説明

ルーフ衝撃吸収構造

【課題】 構造が簡潔で、かつ汎用性が高い車両のルーフ衝撃吸収構造を提供する。
【解決手段】 車両1のルーフパネル2と、ルーフパネルの下方に位置して車室空間の一部を画成するルーフライニング3との間に備えられた車両のルーフ衝撃吸収構造4であって、ルーフライニングのルーフパネル側の面に固定されたブロック状のエネルギー吸収体5と、エネルギー吸収体に固定され、エネルギー吸収体の配置位置におけるエネルギー吸収体とルーフパネルとの間の距離に応じた大きさに構成され、エネルギー吸収体とルーフパネルとの間の空間内に存在するスペーサ6とを有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のルーフ衝撃吸収構造に関し、より詳細には、簡潔な構造を有し、汎用性が高い車両のルーフ衝撃吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のルーフパネルの下方には、車室空間を画成するルーフライニング(ルーフトリム)が取り付けられており、ルーフパネルとルーフライニングの間には、乗員の頭部を保護するためのルーフ衝撃吸収構造が設けられている。ルーフ衝撃吸収構造は、発泡樹脂等の弾性体により構成されており、ルーフパネルとの間に所定のクリアランスを有するように、ルーフライニングに接着結合されている。このクリアランスの大きさが適切でない場合には、所定の衝撃吸収性能を得ることができず、また、車両の振動によって、ルーフ衝撃吸収構造がルーフパネルと接触して騒音が発生するという問題がある。
【0003】
これらの問題に対して、ルーフ衝撃吸収構造をルーフライニングに係合させて固定することにより、ルーフ衝撃吸収構造の組付け位置の精度を高めたもの(例えば、特許文献1)や、ルーフ衝撃吸収構造に凸部を設け、当該凸部をルーフパネルに当接させることによってクリアランスを一定に保つようにしたものがある(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2006−205982号公報
【特許文献2】特開2003−341438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のルーフ衝撃吸収構造では、ルーフパネルとルーフライニングとの間の空間に応じて設計する必要があり、多様な形状のルーフ衝撃吸収構造を準備しなけれならないという問題がある。ルーフパネルとルーフライニングとの間の空間は、ルーフ形状やルーフ衝撃吸収構造を取り付ける位置によって大きさが異なるため、多品種の車両を製造する場合においては、準備しなけれならないルーフ衝撃吸収構造の数は非常に多くなる。
【0005】
本発明は、以上のような問題を鑑みなされたものであって、ルーフパネルとルーフライニングとの間の空間の大きさに適合して空間を調整することができ、構造が簡潔で汎用性が高いルーフ衝撃吸収構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、車両(1)のルーフパネル(2)と、ルーフパネルの下方に位置して車室空間の一部を画成するルーフライニング(3)との間に備えられた車両のルーフ衝撃吸収構造(4)であって、ルーフライニングのルーフパネル側の面に固定されたブロック状のエネルギー吸収体(5)と、エネルギー吸収体に固定され、エネルギー吸収体の配置位置におけるエネルギー吸収体とルーフパネルとの間の距離に応じた大きさに構成され、エネルギー吸収体とルーフパネルとの間の空間内に存在するスペーサ(6)とを有するようにした。
【0007】
また、エネルギー吸収体は、略直方体に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
以上のように構成することで、ルーフパネルとルーフ衝撃吸収構造との間のクリアランスは、スペーサによって調整することができる。このため、エネルギー吸収体の形状をクリアランスに応じて変更する必要がなくなる。エネルギー吸収体の形状および大きさは、所望の衝撃吸収性能に応じて設定すればよいので、衝撃吸収性能の調整および設計が容易になる。また、エネルギー吸収体の形状および大きさを一定にすることができるため、エネルギー吸収体に汎用品(標準規格品)を使用することができる。本発明に係るルーフ衝撃吸収構造は、汎用性が高いことから製造コストを低下させ、また構造が簡潔であることから組付作業性を向上させることができる。また、エネルギー吸収体を略直方体とすることで、ルーフライニングおよびスペーサとの接触面の適合性が向上し、組付け時の安定性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るルーフ衝撃吸収構造を適用した車両を一部破断して示す斜視図である。図2は、本実施形態に係るルーフ衝撃吸収構造を固定した車両のルーフライニングを示す斜視図である。図3は、図2のII部を拡大して示す斜視図である。図4は、実施形態に係るルーフ衝撃吸収構造のエネルギー吸収体を示す斜視図である。図5は、図3の矢印V−V線に沿って見た断面図である。図6は、図3の矢印VI−VI線に沿って見た断面図である。図7は、一部変形実施したルーフ衝撃吸収構造を示す断面図である。
