説明

リーチ式フォークリフト

【課題】機動性を高めることができ、さらに走行時の消費電力を抑えることができ、また通路の障害物を乗り超え可能としたリーチ式フォークリフトを提供する。
【解決手段】マスト部17が後方へ移動しリーチイン状態となると、車両本体14の左右一対のアウトリガー部により形成される空間より、下降されて走行面23に接地され、マスト部17が前方へ移動しリーチアウト状態となると、前記空間内へ収納される左右一対の補助輪43を備え、左右一対の補助輪43が走行面23へ接地すると、車両本体14の本体部のドライブホイール21を中心にして、車両本体14のアウトリガー部のトレールホイール22が走行面23より持ち上がる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーチ式フォークリフト、特に、旋回性能等の機動性の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小さな旋回半径で旋回し得るリーチ式フォークリフトの一例が、特許文献1に開示されている。
この特許文献1に開示されているリーチ式フォークリフトは、車体から突出する左右一対のアウトリガー(ストラドルレッグ)と、これらアウトリガーに沿って前後移動できるマストと、このマストに沿って昇降動し、荷を載置するフォークを備え、前記車体の後部には、ハンドル装置により操舵可能なドライブホイールおよび(後部)キャスターが装着されている。
また前記各アウトリガーの前端部にはそれぞれ、その内面に下方に向けて支持ブラケットが突出固着され、この支持ブラケットに連接棒が揺動可能に支持され、この連接棒の前方側に、従動輪である(前方)キャスターが装着され、後方側に、固定輪であるロードホイールが側方から回動自在に枢着されている。
また前記連接棒には、前方側に弾性のゴム等から形成されたストッパが固着されており、このストッパが、前記アウトリガーの内面に当接する事により、連接棒の揺動角度を所定範囲内に規制している。
【0003】
上記構成により、ドライブホイールの操舵・回転駆動によりリーチ式フォークリフトが旋回するとき、ロードホイールの前方に位置する(前方)キャスターは、旋回の向きに車輪の向きが変わり、旋回中心は、左右のロードホイールの回転軸を結ぶ軸の中心に移動し、通常のリーチ式フォークリフト(前方のキャスターが無く、このキャスター位置に固定のロードホイールが配置されているリーチ式フォークリフト)と比較して大幅に旋回半径を小さくなり、機動性を高めている。
【0004】
このように、大幅に旋回半径を小さくできるが、リーチ式フォークリフトの横安定性を、連接棒の作用により前記通常のリーチ式フォークリフトと同様に確保している。すなわち、マストが前端に移動しているリーチアウト状態のとき、連接棒によって前方のキャスターがそれぞれ接地することから、リーチ式フォークリフトの横安定性が確保される重心位置の領域は、後部のドライブホイールおよび後部のキャスターの略中間点と、前方のキャスター各々の接地点をそれぞれ結んでできる三角形の範囲となり、これは通常のリーチ式フォークリフトと同様の三角形の範囲となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−024697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のリーチ式フォークリフトでは、次のような問題があった。
後部のドライブホイールおよび後部のキャスターと、前方左右のロードホイールおよび前方のキャスターが、通路面に常に接触しているために、走行抵抗が大きくなり、よって走行時の消費電力が大きく、消費電力をバッテリから得ている場合は、バッテリの充電間隔が短くなり、作業効率が低下する恐れがある。
また走行時の安定性を増すためにフォークを下げて走行すると、障害物の厚さにもよるが、通路の障害物が乗り越えできず、迂回することが求められ、作業効率が低下する。
また旋回半径を小さくできるが、やはり旋回スペースを必要としており、狭い通路から左右の通路への移動が不可能であり、問題となることがあった。
【0007】
