説明

リン酸アスコルビルおよびその塩を安定化させる方法

脂質でコーティングすることによって、ホスファターゼによる分解に対してリン酸アスコルビルが安定化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスファターゼによる分解に対してリン酸アスコルビルを安定化させる方法に関する。リン酸アスコルビルは、ペットおよびその他の動物の飼料の添加物として飼料産業において使用されている。このような餌は、リン酸アスコルビルの分解の原因となりうる活性ホスファターゼを含有する場合がある。脂質でコーティングすることによって、ホスファターゼによる分解に対してリン酸アスコルビルを安定化させることが可能であることが分かった。したがって、本発明は、脂質でコーティングすることによって、ホスファターゼによる分解に対してリン酸アスコルビルを安定化させる方法に関する。さらに本発明は、ある種の脂質でコーティングされたリン酸アスコルビルを含む新規組成物、ならびにそれを含有する動物の飼料および飼料プレミックスにも関する。
【背景技術】
【0002】
大気、湿気、光、および熱などの外部作用の影響に対してビタミンCを安定化させるために、脂質でコーティングされているビタミンC製剤が、EP0 443 743号明細書により公知となっている。これらの公知の製剤は、コーティング中にビタミンEを含有することが必須となっている。本発明によると、驚くべきことに、ビタミンEが存在しない脂質コーティングによって、ホスファターゼに対してリン酸アスコルビルを安定化させることができることが分かった。リン酸化ビタミンCの一次的ストレッサーが酸化ではないことを示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本明細書において使用される場合、用語「リン酸アスコルビル」は、アスコルビン酸分子のリン酸化されたヒドロキシ基が1つ以上のリン酸(ホスフェート)単位を特徴とし、さらに金属カチオン、たとえばナトリウムイオンおよび/またはカルシウムイオンも存在する、アスコルビン酸のモノリン酸エステルおよびポリリン酸エステルの金属塩を意味する。「ポリ」は一般に2〜10個、好ましくは2〜4個のホスフェート単位を意味する。「リン酸アスコルビル」は、モノホスフェートおよびポリホスフェートの両方を含めるために、全体的に「(ポリ)リン酸アスコルビル」と呼ばれる場合もある。本発明において使用される典型的なリン酸アスコルビルは、L−アスコルビル−2−モノリン酸三ナトリウム、およびL−アスコルビル−2−ポリリン酸(主として三リン酸)ナトリウムカルシウムであり、これらはそれぞれステイ−C50(STAY−C50)およびロビミックス・ステイ−C35(ROVIMIX STAY−C35)として市販されている(ロシュ・ビタミンズAG(Roche Vitamins AG)、バーゼル(Basel))。安定化された組成物中のリン酸アスコルビルまたはその塩の量は、アスコルビン酸当量を基準にして約5重量%〜約40重量%の間となる量である。
【0004】
本明細書において使用される場合、用語「脂質」は、脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリド、脂肪酸スクロースおよびプロピレングリコールエステルなど、ならびに蝋、リン脂質、および糖脂質、ならびにこれらの混合物を含んでいる。特定の脂質の例は、ダイズ油、パーム油、ナタネ油、ココナッツ油などである。水素化植物油およびステアリン酸グリセロールが好ましい。脂質の量は、組成物の全重量を基準にして約10重量%〜約60重量%である。
【0005】
被覆リン酸アスコルビル組成物は、吸着剤、たとえば、デンプンおよび加工デンプンなどの多糖類、ケイ酸カルシウム単独、またはケイ酸カルシウムと、混合物成分:、微結晶性セルロース、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、親水性ケイ酸、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、およびカオリンの1つとの混合物をさらに含むことができる。存在する場合、吸着剤量は、組成物の全重量を基準にして約0.5重量%〜約5重量%である。
【発明の効果】
【0006】
被覆リン酸アスコルビル組成物は、液化した(加熱によって)脂質中にリン酸アスコルビルを分散させ、続いて、本来周知の手順によって、たとえば冷風中に溶融物を噴霧することによって、その溶融物を、たとえば粒状体などの固体組成物に加工することによって製造することができ、または流動層中でリン酸アスコルビルに液体脂質をコーティングすることによって製造することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
こうして得られた粒状体は、たとえば前述したような吸着剤中に集められるか、またはこの吸着剤によって適切にコーティングされる。こうして得られた粒状体は、ホスファターゼによる分解に対して安定化されている。15%のアスコルビン酸活性を含有する10mgの粒状体を20mlの水で希釈した30mgの酸性ホスファターゼ(ロシュ・ダイアグノスティックスGmbH(Roche Diagnostics GmbH)、ドイツ、マンハイム(Mannheim))に60分間曝露すると、80%を超えるリン酸アスコルビルが変化しないまま残存した。さらに、この粒状体は、易流動性、無塵性、および非ケーキング性である。
【0008】
リン酸アスコルビルがL−アスコルビル−2−モノリン酸三ナトリウム、またはL−アスコルビル−2−ポリリン酸ナトリウムカルシウム、およびそれらの混合物である上記粒状体組成物は、それ自体新規性があり、本発明の目的でもある。
【0009】
