説明

ルテニウム酸化物微粉末の製造方法

【課題】 有害な8価のルテニウム酸化物(RuO)を発生せず、電極の特性に対して問題となるナトリウムが残留することがなく、高品位のルテニウム酸化物微粉末を製造する方法を提供する。
【解決手段】 ルテニウム含有量10〜50質量%のルテニウム−ニッケル合金を、真空中又は不活性雰囲気中において600〜1400℃の温度で1〜10時間熱処理し、箔状に成形した後、合金中のニッケルを電解して、溶液中に沈降するルテニウム酸化物の微粒子を回収する。電解条件は、温度50〜60℃、陽極の電流密度1〜100mA/cm、陽極の酸化還元電位600〜1200mVの条件が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテニウム酸化物微粉末の製造方法に関し、更に詳しくは、電気化学キャパシタ電極用に適したルテニウム酸化物微粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電機能を有する電気化学素子の代表的なものとしては、二次電池、キャパシタなどがあり、これらはそれぞれの特徴を生かした応用機器で実用化されている。最近開発されている蓄電素子は、全て電気化学的な原理を利用したものであって、二次電池と電気化学キャパシタが代表的である。
【0003】
二次電池は、単位質量あるいは単位体積当りに蓄積できるエネルギー量(エネルギー密度)の点で優れているが、使用期間、充電時間、単位時間当り使用できるエネルギー量(出力密度)の点では未だ多くの改善すべき点がある。一方、電気化学キャパシタは、二次電池に比べてエネルギー密度は小さいが、使用時間、充電時間、出力密度の点では二次電池よりも優れた特性を発揮する。
【0004】
電気化学キャパシタには、大きく分けて2種類ある。即ち、電極/電解液界面に生ずる電気二重層を蓄電に利用する電気二重層キャパシタと、金属酸化物や導電性高分子の表面の酸化還元反応(擬似電気二重層容量)を利用するレドックスキャパシタである。体積エネルギー密度を高めるためには、金属酸化物を利用したレドックスキャパシタが有利である。
【0005】
現在まで、上記レドックスキャパシタの電極材料として開発されてきた金属酸化物としては、ルテニウム酸化物が優れた電気化学特性を示すことが知られている。ここで「ルテニウム酸化物」とは、酸化ルテニウム及び酸化ルテニウム水和物と共に、酸化ルテニウムと水に分解可能なルテニウム水酸化物を含め、これらを総称した称呼として当該技術分野で広く使用されている。
【0006】
一般に、レドックスキャパシタに適した数10nmサイズの酸化ルテニウムは、熱分解法や塩化ルテニウムを前駆体としたゾル−ゲル(sol−gel)法により作製されている。これらの方法は、例えば、特開平2-088432号公報、B.E.Conway著、直井、西野、森本監訳、「電気化学キャパシタ」、第11章、エヌティーエス社、2001年、及びJ.ElectreoChem.Soc.,vol.142,No.8などに記載されている。
【0007】
しかしながら、上記熱分解法の場合は、大気中で加熱することにより、粘膜を刺激する8価のルテニウム酸化物(RuO)の有毒ガスが生成するため、発生したガスが周囲に漏れないような安全対策を施した設備が余計に必要になる。
【0008】
また、上記ゾル−ゲル法の場合には、有毒なRuOの発生の危険はほとんどないが、塩化ルテニウムに水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物を加えて中和反応を起こすため、塩化ナトリウムの生成が避けられない。塩化ナトリウムは酸化ルテニウム微粉末の濾過と洗浄を繰り返しても完全に除去することが難しいため、電気化学キャパシタ電極に用いたとき不純物として数質量%残り、その電気特性や耐蝕性などに悪影響を与える。
【0009】
【特許文献1】特開平2-088432号公報
【非特許文献1】B.E.Conway著、直井、西野、森本監訳、「電気化学キャパシタ」、第11章、エヌティーエス社、2001年
