説明

ルーバーシートの製造方法

【課題】光照射によって光透過部中に異物が発生しない、耐光性を向上させたルーバーシートの製造方法の提供。
【解決手段】本発明によるルーバーシートの製造方法は、表面に複数の溝が並設された光透過部と、該光透過部の該溝内に形成された光吸収部とを備えてなるルーバーシートの製造方法であって、ビスマス化合物を触媒として重合された光硬化性プレポリマーと、光重合開始剤とを含んでなる光透過部形成用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された光透過部を形成する工程と、該光透過部を加熱して、該光透過部中の光重合開始剤および/または光重合開始剤由来残渣を揮発および/または分解させる工程とを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーバーシートの製造方法に関し、より詳細には、表面に複数の溝が並設された光透過部と、該光透過部の該溝内に形成された光吸収部とを備えてなるルーバーシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では、通常、観察者がどのような位置から見ても良好な画像が得られるように、視野角が広いことが好まれる。一方、例えば通勤電車の中で仕事をする場合やATM等の公共の場に設置された液晶表示装置では、周りの人から画面を覗かれては困ることがあり、このような場合には液晶表示装置の観察者のみに見え、他人からは見えないようにプライバシーを保護するための覗き見防止機能が求められている。また、カーナビゲーションシステム等の車載型の液晶表示装置においては、夜間などに液晶表示装置の画面が窓ガラスに映り込み、視界を遮る現象がおこるため、映り込み防止機能が求められており、光線出光角度の制御が望まれている。
【0003】
このような要求に対して、例えば、光透過層と遮光層とを交互に並べた構造であるルーバータイプの光学シートが提案されており、遮光層として、光透過層を構成する材料にカーボンブラックやカーボンファイバー等の充填材を混合したものを用いることが開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
一方、上記のようなルーバー型の光学シートは、斜め方向の映像光を単純にカットするものであるため、表示装置の種類によっては、観測者に到達させるべき映像光の拡散光源を減少させてしまうことにもなるため、表示画面の輝度が低下する場合があった。
【0005】
上記の問題を解消するため、外光を遮光してコントラストを向上させ、かつ二重像の発生も減少させることができるルーバーシートを光学シートに設置することが提案されている。このようなルーバーシートとして、種々の構造のものが提案されている。例えば、表面に複数の溝が並設された光透過部と、溝に光透過部よりも屈折率の低い材料とカーボン顔料等とを充填させて形成された光吸収部とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−119365号公報
【特許文献2】特開2006−85050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の光学シートでは、ルーバーシートと、映像光射出側に設けられた反射防止層等の機能層との間には、透明樹脂層や粘着層等が幾層も設けられていた。本発明者らは、透明樹脂層や粘着層等をできる限り減らすことで、コスト低減や製造工程の簡略化を図ることができることを知見した。しかし、紫外線遮断効果を有する粘着層を除いた結果、ルーバーシートの光透過部に到達する外光(主に紫外線)の影響で、光透過部中に異物が発生するという新たな問題を知見した。
【0008】
本発明は、上記の背景技術および新たに知見した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光照射によって光透過部中に異物が発生しない、耐光性を向上させたルーバーシートの製造方法を提供することにある。また、本発明の目的は、このような耐光性を向上させたルーバーシートを備えた光学シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、ルーバーシートの光透過部を加熱して、光透過部中の光重合開始剤および/または光重合開始剤由来残渣を揮発および/または分解させることで、上記課題を解決できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明の一態様によれば、
表面に複数の溝が並設された光透過部と、該光透過部の該溝内に形成された光吸収部とを備えてなるルーバーシートの製造方法であって、
ビスマス化合物を触媒として重合された光硬化性プレポリマーと、光重合開始剤とを含んでなる光透過部形成用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された光透過部を形成する工程と、
該光透過部を加熱して、該光透過部中の光重合開始剤および/または光重合開始剤由来残渣を揮発および/または分解させる工程と
を含んでなる、ルーバーシートの製造方法が提供される。
【0011】
本発明の態様においては、該光透過部を加熱する工程の前もしくは後または加熱する工程と同時に、該光透過部の該溝内に光吸収部形成用組成物を供給し、該光吸収部形成用組成物を硬化させて、光吸収部を形成する工程をさらに含んでなることが好ましい。
【0012】
