説明

リン酸化されたCOP1分子およびその使用

本発明は、COP1分子およびCOP1活性のモジュレーターならびにその診断上の使用および治療上の使用など、これらの使用法を提供する。こうした分子は、被験体のDNA損傷の検出ならびにDNA損傷およびp53活性に対する応答の調節に有用である可能性がある。さらに、本発明は、COP1活性を調節できる試験化合物のスクリーニングに用いる試薬およびキットも提供する。一態様では、本発明は、細胞のCOP1ポリペプチドを検出することにより、ATMポリペプチドを含む細胞のDNA損傷を検出する方法を提供し、この方法において、ATMポリペプチドによるCOP1ポリペプチドのリン酸化または対照との比較でのCOP1ポリペプチドレベルの低下からDNA損傷が示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、2005年12月31日に出願された米国仮出願第60/755,412号(この明細書は、その全体が本明細書に援用される)への優先権およびその利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、COP1ならびにDNA損傷の診断および治療の分野のものである。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
哺乳類においては、ゲノムの完全性は、細胞および組織のホメオスタシスを維持するための必須条件である。このため、ゲノムが崩れるのを防ぐように設計された回路に、特殊なタンパク質群が関係している。毛細血管拡張性運動失調(A−T)は、まれな常染色体劣性疾患であるが、発症した個体では、細胞レベルでゲノムが非常に不安定になる(非特許文献1)。毛細血管拡張性運動失調変異タンパク質キナーゼ(ATM)の変異は、A−Tに起因しており、ATMは、ゲノムの完全性を維持するように構成されたDNA損傷の応答ネットワークの重要成分として知られる(非特許文献2)。ATMの機能は、1つには、p53、BRCA1およびChk2など、主要な基質をリン酸化することである。ATMの基質のリン酸化については、DNA損傷後および腫瘍発生の初期に検出されている
【0004】
腫瘍サプレッサーであるp53は、DNA損傷の活性化経路に関与している。マウスのp53ヌルでは一般に、異数性を示すリンパ腫および肉腫が発現する10が、細胞周期停止だけが可能な変異p53を持つマウスでは、2倍体の染色体数を持つ腫瘍が形成される11。p53は、その腫瘍サプレッサーの特質を用いて、遺伝子構造の発現を誘発するストレス活性化転写因子として機能しているが、その遺伝子構造の産物は、細胞周期停止、老化またはアポトーシスに関係している。塩基対変異で体細胞の増殖を遅延させれば、体細胞は、それ自体のゲノムの複製または細胞分裂の前にこうしたミスマッチを修復することができる。転写コアクチベーターp300の補充を促進し13、p53標的遺伝子のトランス活性化の活性化を高めるのはS15であるが、ATMは、S15のN末端でp53を直接リン酸化する12。さらに、ATMは、MDM2およびMDMXをリン酸化するため14〜16、p53を負に制御するMDM2およびMDMXの能力を低下させる。p53は、乳癌および卵巣癌に過剰発現するCOP13,4など、E3ユビキチンリガーゼによって負の制御を受ける
【非特許文献1】Chun,H.H.およびGatti,R.A. DNA Repair(Amst)(2004)3,1187−96
【非特許文献2】Shiloh,Y. Nat Rev Cancer(2003)3,155−68
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
一態様では、本発明は、細胞のCOP1ポリペプチドを検出することによって、ATMポリペプチドを含む細胞のDNA損傷を検出する方法であって、ATMポリペプチドによるCOP1ポリペプチドのリン酸化または対照との比較でのCOP1ポリペプチドレベルの低下からDNA損傷が示される、方法を提供する。
【0006】
ATMポリペプチドは、ヒトATMポリペプチドおよび/またはCOP1ポリペプチドであってもよいし、ヒトCOP1ポリペプチドであってもよい。リン酸化は、セリンのリン酸化であってもよい。COP1ポリペプチドについては、ヒトCOP1ポリペプチドのアミノ酸残基377〜400と実質的に同一のアミノ酸配列またはヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同であるアミノ酸残基を含むペプチドなど、COP1ポリペプチドに特異的に結合する抗体を用いて検出することができる。このペプチドは、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同であるリン酸化可能なアミノ酸残基がリン酸化されていてもよい。
【0007】
本発明の方法は、COP1分子のATM分子への結合がDNA損傷を示すATMポリペプチドを検出する工程をさらに含んでもよく、および/またはCOP1 E3−リガーゼ活性の活性化、COP1自己ユビキチン化の活性化、p53−COP1複合体の破壊、COP1依存性p53ユビキチン化の減少、COP1の細胞質−核の比率の上昇、COP1ポリペプチドのターンオーバーまたはCOP1ポリペプチドの分解を検出する工程をさらに含んでもよく、および/または対照との比較でのp53分子の発現レベルの上昇またはp53活性の増強からDNA損傷が示される細胞のp53分子を検出する工程をさらに含んでもよい。p53分子は、ヒトp53分子および/または野生型p53分子であってもよい。p53分子は、p53ポリペプチドであっても構わない。p53ポリペプチドの検出には、p53ポリペプチドに特異的に結合する抗体を用いてもよい。p53活性は、p53依存性トランス活性化の活性化、p53誘導性アポトーシスの活性化、p21分子の活性化、p21プロモーターの誘導、p21のmRNAレベルの上昇またはPUMAプロモーターの誘導であってもよい。
【0008】
DNA損傷の原因は、放射線(電離放射線もしくは紫外線または放射線治療など)または化合物(chemical compound)(化学療法剤などのアルキル化剤等)であってもよい。細胞(乳癌、卵巣癌、結腸癌、肺癌等の癌細胞または移行細胞癌(transitional cell cancer)細胞など)は、DNA損傷があってもよいし、DNA損傷の危険があるものでもよい。癌細胞については、癌治療を受けている、あるいは、DNA損傷を来す可能性がある放射線または化合物(chemical compound)に曝露されている被験体(ヒトなど)から取得してもよい。癌治療は、DNA損傷の原因になることが分かっているものであってもよいし、DNA損傷の原因になる疑いがあるものでも構わない。
【0009】
別の態様では、本発明は、細胞をCOP1ポリペプチドの分解を高める化合物に曝露することで、細胞のDNA損傷に対する応答を増強する方法を提供する。化合物は、活性化されたATMポリペプチドなど、ATM分子を含んでいてもよい。化合物は、COP1ポリペプチドのATMポリペプチドへの結合を強化してもよいし、ATMポリペプチドによりCOP1ポリペプチドのリン酸化を強化してもよい。
【0010】
別の態様では、本発明は、COP1ポリペプチドおよびATMポリペプチドと、COP1ポリペプチドのATMポリペプチドへの結合を強化する化合物とを接触させて、COP1ポリペプチドとATMポリペプチドとの相互作用を増強する方法を提供する。
【0011】
別の実施形態では、この方法は、結合が、COP1ポリペプチドの分解、COP1 E3−リガーゼ活性の活性化、COP1自己ユビキチン化の活性化、COP1−p53複合体の破壊、COP1依存性p53ユビキチン化の減少、COP1ポリペプチドの細胞質/核の比率の上昇またはp53分子の発現レベルの上昇を来したかどうかを判定するステップをさらに含んでもよい。この接触で、DNA損傷があるまたはDNA損傷の危険がある細胞など(A−T細胞または癌細胞など)、細胞のDNA損傷に対する応答が高まることがある。DNA損傷に対する応答には、細胞アポトーシスまたはp53活性化を含めてもよい。p53活性化は、p53依存性トランス活性化の活性化、p53誘導性アポトーシスの活性化、p21分子の活性化、p21プロモーターの誘導またはPUMAプロモーターの誘導であってもよい。COP1ポリペプチドは、ヒトCOP1ポリペプチドであってもよいし、および/またはATMポリペプチドは、ヒトATMポリペプチドであってもよい。
【0012】
本発明は、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同であるアミノ酸残基のリン酸化を増強する、および/またはヒトCOP1ポリペプチドのセリン387のリン酸化を増強することができる化合物を意図している。
【0013】
さらに、本発明は、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同である残基を持つポリペプチド;ヒトCOP1ポリペプチドのアミノ酸残基377〜400と実質的に同一の配列を含むポリペプチド;リン酸化が可能であるアミノ酸残基がリン酸化しているポリペプチド(ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同であるポリペプチドなど);ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同である残基でのセリンからトレオニン、グルタミン酸塩またはアスパラギン酸塩への置換を含むCOP1ポリペプチド;およびCOP1模倣体化合物など、COP1ポリペプチドまたはそのフラグメントも提供する。一実施形態では、ポリペプチドは、S387での別の残基への残基変化を含むCOP1ポリペプチド配列を含むものである。
【0014】
別の態様では、本発明は、細胞のDNA損傷の促進に好適な条件下、試験化合物の存在下または非存在下でCOP1ポリペプチドをインキュベートし、試験化合物の存在下でCOP1ポリペプチドの分解が増強されるか否かを判定することで、ATM分子を含む細胞のDNA損傷に対する応答を増強させる化合物を同定する方法であって、COP1ポリペプチドの分解を促す化合物は、DNA損傷に対する応答を高める化合物である、方法を提供する。その判定は、対照との比較で行ってもよい。ATM分子は、COP1ポリペプチドをリン酸化する能力があっても構わない。
【0015】
別の実施形態では、この方法は、COP1 E3−リガーゼ活性の活性化、COP1自己ユビキチン化の活性化、COP1−p53複合体の破壊、COP1依存性p53ユビキチン化の減少、COP1ポリペプチドの細胞質/核の比率の上昇、p53活性の増強またはp53分子の発現レベルの上昇が、化合物によって増強したかどうかを判定する選択肢をさらに含み、このような増強により、この化合物がDNA損傷に対する応答を増強する化合物であることが示される、方法である。p53活性は、p53依存性トランス活性化の活性化、p53誘導性アポトーシスの活性化、p21分子の活性化、p21プロモーターの誘導またはPUMAプロモーターの誘導であってもよい。DNA損傷の促進に好適な条件は、照射であって構わない。DNA損傷に対する応答は、細胞アポトーシスまたはp53活性化を含んでもよい。
【0016】
別の態様では、本発明は、試験化合物の存在下または非存在下でATMポリペプチドとともにCOP1ポリペプチドをインキュベートし、試験化合物がCOP1ポリペプチドのATMポリペプチドへの結合を増大または安定化させるか否かを判定することで、COP1ポリペプチドとATMポリペプチドとの相互作用を増強する化合物を同定する方法であって、COP1ポリペプチドのATMポリペプチドへの結合を増大または安定化させる試験化合物は、COP1ポリペプチドとATMポリペプチドとの相互作用を増強する化合物である、方法を提供するものである。
【0017】
別の態様では、本発明は、本質的にヒトCOP1のアミノ酸残基377〜400と実質的に同一または相同であるアミノ酸配列からなる単離されたペプチドまたは本質的に図6に示したようなアミノ酸配列からなる単離されたペプチドを提供するものである。別の実施形態では、ペプチドは、SQモチーフのセリンの置換(アスパラギン酸塩置換またはグルタミン酸塩置換など)を含んでいても構わない。
【0018】
別の態様では、本発明は、ヒトCOP1ポリペプチドのS387と相同であるリン酸化を含む単離されたリン酸化COP1ペプチドもしくは組換えリン酸化COP1ペプチド、またはヒトCOP1ポリペプチドのS387と相同であるアミノ酸残基でのアスパラギン酸塩置換またはグルタミン酸塩置換を含む単離されたCOP1ペプチドもしくは組換えCOP1ペプチド、またはCOP1模倣体化合物を提供するものである。
【0019】
別の実施形態では、本発明は、本発明によるペプチドまたは模倣体をコードする核酸分子を提供する。核酸分子は、プロモーターに作動的に連結されたベクター内にあってもよい。ベクターは、プロモーターに作動的に連結されたATM核酸分子をさらに含んでもよい。ベクターは、宿主細胞にあっても構わない。
【0020】
別の態様では、本発明は、ヒトCOP1のセリン387と相同であるアミノ酸残基がリン酸化されているアミノ酸配列に特異的に結合する抗体または他の試薬を提供するものである。別の実施形態では、本発明は、抗体をコードする核酸分子;プロモーターに作動的に連結された核酸分子を含むベクター;ベクターを含む宿主細胞;および/または細胞のリン酸化COP1分子を検出するための説明書が付いた、抗体を含むキットを提供するものである。
【0021】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載するようなポリペプチド、ペプチドもしくは模倣体またはポリペプチドもしくはペプチドの配列をコードする核酸を含む医薬組成物など、被験体のDNA損傷またはp53活性に対する応答を調節する医薬組成物を提供するものである。
【0022】
別の態様では、本発明は、COP1分子をコードする組換え核酸分子およびATM分子をコードする組換え核酸分子を含む哺乳類細胞を提供するものである。哺乳類細胞は、p53分子をコードする組換え核酸分子をさらに含んでもよい。ATM分子は、活性化されていてもよく、および/またはCOP1分子は、構成的にリン酸化または非リン酸化(S387の変異によるなど)されていてもよい。
【0023】
さらに、本発明は、処置を必要とする被験体のDNA損傷または癌を処置する方法であって、ペプチドまたは本発明の模倣体を治療有効量で被験体に投与することを含む、方法も提供するものである。加えて、本発明は、処置を必要とする被験体のDNA損傷または癌を処置する方法であって、ポリペプチドをコードする化合物または核酸を治療有効量で被験体に投与することを含み、化合物またはポリペプチドは、COP1ポリペプチドのATMポリペプチドへの結合を強化するか、またはATMポリペプチドにより前記COP1ポリペプチドのリン酸化を増強する、方法も提供する。一実施形態によれば、化合物またはポリペプチドは、COP1に特異的に結合する。別の実施形態によれば、化合物またはポリペプチドは、ATMに特異的に結合する。なお別の実施形態によれば、化合物またはポリペプチドは、非リン酸化COP1に特異的に結合する。なお別の実施形態によれば、DNA損傷を受けた細胞または癌のCOP1ポリペプチドのリン酸化を増強するのに有効な量で化合物を投与する。
【0024】
本発明は、本発明の方法により同定される化合物を提供する。さらに、本発明では、被験体のDNA損傷または癌を処置する薬物を調製する際に、本発明のペプチド、模倣体、核酸および化合物を使用することを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、1つには、DNA損傷またはクロマチン構造の変化後にATMがCOP1と相互に作用し、COP1をリン酸化することを示す。ATMによるこうした共有結合による修飾は、COP1−p53複合体を破壊し、COP1によるユビキチン化、分解およびp53の腫瘍サプレッサー機能に対する負の制御を阻害する。さらに、COP1のリン酸化は、E3の自己分解機構に関与し、それによってCOP1をトランスユビキチンリガーゼ活性からシスユビキチンリガーゼ活性に転換するが、これが、リン酸化によるリング−E3リガーゼの活性化の第1の例である。COP1のリン酸化は、COP1の細胞質/核の局在の比率を高める。したがって、ATMによるCOP1のリン酸化またはCOP1の分解により、p53依存性腫瘍サプレッサー機能を負に制御するCOP1の能力が低下する。特定の仮説に拘泥するものではないが、ATMによるCOP1のリン酸化またはCOP1の分解によって、p53経路(図4I)における、A−T患者のゲノム異常に対する応答を大きく遅延させることがさらに説明される可能性がある。
【0026】
これを踏まえれば、ATMによるCOP1のリン酸化またはCOP1の分解を用いて、DNA損傷の検出が可能である。
【0027】
本明細書では、本発明の種々の代替実施形態および実施例を記載している。これらの実施形態および実施例は、例示であり、本発明の範囲を限定するものとして解釈してはならない。
【0028】
DNA損傷
「DNA損傷」とは、DNAを共有結合的に修飾するか、あるいは、そうした修飾により通常の二重螺旋構造から逸脱させることで、DNAの通常機能に影響を与える、DNAに対する障害をいう。DNA損傷には、複製および転写に干渉する構造の歪みばかりでなく、塩基対の破壊とDNA配列の変更とが可能な点突然変異も含まれる。一般に、細胞がDNA損傷を受けると、2つのチェックポイント(G1/SまたはG2/M)の1つで細胞周期が停止する。細胞周期が停止すると、DNA修復プロセスの活性化(比較的小さなDNA損傷の場合)またはアポトーシスの誘導(破局的DNA損傷の場合)を来す可能性がある。
【0029】
