説明

リン酸の除去方法、リン酸の除去装置および回収リンの再利用方法

【課題】富栄養化水中に含まれるリン酸を効率よく回収して安価に富栄養化水の浄化を行えるとともに、回収したリンを有効に再利用できるようにする。
【解決手段】成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有し、かつ、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュ11が充填された除去装置12を処理対象水域15の系外に設置し、処理対象水域15の富栄養化水を除去装置12中に通水して該富栄養化水中に含まれるリン酸を除去するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、富栄養化水中に含まれるリン酸の除去方法、リン酸の除去装置および回収リンの再利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、湖沼・河川その他の閉鎖性水域における水質汚染要因の一つに、富栄養化水中に含まれるリンの溶出がある。このようなリンを確実に吸着させて富栄養化水を浄化する方法の一つとして、富栄養化水中にゼオライトなどの吸着材を投入し、富栄養化成分を吸着させた後、浚渫して水域系外に排出させる方法がある(例えば、特許文献1参照)。また、石炭灰の造粒物を湖沼などの浄化対象水域中の底部に敷設させリンを吸着させる方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−310373号公報
【特許文献2】特開2004−113885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に示されるように、ゼオライトの投入や石炭灰造粒物の底部への敷設によるものは、リンの吸着容量に達した時点で吸着効果がなくなるため、ゼオライトや石炭灰造粒物などの吸着剤自体を浚渫して除去する必要があり、人件費等のコストがかかるという欠点がある。また、富栄養化水に対するリンの浄化のみを考慮したものであって、効率のよいリンの回収並びに回収したリンの有効な再利用については何ら言及されていない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、富栄養化水中に含まれるリン酸を効率よく回収して安価に富栄養化水の浄化を行うことができるとともに、回収したリンを有効に再利用することができるリン酸の除去方法、リン酸の除去装置および回収リンの再利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るリン酸の除去方法は、成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有するフライアッシュに、処理対象となる富栄養化水を供給して該富栄養化水中に含まれるリン酸を除去するようにしたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るリン酸の除去方法は、成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有するフライアッシュが充填された除去装置を処理対象水域の系外に設置し、前記処理対象水域の富栄養化水を前記除去装置中に通水して該富栄養化水中に含まれるリン酸を除去するようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るリン酸の除去方法は、上記発明において、富栄養化水中に含まれるリン酸が、フライアッシュに含有された酸化カルシウムのカルシウムイオンと反応して難溶性のリン酸水素カルシウムを生成することにより、富栄養化水中に含まれるリン酸を除去するようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るリン酸の除去方法は、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュに、処理対象となる富栄養化水を供給して該富栄養化水中に含まれるリン酸を吸着するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るリン酸の除去方法は、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュが充填された除去装置を処理対象水域の系外に設置し、前記処理対象水域の富栄養化水を前記除去装置中に通水して該富栄養化水中に含まれるリン酸を吸着するようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るリン酸の除去方法は、上記発明において、富栄養化水中に含まれるリン酸が、中空粒子構造の表面に開いた穴を通して二重構造のフライアッシュの内部に吸着することにより、富栄養化水中に含まれるリン酸を吸着除去するようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るリン酸の除去方法は、成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有し、かつ、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュに、処理対象となる富栄養化水を供給して該富栄養化水中に含まれるリン酸を除去するようにしたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るリン酸の除去方法は、成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有し、かつ、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュが充填された除去装置を処理対象水域の系外に設置し、前記処理対象水域の富栄養化水を前記除去装置中に通水して該富栄養化水中に含まれるリン酸を除去するようにしたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るリン酸の除去方法は、上記発明において、富栄養化水中に含まれるリン酸が、フライアッシュに含有された酸化カルシウムのカルシウムイオンと反応して難溶性のリン酸水素カルシウムを生成するとともに、中空粒子構造の表面に開いた穴を通して二重構造のフライアッシュの内部に吸着することにより、富栄養化水中に含まれるリン酸を吸着除去することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るリン酸の除去方法は、上記発明において、空洞内の微細な粒子は、多孔質形状で内蔵されていることを特徴とする
