評価を行った結果、一般式(1)で示される化合物の含有率が2.5重量%以下である一般式(2)で示される化合物とエポキシ樹脂類とを反応して得られるリン含有エポキシ樹脂は硬化剤との反応性が高く、硬化時の樹脂の流れ性と硬化性のバランスが良くプリプレグ、及びそのプリプレグを加熱硬化して得られる積層板は、ハロゲン化物を含有しないで難燃性を有しており、ハンダ耐熱性の優れた樹脂組成物であった。
【実施例】
【0037】
実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。一般式1で示される化合物に含有する一般式2で示される化合物の含有率はHPLCを用いて測定した。Hewlett Packerd社製Agilent1100seriesの装置を使用し、Imtakt社製Cadenza CD−C18のCD006のカラムを用いた。溶離液として水とメタノールを用い、メタノール60%でサンプル測定を開始し、16分にメタノール100%となるようグラジエントを行った。流速は0.5ml/minとし、UV検出器により波長266nmで測定を行った。また、難燃性はUL(Underwriter Laboratorics)規格に準じて測定を行った。ワニスゲルタイムは160℃にて測定をおこなった。銅箔剥離強さはJIS C 6481 5.7に準じて、層間接着力はJIS C 6481 5.7に準じてプリプレグ1枚と残りの3枚の間で剥離を行い測定した。ハンダ耐熱性はJIS C 6481 5.5に準じて280℃で実施し、膨れ又ははがれの有無を目視によって調べ膨れ又ははがれの無いものを○、有るものを×とした。また、硬化物のガラス転移温度、硬化発熱量はセイコーインスツルメンツ株式会社製 Exster6000で測定を行った。硬化発熱量保持率は作成直後のプリプレグの総硬化発熱量を100%とした時、60℃で72時間保存した後のプリプレグの総硬化発熱量を百分率で求めたもので、数字が小さいほど貯蔵安定性が悪いことを示している。
【0038】
(一般式2に示される化合物の構造確認)
一般式1の化合物として構造式1で示されるHCA−HQのHPLCを測定した。またこれを分取し、硬化反応の遅延成分をとりだし、FD−MASS、FTIR、プロトンNMRで測定した。MASSの測定結果から分子量は324であり、FTIRの結果をHCA−HQと比較したところ、フェノール性水酸基の減少、ベンゼン3置換体の減少、ベンゼン2置換体の増加が認められた。プロトンNMRの結果からヒドロキノン由来の水酸基に対してp位でHCAが結合していることが確認された。以上のことから13.6分のピークは構造式3と確認した。一般式1の化合物として10−(2,7−ジヒドロキシナフチル)−10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドも同様に分析を行い、構造式4の成分を確認した。
構造式3
【0039】
【化5】

