説明

ルテニウム化合物、その製造方法、ルテニウム含有薄膜及びその製造方法

【課題】良好な気化特性を持ち、酸素などの酸化性の反応剤を用いない非酸化性雰囲気下の条件でのCVD法又はALD法などによって金属ルテニウム薄膜を製造するための原料となる新規な化合物、その製造方法、それを用いて製造したルテニウム含有薄膜及びその製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1)


(式中、R及びRは各々独立に水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を示す。ただし、Rが水素原子の時、Rは水素原子及びメチル基ではない。)で表されるルテニウム化合物を、例えばジ−μクロロ−ビス[クロロ(η−アレーン)ルテニウム]と1,3−シクロヘキサジエン類との反応等により製造し、それを原料として使用することにより、ルテニウム含有薄膜を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造に有用な有機金属化合物、その製造方法、金属含有薄膜及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体素子のDRAMキャパシタ電極の素材には窒化チタンが主に用いられている。しかし、次世代の半導体素子には、高性能化に応えるために微細化が求められており、DRAMキャパシタ材料として高い誘電率を持つ酸化物を使用する必要がある。この誘電率の高いキャパシタ材料と窒化チタンとを組み合わせてDRAM素子を作製する場合、キャパシタ材料中の酸素が拡散するためにキャパシタと電極の間に誘電率が低いチタン酸化物層が形成されるため、素子全体の誘電率が低下してしまう。そこで、次世代のキャパシタ電極の素材としては、その酸化物も電気伝導性を有する点、及び微細化加工性に優れる点からルテニウムが有力視されている。また、次世代の半導体配線の素材としては、銅と誘電率の低い層間絶縁膜との組合せが検討されているが、両素材を直に接合させると互いに拡散し合うため、拡散を抑制するバリア層が必要とされている。また、効率的に銅を堆積させるために、シード層が必要とされている。ルテニウムは、バリア層及びシード層として働くため、有望な素材として注目されている。
【0003】
現在、半導体用素子として用いられている薄膜の形成方法としては、スパッタによる物理気相成長法(PVD法)、化学気相成長法(CVD法)が挙げられる。しかし次世代以降の半導体製造では、微細化した素子の複雑な3次元構造の表面に均一で薄い膜を形成することが求められるため、凹凸のある面に均一な薄膜を形成することが難しいPVD法は適切ではない。そのため段差被覆性よく薄膜を作成する手法として、原料を気体として反応室に送り込み、分解して膜を堆積させるCVD法又は基板表面に原料を吸着させた上で原料を分解して膜を堆積させる原子層蒸着法(ALD法)による薄膜形成法が検討されている。
【0004】
半導体素子製造において、CVD法又はALD法により薄膜を形成するためには、適度な気化特性と熱安定性を持つ、安定した供給量で気化させることの出来る材料が選択される。さらに複雑な3次元構造の表面に均一な厚みで薄膜を形成出来ることも必要な条件のひとつである。さらに安定した供給量で気化させるためには、供給時には液体であるほうが好ましい。
【0005】
CVD法又はALD法によりルテニウム含有薄膜を形成するための原料として、(2,4−ジメチルペンタジエニル)(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(化合物A)やビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(化合物B)などの二価のルテニウム化合物の使用が検討されている。これらの原料を用いて金属ルテニウム薄膜を形成するためには、酸素などの反応剤を用いた酸化性雰囲気下の条件にて原料の分解を行う必要がある。しかし、キャパシタ下部電極膜又は銅配線シード層膜を形成する場合には、酸素などの反応剤は下地の酸化を引き起こして悪影響を与えるために使用できない。すなわち化合物A及び化合物Bは、キャパシタ下部電極膜又は銅配線シード層膜を形成するための原料として必ずしも適切なものではない。
【0006】
また、安定なルテニウム化合物として、(η−ベンゼン)(η−1,3−シクロヘキサジエン)ルテニウム(非特許文献1)、(η−1,3−シクロヘキサジエン)(η−ヘキサメチルベンゼン)ルテニウム(非特許文献2)、(η−1,3−シクロヘキサジエン)(η−トルエン)ルテニウムなどの零価ルテニウム化合物が知られているが、これらは室温において固体である。一般的に、CVD法又はALD法では、原料を液体状態にて使用するため、固体材料をCVD法又はALD法の原料として使用する場合、固体材料を加熱して融解させる又は溶媒に均一に溶解させる必要があり、好ましくない。
【0007】
【非特許文献1】Inorganic Syntheses、22巻、177ページ(1983年)
【非特許文献2】Inorganic Syntheses、21巻、77ページ(1982年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、良好な気化特性を持ち、酸素などの酸化性の反応剤を用いない非酸化性雰囲気下の条件でのCVD法又はALD法などによって金属ルテニウム薄膜を製造するための原料となる新規な化合物、その製造方法、それを用いて製造したルテニウム含有薄膜及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上述の現状に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、一般式(1)で表されるルテニウム化合物及びその製造方法、並びにルテニウム化合物(1)を原料として用いて製造したルテニウム含有薄膜及びその製造方法により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、一般式(1)
【0011】
【化1】

