説明

ルート探索装置、ルート探索システム、ルート情報提供装置、車載器、ルート探索方法及び、プログラム

【課題】ユーザの嗜好が影響し得る様々なルート要因のうち、ユーザにとって優先されるべきルート要因を高精度かつ自動的に特定することにより、ユーザの嗜好を反映させたルート探索を実行することが可能なルート探索装置を得る。
【解決手段】ルート探索装置は、目的地までの推奨ルートを探索する探索処理部30と、探索処理部30による探索においてルートを評価するための複数のパラメータを用いた演算を行うコスト演算処理部34と、車両の搭乗者の生体反応を検出する検出部28と、生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性を推定する推定処理部31と、コスト演算処理部34による演算における各パラメータの寄与度合いを、推定処理部31による推定の結果に基づいて調整するコスト修飾処理部33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地までの推奨ルートを探索するルート探索装置、ルート探索システム、ルート情報提供装置、車載器、ルート探索方法及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記非特許文献1には、ドライバの嗜好を考慮してルート探索を行う機能(ルートアドバイザ機能)を有するカーナビゲーションシステムが開示されている。
【0003】
【非特許文献1】“carrozzeria HDD サイバーナビ 機能紹介 検索/ルート/誘導”、[online]、[平成20年10月21日検索]、インターネット<URL:http://pioneer.jp/carrozzeria/cybernavi/04hdd-cybernavi/function/search/route.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ルート探索においてドライバの嗜好が影響し得る要因(ルート要因)としては、時間、距離、右左折の回数、道幅、料金、又は信号機の数等、様々な要因が考えられる。ドライバの嗜好を反映させたルート探索を行うためには、様々なルート要因のうち、ドライバが真に優先するルート要因を高精度に特定することが重要である。また、ユーザの作業負担を軽減する観点から、ユーザ自らが設定作業を行うことなく、ユーザの嗜好を自動的に特定できれば望ましい。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、ユーザの嗜好が影響し得る様々なルート要因のうち、ユーザにとって優先されるべきルート要因を高精度かつ自動的に特定することにより、ユーザの嗜好を反映させたルート探索を実行することが可能な、ルート探索装置、ルート探索システム、ルート情報提供装置、車載器、ルート探索方法及び、プログラムを得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係るルート探索装置は、目的地までの推奨ルートを探索する探索手段と、前記探索手段による探索においてルートを評価するための複数のパラメータを用いた演算を行う演算手段と、車両の搭乗者の生体反応を検出する検出手段と、前記生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性を推定する推定手段と、前記演算手段による演算における各前記パラメータの寄与度合いを、前記推定手段による推定の結果に基づいて調整する調整手段とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
第1の態様に係るルート探索装置によれば、推定手段は、検出手段によって検出された搭乗者の生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性(嗜好)を推定する。また、調整手段は、演算手段による演算における各パラメータの寄与度合いを、推定手段による推定の結果に基づいて調整する。そのため、探索手段は、調整手段によって寄与度合いが調整されたパラメータに基づいて、目的地までの推奨ルートを探索することができる。従って、ルート探索においてユーザの嗜好が影響し得る様々なルート要因のうち、ユーザにとって優先されるべきルート要因を高精度に特定することができ、その結果、ユーザの嗜好を反映させたルート探索を実行することが可能となる。しかも、推定手段は、搭乗者による嗜好の設定作業を要することなく搭乗者の嗜好を自動的に推定するため、設定作業に伴う搭乗者の負担を回避することができる。
【0008】
本発明の第2の態様に係るルート探索装置は、第1の態様に係るルート探索装置において特に、前記推定手段は、前記生体反応に関する情報と、車両の運転状況に関する情報とに基づいて、その運転状況に関する搭乗者の運転特性を推定することを特徴とするものである。
【0009】
第2の態様に係るルート探索装置によれば、推定手段によって、運転状況ごとの搭乗者の嗜好を推定することができる。
【0010】
従って、例えば、搭乗者が信号待ちを好まないことを推定手段が推定した場合、信号機の数に関するコストを増加させることにより、次回以降のルート探索においては、信号機の数が少ないルートが優先的に推奨ルートとして選択されやすくなる。その結果、信号待ちを好まない搭乗者にとって好ましい推奨ルートを提供することが可能となる。
【0011】
また、例えば、搭乗者が右折を好まないことを推定手段が推定した場合、右折回数に関するコストを増加させることにより、次回以降のルート探索においては、右折回数が少ないルートが優先的に推奨ルートとして選択されやすくなる。その結果、右折を好まない搭乗者にとって好ましい推奨ルートを提供することが可能となる。
【0012】
また、例えば、搭乗者が渋滞を好まないことを推定手段が推定した場合、渋滞度に関するコストを増加させることにより、次回以降のルート探索においては、渋滞が少ないルートが優先的に推奨ルートとして選択されやすくなる。その結果、渋滞を好まない搭乗者にとって好ましい推奨ルートを提供することが可能となる。
【0013】
また、例えば、搭乗者が踏切の横断を好まないことを推定手段が推定した場合、踏切の数に関するコストを増加させることにより、次回以降のルート探索においては、踏切の数が少ないルートが優先的に推奨ルートとして選択されやすくなる。その結果、踏切の横断を好まない搭乗者にとって好ましい推奨ルートを提供することが可能となる。
【0014】
また、例えば、搭乗者が道幅が狭い道路の走行を好まないことを推定手段が推定した場合、道幅に関するコストを増加させることにより、次回以降のルート探索においては、道幅の広いルートが優先的に推奨ルートとして選択されやすくなる。その結果、道幅の狭い道路の走行を好まない搭乗者にとって好ましい推奨ルートを提供することが可能となる。
【0015】
