説明

リン酸アルミニウム化合物、組成物、材料及び関連金属コーティング

金属基体、実質的にアモルファス、実質的に無孔のアルミノホスフェート膜及びそれらの間の成分を含む複合体であって前記成分は基体の金属元素の酸化物と相互作用して結合したホスフェート基を含む複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアモルファス無機酸化物材料の開発に関し、それは、微細構造的に高密度で、薄膜又はコーティングとして、粉末、バルク、繊維で使用することができる多くの適用に有用である。また、本発明は、温度範囲及び厳しい環境での摩耗又は摩滅、腐食及び酸化に対する保護を提供するために、ならびに適当な高い放射率、非濡れ性及び非粘着性の表面を提供するために、薄膜の適用による金属及び合金の表面改質に関する。
【背景技術】
【0002】
米国政府は、AFOSR(空軍科学研究局)からの許可番号F49620-00-C-0022及びF49620-01-C-0014ならびにエネルギー省からのDE-FG02-OlER83149(それぞれアプライド・シン・フィルム・インクに対して)に準じてこの発明に対する特定の権利を有する。
【0003】
結晶質及びアモルファス形態を含む主として触媒支持体としての使用のためのリン酸アルミニウム材料の合成に関する多くの先行技術特許がある。主な合成方法は、一般に入手可能なアルミニウム塩及び種々のリン酸、リン酸水素アルニウム、亜リン酸等を含む種々のリン源を含む原料を用いたゾルゲル法を用いたものである。これらの方法の多くは、高い多孔質、結晶質形態及びわずかな熱安定性アモルファス組成物をもたらす(米国特許第4,289, 863号、Hillら、米国特許第5,698, 758号及び第5,552, 361号、双方Rieserら、米国特許第6,022, 513号、Pecoraroら、米国特許第3,943,231号、Wasel-Nielenら、米国特許第5,030, 431号、Glemza、米国特許第5,292,701号、Glemzaら、米国特許第5,496, 529号及び第5,707, 442号、双方Fogelら)。2つの先行技術特許は、アモルファスのリン酸アルミニウム組成物の形成を教示する。しかし、誘導された材料は、触媒の適用に要求される高い多孔質である。米国特許第4,289, 863号は、非常に低い温度で結晶化するAlに乏しい組成物よりも、より熱的に安定なAlに富むアモルファスのAlPO4組成物の新規な合成方法を教示する。米国特許第6,022, 513号は、微細構造の異なる形態のアモルファス・アルミノホスフェート材料をもたらす、Alに富む組成物のわずかに改変した製造方法を教示する。しかし、両合成方法は、Pecoraro 特許(孔が60nmから1000nmである(米国特許第5,698,758号))に示すように、表面積が90から300平方メートル/gにわたり、微細孔容量が少なくとも0.1ccs/gの高い多孔性材料をもたらす。
【0004】
そのような先行技術のアモルファス材料の多くの有用性は、金属及び合金、ガラスならびにセラミック基体上の薄膜としての使用である。この有用性を容易にするため、さらなる特性の組合せが、上述した基体に良好な粘着力を与える、安定で、低コスト前駆体溶液及び環境にやさしくて、費用効果が良好で、用途が広いコーティングプロセスを含むため、有利である。保護及び他の表面関連機能を実行するために、金属及び合金基体へのコーティングの必要が高まっている。大部分の先行技術の方法は、特に金属及び合金基体への粘着力を向上させるために、特別な前処理又は追加の層のいずれかが必要である。ペンキ産業では、リン酸塩処理剤を含むプライマーの使用がよく知られている。化成被覆が、腐食保護を与え、ペンキで粘着力を促進する処理前技術として当該分野でよく知られている。この方法では、金属リン酸塩又はクロム酸塩を形成するために基体の金属成分と反応するリン酸塩又はクロム酸塩を含む酸又は他の化学薬品で、金属又は合金表面を処理する。しかし、これらの方法は環境に有毒であり、十分な保護は果たさない。同様のプラマー層が、金属及び合金へ粘着性コーティングを適用するために使用されている。しかし、これはコストを増加し、多層コーティングシステムにおいて材料特性に適合するものを見つけるために、さらなる制約が課される。腐食保護及び他の目的のために、良好な粘着性及び実質的に無孔の双方のアモルファス無機層を達成するワンステップコーティングプロセスの開発が熱望されている。
【0005】
先行技術は、リン酸塩が金属基体への粘着力を向上させる優れたプライマーであることを教示する。いくつかの特許は、金属面へのより良好な粘着力のための官能基としてリン酸塩を用いることを基礎としている。例えば、米国特許第6,140,410号を参照すること。P−O-/M2+イオン結合の形成によって金属にポリウレタン樹脂の粘着力を向上させるために、リン酸塩モノマーを選択し、最終的なリン酸化ポリウレタン樹脂の主鎖にホスフェート反応基を付与する。例えば、米国特許第6,221955号を参照のこと。また、金属表面にポリマー材料を結合させる前に、非ホスフェート粘着−促進組成物を金属表面に接触させることによって、金属及びポリマー材料間の粘着力を強化させる。米国特許第6,554948号を参照のこと。
【0006】
ゾルゲル法によってスチール表面に薄層を適用することに関する多くの研究がなされている。例えば、耐腐食性を向上させるために、ステンレススチール表面を二酸化ジルコニウム層で被覆する。ホウケイ酸ガラス層も研究されている。
【0007】
しかし、加工しにくいシステム(ZrO2等の高融点酸化物)は、上記技術によって高密度層にならず、ホウケイ酸ガラス層は、1ミクロンよりかなり薄い層の膜厚でしか塗布することができないため、十分な機械的及び化学的保護を確保することができないことが見出された(金属へのゾルゲルコーティング、M. Guglielmi、Journal of sol-gel science and technology, 8,443-449 (1997);酸化物コーティング用ゾルゲル法、L. F. Francis、Materials and Manufacturing Processes 12,963-1015, 1997)。種々の基体を保護するために耐熱性で安定なアモルファス高密度コーティングを用いることが望ましい。アモルファスコーティングの主な長所は、適当なプロセスが開発されると、基体を潜在的に腐食し得るガス又は液体の接触を防止するように、基体上に空気遮断シールを付与することができる。実質的に孔又はクラックのない均一な結晶質のコーティングを堆積させるために、多くの方法が開発されている。結晶質のコーティングは、ガス又は液体に晒されることを防御する空気遮断を与えない。
【0008】
二酸化ケイ素を主成分とするアモルファスコーティングが開発されている。最近の特許は、そのようなコーティングを堆積させるユニークな方法を規定する(米国特許第6,162、498号)。しかし、そのコーティングは、特定の厳しい状況下で耐久性がなく、高温で熱的に安定でないか又は処理制約のために、ガラスへの透明なコーティングとして十分に機能しない。また、高温安定ガラス質又はガラス状のコーティングが開発されている。これは、まず、基体をガラスフリットのスラリーで被覆し、続いてガラスフリットを溶融してガラス状のコーティングを形成するために被覆材料を十分高温で処理する。多くの異なる組成物でのガラス状のエナメルコーティングが、何十年間にもわたって存在している。しかし、それらは、通常、厚く、多孔質で、高温で変形する。空気遮断保護がこの方法で達成されるかもしれないが、ガラスフリットを溶融する高温処理の必要性は基体を劣化させるかもしれず、低融点ガラス組成物が選択されると、それらは、ナトリウムの存在のために耐久性がなくなるかもしれない。
【0009】
米国特許第6,403,164号は、腐食に対する保護のために、有機−無機複合膜を使用する方法及び他の用途を開示している。堆積膜は高密度で孔がないが、高温適用(300℃以上)に適しておらず、膜中に有機材料が存在するために、比較的柔らかい。そのような膜は、摩耗又は摩滅に抵抗性を示さない。
【0010】
先行技術のコーティングは、種々の方法に由来して、金属上にアモルファスのリン酸アルミニウムを含む。英国特許第1,451,145号は、化学溶液法を用いて、金属上にリン酸アルミニウムの水和物形態のコーティングを形成する方法を開示している。そのコーティングは、低温硬化法及び水の存在(水和物形態)のために、硬質でなく、多くの適用で遭遇する摩滅に対する耐性が十分でなく、十分な酸化又は腐食保護を与えるために、無機形態で微細構造的に高密度でない。
【0011】
英国特許第1,322,722号、第1、322,724号及び第1,322、726号ならびに、「アルミニウム及び他の金属ホスフェートの可溶性複合体由来の新規な低硬化温度、ガラス質、無機コーティング」のタイトルで公開された文献(Chemistry and Industry, vol.1, (1974) 457-459)は、HC1及びヒドロキシ−有機リガンドを伴うリン酸アルミニウムからなる可溶性ポリマー複合体の利用を開示する。高密度アモルファスリン酸アルミニウム膜は、この方法を利用していると報告されたが、それらの乏しい性能に関連して、それを商用用途で実行することができないいくつかの欠点がある。第1に、その膜は、多くの金属及び合金にとって望ましくない残留塩素(最低1重量%)を含む。第2に、膜が硬化するにつれて、重要な環境問題となる毒性のHC1ガスが放出される(複合体は、1モルのAlPO4に対して1モルのHC1を含む)。第3に、その合成法は、結晶質形態の複合体を分離し、次いで、それを適当な溶媒に溶解させるなど、比較的複雑であり、実用的な適用で実行するのを困難にする。
【0012】
上述した先行技術で前駆体を形成するためには、不活性及び/又は真空処置が必要であり、さらに、調製された前駆体溶液が十分な保存安定性を有するかどうか、あるいは、溶液が環境に晒されることで分解する(リガンドとして存在する、揮発性有機物の存在(例えば、エタノール)のための潜在的な懸念)がどうか、明確ではない。また、酸化又は腐食テストにおける金属基体への膜の堆積又はそれらに対する作用に関して、特に例示されていない。前駆体溶液が高い酸性の性質を有するために、金属又は合金基体は、膜形成中、塩化物の攻撃をうけ、深刻な腐食にさらされるかもしれない。
【0013】
さらに、硬化温度が低いため、耐久性のある膜を与えるのに十分なほど、基体への粘着力が高くないかもしれない。200から500℃の範囲の硬化温度が示唆されているが、ほとんどの場合、200℃以下の硬化温度が用いられ、500℃で硬化した膜の具体的な実施例は示されておらず、微細構造的に関する情報はない。さらに、コーティングは、溶融アルミニウムに付着することが見出された。リン酸アルミニウムは、純粋な結晶質又はアモルファス形態で、溶融アルミニウムと化学的に親和性があるが、表面エネルギーが低いため、非濡れ性となることが見出されている。先行技術のコーティングは、粘着力が弱いために、コーティングは化学的に耐久性がなく(塩素が存在し、フィルムカバレージが乏しく、又は高温特性が乏しいために)、非粘着性又は非濡れ性の塗布への適用性を利用することができないほど、表面のエネルギーが十分に低くないと考えられている。
【0014】
上述した先行技術では、さらに、シリコン及びホウ素を付加することにより材料のアモルファス特性を拡張することが必要であった。これらを付加することにより、3時間、1090℃で粉末材料をアニールした後に、十分な結晶質含量(鱗珪石及びクリストバライト石)が存在した。後述するように、本発明では、鱗珪石相の存在のみで、大量の非結晶質含量が、より高温及び長時間で熱処理した後に、種々のAl/P化学量論の材料が見出された。種々の技術を用いて製造されたアモルファス材料は、それらの原子拡散係数及び高温特性をかなり変化させ得るほど、独特の構造又はネットワーク部分を有しているかもしれないことは、珍しいことではない。上述した特許の下で誘導される材料のネットワーク構造は、強固な微細構造を与えず、特に高温で使用に適していないかもしれないようである。
【0015】
このように、先行技術の方法で製造される材料は、微細構造的に高密度でないか、所望の保護を与えるのに十分強固でない。さらに、先行技術の方法のいずれも、経済的で、安定で、透明な、適当なプロセス又は前駆体溶液を与えず、種々の公知の技術(例えば、ディップ、スプレー、ブラッシュ及びフロー)を使用して適用することができない。さらに、先行技術の方法と関連するプロセスのいずれも、大部分の適用にとってきわめて重要である基体への良好な粘着力を与える能力を提供しない。材料が熱処理に付されるか、腐食性の環境にさらされる場合、先行技術のコーティングは、特定の大気条件下で、もしくは、特定の厳しい産業又は使用環境下で、耐久性がない。また、先行技術の無機コーティングは、透過特性が影響するガラス又は基体(金属的外観)の美的な特性を保存する必要がある他の基体での使用に対して、完全に透明とならない。
【0016】
関連した技術的な考慮として、高強度金属(例えば、ジルコニウム及びジルコニウム合金、チタン及びチタン合金、合金スチール等)は、水素原子にさらされると、脆弱になる。この脆性は、金属格子への水素原子の侵入に関連していることが知られており、広範囲な研究のテーマとなっている。解明に対して懸命な努力が行われており、このような水素脆性と格闘しているにもかかわらず、この現象は、未だ、例えば、ジルコニウム合金で製造される原子力発電所の伝熱配管、チタン合金で製造される超音波の航空機セグメント及び合金スチールで製造されるボルト及びシャフトのような機械部品等の故障の主な原因となっている。
