リン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物
【課題】難燃性、電気特性や耐吸水性に優れた、リン原子を樹脂骨格中に含むリン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物を提供する
【解決手段】本発明の課題は、少なくとも1種の下記式(1)で示される特定のジアリールホスフィンオキシド化合物、少なくとも1種の特定のエポキシ化合物、少なくとも1種の特定のフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を含むことを特徴とする、リン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物によって解決される。
[式(1)中、R1〜R7は、それぞれ独立に、特定の置換基を示す。p、q、r及びsは、それぞれ独立に、0〜4の整数である。また、X1及びX2、並びにY1及びY2は、それぞれ独立に、単結合、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を示し、Z1及びZ2は、それぞれ独立に、特定のアルキレン基を示す。]
【解決手段】本発明の課題は、少なくとも1種の下記式(1)で示される特定のジアリールホスフィンオキシド化合物、少なくとも1種の特定のエポキシ化合物、少なくとも1種の特定のフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を含むことを特徴とする、リン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物によって解決される。
[式(1)中、R1〜R7は、それぞれ独立に、特定の置換基を示す。p、q、r及びsは、それぞれ独立に、0〜4の整数である。また、X1及びX2、並びにY1及びY2は、それぞれ独立に、単結合、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を示し、Z1及びZ2は、それぞれ独立に、特定のアルキレン基を示す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物に関する。詳しくは、環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物、エポキシ化合物、フェノール樹脂、及び硬化促進剤を含むリン含有硬化性樹脂組成物、並びにそれを硬化させてなるリン原子を樹脂骨格中に組み込んだリン含有樹脂硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用的な樹脂硬化物のひとつである、エポキシ樹脂は、例えば、電子部品の封止用材料、積層板用材料等、一般的に電気、電子材料分野では幅広く使用されている。特に、耐熱性及び材料安定性に関する信頼性(長寿命化)の観点から選ばれたフェノールノボラック樹脂とエポキシ樹脂とを用いて製造される半導体封止用エポキシ樹脂硬化性組成物は、高温下でも十分な火災防止作用を示すことが安全性の観点から要求されており、その研究開発は現在も盛んに行われている。
【0003】
ところで、これまで難燃性を有する化合物としては、例えば、ハロゲン化合物を添加した樹脂組成物や、ハロゲン原子を有するモノマーを用いた樹脂硬化物等が、難燃性を有した化合物として広く知られている。しかしながらが、これらの難燃性組成物や樹脂化合物には、燃焼分解時にダイオキシン類等を発生する恐れがある化合物を含有していることがあり、その使用環境が高温下である場合、人体への安全性を十分に満足するとは言い難かった。
【0004】
一方、ハロゲン原子が含まれていない、いわゆる非ハロゲン系難燃性材料としては、近年、有機リン系化合物を添加した樹脂材料が注目されている。しかしながら、添加される樹脂材料との相性によっては、添加した有機リン系化合物が、樹脂材料中でブリードアウト現象を起こすことがあり、単に、前記有機リン系化合物を樹脂材料に添加・混合しただけでは、十分な難燃性を示さないことがあった。
そこで、このような問題を解決する手段として、例えば、特許文献1には、リン酸エステル構造を骨格に組み込んだオリゴマーを含む樹脂組成物が、適度な難燃性を発揮することが開示されている。また、特許文献2には、10−ヒドロキシメチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドを原料としてリン原子を骨格中に組み込んだ難燃性エポキシ樹脂について開示されている。さらに特許文献3には、エポキシ樹脂硬化物を得るためのリン原子を含んだポリグリシジル体を調製する方法について開示されている。(例えば、特許文献1〜3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−343382号
【特許文献2】特開2000−154234号
【特許文献3】特開2007−119544号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された樹脂組成物中のオリゴマーは、耐加水分解性に弱く、さらにこの樹脂組成物から作製される樹脂硬化物は、電子・電気分野向けの材料として使用するには吸水性が高いという難点を有することがわかっている。また、特許文献2及び特許文献3に記載されている化合物においても、分子内にリン酸結合部分を有しているために、満足な耐加水分解特性が得られない等の問題があった。
上記の先行技術文献より、これまでにリン原子を骨格中に組み込んだ組成物やその硬化物は、主に難燃性という観点から様々な検討が行われてきたが、依然として、良好な難燃性とその他の諸物性とのバランスがよい難燃性樹脂材料の開発が求められている。
【0007】
そこで、本発明の課題は、難燃性、耐吸水性に優れた、リン原子を樹脂骨格中に含むリン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、特定のジアリールホスフィンオキシド化合物、特定のエポキシ化合物、及び特定のフェノール樹脂と硬化開始剤とを含有するリン含有硬化性樹脂組成物、並びにその樹脂硬化物により上記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記に示すリン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物を提供することである。
【0009】
1.少なくとも1種の下記式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、及び少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を含むことを特徴とするリン含有硬化性樹脂組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
[式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。p、q、r及びsは、それぞれ独立に、0〜4の整数である。
R5は、水素原子、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基示す。
R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。
X1及びX2、並びにY1及びY2は、それぞれ独立に、単結合、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基のいずれかを示す。ただし、X1とY1とは同時に単結合ではなく、X2とY2とは同時に単結合ではない。
Z1及びZ2は、それぞれ独立に、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を示し、また、n及びmは、それぞれ独立に、1又は2のいずれかを示す。]
【0012】
2.分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が、ジエポキシド化合物、トリエポキシド化合物、及びポリエポキシド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物である、前記1に記載のリン含有硬化性樹脂組成物。
【0013】
3.フェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂が、フェノール類、ビスフェノール類、ナフトール類とアルデヒド類との重縮合物、フェノール類とジエン類との重縮合物、及びフェノール類とケトン類との重縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール樹脂である、前記1又は2に記載のリン含有硬化性樹脂組成物。
【0014】
4.前記1〜3のいずれか1つに記載のリン含有硬化性樹脂組成物を硬化してなるリン含有樹脂硬化物。
【発明の効果】
【0015】
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物、及びこの組成物を硬化してなるリン含有樹脂硬化物は、例えば、リン酸結合、エステル結合、及びアミド結合等の加水分解を受けやすい結合を分子内に一切含有していないことから、良好な耐加水分解特性が期待される。そこで、本発明のリン含有硬化性樹脂組成物は、例えば、半導体封止剤又はプリント配線板用レジスト剤の原料等として使用される。
また、本発明のリン含有樹脂硬化物は優れた難燃性を示すため、例えば、プリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート、積層板、又は多層板等の構成材料として幅広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図2】実施例2で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図3】比較例1で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図4】実施例3で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図5】実施例4で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図6】比較例2で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図7】実施例5で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図8】実施例6で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図9】比較例3で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図10】実施例7で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図11】比較例4で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図12】実施例8で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図13】実施例9で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図14】比較例5で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図15】実施例10で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図16】比較例6で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[リン含有硬化性樹脂組成物]
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種の環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を含む組成物であり、さらに必要に応じて種々の添加化合物を含有し得るものである。
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物の製造方法は、例えば、少なくとも1種の環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を混合させる方法等により得られる。
【0018】
〈環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物〉
環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物は、下記式(1)で示される。ここで、本発明のジアリールホスフィンオキシド化合物が有する「環状エーテル基」とは、上記式(1)で示される化学構造式において、−X1−O−Y1−基、又は−X2−O−Y2−基が結合した炭素原子により形成された、環状のエーテル基のことを示す。
【0019】
【化2】
【0020】
(R1、R2、R3及びR4が示す置換基)
式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。p、q、r及びsは、それぞれ独立に、0〜4の整数である。
【0021】
炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基を示し、位置異性体を含む。無置換の炭素数1〜6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0022】
炭素数1〜6のアルキルオキシ基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合した基を示し、位置異性体を含む。無置換の炭素数1〜6のアルキルオキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、シクロブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、及びシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基は、無置換又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を示し、より詳しくは、芳香族炭化水素基の1個以上の水素原子が、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい。ここで「アルキル基」及び「アルキルオキシ基」は、前記アルキル基及びアルキルオキシ基と同義である。
前記アリール基としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、トルイル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、シクロプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、n−プロポキシフェニル基、イソプロポキシフェニル基、シクロプロポキシフェニル基、及びn−ブトキシフェニル基等が挙げられる。
【0024】
置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基は、前記アリール基が酸素原子に結合した基を示し、さらに、前記アリール基の1個以上の水素原子が、例えば、炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい。
前記アリールオキシ基として、具体的には、トルイルオキシ基、ジメチルフェニルオキシ基、エチルフェニルオキシ基、n−プロピルフェニルオキシ基、イソプロピルフェニルオキシ基、シクロプロピルフェニルオキシ基、n−ブチルフェニルオキシ基、t−ブチルフェニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、n−プロポキシフェニルオキシ基、イソプロポキシフェニルオキシ基、シクロプロポキシフェニルオキシ基、及びn−ブトキシフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0025】
上記より、式(1)中、R1、R2、R3及びR4としてそれぞれ独立に、好ましくはニトロ基、シアノ基;より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、フェニル基;特に好ましくはメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基である。
【0026】
p、q、r及びsは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、好ましくは0又は1、より好ましくはp、q、r及びsのすべてが0である。ここで、p、q、r、又はsが0を表す場合は、対応するR1、R2、R3又はR4の置換基が無いことを意味する。また、p、q、r、sが2以上の整数を表す場合、複数のR1、R2、R3及びR4はそれぞれ、互いに同一でもあっても、又は異なってもよい。さらに、例えば、複数のR1、R2がそれぞれ、ベンゼン環における隣接する炭素原子に置換されている場合、互いに結合して環状構造を形成してもよい。なお、R1とR2、及びR3とR4は、好ましくは互いに同一の置換基である。
【0027】
(R5が示す置換基)
式(1)中、R5は、水素原子、又はフッ素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基を示す。
【0028】
ここで、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基は、炭素数1〜6のアルキル基の1個以上の水素原子が、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、又は炭素数1〜6のアルキルオキシ基で置換されていてもよい、直鎖状又は炭素数3〜6の分岐鎖状或いは環状の脂肪族炭化水素基を示し、さらにこれらのアルキル基は位置異性体も含む。また、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基は、炭素数6〜12のアリール基の1個以上の水素原子が、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルキルオキシ基で置換されていてもよい、芳香族炭化水素基を示す。
【0029】
R5における上記炭素数1〜6のアルキルオキシ基、上記炭素数1〜6のアルキル基、上記炭素数6〜12のアリール基について、具体的には、上述したR1、R2、R3及びR4で示したものと同義のものが示される。
R5として、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基である。
【0030】
(R6及びR7が示す置換基)
R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。
ここで、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、及び置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基について、具体的には、上述したR1、R2、R3及びR4で示したものと同義のものが示される。
R6及びR7としてそれぞれ独立に、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基であって、R6及びR7が同一の置換基の場合である。
【0031】
(X1及びX2、並びにY1及びY2が示す連結基)
式(1)中、X1及びX2、並びにY1及びY2は、それぞれ独立に、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基のいずれかを示し、X1とY1とは同時に単結合ではなく、X2とY2とは同時に単結合ではない。
X1及びX2、並びにY1及びY2として、好ましくはX1及びX2が単結合又はメチレン基であって、かつY1及びY2が炭素数1〜12のアルキレン基;より好ましくはX1及びX2が単結合又はメチレン基であって、かつY1及びY2が炭素数1〜5アルキレン基;特に好ましくはX1及びX2が単結合又はメチレン基であって、かつY1及びY2がメチレン基又はエチレン基である。すなわち、本発明の式(1)で示されるジアリールホスフィンオキシド化合物の環状エーテル基として、具体的に、特に好ましくはオキシラニル基、オキセタニル基、3−メチル−オキセタニル−3−イル−メチル基、及び3−エチル−オキセタニル−3−イル−メチル基である。
【0032】
(Z1及びZ2が示す連結基)
式(1)中、Z1及びZ2は、炭素数1〜12のアルキレン基を1個以上の水素原子が、フッ素原子で置換されていてもよい、直鎖状又は炭素数3〜6の分岐鎖状或いは環状の2価の脂肪族炭化水素基のいずれかを示し、Z1及びZ2は、互いに同一の置換基であっても、又は異なっていてもよい。さらにこれらのアルキレン基は位置異性体も含む。
上記、炭素数1〜12のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、へプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、又はドデカメチレン基等の直鎖状のアルキレン基を示す。
式(1)中、Z1及びZ2としてそれぞれ独立に、好ましくはZ1及びZ2がともに炭素数1〜6のアルキレン基、より好ましくはZ1及びZ2が互いに同一の炭素数1〜4のアルキレン基である。
【0033】
(環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物の合成方法)
