説明

ルテニウム錯体及びその製造法並びに色素増感酸化物半導体電極

【課題】効率よく電流を取り出せる新規構造のルテニウム錯体の提供。
【解決手段】一般式(1)で表されるルテニウム錯体。


(式中、Rはカルボキシル基又はその化学的に許容される塩を表す。R、R、R、X-、Yは上記と同じ。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い吸光係数を有し増感色素として有用なルテニウム錯体、それらの製造法、ならびにそれらを用いた酸化物半導体電極に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料を代替する新しいエネルギー源として、太陽電池による太陽光の利用が注目されている。現在、実用化されている太陽電池は無機材料(多結晶シリコン又はアモルファスシリコン)の光電効果を利用するものが主であるが、製造に関する経済的およびエネルギー的コストが高いことが問題となっている。
一方で、有機金属錯体を光増感色素として用いた新しい太陽電池が特許文献1又は2に公開されている。これらの色素増感太陽電池は酸化物電極、対電極及び電解質層から構成された単純な構造であり、安価に製造及び大面積化できる利点がある。
【0003】
上記光増感色素として用いることのできる金属錯体として、例えば特許文献1にはビピリジン又はターピリジンなどを中性配位子とし、チオシアン酸イオンをアニオン性配位子として含むルテニウム錯体が開示されている。太陽電池に用いる光増感色素としては長波長域に及ぶ幅広い光吸収帯を有することが望まれるが、上記配位子は光増感色素の光吸収特性に大きく影響する。上記配位子のうち、アニオン性配位子としては電子供与性の高いものが分光感度及び範囲の増大に効果があり、上記チオシアン酸イオンやβ‐ジケトナート類(特許文献3)が知られている。
【0004】
一方で、2‐メルカプトピリミジン類や2‐メルカプトピリジン類も塩基と反応させることで良好なアニオン性配位子と成りうるが、これらをアニオン性配位子とする本発明のルテニウム錯体は全く知られていない。
2‐メルカプトピリミジン類や2‐メルカプトピリジン類をアニオン性配位子として金属錯体に導入する手法としては、例えば非特許文献1等に開示されているが、これらの例では本発明のルテニウム錯体が有するような官能基(カルボキシル基又はアルコキシ基等)が反応系中に共存した場合については一切記述はない。
【0005】
色素増感太陽電池の対電極には、耐腐食性の高い金属板、または耐食性のある被膜を形成した金属基板やソーダライムガラス、硼珪酸ガラスなどが用いられている。これらの基板の中で、例えば非導電性基板のガラスや表面抵抗の高い被膜を形成した金属板を用いた場合には、基板上にインジウム‐酸化スズ(ITO)又はフッ素添加酸化スズ(FTO)などからなる導電性酸化物や貴金属元素、炭素などの導電膜を蒸着又はスパッタ、CVD、金属塩の熱分解法などによって形成している。更に対電極表面にはレドックス反応に寄与する触媒金属を蒸着又はスパッタ、金属塩の熱分解法、メッキ法等で担持させている。電解質層にはヨウ素/ヨウ素イオンなどのレドックス対を含む非水溶液からなる電解液などが用いられる。また、負極側の酸化物電極はガラスなどからなる透明基板上にインジウム‐酸化スズ(ITO)又はフッ素添加酸化スズ(FTO)などからなる透明電極層が設けられ、この上に酸化チタン等の酸化物半導体多孔質膜が設けられ、この酸化物半導体多孔質膜に光増感色素が担持されて構成されている。
【0006】
上記酸化物半導体多孔質膜は半導性を示す金属酸化物粒子が結合して構成され、その内部に多数の微細な空孔を有する多孔質膜である。本発明のルテニウム錯体の水溶液又はアルコール溶液をこの酸化物半導体多孔質膜の無数の空孔に含浸し乾燥することによって、この微細な空孔に本発明のルテニウム錯体を担持することができる。
【特許文献1】特許第2664194号公報
【特許文献2】国際公開第94/05025号パンフレット
【特許文献3】特開2003−212851号公報
【非特許文献1】Journal of Chemical Society,Dalton Transactions、2851頁、1996年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、色素増感太陽電池に用いられる色素増感剤としてルテニウム錯体の吸光係数を向上させ、かつ効率よく電流を取り出せる新規構造のルテニウム錯体を提供し、さらには当該ルテニウム錯体を用いた耐久性が高く高性能な色素増感酸化物半導体電極および色素増感太陽電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討した結果、一般式(1)で表されるルテニウム錯体が、一般式(2)で表されるルテニウム錯体と一般式(3)で表される配位子とを塩基の存在下に反応させることで得られることを見出し、さらに、これらのルテニウム錯体が長波長域にも強い光吸収を示すことを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、一般式(1)
【0009】
【化22】

(式中、Rはカルボキシル基又はその化学的に許容される塩を表す。R及びRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1から8のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から8のアルコキシ基、置換されていてもよいアミノ基、水酸基、ニトロ基又はシアノ基を表す。Rは水素原子又は置換されていてもよい炭素数1から8のアルキル基を表す。Yは置換されていてもよい炭素原子又は窒素原子を表す。X-は対アニオンを表す。)で示されるルテニウム錯体、さらには、Rで表されるカルボキシル基の許容される塩がアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩であるルテニウム錯体、さらには、R及びRが水素原子、置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から4のアルコキシ基又は置換されていてもよいアミノ基であり、Rが水素原子であるルテニウム錯体、さらには、X-で表される対アニオンがハロゲンイオン、パークロレートイオン(ClO-)、ニトレートイオン(NO-)、ヘキサフルオロホスホネートイオン(PF-)、テトラフルオロボレートイオン(BF-)であるルテニウム錯体に関するものである。
【0010】
また本発明は、一般式(2)
【0011】
【化23】

(式中、R1aはカルボキシル基を表す。Xは塩素又は臭素原子を表す。)で表されるルテニウム錯体と一般式(3)
【0012】
【化24】

(式中、R、R、R及びYは前記と同じ意味を表す。)で表される複素環化合物を塩基存在下に反応させ、一般式(1a)
【0013】
【化25】

(式中、R1bはカルボキシル基と用いた塩基との塩を表す。R、R、R及びYは前記と同じ意味を表す。Xa-は塩素イオン又は臭素イオンを表す。)で表されるルテニウム錯体を得、次いで一般式(4)
【0014】
【化26】

(式中、Xb-は対アニオンを表す。)で表される酸で処理することを特徴とする、一般式(1b)
【0015】
【化27】

(式中、R1a、R、R、R、Y及びXb-は前記と同じ意味を表す。)で表されるルテニウム錯体の製造法に関するものである。
【0016】
また本発明は、一般式(1b)
【0017】
【化28】

(式中、R1a、R、R、R、Y及びXb-は前記と同じ意味を表す。)で表されるルテニウム錯体と一般式(5)
【0018】
【化29】

(式中、Mは対カチオンを表す。Xc-は対アニオンを表す。)で表される塩を反応させることを特徴とする、一般式(1c)
【0019】
【化30】

(式中、R1a、R、R、R、Y及びXc-は前記と同じ意味を表す。)で表されるルテニウム錯体の製造法に関するものである。
また本発明は、一般式(2)
【0020】
【化31】

