リン抽出液の回収方法
【課題】リンを含有する汚泥の焼却灰を含む酸性又はアルカリ性のリン抽出液から、低コストで、効率よく、リン抽出液を回収する方法を提供する。
【解決手段】リンを含有する汚泥の焼却灰に、強酸性溶液又は強アルカリ性溶液を加えてリンを溶解させるリン溶解工程と、リンが溶解した溶液と不溶性成分との混合液から不溶性成分を除去してリン抽出液を回収する固液分離工程と、を含むリン抽出液の回収方法であって、前記固液分離工程は、前記混合液を、ろ布を備えたろ過板の一次側に通水させて、該ろ布の一次側表面に前記溶液中の不溶性成分による層を形成させた状態でろ過処理を行い、前記ろ過板の二次側からリン抽出液を回収する。
【解決手段】リンを含有する汚泥の焼却灰に、強酸性溶液又は強アルカリ性溶液を加えてリンを溶解させるリン溶解工程と、リンが溶解した溶液と不溶性成分との混合液から不溶性成分を除去してリン抽出液を回収する固液分離工程と、を含むリン抽出液の回収方法であって、前記固液分離工程は、前記混合液を、ろ布を備えたろ過板の一次側に通水させて、該ろ布の一次側表面に前記溶液中の不溶性成分による層を形成させた状態でろ過処理を行い、前記ろ過板の二次側からリン抽出液を回収する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、リンが溶解した溶液と不溶性成分との混合液から不溶性成分を除去してリン抽出液を回収するリン抽出液の回収方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年、リン資源の枯渇が懸念されリン回収技術が注目されている。下水や下水汚泥はリンを含むため、各種のリン回収技術が開発、実用化されている。なかでも、下水汚泥等のようなリン含有汚泥の焼却灰からリンを回収する技術は、リン資源の回収と焼却灰の有効利用の観点から有望視されている。
【０００３】
焼却灰からリンを回収するには、焼却灰中のリンを薬剤で抽出する必要があり、抽出方法としては、硫酸、塩酸、硝酸等の強酸性溶液を用いて抽出する方法（例えば、下記特許文献１〜５）や、苛性ソーダ水溶液等のような強アルカリ性溶液を用いて抽出する方法（例えば、下記特許文献６〜８）が知られている。強酸性溶液や強アルカリ性溶液を用いることで、リンを含有する汚泥の焼却灰から、効率よくリンを抽出することができる。
【０００４】
そして、焼却灰中のリンを薬剤中に抽出した後、焼却灰と薬剤とを含む混合液を固液分離して焼却灰などの不溶性分を除去し、回収したリン抽出液に、消石灰（水酸化カルシウム）など加えてリン化合物として析出させるようにして、焼却灰からリンを回収している。
【特許文献１】特開平７−２５１１４１号公報
【特許文献２】特開平９−７７５０６号公報
【特許文献３】特開平１０−１０１３３２号公報
【特許文献４】特開平１１−９２１２２号公報
【特許文献５】特開平２００１−１３０９０３号公報
【特許文献６】特開２００７−２４６３６０号公報
【特許文献７】特開２００７−２４６３６１号公報
【特許文献８】特開２００７−２６１８７８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
リンを含有する汚泥の焼却灰から、リンを高純度でかつ効率よく回収するには、焼却灰中のリンを溶出させたリン抽出液と焼却灰などの不溶性成分とを含む混合液を固液分離して、不溶性成分の混入の少ない清澄なリン抽出液を効率的に回収する必要がある。固液分離する方法としては、例えば、遠心分離、ろ過による方法がある。
【０００６】
しかしながら、遠心分離による方法では、遠心分離機は設備コストが高いという問題があった。また、遠心分離機の作動には、回転エネルギーを要するので、運転コストがかかるという問題があった。さらには、遠心分離では、固形分回収率が低く、回収された抽出液中に、数百ｍｇ／Ｌ程度の焼却灰が混入するため、最終製品として得られるリン化合物の商品価値が損なわれる問題があった。
【０００７】
また、ろ過による固液分離方法では、固液分離を効率的に行うことが困難で、工業的なリン回収工程には適用しにくかった。
【０００８】
また、上記特許文献８には、フィルタープレスによるろ布を用いたろ過が開示されている。しかしながら、フィルタープレスは、バッチ操作の運転となるため、目的とするリン抽出液を得るために長時間を要する結果、設備が大きくなり設備コストが高くなるという問題があった。また、ろ布が目詰まりし易く、高圧水での頻繁な洗浄を必要とし維持管理が面倒で運転コストも高くなる問題があった。すなわち、フィルタープレスは固形分の汚泥を得ることを目的とした固液分離装置であることから、液体であるリン抽出液を得ることを目的とした操作には不適であり、リン抽出液を得るには効率が悪く、処理に時間を要し、高コストとなる問題があった。
【０００９】
また、強酸性溶液や強アルカリ性溶液を用いて、焼却灰からリンの抽出を行った場合、化学的な腐食や材料劣化がきわめて生じ易い条件であるため、リン抽出液と、リン抽出後の焼却灰を含む不溶性成分とを分離する技術の開発はこれまで充分になされていないのが現状であった。
【００１０】
したがって、本発明の目的は、リンを含有する汚泥の焼却灰から、低コストで、効率よく、清澄なリン抽出液を回収するリン抽出液の回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
