説明

リーファーコンテナ

【課題】簡易な構成で所望のガス濃度が調整可能であり、かつ、ガス濃度調整時の熱負荷を小さくすることが可能なコンテナを提供する。
【解決手段】換気用フィルタ24を介して換気が行われるリーファーコンテナ1であって、前記換気用フィルタは下記式(1)で示される単量体を含む単量体組成物を重合してなる高分子材料によって形成されている非対称膜を備えるリーファーコンテナ。


(式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜12のアルキル基及び/又は炭素数6〜10のアリール基であり、Xは所定のシロキシ基であり、aは1〜3の整数であり、bは0〜2の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーファーコンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生鮮食品や生花等を収容するためのコンテナにおいては、鮮度を維持するために、温度を調整するとともに、酸素濃度及び二酸化炭素濃度を調整することが行われている。酸素濃度及び二酸化炭素濃度を調整する方法としては、例えば、MA(Modified Atmosphere)やCA(Controlled Atmosphere)が知られている。
【0003】
MAには、外気を直接コンテナ内に供給して換気する直接法(特許文献1参照)と、所定の酸素透過速度と二酸化炭素透過速度を有する包装材を介して酸素や二酸化炭素をコンテナ内に供給する間接法(特許文献2参照)があり、間接法はMA包装と称される。また、CAは、吸着分離や膜分離を用いて、コンテナ内における酸素濃度と二酸化炭素濃度をコントロールする方法であり、CA貯蔵と称される(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−50027号公報
【特許文献2】特開平6−11235号公報
【特許文献3】特開平3−85287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、生鮮食品や生花等を収容するためのコンテナは、鮮度を維持するために、通常冷蔵又は冷凍されており、外気との温度差が大きい。このようなコンテナに、特許文献1、2等のMAを適用すると、コンテナ内における窒素を含む全てのガスが入れ替えられるため、コンテナ内の温度が大きく変動し、再度温度を調整するための熱負荷が大きくなる。
【0006】
また、生鮮食品や生花等の種類によって、鮮度を維持するために最適な酸素濃度や二酸化炭素濃度が異なるが、特許文献2等の間接法では、ガス透過速度が包装材の種類に依存するため、生鮮食品や生花等の種類によって包装材を変更する必要がある。さらに、特許文献3等のCA貯蔵では、所望のガス濃度を得るために加圧ポンプや減圧ポンプを用いるために、ランニングコスト高になることに加え、装置が複雑化してしまう。
【0007】
そこで本発明は、簡易な構成で所望のガス濃度が調整可能であり、かつ、ガス濃度調整時の熱負荷を小さくすることが可能なコンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、換気用フィルタを介して換気が行われるリーファーコンテナであって、上記換気用フィルタは下記式(1)で示される単量体を含む単量体組成物を重合してなる高分子材料によって形成されている非対称膜を備えるリーファーコンテナを提供する。なお、「リーファーコンテナ」とは、生鮮食品・冷凍食品・生花や低温輸送が必要な化学製品、医薬品、電子部品、フィルム、美術品などの輸送のためのコンテナをいう。本発明のリーファーコンテナは、輸送の際にコンテナ内の換気が必要となるもの、例えば青果物等の生鮮食品及び生花を収容する用途に特に適している。
【化1】


(式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜12のアルキル基及び/又は炭素数6〜10のアリール基であり、Xは下記式(i)で示される基及び/又は下記式(ii)で示される基であり、aは1〜3の整数であり、bは0〜2の整数である。)
【化2】