(式中、R1a、Xは前記と同じ意味を表す。)で表されるルテニウム錯体と一般式(3)
【0021】
【化32】

(式中、R、R、R及びYは前記と同じ意味を表す。)で表される複素環化合物を塩基存在下に反応させ、一般式(1a)
【0022】
【化33】

(式中、R1b、R、R、R、Y及びXa-は前記と同じ意味を表す。)で表されるルテニウム錯体を得、次いで一般式(4)
【0023】
【化34】

(式中、Xb-は前記と同じ意味を表す。)で表される酸で処理することで一般式(1b)
【0024】
【化35】

(式中、R1a、R、R、R、Y及びXb-は前記と同じ意味を表す。)で表されるルテニウム錯体を得、次いでこれを一般式(5)
【0025】
【化36】

(式中、M及びXc-は前記と同じ意味を表す。)で表される塩で処理することを特徴とする、一般式(1c)
【0026】
【化37】

(式中、R1a、R、R、R、Y及びXc-は前記と同じ意味を表す。)で表されるルテニウム錯体の製造法に関するものである。
また本発明は、一般式(1d)
【0027】
【化38】

(式中、R1a、R、R、R及びYは前記と同じ意味を表す。Xd-は対アニオンを表す。)で示されるルテニウム錯体を0.1から10当量の一般式(6a)
【0028】
【化39】

(式中、R5a、R5b及びR5cは各々独立に水素原子又は炭素数1から4のアルキル基を表す。)で表されるアミン類、又は一般式(6b)
【0029】
【化40】

(式中、R5a、R5b、R5c及びR5dは各々独立に水素原子又は炭素数1から4のアルキル基を表す。)で表される水酸化アンモニウムで処理することを特徴とする、一般式(1e)
【0030】
【化41】

(式中、R1cはカルボキシル基又はそのアンモニウム塩を表す。R、R、R、Y及びXd-は前記と同じ意味を表す。)で表されるルテニウム錯体の製造法に関するものである。
【0031】
さらに本発明は、一般式(1)
【0032】
【化42】

(式中、R、R、R、R、X-及びYは前記と同じ意味を表す。)で表されるルテニウム錯体が酸化物半導体に吸着されてなる色素増感酸化物半導体電極に関するものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明のルテニウム錯体は新規の化合物であり、高い吸光係数と長波長域までの光の吸収能力を持つため、これらを酸化物半導体電極に担持することで色素増感太陽電池の増感色素として利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。本明細書におけるR、R1a、R1b、R1c、R、R、R、R5a、R5b、R5c、R5d、X-、Xa-、Xb-、Xc-、Xd-、Y及びMの定義について説明する。
【0035】
で表されるカルボキシル基の化学的に許容される塩としては、アルカリ金属塩又は窒素上が置換していてもよいアンモニウム塩が挙げられる。アルカリ金属塩としてはカリウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩等が挙げられ、収率及び安価である点でカリウム塩、ナトリウム塩が好ましい。窒素上が置換していてもよいアンモニウム塩としてはアンモニウム塩、第1級アンモニウム塩、第2級アンモニウム塩、第3級アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩が挙げられ、具体的にはアンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩などを挙げることができる。収率及び安価である点でアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩が好ましい。また、一般式(1)において、4個のRのすべてが同時にカルボキシル基又はその化学的に許容される塩であってもよいが、カルボキシル基とその許容される塩が混在する場合(ルテニウム錯体)も本発明に包含されるものである。
【0036】
1aはカルボキシル基を表す。
1bで表されるカルボキシル基と用いた塩基との塩としては、カルボン酸アルカリ金属、カルボン酸アルカリ土類金属、カルボン酸アンモニウム、カルボン酸ピリジニウム等が挙げられる。具体的には、カルボン酸リチウム、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウム、カルボン酸マグネシウム、カルボン酸カルシウム、カルボン酸バリウム、カルボン酸セシウム、カルボン酸メチルアンモニウム、カルボン酸ジメチルアンモニウム、カルボン酸トリメチルアンモニウム、カルボン酸エチルアンモニウム、カルボン酸ジエチルアンモニウム、カルボン酸トリエチルアンモニウム、カルボン酸トリブチルアンモニウム、カルボン酸ピロリジニウム、カルボン酸ピペラジニウム、カルボン酸モルホリニウム、カルボン酸N‐メチルピロリジニウム、カルボン酸N‐メチルピペラジニウム、カルボン酸N‐メチルモルホリニウム、カルボン酸ピリジニウム、カルボン酸ピコリニウムなどを例示することができる。中でも目的物の収率がよく、安価である点でカルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウムが好ましい。
【0037】
1cで表されるカルボキシル基のアンモニウム塩としては、アンモニウム塩、第1級アンモニウム塩、第2級アンモニウム塩、第3級アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩が挙げられ、具体的にはアンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩などを挙げることができる。収率及び安価である点でアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩が好ましい。また、一般式(1e)において、4個のR1cのすべてが同時にカルボキシル基又はそのアンモニウム塩であってもよいが、カルボキシル基とアンモニウム塩が混在する場合(ルテニウム錯体)も本発明の包含されるものである。
【0038】
及びRで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などを挙げることができる。
及びRで示される置換していてもよい炭素数1から8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、ペンチル基、tert‐ペンチル基、2‐ペンチル基、3‐ペンチル基、シクロペンチル基、1‐メチルシクロペンチル基、ヘキシル基、2‐ヘキシル基、3‐ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などを例示することができる。さらにこれらのアルキル基は、ハロゲン原子等で一個以上置換されていてもよく、具体的にはトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、2‐クロロエチル基、2‐ブロモエチル基、2,2,2‐トリフルオロエチル基、2,2,2‐トリフルオロイソプロピル基、3‐クロロプロピル基、2‐クロロエチル基、3‐クロロプロピル基および3‐フルオロプロピル基等を挙げることができる。収率の点で、好ましくはこれらのアルキル基は、置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2‐トリフルオロエチル基、2,2,2‐トリフルオロイソプロピル基等を挙げることができる。
【0039】
及びRで示される置換していてもよい炭素数1から8のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、tert‐ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、2‐ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基などを例示することができる。さらにこれらのアルコキシ基は、ハロゲン原子やアルコキシ基等で一個以上置換されていてもよく、具体的には2,2,2‐トリフルオロエトキシ基、2‐ヒドロキシエトキシ基、2‐メトキシエトキシ基などを挙げることができる。金属錯体の溶解性が高い点で、これらの置換基は置換していてもよい炭素数1から4のアルコキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、tert‐ブチルオキシ基、2,2,2‐トリフルオロエトキシ基、2‐ヒドロキシエトキシ基、2‐メトキシエトキシ基などが好ましい。
【0040】
及びRで示される置換されていてもよいアミノ基としては、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等を挙げることができる。光吸収能力が高い点で、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基が好ましい。
【0041】
本発明のルテニウム錯体に光吸収能力の点で優れた性能を付与させるために、R及びRで示される置換としては水酸基、ニトロ基、シアノ基等が好ましい。
で示される置換されていてもよい炭素数1から8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、ペンチル基、tert‐ペンチル基、2‐ペンチル基、3‐ペンチル基、シクロペンチル基、1‐メチルシクロペンチル基、ヘキシル基、2‐ヘキシル基、3‐ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などを例示することができる。さらにこれらのアルキル基は、ハロゲン原子等で一個以上置換されていてもよく、具体的には2‐クロロエチル基、2‐ブロモエチル基、2,2,2‐トリフルオロエチル基、3‐クロロプロピル基などを挙げることができる。収率が高い点で、メチル基、ブチル基、イソプロピル基、tert‐ブチル基が好ましい。
【0042】
互いに独立したR5a、R5b、R5c、R5dで表される炭素数1から4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。
【0043】
Yで表される炭素原子は、水素原子、炭素数1から4のアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子等で置換されていてもよく、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等を例示することができる。収率が高い点で、Yとしては水素原子、メチル基が好ましい。
【0044】
本発明のルテニウム錯体において、ルテニウム原子の酸化数は+2価であり、複素環化合物(3)は-1価の電荷を持つ。このため当該錯体はカチオン性となり対アニオンとしてX-を有するが、このようなX-としては塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨードイオン(I-)、ニトレートイオン(NO-)、パークロレートイオン(ClO-)、ヘキサフルオロホスホネートイオン(PF-)、テトラフルオロボレートイオン(BF-)、テトラフェニルボレートイオン(B(C-)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン(B(C-)等を挙げることができる。収率がよい点で、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ニトレートイオン(NO-)、パークロレートイオン(ClO-)、ヘキサフルオロホスホネートイオン(PF-)、テトラフルオロボレートイオン(BF-)が好ましい。
【0045】
a-で表される対アニオンとしては、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)が挙げられる。
b-で表される対アニオンとしては、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨードイオン(I-)、ニトレートイオン(NO-)、パークロレートイオン(ClO-)が挙げられる。収率がよい点で、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ニトレートイオン(NO-)、パークロレートイオン(ClO-)が好ましい。
c-で表される対アニオンとしては、パークロレートイオン(ClO-)、ヘキサフルオロホスホネートイオン(PF-)、テトラフルオロボレートイオン(BF-)、テトラフェニルボレートイオン(B(C-)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン(B(C-)が挙げられる。収率がよい点で、パークロレートイオン(ClO-)、ヘキサフルオロホスホネートイオン(PF-)、テトラフルオロボレートイオン(BF-)が好ましい。
d-で表される対アニオンとしては、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ヨードイオン(I-)、ニトレートイオン(NO-)、パークロレートイオン(ClO-)、ヘキサフルオロホスホネートイオン(PF-)、テトラフルオロボレートイオン(BF-)、テトラフェニルボレートイオン(B(C-)、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン(B(C-)が挙げられる。収率がよい点で、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)、ニトレートイオン(NO-)、パークロレートイオン(ClO-)、ヘキサフルオロホスホネートイオン(PF-)、テトラフルオロボレートイオン(BF-)が好ましい。
【0046】
で表される対カチオンとしては、リチウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムナトリウム、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン等を挙げることができる。
【0047】
一般式(3)で表される複素環化合物は互変異性構造を取ることができるため、σ結合を実線で、配位結合を破線で表すと、本発明のルテニウム錯体(1)は、ルテニウム錯体(1‐N)あるいはルテニウム錯体(1‐S)で表される配位構造を取ることができる。また、いわゆるπ-アリル構造を取る場合は一般式(1‐π)の構造を取ることができる。本発明はこれらの共鳴構造全てを包含するものであるが、便宜上、一般式(1)の構造で記載することとする。
【0048】
【化43】