上記目的を達成するため、本発明のリン抽出液の回収方法は、リンを含有する汚泥の焼却灰に、強酸性溶液又は強アルカリ性溶液を加えてリンを溶解させるリン溶解工程と、リンが溶解した溶液と不溶性成分との混合液から不溶性成分を除去してリン抽出液を回収する固液分離工程と、を含むリン抽出液の回収方法であって、
前記固液分離工程は、前記混合液を、ろ布を備えたろ過板の一次側に通水させて、該ろ布の一次側表面に前記混合液中の不溶性成分による層を形成させた状態でろ過処理を行い、前記ろ過板の二次側からリン抽出液を回収することを特徴とする。
【００１２】
本発明のリン抽出液の回収方法によれば、リン抽出液とリン抽出後の焼却灰とを含む混合液を、ろ布を備えたろ過板の一次側に通水させて、該ろ布の一次側表面に混合液中の不溶性成分による層を形成させた状態でろ過処理を行う。ろ布の一次側表面に形成させた不溶性成分による層は、フィルターとして機能するので、ろ過板の二次側から回収するリン抽出液は、焼却灰などの不溶性成分の混入が少なく、極めて清澄なリン抽出液を効率よく回収することができる。
【００１３】
本発明のリン抽出液の回収方法では、前記ろ過板として、支持材の両面をろ布で囲み、該ろ布の全周を閉じて袋状となし、少なくとも一端にリン抽出液回収管が接続されているろ過板を用いることが好ましい。
【００１４】
本発明のリン抽出液の回収方法では、前記ろ布として、ポリプロピレン、塩化ビニリデン、ビニロンから選ばれた一種以上の材質で構成されたものを用いることが好ましい。これらの材質からなるろ布は、耐薬品性に優れるので、ろ過処理時にろ布が劣化し難く、ろ布の交換頻度を抑えることができる。
【００１５】
本発明のリン抽出液の回収方法では、前記固液分離工程において、ろ過処理を開始する前に、前記混合液を攪拌することが好ましい。混合液中の不溶性成分は沈降し易いので、混合液中の不溶性成分の濃度が低い場合、ろ布の一次側表面に溶液中の不溶性成分による層を形成する際に時間を要することがあるが、ろ過処理を開始する前に、混合液を攪拌することで、不溶性成分の沈降を防止できる。このため、ろ布の一次側表面に溶液中の不溶性成分による層を短時間で形成でき、効率よくリン抽出液を回収できる。
【発明の効果】
【００１６】
本発明によれば、リン抽出液とリン抽出後の焼却灰とを含む混合液を、ろ布を備えたろ過板の一次側に通水させて、該ろ布の一次側表面に混合液中の不溶性成分による層を形成させた状態でろ過処理を行うので、ろ布の一次側表面に形成させた不溶性成分による層がフィルターとして機能し、ろ過板の二次側から、焼却灰などの不溶性成分の混入が少ない、極めて清澄なリン抽出液を効率よく回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
本発明のリン抽出液の回収方法は、リンを含有する汚泥の焼却灰に強酸性溶液又は強アルカリ性溶液を加えてリンを溶解させるリン溶解工程と、リンが溶解した溶液と不溶性成分との混合液から不溶性成分を除去してリン抽出液を回収する固液分離工程と、を含む工程からなる。まず、図面を用いて、本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置について説明する。
【００１８】
図１は、本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置の第１の実施形態である。
【００１９】
図中の１は、固液分離槽であり、その下方側は汚泥堆積部をなしている。固液分離槽１の上側部には、混合液供給管Ｌ１が設けられている。固液分離槽１の底部には、汚泥給排口（図示しない）が設けられており、この汚泥給排口から、汚泥排出弁Ｖ１が介装された汚泥引き抜き管Ｌ２が伸びている。固液分離槽１の内部には、ろ過板１０が（この実施形態では３個）配置されている。
【００２０】
図２を併せて参照すると、ろ過板１０は、支持材１１の両面をろ布１２で囲み、該ろ布１２の全周を閉じて袋状の形状をなしている。そして、上下方向に沿って、かつ、幅方向に所定間隔で縫い込んだ複数の縫い目１３によって、上下に伸びる通路を幅方向に複数並んで形成した構造をなしている。また、上端には、リン抽出液回収管Ｌ３が伸びて、配管Ｌ４に接続している。
【００２１】
ろ布１２の材質は、耐薬品性に優れたものであれば特に限定はなく、ポリプロピレン、塩化ビニリデン、ビニロン等が好ましく用いられる。また、ろ布１２の厚さは、０．３〜０．５ｍｍが好ましい。また、ろ布１２の通気速度は、１０〜２０ｍｌ／ｃｍ２／ｓｅｃ ａｔ １２５Ｐａが好ましい。
【００２２】
配管Ｌ４は、それぞれのろ過板１０から伸びたリン抽出液回収管Ｌ３が接続している。そして、その下流側端部は、上下に分岐しており、上方に伸びた配管Ｌ５には、通気弁Ｖ２、吸引ポンプＰ１が介装されている。下方に伸びた配管Ｌ６には、排水弁Ｖ３が介装されおり、この配管Ｌ６は、固液分離槽１内の水位よりも下方に伸びている。
【００２３】
次に、上記リン抽出液の回収装置を用いた、本発明のリン抽出液の回収方法を説明する。
【００２４】
（リン溶解工程）
リンを含有する汚泥の焼却灰に、強酸性溶液又は強アルカリ性溶液を加えてリンを溶解させる。
【００２５】