DNA損傷は、正常な代謝から生成される反応性酸素およびフリーラジカルによる塩基の酸化とDNA鎖の切断の発生、塩基のメチル化、脱プリン(水中のDNA反応に起因するなど)、脱ピリミジン、DNAポリメラーゼによるDNA複製中の塩基のミスマッチなど、内在性プロセスによって自然に起きることもある。DNA損傷はまた、放射線(紫外線、X線、ガンマ線、電離放射線など)、天然毒素(植物毒素など)、合成毒素、薬物(癌化学療法剤、放射線治療剤など)、アルキル化剤など、環境障害が原因になることもある。
【0030】
DNA損傷は、遺伝的遺伝子障害および環境障害への曝露が原因の障害など、種々の障害をもたらすか、あるいは、種々の障害に起因する可能性がある。DNA損傷が悪化因子である障害には、ルイ−バール症候群または小脳性失調−眼皮膚毛細血管拡張とも呼ばれる毛細血管拡張性運動失調(A−T)、色素性乾皮症、コケーン症候群、硫黄欠乏性毛髪発育異常症、ファンコニー貧血、ブルーム症候群およびアルツハイマー病がある。また、DNA損傷は、喫煙によっても起こり、たとえば、心臓疾患、あるいは、他の疾患の治療が原因で癌などをもたらす可能性もある。
【0031】

「癌」、「新生物」、「新形成」、「癌腫」または「腫瘍」とは、生理的機能を持たない細胞の望ましくない任意の成長をいう。一般に、新生細胞など、新生物または癌の細胞は、正常な細胞分裂制御から解放されており、すなわち、細胞環境において、成長または増殖が正常な生化学的影響および物理的影響によって調節されていない細胞であり、無秩序な成長、局部組織浸潤、転移などの特性を示す。通常、新生細胞は、増殖して良性または悪性のいずれかである細胞のクローンを形成する。したがって、癌または新生物は、専門的には良性であるが、悪性になる危険がある細胞成長を含むものである。「悪性」とは、任意の細胞タイプまたは組織の異常成長または増殖をいう。悪性細胞または悪性組織は、同じタイプの正常細胞または正常組織と比較して、分化/配向の退形成または消失を阻害する場合があり、浸潤能力および転移能力を示すことがある。
【0032】
ほとんどの癌は、圧倒的に多い癌であり、上皮細胞または臓器、腺もしくは他の身体構造(皮膚、子宮、肺、乳房、前立腺、胃、腸など)の外表面または内壁面を覆う細胞の癌であり、転移(mestastasize)しやすい、癌腫;結合組織または支持組織(骨、軟骨、腱、靱帯、脂肪、筋肉など)に由来する、肉腫;および骨髄およびリンパ組織に由来する、血液腫瘍の大まかに3つの組織学的分類に該当する。癌腫は、腺癌(臓器または乳房、肺、結腸、前立腺もしくは膀胱など分泌能力のある腺に発現するのが一般的)であることもあるし、扁平上皮癌(扁平上皮から発生し、通常、ほとんどの身体部位で発現する)であることもある。肉腫は、骨肉腫または骨原性肉腫(骨)、軟骨肉腫(軟骨)、平滑筋肉腫(平滑筋)、横紋筋肉腫(骨格筋)、中皮肉腫または中皮腫(体腔の膜の裏打ち)、線維肉腫(線維組織)、血管肉腫または血管内皮種(血管)、脂肪肉腫(脂肪組織)、神経膠腫または星状細胞腫(脳に見られる神経原性の結合組織)、粘液肉腫(原始胚結合組織)、間葉腫または混合性中胚葉腫(混合性結合組織タイプ)であることもある。血液腫瘍は、骨髄の形質細胞から発生する骨髄腫;「液性癌」であることもあり、骨髄の癌であり、骨髄性白血病または顆粒球性白血病(骨髄白血球および顆粒球白血球)、リンパ性白血病、リンパ球性白血病またはリンパ芽球性白血病(リンパ血液細胞およびリンパ球血液細胞)等、急性リンパ性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性単球性白血病、急性前骨髄球性白血病、慢性骨髄性白血病等、または真性赤血球増加症または赤血病(血球成分は様々だが、赤血球が圧倒的である)であることもある、白血病;または充実性腫瘍であることもあり、リンパ系の腺または節に発現し、ホジキンまたは非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫などを含むこともある、リンパ腫であることもある。さらに、腺扁平上皮癌、混合性中胚葉腫、癌肉腫または奇形癌など、混合型癌も存在する。
【0033】
癌はまた、たとえば、乳房、脳、肺、肝臓、皮膚、前立腺、精巣、膀胱、結腸および直腸、頚部、子宮の癌など、癌が発生する臓器、すなわち、「原発部位」に基づき名付けられることもある。こうした呼称は、癌が原発部位と異なる別の身体部位に転移する場合でも存続し、本発明による癌は、原発癌および転移している癌を含むものである。
【0034】
原発部位に基づき名付けられた癌は、組織学的分類と相関することがある。たとえば、肺癌は通常、扁平上皮癌、腺癌または大細胞癌腫であることもある小細胞肺癌または非小細胞肺癌であり、皮膚癌は通常、基底細胞癌、扁平上皮癌(squamous cell cancers)または悪性黒色腫などの黒色腫である。リンパ腫は、頭部、首および胸部に付随するリンパ節に発生することがあり、さらに腹部リンパ節または腋窩リンパ節もしくは鼠径リンパ節に発生することもある。癌のタイプおよびステージの同定および分類は、たとえば、米国の癌の発生率および生存率に関する情報の権威ある情報源であり、世界中で認められている米国国立癌研究所のSurveillance,Epidemiology and End Results(SEER)プログラム(http://seer.cancer.gov/publicdata/access.html)が提供する情報を用いて行うことができる。SEERプログラムの発生率および生存率のデータを用いて、特定の癌の部位およびステージの標準的な生存率を入手できる。たとえば、最適な比較群を確保するには、具体的な判定基準を、診断日および正確なステージを含むデータベースから選択すればよい。また、癌の同定については、たとえば、Merck Manual of Diagnosis and Therapy,第17版,M.H.BeersおよびR.Barkow編,John Wiley and Sons,1999年などの診断マニュアルに記載されている情報を用いて行ってもよい。
【0035】
癌または新生物の例として、当該技術分野において公知のように、形質転換細胞および不死化細胞、充実性腫瘍、骨髄増殖性疾患、芽腫、扁平上皮癌(squamous cell cancer)(上皮性扁平上皮癌など)、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌腫など)、腹膜の癌、肝細胞癌、消化癌を含む胃(gastricまたはstomach)癌、膵臓癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーム、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、漿液性腺癌、類子宮内膜腺癌、明細胞腺癌、粘液性腺癌、ブレンナー腫瘍、奇形腫、未分化胚細胞腫、絨毛癌、線維腫、顆粒膜細胞腫、セルトリ−ライディッヒ細胞腫、未分化卵巣癌、唾液腺癌、腎(kidneyまたはrenal)癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、頭部および/または首の癌、ユーイング肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、脂肪肉腫、末梢神経上皮腫、滑膜肉腫、ホジキン病などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0036】
ポリペプチド、核酸分子および化合物
本発明による化合物は、COP1またはATMの核酸分子、ポリペプチドおよび/またはアイソフォーム、変異体、模倣体、ホモログ、類似体またはこれらのフラグメントを含むものであるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、本発明はまた、p53、p21およびこれ以外の核酸分子、ポリペプチドおよび/またはアイソフォーム、変異体、模倣体、ホモログ、類似体またはこれらのフラグメントも利用するものである。
【0037】
COP1化合物
本明細書で使用する場合、「COP1分子」とは、COP1ポリペプチド;COP1ポリペプチドをコードしている核酸分子;COP1核酸分子;ならびにアイソフォーム、変異体、模倣体、ホモログ、類似体またはこれらのフラグメントと実質的に同一の分子をいう。COP1分子は、受託番号AF508940(ヒト)、AAH82804(マウス)、NP_036061(マウス)、NP_001001740(ヒト、アイソフォームd24)、NP_071902(ヒト、アイソフォームa)、XP_468011(イネ)、XP_468010(イネ)、XP_463866(イネ)、AAM34692(ヒト)、AAH39723(ヒト)、BAB45239(ヒト)、P_ABG08243(ヒト)、AAD51094(マウス)、AAN86553(Brassica rapa subsp.Pekinensis)、CAA98718(サッカロマイセスセレビシエ)、CAA04168(シロイヌナズナ)、XM_477896(イネ)、XM_479164(イネ)、BK000438(ヒト)、AF508940(ヒト)、AF151110(マウス)、L24437(シロイヌナズナ)、P_AAY60008(ヒト)、P_ABJ19398(ヒト)、P_ABB11576(ヒト)、P_ABG95247(ヒト)、P_AAW74797(ヒト)、P_ABP69180(ヒト)、P_AAB92798(ヒト)、XP_064815(ヒト)および/またはP_AAG02591(ヒト)ならびにアイソフォーム、変異体、模倣体、ホモログ、類似体またはこれらのフラグメントに記載のものと実質的に同一の配列を含むポリペプチド分子または核酸分子を含んでいてもよいが、これに限定されるものではない。COP1分子は、Bianchiら、WangらまたはYiら19に記載されているような分子でも構わない。
【0038】
「実質的に同一の」配列とは、本明細書で論じるような1つまたは複数の保存的置換だけ、あるいは、アミノ酸分子または核酸分子の生物学的機能を破壊しない配列位置にある1つまたは複数の非保存的置換、欠失または挿入が参照配列と異なる、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列である。こうした配列は、アミノ酸またはヌクレオチドレベルで比較のための配列に対して10%〜99%までの任意の値、つまり、より一般的には少なくとも10%、20%、30%、40%、50、55%または60%、あるいは、少なくとも65%、75%、80%、85%、90%または95%、あるいは、たとえば、Align Program18またはFASTAを用いて最適に配列させる場合、最大96%、97%、98%または99%同一であり得る。ポリペプチドの場合、比較配列の長さは、少なくとも2アミノ酸、5アミノ酸、10アミノ酸もしくは15アミノ酸または少なくとも20アミノ酸、25アミノ酸もしくは30アミノ酸であってもよい。別の実施形態では、比較配列の長さは、少なくとも35アミノ酸、40アミノ酸もしくは50アミノ酸または60アミノ酸、80アミノ酸もしくは100アミノ酸を超えても構わない。核酸分子の場合、比較配列の長さは、少なくとも5ヌクレオチド、10ヌクレオチド、15ヌクレオチド、20ヌクレオチドもしくは25ヌクレオチドまたは少なくとも30ヌクレオチド、40ヌクレオチドもしく50ヌクレオチドであってもよい。別の実施形態では、比較配列の長さは、少なくとも60ヌクレオチド、70ヌクレオチド、80ヌクレオチドもしくは90ヌクレオチドまたは100ヌクレオチド、200ヌクレオチドまたは500ヌクレオチドを超えても構わない。配列同一性については、一般に入手可能な配列解析ソフトウェア(Genetics Computer Group,University of Wisconsin Biotechnology Center,1710 University Avenue,マディソン,ウィスコンシン州;53705のSequence Analysis Software PackageまたはNational Library of Medicineから市販されている、あるいは本明細書に記載するようなBLASTソフトウェアなど)を用いて容易に測定することができる。有用なソフトウェアの例として、Pile−upプログラムおよびPrettyBoxプログラムが挙げられる。こうしたソフトウェアは、相同性の程度を種々の置換、欠失、置換およびこれ以外の修飾に割り当てることで類似配列をマッチさせる。実質的に同一の配列は、本明細書に記載するようなまたは当該技術分野において公知の非ヒト種由来のCOP1関連の配列など、相同である配列を含むものである。
【0039】
これに代わり、またはこれに加えて、ハイストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションを行う場合、2つの核酸配列は、「実質的に同一」であり得る。いくつかの実施形態では、ハイストリンジェントな条件は、たとえば、0.5MのNaHPO(pH7.2)と、7%SDSと、1mMのEDTAと、1%BSA(fraction V)とを温度65℃で含む緩衝液または48%ホルムアミドと、4.8×SSCと、0.2Mのトリス−Cl(pH7.6)と、1×デンハルト溶液と、10%デキストラン硫酸と、0.1%SDSとを温度42℃で含む緩衝液において、長さが少なくとも500ヌクレオチドのDNAプローブにより起こるハイブリダイゼーションと同程度のハイブリダイゼーションを可能にする条件である。(これらは、ハイストリンジェントなノーザンハイブリダイゼーションまたはサザンハイブリダイゼーションの典型的な条件である。)ハイブリダイゼーションについては、約20〜30分または約2〜6時間または約10〜15時間かけて、あるいは、24時間以上かけて行ってもよい。また、ハイストリンジェントなハイブリダイゼーションは、ハイストリンジェントなPCR、DNAシークエンシング、一本鎖高次構造多型解析およびin situハイブリダイゼーションなど、分子生物学者が日常的に実施する多くの技法の成功に依拠している。ノーザンハイブリダイゼーションおよびサザンハイブリダイゼーションとは異なり、これらの技法については、ほとんどの場合、比較的短いプローブ(通常、PCRまたはシークエンシングの場合、約16ヌクレオチド以上およびin situハイブリダイゼーションの場合、約40ヌクレオチド以上など)で実施する。これらの技法に用いるハイストリンジェントな条件は、分子生物学の当業者において周知であり、その例を、たとえば、Ausubelらの文献で確認することができ、これを参照によって本明細書に援用する。
【0040】
いくつかの実施形態では、ヒトCOP1分子は、受託番号AF508940に記載の配列またはそのフラグメントを含むものである。
【0041】
いくつかの実施形態では、ヒトCOP1核酸分子は、以下の配列またはそのフラグメントを含むものである:
【0042】
【化1】

いくつかの実施形態では、ヒトCOP1ポリペプチドは、以下の配列またはそのフラグメントを含むものである:
【0043】
【化2】

いくつかの実施形態では、COP1ポリペプチドは、ヒトCOP1ポリペプチドのアミノ酸377〜400またはそのフラグメントを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、COP1ペプチドは、:DSRTASQLDEFC、SRTASQ、RTASQ、TASQ、ASQ、SQLDE、SQLD、SQL、ASQL、TASQLD、RTASQLDEもしくはSRTASQLDEFの配列またはこれらと実質的に同一の配列を含んでいても構わないが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、COP1ペプチドは、アミノ酸配列がヒトCOP1ポリペプチドのS387と相同である配列を含む5アミノ酸、7アミノ酸、10アミノ酸、12アミノ酸または15アミノ酸など、3アミノ酸から20アミノ酸の任意の値のアミノ酸配列を含んでいても構わないが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、COP1ポリペプチドは、ATMポリペプチドに直接結合することができてもよいし、ATMポリペプチドによりリン酸化されていてもよい。いくつかの実施形態では、COP1ポリペプチドは、ATMによりリン酸化され得る本明細書に記載のアミノ酸配列と実質的に同一の分子を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、COP1ポリペプチドは、ヒトCOP1ポリペプチドのS387と相同である残基がリン酸化されている、あるいは、リン酸化され得るポリペプチドであってもよい。ヒトCOP1ポリペプチドのS387と相同である配列については、たとえば、図6に記載する。いくつかの実施形態では、COP1分子は、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同であるアミノ酸残基が構成的にリン酸化されているCOP1ポリペプチドを含むものである。いくつかの実施形態では、COP1分子は、リン酸化可能なアミノ酸残基からヒトCOP1ポリペプチドのセリン387への置換を含むCOP1ポリペプチドを含むものである。
【0044】