次に本発明の製造方法について説明する。本発明のルテニウム錯体(1)は下記反応式で示した方法により製造することができる。工程−1は、一般式(2)で示されるルテニウム錯体と一般式(3)で示される複素環化合物を塩基の存在下に反応させ、本発明に含まれるルテニルム錯体(1a)を得る工程である。
【0049】
【化44】

(式中、R、R1a、R1b、R1c、R、R、R、R5a、R5b、R5c、R5d、X-、Xa-、Xb-、Xc-、Xd-、Y及びMは前記と同じ意味を表す。)
工程−1の反応は塩基の存在下に実施することが必須である。塩基としては、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属、炭酸アルカリ金属、炭酸アルカリ土類金属、炭酸水素アルカリ金属、酢酸アルカリ金属、アンモニア、アミン類、ピリジン類を使用することができる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピロリジン、ピペラジン、モルホリン、N‐メチルピロリジン、N‐メチルピペラジン、N‐メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン等を例示することができる。中でも目的物の収率がよく、安価である点で水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。塩基の使用量や濃度に特に制限はないが、反応基質に対して4〜50当量、好ましくは5〜10当量用いることにより、収率よく目的物を得ることができる。
複素環化合物(3)の使用量に特に制限はないが、原料のルテニウム錯体(2)に対して1等量以上用いることにより、収率よく目的物を得ることができる。
反応は大気中で実施することもできるが、純度よく目的物を得ることができる点で窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。
【0050】
反応は溶媒中で実施することが好ましい。用いることができる溶媒としては、反応に害を及ぼさない溶媒であれば使用することができ、水、有機溶媒又はそれらの混合物を用いることができる。有機溶媒としてはアルコール等の極性溶媒が望ましく、メタノール、エタノール、2‐プロパノール、ブタノール、シクロへキシルアルコール、N,N‐ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等を挙げることができる。中でも目的物の収率や選択性がよく、安価である点で水、エタノール、N,N‐ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドあるいはこれらの混合物が好ましい。反応溶媒の使用量に特に制限はない。
【0051】
また反応は、0〜200℃、好ましくは20〜120℃から適宜選ばれた反応温度で実施することにより、収率よく目的物を得ることができる。反応時間に特に制限はない。
反応終了後は、通常の溶媒留去等の操作により目的とするルテニウム錯体(1a)を単離することができるが、単離することなく次の工程−2の反応に使用することもできる。
【0052】
工程‐2は、一般式(1a)で表されるルテニウム錯体を一般式(4)で表される酸で処理し、本発明に含まれる一般式(1b)で表されるルテニウム錯体を製造する工程である。
本反応に用いる一般式(4)で表される酸の使用量には特に制限はなく、ルテニウム錯体(1a)に対して5等量以上用いることにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0053】
反応は大気中で実施することもできるが、純度よく目的物を得ることができる点で窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。
反応は溶媒中で実施することが好ましい。用いることができる溶媒としては、反応に害を及ぼさない溶媒であれば使用することができ、水、有機溶媒又はそれらの混合物を用いることができる。有機溶媒としてはアルコール等の極性溶媒が望ましく、メタノール、エタノール、2‐プロパノール、ブタノール、シクロへキシルアルコール、N,N‐ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等を挙げることができる。中でも目的物の収率や選択性がよく、安価である点で水、エタノール、N,N‐ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドあるいはこれらの混合物が好ましい。反応溶媒の使用量に特に制限はない。
【0054】
また反応は、0〜200℃、好ましくは20〜120℃から適宜選ばれた反応温度で実施することにより、収率よく目的物を得ることができる。反応時間に特に制限はない。
反応終了後は、通常のろ過又は溶媒留去等の操作により目的とするルテニウム錯体(1b)を単離することができるが、単離することなく次の工程−3の反応に使用することもできる。
【0055】
工程‐3は、一般式(1b)で表されるルテニウム錯体を一般式(5)で表される塩で処理し、本発明に含まれる一般式(1c)で表されるルテニウム錯体を製造する工程である。
【0056】
本反応に用いる一般式(5)で表される塩の使用量には特に制限はなく、ルテニウム錯体(1b)に対して5等量以上用いることにより、収率よく目的物を得ることができる。
反応は大気中で実施することもできるが、純度よく目的物を得ることができる点で窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。
反応は溶媒中で実施することが好ましい。用いることができる溶媒としては、反応に害を及ぼさない溶媒であれば使用することができ、水、有機溶媒又はそれらの混合物を用いることができる。有機溶媒としてはアルコール等の極性溶媒が望ましく、メタノール、エタノール、2‐プロパノール、ブタノール、シクロへキシルアルコール、N,N‐ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等を挙げることができる。中でも目的物の収率や選択性がよく、安価である点で水、エタノール、N,N‐ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドあるいはこれらの混合物が好ましい。反応溶媒の使用量に特に制限はない。
【0057】
また反応は、0〜200℃、好ましくは20〜120℃から適宜選ばれた反応温度で実施することにより、収率よく目的物を得ることができる。反応時間に特に制限はない。
反応終了後は、通常のろ過又は溶媒留去等の操作により目的とするルテニウム錯体(1b)を単離することができるが、単離することなく次の工程−4の反応に使用することもできる。
工程‐4は、一般式(1d)で表されるルテニウム錯体を一般式(6a)表されるアミン類、又は一般式(6b)で表される水酸化アンモニウムで処理し、一般式(1e)で表されるルテニウム錯体を製造する工程である。
一般式(6a)で表されるアミン類としては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等を例示することができる。収率がよい点でトリエチルアミンが好ましい。
【0058】
一般式(6b)で表される水酸化アンモニウムとしては、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムが挙げれらる。中でも目的物の収率がよく、安価である点で水酸化テトラブチルアンモニウムが好ましい。
塩基の使用量や濃度に特に制限はないが、反応基質に対して0.1〜50当量、好ましくは0.5〜10当量用いることにより、収率よく目的物を得ることができる。
【0059】
反応は大気中で実施することもできるが、純度よく目的物を得ることができる点で窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。
反応は溶媒中で実施することが好ましい。用いることができる溶媒としては、反応に害を及ぼさない溶媒であれば使用することができ、水、有機溶媒又はそれらの混合物を用いることができる。有機溶媒としてはアルコール等の極性溶媒が望ましく、メタノール、エタノール、2‐プロパノール、ブタノール、シクロへキシルアルコール、N,N‐ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等を挙げることができる。中でも目的物の収率や選択性がよく、安価である点で水、エタノール、N,N‐ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドあるいはこれらの混合物が好ましい。反応溶媒の使用量に特に制限はない。
【0060】
また反応は、0〜200℃、好ましくは20〜120℃から適宜選ばれた反応温度で実施することにより、収率よく目的物を得ることができる。反応時間に特に制限はない。
反応終了後は、通常の溶媒留去等の操作により目的とするルテニウム錯体(1e)を単離することができる。
本発明の製造方法の原料として用いる一般式(2)で表されるルテニウム錯体は、一部は市販されているが、文献記載の方法により容易に調製することができる(非特許文献2参照)。一般式(3)で表される2‐メルカプトピリジン誘導体あるいは2‐メルカプトピリミジン誘導体は、一部は市販されているが、文献記載の方法により容易に調製することができる(特許文献4、5及び6参照)。さらに、新規の化合物については下記参考例の方法により合成した。
【非特許文献2】Journal of American Chemical Society、115号、6382頁、1993年
【特許文献4】米国特許第980628号明細書
【特許文献5】米国特許第67354号明細書
【特許文献6】特開平6−41117公報
【0061】
以下、実施例及び参考例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
実施例−1
【化45】