本発明の態様においては、該光透過部を加熱する工程が、60〜100℃で5時間以上行われることが好ましい。
【0013】
本発明の態様においては、該光硬化性プレポリマーが、ウレタンアクリレート系オリゴマーであることが好ましい。
【0014】
本発明の態様においては、該ウレタンアクリレート系オリゴマーが、該ビスマス化合物を触媒として、ポリイソシアネート系化合物とポリオール系化合物とが重合してなるものであることが好ましい。
【0015】
本発明の態様においては、該ビスマス化合物が、有機カルボン酸ビスマスであることが好ましい。
【0016】
本発明の態様においては、該有機カルボン酸ビスマスが、ビスマストリアセテート、ビスマストリプロピオネート、ビスマストリヘプタノエート、ビスマストリオクタノエート、ビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)、ビスマストリ(ネオデカネノエート)、ビスマストリバーサテート、ビスマストリラウレート、ビスマストリオレート、およびビスマストリステアレートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0017】
本発明の態様においては、該光重合開始剤が、アルキルフェノン系光重合開始剤であることが好ましい。
【0018】
本発明の態様においては、該アルキルフェノン系光重合開始剤が、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、および2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の他の態様によれば、
上記のルーバーシートの製造方法により製造されたルーバーシートと、
該ルーバーシートの映像光出射側に、アンチグレア層、反射防止層、帯電防止層、ハードコート層、および防汚層からなる群から選択される少なくとも1種の機能層と
を備えてなる、光学シートが提供される。
【0020】
また、本発明の他の態様によれば、
上記の光学シートと、表示部とを備えてなる、画像表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明のルーバーシートの製造方法によれば、光照射によって光透過部中に異物が発生しない、耐光性を向上させたルーバーシートを得ることができる。また、光学シートに、このような耐光性を向上させたルーバーシートを用いることで、透明樹脂層や粘着層を減らし、コスト低減や製造工程の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による光透過部の形成工程の一実施形態を示した模式図である。
【図2】本発明による光透過部の一実施形態を示した断面概略図である。
【図3】本発明によるルーバーシートの一実施形態を示した断面概略図である。
【図4】本発明による光学シートの一実施形態を示した断面概略図である。
【図5】本発明による画像表示装置の一実施形態を示した断面概略図である。
【図6】実施例1で作製したルーバーシートの光透過部中の成分をガスクロマトグラフィーにより測定して得られた、クロマトグラムである。
【図7】比較例1で作製したルーバーシートの光透過部中の成分をガスクロマトグラフィーにより測定して得られた、クロマトグラムである。
【図8】実施例1で作製したルーバーシートの耐光性試験後の顕微鏡写真である。
【図9】比較例1で作製したルーバーシートの耐光性試験後の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ルーバーシートの製造方法
本発明によるルーバーシートの製造方法は、光透過部を形成する工程と、光透過部を加熱する工程とを含んでなるものである。さらに、光透過部を加熱する工程の前もしくは後または加熱する工程と同時に、光吸収部を形成する工程をさらに含んでもよい。以下、本発明によるルーバーシートの製造方法の各工程を詳細に説明する。
【0024】
光透過部の形成工程
光透過部の形成工程は、ビスマス化合物を触媒として重合された光硬化性プレポリマーと、光重合開始剤とを含んでなる光透過部形成用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された光透過部を形成する工程である。
【0025】
光透過部は、従来公知の方法により形成することができ、下記の光透過部形成用組成物を硬化させて形成する限り、形成方法は特に限定されるものではない。例えば、下記で説明する光透過部形成用組成物を成形型内に供給して光(紫外線)を照射して硬化させる、いわゆるUV法によって、光透過部を形成することができる。本発明においては、量産性に優れるUV法が好適に使用できる。UV法によれば、金型ロールを用いて、光透過部を連続的に製造することができる。
【0026】
具体的には、例えば、図1に示されるように、所定ピッチで光透過部2の形に対応した形の溝を有する金型ロール10と、ニップロール11との間に基材1を送り込む。図1中の矢印は、基材1を送り込む方向を表したものである。基材1の送り込みに合わせて、金型ロール10と基材1との間に供給部12から光透過部形成用組成物13の液滴を供給し続ける。供給部12から基材1上に光透過部形成用組成物13を供給するとき、金型ロール10と基材1との間に、光透過部形成用組成物13が溜まった組成物溜まり14が形成されるようにする。この組成物溜まり14を形成することによって、光透過部形成用組成物13が基材1の幅方向に広がる。
【0027】
