説明

ルテニウム化合物の製造方法

【課題】トリフルオロホスフィン−ルテニウム化合物を低温及び低圧の条件で合成する方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表わされる化合物およびトリフルオロホスフィンを反応させて、または、下記一般式(1)で表わされる化合物、トリフルオロホスフィン、および水素もしくはハロゲンを反応させて、下記一般式(2)で表わされる化合物を得る工程を含む、ルテニウム化合物の製造方法。
RuL (1)
Ru(PF(L(L (2)
(上記一般式(1)、(2)中、L、Lは、少なくとも二つの二重結合を有する炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物であり、Lは、水素原子またはハロゲン原子である。lは1〜5の整数であり、mは0〜4の整数であり、nは0〜2の整数である。ただし、l+m+2n=5または6である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテニウム化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ルテニウム化合物として、ヘキサ(トリフルオロホスフィン)ルテニウムやテトラキス(トルフルオロホスフィン)ルテニウムジヒドリド等のトリフルオロホスフィン−ルテニウム化合物が報告されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Angew.Chem.,1967,79,27.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなトリフルオロホスフィン−ルテニウム化合物は、三塩化ルテニウムとトリフルオロホスフィンとを反応させて得られるが、高温(120℃〜300℃)、及び高圧(100〜600気圧)の条件が必要であるという問題点があった。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、トリフルオロホスフィン−ルテニウム化合物を低温及び低圧の条件で合成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を行った結果、下記一般式(1)で表わされる化合物とトリフルオロホスフィンを反応させる工程を含むトリフルオロホスフィン−ルテニウム化合物の製造方法を用いることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[2]を提供するものである。
[1] 下記一般式(1)で表わされる化合物およびトリフルオロホスフィンを反応させて、または、下記一般式(1)で表わされる化合物、トリフルオロホスフィン、および水素もしくはハロゲンを反応させて、下記一般式(2)で表わされる化合物を得る工程を含むことを特徴とする、ルテニウム化合物の製造方法。
RuL (1)
(上記一般式(1)中、Lは、互いに同一であっても異なっていても良く、少なくとも二つの二重結合を有する炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物である。)
Ru(PF(L(L (2)
(上記一般式(2)中、Lは、複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていても良く、水素原子またはハロゲン原子であり、Lは、複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていても良く、少なくとも二つの二重結合を有する炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物であり、lは1〜5の整数であり、mは0〜4の整数であり、nは0〜2の整数である。ただし、l+m+2n=5または6である。)
[2] 下記一般式(3)で表わされる化合物と、少なくとも二つの二重結合を有する炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物とを反応させて、上記一般式(1)で表わされる化合物を得る工程を含む、前記[1]に記載のルテニウム化合物の製造方法。
RuX (3)
(上記一般式(3)中、Xはハロゲン原子であり、jは2または3の整数である。)
【発明の効果】
【0006】
本発明のルテニウム化合物の製造方法を用いることで、トリフルオロホスフィン−ルテニウム化合物を低温及び低圧の条件で合成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のルテニウム化合物の製造方法は、下記一般式(1)で表わされる化合物と、トリフルオロホスフィンと、必要に応じて用いられる水素またはハロゲンとを反応させて、下記一般式(2)で表わされる化合物を得る工程を含むことを特徴とする。
RuL (1)
(上記一般式(1)中、Lは、互いに同一であっても異なっていても良く、少なくとも二つの二重結合を有する炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物である。)
Ru(PF(L(L (2)
(上記一般式(2)中、Lは、複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていても良く、水素原子またはハロゲン原子であり、Lは、複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていても良く、少なくとも二つの二重結合を有する炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物であり、lは1〜5の整数であり、mは0〜4の整数であり、nは0〜2の整数である。ただし、l+m+2n=5または6である。)
【0008】
一般式(1)中、Lは、少なくとも二つの二重結合を有する炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物である。
具体的には、1,3−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、1,6−ヘプタジエン、1,5−ヘプタジエン、1,4−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,4−オクタジエン等の鎖状ジエン、1,3,5−ヘプタトリエン、1,3,5−オクタトリエン、1,3,6−オクタトリエン、1,4,6−オクタトリエン、1,3,5−ノナトリエン、1,3,7−ノナトリエン、1,3,5−デカトリエン、1,4,7−デカトリエン等の鎖状トリエン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−シクロオクタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン等の環状ジエン、1,3,5−シクロヘプタトリエン、1,3,5−シクロオクタトリエン、1,3,6−シクロオクタトリエン、1,4,6−シクロオクタトリエン、1,3,5−シクロノナトリエン、1,3,7−シクロノナトリエン、1,3,5−シクロデカトリエン、1,4,7−シクロデカトリエン等の環状トリエンを挙げることができる。
