リール2軸連動回動機構および粘着テープクリーナー
【課題】本発明が解決しようとする課題は、同じような2組の逆回転防止部と回転伝動部を設けるものでなく、長尺のテープが巻き回された2つのリールが連動回動してもたるみが生じることがなく、手動でも使い勝手がよいリール2軸連動回動機構およびそれを備えた粘着テープクリーナーを提供することである。
【解決手段】テープが第一リールと第二リールの2つのリールに巻き回されており、第一リールの回動が第二リールへ連動されるリール2軸連動回動機構であり、第一リールの第二リールに対するテープ最外半径比をt12、回転伝動部における第一リールの第二リールに対する回転比をk12とすると、1≦t12≦k12であることを特徴とするリール2軸連動回動機構。
【解決手段】テープが第一リールと第二リールの2つのリールに巻き回されており、第一リールの回動が第二リールへ連動されるリール2軸連動回動機構であり、第一リールの第二リールに対するテープ最外半径比をt12、回転伝動部における第一リールの第二リールに対する回転比をk12とすると、1≦t12≦k12であることを特徴とするリール2軸連動回動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動で2つのリールに巻き回されたテープの塗膜面を被接触体に接触させながら2つのリールを連動回動させる機構に関するものであり、および、それを備えた粘着テープクリーナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ごみやほこりなどを取る粘着テープを用いたクリーナーにおいて、粘着テープを除去することなしに、繰出しリールと巻取りリールの2つのリールによって、ごみやほこりなどを巻取りリールへ巻き込んでいくものがある。このような粘着テープクリーナーとしては、例えば実開昭61−031363号公報のほこり除去器のようなものが考案されている。
【0003】
しかし、2つのリールの回転方向は押し動かしの一方向だけであり、手を使った引き動かしと押し動かしによる回動可能なものではなかった。回動可能であることの利点として、資源を無駄にしない点が挙げられる。粘着テープにごみやほこりなどがたくさん取り付き、粘着力が弱まったと感じてから、次の新しい粘着面を繰出すことができる。一方向だけの回転では、常に新しい粘着面ではあるが、ごみやほこりの量に関係なく、無駄に巻き取られている。
【0004】
回動可能にしているものとしては、実開昭62−115868号公報のようなものがある。これはベルトとプーリによって回動可能にしているものであるが、このような単純な機構であると、使用しているうちにテープのたるみが発生してしまう。テープのたるみがあるまま、手を使った引き動かしと押し動かしを繰り返すと、リールにきちんと巻き取られず、リールに絡まって巻き取られることが起こり、動かなくなることがある。
【0005】
テープのたるみの発生を抑えるものとして、特開昭62−197028号公報や実開平04−049046号公報のように、バネをローラ(リール)軸に設けたものや付勢手段を設けたものがあるが、これでもテープのたるみが全く発生しなくなるわけではなかった。
【0006】
実開昭63−153966号公報ではテンションローラを設けたり、実開平01−033971号公報ではタイミングベルト(歯付きベルト)を設けたり、実開平02−119157号公報では歯車(ギア)を設けたり、特開平07−327912号公報ではブレーキユニットを設けたりしたものが開発されているが、たるみの発生を防止できる決定打とはならなかった。
【0007】
一方、我々は塗膜転写具の研究を行ってきており、テープが巻き回された2つのリールの挙動に関しては、長年の研究を蓄積している。例えば、特開2009−184246号公報などがある。また近年、塗膜転写型の粘着テープを60mの長尺で装着した転写具も販売している。
【0008】
長尺のテープが巻き回された2つのリールが一方向だけに回転する機構であっても、使い初めと使い終わりとでは状態が大きく異なり、何かしらの工夫を備えないと最後までうまく回転させることはできない。これを可能にしたひとつの要素として、リールとテープとの回転の間でスリップさせるというものがある。このスリップによって、テープのたるみが発生することなく、常に張った状態で使用可能となっている。例えば、特開2009−184246号公報では、スリップコアという部品を係合させている。また、60m装着した転写具の場合、スリップさせるためのコアの構造に特徴がある。
【0009】
このような特徴を有する従来の塗膜転写具では、手動にて被接触体に接触させながら塗膜転写を行い、転写ヘッドにてテープが走行して、テープが繰り出されることでのリールの一方向の回転を利用するものである。このリールが繰出しリールであり、繰出しリールの回転を回転伝動部によって巻取りリールへ伝動するものである。リールには逆回転防止部を設けて、逆方向へ回転しない構成になっている。この一方向の回転を逆回転防止部を設けた回転伝動部によって伝動させる手段を、2組設けることで、課題を解決することができると考えた。
【0010】
例えば、図11や図12の構成を考案した。図11と図12は、ローラヘッド3にてテープ4を被接触体5に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしによる回動可能な構成である。図では説明のために、2つの回転伝動部がリールの円柱断面の同じ面端にあるが、これに限定されるものではない。なお、第一リール1の中心C1と第二リール2の中心C2とローラヘッド3の中心C3を「+」で表している。その他の逆回転防止部などの部分は省略している。
【0011】
図11は、ローラヘッド3の回動が、ローラヘッド3に設けた2組の逆回転防止部と回転伝動部によって、第一リール1と第二リール2それぞれへ個別に回転を伝動させる構成である。ここでの回転伝動部は、ベルト9ふたつとプーリからなるものである。ローラヘッド3に第1プーリ30と第2プーリ31を設けており、一方のベルト9が第一リール1のプーリ10とローラヘッド3の第1プーリ30とに係っており、もう一方のベルト9が第二リール2のプーリ11とローラヘッド3の第2プーリ31とに係っている構成である。2組の逆回転防止部はローラヘッド3とこれらリールとに設けているが、図では省略している。
【0012】
図面右へ引き動かすと、引き動かし方向H(Hの矢印方向)へ2つのリールと共に動くことになり、テープ4やベルト9が引き動かし走行方向HT(HTの矢印方向)に動くことになる。図面左へ押し動かすと、押し動かし方向S(Sの矢印方向)へ2つのリールと共に動くことになり、テープ4やベルト9が押し動かし走行方向ST(STの矢印方向)に動くことになる。
【0013】
引き動かすと、ローラヘッド3の回転を一方の逆回転防止部によって第一リール1にだけ伝動させて、第二リール2へは伝動させない。そして、第一リール1のローラヘッド3に対するテープ最外半径比をt13、回転伝動部におけるローラヘッド3の第一リール1に対する回転比をk31として、1≦t13≦k31とすれば、テープ4がたるむことなく、動かすことができる。
【0014】
押し動かすと、ローラヘッド3の回転をもう一方の逆回転防止部によって第一リール1へは伝動させずに、第二リール2にだけ伝動させる。そして、第二リール2のローラヘッド3に対するテープ最外半径比をt23、回転伝動部におけるローラヘッド3の第二リール2に対する回転比をk32として、1≦t23≦k32とすれば、テープ4がたるむことなく、動かすことができる。
【0015】
テープ最外半径は、リールに巻き回されたテープ4が接線方向に離れる部分におけるリール中心からの半径のことである。一点鎖線の補助線を適宜引き出して、第一リール1のテープ最外半径T1と第二リール2のテープ最外半径T2とローラヘッド3のテープ最外半径T3を表している。第一リール1のテープ最外半径T1は、第一リール1からテープ4が離れる接線方向であるT’−T3’線と、それと平行な第一リール1の中心C1から引き出したC’−C1線との長さである。第二リール2のテープ最外半径T2は、第二リール2からテープ4が離れる接線方向であるT’’−T3’’線と、それと平行な第二リール2の中心C2から引き出したC’’−C2線との長さである。ローラヘッド3のテープ最外半径T3は、ローラヘッド3の中心C3からローラヘッド3にてテープ4を接触させている被接触体5までの長さである。
【0016】
第一リール1のローラヘッド3に対するテープ最外半径比をt13を、第一リール1のテープ最外半径T1とローラヘッド3のテープ最外半径T3で表すと、t13=T1/T3となる。また、第二リール2のローラヘッド3に対するテープ最外半径比をt23を、第二リール2のテープ最外半径T2とローラヘッド3のテープ最外半径T3で表すと、t23=T2/T3となる。
【0017】
回転比については、下記の発明を実施するための形態において詳細に述べている通りである。
【0018】
図12は、ローラヘッド3の回動が、テープ4によって一方のリールを回転させて、そのリールに設けた逆回転防止部と回転伝動部によって、他方のリールへ回転を伝動させる構成である。2つのリールそれぞれに1組の逆回転防止部と回転伝動部を設けているので、全体では少なくとも2組設けていることになる。ここでの回転伝動部は、ベルト9ふたつとプーリからなるものである。ローラヘッド3にはプーリを設けておらず、一方のベルト9が第一リール1の第1プーリ30と第二リール2の第1プーリ30とに係っており、もう一方のベルト9が第一リール1の第2プーリ31と第二リール2の第2プーリ31とに係っている構成である。逆回転防止部は2組ずつ第一リール1と第二リール2とに設けているが、図では省略している。
【0019】
図面右へ引き動かすと、引き動かし方向H(Hの矢印方向)へ2つのリールと共に動くことになり、テープ4やベルト9が引き動かし走行方向HT(HTの矢印方向)に動くことになる。図面左へ押し動かすと、押し動かし方向S(Sの矢印方向)へ2つのリールと共に動くことになり、テープ4やベルト9が押し動かし走行方向ST(STの矢印方向)に動くことになる。
【0020】
引き動かすと、ローラヘッド3が回転してテープ4によって第二リール2を回転させて、そのリールに設けた逆回転防止部と回転伝動部によって、第一リール1へ回転を伝動させる。逆回転防止部によって、ベルト9が第一リール1の第1プーリ30と第二リール2の第1プーリ30とに係っている回転伝動部で回転が伝動され、ベルト9が第一リール1の第2プーリ31と第二リール2の第2プーリ31とに係っている回転伝動部では回転は伝動されないものである。そして、第一リール1のローラヘッド3に対するテープ最外半径比をt13、回転が伝動される回転伝動部における第二リール2の第一リール1に対する回転比をk21として、1≦t13≦k21とすれば、テープ4がたるむことなく、動かすことができる。
【0021】
