説明

ルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備

【課題】オーステナイト状態のルーズコイルを載置して搬送する際、ルーズコイルの先端の噛み込みを防止でき溶融ソルト中を安定且つ円滑に搬送するルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備の提供。
【解決手段】一対の外リンクプレート3同士をピンで連結して外リンク2を形成すると共に、一対の内リンクプレート6同士をセンターブシュ7で連結して内リンク5を形成し、外リンク2と内リンク5と連結して構成してなり、外リンク2及び内リンク5の各上端面にオーステナイト状態のルーズコイルを載置して搬送しながら溶融ソルト内に浸漬させて冷却するルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備であって、長さ方向に隣接する外リンクプレート3の端部間に臨む内リンクプレート6の外面に、外リンクプレート3の端部間と内リンクプレート6の外面とで形成される間隙を埋めるための間隙充填部16をそれぞれ設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーステナイト状態のルーズコイルを載置して、溶融ソルト中を搬送するルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、中・高炭素鋼の線材を製造する際に、線材に強度を付与することを目的として、線材を熱間圧延してから、そのままのオーステナイト状態又はオーステナイト状態まで再加熱してから500℃前後の温度まで急冷して微細パーライトに変態させるパテンティングと呼ばれる熱処理技術が知られている。特に、熱間圧延された直後のルーズコイルの顕熱を利用するように、上述したパテンティングを、圧延ラインに続けてインラインで直接的に行う直接熱処理技術は、直接パテンティングと呼ばれる。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、このような直接パテンティングを行うことによって中・高炭素鋼の線材を製造する製造ラインに適用可能なインライン熱処理設備が開示されている。
【0004】
上記特許文献1、2に記載のインライン熱処理設備を用いて直接パテンティングを行う場合には、圧延ラインにおいてオーステナイト状態の線材を連続する非同心リング状態であるルーズコイルにしてから、このルーズコイルを圧延ラインの下流において溶融ソルトを満たした冷却槽内を通過するように搬送することによって熱処理を実行することができる。ここでは、ルーズコイルの搬送手段として、多数のコマ型ローラを並設している。
【0005】
特許文献3には、溶融ソルト中におけるルーズコイルの搬送に多数のフラットローラを並設する方法が開示されている。
【0006】
しかし、コマ型ローラやフラットローラは、その上面にルーズコイルを載置した状態で各々が回転しながら順次搬送していくため、ルーズコイルとの間ですべり(摩擦)やローラの空回りを起こしたり、ルーズコイルの端部がローラ間の間隙に入り込んだり、ルーズコイルの端部がローラに巻き込まれるといった不具合を生じ、結果として、搬送が不安定になったり、ルーズコイルに傷が付くという問題を生じた。
【0007】
そこで、本発明者は、溶融ソルト中におけるルーズコイルの搬送にコンベヤチェーンの使用を検討した。コンベヤチェーンによれば、ルーズコイルをその上面に載置した状態でコンベヤチェーン自体が移動して搬送を行うため、ルーズコイルとの間での摩擦は軽減され、ルーズコイルの傷付きが防止される。このようなコンベヤチェーンは、溶融ソルト外から溶融ソルト内に至る搬送ラインをガイドレールによって規定し、このガイドレールに係合して回転しながら荷重を受けるローラを設けることによって、ルーズコイルを載置したまま搬送しながらガイドレールに沿って溶融ソルト内に浸漬させる構造とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭59−31875号公報
【特許文献2】実開昭61−147255号公報
【特許文献3】特開2007−239069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようにルーズコイルの搬送にコンベヤチェーンを用いることで、コマ型ローラやフラットローラの欠点である搬送の不安定さや、ルーズコイルに傷をつけてしまうという問題点については大きく改善された。
【0010】
しかし、このようなコンベヤチェーンを用いてルーズコイルを搬送することによって溶融ソルト内に浸漬させる構成とした場合、次のような新たな解決すべき課題が見出された。
【0011】
図6は、本発明者によってルーズコイル搬送用として案出されたコンベアチェーンの一例を示す部分側面図、図7はそのコンベアチェーンの長さ方向と直交する断面図である。
