リン酸塩結合複合材および方法
無機−有機複合材物品、および無機接着剤として無機酸性/アルカリ性前駆体成分を使用するそれらの製造方法を提供する。それから調製される物品は、改善されたたわみ性、非延焼性、揮発性有機化合物の排出なし、および小さいカーボンフットプリントを実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、無機−有機複合材物品およびそれらの製造方法に関する。具体的に、当該物品および方法は、接着剤として無機酸性/アルカリ性前駆体成分を含み、これらは、有機材料と共に固化して無機バインダーとなる。
【背景技術】
【0002】
酸−塩基セメント(ABC)は、弱酸と好適な塩基との反応により形成される。無機酸−塩基セメントの最も一般的な例は、リン酸塩セメント、オキシ塩化物およびオキシ硫酸塩セメントである。これらの中で、リン酸塩セメントが最も研究されてきており、歯科用セメント、放射性で有害な廃棄物流の安定化用のセラミックス、油田用途用の特殊なセメント、ペイントおよびコーティングおよび接着剤用の樹脂、道路のパッチング材料などの範囲の複数の製品が開発されてきた。これらの中で、商品化されたものはわずかである。
【0003】
天然繊維複合材を製造するための無機セメント系バインダーの使用が試みられてきた。例えば、ポルトランドセメントまたはアルミン酸カルシウムセメントの薄いペーストの、接着剤としての使用が報告されている。しかし、これらのセメント系バインダーは、強アルカリ性であり、これらの材料から調製されるペーストは、非常に濃密であり、木材/繊維のセルロース構造の細胞および毛細管を効果的に含浸させることができず、繊維を含浸させる前に硬化する恐れがある。結果的に、繊維におけるこれらのセメント系バインダーの充填量は、非常に低い。したがって、繊維含有物により、接着剤として使用されるセメントではなく、大量の繊維を充填するためのセメントの性質が本質的に改善される。
【0004】
他の既に報告されている無機複合材は、リン酸とカルシウム、マグネシウム、またはジルコニウムのケイ酸塩またはアルミン酸塩との反応生成物を含み、再生紙で包まれた石膏ボードの様なコアを製造するために様々な充填剤と共に使用される。壁板および他の同様の製品のこの製造方法には、複数の欠点がある。すなわち、非常に低いpHのリン酸溶液の使用は、装置の腐食につながり、取扱いが困難となる。これは、特に、製品を大規模製造する場合に当てはまる。このアプローチは、わずかに可溶性の粉末状前駆体成分も使用する。ケイ酸カルシウムまたは他のケイ酸塩またはアルミン酸塩は、周囲温度でわずかに可溶性であり、完全には反応せず、その結果、ケイ酸塩の大部分が、複合材製品中に粒状物質として未反応のまま残る。したがって、この既に報告されている方法により製造される壁板は、本質的に、セルロース、セメント、および可変量の未反応の前駆体粉末の複合材である。この不完全な反応により、期待されるものより低い性能属性を有する複合材製品が生じる。既に報告されている方法は、機械的性能が低い石膏の様な板の製造には適している可能性があるが、高品質で多目的な繊維強化複合材の製造には適していない。
【0005】
さらに、既に報告されている方法の無機酸成分は、ケイ酸塩前駆体を利用する反応のための唯一の効果的な酸性リン酸塩としてのリン酸に限定されている。酸性リン酸塩(リン酸二水素ナトリウムおよびカリウム、それぞれNaH2PO4およびKH2PO4など)さらにはアルカリ性リン酸塩(リン酸二カリウム、K2HPO4など)を、ケイ酸塩およびアルミン酸塩と室温で反応させることは困難であり、バインダーを製造するためにアルカリ性リン酸塩を扱って作業することが困難または不可能であることが一般に知られている。したがって、既に報告されているプロセスが、リン酸以外の任意の酸性リン酸塩を扱って作業するとは考えられない。上記の既に開示されているプロセスは、ケイ酸塩およびアルミン酸塩を用いた製品(主に壁板)を挙げているが、しかし、高充填量のセルロースを有するような製品は挙げていない。
【0006】
同様に、セルロース複合材を製造するためのセラミクリート(Ceramicrete)技術の使用が報告されており、そこでは、焼成酸化マグネシウムとリン酸モノカリウムとを反応させてマトリックスを生成し、そこではセルロースが強化材を形成している。したがって、セルロース複合材を製造するためのCeramicrete技術の使用は、セメント系材料がセルロース繊維により強化され、結果的に、繊維の充填量が低い、上記の既に開示されている方法と同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
固体焼成酸化物または焼成鉱物(例えば、ケイ酸カルシウム)と無機酸性成分前駆体溶液とを繊維と共に1ステップで混合する方法は、効率的ではなく、物品形成の再現性に影響を及ぼす再生可能なパルプの生成の技術的および製造上の問題を提示する。無機酸性成分と固体または焼成されたアルカリ性酸化物成分との間の酸−塩基反応が急速に進むので、繊維の混合およびウェットアウトのための時間が十分ではないと考えられている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願で論じる方法、組成物および製品は、高充填量のセルロース材料および非常に低い充填量の無機バインダーを有する製品を製造することを意図しており、したがって、本明細書において開示および記載している材料、方法、および製品は、既に報告されている上で論じたものとははっきりと異なる。
【0009】
本明細書において開示および記載しているのは、無機バインダーを有する複合材を提供するのに適した無機酸性/アルカリ性接着剤と合わせた天然の繊維状材料から複合材を製造するための製品および方法である。したがって、一態様において、有機−無機複合材材料を製造することができる。無機酸性/アルカリ性成分は、市販されている複合材製品において現在使用されている従来の有機接着剤を代替することができる。結果として得られる、無機バインダーを含む複合材は、非延焼性、および/またはそれらの製造もしくは使用もしくは熱曝露の間の揮発性有機化合物(VOC)排出の低下もしくは揮発性有機化合物(VOC)排出ゼロなどの、有機ベースの接着剤より改善された性質を示す。結果として得られる、本開示の無機バインダーを含む複合材は、市販されている複合材料と比較して低い温度で硬化することができる。これらの特色により、これらの製品の製造の間のエネルギー消費量がかなり節約され、カーボンフットプリントが非常に小さくなる。
【0010】
したがって、第1の実施形態において、複合材製品の製造方法を提供する。当該方法は、有機材料を準備するステップと、有機材料を無機接着剤と接触させるステップであって、無機接着剤は、無機酸性前駆体とアルカリ性前駆体との混合物を含むステップとを含む。
【0011】
第1の実施形態の第1の態様において、有機材料の無機接着剤全体に対する水分を除いた重量比は、約99:1〜約2:1の間、好ましくは約10:1〜約5:1の間、より好ましくは約7:1である。第1の実施形態の第2の態様において、有機材料は、木材ベニヤ、長短フレーク、長繊維、短繊維、ストランド、鋸屑、木材粒子、繊維束、砕木パルプ(SGW)、加圧式砕木パルプ(PSW)、リファイナメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ、ソーダパルプ、さらしパルプ、種子繊維、葉繊維、靭皮繊維、果実繊維、茎繊維、絹、羊毛、クモの糸、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種を含む。
【0012】
第1の実施形態の第3の態様において、無機酸性前駆体およびアルカリ性前駆体は、独立して、溶液、懸濁液、ゲル中に、またはペーストとして存在する。
【0013】
第1の実施形態の第4の態様において、アルカリ性前駆体は、溶液中に存在する。
【0014】
第1の実施形態の第5の態様において、接触ステップは、有機材料を最初にアルカリ性前駆体溶液と接触させ、次いで、無機酸性前駆体溶液と接触させること、または有機材料を無機酸性前駆体と接触させ、その後、アルカリ性前駆体と接触させること、または有機材料を無機接着剤と接触させることを含む。
【0015】
第1の実施形態の第6の態様において、無機酸性前駆体およびアルカリ性前駆体を、それぞれ別個に有機材料と混合して、独立して、別個の酸性の繊維パルプまたは繊維、および別個のアルカリ性のパルプまたは繊維を形成する。
【0016】
第1の実施形態の第7の態様において、当該方法は、別個の酸性およびアルカリ性のパルプまたは繊維を合わせるステップと、十分な量の水と混合するステップと、固体複合材製品を形成するステップとをさらに含む。
【0017】
第1の実施形態の第8の態様において、当該方法は、別個の酸性およびアルカリ性のパルプを乾燥させるステップと、乾燥した酸性およびアルカリ性のパルプまたは繊維を合わせるステップと、合わせた乾燥した酸性およびアルカリ性のパルプまたは繊維を水と混合するステップと、固体複合材製品を形成するステップとをさらに含む。
【0018】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、アルカリ性前駆体成分は、アルカリ性の酸化物、水酸化物、または酸化物鉱物のうちの少なくとも1種を含む。
【0019】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、無機酸性前駆体成分は、酸性リン酸塩、塩化物、または硫酸塩のうちの少なくとも1種を含む。
【0020】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、アルカリ性前駆体は、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ランタニドの一価、二価、もしくは三価の金属酸化物もしくは水酸化物、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストのうちの少なくとも一種を含む。
【0021】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、アルカリ性前駆体は、金属水酸化物に富んだブラインの溶液であり、例えば、ブラインは、水酸化マグネシウムブライン溶液、または水酸化アルミニウムのバイヤーの貴液などである。
【0022】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、または水酸化カルシウム(Ca(OH)2)から選択されるアルカリ金属水酸化物などの適切な量のアルカリ金属水酸化物の高アルカリ性溶液を添加して、アルカリ性前駆体の水性pHを上昇させるステップをさらに含む。
【0023】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、アルカリ性前駆体の水性pHは、約8〜約14の間、好ましくは約9〜約12の間、最も好ましくは約10〜約11の間である。
【0024】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、無機酸性成分は、リン酸、またはリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)を含む酸性リン酸塩、MgCl2、MgSO4、およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種を含む。
【0025】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、無機酸性成分の溶液pHを約0〜約6の間、好ましくは約3〜約5の間、最も好ましくは約3〜約4.5の間に調整するステップをさらに含む。pHは、リン酸水素塩を添加することにより低下させることができる。
【0026】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、わずかに可溶性のケイ酸塩、ケイ酸カルシウム(ウォラストナイト、CaSiO3)、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、バイヤープロセスによる廃棄物、銅鉱石からの銅の抽出の間に生じる酸性の廃棄物流、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流を含む酸化物鉱物、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種を添加するステップをさらに含む。
【0027】
第1の実施形態の別の態様において、アルカリ性成分は酸化マグネシウムであり、無機酸性成分前駆体は塩化マグネシウムまたは硫酸マグネシウム溶液から選択される。
【0028】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、無機酸性前駆体成分またはアルカリ性前駆体成分のうちの少なくとも一方を、セルロースとの接触の前に水の沸点未満の温度まで加熱するステップをさらに含む。
【0029】
第1の実施形態の別の態様において、無機酸性成分はリン酸水素アルミニウムであり、アルカリ性成分は酸化アルミニウム(Al2O3)または水酸化アルミニウム(Al(OH)3)であり、例えば、リン酸水素アルミニウムとアルカリ性成分とを混合してペーストを形成し、次いで、ペーストをセルロースと混合する。当該方法は、複合材物品を形成するのに十分な時間、セルロースと混合したペーストを約400°Fで加熱するステップをさらに含むことができる。
【0030】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、有機材料を圧縮するステップ、ならびに/あるいは真空および/または音波処理を適用するステップをさらに含む。
【0031】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、無機酸性前駆体とアルカリ性前駆体との重量比は、10:1と1:5の間、好ましくは約9:1と1:3.5の間、より好ましくは約8:1〜約1:3.5の間である。当該方法は、圧縮の前に無機接着剤の一部を差し引き、次いで、圧縮の終わり近くに無機接着剤の残存部分を添加するステップをさらに含むことができる。
【0032】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、有機材料と無機接着剤とを混合するステップと、複合材試料に熱を加えて、複合材の温度を<400°Fまで上昇させるステップをさらに含む。
【0033】
第2の実施形態において、繊維強化セラミックス複合材の製造方法を提供する。当該方法は、無機酸性前駆体と溶液中のアルカリ性前駆体との混合物を含む無機リン酸塩接着剤を準備するステップと、約40wt.%未満のセルロース材料を準備するステップと、セルロース材料を無機リン酸塩接着剤と接触させるステップとを含む。
【0034】
第2の実施形態の第1の態様において、セルロース材料は、木材ベニヤ、長短フレーク、ストランド、鋸屑、木材粒子、繊維束、および/またはパルプ化により得られる製品、砕木パルプ(SGW)、加圧式砕木パルプ(PSW)、リファイナメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ、ソーダパルプ、さらしパルプ、種子繊維、葉繊維、靭皮繊維、果実繊維、茎繊維、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種を含む。
【0035】
第2の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、セルロース材料を最初にアルカリ性前駆体溶液と接触させ、次いで、無機酸性前駆体と接触させるか、またはセルロース材料を無機酸性前駆体と接触させ、その後、アルカリ性前駆体溶液と接触させるか、またはセルロース材料を無機接着剤と接触させる。
【0036】
第2の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、無機接着剤は、リン酸塩セラミックス、オキシ塩化物セラミックス、オキシ硫酸塩セラミックス、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種である。
【0037】
第2の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、無機リン酸塩接着剤は、二価もしくは三価の金属、またはそれらのケイ酸塩を含む。
【0038】
第2の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、ケイ酸カルシウム(ウォラストナイト、CaSiO3)、かんらん石、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、バイヤープロセスによる廃棄物、銅鉱石からの銅の抽出の間に生じる酸性の廃棄物流、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種を添加するステップをさらに含む。
【0039】
第2の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、無機接着剤およびセルロース材料を射出成形もしくは押し出しするステップをさらに含み、真空を適用するステップまたは音波処理を適用するステップをさらに含むことができる。
【0040】
第2の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、無機酸性前駆体成分またはアルカリ性前駆体成分のうちの少なくとも一方を、セルロースとの接触の前に水の沸点未満の温度まで加熱するステップをさらに含む。
【0041】
第2の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、繊維強化複合材は、耐火性、非延焼性、温室効果ガスの最小限の排出、揮発性有機化合物の排出なし、および低い吸水率を実現する。
【0042】
第3の実施形態において、不燃性のブロー可能な断熱材の製造方法を提供する。当該方法は、細断された紙、鋸屑、鉋屑、細断されたプラスチック、ガラス粒子もしくはガラス繊維;石膏、発泡性粘土、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種を含むブロー可能な材料を準備するステップと、(i)リン酸、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、MgCl2、MgSO4、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)、およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種を含む無機酸性成分と、(ii)マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ランタニドの一価、二価、もしくは三価の金属酸化物もしくは水酸化物、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストを含むアルカリ性前駆体とを含む無機接着剤を準備するステップと、無機接着剤をブロー可能な材料と結合させるのに十分な時間、ブロー可能な材料を無機接着剤と接触させるステップとを含む。
【0043】
第4の実施形態において、非延焼性の物品の製造方法を提供する。当該方法は、可燃性材料を準備するステップと、可燃性材料の少なくとも一部に対して無機接着剤のコーティングを実施するステップとを含み、無機接着剤は、リン酸塩セラミックス、オキシ塩化物セラミックス、オキシ硫酸塩セラミックス、二価または三価の金属酸化物またはそれらのケイ酸塩、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種と、ケイ酸カルシウム(ウォラストナイト、CaSiO3)、かんらん石、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、バイヤープロセスによる廃棄物、銅鉱石からの銅の抽出の間に生じる酸性の廃棄物流、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種と、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストを含む少なくとも1種のアルカリ性前駆体成分との混合物を含む。
【0044】
第4の実施形態の第1の態様において、可燃性の物品は壁板もしくは天井タイルであるか、またはセルロース繊維の延伸織物マットを含む。
【0045】
上記実施形態の前述の態様のいずれか1つにおいて、可燃性の物品は、セルロース繊維の延伸織物マットまたは複数の木材の薄い積層シートを含み、木材の各シートは無機接着剤により結合されており、それによりベニヤシート製品が得られる。
【0046】
第5の実施形態において、耐火性の紙および紙製品の製造方法を提供する。当該方法は、セルロース材料を準備するステップと、(i)リン酸、またはリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、MgCl2、MgSO4、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)を含む酸性リン酸塩;およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種を含む無機リン酸塩溶液、ならびに(ii)マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウムまたはランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストのうちの少なくとも一種を含むアルカリ性前駆体溶液を含む無機接着剤前駆体を準備するステップとを含む。セルロース材料および無機接着剤のペーストを準備する。場合により、当該方法は、ペーストを乾燥させるステップと、紙としての使用に適した厚さの繊維マットを準備するステップとを含む。セルロース材料の無機接着剤に対する乾燥重量比は、紙または紙製品が耐火性および/または非延焼性を実現するように、約1wt.%〜約20wt.%の間とすることができる。
【0047】
第5の実施形態の第1の態様において、当該方法は、ケイ酸カルシウム(ウォラストナイト、CaSiO3)、かんらん石、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、ケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種をさらに含む。当該方法は、難燃性の紙材料または紙製品ならびに/あるいは不燃性の家庭用および商業用のビルディングラップまたは壁紙を提供する。
【0048】
第6の実施形態において、非延焼性の木製の物品を製造するための木材の処理方法を提供する。当該方法は、(i)リン酸、またはリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、MgCl2、MgSO4、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)を含む酸性リン酸塩、およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種と、(ii)マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストの1種または複数のアルカリ性前駆体溶液とを含む組成物と木材物品とを接触させるステップを含む。場合により、ケイ酸カルシウム(ウォラストナイト、CaSiO3)、かんらん石、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、バイヤープロセスによる廃棄物、銅鉱石からの銅の抽出の間に生じる酸性の廃棄物流、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種を添加する。当該組成物と接触させた木材物品は乾燥させる。
【0049】
第6の実施形態により製造される非延焼性の木材物品を提供する。
【0050】
上記実施形態の前述の態様のいずれか1つから製造される複合材物品も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】開示および記載している無機繊維複合材の調製の第1の態様を示す図である。
【図2】開示および記載している無機繊維複合材の調製の第2の態様を示す図である。
【図3】開示および記載している無機繊維複合材の調製の第3の態様を示す図である。
【図4】開示および記載している無機繊維複合材の調製の第4の態様を示す図である。
【図5】開示および記載している無機繊維複合材の調製の第5の態様を示す図である。
【図6】開示および記載している無機繊維複合材の調製の第6の態様を示す図である。
【図7】開示および記載している無機繊維複合材を使用しているサンドイッチ壁板またはタイルの態様を示す図である。
【図8】本明細書で開示および記載している酸−塩基接着剤を使用することにより紙および包装材料を製造するステップの態様を示す図である。
【図9】本明細書で開示および記載している射出成形技術を使用することにより無機繊維複合材料を製造するステップの態様を示す図である。
【図10】本明細書で開示および記載している無機バインダーのwt%に応じた無機バインダー紙製品を炭化させる時間を図表で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
概して、無機リン酸−塩基バインダーを使用する、木材および植物から誘導されるリグノセルロース材料などの天然の繊維状材料などの有機材料の結合方法を開示および記載している。無機酸−塩基バインダーで結合された繊維を含む複合材物品も開示および記載している。少なくとも1つの態様において、本明細書でさらに記載する無機セルロース複合材物品用のバインダーを提供するための無機リン酸−塩基接着剤として、無機酸性成分およびアルカリ性成分の前駆体の水溶液を利用する。
【0053】
本明細書において開示および記載しているのは、それぞれの酸性/アルカリ性前駆体の酸−塩基反応により製造される無機接着剤、およびそれから調製される新規のセルロース材料複合材である。これらの無機接着剤は、ある程度、リン酸塩、オキシ塩化物、およびオキシ硫酸塩前駆体を含むが、これらに限定されない。結果として得られる、本明細書に開示の無機バインダーを含む複合材製品は、有機バインダーから形成される複合材とははっきりと異なる。無機セルロース複合材は、軽量、難燃性、および高延性などの特有の性質を示す。
【0054】
酸−塩基接着剤は、アルカリ性成分としての酸化物または水酸化物と、無機酸性成分としての酸性リン酸塩または金属塩化物または金属硫酸塩との酸−塩基反応により形成される。水の存在下での反応により、セルロースを結合させる能力、および/またはセルロース材料内の細胞内腔を満たす能力を有し、複合材に固体構造を付与する、酸−塩基接着剤が生成される。一般に、細胞内腔は非常に小さいので、バインダー成分が空隙に入るために毛細管作用が必要とされると考えられている。開示している前駆体成分は低濃度および低粘度で提供することができるので、毛細管作用はこの成分により促進される。
【0055】
セルロースの反復単位であるセルビオースは、6個のヒドロキシル基を含有する。セルロースの重合の程度(単一のポリマー鎖内の反復単位の総数)は、最大で約1500とすることができる。これらのセルロースの反復単位は、鎖内および鎖間の多数の分子内および分子間水素結合により結合される。いかなる理論にも拘束されるものではないが、水性の酸−塩基接着剤を使用することにより、この水素結合が強化され、複合材が提供されると考えられている。一般に、従来の有機接着剤は、エーテル、エステル、または新たな水素結合を生成することにより、セルロースのヒドロキシル基と相互作用するように設計されている。例えば、フェノールホルムアルデヒド、および他のポリオールベースの接着剤は微孔質の木材表面を相互に連結させる高分子網目構造を形成する能力を有するので、これらが木材複合材において主に使用されている。水性の無機酸性/アルカリ性前駆体接着剤を使用すると同様の結合機構が生じる可能性が高いと考えられている。
【0056】
