説明

リーダライタ

【課題】 通信異常原因の調査を容易とし、自身の正常動作を図り得ると共に正常なシステム開発などにも寄与できるようにする。
【解決手段】 ICカード2と無線通信を行うリーダライタ1は、稼動時の通信ファクタを測定する通信ファクタ測定部9及び10と、制御回路3と、メモリ7とを備え、制御回路3は、これらの測定部9、10により測定、記録された通信ファクタの測定データと、予め定められた基準値とを比較して測定データが異常か否かを判断する機能と、ICカード2との通信が成功したか否かを判断する機能とを備え、前記メモリ7は、記録データの外部取り出しが可能で、異常が判断されたとき又は通信が成功してないことが判断されたときにはこのメモリ7に前記測定データを保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICカードなどの非接触情報担体と無線通信するものであって異常時などの原因を特定することが可能なリーダライタに関する。
【背景技術】
【0002】
リーダライタは、非接触情報担体である非接触ICカード(非接触ICタグも含む)と、電波や電磁界を介して無線通信を行い、非接触ICカードに内蔵されたメモリに記憶された情報を読み出したり、新たな情報を書き込んだりすることができる。リーダライタにおいて、非接触ICカードとの通信の状態判断は、通常、「通信成功」、「カードからの応答なし」、「カード通信異常」の三つであった。カード情報が正しく読取れなかった場合に読取失敗を上位機器に知らせるものとして特許文献1や特許文献2に示すものがある。
【特許文献1】特開平11−242726号公報
【特許文献2】特開昭63−211083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上述した特許文献1のものでは、磁気カードの内容を読取るときにその読取データが規定フォーマットに合致しないときには、合致しない旨を報知する技術が記載され、特許文献2のものでは書き込みデータが正常か否かを判断して報知する技術が記載されており、従って、異常の有無は認識することが可能であるが、異常の詳細な原因を検知することができないものであった。特に、リーダライタを用いた非接触ICカード認証システムなどを最初に構築する場合には、通信に支障があったときにオシロスコープやモニタを用いてその支障原因の調査を行なうが、これは非常に困難であった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、通信異常原因の調査が容易となり、自身の正常動作を図り得ると共に正常なシステム開発などにも寄与できるリーダライタを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によれば、稼動時に測定記録手段により通信ファクタを測定、記録し、異常判断手段により、この通信ファクタの測定データと予め定められた基準値とを比較して測定データが異常か否かを判断する。そして、通信成功判断手段は、非接触情報担体との通信が成功したか否かを判断する。前記異常判断手段により異常が判断されたとき又は前記通信成功判断手段により通信が成功してないことが判断されたときには保存手段により前記測定記録手段の測定データを保存する。従って、ユーザーが保存手段に保存された通信ファクタの測定データを外部に取り出すことにより、異常時又は通信失敗時の原因を調査することが容易となり、自身の正常動作を図り得ると共に正常なシステム開発などにも寄与できる。
【0006】
請求項2の発明によれば、異常判断手段により異常が判断されたとき又は通信成功判断手段により通信が成功してないことが判断されたときには、測定データ通信手段により、測定記録手段の測定データを上位機器に通信するから、ユーザーは上位機器により異常時又は通信失敗時の原因を調査することが容易となり、リーダライタの正常動作を図り得ると共に正常なシステム開発などにも寄与できる。
【0007】
この場合請求項3のように、測定記録手段が稼動時において非接触情報担体との通信時及び非通信時にかかわらず通信ファクタを測定、記録するものであってもよく、このようにすると、通信時のみならず非通信時での異常の原因も容易に調査することが可能となる。