また、例えば、搭乗者が高速道路の走行を好まないことを推定手段が推定した場合、高速道路に関するコストを増加させることにより、次回以降のルート探索においては、一般道が優先的に推奨ルートとして選択されやすくなる。その結果、高速道路の走行を好まない搭乗者にとって好ましい推奨ルートを提供することが可能となる。
【0016】
また、例えば、搭乗者が山道の走行を好まないことを推定手段が推定した場合、山道に関するコストを増加させることにより、次回以降のルート探索においては、山道以外の道路が優先的に推奨ルートとして選択されやすくなる。その結果、山道の走行を好まない搭乗者にとって好ましい推奨ルートを提供することが可能となる。
【0017】
本発明の第3の態様に係るルート探索装置は、第1又は第2の態様に係るルート探索装置において特に、前記検出手段は、車両の運転者及び同乗者の生体反応をそれぞれ検出し、前記推定手段は、運転者及び同乗者の生体反応に基づく搭乗者の運転特性の推定において、運転者の生体反応よりも同乗者の生体反応を優先させることを特徴とするものである。
【0018】
第3の態様に係るルート探索装置によれば、検出手段は、車両の運転者及び同乗者の生体反応をそれぞれ検出し、推定手段は、運転者及び同乗者の生体反応に基づく搭乗者の運転特性の推定において、運転者の生体反応よりも同乗者の生体反応を優先させる。従って、運転者よりも同乗者の嗜好を優先させた推奨ルートの探索を行うことが可能となる。
【0019】
本発明の第4の態様に係るルート探索装置は、第1〜第3のいずれか一つの態様に係るルート探索装置において特に、前記検出手段は、搭乗者の心拍数を検出する心拍センサ、搭乗者の血圧を検出する血圧センサ、搭乗者の発汗量を検出する発汗センサ、搭乗者の身体の温度を検出する温度センサ、及び搭乗者の顔を撮影するカメラのうちの少なくとも一つを有することを特徴とするものである。
【0020】
第4の態様に係るルート探索装置によれば、心拍センサによって搭乗者の心拍数の変化を検出することにより、又は血圧センサによって搭乗者の血圧の変化を検出することにより、又は発汗センサによって搭乗者の発汗量の変化を検出することにより、又は温度センサによって搭乗者の身体の温度の変化を検出することにより、又はカメラ撮影によって搭乗者の表情の変化を検出することにより、搭乗者の生体反応の変化を簡易かつ高精度に検出することが可能となる。
【0021】
本発明の第5の態様に係るルート探索装置は、第1〜第4のいずれか一つの態様に係るルート探索装置において特に、時間帯、曜日、及び天候のうちの少なくとも一つに関する情報に基づいて、前記寄与度合いの調整値を可変に設定する設定手段をさらに備えることを特徴とするものである。
【0022】
第5の態様に係るルート探索装置によれば、設定手段は、時間帯、曜日、及び天候のうちの少なくとも一つに関する情報に基づいて、寄与度合いの調整値を可変に設定する。これにより、時間帯、曜日、又は天候を考慮したルート探索を実行することが可能となる。例えば、同じ道路であっても、道幅が狭いために夜間又は雨天時の走行においては選択されにくくしたり、休日は渋滞しやすいために休日の走行においては選択されにくくするといったルート探索が可能となる。
【0023】
本発明の第6の態様に係るルート探索システムは、相互に無線通信が可能な車載器とルート情報提供装置とを備えるルート探索システムであって、前記車載器は、車両の搭乗者の生体反応を検出する検出手段を備え、前記ルート情報提供装置は、目的地までの推奨ルートを探索する探索手段と、前記探索手段による探索においてルートを評価するための複数のパラメータを用いた演算を行う演算手段と、前記生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性を推定する推定手段と、前記演算手段による演算における各前記パラメータの寄与度合いを、前記推定手段による推定の結果に基づいて調整する調整手段とを備えることを特徴とするものである。
【0024】
第6の態様に係るルート探索システムによれば、推定手段は、検出手段によって検出された搭乗者の生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性(嗜好)を推定する。また、調整手段は、演算手段による演算における各パラメータの寄与度合いを、推定手段による推定の結果に基づいて調整する。そのため、探索手段は、調整手段によって寄与度合いが調整されたパラメータに基づいて、目的地までの推奨ルートを探索することができる。従って、ルート探索においてユーザの嗜好が影響し得る様々なルート要因のうち、ユーザにとって優先されるべきルート要因を高精度に特定することができ、その結果、ユーザの嗜好を反映させたルート探索を実行することが可能となる。しかも、推定手段は、搭乗者による嗜好の設定作業を要することなく搭乗者の嗜好を自動的に推定するため、設定作業に伴う搭乗者の負担を回避することができる。
【0025】
本発明の第7の態様に係るルート探索システムは、相互に無線通信が可能な車載器とルート情報提供装置とを備えるルート探索システムであって、前記車載器は、車両の搭乗者の生体反応を検出する検出手段と、目的地までの推奨ルートを探索する探索手段と、前記探索手段による探索においてルートを評価するための複数のパラメータを用いた演算を行う演算手段とを備え、前記ルート情報提供装置は、前記生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性を推定する推定手段と、前記演算手段による演算における各前記パラメータの寄与度合いを、前記推定手段による推定の結果に基づいて調整する調整手段とを備え、前記車載器は、前記寄与度合いの調整値に関する情報を、前記ルート情報提供装置から受信することを特徴とするものである。
【0026】
第7の態様に係るルート探索装置によれば、推定手段は、検出手段によって検出された搭乗者の生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性(嗜好)を推定する。また、調整手段は、演算手段による演算における各パラメータの寄与度合いを、推定手段による推定の結果に基づいて調整する。そのため、探索手段は、調整手段によって寄与度合いが調整されたパラメータに基づいて、目的地までの推奨ルートを探索することができる。従って、ルート探索においてユーザの嗜好が影響し得る様々なルート要因のうち、ユーザにとって優先されるべきルート要因を高精度に特定することができ、その結果、ユーザの嗜好を反映させたルート探索を実行することが可能となる。しかも、推定手段は、搭乗者による嗜好の設定作業を要することなく搭乗者の嗜好を自動的に推定するため、設定作業に伴う搭乗者の負担を回避することができる。さらに、ルート情報提供装置から車載器には、推奨ルートのルート情報そのものではなく、寄与度合いの調整値に関する情報が送信される。従って、ルート情報提供装置と車載器との間での通信データ量を低減でき、その結果、通信コストの削減を図ることが可能となる。
【0027】
