説明

リン含有五酸化アンチモン微粒子および該微粒子を含む透明導電性被膜形成用塗布液ならびに透明導電性被膜付基材

【課題】導電性を有し、着色あるいは変色のない五酸化アンチモン微粒子を提供する。
【解決手段】リン酸化物を、P25として0.1〜15重量%の範囲で含有してなることを特徴とするリン含有五酸化アンチモン微粒子。五酸化アンチモン微粒子の平均粒子径が5〜50nmの範囲にある。リン酸化物が、五酸化アンチモン微粒子に担持されてなる。前記リン含有五酸化アンチモン微粒子が、鎖状に連結し、平均連結数が2〜30個の範囲にある。五酸化アンチモン微粒子の体積抵抗値が1〜103Ω・cmの範囲にあることを特徴とする請求項4に記載のリン含有五酸化アンチモン微粒子。五酸化アンチモン微粒子分散液に、リン化合物を添加したのち、80〜250℃で0.5〜12時間、乾燥加熱処理して得られたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性を向上させた五酸化アンチモン微粒子および該微粒子を含む透明導電性被膜形成用塗布液ならびに透明導電性被膜付基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ等の基材表面の耐擦傷性を向上させるため、基材表面にハードコート機能を有する透明被膜を形成することが知られており、このような透明被膜として有機樹脂膜あるいは無機膜をガラスやプラスチック等の表面に形成することが行われている。さらに、有機樹脂膜あるいは無機膜中に樹脂粒子あるいはシリカ等の無機粒子を配合してさらに耐擦傷性を向上させることが行われている。また、このようなハードコート膜付の樹脂基材を表示装置前面板等に貼り付けて使用される場合がある。
【0003】
また、表示装置等に使用する場合、ハードコート性に加えてゴミ、埃などの静電付着を防止するために導電性を有する透明被膜を形成することも行われている。
このような導電性を付与するために導電性酸化物粒子を配合することが知られている。
【0004】
導電性酸化物粒子としては、酸化錫、Sb、FまたはPドープ酸化錫、酸化インジウム、SnまたはFドープ酸化インジウム、五酸化アンチモン、低次酸化チタン等が知られている。(特許文献1:特開2002−79616号公報)
また、本願出願人は、パイロクロア構造を有する五酸化アンチモン微粒子を含む透明帯電防止膜付基材(特許文献2:特開2001−72929号公報)、五酸化アンチモン微粒子を含むハードコート膜付基材(特許文献3:特開2004−50810号公報)が記載されている。
【0005】
酸化錫、酸化インジウムについては、上記したようにドーピング剤をドープすることによって導電性が向上することが従来から知られていた。しかしながら、五酸化アンチモン微粒子にリンをドープすることは、本願出願人の出願による特許文献4(特開2005−139026号公報)以外には全く開示されていない。なお、特許文献4には、鎖状酸化アンチモン微粒子にスズ、リン等のドーピング剤が含まれていると、さらに体積抵抗値の低い鎖状酸化アンチモン微粒子が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−79616号公報
【特許文献2】特開2001−72929号公報
【特許文献3】特開2004−50810号公報
【特許文献4】特開2005−139026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の導電性酸化物粒子を用いたハードコート膜、透明帯電防止膜では、単に五酸化アンチモン微粒子を用いた場合、透明性には優れるものの導電性が低く帯電防止性能が不充分であった。また、Pドープ酸化錫を用いた場合は、五酸化アンチモン微粒子を用いた場合に比較して帯電防止性能は向上するものの透明性が不充分となり、Sbドープ酸化錫を用いると帯電防止性能はさらに向上するものの透明性が低下し、着色する場合があった。さらに、Snドープ酸化インジウム(ITO)を用いると帯電防止性能はさらに向上するものの透明性、着色性に問題があった。
【0008】
また、特許文献4には、確かに鎖状酸化アンチモン微粒子にスズ、リン等のドーピング剤が含まれていると、さらに体積抵抗値の低い鎖状酸化アンチモン微粒子が得られることを開示している。しかしながら、実際にドープされた酸化アンチモンを評価した例はなく、その製造方法も全く開示がない。さらに、本発明者らのその後の検討により五酸化アンチモン微粒子にリンをドーピングすると体積抵抗値は若干低下するものの、黄色に変色するという新たな問題も見つかった。
【0009】
なお、特開2001−72929号公報によれば、導電性五酸化アンチモン微粒子はパイロクロア構造を有し、プロトン導電性による導電性を有しているが、着色あるいは変色のない五酸化アンチモン微粒子およびそのための有効な製造方法は、本願出願当時、全く知られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、このような問題点に鑑み鋭意検討した結果、リンをドープするのではなく、五酸化アンチモン微粒子に所定量のリンを担持させると導電性が大きく向上することを見出して本発明を完成するに至った。
【0011】
なお、ドーピングでは、リンが五酸化アンチモン結晶内に取り込まれている。これに対し、本発明では、リンが五酸化アンチチモン結晶内に取り込まれず、リン化合物が五酸化アンチモン微粒子表面または細孔内に担持されているものである。このような形態でリンを五酸化アンチモン微粒子に含有させるという技術的発想は従来されておらず、ドープでなはく、リン化合物を担持させ、五酸化アンチモン微粒子自体は知られていなかった。
【0012】
[1]リン酸化物を、P25として0.1〜15重量%の範囲で含有してなるリン含有五酸化アンチモン微粒子。
[2]平均粒子径が5〜50nmの範囲にある[1]のリン含有五酸化アンチモン微粒子。
[3]リン酸化物が、五酸化アンチモン微粒子に担持されてなる[1]または[2]のリン含有五酸化アンチモン微粒子。
[4]前記リン含有五酸化アンチモン微粒子が、鎖状に連結し、平均連結数が2〜30個の範囲にある[1]〜[4]のリン含有五酸化アンチモン微粒子。
