説明

リーダライタおよびタイム読み出し方法

【課題】 計時機器から、競技タイム等を適切に読み出すことのできるリーダライタ等を提供する。
【解決手段】 リーダライタ10は、検証端末40と接続されると、USB14から電源が供給され、そして、無線タグ30と接続されると、電源端子CT1−CT5から無線タグ30に電源を供給する。リーダライタ10は、競技タイムの送信要求を受信すると、変換回路13にてUSB規格の送信要求(信号データ)をRS232C規格の送信要求に変換し、そして、シリアルIFドライバ12によりシリアルIF11−38を介して、無線タグ30に送信要求を供給する。これに応答して無線タグ30から競技タイムが送られると、リーダライタ10は、変換回路13にてRS232C規格の競技タイム等(通信データ)をUSB規格の競技タイム等に変換し、そして、検証端末40に競技タイムを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、計時機器から、競技タイム等を適切に読み出すことのできるリーダライタおよびタイム読み出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マラソン競技等において、競技者個々のゴールタイムを計測(計時)する試みがなされている。例えば、競技者のゼッケン等にバーコードを印刷しておき、ゴールした競技者のバーコードをリーダにて読み取った時刻に基づいて、競技者個々のゴールタイムを計測する計測システムも実用化されている。
それでも従来の計測システムでは、ゴール後に所定時間かけてバーコードの読み取りを行うため、そもそも実測よりも遅れたゴールタイムが計測されていた。特に、大勢の競技者が同時期にゴールした場合等では、バーコードの読み取り待ちが生じてしまい、実測よりもかなり遅れたゴールタイムが計測されてしまうという問題があった。
また、ゴールタイムだけでなく、各計時ポイント(中継地点等)における通過タイムを含めた競技タイムも計測したいという要望が高まっているが、従来の計測システムでは、これに対応できなかった。
【0003】
このような問題を解決するため、種々の計測システムが開発され、実用化に向けた運用試験等が試みられている。新たな計測システムは、より実測に近いゴールタイムを計測するために、また、各中継地点における通過タイムも計測可能とするために、非接触にて競技者個々の競技タイムを計測する形態が主流となっている。
例えば、競技者にタグ送信機を保持させ、このタグ送信機から送られる情報により、競技タイム等を計測する、というものである。
【0004】
より具体的には、方形ループコイル等から競技トラック上の計測エリア内にトリガ信号を送信するようにしておき、タグ送信機を保持する競技者がその計測エリア内を走行すると、このトリガ信号に応答してタグ送信機からID(識別番号等)が送信される。そして、ID受信ユニットがこのIDを受信することにより、各競技者の周回数や競技タイム等を計測する(例えば、特許文献1参照)。
この他にも、タグ送信機がUHF帯の微弱無線電波等にてIDを送出することにより、タグ送信機の通信距離の拡大を図る技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−141497号公報 (第2−4頁、第2図)
【特許文献2】特開2004−125765号公報 (第3−4頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような特許文献1,2の技術では、同時期に大勢の競技者が計測エリア内に到達すると、ID受信ユニット側が、送られるはずのIDを適切に受信できない場合があった。これは、計測エリア内にて、複数のタグ送信機がそれぞれにIDを送信し続けることにより、ID受信ユニット側の処理が追いつかない状況が生じたり、IDの送信時にコリジョンが発生してしまうためである。
なお、特許文献2に開示されている技術では、コリジョンの発生を抑えるべく、タグ送信機側がランダムな間隔にてIDを送信している。それでも現実には、計時エリア内で各タグ送信機がそれぞれにIDの送信を繰り返すうちに、コリジョンが発生してしまっていた。
このような場合、ID受信ユニットにて、開始時刻や終了時刻の特定が正しく行えず、不正確な競技タイムを計測してしまったり、IDの受信が殆ど行えずに計測すべき競技タイムをロストしてしまうことになる。
【0006】