一般に使用されている木材複合材用の有機接着剤は、ホルムアルデヒドベース、例えば、フェノールホルムアルデヒド、レソルシノールホルムアルデヒド、またはフェノール−レソルシノールホルムアルデヒドの組合せ、尿素ホルムアルデヒド、混合尿素ホルムアルデヒド、またはメラミンホルムアルデヒドである。他の一般に使用されている接着剤としては、ウレタンベースの有機ポリマー、イソシアネート、エポキシ、ポリビニルおよびエチレン酢酸ビニル分散接着剤が挙げられる。全ての有機ベースの接着剤は、揮発性有機化合物を生成するだけではなく、膨大なカーボンフットプリントも有する。ポリマー1トン当たり約1.25〜1.5トンの温室ガスが生じる。対照的に、無機リン酸塩ベースの接着剤は、揮発性有機化合物を全く生成せず、接着剤1トン当たり約0.2〜0.25トンの温室ガスのみを生成し、これは、有機ポリマー接着剤の約5分の1〜6分の1である。
【0057】
本明細書において開示および記載している無機接着剤を使用する別の利点は、繊維を乾燥させることなく繊維ベースの複合材を調製する能力である。有機ポリマー接着剤を使用すると、接着剤の繊維表面での適当な湿潤のため、ならびに樹脂/繊維界面での水分取込みを回避するために、木材/繊維を十分に乾燥させなければならない。木材/繊維内の水の重量は、乾燥木材自体の重量に匹敵する可能性があり、したがって、乾燥によりエネルギーが失われる。さらに、木材/繊維の乾燥により、テルペンなどの揮発性有機化合物(VOC)が排出される。対照的に、無機酸性/アルカリ性前駆体接着剤を使用する本開示のプロセスは、バインダーの適当な湿潤または形成を開始するのに乾燥繊維を必要としない。実際、本開示の無機酸性/アルカリ性前駆体接着剤は、水溶液とすることができる。木材繊維中に存在する自由水は、プレスの間に絞り出され、それ故、接着剤の(酸性ならびにアルカリ性の)成分の溶解が最大となり、それにより、より早い反応が促進され、それにより硬化時間が短縮される。同じ無機バインダー系は、また、結果として得られる複合材中のテルペンなどのVOCを捕捉し得る。
【0058】
セルロース材料
無機酸−塩基繊維複合材または繊維強化セラミックスの提供、および本明細書において開示および記載している方法の実施において、任意のセルロース材料を使用することができる。リグノセルロース材料は、木材または植物材料から得られる硬材および軟材繊維が挙げられるがこれらに限定されない様々な形態で得ることができる。繊維状材料は、木材ベニヤ、長短フレーク、ストランド、鋸屑、木材粒子、繊維束、ならびに/あるいは砕木パルプ(SGW)、加圧式砕木パルプ(PSW)、リファイナメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、クラフトパルプ、ソーダパルプ、再生パルプ、およびさらしパルプなどの様々なパルプ化方法により得られる原材料とすることができる。繊維状材料としては、トウモロコシの毛、種子繊維、葉繊維、靭皮(皮膚)繊維、果実繊維、および茎繊維などの様々な植物繊維も挙げられる。セルロース材料は、木材の薄いシートまたは圧縮木材の形態、例えば、ベニヤ等を含む。上記の例に加えて、セルロース材料は、非セルロースベースの材料、例えば、羊毛、絹、およびクモの糸などの他のバイオマテリアルも包含する。セルロース材料は、長繊維および短繊維を含む。これらの代表的な原材料の例は、以下で、限定することなく、「リグノセルロース材料」または、互換的に「セルロース材料」と呼ぶ。
【0059】
セルロース材料を有する複合材の開発に適した天然のセルロース材料は、リグニン、ヘミセルロース、セルロース、および抽出物からなる。本明細書において開示および記載している方法は、リグニン、ヘミセルロース、および抽出物の全てまたは一部を除去するためのいくつかの処理の有無に関わらず、これらのセルロース材料に適用可能であるが、多少のヘミセルロースの除去により、一般に、より良好な製品が得られる。リグニンおよびヘミセルロースの除去は、よく知られているクラフトまたはソーダパルプ化プロセス、すなわち、アルカリ性溶液におけるセルロース材料の煮沸を伴い、そこでは、沸騰アルカリを使用してリグニンおよびヘミセルロースの一部が抽出される。本開示の方法の少なくとも1つの態様において、除去したリグニンおよびヘミセルロース材料を、次いで、複合材の形成の間に無機接着剤で代替する。また、当該接着剤により、除去した材料の代替に加えて、セルロースと残りの成分とが結合され、複合材が形成する。
【0060】
無機酸性/アルカリ性接着剤組成物
少なくとも1つの態様において、無機酸性前駆体およびアルカリ性前駆体成分は、複合材用の接着剤として機能し、固化すると、複合材用の無機バインダーとなる。バインダー前駆体組成物としては、リン酸塩バインダー、オキシ塩化物およびオキシ硫酸塩セラミックスなどの全て異なる形態の酸−塩基の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。特に、本明細書において開示しているのは、詳細には、リン酸塩酸性前駆体/アルカリ性前駆体成分であるが、本明細書において開示および記載している方法は、一般に、他のバインダーに適用可能であり、それ故、全ての酸−塩基バインダーが想定される。
【0061】
本明細書において開示および記載している、水溶液を使用して無機酸−塩基接着剤を生成する方法は、粉末状のやや溶けにくい金属酸化物をリン酸溶液と反応させてセメント系バインダーを生成する既に報告されているリン酸塩結合構造の製品とははっきりと異なる。金属酸化物は、リン酸成分前駆体と完全に反応しないか、または完成製品にコアシェル形態を付与し、離散した金属酸化物粒子が複合材製品中に残るので、これらの既に報告されている方法は、やや溶けにくい固体粉末を含有するセメント系バインダーを伴う。粉末金属酸化物を使用する場合のアルカリ性成分のこの不完全な反応により、本明細書において開示および記載している溶液中のアルカリ性成分前駆体と比較して品質および性能が劣っている製品が生じる。
【0062】
さらに、粉末金属酸化物(一般に焼成酸化物)を使用する、既に報告されている無機セメント系のプロセスにおいて、金属酸化物の焼成は、エネルギーを消費するプロセスであり、プロセス全体のカーボンフットプリントが増大する。既に報告されているプロセスは、大規模製造を困難にする限界を有し、例えば、セメント系の結合繊維複合材の製造の間に、(焼成)酸化物およびリン酸の両方を繊維と本質的に同時に混合する必要がある。粉末金属酸化物を使用する無機セメント系プロセスにとっては固化反応が急激であるので、繊維が焼成酸化物と混合および/または反応する時間、繊維を含浸させる時間、ならびに繊維が効果的にコーティングされる時間がほとんど残らない。一般に、この結果、本明細書において開示および記載しているプロセスと比較して質の悪い繊維複合材が生じる。さらに、無機酸性成分と共に焼成金属酸化物を使用すると繊維の充填量が低下し、無機バインダーがセルロース材料を強化している本開示の方法および製品とは対照的に、セルロース材料がセメントを強化している複合材料が生じる。
【0063】
本明細書において開示しているのは、未焼成の金属水酸化物および酸性リン酸塩の好適な溶液を使用してセルロース繊維複合材用の無機バインダーを提供する接着剤を開発するプロセスである。既に報告されているセメント系の繊維複合材形成方法、および結果として得られる製品に対する、これらの開示しているプロセスの利点は複数ある。例えば、未焼成の金属水酸化物は、焼成酸化物または鉱物(例えば、ケイ酸カルシウム)と比較して高い溶解度を有する。結果的に、未焼成の金属水酸化物を接着剤として使用する無機酸性/アルカリ性の反応生成物の収率が増大し、したがって、必要とされる無機酸性/アルカリ性のバインダーの総量が少なくなる。アルカリ性成分前駆体用の未焼成の水酸化物、例えば、ドロマイト鉱山から抽出および誘導される水酸化マグネシウムブラインを調達することにより、溶液からの水酸化マグネシウムの物理的分離が排除され、エネルギーが節約され、さらにカーボンフットプリントが減少する。より酸性ではない酸性リン酸塩を使用することにより、強酸の取扱いおよびその後の製造装置の腐食、強酸廃棄物の廃棄、および製造される物品内または物品上に存在する残留酸化物が回避される。
【0064】
有益なことに、無機接着剤用に、より遅く反応する酸性リン酸塩溶液を無機酸性成分前駆体として使用すること、および酸化物または水酸化物または酸化物鉱物の溶液をアルカリ性成分として使用することにより、改善されたセルロース複合材が提供されることが分かった。本開示の方法は、接触時にセルロース材料繊維の本質的に完全な湿潤を実現し、結果的に、繊維と無機酸性/アルカリ性接着剤との優れた結合を発生させ、セメント系バインダーを含むセルロース複合材と比較して優れた性質を有する複合材物品を提供する。
【0065】
上記属性は、単独で、または組み合わさって、固体金属酸化物または焼成金属酸化物/鉱物をアルカリ性成分前駆体として利用する既に開示されている方法では通常製造することができない様々な製品の製造を実現する。例えば、いかなる限定も暗示することなく、本開示の方法により製造される複合材物品は、既に報告されているセメント系の方法では通常製造することができない、非常に高充填量のセルロースならびに最小量の接着剤/バインダーを有する製品を提供する。
【0066】
さらに、本開示の方法およびセルロースと無機酸性/アルカリ性成分溶液との混合物を含む材料(例えば、セルロースと無機酸性/アルカリ性成分溶液との混合物を含有するパルプ)は、研磨粒状物質の存在なしで容易に押し出すことができる。本明細書において開示および記載している低粘度の無機酸性/アルカリ性成分溶液は、セルロース繊維マットおよび個々の繊維マットの織り目の間に注入/射出することができ、高性能の改善された繊維マトリックス複合材を提供する。対照的に、既に報告されているバインダー組成物中に通常存在する固体粒状物質は、マットの層/繊維または織り目の間の多孔質空間を詰まらせ、注入/射出加工を妨害または禁止する。
【0067】
本開示のアルカリ性前駆体の溶液粘度は、既に報告されている複合材形成方法のものより低い。結果的に、これらの溶液のポンピングおよび射出が容易になり、繊維における無機バインダー成分のより大きな含浸が可能となり、優れた複合材物品が提供される。
【0068】
一態様において、酸性およびアルカリ性成分の両方を、最初に、好ましくはそれらの最適な溶解度となるように、水性媒体中に溶解または供給し、例えば、標準的な複合プロセスを使用してそれらの液体画分をセルロース材料と接触させる。接触は、射出、および前駆体をセルロース材料内およびセルロース材料中に分散させることを意図した他のプロセスを含むことができる。他の態様において、酸性およびアルカリ性成分の少なくとも一方または両方を、セルロース材料との接触の前に加熱する。酸性およびアルカリ性成分は、水の沸点付近の温度まで加熱することができる。1つの特定の態様において、酸性およびアルカリ性成分の少なくとも一方または両方を、セルロース材料との接触の前に最大で水の沸点付近まで加熱する。
【0069】
無機酸性およびアルカリ性前駆体溶液のセルロース材料への導入後、予想される前駆体材料単独での反応、またはセルロース材料の様々な官能基との組合せによる反応と同様に、酸−塩基反応が一般に発生する。これらの反応は、セルロースの湿潤した表面で発生することができ、セルロース繊維を互いに結合させる。酸性およびアルカリ性成分は、セルロース材料と接触させた後、さらに加熱することができ、例えば、最大で約400°Fまで加熱して、無機バインダーの硬化を加速することができる。加熱は、酸性およびアルカリ性成分のセルロース材料内での分散を促進する、圧力、真空および/または音波処理などの他のプロセスと組み合わせて実施することができる。
【0070】
特定の実施形態において、酸性/アルカリ性成分を繊維細胞に含浸させ、それにより必要な量の溶液のみを導入し、したがって、過剰な接着剤溶液または水の使用の低下を実現する音波ミキサーおよび/または真空チャンバの使用を提供する。特定の態様において、本明細書において開示および記載している方法は、利用する酸/塩基の前駆体溶液に固有のものであり、したがって、1種または複数の加工技術を、特定の酸/塩基溶液に適合させることができる。様々な態様において、これらの特定の組成物および対応する加工技術を提供する。
【0071】
酸性およびアルカリ性成分の両方の組合せ中に存在する過剰な水も、繊維を十分に湿潤させることができ、これは、既に開示されているプロセスでは得られない利点である。この過剰な水は、湿潤した複合材料に圧力を適用し、その後、熱処理を適用することにより、または熱および圧力を同時に適用することにより除去することができる。
【0072】
セラミクリート(Ceramicrete)などの従来の酸−塩基セメント系材料とは対照的に、本明細書に開示の濃縮水溶液は、化学量論的に過剰な水を含有し、それ故、無機接着剤は、本質的に全ての化学量論的に過剰な水が除去されるまで、急速に固化することができない(そして複合材は凝固しない)。この改善により、既に報告されている繊維を有するセメントを使用することでは通常困難な、複合材製作プロセスの利点が生じる。
【0073】
繊維強化セラミックス複合材
セルロース繊維強化セラミックス複合材は、一般に、セルロース材料の量、例えば、約35〜40wt%未満の繊維を上回る量で酸−塩基前駆体を用いて調製される物品として理解される。この場合、量が少ないセルロース材料を酸−塩基前駆体粉末/ペーストの一方または両方と混合してパルプを形成し、次いで、これをプレスにより成形する。結果として得られる製品は、セルロース材料が強化剤として作用している、硬質および高密度のセラミックスである。セルロースの密度の低さおよびその繊維状の性質に起因して、結果として得られる製品は、元のセラミックスより軽く、セルロース材料を用いていない脆性セラミックスより優れた破壊靱性、ならびに曲げ特性を有する。軽さおよびより高い曲げ強度により、良好な耐衝撃性も製品に付与される。少なくとも1つの態様において、本明細書において開示および記載しているのは、そのような繊維強化セラミックス複合材およびそれから調製される物品の配合である。したがって、セルロース材料は、セラミックスマトリックスにおいて充填剤として使用され、そこでは、セルロース材料の充填量は、一般に、無機酸性/アルカリ性前駆体成分より低い。これらの方法により調製されるセラミックスマトリックスは、リン酸塩、オキシ塩化物、またはオキシ硫酸塩セメントなどのセメント系無機酸−塩基セメントと比較して優れた機械的性質、改善された延性および耐衝撃性を証明しており、既に報告されている方法および材料により製造されるものと比較して均一である。
【0074】
本明細書において開示および記載している無機酸性/アルカリ性成分の溶液、例えば、水溶液は、セルロース繊維と共に改善された強化セラミックスを提供することができる。
【0075】
無機繊維複合材
無機酸性/アルカリ性接着剤としてバインダーを有するセルロース材料は、一般に、例えば、無機酸性/アルカリ性接着剤を用いて調製される、無機酸性/アルカリ性接着剤を上回るセルロース材料が複合材中に存在する無機繊維複合材物品として理解される。例えば、特定の態様において、本開示の無機繊維複合材は、約35〜40wtパーセント超の繊維を複合材中に含む。この場合、充填量が低い無機酸性/アルカリ性接着剤をセルロース材料繊維と混合してパルプを形成し、次いで、これをプレス、射出成形および押出により成形する。結果として得られる製品は、セラミックスが強化剤として作用しているセルロース材料であり、結果的に、この複合材は、高い曲げ強度、高い耐衝撃性、非可燃性および優れた断熱性を有することができる。
【0076】
結果として得られる製品、繊維強化セラミックスまたは無機繊維複合材は、高密度、耐火性であり、非常に低い多孔度を有する。これらの材料は、比較用の無機でない繊維複合材と同様または優れた機械的性質を示すが、有益なことに難燃剤であり、揮発性有機化合物を全く排出せず、有機ポリマー複合材と比較してずっと小さいカーボンフットプリントを有する。
【0077】
無機酸性成分(A)
本開示の無機酸性/アルカリ性接着剤の第1の成分(A)は酸性前駆体成分である。一態様において、酸性前駆体成分は、リン酸塩、オキシ塩化物、オキシ硫酸塩、またはそれらの混合物を含む。表1は、例えば、リン酸塩、およびオキシ塩化物およびオキシ硫酸塩を含めた、代表的な無機酸性前駆体成分の溶解度を列挙している。
【表1】
【0078】
表1は、様々な酸性リン酸塩、Mgの塩化物および硫酸塩が異なる溶解度を有することを示している。最大溶解度の酸−塩を使用すると、最大量の酸成分を導入してバインダーを形成することが可能である。「無機酸性成分」という用語は、ルイス酸のMgCl2およびMgSO4を含み、成分の溶液pHにより限定されるものではない。
【0079】
一態様において、無機酸性前駆体は、リン酸または酸性リン酸塩の飽和溶液を含む溶液またはペーストとして提供する。リン酸または酸性リン酸塩は、ナトリウム(リン酸二水素ナトリウム、NaH2PO4)、カリウム、(リン酸二水素カリウム、KH2PO4)、セシウム(リン酸二水素セシウム、CsH2PO4)などの一価アルカリ金属、または、マグネシウム(リン酸二水素マグネシウム、Mg(H2PO4)2・2H2O)、もしくはカルシウム(リン酸二水素カルシウム、Ca(H2PO4)2・2H2O)、もしくは亜鉛(リン酸二水素亜鉛、Zn(H2PO4)2)などの任意の二価の金属、もしくは三価の金属、またはアルミニウム(ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム、AlH3(PO4)2・H2O)などの三価の金属のものを含む。一態様において、リン酸二水素カリウムよりリン酸二水素ナトリウムの使用が好ましい。別の態様において、リン酸二水素カリウムよりリン酸二水素アルミニウムが好ましい。Na、K、またはMgなどのカチオンは、接着剤の品質に影響を及ぼす可能性があり、したがって、無機酸性前駆体溶液のカチオンならびに溶解度の制御を調整して、接着剤を最適化する。
【0080】
一態様において、酸およびアルカリ性溶液のpHを調整することにより酸−塩基反応の程度を強化する方法を提供する。酸性リン酸塩前駆体において、少量のリン酸を添加して溶液の酸性度を増大させ、それにより、酸性リン酸塩成分のリン酸塩含量(P2O5含量)を増大させる。例えば、リン酸二水素カリウムの酸前駆体の水溶液の使用は、その溶解度が約4.2の溶液pHで約20g/mlと低いので、本明細書において開示および記載している方法に関しては特に効率的ではない。したがって、pHを4未満まで低下させるために、所定の量の85wt.%飽和リン酸をリン酸二水素カリウム前駆体溶液の溶液に添加する。1つの好ましい態様において、リン酸二水素カリウムの溶液に添加する85wt.%飽和リン酸の量は、リン酸二水素カリウム前駆体溶液100グラム当たり5グラムを超えず、リン酸二水素カリウム前駆体溶液のpHは、約pH3を標的としている。この接着剤に関して、約4.2から4未満へのpHの調整により、リン酸塩含量が十分に増大し、繊維複合材物品を調製するための改善された無機リン酸塩酸/塩基接着剤が提供される。そのような複合材物品は、約4.2より大きいpHのリン酸二水素カリウム前駆体溶液を使用して調製した複合材物品より改善された性質および性能属性を有する。
【0081】
一般に、無機酸性前駆体溶液のpHは、約0〜6の間、好ましくは約3〜5の間、最も好ましくは約3〜4.5の間とすることができる。
【0082】
一般に、開示している無機接着剤の製造に関しては、3〜5未満のpHでは、各溶液は非常に腐食性となり、このpH範囲を超えると、各溶液の反応が接着剤を形成するには遅くなりすぎ、おそらく複合材物品の性能属性を低下させるので、3〜5のpH範囲の溶液が好ましい。
【0083】
塩化物および硫酸塩溶液の溶解度を調整するために、塩酸および硫酸を、それぞれ、オキシ塩化物およびオキシ硫酸塩接着剤の製造の間に同様の方法で使用することができる。
【0084】
アルカリ性成分(B)
本開示の無機酸性/アルカリ性接着剤の第2の成分は、アルカリ性前駆体成分(B)である。一態様において、アルカリ性前駆体成分は、金属水酸化物溶液である。それらが水酸化物を形成するならば、特定の酸化物出発原料を使用することができる。アルカリ性成分溶液の例は、例えば、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウムの任意の一価または二価の金属酸化物または水酸化物、ならびにアルミニウム、鉄、またはランタニドなどの三価の酸化物が挙げられるがこれらに限定されない、わずかに可溶性の酸化物または水酸化物を、完全にまたは部分的に溶解することにより製造される飽和溶液またはペーストを含む。一態様において、アルカリ性成分溶液は、酸化物もしくは水酸化物の天然鉱石の鉱山から得られる水酸化物に富んだブライン、または天然鉱石からの他の脈石材料の分離の間に生成される同様の溶液である。別の態様において、アルカリ性成分溶液は、ボーキサイトからアルミナを分離するバイヤープロセスの間に生成される水酸化アルミニウムのバイヤーの貴液である。好ましい態様において、アルカリ性成分溶液は、マグネシウム鉱床での蒸気噴射により得られる水酸化マグネシウムブラインである。表2は、様々な水酸化物の水性飽和濃度およびそれらの結果として生じる水性pHを示す。アルカリ性成分としては、最大溶解度の水酸化物溶液が一般に好ましい。
【表2】
【0085】
アルカリ性前駆体成分に関して、その溶解度は、pHを増大させることにより増大させることができる。一部の水酸化物は、自然に高いpHおよび高い溶解度を有する。水酸化カルシウム(Ca(OH)2)がそのような水酸化物である。さらに、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)も有効に作用する。しかし、溶解度が約10より低い場合、Na(OH)、またはKOHなどのアルカリ性の水酸化物を添加して、水酸化物成分の溶解度を増大させることが好ましい。必要とされるアルカリ性の水酸化物の量は、一般に少なく、それ故、結果として得られる複合材物品の化学的性質を著しく変化させることはない。一態様において、アルカリ性前駆体溶液のpHは、約8〜14の間、好ましくは約9〜12の間、最も好ましくは約10〜11の間である。強アルカリ性の製品の取扱いは困難であるので、1つの少なくとも1つの態様において、アルカリ性成分前駆体溶液の最大pHは約11とする。実験の項で論じるように、約10.2のpHを有する水性マグネシウムブラインが、本明細書において開示および記載している方法のアルカリ性成分前駆体として非常に有効に作用する。
【0086】
無機酸性/アルカリ性接着剤
上で開示している無機酸性前駆体成分とアルカリ性前駆体成分とを合わせることにより、無機−有機複合材を調製するのに効果的な無機接着剤が提供される。1つの好ましい態様において、最大量の酸性前駆体およびアルカリ性前駆体が特定の前駆体溶液に溶解するように各前駆体溶液を調整する。各前駆体成分の最大溶解度を実現する様々な範囲の酸性およびアルカリ性溶液を使用することができる。上述の通り、前駆体の一方または両方を加熱することができる。
【0087】
無機酸性成分前駆体およびアルカリ性成分前駆体溶液の溶解度および/またはpHを最適化すると、各前駆体溶液を合わせることにより、有機複合材物品に有用な無機接着剤が提供される。これらの成分の適合性および比率、ならびにそれらの相溶性は、一般に、対応する酸−塩基反応の化学量論により左右される。表3は、これらの組合せ、および結果として得られる無機接着剤の化学式の概要を示す。
【0088】
表3において、反応を開始するために添加した水、または反応の間に形成された水は、結合水として部分的に結晶構造に入る可能性がある。表3では、この2つを区別していないが、製品が乾燥すると自由水は蒸発するが、結合水は構造内に残るので、その区別は重要ではない。無機リン酸塩製品中の結合水の量は、示差走査熱量測定などの分析手段を使用することにより定性的または定量的に求めることができる。
【表3A】
【表3B】
【0089】
表3において、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、またはアンモニウム(NH4)などの一価の元素の好適な例を列挙している。同様に、使用することができる主要な二価の元素の好適な例は、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、銅、バリウム、ランタニド等であり、一方、三価の元素は、アルミニウム、鉄等であり、四価の元素の一例はジルコニウム(Zr)である。これらは、接着剤を形成するのに適した元素の代表的な例として列挙しているが、上で示した組合せに適した他の元素も使用することができる。
【0090】
一態様において、酸性/アルカリ性前駆体を含む低原子質量および高原子質量の元素の組合せを使用して、例えば、単一の複合材物品中に中性子およびガンマ放射の両方の改善された放射線遮蔽を有する無機複合材を提供することができる。例えば、各前駆体成分において、中性子およびガンマの両方の粒子を遮蔽するためにバリウムおよびランタニド元素を利用することができる。
【0091】
本明細書において開示および記載している無機酸性/アルカリ性前駆体成分接着剤の一方または両方は、好ましくは、水溶液から形成することができる。一態様において、前駆体の一方または両方の平均粒径は、懸濁液、ゲルの形態で、またはペーストとして使用する場合、40ミクロン未満、30ミクロン未満、20ミクロン未満、10ミクロン未満、1ミクロン未満、0.1ミクロン未満〜約0.01ミクロンである。そのような粒径は、篩分けまたは当技術分野において知られている他の方法を使用して実現することができる。
【0092】
有機材料がセルロースを含む場合、一般に、無機接着剤の成分は、化学的/非化学的相互作用、例えば、セルロース反復単位のヒドロキシル/カルボキシル基と接着剤の無機成分との間の水素結合および/またはエーテル結合により、木材/繊維のセルロースのドメイン上またはドメイン内に保持されると考えられている。無機酸性/アルカリ性のバインダーを同様に含む最終複合材製品は、反応および固化の間にセルロースとの水素およびエーテル結合を生じると考えられている。そのような結合を形成するためのエネルギー必要量は、発熱性の酸−塩基相互作用により、および/または外部の源から(外部加熱)生成されるエネルギーから供給することができる。
【0093】
天然繊維壁板用のデンプンまたは紙生産用の炭酸カルシウムの接着剤としての使用が知られている。しかし、接着剤としてのデンプンおよび炭酸カルシウムは、水分による影響を受け易く、その製品は湿潤するとその統合性を失う。一方、本明細書において開示および記載している無機酸性/アルカリ性接着剤溶液は、セルロース材料の細胞を含浸させることができる低粘度を示す。無機酸性/アルカリ性接着剤溶液は、毛細管作用によりセルロース材料の間隙を容易に上昇し、セルロース材料の単位面積当たり大きい面積が結合された複合材物品を提供する。したがって、無機酸性/アルカリ性接着剤溶液を使用すると、繊維の非常に高い充填量を実現することができ、結果として得られる複合材物品は、以下でさらに論じる特定の用途に関して、有機ベースの繊維複合材と比較して優れた機械的および物理的性質を示す。
【0094】
無機有機複合材製品の製造方法
以下の説明は、複合材製品を取り扱っている業界における例として示す一般的な実施方法を表すことを意図したものであり、本明細書に開示の材料の用途を限定するものでは一切ない。本明細書において示す材料および組成物は、非常に多目的なものであり、本明細書において示す材料および組成物の利益の一部だけを証明する新規の複合材を様々な技術により製造するために使用することができる。有機材料としてセルロースを例証する。
【0095】
少なくとも1つの態様において、セルロース材料を最初に無機酸性前駆体溶液またはアルカリ性前駆体溶液中で混合し、次いで、第1の前駆体溶液を第2の前駆体溶液と接触させて、酸塩基反応を開始するステップを含む複合材の製造方法を提供する。さらなる態様において、圧力および温度を適用し、反応の間に形状を形成する方法も開示している。これらの方法としては、幾何学的形状に構成された開放金型内で反応組成物を直接プレスすること、押出、真空成形、射出成形、およびプラスチック業界において使用される任意の他のタイプの成形プロセスが挙げられる。これらのプロセスの後に、制御条件下でさらなる硬化を実施することができる。
【0096】
一態様において、無機繊維複合材を生成するセルロース材料を結合させる酸−塩基反応を提供するために無機酸性前駆体とアルカリ性前駆体成分塩基とを合わせることにより形成される無機バインダーを開示および記載している。商業用の繊維複合材において使用される有機高分子材料とは異なり、これらの無機酸性/アルカリ性前駆体接着剤を使用することにより揮発性有機化合物は生じず、それらのカーボンフットプリントは従来の有機バインダーのものよりかなり小さい。結果として得られる無機−セルロース複合材は、非延焼性を実現し、断熱および耐火材料である。それらは、有機バインダーの使用により製造されるそれらの対応品と比較して優れた機械的性質を示す。
