説明

ルート案内装置及び方法

【課題】徒歩ルートの検索と交通機関ルートの検索とを別々に行い、徒歩の移動ルートと交通機関ルートとを含む総合移動ルートの生成を高速に行う。
【解決手段】ユーザ端末装置3は、出発地及び目的地の指定を受け付けるリクエスト受付部32と、交通機関の乗車地候補及び下車地候補を抽出する候補駅選定部33と、乗車地候補の一つを仮乗車地、下車地候補の一つを仮下車地とし、仮乗車地から仮下車地までの交通機関ルートを取得し、仮乗車地及び仮下車地間の距離及び交通機関ルートの乗換回数に基づいて、その交通機関ルートを選択するか否かを判定する乗車駅・下車駅決定部35と、選択された交通機関ルートの仮乗車地及び仮下車地を、それぞれ乗車地及び下車地とし、出発地から乗車地まで及び下車地から目的地までの徒歩ルートを取得し、出発地から目的地までの移動ルートを出力する移動ルート決定部37とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、徒歩の移動と交通機関を利用した移動とを含む、出発地から目的地までの移動ルートを提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
徒歩の移動ルートである徒歩ルート(道路ルート)と、交通機関を利用した移動ルートである交通機関ルートとを組み合わせた総合移動ルートを生成する総合ナビゲーションシステム(以下、総合ナビと称する)がある。この総合ナビでは、ユーザが指定した出発地から目的地までの移動ルートを生成するために、まず交通機関の乗車駅及び下車駅を特定する必要がある。
【0003】
そこで、出発地に最も近い駅を乗車駅に選択し、目的地に最も近い駅を下車駅に選択する手法も考えられるが、この場合は必ずしも目的地に最も早く到着するとは限らない。特に都心部では、1km圏内に複数の駅があることも多く、最寄り駅が最適な乗車駅または下車駅とは限らない。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の技術では、鉄道経路のリンクテーブルに、出発地または目的地と候補駅との間をそれぞれリンクとして加入し、出発地から目的地までが最小コストとなるルートの検索を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−258184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般には、徒歩ルートの検索エンジンと乗換ルートの検索エンジンとは別々になっており、特許文献1の技術を適用するためには、総合ナビ専用のルート検索エンジンの開発が必要である。
【0007】
徒歩ルートの検索エンジン及び乗換ルートの検索エンジンを用いた場合、例えば、以下のようにして乗車駅及び下車駅を決定することができる。すなわち、出発地に近い乗車駅候補をいくつか(例えば5駅)選択するとともに、目的地に近い下車駅候補をいくつか(例えば5駅)選択する。そして、乗換ルートの検索エンジンを用いて、に乗車駅及び下車駅を組み合わせた複数通り(5×5=25通り)のルート検索を実行する。この検索結果の中の所要時間が最短であるルートの乗車駅及び下車駅を、総合移動ルートの乗車駅及び下車駅と決めることもできる。しかしながら、この場合、乗換ルートの検索回数が多くなり、総合移動ルートを決定するための全体の所要時間が長くなる。
【0008】
また、徒歩ルート検索においても、駅の出入口が複数ある場合、それぞれの駅の出入り口までのルート検索を行う必要があり、複数の駅を対象とする場合は、徒歩ルート検索の負荷も大きくなる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、徒歩ルートの検索と交通機関ルートの検索とを別々に行い、徒歩の移動ルートと交通機関ルートとを含む、出発地から目的地までの移動ルートの生成を、高速に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの実施態様に従うルート案内装置は、出発地及び目的地の指定を受け付ける受付手段と、交通機関の乗車地候補を、前記出発地からの距離に基づいて一つ以上抽出する乗車地候