説明

リン酸化の増進に起因する疾病及び病状の治療

本発明は、炎症や癌のようなリン酸化の増進に起因する疾病及び病状を治療する方法を提供するものである。また、本発明は細胞、組織、又は器官におけるリン酸化の増進を阻害する方法を提供するものである。上記方法は、リン酸受容体化合物(PAC)を用いるものである。また、本発明は、PACを含む製品を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、炎症や腫瘍などの、リン酸化反応の増大に起因する疾病及び病状(condition)を治療する方法に関する。また、本発明は、細胞、組織、及び器官内におけるリン酸化の増進を阻害する方法に関する。当該方法は、リン酸受容体化合物(PAC)を用いるものである。さらに、本発明は、PACを含有する物質に関する。
【0002】
〔背景技術〕
情報伝達とは、細胞外信号が、細胞表面の受容体と相互作用し、最終的に細胞の機能性に変化を及ぼす、一連のプロセスである。この情報伝達に関しては、タンパク質のリン酸化が非常に重要な役割を担っている。タンパク質のリン酸化は、タンパク質リン酸化酵素(蛋白キナーゼ)によって行われており、細胞機能の事実上ほぼ全ての特徴は、何らかの形でキナーゼ活性に依存している。驚くべきことではないが、異常なキナーゼ活性(通常は、上昇したキナーゼ活性)は、多くの疾病又は心身機能異常と関連している。
【0003】
蛋白キナーゼは、アデノシン三リン酸(ATP)からタンパク質の特定のアミノ酸残基(通常は、セリン残基、スレオニン残基、又はチロシン残基である)へのリン酸転移を触媒するものである。キナーゼはいくつかの特徴を有しており、これら特徴が、キナーゼを情報伝達に非常に適したものとしている。1つめの特徴は、これらキナーゼは、共通する標的基質特異性を有し、これによって、種々の情報伝達経路のクロストーク、及び種々のシグナルの統一が可能となるということである。2つめの特徴は、これらキナーゼが、いくつかのモジュールの機能性ドメインに組織化されているということである。これらのドメインは、進化を通して混合及び調和して、巨大な蛋白キナーゼファミリーを形成したように思われる。また、上記キナーゼは、構造的にも触媒的にも、類似したものである。3つめの特徴は、その反応速度である。リン酸化及び脱リン酸化のキネティクスは、非常に迅速である。そのため、迅速な応答と、短時間での回復を行うことができる。その結果、情報伝達を繰り返し行うことができる。
【0004】
多数の疾病及び情報伝達における上記キナーゼの役割を解明するために、蛋白キナーゼの阻害剤を開発しようとする試みが精力的に行われている。知る限りでは、上記試みは全て、単一のキナーゼのみを阻害する特異的阻害剤の開発を目指すものである。しかしながら、単一のキナーゼに対する特異的阻害剤を発見するという試みは、困難な作業である。最近の推定によると、ヒトのゲノムには、2000以上の蛋白キナーゼが存在すると予測されている(Shanley, Crit. Care Med., 30 (No. 1, Suppl):S80-S88 (2002)、Cohen, Current Opinion in Chemical Biology, 3:459-465 (1999))。また、上記のまさにその特徴が、キナーゼを情報伝達において非常に有用なものとし、また、ほぼ全ての細胞機能の中核へと発展させたわけであるが、その一方で、これらキナーゼの研究及びその理解を非常に困難なものとしている(米国特許第6383790号)。あいにくにも、キナーゼの膨大な数、及びそれらの間の類似性が、特異的な阻害剤の発見及び設計の妨げとなっている(米国特許第6383790号)。さらに、キナーゼのネットワークは、詳細が不明な様式で、高度に縮重(degenerate)及び相互接続しているので、多くの疾病の治療を行うためには、どのキナーゼを阻害の標的とすればよいかということに関して、かなりの不確定要素が存在している(米国特許第6383790号)。さらに、特定のキナーゼの特異的阻害剤が特定の疾病にどんな影響を及ぼすかを全く明らかではない(米国特許第6383790号)。また、複数のキナーゼが非常に複雑な関係にあるので、あるキナーゼを阻害すると、別のキナーゼがその役割を担うことになる可能性が大きい(米国特許第6383790号)。
【0005】
上述のことから、個々のキナーゼに特異的な阻害剤を同定することを必要とすることなく、不必要なリン酸化を減退する方法及び物質を開発することが望まれることは明白である。さらに、個々のキナーゼの特異的な阻害剤を同定することを必要とすることなく、リン酸化を増進することによって、疾病及び病状を効果的に治療する方法及び物質を開発することが望まれる。本発明は、そのような方法及び物質を提供するものである。
【0006】
〔発明の概要〕
具体的には、本発明はリン酸化の増進に起因する疾病及び病状の治療を行う方法と物質を提供するものである。また、本発明は、細胞、組織、及び器官内におけるリン酸化の増進を阻害する方法及び物質にも関する。本発明の方法及び物質は、リン酸受容体化合物(PAC)を用いる。PACはリン酸化を受けることができる化合物である。PACのリン酸化は、キナーゼによる本来の基質のリン酸化に用いることができるATP及びリン酸基を減少させ、その結果、不必要なリン酸化の増進を阻害する効果がある。従って、PACの同定は重要ではない。また、どの特定のキナーゼが不必要なリン酸化の増進を引き起こすのに関与しているかを知る必要はない。
【0007】
〔本発明の現時点において好ましい実施形態〕
図1は、インターロイキンの分量と治療との関係を示した棒グラフである。
【0008】
上述のように、本発明は、リン酸化の増進に起因する疾病及び病状の治療を行う方法及び物質を提供する。また、本発明は、細胞、組織、及び器官内におけるリン酸化の増進を阻害する方法及び物質に関する。本発明の方法及び物質は、リン酸受容体化合物(PAC)を用いる。
【0009】
本明細書において、「治療(treat)」及びそれに関連する文言は、疾病及び病状、又は少なくともその兆候の重症度、又は、それらによる影響を、治療(cure)、防止(prevent)、除去(eliminate)、改善(ameliorate)、緩和(alleviate)、又は低減(reduce)するという意味で用いられている。
【0010】
本明細書において、「リン酸化の増進に起因する疾病又は病状」とは、疾病又は病状に苦しむ動物のタンパク質及び/又はペプチドのリン酸化の増進によって引き起こされる、又は上記リン酸化の増進によって悪化させられる、又は上記リン酸化の増進を必要とする疾病又は病状のことを意味している。
【0011】
本明細書において、「リン酸化の増進」とは、上記のような疾病又は病状がない場合に見られる通常レベルよりも、リン酸化のレベルが高い状態を意味している。リン酸化の増進は、キナーゼ活性の正味の増加によって引き起こされるものであり、また、キナーゼ活性の正味の増加は、キナーゼ活性の増加、脱リン酸化酵素(ホスファターゼ)活性の減少、又はこれらの両方によって引き起こされるものである。
【0012】
本明細書において、「阻害(inhibition)」及びそれに関連する文言は、減少(reduce)、除去(eliminate)、又は防止(prevent)する、という意味で用いられている。
【0013】
A.リン酸受容体化合物
本明細書において、「リン酸受容体化合物」又は「PAC」は、リン酸化を受けることができる化合物である。PACは、細胞外PAC(EPAC)又は細胞内PAC(IPAC)である。
【0014】
PACのリン酸化は、キナーゼによる本来の基質のリン酸化に用いることができるATP及びリン酸基を減少させ、その結果、不必要なリン酸化の増進を阻害する効果がある。従って、PACの同定は重要ではない。また、どの特定のキナーゼが不必要なリン酸化の増進を引き起こすのに関与しているかを知る必要はない。
【0015】
特定のキナーゼが、不必要なリン酸化の増進の原因であったり、増進の誘発に関与していることが知られていたり、又はそうであると思われたりする場合において、もし、1つ、又はそれ以上の上記キナーゼの基質が知られていれば、それらの基質をPACとして用いることができる。上記のような基質を用いることで、より効果的に、又は完全に不必要なリン酸化の増進を阻害することができる。しかし、このような基質を用いることは必須ではない。さらに、上記のような基質を用いても、キナーゼの阻害が全く見られない可能性もある。その理由は、上述のように、キナーゼは非常に複雑な関係にあり、その他のキナーゼが、その機能を発現させることで、不必要なリン酸化の増進の原因である、又は増進の誘発に関与していると思われるキナーゼを単純に補助している可能性があるためである。
【0016】
1.細胞外リン酸受容体化合物
付帯的な「細胞外」とは、リン酸化に関与する細胞内経路と相互作用するほど、細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)が細胞内部まで十分に浸透(貫通)しないことを意味している。このような物質が細胞内部に浸透(貫通)すると、細胞に深刻な損傷を与える、又は細胞を死なせる場合がある。EPACは、リン酸化に関与する細胞内経路と相互作用できるという意味で、細胞膜に浸透しない限りは、完全に細胞外にとどまっていても、細胞膜上もしくは細胞膜内部に存在する受容体及び/又はその他の分子と、結合もしくは相互作用してもよく、また、細胞膜に浸透さえしてもよい。
【0017】
EPACは、膜結合性及び/又は循環/可溶性キナーゼによってリン酸化を受ける基質である。EPACは、これらキナーゼによってリン酸化される本来の基質と拮抗する。そして、EPACのリン酸化は、細胞外及び細胞内のタンパク質、ペプチド、並びにその他の化合物のリン酸化を減退又は妨害する(EPACのリン酸化は、細胞外及び細胞内のタンパク質、ペプチド、並びにその他の化合物のリン酸化に用いることができるATP及びリン酸基を減少させる効果をもつ)。また、膜結合性キナーゼによるEPACのリン酸化は、細胞外から細胞内への情報伝達を減退又は妨害する。
【0018】
さらに、リン酸化されたタンパク質及びペプチドは、金属イオン(鉄イオン及び銅イオンを含む)と結合することができる。その結果、これらリン酸化されたタンパク質及びペプチドは、抗酸化剤として機能することができる。従って、本発明のEPACタンパク質及びペプチドは、それらがリン酸化を受けた後に、抗酸化作用を示すという付加的な利点をもたらす。
【0019】
好適なEPACには、1つ、又はそれ以上のリン酸化部位を有するタンパク質及びペプチドが含まれる。上述のように、ほぼ全ての蛋白キナーゼは、セリン残基、スレオニン残基及び/又はチロシン残基のリン酸化を行うものである。現在、セリン残基、スレオニン残基及び/又はチロシン残基を含むリン酸化部位は1000以上知られている。これに関しては、Kreegipuuらの「PhosphoBase, a database of phosphorylation sites: release 2.0," Nucleic Acids Res., 27 (1):237-239 (1999)」、及びhttp://www.cbs.dtu.dk/databases/PhosphoBase/を参照されたい。上記のタンパク質及びペプチドは、少なくとも1つのリン酸化を受けることができるアミノ酸を含むものであれば、天然タンパク質及びペプチド、それらの断片、並びに合成タンパク質及びペプチド(天然タンパク質及びペプチドの変異型や部分的に合成されたもの、並びに、完全に合成されたタンパク質及びペプチドを含む)であってもよい。上記タンパク質及びペプチドは、十分に大きなサイズ(通常は、20アミノ酸以上の長さ)である必要があり、及び/又は、上記タンパク質及びペプチドを細胞外にとどまらせる電荷(親水性など)を有している必要がある。
【0020】
EPACがリン酸受容体としての役割を果たすためには、当然ながら、EPACの少なくとも1つのリン酸化部位が、非リン酸化状態である必要がある。非リン酸化タンパク質及びペプチドは、当技術分野において公知の化学合成法を用いて製造することができる。例えば、標準的な固相ペプチド合成法を用いて、上記タンパク質及びペプチドを合成することができる。好適な方法は、当技術分野においてよく知られており、その方法には、「Merrifield, Chem. Polypeptides, pp. 335-61 (Katsoyannis and Panayotis eds. 1973)」、「Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85, 2149 (1963)」、「Davis et al., Biochem. Int'l, 10, 394- 414 (1985)」、「Stewart and Young, Solid Phase Peptide Synthesis (1969)」、米国特許第3941763号及び第5786335号、「Finn et al., in The Proteins, 3rd ed., vol. 2, pp. 105-253 (1976)」、及び「Erickson et al. in The Proteins, 3rd ed., vol. 2, pp. 257-527 (1976)」に記載のものが含まれる。化学合成によって製造されたタンパク質及びペプチドは、L−アミノ酸、D−アミノ酸、又はそれらの混合物より構成されてもよい。しかしながら、リン酸化を受けるアミノ酸(セリン、スレオニン、及び/又はチロシン)はD−アミノ酸でないことが好ましい。また、D−アミノ酸を含むタンパク質及びペプチドは、タンパク質分解酵素に抵抗性であることから、1つ又はそれ以上のD−アミノ酸を含むタンパク質及びペプチドを用いることが好ましい。なお、上記タンパク質分解酵素とは、例えば、タンパク質及びペプチドが動物に投与されたときに遭遇するタンパク質分解酵素、もしくは、タンパク質又はペプチドを含む溶液を用いて貫流培養された摘出組織中に存在するタンパク質分解酵素などを指す。また、用いられるD−アミノ酸は、タンパク質又はペプチドのリン酸化される能力(ability)を変化させるものであってはならない。
【0021】
また、DNA組換え技術を利用して、バクテリア内で非リン酸化タンパク質及びペプチドを生産することも可能である(米国特許第5942254号を参照のこと)。その他の宿主内で、リン酸化タンパク質及びペプチドを生産し、その後、以下の方法により脱リン酸化を行うこともできる。DNA組換え技術、ベクター、並びに、バクテリア及びその他の宿主中でタンパク質を発現させるための試薬は、当技術分野においてよく知られている。これに関しては、「Maniatis et al., Molecular Cloning」、「A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY (1982)」、「Sambrook et al., Molecular Cloning」、「A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NY (1989)」を参照されたい。
【0022】
天然の非リン酸化タンパク質及びペプチドの中に、EPACとして機能できるものが存在することが知られている。例えば、ヒトの初乳に見られるαs1−セリンは、本質的に非リン酸化状態である。
【0023】
リン酸化されているタンパク質及びペプチドは、それを用いる前に、少なくとも部分的に脱リン酸化される必要がある。なお、「少なくとも部分的に脱リン酸化される」とは、タンパク質又はペプチドの集団(population)中に存在するリン酸化されたアミノ酸の数が、少なくとも約10%減少することを意味している。タンパク質又はペプチドの集団中に存在する、リン酸化されたアミノ酸の数は、その利用に先立ち、少なくとも約35%減少することが好ましく、少なくとも約50%減少することがより好ましく、少なくとも約70%減少することがさらに好ましく、少なくとも約90%減少することが最も好ましい。また、本明細書において、非リン酸化状態もしくは実質的に非リン酸化状態に生産された、又は非リン酸化状態もしくは実質的に非リン酸化状態で見出されたタンパク質及びペプチドは、「少なくとも部分的に脱リン酸化された」タンパク質及びペプチドの定義の範疇内であるものとする。
【0024】
リン酸化されたタンパク質及びペプチドを脱リン酸化する方法はよく知られている。具体的には、タンパク質及びペプチドを、酵素的又は化学的に脱リン酸化することができる。これに関しては、例えば、米国特許第6355297号及び第5068118号、「Miller et al., J. Biol. Chem., 257: 6818-6824 (1982)」、「Jiang and Mine, J. Agric. Food Chem., 48: 990-994 (2000)」、及び実施例2を参照されたい。酵素的な脱リン酸化には、種々の脱リン酸化酵素(ホスファターゼ)のうちのいずれを用いてもよい。好適なホスファターゼは、酸性ホスファターゼ又はアルカリホスファターゼである。これらのホスファターゼは、非特異的なホスホモノエステラーゼであり、ほぼ全てのタンパク質及びペプチドの脱リン酸化に用いることができる。アルカリホスファターゼを用いるのが好ましく、大腸菌由来のアルカリホスファターゼを用いるのが最も好ましい。また、セリン/スレオニンホスファターゼ、チロシンホスファターゼ、チロシン/スレオニンホスファターゼ、及び、これらを組み合わせたものが用いられてもよい。好適なホスファターゼは、Sigma-Aldrich Co、Worthington Biochemical Corp、Takara Bio Inc、CHIMERx、及びPromegaなど多くの企業より販売されている。化学的な脱リン酸化では、アルカリpH環境下(好適には、pH約10〜12)で、所望のレベルの脱リン酸化が行われるのに十分な時間、タンパク質及びペプチドを加熱(好適には35℃〜70℃で)することで、リン酸基は切断される。これに関して、好適な条件が実施例2と、「Jiang and Mine, J. Agric. Food Chem., 48: 990-994 (2000)」とに示されている。
【0025】
脱リン酸化の前後における、タンパク質及びペプチドのリン酸化の程度を測定することができる。なお、適切な方法は当技術分野においてよく知られている(「Miller et al., J. Biol. Chem., 257: 6818-6824 (1982)」、及び実施例2を参照)。また、リン酸化レベルの測定に用いることができるキットも市販されている。市販されているキットには、例えば、PIERCE(Phosphoprptein Phosphate Estimation Kit、当該キットでは、セリン残基及びスレオニン残基のリン酸エステルをアルカリ加水分解し、その後、マラカイトグリーン及びモリブデン酸アルミニウムを用いて、リン酸の定量を行う)がある。さらに、適切な抗体(例えば、リン酸化されたセリン残基、スレオニン残基及びチロシン残基に特異的な抗体)を用いる免疫学的検定法を用いることができる。なお、上記のような抗体は、例えばZymed Laboratoriesなどから市販されている。
【0026】
本発明の実施に有用である具体的なタンパク質には、ホスビチン及びその断片が含まれる。ホスビチンは、卵黄タンパク質である。ニワトリのホスビチンには、109個のリン酸化部位が存在することが報告されており(Miller et al., J. Biol. Chem., 257: 6818-6824 (1982))、本発明での使用に非常に適している。ニワトリのホスビチンは、当技術分野において公知の方法(日本特許第3056500号など参照)により調製することができる。また、ニワトリのホスビチンは、US Biochemical Amersham及びSigma-Aldrichなどから市販されている。また、ニワトリのホスビチンを、上述の方法で脱リン酸化することができる。
【0027】
本発明での使用に適したその他のタンパク質には、カゼインが含まれる。全カゼイン、α−カゼイン、α−カゼインの種々のアイソフォームの1つ、β−カゼイン、γ−カゼイン、及び/又はκ−カゼイン、並びに/もしくは、上記いずれかのカゼインの断片を用いることができる。カゼインは、複数のリン酸化部位を有している。例えば、β−カゼインは5つのリン酸化部位を有している。全カゼイン、α−カゼイン、α−カゼインのアイソフォーム、β−カゼイン、γ−カゼイン、及びκ−カゼインは、市販品(Sigma-Aldrichなどから)が利用可能である。また、当技術分野において公知の方法により、これらカゼインを調製することも可能である(米国特許第5068118号、第5739407号、第5795611号、第5942274号、及び第6232094号、並びに、http://www.worthington-biochem.com/CASA参照)。リン酸化されていないという理由から、カゼインは、DNA組換え技術によりバクテリア中で生産することが好ましい。また、上述のように、ヒトの初乳由来のαS1カゼインは、本来、非リン酸化状態である。従って、本発明での使用に非常に好都合である。また、ヒトの初乳由来のαS1カゼインは、Sigma-Aldrichから購入することも可能である。必要であれば、上述のように、カゼインの脱リン酸化を行ってもよい(米国特許第6355297号及び第5068118号参照)。
【0028】
本発明での使用に適したその他のEPACには、血液タンパク質及びペプチドが含まれる。動物に投与されるタンパク質及び/又はペプチドが、処理される動物と同種の動物由来である場合、上記タンパク質及び/又はペプチドは、免疫を発生させるものであってはならない。従って、全身投与には、相同性のある血液タンパク質及びペプチドを用いることが好ましい。
【0029】
単一の、又は、混合された血液タンパク質及び/又はペプチドをEPACとして用いることができる。例えば、プールされた血漿又はブールされた血清サンプル中の全てのタンパク質及びペプチドを、脱リン酸化して、本発明の実施に用いることができる。また、1つ又はそれ以上の複数のリン酸化部位を有する個々の血漿タンパク質又はペプチドを、血漿又は血清から単離したり、DNA組換え技術を用いて製造したりして、本発明に用いることができる。
【0030】
ヒトのアルブミンのリン酸化が可能であることが知られている。しかしながら、リン酸化を行うためには、アルブミンのアセチル化を行う必要がある。ヒトのアルブミンにおいて、リン酸化部位は202番目のセリンであり、アセチル化部位は199番目のリジンであると考えられている。また、非アセチル化状態のアルブミンでは、正に荷電されたリジンの側鎖が、負に荷電されたセリンと相互作用し、セリンのリン酸化を阻害していると考えられている。リジンがアセチル化されると、その電荷が中和されて、セリンと相互作用しなくなり、セリンのリン酸化が可能となる。アセチル化されたヒトのアルブミンは、特にアスピリンを摂取しているヒトの血漿及び血清中に存在することが明らかにされている。また、上記のようなアルブミンを、プールされた血漿又は血清から単離し、脱リン酸化して、本発明の実施に用いることができる。また、アルブミンは、DNA組換え技術により生産され(リン酸化を受けないことから、バクテリア中で調製することが好ましい)、アセチル化が行われてもよい。タンパク質をアセチル化する方法は、当技術分野において公知である。例えば、(エステル分解酵素を含む)血漿を、1mMアスピリンと、37℃で1時間反応させることによって、アルブミンをアセチル化することができる。上記アセチル化されたアルブミンは、当技術分野において公知の方法を用いて、血漿から単離することができる。また、血清又はアルブミン(好適には、DNA組換え技術により生産されたアルブミン)を、エステル分解酵素存在下でアスピリンと共に反応させる、又は、アシラーゼ存在下でN−アセチルアスパルテートと共に反応させることによって、アルブミンのアセチル化を行ってもよい。また、無水酢酸を用いて、アルブミンのアセチル化を行うこともできる。当然ながら、アセチル化の代わりに、メチル化などのその他のアシル化を行ってもよい。
【0031】
また、アルブミンの199〜202番目のアミノ酸配列を含むペプチドを調製し、そのアセチル化を行うことも可能である。アルブミンの199〜202番目のアミノ酸配列は、リジン・システイン・アラニン・セリン(Lys Cys Ala Ser)である(配列番号1)。リジン残基とセリン残基との間のシステイン残基及びアラニン残基は、その他のアミノ酸に置換されてもよい。さらに、セリン残基は、スレオニン残基又はチロシン残基によって置換されてもよい。また、上記配列のいずれかの末端に、追加のアミノ酸が付加されてもよい。また、セリン残基とリジン残基との間にあるアミノ酸の数は、1〜3個で変化させることが可能であり、その配列は、1回又はそれ以上の繰り返し配列であってもよい。従って、本発明の実施に有用である別のペプチド配列は、リジン・アラニン・セリン・セリン・アラニン・リジン(Lys Ala Ser Ser Ala Lys)(配列番号2)である。なお、両方のリジン残基はアセチル化されている。EPACとして用いる場合、システイン及び/又はアラニンに置換されるアミノ酸及び/又はいずれかの末端に付加されるアミノ酸は、上記ペプチドが親水性となるように十分に荷電されたアミノ酸を含まなければならず、及び/又は、上記ペプチドが少なくとも20アミノ酸の長さとなるのに十分な数のアミノ酸を付加しなければならない。具体的には、そのようなペプチドは以下の配列とを有することが好ましい。すなわち、