【0097】
開示している無機セルロース複合材の好ましい形成方法は、開放金型プレスまたは圧縮成形、真空含浸、射出成形、および押出である。開示している無機接着剤を開放金型プレス中で使用する場合、最初に、セルロース材料を酸性前駆体またはアルカリ性前駆体溶液で完全に湿潤させる。次いで、湿潤したセルロース材料を金型に入れ、成形の前に第2の溶液を導入する。同時に圧力を適用して、過剰な溶液を絞り出す。所望の製品密度に応じて、0.5g/cm3の低さから1.5g/cm3の高さの密度の製品を製造できるように圧力を調整することができる。より低密度の無機複合材物品により、一般に、低い熱伝導率が付与され、それ故、高断熱製品のように有用である。より高密度の複合材物品により、より良好な構造的統合性および強度が付与される。複雑な形状の無機複合材物品を製造するために、単純な成形技術を使用することができる。例えば、繊維のパルプおよび酸−塩基ペーストを金型に導入し、パルプを固化させて、金型の形状とする。次いで、それを離型して、所望の製品を得る。一般に、接着剤前駆体成分が反応すると金型内の混合物の温度が上昇し、バインダーが形成される。一般に、開示している無機接着剤を用いて調製される物品は、多少過剰な水を含有し得るが、これは、試料を約400°Fで加熱することにより除去することができる。しかし、繊維強化セラミックス複合材により製造される製品は、任意の過剰な水なしで固化し、それ故、さらに乾燥させる必要がない。
【0098】
別の態様において、真空含浸を使用して、セルロース繊維を無機酸性/アルカリ性前駆体成分で含浸させる。この方法において、セルロースを所望の形状の金型に導入し、金型内に真空を生み出すことにより、好ましくは2つの別個の入口を介して無機酸性/アルカリ性前駆体成分を金型に押し込む。無機酸性/アルカリ性前駆体成分は、セルロースの存在下で混合し、その後、引き出される。2種の溶液は、独立して、および/または一緒にセルロース繊維をウェットアウトし、酸−塩基反応により複合材のバインダーが形成される。任意の所望の形状をこの方法により調製することができる。他の態様において、真空なしで開放金型を使用することができる。
【0099】
真空含浸において、セルロース材料を金型に入れ、例えば、真空ポンプを使用して酸性またはアルカリ性前駆体溶液をセルロース材料に押し込む。第1の前駆体溶液は、セルロース材料を湿潤させ、さらには、セルロース材料を金型の形態とする。含浸の間に過剰な溶液が引き出される。次いで、同じ方法で第2の前駆体溶液を湿潤した材料に押し込む。各前駆体がセルロース混合物内で反応し、その混合物は凝固する。場合により、金型を同時に加熱して、反応を加速する、および/またはその形態を完全に乾燥させることができる。別の態様において、無機酸性およびアルカリ性前駆体溶液のための複数の入口を使用して両方の前駆体溶液をセルロース材料に同時に導入し、両方が繊維を湿潤させ、反応を開始する。
【0100】
射出成形に関して、鋸屑または木粉を無機酸性またはアルカリ性前駆体の第1の溶液で湿潤させ、ホッパーを通してスクリューミキサーに供給する。別のホッパーを通して、対応する第2の前駆体溶液をこのミキサーに供給し、そこで2つの流れを完全に混合する。次いで、結果として得られるパルプを所望の形状の金型に射出する。短納期射出成形において、全ての3種の成分(無機酸性およびアルカリ性成分ならびに木材)を一緒に1つのホッパーで混合し、射出成形することも可能である。必要に応じて中熱を適用することができるが、上で示した組成物の大部分は、室温固化材料であり、したがって、加熱ステップを排除することができる。
【0101】
天然繊維の織物マットを敷き、次いで、そのマットの層を通して上記無機接着剤を射出することにより、射出成形も使用することができる。当該マットは、所望の形状の金型内に層状に積み重ねることができ、したがって、非常に高い延性および強度を示す任意の形状の繊維強化製品を生成する。
【0102】
上で記載したプロセスにおいて、最初に、セルロース材料を酸性前駆体またはアルカリ性前駆体溶液のいずれかと接触させ、その後、それぞれの第2の前駆体溶液と接触させることができる。セルロースの各前駆体溶液との接触は、圧力の適用および高温の間とすることができる。セルロース材料の浸漬に使用する前駆体溶液による接触の順番の選択は、選択したセルロース材料のpHに応じて選択することができる。例えば、一般にアルカリ性である、ヘミセルロースおよび抽出物の一部を除去するために処理したセルロース材料に関しては、最初にアルカリ性前駆体成分を添加することが好ましく、一方、酸で前処理したセルロース材料に関しては、最初に無機酸性前駆体成分を添加することが好ましい。
【0103】
他の態様において、上記無機前駆体成分およびセルロース材料を使用する従来の押出技術を使用して、包装または断熱製品などの軽量の製品を製造することができる。したがって、パルプは、無機酸性およびアルカリ性前駆体溶液を木粉またはセルロース粉末と予備混合することにより製造することができる。この混合により形成されるパルプは、高rpm混合を使用することにより押し出すことができる。場合により、少量のホウ酸を添加して、反応の速度を遅らせることができる。
【0104】
音波ミキサーを使用して、アルカリ性もしくは酸性前駆体成分のいずれかまたはそれらの混合物でセルロース材料をウェットアウトすることができ、開放金型、真空成形、または押出と組み合わせて複合材物品を製造することができる。音波ミキサーの使用により、セルロースのより良好な湿潤、および繊維の毛細管内への無機接着剤の改善された含浸を実現することができる。
【0105】
一態様において、セルロース材料および無機酸性/アルカリ性前駆体成分を押し出す場合、曲げ強度を付与するために少量の約1〜15%の木材繊維を添加する。より多量の繊維を使用すると、スクリュー上で繊維がもつれ、押出機の機能に干渉する恐れがある。しかし、他の製造方法において、必要に応じて、より多量の繊維を添加して、複合材物品の性質を調整することができる。
【0106】
酸化物鉱物などの活性充填剤を無機接着剤組成物中で使用することができ、それにより、使用する無機酸性/アルカリ性成分の総量を低下させることができる。これらの充填剤としては、例えば、ウォラストナイト(CaSiO3)、フライアッシュ、ボトムアッシュ、マグネシウムケイ酸塩、タルク、ムライト、または酸性リン酸塩への溶解度をわずかでも示す任意の鉱物が挙げられる。一般に、溶解した活性充填剤のみがバインダー結合セルロースの一部を形成すると考えられている。
【0107】
次に、図面を参照すると、図1〜4は、無機複合材の異なる製造方法を例示している。したがって、図1は、ステップ110でセルロース材料を供給し、ステップ120で酸処理するプロセス100を示している。ステップ130で酸性セルロース材料を無機酸性前駆体成分Aと混合する。ステップ140で酸性無機パルプを調製する。ステップ150で該パルプをアルカリ性成分前駆体Bと接触させて、前駆体成分の酸−塩基反応を可能にし、その後、形状形成ステップ160および複合材の形成(ステップ170)を実施する。
【0108】
図2は、ステップ210でセルロース材料を供給し、ステップ220でアルカリ処理するプロセス200を示している。ステップ230でアルカリ性セルロース材料をアルカリ性前駆体成分Bと混合する。ステップ240でアルカリ性パルプを調製する。ステップ250で該パルプを無機酸性成分前駆体Aと接触させ、前駆体成分の酸−塩基反応を可能にし、その後、形状形成ステップ260および複合材の形成(ステップ270)を実施する。
【0109】
図3は、ステップ330で無機酸性前駆体成分A(310)、アルカリ性前駆体成分B(320)を合わせて、スラリーを生成し、次いで、ステップ340でそれをセルロース材料と合わせ、その後、形状形成ステップ350(例えば、400°Fでの加熱)、および複合材の形成(ステップ360)を実施するプロセス300を示している。例えば、プロセス300は、酸化アルミニウムを成分Bとして、および表1の酸性リン酸塩溶液のいずれか1種を使用して実施することができる。
【0110】
図4は、ステップ440で無機酸性前駆体成分A(410)、セルロース材料(430)およびアルカリ性前駆体成分B(420)を合わせて、スラリーを生成し、その後、形状形成ステップ450および複合材の形成(ステップ460)を実施するプロセス400を示している。プロセス400は、一般に、例えば、セルロース材料が本質的に充填剤のみである繊維強化セラミックス複合材の調製において、セルロース材料を、無機酸性およびアルカリ性の溶液ではなく無機酸性およびアルカリ性の粉末ペーストと混合する場合に実施する。
【0111】
図5〜6は、セルロース材料と合わせる中間前駆体成分材料の異なる調製方法を例示している。したがって、図5は、ステップ520aでセルロース材料(510)と無機酸性前駆体成分Aとを合わせて、中間無機酸性−セルロース材料(530a)を生成するプロセス500を示している。同様に、ステップ520bでセルロース材料(510)とアルカリ性前駆体成分Bとを合わせて、中間アルカリ性−セルロース材料(530b)を生成する。ステップ540で中間体530aと530bとを合わせ、その後、形状形成ステップ550および複合材の形成(ステップ560)を実施する。
【0112】
図6は、ステップ620aでセルロース材料(610)と無機酸性前駆体成分Aとを合わせて、中間無機酸性−セルロース材料(630a)を生成し、ステップ640でそれを乾燥させて、材料(650a)を生成するプロセス600を示している。同様に、ステップ620bでセルロース材料(610)とアルカリ性前駆体成分Bとを合わせて、中間アルカリ性の−セルロース材料(650b)を生成し、それをステップ640で乾燥させて、材料(650b)を生成する。ステップ660で中間体650aと650bとを合わせ、使用するまで貯蔵することができる。ステップ670における水性媒体、例えば、水または蒸気の添加の後に、形状形成ステップ680および複合材の形成(ステップ690)を実施することができる。
【0113】
図7は、例えば、木製の枠(図示せず)に巻き付けられた繊維マット(750)を使用し、次いで、本明細書に記載の無機酸性/アルカリ性前駆体成分組成物を使用して、両面に層(760)を形成することにより製造される無機セラミックスサンドイッチパネルの構成を示している。このプロセスの間の空気の取込みにより、改善された断熱性が付与される。他の態様において、繊維複合材を断熱材のコアとして利用することができる。
【0114】
図8は、上記の無機接着剤組成物を使用する非延焼性の紙または包装製品の製造を図式的に示すプロセス800を示している。したがって、紙料スラリー(810)を水で十分に(例えば、巻いて薄い二次元形態とすることができるように)湿潤させ、次いで、ステップ820で過剰な水を除去する(例えば、重力脱水)。ステップ840でアルカリ性前駆体成分Bを、セルロース材料の湿潤ウェブに導入し、その後、ウェットプレス区画を通過させる(ステップ850)。ステップ860で無機酸性成分Aを導入する。プロセスステップ870、880、890および895は、それぞれ、脱水と同時の任意選択の加熱、カレンダリング、リール巻き取りおよび乾燥を示す。これらの後半のステップにより、湿潤したセルロースウェブにおける酸/塩基反応の開始が促進されて、二次元形態となる。結果として得られる製品は、製品の厚さに応じて、非延焼性の紙または包装材料である。
【0115】
本明細書において開示および記載している無機酸性/アルカリ性前駆体接着剤を使用することにより製造される非延焼性の紙を製造するためのプロセス800の修正版は、最初に、セルロース材料繊維を低濃度の無機酸性成分前駆体溶液中で接触(例えば、浸漬)させるステップを含む。結果として得られる薄いスラリーをスクリーンに通して、過剰な酸性溶液を除去する。次いで、湿潤した繊維をアルカリ性前駆体溶液と接触させ(例えば噴霧し)、乾燥させた。次に、過剰な無機酸性溶液を再生して、次のバッチの紙を製造することができる。同様に、別の態様において、プロセス800は、最初に、繊維をアルカリ性前駆体溶液で湿潤させ、無機酸性前駆体溶液と接触させるステップを含むことができる。一部の態様において、最初に、繊維を酸性溶液で湿潤させ、次いで、酸性溶液を再生させることが、より経済的となり得る。
【0116】
図9は、本明細書において開示および記載している無機酸性/アルカリ性前駆体接着剤をセルロース材料と合わせて使用する射出成形プロセス900を示している。したがって、ステップ920aでセルロース材料(910)と無機酸性前駆体成分Aとを合わせて、中間無機酸性−セルロース材料(930a)を生成し、ステップ940でこれを乾燥させて、材料(950a)を生成する。同様に、ステップ920bでセルロース材料(910)とアルカリ性前駆体成分Bとを合わせて、中間アルカリ性−セルロース材料(950b)を生成し、これをステップ640で乾燥させて、材料(950b)を生成する。ステップ960で中間体950aと950bとを合わせ、使用するまで貯蔵することができる。乾燥中間体を射出成形機のホッパー(905)に導入し、場合により水性媒体または蒸気と共に加熱器(915)を介して加熱しながらスクリューフィーダーを通して供給し、締付装置(955)およびプレート(965、975、985)を介して圧縮しながらノズル(925)を通して金型(935)に射出して、所望の形状の複合材の形成を実現し、これを、エジェクター(995)を介して押し出す。供給機の圧力および開口部を変えることにより、密度、均一性などの材料の特徴、および複合材物品の稠度の調整が可能となる。
【0117】
用途および製品
本開示の材料および方法を使用すると、様々な構造材料および製品を製作することができる。全てのこれらの製品は、有機ポリマーおよび天然繊維の複合材から作製される既存の市販の製品と比較してそれらの特徴が独特である。これらの特徴としては、より均一なセラミックスバインダー、非延焼性、揮発性有機化合物(VOC)の排出ゼロ、低い吸水率、小さいカーボンフットプリント、より低い加工費用、および使用終了時の安全な廃棄が挙げられる。
【0118】
本明細書において開示および記載している無機酸/アルカリ性の接着剤、および結果として生じるセラミックスバインダーを使用すると、配向性ストランドボード(OSB)、または中質繊維(MDF)板などの、有機ポリマーおよび天然繊維をベースにした最も従来型の複合材を製造することができる。しかし、無機酸/アルカリ性の接着剤に特有のさらなる用途および製品が存在し、それを以下で論じる。例えば、不燃性壁板、成形複合材部品、耐燃性の紙および包装材料、軽量のブロー可能な断熱材;ならびに不燃性壁板は、本明細書に開示の無機酸性/アルカリ性前駆体成分接着剤を用いて製造することができる。これらの製品の内部コアは、無機接着剤により結合された繊維複合材により製造され、外側の層は、本明細書において開示および記載している繊維強化セラミックス複合材または紙により製造される。アッシュ、ウォラストナイトなどの充填剤、または任意の他の低価格の反応性充填剤を使用することができる。
【0119】
別の態様において、断熱壁板またはタイルを形成するようにリン酸塩またはオキシ塩化物またはオキシ硫酸塩の酸−アルカリ性成分ペーストが噴霧された、木製の枠の両面に延伸されたセルロース繊維の織物マットからなる壁板および断熱タイルを提供する。さらに、成形された複合材部品は、本明細書に開示の無機接着剤を使用する射出または押出技術により製造することができる。繊維強化セラミックス複合材を含む同様の物体も、単純な室温成形技術を使用することにより製造することができる。無機接着剤組成物を使用する本開示の方法により製作することができる複雑な不燃性製品、部品、および建築用装飾用部材の例としては、家具、扉、戸枠および窓枠、高級家具、既存の木製の物品の代替製品、木造床、屋根板、不燃性羽目板および木造床、壁タイルおよびフロアタイル、配向性ストランドボード(OSB)、中質繊維(MDF)板、高密度繊維板、およびパーティクルボード、ならびに建設業界において使用される任意の他の木材の部材が挙げられる。
【0120】
本明細書に開示の無機酸性/アルカリ性前駆体成分接着剤を使用すると、貴重な商品、保管できる文書を包装するのに有用な難燃性の紙および包装材料も調製することができる。本明細書に開示の方法および組成物を使用すると、耐燃性を有する商業用または住宅用の薄膜の耐蒸気シート材料/ラッピング材料も調製することができる。そのような紙および/または紙製品の製造プロセスの例を図8で例示している。
【0121】
細断された紙、または鉋屑、または鋸屑、または他の同様のセルロース材料を使用し、本明細書に開示の接着剤組成物でそれらを緩く結合させる本明細書に開示の方法および組成物により、軽量のブロー可能な断熱材も製作することができる。一態様において、無機接着剤を適用の直前に混合し、十分な空気を製品内に閉じ込めて、ブロー可能な断熱材を提供する。
【0122】
本明細書に開示の方法および組成物を使用すると、風力タービン用の翼を製作することができる。したがって、本明細書に開示の無機バインダー/セルロース材料複合材組成物および方法で代替することにより、従来のガラス−繊維強化エポキシまたはフェノールベースのポリマー複合材料を改質または置換することができる。
【0123】
上で示した製品および用途は、本開示で示している材料および方法により製造することができる製品の範囲またはそれらの用途を限定するものではなく、上で論じた製品および用途に限定するものとは決して解釈すべきではない。
【0124】
添加剤
開示している無機接着剤は、場合により、界面活性剤(アニオン性もしくはカチオン性、両性、または非イオン性)、可塑剤、沈降剤、レオロジー改質剤および/または懸濁剤、消泡剤および/または藻類抑制剤などの1種または複数の添加剤を含むことができる。
【0125】
好適なアニオン性界面活性剤としては、例えば、ペルフルオロオクタン酸塩(PFOAまたはPFO)、ペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)、硫酸ドデシルナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム、アルキル硫酸塩、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、アルキルベンゼンスルホン酸塩、および石鹸または脂肪酸塩が挙げられる。好適なカチオン性界面活性剤としては、例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、アルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム(CPC)、ポリエトキシル化牛脂アミン(POEA)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、および塩化ベンゼトニウム(BZT)が挙げられる。好適な両性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベタイン、コカミドプロピルベタイン、およびココアンホグリシン酸塩が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルポリ(エチレンオキシド)、アルキルフェノールポリ(エチレンオキシド)、ポロキサマーまたはポロキサミン(ポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシドのコポリマー)、オクチルグルコシド、デシルマルトシド、セチルアルコール、オレイルアルコール、およびドデシルジメチルアミンオキシドが挙げられる。単独で、または上記のものと合わせた他の界面活性剤を使用することができるが、しかし、上記界面活性剤の多くは、特定の無機接着剤前駆体の性能または機能に観察できる違いをもたらさない。したがって、界面活性剤の具体的な選択は、組成次第であり、したがって、任意の特定のリン酸塩セラミックスの配合を断定できるものではない。
【0126】
好適な可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、脂肪族二塩基性エステル、リン酸エステル、エポキシド、またはポリエステルが挙げられる。特定の可塑剤の例としては、例えば、DOP(ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、DINP(ジ(イソノニル)フタレート、TOTM(トリス(2−エチルヘキシル)トリメリテート、TINTM(トリス(イソノニル)トリメリテート、DOA(ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、DINA(ジ(イソノニル)アジペート、DOZ(ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート、およびDOS(ジ(2−エチルヘキシル)セバケートが挙げられる。他の可塑剤を単独で、または上記のものと合わせて使用することができる。
【0127】
沈降防止剤としては、例えば、ダイズレシチン、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸コーティングされた炭酸カルシウム、改質ヒマシ油または脂肪酸、ジペンテン、パイン油、メチルエチルケトキシム、ジ−イソブチレン−マレイン酸分散体、ポリアクリル酸アンモニウム、改質ダイズレシチンエマルジョン、ポリカプロラクトンポリオール−ポリエチレンイミンブロックコポリマー、ポリカプロラクトンポリオール−トルエンジイソシアネートコポリマー、ポリヒドロキシステアリン酸、およびアルキドベースの沈降防止剤が挙げられる。他の沈降剤を単独で、または上記のものと合わせて使用することができる。
【0128】
好適なレオロジー改質剤/懸濁剤としては、水和マグネシウムアルミニウムケイ酸塩、リグノスルホン酸塩(リグノスルホン酸カルシウム、リグノスルホン酸ナトリウム等)、スルホン化されたナフタレンスルホン酸縮合物の塩、スルホン化されたメラミンスルホン酸縮合物の塩、ベータナフタレンスルホン酸塩、スルホン化されたメラミンホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物樹脂、例えば、LOMAR D(登録商標)分散剤(Cognis Inc.、Cincinnati、Ohio)、ポリアスパラギン酸塩、オリゴマー分散剤、ポリメタクリル酸塩、グアーガム、ジウタン(diutan)ガム、ウェランガム、キサンタンガムおよび/またはレオロジー改質剤/懸濁剤として機能する他の助剤が挙げられる。
【0129】
消泡剤としては、例えば、ケイ素ベースの消泡油(ポリエーテル末端基を有するシロキサン)、アセチレングリコール界面活性剤、およびポリオクチルアクリレートが挙げられる。他の消泡剤を単独で、または上記のものと合わせて使用することができる。
【0130】
リン酸塩は、藻類にとって栄養素であり、それ故、酸性成分中での藻類の増殖を予想すべきである。藻類を回避するために、任意の生物活性を阻害する様々な市販の添加剤を添加することができる。一例は酸化第二銅である。酸性リン酸塩前駆体における1wt.%未満の酸化第二銅の添加により、生物学的増殖が十分に阻害される。藻類または真菌の増殖を防止するのに使用される他の市販の化学物質も、単独で、または酸化第二銅と合わせて使用することができる。
【実施例】
【0131】
別段の指示がない限り、列挙している材料のwt.%は、出発原料の乾燥重量を指すものであり、最終複合材物品中の材料のwt.%を指すものではない。
【0132】
[実施例1]
リン酸モノカリウム/水酸化マグネシウム溶液のセルロース複合材 − 50グラムの風乾した鋸屑を、50gの(沸騰した酸化マグネシウムおよび水由来の)水酸化マグネシウム溶液および約100gのさらなる水と混合し、均一なパルプを調製した。ミキサーにおいて、パルプをさらに約1時間半混合して、アルカリ性前駆体溶液を鋸屑に染みこませた。次いで、50gの濃縮リン酸モノカリウム溶液をパルプ混合物に添加し、混合物の温度が上昇し始めるまで連続混合した。温度が約80°Fになると、混合物全体を金型に流し込み、約2000psiで約30分プレスした。結果として得られた無機セルロース複合材物品をオーブンに入れ、暖かい温度で乾燥させた。乾燥した生成物は、有機接着剤を使用して製造された複合材製品と外観が同じであった。無機セルロース複合材物品は、軽く、強く、良好なたわみ性を有していた。
【0133】
[実施例2]
リン酸モノアルミニウム/水酸化アルミニウムのセルロース複合材 − Resodyneミキサーにおいて、10グラムの鋸屑を、20.3gの濃縮リン酸モノアルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)溶液と水酸化アルミニウム(Al(OH)3)との混合物と30秒間混合した。混合後、鋸屑は水気があるように見えたが、木材のフレークのままであった。次いで、約2000psiの圧力で約30分、フレークを金型内でプレスした。結果として得られた、成形された無機複合材試料をオーブンに入れ、約400°Fで約30分、さらに硬化させた。400°Fで、水酸化物とリン酸水素アルミニウムとが反応してリン酸アルミニウム(AlPO4)を形成し、それにより、複合材用の無機バインダーが提供されると考えられている。硬化後、複合材料は硬質繊維板であった。
【0134】
[実施例3]
リン酸モノカリウム/水酸化マグネシウムブラインのセルロース複合材 − 70グラムの風乾した鋸屑、17gの水酸化マグネシウムブライン溶液および約100gの水を含むパルプを調製した。このパルプを1.5時間混合して、アルカリ性前駆体溶液を鋸屑に染みこませた。パルプに、123gの濃縮リン酸モノカリウム溶液(23wt.%リン酸モノカリウム)を添加し、温度が上昇し始めるまで連続混合した。温度が約80°Fになると、混合物を金型に流し込み、約2000psiの圧力で約1時間プレスした。結果として得られた複合材製品をオーブンに入れ、暖かい温度で乾燥させた。乾燥した生成物は、有機接着剤を使用して製造された複合材製品と外観が同じであった。それは、軽く、強く、良好なたわみ性を有していた。
【0135】
[実施例4]
無機複合材の壁板 − リン酸モノカリウムの33wt.%溶液を、17wt.%の水酸化マグネシウムブラインと50wt.%のClass Fフライアッシュとの混合物と合わせて、噴霧可能なコーティング溶液を形成した。コーティング溶液は、実施例1において製造したパネルの両面に噴霧し、多少の発熱と共に直ちに固化した。パネルは、わずかに屈曲性ではあるが硬質であり、水を通さず、軽量および不燃性であった。その機械的性質(例えば、たわみ性)は、その難燃性と同様に、従来の壁板より優れていた。
【0136】
[実施例5]
繊維強化セラミックス複合材を形成する − Hobartミキサーにおいて、33wt.%の鋸屑、17wt.%の焼成酸化マグネシウム粉末、残りのリン酸モノカリウム粉末を混合し、その後、粉末全体の量と等しい量の水を添加し、パルプを得た。約10分混合を実施し、可能な限り多くの固体リン酸モノカリウムを溶解させた。次いで、結果として得られたパルプを、タイトなプランジャーを用いて1000psiの圧力で矩形の金型内でプレスした。このプレスにより、過剰な溶液が金型から絞り出された。生成物を1日完全に固化させて、非常に硬質の矩形のセラミックス試験片を得た。トーチランプで加熱すると、炎が試験片に触れている領域でのみ多少の炭化が発生した。炎は、表面全体には広がらなかった。トーチを取り去ると、炎も広がることなく消えた。したがって、生成物は、非延焼性の特徴を有していた。
【0137】
上で開示している方法を使用して製造した別の試験において、33wt.%の鋸屑、33wt.%のClass Cフライアッシュ、8wt.%の焼成酸化マグネシウムおよび残りのリン酸モノカリウムを含む生成物を調製すると、上記のものより低いジュロメーター(硬度)の試料が生じた。延焼性の結果は、それほど硬質ではないこと以外は上記試料と本質的に同一であった。アッシュをウォラストナイトで代替すると、また、同様の特徴、例えば、より低いジュロメーターならびに優れた難燃性特徴が示された。焼成酸化マグネシウムのアルカリ性前駆体を水酸化マグネシウムブライン溶液で代替することにより、水を添加する必要性または前駆体の溶解を待つ必要性が排除され、接着剤の貯蔵寿命が延長され、実施例5より優れた性質が付与されると想定される。
【0138】
[実施例6]