上記式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物は、例えば下記式(2)〜(7)で表される化合物を、下記反応式に従って、例えば、後述の参考例1及び2のように反応させることにより合成することができるが、その合成方法は特に制限されるものではない。なお、下記式(2)〜(7)中、R1〜R7、p〜s、X1及びX2、Y1及びY2、並びにZ1〜Z2については、前記と同義である。また、式(6)及び式(7)中のLGは、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基からなる群より選ばれる1つの脱離性基を示す。
【0034】
【化3】
【0035】
具体的には、上記式(2)で示されるジアリールホスフィンオキシド化合物と上記式(3)で示されるヒドロキシフェニルアルキルカルボニル化合物とを反応させて、リン含有アリールアルコール化合物とした後、該リン含有アリールアルコール化合物と上記式(4)で示されるフェノール化合物とを、無機酸、有機スルホン酸及び有機カルボン酸等の酸触媒の存在下で反応させて、式(5)で示されるリン含有ジヒドロキシアリール化合物を合成することができる。また、上記と同様の酸触媒の存在下で、上記式(2)〜(4)で示される化合物を同時に仕込み反応させることにより、前記式(5)を合成することもできる。
次に、得られた式(5)で示されるリン含有ジヒドロキシアリール化合物を、例えば、塩基の存在下、式(6)及び式(7)で示される環状エーテル化合物と反応させて、式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物を合成することができる。
【0036】
本発明では、上記方法により合成することができる上記式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0037】
〈エポキシ化合物〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物に含有される、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物は、該樹脂組成物に含まれる前記式(1)で示されるジアリールホスフィンオキシド化合物の環状エーテル基、及び/又は少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂の水酸基と反応し、硬化物を得ることができるものであれば特に制限はない。
【0038】
上記より、使用されるエポキシ化合物として、好ましくは(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル;2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のジエポキシド化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル等のトリエポキシド化合物;エポキシ化ポリブタジエン、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラックポリグリシジルエーテル等のポリエポキシド化合物が挙げられる。なお、上記エポキシ化合物は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0039】
さらに、上記エポキシ化合物の中でも、より好ましくは1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、特に好ましくは2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテルが使用される。
また、本発明において使用することができるエポキシ化合物の市販品としては、例えば三菱化学製のjER(商品名)シリーズ、DIC製のエピクロン(商品名)シリーズ、ダウケミカル製のDER(商品名)シリーズ、新日鉄化学製のYDF(商品名)シリーズ、ダイセル化学工業社製のセロキサイド(商品名)シリーズ、エポリード(商品名)シリーズ等が挙げられる。
【0040】
〈フェノール樹脂〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物に含有される、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂としては、特に制限はないが、樹脂材料としての成型性向上(例えば、注型加工性向上)の観点から、好ましくは軟化点が50〜250℃の当該フェノール樹脂、より好ましくは軟化点が50〜200℃の当該フェノール樹脂、特に好ましくは軟化点が50〜150℃の当該フェノール樹脂が使用される。なお、前記フェノール樹脂は、例えば、室温下(0〜30℃)で液状物であってもよい。また、本発明のリン含有硬化性樹脂組成物から得られる樹脂硬化物の樹脂材料として、例えば、熱や外部からの力に対する経時的安定性を向上させる目的から、使用するフェノール樹脂の水酸基価(KOHmg/g)が、好ましくは10〜1000、より好ましくは30〜500、特に好ましくは50〜500である。なお、水酸基価は、JIS K 1557又はJIS K 0070の測定法に従って算出された値を使用する。
【0041】
前記フェノール樹脂の具体例としては、フェノール類(フェノール、カテコール、ハイドロキノン、レゾルシノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン等)、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF等)、もしくは、ナフトール類(α−ナフトール、β−ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等)とアルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等)との重縮合物(ノボラック型フェノール樹脂等);フェノール類とジエン類(テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物;フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物;前記フェノール類及び/又は前記フェノール樹脂の変性物等が挙げられる。なお、上記フェノール樹脂は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
また、本発明において使用することができるフェノール樹脂の市販品としては、例えば明和化成製HF−1M(商品名)、明和化成製MEH−7851(商品名)、昭和電工製BRG−556(商品名)等が挙げられる。
【0042】
〈硬化促進剤〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物に含有される硬化促進剤は、例えば、光硬化促進剤であっても熱硬化促進剤であってよく、特に制限はないが、好ましくはイミダゾール系硬化促進剤、又はリン系硬化促進剤を使用される。また、下記にその硬化促進剤の具体例を示すが、本発明の硬化促進剤は、単独で使用しても、又は2種以上併用してもよい。
【0043】
(イミダゾール系硬化促進剤)
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等が使用される。これらの中でも、好ましくはイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールが使用される。
【0044】
(リン系硬化促進剤)
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン等が使用される。
【0045】
〈添加化合物〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、離型剤、無機充填材、カップリング剤、樹脂変性物、又は着色剤等の添加化合物を含有させることができる。なお、これらの添加化合物は、単独で使用しても、又は2種以上併用してもよい。
【0046】
(離型剤)
離型剤は、例えば、成形時の金型との離型を良くする等の目的として使用されるもので、従来公知のものがいずれも使用でき、特に制限はない。
具体的な離型剤としては、例えば、カルナバワックス、モンタンワックス等のエステル系ワックス、ステアリン酸、パルチミン酸等の脂肪酸及びこれらの金属塩、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックス等が挙げられる。なお、これらの離型剤は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0047】
(無機充填剤)
無機充填剤は、例えば、絶縁性の確保に加えて、サーマルサイクルによる膨張・収縮を抑制する等を目的として使用されるもので、従来公知のものを使用することができ、特に制限はない。
無機充填剤の具体例としては、例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、非晶性シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、マイカ、ガラス、石英、雲母等が挙げられる。なお、これら無機充填剤は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。また、後述のカップリング剤と混合して使用してもよい。これらの無機充填剤のうち、例えば、非晶性シリカ、及び結晶性シリカは、封止材の熱膨張係数を小さくでき、それによって封止材の接続信頼性を向上することができる点から好ましく使用される。
【0048】
(カップリング剤)
カップリング剤は、例えば、無機充填剤と樹脂成分との接着性を高めること等を目的として使用される。
カップリング剤の具体例としては、例えば、ビニルアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、スチリルアルコキシシラン、メタクリロキシアルコキシシラン、アクリロキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、イソシアナートアルコキシシラン等の各種アルコキシシラン化合物、アルコキシチタン化合物、アルミニウムキレート類等が挙げられる。なお、上記カップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0049】
(樹脂変性物)
樹脂変性物は、諸物性を微調整することを目的として使用される。
樹脂変性物の具体例としては、ポリブタジエンの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物等が挙げられる。なお、上記樹脂変性物は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0050】
(着色剤)
着色剤は、外観を調整することを目的として使用されるもので、従来公知のものをいずれも使用でき、特に制限はない。
着色剤の具体例としては、例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等が挙げられる。なお、上記着色剤は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0051】
〈リン含有硬化性樹脂組成物の製造方法〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物の製造において、前記、環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物、前記エポキシ化合物及び前記フェノール樹脂の使用量は、使用するフェノール樹脂中の水酸基価(KOHmg/g)に対して特定することができる。
即ち、前記エポキシ化合物の使用量(混合比)は、フェノール樹脂の水酸基価(KOHmg/g)から算出される水酸基数が1に対して、当該エポキシ化合物中のエポキシ基数が、好ましくは0.5〜4となるような使用量(混合比)、より好ましくは0.5〜2.5となるような使用量(混合比)、特により好ましくは0.5〜1.5となるような使用量(混合比)である。また、前記ジアリールホスフィンオキシド化合物の使用量(混合比)は、フェノール樹脂の水酸基価(KOHmg/g)から算出される水酸基数が1に対して、当該ジアリールホスフィンオキシド化合物中の水酸基数が、好ましくは0.001〜1.0となるような使用量(混合比)、より好ましくは0.001〜0.5となるような使用量(混合比)、特に好ましくは0.01〜0.5となるような使用量(混合比)である。
【0052】
さらに、硬化促進剤の使用量は、上記の範囲で配合された、前記ジアリールホスフィンオキシド化合物、前記エポキシ化合物、及び前記フェノール樹脂の混合物100gに対して、好ましくは0.1〜10g、より好ましくは0.2〜5g、特に好ましくは0.4〜2gである。また、添加化合物の使用量は、上記の範囲で配合された前記ジアリールホスフィンオキシド化合物、前記エポキシ化合物、及び前記フェノール樹脂の混合物100gに対して、好ましくは0〜20g、より好ましくは0〜10g、特に好ましくは0〜6g使用される。
【0053】
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物は、例えば、大気中又は不活性ガス環境下、前記ジアリールホスフィンオキシド化合物、前記エポキシ化合物、前記フェノール樹脂、及び硬化促進剤を混合する等の方法により製造される。具体例としては、まず、使用するフェノール樹脂の軟化点前後まで加熱しながら、次いで、前記ジアリールホスフィンオキシド化合物、前記エポキシ化合物、硬化促進剤の順に加えて混粘する等の方法により製造される。また、適宜加熱してリン含有硬化性樹脂組成物の溶融成型物、又はプレポリマーとして製造することもできる。さらには、前記樹脂組成物、又はプレポリマーに別途有機溶媒を加えて溶解、又はスラリーにして、リン含有硬化性樹脂組成物溶液、又はリン含有硬化性樹脂ワニスとして製造してもよい。
【0054】
[リン含有硬化性樹脂組成物溶液、リン含有硬化性樹脂ワニス]
〈リン含有硬化性樹脂組成物溶液、リン含有硬化性樹脂ワニスの製造方法〉
本発明では、上記リン含有硬化性樹脂組成物を、例えば、その取り扱い性を容易にする等の目的で、別途有機溶媒を添加してリン含有硬化性樹脂組成物溶液として製造してもよい。さらに、溶液粘度を調整することにより、例えば、リン含有硬化性樹脂組成物溶液は、リン含有硬化性樹脂ワニスとして調製してもよい。
【0055】
〈有機溶媒〉
このような有機溶媒としては、本発明のリン含有硬化性樹脂組成物を加熱硬化させた場合に揮発する溶媒であれば特に限定されず、例えば、脂肪族ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、ベンゼン、キシレン等)、非プロトン性極性溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等)等が挙げられる。上記有機溶媒は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0056】
上記有機溶媒の使用量は、リン含有硬化性樹脂組成物1gに対して、好ましくは0.1〜1000mL、より好ましくは0.5〜500mL、特に好ましくは1〜100mL使用される。
【0057】
(製造操作:リン含有硬化性樹脂組成物溶液)
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造は、例えば、リン含有硬化性樹脂組成物の原料である前記ジアリールホスフィンオキシド化合物、前記エポキシ化合物、及び前記フェノール樹脂等の前記有機溶媒に対する溶解性、分散性等を製造開始時から製造終了後にかけて確認しながら、適宜有機溶媒を添加して混合し、リン含有硬化性樹脂組成物溶液として製造してもよい。また、その際、リン含有硬化性樹脂組成物と有機溶媒とを混合後、例えば、混合、攪拌、超音波処理、適宜加熱溶解処理等を行ってもよい。
【0058】
上記の方法で得られる本発明のリン含有硬化性樹脂組成物、リン含有硬化性樹脂組成物溶液、及びリン含有硬化性樹脂ワニスは、好ましくは半導体封止剤又はプリント配線板用レジスト剤の原料として使用することができる。
【0059】
[リン含有樹脂硬化物]
また、本発明によれば、上記の添加化合物を必要に応じて配合した本発明のリン含有硬化性樹脂組成物を硬化させることで、良好な難燃性を有するリン含有樹脂硬化物を提供することができる。さらに、上記の添加化合物と併せて、メラニン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂化合物を配合した本発明のリン含有硬化性樹脂組成物を硬化させることによって、良好な難燃性と材料成形性を有するリン含有樹脂硬化物を提供することができる。そこで、本発明のリン含有樹脂硬化物は、十分な耐熱性、及び耐加水分解性を利用して、例えば、後述のプリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート、積層板又は多層板等の構成材料として、幅広く使用することができる。
【0060】
〈リン含有硬化物の製造方法〉
(硬化条件)
本発明のリン含有樹脂硬化物は、例えば、リン含有硬化性樹脂組成物又はリン含有硬化性樹脂組成物溶液とフェノール樹脂以外の樹脂化合物とを、大気中又は不活性ガス環境下、硬化反応させることによって製造される。さらに、本発明の硬化物の製造方法は、例えば、所望の形状に、射出、注型等で成型した後、加熱硬化させる方法によっても製造することができる。具体的な方法としては、例えば、金属箔、離型フィルム等の各種基板上に塗布して加熱硬化させる方法、及び金型に流し込んで加熱硬化させる方法(注型成型)が挙げられるが、硬化中において気泡が発生することのないように、好ましくはいずれの方法においても硬化開始前に脱気操作を行なう。
【0061】
上記硬化反応における、硬化温度は適宜調整できるため特に制限されないが、好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜250℃、特に好ましくは100〜220℃の硬化温度で行われる。なお、硬化反応時間は特に制限されない。
また、加熱し硬化させる工程は、一段階で行っても、多段階で行ってもよいが、好ましくは硬化反応時に生じる揮発成分を系外へ除去するために、様々な硬化温度で、段階的に硬化させる多段階工程で行う。より具体的には、温度が80〜140℃で反応させる第一工程と、第一工程の硬化温度より高い温度である140℃〜250℃の温度下にて第二の硬化温度で加熱硬化させる多段階工程で行う。
さらに本発明のリン含有樹脂硬化物は、モノマー成分として前記式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物を含むことから難燃性を有し、また架橋構造を有することから、耐加水分解性を付与することができる。
【0062】
[本発明のリン含有硬化性樹脂組成物を含有するプリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート、積層板及び多層板の製造方法]
前記〈リン含有硬化性樹脂組成物溶液、リン含有硬化性樹脂ワニスの製造方法〉項より得られる、リン含有硬化性樹脂ワニスは、例えば、以下に述べるプリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート、積層板及び多層板の製造等に用いることができる。さらに、塗工用樹脂ワニスとして積層板や多層板に塗工して用いることもできる。このとき、必要に応じて、例えば、有機溶媒の種類、リン含有硬化性樹脂組成物の含有濃度、添加化合物等を変更して使用しても良い。
【0063】
〈リン含有硬化性樹脂組成物を含有するプリプレグ〉
まず、プリプレグについて説明する。この製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、上記の樹脂ワニスをシート状基材に含浸させた後、100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥し、樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させるものである。ただし、プリプレグの樹脂量は、好ましくはプリプレグの30〜80質量%となるように使用する。ここで、シート状基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラス等の無機質繊維の織布又は不織布、ポリエステル、ポリアミン、ポリアクリル、ポリイミド、ケブラー等の有機質繊維の織布又は不織布を用いることができる。
【0064】
〈リン含有硬化性樹脂組成物を含有する樹脂付き金属箔〉
次に、樹脂付き金属箔について説明する。この製造方法も特に限定されるものではないが、例えば、上記の樹脂ワニスを金属箔の一方面にロールコーター等を用いて塗布した後、100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥し、樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させるものである。ただし、樹脂付き金属箔の樹脂部分の厚みは、好ましくは5〜80μmとなるように形成する。ここで、金属箔としては、特に限定されるものではないが、例えば、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の金属を単独で用いたり、これらを合金にした複合材料等として用いたりすることができる。ただし、金属箔の厚みは、好ましくは0.012〜0.070mmである。
【0065】
〈リン含有硬化性樹脂組成物を含有する接着シート〉
