説明

リール状磁気フィルムの製造方法

【課題】本発明は、磁気フィルムの切断位置と着磁された磁気の位相を所定の関係にすることができるリール状磁気フィルムの製造方法を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明のリール状磁気フィルムの製造方法は、ベースフィルム4と、ベースフィルム4の第1の表面4a上に形成された磁性層5と、ベースフィルム4の第1の表面4aに対向する第2の表面4bに形成された実装接着層6と、実装接着層6を介してベースフィルム4と剥離可能なように接着された剥離フィルムとを備えた磁気フィルム1を準備する工程と、磁性層5に所定の間隔で着磁する第1工程と、第1工程に続いて磁気フィルム1の磁性層5の側から切目を磁気フィルム1に入れる第2工程と、前記第2工程の後に磁気フィルム1をリールに券回してリール状の磁気フィルムを得る第3工程とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気を発生するリール状磁気フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベースフィルムの一方の面に磁性層を形成し、他方の面に接着層と、この接着層を介して剥離可能な剥離フィルムを備えた磁気フィルムは知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
そして上記文献によれば、この磁気フィルムに着磁した後にリールに券回すること、さらにその後に、磁気フィルムを必要なだけ取り出し切断してから剥離フィルムを剥離して必要な場所に貼り付けることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−114097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術の磁気フィルムは、磁気フィルムに着磁した後に一旦リールに巻き取り、その後に磁気フィルムを所定の長さに切断するとされている。このような磁気フィルムにおいては、切断された磁気フィルムの始端と終端における磁気の状態が不明になることが考えられる。つまり、磁気フィルムの長さ方向には、N極、N極とS極との間、S極、S極とN極との間、N極の周期で着磁されている。この着磁の周期の整数倍が磁気フィルムの切断間隔であれば着磁周期と切断間隔との同期は取れることになる。しかし、磁気フィルムの始端における磁気の状態、言い換えると、周期的に着磁されている磁気の位相が合うものではない。勿論、リールに券回した磁気フィルムの始端を所望の磁気の位相に合わせることも可能である。しかし、磁気フィルムを切断する度にどうしても誤差は生じるものであり、その誤差は累積することを考えると、使用している間に位相が大きくずれることは十分考えられる。
【0006】
このように切断する磁気フィルムと着磁された磁気の位相がずれても、ロータリーエンコーダの磁気スケールのように始端と終端との概念のないような使用に対しては支障がない。しかし、直線上のスケールに使用する際には、磁気フィルムの始端の磁気の位相のズレが問題になる場合がある。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、磁気フィルムの切断位置と着磁された磁気の位相を所定の関係にすることができるリール状磁気フィルムの製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を有している。
【0009】
請求項1に記載の発明は、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの第1の表面上に形成された磁性層と、前記ベースフィルムの前記第1の表面に対向する第2の表面に形成された実装用接着層と、前記実装用接着層を介して前記ベースフィルムと剥離可能なように接着された剥離フィルムとを備えた磁気フィルムを準備する工程と、前記磁性層に所定の間隔で着磁する第1工程と、前記第1工程に続いて前記磁気フィルムの前記磁性層の側から切目を前記磁気フィルムに入れる第2工程と、前記第2工程の後に前記磁気フィルムをリールに券回してリール状の磁気フィルムを得る第3工程とを備えたものである。
【0010】
請求項1に記載の発明は、磁気フィルムに着磁をする第1の工程と、磁気フィルムに切目を入れる第2工程とを続けて行なうので、磁気フィルムの切断位置と着磁された磁気との位相を所定の関係にすることができるという作用効果を有する。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明のリール状磁気フィルムの製造方法は、磁気フィルムの切断位置と着磁された磁気との位相を所定の関係にすることができるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態におけるリール状磁気フィルムを製造する準備の工程後の磁気フィルムの正面図
【図2】本発明の一実施の形態におけるリール状磁気フィルムの製造工程図
【図3】本発明の一実施の形態における磁気フィルムの正面断面図
【図4】同磁気フィルムの平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(一実施の形態)
以下、一実施の形態を用いて、本発明について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態におけるリール状磁気フィルムを製造する準備の工程後の磁気フィルムの正面図である。
【0015】
磁気フィルム1は、可撓性を有し券回可能であり、着磁が可能で、以下の構成を有する。
【0016】
