説明

ルーティング方法並びに前記方法を実行するトランシーバ基地局及びコンピュータプログラム

遠隔通信ネットワーク、例えばアドホックセンサーネットワークのノードを形成するトランシーバ基地局(10)は、前記ネットワークの他ノードから発信されたリクエストを受信する手段(11)と、前記基地局に関連付けたルーティングメトリックの関数で遅延を決定する手段(19)と、同一のリクエストが既に先に受信されていない場合は、決定された前記遅延をもって前記ネットワーク上に前記リクエストを再同報通信する手段(16,18)を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔通信ネットワークで使用するルーティング技術に関する。排他的ではないが、特にアドホックネットワークに適合する。
【背景技術】
【0002】
アドホックネットワークとは、固定インフラを具備しない通信ネットワークである。多数の無線基地局が、無線トランシーバ手段とアドホックネットワークを形成するための適切なプロトコルを具備する。
【0003】
アドホックネットワークを生成するこれらの基地局は、固設またはポータブルコンピュータ、ポケットコンピュータ、携帯電話、車、電子製品等の形態でも良い。前記トランシーバ手段はまた、センサーやアクチュエータなどの簡単な物体と関連付けても良い。センサーのアドホックネットワークによって、このようにして、例えば設置場所を監視またはチェックするビューを有する情報を収集することが可能になる。
【0004】
アドホックネットワークの成功は、ネットワークのノードを構成する基地局の寿命に大きく依存する。特に、ノードは、通常高価であるとともに、入れ替えまたは再充電が困難であるまたは実際には不可能であるバッテリーから通常は電源供給を受けているので、エネルギーの節約は、長寿命のセンサーネットワークを設計する際に重要な要素となる。
【0005】
遠隔通信ネットワーク内のルーティングは、テータを送信するソースノードと、前記データを受信する宛先ノードとの間の経路を検索する処理を具備する。前記経路は、前記ソースノードと前記宛先ノードとの間でデータが通るネットワークノードの連なり(succession)である。
【0006】
有線ネットワークでは、通常もっとも迅速に応答を提供するものを最適経路として選択する。次いで、ルーティングは、遅延最小化アルゴリズムに従って実行される。
【0007】
有線通信の環境では、そのような遅延最小化アルゴリズムも使用しうる。その利点は、最適経路を確立するためにネットワークノード間で交換される管理メッセージ処理の複雑度が低いことである。この種のアルゴリズムは、ルーティングプロトコルのオーバーヘッドをも低減する。
【0008】
遅延最小化ルーティングアルゴリズムの動作を説明するために、図1を参照する。図1には、5つの基地局A−Eを具備するアドホックネットワークを図式的に示している。基地局A(例えばマイクロコンピュータ)は、データの宛先ノードを構成し、度々「シンク」といわれる。ここでは、ノードEがデータソースであると解する。
【0009】
データ収集を開始するために、シンクAは、ソースを検索するリクエストメッセージを同報通信する。各中間ノードB,Cは、前記リクエストを受信し、前記リクエストを処理し、次いで前記リクエストを再同報通信する。ノードDは、前記リクエストを、Bから1回とCから1回の2回受信する。ノードDはノードDが受信する最初のリクエストのみを処理し、2回目のリクエストは無視する。ノードDは、最初に受信したリクエストを再同報通信する。この再同報通信は、ノードB,Cが受信するとともに、もしそれが既に受信したリクエストであれば、各ノードは前記リクエストを無視する。ノードEは、Bが同報通信したリクエストを受信する。ノードEは、予定のデータを提供可能なので、ノードEは前記データを返すことで前記リクエストに応答する。Eが返信した応答メッセージによって、前記リクエストを特定することを可能にする。中間ノードBは、前記リクエストに対する応答をノードAに転送するために、前記リクエストがノードAから発信されたことを記憶している。
【0010】
そのような遅延最小化ルーティングアルゴリズムでは、中間ノードは単一のメッセージのみ同報通信するとともに、単一のメッセージのみ処理することを検証可能である。
【0011】