次に、接着シートについて説明する。この製造方法も特に限定されるものではないが、例えば、一般にキャスティング法と呼ばれる方法に基づいて行われるものである。すなわち、上記の樹脂ワニスをキャリアフィルム上に5〜100μmの厚みとなるように塗布した後、100〜200℃で1〜40分加熱乾燥し、樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させてシート状に形成するものである。ただし、接着シートの厚みは、好ましくは5〜80μmとなるように形成する。また、上記の製造方法においては、予めキャリアフィルムの表面を離型材で処理しておくと、形成された接着シートを容易に剥離することができて作業性が良くなるものである。ここで、キャリアフィルムとしては、前記樹脂ワニスに溶解しないものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等を用いることができる。
【0066】
〈リン含有硬化性樹脂組成物を含有する積層板〉
次に、積層板の製造方法について説明する。まず上記にて得られたプリプレグ、樹脂付き金属箔又は接着シートのうちの少なくとも一種のものを1枚又は2枚以上重ねて積層物を形成する。次いで、この積層物の片面又は両面に金属箔を配置する。このときの金属箔としては特に限定されるものではないが、例えば、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の金属を単独で用いたり、或いはこれらを合金にした複合材料等を用いたりする。また、樹脂付き金属箔で積層物を形成する場合には、この樹脂付き金属箔の金属箔が積層物の片面又は両面を形成するように、樹脂付き金属箔を配置する。その後、この積層物を金属箔と共に加熱加圧して積層一体化させることによって、目的とする本発明の積層板を製造する。なお、加熱、加圧条件としては、リン含有エポキシ樹脂組成物が硬化する条件であれば特に限定されるものではないが、例えば、温度を150〜220℃、圧力を0.49〜4.9MPa、加熱加圧時間を40〜240分間にそれぞれ設定して行なう製造方法が挙げられる。なお、上記の範囲であれば、得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気特性が低下する可能性は少ない。
【0067】
〈リン含有硬化性樹脂組成物を含有する多層板>
次に、多層板について説明する。本発明の多層板は、例えば、上記のようにして得られた積層板を内層材として使用する方法等により製造することができる。具体例としては、まず、積層板の片面又は両面にアディティブ法やサブトラクティブ法等により回路を形成する。ここで、回路のパターン形成においては、パターンニングすべき回路パターン等が描かれているフィルムマスクやガラス乾板を透して、強力な紫外線(UV)を照射することとなるが、本発明においてはプリント配線板のUV遮蔽性が高められているので、紫外線がプリント配線板を透過しにくくなっている。そのため、露光作業に両面同時露光方式の装置を用いても、プリント配線板の一方の面に照射した紫外線はこの面にラミネートされた光感光性ドライフィルムを感光させるだけであり、プリント配線板を透して、他方の面にラミネートされた光感光性ドライフィルムを感光させるようなことはなくなる。従って、露光作業の後は現像等の所定の作業を行うことによって回路を形成することができ、次いで、この回路表面に酸溶液等を用いて黒化処理を施し内層材を得ることができる。この処理法によって、高密度、高精度のパターン形成を容易に行うことが可能となる。その後、この内層材の片面又は両面の回路形成面に、プリプレグ、樹脂付き金属箔又は接着シートを用いて絶縁層を形成し、さらに絶縁層の表面に導体層を形成して、本発明の多層板を得ることができる。なお、具体的な絶縁層の形成方法については、以下に示す。
【0068】
はじめに、絶縁層にプリプレグを用いた多層版の製造方法は、例えば、まず内層材の回路形成面にプリプレグを1枚又は2枚以上積層して配置し、その外側に金属箔を配置して積層物を形成し、次いで、この積層物を加熱加圧して積層一体化させて製造する方法である。このような製造方法によって、本発明のリン含有硬化性樹脂組成物を含有する硬化物のプレプリグを絶縁層として、その外側の金属箔を導体層とした構成を有するリン含有樹脂硬化物を含有する多層板を得ることができる。ここで、使用する金属箔としては特に限定されるものではないが、積層板の形成に用いたものと同様のものを使用することができる。また、加熱加圧の条件は特に限定されるものではないが、前記積層板の形成時と同様の条件で行うことができる。
【0069】
次に、絶縁層に樹脂付き金属箔を用いた多層版の製造方法は、例えば、まず内層材の回路形成面に樹脂付き金属箔を、その樹脂層が内層材の回路形成面と対向するように重ねて配置し積層物を形成する。次いで、この積層物を加熱加圧して積層一体化することによって、樹脂付き金属箔の樹脂層の硬化物を絶縁層とし、その外側の金属箔を導体層とした構成を有するリン含有樹脂硬化物を含有する多層板を製造する方法である。ここで、加熱加圧の条件は特に限定されるものではないが、積層板の形成時と同様の条件で行うことができる。
【0070】
さらに、絶縁層として接着シートを用いた多層版の製造方法は、例えば、内層材の回路形成面と金属箔との間に接着シートを配置して積層物を形成する。次いで、この積層物を加熱加圧して積層一体化することによって、接着シートの硬化物を絶縁層として、金属箔を導体層とした構成を有するリン含有樹脂硬化物を含有する多層板を製造することができる。ここで、金属箔としては特に限定されるものではないが、積層板の形成に用いたものと同様のものを用いることができる。また、加熱加圧の条件は特に限定されるものではないが、積層板の形成時と同様の条件で行うことができる。
【0071】
なお、前記絶縁層には、上述した塗工用樹脂ワニスを利用しても良い。すなわち、上記の積層板や多層板に塗工用樹脂ワニスを塗工し、塗工面に金属箔等を配し導体層を形成する。次いで、この操作を繰り返すことによってより多層の多層板を形成させることで、本発明のリン含有樹脂硬化物を含有する多層板を製造することができる。
【0072】
また、以上のようにして得られた多層板からプリント配線板や多層プリント配線板を製造することもできる。例えば、多層板の片面又は両面にアディティブ法やサブトラクティブ法等により回路やバイアホールを形成したり、ドリル加工等によりスルーホールを形成したりして、このスルーホールにめっきを施して各層間の導通を形成する等の処理を行なった、プリント配線板等が挙げられる。また、このようにして得られたプリント配線板を内層材として上述の工法を繰り返すことにより、さらに多層の多層プリント配線板を形成することができる。
【0073】
このようにして得られたプリント配線板(多層プリント配線板を含む)については、耐熱性が十分に高められているので、鉛フリー半田を用いたリフロー式半田付けによって電子部品を実装する場合であっても、急激な熱ストレスによって回路が基板から剥離することがなく、またクラックの発生も低下する。
【0074】
本発明では、上記のような配合比等で、リン含有硬化性樹脂組成物及びリン含有硬化性樹脂組成物溶液又はリン含有硬化性樹脂ワニスを製造することができ、さらにこれらを硬化させた本発明のリン含有樹脂硬化物は、例えば、本発明のリン含有硬化性樹脂組成物を硬化させたプリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート、積層板及び多層板用として、好適に使用することができる。また、本発明のリン含有樹脂硬化物は、前記式(1)のジアリールホスフィンオキシド構造をポリマー主鎖中に組み込まれたリン原子を含有する樹脂であるため、従来の難燃剤の欠点であったブリードアウトを防止し、また、十分な難燃性、耐熱性、並びに耐吸湿性を有する、電気及び電子産業分野において非常に有用な難燃性樹脂硬化物である。
【実施例】
【0075】
次に、実施例において具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例、参考例等に限定されるものではない。
【0076】
[参考例1]
<式(5−A)で示されるリン含有化合物>
【0077】
【化4】
【0078】
温度計、温度調整装置、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、トルエン75mLとジフェニルホスフィンオキシド10.1g(0.05モル)を加え、次いで、これに4−ヒドロキシベンズアルデヒド6.1g(0.05モル)とフェノール5.17g(0.055モル)とを順に加え、65℃にて1時間撹拌を行った。その後、これにp−トルエンスルホン酸0.2g(0.001モル)を加えて、さらに110℃まで昇温して8時間撹拌し反応を行った。反応終了後、得られた反応懸濁液を室温まで冷却し、ろ別して固形物を取得した。得られた固形物は、トルエン30mLで洗浄後、アセトニトリル100mLに懸濁させて80℃で1時間攪拌し、次いで、室温まで冷却し、ろ別して固形物を取得した。得られた固形物を、冷アセトニトリルで洗浄後、乾燥したところ、白色粉末として目的物である式(5−A)で示されるビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド16.9gを得た(取得収率:84.4%)。
得られたビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシドの分析値は、以下のとおりであった。
【0079】
MSスペクトル〔CI−MS〕:401[M+1]
1H−NMRスペクトル〔300MHz,d6−DMSO,δ(ppm)〕:5.28(1H,d)、6.53(4H,d)、7.32−7.43(10H,brs)、7.75−7.82(4H,brs)、9.16(2H,s)
融点:301℃
<式(1−A)で示されるリン含有化合物>
【0080】
【化5】
【0081】
温度計、温度調整装置、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド10.0g(0.025モル)とエピクロロヒドリン60.0g(0.65モル)とを加え、105℃に昇温して混合した。次いで、この混合物に、同温度下、48%水酸化ナトリウム水溶液6.1g(0.0732モル)をゆるやかに滴下し、滴下終了後、さらに2時間撹拌を行った。反応終了後、得られた混合物を室温まで冷却し、これにジクロロメタン100g及び水100gを加えて、有機層を分液した。得られた有機層をさらに水100gで洗浄し、その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、減圧濃縮にて溶媒を留去したところ、濃縮物を18.1g得た。得られた濃縮物を1−ブタノールにて再結晶を行い、白色粉末として目的物である式(1−A)で示されるビス(4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド7.5gを得た(取得収率:58.5%)。
MSスペクトル〔CI−MS〕:513[M+1]
1H−NMRスペクトル〔300MHz,d6−DMSO,δ(ppm)〕:2.62−2.64(2H,brs)、2.77−2.80(2H,brs)、3.21−3.26(2H,brs)、3.68−3.73(2H,brs)、4.16−4.20(2H,brs)、5.47(1H,d)、6.75−6.78(4H,brs)、7.34−7.50(10H,brs)、7.78−7.85(4H,brs)
融点:192−195℃
【0082】
[参考例2]
<式(5−B)で示されるリン含有化合物>
【0083】
【化6】
【0084】
温度計、温度調整装置、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、トルエン75mLとジフェニルホスフィンオキシド10.1g(0.05モル)を加え、次いで、これに4−ヒドロキシベンズアルデヒド6.1g(0.05モル)とクレゾール5.95g(0.055モル)とを順に加え、65℃にて1時間撹拌を行った。次いで、これにp−トルエンスルホン酸0.2g(0.001モル)を加えて、さらに110℃まで昇温して8時間撹拌し反応を行った。反応終了後、得られた反応懸濁液を室温まで冷却し、析出物をろ別し、さらにトルエン30mLで洗浄した。得られた固形物をアセトニトリル100mLに懸濁させて80℃で1時間攪拌し、その後0℃まで冷却して析出物をろ別し、冷アセトニトリルで洗浄した。得られた固形物を乾燥し、白色粉末として目的物である式(5−B)で示される(4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド17.8gを得た(取得収率:85.9%)。
MSスペクトル〔CI−MS〕:415[M+1]
1H−NMRスペクトル〔300MHz,d6−DMSO,δ(ppm)〕:1.96(3H,d)、5.24(1H,d)、6.51−6.54(3H,brs)、7.18−7.20(2H,brs)、7.31−7.38(8H,brs)、7.74−7.83(4H,brs)、9.09(2H,s)
融点:252℃
<式(1−B)で示されるリン含有化合物>
【0085】
【化7】
【0086】
温度計、温度調整装置、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、(4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド5.0g(0.012モル)とエピクロロヒドリン22.3g(0.24モル)とを加え、105℃に昇温して混合した。次いで、この混合物に、同温度下、48%水酸化ナトリウム水溶液3.0g(0.036モル)をゆるやかに滴下し、滴下終了後、さらに2時間撹拌を行った。反応終了後、得られた混合物を室温まで冷却し、これにジクロロメタン50g及び水50gを加えて、有機層を分液した。得られた有機層をさらに水50gで洗浄し、その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、減圧濃縮にて溶媒を留去し濃縮物を得た。得られた濃縮物を2−プロパノールにて再結晶を行い、白色粉末として目的物である式(1−B)で示される(4−グリシジルオキシフェニル)(3−メチル−4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド5.3gを得た(取得収率:83.9%)。
MSスペクトル〔CI−MS〕:527[M+1]
1H−NMRスペクトル〔300MHz,d6−DMSO,δ(ppm)〕:2.02(3H,d)、2.62−2.67(2H,brs)、2.77−2.80(2H,brs)、3.21−3.28(2H,brs)、3.67−3.86(2H,brs)、4.15−4.20(2H,brs)、5.43(1H,d)、6.72−6.77(3H,brs)、7.31−7.49(10H,brs)、7.77−7.86(4H,brs)
【0087】
[実施例1]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕0.2016g、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)0.8009g、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)0.8301g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0187gの混合物にジメチルアセトアミド1.8954gを添加した。このサンプル管を、湯浴にて100℃で加熱したところ、均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円型の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−1A)を得た(下記、反応式〔6−1A〕)。
【0088】
【化8】
【0089】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図1に示した。
図1より、実施例1では1000℃における炭化物の残存重量割合が12.3%であった。
【0090】
[実施例2]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕0.1016g、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)0.9035g、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)0.7516g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0174gの混合物にジメチルアセトアミド1.7374gを添加した。このサンプル管を、湯浴にて100℃で加熱したところ、均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円型の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−2A)を得た(下記、反応式〔6−2A〕)。
【0091】
【化9】
【0092】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図2に示した。
図2より、実施例2では1000℃における炭化物の残存重量割合が7.4%であった。
【0093】
[比較例1]
10mLのガラス製サンプル管に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)1.1809g、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、HF−1M:軟化点84℃、水酸基価106g/eq)1.0016g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0162gの混合物にジメチルアセトアミド1.0021gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてエポキシ樹脂組成物溶液を得た。
<エポキシ樹脂硬化物の製造>
次に、得られたエポキシ樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で5時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物を得た(下記、反応式〔Ref.1〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.1)には、ジメチルアセトアミドは含有されていなかった。
【0094】
【化10】
【0095】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図3に示した。
図3より、一般式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物を含有していないを含有していない比較例1では、1000℃における炭化物の残存重量割合が4.2%となっており、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕を含有している実施例1(図1、残存量割合12.3%)、及び実施例2(図1、残存量割合7.4%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合がそれぞれ8.1%及び3.2%と高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0096】
[実施例3]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕0.4012g、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)1.6061g、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)1.0306g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0303gの混合物にジメチルアセトアミド3.0083gを添加した。次いで、このサンプル管を、湯浴にて100℃で加熱したところ、均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−3A)を得た(下記、反応式〔6−3A〕)。
【0097】
【化11】
【0098】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図4に示した。
図4より、実施例3では1000℃における炭化物の残存重量割合が25.7%であった。
【0099】
[実施例4]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、(4−グリシジルオキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−B)〕0.4032g、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)1.6034g、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)1.0303g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0323gの混合物にジメチルアセトアミド3.0398gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブン160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−4B)を得た(下記、反応式〔6−4B〕)。
【0100】
【化12】
【0101】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図5に示した。
図5より、実施例4では1000℃における炭化物の残存重量割合が28.0%であった。
【0102】
[比較例2]