アルゴン雰囲気下、蒸留水(50mL)に二塩化シス‐ビス(4,4’‐ジカルボキシ‐2,2’‐ビピリジン)ルテニウム(660mg,1.03mmol)、2‐メルカプトピリミジン(138mmg,1.23mmol)及び1N‐水酸化カリウム水溶液(7.5mL)を加え60℃で2時間、続いて室温で30分間撹拌した。不溶物をろ別後、溶液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物に1N‐塩酸(7.5mL)を加え、室温で15分攪拌した。析出した固形物を遠心分離により分離し、濾過し、水で充分洗浄した後、乾燥させることにより、目的とするルテニウム錯体(錯体1−1)の暗赤色固体(736mg,収率75%)を得た。
HNMR(DO):δ6.73(dd,J=5.1,5.3Hz,1H),7.40−7.48(m,2H),7.49(dd,J=2.2,5.3Hz,1H),7.73(d,J=5.9Hz,1H),7.84(d,J=5.9Hz,1H),7.91(d,J=5.7Hz,1H),7.92−7.96(m,1H),8.21(dd,J=2.2,5.1Hz,1H),8.35(d,J=6.0Hz,1H),8.67(s,2H),8.78(s,1H),8.83(s,1H),9.64(d,J=5.75Hz,1H).UV/vis(HO):λmax[nm](ε×10-4[L/(mol×cm)])246.0(4.16),306.0(5.27),366.0(1.59),503.0(1.42).
実施例−2
【0063】
【化46】

アルゴン雰囲気下、蒸留水(100mL)に二塩化シス‐ビス(4,4’‐ジカルボキシ‐2,2’‐ビピリジン)ルテニウム(1.34g,2.03mmol)、4,6‐ジメチル‐2‐メルカプトピリミジン(355mg,2.53mmol)及び1N‐水酸化カリウム水溶液(15mL)を加え60℃で2時間、続いて室温で30分間撹拌した。不溶物をろ別後、溶液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物に1N‐塩酸(15mL)を加え、室温で15分攪拌した。析出した固形物を遠心分離により分離し、濾過し、水で充分洗浄した後、乾燥させることにより、目的とするルテニウム錯体(錯体1−2)の暗赤色固体(1.49g,収率84%)を得た。
HNMR(DO−NaOD):δ1.31(s,3H),2.27(s,3H),6.57(s,1H),7.39(dd,J=5.9,1.6Hz,1H),7.47(dd,J=5.9,1.6Hz,1H),7.75(d,J=5.9Hz,1H),7.82(d,J=5.9Hz,1H),7.85(dd,J=5.8,1.6Hz,1H),7.96(dd,J=5.8,1.6Hz,1H),8.37(d,J=5.8Hz,1H),8.67(brs,1H),8.73(brs,1H),8.83(brs,2H),9.75(d,J=5.8Hz,1H).UV/vis(HO):λmax[nm](ε×10-4[L/(mol×cm)])246.0(4.12),307.0(5.29),368.0(1.67),511(1.50).
実施例−3
【0064】
【化47】