「リン酸化」COP1タンパク質またはポリペプチドは、インビボでリン酸化の可能な任意のアミノ酸残基(セリン、トレオニン、チロシン、ヒスチジンなど)が翻訳後に修飾を受けている。本発明においては、リン酸化COP1ポリペプチドは通常、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387(S387)と相同であるアミノ酸残基がリン酸化されている。「非リン酸化」COP1ポリペプチドは、インビボでリン酸化され得るアミノ酸残基が、たとえば、その残基がリン酸化され得ないアミノ酸に変異することで、リン酸化され得ない可能性がある。ポリペプチド配列においてセリンがアラニンに変異すると、たとえば、ポリペプチド配列のその特定の位置がリン酸化され得ないタンパク質になる。ヒトCOP1ポリペプチドの387番目と相同である位置にセリンではなくアラニンを持つCOP1ポリペプチドは、こうした「非リン酸化」COP1ポリペプチドである。非リン酸化COP1ポリペプチドはまた、たとえば、S387がインビボでリン酸化され得るものの、たとえば、ATMキナーゼ阻害剤といったキナーゼ阻害剤などの阻害剤が存在すること;抗体がリン酸化反応部位に干渉すること;またはホスファターゼの活性が原因でリン酸化されていないポリペプチドであってもよい。「構成的にリン酸化された」COP1ポリペプチドとは、たとえば、インビボでリン酸化され得るヒトCOP1ポリペプチドのS387と相同であるアミノ酸残基の変異を有するポリペプチドであり、この変異は、その残基がリン酸化反応を模倣し、その結果生じるポリペプチドは、リン酸化ポリペプチドの生物活性を有するものである。通常、リン酸化可能な残基がグルタミン酸残基またはアスパラギン酸残基に変異すると、構成的リン酸化反応が起こる。いくつかの実施形態では、リン酸化または構成的にリン酸化されたCOP1ペプチドは:DSRTA(pS/T/Y/D/E)QLDEFC、SRTA(pS/T/Y/D/E)Q、RTA(pS/T/Y/D/E)Q、TA(pS/T/Y/D/E)Q、A(pS/T/Y/D/E)Q、(pS/T/Y/D/E)QLDE、(pS/T/Y/D/E)QLD、(pS/T/Y/D/E)QL、A(pS/T/Y/D/E)QL、TA(pS/T/Y/D/E)QLD、RTA(pS/T/Y/D/E)QLDE、SRTA(pS/T/Y/D/E)QLDEFの配列を持つが、これに限定されるものではなく、「pS/T/Y/D/E」は、セリンのリン酸化、トレオニンのリン酸化もしくはチロシンのリン酸化、あるいは、アスパラギン酸塩もしくはグルタミン酸塩からリン酸化可能なセリンへの置換を示す。
【0045】
いくつかの実施形態では、本発明による化合物は、COP1ポリペプチドの模倣体を含むものである。模倣体化合物には、たとえば、本明細書に記載のペプチドと実質的に同一であるCOP1ポリペプチドまたはS387と相同であるアミノ酸残基がリン酸化されているCOP1ポリペプチドなど、非リン酸化またはリン酸化COP1ポリペプチド等のCOP1ポリペプチドをベースにしているものが一般的であるが、たとえば、ペプチド様二次構造を持つ化合物を含めても構わない。模倣体化合物は、COP1の活性または選択性を増強するか、または模倣体の作用を延長させるため分解特性を抑制することができる。模倣体化合物は、アゴニストであってもよいし、アンタゴニスト(阻害剤)であってもよい。模倣体化合物は、環状ペプチド、ペプチド類似体、制限ペプチド、骨格模倣体、非ペプチド性模倣体、ペプチド核酸等を含んでいても構わない。模倣体化合物は、結合親和性が少なくとも500nM、100nM、10nM、1nM、500pM、100pM、10pM等など、0.001pm〜1uMの任意の値であるATMポリペプチドに結合していてもよい。模倣体化合物の分子量は、1500Da、1000Daまたは500Daなど、2000Da未満であってもよい。例示的COP1模倣体化合物として:「SQ」モチーフのセリンがリン酸化または構成的にリン酸化されているSRTASQ、RTASQ、TASQ、ASQ、SQLDE、SQLD、SQL、ASQL、TASQLD、RTASQLDE、SRTASQLDEFの配列を含む化合物および/またはペプチドの構造または配列が本明細書に記載するように修飾されているまたは当該技術分野において公知の化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、本発明による化合物は、リン酸化COP1分子またはそのリン酸化フラグメントを模倣しているCOP1模倣体化合物を含むものである
いくつかの実施形態では、本発明による化合物は、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同であるアミノ酸残基がリン酸化されているCOP1ペプチド等のリン酸化COP1などのCOP1、あるいは、以下の配列:SRTASQ、RTASQ、TASQ、ASQ、SQLDE、SQLD、SQL、ASQL、TASQLD、RTASQLDE、SRTASQLDEFを含むペプチドに特異的に結合する抗体または他の試薬(ペプチボディなど)を含むものである。こうした抗体は、たとえば、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体でもよく、ヒト化抗体であっても構わない。こうしたペプチボディは、免疫グロブリン抗体のFc部分(IgG1〜4など)に融合したCOP1に特異的に結合するペプチドであってもよい。抗体またはこれ以外の試薬は、抗原を認識しこれに結合する場合、抗原に「特異的に結合する」が、サンプル中の他の分子を認識し結合することは実質的にない。たとえば、COP1抗体は、COP1分子に特異的に結合しているが、癌細胞もしくは癌組織またはDNA損傷を持つ細胞に存在するそれ以外の分子に結合することは実質的にない。いくつかの実施形態では、COP1抗体またはこれ以外の試薬は、ヒトCOP1分子に特異的に結合することができるが、他の種に由来するCOP1分子には特異的に結合することができない。いくつかの実施形態では、COP1抗体またはこれ以外の試薬は、リン酸化COP1分子に特異的に結合することができるが、非リン酸化COP1分子には特異的に結合することができない。いくつかの実施形態では、COP1抗体またはこれ以外の試薬は、ヒトCOP1ポリペプチドのS387など、特定のアミノ酸残基がリン酸化されているCOP1分子に特異的に結合することができるが、これ以外のアミノ酸残基がリン酸化されているCOP1分子には特異的に結合することができない。抗原に特異的に結合する抗体またはこれ以外の試薬の抗原に対する親和性は、サンプル中の別の参照分子に対する抗体または試薬の親和性と比べて、たとえば、少なくとも10倍、100倍、1000倍または10000倍である。
【0046】
いくつかの実施形態では、COP1分子は、COP1ポリペプチドをコードする、あるいは、COP1ポリペプチドに特異的に結合する抗体またはこれ以外の試薬をコードするCOP1核酸分子を含むものである。
【0047】
その他の化合物
本明細書で使用する場合、「毛細血管拡張性運動失調変異」または「ATM分子」とは、ATMポリペプチド;ATMポリペプチドをコードする核酸分子;ATM核酸分子;ならびにこれらのアイソフォーム、フラグメント、ホモログ、類似体または変異体と実質的に同一分子をいう。ATM分子は、受託番号Q13315(ヒト)、NM_007499(マウス)、NM_138292(ヒト)、NM_000051(ヒト)、NM_114689(シロイヌナズナ)、BC022307(ヒト)、BC061584(ヒト)、XM_777432(ウニ)、BC007023(ヒト)、XM_680015(ゼブラフィッシュ)、XM_236275(ラット)、AAB65827(ヒト)等に記載のものと実質的に同一の配列を含むポリペプチドまたは核酸分子を含んでいても構わないが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、ATMポリペプチドは活性化されており、キナーゼ活性を有するものである。一般に、ATMポリペプチドは、野生型COP1分子、あるいは、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同であるアミノ酸残基がリン酸化され得るCOP1分子をリン酸化することができる。ATMキナーゼ活性については、たとえば、電離放射線などによるDNA損傷またはDNA損傷の原因となり得る化合物(chemical compound)により生じ得るものである。ATMキナーゼ活性は、本明細書に記載するようにまたは当該技術分野において公知のように評価することができる。いくつかの実施形態では、ATM分子は、COP1分子に結合できるおよび/またはCOP1分子をリン酸化できるATMポリペプチドまたはそのフラグメントを含むものである。
【0048】
「p53」は、393アミノ酸リンタンパク質をコードする強力な腫瘍サプレッサータンパク質である。p53は、多くの癌において負の制御を受けるか、変異するものである。p53の欠損または不活性化は、癌の一因となり得る。p53の変異は、多岐にわたる。「野生型」p53は、通常の、すなわち、非癌性の細胞で見られるp53または癌と相関する変異を持たないp53である。サンプルにおけるp53の状態(サンプルが野生型または突然変異のp53を含むかどうかなど)については、たとえば、Vogelsteinらに付与された米国特許第6,090,566号に記載のように、あるいは、本明細書に記載するようなまたは当該技術分野において公知の標準的な技法を用いて評価することができる。p53分子は、たとえば、受託番号P04637に記載のものと実質的に同一の配列を含むポリペプチドまたは核酸分子を含んでいても構わないが、これに限定されるものではない。
【0049】
p21または「WAF1/Cip1」については最初、サイクリン依存性キナーゼの一般的な阻害剤として説明されていた。p21は、p53依存性機構によってもp53非依存性機構によっても誘導され、細胞増殖の阻害剤として知られている。
【0050】
ポリペプチド、核酸分子および試験化合物の調製
ポリペプチドの構造の場合、そのペプチドの生物学的機能を実質的に変えずに、ある程度の修飾および変更を行い、たとえば、高い安定性など、所望の特性を持つ生物学的に等価なポリペプチドを得ることができることは、当該技術分野において周知である。さらに、本発明の一態様では、本発明の化合物を、アミノ酸置換または生物学的機能に影響を与えない他の置換によっても、生物学的に等価なペプチドまたは本発明のCOP1ポリペプチドの配列と一部異なる模倣体まで拡大させる。
【0051】
たとえば、COP1化合物については、COP1ペプチドまたはCOP1ペプチドの類似体もしくは模倣体の任意の位置、たとえば、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同である位置で、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387の代わりに、他の保存的アミノ酸残基、すなわち、トレオニン、グルタミン酸塩またはアスパラギン酸塩など、類似の物理的、生物学的または化学的性質を持つ残基により、あるいは、非保存的アミノ酸残基により、アミノ酸残基の交換、欠失または挿入を行ってから、たとえば、この化合物がATMポリペプチドに結合する能力、または活性化されたATMポリペプチドによりリン酸化される能力、またはp53/COP1複合体を破壊する能力をスクリーニングすることで調製することができる。こうした化合物については、本発明の診断上の方法、治療上の方法、スクリーニングの方法等、どのような方法にも用いることができる。
【0052】
本明細書で使用する場合、「保存されたアミノ酸置換」という語は、あるアミノ酸と、重要な機能を実質的に失うことなく置換を行うことができる、ペプチドの一定の位置での別のアミノ酸との置換をいう。こうした変更を行う際には、たとえば、大きさ、電荷、疎水性、親水性などが比較的類似している側鎖置換基をベースとして、似ているアミノ酸残基を置換することができ、こうした置換がペプチドの機能に及ぼす作用については、日常的な試験により、アッセイを行うことができる。いくつかの実施形態では、保存されたアミノ酸置換とは、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同であるアミノ酸残基と、トレオニンもしくはチロシンなどのリン酸化可能なアミノ酸またはグルタミン酸塩もしくはアスパラギン酸塩などのリン酸化模倣体との交換をいう。
【0053】
本明細書で使用する場合、「アミノ酸」という語は、天然タンパク質、D−アミノ酸および修飾されているときのアミノ酸に一般に見られるL−アミノ酸をいう。したがって、本発明のアミノ酸には、たとえば:2−アミノアジピン酸;3−アミノアジピン酸;β−アラニン;β−アミノプロピオン酸;2−アミノ酪酸;4−アミノ酪酸;ピペリジン酸;6−アミノカプロン酸;2−アミノヘプタン酸;2−アミノイソ酪酸;3−アミノイソ酪酸;2−アミノピメリン酸;2,4 ジアミノ酪酸;デスモシン;2,2’−ジアミノピメリン酸;2,3−ジアミノプロピオン酸;N−エチルグリシン;N−エチルアスパラギン;ヒドロキシリシン;allo−ヒドロキシリシン;3−ヒドロキシプロリン;4−ヒドロキシプロリン;イソデスモシン;allo−イソロイシン;N−メチルグリシン;サルコシン;N−メチルイソロイシン;6−N−メチルリシン;N−メチルバリン;ノルバリン;ノルロイシン;およびオルニチンを含めてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、あるアミノ酸残基と、親水性の値が類似している(値がプラスマイナス2.0またはプラスマイナス1.5またはプラスマイナス1.0またはプラスマイナス0.5以内など)別のアミノ酸残基とを置換する、保存されたアミノ酸置換を行ってもよく、以下:Arg(+3.0);Lys(+3.0);Asp(+3.0);Glu(+3.0);Ser(+0.3);Asn(+0.2);Gln(+0.2);Gly(0);Pro(−0.5);Thr(−0.4);Ala(−0.5);His(−0.5);Cys(−1.0);Met(−1.3);Val(−1.5);Leu(−1.8);Ile(−1.8);Tyr(−2.3);Phe(−2.5);およびTrp(−3.4)は、Tyr(−1.3)またはPro(−1.6)など、(本明細書に援用する米国特許第4,554,101号に詳述されているように)アミノ酸残基に付与されるハイドロパシックインデックスが約−1.6であるアミノ酸であり得るものである。
【0055】
別の実施形態では、あるアミノ酸残基と、ハイドロパシックインデックスが類似している(値がプラスマイナス2.0またはプラスマイナス1.5またはプラスマイナス1.0またはプラスマイナス0.5以内など)別のアミノ酸残基とが置換される場合、保存的アミノ酸置換が可能である。こうした実施形態では、疎水性および電荷特性に基づき、各アミノ酸残基に、以下のとおりハイドロパシックインデックスを割り当てる:Ile(+4.5);Val(+4.2);Leu(+3.8);Phe(+2.8);Cys(+2.5);Met(+1.9);Ala(+1.8);Gly(−0.4);Thr(−0.7);Ser(−0.8);Trp(−0.9);Tyr(−1.3);Pro(−1.6);His(−3.2);Glu(−3.5);Gln(−3.5);Asp(−3.5);Asn(−3.5);Lys(−3.9);およびArg(−4.5)。
【0056】
別の実施形態では、一般に入手可能な類似のマトリックスファミリーにより保存的アミノ酸置換が可能である23〜29。PAMマトリックスは、進化モデルから得られる計算結果をベースにしている一方、Blosumマトリックスは、アラインメント内で高度に保存されたブロックから得られる計算結果を用いる。PAMマトリックスまたはBlosumマトリックスのいずれかにおけるゼロを超える類似性のスコアを用いて、保存的アミノ酸置換を行うことができる。
【0057】
別の実施形態では、あるアミノ酸残基と、同じクラスの別のアミノ酸残基とを置換する、保存的アミノ酸置換が可能であり、アミノ酸を非極性:Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、Pro、Met;酸性:Asp、Glu;塩基性:Lys、Arg、His;中性:Gly、Ser、Thr、Cys、Asn、Gln、Tyrのように非極性クラス、酸性クラス、塩基性クラスおよび中性クラスに分類する。
【0058】
保存的アミノ酸の変更は、対応するD−アミノ酸、保存的D−アミノ酸または非遺伝的にコードされた天然形態のアミノ酸によるL−アミノ酸の置換ばかりでなく、L−アミノ酸の保存的置換を含んでいてもよい。非遺伝的にコードされた天然のアミノ酸には、β−アラニン、3−アミノ−プロピオン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、アルファ−アミノイソ酪酸、4−アミノ−酪酸、N−メチルグリシン(サルコシン)、ヒドロキシプロリン、オルニチン、シトルリン、t−ブチルアラニン、t−ブチルグリシン、N−メチルイソロイシン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ノルロイシン、ノルバリン、2−ナプチルアラニン、ピリジルアラニン、3−ベンゾチエニルアラニン、4−クロロフェニルアラニン、2−フルオロフェニルアラニン、3−フルオロフェニルアラニン、4−フルオロフェニルアラニン、ペニシラミン、1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸、β−2−チエニルアラニン、メチオニンスルホキシド、ホモアルギニン、N−アセチルリシン、2−アミノ酪酸、2−アミノ酪酸、2,4,−ジアミノ酪酸、p−アミノフェニルアラニン、N−メチルバリン、ホモシステイン、ホモセリン、システイン酸、イプシロン−アミノヘキサン酸、デルタ−アミノ吉草酸または2,3−ジアミノ酪酸がある。
【0059】
