説明

リン脂質に対して親和性を有する標識ペプチドおよびその使用

本発明は、脂質ベクターの特異的認識のためのフッ素-18で標識したペプチドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン脂質に対して親和性を有する、フッ素-18で標識したペプチドのファミリーに関するものであり、さらにこのペプチドの使用にも関する。
【0002】
一般に、本発明のペプチドは、脂質分子を特異的に認識するのに役立つ。それらは、脂質、特に、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸およびリゾホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、およびスフィンゴシン-1-ホスファート等の負に荷電した脂質を認識しかつ封鎖する化合物を作り出し創作するのに使用することができる。
【0003】
上記の脂質は、特に細胞のシグナル伝達において重要な役割を果たし、細胞膜の外面に存在し、かつ/または非常に広範な疾患に伴う事象後に血中を循環する。
【0004】
様々な細胞の事象により、負に荷電した脂質、特に細胞の外面にホスファチジルセリン(PS)の出現がもたらされ、これらの事象は、細胞の偶然または疾患による障害、あるいは細胞死またはアポトーシス等のプログラムされた細胞の事象のいずれかに起因する。細胞の外面におけるPSの出現は、したがって、機能障害の存在を反映する重要な「第一のメッセージ」の構成要素となる。血液凝固の過程の場合、その機構は、よく説明されており、血管の内皮細胞内の障害は、突発的な理由またはより複雑な疾患による理由のいずれに対しても、血流と接触している細胞の外面においてこのPSメッセージの出現を引き起こす。このメッセージは、ある一定の循環しているタンパク質により直ちに認識され、それが次によく知られた血液凝固の現象をもたらすカスケードを引き起こす。
【0005】
本発明は、脂質エフェクター認識ならびに、アポトーシス、血液凝固疾患、敗血性ショックおよび特に急性炎症性病変の検出の分野における、研究、診断および治療の手段として使用することができる化合物を開発するために、提供するペプチドが、カルシウムの存在下または非存在下で、脂質、特に負に荷電した脂質に結合するという特性を使用する。
【0006】
本発明の標識ペプチドは、フッ素-18である陽電子放射体、放射性ハロゲンにカップリングしている。これらの標識ペプチドを用いて、例えば、アポトーシス細胞の検出および負に荷電した膜ミクロドメインの認識が可能になる。
【0007】
本発明のペプチドは、細胞表面において負に電荷した脂質を暴露する中心の出現および/または血液中への小胞の放出を含む病変の「in vitro」検出に使用することができる。
【0008】
本発明の標識ペプチドは、細胞の表面でおよび/または小胞の血液中への放出において、例えば、陽電子放出断層撮影法(PET)により得られるシンチグラフ画像により、in vivoでの検出、ならびに、アポトーシス病巣、血栓症の領域、および一般に負に荷電した脂質を暴露する中心の画像化のために使用することができる。
【0009】
その他の応用も、あとに続く説明を読めばこの業界における当業者にはさらに明らかとなろう。
【背景技術】
【0010】
アネキシンと呼ばれるタンパク質のファミリーは、カルシウム濃度および陰イオン性リン脂質の存在によって調整される、細胞膜への可逆的な機能アンカーを示すものとして従来技術に記載されている。そのアネキシンは、動物および植物の両方の広い種類の組織中で発現されるタンパク質のファミリーを構成する。それらは、細菌または酵母中のいずれにも発現されないようである。
【0011】
アネキシンの構造は、配列相同性が非常にわずかであるが、実質的に同一のトポロジーを有する、およそ70のアミノ酸または残基からなる4つのドメインを含む。
【0012】
文献WO 92/19279で、J. Taitは、リン脂質に対して親和性を有するコンジュゲートについて記載している。特にアネキシン、とりわけ血栓溶解剤として使用することができる活性なコンジュゲートを製造するためのアネキシンVの使用について記載している。
【0013】
その文献に記載され、遺伝子組換法によって完全なアネキシンから調製された化合物は、残念ながら多くの欠点を有しており、特に収率が低く、製造コストが高い。主要な欠点は、特に、不可逆的なアンフォールディングをもたらすその複雑なトポリジーのために、脆弱なコンジュゲートが得られるということである。加えて、これらの分子は、腎臓および心臓に対して顕著な毒性を示す。
【0014】
本発明者等は、出願WO-A-00/20453に、上記の欠点を克服し、リン脂質に対する親和性および増大した安定性を有するペプチドの第1のファミリーについて記載している。
【0015】
さらにそのうえ、研究または診断における使用のために、タンパク質またはペプチドのような巨大分子を検出可能な標識分子とカップリングさせることができる。この標識分子は、例えば、蛍光分子、金粒子、常磁性化合物または放射性を有する分子とすることができる。
【0016】
タンパク質は放射性同位体、ヨウ素並びにテフネチウム、インジウムおよびガリウムのような様々な金属の放射性同位体で放射活性に標識されてきた。より最近は、タンパク質はフッ素-18で標識されている。
【0017】
例えば、フッ素のような放射性物質にカップリングしたペプチドにより、画像システムを使用して、全ての種類の発作の間の血栓症領域の場所、とりわけアポトーシスおよび炎症の病巣の場所を、「in vivo」で検出できる。
【0018】
それゆえ、寿命が短く、陽電子を放出する放射活性原子(特にフッ素-18)は、特に、陽電子放出断層撮影法(PET)装置で検出することができる。
【0019】
フッ素-18による放射活性標識は、フッ素-18の大変短い寿命のため(ほぼ109.8分)、フッ素-18での標識は、ヨードのような他のハロゲンによる標識と基本的に異なっているという特徴的な問題を有している。
【0020】
前記標識は、この業界の当業者に知られている、任意の一般的な有機化学の手法によって、並びに、短い寿命の1以上の放射活性な原子(特にフッ素-18)を有するタンパク質およびペプチドマーカーの合成によって、実行することができる。一般的に、このマーカーは、一方は、例えばフッ素-18原子を収納できる部分からなり、もう一方は巨大分子(例えばタンパク質)に結合するための一般的な任意の官能基を含む部分からなる。
【0021】
これらのマーカーは、フッ素-18のような放射性同位体の短い寿命のために、迅速で容易に合成できるという条件を満たさなければならない。合成時間は、一般的に、1、2時間を越えるべきではない。
【0022】
この合成は、用いる化合物の高い放射活性のために、オートマチック化した方法で実施することができなければならない。
【0023】
それゆえ、フッ素-18でタンパク質またはペプチドを標識する方法には、タンパク質およびペプチドのような巨大分子のアミン基、スルフヒドリル基、またはカルボキシル基と反応するかどうかに依存して、3つの主なファミリーに分けられる、標識した「コンジュゲート」または「シントン」と呼ばれるマーカーが含まれる。
【0024】
アミノ基と反応する化合物またはコンジュゲートとしては、タンパク質と結合させるために、例えば、リジンのε-NH2基と結合する3-[18F]フルオロ-5-ニトロベンゾイミダートのようなイミダート;N-スクシンイミジル-[18F]フルオロベンゾエートのような活性エステル;N-(4-[18F]フルオロ安息香酸)のようなカルボン酸;4-[18F]ペンタフルオロベンズアルデヒドのようなアルデヒド;4-([18F]フルオロメチルフェニルイソチオシアネート)のようなイソチオシアネートを挙げることができる。
【0025】
(4-[18F]フルオロフェナシル)ブロマイドのような活性ハロゲンは、リジンのε-NH2基のようなアミノ基およびシステインの-SH基と反応する。
【0026】
1-(4-([18F]フルオロメチル)ベンゾイル)アミノブタン-4-アミンのようなアミンは、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸のCOOH基とまたは糖タンパク質のCHO基と反応する。
【0027】
アジドフェナシル[18F]フルオリドのような光化学活性中心を有するナイトレンも、例えばリジンのε-NH2基のアミノ基と反応する。
【0028】
タンパク質およびペプチドを標識するための最も効率的で最も広く記載されている方法は、活性化酸を使用する方法であるが、当該方法は、タンパク質またはペプチドのアミノ酸の全ての求核部位が標識マーカー、コンジュゲートまたはシントンと反応するので、非常に非特異的となってしまう。
【0029】
ペプチドおよびヌクレオチドを標識するためのより特異的である2つの方法は、例えばペプチドのシステインの硫黄原子に対して、および、ヌクレオチドのホスホロチオエート官能基に対して良好な特異性を示す。
【0030】
これらの方法には、ハロゲンアセトアミド「シントン」を用いた方法を含み、この方法は、十分とはいえ、非常にゆっくりであり、その寿命のために18Fにあまり適さないという欠点を有する。
【0031】
例えばリジンのε-NH2部位と比べて、反応が非常にゆっくりであるので、非常に良好な特異性を有してSH基に結合することができる活性化マレイミドを用いた方法がある。
【0032】
タンパク質の場合の、マレイミド基を含む反応スキームを以下に示す。
【0033】
【化1】

【0034】
式中、Xは-S-を表す。
【0035】
タイプによらず任意の標識にとって、ペプチドまたはタンパク質のような巨大分子との反応性に関しては、マレイミド基を含む分子は最良であると最近は考えられている。
【0036】
SHIUE C. Y. et al., J. Label Compounds Radiopharm 26: 278-280 (1988)による文献には以下の化合物が記載されている。
【0037】
【化2】

