説明

リン酸オセルタミビルの製造法

【課題】リン酸オセルタミビルを容易に入手可能な原料化合物から高い光学純度で得ることができる、高収率かつ実用的なリン酸オセルタミビルの新規化学合成法の提供。
【解決手段】光学活性な環状エポキシエステルの特定な化合物を出発原料とし、シクロヘキセニルアジドおよび環状ジアミド−アルコールを経由するリン酸オセルタミビル(10)の新規化学合成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記式(1):
【化1】

{式中、Rは、ニトロ基、ブロモ基、クロロ基、ヨード基、フルオロ基、及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基である。}で表される光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体を出発原料として、新型インフルエンザに対して優れた予防・治療効果を有する抗ウイルス薬であるリン酸オセルタミビルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
H1N1型等の新型インフルエンザが世界的に大流行し、多数の死亡者が出る事が危惧されている。新型インフルエンザに対して抗ウイルス薬であるリン酸オセルタミビル(商標名「タミフル」)が著効を示す事は知られており、感染予防の為に、この薬剤を国家機関が大量に備蓄する様になっている。この為に、リン酸オセルタミビルの需要が国際的に急速に高まっており、安価に大量供給する手段の開発が求められている。
【0003】
リン酸オセルタミビルの合成方法としては、以下の反応スキームに示すシキミ酸を出発原料として用いる方法が知られている(以下、特許文献1参照)。
【化2】

【0004】
しかしながら、シキミ酸はトウシキミの実(八角)から抽出・精製するか、又は大腸菌によるD−グルコースからの発酵を経て調製されるが、これらのプロセスは時間およびコストがかかるという問題を有している。また、トウシキミの実などの植物原料は安定的な供給が困難になる場合もある。従って、リン酸オセルタミビルを容易に入手可能な原料化合物から効率的に化学合成する手段の開発が求められている。
【0005】
現在までに、リン酸オセルタミビルを化学的に合成する様々な方法が報告されている。
以下の非特許文献1にはブタジエンとアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルからリン酸オセルタミビルを合成するルートが報告されている。
【化3】

【0006】
以下の非特許文献2には、1,4−シクロヘキサジエンを出発原料とするリン酸オセルタミビルの合成方法が報告されている。
【化4】

【0007】
以下の非特許文献3には、ピリジンを出発原料とするリン酸オセルタミビルの合成方法が報告されている。
【化5】

【0008】
以下の非特許文献4には、6−オキサビシクロ[3.2.1]オクト−3−エン−7−オンを出発原料とするオセルタミビルの合成方法が報告されている。
【化6】

【0009】
以下の非特許文献5には、(1−エチルプロポキシ)−アセトアルデヒドと3−ニトロアクリル酸−tert−ブチルエステルとを出発原料とするオセルタミビルの合成方法が報告されている。
【化7】

【0010】
しかしながら、これらの方法はいずれも反応工程が長く、また収率が低いといった理由により工業的には実施できないのが現状であり、実際これらの合成方法を用いたリン酸オセルタミビルの工業的な製造は達成されていない。
このように、これまで、収率、光学純度、及び反応条件の観点から満足できるリン酸オセルタミビルの工業的な製造に関する報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO1999/014185
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ウィング ウェウング ウェウング、スングウォー ホング、エー ジェイ コーリイ;ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイアティー 2006年 128巻 p.6310−6311
【非特許文献2】ユーヘイ フクタ、ツヨシ ミタ、ノブヒサ フクダ、モトム カナイ、マサカツ シバザキ;ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイアティー 2006年 128巻 p.6312−6313
【非特許文献3】ノブヒロ サトウ、タカヒロ アキバ、サトシ ヨコシマ、トオル フクヤマ;アンゲバンテ ケミー 2007年 119巻 p.5836−5838
【非特許文献4】バリー トロスト、チング ザング;アンゲバンテ ケミー イント エディ 2008年 47巻 p.3759−3761
【非特許文献5】ハヤト イシカワ、タカキ スズキ、ユジロー ハヤシ;アンゲバンテ ケミー イント エディ 2009年 48巻 p.1304−1307
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、抗インフルエンザウイルス薬であるリン酸オセルタミビルを、容易に入手可能な原料化合物から高い光学純度で得ることができる、高収率かつ実用的な化学合成法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究し実験を重ねた結果、前記式(1)で表される光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体を出発原料として用いる、効率的かつ高品質なリン酸オセルタミビルの製造方法の工業的な製造方法を開発するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[4]である。
【0015】
[1]下記式(10):
【化8】

で表されるリン酸オセルタミビルの製造方法であって、以下の工程(i)〜(viii):
(i)下記式(1):
【化9】

{式中、Rは、ニトロ基、ブロモ基、クロロ基、ヨード基、フルオロ基、及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基である。}で表される光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体を加水分解して、下記式(2):
【化10】

で表される光学活性な環状エポキシアルコール誘導体を得る工程、
(ii)得られた光学活性な環状エポキシアルコール誘導体をメトキシメトキシ化して、下記式(3):
【化11】

で表される光学活性な環状エポキシエーテル誘導体を得る工程、
(iii)得られた光学活性な環状エポキシエーテル誘導体をアジド化して、下記式(4):
【化12】

で表される光学活性な環状アジド誘導体を得る工程、
(iv)得られた光学活性な環状アジド誘導体をメシレート化して、下記式(5):
【化13】

で表される光学活性な環状メシレート誘導体を得る工程、
(v)得られた光学活性な環状メシレート誘導体をアジリジン化して、下記式(6):
【化14】

で表される光学活性な環状アジリジン誘導体を得る工程
(vi)得られた光学活性な環状アジリジン誘導体をアジド化して、下記式(7):
【化15】

で表される光学活性な環状アジド−アミド誘導体を得る工程、
(vii)得られた光学活性な環状アジド−アミド誘導体を加水分解して、下記式(8):
【化16】

で表される光学活性な環状アジド−アルコール誘導体を得る工程、及び
(viii)得られた光学活性な環状アジド−アルコール誘導体を加水分解して、下記式(9):
【化17】

で表される光学活性な環状ジアミド−アルコール誘導体を得る工程、
を含む、前記リン酸オセルタミビルの製造方法。
【0016】
[2]前記工程(i)に先立って、以下の工程(ix)〜(xi):
(ix)下記式(a):
【化18】

で表される環状エポキシオレフィン化合物を、下記式:
【化19】

で表される有機過酸化物と、触媒として、下記式(b):
【化20】

{式中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、及びプロピル基からなる群から選ばれる低級アルキル基であり、そしてRは、フェニル基;p−メチル及びp−メトキシからなる群から選ばれる置換基を有するフェニル基;又はα又はβのナフチル基;p−メチル及びp−メトキシからなる群から選ばれる置換基を有するα又はβのナフチル基;又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びtert−ブチル基からなる群から選ばれる低級アルキル基である。}で表されるN,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子、及び銅化合物の存在下、反応させ、選択的不斉酸化反応を行って、下記式:
【化21】

で表される化合物を得る工程、
(x)得られた化合物を塩基触媒で加水分解して、以下の式:
【化22】

で表される化合物を得る工程、及び
(xi)得られた化合物を第三級アミンの存在下、下記式:
【化23】

{式中、Rは、ニトロ基、ブロモ基、クロロ基、ヨード基、フルオロ基、及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基である。}で表される塩化ベンゾイル化合物と反応させて、前記式(1)で表される化合物を得る工程、
をさらに含む、前記[1]に記載のリン酸オセルタミビルの製造方法。
【0017】
[3]下記式(6):
【化24】