補抽出手段と、交通機関の下車地候補を、前記目的地からの距離に基づいて一つ以上抽出する下車地候補抽出手段と、前記乗車地候補が複数あるときはそのうちの一つを仮乗車地とし、前記下車地候補が複数あるときはそのうちの一つを仮下車地とし、前記仮乗車地から前記仮下車地までの交通機関による移動ルートである交通機関ルートを取得する交通機関ルート取得手段と、前記仮乗車地及び仮下車地間の距離、及び前記交通機関ルートにおける乗換回数に基づいて、前記交通機関ルートを選択するか否かを判定する判定手段と、前記判定手段で選択された交通機関ルートの仮乗車地及び仮下車地を、それぞれ乗車地及び下車地とし、前記出発地から前記乗車地まで及び前記下車地から前記目的地までの徒歩による移動ルートである徒歩ルートを取得する徒歩ルート取得手段と、前記取得した徒歩ルートと前記判定手段で選択された交通機関ルートとを含む前記出発地から前記目的地までの移動ルートを出力する出力手段と、を備える。
【0011】
好適な実施態様では、前記交通機関ルート取得手段は、前記乗車地候補抽出手段は、前記出発地からの直線距離が最も近い乗車地候補を前記仮乗車地とし、前記目的地からの直線距離が最も近い下車地候補を前記仮下車地としてもよい。
【0012】
好適な実施態様では、前記判定手段で前記交通機関ルートが選択されなかった場合、前記交通機関ルート取得手段は、前回の仮乗車地の次に前記出発地からの直線距離が近い乗車地候補と、前回の仮下車地の次に前記目的地からの直線距離が近い下車地候補のうちの、前記出発地または前記目的地までの距離がより短いいずれか一方の候補を、新たな仮乗車地または仮下車地として、再度交通機関ルートを取得するようにしてもよい。
【0013】
好適な実施では、前記受付手段は、出発時刻をさらに受け付け、前記交通機関ルート取得手段は、前記出発時刻に、前記出発地と前記仮乗車地との直線距離に基づいて定めた概算所要時間を加算した第1の時刻を、前記仮乗車地における乗車可能時刻として前記交通機関ルートを取得するようにしてもよい。
【0014】
好適な実施態様では、前記出発時刻と、前記徒歩ルート設定手段で設定された前記出発地から前記乗車地までの徒歩ルートの所要時間とに基づいて、前記乗車地における乗車可能時刻である第2の時刻を定め、前記交通機関ルート取得手段は、記第1の時刻と前記第2の時刻とが異なる場合には、前記第2の時刻を前記乗車地における乗車可能時刻として前記乗車地から前記下車地までの交通機関ルートを再度取得して、前記下車地の下車予定時刻を特定し、記第1の時刻と前記第2の時刻とが同一である場合には、前記乗車地から前記下車地までの交通機関ルートの再度の取得を行わずに、前記仮下車地の下車予定時刻を前記下車地の下車予定時刻とし、前記徒歩ルート取得手段は、前記下車予定時刻と前記下車地から前記目的地までの徒歩ルートの所要時間とに基づいて、前記目的地の到着予定時刻を算出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るルート案内システムの全体構成図である。
【図2】総合移動ルート検索の説明図である。
【図3】リクエスト受付画面100の一例を示す図である。
【図4】候補駅選定アルゴリズムのフローチャートである。
【図5】仮乗車駅及び仮下車駅の選定方法の説明図である。
【図6】乗車駅・下車駅決定アルゴリズムのフローチャートである。
【図7】移動ルート決定アルゴリズムを示すフローチャートである。
【図8】ルート案内システムの全体の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るルート案内システムについて、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本実施形態にかかるルート案内システムの全体構成図である。本システムは、同図に示すように、サーバ1と、一つ以上のユーザ端末装置3とを備え、互いに無線または有線のネットワーク4を介して接続されている。サーバ1とユーザ端末装置3とは、互いに通信を行うことができる。
【0018】
サーバ1は、例えば汎用的なコンピュータシステムにより構成され、以下に説明するサーバ1内の個々の構成要素または機能は、例えば、コンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0019】