[5]体積抵抗値が1〜103Ω・cmの範囲にある[4]のリン含有五酸化アンチモン微粒子。
[6]五酸化アンチモン微粒子分散液に、リン化合物を添加したのち、80〜250℃で0.5〜12時間、乾燥加熱処理して得られたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のリン含有五酸化アンチモン微粒子。
[7]前記[1]〜[6]のリン含有五酸化アンチモン微粒子とマトリックス形成成分と分散媒とを含むことを特徴とする透明導電性被膜形成用塗布液。
[8]前記リン含有五酸化アンチモン微粒子の濃度が固形分として0.5〜57重量%の範囲にあり、マトリックス形成成分の濃度が固形分として0.5〜57重量%の範囲にあり、全固形分濃度が1〜60重量%の範囲にある[7]の透明導電性被膜形成用塗布液。
[9]基材と、基材上に形成された透明導電性被膜とからなり、該透明導電性被膜が[1]〜[8]のリン含有五酸化アンチモン微粒子とマトリックス成分を含み、透明導電性被膜中のリン含有五酸化アンチモン微粒子の含有量が5〜95重量%の範囲にあることを特徴とする透明導電性被膜付基材。
[10]前記透明導電性被膜の膜厚が0.1〜20μmの範囲にある[9]の透明導電性被膜付基材。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リン(五酸化リン)を含有させることにより導電性を向上させたリン含有五酸化アンチモン微粒子が得られる。このような五酸化アンチモン微粒子は導電性が高く、また着色あるいは変色も抑制されている。また、該微粒子を含む透明性被膜形成用塗布液を用いることで、帯電防止性能、透明性等に優れるとともに膜強度、耐擦傷性、基材との密着性等にも優れた透明導電性被膜が形成可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[リン含有五酸化アンチモン微粒子]
本発明に係るリン含有五酸化アンチモン微粒子は、リンを、P25として0.1〜15重量%の範囲で含有してなる。
【0015】
リンは、酸化物状態で、五酸化アンチモン微粒子に含有されるが、五酸化二リン(P25)であっても、二酸化リンや三酸化二リンであってもよく、リン酸、亜リン酸、過リン酸、ホスホン酸などのオキソ酸またはその塩(たとえば、Na、K、Mg、アンモニウム(4級も含む)、ホスホニウム(4級も含む))であってもよい。本発明では、リン酸化物は、ドーピングのように五酸化アンチモン結晶内に取り込まれているのではなく、微粒子表面または細孔に担持されている。
【0016】
ドーピングとの違いは、単に含有している場合、X線回折で、ピーク高が若干低下する以外、ピーク位置は変わらず、一方、ドーピングが起きるためか、ピーク高は低下し、同時に、水分の低下、導電性の低下、着色をともなう。
【0017】
前記範囲で、リンが含まれていると、導電性を高くすることができ、また、ドーピングのように五酸化アンチモン結晶内に取り込まれているのではないため、着色も抑制できる。
【0018】
リン含有量が少ない場合、体積抵抗値の低下が不充分で、得られる透明被膜の導電性の向上が不充分となる場合がある。上記上限を超えてリン酸化物を含有させることは困難であり、できたとしてもさらに体積抵抗値が低下することもない。
【0019】
リン含有五酸化アンチモン微粒子のさらに好ましいリン酸化物の含有量はP25として0.5〜12重量%の範囲である。
本発明のリン含有五酸化アンチモン微粒子の平均粒子径が5〜50nm、さらには10〜40nmの範囲にあることが好ましい。
【0020】
リン含有五酸化アンチモン微粒子の平均粒子径が小さいと、結晶性が不充分なためか、充分な低体積抵抗値、導電性が得られない場合がある。また、粒子が凝集する傾向があり、導電性透明被膜に用いた場合、充分な導電性が得られない場合がある。
【0021】
リン含有五酸化アンチモン微粒子の平均粒子径が大きすぎると、導電性が不充分となる場合があり、さらに可視光の散乱が大きくなり、導電性透明被膜の透明性が不充分となる場合がある。
【0022】
本発明ではリン含有五酸化アンチモン微粒子の平均粒子径は微粒子の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影し、100個の粒子について粒子径を測定し、その平均値として測定することができる。
【0023】
かかるリン含有五酸化アンチモン微粒子の体積抵抗値が10〜105Ω・cm、さらには10〜5x104Ω・cmの範囲にあることが好ましい。上記リン含有量であれば前記範囲の体積抵抗値となる。なおリン含有量を上記範囲で多くしても、前記範囲より体積抵抗値が低いものは得ることが困難である。また、リン含有量が少ないと、体積抵抗値が大きすぎると、従来の五酸化アンチモン微粒子の体積抵抗値と大きく変わらず、導電性を向上させる効果、帯電防止性能を向上させる効果が充分得られない場合がある。
【0024】
本発明での体積抵抗値(Ω・cm)は、セラミックス性セル(内部に円柱状のくりぬき(断面積:0.5cm2)を有する)を用い、まず、架台電極上にセルを置き、内部に試料粉体を充填し、円柱状突起を有する上部電極の突起を挿入し、油圧機にて上下電極を加圧し、100kg/cm(9.80MPa)加圧時の抵抗値(Ω)と試料の高さ(cm)を測定し、抵抗値(Ω)に断面積を乗じ、これを高さで除することによって求めることができる。
【0025】
本発明では、2個以上の前記リン含有五酸化アンチモン微粒子が鎖状に連結してもよい。その平均連結数は2〜30個、好ましくは5〜30の範囲にあることが好ましい。また、連結することで、粒界抵抗による導電性の損失がなくなるため、体積抵抗は、連結していないものに比べ、小さくできる。具体的には、連結数にもよるが、体積抵抗値が1〜103Ω・cm、さらには1〜5x102Ω・cmの範囲にあるものを望ましい。
【0026】
本発明にかかるリン含有五酸化アンチモン微粒子の製造方法は、前記した範囲の五酸化燐を含有し、体積抵抗値を有するリン含有五酸化アンチモン微粒子が得られれば特に制限はないが、まず、本願出願人の出願(特開平2−180717号公報、特開2007−176710号公報)に開示した方法に準じて、五酸化アンチモン微粒子を製造することができる。
