説明

リン酸塩過剰血症のための鉄(II)含有治療剤

医薬組成物は、薬学的に許容され得る第一鉄化合物;アミンポリマーまたはその薬学的に許容され得る塩、および薬学的に許容され得る担体を含む。あるいは、医薬(pharmaceutica)組成物は、薬学的に許容され得る第一鉄化合物および薬学的に許容され得る担体を含み、ここで、第一鉄化合物は、酢酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)、アスコルビン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、酸化鉄(II)、炭酸鉄(II)、含糖炭酸鉄(II)、ギ酸鉄(II)、硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)、アセチルアセトン酸鉄(II)およびその組合せからなる群より選択される(is selecte)。リン酸過剰血症を有する被験体の治療方法は、有効量の上記の医薬組成物を被験体に投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2006年7月5日に出願された米国特許仮出願第60/818,727号の利益を主張し、その全教示は参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
不充分な腎機能、副甲状腺機能低下症またはある種の他の病状を有する人は、しばしば、リン酸塩過剰血症、または上昇した血清リン酸塩レベルを有する。リン酸塩過剰血症は、特に長期間にわたって存在する場合、しばしば副甲状腺機能亢進症、骨疾患ならびに関節、肺、目および血管におけるカルシウム沈着によって示されるカルシウムおよびリンの代謝の重症な異常をもたらす。腎機能不全を示す患者では、血清リンの上昇は、腎不全の進行および心血管事象のリスクの増大と関連している。
【0003】
腸内リン酸塩に結合して吸収を妨げるある種のリン酸塩結合剤の経口投与もまた提案された。典型的なリン酸塩結合剤としては、カルシウム、アルミニウム、マグネシウムおよびランタン化合物が挙げられる。リン酸塩過剰血症を治療するために使用されているアルミニウム系リン酸塩結合剤としては、Amphojel(登録商標)水酸化アルミニウムゲルが挙げられる。他のカルシウム無含有およびアルミニウム無含有リン酸塩結合剤は、治療的に活性であるのに必要とされる投薬の量および頻度などの欠点を有する。
【0004】
脂肪族アミンポリマーなどのポリマー物質もまた、リン酸塩過剰血症の治療に使用されている。これらのポリマーは、血清リン酸塩レベルを減少させるための有効な治療を提供する。
【0005】
(発明の要旨)
一態様において、本発明は、薬学的に許容され得る第一鉄化合物および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物に関する。第一鉄化合物は、酢酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)、アスコルビン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、酸化鉄(II)、炭酸鉄(II)、含糖炭酸鉄(II)、ギ酸鉄(II)、硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)、アセチルアセトン酸鉄(II)およびその組合せからなる群より選択される。
【0006】
別の態様において、本発明は、薬学的に許容され得る第一鉄化合物、アミンポリマーまたはその薬学的に許容され得る塩、および薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物に関する。
【0007】
また別の態様において、本発明は、リン酸塩過剰血症を有する被験体の治療方法に関し、該方法は、有効量の薬学的に許容され得る第一鉄化合物を被験体に投与する工程を含む。第一鉄化合物は、酢酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)、アスコルビン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、酸化鉄(II)、炭酸鉄(II)、含糖炭酸鉄(II)、ギ酸鉄(II)、硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)、アセチルアセトン酸鉄(II)およびその組合せからなる群より選択される。
【0008】
また別の態様において、本発明は、リン酸塩過剰血症を有する被験体の治療方法に関し、該方法は、薬学的に許容され得る第一鉄化合物および脂肪族アミンポリマーまたはその薬学的に許容され得る塩を含む有効量の医薬組成物を被験体に投与する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
本明細書で使用されるように、「薬学的に許容され得る第一鉄化合物」は、投与される投薬量で許容され得ない副作用を引き起こさない鉄(II)カチオン含有化合物を意味する。薬学的に許容され得る第一鉄化合物は、水溶性または水不溶性であり得る。
【0010】
「薬学的に許容され得る第一鉄化合物」は、薬学的に許容され得る鉄化合物の異なる多形を包含することを理解されたい。用語「多形」は、化合物の固体結晶性形態をいう。各多形は、他の多形と異なる物理的、化学的または分光特性を示し得る。
【0011】
用語「薬学的に許容され得る第一鉄化合物」はまた、非共有分子間力によって結合された化学量論または非化学量論量の溶媒、例えば、水または有機溶媒を含む薬学的に許容され得る第一鉄化合物の種々の溶媒和物を含む。
【0012】
好ましい薬学的に許容され得る第一鉄化合物は、高い重量パーセントの鉄を有する、および/または高い密度、すなわち1g/mL以上を有する。これらの鉄化合物は、日用量の容量を最小限にし得る。
【0013】
本発明に適した薬学的に許容され得る第一鉄化合物の例としては、酢酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)、アスコルビン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、酸化鉄(II)、炭酸鉄(II)、含糖炭酸鉄(II)、ギ酸鉄(II)、硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)、アセチルアセトン酸鉄(II)およびその組合せが挙げられる。これらの鉄化合物のいずれかに言及する場合、その混合物、多形および溶媒和物が包含されることを理解されたい。
【0014】
本発明における好ましい薬学的に許容され得る第一鉄化合物の例としては、酸化鉄(II)、酢酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)、アスコルビン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)およびその組合せが挙げられる。本発明においてより好ましい薬学的に許容され得る第一鉄化合物としては、酸化鉄(II)および酢酸鉄(II)が挙げられる。
【0015】
いくつかの態様において、薬学的に許容され得る第一鉄化合物は、鉄(II)含有ポリマー(以下、本明細書において「鉄(II)結合ポリマー」)である。かかる鉄(II)結合ポリマーは、鉄(II)に(イオン的または共有的に)結合するか、またはキレート化する基を含む。鉄(II)に結合するか、またはキレート化する基の例としては、-COOH;-COO-;-OH;-C(O)N(H)OH;


(式中、zは、1、2または3などの1〜5の整数である);-C(O)N(H)-(CRR’’)r-OH(式中、rは、0または1、2もしくは3などの1〜10の整数であり、R’およびR’’は、各々独立して、-H、置換もしくは非置換アルキル基またはアリール基、好ましくは-H;などである)が挙げられる。
【0016】
いくつかの特定の態様において、鉄(II)結合ポリマーは、ポリマー主鎖に結合された側鎖を含み、ここで、少なくともいくつかの側鎖は、鉄(II)に(イオン的または共有的に)結合するか、またはキレート化する基(1つまたは複数)を含む。かかる側鎖の例としては、-(CRR’’)r-COOH、-(CRR’’)r-COO-、-(CRR’’)r-C(O)N(H)OH、-(CRR’’)r-C(O)N(H)-(CRR’’)r-OH、


(式中、各RおよびR’’は、独立して、-H、置換もしくは非置換アルキル基またはアリール基、好ましくは-Hであり;各rは、独立して、1、2または3などの1〜10の整数であり;各zは、独立して、1〜5の整数である)が挙げられる。鉄(II)結合ポリマーの具体例としては、限定されないが、以下の段落に記載するものが挙げられる。
【0017】
鉄(II)結合ポリマーの1つの例は、ポリ(アクリル酸)またはナトリウム、カリウムもしくはアンモニウム塩などのその塩、またはその混合塩である。
【0018】
鉄(II)結合ポリマーの別の例は、ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート-コ-ジビニルベンゼン)などのヒドロキシルアミンまたはヒドロキシアルキルアミン修飾ポリ(アルキルアクリレート-コ-ジビニルベンゼン)であり、ここで、ポリ(アルキルアクリレート-コ-ジビニルベンゼン)のいくつかのカルボン酸基は、ヒドロキシルアミンまたはヒドロキシアルキルアミンで修飾され、N-ヒドロキシルアミド基またはN-ヒドロキシアルキルアミド基を形成する。
【0019】
鉄(II)結合ポリマーの別の例は、アクリレート基のいくつかがアミンポリマーのアミン基でアミド化されたヒドロキシルアミンまたはヒドロキシアルキルアミン修飾ポリ(アルキルアクリレート)である。この型の鉄(II)結合ポリマーの具体例は、構造式(1):


で表される繰り返し単位を含むもの、またはその塩であり、式中、yおよびqは、各々独立して0または1、2もしくは3などの1〜10の整数であり;aおよびbは、各々独立して正の整数であり;RおよびR’’は、各々独立して、-H、置換もしくは非置換アルキル基またはアリール基、好ましくは-Hである。好ましくは、yおよびqは0または1であり、より好ましくはyは1であり、qは0であり、aおよびbは、アミンポリマーが下記の分子量を有するように選択される。アミンポリマーは、好ましくはポリアリルアミンポリマー、より好ましくはポリアリルアミンホモポリマーである。
【0020】
鉄(II)結合ポリマーの別の例は、アルキルアクリレート(例えば、エチルアクリレート)で修飾されたアミンポリマー、好ましくは脂肪族アミンポリマーである。この型の鉄(II)結合ポリマーの具体例は、構造式(2)、(3)または(4):




で表される繰り返し単位を含むもの、またはその塩であり、式中、yは、0または1、2もしくは3などの1〜10の整数であり;Rは、-H、置換もしくは非置換アルキル基またはアリール基、好ましくは-Hであり;cは1または2である。好ましくは、yは1である。アミンポリマーは、好ましくはポリアリルアミンポリマー、より好ましくはポリアリルアミンホモポリマーである。
【0021】
鉄(II)結合ポリマーの別の例は、ヒドロキシルアミンまたはヒドロキシアルキルアミンで修飾されたアミンポリマー、好ましくは脂肪族アミンポリマーである。この型の鉄(II)結合ポリマーの具体例は、構造式(5)、(6)、(7)または(8):




で表される繰り返し単位を含むもの、またはその塩であり、式中、yおよびqは、各々独立して0または1、2もしくは3などの1〜10の整数であり;RおよびR’’は、各々独立して、-H、置換もしくは非置換アルキル基またはアリール基、好ましくは-Hであり;cは1または2である。好ましくは、yおよびqは0または1であり、より好ましくはyは1であり、qは0である。アミンポリマーは、好ましくはポリアリルアミンポリマー、より好ましくはポリアリルアミンホモポリマーである。
【0022】
鉄(II)結合ポリマーの別の例は、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-またはペンタ-ヒドロキシ安息香酸(例えば、3,4-ジヒドロキシ安息香酸)で修飾されたアミンポリマー、好ましくは脂肪族アミンポリマーであり、ここで、アミンポリマーのいくつかのアミン基は、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-またはペンタ-ヒドロキシ安息香酸でベンゾイル化されている。鉄(II)結合ポリマーのまた別の例は、アミンポリマーの少なくともいくつかのアミン基がモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-またはペンタ-ヒドロキシベンジル基(例えば、3,4-ジヒドロキシベンジル基)でベンジル化されたアミンポリマー、好ましくは脂肪族アミンポリマーである。これらの型の鉄(II)結合ポリマーの具体例は、構造式(8)または(9):