非延焼性の紙 − 濃縮リン酸モノカリウム溶液および低濃度の水酸化マグネシウム溶液を無機酸性/アルカリ性前駆体成分として使用する本明細書において開示および記載している方法を使用して、難燃剤の紙および包装製品を作製した。したがって、未ざらしクラフト紙を、1kgの低濃度の水酸化マグネシウム(6%溶液)浴および250gのリン酸モノカリウム浴(約20%溶液)にそれぞれ30秒入れ、乾燥させた。コーティングした紙は、未処理の紙と比較してほぼ35%重量増量していた。コーティングした紙を裸火で試験して、延焼性を研究した。処理した紙の中心部分を裸火と接触させると、接触している部分は炭化したが、炎を離すと、紙は燃焼を止め、炎は伝播しなかった。したがって、処理した紙は、容易に燃焼し炎が持続的に伝播した未処理の紙と比較して、非延焼性の特徴の全ての兆候を示した。
【0139】
[実施例7]
セルロース材料の前処理なしでの複合材の製造 − 100グラムの未処理の風乾した木材ストランドを、250gの希釈したMgOH2−ブライン溶液(50gのMgOH2−ブライン溶液と200gの水)に浸漬した。混合物の温度は100°Fまで上昇し、その温度で約1時間維持した。混合物を約20分の期間にわたって75°Fまで冷却させた。175グラムのリン酸モノカリウムの23wt.%飽和溶液を混合物中に撹拌すると、発熱性の酸−塩基反応により、混合物の温度が約7〜10°F上昇した。次いで、浸漬した繊維をプレスして4”×4”の試験部品とした。
【0140】
繊維のブラインとの混合の間、木材の抽出物が強く匂い、木材ストランドの色が淡褐色から暗褐色にかなり変化した。プレスの間、酸/アルカリ成分で湿潤した繊維から水が絞り出された。したがって、木材ストランドの色の変化は、木材とブラインとの間で化学反応が発生し、木材ストランドの混合および加熱の間に少なくとも一部のヘミセルロースおよびリグニンが除去されたことを示唆していた。これらの観測結果により、苛性溶液中でのセルロース繊維の前処理を、排除するか、木材抽出物および/またはヘミセルロースの一部を本質的に除去するのに上で使用したMg(OH)2−ブラインで代替することができることが証明された。したがって、本明細書に記載の方法により、商業的な紙/木材プロセスにおいて使用される苛性溶液に関連した廃棄問題をかなり排除することができる。このことは、本明細書において開示および記載している無機/セルロース材料複合材プロセスが、従来のセルロース複合材プロセスより環境に優しいものとすることができることをさらに証明している。
【0141】
[実施例8]
難燃性に関する木材物品の処理 − 2つの同一の木材ブロックを、1つは対照として、もう1つは実際の試験用に使用した。両方のブロックを212°Fのオーブンに入れて、約1時間乾燥させた。次いで、対照は水に入れ、一方、試験試料は希釈ブライン溶液(300gのブライン+300gの水)に入れた。2分間の浸漬後、両方のブロックをオーブンにおいて212°Fで約1時間乾燥させた。次いで、対照は再び水浴に入れ、試験試料はリン酸モノカリウムの飽和溶液に入れた。さらに2分間の浸漬後、両方のブロックをオーブンにおいて212°Fで約1時間乾燥させた。処理後、わずかに白色になったこと以外は、試験試料の重量はほとんど増大しなかった。対照および試験試料の両方を>1200°Fに曝して、耐炎性を試験した。対照試料は、持続的な炎により炭化したが、処理した試料は、外部の炎を取り去ると炎を持続させることができず、外部の炎が接触した部分のみが炭化した。したがって、無機酸性/アルカリ性前駆体成分を使用して記載した通りに調製した試験試料は、自消性を示した。
【0142】
[実施例9]
リン酸塩結合紙の製作 − 紙製品の作製においてリン酸塩ベースの接着剤をバインダーとして使用することが可能であることを証明するために、硬材市販パルプを使用して以下の4つ試料を調製した。したがって、第1の試料(対照)は、以下の通り調製した。100グラムの硬材市販パルプを10リットルの水と混合し、次いで、この混合物の500グラムを1キログラムの水でさらに希釈して、非常に低濃度のペーストを得た。この希釈したパルプ懸濁液を70メッシュ(212ミクロン)のスクリーンに通して、繊維の湿潤ウェブを保持した。乾燥させると、それは紙の外観を有していた。
【0143】
第2の試料は、以下の通り調製した。3.5グラムのMg(OH)2−ブラインおよび15グラムのリン酸モノカリウム溶液を、上で第1の試験で記載した、希釈パルプ溶液と混合した。手で撹拌している間に均一なペーストが形成した。混合したペーストを70メッシュのスクリーンに通し、ウェブに形成し、それは、乾燥させると、対照試料と同様の紙の外観を有していた。対照紙試料および第2の試験紙試料はいずれも、炎の上に直接保持した。対照試料は、約3秒で完全に炭化したが、リン酸塩Mg(OH)2−ブラインで処理した第2の試験試料は、約20秒まで炭化せず、炎を除去した後まで炎を維持することはなかった。したがって、無機酸性/アルカリ性のMg(OH)2−ブライン前駆体成分を使用して生成した第2の試験試料は、対照試料と比較して6.5倍高い耐炎性を示した。
【0144】
第3の試料は、以下の通り調製した。10wt.%のブライン溶液(約6gのMg(OH)2)を希釈したパルプ懸濁液(約3wt%)と混合し、それを70メッシュのスクリーンに広げて、繊維の湿潤ウェブを形成した。4グラムの10wt%濃縮リン酸モノカリウム溶液を、ミストの形態で繊維の湿潤ウェブに噴霧した。乾燥させると、湿潤ウェブは、リン酸塩/Mg(OH)2−ブライン結合紙を形成した。ブラインおよびリン酸モノカリウム溶液は、いずれも良好に分散し、この試料は、第1の試験の対照試料の外観を有していた。乾燥した生成物は、プレス圧力に応じて0.7〜0.9g/ccの間の密度を有していた。第3の試料は、オーブンにおいて50°F/30分の速度で450°Fまで加熱すると、約23%の質量損失を示した。これは、形成した複合材に付随している水分に起因すると考えられる。質量損失は、最大で約350°Fまで観察された。その温度を超えると、重量の減少は観察されなかった。第3の試料は、上記実験の終了後、燃焼しない、または炭化しない、または物理的統合性を失わなかった。インスタント無機バインダーを用いて製作される、様々なwt%の繊維を有する紙の試料を、上記の方法と同様の方法で調製し、紙が炎を維持する温度、または火がついた温度を求めるために試験した。このデータは、図10に示しており、無機バインダーの量を調整して、所定の最終用途の耐火温度を実現することができることを証明している。
【0145】
第4の試料は、少量のブラインおよびリン酸モノカリウム溶液と混合した、分解させた硬材パルプを用いて調製し、包装製品における使用に適した手漉き紙に形成した。この実験において、対照は、分解させただけの硬材市販パルプであった。第4の試料は、上記の通り試験すると、対照と比較して優れた耐炎性を実現した。
【0146】
[理論実験例10]
難燃性無機パーティクルボード − 約33wt.%の未処理の鋸屑、溶解している約17wt.%の水酸化マグネシウムブライン、約50wt.%のリン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)の混合物を合わせる。混合物に水を添加し、急速に混合して、鋸屑を浸漬させ、リン酸塩を溶解する。次いで、パルプ全体を1000psiの圧力で金型内でプレスし、レンガの形態とする。過剰な水は絞り出され、酸−塩基化学反応が発生し、これにより、試料がかなり加熱される。固化が数分以内に発生して、硬質のレンガの形態が得られるはずである。この複合材により、本開示の無機酸性/アルカリ性接着剤と合わせた鋸屑または任意の他の同様の材料を使用する不燃性製品の製造が実現されるであろう。
【0147】
上記説明は、複数の方法、組成物および材料を開示している。これらの説明は、方法および材料の改変、ならびに製作方法および装置の変更の余地がある。そのような改変は、本開示の考察または本開示の実施から当業者に明白となろう。したがって、本開示は、本明細書に開示の特定の実施形態に限定されることを意図したものではないが、特許請求の範囲の真の範囲および精神内に入る全ての改変および代替を包含することは意図している。
【0148】
本明細書において使用する用語法は、特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであり、本発明を限定することを意図したものではない。本明細書において使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈において明白な別段の指示がない限り、複数形を同様に含むことを意図したものである。本明細書において使用する場合「を含む(comprises)」、「を含む(comprising)」、「を含む(includes)」および/または「を含む(including)」という用語は、述べた特色、ステップ、作業、要素、および/または成分の存在を特定するものであるが、1種または複数の他の特色、ステップ、作業、要素、成分、および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではないことがさらに理解されよう。
【0149】
別段の定義のない限り、本明細書において使用する(技術的および科学的用語を含めた)全ての用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において使用する用語が、本明細書の文脈および関連技術分野におけるそれらの意味と一致した意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書においてそのように明確に定義されない限り、理想的な、または過度に形式的な意味で解釈されるものではないことがさらに理解されよう。
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、無機−有機複合材物品およびそれらの製造方法に関する。具体的に、当該物品および方法は、接着剤として無機酸性/アルカリ性前駆体成分を含み、これらは、有機材料と共に固化して無機バインダーとなる。
【背景技術】
【0002】
酸−塩基セメント(ABC)は、弱酸と好適な塩基との反応により形成される。無機酸−塩基セメントの最も一般的な例は、リン酸塩セメント、オキシ塩化物およびオキシ硫酸塩セメントである。これらの中で、リン酸塩セメントが最も研究されてきており、歯科用セメント、放射性で有害な廃棄物流の安定化用のセラミックス、油田用途用の特殊なセメント、ペイントおよびコーティングおよび接着剤用の樹脂、道路のパッチング材料などの範囲の複数の製品が開発されてきた。これらの中で、商品化されたものはわずかである。
【0003】
天然繊維複合材を製造するための無機セメント系バインダーの使用が試みられてきた。例えば、ポルトランドセメントまたはアルミン酸カルシウムセメントの薄いペーストの、接着剤としての使用が報告されている。しかし、これらのセメント系バインダーは、強アルカリ性であり、これらの材料から調製されるペーストは、非常に濃密であり、木材/繊維のセルロース構造の細胞および毛細管を効果的に含浸させることができず、繊維を含浸させる前に硬化する恐れがある。結果的に、繊維におけるこれらのセメント系バインダーの充填量は、非常に低い。したがって、繊維含有物により、接着剤として使用されるセメントではなく、大量の繊維を充填するためのセメントの性質が本質的に改善される。
【0004】
他の既に報告されている無機複合材は、リン酸とカルシウム、マグネシウム、またはジルコニウムのケイ酸塩またはアルミン酸塩との反応生成物を含み、再生紙で包まれた石膏ボードの様なコアを製造するために様々な充填剤と共に使用される。壁板および他の同様の製品のこの製造方法には、複数の欠点がある。すなわち、非常に低いpHのリン酸溶液の使用は、装置の腐食につながり、取扱いが困難となる。これは、特に、製品を大規模製造する場合に当てはまる。このアプローチは、わずかに可溶性の粉末状前駆体成分も使用する。ケイ酸カルシウムまたは他のケイ酸塩またはアルミン酸塩は、周囲温度でわずかに可溶性であり、完全には反応せず、その結果、ケイ酸塩の大部分が、複合材製品中に粒状物質として未反応のまま残る。したがって、この既に報告されている方法により製造される壁板は、本質的に、セルロース、セメント、および可変量の未反応の前駆体粉末の複合材である。この不完全な反応により、期待されるものより低い性能属性を有する複合材製品が生じる。既に報告されている方法は、機械的性能が低い石膏の様な板の製造には適している可能性があるが、高品質で多目的な繊維強化複合材の製造には適していない。
【0005】
さらに、既に報告されている方法の無機酸成分は、ケイ酸塩前駆体を利用する反応のための唯一の効果的な酸性リン酸塩としてのリン酸に限定されている。酸性リン酸塩(リン酸二水素ナトリウムおよびカリウム、それぞれNaH2PO4およびKH2PO4など)さらにはアルカリ性リン酸塩(リン酸二カリウム、K2HPO4など)を、ケイ酸塩およびアルミン酸塩と室温で反応させることは困難であり、バインダーを製造するためにアルカリ性リン酸塩を扱って作業することが困難または不可能であることが一般に知られている。したがって、既に報告されているプロセスが、リン酸以外の任意の酸性リン酸塩を扱って作業するとは考えられない。上記の既に開示されているプロセスは、ケイ酸塩およびアルミン酸塩を用いた製品(主に壁板)を挙げているが、しかし、高充填量のセルロースを有するような製品は挙げていない。
【0006】
同様に、セルロース複合材を製造するためのセラミクリート(Ceramicrete)技術の使用が報告されており、そこでは、焼成酸化マグネシウムとリン酸モノカリウムとを反応させてマトリックスを生成し、そこではセルロースが強化材を形成している。したがって、セルロース複合材を製造するためのCeramicrete技術の使用は、セメント系材料がセルロース繊維により強化され、結果的に、繊維の充填量が低い、上記の既に開示されている方法と同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
固体焼成酸化物または焼成鉱物(例えば、ケイ酸カルシウム)と無機酸性成分前駆体溶液とを繊維と共に1ステップで混合する方法は、効率的ではなく、物品形成の再現性に影響を及ぼす再生可能なパルプの生成の技術的および製造上の問題を提示する。無機酸性成分と固体または焼成されたアルカリ性酸化物成分との間の酸−塩基反応が急速に進むので、繊維の混合およびウェットアウトのための時間が十分ではないと考えられている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願で論じる方法、組成物および製品は、高充填量のセルロース材料および非常に低い充填量の無機バインダーを有する製品を製造することを意図しており、したがって、本明細書において開示および記載している材料、方法、および製品は、既に報告されている上で論じたものとははっきりと異なる。
【0009】
本明細書において開示および記載しているのは、無機バインダーを有する複合材を提供するのに適した無機酸性/アルカリ性接着剤と合わせた天然の繊維状材料から複合材を製造するための製品および方法である。したがって、一態様において、有機−無機複合材材料を製造することができる。無機酸性/アルカリ性成分は、市販されている複合材製品において現在使用されている従来の有機接着剤を代替することができる。結果として得られる、無機バインダーを含む複合材は、非延焼性、および/またはそれらの製造もしくは使用もしくは熱曝露の間の揮発性有機化合物(VOC)排出の低下もしくは揮発性有機化合物(VOC)排出ゼロなどの、有機ベースの接着剤より改善された性質を示す。結果として得られる、本開示の無機バインダーを含む複合材は、市販されている複合材料と比較して低い温度で硬化することができる。これらの特色により、これらの製品の製造の間のエネルギー消費量がかなり節約され、カーボンフットプリントが非常に小さくなる。
【0010】
したがって、第1の実施形態において、複合材製品の製造方法を提供する。当該方法は、有機材料を準備するステップと、有機材料を無機接着剤と接触させるステップであって、無機接着剤は、無機酸性前駆体とアルカリ性前駆体との混合物を含むステップとを含む。
【0011】
第1の実施形態の第1の態様において、有機材料の無機接着剤全体に対する水分を除いた重量比は、約99:1〜約2:1の間、好ましくは約10:1〜約5:1の間、より好ましくは約7:1である。第1の実施形態の第2の態様において、有機材料は、木材ベニヤ、長短フレーク、長繊維、短繊維、ストランド、鋸屑、木材粒子、繊維束、砕木パルプ(SGW)、加圧式砕木パルプ(PSW)、リファイナメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ、ソーダパルプ、さらしパルプ、種子繊維、葉繊維、靭皮繊維、果実繊維、茎繊維、絹、羊毛、クモの糸、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種を含む。
【0012】
第1の実施形態の第3の態様において、無機酸性前駆体およびアルカリ性前駆体は、独立して、溶液、懸濁液、ゲル中に、またはペーストとして存在する。
【0013】
第1の実施形態の第4の態様において、アルカリ性前駆体は、溶液中に存在する。
【0014】
第1の実施形態の第5の態様において、接触ステップは、有機材料を最初にアルカリ性前駆体溶液と接触させ、次いで、無機酸性前駆体溶液と接触させること、または有機材料を無機酸性前駆体と接触させ、その後、アルカリ性前駆体と接触させること、または有機材料を無機接着剤と接触させることを含む。
【0015】
第1の実施形態の第6の態様において、無機酸性前駆体およびアルカリ性前駆体を、それぞれ別個に有機材料と混合して、独立して、別個の酸性の繊維パルプまたは繊維、および別個のアルカリ性のパルプまたは繊維を形成する。
【0016】
第1の実施形態の第7の態様において、当該方法は、別個の酸性およびアルカリ性のパルプまたは繊維を合わせるステップと、十分な量の水と混合するステップと、固体複合材製品を形成するステップとをさらに含む。
【0017】
第1の実施形態の第8の態様において、当該方法は、別個の酸性およびアルカリ性のパルプを乾燥させるステップと、乾燥した酸性およびアルカリ性のパルプまたは繊維を合わせるステップと、合わせた乾燥した酸性およびアルカリ性のパルプまたは繊維を水と混合するステップと、固体複合材製品を形成するステップとをさらに含む。
【0018】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、アルカリ性前駆体成分は、アルカリ性の酸化物、水酸化物、または酸化物鉱物のうちの少なくとも1種を含む。
【0019】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、無機酸性前駆体成分は、酸性リン酸塩、塩化物、または硫酸塩のうちの少なくとも1種を含む。
【0020】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、アルカリ性前駆体は、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ランタニドの一価、二価、もしくは三価の金属酸化物もしくは水酸化物、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストのうちの少なくとも一種を含む。
【0021】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、アルカリ性前駆体は、金属水酸化物に富んだブラインの溶液であり、例えば、ブラインは、水酸化マグネシウムブライン溶液、または水酸化アルミニウムのバイヤーの貴液などである。
【0022】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、または水酸化カルシウム(Ca(OH)2)から選択されるアルカリ金属水酸化物などの適切な量のアルカリ金属水酸化物の高アルカリ性溶液を添加して、アルカリ性前駆体の水性pHを上昇させるステップをさらに含む。
【0023】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、アルカリ性前駆体の水性pHは、約8〜約14の間、好ましくは約9〜約12の間、最も好ましくは約10〜約11の間である。
【0024】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、無機酸性成分は、リン酸、またはリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)を含む酸性リン酸塩、MgCl2、MgSO4、およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種を含む。
【0025】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、無機酸性成分の溶液pHを約0〜約6の間、好ましくは約3〜約5の間、最も好ましくは約3〜約4.5の間に調整するステップをさらに含む。pHは、リン酸水素塩を添加することにより低下させることができる。
【0026】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、わずかに可溶性のケイ酸塩、ケイ酸カルシウム(ウォラストナイト、CaSiO3)、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、バイヤープロセスによる廃棄物、銅鉱石からの銅の抽出の間に生じる酸性の廃棄物流、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流を含む酸化物鉱物、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種を添加するステップをさらに含む。
【0027】
第1の実施形態の別の態様において、アルカリ性成分は酸化マグネシウムであり、無機酸性成分前駆体は塩化マグネシウムまたは硫酸マグネシウム溶液から選択される。
【0028】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、無機酸性前駆体成分またはアルカリ性前駆体成分のうちの少なくとも一方を、セルロースとの接触の前に水の沸点未満の温度まで加熱するステップをさらに含む。
【0029】
第1の実施形態の別の態様において、無機酸性成分はリン酸水素アルミニウムであり、アルカリ性成分は酸化アルミニウム(Al2O3)または水酸化アルミニウム(Al(OH)3)であり、例えば、リン酸水素アルミニウムとアルカリ性成分とを混合してペーストを形成し、次いで、ペーストをセルロースと混合する。当該方法は、複合材物品を形成するのに十分な時間、セルロースと混合したペーストを約400°Fで加熱するステップをさらに含むことができる。
【0030】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、有機材料を圧縮するステップ、ならびに/あるいは真空および/または音波処理を適用するステップをさらに含む。
【0031】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、無機酸性前駆体とアルカリ性前駆体との重量比は、10:1と1:5の間、好ましくは約9:1と1:3.5の間、より好ましくは約8:1〜約1:3.5の間である。当該方法は、圧縮の前に無機接着剤の一部を差し引き、次いで、圧縮の終わり近くに無機接着剤の残存部分を添加するステップをさらに含むことができる。
【0032】
第1の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、有機材料と無機接着剤とを混合するステップと、複合材試料に熱を加えて、複合材の温度を<400°Fまで上昇させるステップをさらに含む。
【0033】
第2の実施形態において、繊維強化セラミックス複合材の製造方法を提供する。当該方法は、無機酸性前駆体と溶液中のアルカリ性前駆体との混合物を含む無機リン酸塩接着剤を準備するステップと、約40wt.%未満のセルロース材料を準備するステップと、セルロース材料を無機リン酸塩接着剤と接触させるステップとを含む。
【0034】
第2の実施形態の第1の態様において、セルロース材料は、木材ベニヤ、長短フレーク、ストランド、鋸屑、木材粒子、繊維束、および/またはパルプ化により得られる製品、砕木パルプ(SGW)、加圧式砕木パルプ(PSW)、リファイナメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ、ソーダパルプ、さらしパルプ、種子繊維、葉繊維、靭皮繊維、果実繊維、茎繊維、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種を含む。
【0035】
第2の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、セルロース材料を最初にアルカリ性前駆体溶液と接触させ、次いで、無機酸性前駆体と接触させるか、またはセルロース材料を無機酸性前駆体と接触させ、その後、アルカリ性前駆体溶液と接触させるか、またはセルロース材料を無機接着剤と接触させる。
【0036】
第2の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、無機接着剤は、リン酸塩セラミックス、オキシ塩化物セラミックス、オキシ硫酸塩セラミックス、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種である。
【0037】
第2の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、無機リン酸塩接着剤は、二価もしくは三価の金属、またはそれらのケイ酸塩を含む。
【0038】
第2の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、ケイ酸カルシウム(ウォラストナイト、CaSiO3)、かんらん石、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、バイヤープロセスによる廃棄物、銅鉱石からの銅の抽出の間に生じる酸性の廃棄物流、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種を添加するステップをさらに含む。
【0039】
第2の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、無機接着剤およびセルロース材料を射出成形もしくは押し出しするステップをさらに含み、真空を適用するステップまたは音波処理を適用するステップをさらに含むことができる。
【0040】
第2の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、当該方法は、無機酸性前駆体成分またはアルカリ性前駆体成分のうちの少なくとも一方を、セルロースとの接触の前に水の沸点未満の温度まで加熱するステップをさらに含む。
【0041】
第2の実施形態の前述の態様のいずれか1つと組み合わせると、繊維強化複合材は、耐火性、非延焼性、温室効果ガスの最小限の排出、揮発性有機化合物の排出なし、および低い吸水率を実現する。
【0042】
第3の実施形態において、不燃性のブロー可能な断熱材の製造方法を提供する。当該方法は、細断された紙、鋸屑、鉋屑、細断されたプラスチック、ガラス粒子もしくはガラス繊維;石膏、発泡性粘土、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種を含むブロー可能な材料を準備するステップと、(i)リン酸、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、MgCl2、MgSO4、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)、およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種を含む無機酸性成分と、(ii)マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ランタニドの一価、二価、もしくは三価の金属酸化物もしくは水酸化物、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストを含むアルカリ性前駆体とを含む無機接着剤を準備するステップと、無機接着剤をブロー可能な材料と結合させるのに十分な時間、ブロー可能な材料を無機接着剤と接触させるステップとを含む。
【0043】