(Xaa[Ac−Lys(XaaXaa(Xaa 又は、
(Xaa[Ac−Lys(XaaXaaXaa(XaaLys−Ac](Xaa
という配列であり、当該配列においては、
Acはアシル基であり、
Xaaはどのようなアミノ酸であってもよく、
Xaaはセリン、スレオニン、又はチロシンであり、
mは0〜10であり、
nは1〜3であり、
pは1〜5であり、さらに、
m、n、pは、全アミノ酸数が少なくとも約20になるように選択され、及び/又は、Xaaは、上記ペプチドが親水性となるように選択される。
【0032】
本発明を実施する際に好適に利用される、さらなるEPACには、既知のキナーゼの基質が含まれる。既に、上記のような基質は、たくさん知られており、その内の幾つかは、例えばSigma-Aldrich及びPromegaなどから市販されている。上述のように、PACは非特異的に作用して、用いることができるATP及びリン酸基を減少させる。従って、これら基質は、キナーゼ(不必要なリン酸化の増進の原因となっている、又はそれに関与しているキナーゼ)が同一であるかに関係なく、EPACとして用いることができる。
【0033】
本発明を実施する際に好適に用いることができるその他のEPACには、少なくとも1つのリン酸化を受けることができるアミノ酸を有する、合成タンパク質及びペプチドが含まれる。例えば、1つ又はそれ以上のセリン残基、スレオニン残基、及び/又はチロシン残基を含むタンパク質又はペプチドを用いることができる。セリンは、最も一般的なリン酸化されるアミノ酸であるために、上記タンパク質は、セリンのみを含有してもよい。しかしながら、上記タンパク質又はペプチドは、上記の3つのアミノ酸を全て含むことが好ましい。また、セリン残基、スレオニン残基、及び/又はチロシン残基は、1つ又はそれ以上のその他のアミノ酸により隔てられていることが好ましい。また、上述のように、セリンから1〜3アミノ酸以内の距離にリジンがある場合、このリジンはアセチル化されることが好ましい。また、上記タンパク質及びペプチドは、EPACである以上、少なくとも20以上のアミノ酸を含んでおり、及び/又は電荷(親水性など)を有していなければならない。また、セリン、スレオニン及び/又はチロシン以外の残りのアミノ酸のいくつかは、電荷を帯びたアミノ酸であることが好ましい。1つ又はそれ以上のリン酸化を受けることができるアミノ酸(好適には複数の上記のようなアミノ酸)を含む、タンパク質又はペプチドを用いてもよい。また、それぞれが1つのリン酸化されるアミノ酸を含むペプチドの混合物を用いてもよい。なお、本明細書において、「合成(synthetic)」とは、天然(naturally-occurring)ではない、ということを意味している。
【0034】
キナーゼは非常に種類が多様なために、1つ又はそれ以上のセリン残基、スレオニン残基、及び/又はチロシン残基を含むランダムな配列までもが、リン酸化されるということが予測される。しかしながら、好ましい実施形態においては、上記合成タンパク質又はペプチドは、1つ又はそれ以上の既知のリン酸化部位を含む。上述のように、セリン残基、スレオニン残基、及び/又はチロシン残基を含むリン酸化部位が1000以上知られている。これに関しては、「Kreegipuu et al. ,"PhosphoBase, a database of phosphorylation sites: release 2.0," Nucleic Acids Res., 27 (1): 237-239 (1999) 」、及び、http://www.cbs.etu.dk/database/PhosphoBase/などを参照されたい。また、「Aitken, Mol. Biotechnol., 12: 241-53 (1999)」も参照されたい。さらに、ランダムなペプチドライブラリーから、リン酸化を受けることができるペプチドを同定する方法も開発されている。これに関しては、「Wu et al., Biochemistry, 13: 14825-14833 (1994)」、及び、「Songyang et al., Curr. Biol., 4: 973-982 (1994)」を参照されたい。EPACは非特異的に作用することから、リン酸化部位を特定することはあまり重要ではない。複数のリン酸化部位が用いられる場合、それぞれのリン酸化部位は、他のリン酸化部位と同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0035】
2.細胞内リン酸受容体化合物
「細胞内」とは、リン酸化に関与する細胞内経路と相互作用するように、細胞内リン酸受容体化合物(IPAC)が十分に細胞内へと浸透(貫通)することを意味している。上記IPACは、細胞膜に浸透し、細胞質に到達することが好ましい。
【0036】
IPACは、リン酸化の基質であり、いったん細胞内に入ると、IPACは、細胞内キナーゼによりリン酸化される本来の基質と拮抗する。IPACのリン酸化は、細胞内タンパク質、ペプチド及びその他の化合物のリン酸化を阻害し、細胞内の情報伝達を阻害する。リン酸化が細胞の機能性において必須の役割を果たしている場合、IPACは、侵入した細胞に深刻な損傷を与える、又は上記細胞を死なせることが考えられる。従って、IPACは、癌など細胞死が望ましい、又は細胞死を黙認できる疾病及び病状の治療にのみ用いられるべきである。また、IPACは、以下に示されているように、細胞死が望ましい細胞にのみ侵入するように、ターゲティングされることが好ましい。全身投与される場合は、このターゲティング(targeting)が特に重要である。
【0037】
好適なIPACには、1つ又はそれ以上のリン酸化部位を有するペプチドが含まれる。上記ペプチドは、天然ペプチド、天然タンパク質の断片、及び、合成ペプチド(天然タンパク質及びペプチドの変異型及び部分的に合成されたもの、並びに、少なくとも1つのリン酸化可能なアミノ酸を含有する完全に合成されたタンパク質及びペプチドを含む)である。上記ペプチドは、そのサイズが小さいほど、細胞内部への浸透が容易となるため、好ましくは20アミノ酸以下、より好ましくは10アミノ酸以下、さらに好ましくは5アミノ酸以下の長さである。上記ペプチド及びその断片の細胞膜への浸透能を高めるために、上記ペプチドは疎水性であり、及び/又はアルギニンオリゴマーを含んでいることが好ましい(Rouhi, Chem. & Eng. News, 49-50 (January 15, 2001)参照)。上記アルギニンオリゴマーは、6〜9個のアルギニン残基を含んでいることが好ましい(Rouhi, Chem. & Eng. News, 49-50 (January 15, 2001)参照)。上記のペプチドが局所的に、又は経皮的に投与される場合、アルギニンオリゴマーを用いることが特に好ましい。上記のペプチドは合成されてもよく、必要であれば、上述のように脱リン酸化が行われてもよい。
【0038】
特に好適なIPACには、以下のような配列のペプチドが含まれている。すなわち、
(Xaa[Ac−Lys(XaaXaa(Xaa、又は
(Xaa[Ac−Lys(XaaXaaXaa(XaaLys−Ac](Xaa
という配列であって、当該配列においては、
Acはアシル基であり、
Xaaはどのようなアミノ酸であってもよく、
Xaaはセリン、スレオニン、又はチロシンであり、
mは0〜10であり、
nは1〜3であり、
pは1〜5であり、さらに、
m、n、pは、全アミノ酸数が約20以下になるように選択され、さらに、Xaaは、上記ペプチドが疎水性となるように選択される。
【0039】
本発明を実施する際に好適に利用される、さらなるIPACには、細胞に浸透できる既知のキナーゼの基質が含まれる。特に、疎水性で、約20個以下のアミノ酸を含むキナーゼが好適である。本発明を実施する際に好適に利用できるその他のIPACには、少なくとも1つのリン酸化を受けることができるアミノ酸を有する合成ペプチドが含まれる。例えば、1つ又はそれ以上のセリン残基、スレオニン残基、及び/又はチロシン残基を含むペプチドが用いることができる。セリンは、最も一般的なリン酸化されるアミノ酸であるために、上記ペプチドは、セリンのみを含有してもよい。しかしながら、上記ペプチドは、上記の3つのアミノ酸を全て含むことが好ましい。また、セリン残基、スレオニン残基、及び/又はチロシン残基は、1つ又はそれ以上のその他のアミノ酸により隔てられていることが好ましい。また、上記ペプチドはIPACである以上、約20個以下のアミノ酸を含み、疎水性でなければならない。従って、セリン、スレオニン及び/又はチロシン以外の残りのアミノ酸のいくつかは、非荷電のアミノ酸である必要がある。1つ又はそれ以上の、リン酸化を受けることができるアミノ酸(好適には複数の上記のようなアミノ酸)を含むペプチドを用いてもよい。また、それぞれが1つのリン酸化されるアミノ酸を含むペプチドの混合物を用いてもよい。
【0040】
キナーゼは非常に種類が多様なために、1つ又はそれ以上のセリン残基、スレオニン残基、及び/又はチロシン残基を含むランダムな配列までもが、リン酸化されるということが予測される。しかしながら、好ましい実施形態においては、上記合成ペプチドは、1つ又はそれ以上の既知のリン酸化部位を含む。上述のように、セリン残基、スレオニン残基、及び/又はチロシン残基を含むリン酸化部位が1000以上知られている。これに関しては、Kreegipuuらの「PhosphoBase, a database of phosphorylation sites: release 2.0," Nucleic Acids Res., 27(1): 237-239 (1999)」及びhttp://www.cbs.dtu.dk/databases/PhosphoBase/を参照されたい。また、「Aitken, Mol. Biotechnol., 12: 241-53(1999)」も参照にされたい。さらに、ランダムなペプチドライブラリーから、リン酸化を受けることができるペプチドを同定する方法も開発されている。これに関しては、「Wu et al., Biochemistry,13:14825-14833(1994)」、及び、「Songyang et al., Curr. Biol., 4:973-982(1994)」を参照されたい。IPACは非特異的に作用することから、リン酸化部位を特定することはあまり重要ではない。複数のリン酸化部位が用いられる場合、それぞれのリン酸化部位は、他のリン酸化部位と同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0041】
3.リン酸受容体化合物の標的
動物にPACを投与する場合、PACは、選択された細胞、組織、又は器官にターゲティングされる。PACのターゲティングは、標的細胞、標的組織又は標的器官にその効果を集中させ、有害な副作用が発生する可能性を減少させ、さらに、必要なPACの投与量を減少させる。また、IPACの場合、IPACが全身投与されるときには、ターゲティングされることが特に好ましい。また、ターゲティングすることで、IPACがその他の投与形態が使用される場合でも、不必要な細胞損傷又は細胞死を、減少又は防止することができる。
【0042】
本明細書において、「選択された」細胞、組織、及び器官とは、PACに影響を受けるように意図された細胞、組織、及び器官をいう。また、IPACの場合、「選択された」細胞、組織、及び器官とは、IPACによって、害されたり、損傷を与えられたり、破壊されたりする傾向にある細胞、組織、及び器官である。さらに、「選択された」細胞、組織、及び器官は、本明細書において、標的細胞、標的組織、及び標的器官を意味する時もある。
【0043】
選択された細胞、又は選択された組織もしくは器官に、治療用化合物をターゲティングする種々の方法は、当技術分野において公知である。細胞、組織、又は器官に、本発明のPACをターゲティングするために、そのような公知の方法を用いることができる。例えば、ターゲティング分子にPACを接合させてもよい。上記のターゲティング分子は、標的細胞、標的組織、又は標的器官との反応性があることが知られている特異的なリガンドである。例えば、受容体特異的なリガンド(例えばケモカイン又は増殖因子など)、又は、細胞、組織、もしくは器官の表面の抗原に特異的な抗体などが挙げられる。好適な抗体には、ポリクローナル抗体、オムニクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体(humanized antibody)、キメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fab発現ライブラリーより生産される断片、上記のもののいずれかのエピトープ結合性断片、及び、相補性決定領域(CDR)が含まれる。また、ターゲティング分子は、以下に述べるホーミング分子(homing molecule)の1つであってもよい。
【0044】
また、別の可能性として、多価抗体の使用が挙げられる。これに関しては、米国特許第5861156号にその詳細が記されており、参考として、上記特許文献の内容が本明細書に盛り込んである。例えば、PACに結合し、標的細胞、標的組織又は標的器官の細胞表面マーカーと反応性のある結合タンパク質に結合する多価抗体を用いることができる。PAC、結合タンパク質、及び多価抗体の3つが動物に投与されると、PACが多価抗体と結合し、その後、多価抗体が結合タンパク質へと結合し、そして、その結合タンパク質が、標的細胞の細胞表面マーカーへと結合する。上記の結合タンパク質は、単一特異的な結合タンパク質であることが好ましい。例えば、Fab及びF(ab’)断片、Fab融合タンパク質、単鎖Fvタンパク質(単鎖抗体)、単鎖Fv融合タンパク質、キメラ抗体タンパク質(例えば、形質移入腫瘍細胞(transfectoma cell)から得られる組換え抗体タンパク質)、キメラ単鎖タンパク質、及び単鎖T細胞受容体などの他の単鎖融合Fvアナログタンパク質などが挙げられる。米国特許第5861156号は、上記のような単一特異的な結合タンパク質は、固相腫瘍に浸透でき、標的部位に止まらなかったものは、直ぐに循環系からの排出が可能であるという独特の性質を有しており、このことは腫瘍の治療に非常に適したものであると報告している。上記多価抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヘテロ型二重特異性抗体、これらいずれかの抗体の断片、キメラ抗体、二重特異性単鎖抗体、及びホモ二量体IgG分子などのいかなる多価抗体であってもよい。本発明の別の実施形態においては、結合タンパク質の混合物が用いられる。なお、この混合物に含まれるそれぞれの結合タンパク質は、標的細胞上の異なる表面マーカーに特異的であり、かつ、多価抗体によって認識される領域(moiety)(ペプチドタグなど)によって標識されている。そのため、標的細胞の複数の部位へのターゲティングが可能である。上記多価抗体は、上記領域(moiety)だけでなく、PACも認識する。このように、それぞれのタイプの標的細胞はそれ自身、独自の細胞表面マーカー特性(profile)を有しているために、1つの細胞表面マーカーに特異的な結合タンパク質を単体で用いるよりも、より高い特異性及び選択性でもって、上記PACを的細胞にターゲットさせることができる。
【0045】
生体内パンニング法(in vivo panning technique)を用いることで、特定の細胞、組織又は器官に誘導される(home)タンパク質、ペプチド、及びその他の分子を同定することができる。これに関しては、米国特許第6610651号、第5622699号、及び第6296832号を参照されたい。また、上記特許文献の内容を、参考として、本明細書に盛り込んである。
【0046】
健常状態にある細胞、組織、もしくは器官、炎症などの病状にある細胞、組織、もしくは器官、又は、組織もしくは器官において癌などの病巣を有する部分へと誘導される分子を同定することができる。生体内パンニング法には、被検体へと分子ライブラリーを投与する(投与経路は問わない)工程と、被検体から組織又は器官のサンプルを収集する工程と、当技術分野においてよく知られている種々の方法を用いて上記ホーミング分子を特定する工程とが含まれている。通常は、選択された組織又は器官は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの方法を用いて処理される。HPLCを用いることで、複雑な混合物から、特定の範囲内の分子量、極性、又はそれに類するものを有する分子の濃縮分画を得ることができる。その後、細胞、組織、又は器官に誘導される分子(ホーミング分子)を同定するために、例えば、HPLC、質量分析、及びガスクロマトグラフィーなどを用いて、分子の濃縮分画はさらに分析される。上記ライブラリーは、天然の分子、及び/又は従来公知の方法により作られた非天然分子より構成されてもよい。これに関しては、米国特許第6610651号を参照されたい。これらのホーミング分子は、PACが望ましい標的細胞、標的組織、又は標的器官にターゲティングされるように、PACと接合することができる。また、DNA組換え技術を利用して、ホーミングタンパク質又はペプチドとPACとの融合タンパク質として発現させることができる。また、ホーミング分子は、標的細胞、標的組織、及び標的器官に遺伝子を運搬するために利用することができる。この場合、PAC(IPAC又はEPAC)をコードする遺伝子が、ホーミング分子を利用して、標的細胞、標的組織、又は標的器官へと運搬されて、そこで、当該遺伝子を発現させる。
【0047】
B.治療方法及び医薬品
本発明により、リン酸化の増進に起因する疾病及び病状を治療する方法が提供される。上記のようなあらゆる疾病及び病状の治療に、EPACを用いることができる。IPACは、癌のような細胞死が望ましい、又は細胞死を黙認できる疾病及び病状の治療にのみ用いられるべきである。また、本発明により、PACを含む医薬品が提供される。
【0048】
リン酸化の増進に起因する疾病及び病状には、炎症、炎症性の疾病及び病状、癌、その他の増殖性疾患、自己免疫疾患、アレルギー反応、並びに他の免疫異常が含まれる。
【0049】
炎症は、さまざまな損傷、感染、及びストレスに身体が応答する、一連の現象を通じて発生するものである。炎症の特徴とされる多くの症状は、細胞及び分子レベルで情報伝達が活発化することに関係している。細胞の情報伝達において、重要な役割を果たしているものの1つは、リン酸化反応である。酵素、タンパク質、ペプチド、及びその他の分子は、リン酸化又は脱リン酸化経路によって活性化される。多くの場合、活性化にリン酸化反応が関与しているとき、リン酸化の後に、反対の脱リン酸化段階がおこり、持続的な刺激に対抗するように、パルスシグナルが伝達される。通常は、ホスホリラーゼ/キナーゼとホスファターゼとの間にはバランスが存在している。分子レベルの視点から、炎症とは、キナーゼが偏って存在するアンバランスな状態であると見なすことができる。炎症には、細胞内部でのキナーゼの発現及び、細胞外膜上のキナーゼの外面化又は活性化、さらに、時としては脱リン酸化酵素の阻害が関与する。その結果、キナーゼの活性が上昇することになる。
【0050】
炎症応答は、ストレス応答、感染症の回避、及び傷の治癒に非常に重要なものである。しかし、炎症そのものが傷害を与えている可能性もある。実際、炎症は、多くの疾病及び病状の発病過程において重要な構成要素である。さらに、癌のような多くの疾病において炎症が見られるということは、芳しくない徴候を示すものである。最終的には、重度の炎症は、適切に治療されなければ、命に関わる全身性の反応を引き起こす危険性がある。
【0051】
上述のように、EPACは、膜結合性及び/又は循環/可溶性キナーゼによるリン酸化(炎症を深刻化させるリン酸化)の基質である。EPACがリン酸化されると、リン酸化の結果として炎症の進行に関与する、細胞外及び細胞内の、タンパク質、ペプチド、及びその他の化合物のリン酸化が減退又は阻害される。具体的には、膜結合性キナーゼによるEPACのリン酸化は、細胞外から細胞内部への情報伝達を減退させたり、又は阻害したりする。これらのことから、EPACは炎症の進行に干渉し、炎症を抑制することができる。
【0052】
本発明のEPACを用いて治療することができる具体的な炎症性疾病及び病状には、急性呼吸窮促迫症候群、アレルギー、関節炎、喘息、自己免疫疾患(多発性硬化症など)、気管支炎、癌、クローン病、嚢胞性繊維症、肺気腫、心内膜炎、胃炎、感染症(細菌性、ウイルス性、酵母性、真菌性、寄生性)、炎症性腸疾患、炎症性皮膚障害、虚血再潅流(ischemia reperfusion)、多臓器機能障害、多臓器不全、腎臓炎、神経変性疾患(アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、老人性痴呆症など)、膵炎、乾癬、ウイルス性呼吸器感染症、敗血症、虚脱、全身性炎症反応症候群、心的外傷、潰瘍性大腸炎、並びに、その他の炎症性疾病、病状、及び症候群が含まれる。
【0053】
癌の治療には、EPAC及び/又はIPACを用いることができる。上述のように、IPACは、癌細胞にのみ浸透するように、ターゲティングされることが好ましい。本発明のPACを利用して治療を行うことができる具体的な癌には、悪性腫瘍、肉腫、脳腫瘍、頭癌及び頚部癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、結腸癌、膵臓癌、膀胱癌、甲状腺癌、肝癌、肺癌、骨の癌、皮膚癌、血液の癌、リンパ腫、並びに白血病が含まれる。
【0054】
その他の増殖性疾患には、血管増殖性疾患、メサンギウム細胞増殖疾患、及び線維性疾患が含まれる。血管増殖性疾患は血管原性の疾病及び病状を含んでいる。血管原性の疾病及び病状とは、血管形成に関与するか、血管形成に起因するか、血管形成により悪化するか、又は、血管形成に依存する疾病及び病状である。血管形成とは、身体内に新しい血管を形成する過程である。本発明に基づいて、治療することのできる具体的な血管原性疾病及び病状には、新生物疾患(例えば、腫瘍(膀胱、脳、乳房、頚、結腸、直腸、腎臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、胃、及び子宮の腫瘍など)及び腫瘍転移など)、良性腫瘍(血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、及び発熱性肉芽腫など)、肥大(甲状腺ホルモンによって引き起こされる心肥大など)、結合組織異常(慢性関節リウマチ及び粥状硬化症など)、乾癬、角膜血管新生症(ocular angiogenic diseases)(糖尿病性網膜症、未熟網膜症、網膜黄斑部変性、角膜移植片拒絶反応、新生血管緑内障、水晶体後方線維増殖症、及び皮膚潮紅など)、心臓血管疾患、脳血管疾患、子宮内膜症、ポリープ症、肥満症、糖尿病関連疾患、血友病性間接症(hemophiliac joints)、及び、免疫不全(慢性炎症、及び自己免疫など)が含まれる。上述のように、新生物疾患の治療に、EPAC及び/又はIPACを用いることができる。その他の血管原性疾病及び病状は、EPACを用いて治療される。また、本発明のEPACは、胚の着床に必要である血管新生を阻害することができる。従って、本発明は受胎調節の方法を提供するものでもある。
【0055】
メサンギウム細胞増殖性疾患とは、メサンギウム細胞の異常な増殖によって引き起こされる疾患のことを指している。メサンギウム細胞増殖性疾患には、例えば、腎炎、糖尿病性腎症、悪性腎硬化、血栓性細小血管障害症候群、及び糸球体症などの腎臓病が含まれている。悪性のメサンギウム細胞増殖性疾患は、EPAC及び/又はIPACを用いて治療できる。また、上記のうち、残りの疾患は、EPACを用いて治療される。
【0056】
線維性疾患とは、細胞外に細胞間質が異常形成を指している。線維性疾患の例としては、肝硬変、肺線維症、及び粥状動脈硬化症が挙げられる。線維性疾患は、EPACを用いて治療される。
【0057】
その他の増殖性疾患には、例えば、乾癬、皮膚癌、及び表皮過剰増殖などの過剰増殖性皮膚疾患が含まれる。乾癬は、炎症、表皮の過剰増殖、及び細胞分化の減少といった症状によって特徴付けられる。皮膚癌は、EPAC及び/又はIPACを用いて治療を行うことができる。また、上記のうち、残りの疾患は、EPACを用いて治療される。
【0058】
本発明のEPACを用いて治療できる自己免疫性疾患には、多発性硬化症が含まれる。本発明のEPACを用いて治療できるその他の免疫性疾患には、移植片拒絶反応が含まれる。
【0059】
本発明の好適な実施形態において、PACは、皮膚の疾病及び病状の治療に利用される。本発明のEPACを用いて治療できる皮膚の疾病及び病状には、皮膚炎、湿疹、角化症、弾性繊維症、乾癬、感染症(麻疹及び水痘など)、ニキビ、火傷、日光皮膚炎、アレルギー反応(発疹及び蕁麻疹など)、及び、その他のあらゆる炎症性の疾病又は病状が含まれる。上述のように、皮膚癌の治療は、EPAC又はIPACの何れか一方、又はその両方を用いて行われる。