別の実施形態では、保存的アミノ酸の変更は、親水性もしくは疎水性、大きさもしくは量または電荷を考慮した変更を含むものである。アミノ酸は通常、主にアミノ酸側鎖の特性により、疎水性または親水性なものとして特徴付けることができる。Eisenbergらの正規化コンセンサス疎水性スケール30によれば、疎水性アミノ酸はゼロを超える疎水性を示し、親水性アミノ酸はゼロ未満の親水性を示す。遺伝的にコードされた疎水性アミノ酸は、Gly、Ala、Phe、Val、Leu、Ile、Pro、MetおよびTrpを含み、遺伝的にコードされた親水性アミノ酸は、Thr、His、Glu、Gln、Asp、Arg、SerおよびLysを含むものである。非遺伝的にコードされた疎水性アミノ酸には、t−ブチルアラニンがあり、非遺伝的にコードされた親水性アミノ酸には、シトルリンおよびホモシステインがある。
【0060】
側鎖の特徴に基づき、疎水性または親水性アミノ酸をさらに細分することができる。たとえば、芳香族アミノ酸は、側鎖に少なくとも1つの芳香環または芳香族複素環を持つ疎水性アミノ酸であり、芳香環または芳香族複素環は、−OH、−SH、−CN、−F、−Cl、−Br、−I、−NO、−NO、−NH、−NHR、−NRR、−C(O)R、−C(O)OH、−C(O)OR、−C(O)NH、−C(O)NHR、−C(O)NRRなど、1つまたは複数の置換基を含んでいてもよく、Rは独立に、(C〜C)アルキル、置換(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、置換(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、置換(C〜C)アルキニル、(C〜C20)アリール、置換(C〜C20)アリール、(C〜C26)アルカリル、置換(C〜C26)アルカリル、5〜20員ヘテロアリール、置換5〜20員ヘテロアリール、6〜26員アルケテロアリールまたは置換6〜26員アルケテロアリールである。遺伝的にコードされた芳香族アミノ酸は、Phe、TyrおよびTrpを含み、非遺伝的にコードされた芳香族アミノ酸は、フェニルグリシン、2−ナプチルアラニン、β−2−チエニルアラニン、1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリン−3−カルボン酸、4−クロロフェニルアラニン、2−フルオロフェニルアラニン3−フルオロフェニルアラニンおよび4−フルオロフェニルアラニンを含むものである。
【0061】
無極性アミノ酸は、生理的pHで無電荷であり、通常、2個の原子が共有する1対の電子を、その2個の原子それぞれが均等に保有している(すなわち、側鎖に極性がない)結合を有する側鎖を持つ疎水性アミノ酸である。遺伝的にコードされた無極性アミノ酸は、Gly、Leu、Val、Ile、AlaおよびMetを含み、非遺伝的にコードされた無極性アミノ酸は、シクロヘキシルアラニンを含むものである。無極性アミノ酸については、さらに細分して、脂肪族炭化水素側鎖を持つ疎水性アミノ酸である脂肪族アミノ酸を含めてもよい。遺伝的にコードされた脂肪族アミノ酸は、Ala、Leu、ValおよびIleを含み、非遺伝的にコードされた脂肪族アミノ酸は、ノルロイシンを含むものである。
【0062】
極性アミノ酸は、生理的pHで無電荷だが、2個の原子が共有する1対の電子を、その原子の1個がより引きつけている1つの結合を有する側鎖を持つ親水性アミノ酸である。遺伝的にコードされた極性アミノ酸は、Ser、Thr、AsnおよびGlnを含み、非遺伝的にコードされた極性アミノ酸は、シトルリン、N−アセチルリシンおよびメチオニンスルホキシドを含むものである。
【0063】
酸性アミノ酸は、側鎖のpKa値が7未満の親水性アミノ酸である。酸性アミノ酸は一般に、水素イオンの喪失により側鎖が生理的pHで負電荷を帯びている。遺伝的にコードされた酸性アミノ酸は、AspおよびGluを含むものである。塩基性アミノ酸は、側鎖のpKa値が7を超える親水性アミノ酸である。塩基性アミノ酸は一般に、ヒドロニウムイオンとの会合により側鎖が生理的pHで正電荷を帯びている。遺伝的にコードされた塩基性アミノ酸は、Arg、LysおよびHisを含み、非遺伝的にコードされた塩基性アミノ酸は、非環式アミノ酸オルニチン、2,3,−ジアミノプロピオン酸、2,4−ジアミノ酪酸およびホモアルギニンを含むものである。
【0064】
当業者であるならば、上記の分類が絶対的なものではなく、アミノ酸を複数のカテゴリーに分類できることを理解するであろう。さらに、アミノ酸については、既知の挙動およびまたは特定のアッセイに基づくあるいは既に同定されたアミノ酸との比較による特有の化学的、物理的または生物学的特質を基準に分類することもできる。さらに、アミノ酸には、アミノ酸様側鎖を持つ二官能性部分を含めてもよい。
【0065】
また、保存的変更は、たとえば、アミノ酸の官能性側鎖を反応性させることで、化学的に誘導体化された部分と非誘導体化残基との置換を含んでもよい。このため、これらの置換には、遊離アミノ基を誘導体化してアミンヒドロクロリド、p−トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基またはホルミル基にしてある化合物を含めることができる。同様に、遊離カルボキシル基を誘導体化して塩、メチルエステルおよびエチルエステルもしくはこれ以外のタイプのエステルまたはヒドラジドを形成し、側鎖を誘導体化して、遊離ヒドロキシル基の代わりにO−アシル誘導体もしくはO−アルキル誘導体またはヒスチジンのイミダゾール窒素の代わりにN−im−ベンジルヒスチジンを形成することができる。また、ペプチド類似体または模倣体には、たとえば、メチル化、エチルアミン、エタノールアミンまたはエチレンジアミンなどのアルキルアミンによるC末端アミノ酸のアミド化、あるいは、アミノ酸側鎖のアシル化またはメチル化(リシンのイプシロンアミノ基のアシル化など)により化学変化しているアミノ酸を含めてもよい。さらに、ペプチドの類似体または模倣体は、ペプチドのアミド結合と、置換アミド(たとえば、式−C(O)−NRで、式中、Rは、(C〜C)アルキル、(C〜C)アルケニル、(C〜C)アルキニル、置換(C〜C)アルキル、置換(C〜C)アルケニルまたは置換(C〜C)アルキニルである基)またはアミド結合のイソスター(たとえば、−CHNH−、−CHS、−CHCH−、−CH=CH−(cisおよびtrans)、−C(O)CH−、−CH(OH)CH−または−CHSO−)との置き換えを含んでいてもよい。
【0066】
この化合物については、たとえば、ポリメリゼーションまたはコンジュゲーションにより共有結合させ、ホモポリマーまたはヘテロポリマーを形成することができる。生理条件下で無電荷のアミノ酸など、一般に中性小分子からなるスペーサーおよびリンカーを用いてもよい。リンケージについては、多くの方式で行うことができる。たとえば、ペプチド末端にシステイン残基を付加して、酸化を調節することで複数のペプチドを共有結合させることができる。あるいは、ジスルフィド/アミド形成剤またはチオエーテル/アミド形成剤など、ヘテロ二機能性剤を用いてもよい。この化合物を、たとえば、癌細胞またはDNA損傷細胞を標的にする、あるいは、癌細胞またはDNA損傷細胞の成長または増殖を抑制する、あるいは、癌細胞またはDNA損傷細胞の死を誘発することが可能な別の化合物に結合させることもできる。また、たとえば、環状部分を与えることで、この化合物を制限することもできる。
【0067】
ペプチドまたはペプチドの類似体もしくは模倣体については、標準的な化学的技法、たとえば、液相合成法または固相合成法を用いた自動合成により合成することができる。当該技術分野において周知の技法を用いた自動ペプチドシンセサイザーが、市販されている。さらに、たとえば、Sambrookら31またはAusubelらの文献に記載の方法など、標準的な方法を用いた組換えDNA技術により、ペプチドおよびペプチドの類似体または模倣体を調製することもできる。
【0068】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、COP1もしくはATMの核酸分子またはこれらのフラグメントと実質的に同一の、あるいは、COP1もしくはATMの核酸分子またはこれらのフラグメントと相補的な核酸分子を含むものである。本発明のアッセイおよび方法では、こうした核酸分子を、たとえば、プローブまたはプライマーとして用いてもよい。「プローブ」または「プライマー」は、相補配列(標的)を含む第2のDNAまたはRNA分子と塩基対合することができる定義された配列の一本鎖DNAまたはRNA分子である。得られるハイブリッド分子の安定性は、起こる塩基対合の程度によって決まり、プローブと標的分子との相補性の程度およびハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーの程度などのパラメータの影響を受ける。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーの程度については、温度、塩濃度およびホルムアミドなどの有機分子の濃度など、パラメータにより影響受けるもので、当業者に公知の方法によって測定する。本明細書に記載の核酸配列に特異的なプローブもしくはプライマーまたはその部分の長さは、プローブまたはプライマーを用いる目的および条件にもよるが、任意の整数単位で少なくとも8ヌクレオチドから500ヌクレオチド超まで、その間の任意の値を含めて幅があってもよい。たとえば、プローブまたはプライマーは、8ヌクレオチド長、10ヌクレオチド長、15ヌクレオチド長、20ヌクレオチド長または25ヌクレオチド長でもよく、あるいは、少なくとも30ヌクレオチド長、40ヌクレオチド長、50ヌクレオチド長または60ヌクレオチド長でもよく、あるいは、100ヌクレオチド長、200ヌクレオチド長、500ヌクレオチド長または1000ヌクレオチド長を超えても構わない。本明細書に記載の核酸分子に特異的なプローブまたはプライマーは、本明細書に記載の核酸配列に対する配列同一性が20〜30%を超えるまたは少なくとも55〜75%または少なくとも75〜85%または少なくとも85〜99%または100%であってもよい。
【0069】
プローブまたはプライマーについては、たとえば、増幅によりゲノムDNAまたはcDNAから、あるいは、クローン化DNAセグメントから得てもよく、単一個体に由来する単一遺伝子の全部または一部に相当するゲノムDNA配列またはcDNA配列のいずれかを含んでも構わない。プローブは、配列が独特(COP1またはATMの核酸分子に対する同一性が100%など)および/または公知である可能性もある。プローブまたはプライマーを化学的に合成してもよい。
【0070】
プローブまたはプライマーについては、当業者に公知の方法により、放射性物質または非放射性物質のどちらかで検出可能に標識することができる。核酸ハイブリダイゼーションに関する方法、たとえば、核酸シークエンシング、ポリメラーゼ連鎖反応法による核酸増幅、一本鎖高次構造多型(SSCP)解析、制限断片多型(RFLP)解析、サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーション、電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)および当業者に公知のこれ以外の方法には、プローブまたはプライマーを用いることができる。
【0071】
核酸分子は、たとえば、細胞の標的分子の発現を抑制するのに使用できるアンチセンス分子、siRNA分子または三重螺旋分子であっても構わない。
【0072】
いくつかの実施形態では、試験化合物は、有機小分子を含むものである。「有機小分子」とは、分子量が約50ダルトンより大きく約2500ダルトン未満、好ましくは約2000ダルトン未満、好ましくは約100〜約1000ダルトン、一層好ましくは約200〜約500ダルトンである天然または合成の有機分子をいう。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態では、試験化合物は、リン酸化または結合など、COP1/ATM相互作用を誘発できるペプチド、核酸分子、模倣体または小分子、抗体または他の試薬を含むものである。
【0074】
候補化合物または試験化合物については、天然物または合成(もしくは半合成)抽出物の両方の大きなライブラリーあるいは当該技術分野において公知の方法による化学ライブラリーから特定することができる。創薬および薬剤開発分野の当業者であれば、被検抽出物または化合物の正確な供給源が本発明の方法(単数または複数)にとって決定的には重要でないことを理解するであろう。したがって、実質的には、本明細書に記載の例示的方法により、どのような化学抽出物または化合物をスクリーニングしても構わない。こうした抽出物または化合物の例として、植物ベースの抽出物、真菌ベースの抽出物、原核生物ベースの抽出物または動物ベースの抽出物、発酵ブロスおよび合成化合物ならびに既存の化合物の変形があるが、これに限定されるものではない。さらに、多くの方法を利用して、糖類ベースの化合物、脂質ベースの化合物、ペプチドベースの化合物および核酸ベースの化合物を含むが、これに限定されるものではく、どのような化合物(chemical compounds)もランダム合成または指向性合成(半合成または全合成など)を行うことができる。合成化合物のライブラリーは、市販されている。あるいは、細菌抽出物、真菌抽出物、植物抽出物および動物抽出物の形態での天然化合物のライブラリーも、Biotics(英国、Sussex)、Xenova(英国、Slough)、Harbor Branch Oceanographic Institute(米国フロリダ州、Ft.Pierce)および米国マサチューセッツ州のPharmaMarなど、多くの供給元から市販されている。また、天然ライブラリーおよび合成製造ライブラリーについては、必要に応じて、標準的な抽出法および分画法など、当該技術分野において公知の方法に従っても製造できるものである。さらに、必要に応じて、どのようなライブラリーまたは化合物も、標準的な化学的方法、物理的方法または生化学的な方法により容易に修飾を行うこともできる。
【0075】
粗抽出物が、たとえば、COP1/ATM相互作用を高めることが判明した場合、その観察された作用に関与する化学成分を単離するため、正リードの抽出物をさらに分画することが必要になる。このため、抽出、分画および精製プロセスの目的は、活性を高めるCOP1/ATM相互作用を有する粗抽出物中の化学物質のキャラクタリゼーションおよび同定を慎重に行うことにある。化合物の混合物における活性を検出する本明細書に記載の同じアッセイを用いて、活性成分の精製およびその誘導体の試験を行ってもよい。こうした異種抽出物の分画および精製の方法は、当該技術分野において公知である。処置に有用な薬剤であることが示された化合物については、当該技術分野において公知の方法に従って、必要に応じて化学修飾を行う。続いて、治療上、予防上、診断上またはその他の価値が認められた化合物を、癌または放射線損傷の観点から、たとえば、任意の動物モデルを用いて解析してもよい。
【0076】
診断的、治療的、予防的および/またはスクリーニングの使用、アッセイおよび試薬
本発明による化合物、組成物(医薬組成物など)および方法を用いて、DNA損傷の診断または検出、被験体におけるDNA損傷および/またはp53活性に対する応答の調節、あるいは被験体におけるDNA損傷および/またはp53に対する応答の調節に有用な試験化合物のスクリーニングまたは同定を行うことができる。
【0077】
本明細書で使用する場合、被験体は、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス、雌ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ハエ、蠕虫等であってもよい。被験体は、臨床患者、治験ボランティア、実験動物等であってもよい。被験体は、癌またはDNA損傷があるあるいは癌またはDNA損傷が生じる危険があると疑われても、癌またはDNA損傷と診断されていても、癌またはDNA損傷がないと確認されている対照被験体であっても、DNA損傷または癌が誘発される被験体であっても構わない。好ましい一実施形態では、被験体はヒトである。
【0078】
本明細書で論じているように、COP1の発現レベルの低下を測定することで、DNA損傷を診断または検出し、COP1発現の低下からDNA損傷が示されてもよいし、COP1リン酸化を測定することで、DNA損傷を診断または検出し、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同であるアミノ酸でCOP1リン酸化が起こることから、DNA損傷が示されてもよい。
【0079】
「検出」は、物質の有無の判定または物質の量の定量化を含むことを意図している。したがって、この語は、本発明の化合物、組成物および方法を用いて、定性的および定量的判定を行うことを指す。一般に、本発明の実施にあたり、検出に使用する具体的手法は、決定的には重要ではない。たとえば、本発明による「検出」は、当該技術分野において公知のまたは以下に記載の方法による、COP1ポリペプチド、たとえば、ヒトCOP1ポリペプチドのS387と相同であるアミノ酸残基のリン酸化の変化;COP1、ATM、p21もしくはp53の遺伝子、ゲノムまたは核酸分子あるいはCOP1、ATM、p21またはp53のポリペプチドの有無;COP1、ATM、p21またはp53の遺伝子の変異;COP1、ATM、p21またはp53の核酸分子、たとえば、mRNAまたはポリペプチドの発現レベルの変化;COP1ポリペプチドの生物学的機能/活性の変化(COP1リガーゼ活性、p53ターンオーバー、p53依存性トランス活性化の活性化の抑制など)またはp53ポリペプチドの生物学的機能/活性の変化(p53結合、p53依存性トランス活性化、COP1結合、p21のトランス活性化等など)の検出を含んでもよい。いくつかの実施形態では、「検出」には、野生型p53の検出を含めてもよい。いくつかの実施形態では、「検出」は、変異p53の検出を含んでもよい。検出は、対照と比較して、10%〜90%の任意の値または30%〜60%の任意の値または100%を超える任意の値の変化(増加または減少)の定量化を含んでも構わない。検出は、対照と比較して、3倍、5倍、7倍など、2倍から10倍の任意の値の変化、あるいはそれ以上、たとえば、50倍または100倍などの変化の定量化を含んでもよい。