上記のようにして金型ロール10と基材1との間に供給された光透過部形成用組成物13は、金型ロール10とニップロール11との間の押圧力により、基材1と金型10との間に充填される。その後、紫外線照射装置15によって光透過部形成用組成物13に紫外線を照射し、光透過部形成用組成物13を硬化させて、光透過部2を形成する。光透過部2を形成した後、剥離ロール16を介して、金型ロール10から光透過部2を引き剥がす。
【0028】
上記のようにして、図2に示されるように、基材1上に、層厚方向断面において複数の溝2aが並設された光透過部2を形成することができる。図2に示される溝2aは基材1側に向けて先細る略台形状となっている。溝2aは、略台形状に限られず、例えば、略V字状または略矩形状に形成されていてもよい。溝2aは基材1の長手方向に沿って延在している。
【0029】
基材1は、光透過部2を形成するためのベースとなる層である。基材1としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスを用いることができる。透明樹脂フィルムとしては、トリアセテートセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルロニトリルフィルム等を好適に使用できるが、これらの中でも、ポリエステル系フィルムが好ましく用いられる。ポリエステル系フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートの他、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0030】
光透過部形成用組成物
光透過部形成用組成物は、ビスマス化合物を触媒として重合された光硬化性プレポリマーと、光重合開始剤とを含んでなるものである。光透過部形成用組成物は、光硬化性モノマーをさらに含んでもよく、光硬化性プレポリマーと光硬化性モノマーとを重合させて、光透過部形成用組成物を硬化させることができる。光硬化性プレポリマーと光硬化性モノマーとの重合には、光硬化性プレポリマーの重合反応と同様に、下記のビスマス化合物を触媒として用いることができる。
【0031】
光硬化性プレポリマーは、光透過部の屈折率や硬度の調整の観点から、ウレタンアクリレート系オリゴマーであることが好ましい。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ビスマス化合物を触媒として、ポリイソシアネート系化合物とポリオール系化合物とが重合してなるものであるのがよい。さらに、下記の光硬化性モノマーを加えて、重合させてもよい。
【0032】
ポリイソシアネート系化合物は、従来公知のポリイソシアネート系化合物を用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等のポリイソシアネート、ならびにこれらポリイソシアネートの3量体化合物または4以上の多量体化合物、ビューレット型ポリイソシアネート、および水分散型ポリイソシアネートが挙げられる。これらを、1種または2種以上併用して用いることもできる。特に、イソホロンジイソシアネートやキシリレンジイソシアネートを併用してもよい。
【0033】
ポリオール系化合物は、従来公知のポリオール系化合物を用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、ポリオール系化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA、ポリカプロラクトン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコールや、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロック又はランダム共重合の少なくとも1種の構造を有するポリエーテルポリオール、該多価アルコール又はポリエーテルポリオールと無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸等の多塩基酸との縮合物であるポリエステルポリオール、カプロラクトン変性ポリテトラメチレンポリオール等のカプロラクトン変性ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、水添ポリブタジエンポリオール等のポリブタジエン系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等が挙げられる。さらに、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、酒石酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ジヒドロキシメチル酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、ホモゲンチジン酸等のカルボキシル基含有ポリオールや、1,4−ブタンジオールスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基又はスルホン酸塩基含有ポリオール等も挙げられる。これらを、1種または2種以上併用して用いることもできる。
【0034】