【0060】
本発明の別の好適な実施形態では、口の疾病及び病状の治療にPACが用いられる。本発明のEPACを用いて治療できる口の疾病及び病状には、白板病、扁平苔癬(lichen plannus)、感染症、及び他の炎症性の疾病及び病状が含まれる。上述のように、口腔癌の治療は、EPAC又はIPACの何れか一方、又はその両方を用いて行われる。歯肉炎や歯周病のようなその他多くの口の疾病及び病状は、歯科医によって、又は歯科医の指示のもので治療が行われるであろう。なお、これら疾病及び病状の治療に関しては、以降の口腔ケア製品及び方法の項で、その詳細を説明する。
【0061】
本発明のさらに別の好適な実施形態において、EPACは、粘膜の疾病及び病状、又は粘膜に関連する疾病及び病状の治療に利用される。上記のような疾病及び病状には、アレルギー、感染症、並びに炎症性の疾病及び病状が含まれる。
【0062】
リン酸化の増進に起因する疾病及び病状を患っている動物を治療するために、効果的な分量のPAC又はPACの混合物が、その動物に投与される。上述のように、前出のあらゆる疾病及び病状の治療に、EPACを用いることができる。IPACは、癌のような細胞死が望ましい、又は細胞死を黙認できる疾病及び病状の治療にのみ用いられるべきである。上記動物は、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、又はヒトなどの哺乳動物であることが好ましく、また、上記動物はヒトであることが最も好ましい。
【0063】
種々のPACの効果的な投薬形態、投与方法、及び投与量は、経験的に決定されてもよい。なお、上記のように決定を行うことは、当技術分野の技能の範囲内である。また、上記の投与量は、用いるPACの種類;PACが予防的に投与されるのか、もしくは現在の疾病及び病状を治療するために投与されるのかどうか;治療される具体的な疾病及び病状;疾病及び病状の重症度;投与経路;PACの投与に用いられる装置及び/又は組成物の種類;PACの排出速度;治療の継続期間;動物に投与される他に薬剤との同一性;動物の年齢、大きさ、及び種類;並びに、その他の医療分野及び獣医分野において知られている上記のような因子によって変化させるものであることは、当業者であれば理解できることである。一般的に、本発明のPACの好適な1日の投与量は、その化合物が治療的効果を発揮する最低有効量となっている。また、必要に応じて、2回、3回、4回、5回、6回、又はそれ以上の回数に分けて、1日を通して適切な間隔で、準投与量(sub doses)ずつ投与することで、効果的な1日の投与量が投与されてもよい。また、PACの投与は、好適な反応が得られるまで継続される必要がある。
【0064】
リン酸化の増進に起因する疾病及び病状の治療を行うために、本発明のPACは、いずれの適切な投与経路から、動物に投与されてもよい。上記の適切な投与経路には、経口、経鼻、経直腸粘膜、経膣、非経口的(例えば静脈内、脊髄内、腹膜内、皮下、又は筋肉内注射など)、大槽内、経皮的、経粘膜的、脳内、及び局所的な投与経路が含まれる。好ましい投与経路は、局所的、経口的、及び局部的な投与経路である。局部的投与の例には、脳内への投与、腫瘍又は癌性病巣への投与、眼球内投与、病巣への投与、経鼻腔投与、経膣投与、経肛門投与、肺への投与、胃腸管内への投与、及び口内への投与が含まれる。癌を治療するためには、IPACを全身的に投与せねばならないことがある。上述のように、IPACを全身的に投与する時は、IPACが選択された細胞、組織、又は器官のみに(又は、それらに優先的に)、浸透するようにターゲティングさせることが非常に好ましい。
【0065】
本発明のPACを単体で投与することも可能であるが、薬学的な製剤形態(pharmaceutical formulation)(組成物)として投与されることが好ましい。本発明の薬学組成物は、1つ又はそれ以上の薬学的に許容可能なキャリアと、随意的なその他の化合物、薬剤、又はその他の材料との混合物中に、有効成分として、PAC又はPACの混合物を含むものである。それぞれのキャリアは、上記組成物のその他の内容物と適合性があり、動物に対して有毒性でないという意味で、「許容可能」でなくてはならない。薬学的に許容可能なキャリアは、当技術分野においてよく知られている。選択された投与経路に関係なく、本発明のPACは、当業者に知られている一般的な方法により、薬学的に許容可能な投薬形態へと調合される(Remington's Pharnmaceutical Sciencesなどを参照)。
【0066】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル剤、カシェ剤、丸薬、錠剤、粉末、又は顆粒剤の形状である。また、水性もしくは非水性の液体の溶液又は懸濁液;水中油滴もしくは油中水滴の乳濁液;エリキシル剤もしくはシロップ剤;トローチ剤(ゼラチン及びグリセリン、又は、スクロース及びアカシアゴムなどの不活性なベースを用いたもの);又はその他の形態であってもよい。これらの形態のものは、それぞれ、有効成分として、所定の分量の本発明の化合物又は化合物群を含有する。また、本発明の化合物又は化合物群は、巨丸剤、舐剤、又はペーストとして、投与されてもよい。
【0067】
本発明の、経口投与に用いられる固体の投薬形態(カプセル、錠剤、丸薬、糖衣剤、粉末、顆粒剤など)では、有効成分(PAC又はPACの混合物など)は、1つ又はそれ以上の薬学的に許容可能なキャリアと混合される。なお、上記のキャリアには、クエン酸ナトリウム又はリン酸2カルシウム、及び/又は、以下から任意のものが含まれる。すなわち、
(1)デンプン、乳糖、ショ糖、グルコース、マンニトール、及び/又はケイ酸などの賦形剤又は増量剤、
(2)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、及び/又はアカシアゴムなどの結合剤、
(3)グリセロールなどの湿潤剤、
(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカのデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ソーダなどの崩壊剤(disintegrating agent)、
(5)パラフィンなどの溶液緩染剤(solution retarding agents)、
(6)第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、
(7)セチルアルコール及びグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤、
(8)カオリンやベントナイト粘土などの吸収剤、
(9)滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物などの潤滑剤、並びに、
(10)着色剤から任意のものが含まれる。
【0068】
カプセル、錠剤、及び丸薬の場合、薬学組成物は、さらに緩衝剤を含んでいてもよい。同じタイプの固体成分は、高分子のポリエチレングリコール及びそのようなものと同様に、乳糖(lactose)又は乳糖(milk sugar)のような賦形剤を用いるゼラチンが充填された軟カプセル及び硬カプセルに充填剤として使用されてもよい。
【0069】
錠剤は、随意的に1つ又はそれ以上の副成分とともに、圧縮又は成形して生産されてもよい。圧縮錠は、結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性な希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、澱粉グリコール酸ナトリウム(sodium starch glycolate)又は架橋したカルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、界面活性剤、又は分散剤を利用して調製されてもよい。成形された錠剤(molded tablets)は、不活性な希釈液で湿潤された粉末状の化合物の混合物を、適切な機械で成形することにより生産される。
【0070】
本発明の薬学組成物の錠剤及びその他固体の投薬形態(糖衣剤、カプセル、丸薬、及び顆粒剤など)は、随意的に、製剤分野でよく知られた腸溶コーティングやその他のコーティングなどのコーティングや外皮を備えていてもよい。これらコーティングを形成することで、例えば、好ましい放出プロフィールを得られるように割合を変化させた、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソーム、及び/又はミクロスフェアを使って、内部の有効成分の放出を遅延又は制御するように、製剤することができる。これらは、例えば、細菌捕獲フィルターでろ過することにより、滅菌されてもよい。また、これらの組成物は、随意的に、乳濁剤を含んでいてもよい。また、これら組成物は、胃腸管の特定の部位でのみ、又は特定の部位で優先的に、有効成分を、随意的に遅発性な様式で、放出する組成となっていてもよい。使用が可能な包埋組成物(embedding compositions)の例としては、ポリマー性の物質やワックスが含まれている。また、有効成分は、マイクロカプセルに入れられた形態であってもよい。
【0071】
本発明の化合物を経口投与するために用いられる液体の投薬形態には、薬学的に許容可能な乳濁液、微細乳濁液(microemulsion)、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシル剤が含まれる。液体の投薬形態は、有効成分に加えて、当技術分野で一般に用いられる不活性な希釈液を含んでいてもよい。上記の希釈液の例としては、水やその他の溶媒、及びエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に綿実油、ラッカセイ油、とうもろこし油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及び胡麻油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物のような可溶化剤及び乳化剤が挙げられる。
【0072】
不活性な希釈液の他にも、上記の経口投与される組成物には、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤、芳香剤、着色剤、賦香剤、保存剤などの補助物質を含有させることができる。活性化合物に加えて、懸濁液には、懸濁剤として、例えば、エトキシレート化されたイソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、ソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、トラガント、及びそれらの混合物を含有させることができる。
【0073】
結腸又は膣から投与される本発明の薬学的組成物の製剤形態は、座薬であってもよい。この座薬は、1つ又はそれ以上の本発明の化合物と、1つ又はそれ以上の適した非刺激性の賦形剤又はキャリアとを混合することにより調製される。なお、適した非刺激性の賦形剤又はキャリアとしては、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、座剤ワックス又はサリチル酸エステルが挙げられる。これにより、上記座薬は、室温では固体であるが、体温では液体となるため、直腸又は膣腔で溶解し、有効成分を放出することができる。結腸又は膣からの投与に適した本発明の薬学的組成物の製剤形態には、使用に適切であることが当技術分野で公知であるキャリアを含有している腟坐剤、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡又はスプレー製剤が含まれる。
【0074】
本発明の化合物の局所的、経皮的、又は経粘膜的投与の投薬形態には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、滴下液、及び吸入剤が含まれる。有効成分は、滅菌状態で、薬学的に許容可能なキャリアと混合されてもよい。また、あらゆる緩衝液、もしくは必要であれば推進剤(propellant)と混合されてもよい。
【0075】
軟膏剤、ペースト、クリーム及びゲルは、本発明の化合物又は化合物群の他に、動物性脂肪及び植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、でんぷん、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、滑石、酸化亜鉛、又はこれらの混合物のような賦形剤を含んでいてもよい。
【0076】
粉末又はスプレーは、本発明の化合物又は化合物群の他に、乳糖、滑石、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末、又はこれら物質の混合物のような賦形剤を含んでいてもよい。さらに、スプレーは、クロロフルオロ炭化水素のような伝統的な(customary)推進剤、及びブタンやプロパンのような揮発性の未置換炭化水素を含んでいてもよい。
【0077】
上記有効成分(本発明のPAC又はPACの混合物)は、貼付剤などの一般的な経皮的ドラッグ・デリバリー・システム(薬剤送達システム)を用いて、皮膚を通じて送達されてもよい。上記貼付剤において、上記有効成分は、通常、皮膚に貼りつけるための薬剤送達デバイス(device)として機能する積層構造内に含有される。上記のような構造において、通常、上部支援層(backing layer)の下部にある層、又は「貯留層(reservoir)」に、有効成分が含まれる。上記積層されたデバイスは、単一の貯留層を含んでいても、複数の貯留層を含んでいてもよい。本発明のある実施形態においては、上記貯留層は、薬学的に許容可能なコンタクト接着物質(contact adhesive)の重合体マトリックスを含んでいる。上記コンタクト接着物質は、上記薬剤の送達中に、上記送達システムを皮膚上に貼りつけて固定する役割を果たす。上記好適な皮膚コンタクト接着物質の例としては、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、ポリウレタンなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、薬剤を含む貯留層と皮膚コンタクト接着物質とは、それぞれが隔てられた別々の層であってもよい。この際、貯留層の下に接着層があり、上記貯留層は、上述のような重合体マトリックスか、もしくは、液体状又はヒドロゲル状の貯留層の何れかの形態であってもよいし、その他の形態であってもよい。
【0078】
上記デバイスの上面としての役割を果たす、この積層構造(laminates)の支援層(backing layer)は、積層構造の主要な構造成分として機能し、非常に柔軟性のある上記デバイスを提供するものである。上記支援層の材料として選択される物質は、有効成分及び含有されているその他のいかなる物質に本質的に不浸透性であるように、選択されなければならない。上記支援層は、薬剤送達中に皮膚を水和させることが好ましいかどうかに応じて、閉塞性又は非閉塞性のどちらかとする。上記支援層は、柔軟性のあるエラストマー物質のシート又はフィルムよりなることが好ましい。上記支援層に好適に使用されるポリマーの例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリエステルなどが挙げられる。
【0079】
保存中及び使用前に、上記の積層構造は、剥離裏地(release liner)を有している。用いる直前に、薬剤貯留層、又は、これとは別のコンタクト接着層の基底面が露出されるように、上記剥離裏地は上記デバイスから剥がされる。その結果、上記デバイスを皮膚に貼りつけることが可能となる。上記剥離裏地は、薬剤/溶剤(vehicle)に不浸透性の物質から作られている必要がある。
【0080】
経皮的な薬剤送達デバイスは、当技術分野で知られている従来技術を利用して作ることができる。上記従来技術としては、例えば、剥離裏地を張り合わせる前に、粘着剤、有効成分、及び溶剤の液状混合物を、上記支援層の上に注ぐ(cast)方法が挙げられる。同様に、上記付着性の液状混合物は、支援層が張り合わせられる前に、剥離裏地の上に注いでもよい。また、薬剤貯留層は、有効成分又は賦形剤を含まない状態で調製され、その後、薬剤/溶剤の混合物に「浸す(soak)」ことで、これら物質が取り込まれてもよい。
【0081】
上記の積層経皮的薬剤送達システムは、さらに、皮膚浸透増強剤を含んでいてもよい。すなわち、幾つかの有効成分の本来の皮膚浸透性は、とても低いので、傷のない(unbroken)皮膚の適度な大きさの領域を通して、治療レベルの薬剤が浸透することができない。従って、上記のような薬剤と共に、皮膚浸透増強剤を共投与する必要がある。好適な増強剤は当技術分野においてよく知られている。
【0082】
本発明の薬学組成物は、鼻エアロゾール又は鼻吸入により投与することができる。上記のような組成物は、製剤分野において公知の技法を用いて調製される。また、上記組成物は、生理食塩水に、ベンジルアルコール又はその他の好適な保存剤、生体利用効率を高める吸収促進剤、フッ化炭素又は窒素などの推進剤、及び/又はその他の従来公知の溶解剤又は分散剤を含ませた溶液として調製することができる。
【0083】
局所的薬剤送達に好適な製剤形態は、軟膏剤及びクリームである。軟膏剤は、一般的に、ワセリンやその他の石油誘導体をベースとする半固体の製剤である。選択された有効成分を含有するクリームは、当技術分野で知られているように、粘性液又は半固形乳剤であり、水中油滴(oil-in-water)又は油中水滴(water-in-oil)のいずれかである。クリームベースは水で洗い落とせる(water-washable)ものであり、油相、乳化剤、及び水相を含む。上記油相は、「内」相と呼ばれることも有り、一般的に、ワセリン、及び、セチルアルコール又はステアリルアルコールなどの脂肪アルコールが含まれる。上記水相は、通常、油相の容積を超えて存在しており(必ずしもそうである必要はない)、一般的に、湿潤剤が含まれる。クリーム製剤中の乳化剤は、一般的に、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、又は両性の界面活性剤である。使用される特定の軟膏剤又はクリームベースは、当技術分野に熟達した当業者によく認識されているように、最適の薬剤送達を実現するものである。その他のキャリア又は溶剤が用いられる場合、軟膏剤のベースは、不活性で、安定で、非刺激性でかつ非増感性でなければならない。
【0084】
口腔投与に用いられる製剤形態には、錠剤、トローチ剤、ゲルなどが含まれる。また、当業者に知られている経皮的送達システムを利用して、口腔投与が行われてもよい。
【0085】
非経口的投与に適した本発明の薬学組成物は、1つ又はそれ以上の本発明の化合物と、薬学的に許容可能な無菌等張水もしくは非水性溶液、分散液、懸濁液もしくは乳濁液、又は使用直前に無菌の注射可能溶液もしくは分散液に再構成される無菌粉末のうちの1つ又はそれ以上とを組み合わせたものを含む。また、上記組成物には、酸化防止剤、緩衝液、所定の受容動物の血液と等張な製剤とするための溶質、又は懸濁剤もしくは濃化剤を含有させることができる。
【0086】
本発明の薬学組成物に用いる水性又は非水性のキャリアの例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)及びこれらの好適な混合物、オリーブ油などの植物油、並びにオレイン酸エチルなどの注射可能な(injectable)有機エステルが含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被膜剤を用いることによって;分散液の場合、所望の粒子サイズを維持することによって;及び、界面活性剤を用いることによって維持される。
【0087】
これら組成物は、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤などの補助剤を含有することができる。また、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤が、上記組成物に含まれることが好ましい。さらに、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの吸収を遅らせる物質を含有させることによって、注射可能な製剤形態の吸収作用を遅延させることができる。
【0088】
場合によっては、薬剤の効果を長続きさせるために、皮下注射又は筋肉内注射された薬剤の吸収を遅らせることが好ましい。この吸収の遅延は、水への溶解度が低い結晶性物質又は非晶性物質の懸濁液を用いることで達成される。この場合、薬剤の吸収速度は、これら物質の溶解速度に依存し、また、上記溶解速度は、結晶のサイズ及び結晶形態に依存する。さらに、非経口的に投与された薬剤の吸収の遅延は、油性溶剤に薬剤を溶解又は懸濁することによっても達成される。
【0089】
注射可能な持続性製剤形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマーの中に、薬剤のマイクロカプセル上のマトリックスを形成することによって作られる。ポリマーに対する薬剤の割合、及び用いる特定のポリマーの性質により、薬剤の放出速度を調節することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルソエステル)及びポリ(無水物)が含まれる。また、注射可能な持続性製剤形態は、身体組織に適合性であるリポソーム又はミクロエマルジョンに、薬剤を封入することによっても調製される。注射可能物質は、例えば、細菌捕獲フィルターでろ過することによって滅菌することができる。
【0090】
上記製剤は、投薬1回分、又は複数回分をシールした容器、例えばアンプル及びバイアルに入れられていてもよい。また、上記製剤は、凍結乾燥されて保存されてもよい。上記凍結乾燥された製剤は、使用直前に、例えば注射用の水などの、滅菌された液体キャリアを加えるだけで、これを用いることができる。即席の注射溶液及び懸濁液は、上述のような滅菌された粉末、顆粒剤、及び錠剤から調製されてもよい。
【0091】
本発明のPACは、単独で投与されても、1つ又はそれ以上薬剤、化合物、又はその他の物質と組み合わせて投与されてもよい。例えば、EPACは、1つ又はそれ以上の付加的な抗炎症性化合物と組み合わせて投与されてもよい。上記付加的な抗炎症性化合物には、ステロイド、非ステロイド系抗炎症性化合物(アスピリン、イブプロフェンなど)、並びに、米国特許第09/678202号、第09/922234号、及び第10/186168号、国際特許WO01/25265号、WO02/11676号、及びWO02/64620号に示されている抗炎症性化合物が含まれる。なお、これらの特許文献は、参考として本明細書にその内容が盛り込まれている。
【0092】
C.摘出された細胞、組織及び器官
本発明のEPACは、動物から取り出された細胞、組織又は器官におけるリン酸化の増進を阻害するために用いることができる。炎症のために、リン酸化の増進が、細胞、組織、又は器官で見出されることがある。組織又は器官におけるリン酸化の増進を阻害するために、上記組織又は器官を、本発明のEPAC又はEPACの混合物を効果的な分量含んでいる溶液に接触させる。上記組織又は器官と上記溶液とを接触させる方法としては、(例えば、上記組織又は器官を溶液中に配置する方法、及び/又は、上記溶液で器官(腎臓など)を満たす方法を用いることができる。上記の溶液に加えられるEPACの効果的な分量は、経験的に決定することができる。なお、分量を経験的に決定することは当技術分野における技能の範疇内である。摘出された組織又は器官は、その後、受容動物への組織移植、又は研究用途(灌流された肝臓を薬剤の選別に用いることなど)に用いることができる。本発明のEPACは、単独で用いられても、その他の化合物、薬剤、又は物質と組み合わせて用いられてもよい。
【0093】
組織又は器官と共に用いるのに適した多くの溶液が知られているが、それらの溶液において、本発明のEPAC又はEPACの混合物を用いることができる。上記溶液に関しては、「Hauet et al., J.Pharmacol. Exp. Ther., 297,946-953 (2001)」、「Hauet et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 292, 254-260 (2000)」、「Dunphy et al., Am. J. Physiol., 276, H1591-H1598 (1999)」、「Muhlbacher et al., Transplant Proc., 31,2069-2070 (1999)」、「Watts et al., J. Mol. Cell. Cardiol., 31,1653-1666 (1999)」、「Suzer et al., Pharmacol. Res., 37,97-101 (1998)」、「Collins et al., Kidney Int'l, 42, Suppl. 38, S-197-S-202 (1992)」、「Paller, Ren. Fail., 14,257-260 (1992)」、「Baron et al., J. Surg. Res., 51,60-65 (1991)」、「Hisatomi et al., Transplantation, 52,754-755 (1991)」、「Belzer et al., Transplantation, 45,673-76 (1988)」、米国特許第4798824号、第4873230号、第4879283号、第5514536号、第5710172号、及び、国際特許第WO98/35551号を参照されたい(これら全ての文献は、参考として本明細書中にその内容が盛り込まれている)。