また、ID受信ユニットにて計時を行う他、これとは別のタイマによっても計時を行う場合があり、このような場合には、ID受信ユニットにて計時が行えたとしても、その競技タイムについて、競技者等から異議や抗議が申し立てられる場合がある。このような場合、従来の特許文献1,2の技術では、計時した競技タイムについて、競技者等を納得させるに足りる十分な証拠(計時の根拠等)を提示することができなかった。
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、競技用の無線タグ等の計時機器から、競技タイム等を適切に読み出すことのできるリーダライタおよびタイム読み出し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るリーダライタは、
競技者に携帯されて使用され、競技中に計時した競技タイムを記憶している計時機器から情報を読み出すリーダライタであって、
前記計時機器に電源を供給する電源供給手段と、
前記電源供給手段が前記電源を供給することにより駆動する前記計時機器から、前記競技タイムを読み出す読み出し手段と、
前記読み出し手段が読み出した前記競技タイムを所定規格の信号データに変換し、外部機器に供給するデータ供給手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、電源供給手段は、例えば、所定のシリアルIF(インタフェース)を介して計時機器に電源を供給する。また、読み出し手段は、電源供給手段が電源を供給することにより駆動する計時機器から、競技タイムを読み出す。つまり、計時機器が競技中に計時し、不揮発性メモリ等に記憶した競技タイムを、計時機器から読み出す。そして、データ供給手段は、読み出し手段が読み出した競技タイムを、例えば、USB(Universal Serial Bus)規格の信号データに変換し、外部機器(パーソナルコンピュータ等)に供給する。
これにより、計時機器が電池切れの場合等であっても、計時機器が記憶した競技タイムを読み出すことができる。
【0010】
この結果、計時機器から、競技タイム等を適切に読み出すことができる。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係るリーダライタは、
競技者に携帯されて使用され、競技タイムを計時する計時機器から計時の基となる基準時刻を読み出すリーダライタであって、
前記計時機器に電源を供給する電源供給手段と、
計時している前記基準時刻を前記計時機器から読み出す読み出し手段と、
前記読み出し手段が読み出した前記基準時刻を所定規格の信号データに変換し、外部機器に供給するデータ供給手段と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、電源供給手段は、例えば、所定のシリアルIFを介して計時機器に電源を供給する。また、読み出し手段は、計時している基準時刻を計時機器から読み出す。つまり、計時機器が競技中に競技タイムを計時する基となった基準時刻(現在の時刻)を、計時機器から読み出す。そして、データ供給手段は、読み出し手段が読み出した基準時刻を、例えば、USB規格の信号データに変換し、外部機器に供給する。
これにより、計時機器が計時に使用した基準時刻を読み出すことができ、この基準時刻により競技タイムの正確さを示す根拠とすることができる。
【0013】
この結果、計時機器から、競技タイム等を適切に読み出すことができる。
【0014】
上記のリーダライタは、前記計時機器を競技中に駆動させるための電池の電圧値を測定する測定手段と、
前記測定手段が計測した電圧値に基づいて、前記計時機器の前記電池の残容量を表示する表示手段と、を更に備えてもよい。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るタイム読み出し方法は、
競技者に携帯されて使用され、競技中に計時した競技タイムを記憶している計時機器から情報を読み出す機器のタイム読み出し方法であって、
前記計時機器に電源を供給する電源供給ステップと、
前記電源供給ステップにて前記電源を供給することにより駆動する前記計時機器から、前記競技タイムを読み出す読み出しステップと、
前記読み出しステップにて読み出した前記競技タイムを所定規格の信号データに変換し、外部機器に供給するデータ供給ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、電源供給ステップは、例えば、所定のシリアルIFを介して計時機器に電源を供給する。また、読み出しステップは、電源供給ステップにて電源を供給することにより駆動する計時機器から、競技タイムを読み出す。つまり、計時機器が競技中に計時し、不揮発性メモリ等に記憶した競技タイムを、計時機器から読み出す。そして、データ供給ステップは、読み出しステップにて読み出した競技タイムを、例えば、USB規格の信号データに変換し、外部機器に供給する。