しかしながら、公知の前記遅延最小化ルーティングアルゴリズムの欠点は、アドホックネットワークの特定動作の継続時間を最適化することが不可能なことである。特に、ルーティングは、ノードで利用可能なエネルギーの水準を考慮に入れることなく実行される。
【0012】
例えば、図1の場合で、ノードBは、ノードEからくる通信だけでなく、ノードDがソースである通信の一部(または経路ABDよりも経路ABDの方が計画的に高速ならば全体ですら)も転送する役割を有する。したがって、ノードBの電力消費は、ノードCのそれよりもずっと大きくなる。ノードBのバッテリーが故障すると同時に、前記アドホックネットワークはもはや動作しなくなる。もし、Dから発信される通信をトランキングするために中間ノードCを好ましく使用するならば、前記アドホックネットワークの寿命は大いに延びるだろう。
【0013】
この種の欠点を緩和するために、アドホックネットワークに対して他のルーティングアルゴリズムファミリーが設計されている。これらのアルゴリズムは、中間ノードの残余エネルギーを考慮に入れることが可能であるメトリックの関数で経路を選択する。具体的には、そのようなアルゴリズムは、全ノードが高いエネルギー余量を有している場合には、大域的にみて最も少ないエネルギーを消費する経路を選択するとともに、たとえ大域的なエネルギーを損失してでも、残余エネルギーが低いノードを具備する経路を回避する。例えば、C−K.Toh他の「Performance Evaluation of Battery−Life−Aware Routing Schemes for Wireless Ad Hoc Networks, Proceedings of the IEEE ICC, Helsinki, June 2001, pages 2824−2829」を参照されたい。
【0014】
ネットワークの寿命を最大化することを目的とするこれらのアルゴリズムを説明するために、図1を再度参照する。ここで、シンクAが予定する応答を、ノードDが提供可能であると仮定する。シンクAが送信したリクエストの受信時に、各中間ノードB,Cは、それぞれの残余エネルギーの関数で決定される属性を前記リクエストに追加することによって、前記リクエストを処理する。前記属性によって、リクエストを受信する各ノードが、前記リクエストが発信されたところからの経路上の残余エネルギー量を確認可能になる。経路上の残余エネルギー量は、ここでは前記経路に沿って最低のエネルギー水準を具備するノードの残余エネルギーに対応する。次いで、ソースノードDは、各受信リクエストに具備される残余エネルギー属性の関数で、どの経路を採用するかを決定するために、Bからと、Cからの2つの受信リクエストのそれぞれを処理する必要がある。
【0015】
この種のアルゴリズムの欠点は、各中間ノードは、前記中間ノードが再同報通信するリクエスト内の残余エネルギーフィールドを更新するために、前記中間ノードが受信する全リクエストを処理する必要があることである。これにより、前記中間ノードでは、全てのこれらのリクエストを受信するとともに処理するために、より複雑な処理をする結果となる。このことは、電力消費に関して好ましくない。
【0016】
さらに、ノードが到着時刻を先見的に知らない全リクエストを受信するため、前記ノードは、調整困難な特定のガードタイムだけ待機する必要がある(短すぎると、時期尚早な判定を引き起こし、一方で長すぎると、処理レイテンシの不必要な増加を引き起こす)。さらに、追加の属性をリクエスト内で使用することにより、管理メッセージ(オーバーヘッド)のサイズが増加し、それによってまたエネルギー消費が増加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、遠隔通信ネットワークのパフォーマンスを、特にアドホックネットワークの場合に寿命の観点で、最適化するためにルーティングメトリックを使用するルーティング技術を簡単化することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、このように、通信ノードの組を具備するネットワーク内での、少なくとも1つのソースノードから宛先ノードまでの経路を確立するためのルーティング方法を提案する。前記方法は、
/a/宛先ノード(A)からリクエストを同報通信する段階と、
/b/中間ノードでの前記リクエスト受信に対する応答で、前記中間ノードで先に同一のリクエストが受信されたか否かを調べる段階と、