光硬化性モノマーは、光硬化性プレポリマー、特にウレタンアクリレート系オリゴマーとの反応性との観点から、ヒドロキシ基含有アクリレート系化合物であることが好ましい。ヒドロキシ基含有アクリレート系化合物は、従来公知のヒドロキシ基含有アクリレート系化合物を用いることができ、特に限定されるものではない。例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンジアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、およびフェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。これらを、1種または2種以上併用して用いることもできる。
【0035】
ビスマス化合物は、触媒としての反応効率の良さや副生成物の少なさ、環境毒性の低さの観点から、有機カルボン酸ビスマスであることが好ましい。有機カルボン酸ビスマスとしては、ビスマストリアセテート、ビスマストリプロピオネート、ビスマストリヘプタノエート、ビスマストリオクタノエート、ビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)、ビスマストリ(ネオデカネノエート)、ビスマストリバーサテート、ビスマストリラウレート、ビスマストリオレート、およびビスマストリステアレート等が挙げられる。これらの中でも、ビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)およびビスマストリ(ネオデカネノエート)が好ましい。これらのビスマス化合物は、従来公知の方法により合成できる。例えば、酸化ビスマスと相当するカルボン酸を溶媒の存在下または不存在下で反応されることにより得ることができる。
【0036】
光重合開始剤は、光硬化性プレポリマーや光硬化性モノマーとの相性の観点から、アルキルフェノン系光重合開始剤を用いることが好ましい。アルキルフェノン系光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、および2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オンが挙げられる。これらを、1種または2種以上併用して用いることもできる。本発明においては、市販品を使用することもでき、例えば、イルガキュア184、ダロキュア1173、イルガキュア2959、およびイルガキュア127(以上、BASF株式会社製)を好適に使用できる。
【0037】
光透過部の加熱工程
光透過部の加熱工程は、光透過部を加熱して、光透過部中の光重合開始剤および/または光重合開始剤由来残渣を揮発および/または分解させる工程である。光透過部の加熱工程では、光透過部中の光重合開始剤および/または光重合開始剤由来残渣が全て揮発および/または分解されていなくてもよく、光照射によって光透過部中に異物が発生しない程度まで揮発および/または分解されていればよい。例えば、加熱工程後に、光透過部中の光重合開始剤および/または光重合開始剤由来残渣の含有量が、光透過部の質量に対して、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下であるのがよい。なお、光透過部中の光重合開始剤および/または光重合開始剤由来残渣の残留量は、例えば、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0038】
光透過部の加熱工程は、光透過部中の光重合開始剤および/または光重合開始剤由来残渣を揮発および/または分解できれば、加熱時間や加熱温度は特に限定されるものではない。例えば、加熱工程の加熱温度は、好ましくは60〜100℃、より好ましくは60〜90℃、さらに好ましくは60〜80℃である。加熱温度が上記範囲程度であれば、光透過部中の光重合開始剤および/または光重合開始剤由来残渣を十分に揮発および/または分解することができる。また、加熱時間は、好ましくは5時間以上、より好ましくは12時間以上、また好ましくは72時間以下である。加熱時間が上記範囲程度であれば、光透過部中の光重合開始剤および/または光重合開始剤由来残渣を十分に揮発および/または分解することができる。
【0039】
光透過部は、従来公知の方法により加熱することができ、加熱方法は特に限定されるものではない。例えば、光透過部は、シートの状態で、あるいはシートをロール状に巻き取って原反ロールの状態で、加温室内中で加熱することができる。なお、光透過部は、以下で説明する光吸収部を形成した後のルーバーシートの形態でもよい。
【0040】
なお、本発明はいかなる理論にも拘束されるものではないが、光照射による光透過部中の異物発生のメカニズムとしては、およそ以下のようなものではないかと推察される。もっとも、本発明が以下の説明によって限定されることがあってはならないことは言うまでもない。本発明においては、上記の光透過部形成用組成物を用いて光透過部を形成するため、光透過部中に、光硬化性プレポリマーの重合に用いられた微量のビスマス化合物と、アルキルフェノン系光重合開始剤および/または光重合開始剤由来残渣(分解物)とが存在する。本発明者らは、光重合開始剤としてアルキルフェノン系光重合開始剤を用いると、光照射によって光透過部中に黒色の異物(黒点、黒色の凝集物)が発生することを知見した。この黒色の異物をエネルギー分散型X線分析(EDX)により分析したところ、ビスマス由来のものであることを知見した。さらに、アルキルフェノン系光重合開始剤および/または光重合開始剤由来残渣の存在が認められない光透過部に光を照射したところ、黒色の異物が発生しないという驚くべき結果を知見した。したがって、光透過部に光(紫外線)が照射されると、ビスマス化合物と、アルキルフェノン系光重合開始剤および/または光重合開始剤由来残渣とが反応して、ビスマス由来の黒色の異物が発生するのではないかと考えられる。そこで、本発明においては、光透過部を加熱して、光透過部中のアルキルフェノン系光重合開始剤および/または光重合開始剤由来残渣を揮発および/または分解させることで、光照射による光透過部中の異物発生を抑制できた。