強酸性溶液としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。強アルカリ性溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【００２６】
強酸性溶液を用いてリンを溶解させる場合においては、焼却灰に強酸性溶液を加えて、ｐＨ２以下にして処理することが好ましい。また、５０〜７５℃の温度条件下で処理すると、焼却灰からのリン溶出に要する時間を短縮できるので好ましい。
【００２７】
強アルカリ性溶液を用いてリンを溶解させる場合においては、焼却灰に強アルカリ性溶液を加えて、ｐＨ１４程度にして処理することが好ましい。５０〜７５℃の温度条件下で処理すると、焼却灰からのリン溶出に要する時間を短縮できるので好ましい。
【００２８】
（固液分離工程）
次に、リンが溶解した溶液と不溶性成分との混合液（以下、「混合液」と記す）を、図１に示すリン抽出液回収装置を用いて固液分離し、混合液から不溶性成分を除去してリン抽出液を回収する。
【００２９】
混合液は、混合液供給管Ｌ１から固液分離槽１内に供給し、ろ過板１０の上方に至るまで供給する。混合液の供給が完了した後、排水弁Ｖ３を閉じた状態で、通気弁Ｖ２を開いて吸引ポンプＰ１を作動させ、ろ液（リン抽出液）を配管Ｌ４，Ｌ６内に充満させる。このようにすると、ろ過板１０のろ布の一次側表面には、混合液中の不溶性成分による層（以下、「プレコート層」と記す）１４が形成される。プレコート層１４の厚さは、運転条件により異なるので特に限定はしないが、十〜数十ｍｍの厚さになるように形成することが好ましい。
【００３０】
そして、配管Ｌ４，Ｌ６内にリン抽出液を充満し、ろ布１２の一次側表面にプレコート層１４を形成したのち、吸引ポンプＰ１を停止して、通気弁Ｖ２を閉じ排水弁Ｖ３を開く。このようにすると、サイフォン効果により、配管Ｌ６の長さに応じた負圧がろ過板１０の内部に作用し、無動力でろ過が行われ、リン抽出液は、配管Ｌ６を通って系外に排水される。
【００３１】
ろ布１２の一次側表面には、プレコート層１４が形成されているので、プレコート層１４がフィルターとして機能し、配管Ｌ６からは、極めて清澄なリン抽出液が得られる。そして、ろ過により固液分離槽１内の水位が一定レベルまで低下すると、混合液供給管Ｌ１から混合液が供給されて、ろ過が連続的に行われる。
【００３２】
ろ過処理を継続すると、混合液中の不溶性成分は、ろ過処理中に一部が重力沈降して汚泥堆積部に堆積する。また、プレコート層１４の表面にろ過処理中に不溶性成分が付着して厚みが増し、その一部が剥離して汚泥堆積部に沈降する。そこで、定期的に汚泥排出弁Ｖ１を開き、堆積した汚泥を汚泥引き抜き管Ｌ２から系外に排出する操作を行う。
【００３３】
なお、焼却灰は、有機物を含まない無機性の粒子からなるものであるので、ろ布１２は目詰まりが生じにくく、ろ過処理中にろ布に付着した不溶性成分は、自重で自然剥離する。剥離した部分には、再度不溶性成分が付着するのでプレコート層が形成される。このため、ろ布１２の洗浄は、装置運転を停止時などのみ行えばよいので、少ない動力で、清澄なリン抽出液を効率よく回収することができる。ろ布１２の洗浄は、例えば、配管Ｌ５から加圧空気や水を供給してろ布の内部に付着した不溶性成分を除去する方法などが挙げられる。
【００３４】
図３に、本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置の第２の実施形態を示す。
【００３５】
上記第１の実施形態のリン抽出液の回収装置と同一箇所については、同一符号を付してその説明を省略する。
【００３６】
この実施形態では、固液分離槽１内に攪拌装置５が配置されている点で、上記第１の実施形態と相違する。攪拌装置５は、混合液のろ過処理や、汚泥引き抜き管Ｌ２からの汚泥の引き抜きに支障をもたらさないようなものであれは特に限定はなく、例えば、曝気式攪拌装置などが好ましく挙げられる。
【００３７】
次に、図３に示すリン抽出液の回収装置を用いて混合液を固液分離する方法について説明する。
【００３８】
混合液を、混合液供給管Ｌ１から固液分離槽１内に供給し、ろ過板の上方に至るまで供給する。この実施形態では、混合液を固液分離槽１内に供給する際、攪拌装置５を作動して、固液分離槽１内の混合液を攪拌する点で上記第１の実施形態と相違する。
【００３９】
そして、混合液の供給が完了した後、排水弁Ｖ３を閉じ、通気弁Ｖ２を開いて吸引ポンプＰ１を作動させ、ろ液（リン抽出液）を配管Ｌ４，Ｌ６内に充満させると共に、ろ過板１０のろ布の一次側表面にプレコート層１４を形成させる。
【００４０】
配管Ｌ４，Ｌ６内にリン抽出液を充満し、ろ布１２の一次側表面にプレコート層１４を形成したのち、攪拌装置５及び吸引ポンプＰ１を停止し、通気弁Ｖ２を閉じ、排水弁Ｖ３を開き、ろ過処理を行う。
【００４１】
混合液中の不溶性成分は沈降し易いので、混合液の不溶性成分の濃度が低い場合、ろ布の一次側表面に溶液中の不溶性成分によるプレコート層１４を形成する際に時間を要することがあるが、この実施形態では、ろ過処理を開始する前に混合液を攪拌するので、不溶性成分の沈降を防止でき、ろ布の一次側表面にプレコート層１４を短時間で形成でき、ろ過処理開始までに要する時間を短縮でき、リン抽出液の回収効率が向上する。