【非特許文献2】J.ElectreoChem.Soc.,vol.142,No8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、有害で刺激性のある8価のルテニウム酸化物(RuO)を発生せず、また電極の特性に対して悪影響を与えるナトリウムが残留することがなく、安全性に優れ且つ簡便に、高品位のルテニウム酸化物微粉末を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明が提供するルテニウム酸化物微粉末の製造方法は、ルテニウムとニッケルの合金中のニッケルを電解して、溶液中に沈降するルテニウム酸化物の微粒子を回収することを特徴とする。
【0012】
尚、本発明において「ルテニウム酸化物」とは、4価の酸化物である酸化ルテニウム(RuO)、酸化ルテニウム水和物(RuO・nHO)、及び水酸化ルテニウム(Ru(OH))から選ばれた少なくとも一種を意味する。
【0013】
上記本発明によるルテニウム酸化物微粉末の製造方法においては、前記ルテニウムとニッケルの合金中のルテニウム含有量を10〜50質量%とすることが好ましい。また、前記電解の前に、ルテニウムとニッケルの合金を、真空中又は不活性雰囲気中において600〜1400℃の温度で1〜10時間熱処理することが好ましい。
【0014】
また、上記本発明によるルテニウム酸化物微粉末の製造方法においては、前記電解を、温度50〜60℃、陽極の電流密度1〜100mA/cm、陽極の酸化還元電位600〜1200mVの条件で行うことが好ましい。
【0015】
更に、上記本発明によるルテニウム酸化物微粉末の製造方法においては、前記電解後に溶液から回収したルテニウム酸化物微粉末を更に粉砕・分散することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、有毒なRuOを発生することがないためプロセスの安全性が高く、しかも電極の特性に対して悪影響を与えるナトリウムが残留しないため、不純物の少ない高純度のルテニウム酸化物微粉末を得ることができる。
【0017】
本発明により得られたルテニウム酸化物微粉末は、小型メモリバックアップ用電源やソーラーセルとの組み合わせによるハイブリッド電源に使用される電気化学キャパシタ電極の作製に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明においては、ルテニウムとニッケルからなる合金を、好ましくは箔状に成形し、また好ましくは特定の条件で熱処理した後、ニッケルを電解すると同時にルテニウム酸化物の微粒子を液中に沈降する微粒子を回収することによって、ルテニウム酸化物微粉末を得るものである。
【0019】
(1)ニッケルとルテニウムの合金の製造
出発原料となるニッケルとルテニウムの合金は、一般的にはアーク溶解、プラズマ溶解、電子ビーム溶解などの方法で、ニッケルとルテニウムを溶解させて製造することができる。また、高真空電子ビーム帯溶融法によって溶解させて製造することもできる。
【0020】
ここで、原料となるニッケルとしては、ニッケル粉を使用しても構わないが、通常の電気ニッケルを使用することができる。また、原料となるルテニウムとしては、市販のルテニウム金属を使用することが出来るが、使用済のルテニウムスパッタリングターゲットやルテニウムの機械加工の際に発生する切り屑などを用いることも出来る。ルテニウムは非常に高価なレアメタルであるので、上記のようなルテニウムスクラップを有効利用できることは極めて有利である。
【0021】
上記ニッケル−ルテニウム合金中のルテニウムの含有量は、10〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることが更に好ましい。ルテニウム含有量が10質量%未満では、合金のルテニウム微粉末などからなる多孔質層構造の強度が充分に保てないため、後の電解工程の途中で脱落してしまい、収率が低下するため好ましくない。また、ルテニウム含有量が50質量%より多いと、どのような熱処理をしても凝固組織中に粗大なルテニウム相を形成してしまい、電解後に得られるルテニウム酸化物微粉末中に粗大粒子が残るため、電気化学キャパシタ電極とした際に高容量が得られない。