【0041】
光吸収部の形成工程
光吸収部の形成工程は、光透過部の溝内に光吸収部形成用組成物を供給し、光吸収部形成用組成物を硬化させて、光吸収部を形成する工程である。光吸収部の形成工程は、光透過部の加熱工程の前もしくは後または加熱工程と同時に行われてもよい。製造工程の効率の観点からは、光透過部の加熱工程の前に行うのがよい。すなわち、光透過部の形成工程、光吸収部の形成工程、光透過部の加熱工程の順序で行うのがよい。この場合、光吸収部も同時に加熱されてよい。
【0042】
光透過部の溝内への光吸収部形成用組成物の供給方法は、従来公知の方法を用いることができ、供給方法は特に限定されるものではない。例えば、光吸収部形成用組成物の供給装置としては、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、およびナイフコーター等が挙げられる。
【0043】
光透過部の溝内に供給された光吸収部形成用組成物の硬化方法は、従来公知の方法を用いることができ、硬化方法は特に限定されるものではない。例えば、硬化方法としては、電子線又は紫外線の照射によって硬化することができる。電子線硬化の場合には、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、および高周波型等の各種電子線加速機から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線等が使用される。紫外線硬化の場合には超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、およびメタルハライドランプ等の光源から発せられる紫外線等が利用できる。
【0044】
光吸収部形成用組成物
光吸収部形成用組成物は、電離放射線硬化性樹脂組成物と光吸収粒子とを含むものであるのがよい。電離放射線硬化性樹脂組成物としては、従来公知の視認性向上シートや視野角向上シート等に用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物を用いることができる。例えば、アクリレート系の官能基を有するものを好適に使用することができる。例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレート等のオリゴマー又はプレポリマーを挙げることができる。なお、視認性向上シートの光透過部を構成する材料にもよるが、これらの樹脂のなかなら光透過部を構成する材料よりも屈折率の小さい樹脂を選択するのがよい。
【0045】
また、上記樹脂組成物中には、反応性希釈剤を添加してもよく、このような反応性希釈剤としては、エチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマーを使用してもよい。例えば、リメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、およびネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。これらを、1種または2種以上併用して用いることもできる。
【0046】
電離放射線硬化性樹脂組成物を紫外線硬化性樹脂組成物とするには、組成物中に光重合開始剤としてアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホソフィン等を混合して用いることができる。特に、オリゴマーとしてウレタンアクリレート、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を混合するのが好ましい。
【0047】
光吸収粒子としては、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収できるものを使用することが好ましい。光吸収粒子としては、例えば、樹脂ビーズやガラスビーズに、カーボンブラック、グラファイト、繊維状炭素、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、および顔料等の着色剤を練り込んだものやコーティングしたものを使用することができる。着色剤の練り込み易さの観点からは、樹脂ビーズを用いることが好ましい。
【0048】
樹脂ビーズとしては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ、塩ビビーズ等を好適に使用することができる。また、ウレタン架橋微粒子やシリコン系ビーズも好適に使用できる。これらの樹脂ビーズは、上記した電離放射線硬化性樹脂組成物の屈折率差が0.1程度のものを用いることが好ましい。また、着色剤を練り込む前の樹脂としては、透明な樹脂でも使用できるが、顔料または染料等で着色された樹脂を用いることが好ましいく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収するものであってよいが、好ましくは黒色に着色された樹脂ビーズが用いられる。
【0049】