10mLのガラス製サンプル管に、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)0.8921g、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、HF−1M:軟化点84℃、水酸基当量106g/eq)1.4965g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0147gの混合物にジメチルアセトアミド1.5021gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてエポキシ樹脂組成物溶液を得た。得られた溶液を1.0010g取り、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)0.8921gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてエポキシ樹脂組成物溶液を得た。
<エポキシ樹脂硬化物の製造>
次に、得られたエポキシ樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物を得た(下記、反応式〔Ref.2〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.2)には、ジメチルアセトアミドは含有されていなかった。
【0103】
【化13】
【0104】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図6に示した。
図6より、一般式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物を含有していない比較例2の硬化物では、1000℃における炭化物の残存重量割合が14.7%となり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕を含有している実施例3(図4、残存重量割合25.7%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が11.0%高く、また、(4−グリシジルオキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−B)〕を含有している実施例4(図5、残存割合28.0%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が13.3%高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0105】
[実施例5]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕0.4006g、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物として、グリシジル基で修飾したクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃、エポキシ当量205−215g/eq)1.6002g、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)0.9594g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0307gの混合物にジメチルアセトアミド2.9899gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて170〜180℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−5A)を得た(下記、反応式〔6−5A〕)。
【0106】
【化14】
【0107】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図7に示した。
図7より、実施例5では1000℃における炭化物の残存重量割合が34.2%であった。
【0108】
[実施例6]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に(4−グリシジルオキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−B)〕0.4033g、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物として、グリシジル基で修飾したクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃、エポキシ当量205−215g/eq)1.6062g、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)0.9583g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0320gの混合物にジメチルアセトアミド2.9433gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて170〜180℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−6B)を得た(下記、反応式〔6−6B〕)。
【0109】
【化15】
【0110】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図8に示した。
図8より、実施例6では1000℃における炭化物の残存重量割合が35.2%であった。
【0111】
[比較例3]
10mLのガラス製サンプル管に、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物としてグリシジル基で修飾したクレゾールノボラック樹脂(DIC製、N−エピクロン673:軟化点73−82℃、エポキシ当量205−215g/eq)2.0172g、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)1.0026g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0309gの混合物にジメチルアセトアミド3.0281gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてエポキシ樹脂組成物溶液を得た。
<エポキシ樹脂硬化物の製造>
次に、得られたエポキシ樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて170〜180℃で6時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物を得た〔下記、反応式(Ref.3)〕。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.3)には、ジメチルアセトアミドは含有されていなかった。
【0112】
【化16】
【0113】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図9に示した。
図9より、一般式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物を含有していない比較例3の硬化物では、1000℃における炭化物の残存重量割合が26.5%となり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕を含有している実施例5(図7、残存重量割合34.2%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が7.7%高く、また、(4−グリシジルオキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−B)〕を含有している実施例6(図8、残存割合35.2%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が8.7%高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0114】
[実施例7]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕0.2012g、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)0.8042g、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.0894g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0214gの混合物にジメチルアセトアミド1.9977gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−7A)を得た(下記、反応式〔6−7A〕)。
【0115】
【化17】
【0116】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図10に示した。
図10より、実施例7では1000℃における炭化物の残存重量割合が26.8%であった。
【0117】
[比較例4]
10mLのガラス製サンプル管に、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.1021g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0129gの混合物にジメチルアセトアミド1.0987gを添加し、攪拌して、均一な溶液を得た。次に、この溶液1.0072gに、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)0.4342gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてエポキシ樹脂組成物溶液を得た。
<エポキシ樹脂硬化物の製造>
次に、得られたエポキシ樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物を得た(下記、反応式〔Ref.4〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.4)には、ジメチルアセトアミドは含有されていなかった。
【0118】
【化18】
【0119】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図11に示した。
図11より、一般式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物を含有していないを含有していない比較例4では、1000℃における炭化物の残存重量割合が16.8%となっており、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕を含有している実施例7(図10、残存量割合26.8%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が10.0%高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0120】
[実施例8]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕0.2022g、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)0.8046g、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.4399g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0256gの混合物にジメチルアセトアミド2.5015gを添加したところ、室温下で均一な溶液として、リン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−8A)を得た(下記、反応式〔6−8A〕)。
【0121】
【化19】
【0122】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図12に示した。
図12より、実施例8では1000℃における炭化物の残存重量割合が17.1%であった。
【0123】
[実施例9]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、(4−グリシジルオキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−B)〕0.2007g、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)0.8029g、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.4323g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0253gの混合物にジメチルアセトアミド2.3951gを添加したところ、室温下で均一な溶液として、リン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−9B)を得た(下記、反応式〔6−9B〕)。
【0124】
【化20】
【0125】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図13に示した。
図13より、実施例9では1000℃における炭化物の残存重量割合が17.9%であった。
【0126】
[比較例5]
10mLのガラス製サンプル管に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)0.5811g、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.1021g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0102gの混合物にジメチルアセトアミド1.0061gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてエポキシ樹脂組成物溶液を得た。
<エポキシ樹脂硬化物の製造>
次に、得られたエポキシ樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物を得た(下記、反応式〔Ref.5〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.5)には、ジメチルアセトアミドは含有されていなかった。
【0127】
【化21】
【0128】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図14に示した。
図14より、一般式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物を含有していない比較例5の硬化物では、1000℃における炭化物の残存重量割合が11.5%となり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕を含有している実施例8(図12、残存重量割合17.1%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が5.6%高く、また、(4−グリシジルオキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−B)〕を含有している実施例9(図13、残存割合17.9%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が6.4%高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0129】
[実施例10]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕0.2018g、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物として、グリシジル基で修飾したクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃、エポキシ当量205−215g/eq)0.8027g、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)0.9966g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0201gの混合物にジメチルアセトアミド2.0000gを添加したところ、室温下で均一な溶液として、リン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて170〜180℃で6時間加熱し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−10A)を得た(下記、反応式〔6−10A〕)。
【0130】
【化22】
【0131】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図15に示した。
図15より、実施例10では1000℃における炭化物の残存重量割合が40.2%であった。
【0132】
[比較例6]
10mLのガラス製サンプル管に、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃;エポキシ当量205−215g/eq)1.0086g、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃;水酸基当量218g/eq)1.0381g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0218gの混合物にジメチルアセトアミド2.0103gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてエポキシ樹脂組成物溶液を得た。
<エポキシ樹脂硬化物の製造>
次に、得られたエポキシ樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで170〜180℃で6時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物を得た(下記、反応式〔Ref.6〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.6)には、ジメチルアセトアミドは含有していなかった。
【0133】
【化23】
【0134】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図16に示した。
図16より、一般式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物を含有していない比較例6の硬化物では1000℃における炭化物の残存重量割合が28.7%となり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有している実施例10(図15、残存重量割合40.2%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が17.5%高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、環状エーテル基を含有するリン含有化合物を含むことを特徴とするリン含有硬化性樹脂組成物、及びそれを硬化させることにより得られるリン原子を樹脂骨格中に組み込んだリン含有樹脂硬化物に関する。本発明のリン含有硬化性樹脂組成物は、例えば、半導体封止剤又はプリント配線板用レジスト剤の原料等として使用され、また、その樹脂硬化物は優れた難燃性を示すことから、例えば、プリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート、積層板又は多層板等の構成材料として、幅広く使用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物に関する。詳しくは、環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物、エポキシ化合物、フェノール樹脂、及び硬化促進剤を含むリン含有硬化性樹脂組成物、並びにそれを硬化させてなるリン原子を樹脂骨格中に組み込んだリン含有樹脂硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用的な樹脂硬化物のひとつである、エポキシ樹脂は、例えば、電子部品の封止用材料、積層板用材料等、一般的に電気、電子材料分野では幅広く使用されている。特に、耐熱性及び材料安定性に関する信頼性(長寿命化)の観点から選ばれたフェノールノボラック樹脂とエポキシ樹脂とを用いて製造される半導体封止用エポキシ樹脂硬化性組成物は、高温下でも十分な火災防止作用を示すことが安全性の観点から要求されており、その研究開発は現在も盛んに行われている。
【0003】
ところで、これまで難燃性を有する化合物としては、例えば、ハロゲン化合物を添加した樹脂組成物や、ハロゲン原子を有するモノマーを用いた樹脂硬化物等が、難燃性を有した化合物として広く知られている。しかしながらが、これらの難燃性組成物や樹脂化合物には、燃焼分解時にダイオキシン類等を発生する恐れがある化合物を含有していることがあり、その使用環境が高温下である場合、人体への安全性を十分に満足するとは言い難かった。
【0004】
一方、ハロゲン原子が含まれていない、いわゆる非ハロゲン系難燃性材料としては、近年、有機リン系化合物を添加した樹脂材料が注目されている。しかしながら、添加される樹脂材料との相性によっては、添加した有機リン系化合物が、樹脂材料中でブリードアウト現象を起こすことがあり、単に、前記有機リン系化合物を樹脂材料に添加・混合しただけでは、十分な難燃性を示さないことがあった。