これにより、計時機器が電池切れの場合等であっても、計時機器が記憶した競技タイムを読み出すことができる。
【0017】
この結果、計時機器から、競技タイム等を適切に読み出すことができる。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の第4の観点に係るタイム読み出し方法は、
競技者に携帯されて使用され、競技中に計時した競技タイムを記憶している計時機器から情報を読み出す機器のタイム読み出し方法であって、
前記計時機器に電源を供給する電源供給ステップと、
計時している前記基準時刻を前記計時機器から読み出す読み出しステップと、
前記読み出しステップにて読み出した前記基準時刻を所定規格の信号データに変換し、外部機器に供給するデータ供給ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、電源供給ステップは、例えば、所定のシリアルIFを介して計時機器に電源を供給する。また、読み出しステップは、計時している基準時刻を計時機器から読み出す。つまり、計時機器が競技中に競技タイムを計時する基となった基準時刻(現在の時刻)を、計時機器から読み出す。そして、データ供給ステップは、読み出しステップにて読み出した基準時刻を、例えば、USB)規格の信号データに変換し、外部機器に供給する。
これにより、計時機器が計時に使用した基準時刻を読み出すことができ、この基準時刻により競技タイムの正確さを示す根拠とするとができる。
【0020】
この結果、計時機器から、競技タイム等を適切に読み出すことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、計時機器から、競技タイム等を適切に読み出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施の形態にかかるリーダライタを含む検証システムについて、以下図面を参照して説明する。
【0023】
(実施形態1)
図1は、この発明の実施の形態に適用される検証システムの構成の一例を示す模式図である。この検証システムは、例えば、マラソン競技の競技者に携帯させ、各計時地点にて競技タイムの計時を行う無線タグ30について、競技終了後に競技タイム等を検証する場合等に適用される。
図示するように、この検証システムは、リーダライタ10と、アンテナチェッカ20と、計時機器としての無線タグ30と、検証端末40とから構成される。
【0024】
まず、リーダライタ10について説明する。このリーダライタ10は、例えば、競技終了後の無線タグ30から競技タイム(後述する記憶部36に記憶された各計時地点にて計時された複数の競技タイム)等を読み出す。
具体的にリーダライタ10は、シリアルIF11と、シリアルIFドライバ12と、変換回路13と、USB14と、電源端子CT1と、電池端子CT2と、電圧チェッカ15と、LED16と、を含んで構成される。
【0025】
シリアルIF(インタフェース)11は、例えば、RS232C規格のインタフェース等からなる。
【0026】
シリアルIFドライバ12は、シリアルIF11を制御するドライバ回路等からなり、シリアルIF11を介して、無線タグ30と接続された際に、無線タグ30との間で、シリアルデータの送受信を行う。
例えば、シリアルIFドライバ12は、無線タグ30に対して、競技タイムの送信を要求し、無線タグ30から送られる競技タイムを受信する。また、シリアルIFドライバ12は、無線タグ30に対して、現在計時中の時刻(後述する計時部35が計時している現在時刻等)の送信を要求し、無線タグ30から送られる現在時刻を順次受信する。
なお、シリアルIFドライバ12をリーダライタ10側に持たせることにより、無線タグ30の構成を小さくすることができる。
【0027】
変換回路13は、例えば、RS232C−USB(Universal Serial Bus)の変換回路等からなり、シリアルIFドライバ12から供給されるRS232C規格の信号データを、USB規格の信号データに変換し、また、USB14から供給されるUSB規格の信号データを、RS232C規格の信号データに変換する。
【0028】
USB14は、USB規格のインタフェース等からなり、検証端末40と接続された際に、検証端末40との間でデータの送受信を行う。