【0038】
これらの化合物の第一のものについては、高い特異的活性でのフッ素-18を用いた標識が容易ではない。
【0039】
実際、唯一フッ素F2のみが、「ヨウ素タイプ」の容易な標識を行うことができる。そして、偶然にもF2は一般的に低い特異的活性を有する製品である。
【0040】
特に、F2は、本発明において好ましい目的とされる、いわゆる「放射線トレーサー」の製造には適していない。その理由は、単に、標識分子のインジェクト質量があまりにも大きくなり、この場合、この「トレーサー」を導く基本的な原則(すなわち、受容体部位の非常に容易な占拠(例えば5%未満))が満たさないからである。
【0041】
加えて、これらの化合物の最初の合成は困難である;実際に、収率が低く、長時間必要であり、比較的に複雑な化学転移が必要である4つの段階で実施される。この方法は、それ故、簡単にオートマチック化できない。
【0042】
SHIUE et alの文献により引用されている第二の化合物は、化学的にあまり強固でないアミド鎖を含み、in vivoで容易に切断され、崩壊する。
【0043】
診断用の用途での使用は、それ故、想定することができない。加えて、この第二の化合物の合成は、3つの段階を含み、最終的な収率は低く、例えば、10%に近い(「EOB」「End of Bombardment」)。
【0044】
文献US-A-4 735 792は、以下の分子に関する。
【0045】
【化3】

【0046】
式中、Xは、臭素-75、臭素-76、臭素-82、ヨウ素-123、ヨウ素-125、ヨウ素-131およびフッ素-18から選択される放射活性ハロゲンである。
【0047】
しかしながら、唯一ヨウ素-125で標識される分子のみ効率的に調製される。
【0048】
フッ素-18で標識した分子の調製は述べないが、SHIUE et al.の文献の第一の化合物の場合で既に述べた見解は、文献US-A-4 735 792の場合でも当てはまる。
【0049】
この業界における当業者は、フッ素-18で標識した化合物を特異的に調製できる情報を全く有していない。もしもそれを行うことを予想するならば、F2を使用し、「PET」イメージングにおいて使用できない、低い特異的活性を有する化合物に行き着くであろう。
【0050】
更に、文献US-A-4 735 792のフッ素化化合物を製造するために使用される化学は複雑であり、長くなってしまうことも考慮することができる。
【特許文献1】WO 92/19279
【特許文献2】WO-A-00/20453
【特許文献3】US-A-4 735 792
【非特許文献1】Kevin Burgess、「Solid-Phase Organic Synthesis」、Wiley-Interscience; ISBN: 0471318256; (2000年2月)
【非特許文献2】R. JagusおよびG. S. Beckler (1998)「Overview of eukaryotic in vitro translation and expression systems」、 Current Protocols in Cell Biology 11.1.1〜11.1.13, 1989年、John Wiley & Sons, Inc.
【非特許文献3】F. Cordier-Ochsenbein et al., J. Mol. Biol. 279, 1177〜1185
【非特許文献4】Circulation Res. 1996, 79, 946〜956
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0051】
本発明の目的は、脂質、特にリン脂質に対して親和性を有するペプチドであり、新規の標識化合物を用いてフッ素18Fである放射活性ハロゲンを用いて標識されたペプチドの新規なファミリーであって、従来技術の製品に対してより特異的であり、なお一層改良されたものを提供することであり、標識化合物は、とりわけ高い反応性を有し、システインのチオール官能基の硫黄元素のような硫黄元素に特に高い選択性を有し、良好な特異的活性を有し、前記標識化合物は、単純で、確実であり、オートマチック化が容易であり、迅速で短時間での方法により製造することができる。
【0052】
本発明のペプチドは、また、従来技術による化合物より化学的により安定であり、従来技術の化合物と比較して高収率および非常に低い製造コストで再現可能な方法により製造することができるという利点を有する。
【0053】
フッ素-18(18F)は、本発明の標識ペプチドを用い、陽電子(PET)カメラにより体のあるゆる部分の負に荷電した脂質を検出することができる陽電子放射体である。本発明のペプチドの18Fへのカップリングにより、例えば、ミリメーター範囲よりも良好な解像度で、任意の生物におけるin vivoでのプログラム細胞死、アポトーシス、血液凝固、炎症反応のような生理病理学的な工程に関与する細胞の外画の表面に存在する、ホスファチジルセリン(PS)を提示する細胞の存在を検出することができる。研究所での試験におけるin vitroでのそのような試験でも使用できる。
【0054】
これらの本発明の標識ペプチドにより、また、例えば、ホスファチジルセリンを有する細胞の数の正確な定量も可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0055】
本発明のペプチドは、それらが、下記ペプチド配列(PI):
J1-J2-J3-J4-J5-J6-Z7-U8-J9-J10-Ull-Arg-J13-J14-U15-Lys-Gly-X18-Gly-Thr-J2l-Glu-J23-J24-U25-J26-J27-J28-U29-J30-J31-Arg-J33-J34-J35-J36-B37-J38-J39-U40-J41-J42-J43-U44-J45-J46-J47-J48-J49-Arg-J51-U52-J53-J54-Asp-U56-Lys-Ser-Z59-Leu-J61-J62-J63-J64-Z65-J66-J67-U68-J69-J70-J71-U72-J73-J74-J75 (PI)
(式中、J、Z、U、XおよびBは、アミノ酸を表し、
- アミノ酸Jは、互いに独立して、少なくともそれらの50%が、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Lys、Orn、Pro、Ser、ThrおよびTyrから選択される極性残基であるように天然アミノ酸またはそれらの誘導体から選択され、
- アミノ酸Uは、Ala、Cys、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、TyrおよびValから選択され、
- アミノ酸X18は、配列の他のアミノ酸とは独立して、Ala、Asn、Cys、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、TyrおよびValから選択され、
- アミノ酸B37は、配列の他のアミノ酸とは独立して、Arg、Ala、Cys、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、TyrおよびValから選択され、
- アミノ酸Z7は、配列の他のアミノ酸とは独立して、AspおよびGluから選択され、
- アミノ酸Z59およびZ65は、独立して、Glu、Asp、LysおよびArgから選択され、
J、Z、U、XおよびBの上付き文字は、前記配列におけるこれらのアミノ酸の位置を表す)
を含むことを特徴とする。
【0056】
本発明によれば、前記で定義した本発明のこれらのペプチドは、以下の化学式(CI):
【化4】

【0057】
[式中、
- mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のような、0から10の整数を表し、
- nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のような、0から10の整数を表し、
- Yは、アルキル基、イミダゾール、ピラゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、シノリニル、キナゾリニル、キノキサリニルおよびプリニル基から選択される単環または二環式の複素環基から選択される基を表し、
Yは、任意に1以上の置換基で置換することができ、これら置換基のそれぞれは、独立して、水素、(非放射活性の)ハロゲン、フェニル、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-6アルキル)アミノ、モノ-またはジ(アリール)アミノ、チオ、C1-6アルキルチオ、アリールチオ、ホルミル、C1-6アルキルカルボニル、アリールカルボニル、カルボニル、C1-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C1-6アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニルおよびトリフルオロメチル基から選択され、
- βは、以下の式;
【0058】
【化5】

【0059】
{式中、
- a、b、c、d、e、f、gは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9のような、0から10の整数を表し、
- γ、VおよびWは、それぞれ独立して、-NR-1、-O-、-S-、
【0060】
【化6】