【0017】
過去において、ほとんどのコーティング材料を通過する水素の非常に高い透過性に起因して、ほとんど失敗に終わった拡散バリアとしてのコーティングの使用によって、この破局的な現象を克服する取り組みがなされている。パラジウムコーティングは、理論的には、その優れた特性及び適度な表面硬度の観点から検討されるかもしれないが、パラジウム膜を適用する商業的に魅力的な方法は、高い表面被覆率を必要とする。しかし、そのような表面被覆率は、しばしば好ましくない膜特性を招く。そのような多くのプロセスにおいて、パラジウム膜は、脆く、クラックに影響されやすいことを見出している。さらに、そのプロセスは高価で、環境的に有毒な副産物を生じる。
【0018】
水と反応する、電圧系手段に配置する金属は、腐食されやすく、水及び/又は酸素による攻撃を防御する保護コーティングを必要とする。この目的に対して、先行技術では、非常に広範なプロセスを含むが、良好な結果をもたらさなかった。アルミニウムの陽極処理(エロクサール法)は、非常によく知られた保護アルミナ膜を形成する方法であるが、そのプロセスは、ピンホールのないアルミナ膜を製造することができず、関連する電解法はその適用を制限し、また、環境的に有毒な物質を生じる。
【0019】
上記から明らかなように、アモルファス・アルミノホスフェートの微細構造的に高密度な形態は、多くの適用にとって非常に有用であろう。しかし、先行技術の材料は、例えば、高温で腐食され、酸化されるため、これらに対して基体を十分な保護しないであろう。複合体を強化する用途のためのファイバー、あるいは光学的な適用に対して使用するためには、多孔性は望まれない。フォトニック又はレーザーアプリケーションのために、ガラスのホスト材料として、リン酸アルミニウムが望まれる。エルビウムドープ燐酸ガラスは、繊維として又は平面導波アンプのために開発されており、そこでは高密度材料が、散乱によるいかなる損失もなく、光伝送するために要求される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上で議論される先行技術の全ての欠点を踏まえて、広範な適用のために化学的に耐久性があり、熱的に安定なアルミノホスフェートの安定で、微細構造的に高密度な形態に対する要求がある。従って、本発明の目的は、保護的、機能的及び多機能的な基体コーティングのためのアモルファス・アルミノホスフェート化合物、組成物及び/又は材料を提供することである。このように、良好な接着性で、簡便で、環境にやさしいプロセスを伴う低価格で、種々の基体に堆積することができる、高密度で、平滑で、連続的で、気密な又は実質的に無孔で、透明な、耐久性のあるガラス質のコーティングを開発する必要がある。金属/合金基体に利用する大部分の現行の及び新たな適用は、腐食保護とともに他の特性を誘導することができるような多機能のコーティングを必要とする。例えば、抗菌性コーティングは、金属基板に対する細菌及び疾患の蔓延を制限することが求められる。腐食及び抗菌性保護の双方を提供するコーティングを開発することが望ましい。このように、熱的に安定で、強固なガラス質のコーティング材料が、多機能な特性を誘導するために柔軟とすることができ、かつ、工業的及び商業的な適用における用途に対して実用的である(つまり、低コストで、単純で、環境への適合性を与えるような)、付随する前駆体システムを伴って開発されなければならない。
【0021】
本発明の1以上の観点が特定の目的に合致し、一方、本発明の1以上の観点が特定の他の目的に合致し得ることは、当業者によって理解されるであろう。それぞれの目的は、その全ての点において、本発明のすべての観点に対して同等にあてはまらないかもしれない。このように、以下の目的は、本発明のいずれかの1つの観点に対して選択的に捉えることができる。
【0022】
本発明のさらなる目的は、好ましくは耐摩耗性と組み合わせて、非常に広範囲な種々の金属基体に対する効果的な腐食保護を提供するガラス質コーティングシステム(好ましくは透明で)を開発することである。
【0023】
本発明によれば、この目的は、金属の上にアルミノホフフェートコーティングを堆積させることによって達成することができることが見出されている。無機ネットワークのために、結果として生じるコーティングは耐摩耗性をも備えており、それは、ナノスケールの粒子を取り入れることによってさらに強化することができる。ナノ粒子は、約1nmから約500nmの範囲の粒径を包含する。ナノサイズの粒子を取り入れることの他の効果は、そのようなコーティングが透明なままであるということである。従って、本発明は、無機ガラス質の酸化物膜を形成することによって、金属基体を腐食から保護する方法を提供する。
【0024】
本発明によれば、特定の前駆体を用いて、ガラス質層を金属表面に形成することができることを今回、見出しており、その層は、約10ミクロン未満の大きさとすることができる。驚くべきことに、そのような層が高密度アルミニウムホスフェート膜(例えば、ステンレススチール又はスチール表面において)に変換することができることをも見出している。そのような膜は、約2、3nmから約2、3ミクロンの厚さであり、金属基体への酸素の侵入を、それぞれ防止又は激減させ、高温においても腐食に対する良好な保護を確保する密閉シール層を形成する。さらに、そのような層は、耐摩滅性である。さらに、そのようなコーティングは、可撓性であり、つまり、表面の折り曲げによっても、その層にクラックも他の劣化ももたらさない。
【0025】
本発明の他の目的は、上述した適用における使用のために、アルミノホスフェート材料の安定で、微細構造的に高密度な形態を開発することである。発明のさらなる目的は、粉末、コーティング、ファイバー及びバルク材料の形態においてアモルファス材料を開発するために、低価格で、簡便で、用途の広い化学溶液ベースの方法を開発することである。
【0026】
本発明のさらに他の目的は、アモルファス・アルミノホスフェートの高品質な高密度コーティングを与える適当な透明な前駆体溶液を調製することである。さらなる目的は、他の添加剤を、新規なアモルファス・アルミノホスフェート組成物を製造することができるような溶液に添加することができるような適当な前駆体溶液を開発することである。添加剤は、溶液が透明であるような化学形態で添加することができるか、添加剤は、スラリーベースの溶液を与えるためにコロイド状又は粉末形態において添加することができる。使用される前駆体形態のいずれにおいても、得られる硬化した材料は、ナノ複合体(アモルファス・アルミノホスフェート・マトリクスに埋設された又はカプセル化されたナノ粒子、ナノ結晶又は結晶)の形態とすることができ、ガラス・マトリックス内に均一に分散したドーパントとして存在することができる。これらの形態のいずれかにおいて、添加剤は、個々に又はアルミノホスフェート・マトリクスとともに、多くの適応のために有用な特定の機能性を誘導することができる。そのような「混合」アルミノホスフェート組成物は、粉末又はコーティング又はファイバーとして、あるいはバルク材料として形成することができる。本発明の他の目的は、限定されないが、光学的、化学的、触媒的、物理的、機械的及び電気的特性を含む種々の機能を誘導するために、アモルファス・マトリクス材料内の含有物を伴う本発明の化合物、組成物及び/又は材料の膜を開発することである。そのような含有物は、合成プロセス中、その場で製造することができ、それらは金属、非金属及びいずれかの元素を組み合わせた化合物を含むかもしれない。そのような例の一つは、高放射率を提供するためのナノサイズの含有物としてカーボンの形成を含み、機械特性を強化する。高温で耐久性がある高放射率のコーティングは、熱に対する保護が望まれる多くの適用にとって望ましく、又はそのようなコーティングは、炉、ダクト、ボイラー、熱交換器等における入射熱流速を再放射することによりエネルギーの無駄をなくす。
【0027】
本発明の目的は、コーティング特性を強化し、あるいは化学的、物理的、光学的、電気的、機械的及び熱的特性を誘導又は強化するナノ結晶(ナノ複合体コーティング)を創出するために、P/Al比及びそこに含まれるいくらかのさらなる金属にかかわらず、その分子構造の特徴として、O=P−O−Al−O−Al結合配列(P及びAlに結合することができる有機又は他のリガンドとともに)を有する材料を提供することである。
【0028】
本発明の目的は、耐腐食性又は耐酸化性を提供し、及び/又は温度及び環境にわたって非付着性を誘導する、材料コーティングを有する金属又は合金の表面改質を提供することであり、ステンレススチール、アルミニウム合金、ニッケルを主成分とする超合金、インコネル及び他のスチール合金での有効性が立証されている。
【0029】
本発明の目的は、約0.05ミクロンから約10ミクロン(好ましくは、約100nm、より好ましくは約500nm、最も好ましくは約1ミクロン)のコーティングを開発するための材料を提供することであり、そのコーティングは、高密度で、連続的で、平滑で、均一で、透明である。本発明の化合物、組成物及び/又は材料ならびに/もしくは関連コーティングは、気密であり、つまり、液体又は気体の侵入のための開口した孔又は経路を有さず、及び/又は微細構造的に高密度であり、つまり、実質的に無孔で及び/又は孔容積が略ゼロに等しい。本発明のさらに他の目的は、どのような適用に対しても望まれるような透明又は不透明である約50nmから約10ミクロンの範囲の薄膜を開発することである。本発明のさらに別の目的は、基体の外形又は特徴を、保護のため又は表面改質の他の目的のために堆積された膜の厚さに対応させるために調整される必要がないように、厳しいデザイン耐性のメンテナンスを必要とする適用のためのこれら薄膜の使用を可能にすることである。約1ミクロン以下の薄膜として、本発明の化合物、組成物及び/又は材料の膜によって、十分に効果的で、基体改質がほとんどの適用のために必要でない。
【0030】
本発明の目的は、炉又は加熱又は赤外線ランプ又はUV照射(好ましくは800℃で、より好ましくは600℃で、最も好ましくは500℃で)を用いた硬化されたコーティングを提供することであり、熱を伴うUV照射は、250℃でコーティングを硬化することができる。本発明の関連する目的は、コーティング材料の良好な粘着のための硬化方法を提供することである。
【0031】
本発明の目的は、ディップ又はスプレー又はフロー又はブラッシュ・ペインティング法を用いて堆積したコーティングを提供することである。本発明のさらなる目的は、安定で(環境にさらされた場合、加水分解又は分解しない)、透明な前駆体溶液を利用する方法を開発することであり、ディップ、スプレー、フロー及びブラッシュ法を含む用途が広い堆積プロセスが可能であるだろう。
【0032】
本発明の目的は、短時間で保護コーティングとして機能するが、長期にわたる高温での接触においても保護コーティングとして機能する材料を提供することであり、それは、安定な酸化物のみがその直下に形成するように、初期段階に金属/コーティング界面で、低酸素分圧によって達成することができるので、長期間、基体の保護を強化する、その条件の下で保護酸化物スケールを形成することを促進する。例えば、ステンレススチールAUS304は、多孔質の鉄又はマンガン酸化物に優先して、高密度のクロムに富む酸化物が形成される。より高いクロムスチールがこの理由のために好ましいが、本発明の材料は、低Cr含有スチールでさえ、Crに富む酸化物スケールのために、耐酸化性のままである点に留意する必要がある。この証拠は、X線回折及びスケールを横断する元素プロファイルで得られた。同様の現象は、アルミナスケールが、酸化の初期段階で優先して形成される、ニッケルを主成分とする超合金で起こる。酸化率のオーダーの差異が、これらのコーティングの存在のために現実される。これは、低価格の合金の使用を特定の適用のために選択することを可能にし、合金組成物は、例えば、耐疲労性、熱伝導率、熱膨張、電気特性等の他の特性(抗酸化性でない)を促すために調整することができる。
【0033】
本発明の目的は、遮熱コーティング(TBC)適用を提供することである。ボンディングコートとセラミックコーティングとの間のアルミナスケールの成長は、TBCの時期尚早の不具合をもたらす。本発明のコーティングは、MCrAlYタイプのボンディングコート上に堆積することができ、次いで、TBCが堆積され(好ましくは、電子ビームPVDによって)、それによって、用益中のアルミナスケールの成長が、制限され、破砕のためにTBCの破滅的な不具合を防止するであろう。原理の証明は、1100℃以上の酸化で重量増加が低減したことを示す、ボンディングコート上への本発明の化合物、組成物及び/又は材料の堆積ですでに証明されている。
【0034】