本発明の第8の態様に係るルート探索システムは、第7の態様に係るルート探索システムにおいて特に、前記ルート情報提供装置は、複数の車載器から受信した生体反応に関する複数の情報を統計処理することにより、ユーザの属性別に運転特性の傾向を解析し、各ユーザに対して、各ユーザの属性に適合した前記寄与度合いの調整値に関する情報を提供することを特徴とするものである。
【0028】
第8の態様に係るルート探索システムによれば、ルート情報提供装置は、複数の車載器から受信した生体反応に関する複数の情報を統計処理することにより、性別、年齢、又は運転歴等のユーザの属性別に、運転特性の傾向を解析する。そして、各ユーザに対して、各ユーザの属性に適合した寄与度合いの調整値に関する情報を提供する。従って、新規のユーザや、検出手段が搭載されていない車両のユーザ等に対しても、そのユーザと属性が同一又は類似する複数のユーザに関する運転特性の傾向を参照することにより、そのユーザの属性に応じた寄与度合いの調整値に関する情報を提供することが可能となる。
【0029】
本発明の第9の態様に係るルート情報提供装置は、車載器との間で無線通信が可能なルート情報提供装置であって、前記車載器は、車両の搭乗者の生体反応を検出する検出手段を有し、前記ルート情報提供装置は、目的地までの推奨ルートを探索する探索手段と、前記探索手段による探索においてルートを評価するための複数のパラメータを用いた演算を行う演算手段と、前記生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性を推定する推定手段と、前記演算手段による演算における各前記パラメータの寄与度合いを、前記推定手段による推定の結果に基づいて調整する調整手段とを備えることを特徴とするものである。
【0030】
第9の態様に係るルート情報提供装置によれば、推定手段は、検出手段によって検出された搭乗者の生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性(嗜好)を推定する。また、調整手段は、演算手段による演算における各パラメータの寄与度合いを、推定手段による推定の結果に基づいて調整する。そのため、探索手段は、調整手段によって寄与度合いが調整されたパラメータに基づいて、目的地までの推奨ルートを探索することができる。従って、ルート探索においてユーザの嗜好が影響し得る様々なルート要因のうち、ユーザにとって優先されるべきルート要因を高精度に特定することができ、その結果、ユーザの嗜好を反映させたルート探索を実行することが可能となる。しかも、推定手段は、搭乗者による嗜好の設定作業を要することなく搭乗者の嗜好を自動的に推定するため、設定作業に伴う搭乗者の負担を回避することができる。
【0031】
本発明の第10の態様に係るルート情報提供装置は、第9の態様に係るルート情報提供装置において特に、前記ルート情報提供装置は、複数の車載器から受信した生体反応に関する複数の情報を統計処理することにより、ユーザの属性別に運転特性の傾向を解析し、各ユーザに対して、各ユーザの属性に適合した推奨ルートを探索して、その推奨ルートに関する情報を提供することを特徴とするものである。
【0032】
第10の態様に係るルート情報提供装置によれば、ルート情報提供装置は、複数の車載器から受信した生体反応に関する複数の情報を統計処理することにより、性別、年齢、又は運転歴等のユーザの属性別に、運転特性の傾向を解析する。そして、各ユーザに対して、各ユーザの属性に適合した推奨ルートを探索して、その推奨ルートに関する情報を提供する。従って、新規のユーザや、検出手段が搭載されていない車両のユーザ等に対しても、そのユーザと属性が同一又は類似する複数のユーザに関する嗜好の傾向を参照することにより、そのユーザの属性に応じた最適な推奨ルートを提供することが可能となる。
【0033】
本発明の第11の態様に係る車載器は、目的地までの推奨ルートを探索する探索手段と、前記探索手段による探索においてルートを評価するための複数のパラメータを用いた演算を行う演算手段と、車両の搭乗者の生体反応を検出する検出手段と、前記生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性を推定する推定手段と、前記演算手段による演算における各前記パラメータの寄与度合いを、前記推定手段による推定の結果に基づいて調整する調整手段とを備えることを特徴とするものである。
【0034】
第11の態様に係る車載器によれば、推定手段は、検出手段によって検出された搭乗者の生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性(嗜好)を推定する。また、調整手段は、演算手段による演算における各パラメータの寄与度合いを、推定手段による推定の結果に基づいて調整する。そのため、探索手段は、調整手段によって寄与度合いが調整されたパラメータに基づいて、目的地までの推奨ルートを探索することができる。従って、ルート探索においてユーザの嗜好が影響し得る様々なルート要因のうち、ユーザにとって優先されるべきルート要因を高精度に特定することができ、その結果、ユーザの嗜好を反映させたルート探索を実行することが可能となる。しかも、推定手段は、搭乗者による嗜好の設定作業を要することなく搭乗者の嗜好を自動的に推定するため、設定作業に伴う搭乗者の負担を回避することができる。
【0035】
本発明の第12の態様に係るルート探索方法は、(A)目的地までの推奨ルートを探索するステップと、(B)前記ステップ(A)の探索においてルートを評価するための複数のパラメータを用いた演算を行うステップと、(C)車両の搭乗者の生体反応を検出するステップと、(D)前記生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性を推定するステップと、(E)前記ステップ(B)の演算における各前記パラメータの寄与度合いを、前記ステップ(D)の推定の結果に基づいて調整するステップとを備えることを特徴とするものである。
【0036】
第12の態様に係るルート探索方法によれば、ステップ(D)においては、ステップ(C)で検出された搭乗者の生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性(嗜好)が推定される。また、ステップ(E)においては、ステップ(B)の演算における各パラメータの寄与度合いが、ステップ(D)の推定の結果に基づいて調整される。そのため、ステップ(A)においては、ステップ(E)で寄与度合いが調整されたパラメータに基づいて、目的地までの推奨ルートを探索することができる。従って、ルート探索においてユーザの嗜好が影響し得る様々なルート要因のうち、ユーザにとって優先されるべきルート要因を高精度に特定することができ、その結果、ユーザの嗜好を反映させたルート探索を実行することが可能となる。しかも、ステップ(D)においては、搭乗者による嗜好の設定作業を要することなく搭乗者の嗜好が自動的に推定されるため、設定作業に伴う搭乗者の負担を回避することができる。
【0037】