そこで、このような問題を解決する手段として、例えば、特許文献1には、リン酸エステル構造を骨格に組み込んだオリゴマーを含む樹脂組成物が、適度な難燃性を発揮することが開示されている。また、特許文献2には、10−ヒドロキシメチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドを原料としてリン原子を骨格中に組み込んだ難燃性エポキシ樹脂について開示されている。さらに特許文献3には、エポキシ樹脂硬化物を得るためのリン原子を含んだポリグリシジル体を調製する方法について開示されている。(例えば、特許文献1〜3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−343382号
【特許文献2】特開2000−154234号
【特許文献3】特開2007−119544号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された樹脂組成物中のオリゴマーは、耐加水分解性に弱く、さらにこの樹脂組成物から作製される樹脂硬化物は、電子・電気分野向けの材料として使用するには吸水性が高いという難点を有することがわかっている。また、特許文献2及び特許文献3に記載されている化合物においても、分子内にリン酸結合部分を有しているために、満足な耐加水分解特性が得られない等の問題があった。
上記の先行技術文献より、これまでにリン原子を骨格中に組み込んだ組成物やその硬化物は、主に難燃性という観点から様々な検討が行われてきたが、依然として、良好な難燃性とその他の諸物性とのバランスがよい難燃性樹脂材料の開発が求められている。
【0007】
そこで、本発明の課題は、難燃性、耐吸水性に優れた、リン原子を樹脂骨格中に含むリン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、特定のジアリールホスフィンオキシド化合物、特定のエポキシ化合物、及び特定のフェノール樹脂と硬化開始剤とを含有するリン含有硬化性樹脂組成物、並びにその樹脂硬化物により上記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記に示すリン含有硬化性樹脂組成物及びその樹脂硬化物を提供することである。
【0009】
1.少なくとも1種の下記式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、及び少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を含むことを特徴とするリン含有硬化性樹脂組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
[式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。p、q、r及びsは、それぞれ独立に、0〜4の整数である。
R5は、水素原子、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基示す。
R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。
X1及びX2、並びにY1及びY2は、それぞれ独立に、単結合、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基のいずれかを示す。ただし、X1とY1とは同時に単結合ではなく、X2とY2とは同時に単結合ではない。
Z1及びZ2は、それぞれ独立に、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を示し、また、n及びmは、それぞれ独立に、1又は2のいずれかを示す。]
【0012】
2.分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が、ジエポキシド化合物、トリエポキシド化合物、及びポリエポキシド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物である、前記1に記載のリン含有硬化性樹脂組成物。
【0013】
3.フェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂が、フェノール類、ビスフェノール類、ナフトール類とアルデヒド類との重縮合物、フェノール類とジエン類との重縮合物、及びフェノール類とケトン類との重縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール樹脂である、前記1又は2に記載のリン含有硬化性樹脂組成物。
【0014】
4.前記1〜3のいずれか1つに記載のリン含有硬化性樹脂組成物を硬化してなるリン含有樹脂硬化物。
【発明の効果】
【0015】
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物、及びこの組成物を硬化してなるリン含有樹脂硬化物は、例えば、リン酸結合、エステル結合、及びアミド結合等の加水分解を受けやすい結合を分子内に一切含有していないことから、良好な耐加水分解特性が期待される。そこで、本発明のリン含有硬化性樹脂組成物は、例えば、半導体封止剤又はプリント配線板用レジスト剤の原料等として使用される。
また、本発明のリン含有樹脂硬化物は優れた難燃性を示すため、例えば、プリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート、積層板、又は多層板等の構成材料として幅広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図2】実施例2で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図3】比較例1で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図4】実施例3で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図5】実施例4で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図6】比較例2で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図7】実施例5で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図8】実施例6で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図9】比較例3で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図10】実施例7で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図11】比較例4で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図12】実施例8で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図13】実施例9で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図14】比較例5で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図15】実施例10で得られたリン含有樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【図16】比較例6で得られたエポキシ樹脂硬化物の熱重量分析測定(TG−DTA)チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[リン含有硬化性樹脂組成物]
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物は、少なくとも1種の環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を含む組成物であり、さらに必要に応じて種々の添加化合物を含有し得るものである。
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物の製造方法は、例えば、少なくとも1種の環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を混合させる方法等により得られる。
【0018】
〈環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物〉
環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物は、下記式(1)で示される。ここで、本発明のジアリールホスフィンオキシド化合物が有する「環状エーテル基」とは、上記式(1)で示される化学構造式において、−X1−O−Y1−基、又は−X2−O−Y2−基が結合した炭素原子により形成された、環状のエーテル基のことを示す。
【0019】
【化2】
【0020】
(R1、R2、R3及びR4が示す置換基)
式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。p、q、r及びsは、それぞれ独立に、0〜4の整数である。
【0021】
炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基を示し、位置異性体を含む。無置換の炭素数1〜6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0022】
炭素数1〜6のアルキルオキシ基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合した基を示し、位置異性体を含む。無置換の炭素数1〜6のアルキルオキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、イソブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、シクロブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、及びシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基は、無置換又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を示し、より詳しくは、芳香族炭化水素基の1個以上の水素原子が、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい。ここで「アルキル基」及び「アルキルオキシ基」は、前記アルキル基及びアルキルオキシ基と同義である。
前記アリール基としては、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、トルイル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、シクロプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、n−プロポキシフェニル基、イソプロポキシフェニル基、シクロプロポキシフェニル基、及びn−ブトキシフェニル基等が挙げられる。
【0024】
置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基は、前記アリール基が酸素原子に結合した基を示し、さらに、前記アリール基の1個以上の水素原子が、例えば、炭素数1〜4のアルキルオキシ基で置換されていてもよい。
前記アリールオキシ基として、具体的には、トルイルオキシ基、ジメチルフェニルオキシ基、エチルフェニルオキシ基、n−プロピルフェニルオキシ基、イソプロピルフェニルオキシ基、シクロプロピルフェニルオキシ基、n−ブチルフェニルオキシ基、t−ブチルフェニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、n−プロポキシフェニルオキシ基、イソプロポキシフェニルオキシ基、シクロプロポキシフェニルオキシ基、及びn−ブトキシフェニルオキシ基等が挙げられる。
【0025】
上記より、式(1)中、R1、R2、R3及びR4としてそれぞれ独立に、好ましくはニトロ基、シアノ基;より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、フェニル基;特に好ましくはメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基である。
【0026】
p、q、r及びsは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、好ましくは0又は1、より好ましくはp、q、r及びsのすべてが0である。ここで、p、q、r、又はsが0を表す場合は、対応するR1、R2、R3又はR4の置換基が無いことを意味する。また、p、q、r、sが2以上の整数を表す場合、複数のR1、R2、R3及びR4はそれぞれ、互いに同一でもあっても、又は異なってもよい。さらに、例えば、複数のR1、R2がそれぞれ、ベンゼン環における隣接する炭素原子に置換されている場合、互いに結合して環状構造を形成してもよい。なお、R1とR2、及びR3とR4は、好ましくは互いに同一の置換基である。
【0027】
(R5が示す置換基)
式(1)中、R5は、水素原子、又はフッ素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基を示す。
【0028】
ここで、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基は、炭素数1〜6のアルキル基の1個以上の水素原子が、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、又は炭素数1〜6のアルキルオキシ基で置換されていてもよい、直鎖状又は炭素数3〜6の分岐鎖状或いは環状の脂肪族炭化水素基を示し、さらにこれらのアルキル基は位置異性体も含む。また、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基は、炭素数6〜12のアリール基の1個以上の水素原子が、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜6のアルキルオキシ基で置換されていてもよい、芳香族炭化水素基を示す。
【0029】
R5における上記炭素数1〜6のアルキルオキシ基、上記炭素数1〜6のアルキル基、上記炭素数6〜12のアリール基について、具体的には、上述したR1、R2、R3及びR4で示したものと同義のものが示される。
R5として、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基である。
【0030】
(R6及びR7が示す置換基)
R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。
ここで、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、及び置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基について、具体的には、上述したR1、R2、R3及びR4で示したものと同義のものが示される。
R6及びR7としてそれぞれ独立に、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基であって、R6及びR7が同一の置換基の場合である。
【0031】
(X1及びX2、並びにY1及びY2が示す連結基)
式(1)中、X1及びX2、並びにY1及びY2は、それぞれ独立に、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基のいずれかを示し、X1とY1とは同時に単結合ではなく、X2とY2とは同時に単結合ではない。
X1及びX2、並びにY1及びY2として、好ましくはX1及びX2が単結合又はメチレン基であって、かつY1及びY2が炭素数1〜12のアルキレン基;より好ましくはX1及びX2が単結合又はメチレン基であって、かつY1及びY2が炭素数1〜5アルキレン基;特に好ましくはX1及びX2が単結合又はメチレン基であって、かつY1及びY2がメチレン基又はエチレン基である。すなわち、本発明の式(1)で示されるジアリールホスフィンオキシド化合物の環状エーテル基として、具体的に、特に好ましくはオキシラニル基、オキセタニル基、3−メチル−オキセタニル−3−イル−メチル基、及び3−エチル−オキセタニル−3−イル−メチル基である。
【0032】
(Z1及びZ2が示す連結基)
式(1)中、Z1及びZ2は、炭素数1〜12のアルキレン基を1個以上の水素原子が、フッ素原子で置換されていてもよい、直鎖状又は炭素数3〜6の分岐鎖状或いは環状の2価の脂肪族炭化水素基のいずれかを示し、Z1及びZ2は、互いに同一の置換基であっても、又は異なっていてもよい。さらにこれらのアルキレン基は位置異性体も含む。
上記、炭素数1〜12のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、へプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、又はドデカメチレン基等の直鎖状のアルキレン基を示す。
式(1)中、Z1及びZ2としてそれぞれ独立に、好ましくはZ1及びZ2がともに炭素数1〜6のアルキレン基、より好ましくはZ1及びZ2が互いに同一の炭素数1〜4のアルキレン基である。
【0033】
(環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物の合成方法)
上記式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物は、例えば下記式(2)〜(7)で表される化合物を、下記反応式に従って、例えば、後述の参考例1及び2のように反応させることにより合成することができるが、その合成方法は特に制限されるものではない。なお、下記式(2)〜(7)中、R1〜R7、p〜s、X1及びX2、Y1及びY2、並びにZ1〜Z2については、前記と同義である。また、式(6)及び式(7)中のLGは、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、又はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基からなる群より選ばれる1つの脱離性基を示す。
【0034】
【化3】
【0035】
具体的には、上記式(2)で示されるジアリールホスフィンオキシド化合物と上記式(3)で示されるヒドロキシフェニルアルキルカルボニル化合物とを反応させて、リン含有アリールアルコール化合物とした後、該リン含有アリールアルコール化合物と上記式(4)で示されるフェノール化合物とを、無機酸、有機スルホン酸及び有機カルボン酸等の酸触媒の存在下で反応させて、式(5)で示されるリン含有ジヒドロキシアリール化合物を合成することができる。また、上記と同様の酸触媒の存在下で、上記式(2)〜(4)で示される化合物を同時に仕込み反応させることにより、前記式(5)を合成することもできる。
次に、得られた式(5)で示されるリン含有ジヒドロキシアリール化合物を、例えば、塩基の存在下、式(6)及び式(7)で示される環状エーテル化合物と反応させて、式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物を合成することができる。
【0036】
本発明では、上記方法により合成することができる上記式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0037】
〈エポキシ化合物〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物に含有される、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物は、該樹脂組成物に含まれる前記式(1)で示されるジアリールホスフィンオキシド化合物の環状エーテル基、及び/又は少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂の水酸基と反応し、硬化物を得ることができるものであれば特に制限はない。
【0038】
上記より、使用されるエポキシ化合物として、好ましくは(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル;2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のジエポキシド化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル等のトリエポキシド化合物;エポキシ化ポリブタジエン、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラックポリグリシジルエーテル等のポリエポキシド化合物が挙げられる。なお、上記エポキシ化合物は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0039】
さらに、上記エポキシ化合物の中でも、より好ましくは1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル、特に好ましくは2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテルが使用される。
また、本発明において使用することができるエポキシ化合物の市販品としては、例えば三菱化学製のjER(商品名)シリーズ、DIC製のエピクロン(商品名)シリーズ、ダウケミカル製のDER(商品名)シリーズ、新日鉄化学製のYDF(商品名)シリーズ、ダイセル化学工業社製のセロキサイド(商品名)シリーズ、エポリード(商品名)シリーズ等が挙げられる。
【0040】