例えば、検証端末40から競技タイムの送信要求が送られると、USB14は、取得した送信要求をシリアルIFドライバ12(変換回路13を介して)に供給する。そして、その応答としての競技タイムがシリアルIFドライバ12(変換回路13を介して)から送られると、USB14は、取得した競技タイムを検証端末40に送信する。
なお、USB14は、バスパワーにより、検証端末40から電源供給を受けることができ、これによりリーダライタ10全体を駆動させる電源としての役割を果たす。更に、USB14は、電源端子CT1とも接続されており、無線タグ30への電源供給も可能となっている。
【0029】
電源端子CT1は、無線タグ30と接続された際に、無線タグ30に対して電源供給を行う。つまり、USB14から得たバスパワーによる電圧電流を、無線タグ30に供給可能となっている。
【0030】
電池端子CT2は、無線タグ30と接続された際に、無線タグ30の電池(後述する電池39)から供給される電圧電流を取得する。
【0031】
電圧チェッカ15は、電池端子CT2が取得した電池39の電圧値を計測する。そして、計測した電圧値に応じて、LED16に発光信号を供給する。
例えば、電圧チェッカ15は、電池39の電圧値を、駆動が十分に可能とされる第1の電圧値(満電圧)、駆動には支障がないが、電圧低下を示す第2の電圧値(中電圧)、及び、駆動限界を示す第3の電圧値(弱電圧)と、それぞれ比較し、電池39の残量を計測する。そして、比較結果に基づいて、満電圧以上、満電圧未満−中電圧以上、中電圧未満−弱電圧以上、及び、弱電圧未満の何れかを示す発光信号をLED16に供給する。
【0032】
LED(Light Emitting Diode)16は、電圧チェッカ15から供給される発光信号に応じて、適宜発光する。
例えば、LED16は、3つの緑色LEDと、1つの赤色LEDとからなり、電圧チェッカ15から供給される発光信号が、満電圧以上である場合に、3つの緑色LEDを全て点灯させ、また、満電圧未満−中電圧以上である場合に、2つの緑色LEDを点灯させ、更に、中電圧未満−弱電圧以上である場合に、1つの緑色LEDだけを点灯させる。つまり、緑色LEDの発光数によって、電池39の残り電圧を簡易に表示する。
一方、発光信号が、弱電圧未満である場合に1つの赤色LEDを点灯させ、電池39に駆動可能な容量が残っていないことを警告する。
【0033】
次に、アンテナチェッカ20について説明する。このアンテナチェッカ20は、無線タグ30のアンテナ(後述するLFアンテナ31)の感度等をチェックする。
具体的にアンテナチェッカ20は、磁界端子CT3と、磁界チェッカ21と、LED22と、電源23と、を含んで構成される。なお、アンテナチェッカ20によるLFアンテナ31のチェックが行われる際には、無線タグ30は、例えば、規定の電磁界強度の電磁場を生成するループコイル上に配置されるものとする。
【0034】
磁界端子CT3は、無線タグ30と接続された際に、無線タグ30のLFアンテナ31が検出した電磁界強度を示す電圧値(後述する増幅回路32により適宜増幅された検出信号)等を取得する。
【0035】
磁界チェッカ21は、磁界端子CT3が取得した電磁界強度を示す電圧値を計測する。そして、計測した電圧値に応じて、LED22に発光信号を供給する。
例えば、磁界チェッカ21は、LFアンテナ31が検出した電磁界強度を示す電圧値を、規定値(発生させている規定の電磁界強度に対応して、検出感度が十分とされる電圧値)と比較し、LFアンテナ31の感度を計測する。そして、規定値以上、及び、規定値未満の何れかを示す発光信号をLED22に供給する。
【0036】
LED22は、磁界チェッカ21から供給される発光信号に応じて、適宜発光する。
例えば、LED22は、1つの緑色LEDと、1つの赤色LEDとからなり、磁界チェッカ21から供給される発光信号が、規定値以上である場合に、緑色LEDを点灯させ、一方、規定値未満である場合に、赤色LEDを点灯させる。つまり、発光させるLEDの色から、LFアンテナ31の感度を簡易に表示する。
【0037】
電源23は、例えば、電池等からなり、アンテナチェッカ20全体に、電源供給を行う。
【0038】
続いて、無線タグ30について説明する。この無線タグ30は、図2に示すように、競技者RNに携帯され、競技者RNと共に、各計時地点(中継地点やゴール地点)に移動する。そして、各計時地点の計時ポイントとなる計時ラインL上にて、例えば、電磁場の変極点を検出し、その時点で計時している時刻を競技タイムとして順次記憶する。
また、競技終了後に、図1に示す上述のリーダライタ10と接続され、記憶した競技タイム等を検証端末40に供給する。