【0022】
(2)ニッケル−ルテニウム合金の熱処理及び合金箔化
合金製造時の溶解方法にもよるが、ニッケル−ルテニウム合金中のルテニウムの濃度が高いと凝固偏析が起こりやすく、ルテニウムの濃度に不均一が生じやすい。ルテニウムの濃度に不均一が生じると、ニッケルを電解した際に生じるルテニウム酸化物微粒子の大きさが均一化されず、粗大なルテニウム酸化物粒子が生じやすくなる。
【0023】
このため、ニッケル−ルテニウム合金の均質化や組織制御のために、ニッケルを電解する前に、合金の熱処理を行うことが望ましい。熱処理は真空中または不活性雰囲気中において、600〜1400℃の温度で1〜10時間程度行うことが好ましい。上記の条件で熱処理することによって、電解時に得られるルテニウム酸化物微粒子の平均一次粒子径を数十nm程度にすることができる。600℃以下の温度では均質化が十分に進まないため、得られるルテニウム微粒子の大きさが不均一となり、また1400℃を超える温度では融液が生じる恐れがあるため好ましくない。
【0024】
また、電解に適した形状とするために、例えば上記熱処理の後に、ニッケル−ルテニウム合金を圧延して箔にすることが好ましい。適度な大きさに切り出しても問題はない。均質な固溶体合金であれば塑性加工性は良好であるため、冷間圧延などにより箔状にすることができる。このとき冷間加工では材料が硬化するので、必要に応じて加工性を改善するために、600〜1300℃で焼鈍を行ってもよい。また、熱間圧延などの加工を行うこともできる。
【0025】
(3)ニッケル−ルテニウム合金からのニッケル電解
ニッケル−ルテニウム合金からニッケルのみを電解することにより、ルテニウム酸化物微粒子、即ち、酸化ルテニウム、酸化ルテニウム水和物及び水酸化ルテニウムから選ばれた少なくとも一種を得ることができる。即ち、ニッケル−ルテニウム合金を陽極として電解すると、陰極にニッケルが電着し、ルテニウム酸化物の微粒子が電解液中に沈降する。
【0026】
電解液としては、通常のニッケルの電解精製に使われる電解液でよく、例えば硫酸ニッケルとホウ酸の混合液を好適に使用することができる。電解液中のニッケルの濃度は40〜50g/l、ホウ酸の濃度は10〜20g/lが好ましい。また、陰極としては、平面状の金属を使うことができ、アルミニウム、ニッケル、ステンレスなどの箔や板を使用することができる。
【0027】
電解液の温度は、50〜60℃とすることが好ましい。50℃より低温では、電解液の溶質である硫酸ニッケルやホウ酸が水に溶解しにくくなる。また、60℃より高温になると、電解液から水が蒸発し、頻繁に水を補給することが必要となるため好ましくない。
【0028】
陽極の電流密度は、1〜100mA/cmが好ましい。電流密度が1mA/cmより小さいと、単位時間当たり生成するルテニウム酸化物微粒子量が少なくなるため、電解時間が長くなり実用的でない。また、100mA/cmより大きいと、電流効率が低下し、コストが高くなってしまうため好ましくない。
【0029】
電解時における陽極の酸化還元電位は、600〜1200mV(参照極はAg/AgCl電極を使用)が好ましい。酸化還元電位が600mV未満では金属ルテニウムが析出してしまい、電気化学キャパシタにした際に容量が小さくなるため好ましくない。また、酸化還元電位が1200mVより大きくなると、有毒な8価のルテニウムの酸化物が生成するため好ましくない。
【0030】
上記した電解条件で電解することにより、30〜240分程度の電解時間で、ニッケル−ルテニウム合金からのニッケルの電解を実施することができる。ただし、電解時間が長時間になるほど、液中に沈降するルテニウム酸化物微粒子が再凝集しやすく、高容量のキャパシタ電極として使えなくなる恐れがある。
【0031】
上記電解時にニッケル−ルテニウム合金の表面でルテニウム酸化物の微粒子が形成されるが、合金中のルテニウムとニッケルの分散状態により一次粒子径が変わることがある。合金中にルテニウムが均一に分散していると、電解で得られるルテニウム酸化物微粒子の一次粒子の平均粒子径は40nm程度まで小さくなる。また、合金中でルテニウムの凝固偏析が生じていると、電解で得られるルテニウム酸化物微粒子の一次粒子の平均粒子径が最大で100nm程度にまで粗大化することもある。電解で得られるルテニウム酸化物微粒子の一次粒子の平均粒子径は、電気化学キャパシタ電極にした際の単位重量当たりの容量を大きくする観点から、75nm以下とすることが好ましい。