押し動かすと、ローラヘッド3が回転してテープ4によって第一リール1を回転させて、そのリールに設けた逆回転防止部と回転伝動部によって、第二リール2へ回転を伝動させる。逆回転防止部によって、ベルト9が第一リール1の第1プーリ30と第二リール2の第1プーリ30とに係っている回転伝動部では回転は伝動されず、ベルト9が第一リール1の第2プーリ31と第二リール2の第2プーリ31とに係っている回転伝動部で回転が伝動されるものである。そして、第二リール2のローラヘッド3に対するテープ最外半径比をt23、回転が伝動される回転伝動部における第一リール1の第二リール2に対する回転比をk12として、1≦t23≦k12とすれば、テープがたるむことなく、動かすことができる。
【0022】
図12においても、図11と同様に、第一リール1のテープ最外半径T1と第二リール2のテープ最外半径T2とローラヘッド3のテープ最外半径T3を表している。図12におけるテープ最外半径比や回転比についても、図11における説明と同様である。
【0023】
図11では、引き動かし条件1≦t13≦k31と押し動かし条件1≦t23≦k32が、それぞれの回転方向で成立する必要があり、図12では、引き動かし条件1≦t13≦k21と押し動かし条件1≦t23≦k12が、それぞれの回転方向で成立する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】実開昭61−031363号公報
【特許文献2】実開昭62−115868号公報
【特許文献3】特開昭62−197028号公報
【特許文献4】実開平04−049046号公報
【特許文献5】実開昭63−153966号公報
【特許文献6】実開平01−033971号公報
【特許文献7】実開平02−119157号公報
【特許文献8】特開平07−327912号公報
【特許文献9】特開2009−184246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、これらの構成であると、同じリール中心軸を使いながら、回転伝動部を2つ逆方向に組み合わせて回転方向を変えるという設計を行う必要があり、部品数が多くなり、調整する部分も多くあり、最終的な製品を仕上げる工程において、うまく回動しないという不具合が多く発生してしまった。
【0026】
本発明が解決しようとする課題は、同じような2組の逆回転防止部と回転伝動部を設けるものでなく、長尺のテープが巻き回された2つのリールが連動回動してもたるみが生じることがなく、手動でも使い勝手がよいリール2軸連動回動機構およびそれを備えた粘着テープクリーナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
一方向の回転を2組設けた従来の構成から回動可能な構成にするために、手動で被接触体に接触させる部分での回動を利用するものである。被接触体に接触させて回動させるのに、第一リールそのものの回動によるもの、または、ローラヘッドによる回動を回動同期伝動部によって伝動した第一リールの回動によるものである。
【0028】
構成の基本として、単位時間あたりにおいて、巻き取り側となるリールの巻き取り長さの方が、繰り出し側となるリールの繰り出し長さよりも大きくなるようにしている。これが回転方向が随時変わる回動においても成り立つように、逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部を設けている。そして、回転伝動とスリップのバランスが良く、使い初めから使い終わりまで、各使用状態が異なっても、たるむことなく連動回動する条件として、従来技術で述べた図11や図12の場合とは異なるテープ最外半径比と回転比の関係を見出したものである。
【0029】
テープ最外半径比は、リールに巻き回されたテープが接線方向に離れる部分におけるリール中心からの半径であるテープ最外半径の比であり、2つのリールの間で連動回動が繰り返されると変動するものであるが、常に請求項の関係式を満たしている。
【0030】
本発明は、テープが第一リールと第二リールの2つのリールに巻き回されており、第一リールの回動が第二リールへ連動されるリール2軸連動回動機構であり、
第一リールの回動は、第一リール側面にてテープを被接触体に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしによる第一リールの回動、または、ローラヘッドにてテープを被接触体に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしによるローラヘッドの回動が回動同期伝動部によって第一リールへ伝動される第一リールの回動であり、
逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部があり、第一リールの回動が逆回転防止部によって一方向の回転と他方向の回転とに分けられ、一方向の回転は回転伝動部によって、他方向の回転は2つのリールに巻き回されたテープによって、第一リールから第二リールに伝動されるものであり、
第一リールの第二リールに対するテープ最外半径比をt12、回転伝動部における第一リールの第二リールに対する回転比をk12とすると、1≦t12≦k12であることを特徴とするリール2軸連動回動機構であり、
そして、これを備えて、テープがテープ基材に粘着塗膜を形成している粘着テープであり、粘着テープの粘着面が被接触体に接触する面であることを特徴とする粘着テープクリーナーである。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、同じような2組の逆回転防止部と回転伝動部を設けるものでなく、長尺のテープが巻き回された2つのリールが連動回動してもたるみが生じることがなく、手動でも使い勝手がよいリール2軸連動回動機構およびそれを備えた粘着テープクリーナーを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】テープが巻き回された2つのリールを示した説明図である。
【図2】第一リール側面による回動を示した説明図である。
【図3】テープが巻き回された2つのリールとローラヘッドを示した説明図である。
【図4】ローラヘッドによる回動を示した説明図である。
【図5】ベルトの回転伝動部を示した説明図である。
【図6】ギアの回転伝動部を示した説明図である。
【図7】スリップ部の例を示した説明図である。
【図8】実施例1の構成を示した説明図である。
【図9】実施例2の構成を示した説明図である。
【図10】粘着クリーナー意匠例の6面図である。
【図11】従来技術による回動を示した説明図である。
【図12】従来技術による異なる回動を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の構成は、テープが巻き回された2つのリール、逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部が基本となるものであるが、以下の形態だけに限定されるものではない。
【0034】
テープが第一リールと第二リールの2つのリールに巻き回されており、第一リールの回動が第二リールへ連動されるリール2軸連動回動機構である。
【0035】
図1は、テープが巻き回された2つのリールを示した説明図である。2つのリールである第一リール1と第二リール2に、テープ4が巻き回されている。この構成を斜視図で示している。第一リール1と第二リール2の構成を明確に示すため、その他の逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部などの部分は省略している。
【0036】
第一リールの回動は、第一リール側面にてテープを被接触体に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしによる第一リールの回動、または、ローラヘッドにてテープを被接触体に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしによるローラヘッドの回動が回動同期伝動部によって第一リールへ伝動される第一リールの回動である。
【0037】
図2は、図1の構成のものによる回動、つまり、第一リール側面による回動を示した説明図である。第一リール1側面にてテープ4を被接触体5に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしにより、第一リール1が回動する。なお、第一リール1の中心C1と第二リール2の中心C2を「+」で表している。その他の逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部などの部分は、この図でも省略している。
【0038】
図面右へ引き動かすと、引き動かし方向H(Hの矢印方向)へ2つのリールと共に動くことになり、テープ4が引き動かし走行方向HT(HTの矢印方向)に動くことになる。図面左へ押し動かすと、押し動かし方向S(sの矢印方向)へ2つのリールと共に動くことになり、テープ4が押し動かし走行方向ST(STの矢印方向)に動くことになる。
【0039】
図3は、テープが巻き回された2つのリールとローラヘッドを示した説明図である。2つのリールである第一リール1と第二リール2に、および、ローラヘッド3を介して、テープ4が巻き回されている。この構成を斜視図で示している。第一リール1と第二リール2およびローラヘッド3の構成を明確に示すため、その他の回動同期伝動部や、逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部などの部分は省略している。
【0040】
図4は、図3の構成のものによる回動、つまり、ローラヘッドによる回動を示した説明図である。ローラヘッド3にてテープ4を被接触体5に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしにより、ローラヘッド3が回動して、それが回動同期伝動部によって伝動され、第一リール1が回動する。なお、第一リール1の中心C1と第二リール2の中心C2とローラヘッド3の中心C3を「+」で表している。その他の逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部などの部分は、この図でも省略している。
【0041】
図面右へ引き動かすと、引き動かし方向H(Hの矢印方向)へ2つのリールと共に動くことになり、テープ4やベルト9が引き動かし走行方向HT(HTの矢印方向)に動くことになる。図面左へ押し動かすと、押し動かし方向S(Sの矢印方向)へ2つのリールと共に動くことになり、テープ4やベルト9が押し動かし走行方向ST(STの矢印方向)に動くことになる。
【0042】
回動同期伝動部は、回動を伝動する仕組みのことであるが、その回動の周期が同期しているものである。つまり、ローラヘッド3の回動が回動同期伝動部によって第一リール1に伝動している場合、ローラヘッド3が1回転すれば、回動同期伝動部によって第一リール1もちょうど1回転するものである。
【0043】