また請求項4のように、基準値は、非通信時と通信時とで異なるようにしても良い。つまり、通信開始前である非通信時には、自機の通信ファクタの基準値は、リーダライタ提供者により設定された基準値(実使用前)とすると、通信前での異常(設置環境などによる異常)が判断し易い。また、通信時には、通信前の通信ファクタの測定データを基準値とすると、通信異常などが判断し易い。従って、基準値は、非通信時と通信時とで異なるようにすると、異常判断を良好に行い得るようになる。
【0008】
また、通信ファクタは、リーダライタが非接触情報担体と通信する為の送受信アンテナコイルのインピーダンスであっても良いし(請求項5)、送受信アンテナコイルが発生する電磁界強度又は周波数であっても良い(請求項6)。あるいは、非接触情報担体からの受信信号を一定時間間隔で所定時間にわたってサンプリングした値でも良い(請求項7)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。まず、図1には、リーダライタ1と非接触情報担体たる非接触ICカード(以下単にICカードという)2との構成を概略的に示している。リーダライタ1は、制御回路3と、変調回路4と、ICカードと通信する為の送受信アンテナコイルに相当するアンテナ5と、復調回路6と、保存手段たるメモリ7、上位通信部8と、測定記録手段に相当する第1の通信ファクタ測定部9と、これも測定記録手段に相当する第2の通信ファクタ測定部10とを備えて構成されている。
【0010】
制御回路3はリーダライタ1全般の動作を制御するもので、CPUを有してなり、外部上位機器例えばコンピュータに接続されている。変調回路4は、制御回路3からのデータを搬送波に乗せて変調すると共に、この変調信号(データ)や電力供給用信号を前記アンテナ5から送信する。復調回路6はICカード2からの返送データ(受信信号)を増幅(図2のオペアンブ6aで増幅)し、これを検波し復調(図2のデータ復調処理部6b)する。上記メモリ7は、制御用ファームウエアの記憶と測定データの記録、保存を司るもので、例えば不揮発性メモリから構成されている。また、このメモリ7には、リーダライタ提供者(メーカー)の方で出荷前に初期設定された各通信ファクタ(インピーダンス、受信データなど)の初期基準値Kが記録されている。このメモリ7に保存された測定データは上位機器からのコマンドにより上位機器へ読み出し(取り出し)可能である。
【0011】
上記第1の通信ファクタ測定部9はアンテナ5近傍に設けられて電磁界強度や周波数(中心周波数の規定値は例えば13.56MHz)や、アンテナ5のインピーダンスなどの通信ファクタを測定する。また、上記第2の通信ファクタ測定部10は、図2に示すように、前記復調回路6のオペアンプ6a出力側に設けられたA/Dコンバータ10aとデータサンプリング部10bとを有して構成されており、これは、例えば、図4(a)に示すように、通信ファクタこの場合ICカード2からの受信信号を一定時間間隔(受信波形の再現が可能な時間タイミング)で所定時間にわたってサンプリングして取得するものであり、取得したデータd(n)、d(n+1)、・・d(n+α)を制御回路3に供給して、該制御回路3がメモリ7へ保存する。このデータd(n)、d(n+1)、・・d(n+α)は、ユーザーにより読み出されて、波形再現装置などにより元の波形に再現処理される。この再現波形は、図4(b)のようになる。この場合、同図(b)のa部分によりノイズが異常原因として認識できる。
【0012】
また、ICカード2は、リーダライタ1からの電力用搬送波によりデータの授受をするアンテナ11と、搬送波データを検波して復調する復調回路12と、前記アンテナ11にて受けた電力用信号から直流電源を生成する電源回路13と、制御用ファームウエアとデータの記憶を司るメモリ14と、ICカード2の全体の動作を制御する制御回路15と、搬送波を制御回路15からの情報で変調してアンテナ11から送信する変調回路16とを有して構成されている。
【0013】
さて、上述したリーダライタ1の制御回路3は、異常判断手段、通信成功判断手段として機能するものであり、以下、この制御回路3の制御内容について図3を参照して説明する。
図1を参照してリーダライタ1及びICカード2の動作について説明する。リーダライタ1は、図示しない電源スイッチが入れられると、稼動し、まず、ステップS1で出荷前に初期設定された各通信ファクタ(電磁界強度や周波数、アンテナコイルのインピーダンスなど)の基準値Kをメモリ7から読み出す。ステップS2で、第1の通信ファクタ測定部9及び第2の通信ファクタ測定部10によりそれぞれ通信ファクタ(第1の通信ファクタ測定部9では電磁界強度や周波数さらにはインピーダンス、第2の通信ファクタ測定部10では受信信号のサンプリングデータ)を測定し、それらの各通信ファクタの測定データ(電磁界強度や周波数さらにはインピーダンス)を起動基準値Aとして一時記憶する。