【0012】
コンベヤチェーン300は、多数の外リンク301と内リンク302とを交互に連結することによって無端状に構成される。外リンク301と内リンク302とを繋ぐ連結軸303は、外リンク301の両外側まで延出し、その両端にそれぞれサイドローラ304が回転可能に設けられている。各サイドローラ304は、搬送経路を形成するコの字状の2本のガイドレール305と係合し、このガイドレール305によって案内される。
【0013】
外リンク301と内リンク302の上端は、ルーズコイルの載置面とされ、ガイドレール305の上端面305aよりも上方に突出している。ガイドレール305の外リンク301と対向する端部は、該外リンク301との干渉を避けるため、所定の間隙を有している。
【0014】
また、外リンク301の両端は、搬送経路の上下方向の曲がりやスプロケットの外周に沿う回転等によって連結軸303を中心に所定角度で回動する際、互いに干渉し合わないように円弧形状に形成されているため、長さ方向に隣接する外リンク301、301の端部間とその間に位置する内リンク302の外面との間には略銀杏型の間隙306が形成される。
【0015】
図8に、かかるコンベヤチェーン300上にルーズコイルWを載置して搬送する様子を平面図で示す。
【0016】
ルーズコイルWは例えば2条に平行に架設されたコンベヤチェーン300、300上に載置され、該コンベヤチェーン300、300の駆動に伴って搬送されるが、ルーズコイルWは単に載置されているだけであるため、溶融ソルト中を移動する際に、溶融ソルトによる抵抗や浮力の作用を受け、また、駆動時の振動や溶融ソルトの内外に亘る搬送経路が傾斜を有することも手伝って、コンベヤチェーン300、300上で微小ながらも位置ずれを生じる場合がある。
【0017】
ルーズコイルWは直径5〜15mmの線材であり、連続する非同心リング状態で上流の圧延ラインから搬出されてくる。その端部W1は、必ずしも断面が円形状ではなく、先端が尖っていたり、不規則な方向に曲がっていたりする場合がある。また、この端部W1がコンベヤチェーン300のどの位置に載置されるかも予想できない。
【0018】
このため、頻度は少ないながらも、図6、図7に示すように、ルールコイルWの端部W1がコンベヤチェーン300に噛み込まれてしまう場合がある。図中、Aは、ルーズコイルWの端部W1が、コンベヤチェーン300の長さ方向に隣接する外リンク301、301間に形成される間隙306とガイドレール305との間に噛み込まれた場合、Bは、外リンク301とガイドレール305との間に噛み込まれた場合を示している。
【0019】
このようにルーズコイルWの端部W1がコンベヤチェーン300のいずれかに箇所に噛み込まれてしまうと、特に搬送終了端側において、コンベヤチェーン300、300がスプロケットの外周に沿って回転する際に無理に引っ張られてしまい、ルーズコイルWの円滑な搬送が阻害され、後続して搬送されるルーズコイルの渋滞を招き、搬送ラインを停止させる等の対処を余儀なくされる問題がある。しかも、最悪の場合、ルーズコイルの生産ラインそのものを停止させてしまう事態を招くおそれがあり、生産性の低下につながる重大な問題となる。
【0020】
そこで、本発明は、オーステナイト状態のルーズコイルを載置して搬送する際、そのルーズコイルの先端の噛み込みを防止でき、溶融ソルト中を安定且つ円滑に搬送することのできるルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備を提供することを課題とする。
【0021】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0023】
(請求項1)
間隔をおいて平行に配置された一対の外リンクプレートの両端側同士をピンで連結して外リンクを形成すると共に、外リンクプレートよりも僅かに狭い間隔をおいて平行に配置された一対の内リンクプレートの両端側同士を、センターブシュで連結して内リンクを形成し、前記センターブシュに前記ピンを挿通することによって前記外リンクと前記内リンクとを交互に連結して無端状に構成してなり、前記外リンク及び前記内リンクの各上端面にオーステナイト状態のルーズコイルを載置して搬送しながら溶融ソルト内に浸漬させて冷却するルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備であって、
長さ方向に隣接する前記外リンクプレートの端部間に臨む前記内リンクプレートの外面に、該外リンクプレートの端部間と前記内リンクプレートの外面とで形成される間隙を埋めるための間隙充填部をそれぞれ設けたことを特徴とするルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【0024】
(請求項2)