具体的に無線タグ30は、LFアンテナ31と、増幅回路32と、磁界端子CT4と、検出回路33と、制御部34と、計時部35と、記憶部36と、通信回路37と、シリアルIF38と、電源端子CT5と、電池39と、電池端子CT6と、を含んで構成される。
【0039】
LF(Low Frequency)アンテナ31は、各計時地点に配置されたループコイルから発生される電磁場を検出する。例えば、図2に示すような磁場発生装置JHにより、8の字形状のループコイルLC上に生成された電磁場を検出する。
そして、LFアンテナ31は、検出した電磁界強度を示す検出信号を増幅回路32に供給する。
【0040】
増幅回路32は、LFアンテナ31から供給される検出信号を適宜増幅して、検出回路33に供給する。また、増幅回路32は、磁界端子CT4にも増幅した検出信号を供給する。
【0041】
磁界端子CT4は、アンテナチェッカ20と接続された際に、無線タグ30のLFアンテナ31が検出した電磁界強度を示す電圧値(増幅回路32により適宜増幅された検出信号)を、アンテナチェッカ20に供給する。
【0042】
検出回路33は、増幅回路32から供給される検出信号に従って、計時ポイントを検出する。
例えば、各計時地点において、図2に示すような8の字形状のループコイルLCが計時ラインL上に配置され、磁場発生装置JHから供給される交流電流により、この計時ラインL上が変極点となる電磁界強度分布の電磁場を生成しているものとする。この場合、検出回路33は、競技者RNがループコイルLC上を走行すると、生成された電磁場の変極点を検出し、競技者RNが計時ラインL上に到達したことを判別する。
【0043】
制御部34は、無線タグ30全体を制御する。例えば、制御部34は、後述する通信回路37が受信した現在時刻を、計時部35に適宜設定(補正)する。また、制御部34は、検出回路33が計時ポイントを検出したタイミングで、計時部35が計時していた現在時刻を競技タイムとして特定する。そして、特定した競技タイムを記憶部36に順次記憶させる。
また、制御部34は、後述するシリアルIF38を介して、リーダライタ10から競技タイムの送信要求を受信した際に、記憶部36に記憶されている競技タイム(各計時地点にて計時された複数の競技タイム)を読み出して、シリアルIF38を介してリーダライタ10に送信する。
同様に、シリアルIF38を介して、リーダライタ10から現在時刻の送信要求を受信した際に、制御部34は、計時部35にて計時している現在時刻を順次取得し、シリアルIF38を介してリーダライタ10に順次送信する。
【0044】
計時部35は、制御部34により適宜補正(設定)され、通信回路37が受信した現在時刻に同期した現在時刻を計時する。
なお、計時部35は、高安定水晶発振器を備えており、現在時刻の計時を安定して維持することが可能となっている。
【0045】
記憶部36は、例えば、不揮発性メモリからなり、制御部34が特定した競技タイムを順次記憶する。
この記憶部36には、少なくとも全計時地点分の記憶エリアがそれぞれ設けられており、各計時地点にて計時された競技タイムがそれぞれの記憶エリアに格納可能となっている。例えば、各記憶エリアがリングカウンタによって環状に管理され、競技タイムを格納する度に、リングカウンタがカウントアップされ、順番に競技タイムが格納される。
なお、記憶部36は、例えば、別エリアに、無線タグ30毎(競技者毎)に異なる固有のID情報(タグID)等を予め記憶している。
【0046】
通信回路37は、所定の通信アンテナを介して、例えば、図2に示すような計時地点に配置される時刻送信機JSから送信される現在時刻を受信する。
また、通信回路37は、制御部34が特定した競技タイムを、例えば、図2に示すような計時地点に配置されるタイム受信機TJに向けて送信する。
【0047】
電源端子CT5は、上述したリーダライタ10と接続された際に、リーダライタ10のUSB14から供給される電圧電流を取得し、無線タグ30全体に供給する。
つまり、リーダライタ10と接続された際に、電源端子CT5は、後述する電池39の代わりに電源として機能し、無線タグ30を駆動させる。このため、電池39に駆動に十分な残量がない場合でも、リーダライタ10との接続により、無線タグ30を駆動させることができる。
【0048】
電池39は、競技中等(リーダライタ10と接続されていない状態)において、無線タグ30全体に電圧電流を供給して、無線タグ30を駆動させる。
また、電池39は、電池端子CT6にも、電圧電流を供給する。
【0049】
電池端子CT6は、リーダライタ10と接続された際に、電池39の電圧電流をリーダライタ10(電圧チェッカ15)に供給する。
【0050】