そこで、本発明は、機動性を高めることができ、さらに走行時の消費電力を抑えることができ、また通路の障害物を乗り超え可能としたリーチ式フォークリフトを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、後部の本体部およびこの本体部から前方へ突出された左右一対のアウトリガー部を有する車両本体と、前記各アウトリガー部にそれぞれ前後方向に設けられた溝に沿って前後移動するマスト部およびこのマスト部に沿って昇降し荷を載置するフォーク部を有する荷役装置とを備え、前記車両本体の本体部に操舵可能な駆動輪を設け、前記車両本体の各アウトリガー部の前端部にそれぞれ従動輪を設け、これら前記従動輪および駆動輪に支持されて走行するリーチ式フォークリフトであって、前記荷役装置のマスト部が後方へ移動し退入状態となると、前記車両本体の左右一対のアウトリガー部により形成される空間より、下降されて走行面に接地され、前記マスト部が前方へ移動し突出状態となると、前記空間内へ収納される左右一対の補助輪を備え、前記左右一対の補助輪の走行面への接地により、前記車両本体の本体部の駆動輪を中心にして、前記車両本体のアウトリガー部の従動輪が前記走行面より持ち上がる構成としたことを特徴とするものである。
【0009】
上記構成によれば、マスト部が後方へ移動し退入状態となると、左右一対の補助輪は下降されて走行面に接地され、アウトリガー部の従動輪が走行面より持ち上がることにより、左右一対の補助輪と駆動輪により車両本体部が支持され、そのホイールベースは、左右一対の従動輪と駆動輪により車両本体部が支持されている場合のホイールベースと比較して短くなり、よって旋回半径は小さくなり、機動性が向上する。またマスト部が前方へ移動し突出状態となると、左右一対の補助輪は格納されることにより、左右一対の従動輪と駆動輪により車両本体部が支持され、横安定性が確保される。
【0010】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記荷役装置のマスト部が退入状態のとき、前記荷役装置のフォーク部が荷を載置していないと、前記車両本体のアウトリガー部の従動輪が前記走行面より離れる構成としたことを特徴とするものである。
【0011】
上記構成によれば、荷役装置のマスト部が退入状態のとき、前記荷役装置のフォーク部が荷を載置していない場合には、前記車両本体のアウトリガー部の従動輪が前記走行面より離れることにより、アウトリガー部の前端部が上昇し、走行面の障害物を乗り越えることが可能となる。
【0012】
また請求項3に記載の発明は、後部の本体部およびこの本体部から前方へ突出された左右一対のアウトリガー部を有する車両本体と、前記各アウトリガー部にそれぞれ前後方向に設けられた溝に沿って前後移動するマスト部およびこのマスト部に沿って昇降し荷を載置するフォーク部を有する荷役装置とを備え、前記車両本体の本体部に操舵可能な駆動輪を設け、前記車両本体の各アウトリガー部の前端部にそれぞれ従動輪を設け、これら前記従動輪および駆動輪に支持されて走行するリーチ式フォークリフトであって、
前記荷役装置のマスト部が後方へ移動し退入状態となると、前記車両本体の左右一対のアウトリガー部により形成される内方の空間より、下降されて走行面に接地され、前記マスト部が前方へ移動し突出状態となると、前記空間内へ収納される左右一対の補助輪を備え、前記各補助輪はそれぞれ、左右方向に回転自在な車輪から構成され、前記左右一対の補助輪の走行面への接地により、前記車両本体のアウトリガー部の従動輪が前記走行面より離れ、前記駆動輪を左右の向きに操舵し回転駆動することにより、前記車両本体の向きを変えることなく、車両本体の向きとは直角な方向に走行可能な構成としたことを特徴とするものである。
【0013】
上記構成によれば、マスト部が後方へ移動し退入状態となると、左右一対の補助輪は下降されて走行面に接地され、アウトリガー部の従動輪が走行面より離れることにより、左右一対の補助輪と駆動輪により車両本体部が支持され、この状態で、駆動輪が左右の向きに90゜操舵され回転駆動されると、車両本体の向きを変えることなく、車両本体の向きとは直角な方向に走行する。このように、横行が可能となることにより、旋回が不要となり、旋回による事故を未然に防ぐことができ、事故の発生率が極めて低いリーチ式フォークリフトを提供でき、また旋回スペースが不要となり、狭い通路から左右の通路、あるいはスペースへの移動が可能となり、機動性が向上する。
【0014】
また請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明であって、前記補助輪を、前記従動輪より走行抵抗が小さい車輪としたことを特徴とするものである。
【0015】
上記構成によれば、左右一対の補助輪と駆動輪により車両本体部が支持されたとき、左右一対の従動輪と駆動輪により車両本体部が支持されているときと比較して走行抵抗が小さくなり、走行時の消費電力を小さくできる。
【0016】
また請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明であって、前記荷役装置のマスト部が退入状態となったことを検出する検出手段を備え、前記検出手段により前記マスト部の退入状態が検出されると、前記駆動輪の駆動による走行速度を制限することを特徴とするものである。