被覆リン酸アスコルビル組成物は、従来、他にビタミン、無機物、およびその他の添加剤を含有するプレミックス中に混合される。このプレミックスが飼料に加えられ、混合され、保管され、続いて、熱水処理、たとえばペレット化、押出成形、またはレトルト処理が行われて、ペット、生産家畜、および魚などの動物の常用飼料が製造される。この常用飼料は、典型的には、魚、魚の一部、魚粉、脂肪、肉、肉の副産物などの動物由来の成分を含有する。したがって、これらの成分中に存在するホスファターゼに長時間曝露しても、混入した組成物がアスコルビン酸活性を保護するということが重要である。製剤は、動物の消化管内に存在するホスファターゼによる分解からもアスコルビン酸活性を保護する。たとえば、反芻動物の胃の中でのリン酸アスコルビルの分解が減少し、そのためより多量のビタミンCがその吸収部位に送られる。
【0010】
以下の実施例により本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0011】
実施例1
46℃の融点を有する300gの硬化パーム油を75℃まで加熱した。140gのアスコルビン酸活性を含有する400gのロビミックス・ステイ−C35(ROVIMIX STAY−C35)を流動空気層造粒機に加えた。次に、上記油を流動層に加え、得られた粉末を回収した。
【0012】
20%含量のアスコルビン酸活性を有するベージュ色の粒状粉末を得た。この生成物10gを、75%rHの湿った空気に曝露すると、重量増加は0.27gとなり、生成物は易流動性を維持した。
【0013】
実施例2
60℃の融点を有する112gのモノステアリン酸グリセロールを90℃まで加熱した。400gのアスコルビン活性を含有する888gのステイ−C50(STAY−C50)を、流動空気層造粒機に加えた。次に、上記油を流動層に加え、得られた粉末を回収した。
【0014】
次に10gの疎水性ケイ酸を加えた。得られた粉末は40%のアスコルビン酸活性を含有した。この生成物は、11mmの開口部を有するアグウェイ(Agway)フロートンネルを通った。
【0015】
実施例3
65℃の融点を有するヒマシ油1346gを90℃まで加熱した。350gのアスコルビン活性を含有する1000gのロビミックス・ステイ−C35(ROVIMIX STAY−C35)を、容器にゆっくりと加えて、上記油中に分散させた。次に、この混合物を、5℃の冷風が流れる流動層中に噴霧した。得られた粉末を回収した。得られた粉末は易流動性であり、15%のアスコルビン酸活性を含有した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスファターゼによる分解に対して(ポリ)リン酸アスコルビルを安定化させる方法であって、前記(ポリ)リン酸アスコルビルを脂質でコーティングするステップを含む方法。
【請求項2】
(ポリ)リン酸アスコルビル塩が、アスコルビル−2−モノリン酸三ナトリウム、またはアスコルビル−2−ポリリン酸ナトリウムカルシウムである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脂質が蝋または植物油である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
吸着剤がさらに存在する請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(ポリ)リン酸アスコルビルの量が、約5重量%〜約40重量%の間のアスコルビン酸当量を得られる量である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
脂質の量が、組成物の全重量を基準にして約10重量%〜約60重量%である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
組成物の全重量を基準にして約0.5重量%〜約5重量%の量で吸着剤が存在する請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
約0.1〜約1.0mmの平均中間粒度を有する粒状体が調製される請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
L−アスコルビル−2−モノリン酸三ナトリウム、またはL−アスコルビル−2−ポリリン酸ナトリウムカルシウム、またはそれらの混合物と、脂質とを含む粒状体組成物。
【請求項10】
脂質が蝋または植物油である請求項9に記載の粒状体組成物。
【請求項11】
粒状体中のL−アスコルビル−2−モノリン酸三ナトリウムまたはL−アスコルビル−2−ポリリン酸ナトリウムカルシウムの量が、約5重量%〜約40重量%の間のアスコルビン酸当量を得られる量である請求項9または10に記載の粒状体組成物。
【請求項12】
脂質の量が、組成物の全重量を基準にして約10重量%〜約60重量%である請求項9〜11のいずれか一項に記載の粒状体組成物。
【請求項13】
吸着剤が存在する場合、その量が、組成物の全重量を基準にして約0.5重量%〜約5重量%である請求項9〜12のいずれか一項に記載の粒状体組成物。
【請求項14】
粒状体が、約0.1〜約1.0mmの平均粒度を有する請求項9〜13のいずれか一項に記載の粒状体組成物。
【請求項15】
請求項9〜14のいずれか一項に記載の粒状体組成物を含有する動物の飼料および飼料プレミックス。
【請求項16】
反芻動物用である請求項15に記載の動物の飼料および飼料プレミックス。

【公表番号】特表2007−503824(P2007−503824A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525103(P2006−525103)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009781
【国際公開番号】WO2005/020704
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】