で表される繰り返し単位を含み、式中、yは、0または1〜10の整数、好ましくは1〜3、より好ましくは1であり;zは、1、2または3などの1〜5の整数である。
【0023】
鉄(II)結合ポリマーは、架橋剤で任意に架橋され得る。適当な架橋剤および架橋の程度の例は、アミンポリマーについて以下に記載する通りである。
【0024】
鉄(II)結合ポリマーは、本発明において単独または上記の薬学的に許容され得る第一鉄化合物と組み合わせて使用され得る。鉄(II)結合ポリマーが上記の薬学的に許容され得る第一鉄化合物と組み合わせて使用される場合、第一鉄化合物は、ポリマー中に任意に浮遊(entrain)され得る。本明細書で使用されるように、句「鉄(II)結合ポリマー中に浮遊される第一鉄化合物」は、第一鉄化合物または第一鉄化合物の第一鉄イオンがポリマー中、例えば、架橋によって作製されたポリマーのポケット(1つまたは複数)内などのポリマー網目中に捕捉されていることを意味する。
【0025】
任意に、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容され得る第一鉄化合物の混合物を含む。該組成物のための薬学的に許容され得る第一鉄化合物の適当な例は、上記のものである。
【0026】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、本質的に第二鉄イオンを含まない。本明細書で使用されるように、用語「本質的に第二鉄イオンを含まない医薬組成物」は、医薬組成物が、医薬組成物の総鉄含有量の10モル%未満、好ましくは5モル%未満またはより好ましくは1モル%未満である第二鉄イオン含有量を有することを意味する。
【0027】
好ましくは、薬学的に許容され得る第一鉄化合物は、実質的に第二鉄イオンの非存在下で投与される。本明細書で使用されるように、用語「実質的に第二鉄の非存在下で投与される」は、第一鉄化合物が被験体に投与される場合、被験体に投与される総鉄含有量の10モル%未満、好ましくは5モル%未満またはより好ましくは1モル%未満が第二鉄であることを意味する。
【0028】
本発明はまた、薬学的に許容され得る担体;薬学的に許容され得る第一鉄化合物;およびリン酸金属イオン封鎖剤(phosphate sequestrant)を含む医薬組成物を含む。
【0029】
本明細書で使用されるように、用語「リン酸金属イオン封鎖剤」は、リン酸塩に結合する薬学的に許容され得る第一鉄化合物以外の薬学的に許容され得る化合物を意味する。リン酸金属イオン封鎖剤は、米国特許第5,496,545号、同第5,667,775号および同第6,083,495号(その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される)に開示されたものなどのカルシウム-、アルミニウム-、マグネシウム-、亜鉛-またはランタン含有リン酸塩結合剤またはリン酸塩結合アミンポリマーであり得る。好ましくは、リン酸塩結合アミンポリマーは脂肪族アミンポリマーである。
【0030】
アミンポリマーは、少なくとも1つのアミン基を含む繰り返し単位を特徴とする。アミン基は、ポリマー主鎖の一部(例えば、ポリエチレンイミンなどのポリアルキレンイミン)、ポリマー主鎖から垂れ下がったもの(例えば、ポリアリルアミン)であり得るか、または両方の型のアミン基が同じ繰り返し単位および/またはポリマー内に存在し得る。アミンポリマーには、脂肪族アミンポリマーおよび芳香族アミンポリマーが含まれる。語句「アミン」は、本明細書で使用されるように、1級、2級および3級アミン、ならびにトリアルキルアンモニウムなどのアンモニウム基を含む。
【0031】
芳香族アミンポリマーは、芳香族基(例えば、フェニレン)または芳香族基を含む連結基(例えば、アルキレン-フェニレン、フェニレン-アルキレンもしくはアルキレン-フェニレン-アルキレンによってポリマー主鎖に結合されたアミンを含む繰り返し単位を特徴とする。芳香族アミンポリマーの例としては、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド)およびポリスチレントリメチルベンジルアンモニウムクロライドが挙げられる。芳香族アミンポリマーの具体例は、コレスチラミンである。
【0032】
脂肪族アミンポリマーは、脂肪族基によってポリマーのポリマー主鎖に結合されたアミン基、または非芳香族であるポリマー主鎖の一部であるアミン基を含む繰り返し単位を特徴とする。脂肪族アミンポリマーは、脂肪族アミンモノマーを重合することにより得られ得る。脂肪族アミンモノマーは、脂肪族基によってオレフィンなどの重合性基に結合されたアミン基である。適当な脂肪族アミンポリマーは、米国特許第5,487,888号、同第5,496,545号、同第5,607,669号、同第5,618,530号、同第5,624,963号、同第5,667,775号、同第5,679,717号、同第5,703,188号、同第5,702,696号、同第5,693,675号、同第5,900,475号、同第5,925,379号、同第6,083,497号、同第6,177,478号、同第6,083,495号、同第6,203,785号、同第6,423,754号、同第6,509,013号、同第6,605,270号、同第6,726,905号、同第6,733,780号および同第6,858,203号ならびに米国特許公開公報番号2002/0159968 A1および2003/0086898 A1に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0033】
脂肪族アミンポリマーは、1種類以上の脂肪族アミンモノマーのホモポリマーもしくはコポリマーまたは1種類以上の脂肪族アミンモノマーとアミンを含まず、好ましくは不活性で無毒性の1種類以上のモノマーとの組合せのコポリマーであり得る。アミンを含まない適当なモノマーの例としては、ビニルアルコール、アクリル酸、アクリルアミド、およびビニルホルムアミドが挙げられる。あるいは、脂肪族アミンポリマーは、2種類以上の異なる脂肪族アミンモノマーのコポリマーであり得る。
【0034】
脂肪族アミンポリマーの例としては、式(10)〜(15):




から選択される1つ以上の繰り返し単位を有するポリマーまたはその塩もしくはコポリマーが挙げられ、式中、yは0または1以上の整数(例えば、約1〜約10、好ましくは1〜4、より好ましくは1)であり、各R、R1、R2、およびR3は、独立して、H、置換もしくは非置換アルキル基(例えば、1〜25個まで、もしくは1〜5個までの炭素原子を有する)またはアリール(例えば、フェニル)基であり、各X-は、交換可能な負帯電対イオンである。
【0035】
好ましくは、R、R1、R2またはR3の少なくとも1つは、水素原子である。より好ましくは、これらの基はそれぞれ水素である。
【0036】
R、R1、R2およびR3で表されるアルキルまたはアリール基は、1つ以上の置換基を保有し得る。適当な置換基としては、カチオン基、例えば、4級アンモニウム基、またはアミン基、例えば、1級、2級もしくは3級アルキルもしくはアリールアミンが挙げられる。他の適当な置換基の例としては、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキサミド、スルホンアミド、ハロゲン、アルキル、アリール、ヒドラジン、グアニジン、尿素、ポリ(エチレンイミン)などのポリ(アルキレンイミン)、およびカルボン酸エステルが挙げられる。
【0037】
好ましくは、本発明における使用のための脂肪族アミンポリマーは、ホモポリアリルアミンポリマー、ホモポリビニルアミンポリマー、ホモポリジアリルアミンポリマーまたはポリエチレンアミンポリマーなどのホモポリマーである。あるいは、発明における使用のための脂肪族アミンポリマーはまた、コポリマーであり得る。
【0038】
一態様において、脂肪族アミンポリマーは、構造式(16):


の1つ以上の繰り返し単位を特徴とするホモポリマーもしくはコポリマーまたはその薬学的に許容され得る塩であり、式中、xは0または1〜4の整数、好ましくは1である。構造式(16)で表されるポリマーは、架橋剤によって有利に架橋される。
【0039】
発明における使用のための好ましい脂肪族アミンポリマーは、重合アリルアミンモノマーの繰り返し単位を有するポリマーであるポリアリルアミンポリマーである。アリルアミンモノマーのアミン基は、非置換または例えば、1つまたは2つのC1〜C10直鎖または分枝アルキル基で置換され得る。これらのアルキル基は、1つ以上のヒドロキシル、アミン、ハロ、フェニル、アミドまたはニトリル基で任意に置換される。好ましくは、本発明において使用され得る脂肪族アミンポリマーは、構造式(17):