また、一般式(1)中に2つ存在するLは、互いに同一であっても異なっていても良い。
【0009】
一般式(2)中、Lは、複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていても良く、水素原子またはハロゲン原子であり、水素原子であることが好ましい。また、Lは、上記一般式(1)におけるLと同様である。
一般式(2)中、lは1〜5の整数であり、高い収率でトリフルオロホスフィン−ルテニウム化合物を得るという観点から、3〜5の整数であることが好ましい。mは0〜4の整数であり、高い収率でトリフルオロホスフィン−ルテニウム化合物を得るという観点から、0〜2の整数であることが好ましい。nは0〜2の整数であり、高い収率でトリフルオロホスフィン−ルテニウム化合物を得るという観点から、0または1であることが好ましい。
なお、l+m+2n=5または6である。
【0010】
上記一般式(1)で表わされる化合物の具体例としては、例えば、(η−1,3−ペンタジエン)(η−1,3−ペンタジエン)ルテニウム(0)、(η−1,3−ペンタジエン)(η−2,4−ヘキサジエン)ルテニウム(0)、(η−1,3−ペンタジエン)(η−1,7−オクタジエン)ルテニウム(0)、(η−1,3−ペンタジエン)(η−1,3,5−ヘプタトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,3−ペンタジエン)(η−1,4,6−オクタトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,3−ペンタジエン)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(0)、(η−1,3−ペンタジエン)(η−1,3−シクロヘキサジエン)ルテニウム(0)、(η−1,3−ペンタジエン)(η−1,3,5−シクロヘプタトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,3−ペンタジエン)(η−1,3,7−シクロノナトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,4−ヘキサジエン)(η−1,3,5−ヘプタトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,6−ヘプタジエン)(η−1,3,5−ヘプタトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,7−オクタジエン)(η−1,3,5−ヘプタトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,3,5−ヘプタトリエン)(η−1,3,5−ヘプタトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,3,5−ヘプタトリエン)(η−1,4,6−オクタトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,3,5−ヘプタトリエン)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(0)、(η−1,3,5−ヘプタトリエン)(η−1,3−シクロヘキサジエン)ルテニウム(0)、(η−1,3,5−ヘプタトリエン)(η−1,3,5−シクロヘプタトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,3,5−ヘプタトリエン)(η−1,3,7−シクロノナトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,3−ペンタジエン)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(0)、(η−2,4−ヘキサジエン)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(0)、(η−1,7−オクタジエン)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(0)、(η−1,3,5−ヘプタトリエン)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(0)、(η−1,4,6−オクタトリエン)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(0)、(η−1,5−シクロオクタジエン)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(0)、(η−1,3−シクロヘキサジエン)(η−1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(0)、(η−1,5−シクロオクタジエン)(η−1,3,5−シクロヘプタトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,5−シクロオクタジエン)(η−1,3,5−シクロオクタトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,4−ヘキサジエン)(η−1,3,5−シクロノナトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,6−ヘプタジエン)(η−1,3,5−シクロノナトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,7−オクタジエン)(η−1,3,5−シクロノナトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,3,5−ヘプタトリエン)(η−1,3,5−シクロノナトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,4,6−オクタトリエン)(η−1,3,5−シクロノナトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,5−シクロオクタジエン)(η−1,3,5−シクロノナトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,3−シクロヘキサジエン)(η−1,3,5−シクロノナトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,3,5−シクロヘプタトリエン)(η−1,3,5−シクロノナトリエン)ルテニウム(0)、(η−1,3,5−シクロノナトリエン)(η−1,3,7−シクロノナトリエン)ルテニウム(0)などが挙げられる。