本発明の第13の態様に係るプログラムは、コンピュータを、目的地までの推奨ルートを探索する探索手段と、前記探索手段による探索においてルートを評価するための複数のパラメータを用いた演算を行う演算手段と、車両の搭乗者の生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性を推定する推定手段と、前記演算手段による演算における各前記パラメータの寄与度合いを、前記推定手段による推定の結果に基づいて調整する調整手段ととして機能させることを特徴とするものである。
【0038】
第13の態様に係るプログラムによれば、コンピュータを、探索手段、演算手段、推定手段、及び調整手段として機能させることができる。推定手段は、検出手段によって検出された搭乗者の生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性(嗜好)を推定する。また、調整手段は、演算手段による演算における各パラメータの寄与度合いを、推定手段による推定の結果に基づいて調整する。そのため、探索手段は、調整手段によって寄与度合いが調整されたパラメータに基づいて、目的地までの推奨ルートを探索することができる。従って、ルート探索においてユーザの嗜好が影響し得る様々なルート要因のうち、ユーザにとって優先されるべきルート要因を高精度に特定することができ、その結果、ユーザの嗜好を反映させたルート探索を実行することが可能となる。しかも、推定手段は、搭乗者による嗜好の設定作業を要することなく搭乗者の嗜好を自動的に推定するため、設定作業に伴う搭乗者の負担を回避することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、ユーザの嗜好が影響し得る様々なルート要因のうち、ユーザにとって優先されるべきルート要因を高精度かつ自動的に特定することができるため、ユーザの嗜好を反映させたルート探索を実行することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0041】
図1は、本発明の実施の形態に係るルート探索システムの全体構成を概略的に示す図である。ルート探索システムは、車両1、基地局4、及びセンタ装置5(ルート情報提供装置)を含んで構成されている。車両1と基地局4との間では、無線による相互通信が可能である。また、基地局4とセンタ装置5との間では、通信回線6を介して、有線による相互通信が可能である。但し、基地局4とセンタ装置5との間の通信も無線であっても良い。
【0042】
車両1には車載器2が搭載されており、車載器2には携帯電話3を接続することが可能である。車載器2は、携帯電話3及び基地局4を介して、センタ装置5にデータを送信することが可能である。また、車載器2は、センタ装置5から送信されたデータを、基地局4及び携帯電話3を介して受信することが可能である。
【0043】
図2は、センタ装置5の構成を概略的に示す図である。センタ装置5は、送受信部10、演算部11、記憶媒体12、及び記憶部13を備えて構成されている。送受信部10は、基地局4と演算部11との間でのデータの送受信を制御する。演算部11は、コンピュータによって構成されている。記憶媒体12は、ハードディスク、DVD又は半導体メモリ等の任意のコンピュータ読取可能な記憶媒体であり、演算部11を動作させるためのプログラム14が記憶されている。記憶部13は、ハードディスク又はDVD等の任意の記憶媒体を有しており、地図データ及びリンクデータ等が格納されている。
【0044】
図3は、演算部11の機能構成を概略的に示す図である。演算部11がプログラム14に基づいて動作することにより、演算部11は、探索処理部30、推定処理部31、設定処理部32、コスト修飾処理部33(調整手段)、及びコスト演算処理部34として機能する。換言すれば、プログラム14は、演算部11を、探索処理部30、推定処理部31、設定処理部32、コスト修飾処理部33、及びコスト演算処理部34として機能させるためのプログラムである。各処理部の機能の詳細については後述する。
【0045】
図4は、車載器2の構成を概略的に示す図である。車載器2は、送受信部20、演算部21、記憶媒体22、記憶部23、位置情報取得部24、入力部25、表示部26、及び検出部28を備えて構成されている。送受信部10は、携帯電話3と演算部21との間でのデータの送受信を制御する。演算部21は、コンピュータによって構成されている。記憶媒体22は、ハードディスク、DVD又は半導体メモリ等の任意のコンピュータ読取可能な記憶媒体であり、演算部21を動作させるためのプログラム27が記憶されている。記憶部23は、ハードディスク又はDVD等の任意の記憶媒体を有しており、地図データ及びリンクデータ等が格納されている。位置情報取得部24は、GPS(Global Positioning System)情報の受信機等を有して構成されており、車両1の現在地情報を取得する。入力部25及び表示部26は、例えばタッチパネル機能付きの液晶表示装置として構成されている。入力部25は、音声入力機能を有していても良い。
【0046】
検出部28は、車両1の搭乗者の生体反応を検出することにより、搭乗者の生体反応に関する情報(生体情報)を取得するための機器である。検出部28は、ドライバの心拍数を検出する心拍センサ、ドライバの血圧を検出する血圧センサ、ドライバの発汗量を検出する発汗センサ、ドライバの身体の温度を検出する温度センサ、及び、ドライバの顔を撮影するカメラのうちの少なくとも一つを有している。
【0047】
心拍センサは、例えば、ステアリングの所定の箇所に配置された電極によって、ドライバの指又は掌から心拍信号を取得することにより、ドライバの心拍数を検出する。血圧センサは、例えば、ステアリングの所定の箇所に配置された赤外線センサによって、ドライバの指先における血流量の変化を検出することにより、ドライバの血圧を検出する。発汗センサは、例えば、ステアリングの所定の箇所に配置された電極によって、ドライバの指又は掌における発汗量を電流値として検出することにより、ドライバの発汗量を検出する。温度センサは、例えば、ステアリングの所定の箇所に配置されており、ドライバの指又は掌の温度を検出する。あるいは、サーモグラフィ装置を用いて、ドライバの顔又は身体から放射されている赤外線の強度に基づいて、ドライバの体温を検出することもできる。カメラは、ドライバの斜め前方に配置されており、ドライバの顔の表情(眼球又は瞳孔の動きや、顔面の皺の様子等)を撮影する。
【0048】
なお、心拍センサ、血圧センサ、発汗センサ、又は温度センサは、運転席のシートに配置しても良い。また、ドライバの生体反応の変化を正確に捉えるべく、上記の複数のセンサやカメラを組み合わせて備えることが望ましい。また、運転席だけでなく、助手席や後部座席にも同様の検出部28を備えることにより、搭乗者全員(又は一部)の生体反応を検出しても良い。
【0049】