【００４２】
図４に、本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置の第３の実施形態を示す。
【００４３】
上記第１の実施形態のリン抽出液の回収装置と同一箇所については、同一符号を付してその説明を省略する。
【００４４】
この実施形態では、配管Ｌ４の下流側端部が分岐しているが、配管Ｌ４から分岐して伸びた配管Ｌ７，Ｌ８が、固液分離槽１内の混合液の水位よりも上方に配置されている点で相違する。そして、配管Ｌ７には、通気弁Ｖ２が介装されている。また、配管Ｌ８には、排水弁Ｖ３及び吸引ポンプＰ２が介装されている。
【００４５】
次に、図４に示すリン抽出液の回収装置を用いて混合液を固液分離する方法について説明する。
【００４６】
混合液を、混合液供給管Ｌ１から固液分離槽１内に供給し、ろ過板１０の上方に至るまで供給する。そして、混合液の供給が完了した後、通気弁Ｖ２を閉じ、排水弁Ｖ３を開き、吸引ポンプＰ２を作動してろ過処理を行う。
【００４７】
この実施形態では、吸引ポンプＰ２からの吸引によりろ過板１０の内部を負圧にしてろ過処理するので、配管などの設備を簡略化でき、装置全体の小型化がはかれる。なお、プレコート層１４は、ろ過処理開始初期の段階で、混合液中の不溶性成分がろ布１２の一次側表面に付着して形成される。
【００４８】
図５に、本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置の第４の実施形態を示す。
【００４９】
この実施形態では、配管Ｌ４の下流側端部から上方に伸びた配管Ｌ５に、通気弁Ｖ２が介装され、配管Ｌ４の下流側端部から下方に伸びた配管Ｌ６に、排水弁Ｖ３及び吸引ポンプＰ２が介装されている点で、上記第１の実施形態と相違する。
【００５０】
次に、図５に示すリン抽出液の回収装置を用いて混合液を固液分離する方法について説明する。
【００５１】
混合液を、混合液供給管Ｌ１から固液分離槽１内に供給し、ろ過板１０の上方に至るまで供給する。そして、混合液の供給が完了した後、通気弁Ｖ２を閉じ、排水弁Ｖ３を開き、吸引ポンプＰ２を作動させる。
【００５２】
この実施形態では、サイフォンで得られる負圧と、吸引ポンプＰ２で得られる負圧とで、ろ過処理を行うことができるので、混合液のろ過速度が向上し、短時間で多量にリン抽出液を回収することができる。なお、プレコート層１４は、ろ過処理開始初期の段階で、混合液中の不溶性成分がろ布１２の一次側表面に付着して形成される。
【実施例】
【００５３】
下水汚泥の焼却灰に苛性ソーダを加えて、焼却灰濃度が約８００００ｍｇ／Ｌの混合液を調製し、ｐＨ１４、５０〜６０℃の条件で焼却灰からリン溶解を行った。そして、この混合液を、図１に示すリン抽出液の回収装置を用いて固液分離して、リン抽出液を回収した。ろ過処理は、ろ布１２の一次側に焼却灰による厚さ２０ｍｍの層を形成した状態で、２ｍ３／ｍ２ｈｒのろ過速度でろ過処理を行ったところ、配管Ｌ６から回収できたリン抽出液の焼却灰濃度は１０ｍｇ／Ｌ以下であった。
【図面の簡単な説明】
【００５４】
【図１】本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置の第１の実施形態を示す概略図である。
【図２】（ａ）はろ過板の平面図であり、（ｂ）は、（ａ）のＡ−Ａ線断面図である。
【図３】本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置の第２の実施形態を示す概略図である。
【図４】本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置の第３の実施形態を示す概略図である。
【図５】本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置の第４の実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【００５５】
１：固液分離槽
２：汚泥堆積部
５：攪拌装置
１０：ろ過板
１１：支持材
１２：ろ布
１３：縫い目
１４：プレコート層
Ｌ１〜Ｌ８：配管
Ｐ１，Ｐ２：吸引ポンプ
Ｖ１：汚泥排出弁
Ｖ２：通気弁
Ｖ３：排水弁
【技術分野】
【０００１】
本発明は、リンが溶解した溶液と不溶性成分との混合液から不溶性成分を除去してリン抽出液を回収するリン抽出液の回収方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年、リン資源の枯渇が懸念されリン回収技術が注目されている。下水や下水汚泥はリンを含むため、各種のリン回収技術が開発、実用化されている。なかでも、下水汚泥等のようなリン含有汚泥の焼却灰からリンを回収する技術は、リン資源の回収と焼却灰の有効利用の観点から有望視されている。
【０００３】
焼却灰からリンを回収するには、焼却灰中のリンを薬剤で抽出する必要があり、抽出方法としては、硫酸、塩酸、硝酸等の強酸性溶液を用いて抽出する方法（例えば、下記特許文献１〜５）や、苛性ソーダ水溶液等のような強アルカリ性溶液を用いて抽出する方法（例えば、下記特許文献６〜８）が知られている。強酸性溶液や強アルカリ性溶液を用いることで、リンを含有する汚泥の焼却灰から、効率よくリンを抽出することができる。