第4の実施形態において、非延焼性の物品の製造方法を提供する。当該方法は、可燃性材料を準備するステップと、可燃性材料の少なくとも一部に対して無機接着剤のコーティングを実施するステップとを含み、無機接着剤は、リン酸塩セラミックス、オキシ塩化物セラミックス、オキシ硫酸塩セラミックス、二価または三価の金属酸化物またはそれらのケイ酸塩、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種と、ケイ酸カルシウム(ウォラストナイト、CaSiO3)、かんらん石、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、バイヤープロセスによる廃棄物、銅鉱石からの銅の抽出の間に生じる酸性の廃棄物流、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種と、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストを含む少なくとも1種のアルカリ性前駆体成分との混合物を含む。
【0044】
第4の実施形態の第1の態様において、可燃性の物品は壁板もしくは天井タイルであるか、またはセルロース繊維の延伸織物マットを含む。
【0045】
上記実施形態の前述の態様のいずれか1つにおいて、可燃性の物品は、セルロース繊維の延伸織物マットまたは複数の木材の薄い積層シートを含み、木材の各シートは無機接着剤により結合されており、それによりベニヤシート製品が得られる。
【0046】
第5の実施形態において、耐火性の紙および紙製品の製造方法を提供する。当該方法は、セルロース材料を準備するステップと、(i)リン酸、またはリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、MgCl2、MgSO4、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)を含む酸性リン酸塩;およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種を含む無機リン酸塩溶液、ならびに(ii)マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウムまたはランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストのうちの少なくとも一種を含むアルカリ性前駆体溶液を含む無機接着剤前駆体を準備するステップとを含む。セルロース材料および無機接着剤のペーストを準備する。場合により、当該方法は、ペーストを乾燥させるステップと、紙としての使用に適した厚さの繊維マットを準備するステップとを含む。セルロース材料の無機接着剤に対する乾燥重量比は、紙または紙製品が耐火性および/または非延焼性を実現するように、約1wt.%〜約20wt.%の間とすることができる。
【0047】
第5の実施形態の第1の態様において、当該方法は、ケイ酸カルシウム(ウォラストナイト、CaSiO3)、かんらん石、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、ケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種をさらに含む。当該方法は、難燃性の紙材料または紙製品ならびに/あるいは不燃性の家庭用および商業用のビルディングラップまたは壁紙を提供する。
【0048】
第6の実施形態において、非延焼性の木製の物品を製造するための木材の処理方法を提供する。当該方法は、(i)リン酸、またはリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、MgCl2、MgSO4、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)を含む酸性リン酸塩、およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種と、(ii)マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストの1種または複数のアルカリ性前駆体溶液とを含む組成物と木材物品とを接触させるステップを含む。場合により、ケイ酸カルシウム(ウォラストナイト、CaSiO3)、かんらん石、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、バイヤープロセスによる廃棄物、銅鉱石からの銅の抽出の間に生じる酸性の廃棄物流、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種を添加する。当該組成物と接触させた木材物品は乾燥させる。
【0049】
第6の実施形態により製造される非延焼性の木材物品を提供する。
【0050】
上記実施形態の前述の態様のいずれか1つから製造される複合材物品も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】開示および記載している無機繊維複合材の調製の第1の態様を示す図である。
【図2】開示および記載している無機繊維複合材の調製の第2の態様を示す図である。
【図3】開示および記載している無機繊維複合材の調製の第3の態様を示す図である。
【図4】開示および記載している無機繊維複合材の調製の第4の態様を示す図である。
【図5】開示および記載している無機繊維複合材の調製の第5の態様を示す図である。
【図6】開示および記載している無機繊維複合材の調製の第6の態様を示す図である。
【図7】開示および記載している無機繊維複合材を使用しているサンドイッチ壁板またはタイルの態様を示す図である。
【図8】本明細書で開示および記載している酸−塩基接着剤を使用することにより紙および包装材料を製造するステップの態様を示す図である。
【図9】本明細書で開示および記載している射出成形技術を使用することにより無機繊維複合材料を製造するステップの態様を示す図である。
【図10】本明細書で開示および記載している無機バインダーのwt%に応じた無機バインダー紙製品を炭化させる時間を図表で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
概して、無機リン酸−塩基バインダーを使用する、木材および植物から誘導されるリグノセルロース材料などの天然の繊維状材料などの有機材料の結合方法を開示および記載している。無機酸−塩基バインダーで結合された繊維を含む複合材物品も開示および記載している。少なくとも1つの態様において、本明細書でさらに記載する無機セルロース複合材物品用のバインダーを提供するための無機リン酸−塩基接着剤として、無機酸性成分およびアルカリ性成分の前駆体の水溶液を利用する。
【0053】
本明細書において開示および記載しているのは、それぞれの酸性/アルカリ性前駆体の酸−塩基反応により製造される無機接着剤、およびそれから調製される新規のセルロース材料複合材である。これらの無機接着剤は、ある程度、リン酸塩、オキシ塩化物、およびオキシ硫酸塩前駆体を含むが、これらに限定されない。結果として得られる、本明細書に開示の無機バインダーを含む複合材製品は、有機バインダーから形成される複合材とははっきりと異なる。無機セルロース複合材は、軽量、難燃性、および高延性などの特有の性質を示す。
【0054】
酸−塩基接着剤は、アルカリ性成分としての酸化物または水酸化物と、無機酸性成分としての酸性リン酸塩または金属塩化物または金属硫酸塩との酸−塩基反応により形成される。水の存在下での反応により、セルロースを結合させる能力、および/またはセルロース材料内の細胞内腔を満たす能力を有し、複合材に固体構造を付与する、酸−塩基接着剤が生成される。一般に、細胞内腔は非常に小さいので、バインダー成分が空隙に入るために毛細管作用が必要とされると考えられている。開示している前駆体成分は低濃度および低粘度で提供することができるので、毛細管作用はこの成分により促進される。
【0055】
セルロースの反復単位であるセルビオースは、6個のヒドロキシル基を含有する。セルロースの重合の程度(単一のポリマー鎖内の反復単位の総数)は、最大で約1500とすることができる。これらのセルロースの反復単位は、鎖内および鎖間の多数の分子内および分子間水素結合により結合される。いかなる理論にも拘束されるものではないが、水性の酸−塩基接着剤を使用することにより、この水素結合が強化され、複合材が提供されると考えられている。一般に、従来の有機接着剤は、エーテル、エステル、または新たな水素結合を生成することにより、セルロースのヒドロキシル基と相互作用するように設計されている。例えば、フェノールホルムアルデヒド、および他のポリオールベースの接着剤は微孔質の木材表面を相互に連結させる高分子網目構造を形成する能力を有するので、これらが木材複合材において主に使用されている。水性の無機酸性/アルカリ性前駆体接着剤を使用すると同様の結合機構が生じる可能性が高いと考えられている。
【0056】
一般に使用されている木材複合材用の有機接着剤は、ホルムアルデヒドベース、例えば、フェノールホルムアルデヒド、レソルシノールホルムアルデヒド、またはフェノール−レソルシノールホルムアルデヒドの組合せ、尿素ホルムアルデヒド、混合尿素ホルムアルデヒド、またはメラミンホルムアルデヒドである。他の一般に使用されている接着剤としては、ウレタンベースの有機ポリマー、イソシアネート、エポキシ、ポリビニルおよびエチレン酢酸ビニル分散接着剤が挙げられる。全ての有機ベースの接着剤は、揮発性有機化合物を生成するだけではなく、膨大なカーボンフットプリントも有する。ポリマー1トン当たり約1.25〜1.5トンの温室ガスが生じる。対照的に、無機リン酸塩ベースの接着剤は、揮発性有機化合物を全く生成せず、接着剤1トン当たり約0.2〜0.25トンの温室ガスのみを生成し、これは、有機ポリマー接着剤の約5分の1〜6分の1である。
【0057】
本明細書において開示および記載している無機接着剤を使用する別の利点は、繊維を乾燥させることなく繊維ベースの複合材を調製する能力である。有機ポリマー接着剤を使用すると、接着剤の繊維表面での適当な湿潤のため、ならびに樹脂/繊維界面での水分取込みを回避するために、木材/繊維を十分に乾燥させなければならない。木材/繊維内の水の重量は、乾燥木材自体の重量に匹敵する可能性があり、したがって、乾燥によりエネルギーが失われる。さらに、木材/繊維の乾燥により、テルペンなどの揮発性有機化合物(VOC)が排出される。対照的に、無機酸性/アルカリ性前駆体接着剤を使用する本開示のプロセスは、バインダーの適当な湿潤または形成を開始するのに乾燥繊維を必要としない。実際、本開示の無機酸性/アルカリ性前駆体接着剤は、水溶液とすることができる。木材繊維中に存在する自由水は、プレスの間に絞り出され、それ故、接着剤の(酸性ならびにアルカリ性の)成分の溶解が最大となり、それにより、より早い反応が促進され、それにより硬化時間が短縮される。同じ無機バインダー系は、また、結果として得られる複合材中のテルペンなどのVOCを捕捉し得る。
【0058】
セルロース材料
無機酸−塩基繊維複合材または繊維強化セラミックスの提供、および本明細書において開示および記載している方法の実施において、任意のセルロース材料を使用することができる。リグノセルロース材料は、木材または植物材料から得られる硬材および軟材繊維が挙げられるがこれらに限定されない様々な形態で得ることができる。繊維状材料は、木材ベニヤ、長短フレーク、ストランド、鋸屑、木材粒子、繊維束、ならびに/あるいは砕木パルプ(SGW)、加圧式砕木パルプ(PSW)、リファイナメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、クラフトパルプ、ソーダパルプ、再生パルプ、およびさらしパルプなどの様々なパルプ化方法により得られる原材料とすることができる。繊維状材料としては、トウモロコシの毛、種子繊維、葉繊維、靭皮(皮膚)繊維、果実繊維、および茎繊維などの様々な植物繊維も挙げられる。セルロース材料は、木材の薄いシートまたは圧縮木材の形態、例えば、ベニヤ等を含む。上記の例に加えて、セルロース材料は、非セルロースベースの材料、例えば、羊毛、絹、およびクモの糸などの他のバイオマテリアルも包含する。セルロース材料は、長繊維および短繊維を含む。これらの代表的な原材料の例は、以下で、限定することなく、「リグノセルロース材料」または、互換的に「セルロース材料」と呼ぶ。
【0059】
セルロース材料を有する複合材の開発に適した天然のセルロース材料は、リグニン、ヘミセルロース、セルロース、および抽出物からなる。本明細書において開示および記載している方法は、リグニン、ヘミセルロース、および抽出物の全てまたは一部を除去するためのいくつかの処理の有無に関わらず、これらのセルロース材料に適用可能であるが、多少のヘミセルロースの除去により、一般に、より良好な製品が得られる。リグニンおよびヘミセルロースの除去は、よく知られているクラフトまたはソーダパルプ化プロセス、すなわち、アルカリ性溶液におけるセルロース材料の煮沸を伴い、そこでは、沸騰アルカリを使用してリグニンおよびヘミセルロースの一部が抽出される。本開示の方法の少なくとも1つの態様において、除去したリグニンおよびヘミセルロース材料を、次いで、複合材の形成の間に無機接着剤で代替する。また、当該接着剤により、除去した材料の代替に加えて、セルロースと残りの成分とが結合され、複合材が形成する。
【0060】
無機酸性/アルカリ性接着剤組成物
少なくとも1つの態様において、無機酸性前駆体およびアルカリ性前駆体成分は、複合材用の接着剤として機能し、固化すると、複合材用の無機バインダーとなる。バインダー前駆体組成物としては、リン酸塩バインダー、オキシ塩化物およびオキシ硫酸塩セラミックスなどの全て異なる形態の酸−塩基の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。特に、本明細書において開示しているのは、詳細には、リン酸塩酸性前駆体/アルカリ性前駆体成分であるが、本明細書において開示および記載している方法は、一般に、他のバインダーに適用可能であり、それ故、全ての酸−塩基バインダーが想定される。
【0061】
本明細書において開示および記載している、水溶液を使用して無機酸−塩基接着剤を生成する方法は、粉末状のやや溶けにくい金属酸化物をリン酸溶液と反応させてセメント系バインダーを生成する既に報告されているリン酸塩結合構造の製品とははっきりと異なる。金属酸化物は、リン酸成分前駆体と完全に反応しないか、または完成製品にコアシェル形態を付与し、離散した金属酸化物粒子が複合材製品中に残るので、これらの既に報告されている方法は、やや溶けにくい固体粉末を含有するセメント系バインダーを伴う。粉末金属酸化物を使用する場合のアルカリ性成分のこの不完全な反応により、本明細書において開示および記載している溶液中のアルカリ性成分前駆体と比較して品質および性能が劣っている製品が生じる。
【0062】
さらに、粉末金属酸化物(一般に焼成酸化物)を使用する、既に報告されている無機セメント系のプロセスにおいて、金属酸化物の焼成は、エネルギーを消費するプロセスであり、プロセス全体のカーボンフットプリントが増大する。既に報告されているプロセスは、大規模製造を困難にする限界を有し、例えば、セメント系の結合繊維複合材の製造の間に、(焼成)酸化物およびリン酸の両方を繊維と本質的に同時に混合する必要がある。粉末金属酸化物を使用する無機セメント系プロセスにとっては固化反応が急激であるので、繊維が焼成酸化物と混合および/または反応する時間、繊維を含浸させる時間、ならびに繊維が効果的にコーティングされる時間がほとんど残らない。一般に、この結果、本明細書において開示および記載しているプロセスと比較して質の悪い繊維複合材が生じる。さらに、無機酸性成分と共に焼成金属酸化物を使用すると繊維の充填量が低下し、無機バインダーがセルロース材料を強化している本開示の方法および製品とは対照的に、セルロース材料がセメントを強化している複合材料が生じる。
【0063】
本明細書において開示しているのは、未焼成の金属水酸化物および酸性リン酸塩の好適な溶液を使用してセルロース繊維複合材用の無機バインダーを提供する接着剤を開発するプロセスである。既に報告されているセメント系の繊維複合材形成方法、および結果として得られる製品に対する、これらの開示しているプロセスの利点は複数ある。例えば、未焼成の金属水酸化物は、焼成酸化物または鉱物(例えば、ケイ酸カルシウム)と比較して高い溶解度を有する。結果的に、未焼成の金属水酸化物を接着剤として使用する無機酸性/アルカリ性の反応生成物の収率が増大し、したがって、必要とされる無機酸性/アルカリ性のバインダーの総量が少なくなる。アルカリ性成分前駆体用の未焼成の水酸化物、例えば、ドロマイト鉱山から抽出および誘導される水酸化マグネシウムブラインを調達することにより、溶液からの水酸化マグネシウムの物理的分離が排除され、エネルギーが節約され、さらにカーボンフットプリントが減少する。より酸性ではない酸性リン酸塩を使用することにより、強酸の取扱いおよびその後の製造装置の腐食、強酸廃棄物の廃棄、および製造される物品内または物品上に存在する残留酸化物が回避される。
【0064】
有益なことに、無機接着剤用に、より遅く反応する酸性リン酸塩溶液を無機酸性成分前駆体として使用すること、および酸化物または水酸化物または酸化物鉱物の溶液をアルカリ性成分として使用することにより、改善されたセルロース複合材が提供されることが分かった。本開示の方法は、接触時にセルロース材料繊維の本質的に完全な湿潤を実現し、結果的に、繊維と無機酸性/アルカリ性接着剤との優れた結合を発生させ、セメント系バインダーを含むセルロース複合材と比較して優れた性質を有する複合材物品を提供する。
【0065】
上記属性は、単独で、または組み合わさって、固体金属酸化物または焼成金属酸化物/鉱物をアルカリ性成分前駆体として利用する既に開示されている方法では通常製造することができない様々な製品の製造を実現する。例えば、いかなる限定も暗示することなく、本開示の方法により製造される複合材物品は、既に報告されているセメント系の方法では通常製造することができない、非常に高充填量のセルロースならびに最小量の接着剤/バインダーを有する製品を提供する。
【0066】
さらに、本開示の方法およびセルロースと無機酸性/アルカリ性成分溶液との混合物を含む材料(例えば、セルロースと無機酸性/アルカリ性成分溶液との混合物を含有するパルプ)は、研磨粒状物質の存在なしで容易に押し出すことができる。本明細書において開示および記載している低粘度の無機酸性/アルカリ性成分溶液は、セルロース繊維マットおよび個々の繊維マットの織り目の間に注入/射出することができ、高性能の改善された繊維マトリックス複合材を提供する。対照的に、既に報告されているバインダー組成物中に通常存在する固体粒状物質は、マットの層/繊維または織り目の間の多孔質空間を詰まらせ、注入/射出加工を妨害または禁止する。
【0067】
本開示のアルカリ性前駆体の溶液粘度は、既に報告されている複合材形成方法のものより低い。結果的に、これらの溶液のポンピングおよび射出が容易になり、繊維における無機バインダー成分のより大きな含浸が可能となり、優れた複合材物品が提供される。
【0068】
一態様において、酸性およびアルカリ性成分の両方を、最初に、好ましくはそれらの最適な溶解度となるように、水性媒体中に溶解または供給し、例えば、標準的な複合プロセスを使用してそれらの液体画分をセルロース材料と接触させる。接触は、射出、および前駆体をセルロース材料内およびセルロース材料中に分散させることを意図した他のプロセスを含むことができる。他の態様において、酸性およびアルカリ性成分の少なくとも一方または両方を、セルロース材料との接触の前に加熱する。酸性およびアルカリ性成分は、水の沸点付近の温度まで加熱することができる。1つの特定の態様において、酸性およびアルカリ性成分の少なくとも一方または両方を、セルロース材料との接触の前に最大で水の沸点付近まで加熱する。
【0069】
無機酸性およびアルカリ性前駆体溶液のセルロース材料への導入後、予想される前駆体材料単独での反応、またはセルロース材料の様々な官能基との組合せによる反応と同様に、酸−塩基反応が一般に発生する。これらの反応は、セルロースの湿潤した表面で発生することができ、セルロース繊維を互いに結合させる。酸性およびアルカリ性成分は、セルロース材料と接触させた後、さらに加熱することができ、例えば、最大で約400°Fまで加熱して、無機バインダーの硬化を加速することができる。加熱は、酸性およびアルカリ性成分のセルロース材料内での分散を促進する、圧力、真空および/または音波処理などの他のプロセスと組み合わせて実施することができる。
【0070】
特定の実施形態において、酸性/アルカリ性成分を繊維細胞に含浸させ、それにより必要な量の溶液のみを導入し、したがって、過剰な接着剤溶液または水の使用の低下を実現する音波ミキサーおよび/または真空チャンバの使用を提供する。特定の態様において、本明細書において開示および記載している方法は、利用する酸/塩基の前駆体溶液に固有のものであり、したがって、1種または複数の加工技術を、特定の酸/塩基溶液に適合させることができる。様々な態様において、これらの特定の組成物および対応する加工技術を提供する。
【0071】
酸性およびアルカリ性成分の両方の組合せ中に存在する過剰な水も、繊維を十分に湿潤させることができ、これは、既に開示されているプロセスでは得られない利点である。この過剰な水は、湿潤した複合材料に圧力を適用し、その後、熱処理を適用することにより、または熱および圧力を同時に適用することにより除去することができる。
【0072】
セラミクリート(Ceramicrete)などの従来の酸−塩基セメント系材料とは対照的に、本明細書に開示の濃縮水溶液は、化学量論的に過剰な水を含有し、それ故、無機接着剤は、本質的に全ての化学量論的に過剰な水が除去されるまで、急速に固化することができない(そして複合材は凝固しない)。この改善により、既に報告されている繊維を有するセメントを使用することでは通常困難な、複合材製作プロセスの利点が生じる。
【0073】
繊維強化セラミックス複合材
セルロース繊維強化セラミックス複合材は、一般に、セルロース材料の量、例えば、約35〜40wt%未満の繊維を上回る量で酸−塩基前駆体を用いて調製される物品として理解される。この場合、量が少ないセルロース材料を酸−塩基前駆体粉末/ペーストの一方または両方と混合してパルプを形成し、次いで、これをプレスにより成形する。結果として得られる製品は、セルロース材料が強化剤として作用している、硬質および高密度のセラミックスである。セルロースの密度の低さおよびその繊維状の性質に起因して、結果として得られる製品は、元のセラミックスより軽く、セルロース材料を用いていない脆性セラミックスより優れた破壊靱性、ならびに曲げ特性を有する。軽さおよびより高い曲げ強度により、良好な耐衝撃性も製品に付与される。少なくとも1つの態様において、本明細書において開示および記載しているのは、そのような繊維強化セラミックス複合材およびそれから調製される物品の配合である。したがって、セルロース材料は、セラミックスマトリックスにおいて充填剤として使用され、そこでは、セルロース材料の充填量は、一般に、無機酸性/アルカリ性前駆体成分より低い。これらの方法により調製されるセラミックスマトリックスは、リン酸塩、オキシ塩化物、またはオキシ硫酸塩セメントなどのセメント系無機酸−塩基セメントと比較して優れた機械的性質、改善された延性および耐衝撃性を証明しており、既に報告されている方法および材料により製造されるものと比較して均一である。
【0074】
本明細書において開示および記載している無機酸性/アルカリ性成分の溶液、例えば、水溶液は、セルロース繊維と共に改善された強化セラミックスを提供することができる。
【0075】
無機繊維複合材
無機酸性/アルカリ性接着剤としてバインダーを有するセルロース材料は、一般に、例えば、無機酸性/アルカリ性接着剤を用いて調製される、無機酸性/アルカリ性接着剤を上回るセルロース材料が複合材中に存在する無機繊維複合材物品として理解される。例えば、特定の態様において、本開示の無機繊維複合材は、約35〜40wtパーセント超の繊維を複合材中に含む。この場合、充填量が低い無機酸性/アルカリ性接着剤をセルロース材料繊維と混合してパルプを形成し、次いで、これをプレス、射出成形および押出により成形する。結果として得られる製品は、セラミックスが強化剤として作用しているセルロース材料であり、結果的に、この複合材は、高い曲げ強度、高い耐衝撃性、非可燃性および優れた断熱性を有することができる。
【0076】
結果として得られる製品、繊維強化セラミックスまたは無機繊維複合材は、高密度、耐火性であり、非常に低い多孔度を有する。これらの材料は、比較用の無機でない繊維複合材と同様または優れた機械的性質を示すが、有益なことに難燃剤であり、揮発性有機化合物を全く排出せず、有機ポリマー複合材と比較してずっと小さいカーボンフットプリントを有する。
【0077】
無機酸性成分(A)
本開示の無機酸性/アルカリ性接着剤の第1の成分(A)は酸性前駆体成分である。一態様において、酸性前駆体成分は、リン酸塩、オキシ塩化物、オキシ硫酸塩、またはそれらの混合物を含む。表1は、例えば、リン酸塩、およびオキシ塩化物およびオキシ硫酸塩を含めた、代表的な無機酸性前駆体成分の溶解度を列挙している。
【表1】
【0078】
表1は、様々な酸性リン酸塩、Mgの塩化物および硫酸塩が異なる溶解度を有することを示している。最大溶解度の酸−塩を使用すると、最大量の酸成分を導入してバインダーを形成することが可能である。「無機酸性成分」という用語は、ルイス酸のMgCl2およびMgSO4を含み、成分の溶液pHにより限定されるものではない。
【0079】
一態様において、無機酸性前駆体は、リン酸または酸性リン酸塩の飽和溶液を含む溶液またはペーストとして提供する。リン酸または酸性リン酸塩は、ナトリウム(リン酸二水素ナトリウム、NaH2PO4)、カリウム、(リン酸二水素カリウム、KH2PO4)、セシウム(リン酸二水素セシウム、CsH2PO4)などの一価アルカリ金属、または、マグネシウム(リン酸二水素マグネシウム、Mg(H2PO4)2・2H2O)、もしくはカルシウム(リン酸二水素カルシウム、Ca(H2PO4)2・2H2O)、もしくは亜鉛(リン酸二水素亜鉛、Zn(H2PO4)2)などの任意の二価の金属、もしくは三価の金属、またはアルミニウム(ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム、AlH3(PO4)2・H2O)などの三価の金属のものを含む。一態様において、リン酸二水素カリウムよりリン酸二水素ナトリウムの使用が好ましい。別の態様において、リン酸二水素カリウムよりリン酸二水素アルミニウムが好ましい。Na、K、またはMgなどのカチオンは、接着剤の品質に影響を及ぼす可能性があり、したがって、無機酸性前駆体溶液のカチオンならびに溶解度の制御を調整して、接着剤を最適化する。
【0080】
一態様において、酸およびアルカリ性溶液のpHを調整することにより酸−塩基反応の程度を強化する方法を提供する。酸性リン酸塩前駆体において、少量のリン酸を添加して溶液の酸性度を増大させ、それにより、酸性リン酸塩成分のリン酸塩含量(P2O5含量)を増大させる。例えば、リン酸二水素カリウムの酸前駆体の水溶液の使用は、その溶解度が約4.2の溶液pHで約20g/mlと低いので、本明細書において開示および記載している方法に関しては特に効率的ではない。したがって、pHを4未満まで低下させるために、所定の量の85wt.%飽和リン酸をリン酸二水素カリウム前駆体溶液の溶液に添加する。1つの好ましい態様において、リン酸二水素カリウムの溶液に添加する85wt.%飽和リン酸の量は、リン酸二水素カリウム前駆体溶液100グラム当たり5グラムを超えず、リン酸二水素カリウム前駆体溶液のpHは、約pH3を標的としている。この接着剤に関して、約4.2から4未満へのpHの調整により、リン酸塩含量が十分に増大し、繊維複合材物品を調製するための改善された無機リン酸塩酸/塩基接着剤が提供される。そのような複合材物品は、約4.2より大きいpHのリン酸二水素カリウム前駆体溶液を使用して調製した複合材物品より改善された性質および性能属性を有する。
【0081】
一般に、無機酸性前駆体溶液のpHは、約0〜6の間、好ましくは約3〜5の間、最も好ましくは約3〜4.5の間とすることができる。
【0082】
一般に、開示している無機接着剤の製造に関しては、3〜5未満のpHでは、各溶液は非常に腐食性となり、このpH範囲を超えると、各溶液の反応が接着剤を形成するには遅くなりすぎ、おそらく複合材物品の性能属性を低下させるので、3〜5のpH範囲の溶液が好ましい。
【0083】
