説明

リーダーテープ、その製造方法および磁気テープカートリッジ

【課題】 1リールカートリッジの磁気テープカートリッジを用いる磁気テープドライブに好適な摺動耐久性を確保する表面性と導電性を有するリーダーテープを提供する。
【解決手段】 1リールカートリッジの磁気テープリールに巻装される磁気テープの始端に接合されるリーダーテープであって、基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された導電性摺動層とを含み、前記導電性摺動層の表面は、表面電気抵抗値が102Ω/□〜1010Ω/□、かつ表面粗さRaが0.5μm〜1.5μmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1リールカートリッジを駆動する磁気テープドライブに好適な摺動性を確保する表面性と導電性を有するリーダーテープ、その製造方法およびに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等のデータバックアップ用の外部記録媒体として、磁気テープを巻回した単一のリールを上カートリッジと下カートリッジとからなるカートリッジケース内に回動自在に収納して構成される磁気テープカートリッジ、すなわち、1リール方式の磁気テープカートリッジが知られている。この1リール方式の磁気テープカートリッジでは、使用しないときには磁気テープが完全にリール内に巻き込まれた状態になっており、使用するときには磁気テープを引き出して記録再生装置に導入し、データ等を記録、再生を行うものである。そして、記録再生装置がカートリッジケースから磁気テープを引き出すために、磁気テープの始端には、引出し部材が設けられている。この引出し部材として、リーダーブロック、リーダーピンおよびリーダーテープが知られている。
【0003】
リーダーブロックやリーダーピンは、磁気テープまたは磁気テープ製のリーダーテープと連結されて記録再生装置のテープドライブ内の巻き取りリールハブに設けられた収納凹部に装填される。しかし、この収納凹部では巻き取りリールハブとの段差が発生しやすく、この段差が磁気テープへ与える影響が問題となる。
【0004】
一方、リーダーテープのみが磁気テープの始端に接合されている場合には、磁気テープの引出し時に加わる引張力に対応するため、ある程度の剛性、いわゆる“コシ”を有することが必要となる。そして、“コシ”のあるリーダーテープを記録再生装置のドライブ側のバックル部材が引っ掛けてドライブ内の巻き取りリールに磁気テープを巻き取る。このリーダーテープは“コシ”を必要とするため基部がある程度の厚み(150μm〜200μm)を有しており、これより薄い4μm〜12μm程度の厚さの磁気テープとリーダーテープの接合部には、段差が形成される。そこで、この段差を緩和するために、リーダーテープは、接合部に向かってテーパ状に厚さが漸減された漸減部を機械加工によって形成する方法が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。しかし、漸減部を機械加工によって形成した場合、その加工面の表面性によっては、接合に用いるスプライシングテープとの接着性が問題となり、リーダーテープと磁気テープの接合を確実かつ強固にすることができない問題がある。
【0005】
また、リーダーテープは、従来、PETまたはPETを主成分とする材料で形成されており、引張強度が高い反面、帯電しやすく、高密度記録化のために用いられるMRヘッドと静電摩擦を起こすことが危惧されている。そこで、表面にカーボンブラックを塗布またはコーティングすることが提案されている(特許文献3、特許文献4参照)。しかし、近年のデータバックアップ用途の高容量・高精度化ドライブでは、高速で磁気テープがヘッドやガイド部を接触摺動し、同時に繰返し読み書きされるため、僅かな摩耗粉が生じてもエラーの原因となり、重大故障を招く原因の一つにもなる可能性がある。そこで、特許文献5には、リーダーテープの表面を凹凸に形成して、この凹凸によってヘッドやガイド部のクリーニングを行うことが提案されている。しかし、リーダーテープのクリーニング効果は永続的なものではなく、むしろリーダーテープの摩耗が原因となることの可能性が高い。また、カーボンブラックを含む樹脂からなるフィルムをリーダーテープの基材とし、基材の表面をサンドブラストにより粗面化して導電剤を塗布またはコーティングしたものが知られている。しかし、導電剤の密着性が悪く、剥がれた導電剤がドロップアウトの原因になることも分かってきた。
【特許文献1】特開2000−11591号公報
【特許文献2】特開2000−113435号公報
【特許文献3】特公昭62−15945号公報
【特許文献4】特開平5−314452号公報