【0016】
また、本発明に係るリン酸の除去方法は、上記発明において、二重構造のフライアッシュは、所定径以上の大きさのものであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るリン酸の除去方法は、上記発明において、所定サイズ以上に造粒化、または塊状に固化後、破砕・細粒化されたフライアッシュを用いるようにしたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るリン酸の除去方法は、上記発明において、フライアッシュは、前記除去装置に交換自在に充填されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る回収リンの再利用方法は、上記発明のリン酸の除去方法によって前記処理対象水域の富栄養化水中に含まれるリン酸を吸着除去したフライアッシュを農業・園芸用のリン肥料とすることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る回収リンの再利用方法は、上記発明のリン酸の除去方法によって前記処理対象水域の富栄養化水中に含まれるリン酸を除去した前記除去装置内のフライアッシュを農業・園芸用のリン肥料とすることを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係るリン酸の除去装置は、成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有するフライアッシュが充填されて処理対象水域の系外に設置される筐体を備え、該筐体内に前記処理対象水域の富栄養化水が通水されることを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係るリン酸の除去装置は、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュが充填されて処理対象水域の系外に設置される筐体を備え、該筐体内に前記処理対象水域の富栄養化水が通水されることを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係るリン酸の除去装置は、成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有し、かつ、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュが充填されて処理対象水域の系外に設置される筐体を備え、該筐体内に前記処理対象水域の富栄養化水が通水されることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係るリン酸の除去装置は、上記発明において、空洞内の微細な粒子は、多孔質形状で内蔵されていることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係るリン酸の除去装置は、上記発明において、二重構造のフライアッシュは、所定径以上の大きさのものであることを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係るリン酸の除去装置は、上記発明において、フライアッシュは、所定サイズ以上に造粒化、または塊状に固化後、破砕・細粒化されていることを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係るリン酸の除去装置は、上記発明において、フライアッシュは、前記筐体に交換自在に充填されていることを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係るリン酸の除去装置は、上記発明において、フライアッシュが充填された前記筐体は、処理対象水域に対して流入側の系外または流出側の系外の少なくとも一方に設置されていることを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係るリン酸の除去方法は、成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有するフライアッシュを造粒化、または塊状に固化後、破砕・細粒化し、処理対象となる放牧地あるいは水域に流入して富栄養化をもたらす地表部に直接散布し、該地表部において家畜の糞尿中または糞尿を洗い流した雨水中に含まれるリン酸を吸着除去することにより、リン酸を除去するようにしたことを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る回収リンの再利用方法は、上記発明のリン酸の除去方法によってリン酸を吸着したフライアッシュを、そのまま牧草生育用のリン肥料とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係るリン酸の除去方法、リン酸の除去装置および回収リンの再利用方法によれば、成