説明

リード線整列器具

【課題】心電計等の医療機器のリード線を整列する。
【解決手段】リード線を透通させる透通孔13、14、15を有する筐体10と、前記透通孔13、14、15に設けられ、前記リード線が透通孔13、14、15内を移動する際に透通孔の一部において摩擦を与える摩擦付与手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電計等の医療機器に用いられるリード線を整列させるために用いることが可能なリード線整列器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の器具としては、基部を中心として一本の把持部が折り畳まれて上下二本に形成された形状を有し、この二本の把持部間にリード線を弾性把持して固定するコードクリッパが知られている。また、弾性材料により形成された筒状体であって、その長手方向にスリットが形成されており、このスリットを介して筒状体内にリード線を出し入れでき、リード線を筒状体内に包まれた状態で保持するコードクリッパが知られている。
【0003】
更に、筒状体の一方の穴は、三本のケーブルを揃えた結束状態とする単穴により形成され、筒状体の他方の穴は、三本のケーブルを独立させた解束状態とする三穴により形成され、筒状体を三本のケーブルの長手方向に摺動可能として器具が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−154973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の器具は、ケーブルと筒状体の器具が密着状態となりやすく、容易に摺動を行うことができ難く、特に、ケーブルが細い場合には、筒状体が小さくなり扱い難いものであった。
【0006】
本発明は、上記のような従来のリード線整列器具における現状に鑑みてなされたもので、その目的は、リード線が絡まったような場合や、リード線から電極などの端部位までの距離を調整する際に、扱いが容易であり、また密着状態となることがなく、適切にリード線の整列を行うことが可能なリード線整列器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るリード線整列器具は、リード線を透通させる透通孔を有する筐体と、前記透通孔に設けられ、前記リード線が透通孔内を移動する際に透通孔の少なくとも一部において摩擦を与える摩擦付与手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るリード線整列器具では、摩擦付与手段は、透通孔を屈曲させることにより構成されることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るリード線整列器具では、摩擦付与手段は、透通孔を屈曲させることにより構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るリード線整列器具では、透通孔は、筐体に少なくとも2つ以上設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るリード線整列器具は、リード線が透通孔内を移動する際に透通孔の少なくとも一部において摩擦を与える摩擦付与手段を備え筐体であるため、扱いが容易であり、また密着状態となることがなく、適切にリード線の整列を行うことが可能である。また、透通孔は、筐体に複数条設けられているため、リード線が絡まったような場合や、リード線から電極などの端部位までの距離を調整する際に好適であり、適切にリード線を整列させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るリード線整列器具の第1の実施形態を示す組み立て斜視図。
【図2】本発明に係るリード線整列器具の第1の実施形態を示す平面図。
【図3】本発明に係るリード線整列器具の第2の実施形態を示す組み立て斜視図。
【図4】本発明に係るリード線整列器具の第2の実施形態を示す平面図。
【図5】本発明に係るリード線整列器具の実施形態が用いられる装置のリード線部分を示す平面図。
【図6】本発明に係るリード線整列器具の実施形態が用いられる装置のリード線部分の要部を示す平面図。
【図7】本発明に係るリード線整列器具の第1の実施形態が用いられた状態のリード線部分の要部を示す平面図。
【図8】本発明に係るリード線整列器具の第2の実施形態が用いられた状態のリード線部分の要部を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下添付図面を参照して本発明に係るリード線整列器具の実施形態を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。図1、図2には、本発明に係るリード線整列器具の第1の実施形態が示されている。このリード線整列器具は、ポリプロピレン等の樹脂により構成され、底側となる容器10と蓋側となる容器10により構成される筐体1を備える。底側となる容器10と蓋側となる容器10は、同一形状である。
【0014】
容器10は、楕円状の主面部11の周縁一周に、内側に向いた壁部12が設けられて構成されている。二つの容器10の内側を向かい合わせにして横長状態で結合させたときに、図の縦方向に延びる三つの透通孔13、14、15が生成されるように、壁部12の一部が半円形に切欠された開口縁部13a、14a、15aが形成されている。開口縁部13a、14a、15aの間は、隣接するリード線が出口で少なくとも接触しない程度の距離を有し、この実施形態では1cm程度とされている。
【0015】