(Rは、互いに独立に、炭素数1〜12のアルキル基であり、dは1〜5の整数であり、cは3〜5の整数である。)
【0009】
かかるリーファーコンテナによれば、簡易な構成で所望のガス濃度が調整可能であり、かつ、ガス濃度調整時の熱負荷を小さくすることが可能である。なお、非対称膜とは、多孔質層及びこれに隣接する緻密層を有する膜をいい、上記非対称膜は緻密層表面にナノメートルサイズ又はマイクロメートルサイズの孔を有することが好ましい。
【0010】
本発明のリーファーコンテナにより、上述の効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように考えている。
【0011】
すなわち、上述のように、従来の直接法を適用した場合には、コンテナ内における窒素を含む全てのガスが入れ替えられるため、コンテナ内の温度が大きく変動し、再度温度を調整するための熱負荷が大きくなる。これに対して、本発明のリーファーコンテナによれば、上述の換気用フィルタを用いることにより、コンテナの内外で必要な成分のみが交換可能となり、交換不要なガスの取り込み・取り出しを抑制することができることが、上述の効果が得られる一つの要因であると考えている。
【0012】
上記高分子材料は上記式(1)で示される単量体を含む単量体組成物を付加重合してなる付加重合体であることが好ましい。これにより、本発明による効果がより顕著に奏される。
【0013】
23±2℃、膜間の圧力差がない条件における、上記非対称膜の酸素透過係数P(O)及び二酸化炭素透過係数P(CO)の比は下記式(3)を満足することが好ましい。これにより、本発明による効果が特に顕著に奏される。
1.0<P(O)/P(CO)<1.70 …(3)
【0014】
上記リーファーコンテナは、内部に存在する内気の温度調整が行われる筐体と、該筐体内の特定種類のガス濃度を検出するガス濃度検出手段と、外気が流れる外気流路及び筐体内に存在する内気が流れる内気流路を形成する流路形成部材と、一方の面が外気流路の外気と接触し、かつ他方の面が内気流路の内気と接触するように外気流路と内気流路との境界に配置された換気用フィルタと、外気流路における外気の流れ及び内気流路における内気の流れの少なくとも一方を発生させる送風手段と、該送風手段による送風制御を行う制御手段とを備え、該制御手段は、ガス濃度検出手段によって検出されたガス濃度に基づいて、送風手段による外気又は内気の少なくとも一方の送風制御を行う構成とすることができる。
【0015】
上記リーファーコンテナは、筐体内に、内気を循環させるための内気循環送風機が設けられており、内気流路における内気の流れを発生させる送風手段が、内気循環送風機によって発生した内気の流れを内気流路に導入することで、内気流路における内気の流れを発生させるものであってもよい。
【0016】
上記リーファーコンテナはまた、外気流路における外気の流れ及び内気流路における内気の流れを発生させる送風手段が、内気流路又は外気流路に設けられた第1の送風ファンと、第1の送風ファンとは異なる流路に設けられた第2の送風ファンと、第1の送風ファンを回転駆動する駆動手段と、該駆動手段の回転駆動力を第2の送風ファンに伝達する動力伝達部材とを備えるものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡易な構成で所望のガス濃度が調整可能であり、かつ、ガス濃度調整時の熱負荷を小さくすることが可能なリーファーコンテナを提供することができる。さらに、本発明のリーファーコンテナによれば、コンテナ外からのチリやホコリ等の微粒子の侵入を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態のコンテナ1の構成を示す概念図である。
【図2】外気流路22の外気の流れと内気流路23の内気の流れを示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態のコンテナ1の構成を示す概念図である。
【図4】本発明の第3実施形態の換気用フィルタユニット20の断面構成の一例を示す概念図である。
【図5】本発明の第3実施形態の換気用フィルタユニット20の断面構成の他の例を示す概念図である。
【図6】本発明の第4実施形態のコンテナ1の構成を示す概念図である。
【図7】本発明の第5実施形態のコンテナ1の構成を示す概念図である。
【図8】本発明の第6実施形態のコンテナ1の構成を示す概念図である。
【図9】非対称膜の一実施形態を示す断面図である。
【図10】非対称膜構造体の一実施形態を示す断面図である。
【図11】非対称膜構造体の一実施形態を示す断面図である。
【図12】実施例6の非対称膜のSEM像である。
【図13】比較例3の水面展開膜のSEM像である。
【図14】等圧下でのガス透過性を測定するための等圧気体透過率測定装置の概略図である。
【図15】差圧下でのガス透過性を測定するためのガス透過性評価装置の概略図である。
【図16】水蒸気透過性を測定するための等圧気体透過率測定装置の概略図である。
【図17】微粒子遮断性を測定するための測定装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、場合により図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0020】
(リーファーコンテナ)
本実施形態のリーファーコンテナは、後述する換気用フィルタを介して換気が行われるものであり、例えばコンテナの筐体の一部を換気用フィルタに置換したものとすることができる。換気用フィルタを介した換気は、例えば内気と外気との濃度差を利用したり、内気と外気との間に圧力差を生じさせたりすることにより行うことができる。換気用フィルタを介して換気を行うための手段としては、従来公知の手段を適用してもよく、以下に示す構成を適用してもよい。
【0021】
<構成>
内部に存在する内気の温度調整が行われる筐体と、該筐体内の特定種類のガス濃度を検出するガス濃度検出手段と、外気が流れる外気流路及び前記筐体内に存在する内気が流れる内気流路を形成する流路形成部材と、一方の面が前記外気流路の外気と接触し、かつ他方の面が前記内気流路の内気と接触するように前記外気流路と前記内気流路との境界に配置された換気用フィルタと、外気流路における外気の流れ及び前記内気流路における内気の流れの少なくとも一方を発生させる送風手段と、該送風手段による送風制御を行う制御手段とを備え、該制御手段は、前記ガス濃度検出手段によって検出されたガス濃度に基づいて、前記送風手段による外気又は内気の少なくとも一方の送風制御を行うリーファーコンテナ。
【0022】
以下、上記構成を備える本発明のリーファーコンテナのより詳細な実施形態について説明する。なお、リーファーコンテナに収容される収容物は特に限定されるものではないが、本実施形態においては、好適な収容物である青果物を例にとって説明する。
【0023】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図1、図2に基づいて説明する。図1は、本第1実施形態のリーファーコンテナ1(以下、単に「コンテナ1」ともいう。)の構成を示す概念図である。
【0024】
図1に示すように、コンテナ1は、内部に青果物を収容可能な筐体10を備えている。本実施形態の筐体10は、青果物を貯蔵する冷蔵庫、冷凍庫あるいは冷凍コンテナとして構成されており、図示を省略しているが、内気を所望温度に調整するための空調装置が設けられている。空調装置は、空調風の冷却には周知の冷凍サイクルを用いることができ、空調風の加熱には周知のヒータ(電気式や燃焼式等)を用いることができる。
【0025】
筐体10には、筐体10の内部全体に内気を循環させるための内気循環送風機11が設けられている。また、筐体10には、内気中の酸素濃度を検出するためのOセンサ12、内気中の二酸化炭素濃度を検出するためのCOセンサ13、内気中の湿度を検出するための湿度センサ14が設けられている。
【0026】
また、筐体10には、換気用フィルタユニット20が設けられている。換気用フィルタユニット20には、外気流路22と内気流路23を形成する流路形成部材21が設けられている。流路形成部材21は、筐体10の壁面を境界にして、筐体10の外部と内部に跨るように設けられている。外気流路22と内気流路23との境界には、換気用フィルタ24が設けられている。つまり、筐体10の壁面の一部が換気用フィルタ24に置換されている。外気流路22では、筐体10の外部に存在する外気が換気用フィルタ24の表面に沿って流れることができ、内気流路23では、筐体10内に存在する内気が換気用フィルタ24の表面に沿って流れることができる。
【0027】
換気用フィルタ24は後述する非対称膜を備えるものである。非対称膜は単独で用いても、支持体により支持された非対称膜構造体として用いてもよい。
【0028】
外気流路22には、外気の流れを発生させるための外気循環送風機25が設けられている。また、内気流路23には、内気の流れを発生させるための内気循環送風機26が設けられている。これらの送風機25、26は、気体に運動エネルギーを与えたり圧力を高めたりする流体機械のうち圧縮比が2未満のものであり、具体的にはファンやブロア等である。これらの送風機25、26は、送風ファンとこれを回転駆動するモータとを備えている。
【0029】
図1に示す例では、外気流路22の外気は左から右に向かって流れ、内気流路23の内気は右から左に向かって流れるようになっている。なお、筐体10の内部では、内気循環送風機11によって内気が循環する流れが発生しているが、内気循環送風機26が作動していない場合には、内気流路23には内気の流れがほとんど発生しない。
【0030】
外気循環送風機25又は内気循環送風機26の非作動時には、換気用フィルタ24の表面近傍で気体が滞留し、外気と内気とで気体の濃度差が小さくなって、換気用フィルタ24を通した換気が進行し難くなる。このため、外気循環送風機25又は内気循環送風機26の少なくとも一方を作動させることで、換気用フィルタ24の表面近傍での気体の滞留を解消させ、換気を促進させることができる。
【0031】
コンテナ1には、制御部50が設けられている。制御部50は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。制御部50は、Oセンサ12、COセンサ13、湿度センサ14のセンサ信号が入力する。そして、制御部50は、これらのセンサ信号に基づいて、外気循環送風機25と内気循環送風機26に制御信号を出力して送風制御を行う。
【0032】
青果物は、筐体10内に収容された後にも呼吸するため、筐体10内は大気と比較して酸素濃度が低く二酸化炭素濃度が高い状態になる。青果物は、その種類ごとに低酸素濃度、高二酸化炭素濃度状態で呼吸を抑制でき、鮮度を長期間保持できることが知られている。一方、過度に酸素濃度が低くなると、青果物の代謝異常が起きて、異味や異臭を生じたり、腐敗するおそれがある。また、青果物は多量の水分を含有しており、筐体10内に収容された状態では、青果物から放出された水分で、筐体10内の相対湿度が高くなることが多い。
筐体10内の相対湿度は、高すぎると結露が発生し、低すぎると青果物が萎れ、どちらの状態も青果物の鮮度の保持する上で好ましくない。以上のことから、筐体10内の酸素濃度と二酸化炭素濃度と湿度を、青果物の貯蔵に適した所望の範囲内に調整する必要がある。
【0033】
青果物の種類によって最適な酸素濃度、二酸化炭素濃度、湿度が異なっている。例えば、バナナは、酸素濃度が2〜5%、二酸化炭素濃度が2〜5%、相対湿度が90〜95%の範囲内で貯蔵することが望ましい。イチゴは、酸素濃度が5〜10%、二酸化炭素濃度が15〜20%、相対湿度が90〜95%の範囲内で貯蔵することが望ましい。マンゴーは、酸素濃度が3〜5%、二酸化炭素濃度が5〜10%、相対湿度が85〜90%の範囲内で貯蔵することが望ましい。このため、本実施形態では、制御部50がOセンサ12、COセンサ13、湿度センサ14のセンサ信号に基づいて外気循環送風機25と内気循環送風機26の風量を制御することで、酸素濃度、二酸化炭素濃度、相対湿度を調整している。
【0034】
以下、制御部50が実行する外気循環送風機25と内気循環送風機26の送風制御について説明する。本制御は、制御部50のROM等に格納された制御プログラムにしたがって実行される。
【0035】
ここでは収容対象物としてバナナを用いた例を示すが、青果物の種類が変わればその制御方法も変わる。酸素濃度及び二酸化炭素濃度は、下記の式を満たしながらそれぞれが変化する。
【0036】
酸素濃度+二酸化炭素濃度≒21%
例えば、酸素濃度が15%のときは、二酸化炭素濃度は6%である。また一方で、バナナの鮮度維持に障害の出る酸素濃度の下限値及び二酸化炭素濃度の上限値は、それぞれ1%及び7%である(出典:書籍名:GUIDE to FOOD TRANSPORT、1.Controlled Atmosphere、出版社:MercantilaPublishers)。したがって、バナナの鮮度維持に必要な濃度域(酸素濃度:2〜5%、二酸化炭素濃度:2〜5%)と障害の出る濃度域(酸素濃度:1%以下、二酸化炭素濃度:7%以上)とのバランスで、どちらに主眼を置くかが決まる。バナナの場合は、二酸化炭素濃度に主眼を置いて制御することになる。したがって、本実施形態のコンテナ1では、二酸化炭素濃度を2〜5%、酸素濃度を16〜19%の濃度域にすることが必要となる。
【0037】
以下、本実施形態のコンテナ1にバナナを収容した場合の送風機25、26の送風制御の一例を示す。
【0038】
まず、COセンサ13で検出した二酸化炭素濃度が所望範囲の上限値(バナナの場合は5%)に達したか否かを判定する。この結果、二酸化炭素濃度が所望範囲の上限値を上回っている場合には、外気循環送風機25及び内気循環送風機26を作動させ、換気用フィルタ24の両面に外気と内気を供給する。外気循環送風機25及び内気循環送風機26の送風量は、COセンサ13で検出した二酸化炭素濃度に基づいてファン回転出力を調整(例えば、ON−OFF制御、PID制御)すればよい。
【0039】
これにより、換気用フィルタ24を介して二酸化炭素濃度が高い内気から二酸化炭素濃度が低い外気に二酸化炭素ガスが移動し、筐体10内の二酸化炭素濃度が降下する。このとき、外気と内気との間で濃度差が発生している他のガス(O、HO)についても、外気循環送風機25及び内気循環送風機26を作動させることで、外気と内気との間で濃度差が小さくなる。
【0040】
外気循環送風機25及び内気循環送風機26を作動開始させた後、二酸化炭素濃度が所望範囲の下限値(バナナの場合は2%)に到達しているか否かを判定する。この結果、二酸化炭素濃度が所望範囲の下限値に到達している場合には、外気循環送風機25及び内気循環送風機26の両方あるいは一方の作動を停止させる。これにより、換気用フィルタ24を介した外気と内気との間でのガス移動が停止し、筐体10内の二酸化炭素濃度の降下が停止する。その後、青果物の呼吸によって筐体10内の二酸化炭素濃度が増加した場合に、上記処理を繰り返し行う。
【0041】
次に、二酸化炭素濃度が所望範囲内(バナナの場合は2〜5%)であり、かつ、酸素濃度が所望範囲内(バナナの場合は16〜19%)である場合には、湿度センサ14で検出した湿度が所望範囲の上限値(バナナの場合は95%)を上回っているか否かを判定する。この結果、湿度が所望範囲の上限値を上回っている場合には、外気循環送風機25及び内気循環送風機26を作動させ、換気用フィルタ24の両面に外気と内気を供給する。外気循環送風機25及び内気循環送風機26の送風量は、湿度センサ14で検出した湿度に基づいて調整すればよい。具体的には、湿度センサ14で検出した湿度と所望範囲の上限値との差が大きい程、換気用フィルタ24での分子交換効率を高めるために外気循環送風機25及び内気循環送風機26の送風量を多くすればよい。
【0042】
これにより、換気用フィルタ24を介して湿度が高い内気から湿度が低い外気に水蒸気が移動し、筐体10内の湿度が低下する。このとき、外気と内気との間で濃度差が発生している他のガス(O、CO)についても、外気循環送風機25及び内気循環送風機26を作動させることで、外気と内気との間で濃度差が小さくなる。
【0043】
なお、内気の湿度より外気のほうが高湿度である場合には、外気循環送風機25及び内気循環送風機26を作動させても、筐体10内の湿度を低下させることはできないので、外気の湿度を検出する湿度センサを設け、内気の湿度が所望範囲の上限値を上回っていることに加え、内気の湿度より外気のほうが低湿度である場合に、外気循環送風機25及び内気循環送風機26を作動させるようにしてもよい。
【0044】
外気循環送風機25及び内気循環送風機26を作動開始させた後、湿度が所望範囲の下限値(バナナの場合は95%)に到達しているか否かを判定する。この結果、湿度が所望範囲の下限値に到達している場合には、外気循環送風機25及び内気循環送風機26の作動を停止させる。これにより、換気用フィルタ24を介した外気と内気との間でのガス移動が停止し、筐体10内の湿度の低下が停止する。その後、青果物からの水分蒸発によって筐体10内の湿度が上昇した場合に、上記処理を繰り返し行う。
【0045】
また、外気循環送風機25及び内気循環送風機26の作動中は、外気循環送風機25で発生させる外気の流量と内気循環送風機26で発生させる内気の流量を異ならせることで、換気用フィルタ24での気体の透過を促進させることができる。以下、この点について説明する。
【0046】
図2は、外気流路22の外気の流れと内気流路23の内気の流れを示す断面図である。図2に示す例では、本実施形態では、外気流路22を流れる外気の流量Q1より内気流路23を流れる内気の流量Q2のほうが多くなっており、外気流路22の静圧P1より内気流路23の静圧P2のほうが高くなっている。このように、外気の流量Q1と内気の流量Q2が異なり、外気流路22の静圧P1と内気流路23の静圧P2が異なっている場合、破線で示すように、換気用フィルタ24の表面に垂直方向の流れを発生させることができる。これにより、換気用フィルタ24の表面近傍での気体の滞留が軽減若しくは消滅し、換気用フィルタ24の分子交換効率を向上させることができ、気体の透過を促進させることができる。
【0047】
以上説明した本実施形態によれば、換気用フィルタ24を用いることで、外気と内気とで濃度差が発生した気体(O、CO、HO)のみを移動させることができる。これにより、外気と内気との間で濃度差がない気体(例えばN)の移動が生じないので、温度調整(本実施形態では冷却)された内気が必要以上に外気に放出されることを防止でき、コンテナ1の熱負荷を小さくすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、Oセンサ12、COセンサ13、湿度センサ14のセンサ信号に基づいて外気循環送風機25及び内気循環送風機26の風量制御を行うことで、筐体10内の酸素濃度、二酸化炭素濃度、湿度を所望範囲に調整することができる。これにより、筐体10に収容される青果物の種類が変更されても、筐体10内の酸素濃度、二酸化炭素濃度、湿度を青果物の種類に適した範囲に保持することができる。
【0049】
また、本実施形態では、外気と内気との間の濃度差によって気体が換気用フィルタ24を移動するので、送風機25、26によって外気と内気の流れを発生させるという簡易な構成で、筐体10内のガス濃度を調整することができる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図3を用いて説明する。以下、上記第1実施形態と同様の部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0051】
図3は、本第2実施形態のコンテナ1の構成を示す概念図である。図3に示すように、本第2実施形態では、内気流路23に内気循環送風機26が設けられておらず、内気流路23の入口部に内気流路切替ドア27が設けられている。図3に示す例では、内気循環送風機11によって発生する内気の流れが反時計方向となっている。このため、筐体10の上部に配置されている内気流路23では、右側が入口部であり、左側が出口部となっている。