【0061】
、エチニル、-CR1=CR2、-(C=O)-、-(C=S)-、-C(=NR1)-、-C(=O)O-、-(C=S)S-、-C(=NR1)NR2-、-CR1R2-、-CR1OR2-、-CR1NR2R3-
(式中、R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、ハロゲン、フェニル、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-6アルキル)アミノ、モノ-またはジ(アリール)アミノ、チオ、C1-6アルキルチオ、アリールチオ、ホルミル、C1-6アルキルカルボニル、アリールカルボニル、カルボニル、C1-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C1-6アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニルおよびトリフルオロメチル基から選択される)
を表す}
を表す]
の本発明の標識化合物により直接的にまたは間接的に標識されている。
【0062】
一般的に、本明細書の記載においては、ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。C1-6アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルのような、1から6の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖の飽和炭化水素基に対応する。
【0063】
複素環、アリール基等の結合および置換は、任意の部位で行うことができる。
【0064】
同様に、18FのYまたはβへの結合は、任意の部位、特に、複素環上の任意の部位で行うことができる。
【0065】
本発明の化合物は、以前に知られていた化合物と基本的に区別できる。その理由は、フッ素-18原子を有する部分が、本発明では、特異的な基Y(特にピリジニル基)からなり;ペプチドにカップリング、結合する部分が、本発明では、特異的なな官能基、すなわちマレイミド官能基からなり;最後に、ペプチドと結合する部分とフッ素-18原子を有する部分が、本発明では、脆弱でなく、「in vivo」で壊れる疑いが無い、特異的であるスペーサー鎖またはアーム(例えば、アルキル(一般的に2から6C)、アルキルエーテル、フェニルアルキルエーテル、アルケニル)により結合しているからである。
【0066】
直接的に標識するという表現は、スペーサーアームのような中間体なしに、例えば、前記で定義したペプチドの遊離した-SH官能基により、標識化合物(CI)を本発明のペプチドと直接カップリングさせることを意味する。これは、特に、ペプチドのシステインのチオール官能基において可能である。
【0067】
標識化合物(CI)とペプチドとのカップリングは、前記の配列(PI)、例えば、タンパク質の表面に位置するシステイン残基上で、カルシウムおよびリン脂質と結合する官能基のために悪影響を及ぼさないような方法で、または、前記配列(PI)と異なるペプチドの部分のどちらかで行うことができる。カップリングは、化合物(CI)のマレイミド官能基を介して行われる。
【0068】
より正確には、前記カップリングは、本発明による化合物のマレイミド基の二重結合が、特異的に、ペプチドのシステイン形成部位の-SH(チオール)官能基と反応することによって達成される。
【0069】
本発明による化合物の特異的な構造に結合した利点の1つは、他の「シントン」の大部分が、リジンおよびシステインへの非特異的な標識が可能であるのに対して、システインの特異的な、すなわちまさに限定的な標識が可能になることである。
【0070】
選択的な、すなわちまさに限定的なシステインの標識は、本発明の標識分子中に、「特化した」官能基、すなわちマレイミド官能基(システインのチオールに対しての化学選択性のための特化した官能基)が存在するからである。
【0071】
間接的に標識するという表現は、一方に標識化合物、もう一方に前記のペプチドが結合したスペーサーアームの使用を意味する。このスペーサーアームは、マーカーとペプチドを離れて結合させる役割を有し、立体障害により、ペプチドが標的(負に荷電した脂質)を認識する妨げにならないようにしている。このスペーサーアームは、有機物、例えば、チオール基が付いているアルキル、またはシステインを含むペプチド配列、例えば、-(Gly)n-Cys(式中、nは、1以上である)とすることができる。
【0072】
本発明のペプチドによる負に荷電した脂質の特異的な認識活性を阻害しない、または、あまり悪影響を与えないような方法で阻害するような任意の場合において、本発明によるペプチドと標識化合物がカップリングされることは明らかである。
【0073】
上のペプチドの配列(PI)は、ペプチドの活性型であるその三次構造をとるように、空間的に折りたたまれる。
【0074】
本発明のペプチド(PI)のアミノ酸12、15、16、17、19、20、22、50、55、57、58、59、60および65は、脂質への結合に直接または間接に関わる本発明のアミノ酸または残基であり、すなわち、それらは、負に荷電した脂質の認識を可能にするその活性構造をとるようにペプチドの三次元構造に含まれるか、または脂質の認識のための部位に含まれるかのいずれかである。
【0075】
アミノ酸Jは、このペプチドがその折りたたまれた活性な構造にあるときのその表面のアミノ酸、または残基である。これらの残基は、部分的または完全に溶媒にさらされるように、空間的に配列されている。本発明によれば、これらのアミノ酸Jは、例えば、互いに独立して、全天然アミノ酸残基、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Orn、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、TyrおよびValから、そして少なくともそれらの50%が、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Lys、Orn、Pro、SerおよびThrから選択される極性の残基であるように選択することができる。付属の配列中にいくつかの例が示されている。
【0076】
アミノ酸Uは、このペプチドの核の残基である。そのペプチドの折りたたまれた活性な構造において、それらは空間的に互いに接近して配列されており、溶媒にはさらされない。それらはタンパク質の疎水性の核を構成する。これら残基の原子のコンパクトな集合は、ペプチドの活性な構造の安定性に非常に寄与している。これらの残基は、上記のアミノ酸Uのリストから選択することができる。本発明のペプチド配列(PI)における核残基の組合せの様々な例を、次表(1)に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
残基X18は、特に残基Z59およびZ65がGluである場合に、ペプチドの活性型におけるGly-X-Glyのループの構造を維持して、このループの疎水性および親油性の性質を調節し、リン脂質との新たな特異的な相互作用を場合によって提供する役割を有する。これは、例えば、残基Asn、Cys、Ser、Thr、TrpおよびTyrの場合である。
【0079】
残基Z59およびZ65は、有利にはリジン残基であり、その効果は、カルシウムイオンをリジンのプラスに荷電した-NH3+基と交換して負に荷電した細胞膜に対するペプチドの親和性を増すことである。
【0080】
本発明のペプチド(PI)は、その活性型において、カルシウムイオンと結合するための3つの部位を含み、そこでその部位と複合体を形成したカルシウムイオンが、負に荷電したリン脂質のリガンドの1つを構成する。一次部位と呼ばれるこれらの部位の最初のものは、カルシウムリガンドとして、残基15、18、19および59を含む。二次部位と呼ばれるこれらの部位の第2のものは、カルシウムリガンドとして、残基20および22を含む。これらの部位の第3のものは、親和性の低い二次部位であり、カルシウムリガンドとして、残基57、60および65を含む。
【0081】
リン脂質への結合に全体的に含まれる残基は、残基12、15、16、19、20、22、50、55、57、58、69、60および65である。このリストは、リン脂質がカルシウムリガンドであるカルシウムの結合にかかわる残基を含む。
【0082】
これらの残基は、当然のことながら、本発明によるものと同じ結果が見込まれる同じ機能を達成する残基と置き換えることができる。
【0083】
一例として、本発明によれば、式(PI)のペプチドは、有利には、付属のペプチドの配列番号1〜配列番号10から選択されたペプチドの配列とすることができる。
【0084】
配列(PI)は、本発明のペプチドをそれらの最も短い機能形態で表す。この配列は、また、配列(PI)のN末端および/またはC末端に連結して、1以上のアミノ酸、例えば1から15までのアミノ酸、一般には1から10までのアミノ酸を含むことができる。最も好ましくは、これらの追加のアミノ酸は、ペプチドの活性を変更しない、または、ほんのわずか変更する、または、増大させる。
【0085】
例えば、以下に機能化配列として言及する小さな配列は、特にマーカーをペプチドに付加するため、疾患を治療するための分子をペプチドに付加するため、および/または前記ペプチドを担体に付加するために有用であり得る。この機能化配列の長さは、その使用に従って調整する。当然のことながら、後者は、本発明のペプチドの活性を妨害しないことが好ましい。当業者であれば、本発明のペプチドの利用法によって、この機能化配列の長さおよび性質を容易に調製することができよう。
【0086】
したがって、本発明の最初の特定の実施形態によれば、本発明のペプチドは、例えば、それらのN末端に、3つのアミノ酸の機能化配列を含むことができる。この機能化配列により、標識化合物(CI)をペプチドへと直接に結合させることができる。この実施形態によるペプチドは、次の配列(PII)、
J-2-J-1-J0-Jl-J2-J3-J4-J5-J6-Z7-U8-J9-J10-U11-Arg-J13-J14-U15-Lys-Gly-X18-Gly-Thr-J21-Glu-J23-J24-U25-J26-J27-J28-U29-J30-J31-Arg-J33-J34-J35-J36-B37-J38-J39-U40-J41-J42-J43-U44-J45-J46-J47-J48-J49-Arg-J51-U52-J53-J54-Asp-U56-Lys-Ser-Z59-Leu-J6l-J62-J63-J64-Z65-J66-J67-U68-J69-J70-J71-U72-J73-J74-J75 (PII)
(式中、J、Z、U、XおよびBは、上で定義したとおりである)
により規定することができる。
【0087】
例えば、J-2はGlyであり、J-1は、SerまたはCysであり、J0は、Cys、Thr、Pro、SerまたはGlnとすることができ、好ましくは、J0は、Cysである。この配列J-2-J-1-J0は、例えば、Gly-Ser-Cys-およびGly-Cys-Ser-から選択することができる。かくて、例えば、上記の各配列番号1〜配列番号10は、好みにより、上記の機能性配列のそれぞれを含むことができる。付属の配列番号12は、そのN末端に3つのアミノ酸の機能性配列を含む本発明による配列(PII)の非限定の一例に過ぎない。
【0088】
本発明の第2の特定の実施形態によれば、配列(PI)のペプチドは、例えば、それらのN末端に、Gly-Ser-Gly-Cys-、Gly-Cys-Gly-Ser-およびGly-Cys-Gly-Cys-から選択される4つのアミノ酸J-3-J-2-J-1-J0-の機能化配列を含むことができる。この機能化配列は、例えば、標識化合物(CI)のペプチドへの直接的な結合に役立つ。かくて、例えば、上記の各配列番号1〜配列番号10は、好みにより、上記の機能性配列のそれぞれを含むことができる。付属の配列番号11(いくつかの配列が、配列番号11の名前で1つのものとして一緒にされている)は、そのN末端に4つのアミノ酸の機能性配列を含む本発明による配列(PI)の非限定の例に過ぎない。
【0089】
本発明の第3の特定の実施形態によれば、ペプチド配列(PI)は、例えば、それらのN末端に、7個から11個のアミノ酸の機能化配列を含むことができる。この機能化配列は、また、化合物(CI)のペプチドへの直接的な結合に役立つ。この実施形態は、以下に開示されている。かくて、例えば、上記の各配列番号1〜配列番号10は、好みにより、上記の機能性配列のそれぞれを含むことができる。配列番号11〜14の配列Gly-Ser-Gly-Cysを、Gly-Bb1-Gly-Bb2(但し、Bb1およびBb2は、独立して、CysまたはSerである)と置き換えることもできる。付属の配列番号13および14(いくつかの配列が、配列番号13または14の名前で1つのものとして一緒にされている)は、そのようなペプチドの非限定の例に過ぎない。
【0090】
本発明のペプチドは、カルシウムに対する十分な親和性を有しており、脂質エフェクター、とりわけ負に荷電しているもの、例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、リン酸ホスファチジルイノシトール等に可逆的に結合することができる。
【0091】
このようなペプチドは、主たる特性が、組織の正常または病的な機能に関連して細胞膜表面において脂質シグナルの出現を特異的に認識することであるペプチドのファミリーである。
【0092】
本発明のペプチドは、有機化学またはタンパク質化学の通常の合成方法、および遺伝子工学によるin vivoまたはin vitroでの遺伝子組換え、その他により合成することができる。
【0093】
本発明によるペプチドは、前記ペプチドの固相化学合成によって合成することができる。その化学合成は、例えば、Applied Biosystems社の433A型自動ペプチド合成装置により行うことができる。それは、例えばアミノ酸のα-アミノ官能基の一時的な保護のためにフルオレニルメチルオキシカルボニル基を使用するFmoc化学により行うことができる。
【0094】
ペプチド合成のこの方法を実施するための技術的要素は、当業者には周知である。それらは、例えば、Kevin Burgess(編集者)による書籍、「Solid-Phase Organic Synthesis」、Wiley-Interscience; ISBN: 0471318256; (2000年2月)に記載されている。
【0095】
本発明のペプチドは、また、例えば
a) 前記ペプチドをコードする塩基配列を含むcDNAを準備する工程、
b) 前記cDNAを適切な発現ベクターに挿入する工程、
c) プラスミドの複製のため、適切な宿主細胞をcDNAを挿入した前記ベクターでトランスフォーメーションする工程、
d) 前記宿主細胞中で前記cDNAを翻訳することにより前記ペプチドを製造する工程、および
e) 合成したペプチドを回収する工程
を含む方法を用いるi in vivoでの遺伝子組換えにより製造することができる。
【0096】
本発明によれば、適切な発現ベクターおよび宿主細胞は、遺伝子組換えの通常の技術により選択される。そのベクターは、この技術で一般に使用されるプラスミドの任意の1つ、例えば、ベクターpGEX-2Tのようなプラスミドであり得る。同様に、細胞は、通常の技術により選択することができ、それは、例えば、大腸菌であり得る。
【0097】
in vitroでの遺伝子組替え技術を使用する場合、上記方法のc)およびd)は、それぞれ、プラスミドの複製に適する反応媒体中にcDNAが挿入されているベクターを加える工程としての工程c')に、そして、前記ペプチドを前記適切な反応媒体中での前記cDNAの翻訳によって製造する工程としての工程d')に置き換える。文献、R. JagusおよびG. S. Beckler (1998)の「Overview of eukaryotic in vitro translation and expression systems」、 Current Protocols in Cell Biology 11.1.1〜11.1.13, 1989年、John Wiley & Sons, Inc.は、本発明で使用することができるin vitroでの方法を記載している。
【0098】
本発明によれば、有利なことに、前記標識化合物(CI)においては、c=1であり、Yは3-ピリジニル基である。
【0099】
化学式(CI)の化合物は、様々なファミリーに属することができ、最初のファミリーは「アルキルエーテル類」ファミリーと定義することができる。これらの化合物は、以下の式(CII):
【0100】
【化7】