【０００４】
そして、焼却灰中のリンを薬剤中に抽出した後、焼却灰と薬剤とを含む混合液を固液分離して焼却灰などの不溶性分を除去し、回収したリン抽出液に、消石灰（水酸化カルシウム）など加えてリン化合物として析出させるようにして、焼却灰からリンを回収している。
【特許文献１】特開平７−２５１１４１号公報
【特許文献２】特開平９−７７５０６号公報
【特許文献３】特開平１０−１０１３３２号公報
【特許文献４】特開平１１−９２１２２号公報
【特許文献５】特開平２００１−１３０９０３号公報
【特許文献６】特開２００７−２４６３６０号公報
【特許文献７】特開２００７−２４６３６１号公報
【特許文献８】特開２００７−２６１８７８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
リンを含有する汚泥の焼却灰から、リンを高純度でかつ効率よく回収するには、焼却灰中のリンを溶出させたリン抽出液と焼却灰などの不溶性成分とを含む混合液を固液分離して、不溶性成分の混入の少ない清澄なリン抽出液を効率的に回収する必要がある。固液分離する方法としては、例えば、遠心分離、ろ過による方法がある。
【０００６】
しかしながら、遠心分離による方法では、遠心分離機は設備コストが高いという問題があった。また、遠心分離機の作動には、回転エネルギーを要するので、運転コストがかかるという問題があった。さらには、遠心分離では、固形分回収率が低く、回収された抽出液中に、数百ｍｇ／Ｌ程度の焼却灰が混入するため、最終製品として得られるリン化合物の商品価値が損なわれる問題があった。
【０００７】
また、ろ過による固液分離方法では、固液分離を効率的に行うことが困難で、工業的なリン回収工程には適用しにくかった。
【０００８】
また、上記特許文献８には、フィルタープレスによるろ布を用いたろ過が開示されている。しかしながら、フィルタープレスは、バッチ操作の運転となるため、目的とするリン抽出液を得るために長時間を要する結果、設備が大きくなり設備コストが高くなるという問題があった。また、ろ布が目詰まりし易く、高圧水での頻繁な洗浄を必要とし維持管理が面倒で運転コストも高くなる問題があった。すなわち、フィルタープレスは固形分の汚泥を得ることを目的とした固液分離装置であることから、液体であるリン抽出液を得ることを目的とした操作には不適であり、リン抽出液を得るには効率が悪く、処理に時間を要し、高コストとなる問題があった。
【０００９】
また、強酸性溶液や強アルカリ性溶液を用いて、焼却灰からリンの抽出を行った場合、化学的な腐食や材料劣化がきわめて生じ易い条件であるため、リン抽出液と、リン抽出後の焼却灰を含む不溶性成分とを分離する技術の開発はこれまで充分になされていないのが現状であった。
【００１０】
したがって、本発明の目的は、リンを含有する汚泥の焼却灰から、低コストで、効率よく、清澄なリン抽出液を回収するリン抽出液の回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
上記目的を達成するため、本発明のリン抽出液の回収方法は、リンを含有する汚泥の焼却灰に、強酸性溶液又は強アルカリ性溶液を加えてリンを溶解させるリン溶解工程と、リンが溶解した溶液と不溶性成分との混合液から不溶性成分を除去してリン抽出液を回収する固液分離工程と、を含むリン抽出液の回収方法であって、
前記固液分離工程は、前記混合液を、ろ布を備えたろ過板の一次側に通水させて、該ろ布の一次側表面に前記混合液中の不溶性成分による層を形成させた状態でろ過処理を行い、前記ろ過板の二次側からリン抽出液を回収することを特徴とする。
【００１２】
本発明のリン抽出液の回収方法によれば、リン抽出液とリン抽出後の焼却灰とを含む混合液を、ろ布を備えたろ過板の一次側に通水させて、該ろ布の一次側表面に混合液中の不溶性成分による層を形成させた状態でろ過処理を行う。ろ布の一次側表面に形成させた不溶性成分による層は、フィルターとして機能するので、ろ過板の二次側から回収するリン抽出液は、焼却灰などの不溶性成分の混入が少なく、極めて清澄なリン抽出液を効率よく回収することができる。
【００１３】
本発明のリン抽出液の回収方法では、前記ろ過板として、支持材の両面をろ布で囲み、該ろ布の全周を閉じて袋状となし、少なくとも一端にリン抽出液回収管が接続されているろ過板を用いることが好ましい。
【００１４】
本発明のリン抽出液の回収方法では、前記ろ布として、ポリプロピレン、塩化ビニリデン、ビニロンから選ばれた一種以上の材質で構成されたものを用いることが好ましい。これらの材質からなるろ布は、耐薬品性に優れるので、ろ過処理時にろ布が劣化し難く、ろ布の交換頻度を抑えることができる。
【００１５】
本発明のリン抽出液の回収方法では、前記固液分離工程において、ろ過処理を開始する前に、前記混合液を攪拌することが好ましい。混合液中の不溶性成分は沈降し易いので、混合液中の不溶性成分の濃度が低い場合、ろ布の一次側表面に溶液中の不溶性成分による層を形成する際に時間を要することがあるが、ろ過処理を開始する前に、混合液を攪拌することで、不溶性成分の沈降を防止できる。このため、ろ布の一次側表面に溶液中の不溶性成分による層を短時間で形成でき、効率よくリン抽出液を回収できる。
【発明の効果】
【００１６】