着色剤としては、上記したもののなかでもカーボンブラックが好適に使用できる。樹脂ビーズへのカーボンブラックの練り込み量は、樹脂ビーズ1質量部に対してカーボンブラックを0.1〜0.7質量部程度であり、好ましくは0.15〜0.5質量部、より好ましくは0.2〜0.35質量部である。カーボンブラックの練り込み量が0.7質量部よりも多いと樹脂ビーズが割れやすくなる場合があり、一方、0.1質量部よりも少ないと、所望の黒色性を有する光吸収粒子を得られない場合がある。また、カーボンブラックは、平均粒子径が10〜500nmのものを好適に使用することができる。例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー等が使用できる。また、市販のものを使用することもでき、例えば、HCFシリーズ、MCFシリーズ、RCFシリーズ、LFFシリーズ(以上、三菱化学株式会社製)、バルカンシリーズ(キャボット社製)、ケッチェンシリーズ(ライオン株式会社製)を好適に使用することができる。なお、ここでの平均粒子径とは、カーボンブラック粒子を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径を意味する。
【0050】
光吸収粒子の添加量は、光吸収部形成用組成物の全質量に対して15〜35%の範囲とすることが好ましい。光吸収粒子の添加量が、上記範囲程度であれば、よりコントラストに優れるルーバーシートを実現することができる。
【0051】
電離放射線硬化性樹脂組成物への光吸収粒子の分散性を向上させるために、光吸収粒子を表面処理しておくこともできる。表面処理としては、従来公知のシリカコーティングによる親水処理や、プラズマ等による表面改質が挙げられる。
【0052】
ルーバーシート
本発明によるルーバーシートの製造方法により製造されたルーバーシートは、表面に複数の溝が並設された光透過部と、光透過部の溝内に形成された光吸収部とを備えてなるものである。ルーバーシートは基材をさらに備えてもよく、光透過部は基材上に形成されたものであってもよい。
【0053】
本発明によるルーバーシートの製造方法により製造されたルーバーシートは、光透過部の映像光射出側に、紫外線吸収層を含まないものであることが好ましい。本発明によるルーバーシートは、紫外線吸収層を除いても、十分な耐光性を有するものであり、かつ紫外線吸収層を除くことで、コスト低減や製造工程の簡略化を図ることができるからである。
【0054】
例えば、図3に示されるルーバーシート3は、基材1と、基材1上に形成され、かつ表面に複数の溝が並設された光透過部2と、光透過部の溝内に形成された光吸収部4とを備えてなる。
【0055】
光吸収部4は、光透過部2の屈折率と同じかまたは小さい屈折率を有する。光透過部2と光吸収部4との屈折率が上記のような関係となることにより、所定条件で光透過部2に入射した光源からの映像光を光吸収部4と光透過部2との境界面で適切に反射させ、観測者に明るい映像を提供することができる。また、観測者側からの外光の一部を吸収するため、コントラストも向上する。また、光透過部2と光吸収部4との境界面で反射せずに、光吸収部4の内側に入射した迷光が、光吸収部4中の光吸収材によって吸収される。また、所定角度で入射した観測者側からの外光を適切に吸収することができるため、コントラストを向上させることもできる。なお、光吸収部4が、光透過部2の屈折率よりも大きいことを制限するものではない。
【0056】
また、ルーバーシートを2層重ね合わせてもよく、その場合、各ルーバーシートで異なった構造となるようにしてもよい。例えば、1層目のルーバーシートと2層目のルーバーシートとで、光吸収部の幅やピッチ、深さ、形状を変えたり、光吸収部の厚み方向の向きを変えたり、映像光に対する光吸収部のバイアス角度(水平方向に対する光吸収部の傾斜角度)を変えたりすることができる。また、光吸収部を形成する材料(樹脂の種類や光吸収粒子の濃度)を変えることもできる。例えば、1層目は効率良く外光をカットし、コントラストの向上を重視した設計とし、2層目は反射を利用した正面輝度向上効果を重視した設計とするような、各層で作用効果を変えることが好ましい。
【0057】
光学シート
本発明による光学シートは、本発明によるルーバーシートの製造方法により製造されたルーバーシートと、ルーバーシートの映像光出射側に、アンチグレア層、反射防止層、帯電防止層、ハードコート層、および防汚層からなる群から選択される少なくとも1種の機能層とを備えてなるものである。特に、ルーバーシートの映像光出射側に、反射防止層を備えてなることが好ましい。これらの各機能層の積層順や積層数は、用途に応じて適宜決定することができる。これらの各機能層は、従来公知の方法によって形成することができる。また、光学シートは、表示装置の表示部上に配置するために、粘着層をさらに備えてもよい。
【0058】
本発明による光学シートは、ルーバーシートの映像光出射側に、紫外線吸収層を含まないものであることが好ましい。本発明による光学シートは、紫外線吸収層を除いても、十分な耐光性を有するものであり、かつ紫外線吸収層を除くことで、コスト低減や製造工程の簡略化を図ることができるからである。
【0059】
例えば、図4に示される光学シート7は、映像光出射側から、反射防止層5と、基材1、光透過部2、および光吸収部4からなるルーバーシート3と、粘着層6とを備えてなる。
【0060】
画像表示装置