【0017】
上記構成によれば、検出手段によりマスト部の退入状態が検出されると、駆動輪の駆動による走行速度が制限される。このとき、リーチ式フォークリフトの横安定性が確保される重心位置の領域、すなわち左右一対の補助輪と駆動輪を結んでできる三角形の範囲は、左右一対の従動輪と駆動輪を結んでできる三角形の範囲と比較して狭くなるために、急加速や急旋回により横安定性が脅かされる恐れがあるが、走行速度を制限されることにより解消される。
【0018】
また請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の発明であって、前記補助輪を、前記内方の空間より走行面に下降し、前記空間内へ収納する駆動機構として、一端に前記補助輪を回転自在に支持する左右一対の支持部材と、前記左右一対の支持部材をそれぞれ上下方向に回転自在に支持する左右一対の固定部材と、前記左右一対の支持部材を上方へ付勢し、前記補助輪を水平な姿勢に維持する付勢部材と、前記マスト部の後部に前記支持部材に対向して配置され、前記マスト部が後方へ移動すると、前記支持部材に作用して支持部材を前記付勢部材の付勢力に抗して下方へ回動し、マスト部が前方へ移動すると、支持部材より外れて支持部材を付勢部材により水平な姿勢に戻す駆動部材を備えることを特徴とするものである。
【0019】
上記構成によれば、マスト部が後方へ移動すると、駆動部材により付勢部材の付勢力に抗して支持部材が下方へ回動されることにより、この支持部材に回転自在に支持される補助輪は、内方の空間より走行面へ下降され、またマスト部が前方へ移動すると、駆動部材は支持部材より外れ、支持部材は付勢部材により水平な姿勢に戻され、補助輪は空間内へ収納される。また、補助輪の駆動機構は、左右一対の支持部材、左右一対の固定部材、付勢部材、駆動部材の簡単な部品で構成されることにより、メンテナンス性がよく、また部品点数が少ないため低コスト化が図られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のリーチ式フォークリフトは、マスト部が後方へ移動し退入状態となると、左右一対の補助輪は下降されて走行面に接地され、アウトリガー部の従動輪が走行面より持ち上がり、左右一対の補助輪と駆動輪により車両本体部が支持され、そのホイールベースが、左右一対の従動輪と駆動輪により車両本体部が支持されている場合のホイールベースと比較して短くなることにより、旋回半径を小さくでき、機動性を向上できる、という効果を有している。
【0021】
また本発明のリーチ式フォークリフトは、マスト部が後方へ移動し退入状態となると、左右一対の補助輪は下降されて走行面に接地され、アウトリガー部の従動輪が走行面より完全に離れることにより、左右一対の補助輪と駆動輪により車両本体部が支持され、この状態で、駆動輪が左右の向きに90゜操舵され回転駆動されると、前記車両本体の向きを変えることなく、車両本体の向きとは直角な方向に走行でき、すなわち横行でき、旋回が不要となり、旋回による事故を未然に防ぐことができ、事故の発生率が極めて低いリーチ式フォークリフトを提供でき、また旋回スペースが不要となり、狭い通路から左右の通路、あるいはスペースへの移動が可能となり、機動性を向上できる、という効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態におけるリーチ付ウォーキーフォークリフトの斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるリーチ付ウォーキーフォークリフトの側面構成図である。
【図3】同リーチ付ウォーキーフォークリフトの平面構成図である。
【図4】同リーチ付ウォーキーフォークリフトの最小旋回半径短縮装置の構成図である。
【図5】同リーチ付ウォーキーフォークリフトの最小旋回半径短縮装置の動作説明図であり、リーチアウト時の(a)は側面概略図、(b)は平面概略図である。
【図6】同リーチ付ウォーキーフォークリフトの最小旋回半径短縮装置の動作説明図であり、リーチイン時の(a)は側面概略図、(b)は平面概略図である。
【図7】本発明の実施の形態2におけるリーチ付ウォーキーフォークリフトの側面構成図である。
【図8】同リーチ付ウォーキーフォークリフトの平面構成図である。
【図9】同リーチ付ウォーキーフォークリフトの横行装置の構成図である。
【図10】同リーチ付ウォーキーフォークリフトの横行装置の動作説明図であり、(a)はリーチアウト時の側面概略図、(b)はリーチイン時の側面概略図である。