〈フェノール樹脂〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物に含有される、少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂としては、特に制限はないが、樹脂材料としての成型性向上(例えば、注型加工性向上)の観点から、好ましくは軟化点が50〜250℃の当該フェノール樹脂、より好ましくは軟化点が50〜200℃の当該フェノール樹脂、特に好ましくは軟化点が50〜150℃の当該フェノール樹脂が使用される。なお、前記フェノール樹脂は、例えば、室温下(0〜30℃)で液状物であってもよい。また、本発明のリン含有硬化性樹脂組成物から得られる樹脂硬化物の樹脂材料として、例えば、熱や外部からの力に対する経時的安定性を向上させる目的から、使用するフェノール樹脂の水酸基価(KOHmg/g)が、好ましくは10〜1000、より好ましくは30〜500、特に好ましくは50〜500である。なお、水酸基価は、JIS K 1557又はJIS K 0070の測定法に従って算出された値を使用する。
【0041】
前記フェノール樹脂の具体例としては、フェノール類(フェノール、カテコール、ハイドロキノン、レゾルシノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン等)、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF等)、もしくは、ナフトール類(α−ナフトール、β−ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等)とアルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等)との重縮合物(ノボラック型フェノール樹脂等);フェノール類とジエン類(テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物;フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物;前記フェノール類及び/又は前記フェノール樹脂の変性物等が挙げられる。なお、上記フェノール樹脂は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
また、本発明において使用することができるフェノール樹脂の市販品としては、例えば明和化成製HF−1M(商品名)、明和化成製MEH−7851(商品名)、昭和電工製BRG−556(商品名)等が挙げられる。
【0042】
〈硬化促進剤〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物に含有される硬化促進剤は、例えば、光硬化促進剤であっても熱硬化促進剤であってよく、特に制限はないが、好ましくはイミダゾール系硬化促進剤、又はリン系硬化促進剤を使用される。また、下記にその硬化促進剤の具体例を示すが、本発明の硬化促進剤は、単独で使用しても、又は2種以上併用してもよい。
【0043】
(イミダゾール系硬化促進剤)
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等が使用される。これらの中でも、好ましくはイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールが使用される。
【0044】
(リン系硬化促進剤)
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン等が使用される。
【0045】
〈添加化合物〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、離型剤、無機充填材、カップリング剤、樹脂変性物、又は着色剤等の添加化合物を含有させることができる。なお、これらの添加化合物は、単独で使用しても、又は2種以上併用してもよい。
【0046】
(離型剤)
離型剤は、例えば、成形時の金型との離型を良くする等の目的として使用されるもので、従来公知のものがいずれも使用でき、特に制限はない。
具体的な離型剤としては、例えば、カルナバワックス、モンタンワックス等のエステル系ワックス、ステアリン酸、パルチミン酸等の脂肪酸及びこれらの金属塩、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックス等が挙げられる。なお、これらの離型剤は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0047】
(無機充填剤)
無機充填剤は、例えば、絶縁性の確保に加えて、サーマルサイクルによる膨張・収縮を抑制する等を目的として使用されるもので、従来公知のものを使用することができ、特に制限はない。
無機充填剤の具体例としては、例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、非晶性シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、マイカ、ガラス、石英、雲母等が挙げられる。なお、これら無機充填剤は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。また、後述のカップリング剤と混合して使用してもよい。これらの無機充填剤のうち、例えば、非晶性シリカ、及び結晶性シリカは、封止材の熱膨張係数を小さくでき、それによって封止材の接続信頼性を向上することができる点から好ましく使用される。
【0048】
(カップリング剤)
カップリング剤は、例えば、無機充填剤と樹脂成分との接着性を高めること等を目的として使用される。
カップリング剤の具体例としては、例えば、ビニルアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、スチリルアルコキシシラン、メタクリロキシアルコキシシラン、アクリロキシアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、イソシアナートアルコキシシラン等の各種アルコキシシラン化合物、アルコキシチタン化合物、アルミニウムキレート類等が挙げられる。なお、上記カップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0049】
(樹脂変性物)
樹脂変性物は、諸物性を微調整することを目的として使用される。
樹脂変性物の具体例としては、ポリブタジエンの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物等が挙げられる。なお、上記樹脂変性物は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0050】
(着色剤)
着色剤は、外観を調整することを目的として使用されるもので、従来公知のものをいずれも使用でき、特に制限はない。
着色剤の具体例としては、例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等が挙げられる。なお、上記着色剤は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0051】
〈リン含有硬化性樹脂組成物の製造方法〉
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物の製造において、前記、環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物、前記エポキシ化合物及び前記フェノール樹脂の使用量は、使用するフェノール樹脂中の水酸基価(KOHmg/g)に対して特定することができる。
即ち、前記エポキシ化合物の使用量(混合比)は、フェノール樹脂の水酸基価(KOHmg/g)から算出される水酸基数が1に対して、当該エポキシ化合物中のエポキシ基数が、好ましくは0.5〜4となるような使用量(混合比)、より好ましくは0.5〜2.5となるような使用量(混合比)、特により好ましくは0.5〜1.5となるような使用量(混合比)である。また、前記ジアリールホスフィンオキシド化合物の使用量(混合比)は、フェノール樹脂の水酸基価(KOHmg/g)から算出される水酸基数が1に対して、当該ジアリールホスフィンオキシド化合物中の水酸基数が、好ましくは0.001〜1.0となるような使用量(混合比)、より好ましくは0.001〜0.5となるような使用量(混合比)、特に好ましくは0.01〜0.5となるような使用量(混合比)である。
【0052】
さらに、硬化促進剤の使用量は、上記の範囲で配合された、前記ジアリールホスフィンオキシド化合物、前記エポキシ化合物、及び前記フェノール樹脂の混合物100gに対して、好ましくは0.1〜10g、より好ましくは0.2〜5g、特に好ましくは0.4〜2gである。また、添加化合物の使用量は、上記の範囲で配合された前記ジアリールホスフィンオキシド化合物、前記エポキシ化合物、及び前記フェノール樹脂の混合物100gに対して、好ましくは0〜20g、より好ましくは0〜10g、特に好ましくは0〜6g使用される。
【0053】
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物は、例えば、大気中又は不活性ガス環境下、前記ジアリールホスフィンオキシド化合物、前記エポキシ化合物、前記フェノール樹脂、及び硬化促進剤を混合する等の方法により製造される。具体例としては、まず、使用するフェノール樹脂の軟化点前後まで加熱しながら、次いで、前記ジアリールホスフィンオキシド化合物、前記エポキシ化合物、硬化促進剤の順に加えて混粘する等の方法により製造される。また、適宜加熱してリン含有硬化性樹脂組成物の溶融成型物、又はプレポリマーとして製造することもできる。さらには、前記樹脂組成物、又はプレポリマーに別途有機溶媒を加えて溶解、又はスラリーにして、リン含有硬化性樹脂組成物溶液、又はリン含有硬化性樹脂ワニスとして製造してもよい。
【0054】
[リン含有硬化性樹脂組成物溶液、リン含有硬化性樹脂ワニス]
〈リン含有硬化性樹脂組成物溶液、リン含有硬化性樹脂ワニスの製造方法〉
本発明では、上記リン含有硬化性樹脂組成物を、例えば、その取り扱い性を容易にする等の目的で、別途有機溶媒を添加してリン含有硬化性樹脂組成物溶液として製造してもよい。さらに、溶液粘度を調整することにより、例えば、リン含有硬化性樹脂組成物溶液は、リン含有硬化性樹脂ワニスとして調製してもよい。
【0055】
〈有機溶媒〉
このような有機溶媒としては、本発明のリン含有硬化性樹脂組成物を加熱硬化させた場合に揮発する溶媒であれば特に限定されず、例えば、脂肪族ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、ベンゼン、キシレン等)、非プロトン性極性溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等)等が挙げられる。上記有機溶媒は、単独で使用しても、又は2種以上を併用してもよい。
【0056】
上記有機溶媒の使用量は、リン含有硬化性樹脂組成物1gに対して、好ましくは0.1〜1000mL、より好ましくは0.5〜500mL、特に好ましくは1〜100mL使用される。
【0057】
(製造操作:リン含有硬化性樹脂組成物溶液)
本発明のリン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造は、例えば、リン含有硬化性樹脂組成物の原料である前記ジアリールホスフィンオキシド化合物、前記エポキシ化合物、及び前記フェノール樹脂等の前記有機溶媒に対する溶解性、分散性等を製造開始時から製造終了後にかけて確認しながら、適宜有機溶媒を添加して混合し、リン含有硬化性樹脂組成物溶液として製造してもよい。また、その際、リン含有硬化性樹脂組成物と有機溶媒とを混合後、例えば、混合、攪拌、超音波処理、適宜加熱溶解処理等を行ってもよい。
【0058】
上記の方法で得られる本発明のリン含有硬化性樹脂組成物、リン含有硬化性樹脂組成物溶液、及びリン含有硬化性樹脂ワニスは、好ましくは半導体封止剤又はプリント配線板用レジスト剤の原料として使用することができる。
【0059】
[リン含有樹脂硬化物]
また、本発明によれば、上記の添加化合物を必要に応じて配合した本発明のリン含有硬化性樹脂組成物を硬化させることで、良好な難燃性を有するリン含有樹脂硬化物を提供することができる。さらに、上記の添加化合物と併せて、メラニン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂化合物を配合した本発明のリン含有硬化性樹脂組成物を硬化させることによって、良好な難燃性と材料成形性を有するリン含有樹脂硬化物を提供することができる。そこで、本発明のリン含有樹脂硬化物は、十分な耐熱性、及び耐加水分解性を利用して、例えば、後述のプリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート、積層板又は多層板等の構成材料として、幅広く使用することができる。
【0060】
〈リン含有硬化物の製造方法〉
(硬化条件)
本発明のリン含有樹脂硬化物は、例えば、リン含有硬化性樹脂組成物又はリン含有硬化性樹脂組成物溶液とフェノール樹脂以外の樹脂化合物とを、大気中又は不活性ガス環境下、硬化反応させることによって製造される。さらに、本発明の硬化物の製造方法は、例えば、所望の形状に、射出、注型等で成型した後、加熱硬化させる方法によっても製造することができる。具体的な方法としては、例えば、金属箔、離型フィルム等の各種基板上に塗布して加熱硬化させる方法、及び金型に流し込んで加熱硬化させる方法(注型成型)が挙げられるが、硬化中において気泡が発生することのないように、好ましくはいずれの方法においても硬化開始前に脱気操作を行なう。
【0061】
上記硬化反応における、硬化温度は適宜調整できるため特に制限されないが、好ましくは80〜250℃、より好ましくは100〜250℃、特に好ましくは100〜220℃の硬化温度で行われる。なお、硬化反応時間は特に制限されない。
また、加熱し硬化させる工程は、一段階で行っても、多段階で行ってもよいが、好ましくは硬化反応時に生じる揮発成分を系外へ除去するために、様々な硬化温度で、段階的に硬化させる多段階工程で行う。より具体的には、温度が80〜140℃で反応させる第一工程と、第一工程の硬化温度より高い温度である140℃〜250℃の温度下にて第二の硬化温度で加熱硬化させる多段階工程で行う。
さらに本発明のリン含有樹脂硬化物は、モノマー成分として前記式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物を含むことから難燃性を有し、また架橋構造を有することから、耐加水分解性を付与することができる。
【0062】
[本発明のリン含有硬化性樹脂組成物を含有するプリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート、積層板及び多層板の製造方法]
前記〈リン含有硬化性樹脂組成物溶液、リン含有硬化性樹脂ワニスの製造方法〉項より得られる、リン含有硬化性樹脂ワニスは、例えば、以下に述べるプリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート、積層板及び多層板の製造等に用いることができる。さらに、塗工用樹脂ワニスとして積層板や多層板に塗工して用いることもできる。このとき、必要に応じて、例えば、有機溶媒の種類、リン含有硬化性樹脂組成物の含有濃度、添加化合物等を変更して使用しても良い。
【0063】
〈リン含有硬化性樹脂組成物を含有するプリプレグ〉
まず、プリプレグについて説明する。この製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、上記の樹脂ワニスをシート状基材に含浸させた後、100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥し、樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させるものである。ただし、プリプレグの樹脂量は、好ましくはプリプレグの30〜80質量%となるように使用する。ここで、シート状基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラス等の無機質繊維の織布又は不織布、ポリエステル、ポリアミン、ポリアクリル、ポリイミド、ケブラー等の有機質繊維の織布又は不織布を用いることができる。
【0064】
〈リン含有硬化性樹脂組成物を含有する樹脂付き金属箔〉
次に、樹脂付き金属箔について説明する。この製造方法も特に限定されるものではないが、例えば、上記の樹脂ワニスを金属箔の一方面にロールコーター等を用いて塗布した後、100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥し、樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させるものである。ただし、樹脂付き金属箔の樹脂部分の厚みは、好ましくは5〜80μmとなるように形成する。ここで、金属箔としては、特に限定されるものではないが、例えば、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の金属を単独で用いたり、これらを合金にした複合材料等として用いたりすることができる。ただし、金属箔の厚みは、好ましくは0.012〜0.070mmである。
【0065】
〈リン含有硬化性樹脂組成物を含有する接着シート〉
次に、接着シートについて説明する。この製造方法も特に限定されるものではないが、例えば、一般にキャスティング法と呼ばれる方法に基づいて行われるものである。すなわち、上記の樹脂ワニスをキャリアフィルム上に5〜100μmの厚みとなるように塗布した後、100〜200℃で1〜40分加熱乾燥し、樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させてシート状に形成するものである。ただし、接着シートの厚みは、好ましくは5〜80μmとなるように形成する。また、上記の製造方法においては、予めキャリアフィルムの表面を離型材で処理しておくと、形成された接着シートを容易に剥離することができて作業性が良くなるものである。ここで、キャリアフィルムとしては、前記樹脂ワニスに溶解しないものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等を用いることができる。
【0066】
〈リン含有硬化性樹脂組成物を含有する積層板〉
次に、積層板の製造方法について説明する。まず上記にて得られたプリプレグ、樹脂付き金属箔又は接着シートのうちの少なくとも一種のものを1枚又は2枚以上重ねて積層物を形成する。次いで、この積層物の片面又は両面に金属箔を配置する。このときの金属箔としては特に限定されるものではないが、例えば、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル等の金属を単独で用いたり、或いはこれらを合金にした複合材料等を用いたりする。また、樹脂付き金属箔で積層物を形成する場合には、この樹脂付き金属箔の金属箔が積層物の片面又は両面を形成するように、樹脂付き金属箔を配置する。その後、この積層物を金属箔と共に加熱加圧して積層一体化させることによって、目的とする本発明の積層板を製造する。なお、加熱、加圧条件としては、リン含有エポキシ樹脂組成物が硬化する条件であれば特に限定されるものではないが、例えば、温度を150〜220℃、圧力を0.49〜4.9MPa、加熱加圧時間を40〜240分間にそれぞれ設定して行なう製造方法が挙げられる。なお、上記の範囲であれば、得られる積層板の内部に気泡が残留し、電気特性が低下する可能性は少ない。
【0067】
〈リン含有硬化性樹脂組成物を含有する多層板>
次に、多層板について説明する。本発明の多層板は、例えば、上記のようにして得られた積層板を内層材として使用する方法等により製造することができる。具体例としては、まず、積層板の片面又は両面にアディティブ法やサブトラクティブ法等により回路を形成する。ここで、回路のパターン形成においては、パターンニングすべき回路パターン等が描かれているフィルムマスクやガラス乾板を透して、強力な紫外線(UV)を照射することとなるが、本発明においてはプリント配線板のUV遮蔽性が高められているので、紫外線がプリント配線板を透過しにくくなっている。そのため、露光作業に両面同時露光方式の装置を用いても、プリント配線板の一方の面に照射した紫外線はこの面にラミネートされた光感光性ドライフィルムを感光させるだけであり、プリント配線板を透して、他方の面にラミネートされた光感光性ドライフィルムを感光させるようなことはなくなる。従って、露光作業の後は現像等の所定の作業を行うことによって回路を形成することができ、次いで、この回路表面に酸溶液等を用いて黒化処理を施し内層材を得ることができる。この処理法によって、高密度、高精度のパターン形成を容易に行うことが可能となる。その後、この内層材の片面又は両面の回路形成面に、プリプレグ、樹脂付き金属箔又は接着シートを用いて絶縁層を形成し、さらに絶縁層の表面に導体層を形成して、本発明の多層板を得ることができる。なお、具体的な絶縁層の形成方法については、以下に示す。
【0068】
はじめに、絶縁層にプリプレグを用いた多層版の製造方法は、例えば、まず内層材の回路形成面にプリプレグを1枚又は2枚以上積層して配置し、その外側に金属箔を配置して積層物を形成し、次いで、この積層物を加熱加圧して積層一体化させて製造する方法である。このような製造方法によって、本発明のリン含有硬化性樹脂組成物を含有する硬化物のプレプリグを絶縁層として、その外側の金属箔を導体層とした構成を有するリン含有樹脂硬化物を含有する多層板を得ることができる。ここで、使用する金属箔としては特に限定されるものではないが、積層板の形成に用いたものと同様のものを使用することができる。また、加熱加圧の条件は特に限定されるものではないが、前記積層板の形成時と同様の条件で行うことができる。
【0069】