で表される光学活性化合物2−メトキシメトキシ−7−アザビシクロ[4.1.0.]ヘプタ−3−エン。
【0018】
[4]下記式(7):
【化25】

で表される光学活性化合物N−(6−アジド−2−メトキシメトキシ−シクロヘキサ−3−エン−1−イル)−アセトアミド。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るリン酸オセルタミビルの製造方法により、光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体を出発原料として使用し、簡便な操作で、低コスト、低リスク、高収率かつ高光学選択的にリン酸オセルタミビルを工業的に製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0021】
前記[1]の反応スキームを以下に示す:
【化26】

【0022】
以下、前記[1]の反応スキームにおける工程(i)〜(viii)について順番に説明する。
工程(i)
まず、式(1):
【化27】

で表される光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体(以下、「化合物(1)」ともいう。)から式下記(2):
【化28】

で表される光学活性な環状エポキシアルコール誘導体(以下、「化合物(2)」ともいう。)を得る工程(i)について説明する。
【0023】
はじめに、化合物(1)を反応溶媒に溶解する。反応溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール溶媒が好ましい。より好ましくは、メタノールである。メタノール等の反応溶媒の使用量は、化合物(1)に対し通常2〜50倍容量であり、好ましくは5〜15倍容量であり、より好ましくは約10倍容量である。
【0024】
次に、ナトリウムメトキシド メタノール溶液を加え、反応を実施する。ナトリウムメトキシド メタノール溶液の使用量は、化合物(1)に対し通常0.01〜1倍当量であり、好ましくは0.03〜0.2倍当量であり、より好ましくは約0.05倍当量である。この時の反応温度は、通常5〜50℃であり、好ましくは10〜30℃、より好ましくは15〜25℃である。また、反応時間は、通常0.5〜10時間であり、より好ましくは5〜8時間である。
【0025】
次に酢酸を加え、反応を実施する。酢酸の使用量は、化合物(1)に対し通常0.01〜1倍当量であり、好ましくは0.03〜0.2倍当量であり、より好ましくは約0.05倍当量である。この時の反応温度は、通常5〜50℃であり、好ましくは10〜30℃、より好ましくは15℃〜25℃である。また、反応時間は、通常0.1〜10時間であり、より好ましくは0.1〜8時間である。
【0026】
化合物(2)の単離、精製は常法により行うことができる。例えば、溶媒による抽出、シリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、減圧蒸留、再結晶等の公知の方法によって、化合物(2)を単離、精製することができる。
【0027】
工程(ii)
次に、化合物(2)から下記式(3):
【化29】

で表される光学活性な環状エポキシエーテル誘導体(以下、「化合物(3)」ともいう。)を得る工程(ii)について説明する。
【0028】
化合物(2)を反応溶媒に溶解する。反応溶媒としては、特に限定されないが、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロアルカン溶媒が好ましい。より好ましくは、ジクロロメタンである。ジクロロメタン等の反応溶媒の使用量は、前記式(1)に対し通常2〜50倍容量であり、好ましくは5〜30倍容量であり、より好ましくは約20倍容量である。
【0029】
次に、反応液にジイソプロピルエチルアミンおよびクロロメトキシメタンを加え、反応を実施する。ジイソプロピルエチルアミンの使用量は、化合物(2)に対し通常1〜5倍当量であり、好ましくは2〜3倍当量であり、より好ましくは約3倍当量である。クロロメトキシメタンの使用量は、化合物(2)に対し通常1〜5倍当量であり、好ましくは2〜3倍当量であり、より好ましくは約3倍当量である。この時の反応温度は、通常5〜50℃であり、好ましくは10〜30℃、より好ましくは15℃〜25℃である。また、反応時間は、通常0.5〜15時間であり、より好ましくは8〜10時間である。
【0030】
化合物(3)の単離、精製は常法により行うことができる。例えば、溶媒による抽出、シリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、減圧蒸留、再結晶等の当該分野で公知の方法によって、化合物(3)を単離、精製することができる。
【0031】
工程(iii)と工程(iv)
次に、化合物(3)から、下記式(4):
【化30】

で表される光学活性環状アジドアルコール誘導体(以下、「化合物(4)」ともいう。)を経由し(工程(iii))、下記式(5):
【化31】

で表される光学活性環状アジド誘導体(以下、化合物(5))を得る工程(iv)について説明する。
【0032】
はじめに、化合物(3)を反応溶媒に溶解する。反応溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール溶媒が好ましい。より好ましくは、メタノールである。メタノール等の反応溶媒の使用量は、化合物(3)に対し通常2〜50倍容量であり、好ましくは5〜50倍容量であり、より好ましくは約35倍容量である。
【0033】
次に、アジ化ナトリウムと塩化アンモニウムを加え、反応を実施する。アジ化ナトリウムの使用量は、化合物(3)に対し通常1〜5倍当量であり、好ましくは3〜5倍当量であり、より好ましくは約4〜5倍当量である。塩化アンモニウムの使用量は、化合物(3)に対し通常1〜4倍当量であり、好ましくは2〜3倍当量であり、より好ましくは約3倍当量である。この時、アジ化ナトリウムと塩化アンモニウムは水に溶解して使用する。水の使用量は、化合物(3)に対し通常2〜30倍容量であり、好ましくは5〜12倍容量であり、より好ましくは約10〜12倍容量である。この時の反応温度は、通常20〜120℃であり、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50℃〜80℃である。また、反応時間は、通常10〜50時間であり、より好ましくは15〜30時間である。
【0034】
次に、反応液に水を加え減圧条件下で有機溶媒を除去する。この反応残渣に酢酸エチル等の有機溶媒を加えて、抽出を実施する。この有機層を硫酸ナトリウム等で乾燥する。この有機溶媒を留去して、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒を加える。ハロゲン系溶媒の使用量は、化合物(3)に対し通常2〜50倍容量であり、好ましくは5〜50倍容量であり、より好ましくは約35倍容量である。この操作により、化合物(4)の溶液が得られる。
【0035】
次に、化合物(4)を含む上記溶液にトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の脂肪族三級アミンおよびメタンスルホン酸クロリドを加える。脂肪族三級アミンおよびメタンスルホン酸クロリドの使用量は化合物(3)に対し通常1〜10倍当量であり、好ましくは1〜5倍当量であり、より好ましくは1〜2倍当量である。この時の反応温度は、通常5〜50℃であり、好ましくは10〜30℃、より好ましくは15℃〜25℃である。また、反応時間は、通常0.5〜24時間であり、より好ましくは12〜24時間である。
【0036】
化合物(5)の単離、精製は常法により行うことができる。例えば、溶媒による抽出、シリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、減圧蒸留、再結晶等の公知の方法によって、化合物(5)を単離、精製することができる。
【0037】
工程(v)
次に、化合物(5)から下記(6)式で示される光学活性な環状アジリジン誘導体(以下、「化合物(6)」ともいう。)を得る工程(v)について説明する。
【化32】