【0094】
例えば、心臓の洗浄及び低温保存に用いられる溶液は、CelsioTM溶液(SangStat Medical Corp(Fremont, CA)より購入可能)である。CelsioTM溶液は、以下の表Aのものを含んでいる。
【0095】
【表1】

【0096】
一般に容認された腎臓の保存のための標準溶液は、University Of Wisconsin溶液(ViaSpan(登録商標)という商品名で、Barr Laboratoriesから購入可能)である。この溶液は、以下のものを含んでいる。
【0097】
【表2】

【0098】
本発明の、EPAC又はEPACの混合物は、これら2つの溶液のいずれか、これら溶液を改変した溶液、又は、当技術分野で公知もしくは将来開発されるであろう多数の溶液の内の1つにおいて使用されてもよい。EPACは、溶液に含まれていても、別々に供給(例えば、凍結乾燥した形態で)され、使用時に添加されてもよい。
【0099】
動物から単離された細胞は、本発明のEPAC又はEPACの混合物を効果的な分量含む培地中で保存又は培養されてもよい。多くの好適な培地が知られている。上記培地に含まれるEPACの効果的な分量は、経験的に決定されてもよい。上記分量を経験的に決定することは、当技術分野における技能の範疇内である。EPACは、培地に含まれていても、別々に供給(例えば、凍結乾燥した形態で)され、使用時に添加されてもよい。上記の細胞は、その必要性に応じて(例えば、遺伝子治療のため)、受容動物に投与されても、研究目的に使用されてもよい。
【0100】
さらに、本発明は、動物から摘出された細胞、組織、又は器官内におけるリン酸化の増進を阻害するキットを提供する。上記キットは、試薬が入った1つ又はそれ以上の容器、及び、摘出された細胞、組織、又は器官の保存に有用なその他のものがパッケージされた組合せ物である。また、上記キットには、1つ又はそれ以上の本発明のEPACが入った容器が含まれている。好適な容器には、ボトル、袋、バイアル、テストチューブ、シリンジ、及びその他の当技術分野で公知の容器が含まれる。例えば、上記キットに、凍結乾燥されたEPACが入ったバイアルが含まれていてもよい。また、上記キットには、当技術分野において知られおり、商業的観点及びユーザー側の立場から好ましいその他のもの、例えば、細胞、組織、又は器官の容器、賦形剤、緩衝液、空の注射器、チューブ、ガーゼ、及び消毒液などが含まれていてもよい。さらに、上記キットには、上記キットに含まれているEPACと、細胞、組織、又は器官とを接触させるための実験手順書が含まれてもよい。
【0101】
D.口腔ケア製品及び方法
本発明のEPACは、口腔ケア製品として、動物に投与されてもよい。上記口腔ケア製品は、口腔ケア組成物及び口腔ケアデバイスを含んでいる。本発明の口腔ケア製品への利用に適したEPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたホスビチン及びカゼインである。
【0102】
本発明の口腔ケア組成物には、洗浄液、すすぎ液、うがい薬、溶液、滴剤、乳剤、懸濁液、液体、ペースト、ゲル、軟膏剤、クリーム、スプレー、粉末、錠剤、ガム、トローチ剤、ミント、フィルム、パッチ、及び歯のホワイトニング組成物(tooth whitening composition)が含まれる。本発明の口腔ケア組成物には、消費者及び患者によって利用されることを意図したものと、歯科専門家(例えば、歯科衛生士、歯科医、口腔外科医(oral surgens)など)によって利用されることを意図したものとが含まれる。
【0103】
本発明の口腔ケア組成物には、1つ又はそれ以上の薬学的に許容可能なキャリアと混合して、本発明のEPAC又はEPAC群が、有効成分として含まれる。また、本発明の口腔ケア組成物には、1つ又はそれ以上の薬学的に許容可能な成分が含まれていてもよい。上記成分には、その他の有効成分、及び/又は口腔ケア組成物において従来用いられているその他の成分が含まれる。それぞれのキャリア及び成分は、上記組成物のその他の成分と適合性があり、動物に対して有毒性でないという意味で、「許容可能」でなくてはならない。
【0104】
口腔ケア化合物への利用に適した成分(薬学的に許容可能なキャリアを含む)と、口腔ケア組成物の生産方法及び使用方法とは、当技術分野においてよく知られている。これに関しては、米国特許第4847283号、第5032384号、第5043183号、第5180578号、第5198220号、第5242910号、第5286479号、第5298237号、第5328682号、第5407664号、第5466437号、第5707610号、第5709873号、第5738840号、第5817295号、第5858408号、第5876701号、第5906811号、第5932193号、第5932191号、第5951966号、第5976507号、第6045780号、第6197331号、第6228347号、第6251372号、及び第6350438号、国際特許第WO95/32707号、第WO96/08232号、及び第WO02/13775号、並びに、欧州特許第471396号を参照にされたい。これらの特許文献の内容が、参考として本明細書の内容に盛り込まれている。口腔ケア組成物に用いられている従来の成分には、水、アルコール、湿潤剤、界面活性剤、濃化剤、研磨剤、芳香剤、甘味剤、抗菌剤、虫歯予防剤、歯垢予防剤、歯石予防剤、pH調節剤、及びその他多数の物質が含まれる。
【0105】
口腔ケア組成物に用いられる水は、イオン含量が低いことが好ましい。また、有機不純物が含まれていない必要がある。
【0106】
上記アルコールは非毒性でなければならない。上記アルコールはエタノールであることが好ましい。エタノールは、溶媒であり、また、抗菌剤及び収斂剤として作用する。
【0107】
口腔ケア組成物に用いるのに適した湿潤剤には、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、マンニトール、及びラクチトール(lactitol)などの食用の多価アルコールが含まれる。湿潤剤は、ペーストなどの口腔ケア組成物が、空気と接触して硬化することを防止し、口腔ケア組成物が口にしっとりとした感じを与える役割を果たしている。また、湿潤剤には、望ましい甘味が加えられてもよい。
【0108】
界面活性剤には、陰イオン性、非イオン性、両性、双性イオン性、及び陽イオン性の合成洗剤が含まれる。陰イオン性界面活性剤には、アルキルラジカル部に8〜20個の炭素原子を有するアルキル硫酸塩の水溶性塩(アルキル硫酸塩ナトリウムなど)、8〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセライドの水溶性塩(ラウリル硫酸ナトリウム、ココナッツモノグリセライドスルホン酸ナトリウム(sodium coconut monoglyceride sulfonates)など)、サルコシン酸塩(ラウロイルサルコシン酸、ミリストイルサルコシン酸、パルミトイルサルコシン酸、ステアロイルサルコシン酸、及びオレオイルサルコシン酸のナトリウム塩やカリウム塩など)、タウリン酸塩(taurates)、高級スルホ酢酸アルキル(ラウリルスルホ酢酸ナトリウムなどの)、イセチオン酸塩(ラウロイルイセチオン酸ナトリウムなど)、ラウレスカルボン酸ナトリウム、ドデシルベンズスルホン酸ナトリウム、及び上記の混合物が含まれる。炭水化物の分解により、口内での酸の生成を阻害することから、サルコシン酸塩を用いることが好ましい。非イオン性界面活性剤には、ポロキサマー(poloxamers)(Pluronicという商標で販売)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tweenという商標で販売)、脂肪族アルコールエトキシレート、アルキルフェノールのポリエチレン酸化物縮合物(polyethylene oxide condensates)、エチレンオキシドと脂肪酸との縮合により作られる産物、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、多価アルコール、ポリプロピレンオキシド、脂肪族アルコールのエチレン酸化物縮合物(ethylene oxide condensates)、長鎖の第3級アミンオキシド、長鎖の第3級ホスフィンオキシド、長鎖のジアルキルスルホキシド、及びこれらの混合物が含まれる。両性界面活性剤には、ベタイン(コカミドプロピルベタインなど)、脂肪族化合物の第2級及び第3級アミンの誘導体、及びこれらの混合物が含まれている。上記アミンにおいて、脂肪族基は直鎖状又は分鎖状である。また、脂肪族の置換基の1つは8〜18個の炭素原子を有しており、またある1つは、陰イオン性の水に可溶性の基(カルボン酸、スルホン酸、硫酸、リン酸、ホスホン酸など)を有している。双性イオン性界面活性剤には、脂肪族第4級アンモニウム、ホスホニウム、及びスルホニウム化合物の誘導体が含まれている。上記誘導体において、脂肪族基は直鎖状又は分鎖状である。また、脂肪族の置換基の1つは8〜18個の炭素原子を有しており、またある1つは、陰イオン性の水に可溶性の基(カルボン酸、スルホン酸、硫酸、リン酸、ホスホン酸など)を有している。陽イオン性界面活性剤には、炭素原子数が8〜18個の長いアルキル鎖を1つ有する脂肪族第4級アンモニウム化合物(塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジイソブチルフェノキシエチルジメチルベンジルアンモニウム(diisobuytylphenoxyethyldimethylbenzylammonium chloride)、及びココナッツ・アルキルトリメチルアンモニウム亜硝酸塩(coconut alkyltrimetylammonium nitrite)、フッ化セチルピリジニウムなど)が含まれる。特定の陽イオン性界面活性剤は、抗菌剤としても作用できる。
【0109】
濃化剤には、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、カラゲナン、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースなど)、ラポナイト、セルロースエーテルの水溶性塩(カルボキシメチルセルロースナトリウム及びカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウムなど)、天然ゴム(カラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、トラガントゴムなど)、ポリエーテル化合物重合体(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなど)、ペンタエリスリトールのアルキルエーテルと架橋結合したアクリル酸のホモポリマー、ショ糖のアルキルエーテル、カルボマー(商品名Carbopol(登録商標))、デンプン、ラクチド及びグリコリドのモノマーの共重合体(平均分子量が約1000〜120000の共重合体)、コロイド性のケイ酸アルミニウムマグネシウム、及び微細に裂開したシリカが含まれる。濃化剤は、口腔ケア組成物が好ましい軟度となるのに十分な分量が加えられる。
【0110】
研磨剤には、シリカ(ゲルと沈殿物とを含む)、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、水酸化リン灰石、ピロリン酸カルシウム、三メタリン酸塩、不溶性のポリメタリン酸塩(不溶性のポリメタリン酸ナトリウムやポリメタリン酸カルシウムなど)、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、樹脂研削剤(尿素とホルムアルデヒドとの微粒子状縮合物など)、微粒子状の熱硬化性重合樹脂(適当な樹脂には、メラミン樹脂、フェノール性樹脂、尿素樹脂、メラミン尿素樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミン尿素ホルムアルデヒド樹脂、架橋結合したエポキシド樹脂、及び架橋結合したポリエステル樹脂が含まれている)、及びこれらを組み合わせたものが含まれる。歯のエナメルや象牙質を損ねることなく、非常に優れた歯の洗浄力及び研磨能を提供できることから、シリカ研磨剤を用いることが好ましい。
【0111】
芳香剤には、ペパーミント、油、ミドリハッカ油、冬緑油、クローブ、メンソール、ジヒドロアネトール、エストラゴール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、カッシア、酢酸1−メチル、セージ、ユージノール、パセリ油、メントン、オキサノン(oxanone)、アルファ−イリソン(irisone)、アルファ−イオノン、アニス、マヨラマ、レモン、オレンジ、プロペニルグアエトール、シナモン、バニリン、エチルバニリン、チモール、リナロール、リモネン、イソアミニル酢酸塩、ベンズアルデヒド、エチルブチレート、フェニルエチルアルコール、甘い樺(sweet birch)、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルデヒドグリセロールアセタール(CGAとして知られている)、及びこれらの混合物が含まれる。
【0112】
甘味剤には、ショ糖、グルコース、サッカリン、ブドウ糖、果糖、乳糖、マンニトール、ソルビトール、フルクトース、麦芽糖、キシリトール、サッカリン塩、タウマチン、アスパルテーム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム(acesulfame)、シクラメート塩、及びこれらの混合物が含まれる。
【0113】
さらに、口腔ケア組成物には、芳香剤及び甘味剤に加えて、冷却剤、唾液分泌剤、加温剤、局部麻酔剤が、付加的な成分として加えられてもよい。冷却剤には、カルボキサミド、メンソール、パラメンタンカルボキサミド(paramenthan carboxamides)、イソプロピルブタンアミド、ケタール、ジオール、3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、メントングリセロールアセタール、乳酸メンチル、及びこれらの混合物が含まれる。唾液分泌剤にはJambe(登録商標)(Takasago製)が含まれる。加温剤には、唐辛子及びニコチン酸エステル(ニコチン酸ベンジルなど)が含まれる。局部麻酔剤には、ベンゾカイン、リドカイン、クローブ芽油、及びエタノールが含まれる。
【0114】
抗菌剤及び歯垢予防剤には、トリクロサン、サンギナリン及び血根草、第4級アンモニウム化合物、塩化セチルピリジニウム、塩化テトラデシルピリジニウム及び塩化N−テトラデシル−4−エチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ビスクオナイド(bisquanides)、クロルヘキシジン、ジグルコン酸クロルヘキシジン、ヘキセチジン、オクテニジン(octenidine)、アレキシジン(alexidine)、ハロゲン化ビスフェノール化合物、2,2’−メチレンビス−(4−クロロ−6−ブロモフェノール)、5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)フェノール、サリチルアニリド、臭化ドミフェン、デルモピノール(delmopinol)、オクタピノール(octapinol)、他のピペラジノ誘導体(piperadino derivative)、ナイシン、亜鉛スズイオン物質(zinc stannous ion agents)、抗生物質(オーギメンチン(augimentin)、アモキシシリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、メトロニダソールなど)、上記の類似物質及びその塩、並びにそれらの混合物が含まれる。
【0115】
虫歯予防剤には、フッ化ナトリウム、フッ化スズ、フッ化カリウム、フッ化アミン、フッ化インジウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、ストロンチウム塩、及びポリアクリル酸ストロンチウムが含まれる。
【0116】
歯石予防剤には、ジアルカリ金属ピロリン酸塩及びテトラアルカリ金属ピロリン酸塩などのピロリン酸塩(例えば、ピロリン酸2水素2ナトリウム、ピロリン酸4ナトリウム、及びピロリン酸4カリウムの、水和物及び無水物)が含まれる。ピロリン酸塩の代わりに、又は、それに加えて用いることができるその他の歯石予防剤には、合成陰イオン性重合体(ポリアクリレート、及び無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテルとの共重合体など)、ポリアミノプロパンスルホン酸、亜鉛クエン酸3水和物、ポリリン酸塩(トリポリリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩など)、ポリホスホン酸塩(エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸二ナトリウム(EHDP)、メタンジホスホン酸、及び2−ホスホンブタン−1,2,4トリカルボン酸など)、及びポリペプチド(ポリアスパラギン酸やポリグルタミン酸など)が含まれる。
【0117】
本発明の口腔ケア組成物のpHは酸性でないことが好ましい。従って、本発明の口腔ケア組成物のpHは、約6.5以上である必要があり、好ましくは約7.0〜約8.5、より好ましくは約7.2〜約7.6である。そのために、pH調節剤及び/又は緩衝剤又は薬剤が、上記口腔ケア組成物に含まれる必要があるかもしれない。上記pH調節剤は、好適なpHを達成するために用いられる、あらゆる化合物、又は化合物の混合物であってよい。好適なpH調節剤には、安息香酸、クエン酸、水酸化カリウム、及び水酸化ナトリウムなどの有機酸及び有機塩基並びに無機酸及び無機塩基が含まれる。緩衝剤には、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩(重炭酸ナトリウム(ふくらし粉として知られる)などの重炭酸のアルカリ金属塩)、グルコン酸塩、酒石酸塩、硫酸塩、クエン酸(クエン酸ナトリウムなど)、安息香酸塩、硝酸塩(硝酸カリウムや硝酸ナトリウムなど)、及び、好適なpHを達成または維持するようにこれらを組み合わせたものが含まれる。
【0118】
1つ又はそれ以上のEPACに加えて、本発明の口腔ケア組成物は、1つ又はそれ以上の抗炎症剤、酸化防止剤、及び/又は金属結合化合物を含んでいてもよい。
【0119】
好適な抗炎症剤には、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、アスピリン、ケトロラク、ナプロキセン、インドメタシン、ピロキシカム、メクロフェナム酸、ステロイド類、及び上記の混合物が含まれる。
【0120】
好適な酸化防止剤には、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、エブセレン、グルタチオン、システイン、N−アセチルシステイン、ペニシラミン、アロプリノール、オキシプリノール、アスコルビン酸、α−トコフェロール、Trolox(水溶性α−トコフェロール)、ビタミンA、β−カロテン、脂肪酸結合タンパク質、フェノザン(fenozan)、プロブコール、シアニダノール−3,ジメルカプトプロパノール、インダパミド、エモキシピン(emoxipine)、ジメチルスルホキシド、及び他のものが含まれる。これに関しては、「Das et al., Methods Enzymol., 233,601-610 (1994)」、「Stohs, J. Basic Clin. Physiol. Pharmacol., 6,205-228 (1995)」などを参照されたい。
【0121】
好適な金属結合化合物には、金属結合性ペプチド及び/又は非ペプチドのキレート剤が含まれる。金属結合性ペプチド及び非ペプチドのキレート剤は、当技術分野において公知である。国際特許第WO01/25265号及び第WO02/64620号に示されている、金属結合性ペプチド及び非ペプチドのキレート剤が本発明に好適である。なお、参考として、これら特許文献の内容を、本明細書に盛り込んである。さらなる金属結合化合物は、テトラエチレントリアミン(トリエンチン(trientine))などのポリエチレンポリアミンである。
【0122】
本発明の口腔ケア組成物は、EPACの分解を防止し、及び/又は、付加的な治療効果を奏するタンパク質分解酵素阻害剤を含むことが好ましい(炎症の進行には、特定のタンパク質分解酵素が関与している。またその他のタンパク質分解酵素も口内での組織の破壊に関与している)。好適なタンパク質分解酵素阻害剤には、以下の特許文献に示されているようなメタロプロテイナーゼ阻害剤及びセリンプロテアーゼ阻害剤が含まれる。なお上記の特許文献は、米国特許第6403633号、第6350438号、第6066673号、第5622984号、及び第4454338号であり、これら特許文献の内容を、参考として、本明細書に盛り込んである。
【0123】
その他多くの成分が口腔ケア組成物に含まれていてもよいことが知られている。それら成分には、懸濁剤(多糖類など、米国特許第5466437号参照)、有効成分の送達を増進することができる重合体化合物(ポリビニルメチルエステルと無水マレイン酸との共重合体、及び独国特許第942643号及び米国特許第5466437号に記載の送達促進ポリマーなど)、長時間の局所的治療効果を提供できるように、口腔ケア組成物を、口の組織へと強力かつ継続的に付着させる物質(天然ゴム、植物抽出物、動物抽出物(ゼラチンなど)、天然及び合成ポリマー、及びデンプン誘導体など(これに関しては、米国特許第5032384号、第5298237号及び第5466437号を参照))、油、ワックス、シリコーン、着色剤(FD&C染料など)、色変化システム、保存剤(メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウムなど)、不透明化剤(二酸化チタンなど)、植物抽出物、可溶化剤(プロピレングリコールなど、米国特許第5466437号参照)、酵素(デキストラナーゼ、及び/又はムタナーゼ(mutanase)、アミログルコシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼとグルコースオキシダーゼ、及びノイラミニターゼなど)、合成又は天然ポリマー、歯のホワイトニング剤(約0.1%〜約10%(重量%)のペルオキシゲン化合物など、歯のホワイトニング化合物の欄を参照)、重炭酸アルカリ金属塩(一般に、約0.01%〜約30%(重量%)の重炭酸ナトリウム(ふくらし粉として知られる)など)、減感剤(カリウム塩(硝酸カリウム、クエン酸カリウム、塩化カリウム、酒石酸カリウム、炭酸水素カリウム、及びシュウ酸カリウムなど)及びストロンチウム塩など)、鎮痛剤(リドカイン又はベンゾカインなど)、抗真菌剤、抗ウイルス剤などが含まれる。
【0124】
上述のような成分、及び、当技術分野において公知又は将来開発されるであろうその他の成分を利用して、様々な口腔ケア組成物を調製することができることは、十分に認識されている。なお、適切な成分及び成分の組合せを選択すること、及び、特定の口腔ケア組成物に含まれる本発明のEPACの効果的な分量を決定することは、当技術分野の知識及び本明細書の手引きを考えると、当技術分野における技能の範疇内にあるものである。
【0125】
これより以下に、EPAC又はEPACを組み合わせたものが含まれる、口腔ケア組成物の実施例を幾つか示す。なお、本明細書に示される手引き、当技術分野における技術、及び知識を利用して、さらなる種類の口腔ケア組成物、並びに異なる成分及び/又は異なる分量の成分が含まれるさらなる口腔ケア組成物を調製することが可能であることは、当技術分野に熟達した当業者によって、理解されるところであろう。
【0126】