【0027】
具体的に、特開平2−180717号公報に開示した方法では、三酸化アンチモン、アルカリ物質および過酸化水素水を反応させてアンチモンゾルを製造するが、三酸化アンチモンとアルカリ物質と過酸化水素水のモル比を1:2.0〜2.5:0.8〜1.5とし、三酸化アンチモンとアルカリ物質を含む系に過酸化水素を三酸化アンチモン1mole当たり0.2mole/hrの速度で添加する。
【0028】
また、特開2007−176710号公報に開示した方法では、酸化アンチモンとアルカリ物質を反応させた後、過酸化水素と反応させ、ついで、イオン交換樹脂で脱イオン処理した後、熟成してアンチモンゾルを製造する方法において、所定量の斜方晶形三酸化アンチモンを含む三酸化アンチモンを用い、三酸化アンチモンとアルカリ物質と過酸化水素水のモル比を1:2.0〜2.5:0.8〜3.5とし、50〜200℃で熟成する。
このようにして得られた五酸化アンチモン微粒子の平均粒子径は5〜50nm、さらには10〜40nmの範囲にあることが好ましい。
【0029】
ついで、得られた五酸化アンチモン微粒子分散液に、リン酸化物となる原料を添加する。本発明では、添加量の制御や取り扱い性などから、リン化合物としては、リン酸またはその塩(アンモニウムなど)を使用することが望ましく、特にリン酸が望ましい。
【0030】
このときの、五酸化アンチモン微粒子分散液の濃度は特に制限はないが概ね1〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
五酸化アンチモン微粒子分散液の濃度が低ければ、生産性が低下し、経済性が不利になり、多すぎても、強く凝集した五酸化アンチモン微粒子となる場合がある。また、分散液の温度は特に制限はないが、通常常温で行う。
【0031】
リン酸の添加量は、得られるリン含有五酸化アンチモン微粒子中のリン酸化物の含有量がP25として前記範囲となるように添加する。
リン酸の添加速度は、一時に添加しても良いが、連続的にあるいは断続的にすることが好ましく、製造装置、製造規模等によって異なるが、例えば、含有量基準で1重量%を概ね0.5分〜30分の速度で添加し、それに応じて添加速度を調整することが好ましい。
【0032】
リン酸を添加した後、必要に応じて撹拌を継続してもよい。
得られた分散液を、濾過し、分離し、乾燥または加熱処理し、必要に応じて塊砕してリン含有五酸化アンチモン微粒子を得ることができる。
【0033】
乾燥、加熱処理方法は特に制限はなく、従来公知の方法で乾燥、加熱処理することができる。
加熱乾燥条件は、リン含有五酸化アンチモン微粒子中の付着水を除去でき、後述するnの値、あるいは水分含有量の範囲となればよく、80〜250℃で0.5〜12時間であり、好ましくは90〜150℃、1〜6時間である。加熱処理温度が高温になりすぎると、リンが五酸化アンチモン微粒子の結晶にドーピングされるためか、得られるリン含有五酸化アンチモン微粒子が黄色に変色する傾向があり、場合によっては体積抵抗値が低くならず、透明導電性被膜に用いるには不向きである。
【0034】
なお、連結した鎖状のリン含有五酸化アンチモン微粒子は、本願出願人の出願による特開2005−139026号公報に開示した鎖状五酸化アンチモン微粒子を用いて、同様にリン酸化物原料を含有させることによって製造することができる。
【0035】
本発明のリン含有五酸化アンチモン微粒子は下記式(1)によって表すことができる。
Sb25・xP25・nH2O・・・・・(1)
(xは、Sb25を1モルとしたときのP25のモル数であり、nはリン含有五酸化アンチモン微粒子が含有するOH基に由来する水分子のモル数である。)
なお、本発明に用いる五酸化アンチモン微粒子はパイロクロア構造(アンチモン原子を中心にして6個の酸素原子およびOH基により8面体が形成され、これら8面体の頂点共有によって形成された骨格構造)を有し、チャンネル(骨格構造の隙間)を形成している。このチャンネルがOH基のプロトン移動の通路となり、導電性を発現する。このような五酸化アンチモン微粒子の結晶構造は、パイロクロア構造を有し、X線回折により、主に(111)、(311)、(222)および(400)面のピークによって同定される。なお、本発明のようにリンを含むもものでは、新たなピークは出現せず、ピーク高さも大きく変化しないが、高温で加熱処理させてドーピングすると各ピーク高が大きく低下する。
【0036】
上記において、xは、リンを五酸化二リンに換算したときの含有量に相当し、上記割合から0.0023〜0.3418、好ましくは、0.0114〜0.2735であり、これは、リン含有五酸化アンチモン微粒子中のP25としての含有量が0.1〜15重量%、さらには0.5〜12重量%となる範囲である。また、nは0.1〜3、さらには0.5〜3の範囲にあることが好ましい。これを水分含有量に換算すると概ね0.5〜14重量%、好ましくは1〜14重量%の範囲となる。
nによって、導電性が変化し、nが少ないと導電性は低くなり、多すぎると、一部が水酸化物となったりして、安定性が低下することがある。
【0037】
[透明導電性被膜形成用塗布液]
本発明に係る透明導電性被膜形成用塗布液は、前記リン含有五酸化アンチモン微粒子とマトリックス形成成分と分散媒とからなり、リン含有五酸化アンチモン微粒子中のリンの含有量がP25として0.1〜15重量%の範囲にあることを特徴としている。
【0038】
リン含有五酸化アンチモン微粒子
本発明に用いるリン含有五酸化アンチモン微粒子としては前記したリン含有五酸化アンチモン微粒子(鎖状粒子も含む)を用いる。
【0039】
リン含有五酸化アンチモン微粒子は、透明導電性被膜に用いるには従来公知の方法で、シランカップリング剤で処理したり、樹脂で被覆して、マトリックス形成成分への分散性を向上させて用いることが好ましい。
【0040】
マトリックス形成成分
マトリックス形成成分としては、シリコーン系(ゾルゲル系)マトリックス形成成分または有機樹脂マトリックス形成成分が用いられる。
【0041】