本発明による画像表示装置は、本発明による光学シートと、表示部とを備えてなるものである。画像表示装置の表示部としては、例えば、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電界放出ディスプレイ(FED)、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、およびプロジェクションテレビ等が挙げられる。
【0061】
例えば、図5に示される画像表示装置9は、光学シート7と、表示部8とを備えてなるものであり、光学シート7は、映像光出射側から、反射防止層5と、基材1、光透過部2、および光吸収部4からなるルーバーシート3と、粘着層6とを備えてなる。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0063】
実施例1
光透過部形成用組成物の調製
ビスフェノールA―エチレンオキシド2モル付加物41質量部、イソホロンジイソシアネート14.0質量部を、およびウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50%溶液))0.02質量部を加え、80℃で5時間反応させ、その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート5質量部を加え、80℃で5時間反応させて得られたウレタンアクリレート系オリゴマーを、光硬化性プレポリマーとして用いた。このウレタンアクリレート系オリゴマー32、0質量部と、光硬化性モノマーとして、フェノキシエチルアクリレート(分子量192)10.0質量部、およびビスフェノールAのEO4モル付加物のジアクリレート(分子量512)30.0質量と、金型離型剤として、テトラデカノール−エチレンオキシド10モル付加物のリン酸エステル(モノエステル/ジエステル=モル比1/1)0.03質量部と、テアリルアミンエチレンオキシド15モル付加物0.02質量部、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、BASF株式会社製)3質量部を混合し、均一化して光透過部形成用組成物を得た。
【0064】
光吸収部形成用組成物の調製
光硬化性プレポリマーとして、エポキシアクリレートオリゴマー20.0質量部と、反応性希釈モノマーとして、2−フェノキシエチル=アクリラート20.0質量部、α−アクリロイル−ω−フェノキシポリ(オキシエチレン)20.0質量部、および2−{2−[2−(アクリロイルオキシ)(メチル)エトキシ](メチル)エトキシ}(メチル)エチル=アクリラート13.0質量部と、光吸収粒子として、平均粒径4.0μmのカーボンブラックを25%含有したアクリル架橋微粒子(ガンツ化成株式会社製)20.0質量部と、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、BASF株式会社製)7質量部と、を混合し、均一化して光吸収部形成用組成物を得た。
【0065】
ルーバーシートの作製
上記で調製した光透過部形成用組成物をポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡績株式会社、A4300、100μm)上に供給し、光透過部形成用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された光透過部を形成した。
【0066】
次いで、光透過部を基材毎移動させながら、ダイコーターのダイヘッドから、上記で得られた光吸収部形成用組成物が光透過部の幅方向において均一に供給されるように、光透過部の表面に連続的に供給した、その後、掻取部材を用いて、光透過部の表面上の余分な光吸収部形成用組成物を掻き取った。
【0067】
光透過部の溝に光吸収部形成用組成物を充填した後、光吸収部形成用組成物に紫外線を照射して、光吸収部形成用組成物を硬化させることにより光吸収部を形成し、光透過部と光吸収部とを備えるシートを得た。
【0068】
次いで、光透過部と光吸収部とを備えるシートを、シートの状態で、加温室内で、80℃で5時間加熱して、実施例1のルーバーシートを作製した。
【0069】
比較例1
実施例1と同様に、光透過部と光吸収部とを備えるシートを作製した。加熱工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1のルーバーシートを作製した。
【0070】
光透過部中の成分測定
上記のようにして作製された実施例および比較例のルーバーシートについて、下記の条件でガスクロマトグラフィーにより、光透過部中の残存成分を測定した。
・試験条件
機器:ガスクロマトグラフ(株式会社島津製作所製、商品名:GC−2014)
検出器:水素炎イオン化検出器、FID−2014
カラム:アジレント・テクノロジー株式会社製、商品名:DB−5
キャリアガス:ヘリウム(流量:1.0ml/min)
温度:130℃
【0071】
上記の光透過部中の成分測定により得られたクロマトグラムを、図6(実施例1)および図7(比較例1)に示す。図7によれば、比較例1のルーバーシートの光透過部中では、光重合性開始剤および光重合性開始剤由来残渣が残存していることがわかる。図6によれば、実施例1のルーバーシートの光透過部中では、光重合性開始剤および光重合性開始剤由来残渣が消失(揮発および/または分解)していることがわかる。
【0072】
耐光性試験
上記のようにして作製された実施例および比較例のルーバーシートを、下記の条件で紫外線を照射し、光透過部中に異物が発生したか否かを顕微鏡により観察した。