【0032】
(4)ルテニウム酸化物微粉末の回収と粉砕・分散
上記ニッケル−ルテニウム合金の電解によって、ルテニウム酸化物微粒子が電解液中に沈降する。この微粒子スラリーをデカンテーション、吸引濾過または限外濾過などの方法で溶液と分離することにより、ルテニウム酸化物微粉末を回収することができる。
【0033】
回収したルテニウム酸化物微粉末は、このままの状態で、電気化学キャパシタ電極材料として使用することができる。回収したルテニウム酸化物微粉末を、そのままの状態で使用しても高容量が得られるが、更に高容量化のためには、各種のミルにより微粉末を粉砕・分散させ、一次粒子を細かくし、凝集した二次粒子を一次粒子にまで分散させることが好ましい。この粉末の粉砕・分散には、ビーズミルの他に、ボールミル、アトライター、サンドミルといった各種粉砕法を用いることができる。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
電気ニッケル260.5gと、使用済みスパッタリングターゲットから切り出したルテニウム塊64.9gとを、水素プラズマ溶解により溶解して、直径が約75mm、厚さが約10mmのボタン状のニッケル−ルテニウム合金インゴットを作製した。
【0035】
このニッケル−ルテニウム合金インゴットを、ワイヤーカット(日立ビアメカニクス株式会社製、254Y)で25mm×25mm×5mmの大きさに切り出し、高温高真空炉(ネムス株式会社製)により、真空中において1300℃で6時間熱処理した。その後、圧延機(大野ロール株式会社製、6型2/4段DR圧延機)により、厚さ210μmのニッケル−ルテニウム合金箔とした。
【0036】
このニッケル−ルテニウム合金箔を、電極面積が1.0cmになるように切り出して陽極とした。また、厚さ30μmのアルミ箔を、電極面積が1.0cmになるように切りだして陰極とした。電解液として硫酸ニッケルとホウ酸の混合液を用い、電解液中のニッケル濃度を45g/l、及びHBO濃度を15g/lとした。
【0037】
上記陽極と陰極を電解液中に浸漬して対向配置し、電解液の温度55℃、陽極の電流密度50mA/cm、陽極の酸化還元電位750mVの条件で、1時間の電解を行った。電解後の溶液から、デカンケーションにより沈降したルテニウム酸化物微粉末を回収し、硝酸で洗浄した。
【0038】
得られたルテニウム酸化物微粉末をSEM写真に撮り、該写真において2本の対角線を引き、この対角線に接した全てのルテニウム酸化物の一次粒子について寸法を測定したところ、その平均値(SEM径)は71nmであった。また、ルテニウム酸化物微粉末中のナトリウム(Na)の残留量は、ICP発光分析法により定量した結果、0.1質量%未満であった。
【0039】
回収したルテニウム酸化物微粉末を、カーボンペーパー(電極面積:1cm)に塗布して、電気化学キャパシタの作用電極を作製した。対極を白金板とし、参照極には飽和塩化カリウム溶液で満たしたAg/AgCl電極(東亜ディーケーケー株式会社製、HS−201C)を用いた。ポテンシオスタット(北斗電工株式会社製、HA−501G)とファンクションジェネレータ(北斗電工株式会社製、HB−105)を用いて、サイクリックボルタンメトリー(Cyclic Voltammetry)を測定した。
【0040】
電位をV1からV2に変化させたときの通電電気量は、サイクリックボルタモグラムに区分求積法を適用して求めることができる。一方、容量Cが電位Vに対して一定であると仮定すると、通電電気量はC×(V1−V2)で表すことができる。これらより、実施例1のルテニウム酸化物微粉末で作製した作用電極の容量Cを算出しところ、720F/gであった。尚、作用電極の電極面積は1.0cmとし、電解液は0.5mol/lの硫酸水溶液とし、走査速度は2mV/sとした。
【0041】
[実施例2]