本発明によれば、リン抽出液とリン抽出後の焼却灰とを含む混合液を、ろ布を備えたろ過板の一次側に通水させて、該ろ布の一次側表面に混合液中の不溶性成分による層を形成させた状態でろ過処理を行うので、ろ布の一次側表面に形成させた不溶性成分による層がフィルターとして機能し、ろ過板の二次側から、焼却灰などの不溶性成分の混入が少ない、極めて清澄なリン抽出液を効率よく回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１７】
本発明のリン抽出液の回収方法は、リンを含有する汚泥の焼却灰に強酸性溶液又は強アルカリ性溶液を加えてリンを溶解させるリン溶解工程と、リンが溶解した溶液と不溶性成分との混合液から不溶性成分を除去してリン抽出液を回収する固液分離工程と、を含む工程からなる。まず、図面を用いて、本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置について説明する。
【００１８】
図１は、本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置の第１の実施形態である。
【００１９】
図中の１は、固液分離槽であり、その下方側は汚泥堆積部をなしている。固液分離槽１の上側部には、混合液供給管Ｌ１が設けられている。固液分離槽１の底部には、汚泥給排口（図示しない）が設けられており、この汚泥給排口から、汚泥排出弁Ｖ１が介装された汚泥引き抜き管Ｌ２が伸びている。固液分離槽１の内部には、ろ過板１０が（この実施形態では３個）配置されている。
【００２０】
図２を併せて参照すると、ろ過板１０は、支持材１１の両面をろ布１２で囲み、該ろ布１２の全周を閉じて袋状の形状をなしている。そして、上下方向に沿って、かつ、幅方向に所定間隔で縫い込んだ複数の縫い目１３によって、上下に伸びる通路を幅方向に複数並んで形成した構造をなしている。また、上端には、リン抽出液回収管Ｌ３が伸びて、配管Ｌ４に接続している。
【００２１】
ろ布１２の材質は、耐薬品性に優れたものであれば特に限定はなく、ポリプロピレン、塩化ビニリデン、ビニロン等が好ましく用いられる。また、ろ布１２の厚さは、０．３〜０．５ｍｍが好ましい。また、ろ布１２の通気速度は、１０〜２０ｍｌ／ｃｍ２／ｓｅｃ ａｔ １２５Ｐａが好ましい。
【００２２】
配管Ｌ４は、それぞれのろ過板１０から伸びたリン抽出液回収管Ｌ３が接続している。そして、その下流側端部は、上下に分岐しており、上方に伸びた配管Ｌ５には、通気弁Ｖ２、吸引ポンプＰ１が介装されている。下方に伸びた配管Ｌ６には、排水弁Ｖ３が介装されおり、この配管Ｌ６は、固液分離槽１内の水位よりも下方に伸びている。
【００２３】
次に、上記リン抽出液の回収装置を用いた、本発明のリン抽出液の回収方法を説明する。
【００２４】
（リン溶解工程）
リンを含有する汚泥の焼却灰に、強酸性溶液又は強アルカリ性溶液を加えてリンを溶解させる。
【００２５】
強酸性溶液としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。強アルカリ性溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【００２６】
強酸性溶液を用いてリンを溶解させる場合においては、焼却灰に強酸性溶液を加えて、ｐＨ２以下にして処理することが好ましい。また、５０〜７５℃の温度条件下で処理すると、焼却灰からのリン溶出に要する時間を短縮できるので好ましい。
【００２７】
強アルカリ性溶液を用いてリンを溶解させる場合においては、焼却灰に強アルカリ性溶液を加えて、ｐＨ１４程度にして処理することが好ましい。５０〜７５℃の温度条件下で処理すると、焼却灰からのリン溶出に要する時間を短縮できるので好ましい。
【００２８】
（固液分離工程）
次に、リンが溶解した溶液と不溶性成分との混合液（以下、「混合液」と記す）を、図１に示すリン抽出液回収装置を用いて固液分離し、混合液から不溶性成分を除去してリン抽出液を回収する。
【００２９】
混合液は、混合液供給管Ｌ１から固液分離槽１内に供給し、ろ過板１０の上方に至るまで供給する。混合液の供給が完了した後、排水弁Ｖ３を閉じた状態で、通気弁Ｖ２を開いて吸引ポンプＰ１を作動させ、ろ液（リン抽出液）を配管Ｌ４，Ｌ６内に充満させる。このようにすると、ろ過板１０のろ布の一次側表面には、混合液中の不溶性成分による層（以下、「プレコート層」と記す）１４が形成される。プレコート層１４の厚さは、運転条件により異なるので特に限定はしないが、十〜数十ｍｍの厚さになるように形成することが好ましい。
【００３０】
そして、配管Ｌ４，Ｌ６内にリン抽出液を充満し、ろ布１２の一次側表面にプレコート層１４を形成したのち、吸引ポンプＰ１を停止して、通気弁Ｖ２を閉じ排水弁Ｖ３を開く。このようにすると、サイフォン効果により、配管Ｌ６の長さに応じた負圧がろ過板１０の内部に作用し、無動力でろ過が行われ、リン抽出液は、配管Ｌ６を通って系外に排水される。
【００３１】
ろ布１２の一次側表面には、プレコート層１４が形成されているので、プレコート層１４がフィルターとして機能し、配管Ｌ６からは、極めて清澄なリン抽出液が得られる。そして、ろ過により固液分離槽１内の水位が一定レベルまで低下すると、混合液供給管Ｌ１から混合液が供給されて、ろ過が連続的に行われる。