【0101】
(式中、pは、2、3、4、5、6、7、8または9のような、1から10の整数である)に対応する。
【0102】
化学式(CII)の好ましい化合物は、以下から選択される。
【0103】
【化8】

【0104】
化学式(CI)の化合物の第二のファミリーは、「フェニルアルキルエーテル類」ファミリーと定義することができる。これらの化合物は、以下の式(CIII):
【0105】
【化9】

【0106】
(式中、qおよびrは、独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9のような、0から10の整数である)に対応する。
【0107】
化学式(CIII)の好ましい化合物は、以下から選択される。
【0108】
【化10】

【0109】
第三のファミリーは、以下の式(CIV):
【0110】
【化11】

【0111】
(式中、sは、2、3、4、5、6、7、8、9のような、1から10の整数である)に対応する化合物である。
【0112】
化学式(CIV)の好ましい化合物は、以下の化合物である。
【0113】
【化12】

【0114】
第四のファミリーは、以下の式(CV):
【0115】
【化13】

【0116】
(式中、tは、1、2、3、4、5、6、7、8、9のような、0から10の整数であり、Tは、-CH=CH-または-C-C-である)に対応する化合物である。
【0117】
化学式(CV)の好ましい化合物は、以下の化合物である。
【0118】
【化14】

【0119】
標識化合物(CI)は、
a) 化学式(CIa)の前駆体化合物:
【0120】
【化15】

【0121】
(式中、PR1およびPR2は、PR1およびPR2が両方とも(同時に)水素原子でないことを条件として、独立して、水素原子またはアミン官能基を保護する基を表し、または、その代わりに、PR1およびPR2は、窒素原子とともに、アミン官能基を保護する環を形成し、Gpは、フッ素-18原子で置換することができる脱離基を表し、β、Y、mおよびnは、前記で既に定義した意味を有する)
を、[18F]で標識したフッ素イオン源F-と接触させ、化学式(CIb)の化合物:
【0122】
【化16】

【0123】
を取得し、
b) アミン官能基を保護するPR1および/またはPR2を化合物(Ib)から除去し、化学式(Ic)の化合物:
【0124】
【化17】

【0125】
を取得し、
c) 化合物(CIc)を、アミノ基からマレイミド基を付与することができる試薬と反応させ、最終的な化合物(CI)の化合物を取得する方法によって、調製することができる。
【0126】
本発明による方法は、実施するのが単純で、確実であり、容易であり、容易にオートマチック化できる。当該方法は、3つの工程しか含まず、そのうちの1つは、極めて単純な脱保護工程である。
【0127】
当該方法の全体の時間は短い:例によれば、一般的に60から120分、好ましくは75から85分である。
【0128】
ハロゲンであるフッ素-18の導入は、特にピリジンのような複素環基上で行われることにより、高収率(例えば70から100%)で、極めて効率的な方法で行われる。
【0129】
精製した生成物のための完全な方法の最終収率は、極めて高く(例えば15%から25%)、合成終了時での「シントン」化合物の見込まれる量も非常に高い。
【0130】
化合物(CIa)においては、PR1およびPR2基は、保護基である場合、有機化学で知られている任意の保護基とすることができる。好ましくは、tert-ブトキシカルボニル(BOC)およびフルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)基から選択される。
【0131】
PR1およびPR2が、アミン官能基の窒素原子とともに後者を保護する基を形成する場合、保護基は例えばファタリミド基とすることができる。
【0132】
化合物(CIa)においては、Gp基は、フッ素-18原子によって置換することができる任意の脱離基とすることができる;Gpは、Yがアルキル基である場合、好ましくは、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、メシル、トシルおよびトリフレート基から選択される;そして、Yが芳香族基または複素環基である場合、Gpは、好ましくは、ハロゲン、アンモニウム塩、例えばトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルフォネート、およびニトロ基から選択される。
【0133】
工程a)において、[18F]で標識したフッ素イオン源は、前記フッ素イオンおよび大きなサイズの陽イオン、例えばルビジウムおよびテトラブチルアンモニウム、並びに、小さなサイズの陽イオン、例えばカリウム、ナトリウムおよびリチウムを含む。前記小さなサイズの陽イオンは、例えばクリプタンドまたはクラウンエーテル等によってトラップされ安定化され、前記クリプタンドまたはクラウンエーテルは用いる小さなサイズの陽イオンに適している。
【0134】
クリプタンドの例としては、例えばカリウムイオンをトラップする製品KRYPTOFIX(登録商標)K222:(4, 7, 13, 16 ,21, 24-ヘキサオキサ-1, 10-ジアザビシクロ[8. 8. 8]ヘキサコサン)がある。
【0135】
カウンターイオンまたは陽イオンは、任意の塩の形態にすることができ、例えばカリウムの場合は、K2CO3とすることができる。
【0136】
工程a)は、一般的に、溶媒内で行われ、当該溶媒は、DMSOのような任意の適切な溶媒とすることができる。
【0137】
工程a)は、この業界の当業者に知られた条件下で行うことができ、一般的に50から200℃の温度で、例えば145℃で、一般的に1から30分間、例えば4から6分間行うことができる。
【0138】
アミン官能基を保護する基を除去し、脱保護し、アミン基が遊離している化学式(CIc)を得るための工程b)は、任意の知られた脱保護方法により行うことができる。例えば、化合物(CIb)を、一般的に1から5、例えば2分間、CH2Cl2中のTFAに接触させることができる。
【0139】
TFAは、一般的に、受容基が酸性溶媒において除去される場合においてのみ(例えばPR1=BOCおよびPR2=Hの場合)使用されることは注目すべきである。
【0140】
工程c)においては、アミノ基からマレイミド基を付与することができる試薬は、任意の知られた化合物とすることができる。それゆえ、N-メトキシカルボニルマレイミドおよびスクシンイミドから選択することができる。
【0141】
工程c)は、この業界の当業者に知られた条件において行うことができ、例えばキシレン、THFのような溶媒中で、一般的に100から200℃、例えば190℃の温度で、1から20分間、例えば5分間反応を行うことができる。
【0142】
工程c)は、別の実施態様においては、二相性の混合液、例えばジオキサンおよび重炭酸ナトリウム水溶液中において、室温で3から15分間、例えば10分間反応を行うことができる;工程c)のこの実施態様により、混合液を加熱する必要なしに、より良い収率が得られる、室温で行うことができる利点がもたらされる。
【0143】
化合物(CIa)は、以下の式(CIIa)に対応することができる。
【0144】
【化18】