【0038】
はじめに、化合物(5)を溶媒に溶解する。反応溶媒としては、特に限定されないが、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の飽和環状エーテル溶媒が好ましい。より好ましくは、テトラヒドロフランである。テトラヒドロフラン等の反応溶媒の使用量は、化合物(5)に対し通常10〜50倍容量であり、好ましくは15〜30倍容量であり、より好ましくは約20〜25倍容量である。
【0039】
次に、トリフェニルホスフィンを加え、反応を実施する。トリフェニルホスフィンの使用量は、化合物(5)に対し通常1.0〜1.5倍当量であり、好ましくは1.0〜1.3倍当量であり、より好ましくは約1.2倍当量である。また分割投与してもよい。
【0040】
次にトリエチルアミンおよび水を加え、反応を実施する。トリエチルアミンの使用量は、化合物(5)に対し通常1〜2倍容量であり、好ましくは1〜1.5倍容量であり、より好ましくは約1倍容量である。水の使用量は、化合物(5)に対し通常1〜4倍容量であり、好ましくは1.5〜3倍容量であり、より好ましくは約1.5〜2倍容量である。この時の反応温度は、通常5〜50℃であり、好ましくは10〜30℃、より好ましくは15℃〜25℃である。また、反応時間は、通常0.5〜24時間であり、より好ましくは10〜15時間である。
【0041】
化合物(6)の単離、精製は常法により行うことができる。例えば、溶媒による抽出、シリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、減圧蒸留、再結晶等の公知の方法によって、化合物(6)を単離、精製することができる。
【0042】
工程(vi)
化合物(6)から下記式(7):
【化33】

で示される光学活性な環状アジド−アミド誘導体(以下、「化合物(7)」ともいう。)を得る工程(vi)について説明する。
【0043】
はじめに、化合物(6)を溶媒に溶解する。反応溶媒としては、特に限定されないが、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキサイド等の非プロトン性極性溶媒が好ましい。より好ましくは、ジメチルホルムアミドである。ジメチルホルムアミド等の反応溶媒の使用量は、化合物(6)に対し通常1.0〜50倍容量であり、好ましくは15〜30倍容量であり、より好ましくは約20〜25倍容量である。
【0044】
次に、アジ化ナトリウムと塩化アンモニウムを加え、反応を実施する。アジ化ナトリウムの使用量は、化合物(6)に対し通常1〜10倍当量であり、好ましくは3〜7倍当量であり、より好ましくは約5倍当量である。塩化アンモニウムの使用量は、化合物(6)に対し通常0.5〜3倍容量であり、好ましくは1.5〜2.5倍容量であり、より好ましくは約2倍容量である。この時の反応温度は、通常30〜90℃であり、好ましくは50〜70℃、より好ましくは60℃〜70℃である。また、反応時間は、通常1〜30時間であり、より好ましくは15〜25時間である。
【0045】
次に、反応液に5%炭酸水素ナトリウム水溶液と酢酸エチル、ジエチルエーテル等の有機溶媒を加えて、抽出を実施する。この有機層を硫酸ナトリウム等で乾燥する。この有機溶媒を留去して、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒とヘキサン、ペンタン等の直鎖アルカン溶媒を加える。それぞれの反応溶媒の使用量は、化合物(6)に対し通常2〜20倍容量であり、好ましくは5〜10倍容量であり、より好ましくは約7倍容量である。
【0046】
次に、炭酸水素ナトリウム水溶液および無水酢酸を加える。炭酸水素ナトリウム水溶液の使用量は、化合物(6)に対し通常1〜10倍当量であり、好ましくは1〜5倍当量であり、より好ましくは約2倍当量である。無水酢酸の使用量は、化合物(6)に対し通常1〜10倍当量であり、好ましくは1〜5倍当量であり、より好ましくは約1倍当量である。この時の反応温度は、通常0〜50℃であり、好ましくは0〜30℃、より好ましくは15〜25℃である。また、反応時間は、通常0.5〜24時間であり、より好ましくは1.0〜10時間である。
【0047】
化合物(7)の単離、精製は常法により行うことができる。例えば、溶媒による抽出、シリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、減圧蒸留、再結晶等の公知の方法によって、化合物(7)を単離、精製することができる。
【0048】
工程(vii)と工程(viii)
化合物(7)から下記式(8):
【化34】

で表される光学活性な環状アジドアルコール誘導体(以下、「化合物(8)」ともいう。)を経由し(工程(vii))、下記式(9):
【化35】

で示される光学活性な環状ジアミドアルコール誘導体(以下、「化合物(9)」ともいう。)を得る工程(viii)について説明する。
【0049】
化合物(7)を反応溶媒に溶解する。反応溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール溶媒が好ましい。より好ましくは、メタノールである。反応溶媒の使用量は、化合物(7)に対し通常1.0〜20倍容量であり、好ましくは5〜15倍容量であり、より好ましくは約7〜10倍容量である。
【0050】
次に、塩化水素メタノール溶液を加え、反応を実施する。塩化水素メタノール溶液の使用量は、化合物(7)に対し通常20〜70倍容量であり、好ましくは30〜60倍容量であり、より好ましくは約45〜55倍容量である。この時の反応温度は、通常−10〜40℃であり、好ましくは10〜30℃、より好ましくは15〜20℃である。また、反応時間は、通常1〜30時間であり、より好ましくは15〜20時間である。
【0051】
次に、減圧条件にて、塩化水素及びメタノールを除いた後、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和を実施し、さらにジクロロメタンを加えて抽出を行う。この有機層を硫酸ナトリウム等で乾燥する。この有機溶媒を留去して、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の飽和環状エーテル溶媒を加える。それぞれの反応溶媒の使用量は、化合物(7)に対し通常2〜80倍容量であり、好ましくは40〜70倍容量であり、より好ましくは約60倍容量である。この操作により、化合物(8)の溶液が得られる。
【0052】
次に、トリフェニルホスフィンと水を加え、反応を実施する。トリフェニルホスフィンの使用量は、化合物(8)に対し通常1.0〜2.0倍当量であり、好ましくは1.4〜1.6倍当量であり、より好ましくは約1.5倍当量である。水の使用量は、化合物(8)に対し通常3〜7倍容量であり、好ましくは4〜5倍容量である。この時の反応温度は、通常20〜70℃であり、好ましくは40〜60℃、より好ましくは45℃〜55℃である。また、反応時間は、通常1〜36時間であり、より好ましくは20〜26時間である。この操作により、アミノアルコール誘導体が得られる。
【0053】
次に、減圧条件にて、テトラヒドロフラン及び水を除いた後、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒を加える。反応溶媒の使用量は、アミノアルコール誘導体に対し通常20〜100倍容量であり、好ましくは40〜80倍容量であり、より好ましくは50〜70倍容量である。
【0054】
上記の溶液に、二炭酸ジ−t−ブチルと4−ジメチルアミノピリジンとトリエチルアミンを加え、反応を実施する。二炭酸ジ−t−ブチルの使用量は、アミノアルコール誘導体に対し通常1.0〜1.2倍当量であり、好ましくは1.0倍当量である。4−ジメチルアミノピリジンの使用量は、アミノアルコール誘導体に対し通常0.01〜0.1倍当量であり、好ましくは0.03〜0.06倍当量であり、より好ましくは約0.05倍当量である。トリエチルアミンの使用量は、アミノアルコール誘導体に対し通常1.0〜10倍当量であり、好ましくは4.0〜6.0倍当量であり、より好ましくは約5.0倍当量である。この時の反応温度は、通常10〜50℃であり、好ましくは10〜40℃、より好ましくは15〜30℃である。また、反応時間は、通常1〜30時間であり、より好ましくは20〜25時間である。
【0055】
次に、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液及びジクロロメタン等の有機溶媒を加えて、抽出を実施する。この有機層を硫酸ナトリウム等で乾燥する。
【0056】
化合物(9)の単離、精製は常法により行うことができる。例えば、溶媒による抽出、シリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、減圧蒸留、再結晶等の公知の方法によって、化合物(9)を単離、精製することができる。
【0057】
化合物(9)は、リン酸オセルタミビルの原料として公知である(特開2008−81489号公報、及びWO2007/099843 A1公報参照)。
以下に化合物(9)からリン酸オセルタミビルへの合成スキームを示す:
【化36】