【0011】
上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば、ペンタキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(0)、(η−1,4−シクロヘキサジエン)トリス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(0)、(η−1,6−ヘプタジエン)トリス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(0)、(6−η:1−3−η−ヘプタトリエン)トリス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(0)、(η−1,4,6−ヘプタトリエン)トリス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(0)、(η−1,7−オクタジエン)トリス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(0)、(η−1,3,5−オクタトリエン)トリス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(0)、(η−1,5−シクロオクタジエン)トリス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(0)、(η−1,3,5−シクロオクタトリエン)トリス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(0)、(6−η:1−3−η−シクロオクタトリエン)トリス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(0)、(η−1,5−シクロオクタジエン)(η−1,3,5−シクロオクタトリエン)(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(0)、テトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(II)ジヒドリド、(ジフルオロ)テトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(II)、(ジクロロ)テトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(II)、(ジブロモ)テトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(II)、(ジヨード)テトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(II)、(フルオロ)テトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(II)ヒドリド、(クロロ)テトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(II)ヒドリド、トリス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(III)トリヒドリド、(トリフルオロ)トリス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(III)、ビス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(IV)テトラヒドリド、(テトラフルオロ)ビス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(IV)、(テトラクロロ)ビス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(IV)、(トリフルオロ)テトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(IV)ヒドリド、(ジフルオロ)テトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(IV)ジヒドリド、(ジブロモ)テトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(IV)ジヒドリド、(フルオロ)テトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(IV)トリヒドリド、(ヨード)テトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(IV)トリヒドリドなどを挙げることができる。
【0012】
ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などを用いることができ、フッ素、塩素、臭素であることが好ましく、フッ素、塩素であることがより好ましい。
なお、上記工程で用いられる水素もしくはハロゲンは、例えば、ガスの形態(水素ガスまたはハロゲンガス)で用いることができる。
【0013】
上記工程において、反応を行う際の温度は、溶媒の種類によっても異なるが、通常−0〜200℃、好ましくは60〜180℃、より好ましくは100〜150℃であり、反応時間は、通常0.1〜48時間、好ましくは0.2〜24時間、より好ましくは0.5〜10時間である。
反応に用いる原料として気体を用いる場合において、反応時の圧力(複数の種類の気体を用いる場合は合計の圧力)は、通常0.3〜5atm、好ましくは0.4〜3atm、より好ましくは0.5〜2atmである。
反応に用いる溶媒としては、反応性および溶解性の観点から、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類が好ましい。具体的には、アルコール類として、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等;ケトン類として、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジブチルケトン、t−ブチルメチルケトン等;エーテル類として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等;エステル類として、酢酸エチル、酢酸ブチル等;ニトリル類として、アセトニトリル、プロピオニトリル等;炭化水素類として、ヘプタン、テトラデカン等;ハロゲン化炭化水素類として、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエタン、塩化フェニル、臭化フェニル等が挙げられる。反応に用いる溶媒は、上述の溶媒を1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