【図11】本発明の他の実施の形態におけるリーチ付フォークリフトの側面構成図であり、(a)は最小旋回半径短縮装置を備えた図、(b)は横行装置を備えた図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態におけるハンド式のリーチ付ウォーキーフォークリフトの斜視図、図2は本発明の実施の形態1におけるリーチ付ウォーキーフォークリフトの側面構成図、図3は同リーチ付ウォーキーフォークリフトの平面構成図である。
【0024】
図1〜図3に示すように、ハンド式のリーチ付ウォーキーフォークリフト(リーチ式フォークリフトの一例)11は、後部の本体部12およびこの本体部12から前方へ突出された左右一対のアウトリガー部13を有する車両本体14と、前記アウトリガー部13に前後方向に設けられたレール部(溝の一例)16に沿って前後移動するマスト部17およびこのマスト部17に沿って昇降し荷を載置するフォーク部18を有する荷役装置19とを備えている。
【0025】
また車両本体14の本体部12には、駆動輪で操舵可能なドライブホイール21が設けられ、車両本体14の各アウトリガー部13の前端部にはそれぞれ固定輪であるトレールホイール(従動輪)22が設けられ、これらドライブホイール21およびトレールホイール22に支持されてリーチ付ウォーキーフォークリフト11は走行面23上を走行する。
【0026】
また一対のアウトリガー部13間で、その後部(本体部12側)上には、油圧装置24が備えられ、この油圧装置24から供給される圧油により伸縮しマスト部17を前後に移動するリーチシリンダ25が設けられている。またマスト部17には、油圧装置24からホース26を介して供給される圧油により伸縮しフォーク部18を昇降するリフトシリンダ27が設けられている。
【0027】
また本体部12上の前側には、バッテリ、油タンクおよびバッテリの充電コントローラ(いずれも図示せず)を収納したバッテリ・油タンクボックス28が設けられ、その後方に制御ボックス30が配置されている。
【0028】
この制御ボックス30の上部には、マスト部17を前後に移動操作する前後操作レバー32とフォーク部18を昇降操作する昇降操作レバー33が配置され、内部に、前後操作レバー32の操作に応じてリーチシリンダ25を駆動する油圧機構と、昇降操作レバー33の操作に応じてリフトシリンダ27を駆動する油圧機構(いずれも図示せず)が設けられている。
【0029】
またドライブホイール21の上方を覆うカバー体36が設けられ、カバー体36の内部に、ドライブホイール21の駆動モータ37およびドライブホイール21の向き左右方向に回動する操舵装置38が配置され、カバー体36の後方に、これらドライブホイール21の駆動モータ37および操舵装置38を操作するバーハンドル形態のハンドル装置39が配置されている。またこのハンドル装置39のハンドフレーム40が垂直な姿勢のときドライブホイール21のブレーキがかかり、ハンドフレーム40が後方へ倒されることでブレーキが解除され、ハンドル装置39のスイッチ(図示せず)により前後走行が指示され、ハンドル装置39の向きにより左右旋回が指示される。
【0030】
またハンドル装置39には運転キー部(図示せず)が設けられ、運転キーが差し込まれ操作されると、バッテリ・油タンクボックス28内のバッテリから油圧装置24へ給電され、圧油がリーチシリンダ25とリフトシリンダ27へ供給可能とされ、また前記バッテリからドライブホイール21の駆動モータ37および操舵装置38へ給電可能とされる。
【0031】
このような構成により、ハンドル装置39には運転キー部に運転キーが差し込まれて操作され、ハンドフレーム40が後方へ倒され、ハンドル装置39が操作されると、ドライブホイール21の駆動モータ37と操舵装置38が駆動されて、リーチ式ウォーキーフォークリフト11は前後走行または左右旋回される。またハンドフレーム40が垂直な姿勢に戻されるとブレーキがかかる。
【0032】
また停止した状態で、前後操作レバー32が操作されると、リーチシリンダ25が油圧により駆動されて、マスト部17は、アウトリガー部13に前後方向に設けられたレール部16に沿って前後移動し、また昇降操作レバー33が操作されると、リフトシリンダ27が油圧により駆動されて、フォーク部18は、マスト部17に沿って昇降する。
【0033】
上記リーチ式ウォーキーフォークリフト11の走行(前後走行または左右旋回)の動作、マスト部17の前後移動の動作、およびフォーク部18の昇降の動作を組合せることにより、荷の移載・搬送が実行される。なお、リーチ式ウォーキーフォークリフト11が走行するとき、マスト部17はリーチイン状態(マスト部17が後方へ移動した退入状態)とされ、フォーク部18は可能な限り低い位置まで下降される。