ユーザ端末装置3は、通信機能を有する端末装置であればよく、例えば、携帯電話機、携帯情報端末、あるいは汎用的なパーソナルコンピュータなどでもよい。ユーザ端末装置3は、ユーザインターフェースとして、液晶パネルなどの表示装置301、及びタッチパネル、プッシュボタンあるいはポインティングデバイスなどの入力装置303を有する。本実施形態では、ユーザ端末装置3は、ユーザインターフェースを介して、ユーザからのルート検索リクエストを受け付けて、出発地から目的地までの移動ルートを提供するルート案内装置として機能する。
【0020】
本実施形態に係るルート案内システムは、図2に示すような出発地から乗車駅まで徒歩で移動し、乗車駅から下車駅まで交通機関で移動し、下車駅から目的地まで徒歩で移動する総合移動ルートを提供する。つまり、ユーザ端末装置3がユーザから出発地と目的地の指定を受け付けると、サーバ1が提供する乗換ルート検索と徒歩ルート検索を利用して、交通機関ルートと徒歩ルートとを含む出発地から目的地までの総合移動ルートが生成され、それがユーザ端末装置3から出力される。
【0021】
図1に戻り、サーバ1及びユーザ端末装置3について詳細に説明する。サーバ1は、乗換検索エンジン11と、徒歩ルート検索エンジン13と、地図画像データベース15と、駅データベース17とを有する。
【0022】
乗換検索エンジン11は、交通機関による移動ルートである交通機関ルートを生成する。乗換検索エンジン11は、例えば、交通機関の路線及び乗降地(駅、停留所等)のデータ及び時刻表データを有している。乗換検索エンジン11は、時刻表データを参照して、乗車地から下車地までの交通機関による移動ルートを生成する。乗換検索エンジン11は、指定された時刻または現在時刻に乗車地を出発したときに、下車地に到着する時刻の早い順に複数の移動ルートを生成するようにしてもよい。例えば、ユーザ端末装置3から乗車地及び下車地の指定を含むルート検索要求を受け付けると、乗換検索エンジン11は、指定された乗車地から下車地に最も早く到着する交通機関ルートを出力する。ここで出力された交通機関ルートを示す情報が、ユーザ端末装置3へ送信される。
【0023】
交通機関には、例えば、鉄道及びバスなどの公共交通機関が含まれる。乗換検索エンジン11によって生成される交通機関ルートには、乗車地から下車地までの間に鉄道などの同種の交通機関内での路線の乗り換え、及び鉄道とバスなどの異なる交通機関間での乗り換えを含む場合もある。以下の実施形態では、主に、乗車駅から下車駅までの鉄道のルート検索を例に取って説明する。
【0024】
徒歩ルート検索エンジン13は、第1の地点から第2の地点までの道路の移動ルートを生成する。徒歩ルート検索エンジン13は、例えば、ノード及びリンクで表された道路に関するデータを有している。徒歩ルート検索エンジン13は、それらのデータを参照して、第1の地点から第2の地点までのトータルリンクコストが最も小さいルートから順に一以上の移動ルートを生成するようにしてもよい。例えば、徒歩ルート検索エンジン13は、ユーザ端末装置3から第1の地点及び第2の地点が指定された徒歩ルートの検索要求を受け付けると、指定された第1の地点から第2の地点までの道路の移動ルートのうち、トータルのリンクコストが最も小さいものを一つ出力する。ここで出力された移動ルートを示す情報が、ユーザ端末装置3へ送信される。本実施形態では、徒歩ルート検索エンジン13は、第1の地点を出発地、第2の地点を乗車地または仮乗車地とする移動ルートと、第1の地点を下車地または仮下車地、第2の地点を目的地とする徒歩ルート検索要求を処理する。
【0025】
地図画像データベース15は、ユーザ端末装置3で地図画像を表示するためのデータが記憶されている。地図画像データベース15に記憶されている地図画像データが、ユーザ端末装置3からのリクエストに応じてユーザ端末装置3に転送される。
【0026】
乗降地データベース17は、交通機関の乗降地を示すデータが記憶されている。例えば、駅データベース17には、鉄道の駅の識別情報、名称及び所在地の緯度及び経度が、互いに対応付けられて記憶されている。駅データベース17に記憶されている乗降地データが、ユーザ端末装置3からのリクエストに応じてユーザ端末装置3に転送される。