(式中、R及びRは各々独立に水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を示す。ただし、Rが水素原子の時、Rは水素原子及びメチル基ではない。)で表されることを特徴とするルテニウム化合物である。
【0012】
また本発明は、一般式(2)
【0013】
【化2】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表される化合物に、一般式(3)
【0014】
【化3】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を示す。)で表される1,3−シクロヘキサジエンを反応させることを特徴とする、一般式(1)で表されるルテニウム化合物の製造方法である。
【0015】
さらに本発明は、一般式(4)
【0016】
【化4】

(式中Zはハロゲン原子を示す。)で表される三ハロゲン化ルテニウムに、一般式(3a)
【0017】
【化5】

(式中、Rは炭素数1から6のアルキル基を示す。)で表される1,3−シクロヘキサジエンを反応させることを特徴とする、一般式(1a)
【0018】
【化6】

(式中、Rは炭素数1から6のアルキル基を示す。)で表されるルテニウム化合物の製造方法である。
【0019】
また本発明は、一般式(1)で表されるルテニウム化合物を原料として用いることを特徴とする、ルテニウム含有薄膜の製造方法である。
【0020】
さらに本発明は、上述の方法により製造されることを特徴とする、ルテニウム含有薄膜である。以下に本発明を更に詳細に説明する。
【0021】
、R及びRで表される炭素数1から6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、シクロプロピルエチル基、シクロブチルメチル基などを例示することができる。
【0022】
良好な気化特性を持つという点で、Rがエチル基であり、Rが水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましい。更に好ましくは、Rがエチル基であり、かつRが水素原子である。
【0023】
一般式(3)または(3a)で表される1,3−シクロヘキサジエン上のR及びRの置換位置は、1位、2位、又は5位が好ましく、立体的にルテニウム原子に配位し易く、高い熱安定性が期待できることから、5位が更に好ましい。
【0024】
次に本発明の製造方法について詳細に説明する。製法1は、化合物(2)と1,3−シクロヘキサジエン(3)との反応により、本発明のルテニウム化合物(1)を製造する方法である。
【0025】
【化7】

(式中、R、R及びXは前記と同じ意味を示す。)
製法1は、有機溶媒中で実施することができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロピルアルコールなどのアルコール類や、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの炭化水素類や、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類を例示することが出来、これらを単独で又は混合して用いることが出来る。収率が良好な点でメタノール、エタノール、又は2−プロピルアルコールが好ましい。また、製法1は、収率を向上させる上で、脱ハロゲン化剤を使用することが好ましい。脱ハロゲン化剤としては、亜鉛、炭酸カルシウムなどを例示することが出来、これらを単独で又は混合して用いることが出来る。収率が良好な点で亜鉛粉末が好ましい。ハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子である。
【0026】
製法1において、反応温度に限定は無いが、−80℃から150℃の範囲から適宜選択された温度で反応させることにより、ルテニウム化合物(1)を収率よく得ることが出来る。反応時間にも限定はないが、1時間から150時間の範囲内から適宜選択された時間反応させることにより、ルテニウム化合物(1)を収率よく得ることが出来る。ルテニウム化合物(1)の収率がことさら良好な点で、50℃から100℃の範囲内の温度で2時間から48時間反応させることがさらに好ましい。
【0027】
製法1において、反応はアルゴン又は窒素雰囲気下で行うことがルテニウム化合物(1)の収率が良い点で好ましい。
【0028】
得られた本発明のルテニウム化合物(1)は、通常の後処理により単離することが出来る。
【0029】
製法1における原料化合物(2)は、公知の方法(例えば、Inorganic Syntheses、21巻、75ページ(1982年))を参考にして合成することが出来る。また、1,3−シクロヘキサジエン(3)は、公知の合成方法(例えば、Journal of Organic Chemistry、64巻、1745ページ(1999年)、Principles and Applications of Organotransition Metal Chemistry、423ページ(1987年)等)を参考にして合成することができる。また、1,3−シクロヘキサジエン(3)は1,4−シクロヘキサジエン類を公知の方法(例えば、Journal of American Chemical Society、83巻、2954ページ(1961年))を参考にして異性化させることにより合成することができる。1,4−シクロヘキサジエン類は、公知の合成方法(例えば、Organic Syntheses、5巻、467ページ(1973年))を参考にして合成することが出来る。
【0030】
製法2は、三ハロゲン化ルテニウム(4)と1,3−シクロヘキサジエン(3a)との反応により、本発明のルテニウム化合物(1a)を製造する方法である。
【0031】
【化8】