【0058】
前記[2]の反応スキームを以下に示す:
【化37】

以下、工程(ix)〜工程(xi)を順番に説明する。
工程(ix)
一般式(1)の化合物は、式(a)で表される環状エポキシオレフィン化合物(以下、「化合物(a)」ともいう。)から合成することができる。
【0059】
まず、式(b)で表されるN,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子及び銅化合物を溶媒に溶解し、これを触媒として用いる。N,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子としては、式(b)のRが、水素原子、メチル基、エチル基、及びプロピル基からなる群から選ばれる低級アルキル基であることが好ましく、Rが、フェニル基;p−メチル及びp−メトキシからなる群から選ばれる置換基を有するフェニル基;α若しくはβのナフチル基;p−メチル及びp−メトキシからなる群から選ばれる置換基を有するα若しくはβのナフチル基;又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びtert−ブチル基からなる群から選ばれる低級アルキル基であることが好ましい。式(b)のRがメチル基であり、Rがtert−ブチル基であることが最も好ましい。
【0060】
銅化合物としては、六フッ化リン銅テトラアセトニトリルで代表される銅(I)化合物又は銅(II)トリフルオロメタンスルホネートで代表される銅(II)化合物を用いることができる。銅化合物として、銅(II)トリフルオロメタンスルホネートに代表される銅(II)化合物を用いる場合は、更に、還元剤であるフェニルヒドラジンを添加する。なお、この場合、フェニルヒドラジンを加えることにより、液の色は暗赤色から透明な赤色の反応液に変化する。これは、銅(II)化合物が銅(I)化合物へと反応系中で変化していることを示す。フェニルヒドラジンの使用量は、銅(II)化合物に対して、好ましくは1.0〜1.5倍当量、より好ましくは約1.0倍当量である。なお、銅化合物として六フッ化リン銅テトラアセトニトリルで代表される銅(I)化合物を用いる場合は、フェニルヒドラジンを添加する必要はない。
【0061】
反応溶媒としては、特に限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン等の脂肪族ケトン系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等の脂肪族ニトリル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル等の脂肪族炭化水素系エステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の水溶性極性溶媒が好ましい。より好ましくは、脂肪族ケトン系溶媒である。脂肪族ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−sec−ブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、エチルプロピルケトン、ブチルエチルケトン等を用いることができ、好ましくは、アセトン、メチルエチルケトンであり、より好ましくはアセトンである。アセトン等の反応溶媒の使用量は、銅化合物に対し通常50〜200倍容量であり、好ましくは90〜150倍容量であり、より好ましくは約130倍容量である。
【0062】
次に、アルゴン気流下で、化合物(a)及び有機過酸化物を加え、反応を実施する。化合物(a)の使用量は、銅化合物に対して、好ましくは80〜1000倍当量、より好ましくは約800倍当量である。有機過酸化物としては過安息香酸エステルが好ましく用いられ、過安息香酸tert−ブチルが特に好ましく用いられる。有機過酸化物の使用量は、銅化合物に対して、好ましくは10〜800倍当量、より好ましくは約400倍当量である。この時の反応温度は、通常5〜50℃であり、好ましくは10〜30℃、より好ましくは15〜25℃である。また、反応時間は、通常0.5〜3時間であり、より好ましくは1.0〜2時間である。
【0063】
工程(x)
次に、アルゴン気流下、アルコール系溶媒中で、塩基触媒を加え、反応を実施する。基質の使用量は、塩基触媒に対して、好ましくは10〜50倍当量、より好ましくは約20倍当量である。塩基触媒としては、ナトリウムメトキシドが好ましく用いられる。アルコール系溶媒としてはメタノールが好ましく用いられる。この時の反応温度は、通常5〜50℃であり、好ましくは10〜30℃、より好ましくは15〜25℃である。また、反応時間は、通常0.5〜4時間であり、より好ましくは1.5〜2.5時間である。
【0064】
工程(xi)
上記反応液にアルゴン気流下で、塩化ベンゾイル化合物と第三級アミンを加え、反応を実施する。第三級アミンとしては、トリエチルアミンが好ましく用いられる。第三級アミンの使用量は、基質に対して、好ましくは1〜5倍当量、より好ましくは1.1〜1.5倍当量である。塩化ベンゾイル化合物としては4−ニトロ塩化ベンゾイルが好ましく用いられる。塩化ベンゾイル化合物の使用量は、基質に対して、好ましくは1〜5倍当量、より好ましくは約1.1倍当量である。この時の反応温度は、通常5〜50℃であり、好ましくは10〜30℃、より好ましくは15〜25℃である。また、反応時間は、通常3〜15時間であり、より好ましくは7〜8時間である。
化合物(1)の単離、精製は常法により行うことができる。例えば、溶媒による抽出、シリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、減圧蒸留、再結晶等の公知の方法によって、化合物(1)を単離、精製することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
【0066】
全ての反応はシュレンク管を用いた技法と、新たに蒸留した溶媒を使用してアルゴン気流下で実施した。
融点は、柳本製作所製のYanaco MP−500dで測定した。
H NMR(400MHz)スペクトル及び13C NMR(100.6MHZ)スペクトルは、内部標準(0ppm)としてテトラメチルシラン(MeSi)を使用して日本電子株式会社製のJEOL JNM−LA 4002により測定した。NMRの記載で使用される略語として、Sはシングレット(singlet)、dはダブレット(doublet)、tはトリプレット(triplet)、qはカルテット(quartet)、mはマルチプレット(multiplet)、brdはブロード(broad)、brsはブロードシングレット(broad singlet)、ddはダブルダブレット(double doublet)、dddはダブルダブルダブレット(double double doublet)、tdはトリプルダブレット(triple doublet)を意味する。
【0067】
IRスペクトルは、パーキンエルマー社製のPERKIN ELMER FT−IR Spectrometer SPECTRUM 1000を使用して測定した。
元素分析は、柳本製作所製のYanaco CHN Corder MT−5を使用して測定した。
MASSスペクトルは、サーモ社製のThermo Quest LCQ DECA plusを使用して測定した。
光学純度は、試料を1dm cellの溶液に調製して堀場製作所製のHORIBA SEPA−300 Polarimeterを使用して測定した。
シリカゲルカラムは、フジデビィソン社製のFuji Silysia BW−820MH又はYMC*GEL Silica(6nm I−40−63 um)を用いて分離した。
薄層カラムクロマトグラフィー(TLC)は、メルク社製のMerck 25 TLC aluminum sheets Silica gel 60 F254を用いて分離した。
光学分割液体クロマトグラフィー(HPLC)は、L−2455 Diode Array Detectorを装備した日立製作所(製)HITACHI L−2000で測定した。
【0068】
(参考例1)(S)−1−フェニル−N−(ピリジン−2−イルメチレン)エチルアミンの製造
(S)−1−フェニル−エチルアミン133.2mg(1.10mmol)、ピリジン−2−カルボアルデヒド(107.1mg(1.00mmol)をトルエン5mLに溶解し、硫酸ナトリウム1.0gを加え、この反応溶液を12時間110℃で攪拌した。反応液をろ過後、反応液を減圧留去すると目的物の(S)−1−フェニル−N−(ピリジン−2−イルメチレン)エチルアミン178.7mg(収率85%)が得られた。分析用のサンプルとして事前にトリエチルアミンで中性にしたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=5/1)を使用して精製した。
【0069】
(S)−1−フェニル−N−(ピリジン−2−イルメチレン)エチルアミン分析値:僅かな黄色オイル;[α]25:+38(c 1.0,CHCl);IR(Nujol):νmax=3060,2971,1645,1586,1493,1467,1436,1371,1080,762,700,612cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=1.61(d,J=6.8Hz,3H),4.65(q,J=6.8Hz,1H),7.2―7.4(m,6H),7.72(dt,J=7.2Hz,1.6Hz,1H),8.09(d,J=7.6Hz,1H),8.46(s,1H),8.63(d,J=4.8Hz,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=24.5,69.5,121.4,124.6,126.6,126.9,128.5,136.4,144.5,149.3,154.8,160.4.
【0070】
(参考例2)各種アルドイミンズ配位子(Aldimins Ligands)の製造
対応するキラルアミン化合物(1.10mmol)及びアルデヒド化合物(1.00mmol)以外は参考例1と同様にして各種アルドイミンズ配位子(Aldimins Ligands)を合成した。
(S)−N−[(6−メチルピリジン−2−イル)メチレン]−1−フェニルエチルアミン:収率83%;僅かな黄色オイル;[α]25:+5.6(c 1.0,CHCl);IR(Nujol):νmax=2971,2862,1646,1591,1456,1369,1085,792,764,699cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=1.60(d,J=6.8Hz,3H),2.58(s,3H),4.62(q,J=6.8Hz,1H),7.16(d,J=7.2Hz,1H),7.23(d,J=6.8Hz,1H),7.34(T,J=7.2Hz,2H),7.4―7.5(m,2H),7.61(t,J=7.8Hz,1H),7.92(d,J=7.8Hz,1H),8.45(s,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=24.3,24.5,69.5,118.4,124.3,126.7,126.9,128.5,136.7,144.6,154.3,158.0,160.8.