/c/前記中間ノードで前記同一のリクエストを先に受信していない場合は、前記中間ノードに関連付けたルーティングメトリックの関数で決定する遅延(Δt)をもって、前記中間ノードから前記リクエストを計画的に再度同報通信する段階と、
/d/少なくとも一つのソースノードに到達するまで段階/b/,/c/を繰り返す段階と、
を具備する。
【0019】
中間ノードに関連付けたルーティングメトリックは、前記リクエストを再同報通信する前に前記中間ノードが経過する遅延に変換する。次いで、後続ノードは、前記後続ノードが受信する最初のリクエストのみを処理する。
【0020】
このメトリックから遅延への変換により、前記中間ノード及びソースで、複数のリクエストを効率的にフィルタすることが可能になる。前記中間ノード及びソースは、メトリックを暗に(implicitly)考慮するために、最初の受信リクエストのみを考慮すれば事実上充分である。
【0021】
これにより、前記中間ノード内で、複雑度及び消費電力が減少する結果となる。
【0022】
前記方法の好ましい形態では、ネットワークの中間ノードで決定する遅延は、再同報通信すべきリクエストに依存しない。この場合、中間ノードは、前記リクエストを、受信リクエストのまま再同報通信することが可能な場合もある。その場合、前記リクエストメッセージ内でルーティングに有用な情報のために特定のフィールドを構成する必要がないので、それによってオーバーヘッドが最小化される。
【0023】
本発明のアドホック無線ネットワークへの応用では、中間ノードに関連付けるルーティングメトリックは、前記ノードの推定残余エネルギー容量に依存するのが好ましい。その結果、遅延最小化アルゴリズム及び寿命最長化アルゴリズムの利点が、それらの欠点を経験することなく累積される。
【0024】
前記遅延は、前記ノードの推定残余エネルギー容量の凸減少関数であることが好ましい。
【0025】
しかしながら、他のルーティングメトリックも、おそらくは本発明による方法で考慮しても良いことが分かる。例えば、中間ノードに関連付けるルーティングメトリックは、前記中間ノードで利用可能な帯域幅に依存しても良い。その結果、ルーティングアルゴリズムは、ネットワーク内の渋滞リスクを最小化する傾向がある。
【0026】
本発明の形態では、同一リクエストを先に受信していない中間ノードで、前記リクエストの受信に応答して、前記中間ノードは、前記中間ノードが保持するルーティングテーブル内に、前記リクエストと関連付けて、前記リクエストを受信したノードのアドレスを格納する。
【0027】
他の形態では、前記リクエストは、ネットワーク内でのノードアドレス鎖を有するルーティングフィールドを具備するとともに、同一リクエストを先に受信していない中間ノードで、前記リクエストの受信に応答して、段階/c/で前記リクエストを再同報通信する前に、前記アドレス鎖に前記中間ノードのアドレスを追加する。このルーティングテーブルは、次いでソースノードに格納する。
【0028】
本発明の他の形態は、遠隔通信ネットワークのノードを形成するトランシーバ基地局に関する。前記基地局は、
ネットワークの他ノードから来るリクエストを受信する手段と、
前記基地局に関連付けたルーティングメトリックの関数で遅延を決定する手段と、
同一リクエストを先に受信していない場合は、前記遅延をもってネットワーク上で前記リクエストを再同報通信する手段と、
を具備する。
【0029】
本発明はまた、遠隔通信ネットワークのノードのためのルーティング機器であり、
前記ノードに関連付けたルーティングメトリックの関数で遅延を決定する手段と、
同一のリクエストを先に受信していない場合に、前記遅延をもって、前記ネットワークの他ノードから受信したリクエストの前記ネットワーク上での再同報通信を指示する手段と、
を具備するルーティング機器を提案する。
【0030】
本発明のさらなる他の形態は、遠隔通信ネットワークのノードを形成するトランシーバ基地局内に、前記基地局内の処理ユニットで実行するためにインストールする、コンピュータプログラムに関する。前記プログラムは、前記処理ユニットで実行されるときに、
ネットワークの他ノードから来たリクエストを基地局が受信したときに、前記基地局で先に同一のリクエストが受信されたか否かを調べる動作と、
前記基地局に関連付けたルーティングメトリックの関数で決定された遅延を取得する
動作と、
もし前記基地局が先に前記同一のリクエストを受信していないならば、前記遅延をもってネットワーク上で前記リクエストの再同報通信を指示する動作と、