アルゴン雰囲気下、蒸留水(25mL)に二塩化シス‐ビス(4,4’‐ジカルボキシ‐2,2’‐ビピリジン)ルテニウム(334mg,0.505mmol)、4,6‐ジアミノ‐2‐メルカプトピリミジン(87mg,0.608mmol)及び1N‐水酸化カリウム水溶液(3.5mL)を加え60℃で2時間、続いて室温で30分間撹拌した。不溶物をろ別後、溶液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物に1N‐硝酸(3mL)を加え、室温で15分攪拌した。析出した固形物を遠心分離により分離し、濾過し、水で充分洗浄した後、乾燥させることにより、目的とするルテニウム錯体(錯体1−3)の暗赤色固体(338mg,収率87%)を得た。
HNMR(DO−NaOD):δ5.12(s,1H),7.37dd,J=5.9,1.7Hz,1H),7.48(dd,J=5.9,1.7Hz,1H),7.74(d,J=5.9Hz,1H),7.85(d,J=5.9Hz,1H),7.94(dd,J=5.8,1.5Hz,1H),8.01(dd,J=5.9,1.6Hz,1H),8.64(d,J=5.9Hz,1H),8.65(brs,1H),8.74(brs,1H),8.83(brs,2H),9.82(d,J=5.8Hz,1H).UV/vis(HO):λmax[nm](ε×10-4[L/(mol×cm)])248.0(3.140),309.0(3.775),378.0(1.020),523.0(1.070).
実施例−4
【0065】
【化48】

アルゴン雰囲気下、蒸留水(50mL)に二塩化シス‐ビス(4,4’‐ジカルボキシ‐2,2’‐ビピリジン)ルテニウム(682mg,1.03mmol)、2‐メルカプトバルビツール酸(175mg,1.21mmol)及び1N‐水酸化カリウム水溶液(7.5mL)を加え80℃で18時間撹拌した。不溶物をろ別後、溶液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物に1N‐塩酸(7.5mL)を加え、室温で15分攪拌した。析出した固形物を遠心分離により分離し、濾過し、水で充分洗浄した後、乾燥させることにより、目的とするルテニウム錯体(錯体1−4)の暗赤色固体(768mg,収率88%)を得た。
HNMR(DO−NaOD):δ6.61(s,1H),7.32−7.37(m,2H),7.69(d,J=5.9Hz,1H),7.83(d,J=5.9Hz,1H),7.92−7.98(m,2H),8.60(d,J=1.4Hz,1H),8.64(d,J=1.3Hz,1H),8.69(d,J=5.8Hz,1H),8.74(d,J=1.3Hz,1H),8.80(d,J=1.2Hz,1H),9.86(d,J=5.9Hz,1H).UV/vis(HO):λmax[nm](ε×10-4[L/(mol×cm)])309.0(4.605),391.0(1.245),536.0(1.210).
実施例−5
【0066】
【化49】

アルゴン雰囲気下、蒸留水(50mL)に二塩化シス‐ビス(4,4’‐ジカルボキシ‐2,2’‐ビピリジン)ルテニウム(685mg,1.04mmol)、4,6‐ジエトキシ‐2‐メルカプトピリミジン(246mg,1.21mmol)及び1N‐水酸化カリウム水溶液(7.5mL)を加え60℃で13時間、続いて100℃で2時間撹拌した。不溶物をろ別後、溶液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物に1N‐塩酸(7.5mL)を加え、室温で15分攪拌した。析出した固形物を遠心分離により分離し、濾過し、エーテル及び水で充分洗浄した後、乾燥させることにより、目的とするルテニウム錯体(錯体1−5)の暗赤色固体(637mg,収率74%)を得た。
HNMR(DO−NaOD):δ0.48(t,J=7.0Hz,3H),1.28(t,J=7.0Hz,3H),3.45−3.53(m,1H),3.61−3.70(m,1H),4.19(q,J=7.0Hz,2H),5.55(s,1H),7.39(dd,J=5.9,1.5Hz,1H),7.47(dd,J=5.9,1.5Hz,1H),7.76(d,J=5.9Hz,1H),7.89(d,J=5.9Hz,1H),7.90(brd,J=5.8Hz,1H),7.97(brd,J=5.8Hz,1H),8.47(d,J=5.8Hz,1H),8.68(brs,1H),8.71(brs,1H),8.79(brs,1H),8.83(brs,1H),9.78(d,J=5.8Hz,1H).UV/vis(HO):λmax[nm](ε×10-4[L/(mol×cm)])308.0(4.415),378.0(1.170),519.0(1.240).
実施例−6
【0067】
【化50】

アルゴン雰囲気下、蒸留水(25mL)とエタノール(25m)の混合溶液に二塩化シス‐ビス(4,4’‐ジカルボキシ‐2,2’‐ビピリジン)ルテニウム(660mg,1.00mmol)、4,6‐ジメトキシ‐2‐メルカプトピリミジン(207mg,1.20mmol)及び1N‐水酸化カリウム水溶液(7.5mL)を加え80℃で3時間撹拌した。不溶物をろ別後、溶液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物に1N‐塩酸(7.5mL)を加え、室温で15分攪拌した。析出した固形物を遠心分離により分離し、濾過し、エーテル及び水で充分洗浄した後、乾燥させることにより、目的とするルテニウム錯体(錯体1−6)の暗赤色固体(796mg,収率86%)を得た。
HNMR(DO−NaOD):δ.3.18(s,3H),3.81(s,3H),5.66(s,1H),7.41(dd,J=5.9,1.7Hz,1H),7.45(dd,J=5.9,1.7Hz,1H),7.76(d,J=5.9Hz,1H),7.88(dd,J=5.8,1.7Hz,1H),7.96(d,J=5.9Hz,1H),7.97(dd,J=5.8,1.7Hz,1H),8.47(d,J=5.8Hz,1H),8.67(brs,1H),8.68(brs,1H),8.77(brs,1H),8.83(brs,1H),9.76(d,J=5.8Hz,1H).UV/vis(HO):λmax[nm](ε×10-4[L/(mol×cm)])247.0(3.945),307.0(5.125),375.0(1.380),517.0(1.465).
実施例−7
【0068】
【化51】

アルゴン雰囲気下、蒸留水(25mL)とエタノール(25m)の混合溶液に二塩化シス‐ビス(4,4’‐ジカルボキシ‐2,2’‐ビピリジン)ルテニウム(660mg,1.00mmol)、4,6‐ジブトキシ‐2‐メルカプトピリミジン(308mg,1.20mmol)及び1N‐水酸化カリウム水溶液(7.5mL)を加え80℃で3時間撹拌した。不溶物をろ別後、溶液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物に1N‐塩酸(7.5mL)を加え、室温で15分攪拌した。析出した固形物を遠心分離により分離し、濾過し、エーテル及び水で充分洗浄した後、乾燥させることにより、目的とするルテニウム錯体(錯体1−7)の暗赤色固体(816mg,収率93%)を得た。
HNMR(DO-NaOD):δ0.56(t,J=6.9Hz,3H),0.58‐0.71(m,2H),0.71‐0.85(m,2H),0.85(t,J=7.4Hz,3H),1.29‐1.39(m,2H),1.60‐1.70(m,2H),3.39(dt,J=9.5,6.1Hz,1H),3.60(dt,J=9.5,6.4Hz,1H),4.05‐4.20(m,2H),5.49(s,1H),7.38(dd,J=5.9,1.6Hz,1H),7.48(dd,J=5.9,1.6Hz,1H),7.77(d,J=5.9Hz,1H),7.86(d,J=5.9Hz,1H),7.88(dd,J=5.8,1.6Hz,1H),7.97(dd,J=5.8,1.6Hz,1H),8.46(d,J=5.8Hz,1H),8.66(brs,1H),8.71(brs,1H),8.78,(brs,1H),8.82,(brs,1H),9.77(d,J=5.8Hz,1H).UV/vis(HO):λmax[nm](ε×10-4[L/(mol×cm)])248.0(3.645),308.0(4.650),374.0(1.245),517.0(1.305).
実施例−8
【0069】
【化52】