で表される繰り返し単位を含むポリアリルアミンポリマーである。
【0040】
本発明において使用され得るポリアリルアミンポリマーは、2種類以上の異なる重合アリルアミンモノマーの繰り返し単位を含む、または1種類以上の重合アリルアミンモノマーの繰り返し単位および1種類以上のアリルアミンでない重合モノマーの繰り返し単位を有するコポリマーを含み得る。アリルアミンでない適当なモノマーの例としては、アクリルアミドモノマー、アクリレートモノマー、マレイン酸、マレイミドモノマー、ビニルアクリレートモノマーおよびアルキル置換オレフィンが挙げられる。あるいは、他のオレフィン系脂肪族アミンモノマーがアリルアミンモノマーと重合され得る。しかしながら、好ましくは、本発明において使用されるポリアリルアミンポリマーは、重合アリルアミンモノマーのみの繰り返し単位を含む。より好ましくは、本発明において使用されるポリアリルアミンポリマーはホモポリマーである。さらにより好ましくは、本発明において使用されるポリアリルアミンポリマーは、構造式(17)で表される繰り返し単位のホモポリマーである。開示された本発明において使用されるポリアリルアミンポリマーは、好ましくは架橋ポリマー、より好ましくは架橋ホモポリマーである。
【0041】
発明における使用のための別の好ましい脂肪族アミンポリマーは、重合ビニルアミンモノマーの繰り返し単位を有するポリマーであるポリビニルアミンポリマーである。ビニルアミンモノマーのアミン基は、非置換または例えば、1つまたは2つのC1〜C10直鎖または分枝アルキル基で置換され得る。これらのアルキル基は、1つ以上のヒドロキシル、アミン、ハロ、フェニル、アミドまたはニトリル基で任意に置換される。ビニルアミンモノマーの例としては、N-ビニルホルムアミド、N-ビニル尿素、1-ビニルイミダゾール、1-ビニル-1,2,4-トリアゾール、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、トリメチルビニルアンモニウムヒドロキシド、1-ビニル-2-ピロリジノン、N-ビニルスクシンイミド、N-ビニル-2-ピペリドン、2-ヒドロキシエチルエチレン尿素、N,N-ジビニルエチレン尿素、N-ビニルカプロラクタム、(N-ビニルホルムアミド)トリメチルシラン、トリメチルビニルアンモニウムブロミド、N-ビニルフタルイミドおよびベンジル-N-ビニルカルバメートが挙げられる。本発明において使用され得るポリビニルアミンポリマーは、2種類以上の異なる重合ビニルアミンモノマーの繰り返し単位を含むか、または1種類以上の重合ビニルアミンモノマーの繰り返し単位およびビニルアミンでない1種類以上の重合モノマーの繰り返し単位を有するコポリマーを含み得る。
【0042】
本発明における使用に適した脂肪族アミンポリマーの他の例は、好ましくは多官能性架橋剤によって架橋されたジエチレントリアミンのコポリマーである。好ましくは、脂肪族アミンポリマーは、コレスチポールなどのジエチレントリアミンのエピクロロヒドリン架橋コポリマーである。
【0043】
他の態様において、本発明における使用に適したアミンポリマーは、ポリブテニルアミン、ポリリジンまたはポリアルギニンのホモポリマーまたはコポリマーであり得る。
【0044】
アミンポリマー(脂肪族および芳香族アミンポリマー)は、典型的に架橋剤で架橋される。好ましくは、アミンポリマーは、架橋剤などでの架橋によって水不溶性となっている。適当な架橋剤としては、アミンモノマーのアミン基と反応する官能基を有するものが挙げられる。あるいは、架橋剤は、アミンモノマーとフリーラジカル重合を行なう2種類以上のビニル基を含み得る。いくつかの場合において、アミンポリマーは、重合後に架橋される。
【0045】
適当な架橋剤の例としては、ジアクリレートおよびジメチルアクリレート(例えば、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートおよびポリエチレングリコールジアクリレート)、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、エチレンビスメタクリルアミド、エチリデンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ピロメリット酸二無水物、トルエンジイソシアネート、エチレンジアミンおよびコハク酸ジメチル、ジメタクリレート、ならびにビスフェノールAジアクリレートが挙げられる。好ましい二官能性架橋剤の例としては、エピクロロヒドリン、1,4ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2エタンジオールジグリシジルエーテル、1,3-ジクロロプロパン、1,2-ジクロロエタン、1,3-ジブロモプロパン、1,2-ジブロモエタン、二塩化スクシニル、コハク酸ジメチル、トルエンジイソシアネート、塩化アクリロイル、およびピロメリット酸二無水物が挙げられる。エピクロロヒドリンは、その高い入手可能性および低コストのため、最も好ましい架橋剤である。また、エピクロロヒドリンは、その低分子量ならびにポリアミンの水膨潤性およびゲル特性を増大させる親水性のため、有利である。エピクロロヒドリンは、2-ヒドロキシプロピル架橋基を形成する。
【0046】
既に重合された物質に架橋を含ませる他の方法としては、限定されないが、電離放射線、紫外線、電子ビーム、ラジカルへの曝露および熱分解が挙げられる。
【0047】
架橋のレベルにより、架橋アミンポリマーは不溶性ならびに吸収および分解に実質的に抵抗性となり、それにより、胃腸管に対する架橋アミンポリマーの活性が制限され、患者において副作用の可能性が低減される。典型的に、架橋剤は、アミンモノマー+架橋剤の総重量に基づいて0.5〜35重量%(0.5〜25%、2.5〜20%または1〜10%など)の量で存在する。
【0048】
典型的に1モル%〜30モル%、好ましくは6モル%〜21モル%のアリル窒素原子が架橋基に結合される。
【0049】
また、アミンポリマーは、さらに誘導体化され得る。例としては、例えば、その教示は参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第5,679,717号、同第5,607,669号および同第5,618,530号に記載されたアルキル化アミンポリマーが挙げられる。好ましいアルキル化剤としては、疎水性基(脂肪族疎水性基など)および/または4級アンモニウムもしくはアミン置換アルキル基が挙げられる。適当なアルキル化剤の例としては、C1〜C20アルキルハライド(例えば、n-ブチルハライド、n-ヘキシルハライド、n-オクチルハライド、n-デシルハライド、n-ドデシルハライド、n-テトラデシルハライド、n-オクタデシルハライド、およびその組合せ);C1〜C20ジハロアルカン(例えば、1,10-ジハロデカン);C1〜C20ヒドロキシアルキルハライド(例えば、11-ハロ-1-ウンデカノール);C1〜C20アラルキルハライド(例えば、ベンジルハライド);C1〜C20アルキルハライドアンモニウム塩(例えば、(4-ハロブチル)トリメチルアンモニウム塩、(6-ハロヘキシル)トリメチルアンモニウム塩、(8-ハロオクチル)トリメチルアンモニウム塩、(10-ハロデシル)トリメチルアンモニウム塩、(12-ハロドデシル)-トリメチルアンモニウム塩およびその組合せ);C1〜C20アルキルエポキシアンモニウム塩(例えば、(グリシジルプロピル)-トリメチルアンモニウム塩);C1〜C20エポキシアルキルアミド(例えば、N-(2,3-エポキシ(eoxy)プロパン)ブチルアミド、N-(2,3-エポキシプロパン)ヘキサンアミド、およびその組合せ);ならびにハロアルキルアミン化合物(例えば、2-ブロモエチルアミン臭化水素酸塩、2-クロロエチルアミン塩酸塩、3-ブロモプロピルアミン臭化水素酸塩、3-クロロプロピルアミン塩酸塩、3-クロロプロピルアミン、4-ブロモブチルアミン臭化水素酸塩、4-クロロブチルアミン塩酸塩、5-ブロモ-1-ペンチルアミン塩酸塩、5-クロロペンチルアミンおよび6-ブロモヘキシルアミン塩酸塩)が挙げられる。
【0050】
非架橋および架橋ポリアリルアミンポリマーならびにポリビニルアミンポリマーは、一般的に当該技術分野において公知であり、市販されている。ポリアリルアミンポリマーおよびポリビニルアミンポリマーならびにその架橋誘導体の製造方法は、上記の米国特許に記載されている。また、参照によりその全体が本明細書に援用されるHarada et al.による特許(米国特許第4,605,701号および同第4,528,347号)には、ポリアリルアミンポリマーおよび架橋ポリアリルアミンポリマーの製造方法が記載されている。Stutts et al.による特許(米国特許第6,180,754号)には、架橋ポリアリルアミンポリマーのさらなる製造方法が記載されている。
【0051】
アミンポリマーの分子量は、該分子量が充分に大きいためアミンポリマーが胃腸管に実質的に吸収されない限り、重要でないと考えられる。典型的に、アミンポリマー、好ましくは脂肪族アミンポリマーの分子量は、少なくとも1000である。例えば、分子量は、約1000〜約500万、約1000〜約300万、約1000〜約200万、または約1000〜約100万であり得る。
【0052】
本発明において使用されるアミンポリマーは、完全にプロトン化され得るか、または完全に非プロトン化され得る。あるいは、本発明において使用されるアミンポリマーは、一部プロトン化され得、一態様において、アミン基の50モル%未満、例えば40%未満、30%未満、20%未満または10%未満がプロトン化されたアミンポリマーを含む。別の態様において、アミンの35モル%〜45モル%がプロトン化される(例えば、およそ40モル%)。適切にプロトン化されたアミンポリマーの例は、塩酸セベラマーである。
【0053】
上記のように、アミンポリマーは薬学的に許容され得る塩の形態で投与され得る。用語アミンポリマーの「薬学的に許容され得る塩」は、薬学的に許容され得る無毒性の酸、例えば、無機酸、有機酸、その溶媒和物、水和物または包接化合物から調製され、投与されるアミンポリマーの塩をいう。したがって、アミンポリマーの繰り返し単位内の窒素基はプロトン化されて、負帯電対イオンと会合する正帯電窒素原子が作製される。かかる無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸およびリン酸である。適切な有機酸は、例えば、脂肪族、芳香族、カルボン酸類およびスルホン酸類の有機酸から選択され得、その例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、カンフルスルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、粘液酸、酒石酸、パラ-トルエンスルホン酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロン(furoic)酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン(embonic)酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシレート)、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸などである。
【0054】
適当な対イオン(例えば、構造式(11)〜(13)および(15)のX-の適当な対イオン)の例としては、有機イオン、無機イオン、またはその組合せが挙げられる。例えば、適当な対イオンとしては、ハライド(例えば、F-、Cl-、Br-およびI-)、CH3OSO3-、HSO4-、SO42-、HCO3-、CO32-、酢酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、酪酸塩、アスコルビン酸塩、クエン酸塩、クエン酸二水素、酒石酸塩、タウロコール酸塩、グリココール酸塩、コール酸塩、クエン酸水素、マレイン酸塩、安息香酸塩、葉酸塩、アミノ酸誘導体、ヌクレオチド、脂質またはリン脂質が挙げられる。好ましいアニオンは、Cl-、HCO3-、CO32-またはその組合せ(例えば、炭酸塩および重炭酸塩の混合物、炭酸塩および塩化物塩の混合物、または重炭酸塩および塩化物塩の混合物)である。対イオンは、互いに同じであっても異なってもよい。例えば、アミンポリマーは、2種類以上の異なる型の対イオンを含有し得る。
【0055】
好ましい態様では、本発明において使用されるアミンポリマーは、セベラマーおよびコレセベラム(例えば、米国特許第6,423,754号;同第5,607,669号;および同第5,679,717号参照、その内容は参照により本明細書に援用される)などのエピクロロヒドリン架橋ポリアリルアミンポリマーである。より好ましい態様において、ポリアリルアミンポリマーは、エピクロロヒドリンで架橋され、アリル窒素原子の約9重量%〜約30重量%(好ましくは約15重量%〜約21重量%)が架橋基に結合され、アニオンが塩化物、炭酸塩もしくは重炭酸塩またはその混合塩である。
【0056】
特に好ましいアミンポリマーは、約9.0〜9.8%w/w、好ましくは9.3〜9.5%のエピクロロヒドリンで架橋されたポリアリルアミン塩酸塩であり、商標RENAGEL(登録商標)で販売されているセベラマーHClとして公知の薬物の活性な化学成分である。構造は以下:


