説明

リン回収・肥料化方法

【課題】リン回収コストを低く抑えることができると共に、リン肥料としての品質を高く維持することが可能で、下水処理場等に集積されているリンを回収して肥料として有効利用することのできるリン回収・肥料化方法を提供する。
【解決手段】リン吸着剤Aをリン発生源3に提供し、リン発生源において排水中のリンPを吸着させたリン吸着剤を回収し、回収したリン吸着剤を用いて肥料Fを製造する。リン発生源の排水中のリンをリン吸着剤に吸着させることで、リンの回収を低コストで行うことができると共に、選択的にリンを吸着させることで、リンを吸着したリン吸着剤を用いて製造したリン肥料の品質を高く維持することもできる。リン吸着剤は、非晶質ケイ酸カルシウム系の材料からなるものが好ましい。リン発生源を下水処理場等とすることができる。リンを吸着させたリン吸着剤をそのまま肥料製造用に提供することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場等に集積されているリンを回収して肥料化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肥料の三要素の一つであるリンは、その原料をリン鉱石に依存し、我が国ではリン鉱石を産出しないため、全量を海外から輸入している。リン鉱石は、将来枯渇することが予想されるなど、将来入手が極めて困難になる可能性があるため、国内で利用されずに廃棄されているリンを回収し、肥料として活用するリン回収・資源化技術の開発が活発に行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、リンの回収コストが高く、また、リンを回収して製造したリン肥料としての品質を確保することが困難であることなどにより、リン回収・肥料化事業が進まない状況にある。国内の下水処理場には、リン鉱石の輸入量に匹敵するほどの膨大な量のリンが集積しているが、リン資源として有効利用されているのはその5%程度に留まっている。
【0004】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、下水処理場等に集積されているリンを回収して肥料として有効利用する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、リン回収・肥料化方法であって、リン発生源の排水中のリンをリン吸着剤に吸着させ、リンを吸着させたリン吸着剤を用いて肥料を製造することを特徴とする。
【0006】
そして、本発明によれば、リン発生源の排水中のリンをリン吸着剤に吸着させることで、リンの回収を低コストで行うことができると共に、選択的にリンを吸着させることで、リンを吸着したリン吸着剤を用いて製造したリン肥料の品質を高く維持することもできるため、リン発生源の排水中のリンを回収して肥料として有効利用することができる。
【0007】
また、本発明は、リン回収・肥料化方法であって、リン吸着剤をリン発生源に提供し、リン発生源において排水中のリンを吸着させたリン吸着剤を回収し、回収したリン吸着剤を用いて肥料を製造することを特徴とする。本発明によれば、上記発明と同様に、リン発生源の排水中のリンを回収して肥料として有効利用することができる。
【0008】
さらに、本発明は、リン回収・肥料化方法であって、提供されたリン吸着剤にリン発生源の排水中のリンを吸着させ、リンを吸着させたリン吸着剤を肥料製造用に提供することを特徴とする。本発明によれば、上記発明と同様に、リン発生源の排水中のリンを回収して肥料として有効利用することができる。
【0009】
上記リン回収・肥料化方法において、前記リン吸着剤を、非晶質ケイ酸カルシウム系の材料からなるものとすることができる。この材料は、リンとの親和性が高く、多孔質で比表面積が大きいため、リンの吸着能力が高く、より低コストで選択的にリンを吸着させることができる。
【0010】
上記リン回収・肥料化方法において、前記リン発生源を下水処理場とすることができ、下水処理場に集積されている大量のリンを回収して肥料化することができる。
【0011】
また、上記リン回収・肥料化方法において、前記リンを吸着させたリン吸着剤をそのまま肥料製造用に提供することができ、より低コストでリン肥料を製造することができる。尚、そのまま肥料製造用に提供するとは、リンを吸着させたリン吸着剤からアルカリ等でリンを脱着後、カルシウムを添加して再度リン酸カルシウムにして回収するような2段階の工程を経ることなく、リンを吸着させたリン吸着剤をそのままの形で肥料にすることをいう。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、下水処理場等に集積されているリンを回収して肥料として有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかるリン回収・肥料化方法を実施するシステムの一例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明にかかるリン回収・肥料化方法を実施するシステムの一例を示し、このリン回収・肥料化システム1は、リン発生源としての下水処理場3と、リン吸着剤Aの製造販売業者4と、下水処理場3からリンPを吸着したリン吸着剤Aを回収して肥料化する肥料製造業者5とで構成される。
【0016】