前記間隙充填部と前記外リンクプレートの端部との間隙を、前記ルーズコイルの直径未満に設定したことを特徴とする請求項1記載のルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【0025】
(請求項3)
前記外リンクの両外側にそれぞれ突設されるサイドローラと、該サイドローラを上下から挟むように係合して前記ルーズコイルの搬送ラインを形成するガイドレールとを備え、前記外リンク及び前記内リンクの各上端面は、前記ガイドレールの上端面よりも上方に突出する高さを有しており、
前記間隙充填部の下端は、前記ガイドレールの上端面よりも下方に位置していることを特徴とする請求項1記載のルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【0026】
(請求項4)
前記外リンク、前記内リンク及び前記間隙充填部のうちの少なくともいずれかに、前記ルーズコイルを係止して搬送時のずれを防止するための係止爪を突設したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【0027】
(請求項5)
前記間隙充填部は、前記内リンクプレートに着脱可能に設けられており、
前記係止爪は、前記間隙充填部の上端面に突設されていることを特徴とする請求項4記載のルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【0028】
(請求項6)
間隔をおいて平行に配置された一対の外リンクプレートの両端側同士をピンで連結して外リンクを形成すると共に、外リンクプレートよりも僅かに狭い間隔をおいて平行に配置された一対の内リンクプレートの両端側同士を、センターブシュで連結して内リンクを形成し、前記センターブシュに前記ピンを挿通することによって前記外リンクと前記内リンクとを交互に連結して無端状に構成してなり、前記外リンク及び前記内リンクの各上端面にオーステナイト状態のルーズコイルを載置して搬送しながら溶融ソルト内に浸漬させて冷却するルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備であって、
前記外リンクの両外側にそれぞれ突設されるサイドローラと、該サイドローラを上下から挟むように係合して前記ルーズコイルの搬送ラインを形成するガイドレールとを備え、前記外リンク及び前記内リンクの各上端面は、前記ガイドレールの上端面よりも上方に突出する高さを有していると共に、前記ガイドレールの上側の内側端と、それらの内側に位置する前記外リンクプレートとの間に形成される間隙を、前記ルーズコイルの直径未満に設定したことを特徴とするルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【0029】
(請求項7)
間隔をおいて平行に配置された一対の外リンクプレートの両端側同士をピンで連結して外リンクを形成すると共に、外リンクプレートよりも僅かに狭い間隔をおいて平行に配置された一対の内リンクプレートの両端側同士を、センターブシュで連結して内リンクを形成し、前記センターブシュに前記ピンを挿通することによって前記外リンクと前記内リンクとを交互に連結して無端状に構成してなり、前記外リンク及び前記内リンクの各上端面にオーステナイト状態のルーズコイルを載置して搬送しながら溶融ソルト内に浸漬させて冷却するルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備であって、
長さ方向に隣接する前記外リンクプレートの端部間に臨む前記内リンクプレートの外面に、該外リンクプレートの端部間と前記内リンクプレートの外面とで形成される間隙を埋めるための間隙充填部をそれぞれ設け、
前記外リンクの両外側にそれぞれ突設されるサイドローラと、該サイドローラを上下から挟むように係合して前記ルーズコイルの搬送ラインを形成するガイドレールとを備え、前記外リンク及び前記内リンクの各上端面は、前記ガイドレールの上端面よりも上方に突出する高さを有していると共に、前記ガイドレールの上側の内側端と、それらの内側に位置する前記外リンクプレートとの間に形成される間隙を、前記ルーズコイルの直径未満に設定したことを特徴とするルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【0030】
(請求項8)
前記間隙充填部と前記外リンクプレートの端部との間隙を、前記ルーズコイルの直径未満に設定したことを特徴とする請求項7記載のルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【0031】
(請求項9)
前記間隙充填部の下端は、前記ガイドレールの上端面よりも下方に位置していることを特徴とする請求項7又は8記載のルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【0032】