【0014】
次にステップS3で、各通信ファクタの初期基準値Kと各測定データとを比較し、ステップS4で対応する基準値Kから外れた測定データがあると、つまり異常と判断されたとき(「YES」)には、ステップS5で上述の全部の測定データをメモリ7に保存して、ステップS6に移行する。各測定データが対応する基準値Kから外れていないときには正常であると判断してステップS6に移行する。
【0015】
このステップS6では、ICカード2と通信する。すなわち、メモリ7に記憶されたプログラムに従い動作を開始する。制御回路3はICカード2に供給する電力供給用信号と、ポーリング信号をアンテナ5から送信する。この信号は電磁波(例えば中心搬送周波数13.56MHz)として送信される。次にICカード2がリーダライタ1に近接すると、アンテナ11が電力供給用信号を受信し、リーダライタ1からのコマンドを正常に受信した場合、内部で処理を実施し、レスポンスを返送する。
【0016】
このレスポンスをリーダライタ1がアンテナ5で受信し、復調回路6にて、増幅し、これを検波し復調し、上位機器に転送する。そして、上位機器によりICカード2が規格に合致したカードであると認識する。それにより、以後上位機器のコマンドに従ってリーダライタ1とICカード2との間で通信が行われる。この場合、リーダライタ1は上位通信部8を介して上位機器と通信する。
【0017】
そしてリーダライタ1においては、ステップS7で、通信時における各通信ファクタを測定し、記録する。そして、ステップS8で、通信が成功したか否かが判断され、失敗であるときには(「NO」)、ステップS9で、ステップS7の全部の測定データをメモリ7に保存する。
上述のステップS8で通信成功が判断されると、ステップS10で、ステップS7の各測定データと、これに対応する基準値Aについて予め所定範囲(起動基準値Aより大きめ)に定められた許容値とを比較し、この測定データが許容値から外れたことをもって測定データの余裕度が小であると判断する。ステップS11で、余裕度小であることが判断されるとステップS9で、ステップS7の測定データをメモリ7に保存する。
【0018】
このような本実施例によれば、通信ファクタを測定し、ステップS4で異常が判断されたとき、又はステップS8で通信が成功してないことが判断されたときには、各通信ファクタの測定データをメモリ7に保存するから、ユーザーが異常に気づいて、あるいは、任意に、上記メモリ7に保存された通信ファクタの測定データを、例えば上位機器の操作に基づいて読み出す(取り出す)ことにより、異常時又は通信失敗時の原因を調査することが容易となり、自身の正常動作を図り得ると共に正常なシステム開発などにも寄与できる。
【0019】
しかも、ステップS2、ステップS7から判るように、ICカード2との通信時及び非通信時にかかわらず通信ファクタを測定、記録するようにしたから、通信時のみならず非通信時での異常の原因も容易に調査することが可能となる。
また、ICカード2からの受信データを、受信波形の再現が可能な時間タイミングで取得するようにしたから、この場合には、受信波形を再現することが可能となり、異常原因の調査に有効となる。
【0020】
さらにまた、通信成功であっても、基準値に対して所定範囲に定められた許容値と測定データとを比較し、測定データが許容値を外れたことをもって余裕度小と判定するようにし、余裕度小と判定されたときには、測定データをメモリ7に保存するようにしたから、通信成功ではあるが失敗も起こり得るような状況での測定データを知ることができて、通信ファクタを設定変更するなどの対応が可能となる。上記許容値はユーザーによって設定するようにしても良く、このようにするとユーザー側で使用状況に合った余裕度を得ることができる。
【0021】
また、本実施例では、基準値K、Aを、非通信時と通信時とで異ならせているから、非通信時及び通信時での異常判断を良好に行い得るようになる。