次に、絶縁層に樹脂付き金属箔を用いた多層版の製造方法は、例えば、まず内層材の回路形成面に樹脂付き金属箔を、その樹脂層が内層材の回路形成面と対向するように重ねて配置し積層物を形成する。次いで、この積層物を加熱加圧して積層一体化することによって、樹脂付き金属箔の樹脂層の硬化物を絶縁層とし、その外側の金属箔を導体層とした構成を有するリン含有樹脂硬化物を含有する多層板を製造する方法である。ここで、加熱加圧の条件は特に限定されるものではないが、積層板の形成時と同様の条件で行うことができる。
【0070】
さらに、絶縁層として接着シートを用いた多層版の製造方法は、例えば、内層材の回路形成面と金属箔との間に接着シートを配置して積層物を形成する。次いで、この積層物を加熱加圧して積層一体化することによって、接着シートの硬化物を絶縁層として、金属箔を導体層とした構成を有するリン含有樹脂硬化物を含有する多層板を製造することができる。ここで、金属箔としては特に限定されるものではないが、積層板の形成に用いたものと同様のものを用いることができる。また、加熱加圧の条件は特に限定されるものではないが、積層板の形成時と同様の条件で行うことができる。
【0071】
なお、前記絶縁層には、上述した塗工用樹脂ワニスを利用しても良い。すなわち、上記の積層板や多層板に塗工用樹脂ワニスを塗工し、塗工面に金属箔等を配し導体層を形成する。次いで、この操作を繰り返すことによってより多層の多層板を形成させることで、本発明のリン含有樹脂硬化物を含有する多層板を製造することができる。
【0072】
また、以上のようにして得られた多層板からプリント配線板や多層プリント配線板を製造することもできる。例えば、多層板の片面又は両面にアディティブ法やサブトラクティブ法等により回路やバイアホールを形成したり、ドリル加工等によりスルーホールを形成したりして、このスルーホールにめっきを施して各層間の導通を形成する等の処理を行なった、プリント配線板等が挙げられる。また、このようにして得られたプリント配線板を内層材として上述の工法を繰り返すことにより、さらに多層の多層プリント配線板を形成することができる。
【0073】
このようにして得られたプリント配線板(多層プリント配線板を含む)については、耐熱性が十分に高められているので、鉛フリー半田を用いたリフロー式半田付けによって電子部品を実装する場合であっても、急激な熱ストレスによって回路が基板から剥離することがなく、またクラックの発生も低下する。
【0074】
本発明では、上記のような配合比等で、リン含有硬化性樹脂組成物及びリン含有硬化性樹脂組成物溶液又はリン含有硬化性樹脂ワニスを製造することができ、さらにこれらを硬化させた本発明のリン含有樹脂硬化物は、例えば、本発明のリン含有硬化性樹脂組成物を硬化させたプリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート、積層板及び多層板用として、好適に使用することができる。また、本発明のリン含有樹脂硬化物は、前記式(1)のジアリールホスフィンオキシド構造をポリマー主鎖中に組み込まれたリン原子を含有する樹脂であるため、従来の難燃剤の欠点であったブリードアウトを防止し、また、十分な難燃性、耐熱性、並びに耐吸湿性を有する、電気及び電子産業分野において非常に有用な難燃性樹脂硬化物である。
【実施例】
【0075】
次に、実施例において具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例、参考例等に限定されるものではない。
【0076】
[参考例1]
<式(5−A)で示されるリン含有化合物>
【0077】
【化4】
【0078】
温度計、温度調整装置、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、トルエン75mLとジフェニルホスフィンオキシド10.1g(0.05モル)を加え、次いで、これに4−ヒドロキシベンズアルデヒド6.1g(0.05モル)とフェノール5.17g(0.055モル)とを順に加え、65℃にて1時間撹拌を行った。その後、これにp−トルエンスルホン酸0.2g(0.001モル)を加えて、さらに110℃まで昇温して8時間撹拌し反応を行った。反応終了後、得られた反応懸濁液を室温まで冷却し、ろ別して固形物を取得した。得られた固形物は、トルエン30mLで洗浄後、アセトニトリル100mLに懸濁させて80℃で1時間攪拌し、次いで、室温まで冷却し、ろ別して固形物を取得した。得られた固形物を、冷アセトニトリルで洗浄後、乾燥したところ、白色粉末として目的物である式(5−A)で示されるビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド16.9gを得た(取得収率:84.4%)。
得られたビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシドの分析値は、以下のとおりであった。
【0079】
MSスペクトル〔CI−MS〕:401[M+1]
1H−NMRスペクトル〔300MHz,d6−DMSO,δ(ppm)〕:5.28(1H,d)、6.53(4H,d)、7.32−7.43(10H,brs)、7.75−7.82(4H,brs)、9.16(2H,s)
融点:301℃
<式(1−A)で示されるリン含有化合物>
【0080】
【化5】
【0081】
温度計、温度調整装置、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド10.0g(0.025モル)とエピクロロヒドリン60.0g(0.65モル)とを加え、105℃に昇温して混合した。次いで、この混合物に、同温度下、48%水酸化ナトリウム水溶液6.1g(0.0732モル)をゆるやかに滴下し、滴下終了後、さらに2時間撹拌を行った。反応終了後、得られた混合物を室温まで冷却し、これにジクロロメタン100g及び水100gを加えて、有機層を分液した。得られた有機層をさらに水100gで洗浄し、その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、減圧濃縮にて溶媒を留去したところ、濃縮物を18.1g得た。得られた濃縮物を1−ブタノールにて再結晶を行い、白色粉末として目的物である式(1−A)で示されるビス(4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド7.5gを得た(取得収率:58.5%)。
MSスペクトル〔CI−MS〕:513[M+1]
1H−NMRスペクトル〔300MHz,d6−DMSO,δ(ppm)〕:2.62−2.64(2H,brs)、2.77−2.80(2H,brs)、3.21−3.26(2H,brs)、3.68−3.73(2H,brs)、4.16−4.20(2H,brs)、5.47(1H,d)、6.75−6.78(4H,brs)、7.34−7.50(10H,brs)、7.78−7.85(4H,brs)
融点:192−195℃
【0082】
[参考例2]
<式(5−B)で示されるリン含有化合物>
【0083】
【化6】
【0084】
温度計、温度調整装置、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、トルエン75mLとジフェニルホスフィンオキシド10.1g(0.05モル)を加え、次いで、これに4−ヒドロキシベンズアルデヒド6.1g(0.05モル)とクレゾール5.95g(0.055モル)とを順に加え、65℃にて1時間撹拌を行った。次いで、これにp−トルエンスルホン酸0.2g(0.001モル)を加えて、さらに110℃まで昇温して8時間撹拌し反応を行った。反応終了後、得られた反応懸濁液を室温まで冷却し、析出物をろ別し、さらにトルエン30mLで洗浄した。得られた固形物をアセトニトリル100mLに懸濁させて80℃で1時間攪拌し、その後0℃まで冷却して析出物をろ別し、冷アセトニトリルで洗浄した。得られた固形物を乾燥し、白色粉末として目的物である式(5−B)で示される(4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド17.8gを得た(取得収率:85.9%)。
MSスペクトル〔CI−MS〕:415[M+1]
1H−NMRスペクトル〔300MHz,d6−DMSO,δ(ppm)〕:1.96(3H,d)、5.24(1H,d)、6.51−6.54(3H,brs)、7.18−7.20(2H,brs)、7.31−7.38(8H,brs)、7.74−7.83(4H,brs)、9.09(2H,s)
融点:252℃
<式(1−B)で示されるリン含有化合物>
【0085】
【化7】
【0086】
温度計、温度調整装置、滴下装置及び撹拌措置を備えたガラス製反応容器に、(4−ヒドロキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド5.0g(0.012モル)とエピクロロヒドリン22.3g(0.24モル)とを加え、105℃に昇温して混合した。次いで、この混合物に、同温度下、48%水酸化ナトリウム水溶液3.0g(0.036モル)をゆるやかに滴下し、滴下終了後、さらに2時間撹拌を行った。反応終了後、得られた混合物を室温まで冷却し、これにジクロロメタン50g及び水50gを加えて、有機層を分液した。得られた有機層をさらに水50gで洗浄し、その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、減圧濃縮にて溶媒を留去し濃縮物を得た。得られた濃縮物を2−プロパノールにて再結晶を行い、白色粉末として目的物である式(1−B)で示される(4−グリシジルオキシフェニル)(3−メチル−4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド5.3gを得た(取得収率:83.9%)。
MSスペクトル〔CI−MS〕:527[M+1]
1H−NMRスペクトル〔300MHz,d6−DMSO,δ(ppm)〕:2.02(3H,d)、2.62−2.67(2H,brs)、2.77−2.80(2H,brs)、3.21−3.28(2H,brs)、3.67−3.86(2H,brs)、4.15−4.20(2H,brs)、5.43(1H,d)、6.72−6.77(3H,brs)、7.31−7.49(10H,brs)、7.77−7.86(4H,brs)
【0087】
[実施例1]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕0.2016g、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)0.8009g、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)0.8301g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0187gの混合物にジメチルアセトアミド1.8954gを添加した。このサンプル管を、湯浴にて100℃で加熱したところ、均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円型の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−1A)を得た(下記、反応式〔6−1A〕)。
【0088】
【化8】
【0089】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図1に示した。
図1より、実施例1では1000℃における炭化物の残存重量割合が12.3%であった。
【0090】
[実施例2]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕0.1016g、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)0.9035g、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)0.7516g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0174gの混合物にジメチルアセトアミド1.7374gを添加した。このサンプル管を、湯浴にて100℃で加熱したところ、均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円型の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−2A)を得た(下記、反応式〔6−2A〕)。
【0091】
【化9】
【0092】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図2に示した。
図2より、実施例2では1000℃における炭化物の残存重量割合が7.4%であった。
【0093】
[比較例1]
10mLのガラス製サンプル管に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)1.1809g、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、HF−1M:軟化点84℃、水酸基価106g/eq)1.0016g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0162gの混合物にジメチルアセトアミド1.0021gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてエポキシ樹脂組成物溶液を得た。
<エポキシ樹脂硬化物の製造>
次に、得られたエポキシ樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で5時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物を得た(下記、反応式〔Ref.1〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.1)には、ジメチルアセトアミドは含有されていなかった。
【0094】
【化10】
【0095】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図3に示した。
図3より、一般式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物を含有していないを含有していない比較例1では、1000℃における炭化物の残存重量割合が4.2%となっており、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕を含有している実施例1(図1、残存量割合12.3%)、及び実施例2(図1、残存量割合7.4%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合がそれぞれ8.1%及び3.2%と高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0096】
[実施例3]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕0.4012g、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)1.6061g、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)1.0306g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0303gの混合物にジメチルアセトアミド3.0083gを添加した。次いで、このサンプル管を、湯浴にて100℃で加熱したところ、均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−3A)を得た(下記、反応式〔6−3A〕)。
【0097】
【化11】
【0098】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図4に示した。
図4より、実施例3では1000℃における炭化物の残存重量割合が25.7%であった。
【0099】
[実施例4]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、(4−グリシジルオキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−B)〕0.4032g、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)1.6034g、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)1.0303g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0323gの混合物にジメチルアセトアミド3.0398gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブン160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−4B)を得た(下記、反応式〔6−4B〕)。
【0100】
【化12】
【0101】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図5に示した。
図5より、実施例4では1000℃における炭化物の残存重量割合が28.0%であった。
【0102】
[比較例2]
10mLのガラス製サンプル管に、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)0.8921g、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、HF−1M:軟化点84℃、水酸基当量106g/eq)1.4965g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0147gの混合物にジメチルアセトアミド1.5021gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてエポキシ樹脂組成物溶液を得た。得られた溶液を1.0010g取り、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)0.8921gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてエポキシ樹脂組成物溶液を得た。
<エポキシ樹脂硬化物の製造>
次に、得られたエポキシ樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物を得た(下記、反応式〔Ref.2〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.2)には、ジメチルアセトアミドは含有されていなかった。
【0103】
【化13】
【0104】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図6に示した。
図6より、一般式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物を含有していない比較例2の硬化物では、1000℃における炭化物の残存重量割合が14.7%となり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕を含有している実施例3(図4、残存重量割合25.7%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が11.0%高く、また、(4−グリシジルオキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−B)〕を含有している実施例4(図5、残存割合28.0%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が13.3%高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0105】
[実施例5]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕0.4006g、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物として、グリシジル基で修飾したクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃、エポキシ当量205−215g/eq)1.6002g、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)0.9594g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0307gの混合物にジメチルアセトアミド2.9899gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて170〜180℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−5A)を得た(下記、反応式〔6−5A〕)。
【0106】
【化14】
【0107】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図7に示した。
図7より、実施例5では1000℃における炭化物の残存重量割合が34.2%であった。
【0108】