(請求項10)
前記外リンクと前記内リンクの少なくともいずれかの上端面に、前記ルーズコイルを係止して搬送時のずれを防止するための係止爪を突設したことを特徴とする請求項7、8又は9記載のルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【0033】
(請求項11)
前記間隙充填部は、前記内リンクプレートに着脱可能に設けられており、
前記係止爪は、前記間隙充填部の上端面に突設されていることを特徴とする請求項10記載のルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、オーステナイト状態のルーズコイルを載置して搬送する際、そのルーズコイルの先端の噛み込みを防止でき、溶融ソルト中を安定且つ円滑に搬送することのできるルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るルーズコイル搬送用コンベヤチェーンの一例を示す要部概略平面図
【図2】図1の側面図
【図3】本発明に係るルーズコイル搬送用コンベヤチェーンにおけるサイドローラの部分拡大断面図
【図4】ルーズコイル搬送用コンベヤチェーンがガイドレールと係合した状態を示す図
【図5】本発明に係るルーズコイル搬送用コンベヤチェーンを備えたインライン熱処理設備における溶融ソルト槽の一例を示す側面図
【図6】従来のコンベヤチェーンの部分側面図
【図7】従来のコンベヤチェーンの長さ方向と直交する断面図
【図8】従来のコンベヤチェーン上にルーズコイルを載置して搬送する様子を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明に係るルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備(以下、単にコンベヤチェーンという。)の一例を示す要部概略平面図であり、図2は、図1の側面図、図3は、コンベヤチェーンにおけるサイドローラを平面視した部分拡大断面図である。
【0038】
コンベヤチェーン1は、間隔をおいて平行に配置された一対の金属製の外リンクプレート3、3の両端側同士を、金属製のピン4、4で連結して外リンク2を形成すると共に、外リンクプレート3、3よりも僅かに狭い間隔をおいて平行に配置された一対の金属製の内リンクプレート6、6の両端側同士を、金属製のセンターブシュ7、7で連結して内リンク5を形成している。外リンク2と内リンク5とは、リンク連結部を構成するピン4、4とセンターブシュ7、7によって連結される。すなわち、外リンク2と内リンク5とは、外リンクプレート3、3の両端側同士を連結しているピン4、4を内リンク5におけるセンターブシュ7、7内に回転可能に挿通させることによって連結され、これら外リンク2と内リンク5とが長さ方向に交互に連結されることにより、連続する無端状に構成される。なお、ピン4、4は外リンクプレート3、3に対しては回転不能に固着されている。
【0039】
ピン4の両端は外リンク2の両外側にそれぞれ突出して突出部4aを形成しており、各突出部4aに、回転ローラである金属製のサイドローラ8がそれぞれ回転可能に設けられている。
【0040】
ピン4の突出部4aの外周には、サイドローラ8の回転軸となる円筒状のサイドローラピンブシュ9が嵌挿され、係止ピン10によって突出部4aに回転不能に取り付けられており、このサイドローラピンブシュ9の外周に、それぞれサイドローラ8が回転可能に取り付けられている。サイドローラ8は、サイドローラピンブシュ9との間にベアリング等の軸受部材を介さずに直接取り付けられている。
【0041】
図3において、11はサイドローラ8を両側から挟持している座金であり、係止ピン10によってサイドローラ8と共に突出部4a及びサイドローラピンブシュ9からの抜け止めが図られている。12はセンターブシュ7の外周に回転可能に設けられ、後述するスプロケットと係合する金属製のセンターローラである。
【0042】
外リンク2の上端面2aと内リンク5の上端面5aとは、図2のようにコンベヤチェーン1の隣り合う外リンク2と内リンク5とを一直線状に延ばした状態で、各サイドローラ8の上端の高さ位置よりも上方に高く突出していると共に、サイドローラ8に対していずれも同一高さとなるように形成されており(図5)、この外リンク2の上端面2aと内リンク5の上端面5aが、ルーズコイルWの載置面とされ、この上端面2a、5aにルーズコイルWを載置して搬送する。
【0043】
各外リンクプレート3は、図2に示すように、ルーズコイルWを載置する上端面2aが直線状に形成されると共に、上端面2aから両端部にかけてピン4を中心とする円弧面3aとなっている。このため、隣接する外リンクプレート3、3と、それらの内側に位置する内リンクプレート6との間で略銀杏型の間隙15が形成される。