アルゴン雰囲気下、蒸留水(50mL)に二塩化シス‐ビス(4,4’‐ジカルボキシ‐2,2’‐ビピリジン)ルテニウム(664mg,1.01mmol)と2‐メルカプトピリジン(135mg,1.21mmol)及び1N‐水酸化カリウム水溶液(7.5mL)を加え60℃で13時間撹拌した。不溶物をろ別後、溶液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物に1N‐塩酸(7.5mL)を加え、室温で15分攪拌した。析出した固形物を遠心分離により分離し、濾過し、水で充分洗浄した後、乾燥させることにより、目的とするルテニウム錯体(錯体1−8)の暗赤色固体(739mg,収率81%)を得た。
HNMR(DO):δ6.62−6.69(m,1H),6.80(d,J=8.3Hz,1H),7.0(d,J=6.0Hz,1H),7.30−7.43(m,2H),7.44(d,J=6.0Hz,1H),7.74(d,J=6.0Hz,1H),7.82(brd,J=7.4Hz,1H),7.89−7.95(m,2H),8.28(d,J=5.8Hz,1H),8.68(s,1H),8.70(s,1H),8.78(s,1H),8.82(s,1H),9.97(d,J=6.1Hz,1H).UV/vis(HO):λmax[nm](ε×10-4)308.0(5.10),366.0(1.50),518.0(1.40).
実施例−9
【0070】
【化53】

アルゴン雰囲気下、脱水エタノール(100mL)に実施例−2で合成した錯体1−2(200mg,0.26mmol)を懸濁し、2.0M‐アンモニア‐エタノール溶液(7.5mL)を、錯体が溶解するまで少量づつ加えた。反応溶液をグラスフィルターでろ過後、溶液から溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物にエーテル(50mL)を加え、濾過し、エーテルで充分洗浄した後、乾燥させることにより、目的とするルテニウム錯体(錯体1−9)の暗赤色固体(185mg,収率85%)を得た。
HNMR(DO):δ1.35(s,3H),2.31(s,3H),6.61(s,1H),7.42(dd,J=5.9,1.5Hz,1H),7.51(dd,J=5.9,1.5Hz,1H),7.79(d,J=5.9Hz,1H),7.86(d,J=5.9Hz,1H),7.89(dd,J=5.8,1.6Hz,1H),8.00(dd,J=5.8,1.6Hz,1H),8.40(d,J=5.8Hz,1H),8.70(brs,1H),8.77(brs,1H),8.86(brs,2H),9.79(d,J=5.8Hz,1H).UV/vis(HO):λmax[nm](ε×10-4)246.0(3.175),308.0(4.205),359.0(1.265),511.0(1.110).
実施例−10
【0071】
【化54】

水(50mL)に実施例−2で合成した錯体1−2(200mg,0.26mmol)を懸濁し、1N‐水酸化カリウム水溶液を、錯体が溶解するまで少量づつ加えた。反応溶液をグラスフィルターでろ過後、6N‐過塩素酸水溶液を滴下し、pH=2とした。生じた固体を遠心分離した後、ろ取し、水で充分洗浄した後、乾燥させることにより、目的とするルテニウム錯体(錯体1−10)の暗赤色固体(182mg,収率96%)を得た。
HNMR(DO):δ1.30(s,3H),2.27(s,3H),6.57(s,1H),7.38(dd,J=5.9,1.6Hz,1H),7.47(dd,J=5.9,1.6Hz,1H),7.75(d,J=5.9Hz,1H),7.81(d,J=5.9Hz,1H),7.84(dd,J=5.8,1.6Hz,1H),7.95(dd,J=5.8,1.6Hz,1H),8.36(d,J=5.8Hz,1H),8.66(brs,1H),8.72(brs,1H),8.82(brs,2H),9.75(d,J=5.8Hz,1H).UV/vis(HO):λmax[nm](ε×10-4)246.0(4.405),307.0(5.740),368.0(1.725),512.0(1.565).
【0072】
実施例−11
本実施例では、色素として実施例−2で合成した錯体1−2を用いて色素増感太陽電池の評価を行った。色素増感太陽電池に使用した負極用ガラス基板はソーダライムガラス板に透明導電膜を形成したガラス板(日本板硝子製)を切断して厚み3mm、2×3cm角にしたガラス板を用いた。このガラス基板において透明導電膜が形成されている面にスクリーン印刷法により酸化チタンペースト(SOLARONIX 製品名: Ti−Nanoxide D)を5μmの厚みで塗布した。塗布した膜を450℃で1時間焼成した。更にこの上に酸化チタン(堺化学製 製品名:SSP)をペースト化しスクリーン印刷装置により20μmの厚みで塗布した。塗布した膜を450℃で1時間焼成した。この後、酸化チタン多孔質膜を形成したガラス基板を本発明の錯体1−2の濃度3×10-4mol/Lにしたエタノール溶液に浸漬して16時間保持した。その後、無水エタノールに浸漬して過剰の色素を取り除き、100℃にて乾燥した。前記の電極膜を形成する際にはガラス板の周端部から3mmの部分には酸化チタンペーストが付かないように印刷を行い、このガラス板の周端部には外側から内側に厚み60μmのアイオノマー樹脂シート(三井デュポンポリケミカル社製のスペーサー(商品名:「ハイミラン」))を幅3mmで付着させた。正極用ガラス基板も同様にソーダライムガラス板に透明導電膜を形成したガラス板(日本板硝子製)を切断して厚み3mm、2×3cm角にしたガラス板を用いた。この基板にスパッタ法によりPtを50nm成膜し、ドリルにより1mmΦの径の穴を二箇所 対角線方向に両端に形成したものを用いた。この二枚の基板間に10gf/cmの荷重を掛けた。この状態において120℃でアイオノマー樹脂シートにより熱融着させた。作製したセルにLiIとIを溶かしたアセトニトリル電解液を金属支持基板に形成した注入口より入れて、セル全体に均一になるように注入した。
【0073】
作製したセルの色素増感型太陽電池の短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、フィルファクタ(F.F.)、及びエネルギー変換効率(η(%))を測定した。なお、色素増感型太陽電池のエネルギー変換効率(η(%))は、下記式で表される。ここで、下記式中、Pは入射光強度[mWcm-2]、Vocは開放電圧[V]、Jscは短絡電流密度[mA・cm-2]、F.F.は曲線因子(Filling Factor)を示す。
η=100×(Voc×Jsc×F.F.)/P…(A)
【0074】
電池特性評価試験は、ソーラーシミュレータ(山下電装製、商品名;「YS−100H型」)を用い、AMフィルター(AM1.5)を通したキセノンランプ光源からの疑似太陽光の照射条件を、100mW/cmとする(いわゆる「1Sun」の照射条件)測定条件の下で行った。光電変換効率の結果を表1に示す。この結果から、色素増感型太陽電池の光電変換効率は充分に太陽電池の特性を示すものであることが分かった。
【0075】
【表1】