本発明の目的は、低摩擦表面(0.1以下の摩擦係数が、スチール合金へのコーティングで測定された)を与えるために十分に平滑な材料コーティングを提供することである。これは、温度及び環境の範囲にわたって、高温固体潤滑油として、又は、耐磨耗性コーティングとして材料を使用することを可能にする。この場合、本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、多機能の保護コーティング(材料コーティング内のナノクリスタルは、耐摩耗性を向上させるか、熱特性を調整するために添加することができる)として用いることができる。本発明のさらに他の目的は、多くの適用のために望まれる基体表面の荒れを低減することである。堆積された本発明の化合物、組成物及び/又は材料膜の平滑特性は、ほとんどの基体の平坦化を可能にする。これは、表面の非濡れ性又は非粘着性を強化するのに役立ち、さらに、金属/合金基体上の安定な酸化物表面に起因する低表面エネルギーの恩恵が付加されることにより、低摩擦表面をもたらす。本発明の関連した目的は、コーティングの気密な性質のために、いかなる金属/合金でも大気の腐食からの保護を提供することである。
【0035】
本発明の目的は、「腐食を促進する」原因となる欠陥を含む金属及び合金表面の保護を提供することである。これらの部位での湿気への接触は、高温の酸化で、しばらくした後、表面のミクロンサイズの欠陥が、表面でついに一体化して「分離」酸化("breakaway" oxidation)を導く、幅100ミクロン以上のピットに広がるという挙動をもたらす。本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、これらの欠陥を等しくカバーし、加速した腐食を消失させる。この問題のため、金属及び合金は、そのようなコーティングの使用で低減又は消失させることができる完璧な表面処理(それは労働と材料コストをもたらし、無駄を生み出す))に付される。
【0036】
本発明の目的は、非粘着性のために、可動部品が用いられる多くの適用で使用することができる金属及び合金に材料コーティングを提供することである。金属軸等は、用益中、前後に動かされ、表面に固着するデブリスがあれば、運動は影響されて、結局その部品の不具合につながる。本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、これらの部品への望まないデブリスの固着を許さないに有用であろう。その平滑な性質は、スライドする特徴を改善する。それは、特定の適用のために、誘電体又は絶縁コーティングの働きをするのにも役立つかもしれない。
【0037】
本発明の目的は、腐食性で、高温環境に悩む石油産業のために非常に適した非粘着性の保護材料を提供することである。エチレンクラッキングチューブにおけるコークスの堆積は重大な問題であり、脱コークスプロセスは高価で、時間がかかる。本発明の化合物、組成物及び/又は材料のコーティングは、コークスの堆積を避けるために、合金層の上面に堆積させることができる。
【0038】
本発明の目的は、溶融材料プロセスのための保護コーティングを提供することである。本発明の材料のアモルファスで、高密度で、非粘着性の性質は、非粘着表面を提供するのに非常に適している。ダイカスティングにおける耐久性のある離型剤として使用することができる。アルミニウム及び他の金属キャスティングプロセスで現在使用されているほとんど離型剤は、1回のキャスティングサイクルでのみ耐久性があるポリマー系である。本発明の化合物、組成物及び/又は材料のコーティングの耐久性及び硬度は、数サイクルにわたって、耐久性があるようにするのに有用で、時間とコストを節約するであろう(本発明の被覆製品は、他の被覆製品より2倍長く持続し、溶融アルミニウムプロセスのための有効な非濡れ保護コーティングとなることが証明されている。また、発明の化合物、組成物及び/又は材料は、エナメルコーティングの上面に堆積することができ、より高い多孔質構造をシールする)。本発明は、溶融アルミニウムと同様に、溶融ポリマー、溶融ガラス及び非鉄溶融金属を含む他の溶融材料に対して保護機能を有する。
【0039】
本発明の目的は、広範囲にわたる産業で使われる多くの金属及び合金の部品のために、電気的絶縁性を提供することである。場合によっては、電気的絶縁性及び耐腐食性の双方が必要である。本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、いくつかの適用に適当な誘電体として用いることができる。コーティングのピンホールのない特性は、非常に魅力的である。誘電体コーティングは、例えば、可撓性のある太陽電池金属基板(次世代の要求)に望まれる。半導体又は薄膜処理装置内のプラズマ環境で使われる金属及び合金の安定性は、主な懸念である。コーティングは、これらの金属及び合金上に堆積することができ、保護を与える。さらに、本発明の目的は、半導体のために低誘電率膜を、及び防御アプリケーションのために熱的に安定した低視認性コーティングを提供することである。
【0040】
本発明の目的は、金属及び合金上に抗変色保護コーティングを提供することである。ポリマー製品はこれらの部品(ドアノブ等)上に保護コーティングを堆積するために用いられるが、それらは耐久性がない。本発明の化合物、組成物及び/又は材料は耐久性があり、外観に影響しないように透明とすることができる。
【0041】
本発明の目的は、金属合金を水素脆性から保護することである。
本発明の目的は、コーティングが基体に付着している間、熱サイクル条件下で金属及び合金を腐食及び酸化から保護することである。
【0042】
本発明の目的は、限定されないが、ガラス、金属、合金、セラミック及びポリマー/プラスチックを含む基体上にそのようなコーティングを堆積することができることである。本発明のさらなる目的は、材料の極薄膜が基体に十分な保護を与えるように、非常に安定で、低い酸素拡散係数を有するコーティング材料を開発することである。これは、先行技術のコーティング材料(厚く、非気密コーティングが使われ、熱サイクル中にクラックを引き起こしたり、剥落したりして、使用中に部品の破滅的な不具合を引き起こす)に勝る重要な利点である。これは、特に、非常に高温が使われる航空宇宙及びエネルギー適用の懸念となる。本発明のさらに他の目的は、厳しい環境に対してやさしい広範囲における温度(約1400℃以上の極低温を要する低温)範囲にわたってそのようなコーティングの使用を可能にする。本発明のさらに他の目的は、非濡れ性又は非粘着性が要求されるアプリケーションで有利なアルミノホスフェート材料の低表面エネルギーを利用することである。これらは、限定されないが、水、溶液、化学物質、固体、溶融塩、溶融金属及び大気汚染物質(有機物質を含む)に対して非濡れ性であることを包含する。
【0043】
本発明の目的は、環境を酸化、還元する双方において、金属及び合金基体を保護することである。金属及び合金は、ガス、液体及び固体がある温度範囲にわたって接触する種々の環境で用いられる。例えば、還元環境を誘導する水素又はガスは、金属及び合金と反応して望まない反応生成物を形成するもしれず、あるいは、水素は、材料へ拡散して、よく知られた水素脆化の現象を招くかもしれない。燃料電池は、例えば、酸化及び還元環境の組み合わせにおいて動き、それらの構築で使われる材料は、種々の条件に耐えることができなければならない。本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、薄膜として使用され、厳しい環境、特に高温を必要とするこれらのアプリケーションの多くで使用される種々の材料の構築に対して必要な保護を提供することができる。溶融材料は、限定されないが、金属硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム)、金属バナジウム酸塩、溶融ポリマー(ホットメルト接着剤)、溶融金属(アルミニウム、亜鉛)を含み、用益中、金属/合金成分を劣化させる広範な産業の処理環境において用いられ、存在する。堅牢な性質(低原子拡散係数)のため、100nm程度の薄膜は、望ましい保護を与えるのに十分である。そのような薄膜の使用能は、それらが熱サイクルで、クラックがはいったり、剥落したりしないため、特に有用である。さらに、それらは、本発明の化合物、組成物及び/又は材料の堆積膜の膜間剥離を防止することに有用であり、酸化又は腐食から、下層にある基体を保護する。
【0044】
本発明のさらに他の目的は、基体上に堆積された発明の化合物、組成物及び/又は材料膜の表面で、有機物を自己吸収することを可能にすることである。大気中の特定の有機物の汚染物の存在のために、本発明の化合物、組成物及び/又は材料の表面が、大気条件下で、そのような有機物質と反応し、有機材料又はその改変形態と、自己吸収プロセスを経て安定な結合を形成する。そのような有機膜は、さらに複合体構造の表面エネルギーを低下させ、よって、疎水性又は非濡れ性を与える。また、有機フィルムは、簡便なディップコーティングプロセスを用いて、限定されないが、オレイン酸及び有機シランを含む本発明の化合物、組成物及び/又は材料膜に堆積することができる。有機層の存在は、フーリエ変換赤外線の分光器(本発明の化合物、組成物及び/又は材料の表面に付着した有機基に起因する2994、2935、1702、1396、1337及び972cm-1での吸収帯が観察される)を用いた表面の有機基の観察によって特徴づけられる。
【0045】
有機層は、本発明の化合物、組成物及び/又は材料の表面に堆積することができ、特定の材料との結合を促進するために、親水性の挙動を促進する。例えば、金属及び合金へのポリマーの接着性は乏しい。種々のポリマー及びセラミックと結合する金属上で、接着剤及び耐腐食層として、本発明の化合物、組成物及び/又は材料の表面を使用することは、接着性を強化するであろう。本発明の化合物、組成物及び/又は材料自体の表面の酸化物の特性が、直接ポリマーへの接着を促進することができるが、接着性は、さらに、ポリマー又は他の材料との結合の前に膜の上面に適当な親水性有機層を堆積することによって、さらに高めることができる。よって、本発明の化合物、組成物及び/又は材料の表面は、疎水性又は親水性を与えるために、有機物で調整することができる。
【0046】
本発明の他の目的、特徴、利点及び長所は、上述、本発明の要旨及び種々の実施例の以下の記載から明らかになり、それらは、種々のコーティング、保護基体及び/又は複合体の知識を有する当業者に容易に明らかとなるであろう。そのような目的、特徴、利点及び長所は、添付の実施例、データ、図面及びそれらから描かれる全ての合理的な結論又はここに組み込まれた参照文献を考慮して、上記から明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0047】
意外にも、微細構造的に高密度のアモルファス・アルミノホスフェート材料は、エタノール又は他の液体媒体中の五酸化リン(phosphorous pentoxide)及び硝酸アルミニウム水和物の低コスト前駆体を用いて調製することができることを見出した。500℃以上の温度での前駆体の熱分解は、1400℃まで、結晶化に対して耐性を示す、安定で微細構造的に高密度のアモルファス・アルミノホスフェート材料を与える。
【0048】
より重要なことに、前駆体溶液は、金属及び合金、ガラスならびにセラミック基体に対して、良好な膜を形成し、接着性を有することが、意外にも見出された。いかなる理論に縛られずに、粘着力は、主に、前駆体溶液と金属基体における構成物の間のホスフェート結合によって促進されることが提案される。上記のように、ホスフェート結合は、金属及び無機間ならびにセラミック材料間で粘着力を向上させることがよく知られている。本発明で利用されるより高い硬化温度(500℃以上)は、接着の促進を助ける。前駆体は、これらの高温で、大気中で分解し、金属基体の若干の酸化が誘発され、金属酸化物の形成(層又は分離した島のいずれかとして)を導く。前駆体に含まれるリンは、少なくとも部分的に、ホスフェート結合によって酸化物と結合し、硬化後に基体と堆積膜との間の良好な接着を可能にする。先行技術の方法はこの利点を提供しない。これは、粘着性を高めるために、いずれもの特別な前処理又は下層の別個の堆積を必要とすることなく、良好に接着した膜をもたらす。
【0049】
本発明のアルミノホスフェート化合物、組成物及び/又は材料の実施形態は、アプライド・シン・フィルム社のCerablak(商標)で市販されている。この発明に関する種々の考慮すべき問題は、米国特許第6,036,762号及び第6,461,415号、係属中の特許出願第10/266,832及びPCT/US01/41790号に開示されており、全趣旨を参照することによりここに取り込む。
【0050】
本発明の化合物、組成物及び/又は材料での金属被覆膜の事後分析は、基体又は堆積膜と比較したその化学形態において異なる「界面層」の特性を示す。被覆された金属及び合金を観察すると、光学顕微鏡下、本発明の化合物、組成物及び/又は材料の透明膜の直下にしばしば多彩な層が現れる。例えば、軟スチール上に堆積された膜のX線回折は、酸化鉄(Fe23)の形成に対応するピークを示す。しかし、他の場合には、界面層が間接的に観察される。例えば、ステンレススチール上に堆積した膜のTEM顕微鏡写真は、例えば、中間層の存在を示さないが、FTIR及びラマンスペクトル分析は、本発明の化合物、組成物及び/又は材料又は基体又は基体上に形成されているかもしれないいずれかの酸化物のいずれにも割り当てることができない結合に対応する吸収を示す。M−O−P結合は、観察された良好な粘着力を実現する助けとなる硬化プロセス中に界面で形成されると考えられる。よって、最終的にコーティングされた材料の構造は、界面又は接着層に加えて、基体及びアルミノホスフェート間に成分を含むことを規定することができ、連続したホスフェート結合金属酸化物又は膜のホスフェート基と結合した酸化物層、あるいはそれらの混合物を含むかもしれない。このように、適当な硬化プロセスを伴う前駆体システムを利用する利益は、良好な接着性のガラス質膜をもたらす。