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有するフライアッシュをリン酸水素ナトリウム溶液中に浸漬させた場合、溶液中に含まれるリン酸がフライアッシュに含有されている酸化カルシウムのカルシウムイオンと反応して難溶性のリン酸水素カルシウムを生成して沈降するという除去メカニズムを見出し、成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有するフライアッシュに、処理対象となる富栄養化水を供給すること、より好適には、処理対象水域の系外に設置されて成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有するフライアッシュを充填した除去装置内に処理対象水域の富栄養化水を通水させることにより、富栄養化水中に含まれるリン酸をカルシウムイオンと反応させてリン酸水素カルシウムを生成して沈降させて回収することにより富栄養化水を効率よく浄化させることができ、フライアッシュに含まれる酸化カルシウムが反応容量に達した場合には処理対象水域の系外に設置された除去装置に対して酸化カルシウムを3%以上含有する新たなフライアッシュに交換すればよく、浚渫処理が不要で浚渫による余剰汚泥が生ずることもなく、安価に処理することができるという効果を奏する。また、交換されるフライアッシュは、汚泥等を含んでおらず、リンの回収効率が高く、農業・園芸用のリン肥料として有効に再利用することができるという効果を奏する。
【0032】
また、本発明に係るリン酸の除去方法、リン酸の除去装置および回収リンの再利用方法によれば、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュをリン酸水素ナトリウム溶液中に浸漬させた場合、溶液中に含まれるリン酸が中空粒子構造の表面に開いた穴を通して二重構造のフライアッシュの内部に吸着するという除去メカニズムを見出し、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュに、処理対象となる富栄養化水を供給すること、より好適には、処理対象水域の系外に設置されて表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュを充填した除去装置内に処理対象水域の富栄養化水を通水させることにより、富栄養化水中に含まれるリン酸を二重構造のフライアッシュの内部に吸着させて回収することにより富栄養化水を効率よく浄化させることができ、フライアッシュに含まれる酸化カルシウムが吸着容量に達した場合には処理対象水域の系外に設置された除去装置に対して表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造の新たなフライアッシュに交換すればよく、浚渫処理が不要で浚渫による余剰汚泥が生ずることもなく、安価に処理することができるという効果を奏する。また、交換されるフライアッシュは、汚泥等を含んでおらず、リンの回収効率が高く、農業・園芸用のリン肥料として有効に再利用することができるという効果を奏する。
【0033】
また、本発明に係るリン酸の除去方法、リン酸の除去装置および回収リンの再利用方法によれば、成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有し、かつ、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュをリン酸水素ナトリウム溶液中に浸漬させた場合、溶液中に含まれるリン酸がフライアッシュに含有されている酸化カルシウムのカルシウムイオンと反応して難溶性のリン酸水素カルシウムを生成して沈降するとともに、溶液中に含まれるリン酸が中空粒子構造の表面に開いた穴を通して二重構造のフライアッシュの内部に吸着するという除去メカニズムを見出し、成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有し、かつ、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュに、処理対象となる富栄養化水を供給すること、より好適には、処理対象水域の系外に設置されて成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有し、かつ、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュを充填した除去装置内に処理対象水域の富栄養化水を通水させることにより、富栄養化水中に含まれるリン酸をカルシウムイオンと反応させてリン酸水素カルシウムを生成して沈降させて回収したり、富栄養化水中に含まれるリン酸を二重構造のフライアッシュの内部に吸着させて回収したりすることにより富栄養化水を効率よく浄化させることができ、フライアッシュに含まれる酸化カルシウムが反応容量に達した場合やフライアッシュが吸着容量に達した場合には処理対象水域の系外に設置された除去装置に対して酸化カルシウムを3%以上含有し、かつ、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造の新たなフライアッシュに交換すればよく、浚渫処理が不要で浚渫による余剰汚泥が生ずることもなく、安価に処理することができるという効果を奏する。また、交換されるフライアッシュは、汚泥等を含んでおらず、リンの回収効率が高く、農業・園芸用のリン肥料として有効に再利用することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に、本発明に係るリン酸の除去方法、リン酸の除去装置および回収リンの再利用方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、本実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。