【特許文献5】実公昭49−42726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、1リールカートリッジの磁気テープカートリッジを用いる磁気テープドライブに好適な摺動耐久性を確保する表面性と導電性を有するリーダーテープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明のリーダーテープは、1リールカートリッジの磁気テープリールに巻装される磁気テープの始端に接合されるリーダーテープであって、基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された導電性摺動層とを含み、前記導電性摺動層の表面は、表面電気抵抗値が102Ω/□〜1010Ω/□、かつ表面粗さRaが0.5μm〜1.5μmであることを特徴とする。
【0008】
このリーダーテープでは、前記基材の少なくとも片面に形成された導電性摺動層が、表面電気抵抗値が102Ω/□〜1010Ω/□、かつ表面粗さRaが0.5μm〜1.5μmである表面を有することによって、磁気テープドライブに好適な摺動耐久性と、導電性を得ることができる。
【0009】
また、本発明のリーダーテープは、厚さ4μm〜12μmの磁気テープの始端に接合される接合端部を備え、前記接合端部は、その先端に向かって厚さが漸減するように形成された漸減面を少なくとも片面に有し、前記先端の厚さが15μm〜50μmであることを特徴とする。
【0010】
このリーダーテープにおいては、前記接合端部が、前記先端に向かって厚さが漸減するように形成された漸減面を少なくとも片面に有し、前記先端の厚さが15μm〜50μmであることによって、厚さ4μm〜12μmの磁気テープの始端との接合部において、段差が極力低減され、リーダーテープと磁気テープの接合を確実かつ強固にすることができる。
【0011】
また、本発明は、前記のリーダーテープの製造方法であって、前記漸減面は、前記基材に前記導電性摺動層を形成した後に成形されることを特徴とするリーダーテープの製造方法を提供する。
【0012】
この製造方法によれば、基材に導電性摺動層を形成した後に漸減面を成形することによって、極めて滑らかな漸減面を形成できる。
【0013】
さらに、本発明は、前記のリーダーテープが始端に接合された磁気テープを巻回するリールを備える磁気テープカートリッジであって、前記リールは、少なくともハブが表面電気抵抗値が105Ω/□〜1012Ω/□である材料で形成され、磁気テープに電気的に接続されていることを特徴とする磁気テープカートリッジを提供する。
【0014】
この磁気テープカートリッジにおいて、前記リールは、少なくともハブが表面電気抵抗値が105〜1012Ω/□である材料で形成され、磁気テープに電気的に接続されていることによって、静電気の蓄積が防止され、静電放電に弱いMRヘッドを用いるテープドライブ装置における問題の低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のリーダーテープは、1リールカートリッジの磁気テープカートリッジに適用して、その磁気テープカートリッジを用いる磁気テープドライブに好適な摺動耐久性を確保する表面性と導電性を有する。
【0016】
また、本発明のリーダーテープの製造方法によれば、漸減面を極めて滑らかに形成でき、なおかつ加工コストも安い。
【0017】
また、本発明のリーダーテープをテープ端に接合した磁気テープを備える磁気テープカートリッジは、静電気の蓄積が防止され、静電放電に弱いMRヘッドを用いるテープドライブ装置における問題の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る1リールカートリッジの磁気テープカートリッジの分解斜視図である。
【0019】
HYPERLINK "http://www8.ipdl.jpo.go.jp/Tokujitu/tjitemdrw.ipdl?N0000=235&N0500=1E#N/;>:?88>>=///&N0001=115&N0552=9&N0553=000003" \t "tjitemdrw" 図1に示す磁気テープカートリッジ2は、上カートリッジ4と下カートリッジ6とからなるカートリッジケース8と、当該カートリッジケース8内に回転自在に収納される磁気テープリール10とを備える。
【0020】
磁気テープリール10は、図2に示すように、その上面に設けられた上フランジ10aと、下面に設けられた下フランジ10bと、上フランジ10aと下フランジ10bの間を連絡し、磁気テープTが巻装されるハブ10cとを備える。
【0021】