【0145】
化合物(CIIa)は、好ましくは、以下の式(CIIb)に対応することができる。
【0146】
【化19】

【0147】
化合物(CIa)は、別の実施態様においては、以下の式(CIIIa)に対応することができる。
【0148】
【化20】

【0149】
化合物(CIIIa)は、好ましくは、以下の式(CIIIb)に対応することができる。
【0150】
【化21】

【0151】
化合物(CIa)は、更に別の実施態様においては、以下の式(CIVa)に対応することができる。
【0152】
【化22】

【0153】
化合物(CVa)は、好ましくは、以下の式(CIVb)に対応することができる。
【0154】
【化23】

【0155】
別の実施態様としては、化合物(CIa)は、以下の式(CVa)に対応することができる。
【0156】
【化24】

【0157】
化合物(CVa)は、好ましくは、以下の式(CVb)に対応することができる。
【0158】
【化25】

【0159】
本発明は、また、本発明によるフッ素-18での標識ペプチドを合成する方法に関する。この合成方法は、前記の化合物(CI)を前記の配列(PI)を含むペプチドへと付加する工程を含む。この反応は、実際に、化合物(CI)のマレイミド官能基の二重結合とペプチドの遊離-SH官能基(特に、ペプチド配列(PI)を含むペプチドのシステインのチオール官能基)の間で行われる付加反応である。当該付加は、ペプチド配列(PI)の遊離-SH官能基上で(特に、前記のように、ペプチド配列のシステインのチオール官能基上で)直接行われる。この付加は、例えば、アセトニトリル/メタノール溶液中で、それぞれ2:1の容量比率で、または、このタイプの付加反応に対する任意の他の適した溶媒において行うことができる。当然に、用いる溶媒が、本発明のペプチド(PI)に影響を与えないように注意する必要がある。
【0160】
それゆえ、この方法は、出願前の標識方法と異なり、容易に実施できるという利点を有する。
【0161】
本発明のペプチドの活性を保ちながら、一般的に、本発明のペプチドの末端でまたは末端レベルで、前記配列(PI)と異なるペプチド配列の一部分上で(特に配列(PII)上で)、または表面残基上で、カップリングが生じる。
【0162】
本発明は、また、前記ペプチド配列(PI)を含む少なくとも2つのペプチド(それらは互いに連結している同じであっても異なっていてもよく、これらのペプチドのそれぞれまたは一方が本発明による標識化合物(CI)によって標識されている)を含む、リン脂質に対して親和性のある化学アセンブリを提供する。これらのアセンブリは、例えば、フレキシブルなペプチドリンカー、例えばポリグリシンを、本発明のペプチドのC末端残基と第2のペプチドのN末端残基との間になど、末端相互間に配置されているペプチドの数によって、挿入することにより調製することができる。このポリグリシンリンカーは、式-(Gly)n-を有することができ、nは、1から12までの範囲の例えば4より大きい整数である。
【0163】
これらのアセンブリは、また、有機化学またはタンパク質化学の通常の合成方法、およびさらに遺伝子工学によるin vivoまたはin vitroでの遺伝子組替えなど、例えば上記の方法の1つによって合成することができる。
【0164】
これらのアセンブリの目的は、特に、本発明のペプチドのリン脂質、例えば負に荷電したリン脂質に対する親和性を増大することである。
【0165】
本発明の標識ペプチドまたは標識アセンブリは、研究および診断の2つの目的に使用することができ、非常に多くの使用が存在する。
【0166】
本発明が特に対象とする病状は、(i)血液凝固異常、(ii)アポトーシスの通常の現象に加えて、化合物の作用、電離放射線等の物理的影響、または癌組織の形成または壊死と関連するような生物学的影響に続くアポトーシス現象、(iii)炎症性病変、および(iv)細胞と細胞外マトリックスの間の関係、特にコラーゲンと関連する異常である。
【0167】
本発明のペプチドは、加えて、従来技術の化合物と比較して極めて有利な利点を有している:画像化で使用することができる分子を開発することを狙いとした化学修飾のために、それらの折りたたみプロセスの可逆性により、高温であるがペプチドの化学的安定性には適する温度で取り扱うことが可能である。
【0168】
加えて、本発明のペプチドは、そのサイズが小さいために、他のタンパク質と容易に結び付いて多機能キメラタンパク質を形成するか、シグナル伝達リン脂質以外のエフェクターを用いて制御メカニズムを導入することができる。
【0169】
本発明によれば、化合物(CI)にカップリングさせた、本発明によるペプチドおよび化学アセンブリは、例えばin vivoまたはin vitroでの診断に使用することができる標識化合物を形成する。
【0170】
実際、本発明のペプチドは、細胞の表面に負の電荷の出現および血液中に小胞の放出を伴う病変、例えば、凝固障害、急性の炎症性病変など、およびアポトーシスを検出するために使用することができる。
【0171】
放射活性ハロゲンは、寿命が短い放射性成分であるフッ素-18である。その理由は、それが、適切な画像システムを使用して、全ての種類の発作の間の血栓症領域の場所、とりわけアポトーシスおよび炎症の病巣の場所を、「in vivo」で検出できるためである。
【0172】
フッ素-18で標識したペプチドまたはアセンブリは、望ましい応用法によれば、診断キットの形に有利にパッケージすることができる。したがって、本発明は、また、本発明による標識ペプチドまたはアセンブリを含む診断キットを提供する。
【0173】
本発明は、また、本発明の標識ペプチドまたは化学アセンブリを含むことを特徴とする、細胞の表面における負の電荷を分析および検出するためのキットを提供する。
【0174】
本発明は、また、本発明の標識ペプチドまたは化学アセンブリを含むことを特徴とする、血液中の小胞を分析および検出するためのキットを提供する。
【0175】
それゆえ、本発明によるフッ素-18で標識したペプチドは、細胞の表面に負に荷電した脂質を暴露する中心および/または血液への小胞の放出の検出を意図した製品の製造に使用することができる。化合物(CI)は18Fを含むので、前記で特定したように、この検出は、陽電子放出断層撮影法(PET)により得られるシンチグラフ画像により検出することができる。
【0176】
「PET」に関する使用法においては、フッ素-18を含む本発明による化合物(CI)および標識ペプチドは、別の放射活性なハロゲン、例えばヨウ素で標識した化合物と比較して多くの利点を有している。
【0177】
実際、PETに使用できる、唯一の陽電子を放出するヨウ素同位体は、ヨウ素-124である。
【0178】
しかしながら、まだ少量で調製されている(F-18のキューリーに対して数mCi)。そして、調製するのが困難である。最後に、ヨウ素-124は、純度が高い陽電子放出体ではなく、ベータ+放出を25%減少し、電子捕獲を75%減少させる;0.603 MeV (62%)から2.75 MeV (1%)の範囲の多くのガンマ線を有する。
【0179】
本発明は、加えて、例えば陽電子放出断層撮影法(PET)による分析および検出のための組成物、または、前記フッ素-18で標識したペプチドおよび製薬上許容できるビヒクルを含む診断用の組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0180】
本発明の他の利点および特徴は、付属の図面を参照しながらの以下の限定されない説明のための実施例を読むことによりさらに明らかとなろう。
【0181】
配列表の簡単な説明
- 付属の配列番号1〜配列番号14は、本発明のペプチド配列(PI)および(PII)を含むペプチドの例である。
【0182】
特に、配列番号11、配列番号13および配列番号14は、本発明のペプチドの配列を含むペプチドの例であり、そこにはカルシウムおよびリン脂質に対する親和性を増大させるために変異が導入されている。
【実施例】
【0183】
(実施例1)
遺伝子組替えによる合成: 本発明の配列番号1〜配列番号12のペプチドの発現および精製
配列番号1〜配列番号14を、F. Cordier-Ochsenbein et al., J. Mol. Biol. 279, 1177〜1185に記載されているものと同じ手順により、大腸菌の過剰発現により調製した。
【0184】
これら配列の各々のcDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて調製した。それらを、ベクターpGEX-2T (Smith & Johnson, 1998)中に挿入した。図2は、そのcDNAのベクター中への挿入を説明する図である。PCRにより誘導される変異が存在しないことは、配列を求めることによって確認した。
【0185】
ペプチドの製造は、前記の発現ベクターを含有する大腸菌の菌株BL21を用いて行う。イソプロピルチオガラクトピラノシド(IPTG、100μm)により、600nmにおいて1の光学濃度まで誘導した後、プラトーに到達するまで、すなわち約3時間培養を続ける。遠心分離の後、その細菌を、50mMのトリス-HCl、pH8、10mMのEDTA、500mMのNaCl、5%(v/v)のグリセロール、1% (v/v)のTriton X100、1mMのジチオトレイトール(DTT)、1mMのフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)および20μg/mlのアプロチニンを含む溶菌バッファー中に再懸濁させる。
【0186】
精製は、次の方法で行った:超音波処理および10000gでの遠心分離の後、可溶性タンパク質を含有する上澄み液を、グルタチオン/アガロースビーズと共に培養し、これらのビーズにGSTドメイン融合タンパクを特異的に結合させる。1MのNaCl、50mMのトリス-HClを含有するpH8の溶液で洗浄した後、培養液1リットル当り70ユニットのトロンビンを加えて配列を溶離する。
【0187】
配列を、次に、Pharmacia社により提供される16/10タイプのproRPC(商標)カラムで、FPLCシステムを使用し、0.1%(v/v)のトリフルオロ酢酸(TFA)を含有するMillipore(商標)品質の水と0.1%のTFAを含有するアセトニトリルとのライナーグラジエントで精製する。流速は、2.5ml/分に調節する。配列は、次いで凍結乾燥する。
【0188】
各ペプチドの最終的な収率は、培養液1リットル当り約8mgの配列である。
【0189】
(実施例2)
本発明のペプチドの化学合成例
この実施例において、本発明のペプチドは、Applied Biosystemsの433A型自動ペプチド合成装置、およびアミノ酸のα-アミノ官能基の一時的な保護のためにフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基を使用するFmoc化学を用いる固相化学合成により製造した。
【0190】
このFmoc方法において、アミノ酸側鎖の副反応を防止するために使用した保護基は、Ser、ThrおよびTyr残基に対してはtert-ブチルエーテル(tBu); AspおよびGluに対しては、tert-ブチルエステル(OtBu); Gln、Asn、CysおよびHisに対しては、トリチル(Trt); Lysに対しては、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc); そしてArgに対しては、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc)である。
【0191】
カップリング反応は、樹脂(0.1mmol)に対して10当量過剰のアミノ酸(1mmol)を用いて行う。保護されているアミノ酸を、1mlのN-メチルピロリドン(NMP)、および、1mlの溶媒NMP中の1Mの1-N-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)溶液に溶解する。1mlの1MのN,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)溶液を次に加える。40〜50分間活性化した後、形成された活性エステルを、樹脂を含有する反応器に移す。その移動および続くカップリングの工程の前に、樹脂は、NMP中のピペラジンの20%溶液でそのFmoc基について脱保護をする。約5分から10分後過剰のピペラジンをMNPで洗浄して除去する。
【0192】