シリコーン系マトリックス形成成分としては、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物の加水分解物が用いられる。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:0〜3の正数)
【0042】
具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、
γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン等が挙げられる。
【0043】
本発明では有機樹脂マトリックス形成成分が好適に用いられ、有機樹脂マトリックス形成成分として、具体的には塗料用樹脂として公知の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等のいずれも採用することができる。たとえば、従来から用いられているポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴムなどの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。さらにはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。
【0044】
これらの樹脂は、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂であってもよい。さらに、熱硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型のものであってもよく、熱硬化性樹脂の場合、硬化触媒が含まれていてもよい。
【0045】
分散媒
本発明に用いる分散媒としては前記マトリックス形成成分、必要に応じて用いる硬化触媒を溶解あるいは分散できるとともに前記したリン含有五酸化アンチモン微粒子を均一に分散することができれば特に制限はなく、従来公知の溶媒を用いることができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用することもできる。
【0046】
透明導電性被膜形成用塗布液の濃度は、特に制限されないが、塗工性、経済性などの観点から、全固形分として1〜60重量%、さらには2〜40重量%の範囲にあることが好ましい。
【0047】
透明導電性被膜形成用塗布液の全固形分濃度が少なすぎると、1回の塗布で厚膜の透明導電性被膜を得ることが困難な場合があり、繰り返し塗布、乾燥を繰り返すと、膜の強度が低下したり、経済性が低下する問題がある。
【0048】
透明導電性被膜形成用塗布液の全固形分濃度が多すぎると、塗布液の粘度が高くなり、塗布性が低下したり、得られる透明導電性被膜のヘーズが高くなったり、耐擦傷性が不充分となる場合がある。
【0049】
透明導電性被膜形成用塗布液中のリン含有五酸化アンチモン微粒子の濃度は固形分として0.5〜57重量%、さらには0.1〜45重量%の範囲にあることが好ましい。透明導電性被膜形成用塗布液中のリン含有五酸化アンチモン微粒子の濃度が少ないと、導電性が不充分となり、得られる透明導電性被膜付基材の帯電防止性能が不充分となる場合があり、また、耐擦傷性、基材との密着性が不充分となる場合がある。また濃度が多すぎてもマトリックス成分が少なくなるために透明導電性被膜の耐擦傷性、基材との密着性が不充分となる場合がある。
【0050】
透明導電性被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度は固形分として0.5〜57重量%、さらには0.1〜45重量%の範囲にあることが好ましい。
透明導電性被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度が少ないと、マトリックス成分が少なくなるために透明導電性被膜の耐擦傷性、基材との密着性が不充分となる場合がある。また濃度が高すぎると、リン含有五酸化アンチモン微粒子が少なくなるために導電性が不充分となり、得られる透明導電性被膜付基材の帯電防止性能が不充分となる場合があり、また、耐擦傷性、基材との密着性が不充分となる場合がある。
【0051】
なお、リン含有五酸化アンチモン微粒子と、マトリックス形成成分との重量比は、5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10の範囲にあることが望ましい。
このような塗布液をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で前記した基材に塗布し、乾燥し、加熱処理、紫外線照射等によって硬化させることによって透明導電性被膜を形成することができる。
【0052】
[透明導電性被膜付基材]
本発明に係る透明導電性被膜付基材は、基材と、基材上に形成された透明導電性被膜とからなり、該透明導電性被膜が前記リン含有五酸化アンチモン微粒子とマトリックス成分を含み、透明導電性被膜中のリン含有五酸化アンチモン微粒子の含有量が5〜95重量%の範囲にあることが好ましい。
【0053】
基材
本発明に用いる基材としては、従来公知のガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等を用いることができる。
なかでもトリアセチルセルロース(TAC)基材、PET等ポリオレフィン系樹脂基材、ポリビニルアルコール系樹脂基材、ポリエーテルスルフォン系樹脂機材等が好適に用いられる。
【0054】
リン含有五酸化アンチモン微粒子
本発明に用いるリン含有五酸化アンチモン微粒子としては前記した通りである。
【0055】
マトリックス成分
マトリックス成分としては、前記シリコーン系(ゾルゲル系)マトリックス形成成分の硬化物または前記有機樹脂マトリックス形成成分の硬化物が用いられる。なお熱可塑性樹脂の場合、マトリックス形成成分とマトリックス成分は同じであり、熱硬化性樹脂の場合、重合ないし反応した硬化物である。
【0056】
本発明では有機樹脂マトリックス形成成分の硬化物が好適である。
透明導電性被膜中のリン含有五酸化アンチモン微粒子の含有量は、固形分として5〜95重量%、さらには10〜90重量%の範囲にあることが好ましい。