歯磨き剤(dentrifice)には、練り歯磨き粉、歯磨き用ゲル、歯磨き粉、及び液体歯磨き剤が含まれている。練り歯磨き粉及び歯磨き用ゲルには、一般的に歯の研摩剤、界面活性剤、濃化剤、湿潤剤、芳香剤、甘味剤、着色剤、及び水が含まれる。また、練り歯磨き粉及び歯磨き用ゲルには、不透明化剤、虫歯予防剤、歯石予防剤、歯のホワイトニング剤、及び他の任意の成分が加えられてもよい。一般的に、練り歯磨き粉又は歯磨き用ゲルは、約5%〜約70%の、好適には約10%〜約50%の研磨剤、約0.5%〜約10%の界面活性剤、約0.1%〜約10%の濃化剤、約10%〜約80%の湿潤剤、約0.04%〜約2%の芳香剤、約0.1%〜約3%の甘味剤、約0.01%〜約0.5%の着色剤、約0.05%〜約0.3%の虫歯予防剤、約0.1%〜約13%の歯石予防剤、及び、約2%〜約45%の水を含有する。当然のことながら、歯磨き粉は、実質的にすべて非液状の成分を含有しており、通常は、約70%〜約99%の研磨剤を含有している。液体歯磨き剤は、水、エタノール、湿潤剤、界面活性剤、濃化剤、研磨剤(研磨剤が含まれる場合は、懸濁剤(高分子量の多糖類など)も含まれなくてはならない。これに関しては米国特許第5466437号を参照されたい。)、抗菌剤、歯石予防剤、芳香剤、及び、甘味剤を含んでいてもよい。一般的な液体歯磨き剤は、約50%〜約85%の水、約0.5%〜約20%のエタノール、約10%〜約40%の湿潤剤、約0.5%〜約5%の界面活性剤、約0.1%〜約10%の濃化剤を含有しており、さらに、約10%〜約20%の研磨剤、約0.3%〜約2%の懸濁剤、約0.05%〜約4%の抗菌剤、約0.0005%〜約3%の歯石予防剤、約0.1%〜約5%の芳香剤、及び、約0.1%〜約5%の甘味剤を含有していてもよい。
【0127】
ゲルには、歯磨き剤ゲル(上述の記述を参照)、磨耗防止ゲル、及び歯肉下用のゲルが含まれる。磨耗防止ゲル及び歯肉下用のゲルは、一般的に、濃化剤、湿潤剤、芳香剤、甘味剤、着色剤、及び水を含む。また、上記のようなゲルは、1つ又はそれ以上の虫歯予防剤及び/又は歯石予防剤を含んでいてもよい。通常は、上記のようなゲルは、約0.1%〜約20%の濃化剤、約10%〜約55%の湿潤剤、約0.04%〜約2%の芳香剤、約0.1%〜約3%の甘味剤、約0.01%〜約0.5%の着色剤、及びバランスウォーター(balance water)を含んでいる。また、上記のようなゲルは、約0.05%〜約0.3%の虫歯予防剤、及び、約0.1%〜約13%の歯石予防剤を含んでいてもよい。
【0128】
クリームは、一般的に、濃化剤、湿潤剤及び界面活性剤を含んでおり、さらに、芳香剤、甘味剤、着色剤を含んでいてもよい。一般的に、クリームは約0.1%〜約30%の濃化剤、約0%〜約80%の湿潤剤、約0.1%〜約5%の界面活性剤、約0.04%〜約2%の芳香剤、約0.1%〜約3%の甘味剤、約0.01%〜約0.5%の着色剤、及び、約2%〜約45%の水を含有する。
【0129】
口腔に用いられる軟膏剤に関しては、例えば、米国特許第4847283号、第5855872号、第5858408号などにその詳細が示されており、これら特許文献の内容を、参考として、本明細書に盛り込んである。軟膏剤は、一般的に、1つ又はそれ以上の以下のものを含む。すなわち、脂肪、油、ワックス、パラフィン、シリコーン、プラスチベース、アルコール、水、湿潤剤、界面活性剤、濃化剤、滑石、ベントナイト、酸化亜鉛、アルミニウム化合物、保存剤、抗ウィルス化合物、及び他の成分から1つ又はそれ以上を含んでいる。例えば、上記軟膏剤は、約80%〜約90%のワセリン、約10%〜約20%のエタノール又はプロピレングリコールを含有する。別の例では、上記軟膏剤は、約10%のワセリン、約9%のラノリン、約8%の滑石、約32%の鱈肝油、及び約40%の酸化亜鉛を含有する。3つめの例では、上記軟膏剤は、約30%〜約45%の水、約10%〜約30%の油(ワセリン又はミネラルオイルなど)、約0.1%〜約10%の乳化剤(ワックスNFなど)、約2%〜約20%の湿潤剤(プロピレングリコールなど)、約0.05%〜約2%の保存剤(メチルパラベン及びプロピルパラベンなど)、及び、約10%〜約40%のステロールアルコールを含有する。
【0130】
洗口薬、すすぎ液、うがい薬、及びスプレーは、一般的に、水、エタノール及び/又は湿潤剤を含み、また、界面活性剤、芳香剤、甘味剤、及び着色剤を含むことが好ましい。また、濃化剤、並びに1つ又はそれ以上の虫歯予防剤及び/又は歯石予防剤を含んでもよい。一般的な組成物は、約0%〜約80%の湿潤剤、約0.01%〜約7%の界面活性剤、約0.03%〜約2%の芳香剤、約0.005%〜約3%の甘味剤、約0.001%〜約0.5%の着色剤を含有する。バランス調節には水が用いられる。他の一般的な組成物は、約5%〜約60%の、好適には約5%〜約20%のエタノール、約0%〜約30%の、好適には約5%〜約20%の湿潤剤、約0%〜約2%の乳化剤、約0%〜約0.5%の甘味剤、約0%〜約0.3%の芳香剤、及びバランスウォーターを含有する。さらなる一般的な組成物は、約45%〜約95%の水、約0%〜約25%のエタノール、約0%〜約50%の湿潤剤、約0.1%〜約7%の界面活性剤、約0.1%〜約3%の甘味剤、約0.4%〜約2%の芳香剤、及び約0.001%〜約0.5%の着色剤を含有する。これらの組成物は、約0.05%〜約0.3%の虫歯予防剤、及び、約0.1%〜約3%の歯石予防剤を含有してもよい。
【0131】
溶液は、一般的に、水、保存剤、芳香剤、及び甘味剤を含み、さらに濃化剤及び/又は界面活性剤を含んでもよい。溶液は、一般的に、約85%〜約99%の水、約0.01%〜約0.5%の保存剤、約0%〜約5%の濃化剤、約0.04%〜約2%の芳香剤、約0.1%〜約3%の甘味剤、及び約0%〜約5%の界面活性剤を含有する。
【0132】
トローチ剤及びミントは、一般的に、ベース(base)、芳香剤、及び甘味剤を含む。上記ベースは、キャンディーベース(ハードシュガーキャンディー)、グリセリンゼラチン、又は、形作るのに十分なゴム糊と砂糖との混合物であってもよい。これに関しては、米国特許第6350438号、及びRemington著の「The Science And Practice Of Pharmacy, 19th edition (1995)」を参照されたい。また、トローチ剤組成物は、一般的に、1つ又はそれ以上の賦形剤(圧縮性の糖(compressible sugar)など)及び潤滑剤を含む。
【0133】
チューインガム、チュアブル錠、及びチュアブルトローチに関しては、米国特許第6471991号、第6296868号、第6146661号、第6060078号、第5869095号、第5709873号、第5476647号、及び第5312626号、国際特許第WO84/04453号及び第WO99/02137号、並びに、Liebermanら著の「Pharmaceutical Dosage Forms, 2nd ed. (1990)」にその詳細が記されている。また、これらの文献の内容を、参考として、本明細書に盛り込んである。
【0134】
1つの例として、圧縮チュアブル錠は、水で崩壊が可能であり、且つ圧縮性の炭水化物(マンニトール、ソルビトール、マルチトール、ブドウ糖、ショ糖、キシリトール、乳糖、及びそれらの混合物など)、結合剤(セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、デンプン、化工デンプン、及びそれらの混合物など)を含み、さらに、随意的に、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、滑石、及びワックスなど)、甘味剤、着色剤及び芳香剤、界面活性剤、保存剤、並びに他の成分を含む。本発明のEPACを含めた全ての成分は、乾燥状態で混合され、錠剤に圧縮成形される。
【0135】
別の例として、チュアブル錠は、コアを有していてもよい。また、上記コアは、それを包む外層に覆われている。上記コアは、ゼリーベース又はシュアブルベースに、本発明のEPAC又はEPAC群を含有してもよく、さらに随意的に、その他の有効成分を含んでもよい。上記外層はチュアブルベースであってもよい。ゼリーベースは、ペクチン、ソルビトール、マルチトール、イソマルト、液状グルコース、砂糖、クエン酸、及び/又は芳香剤を含有してもよい。上記コア又は外層のチュアブルベースは、ガム、ソフトキャンディー、ヌガー、キャラメル、又はハードキャンディーであってもよい。上記チュアブル錠は、コア及び外層を押出し、ロープを形成し、その後に、そのロープ状のものを錠剤型に切断することによって形成される。
【0136】
チューインガム組成物は、一般的に、ガムベース、芳香剤、及び甘味剤を含む。好適なガムベースは、ジェルトン(jelutong)、ゴム、ラテックス、チクル、及びビニライト樹脂を含み、好ましくはさらに可塑剤又は軟化剤を含む。可塑剤には、トリアセチン、トリブチルクエン酸アセチル、ジエチルセブアセテート(diethyl sebacetate)、クエン酸トリエチル、ジブチルセブアセテート、コハク酸ジブチル、フタル酸ジエチル、及びアセチル化されたモノグリセリドが含まれる。一般的に、チューインガム組成物は、約50%〜約99%のガムベース、約0.4%〜約2%の芳香剤、及び約0.01%〜約20%の甘味剤を含有する。本発明のEPAC及び他の有効成分を、例えば、温められたガムベースに攪拌することによって、又は、ガムベースの外層表面をコーティングすることによって、ガムベースに含ませることができる。
【0137】
ラクチド/グリコリド共重合体から作られており、口内で固形物を形成するフィルム及びシート、並びにゲルが、米国特許第5198220号、第5242910号、及び第6350438号に記されている。口内での利用に好適なその他のフィルムが、国際特許第WO95/32707号に記されている。歯や総入れ歯などの歯の硬い面に付着し、口の中で分解されるパッチが、米国特許第6197331号に記されている。これら全てのものは、これらに含まれる有効成分を、ゆっくりと口内に放出するものである。また、有効成分をゆっくりと放出するようなその他の組成物(ペースト、ゲル、軟膏剤、液体、及びフィルム)も知られている。これに関しては、米国特許第5032384号、第5298237号、第5466437号、第5709873号、及び第6270781号を参照されたい。
【0138】
歯のホワイトニング組成物は、歯のホワイトニング剤を含む。歯のホワイトニング剤は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の過酸化物、過炭酸及び過ホウ酸のアルカリ金属塩並びにアルカリ土類金属塩、又は、過酸化水素を含む錯化合物を含有する。また、歯のホワイトニング剤は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の過酸化物塩を含む。最も一般的な歯のホワイトニング剤は、過酸化カルバミドである。その他の一般的に用いられる歯のホワイトニング剤は、過酸化水素、ペルオキシ酢酸、及び過ホウ酸ナトリウムである。これらの歯のホワイトニング剤は、活性酸素と過酸化水素とを遊離するものである。歯のホワイトニング剤は、歯のホワイトニング組成物中に、約0.1%〜約90%の濃度で存在させることができる。一般的には、歯のホワイトニング組成物における過酸化カルバミドの濃度は、約10%〜約25%である。
【0139】
当技術分野において、多くの歯のホワイトニング組成物が知られているが、このようなものは、水溶液、ゲル、ペースト、液体、フィルム、ストリップ(strip)、1部分システム(one-part systems)、2部分システム(two-part systems)、及び、歯のホワイトニング剤の活性化が必要な組成物(照射が行われた時に漂白剤の活性化を行う、放射エネルギー又は熱エネルギーを吸収する物質、例えば、実質的に共役した炭化水素を含有するものなど)などを含む。これに関しては、米国特許第5302375号、第5785887号、第5858332号、第5891453号、第5922307号、第6322773号、及び第6419906号、並びに、国際特許第WO99/37236号、第WO01/89463号、及び第WO02/07695号などを参照されたい。また、これら特許文献の内容を、参考として、本明細書に盛り込んである。また、その他多くの口腔ケア組成物(例えば、練り歯磨き粉など)及びデバイス(例えば、デンタルフロスなど)は、歯のホワイトニング剤を含む。
【0140】
歯のホワイトニング組成物、又は、歯のホワイトニング剤を含む多くの口腔ケア組成物及びデバイスの1つを用いることで、活性酸素種(ROS)が発生し、口の組織に炎症を引き起こす可能性がある。歯のホワイトニング組成物、又は、歯のホワイトニング剤を含むその他の口腔ケア組成物及びデバイスに、EPAC又はEPAC群を加えることで、炎症が防止又は緩和され、さらに、ROSの生成も減少される(上述のように、いったんEPACがリン酸化されると、これらは金属イオンと結合し、その結果、ROSの生成が減少する)。また、このような組成物にEPAC又はEPAC群を含有させることで、より大きなホワイトニング効果を得ることができる。なぜなら、過酸化水素(過酸化水素型のホワイトニング剤による歯のホワイトニング効果をもたらすものであり、金属イオンの存在下においてはヒドロキシルラジカルへと変換される)がヒドロキシルラジカルへと変換されない(リン酸化されたEPACが金属イオンと結合することに起因する)ため、より長時間にわたりその活性を保つからである。また、炎症、及びおそらくROSの生成を防止する又は減少させるために、歯のホワイトニング組成物又は歯のホワイトニング剤を含む口腔ケア組成物もしくはデバイスの使用前又は使用後に、EPAC又はEPAC群を含む口腔ケア組成物又はデバイスを利用してもよい。
【0141】
例えば、一般的には、歯科用トレイ又はトラフを用いて、歯に歯のホワイトニング組成物を供することにより、歯のホワイトニングが行われる。本発明のEPAC又はEPAC群は、上記トレイ又はトラフ内で使用される歯のホワイトニング組成物に加えられてもよい。また、歯のホワイトニング組成物を供し終えた後に、洗浄済みもしくは異なるトレイ又はトラフ内で、本発明のEPAC又はEPAC群を含む別の組成物を、歯に供してもよい。さらに別の場合として、歯のホワイトニング組成物の適用が供する前及び/又は供した後に、歯をすすぐために、本発明のEPAC又はEPAC群を含む洗浄液又はすすぎ液を用いてもよい。
【0142】
歯にホワイトニング組成物を供するための最近開発された製品に、柔軟性のあるストリップがある。これに関しては、米国特許第5891453号及び第6419936号などを参照されたい。このようなストリップに、EPAC又はEPAC群を含ませることができる。例えば、上記ストリップの製造中に、又は患者によって用いる直前に、EPACもしくはEPAC群は、ストリップに用いられる歯のホワイトニング組成物に加えられたり、又は、EPACもしくはEPAC群を含む溶液、ゲル、又はその他の組成物が、別々に上記ストリップに用いられたりしてもよい。また、歯のホワイトニング組成物を含むストリップと、EPACを含むストリップとの両方が患者に提供され、それらが順番に使用されてもよい。
【0143】
本発明の口腔ケア組成物は、1つの段階(single phase)又は複数の段階(plurality of phases)を含んでいてもよい。複数の段階は、例えば、成分の幾つかが非適合性であったり、成分の幾つかが不安定性であったり、又は使用時に最良の状態で成分が組み合わされたりする時に用いられる。従って、1つの段階では、成分の幾つかを含んでおり、残りの成分は、1つ又はそれ以上の付加的な段階で含まれる。複数の別々の容器、又は、単一の容器内の複数の区画で、複数の段階が提供され、上記複数の段階が使用時に組み合わされる場合、複数の段階とは、別々の複数の組成物であってもよい。別の場合として、複数の段階の全てが、単一の容器に含まれる場合、複数の段階は、成分のいくつかをカプセルに封入することによって形成されてもよい。多段階(multi-phase)口腔ケア組成物に関しては、例えば、米国特許第5302375号、第5906811号、第5976507号、第6228347号、及び第6350438号、並びに国際特許第WO99/37236号にその詳細が記されている。
【0144】
また、本発明はEPAC又はEPAC群を含む、口腔ケアデバイスを提供する。本発明の口腔ケアデバイスには、消費者及び患者によって利用されることを意図したものと、歯科専門家(例えば、歯科衛生士、歯科医、口腔外科医(oral surgens)など)によって利用されることを意図したものとが含まれる。
【0145】
本発明の口腔ケアデバイスには、手術用品(縫合糸及びスポンジなど)、フロス、テープ、チップ、ストリップ、繊維、爪楊枝又はラバーチップ、人工歯根、歯科装置(歯及び随意的に周辺の組織をぴったり包む、又はそれらを覆うトレイ及びトラフなど)が含まれる。これらのものには、EPAC又はEPAC群が、接着、吸収、結合、付着、包括、包被、さもなければ添加されている。これに関しては、米国特許第5709873号、第5863202号、第5891453号、第5967155号、第5972366号、第5980249号、第6026829号、第6080481号、第6102050号、第6350438号、第6419906号、国際特許第WO02/13775号、欧州特許第752833号を参照されたい。これらには、上記のような口腔ケアデバイス及びそのようなデバイスに化合物を添加する方法が記されている、また、これら特許文献の内容を、参考として、本明細書に盛り込んである。
【0146】
例えば、EPAC又はEPAC群は結合剤(例えばワックス又はポリマーなど)へと加えられ、デンタルフロス上に塗ることができる。デンタルフロスは、上記化合物でフロスをコートする、又はフロスに浸透させるために、EPAC又はEPAC群を含む液体の槽に浸すことができる。また、固形のEPAC又はEPAC群(凍結乾燥されたものなど)を、歯に用いるのに適したポリマーフィルムに混ぜ込むことができる。また、溶液又はゲルに含まれるEPAC又はEPAC群を、歯に用いるのに適したストリップに塗ることができる。また、縫合糸又はその他の手術用品を、EPAC又はEPAC群を含む溶液に浸し、その後、溶媒を除去することによって、EPAC又はEPAC群を上記の縫合糸又は手術用品と会合させる(結合する、封入される、表面を覆うなど)ことができる(米国特許第5891453号、第5967155号、第5972366号、第6026829号、第6080481号、第6102050号、及び第6419906号を参照)。
【0147】
また、食物、かむ菓子(chews)、及びおもちゃなどの動物用口腔ケア製品も、本発明の範囲内に含まれる。適した製品は、米国特許第6350438号に述べられている。
【0148】
本発明のEPAC又はEPAC群は、リン酸化の増進を阻害することを目的とする動物の口の組織の治療に用いることができる。なお、本明細書において、「口」とは、唇によって外界との境界をなし、かつ咽頭によって内部との境界をなす空洞であり、舌、歯茎、及び歯を含む空洞のことを意味している。従って、口の組織には、唇、舌、歯茎、頬の組織、口蓋、及び歯が含まれる。本発明に基づいて、口の単一の組織、複数の組織、1つ又はそれ以上の組織の一部分、全て又は実質的に全ての組織、又はこれらを組み合わせたものが治療される。
【0149】
口の組織を治療するために、上記組織は、本発明のEPAC又はEPAC群と接触させられる。例えば、上記組織は、EPACを含む口腔ケア組成物と接触させられる。口の組織を口腔ケア組成物と接触させる方法は、当技術分野において公知である。好適な方法には、溶液(洗口液、すすぎ液、スプレー、液体歯磨き剤、又はその他の溶液など)を用いて上記組織を洗浄する方法、歯磨き剤(練り歯磨き粉、歯磨き用ゲル、又は粉末など)を用いて歯を磨く方法、非磨耗性の溶液、ゲル、ペースト、クリーム又は軟膏を直接、上記組織に塗布する(塗布具を用いても、用いなくてもよい)方法、ガムを噛む方法、トローチ剤、ミント、又は錠剤を噛む又はなめる方法、及び、その他多くの局所的施用法が含まれる。溶液、ゲル、ペースト及び軟膏剤などの口腔ケア組成物を組織に塗布するための好適な塗布器には、綿棒、棒、プラスチックパドル、スポイト、注射器、ストリップ(米国特許第5891453号及び第6419906号に示されたものなど)、指、又は、歯及び随意的に周辺組織をゲルもしくは溶液などに浸すことを可能とする歯科用のトレイもしくは装置(appliance)(米国特許第5863202号及び第5980249号、並びに、欧州特許第752833号に記載のものなど)が含まれる。さらに、口の組織を治療するために、上記組織は、EPACを含む口腔ケアデバイスと接触させられてもよい。口の組織を口腔ケアデバイスと接触させる方法は、当技術分野においてよく知られている。例えば、歯の摘出に起因する手術創、又は傷を縫合するために、縫合糸が用いられる。また、歯をフロスで掃除するために、デンタルフロスが用いられる。
【0150】
上記組織の治療は、予防的治療であってもよい。例えば、予防的な口腔ケア療法の一環として、上記組織が治療されてもよい。EPACは、練り歯磨き粉、歯磨き用ゲル、洗口液又はすすぎ液、もしくはデンタルフロスなどの口腔ケア組成物又はデバイスに使用されてもよい。これら口腔ケア組成物又はデバイスは、上記の療法で使用されるものであり、さらに、定期的に、好ましくは1日1回、より好ましくは1日2回又は3回使用される。また別の場合、EPACは別々の口腔ケア組成物又はデバイスに含まれる。この場合、予防的な口腔ケア療法に利用される他の組成物又はデバイスとは別々に用いられる。例えば、定期的に、好ましくは1日1回、より好ましくは1日2回又は3回使用される、洗口液もしくはすすぎ液、ガム、トローチ剤又はチュアブル錠などにEPACを混ぜ込むことができる。
【0151】
また、外科手術や歯の摘出などを含む種々の歯科処置に関連して、予防的に組織が治療されてもよい。例えば、手術が施される組織、手術が施される領域付近にある組織、又は、治療を容易にするために、口内の全てのもしくは実質的に全ての組織を、手術前、手術中、手術後、又はこれらのいくつかの時点で、治療してもよい。歯の摘出の場合と同様に、摘出される歯の周囲の組織、隣接する組織、又は、治療を容易にするために、口の全てのもしくは実質的に全ての組織を、歯の摘出前、歯の摘出中、歯の摘出後、又はこれらのいくつかの時点で治療してもよい。例えば、手術もしくは歯の摘出の前に、EPACを含む溶液で口を洗浄することができる;手術もしくは歯の摘出により生じた傷を、EPACが混ぜ込まれた縫合糸を用いて縫合することができる;及び/又は、手術もしくは歯の摘出の直後及び/又はしばらく後に、EPACを含む溶液で口を洗浄することができる。最後に、上述のように、動物の歯のホワイトニングとからめて、組織を予防的に治療してもよい。
【0152】
本発明のEPAC又はEPAC群は、リン酸化の増進に起因する、動物の口の組織の疾病又は病状の治療に用いることができる。本発明に基づいて治療できる具体的な疾病及び病状には、歯周組織の炎症、歯肉炎、歯周病、感染症(細菌感染、ウイルス感染、酵母感染、及び真菌感染)、潰瘍、口辺ヘルペス、潰瘍性口内炎、及び、手術もしくは歯の摘出に付随する炎症などの炎症並びに炎症性の疾病及び病状が含まれる。癌などのその他の口の疾病及び病状の治療は、通常は、歯科医ではなく、医師の監督の下で行われる。このような疾病及び病状の治療に関しては、上述の治療方法及び医薬品の議論のおいて取り上げた。しかしながら、これらの種類の口の疾病及び病状の治療において、本発明の口腔ケア製品、及び本発明の医薬品を一緒に用いることは、有益であると考えられる。
【0153】
動物の口の組織の治療に必要とされるEPACの投与量は、使用されるEPACの種類;上記処置が予防的な治療か又は疾病もしくは病状の治療のためか;治療される疾病又は病状の種類;疾病又は病状の重症度;利用される口腔ケア組成物のタイプ;治療の期間;動物に投与されるその他の薬剤の種類;動物の種類や大きさや年齢;並びに、医療及び獣医分野において知られているその他の要素によって、様々に変化するものであることは、当業者であれば理解できるところである。一般的に、本発明の化合物の好適な1日の投与量は、治療的効果を発揮する最低有効量である。約0.000001%〜約20%のEPAC又はEPAC群を含む口腔ケア組成物を、1日につき1回〜数回用いることで、効果的な1日の服用量が供されると見込まれる。しかしながら、実際に使用される1日の服用量、1日当たりの治療回数、及び、治療期間は、主治医である歯科医又は獣医の、正確な医学的判断に基づいて決定される。
【0154】
また、本発明により、本発明の口腔ケア製品を含むキットが提供される。口腔ケア製品が口腔ケア組成物である場合、キットには、口腔ケア組成物を動物の口の組織に塗布するための塗布器が含まれていてもよい。上記塗布器とは、例えば、綿棒、棒、プラスチックパドル、スポイト、注射器、ストリップ(米国特許第5891453号及び第6419906号に記載のものなど)、又は、歯及び随意的に周辺組織を、例えばゲル又は溶液に浸すことを可能とする歯科用トレイ又は装置(米国特許第5863202号、第5980249号、及び欧州特許第752833号に記載のものなど)などである。また、上記キットには、使用用途において必要とされる本発明の口腔ケア組成物の量を測定及び/又は調合するためのカップ、バイアル、又はその他のデバイスが含まれる。当然のことながら、上記キットには、本発明の口腔ケア組成物及び口腔ケアデバイスの両方を含めることができる。本発明の口腔ケア組成物及び/又はデバイスに加え、上記キットには、歯のホワイトニング組成物、歯のホワイトニング剤を含むストリップ、口腔ケア組成物を塗布するための塗布器などのその他の種類の口腔ケア組成物又はデバイスを含めることもできる。本発明のキットには、本発明のキット及び/又は口腔ケア製品の使用説明書が含まれる。さらに、その他の好適な品目(items)が含まれていてもよい。