(式中、
aとb(1級アミン基の数)の合計は9である;
c (架橋基の数)は1である;
n (プロトン化アミンの割合)は0.4である;および
mは大きな数(拡張ポリマー網目を示す)である)
で表される。
【0057】
別の特に好ましいアミンポリマーは、エピクロロヒドリンで架橋され、1-ブロモデカンおよび(6-ブロモヘキシル)-トリメチルアンモニウムブロミドでアルキル化され、コレセベラムHClと称され、米国でWELCHOL(登録商標)として販売されているポリアリルアミン塩酸塩である。
【0058】
また別の特に好ましい態様において、アミンポリマーは、セベラマーの炭酸塩;セベラマーの重炭酸塩;セベラマーの炭酸塩および重炭酸塩の混合物;またはセベラマーの炭酸塩および塩化物塩の混合物である。
【0059】
他の態様において、一価アニオン源は、脂肪族アミンポリマーの炭酸塩と混合される。脂肪族アミンポリマーの炭酸塩の種々の例および一価アニオン源は、2005年10月27日に出願された米国特許出願第11/262,291号、および2005年10月27日に出願された米国特許出願第11/262,291号に開示されており、その全内容は参照により本明細書に援用される。
【0060】
一価アニオンは、脂肪族アミンポリマーの炭酸塩と一価アニオン源の総重量の少なくとも0.01重量%、好ましくは0.05重量%、より好ましくは0.01重量%〜2重量%、0.05重量%〜1重量%、0.08重量%〜0.5重量%、または0.1重量%〜0.3重量%の範囲を構成する。
【0061】
適当な一価アニオンの例としては、ハライド(Cl-、I-、F-およびBr-)、CH3OSO3-、HSO4-、酢酸、乳酸、酪酸、プロピオン酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、硝酸、スルホン酸、シュウ酸、コハク酸またはパルモエート(palmoate)などの有機イオン、無機イオンまたはその組合せが挙げられる。好ましい一価アニオンはハライドであり、最も好ましくは塩化物である。
【0062】
また、一価アニオン源は、一価アニオンの薬学的に許容され得る酸、アンモニウムまたは金属塩であり得る。一価アニオン源の好ましい例としては、塩化ナトリウムおよび塩酸が挙げられる。好ましい一態様において、本発明の製剤は、セベラマーの炭酸塩および塩化ナトリウムを含む。別の好ましい態様において、本発明の製剤はセベラマーの炭酸塩および塩酸を含む。
【0063】
また別の態様において、脂肪族アミンポリマーの炭酸塩が本発明に含まれる場合、一価アニオン源は、上記の構造式(10)〜(17)で表される繰り返し単位を含む脂肪族アミンポリマーの一価アニオン塩であり得る。この態様において、脂肪族アミンポリマーの一価アニオン塩および脂肪族アミンポリマーの炭酸塩は、一緒に物理的に混合され得る。あるいは、単一の脂肪族アミンポリマーが炭酸塩および一価アニオンの両方を含み、炭酸塩および単一の脂肪族アミンポリマーの一価アニオン塩の混合物が形成され得る。脂肪族アミンポリマーの一価アニオン塩および脂肪族アミンポリマーの炭酸塩が物理的に一緒に混合される場合、脂肪族アミンポリマーの一価アニオン塩は、脂肪族アミンポリマー炭酸塩と同じまたは異なる脂肪族アミンポリマーであり得る。
【0064】
「脂肪族基」は、非芳香族であり、炭素および水素のみからなり、任意に1つ以上の不飽和単位、例えば、二重および/または三重結合を含み得る。脂肪族基は、直鎖、分枝または環状であり得る。特に記載のない限り、直鎖または分枝脂肪族基は、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を含む。特に記載のない限り、環状脂肪族基は、3〜8個の炭素原子を含む。脂肪族基の適当な置換基としては、アミン基、例えば、1級、2級もしくは3級アルキルアミンが挙げられる。他の適当な置換基の例としては、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキサミド、スルホンアミド、ハロゲン、アルキル、アリール、ヒドラジン、グアニジンおよび尿素が挙げられる。
【0065】
用語「アルキル」は、単独または「アルコキシ」、「アルキルアミン」、「ヒドロキシアルキルアミン」、「ジアルキル(alky)アミン」などの大きな部分の一部として使用され、飽和脂肪族基を意味する。アルキル基の適当な置換基は、脂肪族基について上記で定義した通りである。
【0066】
「アルキレン」は、二価アルキル基、すなわち、-(CH2)n-(式中、nは、1〜10、好ましくは1〜3の整数である)である。
【0067】
「芳香族基」としては、フェニル、ピリジル、チエニル、フラニルなどの単環式炭素環式および複素環式芳香族基が挙げられる。「フェニレン」は、二価フェニル基、すなわち、