【0027】
ユーザ端末装置3は、現在位置取得部31と、リクエスト受付部32と、候補駅選定部33と、乗車駅・下車駅決定部35と、移動ルート決定部37とを有する。
【0028】
現在位置取得部31は、ユーザ端末装置3の現在位置を示す情報を取得する。例えば、現在位置取得部31は、GPS(Global Positioning System)信号を受信して現在位置の緯度及び経度を算出してもよいし、無線LAN用の電波を用いて現在位置を検出してもよいし、その他の方法で現在位置を検出してもよい。
【0029】
リクエスト受付部32は、ユーザからのルート検索リクエストを受け付ける。例えば、リクエスト受付部32は、表示装置301にリクエスト受付画面を表示させる。そして、リクエスト受付部32は、入力装置303からその画面に対する入力として、検索リクエストを受け付ける。
【0030】
例えば、図3にリクエスト受付画面100の一例を示す。リクエスト受付画面100は、出発地、目的地及び時刻の指定を受け付ける。出発地及び目的地は、例えば、現在位置取得部31が取得した現在位置、及び予めブックマークされているいずれかの地点から選択させてもよいし、あるいは、ユーザが入力したキーワードから検索された候補地の中から選択させてもよい。リクエスト受付部32は、指定された出発地及び目的地の緯度及び経度によりそれぞれの位置を特定する。時刻には、出発時刻あるいは到着時刻のいずれかが指定可能である。ユーザは、出発時刻として現在時刻を指定してもよい。
【0031】
候補駅選定部33は、乗車地の候補である乗車候補駅及び下車地の候補である下車候補駅を選定する。候補駅選定部33は、例えば、出発地からの距離に基づいて乗車候補駅を一つ以上抽出する。候補駅選定部33は、以下に詳述する候補駅選定アルゴリズムに従って乗車候補駅を選定する。
【0032】
<候補駅選定アルゴリズム>
図4は、候補駅選定アルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
【0033】
まず、候補駅選定部33は、出発地から所定距離α内に存在する駅を抽出する(S101)。この処理は、例えば以下のように行ってもよい。すなわち、候補駅選定部33は、まず、リクエスト受付部32が受け付けた検索リクエストの「出発地」の緯度及び経度を特定する。そして、出発地の緯度及び経度と、ユーザ端末装置3の駅データベース17の緯度及び経度とから、出発地から所定距離α内に存在する駅を抽出する。所定距離αは任意に定めることができるが、例えば1kmでもよい。
【0034】
ステップS101で駅が一つも抽出されなかったときは(S103:No)、出発地の最寄り駅を乗車候補駅に決定する(S105)。例えば、候補駅選定部33は、改めてユーザ端末装置3の駅データベース17を参照して、出発地から最も近い駅を特定してもよい。
【0035】
ステップS101で駅が抽出されたとき、その駅数が一つであれば(S107:Yes)、抽出された駅を乗車候補駅に決定する(S109)。
【0036】
ステップS101で抽出された駅数が一つでない、つまり複数ある場合(S107:No)、出発地と最寄り駅の直線距離と出発地と2番目に近い駅の直線距離との差が所定距離β以上であるか否かを判定する(S111)。ここで、この直線距離の差がβ以上である場合(S111:Yes)、最寄り駅を乗車候補駅に決定する(S113)。この直線距離の差がβ以上でない場合(S111:No)、ステップS101で抽出された複数の駅を乗車候補駅に決定する(S115)。ステップS115で乗車候補駅とする駅数には上限を定めてもよい。すなわち、ここでは、最寄り駅と次に近い駅との距離差に応じて、最寄り駅を乗車候補駅のみを乗車候補駅とするか否かを定めている。
【0037】
候補駅選定部33は、さらに、目的地からの距離に基づいて下車候補駅を一つ以上抽出してもよい。候補駅選定部33は、下車駅候補の選定のために、目的地からの距離を利用して上述の候補駅選定アルゴリズムを用いてもよい。
【0038】