【0155】
E.パーソナルケア製品及び方法
本発明のEPACは、パーソナルケア製品(personal care products)として、動物に投与されてもよい。パーソナルケア製品には、パーソナルケア組成物(personal care compositions)及びパーソナルケアデバイス(personal care device)が含まれる。
【0156】
本発明のパーソナルケア組成物及びデバイスには、消費者及び患者によって使用されることを意図する組成物及びデバイス、並びに、専門家(皮膚科医、美容院、及び温泉療養所など)によって使用されることを意図する組成物及びデバイスが含まれる。本発明のパーソナルケア製品への利用に好都合なEPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたホスビチン及びカゼインである。
【0157】
パーソナルケア組成物には、化粧品、皮膚用のクリーム及びローション、顔面及び身体用の保湿剤、日焼け止めクリーム及びローション、油剤、洗浄液、すすぎ液、溶液、目薬、乳液、液体、ゲル、軟膏剤、スプレー、粉末、デオドラント、シャンプー、頭皮の治療組成物、リップグロス、リップクリーム、抗ニキビ剤、鎮痛薬などが含まれる。
【0158】
本発明のパーソナルケア組成物は、EPAC又はEPAC群、及び、薬学的に許容可能なキャリアを含む。また、上記パーソナルケア組成物は、許容可能な成分を、1つ又はそれ以上含んでいてもよい。上記成分には、活性のある物質及び/又はパーソナルケア組成物において従来用いられるその他の成分などが含まれる。それぞれのキャリア及び成分は、EPAC及び上記組成物のその他のあらゆる成分と適合性があり、動物に対して有毒性でないという意味で、「許容可能」でなくてはならない。パーソナルケア組成物での利用に適した成分、並びに、パーソナルケア組成物の製造方法及び使用方法は、当技術分野においてよく知られている。
【0159】
スキンケア組成物での利用に適した様々なキャリアが、当技術分野においてよく知られている。例えば、乳液キャリア(水中油滴型乳液、油中水滴型乳液、水中油中水型乳液、及びシリコーン中水中油型乳液(oil-in-water-in-silicone emulsions)を含む)を用いることができる。これらの乳液は、幅広い粘性(例えば、約100センチポイズ(cps)〜約200000cps)をカバーすることができる。その他の好適なキャリアには、油、アルコール、及び、シリコーンなどの無水の液体溶媒(例えば、ミネラルオイル、エタノール、イソプロパノール、ジメチコーン、シクロメチコーンなど)、水性ベースの単相液体溶媒(aqueous-based single phase liquid solvent)(例えば、水−アルコール溶媒系)、並びに、これらの無水の溶媒及び水性ベースの単相溶媒を濃縮したもの(例えば、適当なゴム、樹脂、ワックス、ポリマー、及び塩などを加えて、固体又は準固体を形成するために、上記溶媒の粘性を高くする)が含まれている。上記キャリアは、好ましくは、スキンケア組成物の重量の約50%〜約99%を構成し、さらに好ましくは、約75%〜約99%、最も好ましくは、約85%〜約95%を構成する。
【0160】
ヘアケア組成物での利用に適した様々なキャリアもまた、当技術分野においてよく知られている。例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、及びイソプロパノールなど)、及びこれらの混合物を用いることができる。また、上記キャリアには、様々な付加的な物質が含まれていてもよい。なお、上記の付加的な物質には、アセトン、炭化水素(イソブタン、ヘキサン、デセンなど)、リナロール、エステル(酢酸エチル及びフタル酸ジブチルなど)、揮発性シリコーン誘導体(例えば、フェニルペンタメチルジシロキサン、メトキシプロピルヘプタメチルシクロテトラシロキサン、クロロプロピルペンタメチルジシロキサン、ヒドロキシプロピルペンタメチルジシロキサン(hydroypropyl pentamethyl disiloxane)、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、シクロメチコーン、及びジメチコーンなどのシロキサン)、及び、これらの混合物が含まれる。また、粘性の低いヘアケア製品には乳化剤(好適には、組成物の重量の約0.01%〜約7.5%のレベルで)が使用されてもよい。上記キャリアは、好ましくは、ヘアケア組成物の重量の約0.5%〜約99.5%を構成し、さらに好ましくは、約5.0%〜約99.5%、最も好ましくは、約10.0%〜約98.0%を構成する。
【0161】
EPAC及びキャリアに加え、本発明のパーソナルケア組成物は、様々な付加的な成分を含むことができる。上記の付加的な成分には、薬学的な有効成分(例えば、抗ニキビ剤、鎮痛剤、痒み止め、麻酔剤、及び抗菌剤など)、その他の有効成分(例えば、日光遮断作用成分、サンレス・タンニング(sunless tanning)成分、スキン・ブリーチング(skin bleaching)成分、ふけ止め成分、制汗成分、デオドラント成分など)、コンディショナー、湿潤剤、保湿剤、界面活性剤、濃化剤、皮膚軟化剤、及び、パーソナルケア組成物に一般的に用いられるその他の成分が含まれる。
【0162】
上述のように、EPACに加えて本発明のパーソナルケア組成物に含有させることができる薬学的な有効成分には、抗ニキビ剤、鎮痛剤、痒み止め、麻酔剤、及び抗菌剤が含まれる。組成物に含有させるこれら成分の量は、当技術分野において公知、もしくは経験的に決定することができる。好適な用量は、例えば、特定の有効成分、組成物の有効成分の皮膚浸透能、使用される組成物の分量、治療される特定の病状、治療される動物の年齢及び身体状態、病状の重症度、治療の期間、同時に行われる治療の性質などによって、様々に変化させる。
【0163】
抗ニキビ剤には、角質溶解薬(サリチル酸、硫黄、乳酸、グリコール酸、ピルビン酸、尿素、レソルシノール、N−アセチルシステインなど)、レチノイド(レチノイン酸やその誘導体など)、抗生物質及び抗菌剤(ベンゾイルペルオキシド、オクトピロックス(octopirox)、エリトロマイシン、亜鉛、テトラサイクリン、トリクロサン、アゼライン酸及びその誘導体、フェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、酢酸エチル、クリンダマイシン、及び、メクロサイクリンなど)、セボスタット(sebostats)(フラボノイドなど)、アルファ及びベータヒドロキシ酸、並びに、胆汁酸塩(胆汁アルコール硫酸塩(scymnol sulfate)及びその誘導体、デオキシコール酸塩、及びコール酸など)が含まれる。
【0164】
鎮痛剤には、サリチル酸誘導体(サリチル酸メチルなど)、唐辛子属及びそれらから得られる誘導体(カプサイシンなど)、ステロイド(ヒドロコルチゾンなど)、及び非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDS)が含まれる。NSAIDは、以下のカテゴリーから選択することができる。すなわち、プロピオン酸誘導体(アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミクロプロフェン、チオキサプロフェン(tioxaprofen)、スプロフェン、アルミノプロフェン、チアプロフェン酸、フルプロフェン(fluprofen)、及びブクロクス酸(bucloxic acid))、酢酸誘導体、フェナム酸誘導体(fenamic acid derivatives)、ビフェニルカルボン酸誘導体、及びオキシカム(oxicams)から選択できる。
【0165】
痒み止めには、メトジラジン及びトリメプラジンの薬学的に許容可能な塩が含まれる。
【0166】
麻酔剤には、リドカイン、ブピバカイン、クロロプロカイン、ジブカイン、エチドカイン、メピバカイン、テトラカイン、ディクロニン、ヘキシルカイン、プロカイン、コカイン、ケタミン、プラモキシン、及びフェノールの薬学的に許容可能な塩が含まれる。
【0167】
抗菌剤(抗細菌剤、抗真菌剤、抗原虫剤、及び抗ウイルス剤)には、β−ラクタム、キノロン剤、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、テトラサイクリン、エリトロマイシン、アミカシン、トリクロサン、ドキシサイクリン、カプレオマイシン、クロルヘキシジン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クリンダマイシン、エタムブトール、メトロニダゾール、ペンタミジン、ゲンタマイシン、カナマイシン、リネオマイシン(lineomycin)、メタサイクリン、メテナミン、ミノサイクリン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ミコナゾール、アマンファジン(amanfadine)、オクトピロックス(octopirox)、パラクロロメタキシレノール、ニスタチン、トルナフテート、及びクロトリマゾールの薬学的に許容可能な塩が含まれる。
【0168】
日光遮断剤には、p−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、N,N−ジメチル−p−アミノ安息香酸2−エチルヘキシル、パラアミノ安息香酸、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸、オクトクリレン、オキシベンゾン、サリチル酸ホモメチル、サリチル酸オクチル、4,4’−メトキシ−t−ブチルジベンゾイルメタン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、3−ベンジルイデンカンフル、3−(4−メチルベンジルイデン)カンフル、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、酸化鉄、及びこれらの混合物が含まれる。さらなる日光遮断剤には、単一分子中に、異なる紫外線放射吸収スペクトラムを示す、2つの異なる発色団部分(一方が主にUVA波長域を吸収し、他方がUVB波長域を吸収する)を有するものが含まれ、その例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンの4−N,N−(2−エチルヘキシル)メチルアミノ安息香酸エステル、4−ヒドロキシジベンゾイルメタンの4−N,N−(2−エチルヘキシル)メチルアミノ安息香酸エステル、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゾフェノンの4−N,N−(2−エチルヘキシル)メチルアミノ安息香酸エステル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)ジベンゾイルメタンの4−N,N−(2−エチルヘキシル)メチルアミノ安息香酸エステル、及び、これらの混合物などが挙げられる。これに関しては、さらなる好適な日光遮断剤を記載している、国際特許第WO03/013468号を参照されたい。一般的に、日光遮断剤は、上記パーソナルケア組成物の重量の約0.5%〜約20%を占めている。正確な分量は、選択された日光遮断剤及び所望の太陽光線保護指数(SPF)に応じて変化する。SPFは、紅はんに対する日光遮断剤の光防護の指標として、一般的に用いられている。これに関しては、「Federal Register, Volume 43, No. 166, pages 38206-38269, August 25, 1978」を参照されたい。
【0169】
サンレス・タンニング成分には、ジヒドロキシアセトン、グリセルアルデヒド、インドール、及びこれらの誘導体などが含まれる。
【0170】
スキン・ブリーチング成分には、ヒドロキノン、アスコルビン酸、コージ酸、及びメタ亜硫酸ナトリウムが含まれる。
【0171】
ふけ止め成分には、亜鉛ピリチオキシン、オクトピロックス、二硫化セレン、硫黄、及びコールタールなどが含まれる。
【0172】
制汗成分には、アルミニウム、ジルコニウム、及び亜鉛の無機塩並びに有機塩といった収斂性金属塩、並びに、それらの混合物が含まれる。
【0173】
デオドラント成分には、静菌剤(例えば、2,2’−メチレンビス(3,4,6−トリクロロフェノール)、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ(ジフェニルエーテル)(トリクロサンとしても知られる)、フェノールスルホン酸亜鉛、2,2’−チオビス(4,6−ジクロロフェノール)、p−クロロ−m−キシレノール、ジクロロ−m−キシレノール、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−パルミトイルサルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシン、N−ミリストイルグリシン、N−ラウロイルサルコシンカリウム、クロロヒドロキシ乳酸ナトリウムなどが含まれる。
【0174】
上記組成物、特に上記ヘアケア組成物に有用なコンディショナー成分には、炭化水素、シリコーン流動体、及び陽イオン性物質が含まれる。炭化水素は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、約10〜約16個の炭素原子を含んでもよい。好適な炭化水素の例には、デカン、ドデカン、テトラデカン、トリデカン及びこれらの混合物が含まれる。シリコーン・コンディショナー成分には、環状又は直鎖状のポリジメチルシロキサン、フェニルフェニルシリコーン及びアルキルフェニルシリコーン、及びシリコーンコポリオールが含まれる。陽イオン性コンディショナー成分には、第4級アンモニウム塩(例えば、アルキル基が12〜22個の炭素原子を有するジアルキルジメチルアンモニウム塩(例えば、牛脂の塩化ジメチルアンモニウム(ditallow dimethyl ammonium chloride)、牛脂の硫酸メチルジメチルアンモニウム(ditallow dimethyl ammonium methyl sulfate)、ジヘキサデシルジメチル塩化アンモニウム(dihexadecyl dimethyl ammonium chloride)、並びに、ジ(水酸化牛脂)塩化アンモニウム(di(hydrogenerated tallow)ammonium chloride))及びジカチオン性物質(牛脂プロパンジクロロジアンモニウム(tallow propane diammonium dechloride)など))、第4級イミダゾリニウム塩(例えば、12〜22個の炭素原子を含むアルキル基を有するイミダゾリニウム塩(例えば、1−メチル−1[(ステアロイルアミド)エチル]−2−ヘプタデシル−4,5−ジヒドロイミダゾリニウムクロライド、1−メチル−1[(パルミトイルアミド)エチル]−2−オクタデシル−4,5−ジヒドロイミダゾリニウムクロライド、及び、1−メチル−1[(タローアミド)エチル]−2−タロー−イミダゾリニウムメチルサルフェートなど))、及び脂肪族アミンの塩(例えば、ステアリルアミン塩酸塩、ソイアミン塩酸塩、及びギ酸ステアリルアミンなど)が含まれる。
【0175】
湿潤剤及び保湿剤には、尿素、グアニジン、グリコール酸及びグリコール酸塩(例えば、アンモニウム及び4級アルキルアンモニウムなど)、乳酸及び乳酸塩(例えば、アンモニウム及び4級アルキルアンモニウム)、アロエベラ由来のあらゆる形態のもの(アロエベラゲルなど)、ポリヒドロキシアルコール(例えば、ソルビトール、グリセロール、ヘキサントリオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、及びヘキシレングリコールなど)、ポリエチレングリコール、糖及びデンプン、糖及びデンプンの誘導体(例えば、アルコキシル化グルコース)、ヒアルロン酸、ラクトアミドモノエタノールアミン、アセトアミドモノエタノールアミン、及びこれらの混合物が含まれる。これらの物質は、一般的に、上記パーソナルケア組成物の重量の約0.1%〜約20%のレベルで存在する。
【0176】
上記組成物に有用な界面活性剤には、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、及び双性の界面活性剤が含まれる。好適な陰イオン性界面活性剤には、長鎖硫酸塩、スルホン酸エステル、イセチオン酸塩、カルボン酸塩、タウレート、及び、スルホサクシネートが含まれる。例えば、スルホン酸アルキルグリセリルエーテル、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエチルアミン、ラウレス硫酸トリエチルアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウレス硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウレス硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸ジエタノールアミン、ラウレス硫酸ジエタノールアミン、ラウリル酸モノグリセリド硫酸ナトリウム(lauric monoglyceride sodium sulfate)、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウレス硫酸カリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ラウリルサルコシン、ココイルサルコシン、ココイル硫酸アンモニウム、ラウロイル硫酸アンモニウム、ココイル硫酸ナトリウム、ラウロイル硫酸ナトリウム、ココイル硫酸カリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ココイル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。陽イオン性界面活性剤に関しては、米国特許第5916548号を参照されたい。また、この特許文献の内容を、参考として、本明細書に盛り込んである。非イオン性界面活性剤には、アルキレンオキシド基(本質的に親水性)を疎水性有機化合物(本質的に、脂肪族化合物又はアルキル芳香族化合物であってもよい)と縮合させることによって生成される化合物が含まれる。両性及び双性イオン界面活性剤には、アミドカルボキシベタイン、アルキルベタイン、アミドプロピルベタイン、アミドプロピルスルタイン(amidopropyl sultaine)、及びスルホベタインなどのベタイン類が含まれる。さらなる両性及び双性イオン界面活性剤には、脂肪族第4級アンモニウム及びスルホニウム化合物の誘導体が含まれる。なお、上記誘導体中において、脂肪族基は直鎖状又は分岐鎖状である。また、上記誘導体中において、脂肪族置換基の1つは、約8〜18個の炭素原子を有し、さらに、脂肪族置換基の1つは陰イオン性の水可溶性基(カルボキシ基、スルホン基、又は硫酸基など)を有する。さらに、両性及び双性イオン界面活性剤には、脂肪族第2及び第3アミンの誘導体が含まれる。なお、上記誘導体中において、脂肪族基は、直鎖状又は分岐鎖状である。また、上記誘導体は、脂肪族置換基の1つが約8〜18個の炭素原子を有し、さらに、脂肪族置換基の1つが陰イオン性の水可溶性基(カルボキシ基、スルホン基、又は硫酸基など)を有する。例えば、3−ドデシル−アミノプロピオン酸ナトリウム、3−ドデシルアミノ−プロパンスルホン酸ナトリウム、及びN−アルキルタウリンなどである。上記界面活性剤又は界面活性剤の混合物は、一般的に、上記組成物の重量の約0.2%〜約30%のレベルで存在する。
【0177】
濃化剤には、カルボン酸のポリマーが含まれる(米国特許第5916548号に示されている。なお、この特許文献の内容を、参考として、本明細書に盛り込んである。)。これらの架橋ポリマーは、1つ又はそれ以上のモノマーを含んでいる。このモノマーは、アクリル酸、置換されたアクリル酸、これらアクリル酸及び置換されたアクリル酸の塩並びにエステルに由来するものである。また、上記架橋ポリマーにおいて、架橋剤は、2つ又はそれ以上の炭素−炭素2重結合を有する。また、架橋剤は、多価アルコール由来である。このようなポリマーの具体的な例は、スクロース又はペンタエリトリトール(pentaerytritol)のアリルエーテルと架橋結合したアクリル酸のホモポリマーであるカルボマー(B.F.Goodrichより、Carbopol(登録商標)900シリーズとして購入可能)、及び、スクロース又はペンタエリトリトールのアリルエーテルを架橋剤として利用した、C10-30アルキルアクリラートと、1つ又はそれ以上のアクリル酸、メタクリル酸、又はそれらの短鎖(C1-4アルコール)エステルのモノマーとの共重合体(アクリレート/C10-30アルキルアクリル酸エステルクロスポリマーとしても知られており、B.F.Goodrichから、Carbopol(登録商標)1342、Pemulen TR-1、及び、Pemulen TR-2として購入可能)である。その他の濃化剤には、キサンタンガム、グアルゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルキル修飾型ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、セチルヒドロキシエチルセルロースなどの長鎖アルキル修飾型ヒドロキシエチルセルロース)、及びケイ酸アルミニウムマグネシウムが含まれる。これらの濃化剤は、一般的に、上記パーソナルケア組成物の重量の約0.025%〜約1%のレベルで存在している。
【0178】
パーソナルケア組成物での利用に適した乳化剤は、あらゆる非イオン性、陽イオン性、陰イオン性、及び双性イオン性の乳化剤が挙げられる。好適な乳化剤の例には、グリセリンのエステル、プロピレングリコールのエステル、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコールの脂肪酸エステル、ソルビトールのエステル、無水ソルビタンのエステル、カルボン酸共重合体、グルコースのエステル及びエーテル、エトキシ化されたエーテル、エトキシ化されたアルコール類、脂肪酸アミド、アシルラクチレート、石鹸、及びこれらの混合物が含まれる。好適な乳化剤は、具体的には、ポリエチレングリコール20ソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)、ポリエチレングリコール5ソーヤステロール、Steareth-20、Ceteareth-20、ジステアリン酸PPG−2メチルグルコースエーテル、Ceteth-10、ポリソルベート80、ポリソルベート60、グリセリルステアレート、PEG−100ステアレート、及びそれらの混合物が含まれる。上記乳化剤は、一般的に、上記パーソナルケア組成物の重量の約0.1%〜約10%のレベルで存在する。
【0179】
皮膚軟化剤には、揮発性及び不揮発性のシリコーンオイル、高度に枝分かれした炭化水素及び無極性カルボン酸及びアルコールエステル、並びに、これらの混合物が含まれる。上記皮膚軟化剤は、一般的に、上記パーソナルケア組成物の重量の約1%〜約50%のレベルで存在する。
【0180】
上記パーソナルケア組成物に、様々な付加的な成分を加えることができる。これらの付加的な成分には、ビタミン及びその誘導体(例えば、アスコルビン酸、ビタミンEトコフェリルアセテート、レチノイン酸、レチノール、レチノイド類、及びその他同様のもの)、ポリクオタリウム及びミネラルオイル、樹脂、ゴム、フィルム形成特性及び組成物の本質(substantivity)を補助するポリマー(エイコセンとビニルピロリドンとの共重合体など)、懸濁剤(例えば、エチレングリコールジステアレートなど)、保存剤、皮膚浸透補助剤、酸化防止剤、キレート剤、金属イオン封鎖剤、並びに美容成分(例えば、芳香剤、着色剤、エッセンシャルオイル、スキンセンセート(skin sensates)、収斂性、及び皮膚鎮静剤;具体的な例としては、パンテノール及びその誘導体、パントテン酸及びその誘導体、チョウジ油、メンソール、カンフル、ユーカリ油、ユージノール、乳酸メンチル、アメリカマンサク留出物、アラントイン、及びビサボロールが含まれる)が含まれる。
【0181】
上述の成分と、当技術分野で公知又は将来開発されるであろうその他の成分とを利用して、様々な異なるパーソナルケア組成物を調製できるということは、十分に認識されるところである。適切な成分及び成分の組合せを選択すること、及び特定のパーソナルケア組成物に含有させる本発明のEPACの効果的な分量を決定することは、当技術分野における技能の範囲内である。
【0182】
また、本発明によりパーソナルケアデバイスが提供される。パーソナルケアデバイスには、手術用品(縫合糸及びスポンジなど)、包帯、スポンジ、布、綿棒、パッド、及びティッシュが含まれる。本発明のパーソナルケアデバイスには、EPACもしくはEPAC群が、接着、吸収、吸着、結合、付着、封入、浸透、又はコートされているか、さもなければ、上記デバイスに混ぜ込まれている。例えば、デバイスを、EPAC又はEPAC群の溶液に浸し、その後溶媒を取り除くことで、上記デバイスにEPACを接着、吸収、吸着、結合、付着、封入、含浸、又はコートすることができる。これに関しては、上述の口腔ケアデバイスの調製の説明などを参照されたい。