・試験条件
光源:キセノンアークランプ(スガ試験機株式会社製、商品名:SX75)
放射照度:60W/m(300〜400nm)
照射時間:120時間
照射温度:63度
湿度:50%
【0073】
上記の耐光性試験の評価基準は以下のとおりである。評価結果を表1に示す。併せて、ルーバーシートの耐光性試験後の顕微鏡写真を図8(実施例1)および図9(比較例1)に示す。
評価基準
○:光透過部中に異物が発生しなかった。
×:光透過部中に黒色の異物が発生した。
【表1】

【0074】
上記の結果から、ルーバーシートの光透過部中の光重合開始剤および/または光重合開始剤由来残渣を揮発および/または分解させることで、光照射による光透過部中の異物発生を抑えることができた。
【符号の説明】
【0075】
1 基材
2 光透過部
2a 溝
3 ルーバーシート
4 光吸収部
5 反射防止層
6 粘着層
7 光学シート
8 表示部
9 画像表示装置
10 金型ロール
11 ニップロール
12 供給部
13 光透過部形成用組成物
14 組成物溜まり
15 紫外線照射装置
16 剥離ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の溝が並設された光透過部と、前記光透過部の前記溝内に形成された光吸収部とを備えてなるルーバーシートの製造方法であって、
ビスマス化合物を触媒として重合された光硬化性プレポリマーと、光重合開始剤とを含んでなる光透過部形成用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された光透過部を形成する工程と、
前記光透過部を加熱して、前記光透過部中の光重合開始剤および/または光重合開始剤由来残渣を揮発および/または分解させる工程と
を含んでなる、ルーバーシートの製造方法。
【請求項2】
前記光透過部を加熱する工程の前もしくは後または加熱する工程と同時に、前記光透過部の前記溝内に光吸収部形成用組成物を供給し、前記光吸収部形成用組成物を硬化させて、光吸収部を形成する工程
をさらに含んでなる、請求項1に記載のルーバーシートの製造方法。
【請求項3】
前記光透過部を加熱する工程が、60〜100℃で5時間以上行われる、請求項1または2に記載のルーバーシートの製造方法。
【請求項4】
前記光硬化性プレポリマーが、ウレタンアクリレート系オリゴマーである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のルーバーシートの製造方法。
【請求項5】
前記ウレタンアクリレート系オリゴマーが、前記ビスマス化合物を触媒として、ポリイソシアネート系化合物とポリオール系化合物とが重合してなるものである、請求項4に記載のルーバーシートの製造方法。
【請求項6】
前記ビスマス化合物が、有機カルボン酸ビスマスである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のルーバーシートの製造方法。
【請求項7】
前記有機カルボン酸ビスマスが、ビスマストリアセテート、ビスマストリプロピオネート、ビスマストリヘプタノエート、ビスマストリオクタノエート、ビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)、ビスマストリ(ネオデカネノエート)、ビスマストリバーサテート、ビスマストリラウレート、ビスマストリオレート、およびビスマストリステアレートからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載のルーバーシートの製造方法。
【請求項8】
前記光重合開始剤が、アルキルフェノン系光重合開始剤である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のルーバーシートの製造方法。
【請求項9】
前記アルキルフェノン系光重合開始剤が、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、および2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン−1−オンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項8に記載のルーバーシートの製造方法。
【請求項10】
前記ルーバーシートが、前記光透過部の映像光射出側に、紫外線吸収層を含まないものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載のルーバーシートの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のルーバーシートの製造方法により製造されたルーバーシートと、
前記ルーバーシートの映像光出射側に、アンチグレア層、反射防止層、帯電防止層、ハードコート層、および防汚層からなる群から選択される少なくとも1種の機能層と
を備えてなる、光学シート。
【請求項12】
請求項11に記載の光学シートと、表示部とを備えてなる、画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−7783(P2013−7783A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138722(P2011−138722)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】