【0071】
(S)−1−フェニル−N−(キノリン−2−イルメチレン)−エチルアミン:収率82%;黄色固体(再結晶溶媒:アセトニトリル);融点90−92℃;[α]26:−54(c 1.0,CHCl);IRスペクトル(KBr):νmax=2966,2860,1633,1596,1504,1452,1367,1086,835,774,759,706cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=1.65(d,J=7.2Hz,3H),4.72(q,J=7.2Hz,1H),7.2―7.3(m,1H),7.3―7.4(m,2H),7.48(d,J=7.2Hz,2H),7.5―7.6(m,1H),7.7―7.8(m,1H),7.83(d,J=10.4Hz,1H),8.13(d,8.4Hz,1H),8.17(d,J=8.4Hz,1H),8.26(d,J=8.4Hz,1H),8.64(s,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=24.6,69.6,118.6,126.7,127.0,127.4,127.7,128.5,128.8,129.6,129.7,136.4,144.5,147.8,155.1,160.9.
【0072】
(S)−1−(ナフタレン−1−イル)−N−(キノリン−2−イルメチレン)−エチルアミン:収率84% 黄色オイル;[α]26:+152(c 1.0,CHCl);IRスペクトル(Nujol):νmax=2977,2864,1649,1595,1502,1429,1369,1304,1119,959,837,778,753,619cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=1.79(d,J=6.8Hz,3H),5.54(q,J=6.8Hz,1H),7.5―7.6(m,4H),7.7―7.9(m,5H),8.10(d,J=8.4Hz,1H),8.18(d,J=8.4Hz,1H),8.27(d,J=8.4Hz,1H),8.31(d,J=8.4Hz,1H),8.68(s,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=24.1,65.3,118.6,123.6,124.1、125.4,125.6,125.9,127.3,127.6,127.7,128.8,128.9,129.5,129.7,130.7,134.0,136.4,140.3,147.7,155.1,161.2.
【0073】
(S)−3,3−ジメチル−N−(キノリン−2−イルメチレン)ブタン−2−アミン:収率81%;黄色オイル;[α]26:+152(c 1.0,CHCl);IRスペクトル(thin film):νmax=2958,2866,1646,1595,1502,1458,1393,1364,1204,1121,961,834,750,620cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=0.98(s,9H),1.20(d,J=6.4Hz,3H),3.15(q,J=6.4Hz,1H),7.5―7.6(m,1H),7.7―7.8(m,1H),7.83(d,J=8.4Hz,1H),8.1―8.2(m,3H),8.50(s,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=17.3,26.6,34.3,75.3,118.6,127.2,127.7,128.7,129.5,129.6,136.3,147.8,155.3,160.0;MS(ESI)m/z=241.4(M+H),263.3(M+Na);Anal.calcd.for C1620:C 79.96,H 8.39,N 11.66;Found:C 79.89,H 8.33,N 11.40.
【0074】
(参考例3)メチル2−キノリイルケトンの製造
無水エーテル50mLに2−キノリンカルボニトリル2.0g(13.0mmol)を溶解した溶液に、予めマグネシウム0.343g(14.3mmol)とヨウ化メチル2.05g(14.3mmol)を無水ジエチルエーテル30mL中で反応させて得たヨウ化マグネシウムメチル溶液を0℃で冷やしながら滴下した。滴下終了後、反応液を室温まで戻し、一晩攪拌した。0℃に冷却し、反応液を水氷で反応を停止させ、かつ2モル硫酸(25mL、50mmoL)で完全に停止させた。反応液は室温にて5時間攪拌し、水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層と水層を分離して、さらに水層をジエチルエーテル30mLで3回抽出した。これらの有機層は水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後有機層を留去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=20/1)にて分離して目的物の無色固体のメチル2−キノリイルケトン1.25g(収率56%)を得た。融点:50―51℃;IRスペクトル(KBr):νmax=3012,1691,1592,1504,1355,1306,1287,1123,942,838,756,658cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=2.88(s,3H),7.65(td,J=8.0Hz,1.2Hz,1H),7.79(td,J=6.8Hz,1.2Hz,1H),7.87(d,J=8.0Hz,1H),8.13(d,J=8.8Hz,1H),8.20(d,J=8.8Hz,1H),8.27(d,J=8.0Hz,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl3):δ=25.5,117.9,127.6,128.5,129.5,130.0,130.6,136.8,147.3,153.3,200.7.
【0075】
(参考例4)エチル2−キノリイルケトンの製造
ヨウ化マグネシウムエチル溶液(1.0Mテトラヒドロフラン)を用いる以外は参考例3のメチル2−キノリイルケトン製造と同様にして反応を実施した。
収率62%;無色固体;融点;56―57℃;IR スペクトル(KBr):νmax=2977,1692,1560,1460,1399,1358,1115,968,935,806,789,753,621cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=1.28(t,J=7.6Hz,3H),3.43(q,J=7.6Hz,2H),7.64(td,J=8.0Hz,0.8Hz,1H),7.78(td,J=6.8Hz,1.2Hz,1H),7.87(d,J=8.4Hz,1H),8.14(d,J=8.4Hz,1H),8.20(d,J=8.4Hz,1H),8.26(d,J=8.4Hz,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=8.1,30.9,118.2,127.7,128.4,129.6,129.9,130.5,136.9,147.2,153.1,203.2.
【0076】
(参考例5)各種N,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子の製造
(S)−3,3−ジメチル−N−[1−(キノリン−2−イル)エチリデン]ブタン−2−アミンの製造
対応するケトン化合物(2.0mmol)、キラルアミン化合物(3.2mmol)及びトリエチルアミン404.8mg(4.0mmol)をトルエン20mLに溶解した。この溶液に3mLのトルエンに溶解したテトラクロロチタン(135μl,1.2mmol)を滴下した。室温でさらに一時間攪拌後、反応液を90℃にて24時間攪拌した。この溶液を0℃まで冷却し、1Mの水酸化ナトリウム水溶液10mLを加えて反応を停止した。酢酸エチル20mLで3回抽出した。有機層は1Mの水酸化ナトリウム水溶液10mL及び水10mLで3回洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後溶媒を留去して、N,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子を合成した。
【0077】
(S)−3,3−ジメチル−N−[1−(キノリン−2−イル)エチリデン]ブタン−2−アミン
収率:92%;無色の針状結晶(再結晶溶媒;アセトニトリル);融点;97−99℃;[α]27:+105(c 1.0,CHCl);IRスペクトル(KBr):νmax=2970,2867,1633,1596,1558,1499,1366,1127,842,763,620cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=0.98(s,9H),1.08(d,J=6.4Hz,3H),2.49(s,3H),3.50(q,J=6.4Hz,1H),7.52(td,J=8.4Hz,0.8Hz,1H),7.68(td,J=8.4Hz,0.8Hz,1H),7.80(d,J=8.4Hz,1H),8.0―8.1(M,2H),8.33(d,J=8.8Hz,1H).13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=12.9,15.5,26.5,34.8,65.0,119.0,126.7,127.5,128.3,129.1,129.8,135.7,147.2,158.2,163.4;MS(ESI)m/z=255.3(M+H),277.3(M+Na);計算値 C1722:C 80.27,H 8.72,N 11.01;実測値:C 79.97,H 8.89,N 11.01.
【0078】
(S)−1−(ナフタレン−1−イル)−N−[1−(キノリン−2−イル)エチリデン]エチルアミン
収率:80%;黄色の針状結晶(再結晶溶媒;メタノール);融点:111―112℃;[α]26:+215.4(c 1.0,CHCl);IRスペクトル(KBr):νmax=2971,1640,1593,1559,1501,1445,1353,1129,837,800,781,758,736,624cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=1.76(d,J=6.4Hz,3H),2.53(s,3H),5.70(q,J=6.4Hz,1H),7.5―7.6(M,4H),7.70(qt,J=6.8Hz,1H),7.75(d,J=8.0Hz,1H),7.82(d,J=8.0Hz,1H),7.8―7.9(M,2H),8.11(d,J=8.4Hz,1H),8.16(d,J=8.8Hz,1H),8.34(d,J=8.0Hz,1H),8.49(d,J=8.4Hz,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=14.0,24.3,57.3,119.1,123.6,124.1、125.3,125.8,126.9,127.2,127.5,128.5,129.0,129.2,129.9,134.1,135.9,142.0,147.2,165.9;MS(ESI)m/z=325.3(M+H),347.3(M+Na)