【0052】
内気流路切替ドア27は、モータによって回動可能に構成されている。内気流路切替ドア27が破線で示す閉鎖位置にある場合は、内気循環送風機11によって発生する内気の流れが内気流路23に導入されない。一方、内気流路切替ドア27が実線で示す開放位置にある場合は、内気循環送風機11によって発生する内気の流れが内気流路23に導入される。また、内気流路切替ドア27の開閉角度を調整することで、内気流路23に流れる内気の流量を調整することができる。すなわち、内気流路切替ドア27の開閉角度を大きくすることで、内気流路23に流れる内気の流量を多くすることができ、内気流路切替ドア27の開閉角度を小さくすることで、内気流路23に流れる内気の流量を少なくすることができる。
【0053】
内気流路切替ドア27は、制御部50から出力される制御信号によって作動する。つまり、本第2実施形態では、制御部50がOセンサ12、COセンサ13、湿度センサ14のセンサ信号に基づいて、外気循環送風機25と内気流路切替ドア27の開閉制御を実行するように構成されている。
【0054】
以上説明した本第2実施形態によれば、内気循環送風機11によって発生する内気の流れを利用することで、動力を備えた内気循環送風機26を省略することができ、コンテナ1の構成を簡素化することができる。
【0055】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について図4、図5を用いて説明する。本第3実施形態では、上記各実施形態と比較して、外気循環送風機25の構成が異なっている。以下、上記各実施形態と同様の部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0056】
図4は、本第3実施形態の換気用フィルタユニット20の断面構成の一例を示しており、内気循環送風機26が設けられた上記第1実施形態の変形例に相当する。図4に示す例では、内気循環送風機26には、送風ファン26aと、送風ファン26aを回転駆動するモータ26bと、モータ26bの駆動軸に設けられた駆動ギア部26cとを備えている。また、外気送風機28は、送風ファン28aと従動ギア部28bとを備えている。本第3実施形態の外気送風機28はモータを有しておらず、内気循環送風機26に従動的に作動する送風ファンとして構成されている。
【0057】
さらに、内気循環送風機26のモータ26bの回転駆動力を外気送風機28に伝達するための動力伝達部材29が設けられている。動力伝達部材29は、回転軸29aと、その両端に設けられたギア部29b、29cとを備えている。動力伝達部材29の回転軸29aは、外気流路22と内気流路23に跨るように設けられている。回転軸29aの内気流路23側の端部に設けられた内気側ギア部29bは、内気循環送風機26の駆動ギア部26cと噛み合っており、外気流路22側の端部に設けられた外気側ギア部29cは、外気送風機28の従動ギア部28bと噛み合っている。
【0058】
このような構成により、内気循環送風機26が作動すると、内気循環送風機26のモータ26bは、内気循環送風機26の送風ファン26aを回転駆動すると同時に、外気送風機28を回転駆動することができる。これにより、内気流路23に内気の流れが発生すると同時に、外気流路22に外気の流れが発生する。
【0059】
図5は、本第3実施形態の換気用フィルタユニット20の断面構成の他の例を示しており、内気循環送風機26が設けられていない上記第2実施形態の変形例に相当している。図5に示す例は、図4に示した例と動力伝達部材29の構成が異なっている。図5の動力伝達部材29は、回転軸29aの内気流路23側の端部には、内気の流れを受けて回転するファン29dが設けられている。つまり、図5に示す例では、内気流路23を流れる内気の流体エネルギーを駆動力として動力伝達部材29が回転し、外気送風機28を回転駆動する。これにより、内気流路23に内気の流れが発生すると同時に、外気流路22に外気の流れが発生する。
【0060】
以上説明した本第3実施形態によれば、動力(モータ)を備えた外気循環送風機25を省略することができ、外気の流れを発生させる送風手段の構成を簡略化することができる。なお、図4に示した構成において、外気流路22と内気流路23に設けた装置の関係を逆にしてもよい。つまり、外気流路22にモータを備える外気循環送風機25を設け、内気流路23にモータを備えない内気送風機を設け、外気循環送風機25の回転駆動力を動力伝達部材29を介して内気送風機に伝達するようにすればよい。
【0061】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について図6を用いて説明する。以下、上記各実施形態と同様の部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0062】
図6は、本第4実施形態のコンテナ1の概念図である。図6に示すように、本実施形態のコンテナ1には、冷凍サイクルを構成するコンデンサ30とエバポレータ31とが設けられている。コンデンサ30は、外気が導入される外気導入流路32に配置され、エバポレータ31は、内気が通過する内気循環流路33に配置されている。外気導入流路32を通過する外気はコンデンサ30で高温冷媒と熱交換して温度上昇し、内気循環流路33を通過する内気はエバポレータ31で低温冷媒と熱交換して温度低下する。
【0063】
本実施形態では、外気導入流路32は筐体10の下側角部に設けられている。図示を省略しているが、冷凍サイクルの圧縮機等は、外気導入流路32におけるコンデンサ30の下方空間に設置されている。図6に示す例では、コンデンサ30とエバポレータ31は、筐体10の右側壁の近傍で略水平に配置されており、エバポレータ31は右側壁に向かって若干下方に傾斜している。また、エバポレータ31は、コンデンサ30の上方に位置している。
【0064】
本実施形態では、外気循環送風機25はコンデンサ30に外気を送風するコンデンサファンとして構成され、内気循環送風機26はエバポレータ31に内気を送風するエバポレータファンとして構成されている。外気循環送風機25は、コンデンサ30の空気流れ下流側に設けられており、外気循環送風機25により吸引される外気がコンデンサ30に供給される。内気循環送風機26は、エバポレータ31の空気流れ上流側に設けられており、内気循環送風機26から押し出された内気がエバポレータ31に供給される。なお、本実施形態のコンテナ1は、冷凍コンテナとして構成されている。このため、内気は常時エバポレータ31を通過して冷却される。
【0065】
筐体10の内部には、内気が循環する庫内と外気が導入される庫外に仕切る隔壁34が設けられている。本実施形態の換気用フィルタ24は、隔壁34に設けられている。換気用フィルタ24は、外気導入流路32におけるコンデンサ30より空気流れ下流側、かつ、内気循環流路33におけるエバポレータ31より空気流れ下流側に設けられている。外気導入流路32におけるコンデンサ30より空気流れ下流側は、コンデンサ30で加熱された外気が流れる。このようなコンデンサ30で加熱された外気とエバポレータ31で冷却された低温の内気とを換気用フィルタ24を介して接触させた場合、熱損失が大きくなり、コンテナ1の冷却効率が低下することとなる。このため、本実施形態では、コンデンサ30をバイパスして外気流路22に外気を取り込むためにバイパス流路35が設けられている。
【0066】
図6では、外気流路22とバイパス流路35を破線で示している。バイパス流路35は、外気導入流路32におけるコンデンサ30の空気流れ下流側に設けられており、外気循環送風機25と紙面垂直方向にずれて配置されている。バイパス流路35より導入された外気は、コンデンサ30を通過することなく換気用フィルタ24に到達するので、コンデンサ30の熱の影響を受けることがない。本実施形態のバイパス流路35は、換気用フィルタ24に対して垂直に形成されている。このため、バイパス流路35に導入された外気は、直角に曲がった後、外気流路22を流れる。
【0067】
内気流路23には、内気流路23と内気循環流路33とを連通又は遮断するための内気流路切替ドア27a,27bが設けられている。内気流路23の空気流れ上流側には、第1内気流路切替ドア27aが設けられ、空気流れ下流側には第2内気流路切替ドア27bが設けられている。上記第2実施形態と同様、各内気流路切替ドア27a,27bは、モータによって回動可能に構成されている。各内気流路切替ドア27a,27bは、各センサ12〜14からのセンサ信号に基づいて制御部50(図6では図示省略)によって開閉制御される。
【0068】
図6に示す例では、外気流路22における外気の流れ方向が下から上に向かう方向であり、内気流路23における内気の流れ方向が上から下に向かう方向となっている。つまり、本実施形態では、換気用フィルタ24を介して内気と外気の流れ方向が反対となる対向流となっている。この対向流と、内気と外気の流れ方向が直交する直交流と、内気と外気の流れ方向が並行する並行流を比較すると、換気用フィルタ24の分子交換効率は、対向流が最も高く、次いで直交流、並行流の順となる。このため、換気用フィルタ24を介する内外気の流れを対向流とすることで、換気用フィルタ24により分子交換を効果的に行うことができる。なお、換気用フィルタ24を介する内外気の熱交換効率も、対向流が最も高く、次いで直交流、並行流の順となり、対向流が最も熱損失が大きくなる。このため、換気用フィルタ24による分子交換効率と熱損失のバランスを図り、換気用フィルタ24を介する内外気の流れを直交流としてもよい。
【0069】
以上説明した本第4実施形態によれば、外気循環としてコンデンサファンを用い、内気循環送風機26としてエバポレータファンを用いることで、既設の装置を利用して換気用フィルタ24に外気と内気を供給することができる。これにより、専用の外気循環送風機25や内気循環送風機26を設ける場合に比較して、コンテナ1の構成を簡素化することができる。
【0070】
また、外気流路22に外気を取り入れるためのバイパス流路35を設けることで、外気導入流路32におけるコンデンサ30の空気流れ下流側に設けられた換気用フィルタ24に、コンデンサ30の熱の影響を受けることなく外気を供給できる。この結果、外気流路22の外気と内気流路23の内気の温度差を小さくして熱損失を小さくすることができ、換気用フィルタ24を介して内外気が接触することによるシステム効率の低下を抑制できる。
【0071】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について図7を用いて説明する。本第5実施形態では、上記第4実施形態に比較して、換気用フィルタ24の位置が異なっている。以下、上記各実施形態と同様の部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0072】
図7は、本第5実施形態のコンテナ1の概念図である。本実施形態においても、換気用フィルタ24は外気導入流路32と内気循環流路33とを仕切る隔壁34に設けられている。本実施形態では、換気用フィルタ24は、外気導入流路32におけるコンデンサ30より空気流れ上流側、かつ、内気循環流路33におけるエバポレータ31より空気流れ下流側に設けられている。換気用フィルタ24の外気側近傍には、外気流路22を形成するための外気流路形成部材36が設けられている。外気導入流路32に導入された外気は、外気流路形成部材36を回り込んで外気流路22に流入するので、外気導入流路32に導入された外気が直接換気用フィルタ24に吹きつけることがない。
【0073】
外気流路形成部材36は、外気導入流路32におけるコンデンサ30より空気流れ下流側に至るまで形成されている。このため、外気流路22を通過した外気は、コンデンサ30を通過することなく、外気導入流路32におけるコンデンサ30より空気流れ下流側に流れることができる。
【0074】
以上説明した本第5実施形態によっても、外気循環送風機25としてコンデンサファンを用い、内気循環送風機26としてエバポレータファンを用いることで、既設の装置を利用して換気用フィルタ24に外気と内気を供給することができ、コンテナ1の構成を簡素化することができる。また、本第5実施形態では、外気導入流路32におけるコンデンサ30より空気流れ上流側に換気用フィルタ24を配置しているので、上記第4実施形態のようにバイパス流路35を設ける必要がない。
【0075】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態について図8を用いて説明する。本第6実施形態では、上記第4、第5実施形態と比較して、換気用フィルタ24の位置が異なっている。以下、上記各実施形態と同様の部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0076】
図8は、本第6実施形態のコンテナ1の概念図である。本実施形態においても、換気用フィルタ24は外気導入流路32と内気循環流路33とを仕切る隔壁34に設けられている。本実施形態では、換気用フィルタ24は、外気導入流路32におけるコンデンサ30より空気流れ下流側、かつ、内気循環流路33におけるエバポレータ31より空気流れ下流側に設けられている。
【0077】
本実施形態では、換気用フィルタ24は、隔壁34におけるエバポレータ31に対向する面に配置されており、換気用フィルタ24はエバポレータ31の直下に位置している。このため、除霜運転時にエバポレータ31から落下した水滴が換気用フィルタ24に流入した場合には、換気用フィルタ24の透過性能の低下を招くおそれがある。そこで、本実施形態では、換気用フィルタ24への水滴の流入を防ぐために、隔壁34における換気用フィルタ24の近傍にリブ37が設けられている。図8に示す例では、隔壁34におけるエバポレータ31に対向する面が若干左下がりになっているため、水滴が左方向に流れる。このため、リブ37は隔壁34における換気用フィルタ24の右側に設けられている。
【0078】
外気導入流路32におけるコンデンサ30より空気流れ下流側は、コンデンサ30で加熱された外気が流れる。このようなコンデンサ30で加熱された外気とエバポレータ31で冷却された低温の内気とを換気用フィルタ24を介して接触させた場合、熱損失が大きくなり、コンテナ1の冷却効率が低下することとなる。このため、本実施形態では、上記第4実施形態と同様、換気用フィルタ24の外気流路22に外気を取り込むためにバイパス流路35が設けられている。これにより、外気導入流路32におけるコンデンサ30の空気流れ下流側に設けられた換気用フィルタ24に、コンデンサ30の熱の影響を受けることなく外気を供給できる。この結果、外気流路22の外気と内気流路23の内気の温度差を小さくして熱損失を小さくすることができ、システム効率の低下を抑制できる。
【0079】
図8に示す例では、外気流路22における外気の流れ方向が右から左に向かう方向であり、内気流路23における内気の流れ方向が右から左に向かう方向となっている。つまり、本実施形態では、換気用フィルタ24を介して内気と外気の流れ方向が同一となる並行流となっている。
【0080】
以上説明した本第6実施形態によっても、外気循環送風機25としてコンデンサファンを用い、内気循環送風機26としてエバポレータファンを用いることで、既設の装置を利用して換気用フィルタ24に外気と内気を供給することができ、コンテナ1の構成を簡素化することができる。また、第6実施形態では、換気用フィルタ24がエバポレータ31に対向する位置に設けられている。このため、換気用フィルタ24が内気循環送風機26に近くなり、内気循環送風機26から送り出された内気を容易に換気用フィルタ24に供給することができ、内気循環送風機26の動力を有効に利用できる。
【0081】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
【0082】
例えば、上記各実施形態では、コンテナ1として、筐体10内を冷凍又は冷蔵する例について説明したが、これに限らず、筐体10内の温度調整が行われていればよく、筐体10内を常温や常温より高温に温度調整する構成としてもよい。
【0083】
また、上記各実施形態では、Oセンサ12、COセンサ13、湿度センサ14を用いて送風機25、26の風量制御や内気流路切替ドア27の開閉制御を行うように構成したが、これらのセンサ12、13、14のうち1つ又は2つを用いて送風機25、26の風量制御や内気流路切替ドア27の開閉制御を行ってもよい。
【0084】
また、上記各実施形態では、外気流路22と内気流路23のそれぞれに送風手段を設けるように構成したが、これに限らず、外気流路22と内気流路23の少なくとも一方に送風手段が設けられていればよい。
【0085】
また、上記各実施形態では、筐体10に青果物を収納する例について説明したが、これに限らず、筐体10に収納する対象は、温度調整が必要で、かつ、収納中に内気中の特定種類のガス濃度が変化するものであればよい。例えば、異なる種類の生鮮食品であってもよく、生花等であってもよい。
【0086】
(非対称膜)
図9は、非対称膜の一実施形態を示す断面図である。図9に示す非対称膜100は、多孔質層3と、多孔質層3に隣接する緻密層5とから構成される。緻密層5は、当該技術分野において一般に「スキン層」と称される場合がある層である。多孔質層3及び緻密層5は、同じ高分子材料によって一体に形成されている。緻密層5には、ナノメートルサイズ又はマイクロメートルサイズの孔があいている。(例えば、20〜80ナノメートル)。
【0087】
また非対称膜100内にはフィラーを分散することもできる。非対称膜100は、多孔質層3及び緻密層5を有する非対称構造を形成している高分子材料のみ、あるいは高分子材料とフィラーとを主成分として含むことができるが、他の成分をさらに含んでいてもよい。
非対称膜100の厚さは0.1〜10μmであることが好ましい。
【0088】
緻密層5は、微粒子の透過を防ぎながら、気体を選択的に透過させる機能を有する。そのために、緻密層5は、微粒子の透過を十分に防止できる程度の緻密性を有していればよい。具体的には、緻密層5表面にナノメートルサイズ又はマイクロメートルサイズの孔を形成している。ただし、緻密層5内には、多孔質層3よりも細孔容積が小さくなる程度の細孔が、連泡あるいは半連泡状態で形成されている場合もある。
【0089】
気体の透過性を十分に確保するために、緻密層5の膜厚は1μm以下であることが好ましい。また、緻密層5の膜厚は好ましくは0.005μm以上であり、より好ましくは0.01μm以上である。
【0090】
多孔質層3は、気体の透過性を高いレベルに維持しつつ緻密層5の支持体として機能する。気体の透過性を十分に確保するために緻密層5の膜厚を薄くすると、緻密層5単独では膜全体の強度等が不足するおそれがあるが、多孔質層3が緻密層5を支持する支持体として機能することにより、非対称膜100全体としては十分な機械的強度や取扱い性が維持される。このような点から、多孔質層3の膜厚は1〜500μmであることが好ましい。
【0091】
本発明の目的を特に高いレベルで達成するために、非対称膜100は、ガスの透過速度がガスの分子量に依存するような膜であることが好ましい。言い換えると、非対称膜100中の気体の流れにおいてクヌーセン流(Knudsen flow)が支配的であることが好ましい。なお、「クヌーセン流」とは、分子の動きが問題となるほどの希薄な気体の流れをいい(化学大辞典3、化学大辞典編集委員会編、縮刷版44頁参照)、クヌーセン流が支配的であるとき、ガスの透過速度はその分子量の平方根の逆数に依存する。
【0092】
理想的なクヌーセン流によって気体が透過する膜においては、気体の透過係数Pはその分子量の平方根に逆比例する。例えば、透過するガス成分が酸素及び二酸化炭素である場合、それらの分離比αは、下記式(4)に示されるように1.17となる。式(4)において、P(O)及びP(CO)はそれぞれ酸素及び二酸化炭素の透過係数を示し、M(O)及びM(CO)はそれぞれ酸素及び二酸化炭素の分子量を示す。
【0093】
【数1】