【0057】
透明導電性被膜中のリン含有五酸化アンチモン微粒子の含有量が少ないと、導電性が不充分となり、得られる透明導電性被膜付基材の帯電防止性能が不充分となる場合があり、また、耐擦傷性、基材との密着性が不充分となる場合がある。
【0058】
透明導電性被膜中のリン含有五酸化アンチモン微粒子の含有量が多すぎると、マトリックス成分が少なくなるために透明導電性被膜の耐擦傷性、基材との密着性が不充分となる場合がある。
【0059】
本発明の透明導電性被膜の膜厚は、0.1〜20μm、さらには0.2〜15μmの範囲にあることが好ましい。この範囲にあれば、高い帯電防止性能・耐擦傷性を発揮できる。
【0060】
透明導電性被膜が薄いと、帯電防止性能が不充分となる場合があり、また、透明導電性被膜表面に加わる応力を充分吸収することがでないために、耐擦傷性が不充分となる。透明導電性被膜が厚すぎても、膜の厚さが均一になるように塗布したり、均一に乾燥することが困難となり、さらに収縮が大きくなるので基材の種類によってはカーリング(透明導電性被膜付基材が湾曲)が生じることがある。また、膜厚が厚すぎて透明性が不充分となることがある。
【0061】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0062】
[実施例1]
リン含有五酸化アンチモン微粒子(1)分散液の調製
純水800gに苛性カリ(旭硝子(株)製:純度85%)25gを溶解した溶液中に三酸化アンチモン(日本精鉱(株):PATOX-M、純度98.5%)50gを懸濁した。この懸濁液を95℃に加熱し、次いで、過酸化水素水(林純薬(株)製:特級、濃度35重量%)15gを純水50gで希釈した水溶液を9時間で添加し、三酸化アンチモンを溶解し、その後、11時間熟成した。ついで、冷却後、得られた溶液から800gをとり、この溶液を純水4800gで希釈した後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:pk−216)でpHが2.8になるまで脱イオン処理を行った。脱イオン処理して得られた溶液を温度70℃で10時間熟成した後、限外膜で濃縮して固形分濃度14重量%の五酸化アンチモン微粒子(1)分散液を調製した。この五酸化アンチモン微粒子(1)分散液のpHは4.0、五酸化アンチモン微粒子(1)の平均粒子径は20nmであった。
【0063】
ついで、固形分濃度14重量%の五酸化アンチモン微粒子(1)分散液2100gにリン酸水溶液(関東化学(株)製:濃度85重量%)を、常温で7分かけて25g添加し、13分攪拌した。その後、バットへ取り出し90℃で18時間乾燥した。乾燥粉末をメノウで解砕し、さらに110℃で12時間乾燥してリン含有五酸化アンチモン微粒子(1)を得た。リン含有五酸化アンチモン微粒子(1)のリンの含有量はP25として5重量%、水分含有量11重量%、平均粒子径は20nm、体積抵抗値は500Ω・cmであった。
【0064】
次に、リン含有五酸化アンチモン微粒子(1)粉末120gを、有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)224g、分散剤(第一工業製薬(株)製:プライサーフA-217E)12g、ガラスビーズ628gを入れたビーズミルに充填し、分散処理をして固形分濃度30重量%のリン含有五酸化アンチモン微粒子(1)分散液を調製した。
【0065】
透明導電性被膜形成用塗布液(1)の調製
リン含有五酸化アンチモン微粒子(1)分散液10gに紫外線硬化樹脂(DIC(株)製:ユニデック17−824−9、固形分濃度79重量%)8.9gと光重合開始剤(ビーエーエスエフジャパン(株)製:ルシリンTPO、PGMEに固形分濃度10重量%に溶解)4.2gおよびPGME10.2gとを充分に混合して透明導電性被膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0066】
透明導電性被膜付基材(1)の製造
透明導電性被膜形成用塗布液(1)を易接着層付PETフィルム(東洋紡績(株)製:コスモシャインA4300)にバーコーター法(♯12)で塗布し、80℃で1分間乾燥した後、高圧水銀灯(600mJ/cm2)を照射して硬化させ、透明導電性被膜付基材(1)を調製した。このときの透明導電性被膜の厚さは3μmであった。
【0067】
この透明導電性被膜付基材(1)の全光線透過率、ヘーズ、着色、表面抵抗、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性を表1に示す。全光線透過率およびヘーズは、ヘーズメーター(日本電色工業(株)製)により、表面抵抗は表面抵抗計(三菱化学(株)製:LORESTA)で測定し、結果を表1に示した。なお、ヘーズは基材のヘーズ(0.8%)込みの値である。
また、着色、鉛筆硬度、密着性及び耐擦傷性を下記の方法で評価し、結果を表に示した。
【0068】
着色観察
透明導電性被膜の着色状況を目視観察し、以下の基準で評価した。
【0069】
全く透明で、着色は認められなかった : ○
透明性は高いが僅かに着色が認められた : △
透明性は比較的高いが明らかに着色が認められた : ×
【0070】
鉛筆硬度
鉛筆硬度は、JIS K 5400に準じて、鉛筆硬度試験器で測定した。即ち、透明導電性被膜表面に対して45度の角度に鉛筆をセットし、所定の加重を負荷して一定速度で引っ張り、傷の有無を観察した。
【0071】
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重250g/cm2で20回摺動し、膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表に示した。
【0072】
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条に傷が僅かに認められる :○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
【0073】
密着性