【0035】
本実施の形態のリン酸の除去方法および除去装置は、処理対象となる富栄養化水中に含まれるリン酸を除去して回収するために、石炭灰中で所定条件を満たす特定のフライアッシュを用いることを基本とする。まず、石炭灰を用いる場合の石炭灰へのリン酸吸着メカニズムについて説明する。
【0036】
まず、図16は、従来のリン酸除去のメカニズムを示す模式図である。従来のリン酸除去のメカニズムは、フライアッシュなどの石炭灰は,ガラス玉のような空洞のない球状のものであるとの定説の下、石炭灰中に含まれる酸化カルシウムCaOがカルシウムイオンCa2+として溶解し、液中のリン酸水素イオンHPO2−と結合し、液中でリン酸水素カルシウムCaHPOとして不溶化するという認識である。このようなリン酸除去のメカニズムを、富栄養化水に対するリン酸の除去に利用しているものである。これは、石炭灰と接触させた水にリン酸水素ナトリウムを加えると、リン酸水素カルシウムが析出することにより確認できるが、このようなリン酸除去のメカニズムを利用する場合、効率のよいリンの回収は困難である。
【0037】
一方、本発明者らは、従来の定説を覆すフライアッシュを用いたリン酸の除去メカニズムを新たに見出したものである。このようなリン酸の除去メカニズムは、一面では、成分として約3%以上の酸化カルシウムCaOを含有するフライアッシュをリン酸水素ナトリウム溶液中に浸漬させた場合、リン酸水素ナトリウム溶液中に含まれるリン酸水素イオン(HPO2−)がフライアッシュに含有されている酸化カルシウムCaOのカルシウムイオンCa2+と反応して難溶性のリン酸水素カルシウムを生成して沈降するというものである。また、他面では、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュをリン酸水素ナトリウム溶液中に浸漬させた場合、溶液中に含まれるリン酸が中空粒子構造の表面に開いた穴を通して二重構造のフライアッシュの内部に吸着するというものである。
【0038】
このような除去メカニズムは、以下の手順により確認できたものである。以下、この手順を順に説明する。まず、リン酸水素ナトリウム水溶液に石炭灰を添加して攪拌し、一定時間毎にろ液に残留するリン酸の量を測定することで石炭灰のリン酸除去能力試験を行ったところ、図1に示すような測定結果が得られたものである。ここで、石炭灰としては、排ガスの集塵装置で捕集されるフライアッシュと、ボイラの底部から排出されるボトムアッシュとの2種類を用いた。この測定結果によれば、フライアッシュの場合、添加してから約5分でリン酸の量が急激に減少し、リン酸が殆ど除去されているのに対して、ボトムアッシュではリン酸除去効果を確認できなかったものであり、基本事項として、フライアッシュがリン酸除去能力を持ち得ることが確認できたものである。
【0039】
次いで、リン酸水素ナトリウム水溶液に対するフライアッシュの添加量を10g〜20g間で種々変えながら、上記の場合と同様に、攪拌、ろ過し、残留するリン酸の量を一定時間毎に測定したところ、図2に示すような測定結果が得られたものである。このような測定結果によれば、添加するフライアッシュが一定量(図示例では、17g)を超えると、残留するリン酸の量が急激に減少しており、リン酸水素ナトリウム水溶液中からリン酸を効率よく除去するには、一定量以上のフライアッシュが必要なことが確認できたものである。
【0040】
さらに、リン酸水素ナトリウム水溶液に添加するフライアッシュとして、産地の異なる6種類を用いて、上記の場合と同様に、攪拌、ろ過し、残留するリン酸の量を一定時間毎に測定してリン酸の除去能力を比較したところ、図3に示すような測定結果が得られたものである。用いた6種類のフライアッシュは、A,Eがインドネシア産、B,Cが豪州産、Dが中国/豪州産、Fが中国産である。この測定結果によれば、A,B,Cの3種類にはリン酸除去能力があり、D,E,Fの3種類にはリン酸除去能力が殆どなく、フライアッシュの種類でリン酸除去能力が異なることが確認できたものである。
【0041】
このようにフライアッシュの種類によってリン酸除去能力が異なるが、その原因を究明するために、それぞれのフライアッシュの成分を比較したところ、図4に示すような結果が得られたものである。図4中、網掛けで示すフライアッシュA,B,Cはリン酸除去能力があり、それ以外のフライアッシュD,E,Fはリン酸除去能力を有しない。フライアッシュを構成する成分中で、除去対象となるリン酸水素イオン(HPO2−)と反応すると考えられるのは、NaO(酸化ナトリウム)、KO(酸化カリウム)、CaO(酸化カルシウム)であるが、特に難溶性の化合物を生成する成分はCaO(酸化カルシウム)である。すなわち、
CaO+HO+HPO→CaHPO(沈降)
なる反応を示す。図4に示す結果によれば、リン酸除去能力を有する3種類のフライアッシュA,B,Cは、いずれもCaO(酸化カルシウム)の含有量が、それぞれ4.86%,4.25%,2.89%であり、リン酸除去能力を有しない3種類のフライアッシュD,E,Fに比べて酸化カルシウムCaOの含有量が多く、難溶性のリン酸水素カルシウムを生成しているものと考えられる。これにより、成分として約3%以上の酸化カルシウムCaOを含有するフライアッシュをリン酸水素ナトリウム溶液中に浸漬させた場合、溶液中に含まれるリン酸水素イオン(HPO2−)がフライアッシュに含有されている酸化カルシウムCaOのカルシウムイオンCa2+と反応して難溶性のリン酸水素カルシウムを生成して沈降するという除去メカニズムを確認できたものである。
【0042】