を実行する命令を具備する。
【0031】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を伴う本明細書での非限定的な代表的実施形態の説明で明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図2内に記載のトランシーバ基地局10は無線アドホックネットワークのノードを構成することを意図している。
【0033】
トランシーバ基地局10は、トランシーバ基地局10のアンテナ12に接続してあり、アドホックネットワークで実施する無線技術に従って物理層及びリンク層処理(OSIモデルの第1,2層)を実行する無線インターフェースモジュール11を具備する。モジュール11が使用可能なメディアアクセスコントロール(MAC)プロトコルは公知であるとともに、変形型(SMAC,TMAC,TRAMA,WiseMAC,BMAC等)であっても良い。通常、各メッセージ、またはパケット、またはフレームは、それを送信したノードのアドレスと、それが目標とするノードまたはノード群のアドレスを組み込んでいる。
【0034】
基地局10のモジュール13によって、ネットワーク層(OSIモデルの第3層)処理を実行する一方で、ノードのタイプに依存して、モジュール14によってアプリケーション層処理が実行される。基地局のタイプに依存して、モジュール14は、1つまたは複数のセンサー及び/または1つまたは複数のアクチュエーター(図示せず)と協働しても良い。モジュール14はまた、監督または管理機能を確保しても良い。
【0035】
基地局10の種々の回路は、バッテリーなどのソース15から電源供給を受ける。
【0036】
殆どの場合モジュール11,13,14内のディジタル処理は、基地局10の中央プロセッサが、適切なプログラムの制御下で実行する。本発明に従う、これらのプログラムの1つを、モジュール13で実行する。
【0037】
モジュール13は、特に、MACプロトコルで使用するアドレスをチェックすることによって、基地局10を通過するネットワークメッセージの転送16を保証する。転送機能16は、前記基地局に格納してあるルーティングテーブル17と協働する。基地局10がメッセージをルーティングする中間ノードとして動作するときは、転送機能16は、前記メッセージを転送する必要がある次のノードのアドレスを取得するためにルーティングテーブル17にアクセスする。通常、基地局10の近傍で、受信者を指定しないメッセージを同報通信するための同報通信アドレスが提供される。
【0038】
モジュール13は、ルーティングプロトコルのフレームワーク内部でリクエストメッセージ同報通信を解析するための機能18をさらに具備する。
【0039】
これらのリクエストメッセージをそのように特定し、それによって、前記メッセージを受信したときに解析機能18に前記メッセージを送信することを可能にする。ネットワークの宛先ノード(シンク)から発信された情報に対する各リクエストは、前記各リクエストと他のリクエストとを区別することと、また同一のリクエストを既に受信したか否かを各中間ノードのレベルで確認することとを可能にする識別子を具備する。
【0040】
本発明に従うと、もしルーティングプロトコルのフレームワーク内部で受信したリクエストを、基地局10によって再同報通信する必要があるならば、前記再同報通信は、モジュール13のユニット19によって、基地局10に関連付けたルーティングメトリックの関数で決定される遅延Δtをもって発生する。
【0041】
好ましい実施形態では、前記ルーティングメトリックは、前記基地局の残余エネルギー容量の関数である。バッテリー15内の残余エネルギーレベルの計量Eは、19の決定ユニットに構成するとともに、前記決定ユニットはルーティングリクエストを再同報通信するのに使用する遅延Δtをそこで導く。
【0042】
図3で示している実施例では、測定されたエネルギー水準Eは、Sをバッテリーの最大エネルギーの規定割合に対応する保護しきい値としたときに、E=0とE=Sとの間のm個の離散水準に変換される。前記実施例では、メトリックkは式(1)によって、その値を1とm+1との間に取る。
【0043】
【数1】

【0044】
ここで、
【0045】
【数2】

【0046】
は、等しいまたはxのすぐ上の整数を表す。
【0047】