【0094】
一方、「溶解拡散流」と呼ばれる気体の流れがある。溶解拡散流とは、膜に対する気体の溶解度と膜内での気体の拡散係数との積に依存する流れをいい、溶解拡散流による膜中の気体の透過速度はクヌーセン流に比べて一般に遅い。従来の高分子系の膜においては、膜を透過する気体の流れにおいて溶解拡散流が支配的である場合が多い。溶解拡散流が支配的である膜においては、一般的に二酸化炭素の透過速度が酸素の透過速度に対して大きいことから、酸素及び二酸化炭素の分離比αが、1.0未満(高分子によって異なるが、0.3〜0.7程度)であることが知られている。
【0095】
以上のように、分離比αの値を指標として、膜を透過する気体の流れの状態を評価することが可能である。実際の膜においてはそれぞれの種類の流れが複合して生じていると考えられるものの、分離比α(=P(O)/P(CO))が下記式(3)を満足するような範囲内にあれば、クヌーセン流が支配的であるとみなすことができる。酸素透過係数P(O)及び二酸化炭素透過係数P(CO)は、23±2℃、膜間の圧力(全圧)差が実質的にない条件で測定される。
1.0<P(O)/P(CO)<1.70 …(3)
【0096】
非対称膜100においてクヌーセン流が支配的である理由は必ずしも明らかでないが、本発明者らは以下のように考えている。
【0097】
まず、非対称膜100の気体透過係数は緻密層5の透過性に依存し、多孔質層3の影響は少ないと考えられる。ここで、緻密層5の表面に形成された孔及び/又は緻密層5の内部の空間でクヌーセン流が生じ、その他の緻密層5においては溶解拡散流が生じていると考えられる。このとき、気体がクヌーセン流により透過する流路が溶解拡散流により透過する流路よりも多いためにクヌーセン流が支配的となり、気体の透過性が飛躍的に向上すると推察される。また、溶解拡散流により気体が透過する部分においてチリやホコリ等の大気中の浮遊物質を除去することが可能となると考えられる。
【0098】
また、上述のように非対称膜100内にフィラーを分散した場合には、緻密層5の表面に形成された孔及び/又は緻密層5の内部の空間に加えて、フィラーとポリマーとの界面の隙間でもクヌーセン流が生じるため、非対称膜100の気体透過性がさらに向上する。
【0099】
(高分子材料)
(I)単量体組成物
上記高分子材料は、下記式(1)で示される単量体を含む単量体組成物を重合することによって得られる。
【化3】