つづいて、フライアッシュ粒子の表面を電子顕微鏡で観察したところ、図5の写真に示すような構造が見られたものである。すなわち、フライアッシュ粒子は、従来であれば、ガラス玉のような空洞のないきれいな球状構造のものであるとの考えが定説であった。ところが、上述したようなリン酸除去能力を有するある種のフライアッシュ粒子1は、図5の写真に示すように、定説を覆し、表面の一部に穴2を有する中空粒子構造の空洞内にさらに微細な多数の粒子3を内蔵する二重構造をなしていることが確認されたものである。これにより、リン酸除去能力を有するフライアッシュにあっては、上述したように、リン酸とフライアッシュが含有する酸化カルシウム中のカルシウムとが反応して難溶性のリン酸水素カルシウムを生成するだけでなく、二重構造内でリン酸の吸着も起こっているものと考えられる。
【0043】
ここで、元々中空粒子構造のフライアッシュ粒子は、粒径が所定径以上の比較的大きな粒子に存在するので、直径53μm〜74μmに篩い分けした比較的大粒のフライアッシュ粒子を対象とし、その表面と内部構造を電子顕微鏡で撮影したところ、図6の写真に示すような結果が得られたものである。図6中、左側上下2枚は表面写真を示し、右側上下2枚はそれぞれ対応する内部構造の写真を示す。左側の表面写真からも判るように、表面の一部に開いた穴から中空粒子構造の空洞内に微細な粒子が存在する様子が見えるが、さらに右側の内部構造の写真によれば、空洞内の多数の微細な粒子は複雑な多孔質形状で内蔵されていることが判る。
【0044】
そして、リン酸水素ナトリウム水溶液中に浸漬されてリン酸を除去した後のフライアッシュ粒子を乾燥、粉砕して、二重構造内部の一部の元素分布をエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)で解析したところ、図7に示すような結果が得られたものである。図7に示す解析結果によれば、リンのピークが検出されており、二重構造の内部でリン酸の吸着が生じていることが確認できたものである。
【0045】
さらに、フライアッシュの二重構造内部でのリン酸の吸着能力を検証するために、フライアッシュを水洗いしない場合と水洗いした場合のリン酸の除去動向を比較したところ、図8−1および図8−2に示すような結果が得られたものである。図8−1は、フライアッシュA,B,Cを水洗いせずにリン酸水素ナトリウム溶液に添加した場合に残留するリン酸量の減少特性を示すもので、フライアッシュ全体のリン酸吸着除去能力を表している。一方、図8−2は、フライアッシュA,B,Cを水洗いして表面のカルシウム成分を除去してからリン酸水素ナトリウム溶液に添加した場合に残留するリン酸量の減少特性を示すもので、二重構造内部のみによるリン酸吸着能力を表している。図8−2からも判るように、水洗いしたフライアッシュは、減少速度が遅いながら着実に残留するリン酸量が減少しており、二重構造内部でリン酸が吸着されていることが検証されたものである。
【0046】
すなわち、図8−1および図8−2に示す結果を定性化した場合、フライアッシュのリン酸吸着除去効果は、図8−3中の特性aに示す難溶性リン酸水素カルシウム生成による除去効果と、図8−3中の特性bに示す二重構造のフライアッシュ内部へのリン酸吸着効果とによる複合効果であることが確認できたものである。
【0047】
これにより、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュをリン酸水素ナトリウム溶液中に浸漬させた場合、溶液中に含まれるリン酸水素イオンが中空粒子構造の表面に開いた穴を通して二重構造のフライアッシュの内部に吸着するという除去メカニズムを確認できたものである。
【0048】
よって、本発明者らが新たに見出した前述のリン酸の吸着除去メカニズムを模式的に示すと図9−1および図9−2のようになる。図9−1は、第1のリン酸の除去メカニズムを示す模式図であり、図9−2は、第2のリン酸の吸着メカニズムを示す模式図である。第1のリン酸の除去メカニズムによれば、図9−1に示すように、成分として約3%以上の酸化カルシウムCaOを含有するフライアッシュをリン酸水素ナトリウムNaHPO溶液中に浸漬させると、フライアッシュに含有されている酸化カルシウムCaOからカルシウムイオンCa2+が溶出し、リン酸イオンHPO2−が反応して不溶解性物質であるリン酸水素カルシウムCaHPOを生成し、生成されたリン酸水素カルシウムCaHPOがフライアッシュを核に析出されることとなる。
【0049】
また、第2のリン酸の吸着メカニズムによれば、図9−2に示すように、表面の一部に穴2を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子3を内蔵する二重構造のフライアッシュ1をリン酸水素ナトリウムNaHPO溶液中に浸漬させると、リン酸水素イオンHPO2−が中空粒子構造の表面に開いた穴2を通して二重構造のフライアッシュ1の内部で吸着・固定されることとなる。
【0050】
そこで、本実施の形態のリン酸の除去方法およびリン酸の除去装置は、処理対象となる富栄養化水中に含まれるリン酸を除去して回収するために、一面では、成分として約3%以上の酸化カルシウムCaOを含有するフライアッシュを用い、他面では、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を多孔質形状で内蔵する二重構造のフライアッシュを用いることを基本とする。ここで、フライアッシュは、例えば石炭火力発電所において燃焼により溶融状態となって高温燃焼ガス中を浮遊する灰の粒子が、ボイラ出口での温度低下に伴い球形微細粒子となった石炭灰の一種であり、シリカ、アルミナ等を主成分とし、電気集塵器によって捕集される。このようなフライアッシュ中、上記の条件を満たすものが用いられる。
【0051】
