説明

リークチェック方法

【課題】メンテナンスコストを低減するとともに、リーク箇所を特定することができるインライン式の真空処理装置に適したリークチェック方法を提供する
【解決手段】本発明のリークチェック方法は、複数のチャンバがそれぞれゲートバルブを介して連接されてなるインライン式真空処理装置Sに好適に適用されるものであって、リークチェックが行われるチャンバP6の隣に連接されたチャンバP7内に所定量のガスを導入するガス導入S004の後に、チャンバP6及びチャンバP7の真空度を測定S005し、チャンバP6の真空度を基準値と比較S007した結果を出力S008し、その後に、チャンバP6のチャンバP7とは逆側に連接されているチャンバに対して上記のようなリークチェックが順次行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置のリークチェック方法に係り、特に、インライン式の真空処理装置に適したリークチェック方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空処理装置の立ち上げやメンテナンスの際には、到達真空度などの性能確認のために真空処理装置を構成するチャンバのリークチェックが行われる。リークチェック方法はその目的に応じて各種の方法が用いられるが、一例としては、チャンバを真空排気した後、所定時間真空度を測定することでリークの有無を確認する方法が知られている。
【0003】
多数のチャンバは連結されて構成されたインライン式の連続成膜処理装置(例えば、特許文献1,2参照)においては、通常、成膜処理装置を構成するチャンバ毎にリークチェックが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−274142号公報
【特許文献2】特開2002−28888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インライン式の連続成膜処理装置は多数のチャンバが連結されて構成されているため、チャンバ毎にリークチェックを行うと作業工数及びメンテナンスコストなどの増大を招くという問題があった。また、通常のリークチェック方法では、リーク箇所を特定することが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、メンテナンスコストを低減するとともに、リーク箇所を特定することができるインライン式の真空処理装置に適したリークチェック方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るリークチェック方法は、複数のチャンバがそれぞれゲートバルブを介して連接されてなる真空処理装置のリークチェック方法であって、リークチェックが行われる被測定チャンバ内及び被測定チャンバの一方向に連接された隣接チャンバ内を真空排気する初期排気ステップと、初期排気ステップの後に、隣接チャンバ内に所定量のガスを導入するガス導入ステップと、ガス導入ステップの終了から待機時間経過後に被測定チャンバ及び隣接チャンバの真空度をそれぞれ測定する真空度測定ステップと、真空度測定ステップで測定された被測定チャンバの真空度を予め設定された基準値と比較してリークの有無を判定する判定ステップと、判定ステップが終了した後に、被測定チャンバの他方向に連接されているチャンバを被測定チャンバに替えて被測定チャンバとして再設定するとともに、前記被測定チャンバを隣接チャンバに替えて隣接チャンバとして再設定する再設定ステップとをすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
一方の方向に向けて隣のチャンバのリークチェックを順次行うことで、隣接チャンバに導入されるガスの排気を行う必要がなくなり、メンテナンスの工数低減を図ることができ、リークチェックをより迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るインライン式の真空処理装置の模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るリークチェック機構のシステム構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る任意のプロセスチャンバのリークチェック方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は発明を具体化した一例であって本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0011】
