説明

ルースチューブ型光ファイバケーブル

【課題】ケーブルに外部荷重が作用した場合に、抗張力体に対するルースチューブの衝撃荷重を緩和して、ルースチューブの潰れや割れを抑制すると共にチューブ内の光ファイバを保護することのできるルースチューブ型光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】抗張力体2を中心としてその周囲を取り囲むようにして、光ファイバ3をジェリー4と共にチューブ5内に収容したルースチューブ6を複数配置し、それら抗張力体2及びルースチューブ6をシース7で被覆したルースチューブ型光ファイバケーブル1。抗張力体2は、ケーブル長手方向に設けられた抗張力体本体8と、この抗張力体本体8の表面8aに前記ルースチューブ6から受ける衝撃を緩和する衝撃緩和層9とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルースチューブ型光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ルースチューブ型光ファイバケーブルは、光ファイバをジェリーと共にチューブ内に収納したルースチューブを、抗張力体を中心としてその周囲を取り囲むように複数配置し、それら抗張力体及びルースチューブをシースで被覆した構造とされている(例えば、特許文献1等に記載)。
【0003】
近年、低コスト化の流れでルースチューブ型光ファイバケーブルに対して、ケーブル細径化及びケーブル細径化に伴うケーブルの軽量化が求められている。これらの要求に応じて、チューブ細径化、シース薄肉化、抗張力体細径化をした場合に懸念されるのが、圧縮(側圧)特性、衝撃特性、引張特性、温度特性の諸特性である。
【0004】
特許文献1に記載のルースチューブ型光ファイバケーブルでは、ルースチューブ間に円形の吸水部材を配置することで、防水性及び圧縮特性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3920240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のルースチューブ型光ファイバケーブルでは、ケーブルに対して外部荷重が作用した場合(衝撃試験時の荷重も含む)、外部荷重が加わっている部分のシースと、ケーブル中心に設けられた抗張力体との間のルースチューブが潰れたり割れたりすることにより、内部の光ファイバがダメージを受ける可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、ケーブルに外部荷重が作用した場合に、外部荷重が加わっている部分のシースと、抗張力体との間のルースチューブの衝撃荷重を緩和して、ルースチューブの潰れや割れを抑制すると共にチューブ内の光ファイバを保護することのできるルースチューブ型光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、抗張力体を中心としてその周囲を取り囲むようにして、光ファイバをジェリーと共にチューブ内に収容したルースチューブを複数配置し、それら抗張力体及びルースチューブをシースで被覆したルースチューブ型光ファイバケーブルにおいて、前記抗張力体は、ケーブル長手方向に設けられた抗張力体本体と、この抗張力体本体の表面に前記ルースチューブから受ける衝撃を緩和する衝撃緩和層とからなることを特徴としている。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記衝撃緩和層は、ヤング率0.01〜0.1GPaのエチレンアクリル酸エチル共重合体樹脂であることを特徴としている。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記抗張力体本体は、繊維強化プラスチックからなることを特徴としている。
【0011】
第4の発明は、第1または第2の発明において、前記抗張力体本体は、鋼線からなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のルースチューブ型光ファイバケーブルによれば、ケーブルに外部荷重が作用した場合、ルースチューブが押されてケーブル中心に配置された抗張力体に接触するが、この抗張力体の表面に設けられた衝撃緩和層によって、前記荷重が吸収され、当該ルースチューブの潰れや割れが抑制される。そのため、本発明によれば、ルースチューブのチューブ内に収納された光ファイバへのダメージを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本実施形態のルースチューブ型光ファイバケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態のルースチューブ型光ファイバケーブルの断面図を示している。ルースチューブ型光ファイバケーブル1は、抗張力体2を中心としてその周囲を取り囲むようにして、光ファイバ3をジェリー4と共にチューブ5内に収容したルースチューブ6を複数配置し、それら抗張力体2及びルースチューブ6をシース7で被覆した構造とされている。