【0034】
以下、本発明の要部である、左右一対の補助輪機構41について説明する。これら左右一対の補助輪機構41により、リーチ式ウォーキーフォークリフト11の最小旋回半径短縮装置が構成されている。
各補助輪機構41はそれぞれ、左右の各アウトリガー部13に沿ってその内側に、本体部12より前方で、且つマスト部17のリーチイン位置(マスト部17が退入状態となったとき位置)より後方に配置されている。
【0035】
各補助輪機構41は、図4に詳細に示すように、左右一対の支持部材(補助輪の支持部材)42と、これら支持部材42の前端に、左右方向の水平軸43aに前後方向に回転自在に支持された補助輪43と、後端が油圧装置24の下面に固定され、前端において左右の支持部材42をそれぞれ上下方向に回転自在に支持する左右一対の固定部材44と、左右の支持部材42の中央部に、支持部材42間を連絡し両支持部材42の間隔を維持する補強板45と、この補強板45の中央に下端が固定され、上端が油圧装置24の下面から前方へ突出されている平板46に固定され、補強板45を介して支持部材42を上方へ付勢し、補助輪43を水平な姿勢に維持するバネ体(付勢部材の一例)47と、駆動板48から構成されている。
【0036】
前記駆動板48は、支持部材42に作用してバネ体47に抗して、補助輪43を下方へ駆動する駆動部材の一例であり、各駆動板48はそれぞれ、マスト部17の後部に、各補助輪機構41の一方の支持部材42に対向して垂直な姿勢で配置され、この駆動板48の下面は、後方(本体部12側)から前方に向かって下方へ傾斜され、支持部材42の上部に接触する傾斜面48aに形成されている。この駆動板48の傾斜面48aの先端(本体部12側)は、マスト部17が後方へ移動すると、支持部材42の上部前端に接触し、傾斜面48aに沿って支持部材42はバネ体47に抗して下方へ徐々に回動・傾斜され、よって補助輪43は徐々に下降され、マスト部17がリーチイン位置に移動すると、補助輪43が走行面23に接触するよう下降される。またマスト部17が前方へ移動すると、支持部材42は駆動板48の傾斜面48aに沿ってバネ体47の付勢力により徐々に上方へ回動・傾斜され、よって補助輪43は徐々に上昇され、駆動板48が外れると、支持部材42は水平な姿勢に戻される。
また補助輪43の走行抵抗は、トレールホイール22の走行抵抗より小さくされている。またマスト部17がリーチイン状態となったことを検出するリミットスイッチ(検出手段の一例)49を設けている。
【0037】
上記補助輪機構41の構成により、図5に示すように、マスト部17が前方へ移動しリーチアウト状態(マスト部17が前方へ移動した突出状態)のとき、支持部材42は水平な姿勢に維持され、左右一対の補助輪43は、車両本体14の左右一対のアウトリガー部13により形成される空間内へ収納されている。このとき、ハンドル装置39によりドライブホイール21が操舵装置38を介して操舵されて向きが変わり、駆動されると、左右のトレールホイール22の回転軸(図示せず)を結ぶ線の中心が旋回中心Sとなり、この旋回中心Sと車両本体14の後端とを結ぶ線を旋回半径Rとして車両本体14は、旋回する。
そして、マスト部17が後方へ移動すると左右一対の補助輪43は前記空間より徐々に下降し、図6に示すように、リーチイン状態となると、左右一対の補助輪43は走行面23に接地され、この接地により、車両本体14の本体部13のドライブホイール21を中心にして、車両本体14のアウトリガー部13のトレールホイール22が走行面23より持ち上がり(上昇し)、トレールホイール22と走行面23との接触が弱くなり、またフォーク部18に荷が載置されていない無負荷の状態では、トレールホイール22は走行面23から離れる。これにより、ホイールベースは、左右一対のトレールホイール22とドライブホイール21により車両本体14が支持されている場合のホイールベースと比較して短くなり、ハンドル装置39によりドライブホイール21が操舵装置38を介して操舵されて向きが変わり駆動されると、左右の補助輪43の水平軸43aを結ぶ線の中心が旋回中心Sとなり、この旋回中心Sと車両本体14の後端とを結ぶ線を旋回半径Rとして車両本体14は、旋回する。このように旋回半径Rは、上記旋回半径R(ドライブホイール21および左右のトレールホイール22に車両本体14を支持しているときの旋回半径)より小さくなり、機動性が向上する。
【0038】
またリミットスイッチ49によりマスト部17のリーチイン状態が検出されると、ドライブホイール21の駆動による走行速度が、ハンドル装置39のスイッチの操作に関らず所定の低速速度以下に制限される。