図5は、演算部21の機能構成を概略的に示す図である。演算部21がプログラム27に基づいて動作することにより、演算部21は、個人特定処理部40及び生体情報処理部41として機能する。換言すれば、プログラム27は、演算部21を、個人特定処理部40及び生体情報処理部41として機能させるためのプログラムである。各処理部の機能の詳細については後述する。
【0050】
図6,7は、本実施の形態に係るルート探索システムの動作を示すフローチャートである。以下、図1〜7を参照しつつ、本実施の形態に係るルート探索システムの動作について説明する。
【0051】
まずステップSP01において、個人特定処理部40は、車両1のドライバを特定する。記憶部23には、その車両1のドライバとなり得る複数人の情報(例えば家族の生年月日)が予め登録されており、個人特定処理部40は、ドライバが入力部25から入力した情報(例えば自身の生年月日)に基づいて、そのドライバを特定することができる。あるいは、車両1内にカメラ又は指紋センサ等を設置し、顔認証又は指紋認証等によってドライバを特定しても良い。ドライバの特定に関する情報(例えばドライバのID及び車載器2のID)は、車載器2からセンタ装置5に送信される。なお、センタ装置5においては、そのドライバの性別、年齢、運転歴等の属性に関する情報が、ドライバのID及び車載器2のIDに対応付けて、予め記憶部13に登録されている。
【0052】
次にステップSP02において、ドライバが入力部25から入力した電話番号等の情報に基づいて、車両1がこれから向かう目的地が設定される。車両1の目的地に関する情報は、車載器2からセンタ装置5に送信される。また、位置情報取得部24によって取得された車両1の現在地に関する情報も、車載器2からセンタ装置5に送信される。
【0053】
次にステップSP03において、探索処理部30は、コスト演算によって、車両1の現在地から目的地までの推奨ルートを探索する。推奨ルートに関するルート情報は、センタ装置5から車載器2に送信され、車両1のドライバに提供される。ここで、探索処理部30は、記憶部13に登録されているそのドライバに関するルート要因パラメータ(詳細は後述する)に基づいて、そのドライバの運転特性(その運転状況についてのそのドライバの好き嫌い。つまり運転状況に関する嗜好)を反映させた推奨ルートを探索する。
【0054】
また、そのドライバに関するルート要因パラメータが記憶部13に登録されていない場合であっても、記憶部13には、複数のユーザに関する複数の嗜好推定情報(詳細は後述する)が登録されている。これらの嗜好推定情報は、各ユーザの性別、年齢、運転歴等の属性に関連付けられて、記憶部13に登録されている。演算部11は、記憶部13に登録されている複数の嗜好推定情報を統計的に処理することによって、ユーザの属性別に嗜好の傾向を解析する。例えば、運転歴の浅い女性は同条件の男性に比べて道幅の狭いルートを嫌う傾向にあることや、年配者は若年層に比べて短距離よりも短時間を優先する傾向にあること等を、統計処理によって把握することができる。従って、探索処理部30は、この統計処理の結果を有効活用することにより、過去の嗜好推定情報が記憶部13に登録されていないドライバ(新規のユーザや、検出部28が搭載されていない車両のユーザ等)に対しても、そのドライバの属性に適合した推奨ルートを探索することができる。推奨ルートの探索処理をセンタ装置5で行う場合には、そのドライバの属性に適合した推奨ルートに関する情報が、センタ装置5から車載器2に送信される。
【0055】
なお、少なくとも探索処理部30及びコスト演算処理部34(図3参照)と同様の処理部を車載器2に搭載することにより、推奨ルートの探索処理を車載器2で行うことも可能である。この場合には、そのドライバの属性に適合したルート要因パラメータのコストの調整値に関する情報が、センタ装置5から車載器2に送信される。そして、車載器2のコスト演算処理部34は、センタ装置5から受信したルート要因パラメータの調整値に基づいて各ルート要因パラメータのコストを調整する。また、車載器2の探索処理部30は、コスト調整後のルート要因パラメータを用いた総コストの演算によって、推奨ルートの探索を行う。この場合は、推奨ルートのルート情報自体をセンタ装置5から車載器2に送信する必要がないため、センタ装置5と車載器2との間での通信データ量を低減でき、その結果、通信コストの削減を図ることが可能となる。
【0056】
また、設定処理部32は、時間帯、曜日、及び天候のうちの少なくとも一つに関する情報に基づいて、ルート要因パラメータのコストを可変に設定することができる。例えば、走行の時間帯が夜間である場合には、昼間の場合よりも道幅に関するコストを増加させ、また、天候が雨又は雪である場合には、晴れの場合よりも道幅に関するコストを増加させる。また、例えば、行楽地の周辺等の休日に渋滞しやすいルートに関しては、渋滞度に関するコストを平日よりも休日に増加させ、逆に、オフィス街等の休日に交通量が減少するルートに関しては、渋滞度に関するコストを平日よりも休日に減少させる。なお、センタ装置5は、車両1のワイパの動作状況に関する情報を車載器2から受信することによって、又は、車両1の現在地周辺の気象情報をインターネットを通じて入手することによって、天候を判断することが可能である。
【0057】
次にステップSP04において、車両1の走行が開始される。
【0058】
次にステップSP05において、検出部28は、ドライバの生体反応を検出する。検出部28によって取得された生体情報は、生体情報処理部41に送られる。
【0059】
次にステップSP06において、生体情報処理部41は、ドライバの生体反応に変化があるか否かを判定する。生体情報処理部41は、検出部28から継続的に送られてくる生体情報を常に監視しており、生体情報の値(例えば心拍数)が、予め定められた所定レベル以上変動すると、ドライバの生体反応に変化があったと判定する。検出部28がカメラである場合は、焦り、苛立ち、又は嫌悪感等を示す表情のテンプレート画像を予め準備しておき、カメラによって撮影されたドライバの表情がテンプレート画像にマッチングした場合に、ドライバの生体反応に変化があったと判定する。
【0060】
ここで、運転席だけでなく助手席や後部座席にも検出部28が備えられている場合には、生体情報処理部41は、各搭乗者の生体反応に変化があるか否かを個別に検出することができる。その際、ドライバの生体反応の変化の検出よりも、ドライバ以外の同乗者の生体反応の変化の検出を優先させることも可能である。例えば、変化の有無を判定するための上記所定レベルを、ドライバのそれに比して同乗者のそれを低く設定する。これにより、同乗者の生体反応の変化を、ドライバの生体反応の変化よりも優先的に検出することができる。この場合には、ドライバよりも同乗者の嗜好を優先させた推奨ルートの探索を行うことが可能となる。
【0061】
ドライバの生体反応に変化がない場合(つまりステップSP06の判定結果が「NO」である場合)は、ステップSP05,SP06の処理が繰り返される。
【0062】