【0183】
また、本発明により、動物の皮膚におけるリン酸化の増進を阻害する方法が提供される。上記方法には、効果的な分量のEPAC又はEPAC群と皮膚とを接触させることが含まれている。例えば、皮膚は、EPACを含むパーソナルケア組成物と接触させられてもよい。皮膚とパーソナルケア組成物とを接触させる方法は、当技術分野においてよく知られている。好適な方法には、洗浄液を用いて皮膚を洗浄する方法、すすぎ液を用いて皮膚をすすぐ方法、溶液、ゲル、クリーム、ローション、又は軟膏剤を皮膚に塗布する(塗布器を用いても、用いなくてもよい)方法、頭皮と接触するシャンプーで頭髪を洗浄する方法、及びその他の多くの局所的施用方法が含まれる。パーソナルケア組成物を塗布するのに適した塗布器には、綿ボール、ガーゼパッド、ティッシュ、布、綿棒、スポイト、注射器、又は指が含まれる。さらに、上記皮膚は、EPACを含むパーソナルケアデバイスと接触させられてもよい。皮膚とパーソナルケアデバイスとを接触させる方法は、当技術分野においてよく知られている。例えば、縫合糸を手術の傷を縫合するために用いることができる。また、皮膚をきれいにするために、EPACが染み込んだティッシュやパッドを用いることができる。さらに、EPACを含む包帯を皮膚に張り付けることができる。
【0184】
皮膚の治療は、予防的治療であってもよい。例えば、予防的なスキンケア療法の一環として、皮膚の治療が行われてもよい。本発明のEPACは、上記の療法で使用されるパーソナルケア組成物又はデバイスに含有させたり、又は、予防的なスキンケア療法で利用される他の組成物及びデバイスとは別々に用いられる別々のパーソナルケア組成物又はデバイスに含有させたりすることができる。予防的な療法は、定期的(毎月又は毎日など)に行われる。
【0185】
また、皮膚は、手術、皮膚剥離、及び化学的皮膚剥離を含む様々な皮膚科の処置にからめて、予防的に治療されてもよい。例えば、手術が行われる皮膚の領域を、手術前、手術中、手術後、又はこれらのいくつかの時点で治療してもよい。例えば、手術前に、EPACを含む溶液で皮膚を洗浄したり、手術により生じる傷をEPACを含む縫合糸を用いて縫合したり、及び/又は、手術直後及び/又はしばらく後に、EPACを含む溶液で皮膚を洗浄したりすることができる。
【0186】
また、本発明のEPAC又はEPAC群を含むパーソナルケア製品は、リン酸化の増進に起因する皮膚の疾病又は病状を治療するために用いることができる。本発明に基づいて治療できる具体的な疾病及び病状は、上述の治療方法及び薬学組成物の説明に記載している。薬学組成物及び/又はパーソナルケア組成物もしくはデバイスを用いて、肌の疾病及び病状を治療できることは、十分に認識されるところである。
【0187】
パーソナルケア製品を利用して動物の皮膚を治療するのに必要とされるEPACの用量は、使用されるEPACの種類;上記治療が予防的な治療か、疾病又は病状の治療かどうか;治療される疾病又は病状の種類;疾病又は病状の重症度;利用されるパーソナルケア組成物又はデバイスのタイプ;治療の期間;動物に投与されるその他の薬剤の種類;動物の種類や大きさや年齢;並びに、医療及び獣医分野に熟達した当業者に公知のその他の要素によって、様々に変化するものであることは、当業者によって理解されるものである。
【0188】
また、本発明により、本発明のパーソナルケア製品を含むキットが提供される。パーソナルケア製品がパーソナルケア組成物である場合、上記キットには、綿棒、綿ボール、ティッシュ、パッド、プラスチックパドル、小型容器、ポンプボトル、スポイト、又は注射器などの、パーソナルケア組成物を用いるための塗布器が含まれていてもよい。また、上記キットには、使用目的において必要とされる本発明のパーソナルケア組成物の分量を測定及び/又は調合するためのカップ、バイアル、又はその他のデバイスが含まれる。当然のことながら、上記キットには、本発明のパーソナルケア組成物及びパーソナルケアデバイスの両方を含めることができる。本発明のパーソナルケア組成物及び/又はデバイスに加え、本発明のキットには、その他の種類のパーソナルケア組成物又はデバイスを含めることもできる。本発明のキットには、本発明のキット及び/又はパーソナルケア組成物の使用説明書が含まれる。さらに、その他の所望の品目が含まれていてもよい。
【0189】
「a」又は「an」の実体はその実体の1つ又はそれ以上について言及するものであることに注意されたい。例えば、「a tissue」とは、1つ又はそれ以上の「tissue」のことを意味している。
【0190】
〔実施例〕
〔実施例1:脱リン酸化ホスビチンによるIL−8の阻害〕
ホスビチンは、鶏卵の卵黄から抽出された。その方法は、「Losso and Nakai, Egg Uses And Processing Technologies」、「New Developments, pages 150-157 (Sim and Nakai, eds., Cab International, Oxon, UK, 1994)」に記されている。その後、「Reimerdes and Klostermeyer, Methods in Enzymology, Volume 45, pages 26-28 (1976)」に示された方法で、ホスビチンの脱リン酸化を行った。このホスビチン調製物は、約20%〜約50%が脱リン酸化されているものと推定された。
【0191】
ニワトリのホスビチンは、ウシの血清アルブミン(BSA、ELISグレード=脂肪酸及びIgGが少ない)と同様に、Sigma Chemical Co., (St. Louis, MO)から購入した。これらそれぞれの物質は、脱リン酸化を行わずに、製造業者から受け取ったままの状態で使用した。
【0192】
インシュリントランスフェリン亜セレン酸溶液(ITSS、Sigma)を含むIMDM培地(ATCC)を用いて、ジャーカット細胞(American Type Culture Collection (ATCC), Rockville, MD)を、5%CO、37℃で30分間培養した(培養液0.5mlあたりの細胞数=1×10)。なお、上記IMDM培地には、ホスビチン又はBSAを加えたものと、加えていないものとを用いた。その後、細胞を刺激するために、ホルボール−12−ミリステート−13−酢酸(PMA;100mg/ml、Sigma)とイオノマイシン(100mg/ml、Sigma)とを加えて、5%CO、37℃でさらに24時間培養した。
【0193】
ELISA法を用いて、細胞培養上清のIL−8含有量の分析を行った。IL−8のELISAは以下のようにして行った。抗ヒトIL−8抗体(Pierce Endogen, Rockford, IL; catalogue number M801-E, lot number CK41959)を、リン酸緩衝生理食塩水pH7.2〜7.4で、1μg/mlとなるように希釈し、Nunc Maxisorb ELISAストリッププレートのそれぞれのウェルに、希釈した抗体100μlを加えた。その後、プレートを室温で一晩放置した。液体をウェルから吸引して、プレートをペーパータオル上で乾かした。その後、200μlのアッセイバッファー(4%BSAを含有するリン酸緩衝生理食塩水pH7.2〜7.4)をそれぞれのウェルに加え、プレートを室温で一時間静置した。液体をウェルから吸引し、その後、ウォッシュバッファー(50mM Tris、0.2%Tween−20、pH7.9〜8.1)でウェルを3回洗浄し、プレートをペーパータオル上で乾かした。スタンダード及び上清サンプル(各ウェルに50μl、スタンダードはアッセイバッファーで希釈)をウェルに加え、プレートを穏やかに振盪しながら、室温で1時間反応させた。液体をウェルから吸引し、その後、ウォッシュバッファーでウェルを3回洗浄し、プレートをペーパータオル上で乾かした。アッセイバッファーを用いて60ng/mlに希釈されたビオチン標識抗ヒトIL−8(Pierce Endogen, Rockford, IL ; catalogue number M802-E, lot number CE49513)を100μlづつ、それぞれのウェルに加えた。プレートを室温で1時間静置し、液体をウェルから吸引し、ウォッシュバッファーを用いてウェルを3回洗浄し、プレートをペーパータオル上で乾かした。その後、アッセイバッファー中でHPRが結合したストレプトアビジン(Pierce Endogen, Rockford, IL; catalogue number N100)を、100μlづつ、各ウェルに加えた。プレートを室温で30分間静置し、液体をウェルから吸引し、ウォッシュバッファーを用いてウェルを3回洗浄し、プレートをペーパータオル上で乾かした。最後に、TMB基質溶液(Pierce Endogen, Rockford, IL; catalogue number N301)を100μlづつ、それぞれのウェルに加えた。プレートを室温で30分間静置して反応を行った。その後、各ウェルに0.18MのHSOを加えて、反応を停止させた。ELISAプレートリーダーを用いて、450nm及び530nmの光学密度を読み取り、その値の差異(OD450−OD530)を計算した。
【0194】
その結果が、表1に示されている。この結果から分かるように、ポジティブコントロールと比較して、鶏卵の卵黄から単離されたホスビチンは、用量依存的にIL−8の放出を阻害していることが分かった。Sigmaから購入したBSA及びホスビチンは、さほど著しくIL−8の放出を阻害しなかった。
【0195】
【表3】

【0196】
〔実施例2:炎症の治療目的の脱リン酸化ホスビチンの利用〕
蒸留水に溶解したニワトリのホスビチン(Sigma)(0.5g/100ml)に、0.4N NaOHを加え、37℃で3時間、脱リン酸化を行った(Jiang et al., J. Agric. Food Chem., 48: 990-994 (2000))。脱リン酸化の後、0.1N HClを用いて、ホスビチン溶液のpHを7.8に調整した。ガリウムカラムを用いて、このホスビチン調製物の73%が脱リン酸化されていることを確認した。
【0197】
ホスビチンの終濃度が0.25%となるように、脱リン酸化ホスビチンと、100mlのEucerinクリーム(Beiersdorf Inc., Wilton, CT)とを混合して、クリーム剤を調製した。
【0198】
慢性的な皮膚病変(skin lesion)(原因不明)を患うヒトのボランティアが、2日間、1日2回、病変部に上記ホスビチンクリームを塗布した。この治療を行った後に、病変部は完全に消失した。
【0199】
慢性的な皮膚病変(アトピー性皮膚炎と診断)を患う別のヒトのボランティアが、1週間、1日2回、背中の病変部に上記ホスビチンクリームを塗布した。この治療が行われた病変部は完全に消失した。同じボランティアにおいて、ホスビチンクリームで治療が行われなかったその他の病変部には、変化が見られなかった。
【0200】
慢性的な皮膚病変(アトピー性皮膚炎と診断)を患う、3番目のヒトのボランティアが、1週間、1日2回、病変部に上記ホスビチンクリームを塗布した。この治療を行った後に、病変部は完全に消失した。このボランティアの病変は、局所的なステロイドの処方を含むこれまでに処方された全ての治療法に対して抵抗性であった。
【0201】
頭頂部に慢性的な皮膚病変(生体組織検査により、角化症/弾性繊維症と診断)を患う、4番目のヒトのボランティアが、1週間、1日2回、病変部に上記ホスビチンクリームを塗布した。病変部は、ほぼ完全に消失した。このボランティアの病変は、25年以上も慢性的であったもので、局所的ステロイドの処方、抗生物質、抗真菌剤、硝酸銀、及び液体窒素による凍結法を含むこれまでに処方された全ての皮膚病学的な治療法に反応を示さなかったものである。
【0202】
足首に乾癬の病変がある、5番目のヒトのボランティアが、1週間、1日2回、病変部に上記ホスビチンクリームを塗布した。この治療を行った後に、病変部は完全に消失した。
【0203】
〔実施例3:非リン酸化キナーゼ基質によるIL−8の阻害〕
カゼインキナーゼIの基質(アミノ酸配列:Arg Arg Lys Asp Leu His Asp Asp Glu Glu Asp Glu Ala Met Ser Ile Thr Ala[配列番号3])及び、カゼインキナーゼIIの基質(アミノ酸配列:Arg Arg Arg Ala Asp Asp Ser Asp [配列番号4])を、Sigma Aldrich(St.Louis、MO)から購入した。それらは、リン酸化されていなかったので、製造業者から購入したときの状態のままでこれら基質を利用した。
【0204】
インシュリントランスフェリン亜セレン酸溶液(ITSS、Sigma)を含むIMDM培地(ATCC)を用いて、ジャーカット細胞(American Type Culture Collection (ATCC), Rockville, MD)を、10%CO、37℃で15分間培養した(培養液1.0mlあたりの細胞数=2×10)。なお、上記IMDM培地には、カゼインキナーゼの基質(50μg/ml及び100μg/ml)を加えたものと、加えていないものとを用いた。その後、細胞を刺激するために、ホルボール−12−ミリステート−13−酢酸(PMA、100mg/ml、Sigma)とイオノマイシン(100mg/ml、Sigma)とを加えて、5%CO、37℃でさらに24時間、上記細胞を培養した。
【0205】
実施例1に示されているように、ELISA法を用いて、細胞培養上清のIL−8含有量の分析を行った。その結果が図1に示されている。この結果から分かるように、ポジティブコントロールと比較して、両方のカゼインキナーゼの基質が、用量依存的に、IL−8の放出を阻害していることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】インターロイキンの量と処理との関係を示した棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
効果的な分量の細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)を、それを必要とする動物に投与することを含む、リン酸化の増進に起因する疾病又は病状を治療する方法。
【請求項2】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたホスビチン又はその断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記ホスビチンは、ニワトリのホスビチンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記ホスビチン又はその断片は、少なくとも約35%が脱リン酸化されている、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
上記ホスビチン又はその断片は、少なくとも約50%が脱リン酸化されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記ホスビチン又はその断片は、少なくとも約70%が脱リン酸化されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記ホスビチン又はその断片は、少なくとも約90%が脱リン酸化されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたカゼイン又はその断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記カゼインは、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼイン、もしくはこれら何れかの断片、又は、これらの1つ又はそれ以上を組み合わせたものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
上記カゼインは、αs1−カゼイン又はその断片であること、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたアシル化アルブミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたアセチル化アルブミンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記EPACは、
(Xaa[Ac−Lys(XaaXaa(Xaa又は、
(Xaa[Ac−Lys(XaaXaaXaa(XaaLys−Ac](Xaa
の配列を有するペプチドであって、当該配列においては、
Acはアシル基であり、
Xaaはどのようなアミノ酸であってもよく、
Xaaはセリン、スレオニン、又はチロシンであり、
mは0〜10であり、
nは1〜3であり、
pは1〜5であり、さらに、
m、n、及びpは、全アミノ酸数が少なくとも20になるように選択され、及び/又は、Xaaは、上記ペプチドが親水性となるように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
上記ペプチドは、Ac−Lys Cys Ala Ser[配列番号1]又は、Ac−Lys Ala Ser Ser Ala Lys−Ac[配列番号2]である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化された血漿タンパク質の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
上記EPACは、キナーゼの基質である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
上記キナーゼの基質は、
Arg Arg Lys Asp Leu His Asp Asp Glu Glu Asp Glu Ala Met Ser Ile Thr Ala[配列番号3]、又は、
Arg Arg Arg Ala Asp Asp Ser Asp[配列番号4]
の配列を有する、カゼインキナーゼの基質である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記EPACは、1つ又はそれ以上のリン酸化を受けることができるアミノ酸を有する合成ペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
上記合成ペプチドは、ランダムな配列中に、1つ又はそれ以上の、セリン、スレオニン、及び/又はチロシンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記合成ペプチドは、1つ又はそれ以上のリン酸化部位を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
上記EPACは、選択された細胞、組織、又は器官にターゲティングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
上記疾病又は病状は、炎症又は炎症性の疾病又は病状である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
上記疾病又は病状は、皮膚の疾病又は病状である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
上記皮膚の疾病又は病状は、炎症又は炎症性の皮膚の疾病又は病状である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
上記皮膚の疾病又は病状は、アレルギー反応である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
上記皮膚の疾病又は病状は、火傷である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
上記皮膚の疾病又は病状は、湿疹又は皮膚炎である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
上記皮膚の疾病又は病状は、ニキビである、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
上記皮膚の疾病又は病状は、乾癬である、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
上記皮膚の疾病又は病状は、角化症又は弾性線維症である、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
上記皮膚の疾病又は病状は、感染症である、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
上記皮膚の疾病又は病状は、麻疹又は水痘である、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
上記疾病又は病状は、アレルギー、自己免疫疾患、又は別の免疫異常である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
上記疾病又は病状は、増殖性異常である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
上記疾病又は病状は、血管原性疾病又は病状である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
効果的な分量のリン酸受容体化合物(PAC)を、それを必要とする動物に投与することを含む、癌を治療する方法。
【請求項37】
上記PACは、細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
上記PACは、細胞内リン酸受容体化合物(IPAC)である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
上記IPACは、
(Xaa[Ac−Lys(XaaXaa(Xaa又は、
(Xaa[Ac−Lys(XaaXaaXaa(XaaLys−Ac](Xaa
の配列を有するペプチドであって、当該配列においては、
Acはアシル基であり、
Xaaはどのようなアミノ酸であってもよく、
Xaaはセリン、スレオニン、又はチロシンであり、
mは0〜10であり、
nは1〜3であり、
pは1〜5であり、さらに、
m、n、及びpは、全アミノ酸数が約20未満になるように選択され、かつ、それぞれのXaaは、上記ペプチドが疎水性となるように選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
上記IPACは、キナーゼの基質である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
上記IPACは、1つ又はそれ以上のリン酸化を受けることができるアミノ酸を有する合成ペプチドである、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
上記合成ペプチドは、ランダムな配列中に、1つ又はそれ以上のセリン、スレオニン、及び/又はチロシンを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
上記合成ペプチドは、1つ又はそれ以上のリン酸化部位を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
上記IPACは、癌細胞にターゲティングされる、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
上記癌は、悪性腫瘍、肉腫、脳腫瘍、頭部癌、頚部癌、乳癌、子宮頚癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、膵臓癌、膀胱癌、甲状腺癌、肝癌、肺癌、骨の癌、皮膚癌、血液の癌、リンパ腫、又は白血病である、請求項36〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
リン酸受容体化合物(PAC)及び薬学的に許容可能なキャリアを含む、薬学組成物。
【請求項47】
上記PACは、細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)である、請求項46に記載の薬学組成物。
【請求項48】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたホスビチン又はその断片である、請求項47に記載の薬学組成物。
【請求項49】
上記ホスビチンは、ニワトリのホスビチンである、請求項48に記載の薬学組成物。
【請求項50】
上記ホスビチン又はその断片は、少なくとも約35%が脱リン酸化されている、請求項48に記載の薬学組成物。
【請求項51】
上記ホスビチン又はその断片は、少なくとも約50%が脱リン酸化されている、請求項50に記載の薬学組成物。
【請求項52】
上記ホスビチン又はその断片は、少なくとも約70%が脱リン酸化されている、請求項51に記載の薬学組成物。
【請求項53】