脱保護の間、305nmにおいてジベンゾフルベン-ピペラジン付加物を検出することにより、合成の正確な進行をモニターすることが可能である。実際、付加物の定量化により、Fmoc基の脱保護の有効性、したがって、組み込まれた最後のアミノ酸のカップリングの有効性を判断することが可能となる。
【0193】
樹脂と側鎖に存在する保護基との開裂は、樹脂に連結されているペプチドをトリフルオロ酢酸(TFA)で処理することにより同時に行った。その開裂を行う前に樹脂をジクロロメタン(DCM)で数回洗浄し、最後に乾燥した。開裂で使用した試薬は、81.5%のTFAおよびフェノールスカベンジャー(5%)、水(5%)、エタンジチオール(ペプチドがシステインを含むとき2.5%)およびトリイソプロピルシラン(1%)を含有する酸混合物である。樹脂をこの混合物で、室温において樹脂のグラム当り100mlの溶液の割合で3時間撹拌して、処理した。溶液中の遊離のペプチドを濾過して回収した。そのペプチドを次いで沈殿させ、冷たい条件下でジイソプロピルエーテル中で洗浄し20%酢酸に溶解して凍結乾燥した。
【0194】
凍結乾燥後回収したペプチド(合成により得られたクルードな物質)は、還元された形態、すなわち、鎖間のジスルフィドの架橋が形成されていない形態である。
【0195】
そのペプチドを、次に、Pharmacia社により提供される16/10タイプのproRPC(商標)カラムで、FPLCシステムを用いて0.1容量%のトリフルオロ酢酸(TFA)を含有するMillipore(商標)品質の水と0.1%のTFAを含有するアセトニトリルとのライナーグラジエントで精製する。流速は、2.5ml/分に調節する。そのペプチドは、次いで凍結乾燥する。
【0196】
得られた生成物を質量分析法により分析した。
【0197】
(実施例3)
配列番号1〜配列番号14の安定性
この実施例は、本発明のペプチドが安定するように折りたたまれたタンパク質を構成することを示す。
【0198】
ブランクの組成(対照):
50mMトリス、150mM NaCl、1mM DTT、pH8 10μl
H2O 990μl
pH8に調整
【0199】
試料の組成:
試料: 150mM NaClを含有し、pH8、およその濃度:200mg/mlの50mMのトリスバッファー中で精製したドメイン
ドメイン: 10μl、すなわち、300μMの最終濃度
H2O: 990μl
pH測定値 7.8
【0200】
ハードウェアおよびソフトウェアの構成:
Jobin Yvon CD6 デバイス
CD-max ソフトウェア
測定キュベットの光学距離: 1cm
【0201】
付属の図1は、200nmの波長での遠紫外における円偏光二色性シグナルを用いて測定した温度の関数としてのAFIMのらせん度を表す。
【0202】
この図において、14℃におけるシグナルの値は、ペプチドのらせん含量の100%とみなされる。ペプチドの熱変性は、明らかに協同的であって、低温において、特に37℃において、タンパク質は、適切に折りたたまれて増大した安定性を示すことが示された。
【0203】
(実施例4)
本発明の2つのペプチドのアセンブリ
前記の実施例1に記載した方法を用いて、配列番号1-(Gly)4-配列番号1のペプチド配列を合成する。
【0204】
アセンブリの最終的収率は、培養液1リットル当り約14mgである。
【0205】
このアセンブリは、例えば以下に示す、ペプチドのみの場合と同様の方法で、本発明による放射活性なハロゲンで標識することができる。
【0206】
(実施例5)
本発明の標識化合物の合成
この実施例において、本発明による標識化合物、1-[3-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシ)プロピル]ピロール-2, 5-ジオンの調製を記載する。
【0207】
a) 複合体K[18F]F-K222
ターゲット水[18O]を回収しリサイクルするために、陰イオン交換樹脂(AG1×8, from Bio-Rad, 100-200 mesh)を通過させる。その後、フッ素[18F]イオンを樹脂から、1mlのK2CO3の水溶性溶液を用いて、4.5mg/mlで溶出させる。
【0208】
11.0から15.0mgのKRYPTOFIX(登録商標)K222(4, 7, 13, 16 ,21, 24-ヘキサオキサ-1, 10-ジアザビシクロ[8. 8. 8]ヘキサコサン)を添加後、得られた溶液を、その後、窒素環流下で10分間、145-150℃で乾燥するまで緩やかに濃縮し、純粋なK[18F]F-K222複合体を、白い半固体の残留物の形態で得る。
【0209】
b) 1-[3-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシ)プロピル]ピロール-2, 5-ジオン
4.0から6.0mgの「ニトロ」マーカー前駆体([3-(2-ニトロピリジン-3-イルオキシ)プロピル]カルバミン酸のtert-ブチルエステル)を含む、調製したばかりの蒸留DMSO(600μl)を、乾燥させたK[18F]F-K222複合体を含むチューブに直接加える。その後、チューブ(シールをしない)をヒートブロック内に置く(4分間145℃)。その後、チューブをアイス/ウォーターバスを用いて冷却し、残った放射活性を測定する。
【0210】
容器に入れた最初の活性の85%から95%は、まだ存在する。色が暗色である得られた混合物は、その後、暗色の反応混合物をラジオクロマトグラフィーによって分析する。導入収率をTLCによるラジオクロマトグラムから求め、18Fフッ素-18の全活性に対する、[3-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシ)プロピル]カルバミン酸のtert-ブチルエステルの比率によって定義する(SiO2-TLC; 溶媒:EtOAc; Rf:Rf:0.75およびRf:フッ素[18F]イオン:0.0)。反応混合液を1mlの水で希釈し、C18 Sep-pakカートリッジ(Waters)に通す。チューブを1mlの水で二回リンスし、これもカートリッジへ通してカートリッジ内で希釈反応混合液に加える。
【0211】
その後、全体をカートリッジに通す。カートリッジを3mlの水で洗い、0.5分間、窒素を環流させることによって部分的に乾燥させる。
【0212】
3mlのジクロロメタンを用いて、[3-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシ)プロピル]カルバミン酸のtert-ブチルエステル誘導体をカートリッジから、0.1mlのTFAを含む反応フラスコへと溶出させる。1mlのジクロロメタンを二回用いてカートリッジを洗い、前記[18F]標識誘導体を完全に移す(フッ素化工程における放射活性の全量のうち5%がカートリッジ内に残る)。Sep-pakの溶出後についても、溶出した全放射活性に対するCH2Cl2のカウント値の比率によって、導入収率を確認する(DMSO/H2O+CH2Cl2)。得られたCH2Cl2/TFA溶液(50/1, V/V)を、穏やかな窒素環流下で、4から6分間(65-75℃)、乾燥するまで濃縮する。脱保護収率を定量する:ラジオクロマトグラフィーによって、BOCで保護された前記化合物は、全く検出することができない。前記残留物を2mlのCH2Cl2で再溶解し、TFAの量を最初にするために、再度、乾燥するまで濃縮する(穏やかな窒素環流下で、4から6分間、65-75℃で)。その後、残留物を、25mgのN-メトキシカルボニルマレイミドを含む0.5mlのキシレンで希釈する。その後、容器を密閉し、190℃で5分間過熱させ(強い環流)、その後、アイス-ウォーターバスを用いて2分間冷却する。その後、反応混合液をセミプレパラティブHPLCカラムにアプライする。イソクラティック溶出(溶出液:ヘプタン/EtOAc:50/50;流速:6.0ml/分)により、純粋な標識1-[3-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシ)プロピル]ピロール-2, 5-ジオンが、リテンションタイムが7.5から8.0分で得られる。
【0213】
一般的に、サイクロトロンの[18F]F-生成バッチに由来する550-650mCiから、75から85分間で、60から70mCiの純粋な標識1-[3-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシ)プロピル]ピロール-2, 5-ジオンが得ることができる。
【0214】
(実施例5a)
フッ素-18で標識した化合物、1-[3-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシ)プロピル]ピロール-2, 5-ジオンは、また、標識前駆体として、「ニトロ」化合物([3-(2-ニトロピリジン-3-イルオキシ)プロピル]カルバミン酸のtert-ブチルエステル)を使用することにより、調製の最後の部分(工程c)を修飾した以下の方法で(ジオキサンおよび重炭酸ナトリウム水溶液の二相性の混合液内で工程c)を行うという変法)、実施例5で記載した方法の工程a)およびb)を繰り返すことによっても調製することができる。
【0215】
アミン官能基の脱保護後(TFA/CH2Cl2)、濃縮乾固して得られた残渣を、25mgのN-メトキシカルボニルマレイミドを含む0.250mlのジオキサンに溶かす。この溶液に、0.750mlの飽和水溶性重炭酸ナトリウム水溶液を加え、調製液を室温で10分間ボルテックスに供する。その後、反応混合液を1mlの水で希釈し、C18 Sep-pakカートリッジ(Waters)にアプライする。フラスコを1mlの水で二回リンスし、カートリッジに移して、希釈した反応混合液に加える。最終的に、8mlの水を再度、カートリッジ内の希釈した反応混合液に加える。その後、全体をカートリッジに通す。カートリッジを3mlの水で洗い、窒素を環流させて、0.5分間、部分的に乾燥させる。3mlのジクロロメタンで、フッ素-18で標識した誘導体(1-[3-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシ)プロピル]ピロール-2, 5-ジオン)を溶出し、新しい空のフラスコに溶出した。1mlのジクロロメタンを二回用いてカートリッジを洗い、完全に、前記の[18F]標識誘導体を移動させる。前記の[18F]標識誘導体を含む溶液を濃縮(65-75℃、3から5分間、窒素環流下)して、約1mlにして、セミプレパラティブHPLCカラムへとアプライする。生成は、実施例5に記載した方法と同じである。
【0216】
(実施例5b)
フッ素-18で標識した化合物、1-[3-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシ)プロピル]ピロール-2, 5-ジオンは、また、標識前駆体として、化合物「トリメチルアンモニウム トリフルオロメタンスルフォネート」([3-(3-tert-ブトキシカルボニルアミノプロポキシ)ピリジン-2-イル]トリメチルアンモニウム トリフルオロメタンスルフォネート)を使用することによって、実施例5または5bで記載した方法の工程a)およびb)を繰り返すことによっても調製することができる。
【0217】
(実施例6)
フルオレセインによる本発明のペプチドの標識
この実施例は、以下の実施例7と同じく、本発明のペプチドによるアポトーシス部位の認識効率を求めることを意図したものである。
【0218】
以下の実施例において本発明のペプチドは、AFIM-SHと呼ぶ。それは、配列(PI)で定義したペプチドの配列を有する。配列番号1〜配列番号14を試験する。
【0219】
フルオレセインは、それを488nmの波長で励起すると525nmの波長の緑色の蛍光を発する。その緑色の光の放出をカメラまたは光電子増倍管により検出する。AFIMのフルオレセインへのこのカップリングにより、小動物のin vitroおよびin vivo両方でのPSを示す細胞の存在を検出することが可能となる。
【0220】
本発明によれば、脂質膜に結合する機能に悪影響を及ぼさないという条件で、表面残基のレベルで、AFIMの表面(表面残基)に存在する任意のアミノ酸の代わりに導入される任意のシステイン上でAFIMを標識することができる。かくして修飾されたAFIMは、以後AFIM-SHと称する。
【0221】
フルオレセインのカップリングは、下に示すマレイミド官能基を用いてAFIM上に官能基SHにより行う。
【0222】
フルオレセインはマレイミド官能基を用いて、配列の1つ以上のシステインと共有結合する。
【0223】
一般的な標識スキーム(スキーム1):
【0224】
【化26】