【0079】
(S)−3,3−ジメチル−N−[1−(キノリン−2−イル)プロピリデン]ブタン−2−アミン
収率:89%;無色の針状結晶(再結晶溶媒;アセトニトリル);融点;64−65℃;[α]21:+108(c 1.0,CHCl);IRスペクトル(KBr):νmax=2967,2866,1630,1558,1500,1455,1361,1130,835,761,620cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=0.99(s,9H),1.10(d,J=6.8Hz,3H),1.15(t,J=7.2Hz,3H),2.9―3.0(M,1H),3.2―3.3(M,1H),3.54(q,J=6.8Hz,1H),7.52(td,J=8.4Hz,0.8Hz,1H),7.69(td,J=6.8Hz,1.2Hz,1H),7.80(dd,J=8.4Hz,0.8Hz,1H),8.10(d,J=8.4Hz,2H),8.28(d,J=8.4Hz,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=12.4,16.5,19.6,26.5,34.6,64.2,119.6,126.6,127.4,128.3,129.0,129.9,135.6,147.3,157.3,168.2;MS(ESI)m/z=269.4(M+H),291.3(M+Na);計算値 C1824:C 80.55,H 9.01,N 10.44;実測値:C 80.23,H 9.00,N 10.64.
【0080】
(参考例6)6−オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−エンの合成
水150mLに水溶性炭酸水素ナトリウム(25.2g、300mL)溶液に、1,4−シクロヘキサジエン16.0g(200mmol)及びメタクロロ過安息香酸50.5g(190mmol)を溶解したジクロロメタン250mLを数回に分けて、氷で冷やしながら加えた。0℃で1時間および室温で3時間反応液を攪拌した。その後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて、1時間室温で反応液を攪拌した。有機層を分液し、水層はジクロロメタン50mLで2回抽出した。先程の有機層とこの抽出したジクロロメタンを合わせて、この有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水および飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ジクロロメタンを減圧下(40KPa、55℃)で留去し、粗生成物の無色液体の6−オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−エン15.3g(160mmol)を得た。収率80%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=2.42―2.59(m,4H)、3.24(m,2H)、5.43(s,2H) 13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=25.0,51.0,121.6.
【0081】
(実施例1)trans−4−ニトロ安息香酸−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エン−2−イルエステルの合成
(S)−3,3−ジメチル−N−[1−(キノリン−2−イル)エチリデン]ブタン−2−アミン610mg(2.40mmol)と六フッ化リン銅テトラアセトニトリル760mg(0.20mmol)をアセトン100mLに溶解し、室温で1時間攪拌した。反応液は暗赤色の反応液に変化した。次に、前記反応液へアルゴン気流下で6−オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−エン15.4g(160mmol)を滴下した。さらに、過安息香酸tert−ブチル15.6g(80.0mmol)をアセトン20mLに溶解し滴下した。反応液は緑色に変化した。反応温度を25℃、120分間放置した。アセトンを減圧留去し、残渣に酢酸エチル200mLを加えた。この有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水30mLで2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後溶媒を留去し、この残渣を短いシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=8/1)にて精製を行うと、オイル状の粗(1S,2S,6S)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エン−2−イルベンゾエート12.5gを得た。この化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶で精製した。Rf=0.4(ヘキサン/酢酸エチル=3/1);融点60―62℃;[α]21:+201(c 0.3,CHCl)85%e.e.;H NMR(400MHz,CDCl):δ=2.60―2.71(m,2H)、3.38(m,2H)、5.70―5.80(m,3H)、7.40―7.50(m,2H)、7.50―7.60(m,1H)、8.00―8.10(m,2H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=25.0,50.0,51.4,65.5,120.9,126.9,128.4,129.7,130.0,133.2,165.9;MS(ESI)m/z=217.2(M+H);計算値 C1312:C 72.21,H 5.59;実測値:C72.21,H 5.59.
【0082】
このオイル状化合物にメタノール100mL、ナトリウム65mg(2.82mmol)及びメタノール6mLで合成したナトリウムメトキシド溶液を加え、室温で2時間攪拌した。原料が無くなったことをTLCで確認し、酢酸0.18g(3.0mmol)を含むメタノールで反応を停止した。(1R,2S,6S)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エン−2−オールをシリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶で精製した。無色液体; Rf=0.18(ヘキサン/酢酸エチル=1/1);融点60―62℃;[α]21:+119(c 0.5,CHCl)99.1%e.e.{ガスクロマトグラフィーで光学純度を決定。測定条件:カラム β−DEX−225(SUPELCOR) カラムオーブン温度(150℃) (1R,2S,6S)異性体(主要化合物)の保持時間:7.17分, (1S,2R,6R)異性体(副化合物)の保持時間:8.57分};H NMR(400MHz,CDCl):δ=2.03(brs,1H),2.55―2.59(m,2H),3.25(brs,1H),3.32(brs,1H),4.48(brs,1H),5.58―5.62(m,1H),5.67―5.71(m,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=25.0,50.2,53.6,62.8,124.6,124.7;MS(ESI)m/z=113.0(M+H)
【0083】
メタノールを完全に留去し、残渣をジクロロメタン150mL及びトリエチルアミン10mL(71mmol)を加えた。その後、ジクロロメタン50mLに溶解した4−ニトロ塩化ベンゾイル10.8g(57mmol)を30分間で滴下した。反応液を一晩室温にて放置して、飽和炭酸水素ナトリウム水を反応液に加え、反応を停止した。有機層を分液し、水層はジクロロメタン30mLで2回抽出した。先程の有機層とこの抽出したジクロロメタンを合わせて、この有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水および飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ジクロロメタンを減圧下で留去し、濾過後溶媒を留去し、この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=8/1)にて精製を行い、白色固体を得た。熱したヘキサン/酢酸エチル(120mL/30mL)でこの白色固体を再結晶し、無色結晶のtrans−4−ニトロ安息香酸−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エン−2−イルエステル4.8g(23%)を得た。融点125―127℃;[α]21:+209(c 0.5,CHCl);99.0%e.e.{HPLC測定で決定 HPLC条件 Chirapak ASカラム(展開溶媒 ヘキサン:2−プロパノール=90:10)、流速 1.0mL/min};H NMR(400MHz,CDCl):δ=2.60―2.70(m,2H)、3.30―3.34(m,2H)、5.70―5.80(m,3H)、8.24(d,J=9.6Hz,2H)、8.31(d,J=9.6Hz,2H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=25.0,49.9,51.2,120.3,123.6,127.7,130.9,135.3,150.7,164.1;MS(ESI)m/z=262.0(M+H);計算値 C1311NO:C 59.77,H 4.24,N 5.36;実測値:C 59.72,H 4.27,N 5.37.
【0084】
(実施例2)(1S,2S,6S)−2−メトキシメトキシ−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エンの合成