【0051】
被覆合金をより高温(800℃以上)にさらすと、堆積したコーティングの直下の酸化物形成が実質的に減少し、さらに、酸化物スケールの組成物が、被覆されていない材料で観察されるものと実質的に異なることが観察される。いかなる理論に縛られずに、コーティングが、その低い酸素拡散係数のために、所定の温度で、コーティング金属界面で低い酸素分圧を確立すると考えられ、それは合金構成物の安定な酸化物の形成を助ける。この現象のさらなる証拠を、特定の実施例によってここに示す。
【0052】
ディップコーティングプロセス(以下に詳述する)を使用することにより、薄く、高密度で、平滑で、気密で、透明で、連続したガラス質のコーティングが、基体表面に形成される。均一な膜が複合体形状の基体上に堆積することができるように、前駆体溶液は、十分に低い粘性を有する。以下に記載する種々の実施例は、過酷な暴露条件下で、その形成、耐久性及び安定性の証拠を提供する。前駆体溶液中の特定のモノマー又はポリマー種は、気密で連続した膜の形成を容易にする。ゾルゲル膜の硬化中、多くの事象、溶液の蒸発、ゲル化ならびに膜の凝縮及び高密度化をもたらす剛化がほとんど同時に起こる。膜の剛化が初期段階で起こると、弛緩の可能性がより少なくなり、膜は、多孔質となり、及び/又はクラックが入るであろう。いかなる理論に拘束されることをも望まないならば、低い加水分解−縮合率と有機物質の迅速な除去との組み合わせは、本発明で議論される前駆体溶液を用いて、クラックのない、気密なコーティングを形成する手がかりとなる。
【0053】
特定のAl/P比が特定のアプリケーションの必要を満たすのに選択することができるように、材料は広範囲のアルミノホスフェート組成物及び化学量論におよんで形成する傾向がある。Alに富む組成物は、アモルファス形態で、より熱的に安定している。化学量論又はPに富む組成物も高密度材料を生成するが、熱の安定性は制限される。しかし、それらは、温度制限が1000℃以下であるアプリケーションに有用となり得る。リン酸アルミニウムの化学量論は、約1/1のアルミニウム/リン比の化合物又は組成物を指す。
【0054】
最も意外なことは、高温酸化に影響されやすい基体において優れた保護コーティングとして機能することができるように、その材料が非常に低い酸素拡散係数を有することを見出したことである。このユニークな特性のため、保護的な気密コーティングとして機能するためには、約0.5ミクロン厚で、好ましくは約0.5ミクロン厚、最も好ましくは約1ミクロン厚で材料の極薄の高密度の膜を堆積することで十分である。そのような薄いコーティングは、コーティング及び基体の間で、熱膨張の不整合な組合せに起因するクラッキング及び層間剥離が起こりにくい。
【0055】
また、低コストの前駆体材料及び堆積法は、従来のコーティングのオーバーコート又はアンダーコートとしてのその堆積を可能にする。例えば、厚い(数ミル)金属合金コーティング(例えば、MCrAlY)がタービンエンジン、エチレン分解炉等で使用される基体上に堆積されることは、周知の技術である。本発明の化合物、組成物及び/又は材料の極薄オーバーコートの堆積は、下層コーティングの寿命を向上させ、よって、ごくわずかな追加費用で基体を強化する。上面にTBCを有するMCrAlYにおけるアンダーコートは、用益中、安定なアルミナ熱成長酸化膜の形成を助ける。さらに、本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、運転休止中又は定期保守点検中、現場で適用することができる。金属、合金及びセラミックの高温での腐食及び酸化からのその保護能について、種々の実施例が以下に示される。
【0056】
従って、より広い観点から、本発明は、金属基体、実質的にアモルファス、実質的に無孔のアルミノホスフェート膜及びそれらの間の成分からなる複合体を含む。そのような成分は、基体の金属成分の酸化物との相互作用で結合したホスフェート基を含む。アルミノホスフェート膜は、膜のリン含量1モルに対して、およそ化学量論か、化学量論より少ないか、より大きいアルミニウム含量を含む。
【0057】
一実施形態において、そのような複合体の膜は、さらに、限定されないが、カーボン、金属化合物及びそれらの混合物を含む粒子等のナノ粒子を含む。限定されないが、金属化合物のナノ粒子は、ここに記載されたものを含むが、上述の取り込まれた特許及び特許出願で記述されたそれらの材料から選択することもできる。にもかかわらず、一実施形態では、基体は、上述したホスフェート基が、酸化鉄、酸化クロム又はその組合せと相互作用して結合するように、スチール合金とすることができ、そのような結合する相互作用は、その場で、膜又はコーティングの形成における硬化中に促進される。同様に、ナノ粒子含有物又は基体自体にかかわらず、そのような複合体のアルミノホスフェート膜は、約0.05ミクロン〜約10ミクロンの膜厚とすることができる。種々の実施形態において、そのような膜は、約0.1ミクロン〜約1.0ミクロンまで、必要な厚さにすることができる。他に記載されているように、望まれる最終用途のアプリケーションで必要とされるのに応じて、膜厚によって、その膜は透明又は不透明とすることができる。
【0058】
一つには、本発明は、その中のカーボンナノ粒子とともに、実質的にアモルファスであるアルミノホスフェート化合物を含む、高温で安定な組成物を提供することができる。上述したように、そのような組成物のアルミノホスフェート化合物は、化学量論関係の範囲を超えて変化することができる。一実施形態では、組成物の安定性は、約1400℃まで又はそれを超える温度で必要かもしれず、アルミノホスフェート化合物は、リン含量1モルに対して化学量論よりも大きなアルミニウム含量を有する。にもかかわらず、そのような組成物は、さらに、任意に、上述した金属化合物のナノ粒子を含有することができる。あるいは、従来技術に比較して、実質的にアモルファスのアルミノホスフェート化合物は、塩化物イオンを含まず又は実質的に不在であり、そのような不在は、従来の対応特許において開示されているよりも塩化物量又は濃度が低いことを意味する。
【0059】
一つには、本発明は、基体の表面エネルギーを下げるために、アルミノホスフェート化合物を用いる方法を含むこともできる。そのような方法は、(1)アルミノホスフェート化合物に前駆体を準備し、そのような前駆体は、液体媒体中にアルミニウム塩及び五酸化リンをさらに含む、(2)基体にその媒体を塗布し、及び(3)非濡れ性で、実質的にアモルファスで、実質的に無孔のアルミノホスフェート化合物を基体上に与えるのに十分な時間及び温度で、その媒体を加熱する。一実施形態では、ここで記載したように、及び取り込んだ特許及び特許出願によって、液体媒体は、アルミニウム塩及び五酸化リンのアルコール溶液を含むことができる。ここに記載したように、アプリケーション技術は、ディップコーティング及びスプレーを含むが、これに限定されるものではなく、変更される。そのような方法を示す実施形態は、溶融アルミニウムと相互作用する非濡れ性のために、基体上に、アルミノホスフェート化合物の使用である。
【0060】
したがって、本発明は、また、金属基体及び基体上の実質的にアモルファスで、実質的に無孔のアルミノホフフェート膜を含む複合体を含むことができ、それによって、複合体は、当業者によって、ならびに、ここで記載された構造的、組成的及び物理的関係に従って理解されるように、表面エネルギーが、単独でそのような基体の使用によって、最初に利用可能なものよりも低い表面エネルギーを有する。
【0061】
一般に、多くのポリマー又は有機材料は、炭化水素基がフッ素系化合物で末端をなすことにより、表面エネルギーをより低下させるため、最も低い表面エネルギーを有することが知られている。そのような表面は、そのような表面に対して非粘着性で、非濡れ性又は疎水性を与える。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、調理器具を含む多くのアプリケーションで広く使われる最も有名な非粘着性の材料である。PTFE表面の表面エネルギー値は、約18mN/m2と測定されている。しかし、金属、セラミック及びガラスの表面は、比較的高い表面エネルギーを有しており、一般に、最も高い表面エネルギーを示すのが金属及び合金であり、ガラスは、これらの材料群のなかで最も低い値を有する。多くのアプリケーションに対して、金属、セラミック及びガラスの表面エネルギーを下げることが望ましい。ポリマーの堆積を含む表面改質技術が、表面エネルギーを低下させるために、産業で通常使われる。そのような特性は、流体(溶融ポリマー、油、水溶液及び他の有機溶媒を含む)の流量特性を強化することができ、比較的きれいな表面を維持して、低摩擦面を提供する。
【0062】
ポリマーコーティングは、耐久性がない。スチール成分上に、比較的平滑で、実質的に無孔で、アモルファスな膜として堆積された本発明の材料は、低表面エネルギーを与える(〜32mJ/m2)。これは、ポリプロピレンのような特定のポリマーの表面エネルギーに比較的近い。強固で、熱的に安定で、耐久性があり、耐摩耗性で耐腐食性の膜特性によって、本発明の材料の低表面エネルギーが、高温アプリケーション(例えば、溶融金属処理のための保護膜として)を含む多くのアプリケーションに利用することができる。さらに、基体の表面の粗さを低減する膜特性は、さらに、用益中、特性をさらに強化する。また、Al/P組成及び他の処理パラメータを変えることによって、さらなる表面エネルギーの低下が可能である。
【0063】
本発明の化合物、組成物、材料及び/又は方法の目的に対して、特に断らない限り、以下の表現及び用語は、当業者によって与えられた意味を有するものとして、あるいは、以下について示されるものと理解されるであろう。
【0064】
「アルミノホスフェート」は、アルミニウム及びホスフェートを含む化合物、組成物及び/又は材料を意味する。限定されることなく、そのような化合物、組成物及び/又は材料は、式AlPO4を示し、そこでのアルミニウム及びホスフェート成分は、本発明を認識する当業者に知られている化学量論関係の範囲を超えて変化することができる。
「腐食」は、種Xの形成で、対応する金属陽イオンへの酸化(変換)をもたらす金属のいずれかの変化を意味する。そのような種Xは、通常、(任意に、水和した)金属酸化物、炭酸塩、亜硫酸塩、硫酸塩又は他の硫化物(例えば、AgのH2Sの作用の場合)である。
【0065】
「金属基体」は、全体が1以上の金属からなる又はその表面に少なくとも1つの金属層を有するいずれかの基体を意味する。
「金属」及び「金属の」は、純粋な金属のみならず、金属及び金属合金の混合物をも意味し、これらの金属及び金属合金は、腐食されやすいものであってもよく、本発明に関連する使用のためのものであってもよい。
「上(On)」は、本発明の化合物、組成物及び材料コーティングと関連し、それらの間の1以上の層、成分、膜及び/又はコーティングにかかわらず、対応する基体との関係におけるそれらの化合物、組成物及び材料コーティングの位置又は配置である。
【0066】
従って、本発明は鉄、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、銀及び銅からなる群からの少なくとも1つの金属を含む金属基体に特に有利に適用することができるが、本発明の応用の範囲はこれらの金属に制限されない。特に本発明で利益を得るかもしれない金属合金のうち、特に、スチール、チタン、ニッケル及び銅合金について言及することができる。
【0067】
限定されることなく、特定の適用分野及び本発明の使用の実施例は、以下を含む。
構築物、例えば、スチールからなる支持体及びシャッター材料、フェース支持体(face support)、坑道支柱、トンネル及び構造物に結合するシャフト、絶縁体構造物部品、2つの金属プロファイルシート及び絶縁金属層からなる複合シート、シャッター、骨組み構造体、屋根構造体、付属器具及び供給パイプ、スチール保護板、外灯及び信号器、スライド及び回転格子戸、ゲート、ドア、窓及びそれらのフレーム及びパネル、スチール又はアルミニウムからなるゲートシール又はドアシール、防火扉、タンク、鉄、スチール又はアルミニウムからなる収集容器、ドラム、バット及び同様の容器、加熱ボイラー、ラジエータ、スチームホイラー、タービン部品、内部のある及びないホール、ビルディング、ガレージ、ガーデンハウス、スチール又はアルミニウムシートからなる面、面のプロファイル、窓枠、フェーシング部品、亜鉛屋根;
乗り物、例えば、マグネシウムからなる車、貨物自動車及びトラックのボディー部品、アルミニウムを含む又はからなる道路車両、電気部品、リム、アルミニウム(クロムメッキを含む)又はマグネシウムからなるホイール、エンジン、銅慮車両のドライブ部品、特に、シャフト及びベアリングシェル、孔質金型の充填金型部品エアクラフト、マリンスクリュープロペラ、ボート、ネームプレート及び認識票;
家庭及びオフィス部品、例えば、スチール、アルミニウム、ニッケル−銀又は銅からなる家具、棚ユニット、サニタリー設備、台所器具、照明部品(ランプ又は照明)、ソーラー設備、ロック、器具、ドア及び窓ハンドル、調理器具、フライ及び耐熱商品、郵便受け及び箱様構造物、強化キャビネット、強化箱、分類、ファイル、ファイルカードボックス、ペントレイ、スタンプホルダー、プロントプレート、スクリーン、認識票、ものさし;