である。芳香族基の適当な置換基は、脂肪族基について記載した通りである。
【0068】
上記のアミンポリマーが本発明の薬学的に許容され得る第一鉄化合物と組み合わせて使用される場合、アミンポリマーおよび薬学的に許容され得る第一鉄化合物は、単一の医薬組成物に同時製剤化され得るか、あるいは別々の医薬組成物で同時投与され得る。
【0069】
いくつかの態様において、アミンポリマー、好ましくは脂肪族アミンポリマー、および薬学的に許容され得る第一鉄化合物は、単一の医薬組成物に同時製剤化される。アミンポリマーおよび薬学的に許容され得る第一鉄化合物は、その混合物で存在し得る。あるいは、薬学的に許容され得る第一鉄化合物は、上記のような架橋アミンポリマー、好ましくは架橋脂肪族アミンポリマー中に浮遊され得る。本明細書で使用されるように、句「架橋アミンポリマー中に浮遊される薬学的に許容され得る第一鉄化合物」は、架橋アミンポリマーが薬学的に許容され得る第一鉄化合物または鉄化合物の第一鉄イオンを、例えば、架橋によって作製されたポケット(1つまたは複数)内に捕捉していることを意味する。架橋アミンポリマー、好ましくは架橋脂肪族アミンポリマーに浮遊された薬学的に許容され得る第一鉄化合物は、上記のアミンポリマーを薬学的に許容され得る第一鉄化合物の存在下で架橋させることにより調製され得る。例えば、ポリアリルアミンポリマーは、酸化鉄(II)の存在下でエピクロロヒドリンなどの多官能性架橋剤(1つまたは複数)によって架橋され、酸化鉄(II)または酸化鉄(II)の鉄(II)カチオンが浮遊した架橋ポリアリルアミンポリマーが形成され得る。アミンポリマー、架橋剤および薬学的に許容され得る第一鉄化合物に関する種々の例および好ましい値は、上記の通りである。典型的に、架橋アミンポリマー、好ましくは架橋脂肪族アミンポリマーに浮遊された薬学的に許容され得る第一鉄化合物が使用される場合、架橋剤は、アミンモノマー+架橋剤の総重量に基づいて0.5〜35重量%(0.5〜30重量%、2.5〜30重量%、5〜25重量%、5〜20重量%または5〜15重量%など)の量で存在する。
【0070】
アミンポリマー、好ましくは脂肪族アミンポリマー、および薬学的に許容され得る第一鉄化合物が単一の医薬組成物に製剤化される場合、典型的に、薬学的に許容され得る第一鉄化合物の第一鉄イオンは、医薬組成物の乾燥重量の10〜30%、10〜25%、13〜25%、15〜22%および16〜20%などの5〜35%を構成する。
【0071】
あるいは、薬学的に許容され得る第一鉄化合物の第一鉄イオンは、第一鉄化合物およびアミンポリマーの遊離塩基の乾燥重量の総重量の10〜30%、10〜25%、13〜25%、15〜22%および16〜20%などの5〜35%を構成する。本明細書において、用語「アミンポリマーの遊離塩基」は、対イオンを含まないアミンポリマーを意味する。医薬組成物中の第一鉄化合物の量をこの様式で示す場合、医薬組成物中のアミンポリマーは、非プロトン化されているか、一部プロトン化されているか、または完全にプロトン化されたものであり得ることを理解されたい。しかしながら、アミンポリマーの重量は、これが対応する遊離塩基アミンポリマーであり、アミンポリマー中のすべての窒素原子が遊離であって対イオンに結合されていないと仮定して計算される。
【0072】
あるいは、薬学的に許容され得る第一鉄化合物は、ポリマーの全アミン窒素原子(プロトン化および非プロトン化)に対する薬学的に許容され得る第一鉄化合物の第一鉄イオンのモル比が、0.4〜3.0、0.4〜2.5、0.8〜2.0、0.8〜1.5および0.8〜1.3などの0.1〜3.0となるような量で医薬組成物中に存在する。好ましくは、モル比は1である。この比は、アミンポリマー中の窒素原子モルに対する薬学的に許容され得る第一鉄化合物の第一鉄イオンのモルの商である。存在する場合、対イオンまたは架橋剤由来の窒素はアミンポリマーのモルに含まれる。
【0073】
あるいは、薬学的に許容され得る第一鉄化合物は、アミンポリマーの全窒素原子に対する薬学的に許容され得る第一鉄化合物の第一鉄イオンの重量比が、0.7〜2.0、1.0〜2.0および1.2〜1.8などの0.7〜2.5となるような量で医薬組成物中に存在する。好ましくは、重量比は1.57である。この重量比は、アミンポリマー(全組成物ではない)中の窒素原子のグラムに対する第一鉄イオンのグラムの商である。したがって、対イオンまたは架橋剤由来の窒素は、存在する場合、アミンポリマー中の窒素原子のグラムに含まれる。
【0074】
あるいは、薬学的に許容され得る第一鉄化合物は、脂肪族アミンポリマーの遊離塩基に対する薬学的に許容され得る第一鉄化合物の第一鉄イオンの重量比が0.2〜1.0、0.3〜1.0、0.3〜0.8および0.3〜0.5などの0.2〜1.2となるような量で医薬組成物中に存在する。好ましくは、重量比は0.42である。用語「アミンポリマーの遊離塩基」は、上記の通りである。したがって、この比は、アミンポリマー中の対イオンの重量を含まないアミンポリマーのグラムに対する第一鉄イオンのグラムの商である。
【0075】
本発明における使用のために適当な他のリン酸金属イオン封鎖剤としては、酢酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物、クエン酸塩、アルギン酸塩、およびそのケト酸などの薬学的に許容され得るランタン、カルシウム、アルミニウム、マグネシウムおよび亜鉛化合物が挙げられる。
【0076】
炭酸カルシウム、酢酸カルシウム(例えば、PhosLo(登録商標)酢酸カルシウム錠剤)、クエン酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、およびケト酸カルシウム等のカルシウム化合物は、リン酸結合に利用されている。摂取されたカルシウムはリン酸と結合してCa3(PO4)2、CaHPO4、またはCa(H2PO4)2等の不溶性リン酸カルシウム塩を形成する。
【0077】
また、Amphojel(登録商標)水酸化アルミニウムゲル等のアルミニウム系リン酸金属イオン封鎖剤は、リン酸過剰血症を治療するために使用されている。これらの化合物は腸のリン酸と複合体を形成して、非常に不溶性のリン酸アルミニウムを形成する;結合したリン酸は患者による吸収について利用可能でない。
【0078】
最も一般的に使用されるランタニド化合物、炭酸ランタン(Fosrenol(登録商標))は、炭酸カルシウムと同様に働く。
【0079】
本発明の使用に適切な他のリン酸金属イオン封鎖剤は、薬学的に許容され得るマグネシウム化合物を含む。薬学的に許容され得るマグネシウム化合物の様々な例は2005年11月8日に出願された米国特許仮出願第60/734,593号に記載され、全教示は参照によって本明細書に援用される。具体的で適切な例としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ハロゲン化マグネシウム(例えば、フッ素マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、およびヨウ化マグネシウム)、マグネシウムアルコキシド(例えば、マグネシウムエトキシドおよびマグネシウムイソプロポキシド)、炭酸マグネシウム、二炭酸マグネシウム、蟻酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、三ケイ酸マグネシウム、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびスチレンスルホン酸等の有機酸のマグネシウム塩、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0080】
薬学的に許容され得る亜鉛化合物の様々な例は2005年12月29日に出願されたPCT出願第PCT/US2005/047582号に記載され、全教示は参照によって本明細書に援用される。薬学的に許容され得る亜鉛化合物の具体的で適切な例としては、酢酸亜鉛、臭化亜鉛、カプリル酸亜鉛、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、蟻酸亜鉛、ヘキサフルオロケイ酸亜鉛、ヨー素酸亜鉛、ヨウ化亜鉛、ヨウ化亜鉛デンプン、乳酸亜鉛、硝酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、酸化亜鉛、カラミン(わずかな酸化鉄を含む酸化亜鉛)、p-フェノールスルホン酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、ケイ酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、硫酸亜鉛、硫化亜鉛、タンニン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、吉草酸亜鉛および亜鉛エチレンビス(ジチオカルバメート)が挙げられる。別の例としては、ポリ(亜鉛アクリレート)が挙げられる。
【0081】
上記のリン酸金属イオン封鎖剤のいずれかに言及する場合、その混合物、多形および溶媒和物が包含されることを理解されたい。
【0082】
いくつかの態様において、上記のリン酸金属イオン封鎖剤の混合物(例えば、薬学的に許容され得るマグネシウム化合物およびアミンポリマー、好ましくは脂肪族アミンポリマーの混合物)が、薬学的に許容され得る第一鉄塩と組み合わせて本発明で使用され得る。
【0083】
他の態様において、上記の薬学的に許容され得る第一鉄イオン化合物と組み合わせて使用されるリン酸金属イオン封鎖剤は、薬学的に許容され得るマグネシウム化合物ではない。さらに他の態様において、上記の薬学的に許容され得る第一鉄イオン化合物と組み合わせて使用されるリン酸金属イオン封鎖剤は、薬学的に許容され得る亜鉛化合物ではない。
【0084】
また、本発明は、リン酸塩輸送インヒビター;スタチン等のHMG-CoAレダクターゼインヒビター;またはアルカリホスファターゼインヒビターと組み合わせた上記の薬学的に許容され得る第一鉄化合物の併用療法に関する方法および医薬組成物を含む。また、本発明は、胆汁酸金属イオン封鎖剤と組み合わせた上記の薬学的に許容され得る第一鉄化合物の併用療法に関する方法および医薬組成物を含む。薬学的に許容され得る第一鉄化合物の混合物は、リン酸塩輸送インヒビター;HMG-CoAレダクターゼインヒビター;アルカリホスファターゼインヒビター、または胆汁酸金属イオン封鎖剤を用いた併用療法に使用され得る。治療に適切な薬学的に許容され得る第一鉄化合物は上記の通りである。
【0085】
リン酸塩輸送インヒビターの適切な例は、同時係属中の米国出願公開第2004/0019113号および第2004/0019020号および第WO2004/085448号に見ることができ、それぞれの全教示は参照によって本明細書に援用される。
【0086】
本発明の併用療法のためのHMG-CoAレダクターゼインヒビターの適切な例としては、ロバスタチン(メビノリン)(例えば、Altocor(登録商標)およびMevacor(登録商標))および関連化合物;プラバスタチン(例えば、Pravachol(登録商標)、Selektine(登録商標)、およびLipostat(登録商標))および関連化合物;シムバスタチン(例えば、Zocor(登録商標))および関連化合物が挙げられる。本発明に使用され得る他のHMG-CoAレダクターゼインヒビターとしては、フルバスタチン(例えば、Lescol(登録商標));セリバスタチン(例えば、Baycol(登録商標)およびLipobay(登録商標));アトールバスタチン(例えばZarator(登録商標)およびLipitor(登録商標));ピタバスタチン;ロスバスタチン(ビサスタチン)(例えば、Crestor(登録商標));メバロノラクトンのキノリンアナログおよびその誘導体(米国特許第5,753,675号を参照、その全教示は参照によって本明細書に援用される);メバロノラクトン誘導体のピラゾールアナログ(米国特許第4,613,610号を参照、その全教示は参照によって本明細書に援用される);メバロノラクトン誘導体のインデンアナログ(WO86/03488を参照、その全教示は参照によって本明細書に援用される);6-[2-(置換-ピロール-1-イル)-アルキル)ピラン-2-オンおよびその誘導体(米国特許第4,647,576号を参照、その全教示は参照によって本明細書に援用される);メバロノラクトンのイミダゾールアナログ(WO86/07054を参照、その全教示は参照によって本明細書に援用される);3-ヒドロキシ-4(ジヒドロキソオキソホスホリノ)ブタノール酸誘導体(仏国特許第2,596,393号を参照、その全教示は参照によって本明細書に援用される);メバロノラクトンのナフチルアナログ(米国特許第4,686,237号を参照、その全教示は参照によって本明細書に援用される);オクタヒドロナフタレン(米国特許第4,499,289号を参照、その全教示は参照によって本明細書に援用される);ならびにキノリンおよびピリジン誘導体(米国特許第5,506,219号および第5,691,322号を参照、その全教示は参照によって本明細書に援用される)が挙げられる。アトールバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、シムバスタチン、ロスバスタチン、セリバスタチンおよびピタバスタチン等のスタチンが好ましい。
【0087】
多様な有機分子および無機分子がアルカリホスファターゼ(ALP)に対するインヒビターである(例えば、米国特許第5,948,630号を参照、その全教示は参照によって本明細書に援用される)。アルカリホスファターゼインヒビターの例としては、オルトリン酸、砒酸、L-フェニルアラニン、L-ホモアルギニン、テトラミゾール、レバミゾール、L-p-ブロモテトラミゾール、5,6-ジヒドロ-6-(2-ナフチル)イミダゾ-[2,1-b]チアゾール(ナフチル)およびその誘導体が挙げられる。好ましいインヒビターとしては、限定されないが、レバミゾール、ブロモテトラミゾール、ならびに5,6-ジヒドロ-6-(2-ナフチル)イミダゾ-[2,1-b]チアゾール(ナフチル)およびその誘導体が挙げられる。
【0088】
胆汁酸金属イオン封鎖剤の適切な例としては、コレセベラム、コレスチラミン、およびコレスチポールが挙げられる。胆汁酸金属イオン封鎖剤の他の例は、米国特許第5,929,184号;第6,129,910号;第6,190,649号;第6,203,785号;第6,271,264号;および第6,294,163号に開示され、その全教示は参照によって本明細書に援用される。
【0089】
本発明の医薬組成物は、錠剤、サシェ(sachet)、スラリー、食品配合物、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース(wafer)、チューイングガム、またはトローチ剤(lozenge)として製剤化され得る。
【0090】
一般的に、シロップ製剤は、例えば、風味剤または着色剤を含む、エタノール、グリセリンまたは水の液体担体中のリン酸結合ポリマーまたは塩の懸濁液または溶液からなる。
【0091】
医薬組成物が錠剤の形態である場合、固形製剤の調製に慣例で使用される1つ以上の薬学的担体が使用され得る。かかる担体の例としては、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、ラクトースおよびスクロースが挙げられる。例えば、経口使用のための錠剤製剤は、活性化合物と1つ以上の賦形剤を合わせること、任意に得られた混合物を粉砕すること、および必要である場合に適切な補助剤を添加した後に、顆粒混合物を処理して錠剤コアを得ることによって得られ得る。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖等の充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース調製物、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)である。所望される場合、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムのようなその塩等の崩壊剤が添加され得る。
【0092】
医薬組成物がカプセルの形態である場合、慣例のカプセル化の使用は一般的に適切であり、例えば、硬ゼラチンカプセルシェル中の前記担体を用いる。例えば、(硬ゼラチンまたはシクロデキストランのコーティング等における)組成物をカプセル化する方法は当該技術分野で公知である(Baker, et al., "Controlled Release of Biological Active Agents", John Wiley and Sons, 1986、その全教示は参照によって本明細書に援用される)。医薬組成物が軟ゼラチンシェルカプセルの形態である場合、分散剤または懸濁液の調製に慣例で使用される担体としては、例えば、水性ガム、セルロース、ケイ酸または油が挙げられ得、軟ゼラチンカプセルシェルに組み込まれる。また、医薬組成物は、ゼラチン等の適切な物質から作製された押しばめカプセル、ならびに例えばゼラチンの適切な物質およびグリセロールまたはソルビトール等の可塑剤から作製された密封軟カプセルの形態であり得る。押しばめカプセルは、ラクトース等の充填剤、デンプン等の結合剤、および/またはタルク等の潤滑剤ならびに任意に安定剤と混合した薬学的に許容され得る第一鉄化合物を含み得る。軟化カプセルにおいて、薬学的に許容され得る第一鉄化合物は、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコール等の適切な液体に溶解または懸濁され得る。また、安定剤が任意に添加され得る。
【0093】
好ましい態様において、本発明の医薬組成物が錠剤として製剤化される。
【0094】
別の好ましい態様において、本発明の医薬組成物は、サシェまたはタブ(tub)として容易にパッケージされ得る粉末製剤として製剤化され、その単位用量は、例えば、スプーンまたはカップ、あるいは予め定義した投与量を分注し得る装置によって測定される。粉末製剤は、好ましくはアルギン酸(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸のエステル等)、カルボキシメチルセルロース、ポリ乳酸、ポリグルタミン酸、ペクチン、キサンタン、カラギーナン、ファーセレラン(furcellaran)、アラビアガム、カラヤガム、ガッティガム(gum ghatti)、イナゴマメガム(gum carob)およびトラガカントガム等の薬学的に許容され得るアニオン性ポリマーをさらに含む(2005年9月15日に出願された米国特許仮出願第60/717,200号を参照、その全教示は参照によって本明細書に援用される)。1つ以上の甘味剤および/または風味剤が粉末製剤に任意に含まれ得る。
【0095】
上述の記載は本発明の態様と一致した医薬組成物の経口投与の経路に関するが、従来使用され、薬学的に許容され得る第一鉄化合物に関して不活性であるビヒクルまたは担体を用いた他の投与様式が医薬組成物の調製および投与に使用され得ることが当業者に理解される。かかる方法、ビヒクルおよび担体の例示は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版(1990)に記載されるものであり、その開示は参照によって本明細書に援用される。
【0096】
「被験体」は好ましくはヒトであるが、上記の薬学的に許容され得る第一鉄化合物を用いた治療の必要がある別の動物、例えば、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ等)、農場動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ等)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモット等)であり得る。本明細書で使用される場合、第一鉄イオンを含む薬学的に許容され得る第一鉄化合物を用いた治療の必要がある被験体としては、有益な治療結果および/または予防結果を達成するための第一鉄イオンを含む薬学的に許容され得る第一鉄化合物で治療され得る疾患および/または状態を有する被験体が挙げられる。有益な結果としては、症状の重篤度の減少または症状の開始の遅延、寿命の増大および/または疾患もしくは状態の迅速もしくは完全な消散が挙げられる。例えば、治療の必要がある被験体は、典型的に例えば、腎臓機能障害または副甲状腺機能低下症から生じる血清リン酸レベルの上昇、リン酸過剰血症を有する。また、治療の必要がある被験体には、慢性腎臓機能不全を有する被験体が含まれる。薬学的に許容され得る第一鉄化合物を用いた治療の必要がある被験体の他の例としては、リン酸代謝障害と関連する疾患を有する被験体が挙げられる。この型の疾患および/または障害の例としては、副甲状腺機能低下症、不十分な腎臓機能およびリン酸過剰血症が挙げられる。
【0097】
本明細書で使用される場合「治療」は、治療的処置および予防的処置の両方を含む。
【0098】
鉄イオンを含む薬学的に許容され得る第一鉄化合物または薬学的に許容され得る第一鉄化合物の混合物の「有効量」は、状態が治療の非存在と比べて(1つまたは複数の)第一鉄化合物で治療されるという有益な臨床結果となる量である。鉄イオンを含む薬学的に許容され得る第一鉄化合物またはかかる薬学的に許容され得る第一鉄化合物の混合物の「有効量」はまた、例えば、腎臓機能不全、副甲状腺機能低下症、またはリン酸過剰血症を発症するリスクがある被験体に与えられた場合に有益な予防効果を達成し、これらの疾患および/または状態の開始を妨げる量である。被験体に投与される第一鉄イオンを含む薬学的に許容され得る第一鉄化合物またはかかる薬学的に許容され得る第一鉄化合物の混合物の量は、疾患または状態の程度、重篤度および種類、所望される治療の量、ならびに医薬製剤の放出特性に依存する。また、これは被験体の健康、サイズ、体重、年齢、性別および薬物への耐性にも依存する。典型的に、本発明の医薬組成物は、所望の治療効果を達成する十分な時間で投与される。典型的に、0.1mg/日〜20g/日(あるいは、1mg/日〜10g/日、1mg/日〜5g/日、あるいは0.5g/日〜5g/日、あるいは0.5/日〜3g/日)の薬学的に許容され得る第一鉄化合物または薬学的に許容され得る第一鉄化合物の混合物が、治療の必要がある被験体に投与される。これらの用量は、一日当たり数回(例えば、一日当たり2回、3回、4回もしくは5回)または一日当たり一回で投与され得る。
【0099】
アミンポリマー(例えば、セベラマー、コレセベラム、およびコレスチポール)、または薬学的に許容され得るランタン(例えば、Fosrenol(登録商標))またはカルシウム(PhosLo(登録商標))塩等の上記のリン酸金属イオン封鎖剤の有効量は、一般的に当該技術分野で公知である。また、リン酸塩輸送インヒビター、HMG-CoAレダクターゼインヒビター、アルカリホスファターゼインヒビターまたは胆汁酸金属イオン封鎖剤の有効量は、一般的に当該技術分野で公知である。例えば、リン酸金属イオン封鎖剤、リン酸塩輸送インヒビター、HMG-CoAレダクターゼインヒビター、アルカリホスファターゼインヒビターまたは胆汁酸金属イオン封鎖剤の1つ以上のこれらの第二薬剤が薬学的に許容され得る第一鉄化合物と組み合わせて使用される場合、薬学的に許容され得る第一鉄化合物の有効量は、所望のリン酸結合能を達成する第二薬剤(1つまたは複数)の有効量を考慮して調節される。
【0100】
例えば、本発明の医薬組成物が上記の薬学的に許容され得る第一鉄化合物およびアミンポリマー(好ましくは脂肪族アミンポリマー)を含む場合、典型的に5mg/日〜15g/日(あるいは、50mg/日〜12g/日、あるいは0.5g/日〜12g/日、あるいは1g/日〜12g/日、あるいは0.5g/日〜10g/日、あるいは1g/日〜10g/日、あるいは2g/日〜10g/日、あるいは3g/日〜10g/日、あるいは1g/日〜8g/日、あるいは2g/日〜8g/日、あるいは2g/日〜6g/日、あるいは2g/日〜5g/日)の医薬組成物が治療の必要がある被験体に投与される。薬学的に許容され得る第一鉄化合物が投与される場合に投与の頻度は上記の通りである。1つの具体例において、0.8〜7.2g(例えば、一日当たり2〜3回の用量当たり1.2g、1.6g、1.8g、2.0g、2.4g、3.0g、3.2g、3.6g、4.0g、もしくは4.8g、または一日当たり1回の用量当たり3.0g、3.2g、3.6g、4.0gもしくは4.8g、5.4g、6.0g、6.2g、6.6g、7.0gもしくは7.2g)の医薬組成物が一日当たりに投与される。医薬組成物は、食事と共に1日当たり少なくとも4回、食事と共に1日当たり少なくとも3回、食事と共に1日当たり少なくとも2回、食事と共に1日当たり少なくとも1回投与され得る(2005年10月27日に出願された米国出願第11/262,502号を参照、その全内容は参照によって本明細書に援用される)。
【0101】
典型的に、本発明の組成物は、食事の前または後に、あるいは食事と共に投与され得る。好ましくは、本発明の組成物の有効量は、食事と共に1日当たり数回または1回投与される。本明細書で使用される場合、食事の「前」または「後」は、食事前または食事後の、典型的に2時間以内、好ましくは1時間以内、より好ましくは30分以内、最も好ましくは10分以内のそれぞれである。一日当たり1回の用量について、本発明の組成物の有効量は、好ましくは、一日の最大の食事の前もしくは後、またはこれと共に投与される。
【0102】
薬学的に許容され得る第一鉄化合物(1つまたは複数)は、複数回用量単位または好ましくは単回用量単位として投与され得る。本明細書で使用される場合、用量単位は、当該分野で理解される手順によって調製された錠剤、サシェ、スラリー、食品配合物、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース、チューイングガム等であり得る。好ましくは用量単位は、錠剤、カプセル、サシェ、スラリー、懸濁液または食品配合物であり、より好ましくは用量単位は、錠剤、スラリー、懸濁液または食品配合物であり、最も好ましくは用量単位は、錠剤またはサシェである。典型的に、所望される用量の薬学的に許容され得る第一鉄化合物(1つまたは複数)は、複数の錠剤またはカプセル、あるいは単回用量のサシェ、スラリー、食品配合物、懸濁液またはシロップとして投与される。
【0103】
当業者には、本発明の方法に従って被験体に投与される本発明の医薬組成物の種々の成分の量が上記のこれらの因子に依存することが認識されよう。
【0104】
本発明は、以下の実施例により例示されるが、いかなる方法に限定されることを意図しない。
【実施例】
【0105】
本実施例で使用された鉄化合物、例えば、(+)-L-アスコルビン酸鉄(II)、酢酸鉄(II)、酸化鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、ナノ粉末酸化鉄(II/III)、および含糖炭酸鉄は、例えばAldrich(登録商標)Advancing Scienceの市販業者から入手され、さらなる精製なしで使用された。鉄イオンを有する鉄化合物は、不活性雰囲気下で取り扱われた。
【0106】
実施例1. 蟻酸鉄(II)を有する組成物の調製
硫酸鉄(II)(275.23g)を、10%蟻酸溶液(120mL)に攪拌しながら溶解した。別のフラスコで、蟻酸ナトリウム(54g)を、10%蟻酸溶液(50mL)に攪拌しながら溶解した。攪拌しながら、蟻酸ナトリウム溶液を、硫酸鉄(II)溶液に添加した。淡青沈殿物を形成した。得られた混合物を室温で1時間攪拌し、濾過した。一部を凍結乾燥して8.91g(♯1)を得て、別の部分を窒素下での70℃の真空オーブンで乾燥して34.99g(♯2)を得た。
【0107】
実施例2. ポリ(アクリル酸、ナトリウム塩)および鉄(II)塩の混合物の調製
脱イオン水(500mL)中のポリ(アクリル酸、ナトリウム塩)(45wt%水溶液の44.44g)の溶液に、脱イオン水(500mL)中の塩化鉄(II)(42g)の溶液を滴下で添加した。得られた混合物を濾過し、水(100mL)で洗浄し、60℃の強制空気オーブンで乾燥し、7.96gを得た。
【0108】
実施例3. ポリ(アクリル酸、ナトリウム塩)および鉄(II)塩の混合物の調製
脱イオン水(170mL)中のポリ(アクリル酸、ナトリウム塩)(50g)の溶液に、水(75mL)に溶解した塩化鉄(II)四水和物 (42.35g)の溶液を滴下で添加した。二晩攪拌した後、混合物を、60℃の強制空気オーブンで乾燥して52.54gを得た。
【0109】
実施例4. ポリ(アリルアミン)および鉄(II)塩の混合物の調製
塩酸ポリアリルアミン(PAA.HCl,50%(w/w)水溶液)の溶液に、脱イオン水(1050g)、次いでNaOH(185.38gの水中50%(w/w)NaOH)を添加して、部分中和ポリアリルアミン溶液を形成した。一部の部分中和ポリ(アリルアミン)溶液(110.6g)に、酸化鉄(II)(3.77g)を添加した。室温で攪拌後、エピクロロヒドリン(0.985mL)を添加した。ゲルを30分後に形成した。室温で硬化した後、ゲルを、小断片に壊して、脱イオン水(4L)に懸濁した。20分間攪拌した後に、懸濁液を濾過した。濾過したポリマーを脱イオン水(各洗浄4L)でもう1回洗浄した。濾過したポリマーを60℃の強制空気オーブンで乾燥して20.07gを得た。
【0110】
実施例5. ポリ(アリルアミン)および鉄(II)塩の混合物の調製
部分中和ポリ(アリルアミン)溶液(110.6g、実施例4参照)に、酸化鉄(II)(7.54g)を添加した。室温で攪拌した後に、エピクロロヒドリン(0.985mL)を添加した。ゲルを30分後に形成した。室温で硬化した後に、ゲルを小断片に壊して脱イオン水(4L)に懸濁した。20分間攪拌した後に、懸濁液を濾過した。濾過したポリマーを脱イオン水(各洗浄4L)でもう1回洗浄した。濾過したポリマーを60℃の強制空気オーブンで乾燥して24.44gを得た。
【0111】
実施例6. ポリ(アリルアミン)および鉄(II、III)塩の混合物の調製
部分中和ポリ(アリルアミン)溶液(110.6g、実施例4参照)に、酸化鉄(II、III)(12.16g)を添加した。室温で攪拌した後に、エピクロロヒドリン(0.985mL)を添加した。ゲルを30分後に形成した。室温で硬化した後に、ゲルを小断片に壊して脱イオン水(4L)に懸濁した。20分間攪拌した後に、懸濁液を濾過した。濾過したポリマーを脱イオン水(各洗浄4L)でもう1回洗浄した。濾過したポリマーを60℃の強制空気オーブンで乾燥して28.31gを得た。
【0112】
実施例7. ポリ(アリルアミン)および鉄(II)塩の混合物の調製
部分中和ポリ(アリルアミン)溶液(110.6g、実施例4参照)に、酸化鉄(II,III)(24.31g)を添加した。室温で攪拌した後に、エピクロロヒドリン(0.985mL)を添加した。ゲルを30分後に形成した。室温で硬化した後に、ゲルを小断片に壊して脱イオン水(4L)に懸濁した。20分間攪拌した後に、懸濁液を濾過した。濾過したポリマーを脱イオン水(各洗浄4L)でもう1回洗浄した。濾過したポリマーを60℃の強制空気オーブンで乾燥して40.79gを得た。
【0113】
実施例8. ヒドロキシルアミン改変ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート-コ-ジビニルベンゼン)および鉄(II)塩の混合物の調製
エタノール(136mL)中の2-ヒドロキシエチルアクリレート(50mL)、ジビニルベンゼン(1.9g)、およびアゾイソブチロニトリル(0.526g)の溶液を、窒素雰囲気下で1時間60℃で加熱した。反応は70℃に温めた。室温に冷却した後に、反応混合物をジエチルエーテルで希釈し、濾過し、乾燥後に46.2gポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート-コ-ジビニルベンゼン)を得た。
【0114】
568-3ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート-コ-ジビニルベンゼン)、脱イオン水(100mL)、およびヒドロキシルアミン(50mLの50%水溶液)の懸濁液を、窒素雰囲気下で24時間55℃で加熱した。反応混合物をメタノールで希釈し、濾過し、乾燥後に6.3gヒドロキシルアミン改変ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート-コ-ジビニルベンゼン)を得た。
【0115】
6.3gの粉末ポリマーヒドロキシルアミン改変ポリ(2-ヒドロキシエチルアクリレート-コ-ジビニルベンゼン)を500mlの攪拌中脱イオン水(pH6.6)に分散した。29.83gのFe(II)Cl2-4H2Oを60mlの脱イオン水に溶解した。攪拌中のポリマー溶液に鉄溶液をゆっくりとピペットで加えた。ポリマー溶液は直後に赤/オレンジ色に変わり、溶液pHは3.8であった。次にpHはw/50%NaOHで調整され、90分後にpH6.35で平衡した。溶液は塩基添加で黒ずんだ。黒ずんだ茶/オレンジ固形物を濾過し、60℃の強化空気オーブンに一晩置き、乾燥させた。10.93gの黒ずんだ茶固形物を得た。
【0116】
実施例9. ヒドロキシルアミン-エチルアクリレート改変エピクロロヒドリン-架橋ポリアリルアミンおよび鉄(II)塩の混合物の調製
エタノール(200mL)中のエピクロロヒドリン架橋ポリ(アリルアミン)(6.05g)およびエチルアクリレート(11.5mL)の懸濁液を3日間室温で攪拌した。混合物を濾過し、メタノールで洗浄してメタノール中に回収した固形物を懸濁して、1時間攪拌し、濾過した。メタノール洗浄をもう2回繰り返した。強制60℃で乾燥して10.57gのエチルアクリレート改変エピクロロヒドリン架橋ポリアリルアミンを得た。
【0117】
酢酸エチル改変エピクロロヒドリン架橋ポリアリルアミン、脱イオン水(200mL)、およびヒドロキシルアミン(25mLの50%水溶液)の懸濁液を、窒素雰囲気下で2日間、65℃で加熱した。反応混合物をメタノールで希釈し、濾過し、乾燥後に7.9gヒドロキシルアミン-エチルアクリレート改変エピクロロヒドリン架橋ポリアリルアミンを得た。
【0118】
7.88gの粉末ポリマー、ヒドロキシルアミン-エチルアクリレート改変エピクロロヒドリン架橋ポリアリルアミンを、450mLの攪拌中脱イオン水に分散した。22.19gのFe(II)Cl2を50mLの脱イオン水に溶解した。攪拌中のポリマー溶液(pH6.0)に鉄溶液をピペットでゆっくりと加えた。pHをw/50%NaOHで調整し、2時間後に6.5で平衡した。黒ずんだ茶固形物を濾過し、30分間1Lの脱イオン水に再懸濁した。このプロセスをもう1回繰り返した。黒ずんだ茶固形物を濾過し、60℃の強制空気オーブンに一晩置き、乾燥させた。10.93gの赤煉瓦色固形物を得た。
【0119】
実施例10. エチルアクリレート改変エピクロロヒドリン架橋ポリアリルアミンおよび鉄(II)塩の混合物の調製
エタノール(200mL)中のエピクロロヒドリン-架橋ポリ(アリルアミン)(6.53g)およびエチルアクリレート(69mL)の懸濁液を、室温で4日間攪拌した。混合物を濾過し、メタノールで洗浄して、メタノール中で回収した固形物を懸濁して、1時間攪拌し、濾過した。メタノール洗浄をもう2回繰り返した。強制60℃で乾燥させて、15.9gのエチルアクリレート改変エピクロロヒドリン架橋ポリアリルアミンを得た。
【0120】
エチルアクリレート改変エピクロロヒドリン架橋ポリアリルアミン(15.2g)、NaOH(48gの50%水溶液)、脱イオン水(100mL)、およびエタノール(150mL)の懸濁液を、一晩還流した(温度=80℃)。ポリマーを、脱イオン水に懸濁し、攪拌し、濾過した。このプロセスを懸濁液が導電率0.88mS/cmおよびpH11.48になるまで繰り返した。濾過した固形物を60℃の空気強制オーブンで乾燥して13.47gエチルアクリレート改変エピクロロヒドリン架橋ポリアリルアミンを得た。
【0121】
10.0gの粉砕形態の調製ポリマーを約450mLの攪拌中の脱イオン水(pH11.0)に分散した。33.0gのFe(II)Cl2-7H2Oを50mlの脱イオン水に溶解した。攪拌中のポリマー溶液(pH6.9)に鉄溶液をゆっくりと添加した。4時間攪拌した後の混合物のpHは5.9であった。黒ずんだ茶固形物を濾過し、30分間500mLの脱イオン水に再懸濁した。このプロセスをもう1回繰り返した。最終pHは6.5であった。黒ずんだ茶固形物を濾過し、60℃の強制空気オーブンに一晩置き、乾燥させた。10.93gの赤煉瓦色固形物を得た。
【0122】
実施例11. 改変エピクロロヒドリン架橋ポリアリルアミンおよび鉄(II)塩の混合物の調製
水(100mL)中のポリ(アリルアミン)(10.0g)、塩酸N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(7.34g)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(4.47g)および3,4-ジヒドロキシ安息香酸(6.01g)の溶液を、24時間室温で攪拌した。反応溶液の透析をして、60℃の強制空気オーブンで乾燥し、20gを得た。
【0123】
10.0gの粉砕形態の調製ポリマーを、40mlの攪拌中の脱イオン水に溶解した。混合物にキャップをして、数分間60℃の強制空気オーブンに置き、固形物質を十分に溶解して(pH約10.2)、取り出して室温に冷却した。1.2mLのエピクロロヒドリンを添加した。ゲルを30分以内に形成した。ゲルを一晩硬化させた。黒いゲルを小さい断片に壊して、30分間約2Lの脱イオン水に懸濁した。混合物を濾過し、次いで濾過した固形物を30分間約2Lのメタノールに再懸濁した。混合物を次に再度濾過し、30分間2Lの脱イオン水に再懸濁した(pH約8.8)。懸濁液のpHを50%NaOHで調整し、約9.5の平衡pHに到達させた。100mLの脱イオン水中の20.0g FeCl2-4H2O溶液を上記の膨張ゲルにゆっくりとピペットで加えた。15分後、混合物のpHは、4.9であった。混合物を次に濾過した。濾過した固形物を次に30分間約2Lの脱イオン水に再懸濁した。この手順をもう1回繰り返した。再懸濁溶液の最終pHは約6.8であった。黒ずんだ茶固形物を濾過し、60℃の強制空気オーブンに一晩置き、乾燥させた。11.0gの赤煉瓦色固形物を得た。
【0124】
実施例12. エピクロロヒドリン架橋ポリ(アリルアミン)および鉄(II)塩(1:1wt/wt)の混合物の調製
脱イオン水(80g)中の9.8mol%エピクロロヒドリン架橋ポリ(アリルアミン)(6.00g)の攪拌懸濁液に、酢酸鉄(II)(30mL脱イオン水に溶解された6.00g)を添加した。得られた懸濁液を凍結乾燥し、11.83gを得た。
【0125】
実施例13. エピクロロヒドリン架橋ポリ(アリルアミン)および鉄(II)塩(1:1.5wt/wt)の混合物の調製
脱イオン水(80g)中の9.8mol%エピクロロヒドリン架橋ポリ(アリルアミン)(6.00g)の攪拌懸濁液に、酢酸鉄(II)(9.00g)を添加した。得られた懸濁液を凍結乾燥し、14.19gを得た。
【0126】
実施例14. エピクロロヒドリン架橋ポリ(アリルアミン)および鉄(II)塩(2:1wt/wt)の混合物の調製
脱イオン水(80g)中の9.8mol%エピクロロヒドリン架橋ポリ(アリルアミン)(6.00g)の攪拌懸濁液に、酢酸鉄(II)(3.00g)を添加した。得られた懸濁液を凍結乾燥し、9.35gを得た。
【0127】
実施例15. 尿リン酸レベルを低減する化合物の効果
雄Sprague Dawley(SD)家ネズミを実験に使用した。このラットをワイヤ底部ケージに一匹ずつ入れ、Purina5002食餌を与え、実験に使用する前に少なくとも5日間慣れさせた。
【0128】
ベースラインリン酸排出を確立するために、ラットを48時間代謝ケージに置いた。尿を回収し、リン酸含有量をHitachiの分析器で分析し、mg/日のリン酸排出を決定した。範囲を外れた値を有する任意のラットを排除し、残りのラットを群に分けた。
【0129】
Purina5002を標準食餌として使用した。試験される化合物または化合物混合物をPurina5002と混合し、最終濃度0.5重量%(または表に示されるもの)とした。0.5重量%のセルロースをネガティブ対照として使用した。各ラットについて、200gの食餌を調製した。
【0130】
各ラットの体重を量り、標準食餌に置いた。4日後に、標準食餌を治療食餌(または対照群用対照食餌)と交換した。5日目と6日目に、24時間(+/-30分)でのラットの尿試料を回収し、分析した。試験ラットは再度体重を量り、任意の体重損失または獲得を計算した。任意の残りの食餌も量って、一日当たりの消費食物量を計算した。ベースラインおよびセルロースネガティブ対照に対するリン酸排出の変化を、エクセルプログラムを用いて計算した。試験ラットから得られた尿リン酸の量の比較のまとめを表1に示す。
【0131】