ドライバの生体反応に変化があった場合(つまりステップSP06の判定結果が「YES」である場合)は、その旨の情報が、車載器2からセンタ装置5にリアルタイムで送信される。その際、位置情報取得部24によって取得された車両1の現在地に関する情報も、車載器2からセンタ装置5に併せて送信される。
【0063】
なお、生体情報処理部41は、生体情報の値が所定レベル以上変動している状況が、予め定めた所定時間以上継続している場合に、ドライバの生体反応に変化があったと判定しても良い。また、生体情報処理部41は、生体情報の値が所定レベル以上変動した回数が、単位走行時間内又は単位走行距離内において、予め定めた所定回数以上である場合に、ドライバの生体反応に変化があったと判定しても良い。これにより、ドライバの生体反応が偶発的かつ瞬間的に変化する度に、生体情報処理部41によってドライバの生体反応に変化があると判定されることを回避できる。
【0064】
推定処理部31は、車載器2から受信した車両1の現在地情報と、記憶部13に記憶されている地図データとに基づいて、車両1の運転状況を解析する。具体的には、車両1が高速道路上を走行しているのか、山道を走行しているのか、所定値より道幅が狭い道路を走行しているのか、停止信号のために交差点の手前で停車しているのか(発車後に直進した場合)、右折のために交差点内又は交差点の手前で停車しているのか(発車後に右折した場合)、踏切の手前で停車しているのか、渋滞に巻き込まれているのか、等の運転状況を解析する。
【0065】
運転状況の解析のための判定処理フローの詳細は、図6,7のフローチャートに示す通りである。例えば、車両1が走行中でかつ高速道路上に位置している場合(つまりステップSP07,SP08の判定結果がいずれも「YES」である場合)は、車両1は高速道路上を走行していると判定される。また、例えば、車両1が停車中で、かつ、停車位置が交差点の手前でなく踏切の手前である場合(つまりステップSP07,SP15の判定結果がいずれも「NO」で、ステップSP19の判定結果が「YES」である場合)は、車両1は踏切の手前で停車していると判定される。
【0066】
そして、推定処理部31は、解析された運転状況においてドライバの生体反応に変化があったことを以て、そのドライバ(及び同乗者の少なくともいずれか)がその運転状況を好まないことを推定する。推定処理部31によるドライバの嗜好の推定結果に関する情報(嗜好推定情報)は、コスト修飾処理部33に入力される。
【0067】
コスト修飾処理部33は、推定処理部31から入力された嗜好推定情報に基づいて、そのドライバに関するルート要因パラメータの値を調整する。ここで、ルート要因パラメータとは、ルート探索においてドライバの嗜好が影響し得る要因(ルート要因)に関するパラメータであり、その値はコストとして表される。ルート要因としては、例えば、道幅、信号機の数、右折回数、時間、距離、左折回数、料金、平均速度、渋滞度、山道、又は踏切の数等、様々な要因が考えられる。例えば道幅に関しては、道幅が狭いルートのルート要因パラメータのコストは比較的大きい値に設定され、道幅が広いルートのルート要因パラメータのコストは比較的小さい値に設定される。なお、コストの値自体を調整する代わりに、各ルート要因パラメータのコストの重み和から総コストを求める場合の重み付け係数の値を調整することもできる。つまり、ルート評価のための各ルートの総コストの演算において、その演算における各ルート要因パラメータの寄与度合いを調整することができれば、コストの値自体を調整しても、コストの重み付け係数の値を調整しても、その両方を調整しても良い。
【0068】
そのドライバが高速道路の走行を好まないことが推定処理部31によって推定された場合には、ステップSP09において、コスト修飾処理部33は、高速道路に関するルート要因パラメータのコスト(の修飾率)を増加させる。
【0069】
そのドライバが山道の走行を好まないことが推定処理部31によって推定された場合には、ステップSP11において、コスト修飾処理部33は、山道に関するルート要因パラメータのコスト(の修飾率)を増加させる。
【0070】
そのドライバが道幅が狭い道路の走行を好まないことが推定処理部31によって推定された場合には、ステップSP13において、コスト修飾処理部33は、道幅に関するルート要因パラメータのコスト(の修飾率)を増加させる。
【0071】
そのドライバが右折を好まないことが推定処理部31によって推定された場合には、ステップSP17において、コスト修飾処理部33は、右折回数に関するルート要因パラメータのコスト(の修飾率)を増加させる。
【0072】
そのドライバが信号待ち(つまり交差点への進入禁止信号が進入許可信号に切り替わるまでの待機)を好まないことが推定処理部31によって推定された場合には、ステップSP18において、コスト修飾処理部33は、信号機の数に関するルート要因パラメータのコスト(の修飾率)を増加させる。
【0073】
そのドライバが踏切の横断を好まないことが推定処理部31によって推定された場合には、ステップSP20において、コスト修飾処理部33は、踏切の数に関するルート要因パラメータのコスト(の修飾率)を増加させる。
【0074】
そのドライバが渋滞を好まないことが推定処理部31によって推定された場合には、ステップSP22において、コスト修飾処理部33は、渋滞度に関するルート要因パラメータのコスト(の修飾率)を増加させる。
【0075】
コスト修飾処理部33によってコスト(の修飾率)が調整されたルート要因パラメータの調整値は、そのドライバのID及び車載器2のIDに関連付けられて、記憶部13に登録される。また、推定処理部31によって得られた嗜好推定情報も、そのドライバのID及び車載器2のIDと、そのドライバの属性とに関連付けられて、記憶部13に登録される。そのドライバに関する次回の推奨ルートの探索においては、コスト演算処理部34は、コスト修飾処理部33によってコスト(の修飾率)が調整された後のルート要因パラメータを用いて、ルート評価のための各ルートの総コストの演算を行う。また、探索処理部30は、コスト演算処理部34による演算結果に基づいて推奨ルートの探索を行う。つまり、コスト演算処理部34によって評価された複数のルートのうち、総コストが最も小さいルートを推奨ルートとして決定する。
【0076】
次にステップSP14において、演算部11(又は演算部21)は、現在地の位置座標と目的地の位置座標とを比較することにより、車両1が目的地に到着したか否かを判定する。目的地に到着していない場合(つまりステップSP14の判定結果が「NO」である場合)は、ステップSP05以降の処理が繰り返される。一方、目的地に到着した場合(つまりステップSP14の判定結果が「YES」である場合)は、処理が終了される。
【0077】