[実施例6]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に(4−グリシジルオキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−B)〕0.4033g、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物として、グリシジル基で修飾したクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃、エポキシ当量205−215g/eq)1.6062g、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)0.9583g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0320gの混合物にジメチルアセトアミド2.9433gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて170〜180℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−6B)を得た(下記、反応式〔6−6B〕)。
【0109】
【化15】
【0110】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図8に示した。
図8より、実施例6では1000℃における炭化物の残存重量割合が35.2%であった。
【0111】
[比較例3]
10mLのガラス製サンプル管に、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物としてグリシジル基で修飾したクレゾールノボラック樹脂(DIC製、N−エピクロン673:軟化点73−82℃、エポキシ当量205−215g/eq)2.0172g、フェノールノボラック樹脂(昭和電工製、BRG−556:軟化点77−83℃、水酸基当量103−106g/eq)1.0026g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0309gの混合物にジメチルアセトアミド3.0281gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてエポキシ樹脂組成物溶液を得た。
<エポキシ樹脂硬化物の製造>
次に、得られたエポキシ樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて170〜180℃で6時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物を得た〔下記、反応式(Ref.3)〕。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.3)には、ジメチルアセトアミドは含有されていなかった。
【0112】
【化16】
【0113】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図9に示した。
図9より、一般式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物を含有していない比較例3の硬化物では、1000℃における炭化物の残存重量割合が26.5%となり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕を含有している実施例5(図7、残存重量割合34.2%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が7.7%高く、また、(4−グリシジルオキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−B)〕を含有している実施例6(図8、残存割合35.2%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が8.7%高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0114】
[実施例7]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕0.2012g、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)0.8042g、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.0894g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0214gの混合物にジメチルアセトアミド1.9977gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてリン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱し、固形物を得た。得られた固形物を分析したところ、ジメチルアセトアミドが含有していることが確認されたので、この固形物を250℃にて1時間乾燥させてジメチルアセトアミドを留去し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−7A)を得た(下記、反応式〔6−7A〕)。
【0115】
【化17】
【0116】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図10に示した。
図10より、実施例7では1000℃における炭化物の残存重量割合が26.8%であった。
【0117】
[比較例4]
10mLのガラス製サンプル管に、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.1021g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0129gの混合物にジメチルアセトアミド1.0987gを添加し、攪拌して、均一な溶液を得た。次に、この溶液1.0072gに、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン(三菱化学製、jER828:エポキシ当量184−194g/eq)0.4342gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてエポキシ樹脂組成物溶液を得た。
<エポキシ樹脂硬化物の製造>
次に、得られたエポキシ樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物を得た(下記、反応式〔Ref.4〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.4)には、ジメチルアセトアミドは含有されていなかった。
【0118】
【化18】
【0119】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図11に示した。
図11より、一般式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物を含有していないを含有していない比較例4では、1000℃における炭化物の残存重量割合が16.8%となっており、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕を含有している実施例7(図10、残存量割合26.8%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が10.0%高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0120】
[実施例8]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕0.2022g、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)0.8046g、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.4399g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0256gの混合物にジメチルアセトアミド2.5015gを添加したところ、室温下で均一な溶液として、リン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−8A)を得た(下記、反応式〔6−8A〕)。
【0121】
【化19】
【0122】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図12に示した。
図12より、実施例8では1000℃における炭化物の残存重量割合が17.1%であった。
【0123】
[実施例9]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、(4−グリシジルオキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−B)〕0.2007g、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)0.8029g、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.4323g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0253gの混合物にジメチルアセトアミド2.3951gを添加したところ、室温下で均一な溶液として、リン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−9B)を得た(下記、反応式〔6−9B〕)。
【0124】
【化20】
【0125】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図13に示した。
図13より、実施例9では1000℃における炭化物の残存重量割合が17.9%であった。
【0126】
[比較例5]
10mLのガラス製サンプル管に、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学工業製、セロキサイド2021P)0.5811g、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)1.1021g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0102gの混合物にジメチルアセトアミド1.0061gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてエポキシ樹脂組成物溶液を得た。
<エポキシ樹脂硬化物の製造>
次に、得られたエポキシ樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて160〜170℃で6時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物を得た(下記、反応式〔Ref.5〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.5)には、ジメチルアセトアミドは含有されていなかった。
【0127】
【化21】
【0128】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図14に示した。
図14より、一般式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物を含有していない比較例5の硬化物では、1000℃における炭化物の残存重量割合が11.5%となり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕を含有している実施例8(図12、残存重量割合17.1%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が5.6%高く、また、(4−グリシジルオキシフェニル)(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−B)〕を含有している実施例9(図13、残存割合17.9%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が6.4%高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【0129】
[実施例10]
<リン含有硬化性樹脂組成物溶液の製造>
10mLのガラス製サンプル管に、ビス(4−グリシジルオキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−A)〕0.2018g、分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物として、グリシジル基で修飾したクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃、エポキシ当量205−215g/eq)0.8027g、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃、水酸基当量218g/eq)0.9966g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0201gの混合物にジメチルアセトアミド2.0000gを添加したところ、室温下で均一な溶液として、リン含有硬化性樹脂組成物溶液を得た。
<リン含有樹脂硬化物の製造>
次に、得られたリン含有硬化性樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンにて170〜180℃で6時間加熱し、目的物であるリン含有樹脂硬化物(6−10A)を得た(下記、反応式〔6−10A〕)。
【0130】
【化22】
【0131】
得られたリン含有樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図15に示した。
図15より、実施例10では1000℃における炭化物の残存重量割合が40.2%であった。
【0132】
[比較例6]
10mLのガラス製サンプル管に、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック樹脂(DIC製、エピクロンN−673:軟化点73−82℃;エポキシ当量205−215g/eq)1.0086g、フェノールノボラック樹脂(明和化成製、MEH−7851:軟化点83℃;水酸基当量218g/eq)1.0381g、及び2−ウンデシルイミダゾール0.0218gの混合物にジメチルアセトアミド2.0103gを添加したところ、室温下で均一な溶液としてエポキシ樹脂組成物溶液を得た。
<エポキシ樹脂硬化物の製造>
次に、得られたエポキシ樹脂組成物溶液を直径4cmの円形の容器に充填した後、オーブンで170〜180℃で6時間加熱することでエポキシ樹脂硬化物を得た(下記、反応式〔Ref.6〕)。なお、得られたエポキシ樹脂硬化物(Ref.6)には、ジメチルアセトアミドは含有していなかった。
【0133】
【化23】
【0134】
得られたエポキシ樹脂硬化物を約10mgとり、正確に秤量して、TG/DTA320(セイコー電子工業製)にて熱重量分析(TGA)測定を行い、その結果を図16に示した。
図16より、一般式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物を含有していない比較例6の硬化物では1000℃における炭化物の残存重量割合が28.7%となり、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチルジフェニルホスフィンオキシド〔式(1−1)〕を含有している実施例10(図15、残存重量割合40.2%)のリン含有樹脂硬化物の方が、耐熱実験後の残存重量割合が17.5%高く、高温下でも燃焼しにくい、即ち、難燃性に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、環状エーテル基を含有するリン含有化合物を含むことを特徴とするリン含有硬化性樹脂組成物、及びそれを硬化させることにより得られるリン原子を樹脂骨格中に組み込んだリン含有樹脂硬化物に関する。本発明のリン含有硬化性樹脂組成物は、例えば、半導体封止剤又はプリント配線板用レジスト剤の原料等として使用され、また、その樹脂硬化物は優れた難燃性を示すことから、例えば、プリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート、積層板又は多層板等の構成材料として、幅広く使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の下記式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、及び少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を含むことを特徴とするリン含有硬化性樹脂組成物。
【化1】
[式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。p、q、r及びsは、それぞれ独立に、0〜4の整数である。
R5は、水素原子、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基示す。
R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。
X1及びX2、並びにY1及びY2は、それぞれ独立に、単結合、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を示す。ただし、X1とY1とは同時に単結合ではなく、X2とY2とは同時に単結合ではない。
Z1及びZ2は、それぞれ独立に、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を示す。]
【請求項2】
分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が、ジエポキシド化合物、トリエポキシド化合物、及びポリエポキシド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物である、請求項1に記載のリン含有硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
フェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂が、フェノール類、ビスフェノール類、ナフトール類とアルデヒド類との重縮合物、フェノール類とジエン類との重縮合物、及びフェノール類とケトン類との重縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール樹脂である、請求項1又は2に記載のリン含有硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリン含有硬化性樹脂組成物を硬化してなるリン含有樹脂硬化物。
【請求項1】
少なくとも1種の下記式(1)で示される環状エーテル基を有するジアリールホスフィンオキシド化合物、少なくとも1種の分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、及び少なくとも1種の分子内にフェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂、及び少なくとも1種の硬化促進剤を含むことを特徴とするリン含有硬化性樹脂組成物。
【化1】
[式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。p、q、r及びsは、それぞれ独立に、0〜4の整数である。
R5は、水素原子、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基示す。
R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリール基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜18のアリールオキシ基を示す。
X1及びX2、並びにY1及びY2は、それぞれ独立に、単結合、又はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を示す。ただし、X1とY1とは同時に単結合ではなく、X2とY2とは同時に単結合ではない。
Z1及びZ2は、それぞれ独立に、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキレン基を示す。]
【請求項2】
分子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が、ジエポキシド化合物、トリエポキシド化合物、及びポリエポキシド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物である、請求項1に記載のリン含有硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
フェノール性水酸基を1個以上有するフェノール樹脂が、フェノール類、ビスフェノール類、ナフトール類とアルデヒド類との重縮合物、フェノール類とジエン類との重縮合物、及びフェノール類とケトン類との重縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール樹脂である、請求項1又は2に記載のリン含有硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリン含有硬化性樹脂組成物を硬化してなるリン含有樹脂硬化物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−95818(P2013−95818A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238755(P2011−238755)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】
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