回動同期伝動部の構成は機能を発揮するものであれば限定されないが、ここでは、歯付きベルト6の回動同期伝動部である。歯付きベルト6が第一リール1の歯付きプーリ7とローラヘッド3の歯付きプーリ8に係っている。図ではベルトやプーリの歯は省略している。回動同期伝動部における第一リール1のローラヘッド3に対する回転比が1となるように、第一リール1の半径やローラヘッド3の半径および第一リール1の歯付きプーリ7の半径と歯数やローラヘッド3の歯付きプーリ8の半径と歯数を決めている。これにより、ローラヘッド3の回動を同期させて第一リール1に伝動させることができる。
【0044】
逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部があり、第一リールの回動が逆回転防止部によって一方向の回転と他方向の回転とに分けられ、一方向の回転は回転伝動部によって、他方向の回転は2つのリールに巻き回されたテープによって、第一リールから第二リールに伝動される。逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部それぞれの構成は機能を発揮するものであれば、次に挙げる例に限定されるものではない。
【0045】
逆回転防止部としては通常、ラチェットといわれる爪車が使用される。ラチェットは、歯車とそれに噛み合う爪とを設けたものである。逆回転防止部は、回動のうち一方向の回転だけにする仕組みでもある。
【0046】
回転伝動部としては一般的に、ベルトを利用したものとギアを利用したものとがある。
【0047】
図5は、ベルトの回転伝動部を示した説明図である。逆回転防止部とスリップ部は省略している。この回転伝動部は、ベルト9が第一リール1のプーリ10と第二リール2のプーリ11に係っている構成である。なお、第一リール1の中心C1と第二リール2の中心C2を「+」で表し、ベルト9が係る第一リール1のプーリ10の半径K1とベルト9が係る第二リール2のプーリ11半径K2を表している。
【0048】
図6は、ギアの回転伝動部を示した説明図である。逆回転防止部とスリップ部は省略している。この回転伝動部は、第一リール1のギア12と中間ギア13と第二リール2のギア14とからなる構成である。ここでは中間ギア13はひとつだけであるが、構成によっては複数設けることもある。
【0049】
本発明におけるスリップ部は、何かしらの余計な力が加わった時にだけ、スリップ(空滑り)が生じる仕組みのことである。特に回転する部分に設けている。両方が回転しているその間でスリップするものや、一方が回転しており、一方が停止している間でスリップするものなどである。
【0050】
このようなスリップ部としては様々な形態があるが、次のような代表的な例がある。
【0051】
図7は、スリップ部の例を示した説明図である。第二リール2において中心軸16とプーリ11との間に設けているとして、円柱断面で表している。内部の円形が中心軸16であり、外側の円筒形がプーリ11である。そのプーリ11の円筒形内面に4つの内向き突起17を設けたものである。
【0052】
この4つの内向き突起17が第二リール2の中心軸16と接していることにより、リールとプーリは共に回転することができるが、ここに何かしら余計な力が加わった時に、第二リール2の中心軸16とプーリ11の内向き突起17との間でスリップして、回転のスリップが生じるものである。
【0053】
一方、第二リール2の中心軸16が回転可能であり、プーリ11が回転できない場合であっても、その間でスリップして、回転のスリップが生じるものである。他方、その逆でプーリ11が回転可能で中心軸16が回転できない場合も同様である。
【0054】
スリップ部の別な例として、ベルトとプーリの調整によってベルトの回転伝動部に兼ねさせることもできる。例えば、歯付きではないベルトとプーリとからなる回転伝動部の場合、ベルトとプーリの調整によって、ベルトとプーリの間でスリップを生じさせやすくすることができ、スリップ部をベルトの回転伝動部に兼ねさせるものである。ベルトとプーリによって回転しているが、ここに何かしら余計な力が加わった時に、ベルトとプーリとの間でスリップして、回転のスリップが生じるものである。
【0055】
一方、ベルトが動いており、プーリが回転できない場合であっても、その間でスリップして、回転のスリップが生じるものである。他方、その逆でプーリが回転可能でベルトが動かない場合も同様である。
【0056】
そして、第一リールの第二リールに対するテープ最外半径比をt12、回転伝動部における第一リールの第二リールに対する回転比をk12とすると、1≦t12≦k12であると、テープがたるむことなく、動くことができる。
【0057】
テープ最外半径は、リールに巻き回されたテープ4が接線方向に離れる部分におけるリール中心からの半径のことである。テープ最外半径比t12を、第一リール1のテープ最外半径T1と第二リール2のテープ最外半径T2で表すと、t12=T1/T2となる。
【0058】
図2において、一点鎖線の補助線を適宜引き出して、第一リール1のテープ最外半径T1と第二リール2のテープ最外半径T2を表している。第一リール1のテープ最外半径T1は、第一リール1からテープ4が離れる接線方向であるT’−T’’線と、それと平行な第一リール1の中心C1から引き出したC’−C1線との長さである。第二リール2のテープ最外半径T2は、第二リール2からテープ4が離れる接線方向であるT’’−T’線と、それと平行な第二リール2の中心C2から引き出したC’’−C2線との長さである。
【0059】
図4においても、一点鎖線の補助線を適宜引き出して、第一リール1のテープ最外半径T1と第二リール2のテープ最外半径T2とローラヘッド3のテープ最外半径T3を表している。第一リール1のテープ最外半径T1は、第一リール1からテープ4が離れる接線方向であるT’−T3’線と、それと平行な第一リール1の中心C1から引き出したC’−C1線との長さである。第二リール2のテープ最外半径T2は、第二リール2からテープ4が離れる接線方向であるT’’−T3’’線と、それと平行な第二リール2の中心C2から引き出したC’’−C2線との長さである。ローラヘッド3のテープ最外半径T3は、ローラヘッド3の中心C3からローラヘッド3にてテープ4を接触させている被接触体5までの長さである。
【0060】
回転伝動部における第一リール1の第二リール2に対する回転比k12は、回転が伝動される比であるので、回転伝動部の種類によって定義が異なる。図5のようなベルトの回転伝動部の場合、ベルト9が係る第一リール1のプーリ10の半径K1と、ベルト9が係る第二リール2のプーリ11半径K2で表すと、k12=K1/K2となる。一方で、図6のようなギアの回転伝動部の場合、第一リール1の歯数をK1、第二リール1の歯数をK2とすると、k12=K1/K2となる。
【0061】
本発明においては1≦t12≦k12であるが、従来技術の図11(または図12)における引き動かし条件1≦t13≦k31(または1≦t13≦k21)と押し動かし条件1≦t23≦k32(または1≦t23≦k12)とは異なるものである。これら従来技術の条件では、本発明品の構成ではうまく動作しない。
【0062】
なお、本発明においては、t12=T1/T2、k12=K1/K2であり、従来技術の図11と図12においても同様に、t13=T1/T3、k31=K3/K1、k21=K2/K1であり、t23=T2/T3、k32=K3/K2、k12=K1/K2である。
【実施例1】
【0063】
図8は、実施例1の構成を示した説明図である。主要部に分けて表している。左補助板18、歯車プーリ20、ベルト9、テープ4が巻き回されている第一リール1と第二リール2の2つのリール、右補助板19に分けている。その他の部分は省略している。一点鎖線の補助線を軸にして組み合わせる。最終製品の形状によっては、これらが筐体に収納されているものや、2つのリールなどを保持している左右の補助板が持ち手に接続されているものなどがある。
【0064】
回転伝動部は、ベルト9ひとつとプーリとからなるものである。第一リール1のプーリ10は第一リール1と一体に形成している。第二リール2に逆回転防止部としてラチェットを設けている。歯車プーリ20は、ラチェットの外向き歯車21と回転伝動部の第二リール2のプーリ11を一体にしたものである。外向き歯車21に係る爪23は、左補助板18に設けている。
【0065】
歯車プーリ20の円筒形内面に図7のような4つの内向き突起17を設けている。図では、3つしか見えておらず、上下の2つはわずかだけ見えている。この4つの内向き突起17が第二リール中心軸16と接していることにより、第二リール2と歯車プーリ20は共に回転することができるが、ここに何かしら余計な力が加わった時に、リール中心軸16と歯車プーリ20の内向き突起17との間でスリップして、回転のスリップが生じるものである。
【0066】
第一リール1の中心軸15が左補助板18と右補助板19それぞれの第一リール用の軸穴24に挿入され、同様に、第二リール2の中心軸16が左補助板18と右補助板19それぞれの第二リール用の軸穴25に挿入される。これら左右の補助版が、筐体に収納固定や一体化される、もしくは、持ち手に接続固定されることで、安定した回動が得られる。
【0067】
このような構成で、1≦t12≦k12を満たしており、図2のように動作させることができる。第一リール1側面にてテープ4を被接触体5に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしにより、第一リール1が回動する。
【0068】
実施例1の構成のものを図2のように引き動かすと、第一リール1がテープ4を巻き取る方向へ回転する。テープ4が巻き取られるので、テープ4が第二リール2から繰り出される。これにより、第二リール2がテープ4を繰り出す方向へ回転する。
【0069】
第一リール1がテープ4を巻き取る方向へ回転するので、第一リール1と一体に形成したプーリ10も回転する。その回転がベルト9によって歯車プーリ20に伝動される。
【0070】
この回転方向は、第二リール2がテープ4を繰り出す方向であるが、左補助板18の爪23が外向き歯車21に係り、歯車リール20を停止させるので、歯車リール20は回転しない。これにより、余計な力が加わったことになり、2ヶ所でスリップが生じるものである。ひとつは動くベルト9と停止した歯車プーリ20との間で、スリップが生じるものである。そのように調整している。もうひとつは回転する第二リール2のリール中心軸16と停止した歯車プーリ20の内向き突起17との間で、スリップが生じるものである。
【0071】
また、これらの動作によって、第一リール1におけるテープ4の巻き取りに対してブレーキがかかるように第二リール2におけるテープ4が繰り出されることになり、テープがたるまない。
【0072】
実施例1の構成のものを図2のように押し動かすと、第一リール1がテープ4を繰り出す方向へ回転する。第一リール1と一体に形成したプーリ10の回転がベルト9によって歯車プーリ20に伝動される。
【0073】
この回転方向は、左補助板18の爪23が外向き歯車21に係らず、歯車リール20を停止させないので、歯車リール20は同方向へ回転する。第二リール2がテープ4を巻き取る方向へ回転する。