【0225】
標識は、すべて20℃より低い温度で行う。
【0226】
AFIM-SHは、NaCl(150mM)を含有し、pH=7.4のトリスバッファー(50mM)中の溶液に存在する。同じバッファー中の5当量のDTTの溶液をそのAFIM-SH溶液に加える。その媒体を30分間撹拌する。
【0227】
暗所で、フルオレセイン(AFIM-SHの5当量+DTTの2等量)を計量し、DMFに溶解し、上の溶液に加える。その混合液全体を撹拌し、反応を30分間継続する。その媒体を次に、pH=7.4のPBSバッファー(20mMのホスファート、150mM NaCl)の150ml中に希釈し、YM3(商標)メンブレンにより限外濾過する。試料を再希釈し、数回限外濾過にかけて濾液のUVスペクトルを記録する。
【0228】
濾液中にフルオレセイン(490nmのピーク)がもはや存在しなくなったら、試料を2〜3mlまで濃縮し、4℃に冷やして貯蔵する。
【0229】
AFIM-フルオレセインの生成物は、以下の実施例7に記載の方法により、in vitroではフローサイトメトリーにより、そしてin vivoでは動物中のアポトーシスを起こした細胞を検出するために使用した。
【0230】
(実施例7)
実施例6のAFIM-フルオレセイン生成物によるアポトーシス細胞の標識の結果
ラットにおける心臓発作後のアポトーシスを起こした心臓細胞の画像化。
【0231】
Circulation Res. 1996, 79, 946〜956に発表された論文に記載されているようにラットにおけるアポトーシスのモデルを使用する。
【0232】
簡単にのべると、4匹のラット(それぞれ300gの重量)を、麻酔、挿管および酸素供給した。冠状動脈の一時的な閉塞により心筋虚血が引き起こされた。30分間の閉塞の後その冠状動脈を、1時間再灌流させた。
【0233】
その再灌流時間の終わりに、実施例6のAFIM-フルオレセインペプチドを、2匹のラットのそれぞれに対してペプチドを200μgの割合で合計1mlの容積を頚静脈に注射した。
【0234】
比較として、200μgのアネキシン5-フルオレセイン(従来技術の化合物)を他の2匹のラットのそれぞれに対して同一条件で合計1mlの容積を注射した。
【0235】
ラットは、60分後に犠牲にした。
【0236】
この研究のために、心臓、肺、腎臓、肝臓および脳の5つの臓器を保存した。それらは、ホルマリンの存在中で洗浄してリンスした。その臓器を次に脱水し、パラフィンに約12時間浸漬し、次いで7μmの切片を調製した。
【0237】
いくつかの切片は、ヘマトキシリンで染色した。切片は蛍光顕微鏡のもとで調べ、ヘマトキシリンで染色した隣接する切片は可視光顕微鏡で調べた。ヘマトキシリンで染色した切片(付属の図1および図2にそれぞれH1およびH2と標記されている)は、組織の構造を視覚化することを可能にし、蛍光顕微鏡は、AFIM-フルオレセイン(AFIM-F)によるかまたはアネキシン5-フルオレセイン(A5-F)による標識を検出することを可能にする。
【0238】
付属の図1は、アポトーシスを起こした心臓について得られた画像を示し、付属の図2は、腎臓について得られた画像を示す。
【0239】
図1は、アポトーシス細胞のレベルでの、マーカーの蓄積に対応する過剰のフルオレセインをはっきりと示している。コントラストは、本発明のAFIMによる方が従来技術のアネキシン5によるよりも視覚的に良好である。
【0240】
図2は、腎臓の標識を示し、生成物の部分脱離と関連している。AFIMの場合、糸球体は、標識されて出現しておらず、尿細管のみが部分的に標識されている。他方、従来技術のアネキシン5の場合、腎組織全体が強く標識されており、それはこのタンパク質について見られる腎毒性と一致している。
【0241】
この実施例で得られた結果は、本発明のペプチドの細胞標識についての大きな特異性を実証している。
【0242】
AFIMペプチド、例えば配列番号1〜10、のフルオレセインによる標識は、それ故、プログラムされた細胞死(アポトーシス)、血液凝固または炎症性反応等の生理病理学的過程に伴って細胞の外面に出現するホスファチジルセリン(PS)を効果的に検出することを可能にする。
【0243】
(実施例8)
標識化合物(CI)による配列(PII)を含むペプチドの、本発明の方法による標識
以下の実施例において本発明のペプチドは、AFIM-SHと呼ぶ。それは、配列(PI)で定義したペプチドの配列を有する。付属の配列表の配列番号1〜配列番号14を試験する。実施例5(5aまたは5b)で調製したシントン18Fと呼ばれる標識化合物を、当該実施例で用いる。
【0244】
システインJのSH官能基でシントン18Fに特異的に、AFIMをカップリングさせる。
【0245】
標識のための一般的なスキームを以下に要約する。
【0246】
【化27】

【0247】
AFIM-SHは、NaCl(150mM)を含有し、pH=7.4のトリスバッファー(50mM)中の溶液に存在する。シントン18Fをアセトニトリル-メタノール(2/1 V/V)混合液に溶解し、AFIM-SHを加える。全体を攪拌し、反応を室温で3分間続ける。
【0248】
その後、反応液を、DMFで懸濁したマレイミドビーズのカラムに移し、PBSバッファーで溶出する。
【0249】
反応液を排除ゲルカラムのHPLCによって精製し、PBSバッファー(20mM KH2PO4, 150mMNaCl, pH=7.4)で溶出する。
【0250】
精製し、生成物をラットの静脈内に注入する。
【図面の簡単な説明】
【0251】
【図1】図1は、アポトーシスを起こした心臓の組織切片から得た顕微鏡写真である。この切片は、本発明のAFIM-フルオレセイン(AFIM-F)ペプチドにより染色(左の画像)、アネキシン5-フルオレセイン(A5-F)(従来技術の化合物)により染色(右の画像)して入手した (蛍光顕微鏡、倍率40倍)。中央の画像は、ヘマトキシリンにより入手した(可視光線顕微鏡、倍率40倍)。上と下の写真は、異なる心臓部分を示す。
【図2】図2は、アポトーシスを起こした腎臓の組織切片から得た顕微鏡写真である。この切片は、本発明のAFIM-フルオレセイン(AFIM-F)ペプチドにより染色(左の画像)、アネキシン5-フルオレセイン(A5-F)(従来技術の化合物)により染色(右の画像)して入手した (蛍光顕微鏡、倍率40倍)。
【図3】本発明によるペプチドの、温度℃「t」の関数としてのらせん度「H」(%として)を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素-18で標識したペプチドであって、以下のペプチド配列(PI):
J1-J2-J3-J4-J5-J6-Z7-U8-J9-J10-Ull-Arg-J13-J14-U15-Lys-Gly-X18-Gly-Thr-J2l-Glu-J23-J24-U25-J26-J27-J28-U29-J30-J31-Arg-J33-J34-J35-J36-B37-J38-J39-U40-J41-J42-J43-U44-J45-J46-J47-J48-J49-Arg-J51-U52-J53-J54-Asp-U56-Lys-Ser-Z59-Leu-J61-J62-J63-J64-Z65-J66-J67-U68-J69-J70-J71-U72-J73-J74-J75 (PI)
(式中、J、Z、U、XおよびBは、アミノ酸を表し、
- アミノ酸Jは、互いに独立して、少なくともそれらの50%が、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Lys、Orn、Pro、Ser、ThrおよびTyrから選択される極性残基であるように天然アミノ酸またはそれらの誘導体から選択され、
- アミノ酸Uは、Ala、Cys、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、TyrおよびValから選択され、
- アミノ酸X18は、配列の他のアミノ酸とは独立して、Ala、Asn、Cys、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、TyrおよびValから選択され、
- アミノ酸B37は、配列の他のアミノ酸とは独立して、Arg、Ala、Cys、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、TyrおよびValから選択され、
- アミノ酸Z7は、配列の他のアミノ酸とは独立して、AspおよびGluから選択され、
- アミノ酸Z59およびZ65は、独立して、Glu、Asp、LysおよびArgから選択され、
J、Z、U、XおよびBの上付き文字は、前記配列におけるこれらのアミノ酸の位置を表す)を含むことを特徴とし、
前記ペプチドが、-SH官能基上に直接的にまたは間接的に、化学式:
【化1】