(式中、R及びZは前記と同じ意味を示す。)
製法2は、有機溶媒中で実施することができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロピルアルコールなどのアルコール類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル類を例示することが出来、これらを単独で又は混合して用いることが出来る。収率が良好な点でメタノール、エタノール、又は2−プロピルアルコールが好ましい。また、製法2は、収率を向上させる上で、脱ハロゲン化剤を使用することが好ましい。脱ハロゲン化剤としては、亜鉛、炭酸カルシウムなどを例示することが出来、これらを単独で又は混合して用いることが出来る。収率が良好な点で亜鉛粉末が好ましい。三ハロゲン化ルテニウム(4)としては、例えば三塩化ルテニウム、三臭化ルテニウム又は三ヨウ化ルテニウムが挙げられ、好ましくは三塩化ルテニウムである。また、三ハロゲン化ルテニウム(4)は、1,3−シクロヘキサジエン(3a)と反応すれば水和物でも無水物でも良い。反応溶媒に溶解し易く、収率が良好な点で水和物が好ましい。
【0032】
製法2において、反応温度には限定は無いが、−20℃から100℃の範囲から適宜選択された温度で反応させることにより、ルテニウム化合物(1a)を収率よく得ることが出来る。反応時間にも限定はないが、1時間から150時間の範囲内から適宜選択された時間反応させることにより、ルテニウム化合物(1a)を収率よく得ることが出来る。ルテニウム化合物(1a)の収率がとりわけ良好な点で、50℃から100℃の範囲内の温度で2時間から48時間反応させることがさらに好ましい。
【0033】
製法2において、反応はアルゴン又は窒素雰囲気下で行うことがルテニウム化合物(1a)の収率が良い点で好ましい。
【0034】
得られた本発明のルテニウム化合物(1a)は、通常の後処理により単離することが出来る。
【0035】
製法2における1,3−シクロヘキサジエン(3a)は、前述の1,3−シクロヘキサジエン(3)と同様の方法により合成することが出来る。
【0036】
本発明のルテニウム化合物(1)を原料に用いて、ルテニウム含有薄膜を製造することが出来る。ルテニウム含有薄膜の製造方法は特に限定されないが、例えば、CVD法、ALD法、スピンコート法、ディップコート法、噴霧法などが挙げられる。CVD法又はALD法によりルテニウム含有薄膜を形成する場合には、ルテニウム化合物(1)をガス化して基板上に供給する。ガス化する方法としては、例えば加熱した恒温槽にルテニウム化合物(1)を入れ、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンもしくは窒素などのキャリアガスを吹き込みガス化する方法、又はルテニウム化合物(1)をそのまま又は溶液とし、これらを気化器に送って加熱して気化器内でガス化する方法などがある。溶液とする場合に用いる溶媒としては、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の炭化水素類を例示することが出来る。
【0037】
ガスとして基板上に供給したルテニウム化合物(1)を、水素、酸素、オゾンなどの反応性ガスを共存させて分解する方法又は基板上に吸着させたルテニウム化合物(1)にこれらの反応性ガスを反応させることによってルテニウム含有薄膜を製造することが出来る。分解は加熱だけでも可能であるが、プラズマや光などを併用しても良い。
【発明の効果】
【0038】
本発明のルテニウム化合物(1)は、良好な気化特性を持ち、これを原料に用いて例えばCVD法又はALD法などの手法によって、酸素などの酸化性の反応剤を用いない非酸化性雰囲気下の条件、あるいは酸化性雰囲気下の条件を問わず、ルテニウム含有薄膜を製造することが可能である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)(η−1,3−シクロヘキサジエン)(η−エチルベンゼン)ルテニウム(Ru(C)(C))の合成
アルゴン雰囲気下で、エタノール20mlにジ−μクロロ−ビス[クロロ(η−エチルベンゼン)ルテニウム]0.50gを溶解させた溶液に、1,3−シクロヘキサジエン2.0mlを添加した後、亜鉛粉末1.0gを添加した。70℃にて3時間攪拌した。溶媒を減圧留去した後、ヘキサンを加えた。不溶物をろ過して除去した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を減圧蒸留することにより、黄色液体0.12gを得た(収率24%)。
H NMR(500MHz、d−アセトン、δ/ppm)
5.30(d,J=6.5Hz,2H),5.27(t,J=5.5Hz,2H),5.19(t,J=5.5Hz,1H),4.61(dd,J=4.5、2.5Hz,2H),2.83(m,2H),2.39(q,J=7.5Hz,2H),1.35(s,4H),1.17(t,J=7.5Hz,3H)。
【0041】
(試験例1)(η−1,3−シクロヘキサジエン)(η−エチルベンゼン)ルテニウムの熱分析
TG(熱重量測定)は、アルゴンの流通速度400ml/minかつ昇温速度10℃/minの条件で測定した。また、DSC(示差走査熱量測定)測定は、密閉容器中で昇温速度10℃/minの条件で測定した。TG及びDSCの結果を図1に示した。TG結果から(η−1,3−シクロヘキサジエン)(η−エチルベンゼン)ルテニウムは、CVD法又はALD法などの材料として良好な気化特性を有していることがわかり、また、DSC結果から(η−1,3−シクロヘキサジエン)(η−エチルベンゼン)ルテニウムの熱安定性が良好であることがわかった。