そして、図1に示すとおり、磁気テープリール10の下フランジ10bの内周には歯車10dが形成されており、上フランジ10aの中心部には凹部が設けられている。この凹部には、テープドライブ装置に磁気テープカートリッジ2が装填されたときにのみ磁気テープリール10が回転しないように、磁気テープリール10をロック状態に保つリールロック14と、磁気テープリール10のロック状態を解除するためのリリースパッド26とが配置されている。そして、リールロック14の上部に配置される圧縮コイルばね16によって、リールロック14が、磁気テープリール10の下方に向けて押圧されている。
【0022】
このように構成された磁気テープリール10は、上カートリッジ4と下カートリッジ6とが、ねじによって一体的に組み立てられるカートリッジケース8の内部に収納される。組み立てられたカートリッジケース8の内部においては、圧縮コイルばね16によって、磁気テープリール10が下カートリッジ6に向かって押圧されるとともに、カートリッジケース8の内部に回転可能に支持される。
【0023】
そして、この磁気テープカートリッジ2を使用しないときには、磁気テープTは磁気テープリール10に完全に巻き取られており、磁気テープTの最外端部(始端)に接合されたリーダーテープ20の先端20bが、カートリッジケース8の側面に係止される。
【0024】
このカートリッジケース8の内部に組み込まれた磁気テープリール10は、ねじりコイルばね16によって下フランジ10bの歯車10dに向かって付勢されたリールロック14の底部外周に設けられた爪部が下フランジ10bの歯車10dに係合することによって、磁気テープカートリッジ2を使用しないときに磁気テープリール10が回転して磁気テープTにたるみが生じないようにロックされている。そして、磁気テープTを引き出すための開口部28には、開閉可能なリッド30がねじりコイルばね32によって閉じる方向に付勢して取り付けられている。
【0025】
一方、磁気テープカートリッジ2を使用するときには、コンピュータ等に設けられた記録再生装置によって駆動されるリリースパッド26によってリールロック14によるロックが解除され、リーダーテープ20との係合手段によってリーダーテープ20とそれに続く磁気テープTが引き出されて記録および再生が可能となる。
【0026】
リーダーテープ20は、図3に示すとおり、基部20aと、略半円板状の先端20bと、基部20aと先端20bの間を連絡する連絡部20cとから構成される。
【0027】
先端20bには、記録再生装置のテープドライブが備えるバックル部材21と係合する係合部20dが形成されている。係合部20dは、略半円板状の先端20bに穿設された貫通孔20eと、貫通孔20eに連通して先端20bの頂部に向けて突出して設けられた係合溝20fとを備える。
【0028】
この係合部20dとテープドライブが備えるバックル部材との係合は、図4(a)に示すとおり、バックル部材21の先端に形成された錨状の係合端21aを、矢印Aの方向に突き出して、係合部20dの貫通孔20eに貫通させる。次に、図4(b)に示すとおり、バックル部材21の係合端21aの首部21bを係合溝20fに通した後、図4(c)に示すように、バックル部材21を矢印Bの方向に引き取ることによって、錨状の係合端21aを係合溝20fに係合させる。これによって、リーダーテープ20に接合された磁気テープT(図1、図2参照)を記録再生装置のテープドライブ内に設けられた巻き取りリールを駆動して磁気テープTを巻き取ることができる。
【0029】
また、連絡部20cには、カートリッジケース8の側面に接して組み付けられたフックと係合する、略矩形状の係止孔21gが穿設されている。
【0030】
さらに、基部20aは、図3ならびに図5(a)および図5(b)に示すように、磁気テープTの始端34に接合される先端36aを有する接合端部36を備え、前記接合端部36は、前記先端36aに向かって厚さが漸減するように形成された漸減面38を有する。先端36aの厚さは、厚さ4μm〜12μmの磁気テープの始端34との接合部における段差を極力低減して、リーダーテープと磁気テープの接合を確実かつ強固にするために、厚さ15μm〜50μmであることが好ましい。
【0031】
また、接合端部36の長さは、急激な厚さの変化によってテープ巻回時にテープに応力を集中するのを防止する観点からは極力長いことが望ましいが、生産性の観点からはあまり長くないほうが望ましいことを考慮して、5mm〜55mmであることが好ましい。また、漸減面38の表面粗さは、スプライシングテープの貼り付け強度の観点からは小さければ小さいほど望ましいが、加工時間の短縮等の生産性を考慮すると、Rz0.8μm〜3μmであることが好ましく、Rz1.2μm程度が特に好ましい。
【0032】