上記ホスビチン又はその断片は、少なくとも約90%が脱リン酸化されている、請求項52に記載の薬学組成物。
【請求項54】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたカゼイン又はその断片である、請求項47に記載の薬学組成物。
【請求項55】
上記カゼインは、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼイン、もしくはこれら何れかの断片、又は、これらの1つ又はそれ以上を組み合わせたものである、請求項54に記載の薬学組成物。
【請求項56】
上記カゼインは、αs1−カゼイン又はその断片である、請求項55に記載の薬学組成物。
【請求項57】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたアシル化アルブミンである、請求項47に記載の薬学組成物。
【請求項58】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたアセチル化アルブミンである、請求項57に記載の薬学組成物。
【請求項59】
上記EPACは、
(Xaa[Ac−Lys(XaaXaa(Xaa又は、
(Xaa[Ac−Lys(XaaXaaXaa(XaaLys−Ac](Xaa
の配列を有するペプチドであって、当該配列においては、
Acはアシル基であり、
Xaaはどのようなアミノ酸であってもよく、
Xaaはセリン、スレオニン、又はチロシンであり、
mは0〜10であり、
nは1〜3であり、
pは1〜5であり、さらに、
m、n、及びpは、全アミノ酸数が少なくとも20になるように選択され、及び/又は、Xaaは、上記ペプチドが親水性となるように選択される、請求項47に記載の薬学組成物。
【請求項60】
上記ペプチドは、Ac−Lys Cys Ala Ser[配列番号1]、又は、Ac−Lys Ala Ser Ser Ala Lys−Ac[配列番号2]である、請求項59に記載の薬学組成物。
【請求項61】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化された血漿タンパク質の混合物である、請求項47に記載の薬学組成物。
【請求項62】
上記EPACは、キナーゼの基質である、請求項47に記載の薬学組成物。
【請求項63】
上記キナーゼの基質は、
Arg Arg Lys Asp Leu His Asp Asp Glu Glu Asp Glu Ala Met Ser Ile Thr Ala[配列番号3]、又は、
Arg Arg Arg Ala Asp Asp Ser Asp[配列番号4]
の配列を有する、カゼインキナーゼの基質である、請求項62に記載の薬学組成物。
【請求項64】
上記EPACは、1つ又はそれ以上のリン酸化を受けることができるアミノ酸を有する合成ペプチドである、請求項47に記載の薬学組成物。
【請求項65】
上記合成ペプチドは、ランダムな配列中に、1つ又はそれ以上のセリン、スレオニン、及び/又はチロシンを含む、請求項64に記載の薬学組成物。
【請求項66】
上記合成ペプチドは、1つ又はそれ以上のリン酸化部位を有する、請求項64に記載の薬学組成物。
【請求項67】
上記EPACは、標的分子に付着される、請求項47に記載の薬学組成物。
【請求項68】
上記EPACの局所投与に適している、請求項47〜67のいずれか1項に記載の薬学組成物。
【請求項69】
上記EPACを、動物の皮膚に局所投与することに適している、請求項68に記載の薬学組成物。
【請求項70】
クリーム、ローション、軟膏、ペースト、ゲル、溶液、スプレー又は滴下剤である、請求項69に記載の薬学組成物。
【請求項71】
クリーム又は軟膏である、請求項70に記載の薬学組成物。
【請求項72】
上記PACは、細胞内リン酸受容体化合物(IPAC)である、請求項46に記載の薬学組成物。
【請求項73】
上記IPACは、
(Xaa[Ac−Lys(XaaXaa(Xaa又は、
(Xaa[Ac−Lys(XaaXaaXaa(XaaLys−Ac](Xaa
の配列を有するペプチドであって、当該配列においては、
Acはアシル基であり、
Xaaはどのようなアミノ酸であってもよく、
Xaaはセリン、スレオニン、又はチロシンであり、
mは0〜10であり、
nは1〜3であり、
pは1〜5であり、さらに、
m、n、及びpは、全アミノ酸数が約20未満になるように選択され、かつ、Xaaは、上記ペプチドが疎水性となるように選択される、請求項72に記載の薬学組成物。
【請求項74】
上記IPACは、キナーゼの基質である、請求項72に記載の薬学組成物。
【請求項75】
上記IPACは、1つ又はそれ以上のリン酸化を受けることができるアミノ酸を有する合成ペプチドである、請求項72に記載の薬学組成物。
【請求項76】
上記合成ペプチドは、ランダムな配列中に、1つ又はそれ以上のセリン、スレオニン、及び/又はチロシンを含む、請求項75に記載の薬学組成物。
【請求項77】
上記合成ペプチドは、1つ又はそれ以上のリン酸化部位を有する、請求項75に記載の薬学組成物。
【請求項75】
上記IPACは、標的分子に付着される、請求項72に記載の薬学組成物。
【請求項76】
細胞、組織、又は器官と、効果的な分量の細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)を含有する溶液又は媒体とを接触させることを含む、動物から取り出された細胞、組織、又は器官におけるリン酸化の増進を阻害する方法。
【請求項77】
上記EPACは、炎症を抑制する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
上記細胞、組織、又は器官が、上記EPACを含有する上記溶液又は媒体と接触された後に、動物へと移植される、請求項76又は77に記載の方法。
【請求項79】
細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)を含み、動物から取り出された細胞、組織、又は器官と接触させる溶液。
【請求項80】
複数のEPACの混合物を含有する、請求項79に記載の溶液。
【請求項81】
動物から取り出された細胞、組織、又は器官と、細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)又は複数のEPACの混合物とを接触させるためのキットであり、
EPACが入っている容器、
複数のEPACの混合物が入っている容器、又は、
それぞれにEPACが入れられている複数の容器(なお、上記複数の容器に入れられたそれぞれのEPACは、他のものと同じであっても、異なっていてもよい)を含む、キット。
【請求項82】
動物の口の組織と、効果的な分量の細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)とを接触させることを含む、動物の口の組織におけるリン酸化の増進を阻害する方法。
【請求項83】
上記組織は予防的に処理される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
上記組織は、予防的口腔療法の一部分として処理される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
上記組織は、手術前、手術中、手術後、又はそれらのいくつかの時点で処理される、請求項82に記載の方法。
【請求項86】
上記組織は、歯の摘出前、歯の摘出中、歯の摘出後、又はそれらのいくつかの時点で処理される、請求項82に記載の方法。
【請求項87】
全て又は実質的に全ての上記口の組織と、上記EPACとを接触させる、請求項82に記載の方法。
【請求項88】
リン酸化の増進に起因する動物の口の組織の疾病又は病状を治療する方法であり、効果的な分量の細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)と上記組織とを接触させることを含む方法。
【請求項89】
全て又はほぼ全ての上記口の組織と、上記EPACとを接触させる、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
効果的な分量の細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)と動物の口の組織とを接触させることを含む、リン酸化の増進に起因する動物の口の組織の炎症又は炎症性の疾病又は病状を治療する方法。
【請求項91】
上記炎症は、歯周部の組織の炎症である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
上記疾病又は病状は、歯肉炎である、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
上記疾病又は病状は、歯周病である、請求項90に記載の方法。
【請求項94】
上記炎症は、手術又は歯の摘出に関連するものである、請求項90に記載の方法。
【請求項95】
上記疾病又は病状は、細菌、酵母、真菌、又はウイルスの感染症である、請求項90に記載の方法。
【請求項96】
上記疾病又は病状は、潰瘍性口内炎、ヘルペス、又は潰瘍である、請求項90に記載の方法。
【請求項97】
全て又は実質的に全ての上記口の組織と、上記EPACとを接触させる、請求項90に記載の方法。
【請求項98】
効果的な分量の細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)と、動物の口の組織とを接触させることを含む、1つ又はそれ以上の動物の歯のホワイトニング方法。
【請求項99】
全て又はほぼ全ての上記口の組織と、上記EPACとを接触させる、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
歯のホワイトニング前、歯のホワイトニング中、歯のホワイトニング後、又はこれらのいくつかの時点で、上記組織と上記EPACとを接触させる、請求項98に記載の方法。
【請求項101】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたホスビチン又はその断片である、請求項82〜100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
上記ホスビチンは、ニワトリのホスビチンである、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたカゼイン又はその断片である、請求項82〜100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
上記カゼインは、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼイン、もしくはこれら何れかの断片、又は、それらを1つもしくはそれ以上組み合わせたものである、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
上記カゼインは、αs1−カゼインである、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)を含有する口腔ケア製品。
【請求項107】
口腔ケアデバイス(device)である、請求項106に記載の口腔ケア製品。
【請求項108】
縫合糸又はデンタルフロスである、請求項107に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項109】
ストリップ(strip)である、請求項107に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項110】
上記ストリップは、さらに歯のホワイトニング剤を含有する、請求項109に記載の口腔ケアデバイス。
【請求項111】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたホスビチン又はその断片である、請求項106〜110のいずれか1項に記載の口腔ケア製品。
【請求項112】
上記ホスビチンは、ニワトリのホスビチンである、請求項111に記載の口腔ケア製品。
【請求項113】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたカゼイン又はその断片である、請求項106〜110のいずれか1項に記載の口腔ケア製品。
【請求項114】
上記カゼインは、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼイン、もしくはこれら何れかの断片、又は、それらを1つもしくはそれ以上組み合わせたものである、請求項113に記載の口腔ケア製品。
【請求項115】
上記カゼインは、αs1−カゼインである、請求項114に記載の口腔ケア製品。
【請求項116】
細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)及び薬学的に許容可能なキャリアを含有する口腔ケア組成物。
【請求項117】
軟膏又はクリームである、請求項116に記載の口腔ケア組成物。
【請求項118】
洗浄液、すすぎ液、うがい液、スプレー、又は溶液である、請求項116に記載の口腔ケア組成物。
【請求項119】
ゲル、ペースト、又は粉末である、請求項116に記載の口腔ケア組成物。
【請求項120】
錠剤、ガム、トローチ、ミント、フィルム、又はパッチである、請求項116に記載の口腔ケア組成物。
【請求項121】
歯のホワイトニング組成物である、請求項116に記載の口腔ケア組成物。
【請求項122】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたホスビチン又はその断片である、請求項116〜121のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項123】
上記ホスビチンは、ニワトリのホスビチンである、請求項122に記載の口腔ケア組成物。
【請求項124】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたカゼイン又はその断片である、請求項116〜121のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項125】
上記カゼインは、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼイン、もしくはこれら何れかの断片、又は、それらを1つもしくはそれ以上組み合わせたものである、請求項124に記載の口腔ケア組成物。
【請求項126】
上記カゼインは、αs1−カゼインである、請求項125に記載の口腔ケア組成物。
【請求項127】
細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)を含有する口腔ケア製品を含むキット。
【請求項128】
口腔ケアデバイスは細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)を含有する口腔ケアデバイスを含むキット。
【請求項129】
上記デバイスは、ストリップである、請求項128に記載のキット。
【請求項130】
上記ストリップは、さらに歯のホワイトニング剤を含有する、請求項129に記載のキット。
【請求項131】
さらに歯のホワイトニング組成物を含む、請求項128に記載のキット。
【請求項132】
細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)及び薬学的に許容可能なキャリアを含有する口腔ケア組成物を含むキット。
【請求項133】
さらに歯のホワイトニング組成物を含む、請求項132に記載のキット。
【請求項134】
さらに、歯のホワイトニング剤を含有するストリップを含む、請求項132に記載のキット。
【請求項135】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたホスビチン又はその断片である、請求項127〜134のいずれか1項に記載のキット。
【請求項136】
上記ホスビチンは、ニワトリのホスビチンである、請求項135に記載のキット。
【請求項137】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたカゼイン又はその断片である、請求項127〜134のいずれか1項に記載のキット。
【請求項138】
上記カゼインは、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼイン、もしくはこれら何れかの断片、又は、これらの1つもしくはそれ以上組み合わせたものである、請求項137に記載のキット。
【請求項139】
上記カゼインは、αs1−カゼインである、請求項138に記載のキット。
【請求項140】
動物の皮膚と、効果的な分量の細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)とを接触させることを含む、動物の皮膚におけるリン酸化の増進を阻害する方法。
【請求項141】
上記皮膚は、予防的に処理される、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)を含む、パーソナルケア製品。
【請求項143】
パーソナルケアデバイスである、請求項142に記載のパーソナルケア製品。
【請求項144】
スポンジ、布、ティッシュ(wipe)、又はパッド(pad)である、請求項143に記載のパーソナルケアデバイス。
【請求項145】
包帯、縫合糸、又は手術用スポンジである、請求項143に記載のパーソナルケアデバイス。
【請求項146】
綿棒である、請求項143に記載のパーソナルケアデバイス。
【請求項147】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたホスビチン又はその断片である、請求項142〜146のいずれか1項に記載のパーソナルケア製品。
【請求項148】
上記ホスビチンは、ニワトリのホスビチンである、請求項147に記載のパーソナルケア製品。
【請求項149】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたカゼイン又はその断片である、請求項142〜146のいずれか1項に記載のパーソナルケア製品。
【請求項150】
上記カゼインは、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼイン、もしくはこれら何れかの断片、又は、それらを1つもしくはそれ以上組み合わせたものである、請求項149に記載のパーソナルケア製品。
【請求項151】
上記カゼインは、αs1−カゼインである、請求項150に記載のパーソナルケア製品。
【請求項152】
細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)及び薬学的に許容可能なキャリアを含有するパーソナルケア組成物。
【請求項153】
クリーム又はローションである、請求項152に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項154】
日焼け止めクリーム又はローションである、請求項153に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項155】
保湿クリーム又はローションである、請求項153に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項156】
洗浄液、すすぎ液、又は溶液である、請求項152に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項157】
ゲル又は軟膏である、請求項152に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項158】
粉末である、請求項152に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項159】
リップスティック、リップグロス、又はリップバームである、請求項152に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項160】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたホスビチン又はその断片である、請求項152〜159のいずれか1項に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項161】
上記ホスビチンは、ニワトリのホスビチンである、請求項160に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項162】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたカゼイン又はその断片である、請求項152〜159のいずれか1項に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項163】
上記カゼインは、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼイン、もしくはこれら何れかの断片、又は、それらを1つもしくはそれ以上組み合わせたものである、請求項162に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項164】
上記カゼインは、αs1−カゼインである、請求項163に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項165】
細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)を含有するパーソナルケア製品を含むキット。
【請求項166】
細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)を含有するパーソナルケアデバイスを含むキット。
【請求項167】
上記パーソナルケアデバイスは、スポンジ、布、ティッシュ、又はパッドである、請求項166に記載のキット。
【請求項168】
上記パーソナルケアデバイスは、包帯、縫合糸、医療用スポンジである、請求項166に記載のキット。
【請求項169】
上記パーソナルケアデバイスは、綿棒である、請求項166に記載のキット。
【請求項170】
細胞外リン酸受容体化合物(EPAC)及び薬学的に許容可能なキャリアを含有するパーソナルケア組成物を含むキット。
【請求項171】
上記組成物は、クリーム又はローションである、請求項170に記載のキット。
【請求項172】
上記組成物は、日焼け止めクリーム又はローションである、請求項171に記載のキット。
【請求項173】
上記組成物は、保湿クリーム又はローションである、請求項171に記載のキット。
【請求項174】
上記組成物は、洗浄液、すすぎ液、又は溶液である、請求項170に記載のキット。
【請求項175】
上記組成物は、ゲル又は軟膏である、請求項170に記載のキット。
【請求項176】
上記組成物は、粉末である、請求項170に記載のキット。
【請求項177】
上記組成物は、リップスティック、リップグロス、又はリップバームである、請求項170に記載のキット。
【請求項178】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたホスビチン又はその断片である、請求項165〜177のいずれか1項に記載のキット。
【請求項179】
上記ホスビチンは、ニワトリのホスビチンである、請求項178に記載のキット。
【請求項180】
上記EPACは、少なくとも部分的に脱リン酸化されたカゼイン又はその断片である、請求項165〜177のいずれか1項に記載のキット。
【請求項181】
上記カゼインは、α−カゼイン、β−カゼイン、γ−カゼイン、κ−カゼイン、もしくはこれら何れかの断片、又は、それらを1つもしくはそれ以上組み合わせたものである、請求項180に記載のキット。
【請求項182】
上記カゼインは、αs1−カゼインである、請求項181に記載のキット。

【図1】
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【公表番号】特表2007−521223(P2007−521223A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557358(P2004−557358)
【出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/037901
【国際公開番号】WO2004/050023
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(502113644)ディーエムアイ バイオサイエンシズ インコーポレイテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】DMI BIOSCIENCES,INC.
【Fターム(参考)】