【0074】
1≦t12≦k12であるので、テープ4が第二リール2に巻き取られ、テープ4が第一リール1から繰り出されることになる。これらの動作により、どこかに余計な力が加わると、回転する第二リール2のリール中心軸16と回転する歯車プーリ20の内向き突起17との間で、スリップが生じるものである。なお、1≦t12≦k12はこの動作だけに作用する条件ではなく、本発明の動作全般に作用する条件である。
【0075】
また、これらの動作によって、第二リール2におけるテープ4の巻き取りに対してブレーキがかかるように第一リール1におけるテープ4が繰り出されることになり、テープがたるまない。
【0076】
実施例1の構成で、このように動作するので、第一リール1側面にてテープ4を被接触体5に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしを、不規則に交互に繰り返しても、テープのたるみが生じることのないリール2軸連動回動機構となったものである。
【実施例2】
【0077】
図9は、実施例2の構成を示した説明図である。主要部に分けて表している。左補助板18、歯車プーリ20、ベルト9、爪リング26、テープ4が巻き回されている第一リール1と第二リール2の2つのリール、右補助板19に分けている。その他の部分は省略している。一点鎖線の補助線を軸にして組み合わせる。最終製品の形状によっては、これらが筐体に収納されているものや、2つのリールなどを保持している左右の補助板が持ち手に接続されているものなどがある。
【0078】
回転伝動部は、ベルト9ひとつとプーリとからなるものである。第一リール1に逆回転防止部として2組のラチェットを設けている。歯車プーリ20は、2組のラチェットの外向き歯車21と内向き歯車22と第一リール1のプーリ10を一体にしたものである。第二リール2のプーリ11は第二リール2と一体に形成している。左補助板18にラチェットの爪23を設けている。
【0079】
爪リング26は、円筒形内面のリング溝27によって、第一リール1の中心軸15に係止する。図では、リング溝27に係る、第一リール1の中心軸15の係止部は見えていない。爪リング26には、歯車プーリ20の内向き歯車22に係る爪を2つ設けている。
【0080】
これは、逆回転防止部における2組のラチェットを異なるものにして、歯車と爪との間で生じる機械音を変えたものである。この機械音を文字で表現すると「カチャ」という表現例があるが、被接触体に接触させながら手動で動かすと「カチャカチャカチャカチャ」という連続機械音となる。2組のラチェットを異なるものにして、この機械音を変えたものである。これであれば、これらの機構が筐体内に収納して見えないものであっても、回転方向を音で認識でき、手動での使い勝手を良くしたものとなる。なお、ここでは爪の数を変えたものであるが、これに限定されるものではなく、音を変える方法であれば、他の方法であってもよい。
【0081】
第一リール1の中心軸15が左補助板18と右補助板19それぞれの第一リール用の軸穴24に挿入され、同様に、第二リール2の中心軸16が左補助板18と右補助板19それぞれの第二リール用の軸穴25に挿入される。これら左右の補助版が、筐体に収納固定や一体化される、もしくは、持ち手に接続固定されることで、安定した回動が得られる。
【0082】
このような構成で、1≦t12≦k12を満たしており、図2のように動作させることができる。第一リール1側面にてテープ4を被接触体5に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしにより、第一リール1が回動する。
【0083】
実施例2の構成のものを図2のように引き動かすと、第一リール1がテープ4を巻き取る方向へ回転する。テープ4が巻き取られるので、テープ4が第二リール2から繰り出される。これにより、第二リール2がテープ4を繰り出す方向へ回転する。
【0084】
第一リール1がテープ4を巻き取る方向へ回転するので、その方向では、爪リング26の爪23が歯車プーリ20の内向き歯車22に係らず、左補助板18の爪23が歯車プーリ20の外向き歯車21に係り、歯車プーリ20は回転せず、ベルト9も動かない。
【0085】
ベルト9が動かず停止しているが、第二リール2がテープ4を繰り出す方向へ回転しているので、そのプーリ11も回転しており、ベルト9とプーリ11との間でスリップして、回転のスリップが生じるものである。
【0086】
これらの動作によって、第一リール1におけるテープ4の巻き取りに対してブレーキがかかるように第二リール2におけるテープ4が繰り出されることになり、テープがたるまない。
【0087】
実施例2の構成のものを図2のように押し動かすと、第一リール1がテープ4を繰り出す方向へ回転する。
【0088】
第一リール1がテープ4を繰り出す方向へ回転するので、その方向では、爪リング26の爪23が歯車プーリ20の内向き歯車22に係り、左補助板18の爪23が歯車プーリ20の外向き歯車21に係らず、歯車プーリ20は回転して、ベルト9も動く。この回転がベルト9によって第二リール2に伝動され、第二リール2がテープ4を巻き取る方向へ回転する。
【0089】
1≦t12≦k12であるので、テープ4が第二リール2に巻き取られ、テープ4が第一リール1から繰り出されることになる。これらの動作により、どこかに余計な力が加わると、動くベルト9と回転する第二リール2のプーリ11との間で、または、回転する第一リール1のプーリ10と動くベルト9との間で、スリップが生じるものである。なお、1≦t12≦k12はこの動作だけに作用する条件ではなく、本発明の動作全般に作用する条件である。
【0090】
また、これらの動作によって、第二リール2におけるテープ4の巻き取りに対してブレーキがかかるように第一リール1におけるテープ4が繰り出されることになり、テープがたるまない。
【0091】
実施例2の構成で、このように動作するので、第一リール1側面にてテープ4を被接触体5に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしを、不規則に交互に繰り返しても、テープのたるみが生じることのないリール2軸連動回動機構となったものである。
【実施例3】
【0092】
実施例1のリール2軸連動回動機構を備えて、テープがテープ基材に粘着塗膜を形成している粘着テープにした。これを図10のような実際の粘着クリーナーに収納して、走行テストを行った。
【0093】
図10は、実際の粘着クリーナー意匠例の6面図である。(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図、(e)は背面図、(f)は左側面図である。
【0094】
第一リール1と第二リール2の円柱断面の両端だけに左収納部29のような筐体があり、それに接続しているもち手28を有するもので、第一リール1と第二リール2の側面およびテープ4が隠されていないものである。持ち手28を手で持って、第一リール1側面にてテープ4を被接触体に接触させながら使用する。左収納部29に、実施例1の左補助板18、歯車プーリ20、ベルト9などが収納されている。
【0095】
テープ長として、1m、5m、10m、20mのものを作製して、それぞれを粘着クリーナーに収納して、20cm押し動かし10cm引き動かしという走行を、一方のリールから他方のリールへテープが最後まで移動するまで繰り返した。これらすべての長さにおいて、最後までたるみが生じることなく、走行させることができた。
【実施例4】
【0096】
実施例2のリール2軸連動回動機構を備えて、テープがテープ基材に粘着塗膜を形成している粘着テープにした。これを図10のような実際の粘着クリーナーに収納して、走行テストを行った。
【0097】
テープ長として、1m、5m、10m、20mのものを作製して、それぞれを粘着クリーナーに収納して、20cm押し動かし10cm引き動かしという走行を、一方のリールから他方のリールへテープが最後まで移動するまで繰り返した。これらすべての長さにおいて、最後までたるみが生じることなく、走行させることができた。
【0098】
また、ラチェットによる機械音がおかしくなることはなく、押し動かす時の機械音と引き動かす時の機械音はそれぞれ、最後までおかしくなることはなかった。
【0099】
これらのように、粘着クリーナーとしてもきちんと動作している。同じような回転伝動部を2組設けるものでなく、長尺のテープが巻き回された2つのリールが連動回動してもたるみが生じることがなく、手動でも使い勝手がよいリール2軸連動回動機構およびそれを備えた粘着テープクリーナーとなったものである。
【符号の説明】
【0100】
1 第一リール
2 第二リール
3 ローラヘッド
4 テープ
5 被接触体
6 歯付きベルト
7 第一リールの歯付きプーリ
8 ローラヘッドの歯付きプーリ
9 ベルト
10 第一リールのプーリ
11 第二リールのプーリ
12 第一リールのギア
13 中間ギア
14 第二リールのギア
15 第一リールの中心軸
16 第二リールの中心軸
17 内向き突起
18 左補助板
19 右補助板
20 歯車プーリ
21 外向き歯車
22 内向き歯車
23 爪
24 第一リール用の軸穴
25 第二リール用の軸穴
26 爪リング
27 リング溝
28 持ち手
29 左収納部
30 第1プーリ
31 第2プーリ
C1 第一リールの中心
C2 第二リールの中心
C3 ローラヘッドの中心
H 引き動かし方向
S 押し動かし方向
HT 引き動かし走行方向
ST 押し動かし走行方向
T1 第一リールのテープ最外半径
T2 第二リールのテープ最外半径
T3 ローラヘッドのテープ最外半径
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動で2つのリールに巻き回されたテープの塗膜面を被接触体に接触させながら2つのリールを連動回動させる機構に関するものであり、および、それを備えた粘着テープクリーナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ごみやほこりなどを取る粘着テープを用いたクリーナーにおいて、粘着テープを除去することなしに、繰出しリールと巻取りリールの2つのリールによって、ごみやほこりなどを巻取りリールへ巻き込んでいくものがある。このような粘着テープクリーナーとしては、例えば実開昭61−031363号公報のほこり除去器のようなものが考案されている。
【0003】
しかし、2つのリールの回転方向は押し動かしの一方向だけであり、手を使った引き動かしと押し動かしによる回動可能なものではなかった。回動可能であることの利点として、資源を無駄にしない点が挙げられる。粘着テープにごみやほこりなどがたくさん取り付き、粘着力が弱まったと感じてから、次の新しい粘着面を繰出すことができる。一方向だけの回転では、常に新しい粘着面ではあるが、ごみやほこりの量に関係なく、無駄に巻き取られている。
【0004】