【0080】
応答の「増強」または結合もしくはリン酸化などの相互作用の増強は、応答または相互作用の促進、あるいは、対照と比較して10%〜90%または30%〜60%または100%を超える任意の値だけ、既存の応答または相互作用の強化を含んでもよい。増強は、対照と比較して、3倍、5倍、7倍など、2倍〜10倍の任意の値、あるいはそれ以上、たとえば、50倍または100倍などの増加を含んでもよい。たとえば、本発明による「増強」は、当該技術分野において公知のまたは以下に記載の方法による、COP1ポリペプチド、たとえば、ヒトCOP1ポリペプチドのS387と相同であるアミノ酸残基のリン酸化の変化;COP1、ATM、p21またはp53の核酸分子、たとえば、mRNAまたはポリペプチドの発現レベルの変化;COP1ポリペプチドの生物学的機能/活性の変化(COP1リガーゼ活性、p53ターンオーバー、p53依存性トランス活性化の活性化の抑制など)またはp53ポリペプチドの生物学的機能/活性の変化(p53結合、p53依存性トランス活性化、COP1結合、p21のトランス活性化等など)の増加または促進を含んでもよい
発現の「低下」とは、実質的にDNA損傷がない細胞における通常の発現レベルなどの対照と比較してCOP1のような特定の分子のポリペプチドの発現が減ることをいう。COP1分子の発現の低下を示す細胞は、p53分子(p53ポリペプチドなど)の発現の増加またはp21分子(p21mRNAなど)の発現の増加またはp53活性もしくはp21活性の増強を示すことがある。こうした増減は、対照と比較して10%〜90%の任意の値または30%〜60%の任意の値または100%を超える任意の値でもよく、対照と比較して3倍、5倍、7倍など、2倍から10倍の任意の値の変化、あるいはそれ以上、たとえば、50倍または100倍などの変化であってもよい。過剰発現または減少が統計的に有意であれば、過剰発現もしくは増加または低下もしくは減少の正確な量は、決定的には重要ではない。
【0081】
「対照」は、ベースラインの発現または活性の測定用に得たサンプルを含めてもよい。したがって、(標準的な技法で判断された)DNA損傷のない細胞;被験体の腫瘍細胞または癌細胞の周囲の細胞などに由来する非癌性の細胞または組織;癌またはDNA損傷による障害のない被験体;癌またはDNA損傷が生じる危険がないと思われる被験体;またはこうした被験体から得られる細胞または細胞系などから、多くの手段によって対照サンプルを得ることができる。さらに、対照には、既に確立された基準を含めてもよい。したがって、本発明により行われる任意の試験またはアッセイと、確立された基準とを比較検討してもよく、比較を行うごとに対照サンプルを得る必要はないかもしれない。インビトロでのユビキチン化アッセイでは、対照は、p53分子をユビキチン化する能力が低下しているCOP1分子(COP1Δリングなどのリガーゼドメインが欠損している分子等)であってもよい。インビトロまたはインビボでのキナーゼアッセイでは、対照は、リン酸化されていることが分かっているまたはリン酸化され得ないCOP1分子など、キナーゼ失活のATMであってもよい。
【0082】
本発明による試薬は、本明細書に記載するような化合物を含むものである。いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載するような化合物を含む哺乳類細胞などの細胞を包含する。たとえば、哺乳類細胞については、組換え技法などにより操作して、組換えATM、組換えCOP1および/または組換えp53分子を含ませてもよい。こうした哺乳類細胞を用いて、たとえば、COP1/ATM相互作用(結合および/またはリン酸化など)を増強する、p53/COP1結合を破壊するあるいはp53またはCOP1活性を増加させる試験化合物をスクリーニングすることができる。こうした細胞を試験化合物とともにインキュベートし、細胞周期、ATMキナーゼ活性、p21発現、p53誘導性アポトーシス、p53依存性トランス活性化、COP1リガーゼ活性等の変化についてアッセイすることもできる。p21−ルシフェラーゼなど、レポーターベースのコンストラクトを、バックグラウンドとして内部標準のウミシイタケルシフェラーゼレポーターと一緒に、さらにはリアルタイムRT−PCR技法と一緒に用いてもよい。こうした哺乳類細胞については、たとえば、p53野生型細胞系(U2−OS細胞)、p53ヌル細胞系(H1299)、ATMヌル細胞系(GM02052またはGM09607)など、既存の細胞系において操作することが可能で、COP1分子、ATM分子またはp53分子を発現するように操作してもよい。したがって、COP1分子またはATM分子については、A−T細胞、癌細胞、組織または細胞可溶化物に導入してもよいし、組換え技法を用いて構築してもよい。細胞および/または細胞系を米国ヴァージニア州ManassasにあるATCCなどの商業的供給源から入手することもできる。
【0083】
本発明によるアッセイについては、標準的供給源および標準的手順により取得したサンプルを用いてインビボ、インビトロまたはエキソビボで行うことができる。組織マイクロアレイなどのマイクロアレイを用いてもよい。癌またはDNA損傷に関しては、米国メイン州Bar HarborにあるJackson Laboratoryなどから入手できる好適な動物モデルにおいてインビボアッセイを行ってもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、ATM、COP1またはp53の発現または活性が欠損している動物モデルを用いても構わない。「サンプル」は、癌またはDNA損傷がある哺乳類から単離したサンプルなど、被験体から単離した任意の臓器、組織、細胞または細胞抽出物であってもよい。たとえば、サンプルとして、骨、脳、乳房、結腸、筋肉、神経、卵巣、前立腺、網膜、皮膚、骨格筋、腸、精巣、心臓、肝臓、腎臓、胃、膵臓、子宮、副腎、扁桃、脾臓、軟部組織、末梢血、全血、赤血球濃縮物、濃厚血小板、白血球濃縮物、血球タンパク質、血漿、多血小板血漿、血漿濃縮物、血漿の任意分画による沈殿物、血漿の任意分画による上清、血漿タンパク質画分、精製されたもしくは部分的に精製された血液タンパク質またはその他の成分、血清、精液、哺乳類の初乳、乳、尿、便、唾液、脳脊髄液、心膜液、腹膜水、胎盤抽出物、羊水、クリオプレシピテート、寒冷上清、細胞可溶化物、哺乳類細胞培養液または培地、発酵産物、腹水、血液細胞にあるタンパク質、充実性腫瘍(solid tumours)または患者(ヒトまたは動物)、被験者または実験動物から取得したこれ以外の検体もしくはその任意の抽出物に由来する細胞または組織(生検または剖検由来など)が挙げられるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、サンプル中の癌性の細胞と非癌性細胞とをまたはDNA損傷のある細胞と損傷を受けていない細胞とを区別することが望ましい場合がある。
【0085】
サンプルは、正常細胞または形質転換細胞(組換えDNAまたはモノクローナル抗体の技術によるなど)による細胞培養液で生成される産物を含んでいてもよいが、これに限定されるものではない。さらに、サンプルは、昆虫または蠕虫など、非哺乳動物の被験体から単離した任意の器官、組織、細胞または細胞抽出物を含んでいても構わないが、これに限定されるものではない。「サンプル」はまた、被験体から直接単離されたものではない、実験条件下で作製された細胞または細胞系であってもよい。さらに、サンプルは、無細胞のもの、人工的に調製したものまたは合成したものであっても構わない。サンプルは、癌であるまたはDNA損傷があると分かっている、癌であるまたはDNA損傷があることが疑われる、あるいは、癌ではないまたはDNA損傷がない(正常サンプルまたは対照サンプルなど)と考えられる細胞または組織由来であってもよい。
【0086】
COP1、p53もしくはATMの核酸分子またはポリペプチドの発現または活性あるいはCOP1/ATM結合またはCOP1/p53結合については、免疫組織化学(IHC)、in situハイブリダイゼーション(ISH)、ノーザンブロッティング、ポリメラーゼ連鎖反応法(リアルタイム定量PCRまたはRT−PCRなど)、抗体ベースのアッセイ(免疫沈降、免疫蛍光、ウエスタンブロッティング等)など、種々の技法を用いてアッセイを行うことができる。たとえば、サンプルから得られたPCR産生物のシークエンシング、一本鎖高次構造多型(SSCP)解析または制限断片長多型(RFLP)解析などの方法を用いて、COP1またはp53遺伝子の変異を検出することができ、免疫沈降、RIA、ELISAまたはウエスタンブロッティングを用いて、COP1またはATMまたはp53のポリペプチドのレベルまたは結合を測定することができ、ノーザンブロッティングを用いて、COP1またはp53のmRNAレベルを測定することができ、あるいは、PCRを用いて、COP1またはATMまたはp53の核酸分子のレベルを測定することができる。こうしたアッセイは、前駆体、フラグメント(細胞内タンパク質分解による生成など)、翻訳後の修飾体など、COP1またはATMまたはp53の一部またはすべての形態の検出を含むものである。本発明の方法は、自己ユビキチン化、p53の分解、p53のユビキチン化、p53トランス活性化の抑制、p53誘導性アポトーシスの抑制、p21mRNAの減少等、COP1に関連する生物学的活性のアッセイを包含する。本発明の方法は、キナーゼ活性などのATMに関連する生物学的活性のアッセイを包含するものである。
【0087】
いくつかの実施形態では、インビボで被験体の細胞を、放射性同位元素など、任意に検出可能に標識された抗体(COP1抗体および任意にATMまたはp53抗体など)に曝露させてもよく、放射能の外部スキャンまたは生検の解析などにより抗体の細胞への結合を評価することが可能である。検出可能に標識された分子、すなわち、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマー、遺伝子またはそのフラグメント、ペプチドまたはcDNA分子など、目印を付けて分子の存在を同定する任意の手段を用いて、アッセイを行ってもよい。分子を検出可能に標識する方法については、当該技術分野において周知であり、放射性物質による標識(たとえば、32Pまたは35Sなどの同位元素の使用)および酵素標識(たとえば、西洋わさびペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼの使用)、化学発光標識、蛍光標識(たとえば、フルオレセインの使用)、生物発光標識またはプローブに結合したリガンドの抗体検出などの非放射性物質による標識が挙げられるが、これに限定されるものではない。さらに、本明細書の定義には、たとえば、第1の部分(ビオチン)と結合し、さらに、観察またはアッセイが可能な第2の部分に結合している分子(フルオレセイン標識ストレプトアビジンなど)など、間接的な手段により検出可能に標識される分子も含まれる。また、標識は、ジゴキシゲニン、ルシフェラーゼおよびエクオリンも含むものである。
【0088】
いくつかの実施形態では、インビボで被験体の細胞を本明細書に記載するようなCOP1化合物に曝露させ、DNA損傷またはp53活性に対する応答を調節してもよい。COP1化合物は、COP1ポリペプチドまたはこれらのフラグメント、類似体、模倣体または変異体をコードする核酸分子であってもよい。
【0089】
医薬組成物、投与量および投与
本発明の化合物については、リポソーム、アジュバントまたは任意の薬学的に許容されるキャリアの存在下で、単独あるいは他の化合物(たとえば、核酸分子、小分子、模倣体、ペプチドまたはペプチド類似体)と組み合わせて、たとえば、ヒト、マウス等の哺乳類への投与に好適な形態で提供することができる。たとえば、被験体において、本発明の化合物を用いて、DNA損傷、p53活性、COP1活性またはATM活性に対する応答を調節することができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、本発明による治療用化合物は、COP1の分子もしくは核酸分子または小分子、模倣体、ペプチドもしくはそのペプチド類似体、たとえば、ヒトCOP1ポリペプチドのS387と相同であるリン酸化可能なアミノ酸残基を持つCOP1ポリペプチドを含むものである。本発明による化合物については、慢性的にまたは断続的に与えてもよい。「慢性」投与とは、当初の治療上の作用(活性)を維持する目的で、短期間に急性用量を投与するのではなく、化合物(単数または複数)を長期間に持続的に投与することをいう。「断続的」投与とは、その特定の化合物の処置を行わない期間が組み入れられている処置である。
【0091】
通常の医療慣行に従って、好適な製剤または組成物を準備し、癌を患っているまたは癌の前駆症状の被験体に化合物を投与してもよい。適切な投与経路であれば、たとえば、非経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、頭蓋内投与、眼窩内投与、点眼投与、脳室内投与、嚢内投与、髄腔内投与、クモ膜下投与、大槽内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、エアロゾル投与、局所投与または経口投与など、どのような経路を用いてもよい。治療用製剤は、溶液状または懸濁液状であってもよく、経口投与の場合、製剤は、錠剤状またはカプセル状であってもよいし、鼻腔内製剤の場合は、粉末状、点鼻液状またはエアロゾル状であってもよい。
【0092】
当該技術分野において製剤を製造するための周知の方法は、たとえば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(第19版),A.Gennaro編,1995年,Mack Publishing Company,ペンシルベニア州Eastonに見られる。非経口投与用の製剤は、たとえば、賦形剤、滅菌水もしくは生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物性油または水素化ナプタレンを含んでいてもよい。生体適合性かつ生分解性のラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーを用いて、この化合物の放出を制御してもよい。これ以外に有用な非経口送達系になり得るものとして、エチレン−酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な注入系およびリポソームが挙げられる。吸入用の製剤は、賦形剤、たとえば、ラクトースを含んでいてもよく、たとえば、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココラートおよびデオキシコラートを含む水溶液であってもよいし、点鼻液状のまたはゲルとしての投与用油性溶液であっても構わない。新生物の成長の治療用または予防用(prophylacticまたはpreventative)組成物の場合は、癌および所望の結果にもよるが、この化合物をDNA損傷または癌の成長もしくは憎悪を予防する、抑制する、あるいは遅延させるのに十分な量で個体に投与することができる。腫瘍成長を処置する化合物の有効性の尺度として、DNA損傷細胞数の減少;癌細胞数の減少または癌細胞の消失、腫瘍の大きさの縮小;癌細胞の周辺臓器への浸潤の抑制(すなわち、予防、抑制、遅延または停止);腫瘍の転移の抑制(すなわち、予防、抑制、遅延または停止);ある程度の腫瘍成長の抑制;および/または特定の癌と関連する1つまたは複数の症状のある程度の緩和ならびに罹患率および死亡率の低下のうち1つまたは複数の観測可能および/または測定可能な減少または消失、または癌細胞もしくはDNA損傷がある細胞のアポトーシスまたは細胞死の増加が挙げられる。
【0093】
本発明による化合物の「有効量」は、治療有効量または予防有効量を含むものである。「治療有効量」とは、DNA損傷細胞数の減少;癌細胞数の減少または癌細胞の消失、腫瘍の大きさの縮小;癌細胞の周辺臓器への浸潤の抑制(すなわち、予防、抑制、遅延または停止);腫瘍の転移の抑制(すなわち、予防、抑制、遅延または停止);ある程度の腫瘍成長の抑制;および/または特定の癌と関連する1つまたは複数の症状のある程度の緩和ならびに罹患率および死亡率の低下のうち1つまたは複数の観測可能および/または測定可能な減少または消失、または癌細胞もしくはDNA損傷がある細胞のアポトーシスまたは細胞死の増加など、所望の治療結果を実現するために必要な投与量および期間に応じた有効量をいう。化合物の治療有効量は、個体の病状、年齢、性別および体重ならびに個体において所望の応答を惹起する化合物の能力などの要因次第で変化する場合がある。最適な治療応答を与えるためには、投与計画を調整してもよい。治療有効量はまた、化合物に有毒または有害な作用があれば、治療上の有益な作用がこうした作用を上回る量でもある。「予防有効量」とは、DNA損傷細胞数の減少;癌細胞数の減少または癌細胞の消失、腫瘍の大きさの縮小;癌細胞の周辺臓器への浸潤の抑制(すなわち、予防、抑制、遅延または停止);腫瘍の転移の抑制(すなわち、予防、抑制、遅延または停止);ある程度の腫瘍成長の抑制;および/または特定の癌と関連する1つまたは複数の症状のある程度の緩和ならびに罹患率および死亡率の低下のうち1つまたは複数の観測可能および/または測定可能な減少または消失、または癌細胞もしくはDNA損傷がある細胞のアポトーシスまたは細胞死の増加など、所望の治療結果を実現するために必要な投与量および期間に応じた有効量をいう。被験体には、予防有効量が治療有効量よりも少なくなるように、疾患になる前またはその初期に予防用量を用いるのが一般的である。化合物の治療有効量または予防有効量の好ましい範囲は、0.1nM〜0.1M、0.1nM〜0.05M、0.05nM〜15μMまたは0.01nM〜10μMの任意の値をとり得る。