なお、反応後必要に応じて、溶媒による抽出、真空留去、溶媒による再結晶を行って、ルテニウム化合物を得ることができる。
抽出、再結晶に用いられる溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類、ニトリル類、ハロゲン化炭化水素類が挙げられる。アルコール類として、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等;ケトン類として、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジブチルケトン、t−ブチルメチルケトン;エーテル類として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等;エステル類として、酢酸エチル、酢酸ブチル等;、炭化水素類として、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等;ニトリル類として、アセトニトリル、プロピオニトリル等;ハロゲン化炭化水素類として、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエタン、塩化フェニル、臭化フェニル等が挙げられる。抽出、再結晶に用いられる溶媒としては、上述の溶媒を2種以上組み合わせて用いることもでき、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類から選ばれる少なくとも一種と、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、ニトリル類から選ばれる少なくとも一種を組み合わせて用いることが好ましい。
【0015】
また、本発明のルテニウム化合物の製造方法は、下記一般式(3)で表わされる化合物と、少なくとも二つの二重結合を有する炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物とを反応させて上記一般式(1)で表わされる化合物を得る工程を含むことができる。
RuX (3)
(上記一般式(3)中、Xはハロゲン原子であり、jは2または3の整数である。)
【0016】
一般式(3)中、Xは、ハロゲン原子であり、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。
上記工程において、一般式(3)で表される化合物と反応する、少なくとも二つの二重結合を有する炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物とは、上記一般式(1)におけるLと同様である。
上記工程において、反応を行う際の温度は、溶媒の種類によっても異なるが、通常−0〜200℃、好ましくは60〜180℃、更に好ましくは100〜150℃であり、反応時間は、通常0.1〜48時間、好ましくは0.2〜24時間、更に好ましくは0.5〜10時間である。
【0017】
反応に用いる溶媒としては、反応性および溶解性の観点から、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類が好ましい。具体的には、アルコール類として、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等;ケトン類として、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジブチルケトン、t−ブチルメチルケトン等;エーテル類として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等;エステル類として、酢酸エチル、酢酸ブチル等;ニトリル類として、アセトニトリル、プロピオニトリル等;炭化水素類として、ヘプタン、テトラデカン等;ハロゲン化炭化水素類として、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエタン、塩化フェニル、臭化フェニル等が挙げられる。反応に用いる溶媒は、上述の溶媒を1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例によって、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0019】
[合成例1] (η−1,5−シクロオクタジエン)(η−1,3,5−シクロオクタトリエン)ルテニウム(0)の合成
窒素置換した3つ口フラスコ中に亜鉛308.57g、1,5−シクロオクタジエン500mL、メタノール130mLを入れ、65℃で超音波攪拌を行った。65℃で超音波攪拌を行いながら窒素気流下で三塩化ルテニウム・三水和物32.95g、メタノール370mL溶液を3時間掛けて滴下した。滴下後、更に65℃で3時間超音波攪拌を行った。反応終了後、溶液を室温まで冷却して窒素雰囲気下でアルミナ濾過を行い、濾液を減圧下で濃縮した。得られた黒赤色液体を展開溶媒としてヘキサンを用いたアルミナカラムクロマトグラフィーすることで橙黄色透明溶液を回収し、減圧下で濃縮し溶媒を留去した。更にヘキサンを用いて再結晶を行い、ヘキサンで洗浄後、真空乾燥し、橙黄色針状結晶24.64gを得た。得られた橙黄色針状結晶は、溶媒として重水素化ベンゼンを用い、ブルカー・バイオスピン社製・ADVANCE500型H−NMRにより室温において分解能500MHzで測定したH−NMRで、(η−1,5−シクロオクタジエン)(η−1,3,5−シクロオクタトリエン)ルテニウム(0)であることを確認した。収率は62重量%であった。
【0020】
[実施例1] (1,5−シクロオクタジエン)トリス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(0)の合成
(η−1,5−シクロオクタジエン)(η−1,3,5−シクロオクタトリエン)ルテニウム(0)5.08gを入れた反応器を窒素置換して、ヘプタン50mLを加えて攪拌した。溶液を−78℃まで冷却した後に、系内が0.01atm以下になるまで減圧した。その後、トリフルオロホスフィンを0.7atmになるまで導入し、60℃で2時間加熱攪拌した。反応終了後、溶液を−78℃まで冷却して減圧乾燥を行い、トリフルオロホスフィンを除去した。溶液を常圧常温に戻した後に、窒素雰囲気下で濾過することで白色固体3.96gを得た。得られた白色固体は、溶媒として重水素化ベンゼンを用い、ブルカー・バイオスピン社製・ADVANCE500型H−NMRにより室温において分解能500MHzで測定したH−NMRで、(1,5−シクロオクタジエン)トリス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(0)であることを確認した。収率は52重量%であった。