図1乃至3は本発明の一実施形態に係るインライン式の連続真空処理装置(インライン真空処理)のリークチェック方法についての図であり、図1はインライン式の真空処理装置の模式図、図2はリークチェック機構のシステム構成図、図3は任意のプロセスチャンバのリークチェック方法を示したフローチャートである。なお、図面の煩雑化を防ぐため一部を除いて省略している。
【0012】
図1に模式的に示したインライン式の連続真空処理装置S(以下、真空処理装置Sとする)は、真空中においてハードディスク用の基板に対して成膜処理を行うための成膜装置であり、ロードチャンバLC、複数のプロセスチャンバP(P1,P2,P3など)、アンロードチャンバUL、コーナチャンバC(C1〜C4)などが、それぞれゲートバルブGVを介して無端状に連結(連接)されている。各ゲートバルブGVを開操作することで各チャンバの内部空間が連結できるように構成されている。
【0013】
また、それぞれのチャンバ(LC,P,UL,Cなど)には、隣り合うチャンバ間で基板を搬送可能な搬送装置(不図示)が備えられている。各チャンバのそれぞれには、Arを導入するガス導入系、真空排気を行う排気系、圧力測定を行う真空計が設けられている。なお、ガス導入系にはMFC(マスフローコントローラ)付きのガス導入機構が備えられ、ガス導入量を適宜調整することができる。
【0014】
図2は、リークチェック機構のシステム構成図であり、隣り合う2つのプロセスチャンバP6,P7について模式的に示したものである。ここで、プロセスチャンバP6は、一方向でプロセスチャンバP7に連結され、他方向でプロセスチャンバP5に連結されているものとする。
プロセスチャンバP6とプロセスチャンバP7の間にはゲートバルブGVが設けられており、また、上述のようにプロセスチャンバP6,P7のそれぞれには、排気系、ガス導入機構のMFC、真空計、及びそれらを制御するコントローラPLCなどが取り付けられている。
【0015】
リークチェック機構は、ガス導入機構のマスフローコントローラMFC、真空計G、それらを制御するRコントローラPLC、及び、各PLCを制御するコンピュータPCを主要な構成要素として形成されている。なお、図2はプロセスチャンバP6,P7のシステム構成図であるがロードチャンバLC、アンロードチャンバUL若しくはコーナチャンバCなどについても同様のシステム構成を有しており、コンピュータPCによって各PLCは制御されている。
【0016】
次に、真空処理装置Sに適用されるリークチェック方法について説明する。まず、1つのチャンバについてのリークチェック方法について説明する。
図3は、プロセスチャンバP6(被測定チャンバ)のリークチェック方法を示したフローチャートである。なお、図3はプロセスチャンバP6のリークチェック方法についてのものであるが、任意の一のチャンバ(LC,P,UL,Cなど)について適用可能であることはもちろんである。
【0017】
図3のリークチェック方法を示したフローチャートにおいて、S001は、リークチェックの測定開始準備作業を行う段階であり、待機時間:t1[sec]、Gas(ガス)導入時間:t2[sec]、判定値:P[Pa]が設定される(ステップ1)。S002で測定が開始される。具体的にはリークチェック機構を制御するコンピュータPCに各種設定値(t1,t2,P)を入力し、また、測定開始が指示される。
【0018】
S001の前段階として、チャンバP6(被測定チャンバ)及びチャンバP7(隣接チャンバ)とも真空排気された後に排気系のバルブが閉じられている(初期排気ステップ)。また、これらのチャンバ(P6,P7)のゲートバルブGVも全て閉じられた状態となっている。なお、初期排気ステップは、全てのチャンバに対して同時に行われると好適である。
【0019】
S003(排気後真空度測定ステップ)では、隣接チャンバP7(Gasを流す側)の真空度(呼称:Pre_P7)が測定され、S004(ガス導入ステップ)で、S001で設定された流量及び時間t2(所定量)だけGasが隣接チャンバP7に導入される。
S005(真空度測定ステップ)では、S004のガス導入終了から待機時間経過後(t1経過後)、プロセスチャンバP6の真空度(呼称:Aft_P6)と、隣接チャンバP7の真空度(呼称:Aft_P7)が測定される。
S006(計算ステップ)では、予め設定された条件式(I)に基づいて測定計算が行われる。
【0020】