開口縁部13a、14a、15aによって形成される孔口の径は、図5〜図7に描かれているリード線50の径と概ね同じ寸法を有している。三つの透通孔13、14、15それぞれの中央部の内壁には、孔の長手方向に概ね直交する方向に平らなリブ13b、14b、15bが設けられている。二つの容器10の内側を向かい合わせにして結合させたときに、対向する二つのリブ13b、13bと、二つのリブ14b、14bと、二つのリブ15b、15bは、リード線50の径と概ね同じ寸法の径を有する孔を生成する。以上の開口縁部13a、14a、15aと、リブ13b、14b、15bは、リード線50が透通孔13、14、15内を移動する際に透通孔の一部において摩擦を与える摩擦付与手段を構成する。本実施形態では、三つの透通孔13、14、15のそれぞれにリブ13b、14b、15bを設けているが少なくとも1つ以上の透通孔にリブを設ければよい。また、透通孔14に2つ以上のリブを設けてもよい。
【0016】
また、中央の透通孔14は、全体として幾度か屈曲しており、ここでは一度の屈曲により「く」の字に、或いはV字に屈曲して構成されている。この屈曲構成によって、リード線50が透通孔14内を移動する際に透通孔14内の一部において摩擦を与えることになる。即ち、この屈曲構成は、摩擦付与手段を構成する。本屈曲構成は、一度の屈曲によりなるが、2つ以上の屈曲からなってもよい。また、透通孔14の内壁には、透通孔14側へ突出した半球形の突起14Tが形成されている。この突起14Tも、摩擦付与手段を構成する。
【0017】
開口縁部13aと開口縁部14aの間の壁部12における開口縁部13aに近い位置には、角穴16が形成されている。開口縁部15aと開口縁部14aの間の壁部12における開口縁部15aに近い位置には、角穴17が形成されている。角穴16と対向する壁部12の内側の位置には、他方の容器10の角穴17に挿入されて係止するように外側に突出したストッパを有する爪片18が設けられている。また、角穴17と対向する壁部12の内側の位置には、他方の容器10の角穴16に挿入されて係止するように外側に突出したストッパを有する爪片19が設けられている。
【0018】
角穴16が形成されている側の壁部12における内側であって、開口縁部14aに近接する位置には、他方の容器10の壁部12における内側に当接して外側へ付勢するための凸部を有する突片21が設けられている。また、角穴17が形成されている側の壁部12における内側であって、開口縁部14aに近接する位置には、他方の容器10の壁部12における内側に当接して外側へ付勢するための凸部を有する突片22が設けられている。
【0019】
以上の通りに構成された図1の容器10、10について、一方を図1の状態から上下を逆さにして、三本のリード線50を透通孔13、14、15内に這わせて、壁部12のほぼ全体を他方の方向へ押圧することにより、図7に示すような筐体1からなるリード線整列器具を得ることができる。
【0020】
図3、図4には、本発明に係るリード線整列器具の第2の実施形態が示されている。このリード線整列器具も、ポリプロピレン等の樹脂により構成される。底側となる容器30と蓋側となる容器30により構成される筐体1Aを備える。容器30の外形は第1の実施形態における容器10と同じである。
【0021】
この容器30は、楕円状の主面部31の周縁一周に、内側に向いた壁部32が設けられて構成されている。この容器30では、容器30が縦長にされた状態において、図の縦方向に延びる三つの透通孔33、34、33が生成されるように、壁部32の一部が半円形に切欠された開口縁部33a、34a、33aが形成されている。開口縁部33a、34a、33aの間は、リード線が出口で少なくとも接触しない程度の距離を有する。本実施形態では、透通孔34は、リード線を挿入する孔として用いないため、二本のリード線について出口での距離は、接触を避けるには十分な距離となる。
【0022】
開口縁部33a、34a、33aによって形成される孔口の径は、図5〜図7に描かれているリード線50の径と概ね同じ寸法を有している。三つの透通孔33、34、33それぞれの中央部の内壁には、孔の長手方向に概ね直交する方向に平らなリブ33b、34b、33bが設けられている。二つの容器30の内側を向かい合わせにして結合させたときに、対向する二つのリブ33b、33bと、二つのリブ34b、34bと、二つのリブ33b、33bは、それぞれ開口縁部33a、34a、33aと同様にリード線50の径と概ね同じ寸法の径を有する孔を生成する。以上の開口縁部33a、34a、33aと、リブ33b、34b、33bは、リード線50が透通孔33、34、33内を移動する際に透通孔の一部に摩擦を与える摩擦付与手段を構成する。
【0023】
透通孔33、34、33を区分するための区分壁34Wは、図4に示されている通りに透通孔34の内壁部において真っ直ぐに形成されている。傾斜壁33Wは、上下の開口縁部33aからリブ33bへ向かって孔径を狭めて透通孔33を屈曲させるように傾斜している。この傾斜壁33Wは、リード線50が移動する際に透通孔33内の一部において摩擦を与えることになる。即ち、この構成は、摩擦付与手段を構成する。
【0024】
更に、上側の開口縁部33aに近く、区分壁34Wから傾斜壁33Wが分岐する位置には、透通孔33側へ突出した半球形の突起33Tが形成されている。これら突起は、リード線50が移動する際に透通孔33内の一部において摩擦を与える摩擦付与手段を構成する。
【0025】
内側から見た右上側の開口縁部33aとリブ33bの間の壁部32における右上側の開口縁部33aに近い位置には、角穴36が形成されている。内側から見た右下側の開口縁部33aとリブ33bの間の壁部32における開口縁部33aに近い位置には、角穴37が形成されている。角穴36と対向する壁部32の内側の位置には、他方の容器30の角穴36に挿入されて係止するように外側に突出したストッパを有する爪片38が設けられている。また、角穴37と対向する壁部32の内側の位置には、他方の容器30の角穴37に挿入されて係止するように外側に突出したストッパを有する爪片39が設けられている。