【0100】
式(1)において、R1は炭素数1〜12のアルキル基及び/又は炭素数6〜10のアリール基である。炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、ブチル基、ペンチル基が挙げられ、メチル基が好ましい。炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
【0101】
aは1〜3の整数であり、好ましくは3である。bは0〜2の整数であり、好ましくは0又は1であり、最も好ましくは0である。
【0102】
Xは下記式(i)で示される鎖状ポリシロキサン残基、又は下記式(ii)で示される環状ポリシロキサン残基である。
【化4】


式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜12のアルキル基であり、より具体的にはRについて上述した基が包含され、好ましくはメチル基である。dは1〜5の整数であり、cは3〜5の整数である。
【0103】
式(1)で示される単量体としては、下記のものが例示される。なお、式中、Meはメチル基を表す。
【0104】
【化5】

【0105】
【化6】

【0106】
式(1)で示される単量体は、下記式(5)又は(6)で示されるビニル基含有化合物とシクロペンタジエンのDiels−Alder反応によって調製することができる。
【化7】


(ここで、R1、X、aは上述のとおりである。)
【0107】
【化8】


(ここで、R1、R、cは上述のとおりである。)
【0108】
式(1)で示される単量体において、Xが上記式(i)で示される基であるものを調製するビニル基含有化合物の例として、トリストリメチルシロキシビニルシランを、Xが上記式(ii)で示される基であるものを調製するビニル基含有化合物の例として、上記式(6)で示されるビニル基含有化合物を例示することができる。
【0109】
上記単量体組成物は、下記式(4)で表される環状オレフィンを含んでいてもよい。
【0110】
【化9】

【0111】
式(4)において、R〜Rは、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基及びハロゲン化炭化水素基から選ばれる基、又はオキセタニル基及びアルコキシカルボニル基、ポリオキシアルキレン基から選ばれる極性基、又はアルコキシシリル基から選ばれる基である。また、RとR又はRとRとが、それぞれが結合する炭素原子とともに脂環構造、芳香環構造、カルボイミド基又は酸無水物基を形成してよい。bは0〜2の整数である。好ましくは、Rは水素原子である。
【0112】
上記脂環構造としては炭素数4〜10のものが挙げられる。これらの構造を例示すると下記のとおりである。なお、下記例において、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す。
【0113】
【化10】

【0114】
(II)付加重合体
付加重合体は、上記式(1)で示される単量体に由来する下記式(7)で示される繰り返し単位を含む。非対称膜の微小孔のサイズを制御する場合には、後述する開環重合体よりも付加重合体を用いたほうが、より微小な孔を有する非対称膜が得られるので好ましい。
【0115】
【化11】


(ここで、R、X、a、bは上述のとおりである。なお、付加重合体中の繰り返し単位(7)について、R、X、a、bはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【0116】
上記付加重合体は、上記(7)で示される繰り返し単位に加えて、式(4)で示される単量体に由来する下記式(8)で示される繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。繰り返し単位(7)と(8)の結合は、ランダムである。
【0117】
【化12】


(ここで、R〜R、bは上述のとおりである。なお、付加重合体中の繰り返し単位(8)について、R〜R、bはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【0118】
式(8)の繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位数の0〜60%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0〜40%である。該割合の上限値を超えると、式(1)のXによる効果が低下する傾向がある。
【0119】
該重合体は、GPCで求められるポリスチレン換算の数平均重量分子量が、10,000〜2,000,000であることが好ましく、より好ましくは300,000〜1,000,000である。該分子量が前記上限値を越えるものは現実的に合成が難しく、一方、該分子量が前記下限値未満では膜の強度が低下する傾向がある。
【0120】
付加重合は、定法に従い、トルエンやキシレンなどの芳香族系炭化水素溶媒に上述の単量体組成物を溶解して、重合触媒と助触媒の存在下で、常圧下20〜40℃の温度で、不活性ガス雰囲気下攪拌して重合させる。重合触媒としては、周期律表第8族元素、9族元素、10族元素より選択された、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pb)及び白金(Pt)などの中心金属とするメタロセン錯体が挙げることができ、好ましくはニッケル(Ni)又はパラジウム(Pd)のメタロセン触媒が挙げられる。助触媒としては有機アルミニウム化合物を用いることができ、好ましくはメチルアルミノキサンである。
【0121】
上記触媒及び助触媒は、以下の範囲の使用量で用いられる。
触媒は式(1)及び(2)で示される単量体の合計1モルに対して0.01〜100ミリモル原子が好ましい。また助触媒は触媒1モルに対して0.5〜10,000モルが好ましい。
【0122】
また、必要に応じて、分子量調整剤を重合系中に添加してもよい。分子量調整剤としては水素、エチレン、ブテン、ヘキセンなどのα−オレフィン、スチレン、3−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物、エチルビニルエーテルなどの不飽和エーテル、トリス(トリメチルメトキシ)ビニルシラン、ジビニルジヒドロシラン、ビニルシクロテトラシロキサンなどのビニルケイ素化合物が挙げられる。
【0123】
なお、上述した溶媒と単量体との比率、重合温度、重合時間、分子量調整剤の量は、用いる触媒、単量体構造などに著しく影響を受けるため、一概に限定することが難しい。上記特定構造の重合体を得るべく、目的に応じて使い分ける必要がある。
重合触媒の量と分子量調整剤の添加量、単量体から重合体への転化率、あるいは重合温度によって、重合体の分子量が調節される。
【0124】
重合停止は、水、アルコール、ケトン、有機酸などから選ばれた化合物によって行われる。重合体溶液に、乳酸、リンゴ酸、シュウ酸などの酸の水とアルコール混合物を添加することで、触媒残渣を重合体溶液から分離・除去することができる。また、触媒残渣の除去には、活性炭、珪藻土、アルミナ、シリカなどを用いての吸着除去や、フィルタなどによるろ過分離除去などが適用できる。
【0125】
重合体は、重合溶液をメタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類中に入れて、凝固し、通常60℃〜150℃で6〜48時間減圧乾燥することにより得ることができる。この工程で、重合体溶液中に残存する触媒残渣や未反応モノマーも除去される。また、シロキサンを含有する未反応モノマーは、上記アルコール類やケトン類にオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどの環状ポリシロキサンを混合した溶媒を用いることで容易に除去することができる。
【0126】
(III)開環重合体
開環重合体は、上記式(1)で示される単量体に由来する下記式(9)で示される繰り返し単位を含む。
【0127】
【化13】


(ここで、R、X、a、bは上述のとおりである。なお、開環重合体中の繰り返し単位(9)について、R、X、a、bはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【0128】
上記開環重合体は、上記繰り返し単位(9)に加えて、上記式(4)で示される単量体に由来する下記式(10)の繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。単位(9)と(10)の結合は、ランダムである。
【0129】
【化14】