なお、このような構成の無線タグ30は、競技中における電池39の電力消耗をできるだけ少なくするために、計時に必要な計時部35等だけを駆動させる省電力モードを有している。つまり、現在時刻だけを計時していればよい状況で、省電力モードに移行する。
具体的に、無線タグ30は、例えば、計時地点にて計時した競技タイムを、記憶部36に記憶し、そして、通信回路37からタイム受信機TJに送信した後に、自動的に省電力モードに移行する。
なお、省電力モードから通常モードへの復帰は、例えば、時刻送信機JSから現在時刻を受信するために、特別なトリガ信号を受信したタイミングでなされる。
つまり、無線タグ30は、図2に示す時刻送信機JSから現在時刻を受信するタイミングで、省電力モードから通常モードへ復帰し、そして、競技タイムをタイム受信機TJに送信した後に、通常モードから省電力モードに移行する。
これにより、競技者RNが計時地点を通過してから、次の計時地点に至るまでの区間(期間)において、無線タグ30が省電力モードで動作していることから、競技中の省電力が有効に図れることになる。
【0051】
また、ゴール地点を通過した後も、無線タグ30は、同様に省電力モードに移行する。それでも、無制限に計時を続ける必要がないため、無線タグ30は、省電力モードに移行してから、1時間が経過すると、自動的に電源オフに切り替わる。つまり、ゴール後1時間が経過した後には、計時部35が行っていた現在時刻の計時も止まるようになっている。
なお、この1時間に渡って計時部35が計時を維持する理由は、競技者RN等から、競技タイムについて、異議や抗議が申し立てられた場合に対応できるようにするためである。
つまり、省電力モードにて、計時部35による現在時刻の計時が維持されている間であれば、無線タグ30をリーダライタ10と接続し、そして、リーダライタ10を後述する検証端末40に接続することで、無線タグ30が計時している現在時刻を検証端末40のモニタ等に表示できる。これにより、競技タイムの基となる現在時刻の正確さ等を、競技者RN等に提示することができる。また、その際、併せて、各計時地点での競技タイムも提示することができる。
【0052】
最後に、検証端末40について説明する。この検証端末40は、例えば、USB端子を備えたノートパソコン(パーソナルコンピュータ)等からなり、リーダライタ10を介して、接続された無線タグ30から競技タイム等を読み出し、自己のモニタに表示させる。
なお、検証端末40は、USB端子を介して、バスパワーにより、リーダライタ10等に、駆動のための電圧電流を供給する。
【0053】
以下、上述した構成の検証システムの動作について、図面を参照して説明する。
まず、図3を参照して、無線タグ30が競技中に実行するタイム計時処理について説明する。
なお、競技のスタート前に、アンテナチェッカ20により、無線タグ30(LFアンテナ31)のアンテナ感度が適宜チェックされているものとする。また、無線タグ30(電池39)が、駆動可能かどうかも、リーダライタ20の電圧チェッカ15にて適宜確認されているものとする。
また、図3に示すタイム計時処理は、一例として、競技がスタートした後に、無線タグ30が省電力モードに移行している状態で開始されるものとする。
【0054】
まず、無線タグ30は、特別なトリガ信号を受信したか否かを判別する(ステップS11)。
つまり、省電力モードの無線タグ30は、図2に示すように、競技者RNと共に計時地点に進み、時刻送信機JSから現在時刻を受信するために、特別なトリガ信号を受信したか否かを判別する。
無線タグ30は、特別なトリガ信号を受信していないと判別すると、後述するステップ18に処理を進める。
【0055】
一方、特別なトリガ信号を受信したと判別した場合に、無線タグ30は、省電力モードから通常モードに復帰する(ステップS12)。
【0056】
そして、無線タグ30は、送信される時刻を受信し、計時している現在時刻を補正する(ステップS13)。
つまり、通常モードに復帰した無線タグ30は、図2に示すように、時刻送信機JSから送られた現在時刻を受信すると、計時部35にて計時している時刻を適宜補正する。
【0057】
続いて無線タグ30は、電磁場の変極点の検出を待機する(ステップS14)。
つまり、図2に示すようなループコイルLC上に競技者RNが移動し、ループコイルLC上に生成された電磁場の変極点が検出されるまで待機する。なお、計時ラインL上にて変極点となる電磁界強度分布の電磁場が、磁場発生装置JH及びループコイルLCにより生成されているものとする。
【0058】
無線タグ30は、電磁場の変極点を検出すると、競技タイムを計時する(ステップS15)。