図1に戻ると、乗車駅・下車駅決定部35は、乗車候補駅及び下車候補駅の中から乗車駅及び下車駅を決定する。例えば、乗車駅・下車駅決定部35は、乗車候補駅の一つを仮乗車駅、下車候補駅の一つを仮下車駅とし、仮乗車駅から仮下車駅までの交通機関による移動ルートである交通機関ルートを取得する。乗車駅・下車駅決定部35は、さらに、仮乗車駅及び仮下車駅間の距離、及び取得した交通機関ルートにおける乗換回数に基づいて、その交通機関ルートを選択するか否か、つまりこのときの仮乗車駅及び仮下車駅を乗車駅及び下車駅に採用するか否かを判定する。この交通機関ルートが選択されなかった場合、乗車駅・下車駅決定部35は、前回の仮乗車地の次に出発地からの直線距離が近い乗車地候補と、前回の仮下車地の次に目的地からの直線距離が近い下車地候補のうちの、出発地または目的地までの距離がより短いいずれか一方の候補を、新たな仮乗車地または仮下車地として、再度交通機関ルートを取得する。以下、図5及び図6を参照して、乗車駅及び下車駅の選定方法について詳細に説明する。
【0039】
<乗車駅・下車駅決定アルゴリズム>
図5は、乗車候補駅及び下車候補駅が複数ある場合の仮乗車駅及び仮下車駅の選定方法の説明図である。
【0040】
図6は、乗車駅・下車駅決定アルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
【0041】
候補駅選定部33が定めた乗車候補駅及び下車候補駅がそれぞれ一つしかない場合(S201:Yes)、乗車駅・下車駅決定部35は、それぞれを乗車駅及び下車駅に決定する(S202)。
【0042】
乗車候補駅及び下車候補駅の少なくともいずれか一方が複数ある場合(S201:No)、乗車駅・下車駅決定部35は、出発地に最寄りの乗車候補駅を仮乗車駅、目的地に最寄りの下車候補駅を仮下車駅として選定する(S203)。
【0043】
図6は、乗車候補駅及び下車候補駅が複数ある場合の一例を示す。同図の場合、出発地Sから直線距離で最も近い乗車候補駅StA1が仮乗車駅となり、目的地Dから直線距離が最も近い下車候補駅StB1が仮下車駅となる。
【0044】
図5のフォローチャートに戻ると、乗車駅・下車駅決定部35は、出発地から仮乗車駅までの直線距離を算出し、その直線距離に基づいて概略所要時間を算出する(S204)。例えば、60mあたり1分としてもよい。
【0045】
乗車駅・下車駅決定部35は、出発地の出発時刻に概略所要時間を加算して、仮乗車駅の乗車可能時刻を特定する(S205)。
【0046】
乗車駅・下車駅決定部35は、サーバ1に対して、ステップS205で特定した乗車可能時刻以降に仮乗車駅から乗車する条件で、仮乗車駅から仮下車駅までの交通機関ルートの検索要求を発行する。サーバ1では、乗換検索エンジン11がこのリクエストを受け付けて、乗り換え検索を実行する(S207)。
【0047】
乗車駅・下車駅決定部35は、乗り換え検索によって得られた交通機関ルートを取得する。ここでは、最も早く仮下車駅に到着する一のルートを取得する。乗車駅・下車駅決定部35は、取得したルートでの乗り換え回数が、所定の閾値以下であるか否かを判定する(S209)。ここで、乗り換え回数の閾値は、仮乗車駅と仮下車駅との距離に応じ定まる。例えば、仮乗車駅と仮下車駅との距離が10km以内であれば2回、10km以上20km未満であれば3回、20km以上であれば4回などとしてもよい。この距離は、鉄道の営業距離でもよいし、直線距離でもよい。
【0048】
乗り換え回数が所定の閾値以下であれば(S209:Yes)、仮乗車駅及び仮下車駅を、それぞれ乗車駅及び下車駅に決定する(S210)。このとき、仮乗車駅の乗車時刻、及び仮下車駅の下車時刻を含む交通機関ルートに関する情報を保存しておく。
【0049】
乗り換え回数が所定の閾値より多いときは(S209:No)、仮乗車駅または仮下車駅としていない他の乗車候補駅または下車候補駅があれば(S211:Yes)、仮乗車駅または仮下車駅を変更し、ステップS204へ戻り、以降の処理を繰り返す(S213)。この仮乗車駅または仮下車駅の変更は、例えば、未だ仮乗車駅または仮下車駅としていない他の乗車候補駅または下車候補駅の中で、最も出発地に近い乗車候補駅、または最も目的地に近い下車候補駅のうち、出発地または目的地までの距離が短い方を選択し、仮乗車駅または仮下車駅に変更する。