【0094】
投与量の値は、緩和される症状の重症度により異なることに留意されたい。任意の特定の被験体の場合、個体の必要性と、組成物を投与するまたは組成物の投与を監督する個人の専門的な判断とにより、個々の投与計画を経時的に調整してもよい。本明細書に記載する投与量の範囲は、例示的なものにとどまっており、開業医が選択できる投与量の範囲を限定するものではない。組成物における活性化合物(単数または複数)の量は、個体の病状、年齢、性別および体重などの要因により異なっても構わない。最適な治療応答を与えるように、投与計画を調整してもよい。たとえば、単回ボーラス投与を行ってもよいし、用量をいくつかに分けて経時的に投与してもよいし、治療状況の急迫性に合わせて、用量を比例的に増減させてもよい。投与のしやすさおよび投与量の均一性の観点から、投薬単位剤形で非経口組成物を調剤すると都合がよい場合がある。
【0095】
一般に、本発明の化合物については、有害作用をあまり起こさないように用いるべきである。本発明の化合物の有害作用に関しては、標準的な技法、たとえば、細胞培養液または実験動物で試験を行い、治療係数、すなわち、LD50(個体群の50%致死用量)〜LD100(個体群の100%致死用量)の比率を測定することで判定することができる。しかしながら、時として、重篤な病状では、組成物のかなり過剰な投与が必要な場合がある。
【0096】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本発明による化合物(COP1のポリペプチドもしくは核酸分子または小分子、模倣体、ペプチドもしくはそのペプチド類似体など)と一緒に薬学的に許容されるキャリアをコードしている核酸分子を含んでいてもよい。こうした医薬組成物に関しては、ウイルスベクター系などの任意の適切な手法を用いて投与することができる。好適なウイルスベクターとして、アデノウイルス、ワクシニアウイルスまたはこれ以外のポックスウイルス、疱疹ウイルスなどが挙げられ、こうしたベクターを投与する任意の方法を用いることができる。
【実施例】
【0097】
実施例1:材料および方法
発現ベクター、組換えタンパク質および抗体
FLAG−COP1、pcDNA3.1+p53、p21−Luc、bax−Luc、pGEX4Tl−p53およびpGEX6Pl−COP1については前述した3、21。GST−S387ペプチドは、ヒトCOP1ポリペプチドのアミノ酸377〜400を含むものであり、GST−S387−Aペプチドは、S387がアラニン変異しているものである。FLAG−ATMおよびFLAG−ATM−KDについては、Michael Kastan教授(St.Jude Children’s Research Hospital、テネシー州)が明らかにしたものである。すべての変異コンストラクトをQuickchange部位特異的突然変異誘発(Stratagene)により作製した。すべてのGST組換えタンパク質を、大腸菌株BL21(DE3)コドン+(Stratagene)に発現させた後、グルタチオンセファロース4Bのバッチ法(GE Healthcare)を用いて精製した。抗p53(DO−1)(Calbiochem)、抗p53ps15(Cell Signalling)、抗p21(Ab−1)(Calbiochem)、抗FLAG(M2)(Sigma)、抗Myc(9E10)(Roche)、抗アクチン(ICN)、抗チューブリン(Ab6161)(Abeam)、抗ヒストン−H1(SC8030)(Santa Cruz Biotechnology)、抗GST(RPN1236)(GE Healthcare)および抗HA(Roche)を、製造者の推奨に従って用いた。抗COP1については、前述した3、22。抗pS387は、ペプチドAc−DSRTA(pS)QLDEFC−NHを抗原として用いてリン酸化ペプチドおよび非リン酸化ペプチドのアフィニティー精製により順次精製を行い、QCBによって作製したウサギポリクローナル抗体である。
【0098】
細胞、形質移入およびレポーターアッセイ
U2−OS細胞、Saos−2細胞、HEK293T細胞およびH1299細胞をATCCから購入し、McCoy’s 5A(Invitrogen)で10%FBSとともに維持した。GM02052線維芽細胞、GM03490線維芽細胞、GM0637線維芽細胞およびGM09607線維芽細胞をCoriell Cell Repositoriesから取得し、MEM(ATCC)で15%FBSとともに維持した。すべての形質移入を製造者の推奨に従って、Lipofectamine2000(Invitrogen)を用いて行った。細胞質および核の抽出を、10GyのIRで処理したGM03490およびGM02052または種々のCOP1コンストラクト100ngを形質移入したHEK293細胞およびU2−OS細胞を含むNE−PER(Pierce)キットを用いて行った。定常状態レベルのp53に与えるCOP1の作用を評価するため、150ngのpcDNA3.1+p53とともに、FLAG−COP1またはFLAG−COP1−S387Dを増量(0.5μg、1μgおよび2μg)しながら、Saos−2細胞に形質移入した。レポーターアッセイの場合は、pCMV−FLAG−COP1またはpCMV−FLAG−COP1−S387Dを増量(0.5、1および2μg)しながらあるいは増量せずに、150ngのpcDNA3.1+p53、100ngのp21−Lucおよび10ngのpRL−TKを一過性でSaos−2細胞に形質移入した。製造者の指示(Promega)に従って、デュアルルシフェラーゼアッセイを実施した。
【0099】
免疫沈降、GSTプルダウンアッセイおよびパルスチェイス解析
細胞を放射性免疫沈降アッセイ(RIPA)緩衝液(0.1%SDS、1%NP−40、150mMのNaCl、0.5%デオキシコレート、50mMトリス(pH7.4)、1mM DTTおよびプロテアーゼ阻害剤の混合物)に溶解させ、前処理してから、標的抗体およびプロテインA/Gプラスビーズ(Santa Cruz Biotechnology)とともに免疫沈降させた。インビトロプルダウンアッセイに関しては、GSTまたはGST−p53と、PBST(0.1%のツイーン20および1mMのDTTを含むPBS)中で哺乳類細胞から精製したFLAG−COP1またはFLAG−COP1−S387Dとを組み合わせて、緩やかに回転させながら室温で1時間インキュベートして行った。FLAGペプチド(Sigma)でCOP1結合タンパク質を溶出させ、SDS−PAGEにかけてから、抗FLAGおよび抗GSTでイムノブロットした。シクロヘキサアミド追跡実験については、100μg/mlのCHXとともに細胞をインキュベートし、指定の時点で採取して行った。
【0100】
インビトロユビキチン化およびキナーゼアッセイ
FLAG−COP1−WTまたはFLAG−COP1−S387DをHEK293T細胞から精製し、50mMのトリス(pH7.5)、2mMのATP、5mMのMgCl、20μMのZnCl、2mMのDTTおよび2μMのユビキチンアルデヒドを含む緩衝液中で、10μgのユビキチン(Boston Biochem)、2μgのBiotinylated−ユビキチン(Boston Biochem)、20ngのUbcH5b(A.G.Scientific)、20ngのウサギE1(Sigma)とともにインキュベートした。指示がある場合、大腸菌から精製した100ngのGST−p53をこの反応液に加えた。緩やかに撹拌しながら30℃で2時間インキュベートした後、反応物を、1%SDSを含むPBST中で5分間煮沸し、次いで、抗FLAGまたは抗p53(FL393)(Santa Cruz Biotechnology)とともに再免疫沈降を行うため、PBSTで0.1%SDSに希釈した。最後に、サンプルをSDS−PAGEにかけてから、ストレプトアビジン−HRP(Invitrogen)でイムノブロットして、COP1またはp53のユビキチン化種を検出した。内在性ATMおよび外来性ATMにより、前述のようにキナーゼアッセイを行った20。指示のとおり、ワートマニン(Calbiochem)およびカフェイン(Sigma)を用いた。
【0101】
コロニー形成アッセイ
H1299細胞を10cmのペトリ皿に蒔き、24時間後、この細胞に指定の発現ベクターを形質移入した。ゼオシン(600μg/ml)で10日間トランスフェクト細胞の選択を行った。次いで、この培地を除去し、コロニーをPBSで2回洗浄し、氷冷メタノールにて−20℃で10分間固定した後、メタノールを吸引して0.5%クリスタルバイオレット溶液とともに10分間インキュベートした。その後、このプレートを蒸留水で洗浄し、風乾させた。20を超える細胞を含む染色したコロニーを、倒立顕微鏡で記録して数えた。このような独立した実験を3回実施し、計算はそれぞれ二重反復で行った。
【0102】
実施例2:IRに曝露するとCOP1は翻訳後に修飾される
本発明者らは、10GyのIRにより誘発されたDNA損傷後のCOP1の定常状態のレベルを、GM0637線維芽細胞を用いて調べた。COP1に対する抗体でプローブしたライセートから、IR後早くも30分で、COP1の定常状態レベルが低下し始め、1時間(図1A)でほとんどゼロになることが明らかになった。とりわけ、p53の定常状態のレベルは、COP1レベルが低下し始めると増加しており、このことは、下流の標的遺伝子p21(図1Aおよび図1B)の活性化と整合していた。こうしたCOP1タンパク質の減少の機序を明らかにするため、リアルタイムPCRを実施してCOP1遺伝子座の遺伝子活性を評価した。IRによる刺激後に、COP1mRNAのレベルは、若干増加した。さらに、IR障害後には、2つの古典的なp53依存性プロモーターであるp21およびPUMAプロモーターも誘発されたが、規模は、COP1プロモーターよりもはるかに大きかった。したがって、これらのデータから、COP1タンパク質レベルの低下が、COP1のmRNAレベルの低下に起因し得ないことが示される。このため、シクロヘキサアミド(CHX)パルスチェイス実験を行って、こうした制御が翻訳後レベルでのものかどうかを判定した。GM0637線維芽細胞内では、COP1の半減期は30分を超える一方、細胞を10GyのIRに曝露すると、7分強まで劇的に短縮した(図1C)。こうしたデータから、COP1は、IRへの曝露を受けて、翻訳後に修飾されることが示される。
【0103】
実施例3:COP1の修飾はATM依存性である
ATMは、DNA損傷のシグナル伝達経路に対する一次応答物質であるため、ATMリン酸化が起こり得る部位を決定した。COP1には、5種類のSQモチーフ(図1D)があるが、SQ3(S387)は、このセリン残基がアラニンに変異すると、IR後のCOP1の定常状態レベルでの低下を抑えるため、最も重要であった(図1E)。S387がATMを介したリン酸化の本物の標的であるどうかを判定するため、GSTペプチドを大腸菌から精製し、ATM野生型またはATMヌルの線維芽細胞から免疫沈降させたATMと一緒にインビトロキナーゼアッセイの基質として用いた(図2A)。実際、ATMは、S387(GST−COP1−WT)およびp53S15(GST−p53)、古典的ATM基質を含むペプチドをリン酸化することができた17。これに対して、ATMは、S387A変異(GST−COP1−A)を含むペプチドをリン酸化することができなかった。全長COP1がATMの基質であり、S387がCOP1の主要なSQ部位であったことを確認するため、インビトロキナーゼアッセイでは、全長COP1およびCOP1−S387Aを大腸菌から精製し、組換えATMまたはATM−KDとともにインキュベートした(図5)。COP1をATM−KDでなくATMとともにインキュベートすると、COP1−S387A変異タンパク質とは対照的に、COP1から強いリン酸シグナルが発生した。これらのデータから、S387がインビトロでATMの主要部位であることが示される。したがって、リン酸化S387に対する、リン酸特異的なポリクローナル抗体をウサギで産生し、精製してから、ペプチドELISA(図7)およびATMを用いたインビトロキナーゼアッセイによって(図8)特徴付けを行った。ATMがインビボでCOP1をリン酸化することができるかどうかを判定するために、ATMまたはATM−KDとともにあるいはATMまたはATM−KD無しで、HEK293T細胞にFLAG−COP1を形質移入した。ライセートをFLAG抗体とともに免疫沈降させ、抗pS387抗体を用いてウエスタンブロッティングにかけた(図2B)。ATMを同時形質移入した場合、pS387COP1に対応する特異的な結合だけが検出されたが、λホスファターゼ処理で消滅した。
【0104】
インビボでATMとCOP1との相互作用が存在するかどうかを判定するために、FLAG−ATMを単独であるいはHA−COP1とともに、HEK293T細胞に形質移入し、エトポシドによるDNA損傷処理またはビヒクル対照であるDMSO処理に付した(図2C)。FLAG−ATMとともにHA−COP1を形質移入したときだけ、ATMは、わずかではあるが抗HAビーズでプルダウンされた。一方、細胞をエトポシドで処理すると、HA−COP1でプルダウンされるATMの量は著しく増加した。これは、COP1とATMとの相互作用がDNA損傷誘導性であることを示唆するものである。IR後のCOP1の定常状態レベルの低下およびターンオーバーの増加(それぞれ、図1Aおよび図1C)は、ATMの存在に起因していたかどうかを評価するため。A−T患者由来の線維芽細胞(GM09607)をIRで処理し、ウエスタンブロッティング用に様々な時点で採取した。興味深いことに、ATMヌルの線維芽細胞では、COP1タンパク質の定常レベルの低下は、軽度であった(図2D)。これは、p53の安定化の消失およびp21タンパク質の誘発と相関した。次に、抗pS387抗体を用いて、ATM−WTおよびA−Tの線維芽細胞のATM−リン酸化COP1を探索した(図2E)。とりわけ、ATM−WTの線維芽細胞内では、DNA損傷誘導剤であるブレオマイシンの存在下でのみ、COP1pS387が検出されたのが目立った。ATM−WTの線維芽細胞では、p53pS15が検出された一方、A−Tの線維芽細胞では、ほとんど検出できなかった。A−T細胞でpS387COP1を検出できなかったところを見ると、この部位の修飾は、ATM依存性であろう。
【0105】
実施例4:自己ユビキチン化を促進することで、ATMSによる387のリン酸化は、COP1のターンオーバーを増加させるのに十分になる
外来性ATMをSaos−2細胞に導入し、外来性および内在性COP1タンパク質の定常状態のレベルを評価した。外来性ATMを導入すると、外来性および内在性COP1タンパク質のレベルは、劇的に低下した(それぞれ、図2Fおよび図9)が、対照的にATM−KDは、外来性COP1または内在性COP1のどちらの定常状態レベルにも何ら作用を及ぼさなかった。IRに曝露した後、COP1をターンオーバーさせるため、本発明者らは、ATMを介したこのターンオーバーが26Sプロテアソームによるものかどうかを確認したいと考えた。このため、HA−COP1およびFLAG−ATMを形質移入した後に、Saos−2細胞をプロテアソーム阻害剤で処理した(図2G)。ATMを形質移入すると、COP1が著しく減少したものの、プロテアソーム阻害剤で細胞を処理すると、これが完全に抑制された。このことから、ATMによるCOP1のリン酸化は、COP1のプロテアソーム依存性分解を促進していることが示される。本発明者らは、ATMの活性化に応答してCOP1がユビキチン化されるかどうかを調査した。H1299細胞に、HAタグ付ユビキチンと、ATMまたはATM−KDと、COP1とを形質移入し、ライセートを採取する前にユビキチン化産物が蓄積するようにプロテアソーム阻害剤で前処理した。COP1を抗FLAGとともに免疫沈降させ、抗HAでユビキチン化種を検出した(図2H)。COP1単独の形質移入した場合、検出可能なユビキチン産物は少量であったが、COP1とともにATMを同時形質移入した場合は、ATM−KDを同時形質移入した場合と対照的に、ユビキチン化COP1を示す著しいシグナルが見られた。ATMがCOP1のユビキチン化およびその後の分解を促進するという事実に鑑み、本発明者らは、ATMがCOP1のリング変異(C136/139S)の分解のシグナル伝達を行うかどうかを判定したいと考えた。COP1自体が自己ユビキチン化するならば、ATMはCOP1のリング変異の分解を促進できないであろうというのがその根拠である。Saos−2細胞に、FLAG−COP1またはFLAG−C136/139Sと、ATMまたはATM−KDとを形質移入し、イムノブロッティングでCOP1タンパク質の定常状態レベルを評価した(図21)。前の実験で確認されたように、ATMでは、COP1の定常状態レベルが急低下した一方、ATM−KDの作用は見られなかった。これに対し、リング変異は、ATMによる分解に抵抗性を示した。これらのデータから、ATMによりリン酸化されると、COP1の自己ユビキチン化およびその後の分解が促進されることが示される。この問題にさらに取り組むため、COP1−WTおよびCOP1−リング変異をそれぞれ陽性対照および陰性対照として用いてインビトロの自己E3ユビキチン化アッセイ(図2J)ができるように、COP1−S387D変異を作製し、このセリン残基のリン酸化を模倣するため、これを哺乳類細胞から精製した(図10)。COP1−WTでは、自己E3活性が適度に見られたが、COP1のリング変異では、自己ユビキチン化が見られなかった。対照的に、S387D COP1変異では、著しい自己E3リガーゼ活性が見られ、これは、ATMによるリン酸化により自己E3の機序を介してCOP1ユビキチン化が増強されるという考え方と整合する。S387D変異がインビトロの自己E3リガーゼ活性を増強すると考えると、この変異は、インビボではさらに速い速度でターンオーバーされるはずである。この可能性に取り組むため、FLAG−COP1またはFLAG−S387Dを形質移入したU2−OS細胞でCHXパルスチェイス実験を実施し、CHXとともにインキュベートした後、指定の時点で細胞を採取した(図2K)。ライセートのウエスタンブロッティングを行ったところ、トランスフェクトCOP1では半減期が約50分であるのに対し、S387D変異では、対照的にターンオーバーが早く、半減期が約15分であることが明らかになった。よって、これらのデータから、自己ユビキチン化を促進することで、ATMによるS387のリン酸化は、COP1のターンオーバーを増加させることが示される。