【0039】
以上のように本実施の形態1によれば、マスト部17が後方へ移動しリーチイン状態となると、左右一対の補助輪43は下降されて走行面23に接地され、アウトリガー部13のトレールホイール22が走行面23より持ち上がることにより、左右一対の補助輪43とドライブホイール21により車両本体14が支持され、ホイールベースは、左右一対のトレールホイール22とドライブホイール21により車両本体14が支持されている場合のホイールベースと比較して短くなることにより、旋回半径を小さくでき、機動性を向上できる。またトレールホイール22は、走行面23より持ち上がることによりタイヤ摩耗が少なくなり、長寿命化を図ることができる。またマスト部17が前方へ移動しリーチアウト状態となると、左右一対の補助輪43は格納され、左右一対のトレールホイール22とドライブホイール21により車両本体14が支持されることにより、横安定性を確保することができる。
【0040】
また本実施の形態1によれば、マスト部17がリーチイン状態のとき、フォーク部18が無負荷の場合には、車両本体14のアウトリガー部13のトレールホイール22が走行面23より離れることにより、アウトリガー部13の前端部が上昇し、走行面23の障害物を乗り越えることが可能となる(但し、障害物の厚さにもよる)。
【0041】
また本実施の形態1によれば、左右一対の補助輪43とドライブホイール21により車両本体14が支持されたとき、左右一対のトレールホイール22とドライブホイール21により車両本体14が支持されているときと比較して走行抵抗が小さくなり、走行時の消費電力を小さくでき、よってバッテリ・油タンクボックス28に収納されたバッテリの充電間隔を長くすることができ、作業効率を向上させることができ、あるいはバッテリの容量を少なくでき、サイズダウンおよび低コスト化を実現できる。
【0042】
また本実施の形態1によれば、リミットスイッチ49によりマスト部17のリーチイン状態が検出されると、ドライブホイール21の駆動による走行速度を制限されることにより、横安定性を確保できる。すなわち、リーチ式ウォーキーフォークリフト11の横安定性が確保される重心位置の領域、すなわち左右一対の補助輪43とドライブホイール21を結んでできる三角形の範囲は、左右一対のトレールホイール22とドライブホイール21を結んでできる三角形の範囲と比較して狭くなるために、急加速や急旋回により横安定性が脅かされる恐れがあるが、走行速度を制限されることにより解消される。
【0043】
また本実施の形態1によれば、補助輪機構41は、補助輪43、支持部材42、固定部材44、補強板45、バネ体47および駆動体48の簡単な部品で構成されることにより、メンテナンス性がよく、また、部品点数が少ないため低コスト化を図ることができる。
【0044】
[実施の形態2]
実施の形態2では、上記実施の形態1における左右一対の補助輪機構41に代えて、左右一対の補助輪機構51を備えている。これら補助輪機構51により、リーチ式ウォーキーフォークリフト11の横行装置を構成している。
各補助輪機構51はそれぞれ、左右一対の補助輪機構41と同様に、図7および図8に示すように左右の各アウトリガー部13に沿ってその内側に、本体部12より前方で、且つマスト部17のリーチイン位置より後方に配置されている。
また各補助輪機構51は、図9に詳細に示すように、上記補助輪機構41の補助輪43に代えて、横行車輪52を設けている。これら各横行車輪52は左右方向に回転自在な車輪を構成しており、その回転軸52aが、平面視コ字状の車輪軸受53に左右方向に回転自在に支持されている。この車輪軸受53は、左右一対の支持部材42の先端(前側)間に、横行車輪52が左右方向に回転できるように固定されている。また横行車輪52の走行抵抗は、トレールホイール22の走行抵抗より小さくされている。
【0045】
上記補助輪機構51の構成により、図10(a)に示すように、マスト部17が前方へ移動しリーチアウト状態のとき、左右一対の横行車輪52は、車両本体14の左右一対のアウトリガー部13により形成される空間内へ収納されている。
そして、図10(b)に示すように、マスト部17が後方へ移動すると左右一対の横行車輪52は前記空間より徐々に下降し、リーチイン状態となると、左右一対の横行車輪52は走行面23に接地され、この接地により、車両本体14の本体部13のドライブホイール21を中心にして、車両本体14のアウトリガー部13のトレールホイール22が走行面23より離れる(持ち上がる)。この横行車輪52とドライブホイール21により車両本体14が支持されている状態で、ハンドル装置39によりドライブホイール21が操舵装置38を介して左右の向きに90゜操舵され、ドライブホイール21が駆動されると、車両本体14は向き(姿勢)が変わることなく、車両本体14の向きとは直角な左右方向に移動する(横行する)。なお、このとき、リミットスイッチ49によりマスト部17のリーチイン状態が検出されていることにより、ドライブホイール21の駆動による走行速度が、ハンドル装置39のスイッチの操作に関らず所定の低速速度以下に制限される。