【0050】
図6の例では、未だ仮乗車駅または仮下車駅としていない駅StA2,StA3、StB2、StB3のうち、最も出発地に近い駅がStA2、最も目的地に近い駅がStB2である。ここで、出発地からStA2までが6分、目的地からStB2までが7分の距離である。この場合には、徒歩に要する時間がより短い(距離がより近い)一方の駅StA2を選択し、これを仮乗車駅とする。このとき、仮下車駅はStB1のままである。
【0051】
仮乗車駅または仮下車駅としていない他の乗車候補駅または下車候補駅がないときは(S211:No)、出発地に最寄りの乗車候補駅を乗車駅に、目的地に最寄りの下車候補駅を下車駅に決定する(S215)。
【0052】
図1に戻ると、移動ルート決定部37は、徒歩ルート及び交通機関ルートを含む、出発地から目的地までの総合移動ルートを決定する。
【0053】
移動ルート決定部37は、出発地から乗車地まで及び下車地から目的地までの徒歩による移動ルートである徒歩ルートを取得する。移動ルート決定部37は、取得した徒歩ルートと乗車駅から下車駅までの交通機関ルートとを含む出発地から目的地までの総合移動ルートを出力する。移動ルート決定部37は、以下に詳述する総合移動ルート決定アルゴリズムに従って総合移動ルートを決定する。
【0054】
<総合移動ルート決定アルゴリズム>
図7は、総合移動ルート決定アルゴリズムを示すフローチャートである。
【0055】
移動ルート決定部37は、サーバ1に対して、出発地から乗車駅までの徒歩ルートの検索要求を発行し、徒歩ルートを取得する。サーバ1では、徒歩ルート検索エンジン13が、この検索要求に基づいて徒歩ルートの検索を行う(S301)。このとき、移動ルート決定部37は、乗車駅が複数の入り口を有する場合は、出発地から各入り口までのルート検索要求発行し、最も所要時間の短いものを選択するようにしてもよい。
【0056】
移動ルート決定部37は、徒歩ルート検索エンジン13が生成した徒歩ルートを取得する。そして、移動ルート決定部37は、その徒歩ルートの所要時間と出発時刻とに基づいて、乗車駅での乗車可能時刻を決定する(S303)。例えば、出発時刻に徒歩ルートの所要時間と駅構内の移動時間として所定時間を加算して乗車可能時刻としてもよい。
【0057】
ここで、ステップS303で定められた乗車可能時刻が、乗車駅・下車駅決定部35の処理において保存された仮乗車駅から仮下車駅までの交通機関ルートにおける仮乗車駅の乗車時刻と同時刻であれば(S305:Yes)、保存しておいた交通機関ルートの情報が利用できるので、ステップS307をスキップする。これにより、乗換検索を行わずに済むので、全体の処理が高速化する。
【0058】
ステップS303で定められた乗車可能時刻が、上記保存されている仮乗車駅の乗車時刻と同時刻でなければ(S305:No)、移動ルート決定部37は、乗車駅から下車駅まで、乗車可能時刻に乗車駅を出発する交通機関ルートの検索要求をサーバ1へ送り、乗車時刻及び下車時刻を含む交通機関ルートに関する情報を取得する。サーバ1は、この検索要求を受け付けて、乗換検索エンジン11が乗り換え検索を実行する(S307)。
【0059】
次に、移動ルート決定部37は、サーバ1に対して下車駅から目的地までの徒歩ルートの検索要求を発行し、徒歩ルートを取得する。サーバ1では、徒歩ルート検索エンジン13がこの徒歩ルートの検索を行う(S309)。このとき、移動ルート決定部37は、下車駅が複数の出口を有する場合は、各出口から目的地までのルート検索を行って、最も所要時間の短い出口を選択するようにしてもよい。
【0060】
移動ルート決定部37は、ステップS309で取得した徒歩ルートの所要時間と下車駅の到着時刻とに基づいて目的地の到着時刻を算出する(S311)。移動ルート決定部37は、例えば、徒歩ルートの所要時間に加え、駅構内の移動時間として所定時間を加算してもよい。
【0061】
最後に、移動ルート決定部37は、徒歩ルートと交通機関ルートとを組み合わせた、出発地から目的地までの総合移動ルートを出力する(S313)。
【0062】