図10は、上記のリン酸の吸着除去メカニズムを利用した本実施の形態のリン酸の除去方法を実現するためのフィールドでのシステム構成例を示す模式図である。まず、少なくとも上記の特定条件を満たすフライアッシュ11を充填する除去装置12を用意しておく。除去装置12は、リン酸除去能力を発揮し得る所定量以上のフライアッシュ11を交換自在かつ通水可能に充填する筐体13からなる。この際、個々の粒子状のままのフライアッシュ11では、通水性および取り扱い性に難があるので、適切なバインダによりリン除去能力を適正に発揮し得る所定サイズ以上の塊として造粒した造粒フライアッシュ14を用いることが好ましい。なお、造粒フライアッシュ14に代えて、例えば、フライアッシュを塊状に固化した後、破砕・細粒化して所定サイズ以上としたものであってもよい。
【0052】
このような除去装置12を、処理対象となる湖沼等のリンを含む富栄養化水を有する閉鎖性の処理対象水域15の系外の適宜場所に設置する。本実施の形態では、処理対象水域15に対する排水の流入側および処理対象水域15に対して下流の河川への流出側に設置しているが、いずれか一方でもよい。そして、処理対象水域15に流入する排水や処理対象水域15から図示しないポンプ等で汲み上げた富栄養化水を除去装置12に注水し、除去装置12内に充填された造粒フライアッシュ14中を通水させ、除去装置12の下部側から除去された水を処理対象水域15や下流河川に対して排水させる。
【0053】
このように除去装置12中に富栄養化水を通水させることにより、富栄養化水中に含まれるリン酸は、上述した吸着除去メカニズムに従い富栄養化水中から除去されて造粒フライアッシュ14の個々のフライアッシュ11中に回収され、富栄養化水はリン酸が除去された状態で処理対象水域15や下流河川に対して排水されることとなる。
【0054】
また、図11は、上記のリン酸の吸着除去メカニズムを利用した本実施の形態のリン酸の除去方法を実現するためのフィールドでの他のシステム構成例を示す模式図である。図10では、富栄養化した湖沼等を処理対象水域とする例を示したが、図11では、牛馬等の家畜を飼育する放牧地16を処理対象とする例を示している。まず、少なくとも前述の特定条件を満たすフライアッシュ11を用意する。この際、個々の粒子状のままのフライアッシュ11では、取り扱い性に難があるので、適切なバインダによりリン酸除去能力を発揮し得る所定サイズ以上の塊として造粒した造粒フライアッシュ14を用いることが好ましい。なお、造粒フライアッシュ14に代えて、例えば、フライアッシュを塊状に固化した後、破砕・細粒化して所定サイズ以上としたものであってもよい。
【0055】
このような造粒フライアッシュ14を、処理対象となる放牧地16(あるいは水域)に流入して富栄養化をもたらす地表部16aに直接散布する。散布後、この地表部16aにおいて牛馬等の家畜の糞尿中またはこれら糞尿を洗い流した雨水中に含まれるリン酸を吸着することにより、リン酸を除去させる。このように地表部16aに散布されリン酸を吸着した造粒フライアッシュ14をそのままにしておくことで、牧草に対して牧草生育用のリン肥料としての肥料効果が発揮され、牧草を生育させることが可能となる。
【0056】
ここで、例えば図10に示したようなフィールドでの実用化を模擬し、図12および図13に示すような実験装置により、造粒フライアッシュ14によるリン酸除去能力の試験を行ったところ、図14に示すような結果が得られたものである。図12は、実験装置の概要を示す概略斜視図であり、図13は、その概略縦断側面図であり、図14は、通水量の増加に伴うリン酸除去能力の変動の実験結果を示すグラフである。
【0057】
図12および図13において、造粒フライアッシュ14は例えば10kg単位でネット袋に詰めた造粒フライアッシュ収納袋21を400kg分(40袋分)用意し、除去装置12を構成する複数の水槽22内にセットしておく。ここで、各水槽22は、給水部22aと造粒フライアッシュ収納袋21の収納部22bとを仕切り板22cにより仕切りつつ、仕切り板22cの下端部で通水可能に連通させてなる。除去装置12は、例えば5段分のこのような水槽22を階段状に配設させるとともに、最上段に給水貯水槽23を配設し、給水貯水槽23や上流側の収納部22bの水が下流側の給水部22a中に順次流れ込み、仕切り板22cの下端部の隙間を通って収納部22b中を下部側から上部側に通水するように構成されている。
【0058】
ここで、給水貯水槽23には、湖沼池等の処理対象水域15に含まれる富栄養化した処理対象水24がポンプ25等によって汲み上げられて貯水される。そして、給水貯水槽23内の処理対象水24は、その下流側の水槽22に対して順次給水される。給水された処理対象水24は、各水槽22において矢印で示すように、給水部22aから仕切り板22cの下端部の隙間を通って収納部22b側に通水され、収納部22bの上部でオーバーフローすることにより、下流側に流れる。ここで、処理対象水24は収納部22bにおいて下部側から上部側に通水する間に造粒フライアッシュ収納袋21中の造粒フライアッシュ14を通過することにより、上述したようなリン酸の吸着除去作用を受ける。よって、最下流の水槽22の収納部22bからはリン酸が除去された処理水26が排水されることとなる。
【0059】
そこで、最下流の水槽22の収納部22bにおいて浄化された処理水26の通水量と、リン酸濃度を測定することで、リン酸除去能力と通水流量の時間経過との関係を測定したものである。この試験結果によれば、図14に示すように、造粒フライアッシュ14は、一定の通水流量を保ちながらリン酸を除去するが、時間の経過とともにリン酸除去能力が低下し、遂には飽和するに至る。すなわち、飽和するまでの時間単位のリン酸濃度の減少分と通水流量との積(リン酸除去量)の合計が、リン酸除去能力であり、飽和に達した時点で、所定条件を満たす新たなフライアッシュ(造粒フライアッシュ)に交換することが必要である。この試験例では、通水するリン酸濃度は30mg/Lとし、通水流量は25L/minとしたものであり、フライアッシュ1kg当りのリン酸除去総量は1700mgであった。
【0060】