【0044】
この間隙15に臨む各内リンクプレート6の外面には、この間隙15を埋めるための間隙充填部16が設けられており、この間隙充填部16の部位において内リンクプレート6の板厚が厚くなっている。
【0045】
間隙充填部16は、上端面16aが外リンク2の上端面2a及び内リンク5の上端面5aと同一面であり、これら外リンク2の上端面2a及び内リンク5の上端面5aと同様にルーズコイルWの載置面を構成している。また、間隙充填部16は、この上端面16aから下方に行くに従って、両側の外リンクプレート3、3の円弧面3a、3aに沿うように窪んだ円弧状に形成されて先細り状となり、間隙15の形状とほぼ同一形状の略銀杏型(下側2辺が凹湾曲する円弧面となる逆三角形型)に形成される。この間隙充填部16と各外リンクプレート3、3との間の間隙S1(図2参照)は、ルーズコイルWの端部の嵌り込みを確実に防止し得るようにするため、ルーズコイルWの直径未満に設定することが好ましい。
【0046】
また、間隙充填部16の内リンクプレート6の外面からの突出高さh(図1参照)は、ルーズコイルWの端部の嵌り込みを確実に防止し得ると共に後述するガイドレール30の上側の内側端30c(図4参照)との干渉を避けるため、外リンクプレート3の外面までの距離と同一とすることが好ましい。
【0047】
この間隙充填部16は、金属材の削り出しによって内リンクプレート6の外面に一体に成形してもよいし、内リンクプレート6と別体に形成した板状の間隙充填部16を適宜の固着手段によって固着するようにしてもよい。別体に形成した場合、ビス等の固定手段を用いることにより、着脱可能に設けるようにすることも好ましい。
【0048】
図4に示すように、かかるコンベヤチェーン1には、搬送経路上に、両側のサイドローラ8に対してそれぞれ上下から挟むように係合し、搬送ラインを形成するガイドレール30を有している。図4は、コンベヤチェーン1がガイドレール30と係合した状態を、コンベヤチェーン1の搬送方向側から見た断面図である。
【0049】
ガイドレール30はそれぞれ断面コの字状を呈し、各コの字部分が内側に向き合うように配置され、コンベヤチェーン1の両側にそれぞれ突設されるサイドローラ8をコの字部内に係合させ、コンベヤチェーン1の移動をサイドローラ8を回転させながら両側からガイドする。本実施形態では、ガイドレール30は、1本のコンベヤチェーン1に対して両側に2本設けられているが、コンベヤチェーン1のサイドローラ8、8をそれぞれコの字部内に係合してその搬送をガイドできるものであれば、このように2本に分割されるものに限定されない。
【0050】
本実施形態に示すコンベヤチェーン1は、このようにルーズコイルWを載置して搬送する領域に亘って対向配置される2本のガイドレール30によって両側から搬送がガイドされ、両側にそれぞれ突設したサイドローラ8を各ガイドレール30と係合させてその内底面30a上を回転するようにしているので、ルーズコイルWを載置した際に掛かる荷重を両側の各サイドローラ8に分散させることができ、サイドローラ8に掛かる負担を軽減できる。
【0051】
コンベヤチェーン1における外リンク2及び内リンク5は、ルーズコイルWの荷重でサイドローラ8がガイドレール30内の内底面30aに載置された状態で、ガイドレール30の上端30bよりも上方に突出する高さを有している。
【0052】
間隙充填部16は、コンベヤチェーン1の長さ方向に隣接する外リンクプレート3、3の間から略銀杏型に臨む間隙15を埋めるように、内リンクプレート6の外面に設けられている。このため、ガイドレール30の上端面30bから露出する間隙15は間隙充填部16によって埋められるため、ルーズコイルWの端部W1がこの間隙15に嵌り込む余地はなくなり、ルーズコイルWの噛み込みを確実に防止することができる。
【0053】
この間隙充填部16の下端16bの位置は、ガイドレール30の上端面30bの位置よりも下方に突出するように設けられていることが好ましい(図2参照)。このようにすることで、ガイドレール30の上端面30bから露出する間隙15の全てが間隙充填部16によって埋められるため、ルーズコイルWの噛み込み防止をより確実なものとすることができる。
【0054】
コンベヤチェーン1における内リンクプレート6の両外面に設けられる各間隙充填部16のうちの少なくとも一方側の上端面16aには、図2に示すように、載置されたルーズコイルWを係止して搬送時のずれを防止するための係止爪14を突設することが好ましい。
【0055】
係止爪14は、間隙充填部16と同一厚みを有し、本実施形態では間隙充填部16から上方に三角形状に突設しており、コンベヤチェーン1の搬送方向側の傾斜面14aの傾斜角度が、その反対側の傾斜面14bの傾斜角度よりも小さく形成されている。三角形状であることにより、コンベヤチェーン1が搬送終了端側においてスプロケットの外周に沿って回転した際に、ルーズコイルWを噛み込んでしまうおそれがないために好ましいが、少なくともルーズコイルWの搬送時のずれを防止でき、且つ、このような噛み込みを防止できるものであれば、必ずしも図示する形状に限定されない。