【0021】
[実施例2] ジヒドリドテトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(II)の合成
(η−1,5−シクロオクタジエン)(η−1,3,5−シクロオクタトリエン)ルテニウム(0)10.02gを入れた反応器を窒素置換して、テトラデカン100mLを加えて攪拌した。系内を0.01atm以下になるまで減圧した後に、トリフルオロホスフィンを0.7atm、水素を0.3atm導入し、150℃で6.5時間加熱攪拌した。反応器内の内圧が0.2atm以上減少した場合には、適宜、内圧が1atmになるまでトリフルオロホスフィンと水素を追加導入した。反応終了後、溶液を室温まで冷却して減圧乾燥を行い、−78℃のトラップ中に淡黄色固体が得られた。この淡黄色固体を常圧常温に戻した後に、相分離した上層の無色透明液体を除去し、室温下10torrで減圧蒸留することで無色透明液体11.31gを得た。得られた無色透明液体は、溶媒として重水素化ベンゼンを用い、ブルカー・バイオスピン社製・ADVANCE500型H−NMRにより室温において分解能500MHzで測定したH−NMRで、ジヒドリドテトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(II)であることを確認した。収率は78重量%であった。
【0022】
[実施例3] (1,5−オクタジエン)トリス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(0)の合成
(η−1,5−オクタジエン)(η−1,4,7−オクタトリエン)ルテニウム(0)5.21gを入れた反応器を窒素置換して、ヘプタン50mLを加えて攪拌した。溶液を−78℃まで冷却した後に、系内が0.01atm以下になるまで減圧した。その後、トリフルオロホスフィンを0.7atmになるまで導入し、60℃で3時間加熱攪拌した。反応終了後、溶液を−78℃まで冷却して減圧乾燥を行い、トリフルオロホスフィンを除去した。溶液を常圧常温に戻した後に、窒素雰囲気下で濾過することで白色固体2.40gを得た。得られた白色固体は、溶媒として重水素化ベンゼンを用い、ブルカー・バイオスピン社製・ADVANCE500型H−NMRにより室温において分解能500MHzで測定したH−NMRで、(1,5−オクタジエン)トリス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(0)であることを確認した。収率は31重量%であった。
【0023】
[実施例4] ジクロロテトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(II)の合成
(η−1,5−シクロオクタジエン)(η−1,3,5−シクロオクタトリエン)ルテニウム(0)10.02gを入れた反応器を窒素置換して、テトラデカン100mLを加えて攪拌した。系内を0.01atm以下になるまで減圧した後に、トリフルオロホスフィンを0.7atm、塩素を0.3atm導入し、130℃で8時間加熱攪拌した。反応器内の内圧が0.2atm以上減少した場合には、適宜、内圧が1atmになるまでトリフルオロホスフィンと塩素を追加導入した。反応終了後、溶液を室温まで冷却して減圧乾燥を行い、−78℃のトラップ中に淡黄色固体が得られた。この淡黄色固体を常圧常温に戻した後に、相分離した上層の無色透明液体を除去することで淡黄色透明液体8.82gを得た。得られた淡黄色透明液体は、溶媒として重水素化ベンゼンを用い、ブルカー・バイオスピン社製・ADVANCE500型H−NMRにより室温において分解能500MHzで測定したH−NMRでジクロロテトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(II)であることを確認した。収率は57重量%であった。
【0024】
[比較例1] ジヒドリドテトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(II)の合成(文献例)
三塩化ルテニウム5.03g、銅10.08gを入れた反応器を真空にして、トリフルオロホスフィンを400atm、水素を120atm導入し、250℃で20時間加熱した。反応終了後、溶液を室温まで冷却して減圧乾燥を行い、トリフルオロホスフィンと水素を除去した。得られた液体を窒素雰囲気下で濾過することでジヒドリドテトラキス(トリフルオロホスフィン)ルテニウム(II)6.58gを淡黄色透明液体として得た。収率は60重量%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされる化合物およびトリフルオロホスフィンを反応させて、または、下記一般式(1)で表わされる化合物、トリフルオロホスフィン、および水素もしくはハロゲンを反応させて、下記一般式(2)で表わされる化合物を得る工程を含むことを特徴とする、ルテニウム化合物の製造方法。
RuL (1)
(上記一般式(1)中、Lは、互いに同一であっても異なっていても良く、少なくとも二つの二重結合を有する炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物である。)
Ru(PF(L(L (2)
(上記一般式(2)中、Lは、複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていても良く、水素原子またはハロゲン原子であり、Lは、複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていても良く、少なくとも二つの二重結合を有する炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物であり、lは1〜5の整数であり、mは0〜4の整数であり、nは0〜2の整数である。ただし、l+m+2n=5または6である。)
【請求項2】
下記一般式(3)で表わされる化合物と、少なくとも二つの二重結合を有する炭素数4〜10の不飽和炭化水素化合物とを反応させて、上記一般式(1)で表わされる化合物を得る工程を含む、請求項1に記載のルテニウム化合物の製造方法。
RuX (3)
(上記一般式(3)中、Xはハロゲン原子であり、jは2または3の整数である。)

【公開番号】特開2012−92025(P2012−92025A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238625(P2010−238625)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(591006003)株式会社トリケミカル研究所 (31)
【Fターム(参考)】