この接合端部36の先端36aと、磁気テープTの始端34とを突き合わせ、漸減面38と始端34の表面とに亘って、スプライシングテープSTを貼着することによって、磁気テープTとリーダーテープ20とが接合される。このとき、漸減面38によって、磁気テープTとリーダーテープ20との接合部に生じる大きな段差を緩和することができる。そのため、段差に起因する磁気テープTの電磁特性の劣化が防止されるとともに、リーダーテープ20による磁気テープTの引き出し、あるいは磁気テープTをカートリッジケース8に収納する際における、安定したスムーズな走行を可能とすることができる。
【0033】
また、スプライシングテープSTは、その少なくとも1つの面が導電性処理をされたものであってもよい。特に、アルミ蒸着したものなどが好ましい。これによって、磁気テープTとリーダーテープ20とがうまく接合できずにスキマがあいてしまった場合には、導電性のスプライシングテープSTが、リーダーテープ20と磁気テープTの間の導電路の役割を果たす。
【0034】
このリーダーテープ20は、図3および図5(b)に示すように、基材40と、基材40の片面に形成された導電性摺動層42とを備える。
【0035】
基材40は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の素材で形成される。
【0036】
前記基材40は、厚すぎると、磁気テープリール10の巻回時のスプリングバック力(巻き付けた後、直帯状に戻ろうとする力)が強くなり、薄すぎると、強度が不足することから、厚さが50μm〜200μmであることが好ましく、特に好ましくは188μm程度である。
【0037】
導電性摺動層42は、熱硬化性樹脂をマトリックスとし、これに摺動性および導電性の向上を改善するカーボンブラックを配合した塗布液を塗布またはコーティングして形成される。導電性摺動層42におけるカーボンブラックの含有率は、バックル部材21との係合時におけるリーダーテープの表面とバックル部材21との摩擦による導電性摺動層42のはく離を防止し、表面電気抵抗値の低減とマトリックス熱硬化性樹脂との密着性および分散性の向上の観点から、15質量%〜35質量%であることが好ましく、さらに好ましくは15〜25質量%である。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリイソシアネート等を用いることができる。この熱硬化性樹脂は、熱を掛けて基材40に固着させた後に歪みをとる工程を経てシート状に成形される。
【0038】
また、導電性摺動層42は、摺動性の向上を目的として滑剤を含有することが好ましい。滑剤としては、炭化水素系滑剤(ポリエチレン、パラフィン、ワックス)、脂肪族系滑剤(ステアリン酸)、脂肪族アミド系滑剤(ステアリン酸アミド)、エステル系滑剤(ステアリン酸ブチル)、アルコール系滑剤、金属石鹸、固体潤滑剤(二硫化モリブデン)、シリコン樹脂粒子、フッ素樹脂粒子、架橋ポリメチルメタクリレート粒子、架橋ポリスチレン粒子等を単体もしくは2種以上の組み合せを用いることができる。
【0039】
この導電性摺動層42の表面電気抵抗値は、102Ω/□〜1010Ω/□であり、好ましくは102Ω/□〜106Ω/□であり、特に好ましくは103Ω/□〜105Ω/□である。導電性摺動層42の表面電気抵抗値が102Ω/□未満であってもよいが、表面電気抵抗値を102Ω/□未満とするために高コストとなり、表面電気抵抗値が1010Ω/□を超えると、静電放電を防止する効果が小さい。
【0040】
また、導電性摺動層42の表面粗さRaは、テープドライブ側の摺動部材との接触面積を低減して摺動耐久性を向上させる観点から、0.5μm〜1.5μmであり、好ましくはRa0.7μm程度である。表面粗さRaが0.5μm未満である導電性摺動層42を形成するためには、平滑化処理によってコストの上昇を招き、また、動摩擦係数が大きくなって、テープドライブ装置のガイドローラにリーダーテープが張り付くおそれがある。一方、表面粗さRaが1.5μmを超えると、ヘッドの摩耗を招くおそれがある。本発明において、表面粗さを示すRa(中心線平均表面粗さ)は、WYKO社製TOPO−3Dを用いて、光干渉法により約250μ×250μの面積の媒体表面について測定される値である。このとき、測定光の波長は約650nmで、球面補正および円筒補正を加えている。さらに、導電性摺動層42の表面の動摩擦係数は、平滑化処理に要するコスト、ガイドローラへのリーダーテープの張り付き、ヘッドの摩耗等を考慮して、0.15〜0.35であることが好ましい。また、導電性摺動層42を基材40の両面に形成する場合は、摺動耐久性に影響のない範囲で表裏で粗さを変えても構わない。
【0041】