【0056】
この係止爪14は、ルーズコイルWを載置して溶融ソルト内に向けて下向傾斜して搬送する際、傾斜面14bがルーズコイルWのずり落ちを防止し、ルーズコイルWが溶融ソルト外に向けて上向傾斜する際、傾斜面14aがルーズコイルWのずり落ちを防止する。また、その他の搬送部位時においても、溶融ソルトの抵抗や浮力、駆動時の振動等によってルーズコイルWにずれが生じることを防止できる。これにより、ルーズコイルWを位置ずれなく、より安定して搬送することができるため、ルーズコイルWの円滑な搬送を阻害するような端部の不意な嵌り込み、噛み込み等の発生をより確実に防止することができる。
【0057】
本実施形態では、係止爪14は各間隙充填部16に設けているが、必ずしもこれに限定されず、外リンク2と内リンク5とのピッチやルーズコイルWの種類(非同芯リング状の径の種類)等に応じて、適宜の位置に設ければよい。
【0058】
また、係止爪14は、必ずしも間隙充填部16に設けるものに限らず、一対の外リンクプレート3、3のうちのいずれか一方の上端面2aに設けるようにしてもよいし、一対の内リンクプレート6、6のうちのいずれか一方の上端面5aに設けるようにしてもよい。
【0059】
係止爪14を間隙充填部16に設ける場合、この間隙充填部16をビス等の着脱可能な固定手段によって取り付けるようにすれば、ルーズコイルWとの接触により損傷した係止爪14を部分的に交換することが可能となる。また、搬送するルーズコイルWの種類(非同芯リング状の径の種類)の変更等に応じて、係止爪14の配設位置を変更する必要が生じた場合にも、容易に対応することが可能となる。
【0060】
かかるコンベヤチェーン1において、一対の外リンクプレート3、3と各ガイドレール30の上側の内側端30c(図4参照)との間隙S2は、コンベヤチェーン1が左右いずれかのガイドレール30に当接して最大間隙となった場合でも、ルーズコイルWの直径未満となるように設定されている。これにより、コンベヤチェーン1が左右一対のガイドレール30、30の間を左右にふらつきながら移動した際でも、ルーズコイルWの端部が不意にこの間隙S2に嵌り込み、更には噛み込んでしまうことを防止することができる。従って、このような噛み込みの発生による駆動抵抗の発生を確実に防止でき、円滑な搬送を実現することができる。
【0061】
この間隙S2は、ルーズコイルWの端部が嵌り込むこともないようにするため、最大間隙となった場合でも、ルーズコイルWの直径の1/2以下に設定することが好ましく、ルーズコイルWの直径の1/3以下に設定することがより好ましい。
【0062】
本発明に係るコンベヤチェーン1が配備されるインライン熱処理設備の概略を図5に示す。
【0063】
図中、100は溶融ソルト101を貯留する溶融ソルト槽である。溶融ソルト101は、硝酸または亜硝酸のアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせからなり、好ましくは、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウムの少なくとも何れか1種からなることであり、より好ましくは、硝酸ナトリウム:硝酸カリウム=30〜60:70〜40(重量比)の組成からなることである。
【0064】
また、溶融ソルト槽100における溶融ソルト101の温度は、400℃〜600℃の範囲である。
【0065】
コンベヤチェーン1は、溶融ソルト槽100における溶融ソルト101の液面上に、互いに所定距離をおいて配置された一対のスプロケット20、21に亘って架け渡されて張設される。そして、これら一対のスプロケット20、21の間に張設されたコンベヤチェーン1の組が、溶融ソルト槽100内に複数に平行に並設されることで、インライン熱処理設備における溶融ソルト101への搬送設備が構成される。
【0066】
スプロケット20、21の間には、ルーズコイルWの入側に配置されたスプロケット20の近傍から溶融ソルト101内に向けて徐々に下向傾斜し、該溶融ソルト101内を通って出側に向けて徐々に上向傾斜し、該出側に配置されたスプロケット21に亘ってコンベヤチェーン1の搬送ラインを形成するガイドレール30、31が設けられている。ガイドレール30は溶融ソルト槽100の上方に配置されたルーズコイルWの搬送側のレールであり、ガイドレール31は下方に配置されたコンベヤチェーン1の戻り側のレールである。なお、このガイドレール31の構造もガイドレール30と同一であり、図4と上下対称に表わされる。
【0067】