【0042】
(実施例2)(η−エチルベンゼン)(η−5−エチル−1,3−シクロヘキサジエン)ルテニウム(Ru(C)(C))の合成
アルゴン雰囲気下で、エタノール30mlに三塩化ルテニウム水和物0.50gを溶解させた溶液に、5−エチル−1,3−シクロヘキサジエン5.1mlを添加した後、亜鉛粉末1.0gを添加した。70℃にて5時間攪拌した。溶媒を減圧留去した後、ヘキサンを加えた。不溶物をろ過して除去した後、溶媒を減圧留去した。得られた残渣を減圧蒸留することにより、黄色液体0.10gを得た(収率18%)。
H NMR(500MHz、C、δ/ppm)
4.87(m,7H),3.03(m,2H),2.07(m,4H),1.74(m,3H),1.08(t,J=7.5Hz,3H),0.99(t,J=7.5Hz,3H)。
【0043】
(試験例2)(η−エチルベンゼン)(η−5−エチル−1,3−シクロヘキサジエン)ルテニウムの熱分析
TG(熱重量測定)は、アルゴンの流通速度400ml/minかつ昇温速度10℃/minの条件で測定した。また、DSC(示差走査熱量測定)測定は、密閉容器中で昇温速度10℃/minの条件で測定した。TG及びDSCの結果を図2に示した。TG結果から(η−エチルベンゼン)(η−5−エチル−1,3−シクロヘキサジエン)ルテニウムは、CVD法又はALD法などの材料として良好な気化特性を有していることがわかり、また、DSC結果から(η−エチルベンゼン)(η−5−エチル−1,3−シクロヘキサジエン)ルテニウムの熱安定性が良好であることがわかった。
【0044】
(実施例3)
(η−1,3−シクロヘキサジエン)(η−エチルベンゼン)を原料として、図3の装置を用いて、原料温度75℃、キャリアガス(Ar)流量50sccm、原料圧力100Torr、希釈ガス(Ar)流量25sccm、反応ガス(4%の水素を含むAr)流量325sccm、基板温度300℃、反応室内圧力10Torrの条件で、CVD法によりSiO/Si基板上に6時間かけて薄膜の製造を行った。製造した薄膜を蛍光X線にて確認したところRuに帰属する特性X線が観測された。X線回折法にて結晶性を確認したところ金属ルテニウムに基づく回折ピークが確認された。SEMにより確認した膜厚は20nmであった。
【0045】
(実施例4)
(η−1,3−シクロヘキサジエン)(η−エチルベンゼン)を原料として、図3の装置を用いて、原料温度75℃、キャリアガス(Ar)流量50sccm、原料圧力100Torr、希釈ガス(Ar)流量150sccm、反応ガス(O)流量0.1sccm、基板温度350℃、反応室内圧力10Torrの条件で、CVD法によりSiO/Si基板上に6時間かけて薄膜の製造を行った。製造した薄膜を蛍光X線にて確認したところRuに帰属する特性X線が観測された。X線回折法にて結晶性を確認したところ金属ルテニウムに基づく回折ピークが確認された。SEMにより確認した膜厚は30nmであった。
【0046】
(実施例5)
(η−1,3−シクロヘキサジエン)(η−エチルベンゼン)を原料として、図3の装置を用いて、原料温度75℃、キャリアガス(Ar)流量50sccm、原料圧力100Torr、希釈ガス(Ar)流量149sccm、反応ガス(O)流量1sccm、基板温度400℃、反応室内圧力10Torrの条件で、CVD法によりSiO/Si基板上に6時間かけて薄膜の製造を行った。製造した薄膜を蛍光X線にて確認したところRuに帰属する特性X線が観測された。X線回折法にて結晶性を確認したところ酸化ルテニウムに基づく回折ピークが確認された。SEMにより確認した膜厚は30nmであった。
【0047】
実施例3から分かるように、本発明のルテニウム化合物は、酸素などの酸化性の反応剤を用いない非酸化性雰囲気下の条件において、金属ルテニウム薄膜の製造が可能である。また、実施例4、5から分かるように、酸化性雰囲気下の条件においても、ルテニウム含有薄膜の製造が可能であり、薄膜製造条件を調整することにより、金属ルテニウム薄膜、酸化ルテニウム薄膜等の作り分けが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】試験例1で測定したTG及びDSCの結果を示す図である。
【図2】試験例2で測定したTG及びDSCの結果を示す図である。
【図3】実施例3〜5で用いたCVD成膜装置の概略図である。
【符号の説明】
【0049】
1.原料容器
2.恒温槽
3.反応室
4.基板
5.反応ガス
6.希釈ガス
7.キャリアガス
8.マスフローコントローラー
9.マスフローコントローラー
10.マスフローコントローラー
11.真空ポンプ
12.排気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、R及びRは各々独立に水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を示す。ただし、Rが水素原子の時、Rは水素原子及びメチル基ではない。)で表されることを特徴とするルテニウム化合物。
【請求項2】
がエチル基であり、Rが水素原子、メチル基又はエチル基であることを特徴とする、請求項1に記載のルテニウム化合物。
【請求項3】
がエチル基であり、Rが水素原子であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のルテニウム化合物。
【請求項4】
一般式(2)
【化2】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表される化合物に、一般式(3)
【化3】