回動可能にしているものとしては、実開昭62−115868号公報のようなものがある。これはベルトとプーリによって回動可能にしているものであるが、このような単純な機構であると、使用しているうちにテープのたるみが発生してしまう。テープのたるみがあるまま、手を使った引き動かしと押し動かしを繰り返すと、リールにきちんと巻き取られず、リールに絡まって巻き取られることが起こり、動かなくなることがある。
【0005】
テープのたるみの発生を抑えるものとして、特開昭62−197028号公報や実開平04−049046号公報のように、バネをローラ(リール)軸に設けたものや付勢手段を設けたものがあるが、これでもテープのたるみが全く発生しなくなるわけではなかった。
【0006】
実開昭63−153966号公報ではテンションローラを設けたり、実開平01−033971号公報ではタイミングベルト(歯付きベルト)を設けたり、実開平02−119157号公報では歯車(ギア)を設けたり、特開平07−327912号公報ではブレーキユニットを設けたりしたものが開発されているが、たるみの発生を防止できる決定打とはならなかった。
【0007】
一方、我々は塗膜転写具の研究を行ってきており、テープが巻き回された2つのリールの挙動に関しては、長年の研究を蓄積している。例えば、特開2009−184246号公報などがある。また近年、塗膜転写型の粘着テープを60mの長尺で装着した転写具も販売している。
【0008】
長尺のテープが巻き回された2つのリールが一方向だけに回転する機構であっても、使い初めと使い終わりとでは状態が大きく異なり、何かしらの工夫を備えないと最後までうまく回転させることはできない。これを可能にしたひとつの要素として、リールとテープとの回転の間でスリップさせるというものがある。このスリップによって、テープのたるみが発生することなく、常に張った状態で使用可能となっている。例えば、特開2009−184246号公報では、スリップコアという部品を係合させている。また、60m装着した転写具の場合、スリップさせるためのコアの構造に特徴がある。
【0009】
このような特徴を有する従来の塗膜転写具では、手動にて被接触体に接触させながら塗膜転写を行い、転写ヘッドにてテープが走行して、テープが繰り出されることでのリールの一方向の回転を利用するものである。このリールが繰出しリールであり、繰出しリールの回転を回転伝動部によって巻取りリールへ伝動するものである。リールには逆回転防止部を設けて、逆方向へ回転しない構成になっている。この一方向の回転を逆回転防止部を設けた回転伝動部によって伝動させる手段を、2組設けることで、課題を解決することができると考えた。
【0010】
例えば、図11や図12の構成を考案した。図11と図12は、ローラヘッド3にてテープ4を被接触体5に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしによる回動可能な構成である。図では説明のために、2つの回転伝動部がリールの円柱断面の同じ面端にあるが、これに限定されるものではない。なお、第一リール1の中心C1と第二リール2の中心C2とローラヘッド3の中心C3を「+」で表している。その他の逆回転防止部などの部分は省略している。
【0011】
図11は、ローラヘッド3の回動が、ローラヘッド3に設けた2組の逆回転防止部と回転伝動部によって、第一リール1と第二リール2それぞれへ個別に回転を伝動させる構成である。ここでの回転伝動部は、ベルト9ふたつとプーリからなるものである。ローラヘッド3に第1プーリ30と第2プーリ31を設けており、一方のベルト9が第一リール1のプーリ10とローラヘッド3の第1プーリ30とに係っており、もう一方のベルト9が第二リール2のプーリ11とローラヘッド3の第2プーリ31とに係っている構成である。2組の逆回転防止部はローラヘッド3とこれらリールとに設けているが、図では省略している。
【0012】
図面右へ引き動かすと、引き動かし方向H(Hの矢印方向)へ2つのリールと共に動くことになり、テープ4やベルト9が引き動かし走行方向HT(HTの矢印方向)に動くことになる。図面左へ押し動かすと、押し動かし方向S(Sの矢印方向)へ2つのリールと共に動くことになり、テープ4やベルト9が押し動かし走行方向ST(STの矢印方向)に動くことになる。
【0013】
引き動かすと、ローラヘッド3の回転を一方の逆回転防止部によって第一リール1にだけ伝動させて、第二リール2へは伝動させない。そして、第一リール1のローラヘッド3に対するテープ最外半径比をt13、回転伝動部におけるローラヘッド3の第一リール1に対する回転比をk31として、1≦t13≦k31とすれば、テープ4がたるむことなく、動かすことができる。
【0014】
押し動かすと、ローラヘッド3の回転をもう一方の逆回転防止部によって第一リール1へは伝動させずに、第二リール2にだけ伝動させる。そして、第二リール2のローラヘッド3に対するテープ最外半径比をt23、回転伝動部におけるローラヘッド3の第二リール2に対する回転比をk32として、1≦t23≦k32とすれば、テープ4がたるむことなく、動かすことができる。
【0015】
テープ最外半径は、リールに巻き回されたテープ4が接線方向に離れる部分におけるリール中心からの半径のことである。一点鎖線の補助線を適宜引き出して、第一リール1のテープ最外半径T1と第二リール2のテープ最外半径T2とローラヘッド3のテープ最外半径T3を表している。第一リール1のテープ最外半径T1は、第一リール1からテープ4が離れる接線方向であるT’−T3’線と、それと平行な第一リール1の中心C1から引き出したC’−C1線との長さである。第二リール2のテープ最外半径T2は、第二リール2からテープ4が離れる接線方向であるT’’−T3’’線と、それと平行な第二リール2の中心C2から引き出したC’’−C2線との長さである。ローラヘッド3のテープ最外半径T3は、ローラヘッド3の中心C3からローラヘッド3にてテープ4を接触させている被接触体5までの長さである。
【0016】
第一リール1のローラヘッド3に対するテープ最外半径比をt13を、第一リール1のテープ最外半径T1とローラヘッド3のテープ最外半径T3で表すと、t13=T1/T3となる。また、第二リール2のローラヘッド3に対するテープ最外半径比をt23を、第二リール2のテープ最外半径T2とローラヘッド3のテープ最外半径T3で表すと、t23=T2/T3となる。
【0017】
回転比については、下記の発明を実施するための形態において詳細に述べている通りである。
【0018】
図12は、ローラヘッド3の回動が、テープ4によって一方のリールを回転させて、そのリールに設けた逆回転防止部と回転伝動部によって、他方のリールへ回転を伝動させる構成である。2つのリールそれぞれに1組の逆回転防止部と回転伝動部を設けているので、全体では少なくとも2組設けていることになる。ここでの回転伝動部は、ベルト9ふたつとプーリからなるものである。ローラヘッド3にはプーリを設けておらず、一方のベルト9が第一リール1の第1プーリ30と第二リール2の第1プーリ30とに係っており、もう一方のベルト9が第一リール1の第2プーリ31と第二リール2の第2プーリ31とに係っている構成である。逆回転防止部は2組ずつ第一リール1と第二リール2とに設けているが、図では省略している。
【0019】
図面右へ引き動かすと、引き動かし方向H(Hの矢印方向)へ2つのリールと共に動くことになり、テープ4やベルト9が引き動かし走行方向HT(HTの矢印方向)に動くことになる。図面左へ押し動かすと、押し動かし方向S(Sの矢印方向)へ2つのリールと共に動くことになり、テープ4やベルト9が押し動かし走行方向ST(STの矢印方向)に動くことになる。
【0020】
引き動かすと、ローラヘッド3が回転してテープ4によって第二リール2を回転させて、そのリールに設けた逆回転防止部と回転伝動部によって、第一リール1へ回転を伝動させる。逆回転防止部によって、ベルト9が第一リール1の第1プーリ30と第二リール2の第1プーリ30とに係っている回転伝動部で回転が伝動され、ベルト9が第一リール1の第2プーリ31と第二リール2の第2プーリ31とに係っている回転伝動部では回転は伝動されないものである。そして、第一リール1のローラヘッド3に対するテープ最外半径比をt13、回転が伝動される回転伝動部における第二リール2の第一リール1に対する回転比をk21として、1≦t13≦k21とすれば、テープ4がたるむことなく、動かすことができる。
【0021】
押し動かすと、ローラヘッド3が回転してテープ4によって第一リール1を回転させて、そのリールに設けた逆回転防止部と回転伝動部によって、第二リール2へ回転を伝動させる。逆回転防止部によって、ベルト9が第一リール1の第1プーリ30と第二リール2の第1プーリ30とに係っている回転伝動部では回転は伝動されず、ベルト9が第一リール1の第2プーリ31と第二リール2の第2プーリ31とに係っている回転伝動部で回転が伝動されるものである。そして、第二リール2のローラヘッド3に対するテープ最外半径比をt23、回転が伝動される回転伝動部における第一リール1の第二リール2に対する回転比をk12として、1≦t23≦k12とすれば、テープがたるむことなく、動かすことができる。
【0022】
図12においても、図11と同様に、第一リール1のテープ最外半径T1と第二リール2のテープ最外半径T2とローラヘッド3のテープ最外半径T3を表している。図12におけるテープ最外半径比や回転比についても、図11における説明と同様である。
【0023】
図11では、引き動かし条件1≦t13≦k31と押し動かし条件1≦t23≦k32が、それぞれの回転方向で成立する必要があり、図12では、引き動かし条件1≦t13≦k21と押し動かし条件1≦t23≦k12が、それぞれの回転方向で成立する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】実開昭61−031363号公報
【特許文献2】実開昭62−115868号公報
【特許文献3】特開昭62−197028号公報
【特許文献4】実開平04−049046号公報
【特許文献5】実開昭63−153966号公報
【特許文献6】実開平01−033971号公報
【特許文献7】実開平02−119157号公報
【特許文献8】特開平07−327912号公報
【特許文献9】特開2009−184246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、これらの構成であると、同じリール中心軸を使いながら、回転伝動部を2つ逆方向に組み合わせて回転方向を変えるという設計を行う必要があり、部品数が多くなり、調整する部分も多くあり、最終的な製品を仕上げる工程において、うまく回動しないという不具合が多く発生してしまった。
【0026】
本発明が解決しようとする課題は、同じような2組の逆回転防止部と回転伝動部を設けるものでなく、長尺のテープが巻き回された2つのリールが連動回動してもたるみが生じることがなく、手動でも使い勝手がよいリール2軸連動回動機構およびそれを備えた粘着テープクリーナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