【0106】
実施例5:ATMによるS387でのCOP1の修飾は、DNA損傷に応答するCOP1の細胞質プールを促進するのに十分である
本発明者らは、免疫蛍光を用いてH1299細胞のおける、IRの前後の外来性COP1の局在を調べた(図11)。局在の解析によれば、DAPIによる同時染色および像のオーバーラップにより評価した場合、COP1が核コンパートメントに主に局在していることが明らかになった。驚いたことに、10GyのIRで2時間曝露すると、COP1は、主に細胞質コンパートメントに局在していた。次に、本発明者らは、ATMを対象とした野生型(GM03490)または切断型(GM02052)の初代線維芽細胞内の生化学的分画により、内在性COP1の局在を評価した。DNA損傷剤をまったく用いなかった場合、内在性COP1は、H1299細胞の外来性COP1研究(図10)と同様に、野生型線維芽細胞およびA−T線維芽細胞の核画分にもっぱら局在していた(図3A)。逆に、エトポシドで処理すると、COP1のおよそ50%がGM03490線維芽細胞の細胞質画分に存在したが、A−T線維芽細胞では、検出可能な細胞質COP1は検出されなかった。これらのデータから、細胞質コンパートメント内のCOP1の局在は、ATM依存性であることが示唆される。ATMはS387でCOP1をリン酸化する能力があるため、本発明者らは、このS387での修飾が細胞質局在にとって十分であるかどうかを判定したいと考えた。このため、10GyのIRの前後でCOP1−S387Dの局在を解析し、HEK293T細胞の野生型COP1と比較検討した(図3B)。WT−COP1は、細胞質コンパートメントおよび核コンパートメントにおよそ1:1で局在していた。これに対し、COP1−S387Dタンパク質は、DNA損傷剤をまったく加えなかった場合、細胞質/核の局在が4:1と著しい比率を示した。また、細胞をIRで処理した場合、COP1−S387Dの細胞質/核の比率をさらに高めることができなかったのに対し、WT−COP1の細胞質/核の比率は1:1からおよそ3:1まで上昇した。これらのデータから、S387でのATMによるCOP1の修飾は、DNA損傷に応答するCOP1の細胞質プールを促進するのに十分であることが示唆される。
【0107】
実施例6:COP1−S387Dは、p53の分解で傷害され、p53依存性の遺伝子トランス活性化を示す
H1299細胞(p53−l−)に、HA−p53とともにあるいはHA−p53無しで、FLAG−COP1をコードするコンストラクトを形質移入し、これをブレオマイシンで2時間処理し、COP1とp53との相互作用を免疫沈降によって判定した(図4A)。抗FLAG抗体を用いてCOP1のウエスタンブロッティングを行ったところ、HAビーズとの結合は、HA−p53を同時形質移入したときにだけ見られたが、ブレオマイシンがDNA損傷を誘導すると、この相互作用は、著しく阻害された。HA−p53を抗FLAGビーズとともに免疫沈降させた逆IPの場合も、FLAG−COP1を同時形質移入したときにだけ、同様の結果が得られた(図4B)。DNA損傷後にS387でCOP1がリン酸化されると見られることから、本発明者らは、この修飾がp53/COP1複合体の破壊に関与しているかどうかを判定したいと考えた。このため、本発明者らは、免疫沈降により、細胞においてCOP1−S387D変異が、WT−COP1との比較でp53との複合体を形成する能力を保持しているかどうかを評価した(図4D)。IPのウエスタンブロッティングを行ったところ、WT−COP1とは対照的に、COP1−S387Dと複合体を形成できるp53は、かなり少ないことが明らかになった(デンシトメトリーによる評価では、約3分の1)。さらに、本発明者らは、これらの観察結果を、精製COP1−S387D(図9)および大腸菌由来の精製GST−p53を用いてインビトロで再現し、p53結合が約5分の1に減少することを検出することができた(図4D)。COP1とp53との相互作用が完全に消失したわけではないが、S387がリン酸化すると、インビトロおよびインビボでのCOP1のp53との結合は、少なくとも3分の1に減少することは明らかである。さらに、このことは、COP1−S387Dがインビトロでp53をユビキチン化する能力の低下と相関する(図4E)。したがって、これらの観察結果から、ATMがS387でCOP1を修飾すれば、p53の腫瘍サプレッサー機能を抑制するCOP1の能力を阻害する可能性があることが示唆される。そこで、一過性形質移入アッセイで、COP1−S387Dがp53を分解する能力を保持するかどうかを判定する実験を行った。Saos−2細胞に、COP1−WTまたはCOP1−S387Dの滴定量を増やしながら、p53を形質移入した(図4F)。ライセートを採取し、抗p53を用いてウエスタンブロットを行ったところ、COP1−WTを同時形質移入した場合、p53の定常状態レベルが急低下するのに対し、COP1−S387Dを同時形質移入した場合には、p53のレベルは、わずかな低下にとどまった。これらのデータは、p21タンパク質のレベルおよびp21遺伝子トランス活性化の能力のレベル(それぞれ、図4Fおよび図4G)とも相関していた。故に、これらのデータによれば、COP1−S387Dは、p53の分解およびp53依存性の遺伝子トランス活性化の抑制時に傷害されることが示唆される。これが適切な生理学的読み出しと相関することを検証するため、コロニー形成アッセイを行い、H1299細胞中でp53依存性機能を阻害する際のCOP1−WTおよびCOP1−S387Dの長期的な作用をモニターした(図4H)。p53を形質移入した場合、生存コロニーはほとんど見られなかった一方、COP1をp53とともに同時形質移入した場合には、p53だけの場合(6×10cfu)およびCOP1−WTだけの入場合(72×10cfu)と比べて、かなりの数のコロニー(25×10cfu)をレスキューした。まったく対照的に、COP1−S387Dでは、p53とともに同時形質移入した場合(6×10cfu)に、p53だけの場合(6×10cfu)およびCOP1−S387Dだけの場合(77×10cfu)と比べて、コロニーの数をあまり回復させることができなかった。
【0108】
(参考文献)
以下の刊行物は、参考として本明細書に援用される。
【0109】
【化3】

【0110】
【化4】

【0111】
【化5】

その他の実施形態
本明細書では、本発明の種々の実施形態を開示しているが、当業者の共通一般知識によれば、本発明の範囲内で多くの適合および変更が可能である。こうした変更には、本発明の任意の態様と周知の等価物とを置換して、実質的に同じ要領で同じ結果を得ることが含まれる。本明細書で使用する場合、受託番号とは、ヌクレオチド配列に関するGenBank、欧州分子生物学研究所(European Molecular Biology Laboratory)(EMBL)、日本DNAデータベース(DDBJ)またはゲノム配列データベース(Genome Sequence Data Base)(GSDB)など、およびProtein Information Resource(PIR)、SWISSPROT、蛋白質研究奨励会(Protein Research Foundation)(PRF)および蛋白質構造データバンク(Protein Data Bank)(PDB)(解析された構造の配列)などの複数のデータベースに加えてポリペプチド配列に関する、GenBank、EMBL、DDBJまたはRefSeqのヌクレオチド配列の注釈付きコード領域からの翻訳の受託番号をいう。数値の範囲は、その範囲を規定する数を含む。本明細書では、「含む(comprising)」という語を非限定的な用語として用いており、「含むが、これに限定されるものではない」という慣用句と実質的に等価であり、「含む(comprises)」という語は、対応する意味を持つものである。本明細書で参考文献を引用していても、こうした参考文献が本発明の従来技術であることを認めているものと解釈してはならない。すべての公報については、個々の公報を具体的に個々に示して参照によって本明細書に援用しているように、および、本明細書に全体を記載しているように本明細書に援用する。さらに、2005年12月31日に出願された米国特許仮出願第60/755,412号についても、参照によってその全体を本明細書に緩用する。本発明は、上文に記載したような、ならびに、実施例および図面に関連する、実質的にすべての実施形態および変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1A】図1A〜図1Eは、COP1がIR後にターンオーバーされ、S387に依存的であることを示す。図1Aでは、IRに曝露した場合、COP1の定常状態レベルが低下している。
【図1B】図1A〜図1Eは、COP1がIR後にターンオーバーされ、S387に依存的であることを示す。図1Bでは、COP1のmRNAレベルは低下していないが、IRに曝露した場合には上昇している。
【図1C】図1A〜図1Eは、COP1がIR後にターンオーバーされ、S387に依存的であることを示す。図1Cでは、シクロヘキサアミドパルスチェイスで評価すると、COP1がIR後にターンオーバーされている。
【図1D】図1A〜図1Eは、COP1がIR後にターンオーバーされ、S387に依存的であることを示す。図1Dは、COP1にあると考えられるSQモチーフである。
【図1E】図1A〜図1Eは、COP1がIR後にターンオーバーされ、S387に依存的であることを示す。図1Eでは、IRに曝露した場合、COP1−S387Aは、分解に対して抵抗性を示す。
【図2A】図2A〜図2Kは、ATMがCOP1を負に制御する。図2Aでは、内在性ATMがインビトロでS387を含むCOP1 GST−ペプチドをリン酸化できる。
【図2B】図2A〜図2Kは、ATMがCOP1を負に制御する。図2Bでは、ATMがインビボでS387リン酸化する。
【図2C】図2A〜図2Kは、ATMがCOP1を負に制御する。図2Cでは、COP1がインビボでATMと相互に作用し、DNA損傷後に増加する。
【図2D】図2A〜図2Kは、ATMがCOP1を負に制御する。図2Dでは、COP1が定常状態レベルで減少し、ATM依存性である。
【図2E】図2A〜図2Kは、ATMがCOP1を負に制御する。図2Eでは、IR後のS387でのCOP1のリン酸化は、ATMのキナーゼ活性に依存的である。
【図2F】図2A〜図2Kは、ATMがCOP1を負に制御する。図2Fでは、外来性ATMは、Saos−2細胞におけるCOP1の定常状態レベルの低下を促進する。
【図2G】図2A〜図2Kは、ATMがCOP1を負に制御する。図2Gでは、ATMによるCOP1の減少に26Sプロテアソームが関与する。
【図2H】図2A〜図2Kは、ATMがCOP1を負に制御する。図2Hでは、ATMは、キナーゼ依存的にCOP1のユビキチン化を促進する。
【図2I】図2A〜図2Kは、ATMがCOP1を負に制御する。図2Iでは、COP1−C136/139Sのリング変異は、ATM誘導分解に対して抵抗性を示す。
【図2J】図2A〜図2Kは、ATMがCOP1を負に制御する。図2Jでは、S387のリン酸塩−模倣体は、インビトロでCOP1の自己ユビキチン化を促進する。
【図2K】図2A〜図2Kは、ATMがCOP1を負に制御する。図2Kでは、COP1−S387Dは、ターンオーバー能力の向上を示す。
【図3】図3では、ATMは、細胞質へのCOP1の局在化を促進する。図3Aでは、COP1は、DNA損傷後にATM依存的に細胞質に局在する。図3Bでは、COP1−S387Dは、主に細胞質コンパートメントに局在する。
【図4A】図4A〜図4Iでは、COP1によるp53の負の制御は、ATMによるS387での修飾により弱められる。図4Aでは、DNA損傷に曝露された場合、COP1とp53との相互作用は、抑制される。
【図4B】図4A〜図4Iでは、COP1によるp53の負の制御は、ATMによるS387での修飾により弱められる。図4Bでは、DNA損傷に曝露された場合、COP1とp53との相互作用は、抑制される。
【図4C】図4A〜図4Iでは、COP1によるp53の負の制御は、ATMによるS387での修飾により弱められる。図4Cでは、COP1−S387Dは、p53に結合する際の有効性が低下している。
【図4D】図4A〜図4Iでは、COP1によるp53の負の制御は、ATMによるS387での修飾により弱められる。図4Dでは、p53は、インビトロでCOP1−S387Dに結合する能力の低下を示す。
【図4E】図4A〜図4Iでは、COP1によるp53の負の制御は、ATMによるS387での修飾により弱められる。図4Eでは、COP1によるインビトロでのp53のユビキチン化は、S387D変異により阻害される。
【図4F】図4A〜図4Iでは、COP1によるp53の負の制御は、ATMによるS387での修飾により弱められる。図4Fでは、COP1−S387Dは、p53を分解する際の有効性が低下している。
【図4G】図4A〜図4Iでは、COP1によるp53の負の制御は、ATMによるS387での修飾により弱められる。図4Gでは、COP1−S387Dは、p53依存性トランス活性化を阻害する際の力が低下している。
【図4H】図4A〜図4Iでは、COP1によるp53の負の制御は、ATMによるS387での修飾により弱められる。図4Hでは、COP1−S387Dは、p53腫瘍サプレッサー機能を負に制御できない。
【図4I】図4A〜図4Iでは、COP1によるp53の負の制御は、ATMによるS387での修飾により弱められる。図4Iは、p53軸に関するATM DNA損傷の応答経路のモデルである。
【図5】図5では、全長COP1のS387は、インビトロでのATMリン酸化の主要部位である。
【図6】図6では、S387のCOP1 SQ3は、哺乳類のオーソログで高度に保存されている。
【図7】図7は、ELISAによるpS387 COP1抗体のキャラクタリゼーションである。pS387抗体の濃度を変えながら、1ngのペプチドをそれぞれ、ELISAプレートにコーティングした。HRP二次抗体およびECLは、ペプチドに結合している抗体を検出した。
【図8】図8は、インビトロキナーゼアッセイによるpS387抗体のキャラクタリゼーションである。図示したように阻害剤を使用してあるいは使用せずに、FLAG−ATMおよびGST−COP1またはGST−COP1−S387Aをインキュベートした。
【図9】図9では、ATMをSaos−2に同時形質移入した場合、内在性COP1の定常状態レベルが低下している。10ugのATMまたはATM−KDを24時間形質移入し、各レベルをウエスタンブロッティングで評価した。
【図10】図10では、HEK293T由来のSDS−PAGEのImperial stainで、FLAG−COP1−WT、FLAG−COP1−S387DおよびFLAG−COP1−リングmtを精製した。
【図11】図11では、COP1は、IR処置後に細胞質に局在している。10GyのIRで処置した後、H1299細胞のトランスフェクトFLAG−COP1の免疫蛍光から、かなりの比率のCOP1がCOP1の核画分よりも細胞質に局在したことが示される。メタノール個体法およびビオチン−ストレプトアビジン増幅法で免疫蛍光法を行い、検出には、Zeiss Axiovert 200M顕微鏡のCy5フェルタキューブを用いた。DNAの染色には、DAPI入りのVectashield(Vector Laboratories)を用いた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATMポリペプチドを含む細胞のDNA損傷を検出する方法であって:
該細胞のCOP1ポリペプチドを検出する工程を含み、対照との比較での該ATMポリペプチドによる該COP1ポリペプチドのリン酸化または該COP1ポリペプチドの発現レベルの低下がDNA損傷を示す、
方法。
【請求項2】
前記ATMポリペプチドは、ヒトATMポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記COP1ポリペプチドは、ヒトCOP1ポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記リン酸化は、セリンのリン酸化である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記COP1ポリペプチドは、該COP1ポリペプチドに特異的に結合する抗体を用いて検出される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体は、ヒトCOP1ポリペプチドのアミノ酸残基377〜400と実質的に同一のアミノ酸配列を含むペプチドを認識する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体は、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同であるアミノ酸配列を含むペプチドを認識する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ペプチドは、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同であるリン酸化可能なアミノ酸残基上でリン酸化される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記ATMポリペプチドを検出する工程をさらに含み、前記COP1分子の該ATM分子への結合は、DNA損傷を示す、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