【0046】
以上にように本実施の形態2によれば、マスト部17が後方へ移動しリーチイン状態となると、左右一対の横行車輪52は下降されて走行面23に接地され、アウトリガー部13のトレールホイール22が走行面23より離れることにより、左右一対の横行車輪52とドライブホイール21により車両本体14が支持され、この状態で、ハンドル装置39によりドライブホイール21が左右の向きに90°操舵され回転駆動されることにより、図8に示すように、車両本体14の向きを変えることなく、車両本体14の向きとは直角な方向に走行でき、すなわち横行(真横移動)でき、よって旋回が不要となり、旋回による事故を未然に防ぐことができ、事故の発生率が極めて低いリーチ式ウォーキーフォークリフト11を提供でき、また旋回スペースを不要にでき、狭い通路から左右の通路、あるいはスペースへの移動が可能となり、機動性を向上できる。
【0047】
また本実施の形態2によれば、左右一対の横行車輪52とドライブホイール21により車両本体14が支持されたとき、左右一対のトレールホイール22とドライブホイール21により車両本体14が支持されているときと比較して走行抵抗が小さくなり、走行時の消費電力を小さくでき、よってバッテリ・油タンクボックス28に収納されたバッテリの充電間隔を長くすることができ、作業効率を向上させることができ、あるいはバッテリの容量を少なくでき、サイズダウンおよび低コスト化を実現できる。
【0048】
また本実施の形態2によれば、リミットスイッチ49によりマスト部17のリーチイン状態が検出されると、ドライブホイール21の駆動による走行速度を制限されることにより、横行の際の横安定性を確保できる。すなわち、リーチ式ウォーキーフォークリフト11の横安定性が確保される重心位置の領域、すなわち左右一対の横行車輪52とドライブホイール21を結んでできる三角形の範囲は、左右一対のトレールホイール22とドライブホイール21を結んでできる三角形の範囲と比較して狭くなるために、急加速により横安定性が脅かされる恐れがあるが、走行速度を制限されることにより解消される。
【0049】
また本実施の形態2によれば、補助輪機構51は、横行車輪52、支持部材42、固定部材44、補強板45、バネ体47および駆動体48の簡単な部品で構成されることにより、メンテナンス性がよく、また、部品点数が少ないため低コスト化を図ることができる。
【0050】
[他の実施の形態]
上記本実施の形態1,2では、リーチ式フォークリフトを、ハンド式のリーチ付ウォーキーフォークリフト11としているが、ハンド式に限ることはなく、図11に示すように、マスト部17がアウトリガー部13のレール部16に沿って前後方向に移動するリーチ式のフォークリフトであればよい。
図11に示すリーチ式フォークリフト56は、上記ハンドル装置39に代えて、本体部12に、作業者の乗降部を有する運転操作部57を備えており、運転操作部57に、アクセルレバー、マスト部17のリーチレバー、フォーク部18の昇降用リフトレバーなどの操作レバー装置58が配置され、ステアリングハンドル59が設けられている。図11(a)に、補助輪機構41(最小旋回半径短縮装置)を備えたリーチ式フォークリフト56、図11(b)に、補助輪機構51(横行装置)を備えたリーチ式フォークリフト56を示す。
このように、最小旋回半径短縮装置、あるいは横行装置を備えることにより、作業者が乗車して操作レバー装置58のリーチレバーによりマスト部17をリーチイン位置へ退入し、補助輪43、あるいは横行車輪52を走行面23に接地することにより、旋回半径を小さくでき、あるいは横行することが可能となり、機動性を向上することができる。
【符号の説明】
【0051】
11 リーチ付ウォーキーフォークリフト
12 本体部
13 アウトリガー部
14 車両本体
16 レール部
17 マスト部
18 フォーク部
19 荷役装置
21 ドライブホイール
22 トレールホイール
23 走行面
25 リーチシリンダ
27 リフトシリンダ
32 前後操作レバー
33 昇降操作レバー
37 駆動モータ
38 操舵装置
39 ハンドル装置
41,51 補助輪機構
42 支持部材
43 補助輪
44 固定部材
45 補強板