trans−4−ニトロ安息香酸−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エン−2−イルエステル1.5g(5.75mmol)をメタノール15mLに溶解し、0.5Mナトリウムメトキシド メタノール溶液 600μL(0.3mmol)を加え室温で8時間攪拌した。反応液へ酢酸18μL(0.3 mmol)を加え室温で10分攪拌した後、エバポレーターを用いて30℃、200hPaの条件で有機溶媒を除いた。残渣からシリカゲルカラム(酢酸エチル/ヘキサン=1/10)を用いて共生成物である4−ニトロ安息香酸メチルを除いた。得られた脱保護体はそのままジクロロメタン30mLに溶解し、ジイソプロピルエチルアミン2.9mL(17.3mmol)を加え0 ℃に冷却した。反応液にクロロメトキシメタン1.3 mL(17.3 mmol)をゆっくりと加え、室温にて10時間攪拌した。その後、反応液に水30 mLを加え、生成物をジクロロメタンで抽出した。有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して、シリカゲルカラムで精製(酢酸エチル/ヘキサン=1/10)して(1S,2S,6S)−2−メトキシメトキシ−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エン880mgを得た。収率99%;H NMR(CDCl,400MHz):δ=5.65(m,2H),4.78(d,J=7.2Hz,1H),4.75(d,J=7.2Hz,1H),4.44(m,1H),3.40(s,3H),3.32(m,1H),3.30(m,1H),2.63―2.51(m,2H);13C NMR(CDCl,100.6MHz):δ=125.3,122.8,95.9,68.7,55.5,52.4,50.3,25.1;MS(ESI)m/z=157(M+H)
【0085】
(実施例3)(1S,2S,6R)−メタンスルホン酸−6−アジド−2−メトキシメトキシ−シクロヘキサ−3−エニルエステルの合成
(1S,2S,6S)−2−メトキシメトキシ−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エン440mg(2.81mmol)をメタノール15mLに溶解し、そこにアジ化ナトリウム1.27g(12.6mmol)と塩化アンモニウム450mg(8.4mmol)を溶かした水溶液5mLを加え80 ℃で24時間攪拌した。反応液へ水20mLを加え室温で10分攪拌した後、エバポレーターを用いて40℃、60hPaの条件で有機溶媒を除いた。残渣へ酢酸エチルを加えて、抽出を行った。有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して、得られた生成物はそのままジクロロメタン15mLに溶解し、ジイソプロピルエチルアミン697μL(4.2 mmol)を加え0℃に冷却した。反応液にメタンスルホン酸クロリド327μL(4.2mmol)をゆっくりと加え、室温にて24時間攪拌した。その後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液15mLを加え、生成物をジクロロメタンで抽出した。有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して、シリカゲルカラムで精製(酢酸エチル/ヘキサン=1/5)して、(1S,2S,6R)−メタンスルホン酸−6−アジド−2−メトキシメトキシ−シクロヘキサ−3−エニルエステル685mgを得た。収率88%;H NMR(CDCl,400MHz):δ=5.72(m,2H),4.81(d,J=7.2Hz,1H),4.77(d,J=7.2Hz,1H),4.65(dd,J=10.4,7.2Hz,1H),4.32(dd,J=8.0,3.6Hz,1H),3.77(ddd,J=10.4,10.4,6.0Hz,1H),3.43(s,3H),3.18(s,3H),2.63(m,1H),2.27(m,1H);13C NMR(CDCl,100.6MHz):δ=127.3,125.0,97.0,83.5,76.8,58.9,55.9,39.1,31.0.
【0086】
(実施例4)(1R,2S,6R)−2−メトキシメトキシ−7−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エンの合成
(1S,2S,6R)−メタンスルホン酸−6−アジド−2−メトキシメトキシ−シクロヘキサ−3−エニルエステル431mg(1.55mmol)をテトラヒドロフラン10mLに溶解し、0℃にて攪拌した。そこにトリフェニルホスフィン170mg(0.65mmol)を加え0℃で10分攪拌した。反応液を室温に戻し、さらにトリフェニルホスフィン340mg(1.30mmol)を二回に分けて加え、3時間攪拌した。反応液へトリエチルアミン430μL(2.33mmol)と水700μLを加え室温で12時間攪拌した後、エバポレーターを用いて有機溶媒を除いた(40℃、60hPa)。残渣へジクロロメタンと飽和食塩水を加えて、抽出を行った。有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して、シリカゲルカラムで精製(酢酸エチル/メタノール=10/1)して(1R,2S,6R)−2−メトキシメトキシ−7−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エン239mgを得た。収率99%;H NMR(CDCl,400MHz):δ=5.53(m,2H),4.87(d,J=6.8Hz,1H),4.80(d,J=6.8Hz,1H),4.49(m,1H),3.45(s,3H),2.61(m,1H),2.50―2.43(m,1H),2.40―2.31(m,2H),1.26(brs,1H);13C NMR(CDCl,100.6MHz):δ=124.9,124.0,95.4,70.7,55.5,33.4,29.1,24.7.
【0087】
(実施例5)N−[(1R,2R,6S)−6−アジド−2−メトキシメトキシ−シクロヘキサ−3−エン−1−イル)]アセトアミドの製造
(1R,2S,6R)−2−メトキシメトキシ−7−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エン(216mg,1.4mmol,1当量)をジメチルホルムアミド(5mL)に溶解し、そこにアジ化ナトリウム(NaN,451mg,6.9mmol,5.0当量)と塩化アンモニウム(NHCl,148mg,2.8mmol,2.0当量)を加え65℃で16時間攪拌した。反応液へ5%炭酸水素ナトリウム水溶液(3mL)を加え室温で10分攪拌した後、ジエチルエーテルを加えて、抽出を行った。有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して、得られた生成物はそのままヘキサン(1.5mL)とジクロロメタン(1.5mL)の混合溶媒に溶解し、8%炭酸水素ナトリウム水溶液(2.0当量)を加えた。反応液に無水酢酸(130μL,1.4mmol,1.0当量)をゆっくりと加え、20℃にて3時間攪拌した。その後、反応液にジエチルエーテルを加え、生成物を抽出した。有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して、シリカゲルカラムで精製(酢酸エチル/ヘキサン=2/1)してN−[(1R,2R,6S)−6−アジド−2−メトキシメトキシ−シクロヘキサ−3−エン−1−イル)]アセトアミド224mgを得た。収率67%;H NMR(CDCl,400MHz):δ=6.10(brs,1H),5.85(m,2H),4.73(d,J=6.7Hz,1H),4.68(d,J=6.7Hz,1H),4.25(ddd,J=10.6,9.2,4.0Hz,1H),4.10(m,1H),3.73(ddd,J=10.6,9.5,5.8Hz,1H),3.39(s,3H),2.58(ddd,J=17.4,5.8,2.6Hz,1H),2.21(dd,J=17.4,9.5,Hz,1H),2.07(s,3H);13C NMR(CDCl,100.6MHz):δ=170.2,128.7,126.0,96.3,72.7,57.0,55.7,51.6,31.0,23.5.
【0088】
(実施例6)N−[(1R,2S,6S)−6−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−シクロヘキサ−3−エン−1−イル]アセトアミドの製造
N−[(1R,2R,6S)−6−アジド−2−メトキシメトキシ−シクロヘキサ−3−エン−1−イル)]アセトアミド119mg(0.5mmol)をメタノール1mLに溶解し、0℃にて攪拌した。そこに5〜10%塩化水素メタノール溶液5mLを注意深く加え18℃で19時間攪拌した。その後減圧条件にて、塩化水素およびメタノールを除いた。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて中和を行った後、ジクロロメタンを加えて抽出を行った。有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して、得られた生成物をテトラヒドロフランに溶解し、トリフェニルホスフィン141mg(0.54mmol)と水500μLを加え、50℃にて24時間攪拌した。その後、減圧条件にてテトラヒドロフラン及び水を除去した。得られた生成物75mg(0.38mmol)をそのままジクロロメタン5mLに溶解し、二炭酸ジ−t−ブチル84mg(0.38mmol)と4−ジメチルアミノピリジン2mg(0.02mmol)とトリエチルアミン266μL(1.9mmol)を加え、26℃にて24時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液2mLをゆっくりと加え、ジクロロメタンにて抽出を行った。有機層を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去して、シリカゲルカラムで精製(酢酸エチル/イソプロピルアルコール=15/1)してN−[(1R,2S,6S)−6−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−シクロヘキサ−3−エン−1−イル]アセトアミドを108mg得た。収率90%;融点150―152℃;H NMR(CDCl,400MHz):δ=6.85(brd,J=8.0Hz,1H),5.84―5.81(m,2H),5.00(brd,J=8.6Hz,1H),4.12(m,1H),4.01―3.93(m,2H),3.34(brs,1H),2.58―2.53(m,1H),2.03(s,3H),2.07―1.99(m,1H),1.41(s,9H);13C NMR(CDCl,100.6MHz):δ=171.2,156.8,129.6,127.2,79.7,66.8,54.1,46.2,33.1,28.3,23.2;MS(ESI)m/z=293(M+Na);[α]28=+7.5(c 0.4,CHCl).
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明に係るリン酸オセルタミビルの製造方法は、光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体を出発原料として使用し、簡便な操作で、低コスト、低リスク、高収率かつ高光学選択的にリン酸オセルタミビルを工業的に製造することが可能であるため、リン酸オセルタミビルの工業的製造方法に好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(10):
【化1】