ルーズコイルWは、溶融ソルト槽100の上流側において、不図示の圧延ラインから、連続する非同心リング状態でこのコンベヤチェーン1の外リンク2及び内リンク5の上端面2a、5aに亘って載置され、スプロケット20、21の回動によるコンベヤチェーン1の移動に伴って搬送されつつ溶融ソルト槽100の溶融ソルト101内に浸漬される。
【0068】
スプロケット20、21は溶融ソルト101の液面よりも上方に配置されており、その回転軸が溶融ソルト101と接触しないようになっている。一般に、スプロケット20、21は、一方が駆動源(図示せず)と接続した駆動側とされ、他方が従動側とされるが、両方にそれぞれ駆動源(図示せず)を接続し、両者を同期させて共に駆動させるようにすることが好ましい。これにより、駆動時にコンベヤチェーン1に掛かる張力を低減でき、耐久性を向上させることができる。
【0069】
一対のスプロケット20、21は、いずれか一方又は両方を、互いに離反する方向(図4中のA方向)に移動可能に設けることにより、コンベヤチェーン1に掛かる張力を調整可能とすることが好ましい。
【0070】
一対のスプロケット20、21及びガイドレール30、31を含むコンベヤチェーン1の全体を、ジャッキ等の昇降手段によって、溶融ソルト槽100に対して昇降可能に構成することが好ましい。これにより、メンテナンス時等にコンベヤチェーン1全体を上昇させて溶融ソルト101の液面上に露出させることができ、作業性を向上させることができる。
【0071】
なお、図5において、符号200は溶融ソルト槽100の上方を被覆する天蓋部であり、溶融ソルト101の液面の上方の空間を所定の高温状態に維持できるようにしている。これにより、駆動時、コンベヤチェーン1がスプロケット20、21の部位において溶融ソルト101の液面上に露出した際、コンベヤチェーン1に付着した溶融ソルトが冷却されて固化してしまうことを防止する。この天蓋部200は、上述の昇降手段によってコンベヤチェーン1と共に昇降可能とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0072】
1:ルーズコイル搬送用コンベヤチェーン
2:外リンク
2a:上端面
3:外リンクプレート
3a:円弧面
4:ピン
4a:突出部
5:内リンク
5a:上端面
6:内リンクプレート
7:センターブシュ
8:サイドローラ
9:サイドローラピンブシュ
10:係止ピン
11:座金
12:センターローラ
14:係止爪
14a、14b:傾斜面
15:間隙
16:間隙充填部
16a:上端面
20、21:スプロケット
30、31:ガイドレール
30a:内底部
30b:上端
30c:内側端
100:溶融ソルト槽
101:溶融ソルト
200:天蓋部
W:ルーズコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて平行に配置された一対の外リンクプレートの両端側同士をピンで連結して外リンクを形成すると共に、外リンクプレートよりも僅かに狭い間隔をおいて平行に配置された一対の内リンクプレートの両端側同士を、センターブシュで連結して内リンクを形成し、前記センターブシュに前記ピンを挿通することによって前記外リンクと前記内リンクとを交互に連結して無端状に構成してなり、前記外リンク及び前記内リンクの各上端面にオーステナイト状態のルーズコイルを載置して搬送しながら溶融ソルト内に浸漬させて冷却するルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備であって、
長さ方向に隣接する前記外リンクプレートの端部間に臨む前記内リンクプレートの外面に、該外リンクプレートの端部間と前記内リンクプレートの外面とで形成される間隙を埋めるための間隙充填部をそれぞれ設けたことを特徴とするルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【請求項2】
前記間隙充填部と前記外リンクプレートの端部との間隙を、前記ルーズコイルの直径未満に設定したことを特徴とする請求項1記載のルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【請求項3】
前記外リンクの両外側にそれぞれ突設されるサイドローラと、該サイドローラを上下から挟むように係合して前記ルーズコイルの搬送ラインを形成するガイドレールとを備え、前記外リンク及び前記内リンクの各上端面は、前記ガイドレールの上端面よりも上方に突出する高さを有しており、
前記間隙充填部の下端は、前記ガイドレールの上端面よりも下方に位置していることを特徴とする請求項1記載のルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【請求項4】
前記外リンク、前記内リンク及び前記間隙充填部のうちの少なくともいずれかに、前記ルーズコイルを係止して搬送時のずれを防止するための係止爪を突設したことを特徴とする請求項1、2又は3記載のルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【請求項5】