【００３２】
ろ過処理を継続すると、混合液中の不溶性成分は、ろ過処理中に一部が重力沈降して汚泥堆積部に堆積する。また、プレコート層１４の表面にろ過処理中に不溶性成分が付着して厚みが増し、その一部が剥離して汚泥堆積部に沈降する。そこで、定期的に汚泥排出弁Ｖ１を開き、堆積した汚泥を汚泥引き抜き管Ｌ２から系外に排出する操作を行う。
【００３３】
なお、焼却灰は、有機物を含まない無機性の粒子からなるものであるので、ろ布１２は目詰まりが生じにくく、ろ過処理中にろ布に付着した不溶性成分は、自重で自然剥離する。剥離した部分には、再度不溶性成分が付着するのでプレコート層が形成される。このため、ろ布１２の洗浄は、装置運転を停止時などのみ行えばよいので、少ない動力で、清澄なリン抽出液を効率よく回収することができる。ろ布１２の洗浄は、例えば、配管Ｌ５から加圧空気や水を供給してろ布の内部に付着した不溶性成分を除去する方法などが挙げられる。
【００３４】
図３に、本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置の第２の実施形態を示す。
【００３５】
上記第１の実施形態のリン抽出液の回収装置と同一箇所については、同一符号を付してその説明を省略する。
【００３６】
この実施形態では、固液分離槽１内に攪拌装置５が配置されている点で、上記第１の実施形態と相違する。攪拌装置５は、混合液のろ過処理や、汚泥引き抜き管Ｌ２からの汚泥の引き抜きに支障をもたらさないようなものであれは特に限定はなく、例えば、曝気式攪拌装置などが好ましく挙げられる。
【００３７】
次に、図３に示すリン抽出液の回収装置を用いて混合液を固液分離する方法について説明する。
【００３８】
混合液を、混合液供給管Ｌ１から固液分離槽１内に供給し、ろ過板の上方に至るまで供給する。この実施形態では、混合液を固液分離槽１内に供給する際、攪拌装置５を作動して、固液分離槽１内の混合液を攪拌する点で上記第１の実施形態と相違する。
【００３９】
そして、混合液の供給が完了した後、排水弁Ｖ３を閉じ、通気弁Ｖ２を開いて吸引ポンプＰ１を作動させ、ろ液（リン抽出液）を配管Ｌ４，Ｌ６内に充満させると共に、ろ過板１０のろ布の一次側表面にプレコート層１４を形成させる。
【００４０】
配管Ｌ４，Ｌ６内にリン抽出液を充満し、ろ布１２の一次側表面にプレコート層１４を形成したのち、攪拌装置５及び吸引ポンプＰ１を停止し、通気弁Ｖ２を閉じ、排水弁Ｖ３を開き、ろ過処理を行う。
【００４１】
混合液中の不溶性成分は沈降し易いので、混合液の不溶性成分の濃度が低い場合、ろ布の一次側表面に溶液中の不溶性成分によるプレコート層１４を形成する際に時間を要することがあるが、この実施形態では、ろ過処理を開始する前に混合液を攪拌するので、不溶性成分の沈降を防止でき、ろ布の一次側表面にプレコート層１４を短時間で形成でき、ろ過処理開始までに要する時間を短縮でき、リン抽出液の回収効率が向上する。
【００４２】
図４に、本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置の第３の実施形態を示す。
【００４３】
上記第１の実施形態のリン抽出液の回収装置と同一箇所については、同一符号を付してその説明を省略する。
【００４４】
この実施形態では、配管Ｌ４の下流側端部が分岐しているが、配管Ｌ４から分岐して伸びた配管Ｌ７，Ｌ８が、固液分離槽１内の混合液の水位よりも上方に配置されている点で相違する。そして、配管Ｌ７には、通気弁Ｖ２が介装されている。また、配管Ｌ８には、排水弁Ｖ３及び吸引ポンプＰ２が介装されている。
【００４５】
次に、図４に示すリン抽出液の回収装置を用いて混合液を固液分離する方法について説明する。
【００４６】
混合液を、混合液供給管Ｌ１から固液分離槽１内に供給し、ろ過板１０の上方に至るまで供給する。そして、混合液の供給が完了した後、通気弁Ｖ２を閉じ、排水弁Ｖ３を開き、吸引ポンプＰ２を作動してろ過処理を行う。
【００４７】
この実施形態では、吸引ポンプＰ２からの吸引によりろ過板１０の内部を負圧にしてろ過処理するので、配管などの設備を簡略化でき、装置全体の小型化がはかれる。なお、プレコート層１４は、ろ過処理開始初期の段階で、混合液中の不溶性成分がろ布１２の一次側表面に付着して形成される。
【００４８】
図５に、本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置の第４の実施形態を示す。
【００４９】
この実施形態では、配管Ｌ４の下流側端部から上方に伸びた配管Ｌ５に、通気弁Ｖ２が介装され、配管Ｌ４の下流側端部から下方に伸びた配管Ｌ６に、排水弁Ｖ３及び吸引ポンプＰ２が介装されている点で、上記第１の実施形態と相違する。
【００５０】
次に、図５に示すリン抽出液の回収装置を用いて混合液を固液分離する方法について説明する。
【００５１】
混合液を、混合液供給管Ｌ１から固液分離槽１内に供給し、ろ過板１０の上方に至るまで供給する。そして、混合液の供給が完了した後、通気弁Ｖ２を閉じ、排水弁Ｖ３を開き、吸引ポンプＰ２を作動させる。
【００５２】