また、特定条件のフライアッシュを用いる本発明方式について、処理対象のリン酸濃度の違いによるリン酸吸着除去効果について考察する。このため、リン酸濃度が桁違いに異なる0.25mg/L,2.5mg/L,25mg/Lの3種類のリン酸濃度のリン酸水素ナトリウム水溶液を用意し、上述したような特定条件を満たすフライアッシュに通水してリン酸の吸着除去効果を確認したところ、図15に示すような結果が得られたものである。この図15に示す結果によれば、リン酸濃度の濃淡に関係なく所望のリン酸吸着除去効果が得られるとともに、リン酸濃度が高い程、リン酸吸着除去効果が顕著に表れることも判る。よって、各種の富栄養化した湖沼等のリン酸の除去に効果的であり、特に富栄養化の高い湖沼等に好適に適用し得るものとなる。
【0061】
このように、本実施の形態のリン酸の除去方法によれば、処理対象水域15の系外に設置されて所定条件を満たすフライアッシュ11を充填した除去装置12内に富栄養化水を通水させ、富栄養化水中に含まれるリン酸を、所定条件を満たすフライアッシュのリン酸吸着除去メカニズムに従い浄化して回収することにより富栄養化水を効率よく除去させることができる。そして、所定条件を満たすフライアッシュ11がリン酸吸着除去能力の飽和に達した場合には処理対象水域15の系外に設置された除去装置12において所定条件を満たす新たなフライアッシュ11(造粒フライアッシュ14)のみを交換すればよく、浚渫処理が不要で浚渫による余剰汚泥が生ずることもなく、リンの回収が可能な処理方法を安価に実現することができる。
【0062】
また、リン酸除去能力の飽和に達して交換される使用済みのフライアッシュ11(造粒フライアッシュ14)は、汚泥等を含んでおらず、リンの含有率が高いことから、図9中に示すように、除去装置12から取り出された使用済みの造粒フライアッシュ14を個々のフライアッシュ11にばらしてそのまま農業・園芸用のリン肥料として有効に再利用することが可能となる。また、フライアッシュ11が有する二重構造を活かして土壌改良材として再利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】フライアッシュとボトムアッシュのリン酸除去能力の測定結果を示すグラフである。
【図2】フライアッシュの添加量に応じたリン酸除去能力の測定結果を示すグラフである。
【図3】フライアッシュの種類に応じたリン酸除去能力の有無の測定結果を示すグラフである。
【図4】フライアッシュの種類毎の成分分析結果を示す図である。
【図5】電子顕微鏡によりフライアッシュ表面を撮影した写真である。
【図6】電子顕微鏡によりフライアッシュ表面および内部構造を撮影した写真である。
【図7】EDXで解析した二重構造内部の元素分布を示す特性図である。
【図8−1】水洗いなしの場合のリン酸除去能力の測定結果を示すグラフである。
【図8−2】水洗いありの場合のリン酸吸着能力の測定結果を示すグラフである。
【図8−3】フライアッシュのリン酸吸着除去効果の要因を示す模式図である。
【図9−1】第1のリン酸の除去メカニズムを示す模式図である。
【図9−2】第2のリン酸の吸着メカニズムを示す模式図である。
【図10】本発明の実施の形態のリン酸の除去方法を実現するためのフィールドでのシステム構成例を示す模式図である。
【図11】本発明の実施の形態のリン酸の除去方法を実現するためのフィールドでの他のシステム構成例を示す模式図である。
【図12】フィールドでの実用化を模擬した実験装置の概要を示す概略斜視図である。
【図13】図12の概略縦断側面図である。
【図14】通水量の増加に伴うリン酸除去能力の変動の実験結果を示すグラフである。
【図15】リン酸濃度の違いによるリン酸除去効果を示す実験結果の特性図である。
【図16】従来認識されているリン酸吸着のメカニズムを示す模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1 フライアッシュ
2 穴
3 微小粒子
11 フライアッシュ
12 除去装置
13 筐体
14 造粒フライアッシュ
15 処理対象水域
16 放牧地
16a 地表部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有するフライアッシュに、処理対象となる富栄養化水を供給して該富栄養化水中に含まれるリン酸を除去するようにしたことを特徴とするリン酸の除去方法。
【請求項2】
成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有するフライアッシュが充填された除去装置を処理対象水域の系外に設置し、
前記処理対象水域の富栄養化水を前記除去装置中に通水して該富栄養化水中に含まれるリン酸を除去するようにしたことを特徴とするリン酸の除去方法。
【請求項3】
富栄養化水中に含まれるリン酸が、フライアッシュに含有された酸化カルシウムのカルシウムイオンと反応して難溶性のリン酸水素カルシウムを生成することにより、富栄養化水中に含まれるリン酸を除去するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載のリン酸の除去方法。
【請求項4】
表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュに、処理対象となる富栄養化水を供給して該富栄養化水中に含まれるリン酸を吸着するようにしたことを特徴とするリン酸の除去方法。
【請求項5】
表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュが充填された除去装置を処理対象水域の系外に設置し、
前記処理対象水域の富栄養化水を前記除去装置中に通水して該富栄養化水中に含まれるリン酸を吸着するようにしたことを特徴とするリン酸の除去方法。
【請求項6】
富栄養化水中に含まれるリン酸が、中空粒子構造の表面に開いた穴を通して二重構造のフライアッシュの内部に吸着することにより、富栄養化水中に含まれるリン酸を吸着除去するようにしたことを特徴とする請求項4または5に記載のリン酸の除去方法。