このように本実施の形態に係るルート探索装置(又はルート探索システム、センタ装置5、車載器2、ルート探索方法、プログラム14,27)によれば、推定処理部31は、検出部28によって検出された搭乗者の生体反応に関する情報と、車両1の運転状況に関する情報とに基づいて、その運転状況に関する搭乗者の嗜好を推定する。また、コスト修飾処理部33は、推定処理部31による推定の結果に基づいて、ルート要因パラメータのコスト(の修飾率)を調整する。そして、探索処理部30は、コスト修飾処理部33によってコスト(の修飾率)が調整されたルート要因パラメータに基づいて、目的地までの推奨ルートを探索する。従って、ルート探索においてユーザの嗜好が影響し得る様々なルート要因のうち、ユーザにとって優先されるべきルート要因を高精度に特定することができ、その結果、ユーザの嗜好を反映させたルート探索を実行することが可能となる。しかも、推定処理部31は、搭乗者による嗜好の設定作業を要することなく搭乗者の嗜好を自動的に推定するため、設定作業に伴う搭乗者の負担を回避することができる。
【0078】
また、本実施の形態に係るルート探索装置によれば、搭乗者が信号待ちを好まないことを推定処理部31が推定した場合、コスト修飾処理部33は、信号機の数に関するルート要因パラメータのコスト(の修飾率)を増加させる。これにより、次回以降のルート探索においては、信号機の数が少ないルートが優先的に推奨ルートとして選択されやすくなる。その結果、信号待ちを好まない搭乗者にとって好ましい推奨ルートを提供することが可能となる。
【0079】
また、本実施の形態に係るルート探索装置によれば、搭乗者が右折を好まないことを推定処理部31が推定した場合、コスト修飾処理部33は、右折回数に関するルート要因パラメータのコスト(の修飾率)を増加させる。これにより、次回以降のルート探索においては、右折回数が少ないルートが優先的に推奨ルートとして選択されやすくなる。その結果、右折を好まない搭乗者にとって好ましい推奨ルートを提供することが可能となる。
【0080】
また、本実施の形態に係るルート探索装置によれば、搭乗者が渋滞を好まないことを推定処理部31が推定した場合、コスト修飾処理部33は、渋滞度に関するルート要因パラメータのコスト(の修飾率)を増加させる。これにより、次回以降のルート探索においては、渋滞が少ないルートが優先的に推奨ルートとして選択されやすくなる。その結果、渋滞を好まない搭乗者にとって好ましい推奨ルートを提供することが可能となる。
【0081】
また、本実施の形態に係るルート探索装置によれば、搭乗者が踏切の横断を好まないことを推定処理部31が推定した場合、コスト修飾処理部33は、踏切の数に関するルート要因パラメータのコスト(の修飾率)を増加させる。これにより、次回以降のルート探索においては、踏切の数が少ないルートが優先的に推奨ルートとして選択されやすくなる。その結果、踏切の横断を好まない搭乗者にとって好ましい推奨ルートを提供することが可能となる。
【0082】
また、本実施の形態に係るルート探索装置によれば、搭乗者が道幅が狭い道路の走行を好まないことを推定処理部31が推定した場合、コスト修飾処理部33は、道幅に関するルート要因パラメータのコスト(の修飾率)を増加させる。これにより、次回以降のルート探索においては、道幅の広いルートが優先的に推奨ルートとして選択されやすくなる。その結果、道幅の狭い道路の走行を好まない搭乗者にとって好ましい推奨ルートを提供することが可能となる。
【0083】
また、本実施の形態に係るルート探索装置によれば、搭乗者が高速道路の走行を好まないことを推定処理部31が推定した場合、コスト修飾処理部33は、高速道路に関するルート要因パラメータのコスト(の修飾率)を増加させる。これにより、次回以降のルート探索においては、一般道が優先的に推奨ルートとして選択されやすくなる。その結果、高速道路の走行を好まない搭乗者にとって好ましい推奨ルートを提供することが可能となる。
【0084】
また、本実施の形態に係るルート探索装置によれば、搭乗者が山道の走行を好まないことを推定処理部31が推定した場合、コスト修飾処理部33は、山道に関するルート要因パラメータのコスト(の修飾率)を増加させる。これにより、次回以降のルート探索においては、山道以外の道路が優先的に推奨ルートとして選択されやすくなる。その結果、山道の走行を好まない搭乗者にとって好ましい推奨ルートを提供することが可能となる。
【0085】
また、本実施の形態に係るルート探索装置によれば、検出部28において、心拍センサによって搭乗者の心拍数の変化を検出することにより、又は血圧センサによって搭乗者の血圧の変化を検出することにより、又は発汗センサによって搭乗者の発汗量の変化を検出することにより、又は温度センサによって搭乗者の身体の温度の変化を検出することにより、又はカメラ撮影によって搭乗者の表情の変化を検出することにより、搭乗者の生体反応の変化を簡易かつ高精度に検出することが可能となる。
【0086】
また、本実施の形態に係るルート探索装置によれば、設定処理部32は、時間帯、曜日、及び天候のうちの少なくとも一つに関する情報に基づいて、ルート要因パラメータの調整値を可変に設定する。これにより、時間帯、曜日、又は天候を考慮したルート探索を実行することが可能となる。例えば、同じ道路であっても、道幅が狭いために夜間又は雨天時の走行においては選択されにくくしたり、休日は渋滞しやすいために休日の走行においては選択されにくくするといったルート探索が可能となる。
【0087】
また、本実施の形態に係るルート探索装置によれば、センタ装置5は、複数の車載器2から受信した生体反応に関する複数の情報を統計処理することにより、性別、年齢、又は運転歴等のユーザの属性別に、運転状況の嗜好の傾向を解析する。そして、各ユーザに対して、各ユーザの属性に適合した推奨ルートを探索して、その推奨ルートに関する情報を提供する。従って、例えば新規のユーザに対しても、そのユーザと属性が同一又は類似する複数のユーザに関する嗜好の傾向を参照することにより、そのユーザの属性に応じた最適な推奨ルートを提供することが可能となる。
【0088】
なお、以上の説明では、車載器2とセンタ装置5との連携によって、ルート探索処理やルート要因パラメータの調整処理等を行う例について述べた。しかし、センタ装置5の機能(図2,3)を車載器2に搭載することによって、以上で説明した全ての処理を車載器2が実行しても良い。
【0089】
また、車載器2の代わりに、通信機能及び位置情報取得機能を有する、携帯電話、ノートパソコン、又はPDA(Personal Digital Assistant)等の任意の端末を用いることもできる。
【0090】
また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施の形態に係るルート探索システムの全体構成を概略的に示す図である。
【図2】センタ装置の構成を概略的に示す図である。
【図3】演算部の機能構成を概略的に示す図である。
【図4】車載器の構成を概略的に示す図である。
【図5】演算部の機能構成を概略的に示す図である。
【図6】本実施の形態に係るルート探索システムの動作を示すフローチャートである。
【図7】本実施の形態に係るルート探索システムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0092】