この実施形態では、サイフォンで得られる負圧と、吸引ポンプＰ２で得られる負圧とで、ろ過処理を行うことができるので、混合液のろ過速度が向上し、短時間で多量にリン抽出液を回収することができる。なお、プレコート層１４は、ろ過処理開始初期の段階で、混合液中の不溶性成分がろ布１２の一次側表面に付着して形成される。
【実施例】
【００５３】
下水汚泥の焼却灰に苛性ソーダを加えて、焼却灰濃度が約８００００ｍｇ／Ｌの混合液を調製し、ｐＨ１４、５０〜６０℃の条件で焼却灰からリン溶解を行った。そして、この混合液を、図１に示すリン抽出液の回収装置を用いて固液分離して、リン抽出液を回収した。ろ過処理は、ろ布１２の一次側に焼却灰による厚さ２０ｍｍの層を形成した状態で、２ｍ３／ｍ２ｈｒのろ過速度でろ過処理を行ったところ、配管Ｌ６から回収できたリン抽出液の焼却灰濃度は１０ｍｇ／Ｌ以下であった。
【図面の簡単な説明】
【００５４】
【図１】本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置の第１の実施形態を示す概略図である。
【図２】（ａ）はろ過板の平面図であり、（ｂ）は、（ａ）のＡ−Ａ線断面図である。
【図３】本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置の第２の実施形態を示す概略図である。
【図４】本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置の第３の実施形態を示す概略図である。
【図５】本発明のリン抽出液の回収方法の固液分離工程で用いるリン抽出液の回収装置の第４の実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【００５５】
１：固液分離槽
２：汚泥堆積部
５：攪拌装置
１０：ろ過板
１１：支持材
１２：ろ布
１３：縫い目
１４：プレコート層
Ｌ１〜Ｌ８：配管
Ｐ１，Ｐ２：吸引ポンプ
Ｖ１：汚泥排出弁
Ｖ２：通気弁
Ｖ３：排水弁
【特許請求の範囲】
【請求項１】
リンを含有する汚泥の焼却灰に、強酸性溶液又は強アルカリ性溶液を加えてリンを溶解させるリン溶解工程と、リンが溶解した溶液と不溶性成分との混合液から不溶性成分を除去してリン抽出液を回収する固液分離工程と、を含むリン抽出液の回収方法であって、
前記固液分離工程は、前記混合液を、ろ布を備えたろ過板の一次側に通水させて、該ろ布の一次側表面に前記混合液中の不溶性成分による層を形成させた状態でろ過処理を行い、前記ろ過板の二次側からリン抽出液を回収する、
ことを特徴とするリン抽出液の回収方法。
【請求項２】
前記ろ過板として、支持材の両面をろ布で囲み、該ろ布の全周を閉じて袋状となし、少なくとも一端にリン抽出液回収管が接続されているろ過板を用いる、請求項１に記載のリン抽出液の回収方法。
【請求項３】
前記ろ布として、ポリプロピレン、塩化ビニリデン、ビニロンから選ばれた一種以上の材質で構成されたものを用いる、請求項１又は２に記載のリン抽出液の回収方法
【請求項４】
前記固液分離工程において、ろ過処理を開始する前に、前記混合液を攪拌する、請求項１〜３のいずれか１項に記載のリン抽出液の回収方法。
【請求項１】
リンを含有する汚泥の焼却灰に、強酸性溶液又は強アルカリ性溶液を加えてリンを溶解させるリン溶解工程と、リンが溶解した溶液と不溶性成分との混合液から不溶性成分を除去してリン抽出液を回収する固液分離工程と、を含むリン抽出液の回収方法であって、
前記固液分離工程は、前記混合液を、ろ布を備えたろ過板の一次側に通水させて、該ろ布の一次側表面に前記混合液中の不溶性成分による層を形成させた状態でろ過処理を行い、前記ろ過板の二次側からリン抽出液を回収する、
ことを特徴とするリン抽出液の回収方法。
【請求項２】
前記ろ過板として、支持材の両面をろ布で囲み、該ろ布の全周を閉じて袋状となし、少なくとも一端にリン抽出液回収管が接続されているろ過板を用いる、請求項１に記載のリン抽出液の回収方法。
【請求項３】
前記ろ布として、ポリプロピレン、塩化ビニリデン、ビニロンから選ばれた一種以上の材質で構成されたものを用いる、請求項１又は２に記載のリン抽出液の回収方法
【請求項４】
前記固液分離工程において、ろ過処理を開始する前に、前記混合液を攪拌する、請求項１〜３のいずれか１項に記載のリン抽出液の回収方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２００９−２０７９８２（Ｐ２００９−２０７９８２Ａ）
【公開日】平成２１年９月１７日（２００９．９．１７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−５２８６１（Ｐ２００８−５２８６１）
【出願日】平成２０年３月４日（２００８．３．４）
【出願人】（５０７２１４０８３）メタウォーター株式会社 (277)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年９月１７日（２００９．９．１７）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年３月４日（２００８．３．４）
【出願人】（５０７２１４０８３）メタウォーター株式会社 (277)
【Ｆターム（参考）】
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