また、導電性摺動層42の厚さは、基材40と導電性摺動層42との密着性とヘッドやガイド等の摺動部材との摺動耐久性の観点から、好ましくは7μm〜18μmであり、さらに好ましくは7〜14μmであり、特に9μm程度が好ましい。また、導電性摺動層42を基材40の両面に形成する場合には、両面に形成する導電性摺動層は同一厚さでなくともよく、ヘッドと摺動する面等を考慮して、一方の面に形成する導電性摺動層の厚さを、他方の導電性摺動層の厚さと異なるものとしてもよい。例えば、ヘッドと摺動する面の導電性摺動層の厚さを9μm、他方の面の導電性摺動層の厚さを7μmとすることができる。また、テープドライブのバックル部材21との係合部20dの付近の基材40には、バックル部材21との係合時にバックル部材21との摩擦によって導電性摺動層42がはく離するおそれがあるため、導電性摺動層42を形成しなくてもよい。
【0042】
このリーダーテープ20は、静電気放電に弱いMRヘッドを使用するテープドライブ装置で駆動されるテープカートリッジに組み込むことによって、近年、採用が進んでいるMRヘッドへの静電気放電を抑制することができる。特に、本発明のリーダーテープ20は、記録用の電磁誘導型ヘッドと再生用のMRヘッドとを備えるテープドライブ装置用の磁気テープに適用して有効である。MRヘッドは、磁気抵抗効果を利用するAMRヘッドとGMRヘッドが挙げられる。特に、静電気放電に弱いGMRヘッドを用いるテープドライブ装置に有効である。また、データの再生レートを向上させるためにMRヘッドを複数搭載したドライブでは、静電気放電に対して敏感であるが、本発明のリーダーテープは、こうした場合にも有効である。
【0043】
このリーダーテープ20の製造は、前記基材40の表面に導電性摺動層42を形成するとともに、接合端部36に漸減面38を形成できる方法であれば、特に制限されない。特に、基材40の表面に形成した導電性摺動層42も含めて機械加工により切削すれば、漸減面38が極めて滑らかに形成でき、なおかつコストも安いというメリットがあることから、基材40に導電性摺動層42を形成した後に漸減面38を成形することが好ましい。例えば、基材40の漸減面38に対応する個所にマスキング材を取り付けた後、基材40の少なくとも片面に導電性摺動層42を形成し、マスキング材を除去してから漸減面38成形することが好ましい。このとき、漸減面38の成形は、短時間でしかも所定の厚さになるまで、導電性摺動層42の厚さに拘わらず正確に漸減面38を形成できることから、機械加工により行うことが好ましい。これによって、マスキング工程が位置決めの不要なラフなマスキングでよく、コストの低減に有効である。また、基材40に導電性摺動層42を形成した後、基材40の先端を機械加工して、基材40の切削部分と、その切削部分の上に形成されている導電性摺動層とを同時に除去すれば、マスキング等の工程を行わずに、漸減面38を成形することができ、マスキングに要する時間およびコストを削減することができ、コスト的に有利である。
【0044】
また、磁気テープカートリッジ2が備える磁気テープリール10は、少なくともハブ10c(図2参照)が表面電気抵抗値が105Ω/□〜1012Ω/□である材料で形成され、磁気テープTに電気的に接続されていることが好ましい。これによって、静電気の蓄積が防止され、静電放電に弱いMRヘッドを用いるテープドライブ装置における問題の低減を図ることができる。磁気テープTと磁気テープリール10とは、磁気テープリール10のハブ10cの表面に、導電性を有する磁気テープTの端面が接触または純水もしくはアルコールによって貼り付けることによって電気的に接続される。
【0045】
そして、磁気テープリール10は、導電材料を含有する合成樹脂で形成されていることが好ましい。導電材料としては、カーボンファイバー等が挙げられる。カーボンファイバーを含有する場合は、その含有率が5質量%〜10質量%であることが好ましい。また、磁気テープリール10を構成する合成樹脂としては、ポリカーボネート(PC)、ABS樹脂、ポリカーボネート(PC)とABS樹脂の混合樹脂等が挙げられる。
【0046】
以上、本発明のリーダーテープおよび磁気テープカートリッジについて、図1〜図6に示す実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、各種の態様が可能である。例えば、前記実施形態では、先端20bに係合部20dを有するリーダーテープ20について説明したが、係合部20dの代わりに、リーダーピンまたはリーダーブロックを備えるものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る磁気テープカートリッジの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る磁気テープリールの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るリーダーテープの斜視図である。
【図4】(a)〜(c)は、リーダーテープとテープドライブのバックル部材との係合を順を追って説明する模式図である。
【図5】(a)は、磁気テープの始端にリーダーテープが接合された状態を示す平面図、図3(b)はその側面図である。