【0132】
表1に示されるように、鉄処置を受けたラットから得られた尿リン酸の量は、鉄処置を受けなかった対照のものよりかなり低かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)酢酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)、アスコルビン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、酸化鉄(II)、炭酸鉄(II)、含糖炭酸鉄(II)、アセチルアセトン酸鉄(II)、蟻酸鉄(II)、硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される薬学的に許容され得る第一鉄化合物、ならびに
b)薬学的に許容され得る担体
を含む医薬組成物。
【請求項2】
第二鉄イオンを本質的に含まない、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
第一鉄化合物の第一鉄イオンが医薬組成物の5〜35無水重量%を含んでなる、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
第一鉄化合物が、酸化鉄(II)、酢酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)、アスコルビン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
a)薬学的に許容され得る第一鉄化合物;
b)アミンポリマーまたはその薬学的に許容され得る塩;および
c)薬学的に許容され得る担体
を含む医薬組成物。
【請求項6】
第一鉄化合物が、酢酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)、アスコルビン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、酸化鉄(II)、炭酸鉄(II)、含糖炭酸鉄(II)、アセチルアセトン酸鉄(II)、蟻酸鉄(II)、硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項7】
第二鉄イオンを本質的に含まない、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項8】
アミンポリマーが脂肪族アミンポリマーである、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項9】
脂肪族アミンポリマーが