で表されるリン酸オセルタミビルの製造方法であって、以下の工程(i)〜(viii):
(i)下記式(1):
【化2】

{式中、Rは、ニトロ基、ブロモ基、クロロ基、ヨード基、フルオロ基、及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基である。}で表される光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体を加水分解して、下記式(2):
【化3】

で表される光学活性な環状エポキシアルコール誘導体を得る工程、
(ii)得られた光学活性な環状エポキシアルコール誘導体をメトキシメトキシ化して、下記式(3):
【化4】

で表される光学活性な環状エポキシエーテル誘導体を得る工程、
(iii)得られた光学活性な環状エポキシエーテル誘導体をアジド化して、下記式(4):
【化5】

で表される光学活性な環状アジド誘導体を得る工程、
(iv)得られた光学活性な環状アジド誘導体をメシレート化して、下記式(5):
【化6】

で表される光学活性な環状メシレート誘導体を得る工程、
(v)得られた光学活性な環状メシレート誘導体をアジリジン化して、下記式(6):
【化7】

で表される光学活性な環状アジリジン誘導体を得る工程
(vi)得られた光学活性な環状アジリジン誘導体をアジド化して、下記式(7):
【化8】

で表される光学活性な環状アジド−アミド誘導体を得る工程、
(vii)得られた光学活性な環状アジド−アミド誘導体を加水分解して、下記式(8):
【化9】

で表される光学活性な環状アジド−アルコール誘導体を得る工程、及び
(viii)得られた光学活性な環状アジド−アルコール誘導体を加水分解して、下記式(9):
【化10】

で表される光学活性な環状ジアミド−アルコール誘導体を得る工程、
を含む、前記リン酸オセルタミビルの製造方法。
【請求項2】
前記工程(i)に先立って、以下の工程(ix)〜(xi):
(ix)下記式(a):
【化11】

で表される環状エポキシオレフィン化合物を、下記式:
【化12】

で表される有機過酸化物と、触媒として、下記式(b):
【化13】

{式中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、及びプロピル基からなる群から選ばれる低級アルキル基であり、そしてRは、フェニル基;p−メチル及びp−メトキシからなる群から選ばれる置換基を有するフェニル基;又はα又はβのナフチル基;p−メチル及びp−メトキシからなる群から選ばれる置換基を有するα又はβのナフチル基;又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びtert−ブチル基からなる群から選ばれる低級アルキル基である。}で表されるN,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子、及び銅化合物の存在下、反応させ、選択的不斉酸化反応を行って、下記式:
【化14】

で表される化合物を得る工程、
(x)得られた化合物を塩基触媒で加水分解して、以下の式:
【化15】

で表される化合物を得る工程、及び
(xi)得られた化合物を第三級アミンの存在下、下記式:
【化16】

{式中、Rは、ニトロ基、ブロモ基、クロロ基、ヨード基、フルオロ基、及びシアノ基からなる群から選ばれる置換基である。}で表される塩化ベンゾイル化合物と反応させて、前記式(1)で表される化合物を得る工程、
をさらに含む、請求項1に記載のリン酸オセルタミビルの製造方法。
【請求項3】
下記式(6):
【化17】

で表される光学活性化合物2−メトキシメトキシ−7−アザビシクロ[4.1.0.]ヘプタ−3−エン。
【請求項4】
下記式(7):
【化18】

で表される光学活性化合物N−(6−アジド−2−メトキシメトキシ−シクロヘキサ−3−エン−1−イル)−アセトアミド。

【公開番号】特開2012−6921(P2012−6921A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119193(P2011−119193)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】