エネルギー水準Eまたは前記エネルギー水準の量子化値kの関数である、使用される遅延Δtを与える関数fは、例えば、図4で示すような双曲線型の関数のような、凸減少関数であるのが好ましい。この凸性によって、少なくとも1つのノードがしきい値Sを下回るときに、種々の経路に亘った最低ノードの残余エネルギーの最大値をベースとして、複数の可能な経路から経路を選択する第1推定を確実に行う。
【0048】
実際には、ユニット19は通常遅延の明示的な計算は行わない。遅延値は、残余エネルギーレベルによって決まる方法で読み込まれるテーブル内に予め記録しておく。
【0049】
図5は、図2のリクエスト18を解析するための機能に対応するフローチャートである。示している動作は、時刻tでのルーティングリクエストの受信20に続いて起こる。
【0050】
最初に、識別子をリクエストから抽出するために、リクエストの受信処理を部分的にのみ実行する。もし、抽出された前記識別子が既に先に受信したリクエスト識別子、即ち既にルーティングテーブル17に存在するリクエスト識別子に対応するならば、受信リクエストの処理手順を中断する(段階22)。それ故、既に先に受信したリクエストに対して実行する処理動作は最小である。
【0051】
もし、検査21によって、受信リクエストが既に受信されたものでないことが示されたならば、前記リクエストの受信処理は完了である。前記リクエストがたった今送られてきたノードのアドレスを、ルーティングテーブル17内に、前記リクエストの識別子と関連付けて記録するために、段階23で前記リクエストから抽出する。このようにしてアドレスを記録した送信ノードは、辿ってきた経路上で、基地局10に先行する送信ノードであるとともに、従って、もし応答があるならば、応答を転送するために逆向きに前記経路を辿る。
【0052】
次いで、プログラムは、要求されたデータを提供することで基地局10が前記リクエストに応答することが可能かどうかを判定する。もし可能でないならば、基地局10は経路上の中間ノードとしてのみ動作するとともに、遅延Δt=f(k)を取得する段階25が検査24に続き、続いて、機能18が、時刻t+Δtに基地局10の近傍に前記リクエストを再同報通信するように指示する(段階26)。再同報通信26は、段階20で受信した前記リクエストに関連して実行した処理を停止する。
【0053】
もし、基地局10が宛先ノードを構成するならば(検査24の「no」)、次いで要求されたデータを提供するようにアプリケーションモジュール14に問い合わせる。このようにして構成した(段階27)応答メッセージを、段階23のルーティングテーブル17内に記録されているアドレスに転送する。
【0054】
応答メッセージは、前記応答メッセージが応答するリクエストの識別子を具備する。これによって、経路上の中間ノードが、シンクまで連なるノードに向かって転送を実行するために、それぞれのルーティングテーブルを引くことが可能になる。
【0055】
代替的な実施態様では、ネットワークの中間ノードはルーティングテーブルを具備しない。前記ルーティングテーブルは、ソースノードに格納しておく。ルーティングプロトコルリクエストメッセージは、その場合、採用すべき経路上で遭遇するノードにそれぞれが対応するアドレス鎖を具備することを意図するルーティングフィールドを有する。先ず、シンクが前記シンクのアドレスを前記フィールドに格納して、リクエストを送信する。中間ノードは、前記中間ノードが受信したリクエストの識別子を一時的に記憶する。リクエストメッセージの受信時に、中間ノードは、前記リクエストが、直近に受信したリクエストであるか否かを調べる。もしそうであるならば、前記リクエストの新規受信を無視する。もしそうでないならば、上記の方法で適用すべき遅延を決定し、次いで前記遅延を持って前記リクエストを再同報通信する。中間ノードは、完了したリクエストを再同報通信するために上述のフィールド内で発見したアドレス鎖に、前記中間ノードのアドレスを追加する。このようにして、前記リクエストがソースノードに到着したとき、前記ソースノードは、応答が辿る必要のある経路の連続するノードのアドレスを具備する。前記経路は前記ソースノードに格納しても良い。応答メッセージは、アドレス鎖を具備するフィールドを有し、これによって、中間ノードは、前記シンクまで応答メッセージを転送することが可能になる。
【0056】