一方向の回転を2組設けた従来の構成から回動可能な構成にするために、手動で被接触体に接触させる部分での回動を利用するものである。被接触体に接触させて回動させるのに、第一リールそのものの回動によるもの、または、ローラヘッドによる回動を回動同期伝動部によって伝動した第一リールの回動によるものである。
【0028】
構成の基本として、単位時間あたりにおいて、巻き取り側となるリールの巻き取り長さの方が、繰り出し側となるリールの繰り出し長さよりも大きくなるようにしている。これが回転方向が随時変わる回動においても成り立つように、逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部を設けている。そして、回転伝動とスリップのバランスが良く、使い初めから使い終わりまで、各使用状態が異なっても、たるむことなく連動回動する条件として、従来技術で述べた図11や図12の場合とは異なるテープ最外半径比と回転比の関係を見出したものである。
【0029】
テープ最外半径比は、リールに巻き回されたテープが接線方向に離れる部分におけるリール中心からの半径であるテープ最外半径の比であり、2つのリールの間で連動回動が繰り返されると変動するものであるが、常に請求項の関係式を満たしている。
【0030】
本発明は、テープが第一リールと第二リールの2つのリールに巻き回されており、第一リールの回動が第二リールへ連動されるリール2軸連動回動機構であり、
第一リールの回動は、第一リール側面にてテープを被接触体に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしによる第一リールの回動、または、ローラヘッドにてテープを被接触体に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしによるローラヘッドの回動が回動同期伝動部によって第一リールへ伝動される第一リールの回動であり、
逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部があり、第一リールの回動が逆回転防止部によって一方向の回転と他方向の回転とに分けられ、一方向の回転は回転伝動部によって、他方向の回転は2つのリールに巻き回されたテープによって、第一リールから第二リールに伝動されるものであり、
第一リールの第二リールに対するテープ最外半径比をt12、回転伝動部における第一リールの第二リールに対する回転比をk12とすると、1≦t12≦k12であることを特徴とするリール2軸連動回動機構であり、
そして、これを備えて、テープがテープ基材に粘着塗膜を形成している粘着テープであり、粘着テープの粘着面が被接触体に接触する面であることを特徴とする粘着テープクリーナーである。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、同じような2組の逆回転防止部と回転伝動部を設けるものでなく、長尺のテープが巻き回された2つのリールが連動回動してもたるみが生じることがなく、手動でも使い勝手がよいリール2軸連動回動機構およびそれを備えた粘着テープクリーナーを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】テープが巻き回された2つのリールを示した説明図である。
【図2】第一リール側面による回動を示した説明図である。
【図3】テープが巻き回された2つのリールとローラヘッドを示した説明図である。
【図4】ローラヘッドによる回動を示した説明図である。
【図5】ベルトの回転伝動部を示した説明図である。
【図6】ギアの回転伝動部を示した説明図である。
【図7】スリップ部の例を示した説明図である。
【図8】実施例1の構成を示した説明図である。
【図9】実施例2の構成を示した説明図である。
【図10】粘着クリーナー意匠例の6面図である。
【図11】従来技術による回動を示した説明図である。
【図12】従来技術による異なる回動を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の構成は、テープが巻き回された2つのリール、逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部が基本となるものであるが、以下の形態だけに限定されるものではない。
【0034】
テープが第一リールと第二リールの2つのリールに巻き回されており、第一リールの回動が第二リールへ連動されるリール2軸連動回動機構である。
【0035】
図1は、テープが巻き回された2つのリールを示した説明図である。2つのリールである第一リール1と第二リール2に、テープ4が巻き回されている。この構成を斜視図で示している。第一リール1と第二リール2の構成を明確に示すため、その他の逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部などの部分は省略している。
【0036】
第一リールの回動は、第一リール側面にてテープを被接触体に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしによる第一リールの回動、または、ローラヘッドにてテープを被接触体に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしによるローラヘッドの回動が回動同期伝動部によって第一リールへ伝動される第一リールの回動である。
【0037】
図2は、図1の構成のものによる回動、つまり、第一リール側面による回動を示した説明図である。第一リール1側面にてテープ4を被接触体5に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしにより、第一リール1が回動する。なお、第一リール1の中心C1と第二リール2の中心C2を「+」で表している。その他の逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部などの部分は、この図でも省略している。
【0038】
図面右へ引き動かすと、引き動かし方向H(Hの矢印方向)へ2つのリールと共に動くことになり、テープ4が引き動かし走行方向HT(HTの矢印方向)に動くことになる。図面左へ押し動かすと、押し動かし方向S(sの矢印方向)へ2つのリールと共に動くことになり、テープ4が押し動かし走行方向ST(STの矢印方向)に動くことになる。
【0039】
図3は、テープが巻き回された2つのリールとローラヘッドを示した説明図である。2つのリールである第一リール1と第二リール2に、および、ローラヘッド3を介して、テープ4が巻き回されている。この構成を斜視図で示している。第一リール1と第二リール2およびローラヘッド3の構成を明確に示すため、その他の回動同期伝動部や、逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部などの部分は省略している。
【0040】
図4は、図3の構成のものによる回動、つまり、ローラヘッドによる回動を示した説明図である。ローラヘッド3にてテープ4を被接触体5に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしにより、ローラヘッド3が回動して、それが回動同期伝動部によって伝動され、第一リール1が回動する。なお、第一リール1の中心C1と第二リール2の中心C2とローラヘッド3の中心C3を「+」で表している。その他の逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部などの部分は、この図でも省略している。
【0041】
図面右へ引き動かすと、引き動かし方向H(Hの矢印方向)へ2つのリールと共に動くことになり、テープ4やベルト9が引き動かし走行方向HT(HTの矢印方向)に動くことになる。図面左へ押し動かすと、押し動かし方向S(Sの矢印方向)へ2つのリールと共に動くことになり、テープ4やベルト9が押し動かし走行方向ST(STの矢印方向)に動くことになる。
【0042】
回動同期伝動部は、回動を伝動する仕組みのことであるが、その回動の周期が同期しているものである。つまり、ローラヘッド3の回動が回動同期伝動部によって第一リール1に伝動している場合、ローラヘッド3が1回転すれば、回動同期伝動部によって第一リール1もちょうど1回転するものである。
【0043】
回動同期伝動部の構成は機能を発揮するものであれば限定されないが、ここでは、歯付きベルト6の回動同期伝動部である。歯付きベルト6が第一リール1の歯付きプーリ7とローラヘッド3の歯付きプーリ8に係っている。図ではベルトやプーリの歯は省略している。回動同期伝動部における第一リール1のローラヘッド3に対する回転比が1となるように、第一リール1の半径やローラヘッド3の半径および第一リール1の歯付きプーリ7の半径と歯数やローラヘッド3の歯付きプーリ8の半径と歯数を決めている。これにより、ローラヘッド3の回動を同期させて第一リール1に伝動させることができる。
【0044】
逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部があり、第一リールの回動が逆回転防止部によって一方向の回転と他方向の回転とに分けられ、一方向の回転は回転伝動部によって、他方向の回転は2つのリールに巻き回されたテープによって、第一リールから第二リールに伝動される。逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部それぞれの構成は機能を発揮するものであれば、次に挙げる例に限定されるものではない。
【0045】
逆回転防止部としては通常、ラチェットといわれる爪車が使用される。ラチェットは、歯車とそれに噛み合う爪とを設けたものである。逆回転防止部は、回動のうち一方向の回転だけにする仕組みでもある。
【0046】
回転伝動部としては一般的に、ベルトを利用したものとギアを利用したものとがある。
【0047】
図5は、ベルトの回転伝動部を示した説明図である。逆回転防止部とスリップ部は省略している。この回転伝動部は、ベルト9が第一リール1のプーリ10と第二リール2のプーリ11に係っている構成である。なお、第一リール1の中心C1と第二リール2の中心C2を「+」で表し、ベルト9が係る第一リール1のプーリ10の半径K1とベルト9が係る第二リール2のプーリ11半径K2を表している。
【0048】
図6は、ギアの回転伝動部を示した説明図である。逆回転防止部とスリップ部は省略している。この回転伝動部は、第一リール1のギア12と中間ギア13と第二リール2のギア14とからなる構成である。ここでは中間ギア13はひとつだけであるが、構成によっては複数設けることもある。
【0049】
本発明におけるスリップ部は、何かしらの余計な力が加わった時にだけ、スリップ(空滑り)が生じる仕組みのことである。特に回転する部分に設けている。両方が回転しているその間でスリップするものや、一方が回転しており、一方が停止している間でスリップするものなどである。