日用品、例えば、タバコ缶詰、たばこ入れ、コンパクト、口紅ケース;武器、例えば、ナイフ及び銃、ナイフ又ははさみのハンドル及び刃、はさみ刃;ツール、例えば、スパナ、ペンチ、ドライバー、ネジ、釘、金属メッシュ、ばね、チェーン、鉄又はスチールウール、ワイヤーたわし、バックル、リベット;鋭利な製品、例えば、シェーバー、カミソリ、マグネシウムからなるかみそりの刃、食卓用ナイフ・フォーク・スプーン類、洋鋤、シャベル、鍬、軸、肉切り包丁、楽器、時計及び腕時計ハンド、宝石及び指輪、ピンセット、クリップ、フック、めがね、砥石ボール、ごみ箱及び排水格子、ホース及びパイプクリップ;スポーツ器材、例えば、ねじ込み式スタッド、ゴールフレーム。
【0068】
触媒コンバータ、光電池等の金属部品を含む部品は、本発明の材料で被覆することができる。あるいは、高放射率コーティングは、金属熱保護システムならびにガラスの製造、エネルギー及び金属の製造のような産業及び消費者の使用のための熱移動効率の増大、ならびに、ダクトの裏打ち、耐熱壁材料、キセノン光の熱遮蔽及び液体非鉄金属用高温フィルターの保護コーティングに有効かもしれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、ゾルゲル誘導のアモルファスなリン酸アルミニウムを主成分とする材料である。本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、約1/1から約10/1を含むアルミニウム対リン比の広い範囲にわたって合成することができる。本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、化学攻撃に対して非常に不活性で、1400℃をこえて熱的に安定であり、可視、IR及びUV範囲(200から2500nm)の光に対して十分透過性を有する。高温酸化テストは、酸素の透過に対して高い不浸透性を示している。
【0070】
本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、比較的低い温度(500℃以上)で、簡便なディップ、ペイント、スプレー、フロー又はスピンコーティングプロセスを使用して、基体上に、高密度で、ピンホールのない、薄いコーティングとして堆積することができる(図1)。それは、種々の基体上に、連続したコーティングを生成するために相当の設備投資を行うことなく、拡大するためにかなりの可能性がある。共有結合無機酸化物が高くなるにつれて、本発明の化合物、組成物及び/又は材料は化学的に不活性で(アルミナのように)、熱的に安定な材料となる。本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、1200℃を超える温度に対して安定な、ユニークな準安定のアモルファス材料である。本発明の化合物、組成物及び/又は材料のテストでは、膜の電気絶縁特性及びコーティングの連続性、気密性、保護特性が示されている。
【0071】
本発明の化合物、組成物及び/又は材料の前駆体溶液に存在する種は、固体の本発明の化合物及び/又は材料の特性を引き出すのに用いることができる。全体的な実験的証拠に基づいて、前駆体溶液の主な成分は、Al−O−P結合を含む複合体を含むと考えられる。この結論は、前駆体溶液、乾燥ゲル及び焼成粉末中でのAl−O−Al結合の確認に主に基づいている。前駆体溶液の31P核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、−5ppm及び−12ppmの近傍に突出した少なくとも2つピークを示し、それは、アルミニウムに配位したアルコール及び水分子の混合物を伴うアルミノホフフェート複合体(1)及び(2)にそれぞれ割り当てられる(図2)。さらに、前駆体溶液の31PのNMR分析は、主に、1又は2つのアルミニウム原子に結合した2つのリン酸エステルの存在を示す。これらの複合体の反応性は、P=O基及び加水分解的に安定したP−OR基によって立体的に制限される(Sol-gel synthesis of phosphates, J. Livageら、Journal of Non- Crystalline Solids, 147 & 148、18-23 (1992)を参照)。いかなる理論にとらわれることなく、複合体の安定性は、三次元的に拡張したAl−O−Pネットワークを形成するこれら複合体の凝縮(condensation)を制限する(凝縮の動力学を減少させる)かもしれない。従って、前駆体溶液の貯蔵寿命は延長され、溶液は、数カ月から数年、透明なままである。さらに、アルコールベース溶媒は、優れた膜形成能を与え、同時に、ベースのホスフェート化学は、ほとんどの基体に対して強力な粘着をもたらす化学結合を可能にする。
【0072】
これらの結果は、[O=P−O−Al−O−Al]クラスター形成をもたらす溶液中でAl/P比が2以上のマルチ・カチオン・クラスターの形成を支持する。このように、クラスターユニットの一部であるa)P=O及びb)Al−O−Alの双方の要件は、重要であると考えられる。この傾向は、本発明の化合物、組成物及び/又は材料を製造する多くの他の合成ルートで一貫して観察される。本発明の化合物、組成物及び/又は材料を生成する全ての溶液に共通な種は、少なくとも [O=P−O−Al−O−Al]結合からなるものである。図3は、150℃での乾燥した粉末及び1200℃で焼成した生成物のFTIRを、それぞれ示す。150℃でのFTIRデータから、P=O及びAl−O−Al種の双方が観察されることは明らかである。より高い周波数(1380cm-1)で拡張するP=Oの観察は、P=O結合の終端酸素原子が配位していないことを示す。
【0073】
また、ゲル状態からの本発明の化合物、組成物及び/又は材料の展開の研究は、興味深い見識を提供する。熱分解において、[O=P−O−Al−O−Al]部分の架橋は、高温アモルファス骨格における[−PO4−A1O4−A1O6−A1O4−PO4−]フラグメントを最終的にもたらす温度範囲にわたって持続する。焼成材料におけるこのタイプの結合の存在は、NMR及びFTIR分光学の複合データから確立される。本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、「ひずんだ」八面体アルミニウムに加えてアルミニウムの四面体の配位を含み、その強度は、過剰なアルミニウム含量で増加する。これは、AlPO4の全ての結晶質多形で観察されるアルミニウムの限られた四面体配位と異なっている。27AlのNMRデータは、四面体のアルミニウムに歪んだ環境を示唆し、一方、対応する31PのNMRは[PO4]基に歪んでいない環境を示す。これらの2つのデータを結合して、[PO4]基は、交互に[A1O6]基に結合する[A1O4]基にのみ結合することを結論する。それに対応して、FTIRスペクトルにおける825cm-1でのAl−O−Alの変角モード振動は、その強度が過剰のアルミニウム含量で比例的に概算され、[A1O6]及び[A1O4]多面体の間の直接的な結合を示唆する。
【0074】
上で確認したマルチクラスターP−O−A1複合体は、アモルファス酸化物材料の新たな合成法を示す。この特定のケース(アルコールの中の硝酸アルミニウム及び五酸化リン)で使われる前駆体システムの他に、基本的に、P=O及びAl−O−Al部分(それらは互いに結合する)を有する複合体を生成するいかなる前駆体系でも、本発明の化合物、組成物及び/又は材料を生成する。使用される前駆体系に関係なく、これらの複合体の形成は、本発明の化合物、組成物及び/又は材料を生成するようである。そのような複合体は、さらに、アモルファス特性を潜在的に高めることができ、あるいはこれら材料の熱安定性を高めることができる他の添加物(シリコン、ジルコニウム、ランタン、チタン)によって、さらに改変することができる。
【0075】
多くのコーティング技術を、前駆体溶液で使用することができるが、ディップコーティング、スプレー、ペインティング及びフローコーティングが最も頻繁に使用される。全ては、低コストであり、適用及び拡張するのが容易である。金属、合金、ガラス、セラミック等を含む種々の基体において、成功裏にこれらの技術を用いることができる。本発明の化合物、組成物及び/又は材料溶液は、水溶液を用いる場合に良好な濡れ性を達成することができるが、アルコール(望ましくは、エタノール、限定されないが、メタノール、イソプラパノール、ブタノール等を含む他のアルコールも同様に用いることができる)を溶媒として用いる場合、特に顕著な、良好な濡れ性を示す。多くの酸化の研究によって、コーティングの気密性及び本発明の化合物、組成物及び/又は材料膜の薄い利点について証明されている。ステンレススチール上のコーティングは、クラックなしに、1000℃以上の処理に耐久性を示すことができる。
【0076】
本発明によって使用されるコーティング組成物は、従来のコーティング方法によって金属表面に適用することができる。技術の例は、ディッピング、スピン、スプレー又はフラッシュである。特に、ディッピング、スプレー法が好ましい。
【0077】
本発明の化合物、組成物及び/又は材料溶液は、種々の方法及び組成で適用されている。本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、数ある他の多くの基体のなかで、ステンレス及び軟スチール、チタン、ニッケル、鉄、アルミニウム合金ガラス、セラミック及びカーボンを含む種々の基体上に広く被覆されている。コーティングの適用の後、溶媒を除去するために乾燥し、有機物及び硝酸塩(又は前駆体からの他の塩成分)を除去するために硬化させる。コーティングは、炉で又は携帯用の石英赤外線の熱灯で硬化させることができる。コーティングは迅速に硬化し、安定である。熱的高密度化の(最終的な)温度を、金属表面の耐熱性を考慮して、決定することができ、その温度は、通常少なくとも300℃であり、特に少なくとも400℃であり、特に好ましくは少なくとも500℃である。金属表面が酸化に敏感である場合、特にそのような高温では、例えば、窒素又はアルゴン下のような無酸素雰囲気中で熱的高密度化を行うことが推奨される。
【0078】
硬化プロセス中、基体材料との結合が促進される。金属又は合金基体は、特に、部分的に酸化され、その後、硬化プロセス中にコーティング材料と強力な結合を形成する酸化物スケールを形成し(基体の組成、化学及び表面粗さによって部分的又は連続的なスケール)、多くの場合、前駆体溶液は、また、粘着力の向上を助長する金属表面の直接的なホスフェート結合を可能にするかもしれない。界面層(基体と適用されたコーティング間に存在する)の化学の正確な特性は知られていないが、光学顕微鏡検査、FTIR及びラマン分光学ならびにX線回折法からの証拠は、界面特性が基体又は金属表面にいずれとも異なることを示す。これは、実施例30及び31で示したように、軟スチール及びステンレススチール基体の双方で観察されている。
【0079】
このように、酸化環境又は大気中での500℃以上の硬化温度を用いることは、十分に硬化したコーティングを得、基体との良好な粘着を達成するために好ましい。低い硬化温度に長時間さらすことによりコーティングを硬化させることができるが、500℃を超える温度が、基体の部分的な酸化をもたらし、基体の置換基とホスフェート基との直接的な結合を促進するために好ましい。当業者は、暴露の温度、環境及び時間が、上で議論された種々の目的を達成するために広い範囲にわたって調整することができることを認識するであろう。大気中でのより高温及びより高酸素分圧を用いることが、多くの適用にとって、好適に、迅速に硬化させるために、好ましく、それは、製造コストを低減させるであろう。
【0080】
基体との粘着は、さらに、基体組成及び酸化物スケール化学によって、Al/P比を変化させることにより改善することができる。優れた粘着力は、スチール合金、ニッケル、インコネル、先端ニッケル及びチタン合金、アルミニウム、銅、チタン及びそれらの合金の種々の等級を含む多くの合金基体で達成されている。コーティング材料をより一層高温でアニールすることにより、粘着をさらに改善することができるが、多大な基体の酸化は、酸化物スケールを十分に厚くするかもしれず、酸化物スケール/基体界面でのクラック又は破壊をもたらすかもしれない。極めて高温(1000℃以上)でのアニーリングは、環境によっては、リンのいくらかの損失をもたらすかもしれないが、コーティングの密度性は、保護がなお良好と考えられるほど維持されている。さらに、スチール及び先端合金における酸化メカニズムの詳細を、添付の特定の実施例で、以下に示す。また、アルミニウム及びその合金は、それらの熱感度のため、レーザー加熱、IRランプ等のような他の表面加熱技術で硬化させることができる。よって、加熱が基体表面に制限されるならば、基体内で起こっている組成的又は微細構造的変化がその物理的及び機械的特性に影響を及ぼすかもしれないため、基体の機械的及び化学的劣化をかなり避けることができる。しかし、アルミニウム合金におけるコーティングの硬化が、500から550℃の温度範囲での炉を用いることによって達成されている。そのような被覆合金は、塩水噴霧試験において良好な特性を示しており、良好な腐食保護を証明する。多くの基体に対して本発明の化合物、組成物及び/又は材料のコーティングの適用は、一般に硬化金属及び合金に使用された焼もどし法と組み合わせることができる。これは、あるアプリケーションのために最終的な製品を作製するために必要とされるプロセス工程の数を低減させることに助けとなるであろう。
【0081】