【請求項7】
成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有し、かつ、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュに、処理対象となる富栄養化水を供給して該富栄養化水中に含まれるリン酸を除去するようにしたことを特徴とするリン酸の除去方法。
【請求項8】
成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有し、かつ、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュが充填された除去装置を処理対象水域の系外に設置し、
前記処理対象水域の富栄養化水を前記除去装置中に通水して該富栄養化水中に含まれるリン酸を除去するようにしたことを特徴とするリン酸の除去方法。
【請求項9】
富栄養化水中に含まれるリン酸が、フライアッシュに含有された酸化カルシウムのカルシウムイオンと反応して難溶性のリン酸水素カルシウムを生成するとともに、中空粒子構造の表面に開いた穴を通して二重構造のフライアッシュの内部に吸着することにより、富栄養化水中に含まれるリン酸を吸着除去することを特徴とする請求項7または8に記載のリン酸の除去方法。
【請求項10】
空洞内の微細な粒子は、多孔質形状で内蔵されていることを特徴とする請求項4〜9のいずれか一つに記載のリン酸の除去方法。
【請求項11】
二重構造のフライアッシュは、所定径以上の大きさのものであることを特徴とする請求項4〜10のいずれか一つに記載のリン酸の除去方法。
【請求項12】
所定サイズ以上に造粒化、または塊状に固化後、破砕・細粒化されたフライアッシュを用いるようにしたことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載のリン酸の除去方法。
【請求項13】
フライアッシュは、前記除去装置に交換自在に充填されていることを特徴とする請求項2,5または8に記載のリン酸の除去方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一つに記載のリン酸の除去方法によって前記処理対象水域の富栄養化水中に含まれるリン酸を吸着除去したフライアッシュを農業・園芸用のリン肥料とすることを特徴とする回収リンの再利用方法。
【請求項15】
請求項2,5または8に記載のリン酸の除去方法によって前記処理対象水域の富栄養化水中に含まれるリン酸を吸着除去した前記除去装置内のフライアッシュを農業・園芸用のリン肥料とすることを特徴とする回収リンの再利用方法。
【請求項16】
成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有するフライアッシュが充填されて処理対象水域の系外に設置される筐体を備え、該筐体内に前記処理対象水域の富栄養化水が通水されることを特徴とするリン酸の除去装置。
【請求項17】
表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュが充填されて処理対象水域の系外に設置される筐体を備え、該筐体内に前記処理対象水域の富栄養化水が通水されることを特徴とするリン酸の除去装置。
【請求項18】
成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有し、かつ、表面の一部に穴を有する中空粒子構造の空洞内に微細な粒子を内蔵する二重構造のフライアッシュが充填されて処理対象水域の系外に設置される筐体を備え、該筐体内に前記処理対象水域の富栄養化水が通水されることを特徴とするリン酸の除去装置。
【請求項19】
空洞内の微細な粒子は、多孔質形状で内蔵されていることを特徴とする請求項17または18に記載のリン酸の除去装置。
【請求項20】
二重構造のフライアッシュは、所定径以上の大きさのものであることを特徴とする請求項17〜19のいずれか一つに記載のリン酸の除去装置。
【請求項21】
フライアッシュは、所定サイズ以上に造粒化、または塊状に固化後、破砕・細粒化されていることを特徴とする請求項16〜20のいずれか一つに記載のリン酸の除去装置。
【請求項22】
フライアッシュは、前記筐体に交換自在に充填されていることを特徴とする請求項16〜21のいずれか一つに記載のリン酸の除去装置。
【請求項23】
フライアッシュが充填された前記筐体は、処理対象水域に対して流入側の系外または流出側の系外の少なくとも一方に設置されていることを特徴とする16〜22のいずれか一つに記載のリン酸の除去装置。
【請求項24】
成分として約3%以上の酸化カルシウムを含有するフライアッシュを造粒化、または塊状に固化後、破砕・細粒化し、処理対象となる放牧地あるいは水域に流入して富栄養化をもたらす地表部に直接散布し、該地表部において家畜の糞尿中または糞尿を洗い流した雨水中に含まれるリン酸を吸着除去することにより、リン酸を除去するようにしたことを特徴とするリン酸の除去方法。
【請求項25】
請求項24に記載のリン酸の除去方法によってリン酸を吸着したフライアッシュを、そのまま牧草生育用のリン肥料とすることを特徴とする回収リンの再利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−119451(P2009−119451A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90538(P2008−90538)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000242644)北陸電力株式会社 (112)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】