【0050】
このようなスリップ部としては様々な形態があるが、次のような代表的な例がある。
【0051】
図7は、スリップ部の例を示した説明図である。第二リール2において中心軸16とプーリ11との間に設けているとして、円柱断面で表している。内部の円形が中心軸16であり、外側の円筒形がプーリ11である。そのプーリ11の円筒形内面に4つの内向き突起17を設けたものである。
【0052】
この4つの内向き突起17が第二リール2の中心軸16と接していることにより、リールとプーリは共に回転することができるが、ここに何かしら余計な力が加わった時に、第二リール2の中心軸16とプーリ11の内向き突起17との間でスリップして、回転のスリップが生じるものである。
【0053】
一方、第二リール2の中心軸16が回転可能であり、プーリ11が回転できない場合であっても、その間でスリップして、回転のスリップが生じるものである。他方、その逆でプーリ11が回転可能で中心軸16が回転できない場合も同様である。
【0054】
スリップ部の別な例として、ベルトとプーリの調整によってベルトの回転伝動部に兼ねさせることもできる。例えば、歯付きではないベルトとプーリとからなる回転伝動部の場合、ベルトとプーリの調整によって、ベルトとプーリの間でスリップを生じさせやすくすることができ、スリップ部をベルトの回転伝動部に兼ねさせるものである。ベルトとプーリによって回転しているが、ここに何かしら余計な力が加わった時に、ベルトとプーリとの間でスリップして、回転のスリップが生じるものである。
【0055】
一方、ベルトが動いており、プーリが回転できない場合であっても、その間でスリップして、回転のスリップが生じるものである。他方、その逆でプーリが回転可能でベルトが動かない場合も同様である。
【0056】
そして、第一リールの第二リールに対するテープ最外半径比をt12、回転伝動部における第一リールの第二リールに対する回転比をk12とすると、1≦t12≦k12であると、テープがたるむことなく、動くことができる。
【0057】
テープ最外半径は、リールに巻き回されたテープ4が接線方向に離れる部分におけるリール中心からの半径のことである。テープ最外半径比t12を、第一リール1のテープ最外半径T1と第二リール2のテープ最外半径T2で表すと、t12=T1/T2となる。
【0058】
図2において、一点鎖線の補助線を適宜引き出して、第一リール1のテープ最外半径T1と第二リール2のテープ最外半径T2を表している。第一リール1のテープ最外半径T1は、第一リール1からテープ4が離れる接線方向であるT’−T’’線と、それと平行な第一リール1の中心C1から引き出したC’−C1線との長さである。第二リール2のテープ最外半径T2は、第二リール2からテープ4が離れる接線方向であるT’’−T’線と、それと平行な第二リール2の中心C2から引き出したC’’−C2線との長さである。
【0059】
図4においても、一点鎖線の補助線を適宜引き出して、第一リール1のテープ最外半径T1と第二リール2のテープ最外半径T2とローラヘッド3のテープ最外半径T3を表している。第一リール1のテープ最外半径T1は、第一リール1からテープ4が離れる接線方向であるT’−T3’線と、それと平行な第一リール1の中心C1から引き出したC’−C1線との長さである。第二リール2のテープ最外半径T2は、第二リール2からテープ4が離れる接線方向であるT’’−T3’’線と、それと平行な第二リール2の中心C2から引き出したC’’−C2線との長さである。ローラヘッド3のテープ最外半径T3は、ローラヘッド3の中心C3からローラヘッド3にてテープ4を接触させている被接触体5までの長さである。
【0060】
回転伝動部における第一リール1の第二リール2に対する回転比k12は、回転が伝動される比であるので、回転伝動部の種類によって定義が異なる。図5のようなベルトの回転伝動部の場合、ベルト9が係る第一リール1のプーリ10の半径K1と、ベルト9が係る第二リール2のプーリ11半径K2で表すと、k12=K1/K2となる。一方で、図6のようなギアの回転伝動部の場合、第一リール1の歯数をK1、第二リール1の歯数をK2とすると、k12=K1/K2となる。
【0061】
本発明においては1≦t12≦k12であるが、従来技術の図11(または図12)における引き動かし条件1≦t13≦k31(または1≦t13≦k21)と押し動かし条件1≦t23≦k32(または1≦t23≦k12)とは異なるものである。これら従来技術の条件では、本発明品の構成ではうまく動作しない。
【0062】
なお、本発明においては、t12=T1/T2、k12=K1/K2であり、従来技術の図11と図12においても同様に、t13=T1/T3、k31=K3/K1、k21=K2/K1であり、t23=T2/T3、k32=K3/K2、k12=K1/K2である。
【実施例1】
【0063】
図8は、実施例1の構成を示した説明図である。主要部に分けて表している。左補助板18、歯車プーリ20、ベルト9、テープ4が巻き回されている第一リール1と第二リール2の2つのリール、右補助板19に分けている。その他の部分は省略している。一点鎖線の補助線を軸にして組み合わせる。最終製品の形状によっては、これらが筐体に収納されているものや、2つのリールなどを保持している左右の補助板が持ち手に接続されているものなどがある。
【0064】
回転伝動部は、ベルト9ひとつとプーリとからなるものである。第一リール1のプーリ10は第一リール1と一体に形成している。第二リール2に逆回転防止部としてラチェットを設けている。歯車プーリ20は、ラチェットの外向き歯車21と回転伝動部の第二リール2のプーリ11を一体にしたものである。外向き歯車21に係る爪23は、左補助板18に設けている。
【0065】
歯車プーリ20の円筒形内面に図7のような4つの内向き突起17を設けている。図では、3つしか見えておらず、上下の2つはわずかだけ見えている。この4つの内向き突起17が第二リール中心軸16と接していることにより、第二リール2と歯車プーリ20は共に回転することができるが、ここに何かしら余計な力が加わった時に、リール中心軸16と歯車プーリ20の内向き突起17との間でスリップして、回転のスリップが生じるものである。
【0066】
第一リール1の中心軸15が左補助板18と右補助板19それぞれの第一リール用の軸穴24に挿入され、同様に、第二リール2の中心軸16が左補助板18と右補助板19それぞれの第二リール用の軸穴25に挿入される。これら左右の補助版が、筐体に収納固定や一体化される、もしくは、持ち手に接続固定されることで、安定した回動が得られる。
【0067】
このような構成で、1≦t12≦k12を満たしており、図2のように動作させることができる。第一リール1側面にてテープ4を被接触体5に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしにより、第一リール1が回動する。
【0068】
実施例1の構成のものを図2のように引き動かすと、第一リール1がテープ4を巻き取る方向へ回転する。テープ4が巻き取られるので、テープ4が第二リール2から繰り出される。これにより、第二リール2がテープ4を繰り出す方向へ回転する。
【0069】
第一リール1がテープ4を巻き取る方向へ回転するので、第一リール1と一体に形成したプーリ10も回転する。その回転がベルト9によって歯車プーリ20に伝動される。
【0070】
この回転方向は、第二リール2がテープ4を繰り出す方向であるが、左補助板18の爪23が外向き歯車21に係り、歯車リール20を停止させるので、歯車リール20は回転しない。これにより、余計な力が加わったことになり、2ヶ所でスリップが生じるものである。ひとつは動くベルト9と停止した歯車プーリ20との間で、スリップが生じるものである。そのように調整している。もうひとつは回転する第二リール2のリール中心軸16と停止した歯車プーリ20の内向き突起17との間で、スリップが生じるものである。
【0071】
また、これらの動作によって、第一リール1におけるテープ4の巻き取りに対してブレーキがかかるように第二リール2におけるテープ4が繰り出されることになり、テープがたるまない。
【0072】
実施例1の構成のものを図2のように押し動かすと、第一リール1がテープ4を繰り出す方向へ回転する。第一リール1と一体に形成したプーリ10の回転がベルト9によって歯車プーリ20に伝動される。
【0073】
この回転方向は、左補助板18の爪23が外向き歯車21に係らず、歯車リール20を停止させないので、歯車リール20は同方向へ回転する。第二リール2がテープ4を巻き取る方向へ回転する。
【0074】
1≦t12≦k12であるので、テープ4が第二リール2に巻き取られ、テープ4が第一リール1から繰り出されることになる。これらの動作により、どこかに余計な力が加わると、回転する第二リール2のリール中心軸16と回転する歯車プーリ20の内向き突起17との間で、スリップが生じるものである。なお、1≦t12≦k12はこの動作だけに作用する条件ではなく、本発明の動作全般に作用する条件である。
【0075】
また、これらの動作によって、第二リール2におけるテープ4の巻き取りに対してブレーキがかかるように第一リール1におけるテープ4が繰り出されることになり、テープがたるまない。
【0076】
実施例1の構成で、このように動作するので、第一リール1側面にてテープ4を被接触体5に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしを、不規則に交互に繰り返しても、テープのたるみが生じることのないリール2軸連動回動機構となったものである。
【実施例2】
【0077】
図9は、実施例2の構成を示した説明図である。主要部に分けて表している。左補助板18、歯車プーリ20、ベルト9、爪リング26、テープ4が巻き回されている第一リール1と第二リール2の2つのリール、右補助板19に分けている。その他の部分は省略している。一点鎖線の補助線を軸にして組み合わせる。最終製品の形状によっては、これらが筐体に収納されているものや、2つのリールなどを保持している左右の補助板が持ち手に接続されているものなどがある。
【0078】
回転伝動部は、ベルト9ひとつとプーリとからなるものである。第一リール1に逆回転防止部として2組のラチェットを設けている。歯車プーリ20は、2組のラチェットの外向き歯車21と内向き歯車22と第一リール1のプーリ10を一体にしたものである。第二リール2のプーリ11は第二リール2と一体に形成している。左補助板18にラチェットの爪23を設けている。
【0079】
爪リング26は、円筒形内面のリング溝27によって、第一リール1の中心軸15に係止する。図では、リング溝27に係る、第一リール1の中心軸15の係止部は見えていない。爪リング26には、歯車プーリ20の内向き歯車22に係る爪を2つ設けている。
【0080】