透明導電性被膜付基材(1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作り、これにセロファンテープを接着し、次いで、セロファンテープを剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の3段階に分類することによって密着性を評価した。結果を表1に示す。
残存升目の数90個以上 :◎
残存升目の数85〜89個:○
残存升目の数84個以下 :△
【0074】
[実施例2]
透明導電性被膜形成用塗布液(2)の調製
リン含有五酸化アンチモン微粒子(1)分散液16.7gに紫外線硬化樹脂(DIC(株)製:ユニデック17−824−9、固形分濃度79重量%)6.3gと光重合開始剤(ビーエーエスエフジャパン(株)製:ルシリンTPO、PGMEで固形分濃度10%に溶解)3.8gおよびPGME6.5gとを充分に混合して透明導電性被膜形成用塗布液(2)を調製した。
【0075】
透明導電性被膜付基材(2)の製造
実施例1において、透明導電性被膜形成用塗布液(2)を用いた以外は同様にして透明導電性被膜付基材(2)を調製した。このときの透明導電性被膜の厚さは3μmであった。
この透明導電性被膜付基材(2)の全光線透過率、ヘーズ、着色、表面抵抗、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性を表1に示す。
【0076】
[実施例3]
透明導電性被膜形成用塗布液(3)の調製
リン含有五酸化アンチモン微粒子(1)分散液23.3gに紫外線硬化樹脂(DIC(株)製:ユニデック17−824−9、固形分濃度79重量%)3.8gと光重合開始剤(ビーエーエスエフジャパン(株)製:ルシリンTPO、PGMEで固形分濃度10%に溶解)2.3gおよびPGME3.9gとを充分に混合して透明導電性被膜形成用塗布液(3)を調製した。
【0077】
透明導電性被膜付基材(3)の製造
実施例1において、透明導電性被膜形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にして透明導電性被膜付基材(3)を調製した。このときの透明導電性被膜の厚さは3μmであった。
この透明導電性被膜付基材(3)の全光線透過率、ヘーズ、着色、表面抵抗、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性を表1に示す。
【0078】
[実施例4]
リン含有五酸化アンチモン微粒子(2)分散液の調製
実施例1において、リン酸水溶液(関東化学(株)製:濃度85重量%)を、常温で7分かけて5gを添加した以外は同様にして、リン修飾五酸化アンチモン微粒子分散液(2)を得た。
【0079】
透明導電性被膜形成用塗布液(4)の調製
リン含有五酸化アンチモン微粒子(2)分散液16.7gに紫外線硬化樹脂(DIC(株)製:ユニデック17−824−9、固形分濃度79重量%)6.3gと光重合開始剤(ビーエーエスエフジャパン(株)製:ルシリンTPO、PGMEで固形分濃度10%に溶解)3.8gおよびPGME6.5gとを充分に混合して透明導電性被膜形成用塗布液(4)を調製した。
【0080】
透明導電性被膜付基材(4)の製造
実施例1において、透明導電性被膜形成用塗布液(4)を用いた以外は同様にして透明導電性被膜付基材(4)を調製した。このときの透明導電性被膜の厚さは3μmであった。
この透明導電性被膜付基材(4)の全光線透過率、ヘーズ、着色、表面抵抗、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性を表1に示す。
【0081】
[実施例5]
リン含有五酸化アンチモン微粒子(3)分散液の調製
実施例1において、リン酸水溶液(関東化学(株)製:濃度85重量%)を、常温で7分かけて50gを添加した以外は同様にして、リン修飾五酸化アンチモン微粒子分散液(3)を得た。
【0082】
透明導電性被膜形成用塗布液(5)の調製
リン含有五酸化アンチモン微粒子(3)分散液16.7gに紫外線硬化樹脂(DIC(株)製:ユニデック17−824−9、固形分濃度79重量%)6.3gと光重合開始剤(ビーエーエスエフジャパン(株)製:ルシリンTPO、PGMEで固形分濃度10%に溶解)3.8gおよびPGME6.5gとを充分に混合して透明導電性被膜形成用塗布液(5)を調製した。
【0083】
透明導電性被膜付基材(5)の製造
実施例1において、透明導電性被膜形成用塗布液(5)を用いた以外は同様にして透明導電性被膜付基材(5)を調製した。このときの透明導電性被膜の厚さは3μmであった。
この透明導電性被膜付基材(5)の全光線透過率、ヘーズ、着色、表面抵抗、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性を表1に示す。
【0084】
[実施例6]
リン含有五酸化アンチモン微粒子(4)分散液の調製
実施例1と同様にしてリン含有五酸化アンチモン微粒子(1)を調製した。
【0085】
次に、リン含有五酸化アンチモン微粒子(1)粉末120gを、有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)224g、被覆用樹脂として2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートP−2M)12g、石英ビーズ628gを入れたビーズミルに充填し、メカノケミカル処理して樹脂で被覆し、ついで、ビーズを分離して固形分濃度30重量%の樹脂で被覆したリン含有五酸化アンチモン微粒子(4)分散液を調製した。樹脂被覆リン含有五酸化アンチモン微粒子(4)の平均粒子径は22nmであった。
【0086】
透明導電性被膜形成用塗布液(6)の調製
樹脂で被覆したリン含有五酸化アンチモン微粒子(4)分散液16.7gに紫外線硬化樹脂(DIC(株)製:ユニデック17−824−9、固形分濃度79重量%)6.3gと光重合開始剤(ビーエーエスエフジャパン(株)製:ルシリンTPO、PGMEで固形分濃度10%に溶解)3.8gおよびPGME6.5gとを充分に混合して透明導電性被膜形成用塗布液(6)を調製した。
【0087】
透明導電性被膜付基材(6)の製造