【符号の説明】
【0048】
2 磁気テープカートリッジ
4 上カートリッジ
6 下カートリッジ
8 カートリッジケース
10 磁気テープリール
10c ハブ
20 リーダーテープ
20a 基部
20d 係合部
21 バックル部材
21a 係合端
21g 係止孔
34 始端
36 接合端部
36a 先端
38 漸減面
40 基材
42 導電性摺動層
ST スプライシングテープ
T 磁気テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1リールカートリッジの磁気テープリールに巻装される磁気テープの始端に接合されるリーダーテープであって、
基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された導電性摺動層とを含み、前記導電性摺動層の表面は、表面電気抵抗値が102Ω/□〜1010Ω/□、かつ表面粗さRaが0.5μm〜1.5μmであることを特徴とするリーダーテープ。
【請求項2】
前記基材の厚さが50μm〜200μm、前記導電性摺動層の厚さが7μm〜18μmであることを特徴とする請求項1に記載のリーダーテープ。
【請求項3】
前記導電性摺動層は、カーボンブラックを15質量%〜35質量%含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリーダーテープ。
【請求項4】
前記導電性摺動層は、滑剤を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のリーダーテープ。
【請求項5】
前記導電性摺動層は、表面の動摩擦係数が0.15〜0.35であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のリーダーテープ。
【請求項6】
MRヘッドを使用するテープドライブ装置で駆動されるテープカートリッジに組み込まれた請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のリーダーテープ。
【請求項7】
厚さ4μm〜12μmの磁気テープの始端に接合される接合端部を備え、前記接合端部は、その先端に向かって厚さが漸減するように形成された漸減面を少なくとも片面に有し、前記先端の厚さが15μm〜50μmであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のリーダーテープ。
【請求項8】
前記接合端部は、長さが5mm〜55mm、かつ、前記漸減面の表面粗さがRz0.8μm〜3μmであり、前記漸減面に貼着されるスプライシングテープによって磁気テープと接続されることを特徴とする請求項7に記載のリーダーテープ。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のリーダーテープの製造方法であって、
前記漸減面は、前記基材に前記導電性摺動層を形成した後に成形されることを特徴とするリーダーテープの製造方法。
【請求項10】
請求項7または請求項8に記載のリーダーテープの製造方法であって、
前記漸減面は、前記基材の前記漸減部に対応する個所にマスキング材を取り付けた後、前記基材の少なくとも片面に前記導電性摺動層を形成し、マスキング材を除去した後に成形されることを特徴とするリーダーテープの製造方法。
【請求項11】
前記漸減面の成形は、機械加工により行われることを特徴とする請求項9または請求項10に記載のリーダーテープの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のリーダーテープが始端に接合された磁気テープを巻回した磁気テープリールを備える磁気テープカートリッジであって、
前記リールは、少なくともドラム部が表面電気抵抗値が105Ω/□〜1012Ω/□である材料で形成され、磁気テープに電気的に接続されていることを特徴とする磁気テープカートリッジ。
【請求項13】
前記リールは、導電材料を含有する合成樹脂で形成されていることを特徴とする請求項12に記載の磁気テープカートリッジ。
【請求項14】
前記導電材料がカーボンファイバーであることを特徴とする請求項13に記載の磁気テープカートリッジ。
【請求項15】
カーボンファイバーの含有率が5質量%〜10質量%である請求項14に記載の磁気テープカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−4523(P2006−4523A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180083(P2004−180083)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】