前記間隙充填部は、前記内リンクプレートに着脱可能に設けられており、
前記係止爪は、前記間隙充填部の上端面に突設されていることを特徴とする請求項4記載のルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【請求項6】
間隔をおいて平行に配置された一対の外リンクプレートの両端側同士をピンで連結して外リンクを形成すると共に、外リンクプレートよりも僅かに狭い間隔をおいて平行に配置された一対の内リンクプレートの両端側同士を、センターブシュで連結して内リンクを形成し、前記センターブシュに前記ピンを挿通することによって前記外リンクと前記内リンクとを交互に連結して無端状に構成してなり、前記外リンク及び前記内リンクの各上端面にオーステナイト状態のルーズコイルを載置して搬送しながら溶融ソルト内に浸漬させて冷却するルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備であって、
前記外リンクの両外側にそれぞれ突設されるサイドローラと、該サイドローラを上下から挟むように係合して前記ルーズコイルの搬送ラインを形成するガイドレールとを備え、前記外リンク及び前記内リンクの各上端面は、前記ガイドレールの上端面よりも上方に突出する高さを有していると共に、前記ガイドレールの上側の内側端と、それらの内側に位置する前記外リンクプレートとの間に形成される間隙を、前記ルーズコイルの直径未満に設定したことを特徴とするルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【請求項7】
間隔をおいて平行に配置された一対の外リンクプレートの両端側同士をピンで連結して外リンクを形成すると共に、外リンクプレートよりも僅かに狭い間隔をおいて平行に配置された一対の内リンクプレートの両端側同士を、センターブシュで連結して内リンクを形成し、前記センターブシュに前記ピンを挿通することによって前記外リンクと前記内リンクとを交互に連結して無端状に構成してなり、前記外リンク及び前記内リンクの各上端面にオーステナイト状態のルーズコイルを載置して搬送しながら溶融ソルト内に浸漬させて冷却するルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備であって、
長さ方向に隣接する前記外リンクプレートの端部間に臨む前記内リンクプレートの外面に、該外リンクプレートの端部間と前記内リンクプレートの外面とで形成される間隙を埋めるための間隙充填部をそれぞれ設け、
前記外リンクの両外側にそれぞれ突設されるサイドローラと、該サイドローラを上下から挟むように係合して前記ルーズコイルの搬送ラインを形成するガイドレールとを備え、前記外リンク及び前記内リンクの各上端面は、前記ガイドレールの上端面よりも上方に突出する高さを有していると共に、前記ガイドレールの上側の内側端と、それらの内側に位置する前記外リンクプレートとの間に形成される間隙を、前記ルーズコイルの直径未満に設定したことを特徴とするルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【請求項8】
前記間隙充填部と前記外リンクプレートの端部との間隙を、前記ルーズコイルの直径未満に設定したことを特徴とする請求項7記載のルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【請求項9】
前記間隙充填部の下端は、前記ガイドレールの上端面よりも下方に位置していることを特徴とする請求項7又は8記載のルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【請求項10】
前記外リンクと前記内リンクの少なくともいずれかの上端面に、前記ルーズコイルを係止して搬送時のずれを防止するための係止爪を突設したことを特徴とする請求項7、8又は9記載のルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。
【請求項11】
前記間隙充填部は、前記内リンクプレートに着脱可能に設けられており、
前記係止爪は、前記間隙充填部の上端面に突設されていることを特徴とする請求項10記載のルーズコイル搬送用コンベヤチェーン設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−47628(P2011−47628A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198824(P2009−198824)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】