参考例−1
【0076】
【化55】

1,4‐ジオキサン(90mL)にマロノニトリル(4.8mL,75.6mmol)とエタノール(8.83mL,153mmol)を加え、塩酸ガスを0℃で3時間通じた。溶媒を減圧濃縮し、析出した固体を濾過した後、エーテルで洗浄し、ジエトキシ‐1,3‐プロパンジイミデートの白色固体(13.6g,収率93%)を得た。
水(20mL)に炭酸水素ナトリウム(1.09g,1.30mmol)を加え、0℃に冷却した。ここにジエトキシ‐1,3‐プロパンジイミデート(3.01g,13.0mmol)を少量ずつ加え、完全に溶解させた。ここにシアナミド(0.630g,15.0mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。不溶物をろ別後、粗生成物を水で洗浄し、メタノールから再結晶することで、目的の3‐アミノ‐1,3‐ジエトキシ‐2‐プロペンイミデートの白色固体(1.70g,収率71%)を得た。
続いてTHF(30mL)に3‐アミノ‐1,3‐ジエトキシ‐2‐プロペンイミデート(1.12g,6.09mmol)を溶解し、−20℃に冷却した。ここに塩酸ガス(4g)を通じ5時間攪拌した。10℃に昇温し、溶媒を減圧留去した。析出した固体を濾過した後、水で洗浄することにより、目的の2‐クロロ‐4,6‐ジエトキシピリミジンの白色固体(0.649g,収率53%)を得た。
H NMR(CDCl):δ1.37(t,J=7.1Hz,6H),4.38(q,J=7.1Hz,4H),5.91(s,1H).
参考例−2
【0077】
【化56】

1,4‐ジオキサン(180mL)にマロノニトリル(9.5mL,151.4mmol)とメタノール(12.3mL,303mmol)を加え、塩酸ガスを0℃で3時間通じた。溶媒を減圧濃縮し、析出した固体を濾過した後、エーテルで洗浄し、ジメトキシ‐1,3‐プロパンジイミデートの白色固体(30.7g,収率96%)を得た。
水(200mL)に炭酸水素ナトリウム(10.6g,126mmol)を加え、0℃に冷却した。ここにジメトキシ‐1,3‐プロパンジイミデート(25g,123mmol)を少量ずつ加え、完全に溶解させた。ここにシアナミド(5.9g,140mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。不溶物をろ別後、粗生成物を水で洗浄し、減圧乾固することで、目的の3‐アミノ‐1,3‐ジメトキシ‐2‐プロペンイミデートの白色固体(19.1g,収率77%)を得た。
続いてTHF(80mL)に3‐アミノ‐1,3‐ジメトキシ‐2‐プロペンイミデート(7.0g,45mmol)を溶解し、−20℃に冷却した。ここに塩酸ガス(45g)を通じ5時間攪拌した。10℃に昇温し、溶媒を減圧留去した。析出した固体を濾過した後、水で洗浄することにより、目的の2‐クロロ‐4,6‐ジメトキシピリミジンの白色固体(4.1g,収率52%)を得た。
H NMR(CDCl):δ3.96(s,6H),5.96(s,1H).
参考例−3
【0078】
【化57】

1,4‐ジオキサン(180mL)にマロノニトリル(9.5mL,151mmol)とブタノール(27.7mL,303mmol)を加え、塩酸ガスを0℃で3時間通じた。溶媒を減圧濃縮し、析出した固体を濾過した後、エーテルで洗浄し、ジブトキシ‐1,3‐プロパンジイミデートの白色固体(43.5g,収率95%)を得た。
水(200mL)に炭酸水素ナトリウム(10.5g,125mmol)を加え、0℃に冷却した。ここにジブトキシ‐1,3‐プロパンジイミデート(35g,122mmol)を少量ずつ加え、完全に溶解させた。ここにシアナミド(6.0g,143mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応溶液ををエーテル(100mL×3)で抽出し、得られた有機層を合わせ、硫酸ナトリウム(50g)を加えて乾燥させた。乾燥剤をろ別後、溶液を減圧乾固し、油状の3‐アミノ‐1,3‐ジブトキシ‐2‐プロペンイミデート(26.2g,収率90%)を得た。
続いてTHF(90mL)に3‐アミノ‐1,3‐ブエトキシ‐2‐プロペンイミデート(12g,50mmol)を溶解し、−20℃に冷却した。ここに塩酸ガス(50g)を通じ5時間攪拌した。10℃に昇温し、溶媒を減圧留去した。租生成物に水(100mL)を加えた後、エーテル(100mL×3)で抽出し、得られた有機層を合わせ、硫酸ナトリウム(50g)を加えて乾燥させた。乾燥剤をろ別後、溶液を減圧乾固し、油状の租生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO、溶離液:ヘキサン/クロロホルム=50/50)により精製し、目的の2‐クロロ‐4,6‐ジブトキシピリミジン(6.65g,収率51%)を得た。
H NMR(CDCl):δ0.96(t,J=7.3Hz,6H),1.36‐1.51(m,4H),1.67‐1.83(m,4H),4.30(t,J=6.6Hz,4H),5.91(s,1H).
参考例−4
【0079】
【化58】

脱水エタノール(215mL)に2‐クロロ‐4,6‐ジエトキシピリミジン(4.05g,20mmol)を加え、50℃で5分間撹拌した。ここにチオウレア(4.57g,60mmol)を加え、24時間加熱還流した。放冷後、反応溶媒を留去し、5%‐水酸化ナトリウム水溶液(65mL)を加えた。室温で30分撹拌した後、不溶物をグラスフィルターでろ別し、ろ液に酢酸(6mL)を加えて中和した。これをクロロホルム(50mL×3)で抽出し、得られた有機層を合わせ、硫酸ナトリウム(20g)を加えて乾燥させた。乾燥剤をろ別後、溶液を減圧乾固し、目的の4,6‐ジエトキシ‐2‐メルカプトピリミジンの白色固体(2.12g,収率53%)を得た。
参考例−5
【0080】
【化59】

脱水エタノール(65mL)に2‐クロロ‐4,6‐ジメトキシピリミジン(1.05g,6mmol)を加え、50℃で5分間撹拌した。ここにチオウレア(1.37g,18mmol)を加え、65時間加熱還流した。放冷後、反応溶媒を留去し、5%‐水酸化ナトリウム水溶液(20mL)を加えた。室温で30分撹拌した後、ろ液に酢酸(6mL)を加えて中和した。ここをクロロホルム(20mL×3)で抽出し、得られた有機層を合わせ、硫酸ナトリウム(20g)を加えて乾燥させた。乾燥剤をろ別後、溶液を減圧乾固し、カラムクロマトグラフィー(SiO、溶離液:ヘキサン/クロロホルム=50/50〜0/100)により目的の4,6‐ジメトキシ‐2‐メルカプトピリミジンの白色固体(186mg,収率18%)を得た。
HNMR(CDCl):δ3.91(s,6H) 5.71(s,1H).
参考例−6
【0081】
【化60】