【0026】
角穴36が形成されている側の壁部32に、他方の容器30の壁部32における内側に当接して外側へ付勢するための凸部を有する突片41が設けられている。また、角穴37が形成されている側の壁部32に、他方の容器30の壁部32における内側に当接して外側へ付勢するための凸部を有する突片42が設けられている。
【0027】
以上の通りに構成された図1の容器30、30について、三本のリード線50を透通孔33、33内に這わせて、壁部32のほぼ全体を他方の方向へ押圧することにより、図8に示すような筐体1Aからなるリード線整列器具を得ることができる。
【0028】
以上のように構成されたリード線整列器具は、図5に示されるような電極カートリッジ60の接続コネクタ側に接続された複数のリード線50を整列させるときに好適である。電極カートリッジ60の集中コネクタ61は、入力箱に接続され、この入力箱が心電計に接続される。リード線50の先端には、チップ端子51が接続されており、チップ端子51の先端は導電性のピン52が突出している。
【0029】
チップ端子51のピン52には、図6に示されるような吸着電極70を取り付けることができる。吸着電極70は、ゴム球71と、図示しない電極部を備えるもので、ゴム球71の先端側に開口した電極部が取り付けられたものである。電極部にはチップ端子51のピン52に結合することが可能なジャックが設けられ、このジャックによりピン52と電極が電気的に接続される。
【0030】
第1の実施形態に係る筐体1を備えるリード線整列器具は、例えば胸部に貼着する三つの吸着電極70に接続されるリード線50を図7に示すように透通孔に通して組み立てられる。この筐体1を備えるリード線整列器具から電極カートリッジ60へ到るリード線50は途中で絡み合うことない状態に張設される。
【0031】
第2の実施形態に係る筐体1Aを備えるリード線整列器具は、例えば胸部につける3つの吸着電極70に接続されるリード線50を図7に示すように透通孔に通して組み立てられる。この筐体1を備えるリード線整列器具から電極カートリッジ60へ到るリード線50は途中で絡み合うことない状態に張設される。
【0032】
上記のように組み立て設定を行った後には、リード線整列器具がリード線50に設けられているために、図5に示すように相互に絡み合って電極を生体に装着するまで時間を要するということを回避できる。リード線50が相互に絡み合ったとしても、図7や図8に示すように、リード線整列器具を構成する筐体1、1Aを掴んでリード線50の長手方向に摺動させることにより、容易に絡み合いを解くことが可能である。
【0033】
また、図7に示すように、リード線整列器具を構成する筐体1Aから各吸着電極70までの距離を所要に調整し、その位置において筐体1Aを止どめることができ、夫々の吸着電極70を生体の胸部における所定位置に貼着して心電図測定を行うことができる。ここで、リード線整列器具を構成する筐体1Aから各吸着電極70までの距離を所要に調整できることから、リード線50の引き回しを適切に行うことができ、しかも隣接するリード線50間の距離を確保できることからリード線50間の干渉を防止することが可能である。
【0034】
更に、リード線整列器具を構成する筐体1は、二つの容器10、10により構成され、筐体1Aは、二つの容器30、30から構成され、組み立て及び分解が容易となっている。よって、必要に応じて所要の個数を取り付けることが可能であり、リード線50の整列と適切な引き回しを行うことができ、医療現場において使い勝手が良好である。また、組み立て及び分解が容易であることからリード線50の洗浄などの邪魔になることがなく、また、リード線整列器具自体の洗浄などを容易に行うことが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1、1A 筐体
10、30 容器
13、14、15 透通孔
13b、14b、15b リブ
33、34 透通孔
33T 突起
33W 傾斜壁
33b、34b リブ
50 リード線
51 チップ端子
52 ピン
60 電極カートリッジ
70 吸着電極
71 ゴム球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リード線を透通させる透通孔を有する筐体と、
前記透通孔に設けられ、前記リード線が透通孔内を移動する際に透通孔の少なくとも一部において摩擦を与える摩擦付与手段と
を具備することを特徴とするリード線整列器具。
【請求項2】
摩擦付与手段は、透通孔を屈曲させることにより構成されることを特徴とする請求項1に記載のリード線整列器具。
【請求項3】
摩擦付与手段は、透通孔の内壁に設けられたリブにより構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のリード線整列器具。
【請求項4】
透通孔は、筐体に少なくとも2つ以上設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のリード線整列器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−94380(P2013−94380A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239233(P2011−239233)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】