[式中、
- mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のような、0から10の整数を表し、
- nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のような、0から10の整数を表し、
- Yは、アルキル基、イミダゾール、ピラゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、シノリニル、キナゾリニル、キノキサリニルおよびプリニル基から選択される単環または二環式の複素環基から選択される基を表し、
Yは、任意に1以上の置換基で置換することができ、これら置換基のそれぞれは、独立して、水素、(非放射活性の)ハロゲン、フェニル、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-6アルキル)アミノ、モノ-またはジ(アリール)アミノ、チオ、C1-6アルキルチオ、アリールチオ、ホルミル、C1-6アルキルカルボニル、アリールカルボニル、カルボニル、C1-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C1-6アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニルおよびトリフルオロメチル基から選択され、
- βは、以下の式;
【化2】

{式中、
- a、b、c、d、e、f、gは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9のような、0から10の整数を表し、
- γ、VおよびWは、それぞれ独立して、-NR1-、-O-、-S-、
【化3】

、エチニル、-CR1=CR2、-(C=O)-、-(C=S)-、-C(=NR1)-、-C(=O)O-、-(C=S)S-、-C(=NR1)NR2-、-CR1R2-、-CR1OR2-、-CR1NR2R3-
(式中、R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、ハロゲン、フェニル、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-6アルキル)アミノ、モノ-またはジ(アリール)アミノ、チオ、C1-6アルキルチオ、アリールチオ、ホルミル、C1-6アルキルカルボニル、アリールカルボニル、カルボニル、(C1-6)アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C1-6アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニルおよびトリフルオロメチル基から選択される)を表す}を表す]の化合物(CI)で標識されているペプチド。
【請求項2】
前記アミノ酸Jが、それらの少なくとも50%が、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Lys、Pro、SerおよびThrから選択される極性の残基であるように、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、TyrおよびValから互いに独立して選択される、請求項1に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項3】
前記配列(PI)のアミノ酸UおよびBが、以下の表1:
【表1】

に表された例a)からj)の1つから選択される、請求項1に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項4】
前記ペプチド配列が、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13および14から選択される、請求項1に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項5】
N末端に結合して、Gly-Ser-CysおよびGly-Cys-Serから選択されるアミノ酸配列を更に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項6】
N末端に結合して、Gly-Ser-Gly-Cys、Gly-Cys-Gly-Ser-およびGly-Cys-Gly-Cysから選択されるアミノ酸配列を更に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドの遊離の-SH官能基、例えば前記ペプチドのシステインのチオール官能基、と前記化合物(CI)のマレイミド官能基をカップリングさせることによる、前記ペプチドを前記化合物(CI)で直接的に標識する、請求項1から6のいずれか一項に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項8】
前記ペプチド配列(PI)の遊離の-SH官能基、例えば前記ペプチド配列のシステインのチオール官能基、と前記化合物(CI)のマレイミド官能基をカップリングさせることによる、前記ペプチドを前記化合物(CI)で直接的に標識する、請求項1から6のいずれか一項に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項9】
前記化学式(CI)の化合物において、n=1およびYが3-ピリジニル基である、請求項1から6のいずれか一項に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項10】
前記化合物(CI)が、化学式(CII):
【化4】

(式中、pは、2、3、4、5、6、7、8または9のような、1から10の整数である)に対応する、請求項9に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項11】
前記化学式(CII)の化合物が:
- 1-[2-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシ)エチル]ピロール-2, 5-ジオン;
- 1-[4-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシ)ブチル]ピロール-2, 5-ジオン;
- 1-[5-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシ)ペンチル]ピロール-2, 5-ジオン;
- 1-[6-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシ)ヘキシル]ピロール-2, 5-ジオン;
- 1-[(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシ)メチル]ピロール-2, 5-ジオン;
- 1-[3-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシ)プロピル]ピロール-2, 5-ジオン;
から選択される、請求項10に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項12】
化学式(CI)の化合物が、化学式(CIII):
【化5】

(式中、qおよびrは、独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9のような、0から10の整数である)に対応する、請求項9に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項13】
前記化学式(CIII)の化合物が:
- 1-{4-[2-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシ)エチル]フェニル}ピロール-2, 5-ジオン;
- 1-[4-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシメチル)フェニル]ピロール-2, 5-ジオン;
- 1-[4-(2-[18F]フルオロピリジン-3-イルオキシメチル)ベンジル]ピロール-2, 5-ジオン;
から選択される、請求項12に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項14】
前記化学式(CI)の化合物が、化学式(CIV):
【化6】

に対応する、請求項9に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項15】
前記化学式(CIV)の化合物が、1-[3-(6-[18F]フルオロピリジン-3-イル)プロピル]ピロール-2, 5-ジオンである、請求項14に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項16】
前記化学式(CI)の化合物が、化学式(CV):
【化7】

(式中、tは、1、2、3、4、5、6、7、8、9のような、0から10の整数であり、Tは、-CH=CH-または
【化8】

である)に対応する化合物である、請求項9に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項17】
前記化合物(CV)が:
- 1-[3-(6-[18F]フルオロピリジン-3-イル)アリル]ピロール-2, 5-ジオン;
- 1-[3-(6-[18F]フルオロピリジン-3-イル)プロプ-2-イニル]ピロール-2, 5-ジオン;
から選択される、請求項16に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項18】
前記ペプチド配列が、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13および14から選択され、
前記化合物(CI)が:
- 1-[3-(6-[18F]フルオロピリジン-3-イル)アリル]ピロール-2, 5-ジオン;
- 1-[3-(6-[18F]フルオロピリジン-3-イル)プロプ-2-イニル]ピロール-2, 5-ジオン;
から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載のフッ素-18で標識したペプチド。
【請求項19】
請求項1から6のいずれか一項に記載の放射活性ハロゲンで標識されたペプチドの合成方法であって、
化学式:
【化9】

[式中、
- mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のような、0から10の整数を表し、
- nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のような、0から10の整数を表し、
- Yは、アルキル基、イミダゾール、ピラゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、シノリニル、キナゾリニル、キノキサリニルおよびプリニル基から選択される単環または二環式の複素環基から選択される基を表し、
Yは、任意に1以上の置換基で置換することができ、これら置換基のそれぞれは、独立して、水素、ハロゲン、フェニル、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-6アルキル)アミノ、モノ-またはジ(アリール)アミノ、チオ、C1-6アルキルチオ、アリールチオ、ホルミル、C1-6アルキルカルボニル、アリールカルボニル、カルボニル、C1-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C1-6アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニルおよびトリフルオロメチル基から選択され、
- βは、以下の式;
【化10】

{式中、
- a、b、c、d、e、f、gは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9のような、0から10の整数を表し、
- γ、VおよびWは、それぞれ独立して、-NR1-、-O-、-S-、
【化11】

、エチニル、-CR1=CR2、-(C=O)-、-(C=S)-、-C(=NR1)-、-C(=O)O-、-(C=S)S-、-C(=NR1)NR2-、-CR1R2-、-CR1OR2-、-CR1NR2R3-
(式中、R1、R2、R3およびR4は、独立して、水素、ハロゲン、フェニル、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、モノ-またはジ(C1-6アルキル)アミノ、モノ-またはジ(アリール)アミノ、チオ、C1-6アルキルチオ、アリールチオ、ホルミル、C1-6アルキルカルボニル、アリールカルボニル、カルボニル、(C1-6)アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C1-6アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニルおよびトリフルオロメチル基から選択される)を表す}を表す]の化合物(CI)を、直接的にまたは間接的に、ペプチドの-SH官能基上に付加する工程を含む方法。
【請求項20】
前記付加を、前記ペプチド配列(PI)の遊離の-SH官能基、例えば、前記ペプチド配列のシステインのチオール官能基上で直接行う、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から18のいずれか一項に記載のフッ素-18で標識したペプチドを含むことを特徴とする、細胞表面の負電荷を分析および検出するためのキット。
【請求項22】
請求項1から18のいずれか一項に記載のフッ素-18で標識したペプチドを含む診断キット。
【請求項23】
請求項1から18のいずれか一項に記載のフッ素-18で標識したペプチドを含むことを特徴とする、血液中の小胞を分析および検出するためのキット。
【請求項24】
細胞表面において負に荷電した脂質を暴露する中心および/または血液への小胞の放出を検出することを意図した製品の製造のための、請求項1から18のいずれか一項に記載のフッ素-18で標識したペプチドの使用。
【請求項25】
前記検出が、陽電子放出断層撮影法(PET)により得られるシンチグラフ画像による検出である、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
請求項1から18のいずれか一項に記載のフッ素-18で標識したペプチドおよび製薬上許容できるビヒクルを有する、例えば陽電子放出断層撮影法(PET)によって分析および検出するための組成物。
【請求項27】
請求項1から18のいずれか一項に記載のフッ素-18で標識したペプチドおよび製薬上許容できるビヒクルを含む、診断のための組成物。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−510577(P2006−510577A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−516900(P2004−516900)
【出願日】平成15年6月30日(2003.6.30)
【国際出願番号】PCT/FR2003/002027
【国際公開番号】WO2004/003016
【国際公開日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【出願人】(505002200)ユニヴェルシテ・ピエール・エ・マリー・キュリー(パリ・シース) (3)
【Fターム(参考)】