金属表面に適用されるコーティング組成物は、ガラス層を形成するために、その後熱的に高密度化されるであろう。熱的高密度化の前に、室温及び/又はわずかに高い温度での従来のコーティング組成物の乾燥操作が、通常行われるであろう。熱的高密度化は、また、IR、UV又はレーザー熱源によって任意に効果的とし得ることは、依然として留意される。その上への加熱の選択的な作用によって、構造化されたコーティングを生成することも可能である。
【0082】
また、本発明の化合物、組成物及び/又は材料の溶液に粉末を分散することにより、スラリーも形成されている。スラリーコーティングは、コーティングの厚み又は機能性を増加させた。種々の粉末を溶液中に混合した。スラリーコーティングは、上述したコーティング法のいずれによっても適用することができる。粉末として合成される場合、本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、アモルファス材料中に完全に埋設されたガラス質カーボンのナノ含有物を含む。これらのカーボン含有物は、粉末に高い放射率特性を与えるのを助ける。高放射性コーティングは、溶液又は適当な媒体中に分散した本発明の黒い化合物、組成物及び/又は材料粒子のスラリーからコーティングを形成することによって形成することができる。また、本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、顔料の保護バインダーとして用いることができる。前駆体組成の適当な選択によって、カーボン含有物を含まない化合物、組成物及び/又は材料を合成することも可能である。
【0083】
本発明及びコーティング技術に付随する低コストによって、組み合わせられるオプションの検討が可能になる。本発明の化合物、組成物及び/又は材料が広範囲にわたる合金(高耐酸化性の合金でさえ)の耐酸化性を強化することができると予想される。形態学的な不均一及び組成のばらつきが必ず存在する溶接領域においても堆積することができる。また、本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、修復の分野にも適用することができ、運転停止の間に、洗浄壁又は他の領域上の堆積物を洗浄するところに適用することもできる。スプレーは本発明の化合物、組成物及び/又は材料コーティングを堆積する適切な方法であり、修復工程の領域に用いることができる。
【0084】
光学顕微鏡を使用して、倍率1000の拡大での被覆基体の検査は、コーティングの連続特性を示す。スチール箔上への本発明の化合物、組成物及び/又は材料のコーティングのコンプライアンスが、箔が数回折り曲げられた(>120°)部位で、箔の層間剥離のいかなる徴候もないことが証明されており、よって、薄膜の良好な粘着性を証明している。
【0085】
低コストでのアプリケーションを容易にし、基体とコーティングとの間の大きなCTE調和の場合でのそれらのコンプライアンスのために、薄いコーティングは、熱処理からの層間剥離を避けるために多くの場合、好ましい。絶縁層が必要であるならば、より厚いコーティングが十分な電気絶縁性を提供するために好ましく、機能的な被覆層の堆積の間、望ましい拡散バリア特性を提供するために好ましい。本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、化学攻撃に非常に不活性であり、低い誘電率を有するため、約2000から50000オングストロームの膜厚でさえ、500℃程度で、良好な絶縁体及び拡散バリアとして機能する。本発明の化合物、組成物及び/又は材料について、ステンレススチール上への100から500nmの膜厚で、190Vの絶縁破壊強度が測定されている。その誘電率は、3.3から5.6の範囲とし得る。
【0086】
本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、金属/合金基体の酸化をかなり制限し、同様に腐食も制限する。保護を与えるのに加えて、本発明は、成長する酸化物スケールの化学作用を変化するようである。おそらく、より顕著に、本発明は、表面粗さのために加速した腐食の影響を最小限に止めるために用いることができ、酸化金属/合金基体でしばしば観察される腐食ピットを消失させる。このように、本発明の化合物、組成物及び/又は材料層の機能は、鋭いエッジを保護する酸化の初期において、表面及び合金表面における欠陥を平坦化する。
【0087】
100時間以上、1000℃以上の温度で、ニッケルを主成分とする合金を保護する能力が成功裏に示された。ニッケルを主成分とする超合金の2つのグレードが本発明の化合物、組成物及び/又は材料で被覆され(ディップコーティング法により、〜1ミクロン厚のコーティング)、それらの酸化挙動が熱サイクル条件下で研究された。図4は、被覆又は非被覆合金の酸化挙動を示す。曲線における各々のデータポイントは、熱のサイクル(RT−1100℃)を示す。このように、温度での累積的な曝露時間は、約100時間であった。被覆材料の双方は、特に用いられた高温の割に、曝露条件下で非常に良好に機能した。
【0088】
また、本発明の化合物、組成物及び/又は材料コーティングは、760℃での熱のサイクル下で、インコネル718で試験した。前述したように、被覆材料は、20熱サイクルで試験され、その後の本発明の化合物、組成物及び/又は材料で示された表面試験は、その保護において有効であり、より重要なことは、さらなるクラッキング又は破裂が観察されなかった。本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、γ−チタンアルミナイド合金を被覆するために用い、非被覆合金とともに、815℃で100時間、熱処理した。コーティングしてない合金は、広範囲に、表面に、ルチルチタン及びコランダムアルミナの成長を示した。X線回折(図5)によって認められるように、被覆合金は、酸化物の成長のかなりの低減を示した。これらの研究の全てを組み合わせて、本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、広範囲で多様な高温適用の使用を対象とした合金の保護における用途に良好な可能性を有することを示唆する。
【0089】
本発明の化合物、組成物及び/又は材料コーティングは、合金を酸化から保護することを示している。いずれかの理論に束縛されることなく、酸化のまさしく初期段階の間に、低いPO2環境中で安定な酸化物のみが形成される(通常、スチールに対するクロミア又はニッケル-アルミニウムベースの合金に対するアルミナ)ように、低いPO2で合金を構成すると考えられる。実例を示すために、304型ステンレススチールを本発明の化合物、組成物及び/又は材料でハーフコートし、空気中で10時間熱処理した。被覆された半分は、高密度で、均一でクロミアに富むスケールを示したが、被覆されていない半分は、非保護性の鉄に富む酸化物の深いピットを有する不均一なスケールを示す(図6)。
【0090】
本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、成長する酸化物を改質することによって重要な利益を提供するようである。合金の選択にかかわらず、粗さ又は表面の欠陥に関連する問題は重要であり、高価で、環境的にやさしくない特別な前処理を必要とし、無駄を生み出すであろう。表面関連欠陥は、コーティングしてない材料に対する酸化挙動をもたらす。高品質の仕上げにもかかわらず、これらの要因は、酸化挙動を支配した。意図されたアプリケーションのために、合金材料は、表面の欠陥をつくることが確かである鍛錬プロセスを使用して、加工品に仕上げられるかもしれず、この問題は対処されなければならない。さらに、本発明の化合物、組成物及び/又は材料コーティングプロセスと前駆体溶液の安価な性質によって、多くの他の、合金表面のより高価な前処理を行うよりも、本発明の化合物、組成物及び/又は材料コーティングを堆積することで、より安価にする。
【0091】
加熱コーティングアプリケーションに対して、ボンディングコート及びセラミックコーティングの間の厚いアルミナスケールの成長は、TBCの時期尚早の欠陥につながる。本発明の化合物、組成物及び/又は材料コーティングは、McrAlYタイプボンディングコート上に堆積することができ、次いで、TBCを堆積することによって(好ましくは電子ビームPVDによって)、用益中、アルミナスケールの成長を制限し、それにより、破砕のためにTBCの壊損を防止する。タービン製造において使われる標準的な方法は、適用される遮熱コーティングとの粘着力を向上させるために、ボンディングコート材料(MCrAlYタイプ組成物)を過酸化することである。しばしば、還元環境は、アルミナスケール(尖晶石及び他の酸化物に対して対照的に)の選択的な形成を促進するのに用いられる。例えば、米国特許第5856027号(マーフィー)を参照のこと。不活性ガス又は真空でのそのような処理は、製造コストを著しく増大し、生産効率を制限する。たとえそれが外気でアニールされるとしても、MCrAlY上に堆積された薄膜はアルミナスケールの形成を促進するかもしれない。さらに、表面の形態が粗いため、コーティングによって欠陥のシールすることは、それ以上の利益を提供することができる。さらに、耐酸化性ガラス質膜の存在により、以降の使用の間、基体の強化された保護を提供することができる。
【0092】
本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、溶融した硫酸塩(燃焼アプリケーションで遭遇される)による金属及び合金の腐食を防御することができる。トリ硫酸塩との親和性は、Al/P化学量論に依存して変化し、よって、Alに富む組成がよりアルミニウムに親和性を示す。非濡れ性は、石炭燃料の燃焼システム及び他の発電プラントで用いられる金属/合金成分に灰粒子を付着することを制限するのに有効かもしれない。
【0093】
本発明の化合物、組成物及び/又は材料の硫酸ナトリウムとの親和性を評価するために、それらのコーティングを、サファイヤプレート上に堆積した。サファイヤ基板は、親和性テストにおいて、酸化物スケールの影響を避けるために選択された。硫酸ナトリウムを、被覆サファイヤ片に載置し、融点(884℃)の直上である900℃までアニールした。図7は、120時間さらした後の、被覆部分を表す。顕微鏡写真から明らかなように、本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、1ミクロンの厚さでさえ、暴露によって分解しなかった。
【0094】
例えば、鉄及びスチール製品、特に鉄の、非合金のプロファイル、細片、プレート、シート、コイル、ワイヤー及びパイプ、ステンレス又は他の合金スチール、光沢のある亜鉛めっき又は他のめっき、非合金化、ステンレス又は他の合金化スチールで作られた半仕上げ鍛製品;アルミニウム、特にホイル、薄い細片、シート、プレート、ダイカスト、鍛錬用アルミニウム又はプレス、ポンチ、延伸部品;キャスティング又は電解又は化学プロセスによって製造された金属コーティング;及びコーティング、艶出し又は陽極酸化によって強化された金属面のために、耐腐食性を強化するためのコーティングが適している。
【0095】
例えば、金及びプラチナからなる宝石、時計及びそれらの部品、指輪のために、耐摩耗性を強化するためのコーティングは、適している。例えば、鉛製の釣りの重り、重金属汚染を防止するステンレススチールの拡散バリア、水道管、ニッケル又はコバルトを含むツール又は宝石(抗アレルギー性の)のために、拡散防止層が適している。例えば、シール、ガスケット又はガイドリングのために、表面の平滑/摩擦摩耗を低減する被膜は適している。
【0096】
スチール、鉄、アルミニウム及び他の合金は、多湿及び塩を含んだ環境で容易に腐食する。塩水噴霧試験は非常に速められ、合理的な時間で有用な試験が可能である。アルミニウム及び炭素スチール試験片上の本発明の化合物、組成物及び/又は材料のコーティングは、塩水噴霧装置で事前評価用に試験されており、アルミニウム試験片と比較して腐食に対するさらなる抵抗を示す。試験後、被覆されていない試験片は片全体にわたって腐食を示したが、1つの被覆試験片で非常に局所化された腐食を示すのみで、大部分の被覆試験片は、実質的に腐食の徴候を示さない。表面仕上げにむらがある所で、被覆片の腐食はしばしば起こる。図8は、塩水噴霧試験後の、本発明の化合物、組成物及び/又は材料で被覆又は非被覆された試験片を示す。
【0097】
非濡れの挙動は、多湿/雨又は沿岸の環境で腐食を防止するために役に立つ。本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、水及び他の液体に非濡れの挙動を示す。非濡れ性は、主に共有原子価の高さの程度と関連する低表面エネルギーによる。それは、例えば、ダスト又は糸くず等の固体分子をその表面に付着することを防止する静電防止膜として機能するかもしれない。
【0098】
光の透過は、多くのアプリケーションにとって重要である。本発明の化合物、組成物及び/又は材料で被覆されたガラス製の顕微鏡スライドを、コーティングしてないスライドと比較した。その化合物、組成物及び/又は材料は、200から2500nmの間で放射線を透過することが示された。コーティングはサファイヤプレートに付けられ、透過特性を、コーティングしてない、同じ大きさに切断されたサファイヤ小片と比較した。2つの被覆片を試験し、1つに、他より厚いコーティングを施した。図9は、被覆対非被覆のサファイヤプレートの透過性を示す。
【0099】