(ここで、R〜R、bは上述のとおりである。なお、開環重合体中の繰り返し単位(10)について、R〜R、bはそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【0130】
式(10)の繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位数の5%〜50%の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜30%である。該割合が、前記下限値未満であると、得られるポリマーの分子量が低いものしか得られず、被膜性が低下する傾向があり、上限値を超えると、式(1)のXによる効果が低下する傾向がある。
【0131】
上記重合体又は共重合体(以下、「重合体」と略す。)は、主鎖の炭素−炭素二重結合の少なくとも一部が水素化されたものであっても良い。水素化によって、重合体の熱的安定性が向上する。水素化率は、例えば、水素化前のポリシクロオレフィンのH−NMRスペクトルにおける主鎖炭素−炭素二重結合に由来するピーク強度に対する、水素化後のピーク強度を比較することより求めることができる。好ましくは、主鎖の炭素−炭素二重結合の50〜100%、より好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上が水素化されている。
【0132】
該重合体は、GPCで求められるポリスチレン換算の数平均重量分子量が、10,000〜2,000,000であることが好ましく、より好ましくは300,000〜1,000,000である。該分子量が前記上限値を越えるものは現実的に合成が難しく、一方、該分子量が前記下限値未満では膜の強度が低下する傾向がある。
【0133】
開環メタセシス重合は、定法に従い、トルエンやキシレンなどの芳香族系炭化水素溶媒に上述の単量体組成物を溶解して、重合触媒の存在下で、常圧下40〜60℃の温度で、窒素雰囲気下攪拌して重合させる。前記重合触媒としては、カルベン型錯体と称されるタングステン、モリブデンやルテニウム系錯体などが使用でき、好ましくは、Grubbs第一世代触媒、Grubbs第二世代触媒あるいはHoveyda−Grubbs触媒などが使用される。触媒の使用量は原料のモノマーに対し1〜1000ppmの濃度で重合させることができ、好ましくは5〜500ppmである。5ppmより少ないと重合速度が遅くて実用性に乏しく、500ppmより多いと経済的に好ましくない場合がある。
【0134】
得られた重合体の水素化反応は、例えば、水素化触媒の存在下に水素ガスを用いて、シリコーン変性ポリシクロオレフィンの主鎖炭素−炭素二重結合を飽和単結合に変換することにより行うことができる。
【0135】
用いる水素化触媒は、均一系触媒、不均一触媒等、特に限定されず、オレフィン化合物の水素化に際して一般的に用いられているものを適宜使用することができる。
【0136】
均一触媒としては、例えば、ウィルキンソン錯体として知られるジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、前記メタシシス重合触媒で説明したルテニウムカルベン錯体触媒、特開平7−2929、特開平11−109460、特開平11−158256、特開平11−193323等に記載されているルテニウム化合物からなる遷移金属錯体触媒等が挙げられる。
【0137】
不均一触媒の例としては、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の金属を、カーボン、シリカ、セライト、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた水素化触媒が挙げられる。より具体的には、例えば、ニッケル‐アルミナ、パラジウム‐カーボン等を用いることができる。これらの水素化触媒は単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0138】
これらの中でも、官能基等の副反応を起こすことなく、該重合体の主鎖炭素−炭素二重結合を選択的に水素化できる点から、ロジウム、ルテニウム等の貴金属錯体触媒及びパラジウム‐カーボン等のパラジウム担持触媒の使用が好ましく、特にはルテニウムカルベン錯体触媒が好ましい。
【0139】
該ルテニウムカルベン錯体触媒は、開環メタセシス反応触媒及び水素化触媒の双方として使用することができる。この場合には、開環メタセシス反応と水素化反応を連続的に行うことができる。該ルテニウムカルベン錯体触媒を使用して開環メタシシス反応と水素化反応を連続的に行う場合、エチルビニルエーテル等のビニル化合物やα−オレフィン等の触媒改質剤を添加して該触媒を活性化させてから、水素化反応を開始する方法も好ましく採用される。
【0140】
水素化反応は、有機溶媒中で行われることが好ましい。有機溶媒としては、生成する水素化物の溶解性により便宜選択することができ、上述の重合溶媒と同様の有機溶媒を使用することができる。したがって、重合反応後溶媒を入れ替えることなく、反応液又は該反応液からそのまま若しくは水素化触媒を追加添加して反応させることもできる。
【0141】
水素化反応の条件は、使用する水素化触媒の種類に応じて適宜選択すればよい。水素化触媒の使用量は、開環重合体100重量部に対して、通常0.01〜50重量部、好ましくは0.05から10重量部である。反応温度は100℃〜200℃、それ以上だと副反応が起こりやすくなる。水素の反応圧は通常0.01から10.0MPa、好ましくは0.1〜5.0MPaである。水素圧が0.01MPa以下だと水素化反応速度が低下する。5.0MPa以上だと高耐圧装置が必要となる。
【0142】
上記のように行われる水素化反応によって、主鎖炭素−炭素二重結合のうち50%以上、好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上を水素化することができる。
【0143】
(IV)フィラー
上記高分子材料には、ガス透過性を向上させる点から、フィラーを分散させることが好ましい。
【0144】
フィラーとしては、有機物フィラー又は無機物フィラーを用いることができる。フィラーの表面は親水性であっても、疎水性であっても構わないが、特に、親水性表面を有する無機物フィラーが好ましい。このような無機物フィラーとしては、例えば、シリカ、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛等の酸化物からなる酸化物系フィラーが挙げられる。これらの中で、シリカ系フィラーが好ましい。シリカ系フィラーとしては、例えば、球状シリカ、多孔質シリカ粒子、石英パウダー、ガラスパウダー、ガラスビーズ、タルク及びシリカナノチューブが挙げられる。
【0145】
気体の透過性を特に高めるために、フィラーは多孔質体フィラーであることが好ましい。多孔質体フィラーとしては、メソポーラスシリカ粒子、ナノポーラスシリカ粒子及びゼオライト粒子が好ましい。なお、メソポーラスシリカ粒子は細孔が形成されている粒径500〜1000nmの多孔質シリカ粒子であり、ナノポーラスシリカ粒子は細孔が形成されている粒径30〜100nmの多孔質シリカ粒子である。一般に、メソポーラスシリカ粒子は3〜7nmの細孔径を有し、ナノポーラスシリカ粒子は2〜5nmの細孔径を有する。多孔質体フィラーのように見かけ密度が低いフィラーを用いることにより、非対称膜の性能が大きく向上すると考えられる。
【0146】
必要に応じて、カップリング剤等を用いた表面処理、又は水和処理による親水化を施したフィラーを用いてもよい。
【0147】
フィラーの含有量は、上記高分子材料100質量部対して、典型的には5〜500質量部である。フィラーの含有量は11質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、70〜400質量部であることが特に好ましい。フィラーの含有量が5質量部未満であると、気体の透過性を向上させる効果が小さくなる傾向にあり、500質量部を超えると、非対称膜の機械的強度が低下して、薄膜化し難くなる傾向にある。
【0148】
(V)非対称膜の製法
上記非対称膜は、例えば、上述の高分子材料を基材上に塗布して溶液層を形成するステップと、溶液層から溶媒を部分的に除去して、高分子材料を含む緻密層を溶液層の基材とは反対側の表層部に形成させるステップと、緻密層が形成された溶液層を高分子材料の貧溶媒(凝固溶媒)中に浸漬して、高分子材料を含む多孔質層を形成させるステップとを備える方法により得ることができる。
【0149】
高分子材料を溶解する溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、又はケトン類が好ましく用いられる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン及びキシレンが挙げられる。脂肪族炭化水素としてはヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン及びシクロヘキサンが挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、クロロホルム、塩化メチレン及び四塩化炭素が挙げられる。エーテル類としてはテトラヒドロフラン及びジオキサンが挙げられる。ケトン類としてはエチルメチルケトンが挙げられる。
【0150】
高分子溶液の調製に際しては、相分離を促したり、ポリマーの溶解度、高分子溶液粘度を調節するために他の物質を加えたりして製膜することがしばしばある。このような製膜調製剤として高分子溶液に対して0.1%以上相溶性のある化合物を用いることができる。調整剤としては高分子溶液に溶解性のある塩、水、低級アルコール(メタノール、エタノール)、アミド系極性溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)などを用いることができる。
【0151】
緻密層を形成させる際、所望の厚さの緻密層が形成されるように、溶剤の除去の条件(乾燥方法、温度、時間等)が適宜調整される。
【0152】
多孔質層を形成させるために用いられる貧溶媒(凝固溶媒)としては、メタノール、エタノール及びプロパノール等のアルコール類、アセトン、又は水が好ましく用いられる。
【0153】
上記非対称膜は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変形が可能である。例えば、非対称膜がメッシュ体をさらに有していてもよい。この場合、多孔質層及び緻密層のうち少なくとも一方がメッシュ体に含浸していてもよい。あるいは、メッシュ体が多孔質層上若しくは緻密層上に積層されていてもよい。メッシュ体を有する非対称膜は、例えば、上述の混合液をメッシュ体に含浸させるか、又はメッシュ体上に塗布することにより作製できる。
【0154】
メッシュ体により、ガス透過性を向上させるとともに、膜の機械的強度を向上させ、外部応力による膜の破壊を防ぐことができる。メッシュ体は金属製でも樹脂製でもよいが、特に樹脂製が好ましい。メッシュ体を形成する樹脂としてはポリエステルテレフタレート(PET)及びポリプロピレン(PP)が挙げられる。メッシュ体の織り方としては平織、綾織、平畳織、及び綾畳織が挙げられる。
【0155】
メッシュ体の表面は、非対称膜の強度を向上させるために、密着向上剤(プライマー)で処理されていることが好ましい。密着向上剤としては、市販されているものを用いることができる。
【0156】
また、非対称膜が支持体上に形成されていてもよいし、非対称膜が中空糸状の膜であってもよい。
【0157】
(非対称膜構造体)
上述のコンテナ1においては、換気用フィルタとして、図10に示す非対称膜構造体150a、又は図11に示す非対称膜構造体150bを用いてもよい。
【0158】
図10の非対称膜構造体150aは、非対称膜100a及び支持体110aを備える。非対称膜100aは平面状であり、その片面に密着する平面状の支持体110aによって支持されている。なお、支持体110aは、例えば非対称膜100aの外周部等、非対称膜100aの一部のみに密着していてもよく、非対称膜100aに完全に密着していてもよい。
【0159】
図11の非対称膜構造体150bは、非対称膜100b及び支持体110bを備える。非対称膜100bは襞状であり、その片面に密着する襞状の支持体110bによって支持されている。なお、支持体110bは、非対称膜100bの一部のみに密着していてもよく、非対称膜100bに完全に密着していてもよい。
【0160】
非対称膜100a及び100bは、上述の高分子材料から形成される膜により構成されており、その厚さは0.1〜10μmであることが好ましい。支持体110a及び110bは、気体を透過するものであればよく、例えば、紙状の繊維部材、並びに孔径が0.1〜500μmの多孔質体及びメッシュが挙げられる。支持体の厚さは50〜500μmであることが好ましい。また、支持体110a及び110bは断熱材であることが好ましい。これにより、コンテナ1におけるガス濃度調整時の熱負荷をさらに小さくすることが可能となる。
【0161】
これらの非対称膜構造体150a及び150bによれば、非対称膜100a及び100bが支持体により支持されているため、非対称膜100a及び100bを薄くして透過する気体量を増加させるとともに、非対称膜構造体の強度を確保することができる。さらに、非対称膜構造体150bによれば、非対称膜100a及び100bの表面積が大きくなるため、気体の透過量をさらに増加させることができる。
【0162】
なお、上述の非対称膜構造体は、例えば、後工程で除去可能なフィルム上に上述の成膜加工方法により非対称膜を形成し、形成された非対称膜上に支持体を転写した後に、上記フィルムを除去することにより製造することができる。後工程で除去可能なフィルムとしては、水、溶剤、薬品等による洗浄により除去されるフィルムや、UV、EB等の照射により改質した後に除去されるフィルムが挙げられる。また、非対称膜上に支持体を転写する方法としては、非対称膜と支持体との間に接着剤や粘着剤を介在させ接着する方法や、加熱や溶剤による溶解等によって非対称膜と支持体とを接着する方法が挙げられる。
【実施例】
【0163】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0164】
(重合体製造)
重合体製造例1:トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン開環重合体(ポリマーA)の合成
窒素置換したガラス製容器に下記式(12)で表される単量体A20g(0.51mmol)とトルエン180gとを混合し40℃に昇温した。これにビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム(IV)ジクロリド12mg(0.015mmol)をトルエン4gに溶解した溶液を添加して、40℃において重合反応を行った。重合反応開始後、徐々に溶液の粘度は上昇し、20分後エチルビニルエーテル1gを加えることで重合を停止した。重合溶液を多量のメタノールに注いで沈殿物を凝集させ、粉砕洗浄後、濾別し、70℃で5時間減圧乾燥すると19.0gのポリマーAが得られた。分子量はトルエンを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによるポリスチレン換算値としてMn=550,000であった。
【化15】

【0165】
重合体製造例2:トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン-b-ノルボルネン付加共重合体(ポリマーB)の合成
窒素置換したガラス製容器に単量体A34.7g(0.089mol)、単量体B(ノルボルネン)8.3g(0.089mol)及びトリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート{[PhC][B(C]}37mg(40μmol)をトルエン140mlに溶解した。そこへ別途調整した触媒溶液(シクロペンタジエニル(アリル)パラジウム[CPdC]9mg(40μmol)、トリシクロへキシルホスフィン[PCy]12mg(40μmol)をトルエン15mlに溶解したもの)を添加し、室温(25℃)で5時間重合反応を行った。
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、60℃で5時間減圧乾燥したところ、30.5gのポリマーBが得られた。
得られたポリマーのGPC測定による分子量はMn=726,000、分子量分布Mw/Mn=1.51であった。H−NMRスペクトルにより、重合中の単量体A由来の構造体及びノルボルネン由来の構造体の組成比はA/B=46/54(mol/mol)であることを確認した。
【0166】
重合体製造例3:トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン−b−ノルボルネン付加共重合体(ポリマーC)の合成
重合体製造例2において、単量体Aと単量体Bの仕込み量をそれぞれ単量体A;44.7g(0.115mol)、単量体B;5.8g(0.062mol)とした以外は同様の方法で実験を行ったところ、34.1gのポリマーCが得られた。分子量はMn=601,000、分子量分布Mw/Mn=1.49であり、重合中の単量体A由来の構造体及びノルボルネン由来の構造体の組成比はA/B=67/33(mol/mol)であることを確認した。
【0167】
重合体製造例4:ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルノルボルネン-b-ノルボルネン付加共重合体(ポリマーD)の合成
重合体製造例2において、単量体Aを用いる代わりに下記式(13)で表される単量体Cを用い、単量体Cを28.0g(0.089mol)とした以外は同様の方法で実験を行ったところ、29.4gのポリマーDが得られた。分子量はMn=892,000、分子量分布Mw/Mn=1.62であり、重合中の単量体C由来の構造体及びノルボルネン由来の構造体の組成比はC/B=46/54(mol/mol)であることを確認した。
【化16】