S007(判定ステップ)において、S006での測定計算値とS001(判定値P)が比較される。すなわち、S007(判定ステップ)では、排気後真空度測定ステップ及び真空度測定ステップで測定された被測定チャンバP6及び隣接チャンバP7の真空度に基づく計算値を予め設定された判定値と比較してリークの有無が判定される。S008(出力ステップ)では、プロセスチャンバP6からのリークは無いと判断されると(S007:No)、コンピュータPC画面に異常はないことが表示される。一方、プロセスチャンバP6からのリークしている可能性があると判断されると(S007:Yes)、S008でPC画面には異常が検知されたこととリーク箇所などの調査やメンテナンスが必要であることが表示される。
【0021】
ここで、S006で演算される条件式(I)について説明する。
条件式(I)は、

X = Aft_P6 / (Aft_P7 − Pre_P7)・・・・・・・条件式(I)

で表され、算出されたXの値が0以下若しくはS001で設定した判定値Pより小さい場合には、チャンバP6はリークしていないと判断される(S007:No)。一方、算出されたXの値が判定値P以上である場合には、チャンバP6からリークしていると判断される(S007:Yes)。
【0022】
条件式(I)を用いることで、単純な圧力測定値を比較する計算式を用いるよりもリークの判定精度を高めることができる。すなわち、GAS導入によって陽圧にされたチャンバP7の圧力変動を高精度に検出することができる。
【0023】
具体的には、チャンバP7の圧力が変動している場合には条件式(I)の分母は減少し、このとき、チャンバP7とチャンバP6との間のゲートバルブGVの、チャンバP7からチャンバP6の方向へリークしている場合には条件式(I)の分子は増加する。このため、チャンバP7とチャンバP6との間のゲートバルブGVでリークしているときには、条件式(I)の算出値Xが他の箇所でのリークよりも大きく変化することになる。従って、所定の判定値Pと比較することによってゲートバルブGVからリークか否かを判定することができる。
【0024】
一方、チャンバP6の壁面からのリークは、図3に示したリークチェック方法では判定困難であるが、チャンバ壁面からのリークのおそれがある場合には、S003で隣接チャンバP7の真空度(呼称:Pre_P7)を測定する際に、チャンバP6の真空度(呼称:Pre_P6)を測定しておき、時間t1経過後のプロセスチャンバP6の真空度(呼称:Aft_P6)と比較するとよい。
なお、高い精度が要求されない場合には、条件式(I)に替えて、チャンバP6の真空度(Aft_P6)を予め設定された基準値と単純に比較する構成とすることもできるし、チャンバP6の真空度の変化(Aft_P6−Pre_P6)を予め設定された他の基準値と比較する構成とすることもできる。
【0025】
図3に示したプロセスチャンバP6のリークチェックが終了したら、次は、コーナチャンバC2のリークチェックを行う。このときのリークチェックにおいては、プロセスチャンバP6が隣接チャンバとして使用される。
このように任意のチャンバのリークチェックが終了すると、図1の矢印方向に1つずつ隣のチャンバのリークチェックを行うことを繰り返し、真空処理装置Sを構成する各チャンバのリークチェックが行われる。すなわち、出力ステップ(S008)が終了した後に、チャンバP6の隣接チャンバP7とは逆側(他方向)に連接されているチャンバP5を被測定チャンバに再設定(再設定ステップ)し、チャンバP5に対してS001からS008のリークチェックが再度実行される(順送りステップ)。このように一方の方向に向けて順次隣のチャンバのリークチェックを行うことで、隣接チャンバに導入(S004)されるガスの排気を行う必要がなくなり、リークチェックをより迅速に行うことができる。
【0026】
また、真空処理装置を構成する全チャンバのリークチェックが終了した後、全てのチャンバを真空排気する排気ステップが行われると好適である。特にリークチェックの結果、異常なリークが認められなかった場合には、迅速に次の作業工程に進むことができるからである。具体的には、リークチェックは上述したように一方の方向に向けて順次隣のチャンバに進むため、リークチェックが終了したチャンバにはガスが導入された状態で保持されている。ここで、真空処理装置Sのリークチェックの終了後に真空状態を必要とする作業を行う場合には各チャンバを所定の真空状態に真空排気する必要が生じる。そのため、排気ステップでは、真空処理装置Sのリークチェックが全て終了した後に、リークチェックが行われた全てのチャンバを排気する。
【0027】