これは、逆回転防止部における2組のラチェットを異なるものにして、歯車と爪との間で生じる機械音を変えたものである。この機械音を文字で表現すると「カチャ」という表現例があるが、被接触体に接触させながら手動で動かすと「カチャカチャカチャカチャ」という連続機械音となる。2組のラチェットを異なるものにして、この機械音を変えたものである。これであれば、これらの機構が筐体内に収納して見えないものであっても、回転方向を音で認識でき、手動での使い勝手を良くしたものとなる。なお、ここでは爪の数を変えたものであるが、これに限定されるものではなく、音を変える方法であれば、他の方法であってもよい。
【0081】
第一リール1の中心軸15が左補助板18と右補助板19それぞれの第一リール用の軸穴24に挿入され、同様に、第二リール2の中心軸16が左補助板18と右補助板19それぞれの第二リール用の軸穴25に挿入される。これら左右の補助版が、筐体に収納固定や一体化される、もしくは、持ち手に接続固定されることで、安定した回動が得られる。
【0082】
このような構成で、1≦t12≦k12を満たしており、図2のように動作させることができる。第一リール1側面にてテープ4を被接触体5に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしにより、第一リール1が回動する。
【0083】
実施例2の構成のものを図2のように引き動かすと、第一リール1がテープ4を巻き取る方向へ回転する。テープ4が巻き取られるので、テープ4が第二リール2から繰り出される。これにより、第二リール2がテープ4を繰り出す方向へ回転する。
【0084】
第一リール1がテープ4を巻き取る方向へ回転するので、その方向では、爪リング26の爪23が歯車プーリ20の内向き歯車22に係らず、左補助板18の爪23が歯車プーリ20の外向き歯車21に係り、歯車プーリ20は回転せず、ベルト9も動かない。
【0085】
ベルト9が動かず停止しているが、第二リール2がテープ4を繰り出す方向へ回転しているので、そのプーリ11も回転しており、ベルト9とプーリ11との間でスリップして、回転のスリップが生じるものである。
【0086】
これらの動作によって、第一リール1におけるテープ4の巻き取りに対してブレーキがかかるように第二リール2におけるテープ4が繰り出されることになり、テープがたるまない。
【0087】
実施例2の構成のものを図2のように押し動かすと、第一リール1がテープ4を繰り出す方向へ回転する。
【0088】
第一リール1がテープ4を繰り出す方向へ回転するので、その方向では、爪リング26の爪23が歯車プーリ20の内向き歯車22に係り、左補助板18の爪23が歯車プーリ20の外向き歯車21に係らず、歯車プーリ20は回転して、ベルト9も動く。この回転がベルト9によって第二リール2に伝動され、第二リール2がテープ4を巻き取る方向へ回転する。
【0089】
1≦t12≦k12であるので、テープ4が第二リール2に巻き取られ、テープ4が第一リール1から繰り出されることになる。これらの動作により、どこかに余計な力が加わると、動くベルト9と回転する第二リール2のプーリ11との間で、または、回転する第一リール1のプーリ10と動くベルト9との間で、スリップが生じるものである。なお、1≦t12≦k12はこの動作だけに作用する条件ではなく、本発明の動作全般に作用する条件である。
【0090】
また、これらの動作によって、第二リール2におけるテープ4の巻き取りに対してブレーキがかかるように第一リール1におけるテープ4が繰り出されることになり、テープがたるまない。
【0091】
実施例2の構成で、このように動作するので、第一リール1側面にてテープ4を被接触体5に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしを、不規則に交互に繰り返しても、テープのたるみが生じることのないリール2軸連動回動機構となったものである。
【実施例3】
【0092】
実施例1のリール2軸連動回動機構を備えて、テープがテープ基材に粘着塗膜を形成している粘着テープにした。これを図10のような実際の粘着クリーナーに収納して、走行テストを行った。
【0093】
図10は、実際の粘着クリーナー意匠例の6面図である。(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は右側面図、(e)は背面図、(f)は左側面図である。
【0094】
第一リール1と第二リール2の円柱断面の両端だけに左収納部29のような筐体があり、それに接続しているもち手28を有するもので、第一リール1と第二リール2の側面およびテープ4が隠されていないものである。持ち手28を手で持って、第一リール1側面にてテープ4を被接触体に接触させながら使用する。左収納部29に、実施例1の左補助板18、歯車プーリ20、ベルト9などが収納されている。
【0095】
テープ長として、1m、5m、10m、20mのものを作製して、それぞれを粘着クリーナーに収納して、20cm押し動かし10cm引き動かしという走行を、一方のリールから他方のリールへテープが最後まで移動するまで繰り返した。これらすべての長さにおいて、最後までたるみが生じることなく、走行させることができた。
【実施例4】
【0096】
実施例2のリール2軸連動回動機構を備えて、テープがテープ基材に粘着塗膜を形成している粘着テープにした。これを図10のような実際の粘着クリーナーに収納して、走行テストを行った。
【0097】
テープ長として、1m、5m、10m、20mのものを作製して、それぞれを粘着クリーナーに収納して、20cm押し動かし10cm引き動かしという走行を、一方のリールから他方のリールへテープが最後まで移動するまで繰り返した。これらすべての長さにおいて、最後までたるみが生じることなく、走行させることができた。
【0098】
また、ラチェットによる機械音がおかしくなることはなく、押し動かす時の機械音と引き動かす時の機械音はそれぞれ、最後までおかしくなることはなかった。
【0099】
これらのように、粘着クリーナーとしてもきちんと動作している。同じような回転伝動部を2組設けるものでなく、長尺のテープが巻き回された2つのリールが連動回動してもたるみが生じることがなく、手動でも使い勝手がよいリール2軸連動回動機構およびそれを備えた粘着テープクリーナーとなったものである。
【符号の説明】
【0100】
1 第一リール
2 第二リール
3 ローラヘッド
4 テープ
5 被接触体
6 歯付きベルト
7 第一リールの歯付きプーリ
8 ローラヘッドの歯付きプーリ
9 ベルト
10 第一リールのプーリ
11 第二リールのプーリ
12 第一リールのギア
13 中間ギア
14 第二リールのギア
15 第一リールの中心軸
16 第二リールの中心軸
17 内向き突起
18 左補助板
19 右補助板
20 歯車プーリ
21 外向き歯車
22 内向き歯車
23 爪
24 第一リール用の軸穴
25 第二リール用の軸穴
26 爪リング
27 リング溝
28 持ち手
29 左収納部
30 第1プーリ
31 第2プーリ
C1 第一リールの中心
C2 第二リールの中心
C3 ローラヘッドの中心
H 引き動かし方向
S 押し動かし方向
HT 引き動かし走行方向
ST 押し動かし走行方向
T1 第一リールのテープ最外半径
T2 第二リールのテープ最外半径
T3 ローラヘッドのテープ最外半径
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープが第一リールと第二リールの2つのリールに巻き回されており、第一リールの回動が第二リールへ連動されるリール2軸連動回動機構であり、
第一リールの回動は、第一リール側面にてテープを被接触体に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしによる第一リールの回動、または、ローラヘッドにてテープを被接触体に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしによるローラヘッドの回動が回動同期伝動部によって第一リールへ伝動される第一リールの回動であり、
逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部があり、第一リールの回動が逆回転防止部によって一方向の回転と他方向の回転とに分けられ、一方向の回転は回転伝動部によって、他方向の回転は2つのリールに巻き回されたテープによって、第一リールから第二リールに伝動されるものであり、
第一リールの第二リールに対するテープ最外半径比をt12、回転伝動部における第一リールの第二リールに対する回転比をk12とすると、1≦t12≦k12であることを特徴とするリール2軸連動回動機構。
【請求項2】
請求項1に記載のリール2軸連動回動機構を備えて、テープがテープ基材に粘着塗膜を形成している粘着テープであり、粘着テープの粘着面が被接触体に接触する面であることを特徴とする粘着テープクリーナー。
【請求項1】
テープが第一リールと第二リールの2つのリールに巻き回されており、第一リールの回動が第二リールへ連動されるリール2軸連動回動機構であり、
第一リールの回動は、第一リール側面にてテープを被接触体に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしによる第一リールの回動、または、ローラヘッドにてテープを被接触体に接触させながら2つのリールと共に手を使った引き動かしと押し動かしによるローラヘッドの回動が回動同期伝動部によって第一リールへ伝動される第一リールの回動であり、
逆回転防止部、回転伝動部、スリップ部があり、第一リールの回動が逆回転防止部によって一方向の回転と他方向の回転とに分けられ、一方向の回転は回転伝動部によって、他方向の回転は2つのリールに巻き回されたテープによって、第一リールから第二リールに伝動されるものであり、
第一リールの第二リールに対するテープ最外半径比をt12、回転伝動部における第一リールの第二リールに対する回転比をk12とすると、1≦t12≦k12であることを特徴とするリール2軸連動回動機構。
【請求項2】
請求項1に記載のリール2軸連動回動機構を備えて、テープがテープ基材に粘着塗膜を形成している粘着テープであり、粘着テープの粘着面が被接触体に接触する面であることを特徴とする粘着テープクリーナー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−167324(P2011−167324A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33150(P2010−33150)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000115119)ユニオンケミカー株式会社 (67)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000115119)ユニオンケミカー株式会社 (67)
【Fターム(参考)】
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