【0168】
重合体製造例5:ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルノルボルネン−b−ノルボルネン付加共重合体(ポリマーE)の合成
重合体製造例4において、単量体Cと単量体Bの仕込み量をそれぞれ単量体C;36.2g(0.115mol)、単量体B;5.8g(0.062mol)とした以外は同様の方法で実験を行ったところ、29.4gのポリマーEが得られた。分子量はMn=724,000、分子量分布Mw/Mn=1.38であり、重合中の単量体C由来の構造体及びノルボルネン由来の構造体の組成比はC/B=68/32(mol/mol)であることを確認した。
【0169】
重合体製造例6:ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルノルボルネン付加重合体(ポリマーF)の合成
重合体製造例4において、単量体Cと単量体Bを用いる代わりに単量体Cのみを55.7g(0.177mol)を用いること以外は同様の方法で実験を行ったところ、30.6gのポリマーFが得られた。分子量はMn=632,000、分子量分布Mw/Mn=1.39であった。
【0170】
重合体製造例7:トリメチルシロキシメチルフェニルシリルノルボルネン−b−ノルボルネン付加共重合体(ポリマーG)の合成
重合体製造例2において、単量体Aを用いる代わりに下記式(14)で表される単量体Dを用い、単量体Dを27.0g(0.089mol)とした以外は同様の方法で実験を行ったところ、18.5gのポリマーGが得られた。分子量はMn=736,000、分子量分布Mw/Mn=1.24であり、重合中の単量体D由来の構造体及びノルボルネン由来の構造体の組成比はD/B=49/51(mol/mol)であることを確認した。
【化17】

【0171】
重合体製造例8:ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルノルボルネン−b−ノルボルネン付加共重合体(ポリマーH)の合成
重合体製造例7において、単量体Dと単量体Bの仕込み量をそれぞれ単量体D;34.8g(0.115mol)、単量体B;5.8g(0.062mol)とした以外は同様の方法で実験を行ったところ、20.7gのポリマーHが得られた。分子量はMn=479,000、分子量分布Mw/Mn=1.32であり、重合中の単量体D由来の構造体及びノルボルネン由来の構造体の組成比はD/B=66/34(mol/mol)であることを確認した。
【0172】
重合体製造例9:ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルノルボルネン付加重合体(ポリマーI)の合成
重合体製造例7において、単量体Dと単量体Bを用いる代わりに単量体Dのみを53.6g(0.177mol)を用いること以外は同様の方法で実験を行ったところ、25.7gのポリマーIが得られた。分子量はMn=467,000、分子量分布Mw/Mn=1.35であった。
【0173】
(非対称膜の作製)
実施例1
ポリマーAをテトラヒドロフラン(THF)とメタノールの混合溶液に溶解して、非対称膜作製用の溶液を準備した。溶液の組成はテトラヒドロフラン/メタノール/ポリマーA85/10/5質量%とした。
ガラス板上に厚さ180μmの枠を置き、その枠内にメッシュ体(材質:PET、開口率:45%、開口径:85μm)を敷き、そこに上記溶液をメッシュ体の厚みで流延した。その後25℃にて2秒間乾燥して、表層部に緻密層を形成させた。次いで、全体を凝固溶媒であるメタノールに浸漬したところ、ガラス板側に多孔質層が形成された。すなわち、多孔質層及び緻密層を有する非対称膜(膜厚:20μm)が形成された。
【0174】
実施例2
非対称膜作製用の溶液に、シリカ粒子である「NanoTek SiO」(登録商標、シーアイ化成社製、細孔なし、粒径(中心値):25nm、表面性状:親水性)をポリマーA100質量部に対して100質量部加えたことの他は実施例1と同様にして非対称膜を作製した。
【0175】
実施例3
ポリマーAに代えてポリマーBを用いたことの他は実施例1と同様にして非対称膜を作製した。
【0176】
実施例4
ポリマーAに代えてポリマーCを用いたことの他は実施例1と同様にして非対称膜を作製した。
【0177】
実施例5
ポリマーAに代えてポリマーDを用いたことの他は実施例1と同様にして非対称膜を作製した。
【0178】
実施例6
ポリマーAに代えてポリマーEを用いたことの他は実施例1と同様にして非対称膜を作製した。
【0179】
実施例7
ポリマーAに代えてポリマーFを用いたことの他は実施例1と同様にして非対称膜を作製した。
【0180】
実施例8
ポリマーAに代えてポリマーGを用いたことの他は実施例1と同様にして非対称膜を作製した。
【0181】
実施例9
ポリマーAに代えてポリマーHを用いたことの他は実施例1と同様にして非対称膜を作製した。
【0182】
実施例10
ポリマーAに代えてポリマーIを用いたことの他は実施例1と同様にして非対称膜を作製した。
【0183】
(水面展開膜の作製)
比較例1
ポリマーAをトルエンに溶解して、水面展開膜作製用の溶液を準備した。ポリマーAの濃度は溶液全体質量を基準として5質量%とした。この溶液を、支持体アイソポア(日本ミリポア社製、材質:ポリカーボネート、平均孔径0.22μm)上に、水面展開法により成膜した後、乾燥機にてトルエンと水分を除去し、平均厚み0.1μmの膜を得た。
【0184】
比較例2
ポリマーCをトルエンに溶解して、水面展開膜作製用の溶液を準備した。ポリマーCの濃度は溶液全体質量を基準として5質量%とした。この溶液を、支持体アイソポア(日本ミリポア社製、材質:ポリカーボネート、平均孔径0.22μm)上に、水面展開法により成膜した後、乾燥機にてトルエンと水分を除去し、平均厚み0.1μmの膜を得た。
【0185】
比較例3
ポリマーEをトルエンに溶解して、水面展開膜作製用の溶液を準備した。ポリマーEの濃度は溶液全体質量を基準として5質量%とした。この溶液を、支持体アイソポア(日本ミリポア社製、材質:ポリカーボネート、平均孔径0.22μm)上に、水面展開法により成膜した後、乾燥機にてトルエンと水分を除去し、平均厚み0.1μmの膜を得た。
【0186】
比較例4
ポリマーHをトルエンに溶解して、水面展開膜作製用の溶液を準備した。ポリマーHの濃度は溶液全体質量を基準として5質量%とした。この溶液を、支持体アイソポア(日本ミリポア社製、材質:ポリカーボネート、平均孔径0.22μm)上に、水面展開法により成膜した後、乾燥機にてトルエンと水分を除去し、平均厚み0.1μmの膜を得た。
【0187】
比較例5
ポリマーFをトルエンに溶解して、水面展開膜作製用の溶液を準備した。ポリマーFの濃度は溶液全体質量を基準として5質量%とした。この溶液を、支持体アイソポア(日本ミリポア社製、材質:ポリカーボネート、平均孔径0.22μm)上に、水面展開法により成膜した後、乾燥機にてトルエンと水分を除去し、平均厚み0.1μmの膜を得た。
【0188】
<膜の評価>
(1)孔の有無の確認
実施例で得られた非対称膜及び比較例で得られた水面展開膜について、その表面(非対称膜については緻密層側)を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、孔の有無を確認した。その結果を表1に示す。なお、図12は実施例6の非対称膜のSEM像であり、図13は比較例3の水面展開膜のSEM像である。
【0189】
(2)ガス(O及びCO)透過性
(等圧下)
実施例で得られた非対称膜及び比較例で得られた水面展開膜について、等圧気体透過率測定装置(デンソー社製、図14のガス透過性評価装置参照)を用い、下記の測定条件で、酸素及び二酸化炭素についての気体透過係数P(O)及びP(CO)を測定した。得られた気体透過係数P(O)及びP(CO)を膜の膜厚(L)で除して気体透過速度R(O)及びR(CO)を算出し、P(O)をP(CO)で除して分離比α(=P(O)/P(CO))を算出した。その結果を表1に示す。
【0190】
本評価装置での初期環境は、事前に酸素、二酸化炭素の濃度を調整したボンベ(例えば、酸素濃度:20.5%、二酸化炭素:4000ppm)から評価チャンバー内にガスを入れ、初期濃度環境を作った。評価チャンバー外側は、大気空気(酸素濃度:20.8〜20.9%、二酸化炭素:400〜600ppm)である。なお、膜設置部には仕切り板(図示せず)が備えられており、評価開始前に膜は仕切り板により外気と遮断されている。膜評価は、下記の測定条件下、膜設置部の仕切り板を取り除くことで開始され、評価チャンバー内外のガス交換を行った。すなわち、評価チャンバー内の2成分のガス濃度の変化から、酸素及び二酸化炭素についての気体透過速度を測定した。対象ガスの膜に対する流れ方向は、酸素は外から内へ、二酸化炭素は内から外へ流れる初期濃度環境とした。評価チャンバー内及び外の酸素及び二酸化炭素の濃度は、酸素センサ(チノー社製、型番:MG1200)と二酸化炭素センサ(ヴァイサラ社製、型番:GMP343)により測定し、データロガ(チノー社製、型番:KIDS ver6)に記録した。
<測定条件>
温度 :23±2度
膜間の圧力差 :なし
膜間のガス分圧差:酸素0.0013〜0.0066atm、二酸化炭素0.0001〜0.0011atm
【0191】
(差圧下)
実施例で得られた非対称膜及び比較例で得られた水面展開膜について、図15に示す装置を用いて膜の差圧下におけるAir透過量R(air)を測定した。その結果を表1に示す。
【0192】
この装置は、膜を装着する膜装着部を有する7Lのアルミ製容器(デンソー社製)と、容器内に空気を導入する空気導入部と、容器内の圧力を測定する圧力測定部(圧力測定計)と、容器内に導入した空気量を測定する導入空気測定部(流量計)とを備える。空気導入部は、コンプレッサーなどで昇圧した空気を供給できるものであればよい。圧力測定部は、圧力計(メーカ:横河電機、名称:デジタルマノメータ、型番:MT210)を設置した容器内に空気を導入し評価を行う部分である(例えば、1〜50kPa)。導入空気測定部は、ある任意の圧力(1〜50kPaの範囲において)におけるガス流量(例えば、1〜200sccm)を、マスフローメータ(コフロック社製、モデル 3100)により測定する部分である。なお圧力計とマスフローメータは、膜の抵抗や膜の強度等により(特に、1kPa以下での評価が必要な場合)、圧力計とマスフローメータの組み合わせを変えることが好ましい。
【0193】
評価方法を以下に示す。なお本例では流量を一定にしたときの容器内圧力を測定する手順を説明しているが、逆の手法でもよい。
まず容器の膜装着部に膜を取り付けた後、容器内に空気を導入し、任意流量(1〜200sccm)を保持した。容器内圧力が安定したところで、その圧力下での膜からの排出流量を導入空気測定部での空気流量とみなし、その圧力での空気流量とした。測定は、空気流量の低いほうから徐々に上昇(例えば、フルスケールに対して1%ずつ上昇)させて行った。膜の透過速度(ガス透過性)は、上記に手法により求めた測定点(例えば、5点)を最初二乗法により近似し、その傾きから透過速度を算出した。
【0194】
(3)熱損失
下記条件のリーファーコンテナをモデルケースとして、換気用フィルタを用いることによる熱損失を算出した。なお、この熱損失は、後述する(a)濃度差に起因するO、CO交換による熱損失Q、(b)圧力差に起因するガス交換による熱損失Q、及び(c)フィルタからの熱透過(熱伝導、熱伝達)による熱損失Qの和として求めることができる。また、下記条件で、従来の直接法を適用した場合の熱損失Qは、下記式に示すとおり1.67kWである。換気用フィルタを用いた場合の熱損失(Q+Q+Q)[W]は、好ましくはQの20%以下、より好ましくは10%以下である。
[W]
=空気比重×外気風量×(外気比エンタルピー−内比エンタルピー)/(単位換算)
= ρ[kg/m3] × Q(air)[m3/min] × (h2-h1)[kJ/kg] ×16.6
= 1.293 × 1.6×48.7 ×16.6
= 1.67KW
<条件>
コンテナのサイズ:12.0m×2.4m×2.9m(長さ×幅×高さ)
換気用フィルタのサイズ:1m×1m
外気の温度T:30℃
内気の温度T:14℃
外気と内気との間のOの濃度差ΔP(O):9%(6.8cmHg)
外気と内気との間のCOの濃度差ΔP(CO):3%(2.3cmHg)
外気と内気との間の圧力差ΔP:100Pa(0.1kPa)
【0195】
(a)濃度差に起因するO、CO交換による熱損失Q
下記式により、濃度差に起因するO、CO交換による熱損失Qを算出した。その結果を表1に示す。
Q(O2)+Q(CO2)= R(O2)*△P(O2)+R(CO2)*△P(CO2)
[W/m]=空気比重×外気風量×{(外気(30℃)比エンタルピー)−(内気(14℃)比エンタルピー)}×(換算定数)
= ρ × (R(O2)*△P(O2)+R(CO2)*△P(CO2))× (h2-h1)×(1/3)
= 1.293 × (Q(O2)+Q(CO2)) ×48.7 ×(1/3)
【0196】
(b)圧力差に起因するガス交換による熱損失Q
下記式により、圧力差に起因するガス交換による熱損失Qを算出した。その結果を表1に示す。
Q(air)= R(air) *△P
[W/m]=空気比重×外気風量×{(外気(30℃)比エンタルピー)−(内気(14℃)比エンタルピー)}×(換算定数)
= ρ × (R(air) *△P)× (h2-h1) ×16.6
= 1.293 × Q(air) ×48.7 ×16.6
(c)フィルタからの熱透過による熱損失Q
フィルタからの熱透過による熱損失Qは、フィルタの種類を問わず80〜125[W/m]程度となる。
(d)総熱損失
を除いたQ+Qを総熱損失として算出した。その結果を表1に示す。
【0197】
(4)水蒸気透過性
実施例で得られた非対称膜及び比較例で得られた水面展開膜について、図16に示す等圧気体透過率測定装置(デンソー社製)を用い、下記の測定条件で、水蒸気についての気体透過係数P(HO)を測定した。得られた気体透過係数P(HO)を膜の膜厚Lで除して気体透過速度R(HO)を算出した。その結果を表2に示す。
【0198】
本評価装置での初期環境は、事前に環境ベンチ(商品名:小型環境試験器、メーカ:アスペック製、型番:SH−641)内を、温度40℃、相対湿度92〜95%rhの空気を調整し、初期濃度環境を作った。評価チャンバー内側は、ドライエアーでパージ置換し、温度40℃、相対湿度10%rh以下にした。なお、膜設置部には仕切り板(図示せず)が備えられており、評価開始前に膜は仕切り板により外気と遮断されている。膜評価は、下記の測定条件下、膜設置部の仕切り板を取り除くことで開始され、評価チャンバー内外のガス交換を行った。
【0199】
すなわち、対象水蒸気の膜に対する流れ方向は、評価ベンチの外から内へ流れる初期濃度環境とした。評価チャンバー内の水蒸気の濃度は、湿度センサ(メーカ:ヴァイサラ社製、型番:HMP77)により測定し、データロガ(メーカ:チノー社製、型番:KIDS ver6)に記録した。なお環境チャンバー内(評価チャンバー外)の湿度は、環境ベンチ付属の湿度センサによって測定した。評価チャンバー内の水蒸気濃度の変化(例えば、相対湿度20〜40%rh)から、水蒸気透過性を測定した。
<測定条件>
温度 :23±2度
膜間の圧力差 :なし
膜間の相対湿度差:水蒸気 82〜85%rh
【0200】
(5)微粒子遮断性
ナノ粒子発生装置(Palas社製、型番:GFG−1000)が接続されたA層と、粒子カウンター(TSI社製、型番:SMPS−3034)が接続されたB層とが、膜サンプルがセットされるホルダーを介して連結されている測定装置(図17参照)を用いて、以下の手順で微粒子遮断性を測定した。その結果を表1に示す。
i)ナノ粒子発生装置により10〜500nmの粒径を有するカーボン粒子を発生させ、これをA層内に貯める。
ii)非対称膜(水面展開膜)のサンプルをサンプルホルダー(膜面積:最大で16cm)にセットし、サンプルホルダーとB層の間のバルブV1を閉じ、A層とB層との差圧が1kPaとなるまでB層を減圧する。
iii)バルブV1を開き、B層内が大気圧に戻る際に透過するガスに乗せてカーボン粒子を膜に供給し、膜を透過したカーボン粒子をB層に貯める。
iv)B層内のカーボン粒子の濃度を、粒子カウンターを用いて計測する。
v)以下の式に基づいて微粒子遮断性を算出する。
微粒子遮断性[質量%] = 100×{(Cin−Cout)/Cin}
(Cin:A層での粒子濃度[μg/mL]、Cout:B層での粒子濃度[μg/mL])
【0201】
【表1】