構造式4
【0040】
【化6】

【0041】
合成例1
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコに、一般式1で示される化合物としてHCA−HQ 31.72重量部とYDF−170 68.28重量部を仕込み、窒素雰囲気下、120℃まで加熱をおこなった。触媒としてトリフェニルホスフィンを0.32重量部添加して、160℃で4時間反応した。一般式1で示される化合物の純度は99.5重量%であった。反応系に含まれる一般式2で示される化合物、具体的には構造式3で示される化合物の含有量は0.003重量%であった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は480.0g/eq、リン含有率は3.0重量%であった。
合成例2
一般式2で示される化合物、具体的には構造式3で示される化合物を0.17重量%含有する一般式1で示される化合物HCA−HQを使用した以外は合成例1と同様な操作をおこなった。一般式1で示される化合物の純度は99.4重量%であった。反応系に含まれる一般式2で示される化合物の含有量は0.05重量%であった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は484.1g/eq、リン含有率は3.0重量%であった。
【0042】
合成例3
一般式2で示される化合物、具体的には構造式3で示される化合物を0.33重量%含有する一般式1で示される化合物HCA−HQを使用した以外は合成例1と同様な操作をおこなった。一般式1で示される化合物の純度は99.1重量%であった。反応系に含まれる一般式2で示される化合物の含有量は0.10重量%であった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は488.4g/eq、リン含有率は3.0重量%であった。
【0043】
合成例4
一般式2で示される化合物、具体的には構造式3で示される化合物を0.65重量%含有する一般式1で示される化合物HCA−HQを使用した以外は合成例1と同様な操作をおこなった。一般式1で示される化合物の純度は98.7重量%であった。反応系に含まれる一般式2で示される化合物の含有量は0.21重量%であった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は488.3g/eq、リン含有率は3.0重量%であった。
【0044】
合成例5
一般式2で示される化合物、具体的には構造式3で示される化合物を0.95重量%含有する一般式1で示される化合物HCA−HQを使用した以外は合成例1と同様な操作をおこなった。一般式1で示される化合物の純度は98.2重量%であった。反応系に含まれる一般式2で示される化合物の含有量は0.30重量%であった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は487.7g/eq、リン含有率は3.0重量%であった。
【0045】
合成例6
一般式2で示される化合物、具体的には構造式3で示される化合物を1.20重量%含有する一般式1で示される化合物HCA−HQを使用した以外は合成例1と同様な操作をおこなった。一般式1で示される化合物の純度は97.9重量%であった。反応系に含まれる一般式2で示される化合物の含有量は0.38重量%であった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は486.3g/eq、リン含有率は3.0重量%であった。
【0046】
合成例7
合成例1と同様な装置に、HCAを21.15重量部とトルエンを50重量部仕込み、窒素雰囲気下で75℃まで加温し、溶解した。ここにパラベンゾキノンを30分かけて少量ずつ10.47重量部仕込み、85℃で30分保持した後昇温し、還流温度で3時間反応をおこなった。生成した一般式1で示される化合物HCA−HQに含まれる一般式2で示される化合物、具体的には構造式3で示される化合物の含有率は2.40重量%であった。また、一般式1に示される化合物の純度は95.0重量%であった。これにYDF−170を68.39重量部仕込み、150℃まで加温し、トルエンを還流除去した。反応系に含まれる一般式2で示される化合物の含有量は0.76重量%であった。トリフェニルホスフィン0.32重量部を添加して160℃で4時間反応した。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は470.2g/eq、リン含有率は3.0重量%であった。
【0047】
合成例8
合成例1と同様な装置に、一般式2で示される化合物、具体的には構造式3で示される化合物の含有率が0.01重量%である一般式2で示される化合物HCA−HQを31.09重量部、HCAを0.63重量部、YDF−170を68.28重量部仕込み、合成例1と同様な操作をおこなった。仕込んだHCAとHCA−HQの合計に対して、一般式1で示される化合物の純度は97.3重量%であった。反応系に含まれる一般式2で示される化合物の含有量は0.003重量%であった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は480.3g/eq、リン含有率は3.0重量%であった。
【0048】
合成例9
一般式2で示される化合物、具体的には構造式4で示される化合物の含有量が0.15重量%である一般式1で示される化合物、具体的には構造式2で示される化合物を26.86重量部、YDF−8170を73.14重量部使用した以外は合成例1と同様な操作をおこなった。一般式1で示される化合物で示される化合物の純度は90.1重量%であった。反応系に含まれる一般式2で示される化合物の含有量は0.04重量%であった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は321.8g/eq、リン含有率は2.2重量%であった。
【0049】
合成例10
一般式2で示される化合物、具体的には構造式3で示される化合物を3.10重量%含有する一般式1で示される化合物HCA−HQを使用した以外は合成例1と同様な操作をおこなった。一般式1で示される化合物の純度は93.0重量%であった。反応系に含まれる一般式2で示される化合物の含有量は0.98重量%であった。得られた樹脂のエポキシ当量は471.1g/eq、リン含有率は3.0重量%であった。
【0050】
合成例11
合成例1と同様な装置にHCA21.15重量部とトルエン40重量部を仕込み、窒素雰囲気下、75℃まで加温し、溶解した。YDF−170を69.13重量部仕込んで溶解し、パラベンゾキノン9.73重量部を2時間かけて少量ずつ添加した。添加終了後、還流温度で3時間保持したのちトルエンを還流除去し、トリフェニルホスフィンを0.32重量部添加して160℃にて4時間反応をおこなった。一般式1で示される化合物HCA−HQに含まれる一般式2で示される化合物の含有率は3.50重量%であった。一般式1で示される化合物の純度は69.4重量%だった。反応系に含まれる一般式2で示される化合物の含有量は1.08重量%であった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は444.4g/eq、リン含有率は3.0重量%であった。
【0051】
合成例12
一般式2で示される化合物、具体的には構造式4で示される化合物を2.60重量%含有する一般式1で示される化合物、具体的には構造式2で示される化合物を使用した以外は合成例9と同様な操作をおこなった。一般式1で示される化合物の純度は77.0重量%であった。反応系に含まれる一般式2で示される化合物の含有量は0.70重量%であった。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は321.4g/eq、リン含有率は2.2重量%であった。
【0052】
表1および表2に示す配合処方により各合成例で得られたエポキシ樹脂、ジシアンジアミド硬化剤、イミダゾール硬化促進剤を配合し、溶剤に溶解して積層板評価をおこなった。表1および表2に実施例1〜9、比較例1〜3の結果をまとめる。表3に示す配合処方によりフェノールノボラック樹脂硬化剤、イミダゾール硬化促進剤を配合し、溶剤に溶解してゲルタイムによる反応性評価をおこなった。表3に実施例10〜12、比較例4の結果をまとめる。表4に実施例13と比較例5において触媒量を調整してゲルタイムを同程度にあわせた際の貯蔵安定性評価を硬化発熱量保持率(%)としてまとめる。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
表1,2,3に記載されている物性から明らかなように、一般式2で示される化合物の含有率が高くなると、ゲルタイムが著しく遅くなり、硬化反応性に影響を及ぼす。表1,表2でジシアンジアミド硬化剤で評価をおこない、表3ではフェノールノボラック樹脂硬化剤で評価をおこなっているが、いずれの硬化剤でも一般式2で示される化合物の含有率が高くなると、ゲルタイムが著しく遅くなることから硬化剤の種類によらず影響を及ぼすことがわかる。これはたとえば積層板を作成した場合には樹脂分が不足することにより接着力低下、マイグレーションの発生、ハンダ浸漬時のふくれや割れなどの不具合を生じる。また、表4の比較例5のようにゲルタイムを調整するため、硬化触媒の配合量を増やした場合においては硬化発熱保持率が小さくなり、プリプレグでの貯蔵安定性が悪くなることによって長期保存ができないなどの問題がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される化合物とエポキシ樹脂類とを反応して得られるリン含有エポキシ樹脂の製造方法において、反応前の系における一般式(2)で示される化合物の含有率(重量%)を、反応して得られるリン含有エポキシ樹脂のリン含有率(重量%)で除することにより得られた値が0.3以下となることを特徴とするリン含有エポキシ樹脂の製造方法。
【化1】