つまり、無線タグ30は、電磁場の変極点(計時ラインL)を検出したタイミングで、計時部35が計時していた現在時刻を競技タイムとして特定する。
【0059】
無線タグは、競技タイムを記憶すると共に、この競技タイム等を送信する(ステップS16)。
つまり、無線タグ30は、計時された競技タイムを、カウンタに応じて記憶部36中の記憶エリアの1つに格納する。また、無線タグ30は、計時された競技タイムを、図2に示すようなタイム受信機TJに送信する。
【0060】
そして、無線タグ30は、通常モードから省電力モードへ移行する(ステップS17)。
つまり、当該計時地点における競技タイムの計時(記憶及び送信)を終えたので、無線タグ30は、競技者RNが次の計時地点に到達するまで省電力モードに移行し、電池39の消耗をできるだけ少なくする。
【0061】
無線タグ30は、省電力モードに移行してから、1時間が経過したか否かを判別する(ステップS18)。
無線タグ30は、1時間が経過していないと判別すると、ステップS11に処理を戻し、上述のステップS11〜S18の処理を繰り返し実行する。
【0062】
一方、省電力モードに移行してから、1時間が経過したと判別した場合に、無線タグ30は、電源をオフにする(ステップS19)。
つまり、競技者RNがゴール地点を通過して、競技を終了したと考えられ、また、競技タイムについての異議や抗議がなされる猶予時間が経過したと判別し、無線タグ30は、省電力モードでの現在時刻の計時を止め、電源をオフにする。
【0063】
このように、無線タグ30が行うタイム計時処理により、省電力を適切に図りながら、各計時地点での競技者RNの競技タイムを計時することができる。
【0064】
次に、図4を参照して、リーダライタ10が競技終了後に実行するタイム取得処理について説明する。
なお、このタイム取得処理は、リーダライタ10と検証端末40とが接続され、また、リーダライタ10と無線タグ30とが接続された状態で開始される。
ところで、リーダライタ10と検証端末40とが接続されると、USB14からリーダライタ10に電源が供給される。また、リーダライタ10と無線タグ30とが接続されると、電源端子CT1−CT5から無線タグ30に電源が供給される。
【0065】
まず、リーダライタ10は、検証端末40から送られる送信要求を受信するまで待機する(ステップS21)。
つまり、リーダライタ10は、無線タグ30に対する競技タイムの送信要求や現在計時中の時刻の送信要求が、USB14を介して検証端末40から送られるまで待機する。
【0066】
リーダライタ10は、USB14から送られる送信要求を受信すると、受信した送信要求を変換して無線タグ30に供給する(ステップS22)。
つまり、リーダライタ10は、変換回路13にてUSB規格の送信要求(信号データ)をRS232C規格の送信要求に変換し、そして、シリアルIFドライバ12によりシリアルIF11−シリアルIF38を介して、無線タグ30(制御部34)に送信要求を供給する。
【0067】
リーダライタ10は、無線タグ30から送られる競技タイム等を受信するまで待機する(ステップS23)。
つまり、リーダライタ10は、供給した送信要求に応答して、無線タグ30から送られる競技タイム等の受信を待機する。
なお、無線タグ30側では、競技タイムを要求する送信要求を受け取った場合に、制御部34は、記憶部36に記憶されている競技タイム(各計時地点にて計時された複数の競技タイム)を読み出す。また、現在計時している時刻を要求する送信要求を受け取った場合に、制御部34は、計時部35にて計時されている現在時刻を順次取得する。そして、競技タイム等をシリアルIF38−シリアルIF11を介してリーダライタに供給する。
【0068】
リーダライタ10は、無線タグ30から送られる競技タイム等を受信すると、受信した競技タイム等を変換して検証端末40に送信する(ステップS24)。
つまり、リーダライタ10は、変換回路13にてRS232C規格の競技タイム等(通信データ)をUSB規格の競技タイム等に変換し、そして、USB14により検証端末40に競技タイム等を送信する。
【0069】
このように、リーダライタ10が行うタイム取得処理により、無線タグ30の電池39に残量が残っていない場合でも、無線タグ30を駆動させ、記憶部36に記憶された競技タイム(各計時地点にて計時された複数の競技タイム)を取得することができる。
また、無線タグ30(計時部35)が省電力モードにて現在時刻を計時中であれば、競技タイムの基となった計時部35が計時している現在時刻を取得することができ、この現在時刻により競技タイムの正確さを示す根拠とすることができる。
【0070】