(式中:
yは独立して、0または1〜10の整数である;
R、R1、R2、およびR3は独立してH、置換もしくは非置換のアルキル基またはアリール基である;および
X-は交換可能な負電荷の対イオンである)
から選択される構造式で表される1つ以上の繰り返し単位を含むものであるか、またはその塩である、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
脂肪族アミンポリマーが架橋される、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
第一鉄化合物が架橋脂肪族アミンポリマーに浮遊される、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
脂肪族アミンポリマーが二官能性架橋剤で架橋される、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項13】
架橋剤が脂肪族アミンモノマーおよび架橋剤の全重量中約0.5〜35重量%の量で存在する、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項14】
脂肪族アミンポリマーが架橋ポリアリルアミンである、請求項13記載の医薬組成物。
【請求項15】
ポリアリルアミンポリマーがセベラマーである、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
ポリアリルアミンポリマーがセベラマーの塩化物である、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項17】
ポリアリルアミンポリマーがセベラマーの炭酸塩である、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項18】
ポリアリルアミンポリマーがセベラマーの塩化物および炭酸塩の混合物である、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項19】
ポリアリルアミンがコレセベラムである、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項20】
第一鉄化合物が、酸化鉄(II)、酢酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)、アスコルビン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項14記載の医薬組成物。
【請求項21】
錠剤である、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項22】
酢酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)、アスコルビン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、酸化鉄(II)、炭酸鉄(II)、含糖炭酸鉄(II)、アセチルアセトン酸鉄(II)、蟻酸鉄(II)、硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される薬学的に許容され得る第一鉄化合物の有効量を、被験体に投与する工程を含む、被験体のリン酸過剰血症を治療する方法。
【請求項23】
第一鉄化合物が本質的に第二鉄イオンを含まない、請求項22記載の方法。
【請求項24】
薬学的に許容され得る第一鉄化合物が0.1mg/日〜10g/日の量で投与される、請求項22記載の方法。
【請求項25】
第一鉄化合物の混合物が被験体に投与される、請求項22記載の方法。
【請求項26】
第一鉄化合物が、酸化鉄(II)、酢酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)、アスコルビン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項27】
被験体にリン酸金属イオン封鎖剤を同時投与する工程をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項28】
リン酸金属イオン封鎖剤が、薬学的に許容され得るカルシウム化合物、薬学的に許容され得るアルミニウム化合物、薬学的に許容され得るマグネシウム化合物、薬学的に許容され得るランタン化合物、および薬学的に許容され得る亜鉛化合物からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
リン酸塩輸送インヒビター、HMG-CoAレダクターゼインヒビター、アルカリホスファターゼインヒビターおよび胆汁酸金属イオン封鎖剤からなる群より選択される薬物を被験体に同時投与する工程をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項30】
a)薬学的に許容され得る第一鉄化合物;および
b)脂肪族アミンポリマーまたはその薬学的に許容され得る塩
を含む医薬組成物の有効量を、被験体に投与する工程を含む、
被験体のリン酸過剰血症を治療する方法。
【請求項31】
第一鉄化合物が、酢酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)、アスコルビン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、酸化鉄(II)、炭酸鉄(II)、含糖炭酸鉄(II)、アセチルアセトン酸鉄(II)、蟻酸鉄(II)、硫酸鉄(II)、塩化鉄(II)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
第一鉄化合物が本質的に第二鉄イオンを含まない、請求項30記載の方法。
【請求項33】
第一鉄化合物の混合物が被験体に投与される、請求項31記載の方法。
【請求項34】
アミンポリマーが脂肪族アミンポリマーである、請求項30記載の方法。
【請求項35】
脂肪族アミンポリマーが