上記の説明では、ルーティングメトリックは、実施例を利用して基地局の残余エネルギー容量の関数として例示的に示している。しかしながら、出願人は、本出願の範囲をこの特定の実施例に限定する意図はなく、任意のタイプのルーティングメトリックに本出願の範囲を拡張することを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明を適用可能であるアドホック無線ネットワークの図である。
【図2】図2は、本発明による代表的な送受信基地局の説明図である。
【図3】図3は、残余エネルギー水準を量子化するとともに、このメトリックの関数で送信遅延を計算する実施例を示している。
【図4】図4は、残余エネルギー水準を量子化するとともに、このメトリックの関数で送信遅延を計算する実施例を示している。
【図5】図5は、本発明の実施形態に従った、ネットワークの中間ノードで実行される処理動作のフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
10 トランシーバ基地局
11 第1,2層インターフェース
12 アンテナ
13 モジュール
14 アプリケーション処理モジュール
15 ソース
16 転送機能
17 ルーティングテーブル
18 リクエスト解析機能
19 遅延決定ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
/a/宛先ノード(A)からリクエストを同報通信する段階と、
/b/中間ノードでの前記リクエスト受信に対する応答で、前記中間ノードで先に同一のリクエストが受信されたか否かを調べる段階と、
/c/前記中間ノードで前記同一のリクエストを先に受信していない場合は、前記中間ノードに関連付けたルーティングメトリックの関数で決定する遅延(Δt)をもって、前記中間ノードから前記リクエストを計画的に再度同報通信する段階と、
/d/少なくとも一つのソースノードに到達するまで段階/b/,/c/を繰り返す段階と、
を特徴とする、通信ノードの組(A−E)を具備するネットワーク内で少なくとも1つのソースノードから宛先ノードまでの経路を確立するためのルーティング方法。
【請求項2】
中間ノードで決定する遅延(Δt)は、再同報通信すべき前記リクエストに依存しないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
中間ノードに関連付けられるルーティングメトリックは、前記中間ノードの推定残余エネルギー容量に依存することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記遅延(Δt)は、前記推定残余エネルギー容量の凸減少関数であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
中間ノードに関連付けられる前記ルーティングメトリックは、前記中間ノードで利用可能な帯域幅に依存することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
同一のリクエストを先に受信していない中間ノードで、前記リクエストの受信に応答して、前記中間ノードが前記リクエストを受信したノードのアドレスを、前記中間ノードが具備するルーティングテーブル(17)内に、前記リクエストと関連付けて格納することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記リクエストは、ネットワークのノードアドレス鎖を有するルーティングフィールドを具備し、同一のリクエストを先に受信していない中間ノードで前記リクエストの受信に応答して、段階/c/で前記リクエストを再同報通信する前に前記フィールドの前記ノードアドレス鎖に前記中間ノードのアドレスを追加することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ネットワークは、無線アドホックネットワークであることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
遠隔通信ネットワークのノードを構成するための基地局(10)であり、
前記ネットワークの他ノードから来るリクエストを受信する手段(11)と、
前記基地局に関連付けたルーティングメトリックの関数で遅延(Δt)を決定する手段(19)と、
同一のリクエストを先に受信していない場合は、前記遅延をもって、ネットワーク上で前記リクエストを計画的に再度同報通信する手段(16,18)と、
を具備することを特徴とするトランシーバ基地局。
【請求項10】