この結果、計時機器(無線タグ30)から、競技タイム等を適切に読み出すことができる。
【0071】
上記の実施の形態では、無線タグ30が競技の基準時刻として現在時刻を計時する構成について説明したが、無線タグ30が競技の基準時刻としてランニングタイムを計時する構成であってもよい。例えば、スタート地点において、スタート信号に応答して無線タグ30が計時を開始し、計時地点において、無線タグ30が電磁場の変極点を検出した時の計時時刻を競技タイムとして特定(記憶)するようにしてもよい。
【0072】
上記の実施の形態では、マラソン競技にて競技タイムを計時する無線タグ30を一例として説明したが、計時対象の競技は、これに限られず任意である。
例えば、駅伝、競歩、身障者車椅子ロードレース、自転車ロードレース、トライアスロン、及び、ランニングやオリエンテーション等の山岳競技等にも適宜適用可能である。
【0073】
以上説明したように、計時機器(無線タグ30)から、競技タイムを適切に読み出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態に係る検証システムの構成の一例を示す模式図である。
【図2】無線タグの計時地点での様子を説明する模式図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るタイム計時処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係るタイム取得処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
10 リーダライタ
20 アンテナチェッカ
30 無線タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
競技者に携帯されて使用され、競技中に計時した競技タイムを記憶している計時機器から情報を読み出すリーダライタであって、
前記計時機器に電源を供給する電源供給手段と、
前記電源供給手段が前記電源を供給することにより駆動する前記計時機器から、前記競技タイムを読み出す読み出し手段と、
前記読み出し手段が読み出した前記競技タイムを所定規格の信号データに変換し、外部機器に供給するデータ供給手段と、
を備えることを特徴とするリーダライタ。
【請求項2】
競技者に携帯されて使用され、競技タイムを計時する計時機器から計時の基となる基準時刻を読み出すリーダライタであって、
前記計時機器に電源を供給する電源供給手段と、
計時している前記基準時刻を前記計時機器から読み出す読み出し手段と、
前記読み出し手段が読み出した前記基準時刻を所定規格の信号データに変換し、外部機器に供給するデータ供給手段と、
を備えることを特徴とするリーダライタ。
【請求項3】
前記計時機器を競技中に駆動させるための電池の電圧値を測定する測定手段と、
前記測定手段が計測した電圧値に基づいて、前記計時機器の前記電池の残容量を表示する表示手段と、を更に備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリーダライタ。
【請求項4】
競技者に携帯されて使用され、競技中に計時した競技タイムを記憶している計時機器から情報を読み出す機器のタイム読み出し方法であって、
前記計時機器に電源を供給する電源供給ステップと、
前記電源供給ステップにて前記電源を供給することにより駆動する前記計時機器から、前記競技タイムを読み出す読み出しステップと、
前記読み出しステップにて読み出した前記競技タイムを所定規格の信号データに変換し、外部機器に供給するデータ供給ステップと、
を備えることを特徴とするタイム読み出し方法。
【請求項5】
競技者に携帯されて使用され、競技中に計時した競技タイムを記憶している計時機器から情報を読み出す機器のタイム読み出し方法であって、
前記計時機器に電源を供給する電源供給ステップと、
計時している前記基準時刻を前記計時機器から読み出す読み出しステップと、
前記読み出しステップにて読み出した前記基準時刻を所定規格の信号データに変換し、外部機器に供給するデータ供給ステップと、
を備えることを特徴とするタイム読み出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−139605(P2006−139605A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329553(P2004−329553)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】