【0202】
【表2】

【0203】
実施例の非対称膜は、ガス透過性が高く、熱損失が小さく、かつ微粒子遮断性も高いので、この非対称膜を備えるリーファーコンテナによれば、簡易な構成で所望のガス濃度が調整可能であり、かつガス濃度調整時の熱負荷を小さくすることができる。一方、比較例の水面展開膜は、熱損失は小さく、かつ微粒子遮断性は高いものの、ガス透過性が極めて低いので、この水面展開膜を備えるリーファーコンテナでは、ガスの交換が困難である。
【符号の説明】
【0204】
1…リーファーコンテナ、3…多孔質層、5…緻密層、10…筐体、11…内気循環送風機、12…Oセンサ、13…COセンサ、14…湿度センサ、20…換気用フィルタユニット、21…流路形成部材、22…外気流路、23…内気流路、24…換気用フィルタ、25…外気循環送風機、26…内気循環送風機、26a…送風ファン、26b…モータ、26c…駆動ギア部、27,27a,27b…内気流路切替ドア、28…外気送風機、28a…送風ファン、28b…従動ギア部、29…動力伝達部材、29a…回転軸、29b…内気側ギア部、29c…外気側ギア部、29d…ファン、30…コンデンサ、31…エバポレータ、32…外気導入流路、33…内気循環流路、34…隔壁、35…バイパス流路、36…外気流路形成部材、37…リブ、50…制御部、100、100a、100b…非対称膜、110a…支持体、110b…支持体、150a、150b…非対称膜構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
換気用フィルタを介して換気が行われるリーファーコンテナであって、
前記換気用フィルタは下記式(1)で示される単量体を含む単量体組成物を重合してなる高分子材料によって形成されている非対称膜を備えるリーファーコンテナ。
【化1】


(式中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜12のアルキル基及び/又は炭素数6〜10のアリール基であり、Xは下記式(i)で示される基及び/又は下記式(ii)で示される基であり、aは1〜3の整数であり、bは0〜2の整数である。)
【化2】


(Rは、互いに独立に、炭素数1〜12のアルキル基であり、dは1〜5の整数であり、cは3〜5の整数である。)
【請求項2】
前記高分子材料は前記式(1)で示される単量体を含む単量体組成物を付加重合してなる付加重合体である、請求項1に記載のリーファーコンテナ。
【請求項3】
23±2℃、膜間の圧力差がない条件における、前記非対称膜の酸素透過係数P(O)及び二酸化炭素透過係数P(CO)の比が下記式(3)を満足する、請求項1又は2に記載のリーファーコンテナ。
1.0<P(O)/P(CO)<1.70 …(3)
【請求項4】
前記リーファーコンテナは、内部に存在する内気の温度調整が行われる筐体と、該筐体内の特定種類のガス濃度を検出するガス濃度検出手段と、外気が流れる外気流路及び前記筐体内に存在する内気が流れる内気流路を形成する流路形成部材と、一方の面が前記外気流路の外気と接触し、かつ他方の面が前記内気流路の内気と接触するように前記外気流路と前記内気流路との境界に配置された前記換気用フィルタと、前記外気流路における外気の流れ及び前記内気流路における内気の流れの少なくとも一方を発生させる送風手段と、該送風手段による送風制御を行う制御手段とを備え、
該制御手段は、前記ガス濃度検出手段によって検出されたガス濃度に基づいて、前記送風手段による外気又は内気の少なくとも一方の送風制御を行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリーファーコンテナ。
【請求項5】
前記筐体内に、内気を循環させるための内気循環送風機が設けられており、
前記内気流路における内気の流れを発生させる送風手段は、前記内気循環送風機によって発生した内気の流れを前記内気流路に導入することで、前記内気流路における内気の流れを発生させる、請求項4に記載のリーファーコンテナ。
【請求項6】
前記外気流路における外気の流れ及び前記内気流路における内気の流れを発生させる送風手段は、内気流路又は外気流路に設けられた第1の送風ファンと、第1の送風ファンとは異なる流路に設けられた第2の送風ファンと、第1の送風ファンを回転駆動する駆動手段と、該駆動手段の回転駆動力を第2の送風ファンに伝達する動力伝達部材とを備える、請求項4に記載のリーファーコンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−136287(P2012−136287A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159286(P2011−159286)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】