本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、コークスに対する保護コーティングに使用することができる。それらの非粘着性、熱安定性及び保護特性は、腐食性の及び高温環境を経験する石油産業での使用に非常に適している。エチレン加熱分解チューブでのコークスの堆積が重大な問題である。脱コークスプロセスは高価で、時間がかかる。本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、コークスの堆積を回避するために合金表面へ堆積することができる。コークス形成は、金属基体と気体蒸気中に存在する炭化水素との間の触媒反応によって促進される。実質的に無孔の膜、好ましくは気密な膜は、金属と炭化水素との間の接触を防止する良好なバリアとして機能することができる。さらに、金属基体の炭化は、その機械的特性を劣化させる。コーティングは、金属及び合金の炭化の防止に有用であろう。
【0100】
本発明の化合物、組成物及び/又は材料のさらに他の高温適用は、打ち上げロケット(RLV)で使用される金属又は合金ベースの熱防御システム(TPS)の高温防御のためのコーティングとしてのそれらの使用に関係する。そのような材料は、下層の基体への酸化保護及び高い放射率特徴を提供する。粉末は、815℃で100時間以上、1100℃で24時間以上、黒又は暗色を保持して、高い放射率を保持する。
【0101】
また、本発明は、溶融非鉄金属、例えばアルミニウム及び亜鉛ならびに溶融ポリマーからの攻撃から基体を保護することが証明されている。本発明の化合物、組成物及び/又は材料の低い表面エネルギーは、これら及び他の材料に対する非濡れ性を保持することを可能にする。
【0102】
本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、低い摩擦面を提供するのに用いることもできる。高度に磨き上げられた440Cステンレススチール基体上への本発明の化合物、組成物及び/又は材料コーティングは、約0.1と測定された。
【0103】
本発明の化合物、組成物及び/又は材料は、無機材料を形成する熱処理で、金属、合金及びセラミック/ガラス基体に良好な接着性を示す。金属又は合金上に堆積した場合、熱処理によって、基体上に非常に薄膜の酸化物スケールを形成することを可能にし、それは、本発明の化合物、組成物及び/又は材料の基体への接着性を強化する。
【0104】
種々の化学物質のナノ粒子又はナノクリスタルは、限定されないが、光学的、化学的、触媒的、物理的、機械的、電気的特性を含む種々の機能を誘導するために、アルミノホスフェートのアモルファス材料に、埋設し又は封入することができる。従来技術のコーティングは、ナノクリスタルを保護するのに十分強固でなく、さらに、多孔質ホストを伴うナノ複合体のプロセスが重要な課題となろう。
【0105】
以下の実施例及びデータは、参照図面とともに、種々の基体上の対応する膜及びコーティングの製造、適用及び/又は使用を含む、本発明の化合物、組成物、材料及び/又は方法に関する種々の観点及び特徴を例示する。そのような化合物、組成物及び/又は材料はここに記載された合成法によって入手可能である。従来技術との比較において、本発明は、意外で、予想外で、それらに反する結果とデータを提供する。本発明の有用性は、いくつかのアルミノホスフェート化合物、組成物及び/又は材料ならびにそれらの複合体用いることにより例示される。同様の結果が、種々の他のアルミノホスフェート化合物、組成物及び/又は材料で得られることは当業者によってよく理解され、それは、本発明の範囲に相応する。
【0106】
実施例1
264gのAl(NO33・9H2Oを300mlのエタノールに溶解する。別の容器に、25gのP25(又は他の可溶性リン酸エステル)を、リン酸エステルの形成を促進する100mlのエタノールに溶解し、次いで、この溶液をアルミニウム含有溶液に添加する。この溶液をAl−O−P基を含む複合体エステルの形成を促進するのに十分な時間還流する。この溶液は透明で、長期間安定である。
【0107】
実施例2
219mlのリン酸トリエチルを、181mlのエタノール中で、84gのAl(NO33・9H2Oと混合した。30分間攪拌した後、混合物を乾燥し、ゲル粉末を形成し、空気中で1時間、1100℃でアニールした。得られたX線回折パターンは、非常に結晶質のリン酸アルミニウム及びアルミナ相を示し、それは、この混合物が、アモルファスな、アルミニウムに富むリン酸アルミニウムを形成しないことを示す。溶液の31PNMRは、1ppm付近にピークに示し、これは、リンは、有効にアルミニウムと複合していないことを示す(図11)。
【0108】
実施例3
実施例2の混合溶液を還流した。種々の期間後、混合液のいくつかを1時間150℃で乾燥してゲル粉末を得、次いで、空気中、1時間、1100℃でアニールした。還流時間が増加するにつれて、アモルファス・リン酸アルミニウムの量が増加した。3.5日の還流の後に、実質的にアモルファス相が形成された。溶液の31PNMRは、−5ppm金属にピークを示した。これは、アルミニウムがリンと複合していることを示す(図12)。
【0109】
実施例4
119.28gのAl(NO33・9H2Oを510mlのl−ブタノールに溶解した。別のビーカーに、五酸化リンの適当なモル量を31mlのl−ブタノールに溶解した。これら2つの溶液を混合して1.75/1のAl/Pベースのl−ブタノール溶液を調製した。その溶液を1時間150℃で乾燥してゲル粉末を得、次いで、空気中、1時間、1100℃でアニールした。ジェットブラック粉末(アモルファス・マトリクス中に封入された残留カーボンの存在たのめに黒色)を得、X線回折パターンは、粉末が実質的にアモルファスであることを示した。TEM分析は、カーボンナノ含有物の大きさが、実施例1の溶液から得られた粉末よりも大きいことを示した。
【0110】
実施例5
インコネル718の試験片を、実施例1の溶液でディップコートし、10分間IRランプで硬化させた。その試験片を表1の段取りに従って熱処理し、20サイクル後に光学顕微鏡下で試験した。エッジにいくつかのクラックを示したが、他の領域にはクラックがほとんどなく、堆積されたまま(as-deposited)のコーティングと比較してコーティングにはさらなるクラックがないことが分かった。これは、本発明の材料の堆積膜の薄膜の特性が、基体と本発明の材料との間の熱膨張不整合が顕著であったとしても、熱のストレスからクラックを生じさせないことを示す。
【0111】
【表1】

【0112】
表1は実施例5の熱サイクルプロファイル
実施例6
ステンレススチールの小片を実施例1の溶液でディップコートした。その試験片を気流で乾燥し、実質的に無機材料を形成するために、IRランプで膜が硬化するのに十分な時間加熱した(有機物及び硝酸塩の全てを除去)。得られたコーティングは均一で、クラックがなかった。
【0113】
実施例7
ステンレススチールの試験片を、実施例1の溶液を用いて、ローラーでコートした。ローラーは前駆体溶液をいっぱいに染み込んで、ステンレススチールの試験片の大部分を迅速に強固に回転した。次いで、その試験片を、全ての有機物と硝酸塩とを除去するのに十分な時間、IRランプ(実施例6と同様に)で熱処理した。その試験片を、空気中、30分間、900℃で熱処理し、光沢があるまま基体の一部を被覆したが、非被覆部位は実質的により大きな酸化物スケールの形成により鈍さを表した(図13)。
【0114】
実施例8
上述した実施例の方法によって得られた、2.2gの細かく粉砕された(サブミクロンから2、3ミクロン)アモルファスのリン酸アルミニウム粉末(黒色)を、12mlのエタノール中に分散し、実施例1で得られた混合溶液の12mlに添加し、コーティングの塗布のためのスラリーを調製した。このスラリー溶液を実施例7のような304型ステンレススチールの小片を被覆するために用い、スラリーの溶液部分から誘導されたアモルファス・マトリクス中に分散された粉末からなる複合コーティングを得た。得られたコーティングは、クラックがなく、アモルファスリン酸アルミニウム中に分布したアモルファスなリン酸アルミニウム粉末を有していた。そのコーティングは、複合コーティングにおける粒子の存在のために外観が実質的に暗かった。
【0115】
実施例9
機械加工されたままのグラファイトサンプルを本発明の材料でコートし、非コート小片とともに、空気中で2時間、800℃でアニールした。被覆小片は、図14に示すように、非コートの小片よりも実質的にかなりの程度、物理的寸法を保持した。これは、本発明の材料が、複合体を含むグラファイト及びカーボンベース材料に酸化に対する保護を与えるのに有効であることを示唆している。
【0116】
実施例10
19.47gのP25を200mlのエタノールに溶解した。他の容器に、180.68gのAl(NO33・9H2Oを、400mlのエタノールに溶解した。第3の容器に、16.32gのLa(NO33・6H2Oを100mlのエタノールに溶解した。3つすべての溶液を混合し、攪拌した。透明な溶液が得られた。溶液のいくらかを対流オーブン中、150℃で乾燥し、1時間、1100℃でアニールした。La2413の結晶及び優勢なアモルファスリン酸アルミニウムをX線回折で確認した(図15)。
【0117】
実施例11
先の実施例と同様に、同様の方法を用いて、ジルコニウム含有溶液を調製した。6.46gのP25を、70mlのエタノールに溶解した。他の容器に、59.9gのAl(NO33・9H2Oを、140mlのエタノールに溶解した。第3の容器に、1.49gのZrO(NO33・xH2Oを10mlのエタノールに溶解した。3つすべての溶液を混合し、攪拌した。溶液のいくらかを対流オーブン中、150℃で乾燥し、1時間、1100℃でアニールした。ZrO2の結晶及び優勢なアモルファスリン酸アルミニウムをX線回折で確認した(図16)。酸化ジルコニウムナノクリスタルの相対量は、ある程度、前駆体の保存時間に依存する。
【0118】
実施例12
先の実施例と同様に、同様の方法を用いて、シリコン含有溶液を調製した。8.47gのP25を、90mlのエタノールに溶解した。他の容器に、78.6gのAl(NO33・9H2Oを、174mlのエタノールに溶解した。第3の容器に、1.7gのテトラエチルオルトシランを15mlのエタノールに溶解した。3つすべての溶液を混合し、攪拌した。溶液のいくらかを対流オーブン中、150℃で乾燥した。この乾燥粉末のいくらかを、10時間、1400℃でアニールした。ムライトの結晶及び優勢なアモルファスリン酸アルミニウムをX線回折で確認した(図17)。
【0119】
実施例13
先の実施例と同様に、同様の方法を用いて、チタン含有溶液を調製した。0.2mlの硝酸を9.84mlの脱イオン水に混合した。2mlのイソプロポキシド(isopropoxide)チタンをこの酸性化した水溶液に添加し、白色沈殿を得た。この混合物を実施例1のリン酸アルミニウム溶液86mlに加えた。この混合物を150℃で乾燥し、1時間、1000℃でアニールした。X線回折で、酸化チタン(アナターゼ)及び優勢なアモルファスリン酸アルミニウムの存在を確認した(図18)。
【0120】
実施例14
実施例1の溶液を、1時間、1100℃で熱処理した。粉末を10から20ミクロンの大きさに粉砕した。得られた粉末はジェットブラック色であり、X線回折パターンで、その粉末が実質的にアモルファスであることを確認した。
【0121】
実施例15
実施例4の粉末をTEMで試験した。透過電子顕微鏡は、本発明の材料のアモルファス・マトリクス中に埋設されたガラス質カーボンのナノ含有物を示した。これらの含有物は、約2〜4nmから、10〜40nm付近のサイズである(図19)。その含有物は、典型的にガラス質カーボンの外観であり、EDS証拠はこれらの小片が主にカーボンを含むことを示した。
【0122】
実施例16
実施例14の粉末を実施例1の混合溶液に分散させた。このスラリーをアルミナ基体上に塗布した。このコーティングを、溶媒が蒸発するまで気流で乾燥し、次いで、500℃以上で熱硬化した。コーティングの室温での総半球放射率は、2〜20μmの測定で、0.917である。
【0123】
実施例17
実施例16のコーティングを、空気中、815℃で100時間熱処理した。 コーティングの室温での総半球放射率は、2〜20μmの測定で、0.908である。これは、カーボンのナノ含有物が酸化されておらず、本発明の材料の実質的に無孔で、高密度なマトリクスによって良好に保護されることを示唆する。
【0124】
実施例18
実施例16のコーティングを、空気中、1100℃で24時間熱処理した。 コーティングの室温での総半球放射率は、2〜20μmの測定で、0.902である。実施例17のように、カーボンの保護は、これらの高温でも証明された。
【0125】
実施例19
実施例の混合溶液を、クラックのないより厚いフィルムを生成するために、有機成分を添加することにより改変した。1018カーボンスチールの小片を、上述した溶液でコートし、実質的にクラックのない比較的厚い(平均>1ミクロン)コーティングを生成した。有機物添加の量を、堆積した膜の厚み幅を得るために、変化させることができる。被覆された1018試験片を、非被覆試験片とともに、塩水噴霧チャンバーにて、4日間、ASTMB117試験で特定された条件下に付した。被覆試験片は、実質的に腐食がなかったが、被覆試験片はほとんど完全に腐食された。これは、本発明の材料の厚膜コーティングが実質的にクラック及びピンホールがないことを示す。