【化2】

式(1)及び式(2)において、R1,R2は水素又は炭化水素基を示し、各々は異なっていても同一でも良く、直鎖状、分岐鎖状、環状であっても良い。また、R1とR2が結合し、環状構造となっていても良く、Bはベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン及びこれらの炭化水素置換体のいずれかを示す。nは0又は1である。
【請求項2】
請求項1に記された方法により得られたリン含有エポキシ樹脂。
【請求項3】
請求項2に記載のリン含有エポキシ樹脂を用いることを特徴とするリン含有ビニルエステル樹脂。
【請求項4】
請求項2に記載のリン含有エポキシ樹脂を必須成分とし、硬化剤を配合してなるリン含有エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項3に記載のリン含有ビニルエステル樹脂を必須成分とし、ラジカル重合開始剤および/または硬化剤を配合してなるラジカル重合性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を用いて得られる電子回路基板用材料。
【請求項7】
請求項4記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を用いて得られる封止材。
【請求項8】
請求項4記載のリン含有エポキシ樹脂組成物を用いて得られる注型材。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれかに記載のリン含有エポキシ樹脂組成物、ラジカル重合性樹脂組成物、電子回路基板用材料、封止材、注型材を硬化してなる硬化物。

【公開番号】特開2009−185087(P2009−185087A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23015(P2008−23015)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000221557)東都化成株式会社 (53)
【Fターム(参考)】