塩化物および硫酸塩溶液の溶解度を調整するために、塩酸および硫酸を、それぞれ、オキシ塩化物およびオキシ硫酸塩接着剤の製造の間に同様の方法で使用することができる。
【0084】
アルカリ性成分(B)
本開示の無機酸性/アルカリ性接着剤の第2の成分は、アルカリ性前駆体成分(B)である。一態様において、アルカリ性前駆体成分は、金属水酸化物溶液である。それらが水酸化物を形成するならば、特定の酸化物出発原料を使用することができる。アルカリ性成分溶液の例は、例えば、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウムの任意の一価または二価の金属酸化物または水酸化物、ならびにアルミニウム、鉄、またはランタニドなどの三価の酸化物が挙げられるがこれらに限定されない、わずかに可溶性の酸化物または水酸化物を、完全にまたは部分的に溶解することにより製造される飽和溶液またはペーストを含む。一態様において、アルカリ性成分溶液は、酸化物もしくは水酸化物の天然鉱石の鉱山から得られる水酸化物に富んだブライン、または天然鉱石からの他の脈石材料の分離の間に生成される同様の溶液である。別の態様において、アルカリ性成分溶液は、ボーキサイトからアルミナを分離するバイヤープロセスの間に生成される水酸化アルミニウムのバイヤーの貴液である。好ましい態様において、アルカリ性成分溶液は、マグネシウム鉱床での蒸気噴射により得られる水酸化マグネシウムブラインである。表2は、様々な水酸化物の水性飽和濃度およびそれらの結果として生じる水性pHを示す。アルカリ性成分としては、最大溶解度の水酸化物溶液が一般に好ましい。
【表2】
【0085】
アルカリ性前駆体成分に関して、その溶解度は、pHを増大させることにより増大させることができる。一部の水酸化物は、自然に高いpHおよび高い溶解度を有する。水酸化カルシウム(Ca(OH)2)がそのような水酸化物である。さらに、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)も有効に作用する。しかし、溶解度が約10より低い場合、Na(OH)、またはKOHなどのアルカリ性の水酸化物を添加して、水酸化物成分の溶解度を増大させることが好ましい。必要とされるアルカリ性の水酸化物の量は、一般に少なく、それ故、結果として得られる複合材物品の化学的性質を著しく変化させることはない。一態様において、アルカリ性前駆体溶液のpHは、約8〜14の間、好ましくは約9〜12の間、最も好ましくは約10〜11の間である。強アルカリ性の製品の取扱いは困難であるので、1つの少なくとも1つの態様において、アルカリ性成分前駆体溶液の最大pHは約11とする。実験の項で論じるように、約10.2のpHを有する水性マグネシウムブラインが、本明細書において開示および記載している方法のアルカリ性成分前駆体として非常に有効に作用する。
【0086】
無機酸性/アルカリ性接着剤
上で開示している無機酸性前駆体成分とアルカリ性前駆体成分とを合わせることにより、無機−有機複合材を調製するのに効果的な無機接着剤が提供される。1つの好ましい態様において、最大量の酸性前駆体およびアルカリ性前駆体が特定の前駆体溶液に溶解するように各前駆体溶液を調整する。各前駆体成分の最大溶解度を実現する様々な範囲の酸性およびアルカリ性溶液を使用することができる。上述の通り、前駆体の一方または両方を加熱することができる。
【0087】
無機酸性成分前駆体およびアルカリ性成分前駆体溶液の溶解度および/またはpHを最適化すると、各前駆体溶液を合わせることにより、有機複合材物品に有用な無機接着剤が提供される。これらの成分の適合性および比率、ならびにそれらの相溶性は、一般に、対応する酸−塩基反応の化学量論により左右される。表3は、これらの組合せ、および結果として得られる無機接着剤の化学式の概要を示す。
【0088】
表3において、反応を開始するために添加した水、または反応の間に形成された水は、結合水として部分的に結晶構造に入る可能性がある。表3では、この2つを区別していないが、製品が乾燥すると自由水は蒸発するが、結合水は構造内に残るので、その区別は重要ではない。無機リン酸塩製品中の結合水の量は、示差走査熱量測定などの分析手段を使用することにより定性的または定量的に求めることができる。
【表3A】
【表3B】
【0089】
表3において、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、またはアンモニウム(NH4)などの一価の元素の好適な例を列挙している。同様に、使用することができる主要な二価の元素の好適な例は、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、銅、バリウム、ランタニド等であり、一方、三価の元素は、アルミニウム、鉄等であり、四価の元素の一例はジルコニウム(Zr)である。これらは、接着剤を形成するのに適した元素の代表的な例として列挙しているが、上で示した組合せに適した他の元素も使用することができる。
【0090】
一態様において、酸性/アルカリ性前駆体を含む低原子質量および高原子質量の元素の組合せを使用して、例えば、単一の複合材物品中に中性子およびガンマ放射の両方の改善された放射線遮蔽を有する無機複合材を提供することができる。例えば、各前駆体成分において、中性子およびガンマの両方の粒子を遮蔽するためにバリウムおよびランタニド元素を利用することができる。
【0091】
本明細書において開示および記載している無機酸性/アルカリ性前駆体成分接着剤の一方または両方は、好ましくは、水溶液から形成することができる。一態様において、前駆体の一方または両方の平均粒径は、懸濁液、ゲルの形態で、またはペーストとして使用する場合、40ミクロン未満、30ミクロン未満、20ミクロン未満、10ミクロン未満、1ミクロン未満、0.1ミクロン未満〜約0.01ミクロンである。そのような粒径は、篩分けまたは当技術分野において知られている他の方法を使用して実現することができる。
【0092】
有機材料がセルロースを含む場合、一般に、無機接着剤の成分は、化学的/非化学的相互作用、例えば、セルロース反復単位のヒドロキシル/カルボキシル基と接着剤の無機成分との間の水素結合および/またはエーテル結合により、木材/繊維のセルロースのドメイン上またはドメイン内に保持されると考えられている。無機酸性/アルカリ性のバインダーを同様に含む最終複合材製品は、反応および固化の間にセルロースとの水素およびエーテル結合を生じると考えられている。そのような結合を形成するためのエネルギー必要量は、発熱性の酸−塩基相互作用により、および/または外部の源から(外部加熱)生成されるエネルギーから供給することができる。
【0093】
天然繊維壁板用のデンプンまたは紙生産用の炭酸カルシウムの接着剤としての使用が知られている。しかし、接着剤としてのデンプンおよび炭酸カルシウムは、水分による影響を受け易く、その製品は湿潤するとその統合性を失う。一方、本明細書において開示および記載している無機酸性/アルカリ性接着剤溶液は、セルロース材料の細胞を含浸させることができる低粘度を示す。無機酸性/アルカリ性接着剤溶液は、毛細管作用によりセルロース材料の間隙を容易に上昇し、セルロース材料の単位面積当たり大きい面積が結合された複合材物品を提供する。したがって、無機酸性/アルカリ性接着剤溶液を使用すると、繊維の非常に高い充填量を実現することができ、結果として得られる複合材物品は、以下でさらに論じる特定の用途に関して、有機ベースの繊維複合材と比較して優れた機械的および物理的性質を示す。
【0094】
無機有機複合材製品の製造方法
以下の説明は、複合材製品を取り扱っている業界における例として示す一般的な実施方法を表すことを意図したものであり、本明細書に開示の材料の用途を限定するものでは一切ない。本明細書において示す材料および組成物は、非常に多目的なものであり、本明細書において示す材料および組成物の利益の一部だけを証明する新規の複合材を様々な技術により製造するために使用することができる。有機材料としてセルロースを例証する。
【0095】
少なくとも1つの態様において、セルロース材料を最初に無機酸性前駆体溶液またはアルカリ性前駆体溶液中で混合し、次いで、第1の前駆体溶液を第2の前駆体溶液と接触させて、酸塩基反応を開始するステップを含む複合材の製造方法を提供する。さらなる態様において、圧力および温度を適用し、反応の間に形状を形成する方法も開示している。これらの方法としては、幾何学的形状に構成された開放金型内で反応組成物を直接プレスすること、押出、真空成形、射出成形、およびプラスチック業界において使用される任意の他のタイプの成形プロセスが挙げられる。これらのプロセスの後に、制御条件下でさらなる硬化を実施することができる。
【0096】
一態様において、無機繊維複合材を生成するセルロース材料を結合させる酸−塩基反応を提供するために無機酸性前駆体とアルカリ性前駆体成分塩基とを合わせることにより形成される無機バインダーを開示および記載している。商業用の繊維複合材において使用される有機高分子材料とは異なり、これらの無機酸性/アルカリ性前駆体接着剤を使用することにより揮発性有機化合物は生じず、それらのカーボンフットプリントは従来の有機バインダーのものよりかなり小さい。結果として得られる無機−セルロース複合材は、非延焼性を実現し、断熱および耐火材料である。それらは、有機バインダーの使用により製造されるそれらの対応品と比較して優れた機械的性質を示す。
【0097】
開示している無機セルロース複合材の好ましい形成方法は、開放金型プレスまたは圧縮成形、真空含浸、射出成形、および押出である。開示している無機接着剤を開放金型プレス中で使用する場合、最初に、セルロース材料を酸性前駆体またはアルカリ性前駆体溶液で完全に湿潤させる。次いで、湿潤したセルロース材料を金型に入れ、成形の前に第2の溶液を導入する。同時に圧力を適用して、過剰な溶液を絞り出す。所望の製品密度に応じて、0.5g/cm3の低さから1.5g/cm3の高さの密度の製品を製造できるように圧力を調整することができる。より低密度の無機複合材物品により、一般に、低い熱伝導率が付与され、それ故、高断熱製品のように有用である。より高密度の複合材物品により、より良好な構造的統合性および強度が付与される。複雑な形状の無機複合材物品を製造するために、単純な成形技術を使用することができる。例えば、繊維のパルプおよび酸−塩基ペーストを金型に導入し、パルプを固化させて、金型の形状とする。次いで、それを離型して、所望の製品を得る。一般に、接着剤前駆体成分が反応すると金型内の混合物の温度が上昇し、バインダーが形成される。一般に、開示している無機接着剤を用いて調製される物品は、多少過剰な水を含有し得るが、これは、試料を約400°Fで加熱することにより除去することができる。しかし、繊維強化セラミックス複合材により製造される製品は、任意の過剰な水なしで固化し、それ故、さらに乾燥させる必要がない。
【0098】
別の態様において、真空含浸を使用して、セルロース繊維を無機酸性/アルカリ性前駆体成分で含浸させる。この方法において、セルロースを所望の形状の金型に導入し、金型内に真空を生み出すことにより、好ましくは2つの別個の入口を介して無機酸性/アルカリ性前駆体成分を金型に押し込む。無機酸性/アルカリ性前駆体成分は、セルロースの存在下で混合し、その後、引き出される。2種の溶液は、独立して、および/または一緒にセルロース繊維をウェットアウトし、酸−塩基反応により複合材のバインダーが形成される。任意の所望の形状をこの方法により調製することができる。他の態様において、真空なしで開放金型を使用することができる。
【0099】
真空含浸において、セルロース材料を金型に入れ、例えば、真空ポンプを使用して酸性またはアルカリ性前駆体溶液をセルロース材料に押し込む。第1の前駆体溶液は、セルロース材料を湿潤させ、さらには、セルロース材料を金型の形態とする。含浸の間に過剰な溶液が引き出される。次いで、同じ方法で第2の前駆体溶液を湿潤した材料に押し込む。各前駆体がセルロース混合物内で反応し、その混合物は凝固する。場合により、金型を同時に加熱して、反応を加速する、および/またはその形態を完全に乾燥させることができる。別の態様において、無機酸性およびアルカリ性前駆体溶液のための複数の入口を使用して両方の前駆体溶液をセルロース材料に同時に導入し、両方が繊維を湿潤させ、反応を開始する。
【0100】
射出成形に関して、鋸屑または木粉を無機酸性またはアルカリ性前駆体の第1の溶液で湿潤させ、ホッパーを通してスクリューミキサーに供給する。別のホッパーを通して、対応する第2の前駆体溶液をこのミキサーに供給し、そこで2つの流れを完全に混合する。次いで、結果として得られるパルプを所望の形状の金型に射出する。短納期射出成形において、全ての3種の成分(無機酸性およびアルカリ性成分ならびに木材)を一緒に1つのホッパーで混合し、射出成形することも可能である。必要に応じて中熱を適用することができるが、上で示した組成物の大部分は、室温固化材料であり、したがって、加熱ステップを排除することができる。
【0101】
天然繊維の織物マットを敷き、次いで、そのマットの層を通して上記無機接着剤を射出することにより、射出成形も使用することができる。当該マットは、所望の形状の金型内に層状に積み重ねることができ、したがって、非常に高い延性および強度を示す任意の形状の繊維強化製品を生成する。
【0102】
上で記載したプロセスにおいて、最初に、セルロース材料を酸性前駆体またはアルカリ性前駆体溶液のいずれかと接触させ、その後、それぞれの第2の前駆体溶液と接触させることができる。セルロースの各前駆体溶液との接触は、圧力の適用および高温の間とすることができる。セルロース材料の浸漬に使用する前駆体溶液による接触の順番の選択は、選択したセルロース材料のpHに応じて選択することができる。例えば、一般にアルカリ性である、ヘミセルロースおよび抽出物の一部を除去するために処理したセルロース材料に関しては、最初にアルカリ性前駆体成分を添加することが好ましく、一方、酸で前処理したセルロース材料に関しては、最初に無機酸性前駆体成分を添加することが好ましい。
【0103】
他の態様において、上記無機前駆体成分およびセルロース材料を使用する従来の押出技術を使用して、包装または断熱製品などの軽量の製品を製造することができる。したがって、パルプは、無機酸性およびアルカリ性前駆体溶液を木粉またはセルロース粉末と予備混合することにより製造することができる。この混合により形成されるパルプは、高rpm混合を使用することにより押し出すことができる。場合により、少量のホウ酸を添加して、反応の速度を遅らせることができる。
【0104】
音波ミキサーを使用して、アルカリ性もしくは酸性前駆体成分のいずれかまたはそれらの混合物でセルロース材料をウェットアウトすることができ、開放金型、真空成形、または押出と組み合わせて複合材物品を製造することができる。音波ミキサーの使用により、セルロースのより良好な湿潤、および繊維の毛細管内への無機接着剤の改善された含浸を実現することができる。
【0105】
一態様において、セルロース材料および無機酸性/アルカリ性前駆体成分を押し出す場合、曲げ強度を付与するために少量の約1〜15%の木材繊維を添加する。より多量の繊維を使用すると、スクリュー上で繊維がもつれ、押出機の機能に干渉する恐れがある。しかし、他の製造方法において、必要に応じて、より多量の繊維を添加して、複合材物品の性質を調整することができる。
【0106】
酸化物鉱物などの活性充填剤を無機接着剤組成物中で使用することができ、それにより、使用する無機酸性/アルカリ性成分の総量を低下させることができる。これらの充填剤としては、例えば、ウォラストナイト(CaSiO3)、フライアッシュ、ボトムアッシュ、マグネシウムケイ酸塩、タルク、ムライト、または酸性リン酸塩への溶解度をわずかでも示す任意の鉱物が挙げられる。一般に、溶解した活性充填剤のみがバインダー結合セルロースの一部を形成すると考えられている。
【0107】
次に、図面を参照すると、図1〜4は、無機複合材の異なる製造方法を例示している。したがって、図1は、ステップ110でセルロース材料を供給し、ステップ120で酸処理するプロセス100を示している。ステップ130で酸性セルロース材料を無機酸性前駆体成分Aと混合する。ステップ140で酸性無機パルプを調製する。ステップ150で該パルプをアルカリ性成分前駆体Bと接触させて、前駆体成分の酸−塩基反応を可能にし、その後、形状形成ステップ160および複合材の形成(ステップ170)を実施する。
【0108】
図2は、ステップ210でセルロース材料を供給し、ステップ220でアルカリ処理するプロセス200を示している。ステップ230でアルカリ性セルロース材料をアルカリ性前駆体成分Bと混合する。ステップ240でアルカリ性パルプを調製する。ステップ250で該パルプを無機酸性成分前駆体Aと接触させ、前駆体成分の酸−塩基反応を可能にし、その後、形状形成ステップ260および複合材の形成(ステップ270)を実施する。
【0109】
図3は、ステップ330で無機酸性前駆体成分A(310)、アルカリ性前駆体成分B(320)を合わせて、スラリーを生成し、次いで、ステップ340でそれをセルロース材料と合わせ、その後、形状形成ステップ350(例えば、400°Fでの加熱)、および複合材の形成(ステップ360)を実施するプロセス300を示している。例えば、プロセス300は、酸化アルミニウムを成分Bとして、および表1の酸性リン酸塩溶液のいずれか1種を使用して実施することができる。
【0110】
図4は、ステップ440で無機酸性前駆体成分A(410)、セルロース材料(430)およびアルカリ性前駆体成分B(420)を合わせて、スラリーを生成し、その後、形状形成ステップ450および複合材の形成(ステップ460)を実施するプロセス400を示している。プロセス400は、一般に、例えば、セルロース材料が本質的に充填剤のみである繊維強化セラミックス複合材の調製において、セルロース材料を、無機酸性およびアルカリ性の溶液ではなく無機酸性およびアルカリ性の粉末ペーストと混合する場合に実施する。
【0111】
図5〜6は、セルロース材料と合わせる中間前駆体成分材料の異なる調製方法を例示している。したがって、図5は、ステップ520aでセルロース材料(510)と無機酸性前駆体成分Aとを合わせて、中間無機酸性−セルロース材料(530a)を生成するプロセス500を示している。同様に、ステップ520bでセルロース材料(510)とアルカリ性前駆体成分Bとを合わせて、中間アルカリ性−セルロース材料(530b)を生成する。ステップ540で中間体530aと530bとを合わせ、その後、形状形成ステップ550および複合材の形成(ステップ560)を実施する。
【0112】
図6は、ステップ620aでセルロース材料(610)と無機酸性前駆体成分Aとを合わせて、中間無機酸性−セルロース材料(630a)を生成し、ステップ640でそれを乾燥させて、材料(650a)を生成するプロセス600を示している。同様に、ステップ620bでセルロース材料(610)とアルカリ性前駆体成分Bとを合わせて、中間アルカリ性の−セルロース材料(650b)を生成し、それをステップ640で乾燥させて、材料(650b)を生成する。ステップ660で中間体650aと650bとを合わせ、使用するまで貯蔵することができる。ステップ670における水性媒体、例えば、水または蒸気の添加の後に、形状形成ステップ680および複合材の形成(ステップ690)を実施することができる。
【0113】
図7は、例えば、木製の枠(図示せず)に巻き付けられた繊維マット(750)を使用し、次いで、本明細書に記載の無機酸性/アルカリ性前駆体成分組成物を使用して、両面に層(760)を形成することにより製造される無機セラミックスサンドイッチパネルの構成を示している。このプロセスの間の空気の取込みにより、改善された断熱性が付与される。他の態様において、繊維複合材を断熱材のコアとして利用することができる。
【0114】
図8は、上記の無機接着剤組成物を使用する非延焼性の紙または包装製品の製造を図式的に示すプロセス800を示している。したがって、紙料スラリー(810)を水で十分に(例えば、巻いて薄い二次元形態とすることができるように)湿潤させ、次いで、ステップ820で過剰な水を除去する(例えば、重力脱水)。ステップ840でアルカリ性前駆体成分Bを、セルロース材料の湿潤ウェブに導入し、その後、ウェットプレス区画を通過させる(ステップ850)。ステップ860で無機酸性成分Aを導入する。プロセスステップ870、880、890および895は、それぞれ、脱水と同時の任意選択の加熱、カレンダリング、リール巻き取りおよび乾燥を示す。これらの後半のステップにより、湿潤したセルロースウェブにおける酸/塩基反応の開始が促進されて、二次元形態となる。結果として得られる製品は、製品の厚さに応じて、非延焼性の紙または包装材料である。
【0115】
本明細書において開示および記載している無機酸性/アルカリ性前駆体接着剤を使用することにより製造される非延焼性の紙を製造するためのプロセス800の修正版は、最初に、セルロース材料繊維を低濃度の無機酸性成分前駆体溶液中で接触(例えば、浸漬)させるステップを含む。結果として得られる薄いスラリーをスクリーンに通して、過剰な酸性溶液を除去する。次いで、湿潤した繊維をアルカリ性前駆体溶液と接触させ(例えば噴霧し)、乾燥させた。次に、過剰な無機酸性溶液を再生して、次のバッチの紙を製造することができる。同様に、別の態様において、プロセス800は、最初に、繊維をアルカリ性前駆体溶液で湿潤させ、無機酸性前駆体溶液と接触させるステップを含むことができる。一部の態様において、最初に、繊維を酸性溶液で湿潤させ、次いで、酸性溶液を再生させることが、より経済的となり得る。
【0116】
図9は、本明細書において開示および記載している無機酸性/アルカリ性前駆体接着剤をセルロース材料と合わせて使用する射出成形プロセス900を示している。したがって、ステップ920aでセルロース材料(910)と無機酸性前駆体成分Aとを合わせて、中間無機酸性−セルロース材料(930a)を生成し、ステップ940でこれを乾燥させて、材料(950a)を生成する。同様に、ステップ920bでセルロース材料(910)とアルカリ性前駆体成分Bとを合わせて、中間アルカリ性−セルロース材料(950b)を生成し、これをステップ640で乾燥させて、材料(950b)を生成する。ステップ960で中間体950aと950bとを合わせ、使用するまで貯蔵することができる。乾燥中間体を射出成形機のホッパー(905)に導入し、場合により水性媒体または蒸気と共に加熱器(915)を介して加熱しながらスクリューフィーダーを通して供給し、締付装置(955)およびプレート(965、975、985)を介して圧縮しながらノズル(925)を通して金型(935)に射出して、所望の形状の複合材の形成を実現し、これを、エジェクター(995)を介して押し出す。供給機の圧力および開口部を変えることにより、密度、均一性などの材料の特徴、および複合材物品の稠度の調整が可能となる。
【0117】
用途および製品
本開示の材料および方法を使用すると、様々な構造材料および製品を製作することができる。全てのこれらの製品は、有機ポリマーおよび天然繊維の複合材から作製される既存の市販の製品と比較してそれらの特徴が独特である。これらの特徴としては、より均一なセラミックスバインダー、非延焼性、揮発性有機化合物(VOC)の排出ゼロ、低い吸水率、小さいカーボンフットプリント、より低い加工費用、および使用終了時の安全な廃棄が挙げられる。
【0118】
本明細書において開示および記載している無機酸/アルカリ性の接着剤、および結果として生じるセラミックスバインダーを使用すると、配向性ストランドボード(OSB)、または中質繊維(MDF)板などの、有機ポリマーおよび天然繊維をベースにした最も従来型の複合材を製造することができる。しかし、無機酸/アルカリ性の接着剤に特有のさらなる用途および製品が存在し、それを以下で論じる。例えば、不燃性壁板、成形複合材部品、耐燃性の紙および包装材料、軽量のブロー可能な断熱材;ならびに不燃性壁板は、本明細書に開示の無機酸性/アルカリ性前駆体成分接着剤を用いて製造することができる。これらの製品の内部コアは、無機接着剤により結合された繊維複合材により製造され、外側の層は、本明細書において開示および記載している繊維強化セラミックス複合材または紙により製造される。アッシュ、ウォラストナイトなどの充填剤、または任意の他の低価格の反応性充填剤を使用することができる。
【0119】
別の態様において、断熱壁板またはタイルを形成するようにリン酸塩またはオキシ塩化物またはオキシ硫酸塩の酸−アルカリ性成分ペーストが噴霧された、木製の枠の両面に延伸されたセルロース繊維の織物マットからなる壁板および断熱タイルを提供する。さらに、成形された複合材部品は、本明細書に開示の無機接着剤を使用する射出または押出技術により製造することができる。繊維強化セラミックス複合材を含む同様の物体も、単純な室温成形技術を使用することにより製造することができる。無機接着剤組成物を使用する本開示の方法により製作することができる複雑な不燃性製品、部品、および建築用装飾用部材の例としては、家具、扉、戸枠および窓枠、高級家具、既存の木製の物品の代替製品、木造床、屋根板、不燃性羽目板および木造床、壁タイルおよびフロアタイル、配向性ストランドボード(OSB)、中質繊維(MDF)板、高密度繊維板、およびパーティクルボード、ならびに建設業界において使用される任意の他の木材の部材が挙げられる。
【0120】
本明細書に開示の無機酸性/アルカリ性前駆体成分接着剤を使用すると、貴重な商品、保管できる文書を包装するのに有用な難燃性の紙および包装材料も調製することができる。本明細書に開示の方法および組成物を使用すると、耐燃性を有する商業用または住宅用の薄膜の耐蒸気シート材料/ラッピング材料も調製することができる。そのような紙および/または紙製品の製造プロセスの例を図8で例示している。
【0121】
細断された紙、または鉋屑、または鋸屑、または他の同様のセルロース材料を使用し、本明細書に開示の接着剤組成物でそれらを緩く結合させる本明細書に開示の方法および組成物により、軽量のブロー可能な断熱材も製作することができる。一態様において、無機接着剤を適用の直前に混合し、十分な空気を製品内に閉じ込めて、ブロー可能な断熱材を提供する。
【0122】
本明細書に開示の方法および組成物を使用すると、風力タービン用の翼を製作することができる。したがって、本明細書に開示の無機バインダー/セルロース材料複合材組成物および方法で代替することにより、従来のガラス−繊維強化エポキシまたはフェノールベースのポリマー複合材料を改質または置換することができる。
【0123】
上で示した製品および用途は、本開示で示している材料および方法により製造することができる製品の範囲またはそれらの用途を限定するものではなく、上で論じた製品および用途に限定するものとは決して解釈すべきではない。
【0124】
添加剤
開示している無機接着剤は、場合により、界面活性剤(アニオン性もしくはカチオン性、両性、または非イオン性)、可塑剤、沈降剤、レオロジー改質剤および/または懸濁剤、消泡剤および/または藻類抑制剤などの1種または複数の添加剤を含むことができる。
【0125】
好適なアニオン性界面活性剤としては、例えば、ペルフルオロオクタン酸塩(PFOAまたはPFO)、ペルフルオロオクタンスルホン酸塩(PFOS)、硫酸ドデシルナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸アンモニウム、アルキル硫酸塩、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、アルキルベンゼンスルホン酸塩、および石鹸または脂肪酸塩が挙げられる。好適なカチオン性界面活性剤としては、例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、アルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化セチルピリジニウム(CPC)、ポリエトキシル化牛脂アミン(POEA)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、および塩化ベンゼトニウム(BZT)が挙げられる。好適な両性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベタイン、コカミドプロピルベタイン、およびココアンホグリシン酸塩が挙げられる。好適な非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルポリ(エチレンオキシド)、アルキルフェノールポリ(エチレンオキシド)、ポロキサマーまたはポロキサミン(ポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシドのコポリマー)、オクチルグルコシド、デシルマルトシド、セチルアルコール、オレイルアルコール、およびドデシルジメチルアミンオキシドが挙げられる。単独で、または上記のものと合わせた他の界面活性剤を使用することができるが、しかし、上記界面活性剤の多くは、特定の無機接着剤前駆体の性能または機能に観察できる違いをもたらさない。したがって、界面活性剤の具体的な選択は、組成次第であり、したがって、任意の特定のリン酸塩セラミックスの配合を断定できるものではない。