【0126】
実施例20
実施例19で記載された方法を用いて、実質的に不透明で、外観が暗い無機コーティングを金属及び他の基体上に生成することができる。ステンレススチールの小片をコートして、黒のコーティングを得た。コーティングは実質的にクラック又は孔がなく、硬質で、耐摩滅性であり、従来の黒ペンキと比較して、良好な耐候性を有することができる。また、良好な接着性が、特許出願の明細書で記述されたように、優れた粘着力を促進する。
【0127】
実施例21
銀のイオンを含有するアルコール溶液を、実施例1の混合溶液に添加した。この溶液を、ソーダライムガラススライドをコートするために用いた。塗布されたコートを気流で乾燥して溶媒を除去し、硬化して、実質的に透明な無機コーティングを形成した。
【0128】
実施例22
実施例16で記載したようなスラリーコーティングをステンレススチールの試験片に塗布した。その被覆サンプルは、760℃で純粋な溶融アルミニウムで孔を含浸させ、凝縮させた。アルミニウムの目立った濡れは、溶融アルミニウム中に含浸した非被覆部位の完全な有効範囲と比較して、試験片の被覆部位では観察されなかった。このように、化学安定性及び溶融アルミニウムとの親和性ならびに良好な非濡れ性が証明された(図20参照)
【0129】
実施例23
1018カーボンスチールを実施例1の混合溶液を用いてディップコートした。このコーティングを気流で、溶媒が蒸発するまで乾燥し、次いで、空気中で30分間、500℃で熱処理した。サンプル表面のX線回折は、表面に成長した優勢なFe23の酸化物スケールと、若干のFe34を示した。また、1018カーボンスチールの非被覆小片を、30分間、500℃で熱処理した。その表面のX線回折は、優勢なFe34の形成と、非常にわずかのFe23を示した(図21)。Fe23は、Fe34より実質的により良好な保護酸化物スケールである。また、これは、金属基体の酸化物スケール成長の化学作用を実質的に変化する本発明の材料膜の能力を示す。
【0130】
実施例24
ステンレススチールの小片を、実施例1の混合溶液でディップコートし、空気中で数分の間500℃以上で硬化させた。試験片の被覆及び非被覆部位の双方のラマンスペクトルを取った。サンプルの被覆部位のスペクトルは、非被覆サンプル又は結晶質のリン酸アルミニウムでは、あるいは、本発明の方法を用いて得たアモルファスリン酸アルミニウムでは対応しない3つのピークを認識した。これは、コーティングと基体との間の界面近傍(界面層)で形成された材料に対応するピークを示唆する。界面層の正確な化学作用又は性質はわかっていないが、これがコーティングの粘着力を向上させる際に助けになると考えられる。界面層の性質は基体組成の化学作用及びコーティングの堆積中又はその後に行う熱処理によって、異なるかもしれない(図22)。
【0131】
実施例25
ステンレススチールの小片を、実施例1の混合溶液でディップコートし、実施例24の方法を用いて硬化させた。この被覆試験片を数日間大気にさらした。表面から集めたFTIRスペクトルは、有機種wの存在を示す(図23)。有機物の結合は、強固であることを示し、さらに表面エネルギーの低減を助け、実質的に非濡れ性の表面を与える。
【0132】
実施例26
実施例20のサンプルを、760℃で溶融アルミニウムに含浸し、凝縮させた。被覆部位の大部分は、完全に溶融アルミニウムに非濡れ性となることを示す。
【0133】
実施例27
スチールの小片を実施例1の混合溶液で部分的に被覆した。試験片を気流で乾燥し、膜が硬化するのに十分な時間、500℃で加熱し(有機物及び硝酸塩のすべてを除去し)、実質的に無機材料を形成した。被覆サンプル及び非被覆加熱処理サンプルの表面エネルギーを測定した。被覆材料の表面エネルギーは、31.89mJ/m2であった。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】AUS304ステンレススチール上の、本発明の化合物、組成物及び/又は材料の良好に粘着し、薄膜、均一、高密度及び気密膜を示す断面TEM顕微鏡写真である。
【図2】本発明の化合物、組成物及び/又は材料の前駆体溶液中に存在するアルミノホスフェート複合体の化学構造である。
【図3】(A)150℃にて、(B)1100℃にて、空気中で熱処理したAl/P=1.75/1の本発明の化合物、組成物及び/又は粉末材料のFTIRスペクトルである。
【図4】1時間の熱サイクルで100時間、空気中で1100℃にさらした被覆及び非被覆ニッケルベースの超合金試験片の特定の重量変化の比較を示すプロットである。
【図5】かなりの非被覆基体上での酸化物の成長及び最小限の被覆基体上での酸化物の成長を示す被覆及び非被覆γチタンアルミニウム合金のX線回折を示す。
【図6】1000℃で、10時間熱処理した被覆(左)及び非被覆(右)AUS304ステンレススチールの横断面SEM顕微鏡写真である。
【図7】空気中で120時間、900℃での溶融硫酸ナトリウムとの親和性を示す本発明の化合物、組成物及び/又は材料の薄膜の横断面SEM顕微鏡写真であり、石炭火力発電所のような硫黄含有環境において、腐食から金属成分を保護する本発明の有用性を示す。
【図8】ASTM B−117仕様を用いた塩水噴霧に115時間さらした後の被覆及び非被覆アルミニウム2024合金を示す図である。
【図9】本発明の化合物、組成物及び/又は材料被覆サファイヤ(2本線の上部)及び非被覆サファイヤ(下部の線)の透過スペクトルを示す図である。
【図10】金属又は合金基板(1)上に、成膜の間その場で(in situ while)形成及び促進された、本発明の化合物、組成物及び/又は材料のコーティング(3)及び接着層(2)を示す模式図である。
【図11】A)結晶質リン酸アルミニウム及びアルミナのコランダムを示す、実施例2から焼成した材料の粉末X線回折パターン、B)未反応トリエチルホスフェートに対応する−1ppmでの共鳴スペクトルを示す、実施例2の溶液の31PNMRスペクトルである。
【図12】A)アルミノホスフェート複合体に対応する−5.9ppmでの共鳴スペクトルを示す、実施例3の溶液の31PNMRスペクトル、B)優勢なアモルファスリン酸アルミニウムを示す、実施例3から焼成した材料の粉末X線回折パターンである。
【図13】空気中で30分間、900℃にてアニールした後の実施例9のサンプルを示す写真である。
【図14】アモルファスリン酸アルミニウムで被覆された(左)、形成されたままの(加熱なし)、及び非被覆の(右)機械加工されたグラファイト小片である。左右のサンプルは空気中で2時間、800℃にて熱処理したものである。
【図15】実施例10から焼成した材料の粉末X線回折パターンである。2θ値の20.5、21.5及び35近傍のピークは、アモルファスホスフェートマトリクス材料中に埋設されたリン酸アルミニウムナノクリスタルである。他のピークは、La2PO4に対応する。CuKα放射線を用いた。
【図16】実施例11から焼成した材料の粉末X線回折パターンである。2θ値の20.5、21.5及び35近傍のピークは、アモルファスホスフェートマトリクス材料中に埋設されたリン酸アルミニウムナノクリスタルである。2θ値の30近傍のピーク(*で標識したもの)は、正方晶酸化ジルコニウムからのものである。X線データに基づいて、正方晶酸化ジルコニウムのナノクリスタルのサイズは、0.5時間、1100℃でのアニール後、約7nm、50時間、1200℃のアニール後、26nm、10時間、1400℃空気中でのアニール後170nmである。CuKα放射線を用いた。
【図17】実施例11から焼成した材料のX線回折パターンである。2θ値の20.5、21.5及び35近傍のピークは、アモルファスホスフェートマトリクス材料中に埋設されたリン酸アルミニウムナノクリスタルである。16及び26近傍のピーク(*で標識したもの)は、ムライト(A161213)からのものである。ムライトのナノクリスタルのサイズは、50時間、1200℃のアニール後、100nm、10時間、1400℃でのアニール後170nmである。CuKα放射線を用いた。
【図18】実施例13から焼成した材料のX線回折パターンである。2θ値の20.5、21.5及び35近傍のピークは、リン酸アルミニウムナノクリスタルからのものである。26及び37近傍のピークは、アナターゼチタニアのナノクリスタルからのものである。チタニアのナノクリスタルのサイズは、約7nmである。CuKα放射線を用いた。
【図19】本発明の化合物、組成物及び/又は材料の粉末中のガラス質カーボンのナノ含有物を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図20】非濡れ性を示す溶融アルミニウム(〜750℃)中での含浸した後のハーフコートステンレススチール試験片の写真である。破線は溶融アルミニウム中の含浸の線を示す。
【図21】30分間、500℃で熱処理した1018カーボンスチールのX線回折パターンである。A)本発明のアルミノホスフェートで被覆したもの、B)被覆していないもの。*は基体を示し、黒ひし形はFe34、+はFe23を示す。
【図22】ステンレススチール上での本発明のアルミノホスフェート材料のコーティングのラマンスペクトルである。標識した*のピークは、コーティングと基体との間の粘着層からのものである。
【図23】大気にさらした後の本発明のアルミノホスフェート化合物、組成物及び/又は材料の薄膜でコートしたステンレススチールのかすめ角FTIRスペクトルである。ryをすること。標識した*のピークは、コーティング表面に吸収した有機物を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基体、実質的にアモルファス、実質的に無孔のアルミノホスフェート膜及びそれらの間の成分を含む複合体であって、前記成分は基体の金属成分の酸化物と相互作用して結合したホスフェート基を含む複合体。
【請求項2】
アルミノホスフェート膜は、化学量論未満、化学量論より大及び化学量論から選択されたアルミニウム含有率を有し、該含有率はリンに対するモル比である請求項1の複合体。
【請求項3】
さらにカーボン及び金属化合物から選択されたナノ粒子を含む請求項1の複合体。
【請求項4】
基体はスチール合金であり、酸化物は酸化鉄及び酸化クロムから選択される請求項1の複合体。
【請求項5】
膜は約0.05から約10ミクロンの膜厚を有する請求項1の複合体。
【請求項6】
膜は約0.1から約1.0ミクロンの膜厚を有する請求項1の複合体。
【請求項7】
さらに膜上に有機成分を含む請求項5の複合体。
【請求項8】
膜は不透明である請求項5の複合体。
【請求項9】
実質的にアモルファスなアルミノホスフェート化合物及びその中のカーボンナノ粒子を含む高温安定組成物。
【請求項10】
さらに金属化合物のナノ粒子を含む請求項9の組成物。
【請求項11】
アルミノホスフェート化合物は、化学量論未満、化学量論より大及び化学量論から選択されたアルミニウム含有率を有し、該含有率はリンに対するモル比である請求項9の組成物。
【請求項12】
アルミノホスフェート化合物は、化学量論より大のアルミニウム含有率を有する請求項11の組成物。
【請求項13】
基体上のコーティングを含む請求項9の組成物。
【請求項14】
リンに比例したアルミニウム含有率を有し、実質的に塩化物イオンを含まない、高温で、安定で、実質的にアモルファスなアルミノホスフェート化合物。
【請求項15】
さらにカーボンナノ粒子を含む請求項14の化合物。
【請求項16】
さらに金属化合物のナノ粒子を含む請求項14の化合物。
【請求項17】
化学量論未満、化学量論より大及び化学量論から選択されたアルミニウム含有率を有し、該含有率はリンに比例する請求項14の化合物。
【請求項18】
アルミノホスフェート化合物を基体の表面エネルギーを低減するために使用する方法であって、該方法は、
アルミノホスフェート化合物の前駆体を準備し、該前駆体はアルミニウム塩及び五酸化リンを液体媒体中に含有し、
該媒体を基体に塗布し、及び
塗布された媒体を、非濡れ性で、実質的にアモルファスで、実質的に無孔のアルミノホスフェート化合物を前記基体上に与えるのに十分な時間及び温度で加熱することを含む方法。
【請求項19】
液体媒体はアルミニウム塩及び五酸化リンのアルコール溶液である請求項18の方法。
【請求項20】
塗布がディップコーティング及びスプレーから選択される請求項19の方法。
【請求項21】
基体上のアルミノホスフェート化合物は溶融アルミニウムに対して非濡れ性である請求項18の方法。
【請求項22】
金属基体、該基体上の実質的にアモルファス、実質的に無孔のアルミノホスフェート膜を含む複合体であって、該複合体は表面エネルギーが約32mJ/m2である複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2007−525335(P2007−525335A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512380(P2005−512380)
【出願日】平成15年11月19日(2003.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/036976
【国際公開番号】WO2005/061218
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(503072942)アプライド シン フィルムズ,インコーポレイティッド (4)
【Fターム(参考)】