【0015】
抗張力体2は、ケーブル長手方向に設けられた抗張力体本体8と、この抗張力体本体8の表面8aにルースチューブ6から受ける衝撃を緩和する衝撃緩和層9とから構成されている。
【0016】
抗張力体本体8は、例えばガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、ガラス繊維、アラミド繊維、アラミドFRP、鋼線等の線材からなり、円形断面形状のケーブルとされている。特に、繊維強化プラスチックを使用すれば、ケーブルの軽量化になる。抗張力体本体8は、その長手方向に撚らずに使用しても良いし、必要に応じて周方向に撚って使用しても良い。
【0017】
衝撃緩和層9は、ケーブルに対して外部荷重が作用した場合(衝撃試験時の荷重も含む)に、ルースチューブ6から受ける衝撃を緩和する機能をする。この衝撃緩和層9には、例えばヤング率0.01〜0.1GPaのエチレンアクリル酸エチル共重合体樹脂(EEA)が使用できる。ヤング率を、前記範囲とすることで、衝撃緩和層9のクッションとしての役目が最も最適になり、ルースチューブ6の潰れや内部の光ファイバ2の損傷が抑制可能となる。この範囲については、後述する実施例で説明する。
【0018】
ルースチューブ6は、光ファイバ3と、ジェリー4と、チューブ5とからなる。光ファイバ3は、光ファイバ素線、光ファイバ心線、光ファイバテープ心線などである。光ファイバ素線は、石英ガラスファイバの上に紫外線硬化樹脂を被覆したものである。光ファイバ心線は、石英ガラスファイバの上にプラスチック樹脂を被覆してその直径を光ファイバ素線よりも大としたものである。光ファイバテープ心線は、光ファイバ素線を平行に数個並べて紫外線硬化樹脂で被覆したものである。
【0019】
チューブ5は、例えば円筒形状のポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂からなり、その内部に光ファイバ3をジェリー4と共に収容させている。図1では、光ファイバ素線の複数本を束ねることで光ファイバ2とし、その光ファイバ2の束をジェリー4を満たしてチューブ5内に収容させている。ジェリー4は、光ファイバ3を外部衝撃から保護すると共にルースチューブ6内に浸入しようとする水分を止水する機能をするジェリーコンパウンドからなる。
【0020】
前記ルースチューブ6は、抗張力体2を中心としてその周囲を取り囲むように配置されている。図1では、6本のルースチューブ6を抗張力体2の周囲に配置している。もちろん、ルースチューブ6の数は、6本でなくても構わない。この実施形態では、ルースチューブ6は、周方向で左右交互に撚ったSZ撚り構造としている。もちろん、ルースチューブ6は、SZ撚りしなくても良い。
【0021】
シース7は、抗張力体2及びルースチューブ6の外周囲全体を被覆するように押し出し成形されることにより形成されている。かかるシース7には、例えばポリエチレン(PE)、ポリオレフィン(PO)等の樹脂が使用される。
【実施例】
【0022】
以下の条件の下に、ルースチューブ型光ファイバケーブルを何種類か作製し、それらの衝撃特性、側圧特性、引張特性、温度特性を調べた。抗張力体本体の表面にエチレンアクリル酸エチル共重合体(EEA)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリウレタンを、0.15mm厚で被覆した3種類の抗張力体を作製した。そして、この抗張力体の周囲に6本のルースチューブを撚り合わせ、1.2mm厚の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなるシースで被覆して、外径7.4mmのルースチューブ型光ファイバケーブルを得た。
【0023】
そして、作製して得られた各ルースチューブ型光ファイバケーブルに対して衝撃試験、側圧試験、引張試験、温度試験を行った。衝撃試験は、IEC60794-1-2 E4 Impactに基づいて行った。この衝撃試験では、衝撃打撃面の半径を10mmとし、3Jの衝撃力を3箇所に1回ずつ加えた。そして、各光ファイバの1550nmでの試験後損失変動量が0.1dB/心以下、およびシース又はケーブル構成材料に損傷無し(打撃面跡は損傷とは見なさない)が合格(○)、0.10dB/心を超える、および損傷有りが不合格(×)とした。
【0024】
側圧試験は、IEC60794-1-2 E3 Crushに基づいて行った。100mmの平板を用いて、1分間1500Nの荷重を加え、荷重解放後、損失変動量が0.05dB以下、また750Nの荷重を10分間加えている間の損失変動量は0.05dB以下、およびシース又はケーブル構成材料に損傷無し(平板跡は損傷と見なさない)が合格(○)、0.05dBを超える、および損傷有りが不合格(×)とする。
【0025】