次に、上記のような構成を有するルート案内システムの全体の処理手順について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0063】
まず、ルート案内装置であるユーザ端末装置3は、例えば、図3に示すリクエスト受付画面100を表示装置301に表示させて、出発地、目的地及び時刻の指定を含むルート検索要求をユーザから受け付ける(S401)。
【0064】
ユーザ端末装置3がルート検索要求を受け付けると、出発地及び目的地を基準として、上述した駅候補選定アルゴリズム(図4参照)に従って、交通機関の乗車駅及び下車駅の候補となるそれぞれの候補駅を抽出する(S402)。
【0065】
乗車及び下車の候補駅が抽出されると、ユーザ端末装置3は、上述した乗車駅・下車駅決定アルゴリズム(図5参照)に従って、抽出された乗車候補駅及び下車候補駅の中から、乗車駅及び下車駅を選択する(S403)。
【0066】
ユーザ端末装置3は、定められた乗車駅及び下車駅に基づいて、上述した移動ルート決定アルゴリズム(図7参照)に従って、出発地から乗車駅までの徒歩ルート、乗車駅から下車駅までの交通機関ルート、及び下車駅から目的地までの徒歩ルートを含む総合移動ルートを生成し、表示装置301に出力する(S404、S405)。
【0067】
これにより、乗換検索エンジンと徒歩ルート検索エンジンをそれぞれ利用した総合ナビにおいても、効率的な総合移動ルートの検索を行うことができる。
【0068】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0069】
例えば、サーバ1に搭載されている機能の一部または全部をユーザ端末装置3に持たせてもよいし、それとは逆に、ユーザ端末装置3の機能の一部または全部をサーバ1に搭載してもよい。例えば、検索エンジン11,13をユーザ端末装置3に持たせてもよいし、候補駅選定部33、乗車駅・下車駅決定部35及び移動ルート決定部37をサーバ1に搭載してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 サーバ
3 ユーザ端末装置
11 乗換検索エンジン
13 徒歩ルート検索エンジン
15 地図画像データベース
17 駅データベース
31 現在位置取得部
32 リクエスト受付部
33 候補駅選定部
35 乗車駅・下車駅決定部
37 移動ルート決定部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地及び目的地の指定を受け付ける受付手段と、
交通機関の乗車地候補を、前記出発地からの距離に基づいて一つ以上抽出する乗車地候補抽出手段と、
交通機関の下車地候補を、前記目的地からの距離に基づいて一つ以上抽出する下車地候補抽出手段と、
前記乗車地候補が複数あるときはそのうちの一つを仮乗車地とし、前記下車地候補が複数あるときはそのうちの一つを仮下車地とし、前記仮乗車地から前記仮下車地までの交通機関による移動ルートである交通機関ルートを取得する交通機関ルート取得手段と、
前記仮乗車地及び仮下車地間の距離、及び前記交通機関ルートにおける乗換回数に基づいて、前記交通機関ルートを選択するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段で選択された交通機関ルートの仮乗車地及び仮下車地を、それぞれ乗車地及び下車地とし、前記出発地から前記乗車地まで及び前記下車地から前記目的地までの徒歩による移動ルートである徒歩ルートを取得する徒歩ルート取得手段と、
前記取得した徒歩ルートと前記判定手段で選択された交通機関ルートとを含む前記出発地から前記目的地までの移動ルートを出力する出力手段と、を備えるルート案内装置。
【請求項2】
前記交通機関ルート取得手段は、前記乗車地候補抽出手段は、前記出発地からの直線距離が最も近い乗車地候補を前記仮乗車地とし、前記目的地からの直線距離が最も近い下車地候補を前記仮下車地とする、請求項1記載のルート案内装置。
【請求項3】