上記実施例1により得られたルテニウム酸化物微粉末を、粉末の濃度が10質量%になるように純水と混合し、ビーズミル(アシザワファインテック製、ミニツェア)により、0.03mmのビーズを用いて60分間粉砕・分散した。得られたルテニウム酸化物微粉末の一次粒子の寸法を実施例1と同様にして測定したところ、その平均値(SEM径)は60nmであった。このルテニウム酸化物微粉末中のナトリウム(Na)の残留量は、ICP発光分析法により定量した結果、0.1質量%未満であった。
【0042】
得られたルテニウム酸化物微粉末のスラリーをカーボンペーパーに塗布し、大気中にて60℃で30分乾燥させて、ルテニウム酸化物微粉末が塗布された作用電極を作製した。この作用電極の容量Cは、上記実施例1と同様に測定したところ、795F/gであった。
【0043】
[比較例1]
従来法のゾル−ゲル(sol−gel)法により、酸化ルテニウム水和物微粉末を作製した。即ち、塩化ルテニウム(III)の水和物を蒸留水に溶解させ、前駆体溶液を得た。この前駆体溶液に水酸化ナトリウム水溶液をゆっくりと添加して溶液のpHを約7に保持し、黒色の粉末を溶液内に析出させた。
【0044】
析出した粉末を約8μm口径のフイルターで濾過し、洗浄した。洗浄作業は、粉末の入った容器内に適当量の蒸留水を注ぎ、30分程度撹拌した後濾過する操作を5回繰り返した。洗浄後に得られた粉末を真空中において60℃で8時間熱処理し、ルテニウム酸化物微粉末を得た。
【0045】
このルテニウム微粉末について、実施例1と同様に測定した一次粒子の平均値(SEM径)は107nmであった。また、このルテニウム酸化物微粉末中のナトリウム(Na)の残留量は、ICP発光分析法により定量した結果、2.0質量%であった。
【0046】
また、この比較例1のルテニウム酸化物微粉末を用いて、上記実施例1と同様に作用電極を作製し、その容量Cを上記実施例1と同様に求めたところ、705F/gであった。上記実施例1〜2及び比較例1の結果を、下記表1にまとめて示した。
【0047】
【表1】

【0048】
この結果から分るように、本発明方法を用いることにより、従来法のゾル−ゲル(sol−gel)法に比べて、不純物であるナトリウムを著しく低減することができた。また、本発明方法では、大気中での熱処理を必要としないので、有毒なRuOの発生を防ぐことができた。
【0049】
しかも、本発明のルテニウム酸化物微粉末を利用した作用電極は、従来高容量とされてきたゾル−ゲル(sol−gel)法による比較例1の酸化ルテニウム水和物と比べたとき、実施例1でほぼ同等の容量が得られ、キャパシタ電極として有効であることが分った。また、更にビーズミルで粉砕・分散した実施例2では、作用電極の容量は795F/gとなり、比較例よりも更に高容量であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ルテニウム、酸化ルテニウム水和物及び水酸化ルテニウムの少なくとも一種からなるルテニウム酸化物の微粉末の製造方法であって、ルテニウムとニッケルの合金中のニッケルを電解して、溶液中に沈降するルテニウム酸化物の微粒子を回収することを特徴とするルテニウム酸化物微粉末の製造方法。
【請求項2】
前記ルテニウムとニッケルの合金中のルテニウム含有量を10〜50質量%とすることを特徴とする、請求項1に記載のルテニウム酸化物微粉末の製造方法。
【請求項3】
前記電解の前に、ルテニウムとニッケルの合金を、真空中又は不活性雰囲気中において600〜1400℃の温度で1〜10時間熱処理することを特徴とする、請求項1又は2に記載のルテニウム酸化物微粉末の製造方法。
【請求項4】
前記電解を、温度50〜60℃、陽極の電流密度1〜100mA/cm、陽極の酸化還元電位600〜1200mVの条件で行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のルテニウム酸化物微粉末の製造方法。
【請求項5】
前記電解後に溶液から回収したルテニウム酸化物微粉末を更に粉砕・分散することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のルテニウム酸化物微粉末の製造方法。