【0126】
好適な可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、脂肪族二塩基性エステル、リン酸エステル、エポキシド、またはポリエステルが挙げられる。特定の可塑剤の例としては、例えば、DOP(ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、DINP(ジ(イソノニル)フタレート、TOTM(トリス(2−エチルヘキシル)トリメリテート、TINTM(トリス(イソノニル)トリメリテート、DOA(ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、DINA(ジ(イソノニル)アジペート、DOZ(ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート、およびDOS(ジ(2−エチルヘキシル)セバケートが挙げられる。他の可塑剤を単独で、または上記のものと合わせて使用することができる。
【0127】
沈降防止剤としては、例えば、ダイズレシチン、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸コーティングされた炭酸カルシウム、改質ヒマシ油または脂肪酸、ジペンテン、パイン油、メチルエチルケトキシム、ジ−イソブチレン−マレイン酸分散体、ポリアクリル酸アンモニウム、改質ダイズレシチンエマルジョン、ポリカプロラクトンポリオール−ポリエチレンイミンブロックコポリマー、ポリカプロラクトンポリオール−トルエンジイソシアネートコポリマー、ポリヒドロキシステアリン酸、およびアルキドベースの沈降防止剤が挙げられる。他の沈降剤を単独で、または上記のものと合わせて使用することができる。
【0128】
好適なレオロジー改質剤/懸濁剤としては、水和マグネシウムアルミニウムケイ酸塩、リグノスルホン酸塩(リグノスルホン酸カルシウム、リグノスルホン酸ナトリウム等)、スルホン化されたナフタレンスルホン酸縮合物の塩、スルホン化されたメラミンスルホン酸縮合物の塩、ベータナフタレンスルホン酸塩、スルホン化されたメラミンホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物樹脂、例えば、LOMAR D(登録商標)分散剤(Cognis Inc.、Cincinnati、Ohio)、ポリアスパラギン酸塩、オリゴマー分散剤、ポリメタクリル酸塩、グアーガム、ジウタン(diutan)ガム、ウェランガム、キサンタンガムおよび/またはレオロジー改質剤/懸濁剤として機能する他の助剤が挙げられる。
【0129】
消泡剤としては、例えば、ケイ素ベースの消泡油(ポリエーテル末端基を有するシロキサン)、アセチレングリコール界面活性剤、およびポリオクチルアクリレートが挙げられる。他の消泡剤を単独で、または上記のものと合わせて使用することができる。
【0130】
リン酸塩は、藻類にとって栄養素であり、それ故、酸性成分中での藻類の増殖を予想すべきである。藻類を回避するために、任意の生物活性を阻害する様々な市販の添加剤を添加することができる。一例は酸化第二銅である。酸性リン酸塩前駆体における1wt.%未満の酸化第二銅の添加により、生物学的増殖が十分に阻害される。藻類または真菌の増殖を防止するのに使用される他の市販の化学物質も、単独で、または酸化第二銅と合わせて使用することができる。
【実施例】
【0131】
別段の指示がない限り、列挙している材料のwt.%は、出発原料の乾燥重量を指すものであり、最終複合材物品中の材料のwt.%を指すものではない。
【0132】
[実施例1]
リン酸モノカリウム/水酸化マグネシウム溶液のセルロース複合材 − 50グラムの風乾した鋸屑を、50gの(沸騰した酸化マグネシウムおよび水由来の)水酸化マグネシウム溶液および約100gのさらなる水と混合し、均一なパルプを調製した。ミキサーにおいて、パルプをさらに約1時間半混合して、アルカリ性前駆体溶液を鋸屑に染みこませた。次いで、50gの濃縮リン酸モノカリウム溶液をパルプ混合物に添加し、混合物の温度が上昇し始めるまで連続混合した。温度が約80°Fになると、混合物全体を金型に流し込み、約2000psiで約30分プレスした。結果として得られた無機セルロース複合材物品をオーブンに入れ、暖かい温度で乾燥させた。乾燥した生成物は、有機接着剤を使用して製造された複合材製品と外観が同じであった。無機セルロース複合材物品は、軽く、強く、良好なたわみ性を有していた。
【0133】
[実施例2]
リン酸モノアルミニウム/水酸化アルミニウムのセルロース複合材 − Resodyneミキサーにおいて、10グラムの鋸屑を、20.3gの濃縮リン酸モノアルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)溶液と水酸化アルミニウム(Al(OH)3)との混合物と30秒間混合した。混合後、鋸屑は水気があるように見えたが、木材のフレークのままであった。次いで、約2000psiの圧力で約30分、フレークを金型内でプレスした。結果として得られた、成形された無機複合材試料をオーブンに入れ、約400°Fで約30分、さらに硬化させた。400°Fで、水酸化物とリン酸水素アルミニウムとが反応してリン酸アルミニウム(AlPO4)を形成し、それにより、複合材用の無機バインダーが提供されると考えられている。硬化後、複合材料は硬質繊維板であった。
【0134】
[実施例3]
リン酸モノカリウム/水酸化マグネシウムブラインのセルロース複合材 − 70グラムの風乾した鋸屑、17gの水酸化マグネシウムブライン溶液および約100gの水を含むパルプを調製した。このパルプを1.5時間混合して、アルカリ性前駆体溶液を鋸屑に染みこませた。パルプに、123gの濃縮リン酸モノカリウム溶液(23wt.%リン酸モノカリウム)を添加し、温度が上昇し始めるまで連続混合した。温度が約80°Fになると、混合物を金型に流し込み、約2000psiの圧力で約1時間プレスした。結果として得られた複合材製品をオーブンに入れ、暖かい温度で乾燥させた。乾燥した生成物は、有機接着剤を使用して製造された複合材製品と外観が同じであった。それは、軽く、強く、良好なたわみ性を有していた。
【0135】
[実施例4]
無機複合材の壁板 − リン酸モノカリウムの33wt.%溶液を、17wt.%の水酸化マグネシウムブラインと50wt.%のClass Fフライアッシュとの混合物と合わせて、噴霧可能なコーティング溶液を形成した。コーティング溶液は、実施例1において製造したパネルの両面に噴霧し、多少の発熱と共に直ちに固化した。パネルは、わずかに屈曲性ではあるが硬質であり、水を通さず、軽量および不燃性であった。その機械的性質(例えば、たわみ性)は、その難燃性と同様に、従来の壁板より優れていた。
【0136】
[実施例5]
繊維強化セラミックス複合材を形成する − Hobartミキサーにおいて、33wt.%の鋸屑、17wt.%の焼成酸化マグネシウム粉末、残りのリン酸モノカリウム粉末を混合し、その後、粉末全体の量と等しい量の水を添加し、パルプを得た。約10分混合を実施し、可能な限り多くの固体リン酸モノカリウムを溶解させた。次いで、結果として得られたパルプを、タイトなプランジャーを用いて1000psiの圧力で矩形の金型内でプレスした。このプレスにより、過剰な溶液が金型から絞り出された。生成物を1日完全に固化させて、非常に硬質の矩形のセラミックス試験片を得た。トーチランプで加熱すると、炎が試験片に触れている領域でのみ多少の炭化が発生した。炎は、表面全体には広がらなかった。トーチを取り去ると、炎も広がることなく消えた。したがって、生成物は、非延焼性の特徴を有していた。
【0137】
上で開示している方法を使用して製造した別の試験において、33wt.%の鋸屑、33wt.%のClass Cフライアッシュ、8wt.%の焼成酸化マグネシウムおよび残りのリン酸モノカリウムを含む生成物を調製すると、上記のものより低いジュロメーター(硬度)の試料が生じた。延焼性の結果は、それほど硬質ではないこと以外は上記試料と本質的に同一であった。アッシュをウォラストナイトで代替すると、また、同様の特徴、例えば、より低いジュロメーターならびに優れた難燃性特徴が示された。焼成酸化マグネシウムのアルカリ性前駆体を水酸化マグネシウムブライン溶液で代替することにより、水を添加する必要性または前駆体の溶解を待つ必要性が排除され、接着剤の貯蔵寿命が延長され、実施例5より優れた性質が付与されると想定される。
【0138】
[実施例6]
非延焼性の紙 − 濃縮リン酸モノカリウム溶液および低濃度の水酸化マグネシウム溶液を無機酸性/アルカリ性前駆体成分として使用する本明細書において開示および記載している方法を使用して、難燃剤の紙および包装製品を作製した。したがって、未ざらしクラフト紙を、1kgの低濃度の水酸化マグネシウム(6%溶液)浴および250gのリン酸モノカリウム浴(約20%溶液)にそれぞれ30秒入れ、乾燥させた。コーティングした紙は、未処理の紙と比較してほぼ35%重量増量していた。コーティングした紙を裸火で試験して、延焼性を研究した。処理した紙の中心部分を裸火と接触させると、接触している部分は炭化したが、炎を離すと、紙は燃焼を止め、炎は伝播しなかった。したがって、処理した紙は、容易に燃焼し炎が持続的に伝播した未処理の紙と比較して、非延焼性の特徴の全ての兆候を示した。
【0139】
[実施例7]
セルロース材料の前処理なしでの複合材の製造 − 100グラムの未処理の風乾した木材ストランドを、250gの希釈したMgOH2−ブライン溶液(50gのMgOH2−ブライン溶液と200gの水)に浸漬した。混合物の温度は100°Fまで上昇し、その温度で約1時間維持した。混合物を約20分の期間にわたって75°Fまで冷却させた。175グラムのリン酸モノカリウムの23wt.%飽和溶液を混合物中に撹拌すると、発熱性の酸−塩基反応により、混合物の温度が約7〜10°F上昇した。次いで、浸漬した繊維をプレスして4”×4”の試験部品とした。
【0140】
繊維のブラインとの混合の間、木材の抽出物が強く匂い、木材ストランドの色が淡褐色から暗褐色にかなり変化した。プレスの間、酸/アルカリ成分で湿潤した繊維から水が絞り出された。したがって、木材ストランドの色の変化は、木材とブラインとの間で化学反応が発生し、木材ストランドの混合および加熱の間に少なくとも一部のヘミセルロースおよびリグニンが除去されたことを示唆していた。これらの観測結果により、苛性溶液中でのセルロース繊維の前処理を、排除するか、木材抽出物および/またはヘミセルロースの一部を本質的に除去するのに上で使用したMg(OH)2−ブラインで代替することができることが証明された。したがって、本明細書に記載の方法により、商業的な紙/木材プロセスにおいて使用される苛性溶液に関連した廃棄問題をかなり排除することができる。このことは、本明細書において開示および記載している無機/セルロース材料複合材プロセスが、従来のセルロース複合材プロセスより環境に優しいものとすることができることをさらに証明している。
【0141】
[実施例8]
難燃性に関する木材物品の処理 − 2つの同一の木材ブロックを、1つは対照として、もう1つは実際の試験用に使用した。両方のブロックを212°Fのオーブンに入れて、約1時間乾燥させた。次いで、対照は水に入れ、一方、試験試料は希釈ブライン溶液(300gのブライン+300gの水)に入れた。2分間の浸漬後、両方のブロックをオーブンにおいて212°Fで約1時間乾燥させた。次いで、対照は再び水浴に入れ、試験試料はリン酸モノカリウムの飽和溶液に入れた。さらに2分間の浸漬後、両方のブロックをオーブンにおいて212°Fで約1時間乾燥させた。処理後、わずかに白色になったこと以外は、試験試料の重量はほとんど増大しなかった。対照および試験試料の両方を>1200°Fに曝して、耐炎性を試験した。対照試料は、持続的な炎により炭化したが、処理した試料は、外部の炎を取り去ると炎を持続させることができず、外部の炎が接触した部分のみが炭化した。したがって、無機酸性/アルカリ性前駆体成分を使用して記載した通りに調製した試験試料は、自消性を示した。
【0142】
[実施例9]
リン酸塩結合紙の製作 − 紙製品の作製においてリン酸塩ベースの接着剤をバインダーとして使用することが可能であることを証明するために、硬材市販パルプを使用して以下の4つ試料を調製した。したがって、第1の試料(対照)は、以下の通り調製した。100グラムの硬材市販パルプを10リットルの水と混合し、次いで、この混合物の500グラムを1キログラムの水でさらに希釈して、非常に低濃度のペーストを得た。この希釈したパルプ懸濁液を70メッシュ(212ミクロン)のスクリーンに通して、繊維の湿潤ウェブを保持した。乾燥させると、それは紙の外観を有していた。
【0143】
第2の試料は、以下の通り調製した。3.5グラムのMg(OH)2−ブラインおよび15グラムのリン酸モノカリウム溶液を、上で第1の試験で記載した、希釈パルプ溶液と混合した。手で撹拌している間に均一なペーストが形成した。混合したペーストを70メッシュのスクリーンに通し、ウェブに形成し、それは、乾燥させると、対照試料と同様の紙の外観を有していた。対照紙試料および第2の試験紙試料はいずれも、炎の上に直接保持した。対照試料は、約3秒で完全に炭化したが、リン酸塩Mg(OH)2−ブラインで処理した第2の試験試料は、約20秒まで炭化せず、炎を除去した後まで炎を維持することはなかった。したがって、無機酸性/アルカリ性のMg(OH)2−ブライン前駆体成分を使用して生成した第2の試験試料は、対照試料と比較して6.5倍高い耐炎性を示した。
【0144】
第3の試料は、以下の通り調製した。10wt.%のブライン溶液(約6gのMg(OH)2)を希釈したパルプ懸濁液(約3wt%)と混合し、それを70メッシュのスクリーンに広げて、繊維の湿潤ウェブを形成した。4グラムの10wt%濃縮リン酸モノカリウム溶液を、ミストの形態で繊維の湿潤ウェブに噴霧した。乾燥させると、湿潤ウェブは、リン酸塩/Mg(OH)2−ブライン結合紙を形成した。ブラインおよびリン酸モノカリウム溶液は、いずれも良好に分散し、この試料は、第1の試験の対照試料の外観を有していた。乾燥した生成物は、プレス圧力に応じて0.7〜0.9g/ccの間の密度を有していた。第3の試料は、オーブンにおいて50°F/30分の速度で450°Fまで加熱すると、約23%の質量損失を示した。これは、形成した複合材に付随している水分に起因すると考えられる。質量損失は、最大で約350°Fまで観察された。その温度を超えると、重量の減少は観察されなかった。第3の試料は、上記実験の終了後、燃焼しない、または炭化しない、または物理的統合性を失わなかった。インスタント無機バインダーを用いて製作される、様々なwt%の繊維を有する紙の試料を、上記の方法と同様の方法で調製し、紙が炎を維持する温度、または火がついた温度を求めるために試験した。このデータは、図10に示しており、無機バインダーの量を調整して、所定の最終用途の耐火温度を実現することができることを証明している。
【0145】
第4の試料は、少量のブラインおよびリン酸モノカリウム溶液と混合した、分解させた硬材パルプを用いて調製し、包装製品における使用に適した手漉き紙に形成した。この実験において、対照は、分解させただけの硬材市販パルプであった。第4の試料は、上記の通り試験すると、対照と比較して優れた耐炎性を実現した。
【0146】
[理論実験例10]
難燃性無機パーティクルボード − 約33wt.%の未処理の鋸屑、溶解している約17wt.%の水酸化マグネシウムブライン、約50wt.%のリン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)の混合物を合わせる。混合物に水を添加し、急速に混合して、鋸屑を浸漬させ、リン酸塩を溶解する。次いで、パルプ全体を1000psiの圧力で金型内でプレスし、レンガの形態とする。過剰な水は絞り出され、酸−塩基化学反応が発生し、これにより、試料がかなり加熱される。固化が数分以内に発生して、硬質のレンガの形態が得られるはずである。この複合材により、本開示の無機酸性/アルカリ性接着剤と合わせた鋸屑または任意の他の同様の材料を使用する不燃性製品の製造が実現されるであろう。
【0147】
上記説明は、複数の方法、組成物および材料を開示している。これらの説明は、方法および材料の改変、ならびに製作方法および装置の変更の余地がある。そのような改変は、本開示の考察または本開示の実施から当業者に明白となろう。したがって、本開示は、本明細書に開示の特定の実施形態に限定されることを意図したものではないが、特許請求の範囲の真の範囲および精神内に入る全ての改変および代替を包含することは意図している。
【0148】
本明細書において使用する用語法は、特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであり、本発明を限定することを意図したものではない。本明細書において使用する場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈において明白な別段の指示がない限り、複数形を同様に含むことを意図したものである。本明細書において使用する場合「を含む(comprises)」、「を含む(comprising)」、「を含む(includes)」および/または「を含む(including)」という用語は、述べた特色、ステップ、作業、要素、および/または成分の存在を特定するものであるが、1種または複数の他の特色、ステップ、作業、要素、成分、および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではないことがさらに理解されよう。
【0149】
別段の定義のない限り、本明細書において使用する(技術的および科学的用語を含めた)全ての用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において使用する用語が、本明細書の文脈および関連技術分野におけるそれらの意味と一致した意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書においてそのように明確に定義されない限り、理想的な、または過度に形式的な意味で解釈されるものではないことがさらに理解されよう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機材料を準備するステップと、
前記有機材料を無機接着剤と接触させるステップであって、当該無機接着剤が無機酸性前駆体とアルカリ性前駆体との混合物を含むステップと
を含む複合材製品の製造方法。
【請求項2】
前記有機材料の前記無機接着剤全体に対する、水分を除いた重量比が、約99:1〜約2:1の間であり、好ましくは約10:1〜約5:1の間であり、より好ましくは約7:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機材料が、木材ベニヤ、長短フレーク、長繊維、短繊維、ストランド、鋸屑、木材粒子、繊維束、砕木パルプ(SGW)、加圧式砕木パルプ(PSW)、リファイナメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ、ソーダパルプ、さらしパルプ、種子繊維、葉繊維、靭皮繊維、果実繊維、茎繊維、絹、羊毛、クモの糸、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記無機酸性前駆体および前記アルカリ性前駆体が、独立して、溶液、懸濁液、ゲル中に、またはペーストとして存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ性前駆体が溶液中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記接触させるステップが、
(i)前記有機材料を最初にアルカリ性前駆体溶液と接触させ、次いで、前記無機酸性前駆体溶液と接触させること、または
(ii)前記有機材料を前記無機酸性前駆体と接触させ、その後、前記アルカリ性前駆体と接触させること、または
(iii)前記有機材料を前記無機接着剤と接触させること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記無機酸性前駆体および前記アルカリ性前駆体をそれぞれ別個に前記有機材料と混合して、独立して、別個の酸性の繊維パルプまたは繊維、および別個のアルカリ性のパルプまたは繊維を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
別個の前記酸性およびアルカリ性のパルプまたは繊維を合わせるステップと、十分な量の水と混合するステップと、固体複合材製品を形成するステップとをさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
別個の前記酸性およびアルカリ性のパルプを乾燥させるステップと、乾燥した前記酸性およびアルカリ性のパルプまたは繊維を合わせるステップと、次いで、合わせた乾燥した前記酸性およびアルカリ性のパルプまたは繊維を水と混合するステップと、固体複合材製品を形成するステップとをさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記無機酸性前駆体成分が、酸性リン酸塩、アルカリ土類塩化物、またはアルカリ土類硫酸塩のうちの少なくとも1種を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アルカリ性前駆体成分が、酸化物、水酸化物、または酸化物鉱物のうちの少なくとも1種を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アルカリ性前駆体が、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルカリ性前駆体が、金属水酸化物に富んだブラインの溶液である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記金属水酸化物に富んだブラインが、水酸化マグネシウムブライン溶液または水酸化アルミニウムのバイヤーの貴液である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
アルカリ金属水酸化物の高アルカリ性溶液を添加して、前記アルカリ性前駆体の水性pHを上昇させるステップをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、および水酸化カルシウム(Ca(OH)2)のうちの少なくとも1種である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アルカリ性前駆体の水性pHが、約8〜約14の間、好ましくは約9〜約12の間、最も好ましくは約10〜約11の間である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記無機酸性成分が、リン酸、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)、MgCl2、MgSO4、およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記無機酸性成分の溶液pHを約0〜約6の間、好ましくは約3〜約5の間、最も好ましくは約3〜約4.5の間に調整するステップをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
リン酸水素塩を添加することによりpHを低下させる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
わずかに可溶性のケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、バイヤープロセスによる廃棄物、銅鉱石からの銅の抽出の間に生じる酸性の廃棄物流、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種を添加するステップをさらに含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記無機酸性成分前駆体が塩化マグネシウムまたは硫酸マグネシウム溶液であり、アルカリ性成分が酸化マグネシウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
セルロースとの接触の前に前記無機酸性前駆体成分または前記アルカリ性前駆体成分のうちの少なくとも一方を水の沸点付近未満の温度まで加熱するステップをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記無機酸性成分がリン酸水素アルミニウムであり、前記アルカリ性成分が酸化アルミニウム(Al2O3)または水酸化アルミニウム(Al(OH)3)である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記リン酸水素アルミニウムと前記アルカリ性成分とを混合して、ペーストを形成し、次いで、ペーストをセルロースと混合する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記セルロースと混合したペーストを、複合材物品を形成するのに十分な時間、約400°Fで加熱するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
セルロース材料を圧縮するステップをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
真空および/または音波処理を適用するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記無機酸性前駆体と前記アルカリ性前駆体との重量比が、10:1と1:5の間、好ましくは約9:1と1:3.5の間、より好ましくは約8:1〜約1:3.5の間である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
圧縮の前に前記無機接着剤の一部を差し引き、次いで、圧縮の終わり近くに前記無機接着剤の残存部分を添加するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記有機材料と無機接着剤とを混合するステップと、前記複合材試料に熱を加えて、複合材の温度を400°F未満まで上昇させるステップとをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
繊維強化セラミックス複合材の製造方法であって、
(i)リン酸、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)、MgCl2、MgSO4、およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種の無機酸性前駆体と、
(ii)溶液中の、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種のアルカリ性前駆体と
の混合物を含む無機リン酸塩接着剤を準備するステップと、
約40wt.%未満のセルロース材料を準備するステップと、
セルロース材料を前記無機リン酸塩接着剤と接触させるステップと
を含む方法。
【請求項33】
前記セルロース材料が、木材ベニヤ、長短フレーク、ストランド、鋸屑、木材粒子、繊維束、および/またはパルプ化により得られる製品、砕木パルプ(SGW)、加圧式砕木パルプ(PSW)、リファイナメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ、ソーダパルプ、さらしパルプ、種子繊維、葉繊維、靭皮繊維、果実繊維、茎繊維、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