なお、上記メモリ7は、リーダライタ1から取り出し可能なメモリとしても良い。さらに上記実施例では、異常が判断されたとき又は通信が成功してないことが判断されたときには、メモリ7に測定データを保存するようにしたが、メモリ7に保存せずに、測定データ通信手段としての上位通信部8により、その都度、通信ファクタの測定データを、レスポンスに付加して上位機器に通信するようにしても良い。このようにすると、ユーザーは上位機器により異常時又は通信失敗時の原因を調査することが容易となり、リーダライタ1自身の正常動作を図り得ると共に正常なシステム開発などにも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例を示すリーダライタ及びICカードのブロック図
【図2】第2の通信ファクタ測定部の構成を示すブロック図
【図3】リーダライタの制御回路の制御内容を示すフローチャート
【図4】(a)ICカードからの受信波形とデータサンプリングタイミングの一例を示す図、(b)とり出したデータを元に作成した波形を示す図
【符号の説明】
【0023】
図面中、1はリーダライタ、2はICカード(非接触情報担体)、3は制御回路(異常判断手段、通信成功判断手段)、7はメモリ(保存手段)、8は上位通信部、9は第1の通信ファクタ測定部(測定記録手段)、10は第2の通信ファクタ測定部(測定記録手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触情報担体と無線通信を行うリーダライタであって、
稼動時の通信ファクタを測定し、記録する測定記録手段と、
この測定記録手段により測定、記録された通信ファクタの測定データと、予め定められた基準値とを比較して測定データが異常か否かを判断する異常判断手段と、
前記非接触情報担体との通信が成功したか否かを判断する通信成功判断手段と、
保存データの外部取り出しが可能で、前記異常判断手段により異常が判断されたとき又は前記通信成功判断手段により通信が成功してないことが判断されたときには前記測定記録手段の測定データを保存する保存手段とを特徴とするリーダライタ。
【請求項2】
非接触情報担体と無線通信を行うリーダライタであって、
稼動時の通信ファクタを測定し、記録する測定記録手段と、
この測定記録手段により測定、記録された通信ファクタの測定データと、予め定められた基準値とを比較して測定データが異常か否かを判断する異常判断手段と、
前記非接触情報担体との通信が成功したか否かを判断する通信成功判断手段と、
前記異常判断手段により異常が判断されたとき又は前記通信成功判断手段により通信が成功してないことが判断されたときには前記測定記録手段の測定データを上位機器に通信する測定データ通信手段とを備えたことを特徴とするリーダライタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のリーダライタにおいて、前記測定記録手段は稼動時において非接触情報担体との通信時及び非通信時にかかわらず前記通信ファクタを測定、記録することを特徴とするリーダライタ。
【請求項4】
請求項3に記載のリーダライタにおいて、前記基準値は、非通信時と通信時とで異なることを特徴とするリーダライタ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかのリーダライタにおいて、前記通信ファクタは、該リーダライタが非接触情報担体と通信する為の送受信アンテナコイルのインピーダンスであることを特徴とするリーダライタ。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載のリーダライタにおいて、前記通信ファクタは、該リーダライタが非接触情報担体と通信する為に送受信アンテナコイルから発生する電磁界強度又は周波数であることを特徴とするリーダライタ。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれかのリーダライタにおいて、前記通信ファクタは、非接触情報担体からの受信信号を一定の時間間隔で所定時間にわたってサンプリングした値であることを特徴とするリーダライタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−4066(P2006−4066A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178301(P2004−178301)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】