46 平板
47 バネ体
48 駆動板
48a 傾斜面
49 リミットスイッチ
52 横行車輪
53 車輪軸受
56 リーチ式フォークリフト
57 運転操作部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部の本体部およびこの本体部から前方へ突出された左右一対のアウトリガー部を有する車両本体と、前記各アウトリガー部にそれぞれ前後方向に設けられた溝に沿って前後移動するマスト部およびこのマスト部に沿って昇降し荷を載置するフォーク部を有する荷役装置とを備え、前記車両本体の本体部に操舵可能な駆動輪を設け、前記車両本体の各アウトリガー部の前端部にそれぞれ従動輪を設け、これら前記従動輪および駆動輪に支持されて走行するリーチ式フォークリフトであって、
前記荷役装置のマスト部が後方へ移動し退入状態となると、前記車両本体の左右一対のアウトリガー部により形成される内方の空間より、下降されて走行面に接地され、前記マスト部が前方へ移動し突出状態となると、前記空間内へ収納される左右一対の補助輪
を備え、
前記左右一対の補助輪の走行面への接地により、前記車両本体の本体部の駆動輪を中心にして、前記車両本体のアウトリガー部の従動輪が前記走行面より持ち上がる構成としたこと
を特徴とするリーチ式フォークリフト。
【請求項2】
前記荷役装置のマスト部が退入状態のとき、前記荷役装置のフォーク部が荷を載置していないと、前記車両本体のアウトリガー部の従動輪が前記走行面より離れる構成としたこと
を特徴とする請求項1に記載のリーチ式フォークリフト。
【請求項3】
後部の本体部およびこの本体部から前方へ突出された左右一対のアウトリガー部を有する車両本体と、前記各アウトリガー部にそれぞれ前後方向に設けられた溝に沿って前後移動するマスト部およびこのマスト部に沿って昇降し荷を載置するフォーク部を有する荷役装置とを備え、前記車両本体の本体部に操舵可能な駆動輪を設け、前記車両本体の各アウトリガー部の前端部にそれぞれ従動輪を設け、これら前記従動輪および駆動輪に支持されて走行するリーチ式フォークリフトであって、
前記荷役装置のマスト部が後方へ移動し退入状態となると、前記車両本体の左右一対のアウトリガー部により形成される内方の空間より、下降されて走行面に接地され、前記マスト部が前方へ移動し突出状態となると、前記空間内へ収納される左右一対の補助輪
を備え、
前記各補助輪はそれぞれ、左右方向に回転自在な車輪から構成され、
前記左右一対の補助輪の走行面への接地により、前記車両本体のアウトリガー部の従動輪が前記走行面より離れ、前記駆動輪を左右の向きに操舵し回転駆動することにより、前記車両本体の向きを変えることなく、車両本体の向きとは直角な方向に走行可能な構成としたこと
を特徴とするリーチ式フォークリフト。
【請求項4】
前記補助輪を、前記従動輪より走行抵抗が小さい車輪としたこと
を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のリーチ式フォークリフト。
【請求項5】
前記荷役装置のマスト部が退入状態となったことを検出する検出手段を備え、
前記検出手段により前記マスト部の退入状態が検出されると、前記駆動輪の駆動による走行速度を制限すること
を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のリーチ式フォークリフト。
【請求項6】
前記補助輪を、前記内方の空間より走行面に下降し、前記空間内へ収納する駆動機構として、
一端に前記補助輪を回転自在に支持する左右一対の支持部材と、
前記左右一対の支持部材をそれぞれ上下方向に回転自在に支持する左右一対の固定部材と、
前記左右一対の支持部材を上方へ付勢し、前記補助輪を水平な姿勢に維持する付勢部材と、
前記マスト部の後部に前記支持部材に対向して配置され、前記マスト部が後方へ移動すると、前記支持部材に作用して支持部材を前記付勢部材の付勢力に抗して下方へ回動し、マスト部が前方へ移動すると、支持部材より外れて支持部材を付勢部材により水平な姿勢に戻す駆動部材
を備えること
を特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のリーチ式フォークリフト。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−82532(P2013−82532A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223543(P2011−223543)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】