(i)セルロース材料を最初に前記アルカリ性前駆体溶液と接触させ、次いで、前記無機酸性前駆体と接触させるか、または(ii)前記セルロース材料を前記無機酸性前駆体と接触させ、その後、前記アルカリ性前駆体溶液と接触させるか、または(iii)前記セルロース材料を前記無機接着剤と接触させる、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記無機接着剤が、リン酸塩セラミックス、オキシ塩化物セラミックス、オキシ硫酸塩セラミックス、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種である、請求項32または33に記載の方法。
【請求項36】
前記無機リン酸塩接着剤が、二価もしくは三価の金属、またはそれらのケイ酸塩を含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項37】
ケイ酸カルシウム、かんらん石、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、バイヤープロセスによる廃棄物、銅鉱石からの銅の抽出の間に生じる酸性の廃棄物流、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種を添加するステップをさらに含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項38】
前記無機接着剤および前記セルロース材料を射出成形または押し出しするステップをさらに含む請求項32または33に記載の方法。
【請求項39】
真空および/または音波処理を適用するステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記無機酸性前駆体成分または前記アルカリ性前駆体成分のうちの少なくとも一方を、前記セルロースとの接触の前に水の沸点未満の温度まで加熱するステップをさらに含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項41】
前記繊維強化複合材が、耐火性、非延焼性、温室効果ガスの最小限の排出、揮発性有機化合物の排出なし、および低い吸水率を実現する、請求項32または33に記載の方法。
【請求項42】
請求項1または32のいずれか一項から製造される複合材物品。
【請求項43】
不燃性のブロー可能な断熱材の製造方法であって、
細断された紙、鋸屑、鉋屑、細断されたプラスチック、ガラス粒子もしくはガラス繊維;石膏、発泡性粘土、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1種を含むブロー可能な材料を準備するステップと、
(i)リン酸、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、MgCl2、MgSO4、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)、およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種を含む無機酸性成分と、
(ii)マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウムまたはランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストを含むアルカリ性前駆体と
を含む無機接着剤を準備するステップと、
前記無機接着剤をブロー可能な材料と結合させるのに十分な時間、前記材料を前記無機接着剤と接触させるステップと、
不燃性でブロー可能な断熱材を準備するステップと
を含む方法。
【請求項44】
非延焼性の物品の製造方法であって、
可燃性の物品を準備するステップと、
前記可燃性の物品の少なくとも一部に対して無機接着剤のコーティングを実施するステップであって、当該無機接着剤が、
(i)リン酸、またはリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、MgCl2、MgSO4、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)を含む酸性リン酸塩、およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種と、
(ii)ケイ酸カルシウム、かんらん石、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、バイヤープロセスによる廃棄物、銅鉱石からの銅の抽出の間に生じる酸性の廃棄物流、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種と、
(iii)マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストを含む少なくとも1種のアルカリ性前駆体成分と
の混合物を含むステップと
を含む方法。
【請求項45】
前記可燃性の物品が壁板または天井タイルである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記可燃性の物品がセルロース繊維の延伸織物マットを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記可燃性の物品が複数の木材の薄い積層シートを含み、当該木材の各シートが前記無機接着剤により結合されており、それによりベニヤシート製品が得られる、請求項1〜9、32または44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
耐火性の紙および紙製品の製造方法であって、
セルロース材料を準備するステップと、
(i)リン酸、またはリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、MgCl2、MgSO4、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)を含む酸性リン酸塩、およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種を含む無機リン酸塩溶液と、
(ii)マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウムまたはランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストのうちの少なくとも一種を含むアルカリ性前駆体溶液と
を成分として含む無機接着剤を準備するステップと、
前記セルロース材料と前記無機接着剤とを合わせるステップと、
紙の形成に適した前記セルロース材料と前記無機接着剤とを含むペーストを形成するステップと
を含む方法。
【請求項49】
前記セルロース材料の前記無機接着剤に対する乾燥重量比が約1wt.%〜約20wt.%の間である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記無機接着剤が、ケイ酸カルシウム、かんらん石、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、ケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
請求項48に記載の方法により製造される難燃性の紙または難燃性の紙物品。
【請求項52】
請求項48に記載の方法により製造される不燃性の家庭用および商業用のビルディングラップまたは壁紙。
【請求項53】
非延焼性の木製の物品を製造するための木材の処理方法であって、
(i)リン酸、またはリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、MgCl2、MgSO4、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)を含む酸性リン酸塩;またはそれらの混合物の飽和溶液と、
(ii)マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストの1種または複数のアルカリ性前駆体溶液と、
(iii)場合により、ケイ酸カルシウム、かんらん石、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、バイヤープロセスによる廃棄物、銅鉱石からの銅の抽出の間に生じる酸性の廃棄物流、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、あるいはそれらの混合物のうちの少なくとも1種と
を含む組成物と木材物品とを接触させるステップと、
前記組成物と接触させた前記木材物品を乾燥させるステップと
を含む方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法により製造される非延焼性の木材物品。
【請求項1】
有機材料を準備するステップと、
前記有機材料を無機接着剤と接触させるステップであって、当該無機接着剤が無機酸性前駆体とアルカリ性前駆体との混合物を含むステップと
を含む複合材製品の製造方法。
【請求項2】
前記有機材料の前記無機接着剤全体に対する、水分を除いた重量比が、約99:1〜約2:1の間であり、好ましくは約10:1〜約5:1の間であり、より好ましくは約7:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機材料が、木材ベニヤ、長短フレーク、長繊維、短繊維、ストランド、鋸屑、木材粒子、繊維束、砕木パルプ(SGW)、加圧式砕木パルプ(PSW)、リファイナメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ、ソーダパルプ、さらしパルプ、種子繊維、葉繊維、靭皮繊維、果実繊維、茎繊維、絹、羊毛、クモの糸、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記無機酸性前駆体および前記アルカリ性前駆体が、独立して、溶液、懸濁液、ゲル中に、またはペーストとして存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ性前駆体が溶液中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記接触させるステップが、
(i)前記有機材料を最初にアルカリ性前駆体溶液と接触させ、次いで、前記無機酸性前駆体溶液と接触させること、または
(ii)前記有機材料を前記無機酸性前駆体と接触させ、その後、前記アルカリ性前駆体と接触させること、または
(iii)前記有機材料を前記無機接着剤と接触させること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記無機酸性前駆体および前記アルカリ性前駆体をそれぞれ別個に前記有機材料と混合して、独立して、別個の酸性の繊維パルプまたは繊維、および別個のアルカリ性のパルプまたは繊維を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
別個の前記酸性およびアルカリ性のパルプまたは繊維を合わせるステップと、十分な量の水と混合するステップと、固体複合材製品を形成するステップとをさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
別個の前記酸性およびアルカリ性のパルプを乾燥させるステップと、乾燥した前記酸性およびアルカリ性のパルプまたは繊維を合わせるステップと、次いで、合わせた乾燥した前記酸性およびアルカリ性のパルプまたは繊維を水と混合するステップと、固体複合材製品を形成するステップとをさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記無機酸性前駆体成分が、酸性リン酸塩、アルカリ土類塩化物、またはアルカリ土類硫酸塩のうちの少なくとも1種を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アルカリ性前駆体成分が、酸化物、水酸化物、または酸化物鉱物のうちの少なくとも1種を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アルカリ性前駆体が、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルカリ性前駆体が、金属水酸化物に富んだブラインの溶液である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記金属水酸化物に富んだブラインが、水酸化マグネシウムブライン溶液または水酸化アルミニウムのバイヤーの貴液である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
アルカリ金属水酸化物の高アルカリ性溶液を添加して、前記アルカリ性前駆体の水性pHを上昇させるステップをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、および水酸化カルシウム(Ca(OH)2)のうちの少なくとも1種である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アルカリ性前駆体の水性pHが、約8〜約14の間、好ましくは約9〜約12の間、最も好ましくは約10〜約11の間である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記無機酸性成分が、リン酸、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)、MgCl2、MgSO4、およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記無機酸性成分の溶液pHを約0〜約6の間、好ましくは約3〜約5の間、最も好ましくは約3〜約4.5の間に調整するステップをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
リン酸水素塩を添加することによりpHを低下させる、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
わずかに可溶性のケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、バイヤープロセスによる廃棄物、銅鉱石からの銅の抽出の間に生じる酸性の廃棄物流、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種を添加するステップをさらに含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記無機酸性成分前駆体が塩化マグネシウムまたは硫酸マグネシウム溶液であり、アルカリ性成分が酸化マグネシウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
セルロースとの接触の前に前記無機酸性前駆体成分または前記アルカリ性前駆体成分のうちの少なくとも一方を水の沸点付近未満の温度まで加熱するステップをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記無機酸性成分がリン酸水素アルミニウムであり、前記アルカリ性成分が酸化アルミニウム(Al2O3)または水酸化アルミニウム(Al(OH)3)である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記リン酸水素アルミニウムと前記アルカリ性成分とを混合して、ペーストを形成し、次いで、ペーストをセルロースと混合する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記セルロースと混合したペーストを、複合材物品を形成するのに十分な時間、約400°Fで加熱するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
セルロース材料を圧縮するステップをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
真空および/または音波処理を適用するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記無機酸性前駆体と前記アルカリ性前駆体との重量比が、10:1と1:5の間、好ましくは約9:1と1:3.5の間、より好ましくは約8:1〜約1:3.5の間である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
圧縮の前に前記無機接着剤の一部を差し引き、次いで、圧縮の終わり近くに前記無機接着剤の残存部分を添加するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記有機材料と無機接着剤とを混合するステップと、前記複合材試料に熱を加えて、複合材の温度を400°F未満まで上昇させるステップとをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
繊維強化セラミックス複合材の製造方法であって、
(i)リン酸、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)、MgCl2、MgSO4、およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種の無機酸性前駆体と、
(ii)溶液中の、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種のアルカリ性前駆体と
の混合物を含む無機リン酸塩接着剤を準備するステップと、
約40wt.%未満のセルロース材料を準備するステップと、
セルロース材料を前記無機リン酸塩接着剤と接触させるステップと
を含む方法。
【請求項33】
前記セルロース材料が、木材ベニヤ、長短フレーク、ストランド、鋸屑、木材粒子、繊維束、および/またはパルプ化により得られる製品、砕木パルプ(SGW)、加圧式砕木パルプ(PSW)、リファイナメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ、ソーダパルプ、さらしパルプ、種子繊維、葉繊維、靭皮繊維、果実繊維、茎繊維、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
(i)セルロース材料を最初に前記アルカリ性前駆体溶液と接触させ、次いで、前記無機酸性前駆体と接触させるか、または(ii)前記セルロース材料を前記無機酸性前駆体と接触させ、その後、前記アルカリ性前駆体溶液と接触させるか、または(iii)前記セルロース材料を前記無機接着剤と接触させる、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記無機接着剤が、リン酸塩セラミックス、オキシ塩化物セラミックス、オキシ硫酸塩セラミックス、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種である、請求項32または33に記載の方法。
【請求項36】
前記無機リン酸塩接着剤が、二価もしくは三価の金属、またはそれらのケイ酸塩を含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項37】
ケイ酸カルシウム、かんらん石、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、バイヤープロセスによる廃棄物、銅鉱石からの銅の抽出の間に生じる酸性の廃棄物流、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種を添加するステップをさらに含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項38】
前記無機接着剤および前記セルロース材料を射出成形または押し出しするステップをさらに含む請求項32または33に記載の方法。
【請求項39】
真空および/または音波処理を適用するステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記無機酸性前駆体成分または前記アルカリ性前駆体成分のうちの少なくとも一方を、前記セルロースとの接触の前に水の沸点未満の温度まで加熱するステップをさらに含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項41】
前記繊維強化複合材が、耐火性、非延焼性、温室効果ガスの最小限の排出、揮発性有機化合物の排出なし、および低い吸水率を実現する、請求項32または33に記載の方法。
【請求項42】
請求項1または32のいずれか一項から製造される複合材物品。
【請求項43】
不燃性のブロー可能な断熱材の製造方法であって、
細断された紙、鋸屑、鉋屑、細断されたプラスチック、ガラス粒子もしくはガラス繊維;石膏、発泡性粘土、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1種を含むブロー可能な材料を準備するステップと、
(i)リン酸、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、MgCl2、MgSO4、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)、およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種を含む無機酸性成分と、
(ii)マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウムまたはランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストを含むアルカリ性前駆体と
を含む無機接着剤を準備するステップと、
前記無機接着剤をブロー可能な材料と結合させるのに十分な時間、前記材料を前記無機接着剤と接触させるステップと、
不燃性でブロー可能な断熱材を準備するステップと
を含む方法。
【請求項44】
非延焼性の物品の製造方法であって、
可燃性の物品を準備するステップと、
前記可燃性の物品の少なくとも一部に対して無機接着剤のコーティングを実施するステップであって、当該無機接着剤が、
(i)リン酸、またはリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、MgCl2、MgSO4、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)を含む酸性リン酸塩、およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種と、
(ii)ケイ酸カルシウム、かんらん石、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、バイヤープロセスによる廃棄物、銅鉱石からの銅の抽出の間に生じる酸性の廃棄物流、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種と、
(iii)マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストを含む少なくとも1種のアルカリ性前駆体成分と
の混合物を含むステップと
を含む方法。
【請求項45】
前記可燃性の物品が壁板または天井タイルである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記可燃性の物品がセルロース繊維の延伸織物マットを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記可燃性の物品が複数の木材の薄い積層シートを含み、当該木材の各シートが前記無機接着剤により結合されており、それによりベニヤシート製品が得られる、請求項1〜9、32または44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
耐火性の紙および紙製品の製造方法であって、
セルロース材料を準備するステップと、
(i)リン酸、またはリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、MgCl2、MgSO4、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)を含む酸性リン酸塩、およびそれらの混合物の飽和溶液のうちの少なくとも1種を含む無機リン酸塩溶液と、
(ii)マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウムまたはランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストのうちの少なくとも一種を含むアルカリ性前駆体溶液と
を成分として含む無機接着剤を準備するステップと、
前記セルロース材料と前記無機接着剤とを合わせるステップと、
紙の形成に適した前記セルロース材料と前記無機接着剤とを含むペーストを形成するステップと
を含む方法。
【請求項49】
前記セルロース材料の前記無機接着剤に対する乾燥重量比が約1wt.%〜約20wt.%の間である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記無機接着剤が、ケイ酸カルシウム、かんらん石、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、ケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、ならびにそれらの混合物のうちの少なくとも1種をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
請求項48に記載の方法により製造される難燃性の紙または難燃性の紙物品。
【請求項52】
請求項48に記載の方法により製造される不燃性の家庭用および商業用のビルディングラップまたは壁紙。
【請求項53】
非延焼性の木製の物品を製造するための木材の処理方法であって、
(i)リン酸、またはリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸二水素セシウム(CsH2PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)2・2H2O)、リン酸二水素亜鉛(Zn(H2PO4)2)、MgCl2、MgSO4、ビス(オルトリン酸)三水素アルミニウム(AlH3(PO4)2・H2O)を含む酸性リン酸塩;またはそれらの混合物の飽和溶液と、
(ii)マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、亜鉛、バリウム、ストロンチウム、アルミニウム、ランタニドの一価、二価、または三価の金属酸化物または水酸化物、およびそれらの混合物のうちの少なくとも1種の飽和溶液またはペーストの1種または複数のアルカリ性前駆体溶液と、
(iii)場合により、ケイ酸カルシウム、かんらん石、ムライト、タルク、酸化物鉱物、フライアッシュ、ボトムアッシュ、バイヤープロセスによる廃棄物、銅鉱石からの銅の抽出の間に生じる酸性の廃棄物流、またはケイ酸塩およびアルミン酸塩鉱物を含有する廃棄物流、あるいはそれらの混合物のうちの少なくとも1種と
を含む組成物と木材物品とを接触させるステップと、
前記組成物と接触させた前記木材物品を乾燥させるステップと
を含む方法。
【請求項54】
請求項53に記載の方法により製造される非延焼性の木材物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2013−518806(P2013−518806A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552937(P2012−552937)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2011/024146
【国際公開番号】WO2011/100288
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(512152732)ラティテュード・18,インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2011/024146
【国際公開番号】WO2011/100288
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(512152732)ラティテュード・18,インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]