製造販売業者4は、リン吸着剤Aを製造し、下水処理場3へ販売する。このリン吸着剤Aは、非晶質ケイ酸カルシウム系の材料からなり、この材料は、リンとの親和性が高く、多孔質で比表面積が大きいため、リンの吸着能力が高く、選択的にリンを吸着させることができる。非晶質ケイ酸カルシウム系の材料とは、例えば、ケイ酸原料と石灰原料とを水性スラリーとし、水酸化アルカリを添加して水熱反応させることにより生成させた平均粒子径(メジアン径)10μm以上150μm以下、細孔容積0.5cm/g以上、BET比表面積80m/g以上の物や、ケイ酸ナトリウム水溶液にCa(OH)を加えて生成した非晶質ケイ酸カルシウム水和物と未反応のCa(OH)との凝集体からなり、Ca/Siモル比が1.5〜10である物や、易溶解性シリカ原料中のアルカリ可溶性シリカをNaOHで溶解したシリカ溶解液に、消石灰を加えて水熱合成した非晶質ケイ酸カルシウム水和物とCa(OH)との凝集体を回収してなる組成物であって、Ca(OH)を2.5〜80wt%含み、Ca/Siモル比が1.0〜7.0である物をいう。尚、リン吸着剤Aとして、非晶質ケイ酸カルシウム系の材料以外にも、平均粒子径(メジアン径)150μm以下、細孔容積0.3cm/g以上のトバモライトなどの結晶質ケイ酸カルシウム水和物を用いることができる。
【0017】
肥料製造業者5は、下水処理場3においてリンPを吸着したリン吸着剤PAを回収し、回収したリン吸着剤を用いて肥料を製造する。肥料の製造にあたっては、乾燥、造粒等の簡便な手法により、リンPを吸着させたリン吸着剤PAをそのまま肥料にすることも可能である。
【0018】
次に、上記構成を有するリン回収・肥料化システム1におけるリン回収・肥料化の流れについて説明する。
【0019】
生活圏2における活動によって生じたリンは、下水に流入し、下水処理場3で回収される。下水処理場3では、製造販売業者4からリン吸着剤Aを購入し、排水D1へ添加する。排水D1へ添加されたリン吸着剤Aは、リンPを吸着し(排水D2)、その後リンPを吸着したリン吸着剤Aは沈積し(排水D3)、回収される。
【0020】
次に、下水処理場3は、リンPを吸着したリン吸着剤PAを肥料製造業者5に提供し、肥料製造業者5は、リンPを吸着したリン吸着剤PAから肥料を製造し、製造した肥料Fを需要先6へ供給する。リンPを吸着したリン吸着剤PAは、凝集性及び沈降性に優れるため、下水処理場3では、ろ過(固液分離)を容易に行うことができ、下水処理場3における設備・運転コストを低く抑えることができる。また、リン吸着剤Aのリン選択吸着性が高いため、肥料製造業者5は、肥料取締法等の品質に関する規定を満足させることができる肥料を製造することができる。
【0021】
以上のように、上記リン回収・肥料化システム1によれば、生活圏2で発生したリンPを下水処理場3の排水中でリン吸着剤Aに吸着させることで、リンPの回収を低コストで行うことができると共に、リン吸着剤Aに選択的にリンPを吸着させることで、肥料製造業者5において、リンPを吸着したリン吸着剤PAを用いて高品質の肥料Fを製造することができ、従来廃棄されていたリンを回収し、肥料として活用することが可能となる。
【0022】
尚、下水処理場3以外にも、畜産排水処理設備やリンを使用している工場排水処理設備等のリン発生源において、排水中のリンPをリン吸着剤Aに吸着させて肥料Fを製造することもできる。
【符号の説明】
【0023】
1 リン回収・肥料化システム
2 生活圏
3 下水処理場
4 リン吸着剤の製造販売業者
5 肥料製造業者
6 需要先
A リン吸着剤
D1〜D3 排水
F 肥料
P リン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン発生源の排水中のリンをリン吸着剤に吸着させ、リンを吸着させたリン吸着剤を用いて肥料を製造することを特徴とするリン回収・肥料化方法。
【請求項2】
リン吸着剤をリン発生源に提供し、
リン発生源において排水中のリンを吸着させたリン吸着剤を回収し、
回収したリン吸着剤を用いて肥料を製造することを特徴とするリン回収・肥料化方法。
【請求項3】
提供されたリン吸着剤にリン発生源の排水中のリンを吸着させ、
リンを吸着させたリン吸着剤を肥料製造用に提供することを特徴とするリン回収・肥料化方法。
【請求項4】
前記リン吸着剤は、非晶質ケイ酸カルシウム系の材料からなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のリン回収・肥料化方法。
【請求項5】
前記リン発生源は、下水処理場であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のリン回収・肥料化方法。
【請求項6】
前記リンを吸着させたリン吸着剤をそのまま肥料製造用に提供することを特徴とする請求項1、2又は3に記載のリン回収・肥料化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−6733(P2013−6733A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140019(P2011−140019)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年4月25日に下記ホームページに掲載 http://www.taiheiyo−cement.co.jp http://www.taiheiyo−cement.co.jp/news/index.html http://www.taiheiyo−cement.co.jp/news/news/pdf/110425.pdf
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【出願人】(592012384)小野田化学工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】