実施例1において、透明導電性被膜形成用塗布液(6)を用いた以外は同様にして透明導電性被膜付基材(6)を調製した。このときの透明導電性被膜の厚さは3μmであった。
この透明導電性被膜付基材(6)の全光線透過率、ヘーズ、着色、表面抵抗、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性を表1に示す。
【0088】
[実施例7]
リン含有五酸化アンチモン微粒子(5)分散液の調製
純水1800gに苛性カリ(旭硝子(株)製:純度85%)57gを溶解した溶液中に三酸化アンチモン(日本精鉱(株):PATOX-M、純度98.5%)111gを懸濁した。この懸濁液を95℃に加熱し、次いで、過酸化水素水(林純薬(株)製:特級、濃度35重量%)32.8gを純水111gで希釈した水溶液を9時間で添加し、三酸化アンチモンを溶解し、その後、11時間熟成した。ついで、冷却後、得られた溶液から1000gを採り、この溶液を純水6000gで希釈した後、陽イオン交換樹脂槽(三菱化学(株)製:pk−216)に通して脱イオン処理を行った。このときのpHは2.1、伝導度は2.4mS/cmであった。
【0089】
ついで、陰イオン交換樹脂槽(三菱化学(株)製:SA−20A)に通してpHが2.5、伝導度が1.0mS/cmになるまで脱イオン処理を行った。
脱イオン処理して得られた溶液を温度70℃で10時間熟成した後、限外膜で濃縮して固形分濃度14重量%の鎖状の五酸化アンチモン微粒子(5)分散液を調製した。この五酸化アンチモン微粒子(1)分散液のpHは3.0、伝導度が0.1mS/cmであった。
【0090】
鎖状五酸化アンチモン微粒子(5)の平均粒子径は15nm、連結数は5であった。
ついで、固形分濃度14重量%の鎖状五酸化アンチモン微粒子(5)分散液2100gにリン酸水溶液(関東化学(株)製:濃度85重量%)を、常温で7分かけて25g添加し、13分攪拌した。その後、バットへ取り出し90℃で18時間乾燥した。乾燥粉末をメノウで解砕し、さらに110℃で12時間乾燥して鎖状リン含有五酸化アンチモン微粒子(5)を得た。鎖状リン含有五酸化アンチモン微粒子(5)のリンの含有量はP25として5重量%、体積抵抗値は10Ω・cmであった。
【0091】
次に、鎖状リン含有五酸化アンチモン微粒子(5)粉末120gを、有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)224g、分散剤(第一工業製薬(株)製:プライサーフA-217E)12g、ガラスビーズ628gを入れたビーズミルに充填し、分散処理をして固形分濃度30重量%の鎖状リン含有五酸化アンチモン微粒子(5)分散液を調製した。
【0092】
透明導電性被膜形成用塗布液(7)の調製
鎖状リン含有五酸化アンチモン微粒子(5)分散液16.7gに紫外線硬化樹脂(DIC(株)製:ユニデック17−824−9、固形分濃度79重量%)6.3gと光重合開始剤(ビーエーエスエフジャパン(株)製:ルシリンTPO、PGMEで固形分濃度10%に溶解)3.8gおよびPGME6.5gとを充分に混合して透明導電性被膜形成用塗布液(7)を調製した。
【0093】
透明導電性被膜付基材(7)の製造
実施例1において、透明導電性被膜形成用塗布液(7)を用いた以外は同様にして透明導電性被膜付基材(7)を調製した。このときの透明導電性被膜の厚さは3μmであった。
この透明導電性被膜付基材(7)の全光線透過率、ヘーズ、着色、表面抵抗、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性を表1に示す。
【0094】
[比較例1]
五酸化アンチモン微粒子(R1)分散液の調製
実施例1と同様にして固形分濃度14重量%の五酸化アンチモン微粒子(1)分散液を調製した。
【0095】
ついで、バットへ取り出し90℃で18時間乾燥した。乾燥粉末をメノウで解砕し、さらに110℃で12時間乾燥して五酸化アンチモン微粒子(R1)を得た。五酸化アンチモン微粒子(R1)の平均粒子径は20nm、体積抵抗値は1000Ω・cmであった。
【0096】
次に、五酸化アンチモン微粒子(R1)粉末120gを、有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)224g、分散剤(第一工業製薬(株)製:プライサーフA-217E)12g、ガラスビーズ628gを入れたビーズミルに充填し、分散処理をして固形分濃度30重量%の五酸化アンチモン微粒子(R1)分散液を調製した。
【0097】
透明導電性被膜形成用塗布液(R1)の調製
五酸化アンチモン微粒子(R1)分散液16.7gに紫外線硬化樹脂(DIC(株)製:ユニデック17−824−9、固形分濃度79重量%)6.3gと光重合開始剤(ビーエーエスエフジャパン(株)製:ルシリンTPO、PGMEで固形分濃度10%に溶解)3.8gおよびPGME6.5gとを充分に混合して透明導電性被膜形成用塗布液(R1)を調製した。
【0098】
透明導電性被膜付基材(R1)の製造
実施例1において、透明導電性被膜形成用塗布液(R1)を用いた以外は同様にして透明導電性被膜付基材(R1)を調製した。このときの透明導電性被膜の厚さは3μmであった。
この透明導電性被膜付基材(R1)の全光線透過率、ヘーズ、着色、表面抵抗、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性を表1に示す。
【0099】
[比較例2]
五酸化アンチモン微粒子(R2)分散液の調製
実施例7と同様にして固形分濃度14重量%の鎖状の五酸化アンチモン微粒子(5)分散液を調製した。
【0100】
ついで、バットへ取り出し90℃で18時間乾燥した。乾燥粉末をメノウで解砕し、さらに110℃で12時間乾燥して鎖状五酸化アンチモン微粒子(R2)を得た。鎖状五酸化アンチモン微粒子(R2)の平均粒子径は15nm、連結数は5であった。また、体積抵抗値は50Ω・cmであった。
【0101】
次に、鎖状五酸化アンチモン微粒子(R2)粉末120gを、有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)224g、分散剤(第一工業製薬(株)製:プライサーフA-217E)12g、ガラスビーズ628gを入れたビーズミルに充填し、分散処理をして固形分濃度30重量%の鎖状五酸化アンチモン微粒子(R2)分散液を調製した。