脱水エタノール(60mL)に2‐クロロ‐4,6‐ジブトキシピリミジン(1.04g,4mmol)を加え、50℃で5分間撹拌した。ここにチオウレア(913mg,12mmol)を加え、48時間加熱還流した。放冷後、反応溶媒を留去し、5%‐水酸化ナトリウム水溶液(20mL)を加えた。室温で30分撹拌した後、ろ液に酢酸(6mL)を加えて中和した。ここをクロロホルム(20mL×3)で抽出し、得られた有機層を合わせ、硫酸ナトリウム(20g)を加えて乾燥させた。乾燥剤をろ別後、溶液を減圧乾固し、カラムクロマトグラフィー(SiO、溶離液:ヘキサン/クロロホルム=50/50〜0/100)により目的の4,6‐ジブトキシ‐2‐メルカプトピリミジンの白色固体(406mg,収率40%)を得た。
HNMR(CDCl):δ0.96(t,J=7.3Hz,6H),1.35‐1.52(m,4H),1.66‐1.80(m,4H),4.25(t,J=6.6 Hz,4H),5.62(s,1H).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Rはカルボキシル基又はその化学的に許容される塩を表す。R及びRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1から8のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から8のアルコキシ基、置換されていてもよいアミノ基、水酸基、ニトロ基又はシアノ基を表す。Rは水素原子又は置換されていてもよい炭素数1から8のアルキル基を表す。Yは置換されていてもよい炭素原子又は窒素原子を表す。X-は対アニオンを表す。)で示されるルテニウム錯体。
【請求項2】
で表されるカルボキシル基の許容される塩がアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である請求項1に記載のルテニウム錯体。
【請求項3】
及びRが水素原子、置換されていてもよい炭素数1から4のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から4のアルコキシ基又は置換されていてもよいアミノ基であり、Rが水素原子である請求項1又は2に記載のルテニウム錯体。
【請求項4】
-で表される対アニオンがハロゲンイオン、パークロレートイオン(ClO-)、ニトレートイオン(NO-)、ヘキサフルオロホスホネートイオン(PF-)、テトラフルオロボレートイオン(BF-)である請求項1から3のいずれかに記載のルテニウム錯体。
【請求項5】
一般式(2)
【化2】

(式中、R1aはカルボキシル基を表す。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)で表されるルテニウム錯体と一般式(3)
【化3】

(式中、R及びRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1から8のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から8のアルコキシ基、置換されていてもよいアミノ基、水酸基、ニトロ基又はシアノ基を表す。Rは水素原子又は置換されていてもよい炭素数1から8のアルキル基を表す。Yは置換されていてもよい炭素原子又は窒素原子を表す。)で表される複素環化合物を塩基存在下に反応させ、一般式(1a)
【化4】

(式中、R1bはカルボキシル基と用いた塩基との塩を表す。R、R、R及びYは前記と同じ意味を表す。Xa-は塩素イオン又は臭素イオンを表す。)で表されるルテニウム錯体を得、次いで一般式(4)
【化5】

(式中、Xb-は対アニオンを表す。)で表される酸で処理することを特徴とする、一般式(1b)
【化6】

(式中、R1a、R、R、R、Y及びXb-は前記と同じ意味を表す。)で表されるルテニウム錯体の製造法。
【請求項6】
b-がハロゲンイオン、パークロレートイオン(ClO-)、ニトレートイオン(NO-)である、請求項5に記載の製造法。
【請求項7】
一般式(1b)
【化7】

(式中、R1aはカルボキシル基を表す。R及びRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1から8のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から8のアルコキシ基、置換されていてもよいアミノ基、水酸基、ニトロ基又はシアノ基を表す。Rは水素原子又は置換されていてもよい炭素数1から8のアルキル基を表す。Yは置換されていてもよい炭素原子又は窒素原子を表す。Xb-は対アニオンを表す。)で表されるルテニウム錯体と一般式(5)
【化8】

(式中、Mは対カチオン、Xc-は対アニオンを表す。)で表される塩を反応させることを特徴とする、一般式(1c)
【化9】

(式中、R1a、R、R、R、Y及びXc-は前記と同じ意味を表す。)で表されるルテニウム錯体の製造法。
【請求項8】
c-がパークロレートイオン(ClO-)、ヘキサフルオロホスホネートイオン(PF-)又はテトラフルオロボレートイオン(BF-)である、請求項7に記載の製造法。
【請求項9】
一般式(2)
【化10】


(式中、R1aはカルボキシル基を表す。Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)で表されるルテニウム錯体と一般式(3)
【化11】

(式中、R及びRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1から8のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から8のアルコキシ基、置換されていてもよいアミノ基、水酸基、ニトロ基又はシアノ基を表す。Rは水素原子又は置換されていてもよい炭素数1から8のアルキル基を表す。Yは置換されていてもよい炭素原子又は窒素原子を表す。)で表される複素環化合物を塩基存在下に反応させ、一般式(1a)
【化12】

(式中、R1bはカルボキシル基の許容される塩を表す。R、R、R及びYは前記と同じ意味を表す。Xa-は塩素イオン又は臭素イオンを表す。)で表されるルテニウム錯体を得、次いで一般式(4)
【化13】

(式中、Xb-は対アニオンを表す。)で表される酸と反応させることにより、一般式(1b)
【化14】

(式中、R1a、R、R、R、Y及びXb-は前記と同じ意味を表す。)で表されるルテニウム錯体を得、次いでこれを一般式(5)
【化15】

(式中、Mは対カチオン、Xc-は対アニオンを表す。)で表される塩と反応させることを特徴とする、一般式(1c)
【化16】

(式中、R1a、R、R、R、Y及びXc-は前記と同じ意味を表す。)で表されるルテニウム錯体の製造法。
【請求項10】
b-がハロゲンイオン、パークロレートイオン(ClO-)又はニトレートイオン(NO-)であり、Xc-がパークロレートイオン(ClO-)、ヘキサフルオロホスホネートイオン(PF-)、テトラフルオロボレートイオン(BF-)である、請求項9に記載の製造法。
【請求項11】
一般式(1d)
【化17】

(式中、R1aはカルボキシル基を表す。R及びRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1から8のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から8のアルコキシ基、置換されていてもよいアミノ基、水酸基、ニトロ基又はシアノ基を表す。Rは水素原子又は置換されていてもよい炭素数1から8のアルキル基を表す。Yは置換されていてもよい炭素原子又は窒素原子を表す。Xd-は対アニオンを表す。)で示されるルテニウム錯体を0.1から10当量の一般式(6a)
【化18】

(式中、R5a、R5b及びR5cは各々独立に水素原子又は炭素数1から4のアルキル基を表す。)で表されるアミン類、又は一般式(6b)
【化19】

(式中、R5a、R5b、R5c及びR5dは各々独立に水素原子又は炭素数1から4のアルキル基を表す。)で表される水酸化アンモニウムで処理することを特徴とする、一般式(1e)
【化20】

(式中、R1cはカルボキシル基又はそのアンモニウム塩を表す。R、R、R、Y及びXd-は前記と同じ意味を表す。)で表されるルテニウム錯体の製造法。
【請求項12】
一般式(1)
【化21】

(式中、Rはカルボキシル基又はその化学的に許容される塩を表す。R及びRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1から8のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1から8のアルコキシ基、置換されていてもよいアミノ基、水酸基、ニトロ基又はシアノ基を表す。Rは水素原子又は置換されていてもよい炭素数1から8のアルキル基を表す。Yは置換されていてもよい炭素原子又は窒素原子を表す。X-は対アニオンを表す。)で示されるルテニウム錯体が酸化物半導体に吸着されてなる色素増感酸化物半導体電極。

【公開番号】特開2009−184954(P2009−184954A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25766(P2008−25766)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000173762)財団法人相模中央化学研究所 (151)
【出願人】(000217686)電源開発株式会社 (207)
【Fターム(参考)】