硬質層2は可撓性は有するが、比較的硬い層であり、ポリカーボネートやアクリルなどの材料を用いるのが好適である。緩衝層3は比較的軟らかく、クッション性を有する層であり、ウレタンなどの材料を用いるのが好適である。クッション性を有することで、凹凸のある面にも密着して貼り付けることが可能となる。この硬質層2と緩衝層3とでベースフィルム4を構成する。ベースフィルム4は可撓性を有し、券回可能なフィルムである。
【0017】
磁性層5は、ベースフィルム4の第1の表面4a上に形成されており、バリウムフェライトなどの材料からなり、着磁が可能で着磁がなされると磁気を発生することが可能である。
【0018】
実装接着層6はベースフィルム4における第1の表面4aと対向する第2の表面4bに形成されている。剥離フィルム7は、実装接着層6を介してベースフィルム4に剥離可能なように接着されている。ベースフィルム4を剥離した後も実装接着層6は接着力を維持しており、被接着体(図示せず)へ接着して磁気フィルム1を固定することが可能になるようにしている。このような、実装接着層6および剥離フィルム7と同様な機能を有する物として、文房具における両面テープが広く知られている。そのような両面テープ等に用いられているものを実装接着層6や剥離フィルム7に適用することで、上記の機能を達成することができる。
【0019】
以上のように磁気フィルム1は構成されている。
【0020】
図2は本発明の一実施の形態におけるリール状磁気フィルムの製造工程図である。
【0021】
供給リール8には図1の磁気フィルム1が券回されており、この磁気フィルム1を巻き取りリール9で巻き取る構成にしている。着磁装置10は、供給リール8から供給された磁気フィルム1に所定の間隔で磁気を印加して着磁する装置である。具体的には、磁気ヘッドなどを用い、供給リール8から磁気フィルム1を送りながら着磁している。
【0022】
切目形成装置11は着磁された磁気フィルム1に所定の間隔で切目12を形成する装置である。この切目は、磁気フィルム1を完全に切断してしまわないようにしている。
【0023】
ここで、この切目12の具体的な形状について、図3、図4を用いて説明をする。
【0024】
図3は本発明の一実施の形態における磁気フィルムの正面断面図、図4は同磁気フィルムの平面図である。
【0025】
図3に示すように、切目12は磁気フィルム1の厚み方向において、磁性層5側からベースフィルム4の途中まで入れられている。また、図4に示すように、切目12は、磁気フィルム1の幅全体に入れられているのではなく、断続的に、所謂ミシン目状に形成されている。
【0026】
なお、切目12は、この形状に限られるものではない。磁気フィルム1の厚み方向においてベースフィルム4の第2の表面4bまで切目12を入れ、磁気フィルム1の幅方向においては、図4と同様にミシン目状に切目12を入れるようにしてもよい。また、図3のように磁気フィルム1の厚み方向においてベースフィルム4の途中まで切目12を入れ、磁気フィルム1の幅方向においては、幅全体に入れるようにしてもよい。
【0027】
重要なことは、保存時に磁気フィルム1が分離してしまわないことと、使用時に磁気フィルム1の分離がし易いことであり、その両立を図ることができるような形状にすればよい。
【0028】
以上のような形状の切目12を切目形成装置11によって磁気フィルム1に入れた後は、図2に示す巻き取りリール9で磁気フィルム1を巻き取って行く。これにより、巻き取りリール9に券回されたリール状磁気フィルムを得ることができる。
【0029】
本発明の一実施の形態は、切目12を入れることで磁気フィルム1を予め設定された長さに容易に分離することができる。また、着磁装置10から切目形成装置11までは、磁気フィルム1が連続的に送られてくるので、着磁をする第1工程と、切目12を磁気フィルム1に入れる第2工程とが連続的に行われる。これによって、着磁装置10と切目形成装置11の位置関係および、切目形成装置11により切目12を入れるタイミングを調整することで、磁気フィルム1の着磁パターンと切目12との同期をとり、さらに位相を合わせることができる。
【0030】
従って、巻き取りリール9から分離した磁気フィルム1の磁気の位相を所定の関係にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明にかかるリール状磁気フィルムの製造方法は、電子機器等に使用可能な磁気フィルムの製造方法として適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 磁気フィルム
2 硬質層
3 緩衝層
4 ベースフィルム
4a 第1の表面
4b 第2の表面
5 磁性層
6 実装接着層
7 剥離フィルム
8 供給リール
9 巻き取りリール
10 着磁装置
11 切目形成装置
12 切目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムと、前記ベースフィルムの第1の表面上に形成された磁性層と、前記ベースフィルムの前記第1の表面に対向する第2の表面に形成された実装用接着層と、前記実装用接着層を介して前記ベースフィルムと剥離可能なように接着された剥離フィルムとを備えた磁気フィルムを準備する工程と、
前記磁性層に所定の間隔で着磁する第1工程と、
前記第1工程に続いて前記磁気フィルムの前記磁性層の側から切目を前記磁気フィルムに入れる第2工程と、
前記第2工程の後に前記磁気フィルムをリールに券回してリール状の磁気フィルムを得る第3工程とを備えたリール状磁気フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−123854(P2012−123854A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271057(P2010−271057)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】