1 車両
2 車載器
5 センタ装置
11,21 演算部
14,27 プログラム
24 位置情報取得部
28 検出部
30 探索処理部
31 推定処理部
32 設定処理部
33 コスト修飾処理部
34 コスト演算処理部
40 個人特定処理部
41 生体情報処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地までの推奨ルートを探索する探索手段と、
前記探索手段による探索においてルートを評価するための複数のパラメータを用いた演算を行う演算手段と、
車両の搭乗者の生体反応を検出する検出手段と、
前記生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性を推定する推定手段と、
前記演算手段による演算における各前記パラメータの寄与度合いを、前記推定手段による推定の結果に基づいて調整する調整手段と
を備える、ルート探索装置。
【請求項2】
前記推定手段は、前記生体反応に関する情報と、車両の運転状況に関する情報とに基づいて、その運転状況に関する搭乗者の運転特性を推定する、請求項1に記載のルート探索装置。
【請求項3】
前記検出手段は、車両の運転者及び同乗者の生体反応をそれぞれ検出し、
前記推定手段は、運転者及び同乗者の生体反応に基づく搭乗者の運転特性の推定において、運転者の生体反応よりも同乗者の生体反応を優先させる、請求項1又は2に記載のルート探索装置。
【請求項4】
前記検出手段は、
搭乗者の心拍数を検出する心拍センサ、
搭乗者の血圧を検出する血圧センサ、
搭乗者の発汗量を検出する発汗センサ、
搭乗者の身体の温度を検出する温度センサ、及び
搭乗者の顔を撮影するカメラ
のうちの少なくとも一つを有する、請求項1〜3のいずれか一つに記載のルート探索装置。
【請求項5】
時間帯、曜日、及び天候のうちの少なくとも一つに関する情報に基づいて、前記寄与度合いの調整値を可変に設定する設定手段をさらに備える、請求項1〜4のいずれか一つに記載のルート探索装置。
【請求項6】
相互に無線通信が可能な車載器とルート情報提供装置とを備えるルート探索システムであって、
前記車載器は、車両の搭乗者の生体反応を検出する検出手段を備え、
前記ルート情報提供装置は、
目的地までの推奨ルートを探索する探索手段と、
前記探索手段による探索においてルートを評価するための複数のパラメータを用いた演算を行う演算手段と、
前記生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性を推定する推定手段と、
前記演算手段による演算における各前記パラメータの寄与度合いを、前記推定手段による推定の結果に基づいて調整する調整手段と
を備える、ルート探索システム。
【請求項7】
相互に無線通信が可能な車載器とルート情報提供装置とを備えるルート探索システムであって、
前記車載器は、
車両の搭乗者の生体反応を検出する検出手段と、
目的地までの推奨ルートを探索する探索手段と、
前記探索手段による探索においてルートを評価するための複数のパラメータを用いた演算を行う演算手段と
を備え、
前記ルート情報提供装置は、
前記生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性を推定する推定手段と、
前記演算手段による演算における各前記パラメータの寄与度合いを、前記推定手段による推定の結果に基づいて調整する調整手段と
を備え、
前記車載器は、前記寄与度合いの調整値に関する情報を、前記ルート情報提供装置から受信する、ルート探索システム。
【請求項8】
前記ルート情報提供装置は、複数の車載器から受信した生体反応に関する複数の情報を統計処理することにより、ユーザの属性別に運転特性の傾向を解析し、各ユーザに対して、各ユーザの属性に適合した前記寄与度合いの調整値に関する情報を提供する、請求項7に記載のルート探索システム。
【請求項9】
車載器との間で無線通信が可能なルート情報提供装置であって、
前記車載器は、車両の搭乗者の生体反応を検出する検出手段を有し、
前記ルート情報提供装置は、
目的地までの推奨ルートを探索する探索手段と、
前記探索手段による探索においてルートを評価するための複数のパラメータを用いた演算を行う演算手段と、
前記生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性を推定する推定手段と、
前記演算手段による演算における各前記パラメータの寄与度合いを、前記推定手段による推定の結果に基づいて調整する調整手段と
を備える、ルート情報提供装置。
【請求項10】
前記ルート情報提供装置は、複数の車載器から受信した生体反応に関する複数の情報を統計処理することにより、ユーザの属性別に運転特性の傾向を解析し、各ユーザに対して、各ユーザの属性に適合した推奨ルートを探索して、その推奨ルートに関する情報を提供する、請求項9に記載のルート情報提供装置。
【請求項11】
目的地までの推奨ルートを探索する探索手段と、
前記探索手段による探索においてルートを評価するための複数のパラメータを用いた演算を行う演算手段と、
車両の搭乗者の生体反応を検出する検出手段と、
前記生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性を推定する推定手段と、
前記演算手段による演算における各前記パラメータの寄与度合いを、前記推定手段による推定の結果に基づいて調整する調整手段と
を備える、車載器。
【請求項12】
(A)目的地までの推奨ルートを探索するステップと、
(B)前記ステップ(A)の探索においてルートを評価するための複数のパラメータを用いた演算を行うステップと、
(C)車両の搭乗者の生体反応を検出するステップと、
(D)前記生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性を推定するステップと、
(E)前記ステップ(B)の演算における各前記パラメータの寄与度合いを、前記ステップ(D)の推定の結果に基づいて調整するステップと
を備える、ルート探索方法。
【請求項13】
コンピュータを、
目的地までの推奨ルートを探索する探索手段と、
前記探索手段による探索においてルートを評価するための複数のパラメータを用いた演算を行う演算手段と、
車両の搭乗者の生体反応に関する情報に基づいて、搭乗者の運転特性を推定する推定手段と、
前記演算手段による演算における各前記パラメータの寄与度合いを、前記推定手段による推定の結果に基づいて調整する調整手段と
として機能させる、プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−117278(P2010−117278A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291543(P2008−291543)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】