前記判定手段で前記交通機関ルートが選択されなかった場合、前記交通機関ルート取得手段は、前回の仮乗車地の次に前記出発地からの直線距離が近い乗車地候補と、前回の仮下車地の次に前記目的地からの直線距離が近い下車地候補のうちの、前記出発地または前記目的地までの距離がより短いいずれか一方の候補を、新たな仮乗車地または仮下車地として、再度交通機関ルートを取得する、請求項2に記載のルート案内装置。
【請求項4】
前記受付手段は、出発時刻をさらに受け付け、
前記交通機関ルート取得手段は、前記出発時刻に、前記出発地と前記仮乗車地との直線距離に基づいて定めた概算所要時間を加算した第1の時刻を、前記仮乗車地における乗車可能時刻として前記交通機関ルートを取得する、請求項1〜3のいずれかに記載のルート案内装置。
【請求項5】
前記出発時刻と、前記徒歩ルート設定手段で設定された前記出発地から前記乗車地までの徒歩ルートの所要時間とに基づいて、前記乗車地における乗車可能時刻である第2の時刻を定め、
前記交通機関ルート取得手段は、
前記第1の時刻と前記第2の時刻とが異なる場合には、前記第2の時刻を前記乗車地における乗車可能時刻として前記乗車地から前記下車地までの交通機関ルートを再度取得して、前記下車地の下車予定時刻を特定し、
前記第1の時刻と前記第2の時刻とが同一である場合には、前記乗車地から前記下車地までの交通機関ルートの再度の取得を行わずに、前記仮下車地の下車予定時刻を前記下車地の下車予定時刻とし、
前記徒歩ルート取得手段は、前記下車予定時刻と前記下車地から前記目的地までの徒歩ルートの所要時間とに基づいて、前記目的地の到着予定時刻を算出する、請求項4記載のルート案内装置。
【請求項6】
コンピュータが、
出発地及び目的地の指定を受け付けるステップと、
交通機関の乗車地候補を、前記出発地からの距離に基づいて一つ以上抽出するステップと、
交通機関の下車地候補を、前記目的地からの距離に基づいて一つ以上抽出するステップと、
前記乗車地候補が複数あるときはそのうちの一つを仮乗車地とし、前記下車地候補が複数あるときはそのうちの一つを仮下車地とし、前記仮乗車地から前記仮下車地までの交通機関による移動ルートである交通機関ルートを取得するステップと、
前記仮乗車地及び仮下車地間の距離、及び前記交通機関ルートにおける乗換回数に基づいて、前記交通機関ルートを選択するか否かを判定するステップと、
前記判定で選択された交通機関ルートの仮乗車地及び仮下車地を、それぞれ乗車地及び下車地とし、前記出発地から前記乗車地まで及び前記下車地から前記目的地までの徒歩による移動ルートである徒歩ルートを取得するステップと、
前記取得した徒歩ルートと前記判定で選択された交通機関ルートとを含む前記出発地から前記目的地までの移動ルートを出力するステップと、を行うルート案内方法。
【請求項7】
コンピュータに、
出発地及び目的地の指定を受け付けるステップと、
交通機関の乗車地候補を、前記出発地からの距離に基づいて一つ以上抽出するステップと、
交通機関の下車地候補を、前記目的地からの距離に基づいて一つ以上抽出するステップと、
前記乗車地候補が複数あるときはそのうちの一つを仮乗車地とし、前記下車地候補が複数あるときはそのうちの一つを仮下車地とし、前記仮乗車地から前記仮下車地までの交通機関による移動ルートである交通機関ルートを取得するステップと、
前記仮乗車地及び仮下車地間の距離、及び前記交通機関ルートにおける乗換回数に基づいて、前記交通機関ルートを選択するか否かを判定するステップと、
前記判定で選択された交通機関ルートの仮乗車地及び仮下車地を、それぞれ乗車地及び下車地とし、前記出発地から前記乗車地まで及び前記下車地から前記目的地までの徒歩による移動ルートである徒歩ルートを取得するステップと、
前記取得した徒歩ルートと前記判定で選択された交通機関ルートとを含む前記出発地から前記目的地までの移動ルートを出力するステップと、を実行させるルート案内のためのコンピュータプログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−108804(P2013−108804A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253051(P2011−253051)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【Fターム(参考)】