決定される前記遅延(Δt)は、再同報通信すべき前記リクエストに依存しないことを特徴とする請求項9に記載のトランシーバ基地局。
【請求項11】
ルーティングメトリックは、前記基地局の推定残余エネルギー容量に依存することを特徴とする請求項9または10に記載のトランシーバ基地局。
【請求項12】
前記遅延(Δt)は、前記推定残余エネルギー容量の凸減少関数であることを特徴とする請求項11に記載のトランシーバ基地局。
【請求項13】
ルーティングテーブル(17)と、
同一のリクエストを先に受信していない場合に、受信したリクエストと関連させて、前記リクエストが来た他ノードのアドレスを、前記ルーティングテーブル内に格納する手段(18)とを具備することを特徴とする請求項9〜12の何れか1項に記載のトランシーバ基地局。
【請求項14】
前記リクエストは、前記ネットワークのノードアドレス鎖を格納するためのルーティングフィールドを具備し、
前記遅延をもって前記リクエストを再同報通信する前に、前記基地局が構成するノードのアドレスを前記アドレス鎖に追加する手段をさらに具備することを特徴とする、請求項9〜12の何れか1項に記載のトランシーバ基地局。
【請求項15】
遠隔通信ネットワークのノードのためのルーティング機器であり、
前記ノードに関連付けたルーティングメトリックの関数で遅延(Δt)を決定する手段(19)と、
同一のリクエストを先に受信していない場合に、前記遅延をもって、前記ネットワークの他ノードから受信したリクエストの前記ネットワーク上での再同報通信を計画的に指示する手段(18)と、
を具備することを特徴とするルーティング機器。
【請求項16】
遠隔通信ネットワークのノードを構成するトランシーバ基地局(10)にインストールされ、前記基地局の処理ユニットで実行するためのコンピュータプログラムであり、
前記処理ユニットで前記プログラムが実行されると、
前記ネットワークの他ノードから来るリクエストの基地局での受信時に、前記基地局が同一のリクエストを先に受信したか否かを調べる動作と、
前記基地局に関連付けたルーティングメトリックの関数で決定する遅延(Δt)を取得する動作と、
もし前記基地局が前記同一のリクエストを先に受信していないならば、前記遅延をもって前記ネットワーク上で前記リクエストを再同報通信することを計画的に指示する動作と、
を実行するための命令を具備することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項17】
決定される前記遅延(Δt)は、再同報通信すべき前記リクエストに依存しないことを特徴とする請求項16に記載のコンピュータプログラム。
【請求項18】
前記ルーティングメトリックは、前記基地局の推定残余エネルギー容量に依存することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記遅延(Δt)は、前記推定残余エネルギー容量の凸減少関数であることを特徴とする請求項18に記載のコンピュータプログラム。
【請求項20】
前記基地局が同一のリクエストを先に受信していないならば、受信したリクエストと関連させて、前記リクエストが来た他ノードのアドレスを、前記ルーティングテーブル(17)内に格納する命令をさらに具備することを特徴とする請求項16〜19の何れか1項に記載のコンピュータプログラム。
【請求項21】
前記リクエストは、前記ネットワークのノードアドレス鎖を格納するためのルーティングフィールドを具備し、
前記プログラムは、前記遅延をもって前記リクエストの再同報通信を指示する前に、前記基地局が構成するノードのアドレスを前記アドレス鎖に追加する命令をさらに具備することを特徴とする、請求項16〜19の何れか1項に記載のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−539630(P2008−539630A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508257(P2008−508257)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000913
【国際公開番号】WO2006/114511
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(591034154)フランス テレコム (290)
【Fターム(参考)】