COP1 E3−リガーゼ活性の活性化、COP1自己ユビキチン化の活性化、p53−COP1複合体の破壊、COP1依存性p53ユビキチン化の減少、COP1の細胞質−核の比率の上昇、COP1ポリペプチドのターンオーバーおよびCOP1ポリペプチドの分解からなる群の1つまたは複数を検出する工程をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞のp53分子を検出する工程をさらに含み、対照との比較での該p53分子の発現レベルの上昇またはp53活性の増強は、DNA損傷を示す、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記p53分子は、ヒトp53分子である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記p53分子は、野生型p53分子である、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記p53分子は、p53ポリペプチドである、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記p53ポリペプチドは、該p53ポリペプチドに特異的に結合する抗体を用いて検出される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記p53活性は、p53依存性トランス活性化の活性化、p53誘導性アポトーシスの活性化、p21分子の活性化、p21プロモーターの誘導、p21のmRNAレベルの上昇およびPUMAプロモーターの誘導からなる群の1つまたは複数から選択される、請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記DNA損傷は、放射線または化合物(chemical compound)によって引き起こされる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記放射線は、電離放射線または紫外線である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記放射線は、放射線治療に由来する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物(chemical compound)は、アルキル化剤または化学療法剤である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞は、DNA損傷を有するか、またはDNA損傷の危険がある、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞は、癌細胞である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記癌細胞は、乳癌、卵巣癌、結腸癌、肺癌および移行細胞癌からなる群の1つまたは複数から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記癌細胞は、癌治療を受けている被験体から取得される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記癌治療は、DNA損傷を引き起こすことが既知であるか、あるいは、DNA損傷の原因になる疑いがある、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記被験体は、ヒトである、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
細胞のDNA損傷に対する応答を増強する方法であって、該細胞をCOP1ポリペプチドの分解を高める化合物に曝露する工程を含む、方法。
【請求項28】
前記化合物は、ATM分子を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ATM分子は、活性化されたATMポリペプチドである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物は、前記COP1ポリペプチドのATMポリペプチドへの結合を強化するか、または、ATMポリペプチドによる該COP1ポリペプチドのリン酸化を増強する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
COP1ポリペプチドとATMポリペプチドとの相互作用を増強する方法であって、該COP1ポリペプチドおよび該ATMポリペプチドと、該COP1ポリペプチドの該ATMポリペプチドへの結合を強化する化合物とを接触させる工程を含む、方法。
【請求項32】
前記結合は、前記COP1ポリペプチドの分解、COP1 E3−リガーゼ活性の活性化、COP1自己ユビキチン化の活性化、COP1−p53複合体の破壊、COP1依存性p53ユビキチン化の減少、COP1ポリペプチドの細胞質/核の比率の上昇およびp53分子の発現レベルの上昇の1つまたは複数をもたらす、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記接触は、細胞のDNA損傷に対する応答を増強させる、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞は、DNA損傷を有するか、またはDNA損傷の危険がある、請求項27〜30および請求項33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞は、A−T細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞は、癌細胞である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
DNA損傷に対する前記応答は、細胞アポトーシスまたはp53活性化を含む、請求項27〜30および請求項33〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記p53活性化は、p53依存性トランス活性化の活性化、p53誘導性アポトーシスの活性化、p21分子の活性化、p21プロモーターの誘導およびPUMAプロモーターの誘導からなる群の1つまたは複数から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記COP1ポリペプチドは、ヒトCOP1ポリペプチドである、請求項26〜38のいずれか1項に記載の方法
【請求項40】
前記ATMポリペプチドは、ヒトATMポリペプチドである、請求項28〜39のいずれか1項に記載の方法
【請求項41】
前記化合物は、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同であるアミノ酸残基のリン酸化を増強する、請求項27〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記化合物は、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387のリン酸化を増強する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記化合物は、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同である残基を含むCOP1ポリペプチドまたはそのフラグメントを含む、請求項27〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記化合物は、ヒトCOP1ポリペプチドのアミノ酸残基377〜400と実質的に同一の配列を含むポリペプチドを含む、請求項27〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記化合物は、リン酸化が可能であるアミノ酸残基のリン酸化を含む、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記アミノ酸残基は、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記化合物は、ヒトCOP1ポリペプチドのセリン387と相同である残基でのセリンからトレオニン、グルタミン酸塩またはアスパラギン酸塩への置換を含むCOP1ポリペプチドを含む、請求項27〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記化合物は、COP1模倣体化合物を含む、請求項27〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
ATM分子を含む細胞のDNA損傷に対する応答を増強させる化合物を同定する方法であって、該方法は、該細胞のDNA損傷を促進するのに好適な条件下、試験化合物の存在下または非存在下でCOP1ポリペプチドをインキュベートする工程と、該試験化合物の存在下で、該COP1ポリペプチドの分解が増強されるか否かを判定する工程とを含み、該COP1ポリペプチドの分解を高める化合物は、DNA損傷に対する応答を増強する化合物である、方法。
【請求項50】
前記判定する工程は、対照との比較で行われる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ATM分子は、前記COP1ポリペプチドをリン酸化できる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
COP1 E3−リガーゼ活性の活性化、COP1自己ユビキチン化の活性化、COP1−p53複合体の破壊、COP1依存性p53ユビキチン化の減少、COP1ポリペプチドの細胞質/核の比率の上昇、p53活性の増強およびp53分子の発現レベルの上昇からなる群の1つまたは複数が、前記化合物によって増強されるか否かを判定する工程をさらに含み、このような増強は、前記化合物がDNA損傷に対する応答を増強する化合物であることを示す、請求項49〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記p53活性は、p53依存性トランス活性化の活性化、p53誘導性アポトーシスの活性化、p21分子の活性化、p21プロモーターの誘導およびPUMAプロモーターの誘導からなる群の1つまたは複数から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
DNA損傷の促進に好適な前記条件は、照射である、請求項49〜53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
DNA損傷に対する前記応答は、細胞アポトーシスまたはp53活性化を含む、請求項49〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
COP1ポリペプチドとATMポリペプチドとの相互作用を増強する化合物を同定するための方法であって:
a)試験化合物の存在下または非存在下でATMポリペプチドとともにCOP1ポリペプチドをインキュベートする工程と;
b)該試験化合物が該COP1ポリペプチドの該ATMポリペプチドへの結合を増大または安定化させるか否かを判定する工程と、
を含み、
該COP1ポリペプチドの該ATMポリペプチドへの結合を増大または安定化させる試験化合物は、COP1ポリペプチドとATMポリペプチドとの相互作用を増強する化合物である、方法。
【請求項57】
本質的にヒトCOP1のアミノ酸残基377〜400と実質的に同一または相同であるアミノ酸配列からなる、単離されたペプチド。
【請求項58】
本質的に図6に示したようなアミノ酸配列からなる、単離されたペプチド。
【請求項59】
前記ペプチドは、SQモチーフのセリンの置換を含む、請求項57または58に記載のペプチド。
【請求項60】
前記置換は、アスパラギン酸塩置換またはグルタミン酸塩置換である、請求項59に記載のペプチド。
【請求項61】
ヒトCOP1ポリペプチドのS387と相同であるリン酸化を含む、単離されたリン酸化COP1ペプチドまたは組換えリン酸化COP1ペプチド。
【請求項62】
ヒトCOP1ポリペプチドのS387と相同であるアミノ酸残基でのアスパラギン酸塩置換またはグルタミン酸塩置換を含む、単離されたCOP1ペプチドまたは組換えCOP1ペプチド。
【請求項63】
請求項57〜62のいずれか1項に記載のペプチドのCOP1模倣体化合物。
【請求項64】
請求項57〜62のいずれか1項に記載のペプチドまたは請求項63に記載の模倣体をコードする、核酸分子。
【請求項65】
プロモーターに作動的に連結された、請求項64に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項66】
プロモーターに作動的に連結されたATM核酸分子をさらに含む、請求項65に記載のベクター。
【請求項67】
請求項65または66に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項68】
ヒトCOP1のセリン387と相同であるアミノ酸残基でリン酸化されているアミノ酸配列に特異的に結合する、試薬。
【請求項69】
前記アミノ酸配列は、S387リン酸化ヒトCOP1である、請求項68に記載の試薬。
【請求項70】
前記試薬は、抗体である、請求項69に記載の試薬。
【請求項71】
請求項68に記載の試薬または請求項70に記載の抗体をコードする、核酸分子。
【請求項72】
プロモーターに作動的に連結された、請求項71に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項73】
請求項72に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項74】
細胞のリン酸化COP1分子を検出するための説明書が付いた、請求項68に記載の試薬または請求項70に記載の抗体を含む、キット。
【請求項75】
請求項57〜62のいずれか1項に記載のペプチドまたは請求項63に記載の模倣体または該ペプチドまたは模倣体をコードする核酸配列を含む、医薬組成物。
【請求項76】
処置を必要とする被験体のDNA損傷または癌を処置する方法であって、該被験体に治療有効量の請求項57〜62のいずれか1項に記載のペプチドまたは請求項63に記載の模倣体を投与することを含む、方法。
【請求項77】
処置を必要とする被験体のDNA損傷または癌を処置する方法であって、該被験体に治療有効量で請求項64に記載の核酸を投与することを含む、方法。
【請求項78】
被験体のDNA損傷を受けた細胞または癌を処置する方法であって、COP1ポリペプチドとATMポリペプチドとの結合を増強する化合物と、ATMポリペプチドによる該COP1ポリペプチドのリン酸化を増強する化合物とからなる群から選択される化合物を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項79】
前記化合物は、前記DNA損傷を受けた細胞または癌のCOP1ポリペプチドのリン酸化を増大するのに有効な量で投与される、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
請求項49または請求項56に記載の方法に従って同定される、化合物。
【請求項81】
被験体のDNA損傷または癌を処置する薬物を調製するための、請求項57〜62のいずれか1項に記載のペプチド、請求項63に記載の模倣体または請求項80に記載の化合物の、使用。
【請求項82】
COP1分子をコードする組換え核酸分子およびATM分子をコードする組換え核酸分子を含む、哺乳類細胞。
【請求項83】
p53分子をコードする組換え核酸分子をさらに含む、請求項82に記載の哺乳類細胞。
【請求項84】
前記ATM分子は、活性化されている、請求項82または83に記載の哺乳類細胞。
【請求項85】
前記COP1分子は、構成的にリン酸化されているか、あるいは、構成的にリン酸化されない、請求項82〜84のいずれか1項に記載の哺乳類細胞。
【請求項86】
前記COP1分子は、S387のCOP1リン酸化を抑えるS387の変異により、S387で構成的にリン酸化されない、請求項85に記載の哺乳類細胞。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図2J】
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【図2K】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−521925(P2009−521925A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548678(P2008−548678)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/049262
【国際公開番号】WO2007/079075
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】