(式中:
yは0または1〜10の整数である;
R、R1、R2、およびR3は独立してH、置換もしくは非置換のアルキル基またはアリール基である;および
X-は交換可能な負電荷の対イオンである)
からなる群より選択される式で表される1つ以上の繰り返し単位を含むものであるか、またはその塩もしくはコポリマーである、請求項33記載の方法。
【請求項36】
脂肪族アミンポリマーが多官能性架橋剤により架橋されたポリアリルアミンである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
第一鉄化合物が架橋ポリアリルアミンに浮遊される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
ポリアリルアミンがセベラマーである、請求項36記載の方法。
【請求項39】
ポリアリルアミンがコレセベラムである、請求項36記載の方法。
【請求項40】
第一鉄化合物が、酸化鉄(II)、酢酸鉄(II)、クエン酸鉄(II)、アスコルビン酸鉄(II)、シュウ酸鉄(II)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項36記載の方法。
【請求項41】
薬学的に許容され得る第一鉄化合物が0.1mg/日〜10g/日の量で投与される、請求項30記載の方法。
【請求項42】
第一鉄化合物の第一鉄イオンが医薬組成物の5〜35無水重量%を含んでなる、請求項30記載の方法。
【請求項43】
被験体にリン酸金属イオン封鎖剤を同時投与する工程をさらに含み、該リン酸金属イオン封鎖剤が薬学的に許容され得るカルシウム化合物、薬学的に許容され得るアルミニウム化合物、薬学的に許容され得るマグネシウム化合物、薬学的に許容され得るランタン化合物、および薬学的に許容され得る亜鉛化合物からなる群より選択される、請求項30記載の方法。
【請求項44】
リン酸塩輸送インヒビター、HMG-CoAレダクターゼインヒビター、アルカリホスファターゼインヒビターおよび胆汁酸金属イオン封鎖剤からなる群より選択される薬物を、被験体に同時投与する工程をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項45】
リン酸塩輸送インヒビター、HMG-CoAレダクターゼインヒビター、アルカリホスファターゼインヒビターおよび胆汁酸金属イオン封鎖剤からなる群より選択される薬物を、被験体に同時投与する工程をさらに含む、請求項30記載の方法。

【公表番号】特表2009−542653(P2009−542653A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518197(P2009−518197)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/014688
【国際公開番号】WO2008/005217
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(591042816)ジェンザイム コーポレーション (20)
【Fターム(参考)】