引張試験は、IEC60794-1-2 E1 Tensile performanceに基づいて行った。1Km当たりのケーブル重量に相当する引張荷重をケーブルに加えた時に、光ファイバに加わる歪みがファイバプルーフレベルの60%以下、およびシース又はケーブル構成材料に損傷無しが合格(○)、60%を超える、および損傷有りが不合格(×)とする。
【0026】
温度試験は、IEC60794-1-2 F1 Temperature cyclingに基づき行った。ケーブル長1000m以上のケーブルにおいて、−45℃から+80℃×2サイクルの温度サイクルをケーブルに加えた時、損失変動量が常温時と比べ0.05dB/Km以下が合格(○)、0.05dB/Kmを超えるが不合格(×)とする。
【0027】
これらの試験結果を表1に示す。表1において、未評価の項目に対しては、「−」で示した。
【表1】

【0028】
これらの結果から分かるように、衝撃緩和層にEEAを使用したルースチューブ型光ファイバケーブルでは、衝撃特性、側圧特性、引張特性、温度特性の全てにおいて評価基準を満たしていることを確認した。また、衝撃特性においては、抗張力体本体の表面へのコーティング材として錘落下の際の衝撃を吸収する緩衝層としてヤング率が0.01〜0.1GPaのEEAを被覆したルースチューブ型光ファイバケーブルが、評価基準を満たしている。
【0029】
本実施形態のルースチューブ型光ファイバケーブルによれば、ケーブルに外部荷重(衝撃試験による荷重を含む)が作用した場合、その外部荷重が加わっている部分のシース7と抗張力体2との間のルースチューブ6の衝撃荷重が、抗張力体本体8の表面8aに設けられた衝撃緩和層9によって吸収され、当該ルースチューブ6の潰れや割れが抑制される。そのため、本発明によれば、ルースチューブ6のチューブ5内に収納された光ファイバ2へのダメージを回避することができる。これにより、光ファイバ3の伝送損失を抑制することができる。
【0030】
また、本実施形態のルースチューブ型光ファイバケーブルによれば、衝撃緩和層9をヤング率0.01〜0.1GPaのエチレンアクリル酸エチル共重合体樹脂で構成したので、衝撃特性だけなく、側圧特性、引張特性及び温度特性の全てについて評価基準を満足することができる。
【0031】
また、本実施形態のルースチューブ型光ファイバケーブルによれば、抗張力体本体8を、繊維強化プラスチックで構成しているので、ケーブル自体を軽量化することができる。また、抗張力体本体8を繊維強化プラスチックとしたので、無誘電体(電気を流さない)となる。
【0032】
また、本実施形態のルースチューブ型光ファイバケーブルによれば、抗張力体本体8を鋼線で構成しているので、安価となる他、細い径でも引張力が大きく取れる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、ルースチューブ型光ファイバケーブルに利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1…光ファイバケーブル
2…抗張力体
3…光ファイバ
4…ジェリー
5…チューブ
6…ルースチューブ
7…シース
8…抗張力体本体
9…衝撃緩和層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗張力体を中心としてその周囲を取り囲むようにして、光ファイバをジェリーと共にチューブ内に収容したルースチューブを複数配置し、それら抗張力体及びルースチューブをシースで被覆したルースチューブ型光ファイバケーブルにおいて、
前記抗張力体は、ケーブル長手方向に設けられた抗張力体本体と、この抗張力体本体の表面に前記ルースチューブから受ける衝撃を緩和する衝撃緩和層とからなる
ことを特徴とするルースチューブ型光ファイバケーブル。
【請求項2】
請求項1記載のルースチューブ型光ファイバケーブルであって、
前記衝撃緩和層は、ヤング率0.01〜0.1GPaのエチレンアクリル酸エチル共重合体樹脂である
ことを特徴とするルースチューブ型光ファイバケーブル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のルースチューブ型光ファイバケーブルであって、
前記抗張力体本体は、繊維強化プラスチックからなる
ことを特徴とするルースチューブ型光ファイバケーブル。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のルースチューブ型光ファイバケーブルであって、
前記抗張力体本体は、鋼線からなる
ことを特徴とするルースチューブ型光ファイバケーブル。

【図1】
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【公開番号】特開2013−54219(P2013−54219A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192628(P2011−192628)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】