【0102】
透明導電性被膜形成用塗布液(R2)の調製
鎖状五酸化アンチモン微粒子(R2)分散液16.7gに紫外線硬化樹脂(DIC(株)製:ユニデック17−824−9、固形分濃度79重量%)6.3gと光重合開始剤(ビーエーエスエフジャパン(株)製:ルシリンTPO、PGMEで固形分濃度10%に溶解)3.8gおよびPGME6.5gとを充分に混合して透明導電性被膜形成用塗布液(R2)を調製した。
【0103】
透明導電性被膜付基材(R2)の製造
実施例1において、透明導電性被膜形成用塗布液(R2)を用いた以外は同様にして透明導電性被膜付基材(R2)を調製した。このときの透明導電性被膜の厚さは3μmであった。
この透明導電性被膜付基材(R2)の全光線透過率、ヘーズ、着色、表面抵抗、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性を表1に示す。
【0104】
[参考例]
リン含有五酸化アンチモン微粒子(R3)分散液の調製
実施例1と同様にしてリン含有五酸化アンチモン微粒子(1)粉末を調製し、ついで、450℃で2時間加熱処理してリン含有五酸化アンチモン微粒子(R3)を得た。この時、粉末は白色から黄赤色に変化した。したがって、リン酸化物がドープされたことを示した。
【0105】
リン含有五酸化アンチモン微粒子(R3)のリンの含有量はP25として5重量%、平均粒子径は20nm、体積抵抗値は600Ω・cmであった。
次に、リン含有五酸化アンチモン微粒子(R3)粉末120gを、有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)224g、分散剤(第一工業製薬(株)製:プライサーフA-217E)12g、ガラスビーズ628gを入れたビーズミルに充填し、分散処理をして固形分濃度30重量%のリン含有五酸化アンチモン微粒子(R3)分散液を調製した。
【0106】
透明導電性被膜形成用塗布液(R3)の調製
リン含有五酸化アンチモン微粒子(R3)分散液16.7gに紫外線硬化樹脂(DIC(株)製:ユニデック17−824−9、固形分濃度79重量%)6.3gと光重合開始剤(ビーエーエスエフジャパン(株)製:ルシリンTPO、PGMEで固形分濃度10%に溶解)3.8g及びPGME6.5gとを充分に混合して透明導電性被膜形成用塗布液(R3)を調製した。
【0107】
透明導電性被膜付基材(R3)の製造
実施例1において、透明導電性被膜形成用塗布液(R3)を用いた以外は同様にして透明導電性被膜付基材(R3)を調製した。このときの透明導電性被膜の厚さは3μmであった。
【0108】
この透明導電性被膜付基材(R3)の全光線透過率、ヘーズ、着色、表面抵抗、密着性、鉛筆硬度、耐擦傷性を表1に示す。
実施例2、4、5と比較例1、および実施例7と比較例2とを対比すれば、五酸化リンの含有量が多くなるほど、五酸化アンチモン微粒子の導電性が高く、表面抵抗値は低くなることがわかる。また、鎖状粒子とすることで、鎖状とすることで、導電性を向上することができ、さらに鉛筆硬度を高くすることができる。
【0109】
なお、リンがドープされた参考例では、大きく着色していることがわかった。
【0110】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸化物を、P25として0.1〜15重量%の範囲で含有してなることを特徴とするリン含有五酸化アンチモン微粒子。
【請求項2】
平均粒子径が5〜50nmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のリン含有五酸化アンチモン微粒子。
【請求項3】
リン酸化物が、五酸化アンチモン微粒子に担持されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のリン含有五酸化アンチモン微粒子。
【請求項4】
前記リン含有五酸化アンチモン微粒子が、鎖状に連結し、平均連結数が2〜30個の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリン含有五酸化アンチモン微粒子。
【請求項5】
体積抵抗値が1〜103Ω・cmの範囲にあることを特徴とする請求項4に記載のリン含有五酸化アンチモン微粒子。
【請求項6】
五酸化アンチモン微粒子分散液に、リン化合物を添加したのち、80〜250℃で0.5〜12時間、乾燥加熱処理して得られたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のリン含有五酸化アンチモン微粒子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のリン含有五酸化アンチモン微粒子とマトリックス形成成分と分散媒とを含むことを特徴とする透明導電性被膜形成用塗布液。
【請求項8】
前記リン含有五酸化アンチモン微粒子の濃度が固形分として0.5〜57重量%の範囲にあり、マトリックス形成成分の濃度が固形分として0.5〜57重量%の範囲にあり、全固形分濃度が1〜60重量%の範囲にあることを特徴とする請求項7に記載の透明導電性被膜形成用塗布液。
【請求項9】
基材と、基材上に形成された透明導電性被膜とからなり、該透明導電性被膜が請求項1〜8のいずれかに記載のリン含有五酸化アンチモン微粒子とマトリックス成分を含み、透明導電性被膜中のリン含有五酸化アンチモン微粒子の含有量が5〜95重量%の範囲にあることを特徴とする透明導電性被膜付基材。
【請求項10】
前記透明導電性被膜の膜厚が0.1〜20μmの範囲にあることを特徴とする請求項9に記載の透明導電性被膜付基材。

【公開番号】特開2011−63478(P2011−63478A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215538(P2009−215538)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】