(式中、Rは水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を示す。)で表される1,3−シクロヘキサジエンを反応させることを特徴とする、一般式(1)
【化4】

(式中、R及びRは各々独立に水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を示す。ただし、Rが水素原子の時、Rは水素原子及びメチル基ではない。)で表されるルテニウム化合物の製造方法。
【請求項5】
がエチル基であり、Rが水素原子、メチル基又はエチル基である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
がエチル基であり、Rが水素原子である請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
一般式(4)
【化5】

(式中Zはハロゲン原子を示す。)で表される三ハロゲン化ルテニウムに、一般式(3a)
【化6】

(式中、Rは炭素数1から6のアルキル基を示す。)で表される1,3−シクロヘキサジエンを反応させることを特徴とする、一般式(1a)
【化7】

(式中、Rは炭素数1から6のアルキル基を示す。)で表されるルテニウム化合物の製造方法。
【請求項8】
一般式(1)
【化8】

(式中、R及びRは各々独立に水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を示す。ただし、Rが水素原子の時、Rは水素原子及びメチル基ではない。)で表されるルテニウム化合物を原料として用いることを特徴とする、ルテニウム含有薄膜の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法により製造されることを特徴とする、ルテニウム含有薄膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−46440(P2009−46440A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215529(P2007−215529)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(000173762)財団法人相模中央化学研究所 (151)
【Fターム(参考)】