排気ステップ(排気工程)は、リークチェック終了後にリークチェックが行われた全てのチャンバを同時に排気するので、真空ポンプから発生する振動や電気的ノイズによる測定誤差を抑えることができるため精密なリークチェックを行う場合には有効である。なお、真空ポンプの能力が限られている場合などは、リークチェック終了後のガスが導入されているチャンバの排気をチャンバごとに順次行う方法を排気ステップとして採用しても良いことはもちろんである。
【0028】
本発明のリークチェック方法は、測定対象チャンバの隣接チャンバをガス(アルゴンガス)により陽圧化し、その隣接チャンバで圧力が変動するかを見ることができる。また、測定対象のチャンバの隣接チャンバにガス(アルゴンガス)を流入することにより、連結部分であるゲートバルブGVからのリークを検出することができる。さらに、スケジュール機能を設け、検査開始後はソフトウエアにて自動で全チャンバの測定を実施する構成とすると好適である。
【0029】
また、図1に示す矢印方向に真空処理装置Sを構成する各チャンバを一周してリークチェックを行った後に、さらに、矢印方向と逆方向に向かって順次隣のチャンバのリークチェックを行うこととしてもよい。この場合、ゲートバルブGVの逆方向側にリークするガス(Gas)のチェックを行うことができる。
【符号の説明】
【0030】
S 真空処理装置(インライン式真空処理装置)
P,P1,P2,P3 処理チャンバ
C,C1,C2,C3,C4 コーナチャンバ
UL アンロードチャンバ
LC ロードロックチャンバ
PC コンピュータ
MFC マスフローコントローラ
PLC Rコントローラ
G 真空計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャンバがそれぞれゲートバルブを介して連接されてなる真空処理装置のリークチェック方法であって、
リークチェックが行われる被測定チャンバ内及び該被測定チャンバの一方向に連接された隣接チャンバ内を真空排気する初期排気ステップと、
前記初期排気ステップの後に、前記隣接チャンバ内に所定量のガスを導入するガス導入ステップと、
前記ガス導入ステップの終了から待機時間経過後に前記被測定チャンバ及び前記隣接チャンバの真空度をそれぞれ測定する真空度測定ステップと、
前記真空度測定ステップで測定された前記被測定チャンバの真空度を予め設定された基準値と比較してリークの有無を判定する判定ステップと、
前記判定ステップが終了した後に、前記被測定チャンバの他方向に連接されているチャンバを前記被測定チャンバに替えて被測定チャンバとして再設定するとともに、前記被測定チャンバを前記隣接チャンバに替えて隣接チャンバとして再設定する再設定ステップとをすることを特徴とするリークチェック方法。
【請求項2】
前記初期排気ステップと前記ガス導入ステップの間に行われ、前記隣接チャンバの真空度を測定する排気後真空度測定ステップと、
前記判定ステップと再設定ステップの間に行われ、前記判定ステップの結果を出力する出力ステップと、をさらに有し、
前記判定ステップでは、前記排気後真空度測定ステップ及び前記真空度測定ステップで測定された前記被測定チャンバ及び前記隣接チャンバの真空度に基づく計算値を予め設定された判定値と比較してリークの有無が判定されることを特徴とする請求項1に記載のリークチェック方法。
【請求項3】
前記真空処理装置を構成する全ての前記チャンバのリークの有無の判定が終了した後、全ての前記チャンバを真空排気する終了排気ステップをさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のリークチェック方法。
【請求項4】
前記真空処理装置は、チャンバが無端状に連結された部分を有するインライン真空処理装置であることを特徴とする請求項3に記載のリークチェック方法。
【請求項5】
前記判定ステップにおける前記計算値は、
前記真空度測定ステップで測定された前記被測定チャンバの真空度を、Aft_P6とし、
前記排気後真空度測定ステップで測定された前記隣接チャンバの真空度を、Pre_P7とし、
前記真空度測定ステップで測定された前記隣接チャンバの真空度を、Aft_P7とすると、
次式から算出されることを特徴とする請求項2に記載のリークチェック方法。
Aft_P6 / (Aft_P7 − Pre_P7)

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−149929(P2011−149929A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278802(P2010−278802)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】