【0010】
図1に示すように、車両1のルーフパネル2の下方に、車室空間を画成するルーフライニング3が設けられている。ルーフライニング3の車室空間と相反する側の面、つまりルーフパネル2側の面には、複数のルーフ衝撃吸収構造4が設けられている。
【0011】
図2に示すように、ルーフ衝撃吸収構造4は、ルーフライニング3の車幅方向の両側部のそれぞれに、車体前後方向におおよそ1列となるように配列されている。図2中の矢印Aは車両前方方向を示している。図3に示すように、ルーフ衝撃吸収構造4は、エネルギー吸収体5と、スペーサ6とを主要構造として構成されている。図3は、ルーフ衝撃吸収構造4の構造を説明するために、ルーフ衝撃吸収構造4の表面を覆う防音テープ71を取り除いて描画している。
【0012】
エネルギー吸収体5は、例えば、管形状の衝撃吸収管である。図4に示すように、本実施形態に係るエネルギー吸収体5は、比較的薄肉のアルミニウム材からなる芯材51を例えばボール紙のような柔軟材52と共に螺旋状に巻回し、表裏にボール紙を露出させて内部にアルミニウムの芯材51を介在させたものからなる。このようなエネルギー吸収体は、公知のものであり、市販されている。
【0013】
エネルギー吸収体5は、ブロック状に形成されている。本実施形態では、エネルギー吸収体5は、略矩形の断面を呈する管形状、すなわち略直方体に形成されており、管形状の長手方向に所定の長さを有する。断面の形状および大きさは、ルーフ衝撃吸収構造4を配置する位置でのルーフパネル2とルーフライニング3との間の空間の大きさと所望の衝撃吸収性能によって適宜調整される。なお、他の実施形態では、エネルギー吸収体を円形状の断面を呈する管形状に形成してもよい。
【0014】
スペーサ6は、例えばポリプロピレン等からなる樹脂部品のような高剛性の部材によって形成されている。図3、図5および図6に示すように、スペーサ6は、略矩形の平面形状を呈する基板61と、基板61の長辺の一方に基板61の裏面側に垂直に延設された支持板62と、支持板62が設けられた基板61の長辺から基板61の表面側に垂直に延設された第1突出壁63とを有する。基板61の長手方向長さは、エネルギー吸収体5の長手方向長さと一致するように形成され、幅方向長さは、エネルギー吸収体5の幅方向長さと同じか若干短くなるように形成されている。基板61の両短辺には、それぞれ、基板61に対して垂直に裏面側へと起立する端壁64が形成されている。また、スペーサ6は、基板61の表面61aと第1突出壁63とに垂直に接合された第1リブ65を長手方向にわたって複数個有している。なお、端壁64は支持板62とそれぞれの端部で接合されていてもよいし、第1リブ65は基板61の両短辺上に形成されてもよい。
【0015】
また、スペーサ6は、スペーサ6の大きさ(高さ)を変更するために第1突出壁63の基板61の表面側への突出量を変更してもよい。また、図7に示すように、スペーサ6は、基板61の第1突出壁63が設けられた長辺と異なる長辺に第2突出壁66を有してもよい。また、スペーサ6は、基板61と第1リブ65とに垂直に設けられ、スペーサ6の長手方向に延在する第2リブ67を有してもよい。また、支持壁62に複数の開口68を設けてもよい。
【0016】
ルーフ衝撃吸収構造4が配置されるそれぞれの位置毎に、ルーフパネル2とルーフライニング3との間の空間の大きさを考慮して、クリアランスが適切な大きさとなるように、スペーサ6は、適切な大きさおよび形状に形成されている。
【0017】
スペーサ6は、基板61の裏面側でエネルギー吸収体5に固定される。基板61の裏面61bと支持板62とが、エネルギー吸収体5の隣り合う2面と当接することで、スペーサ6はエネルギー吸収体5に対して幅方向位置が位置決めされている。また、両端壁64が、エネルギー吸収体5の長手方向端面のそれぞれと当接することで、スペーサ6はエネルギー吸収体5に対して長手方向位置が位置決めされている。
【0018】
また、基板61の裏面61bとエネルギー吸収体5との間には接着部材72が設けられている。接着部材72は、液体状の接着材を塗布したものでもよいし、例えば両面テープを貼付したものでもよい。また、エネルギー吸収体5とスペーサ6とを組み合わせた後に、エネルギー吸収体5とスペーサ6とは、防音テープ71によって覆われ、走行中の振動等によるルーフパネル2との接触音の発生が防止されると共に互いに固定されている。このようにして、ルーフ衝撃吸収構造4が形成される。
【0019】
エネルギー吸収体5は、ルーフライニング3のルーフパネル2側の面の所定の位置に接着剤73により固定されている。これによりルーフ衝撃吸収構造4はルーフライニング3に固定される。このとき、ルーフ衝撃吸収構造4の上部側、すなわちスペーサ6の上端部と、ルーフパネル2との間にクリアランスCが形成される。ルーフ衝撃吸収構造4が配置されているそれぞれの部位において、クリアランスCが所定の大きさとなるように、適切な大きさのスペーサ6が選択されてルーフ衝撃吸収構造4に組付けられている。
【0020】
以上のように構成することによって、ルーフパネル2とルーフライニング3との間の空間の大きさに適合するルーフ衝撃吸収構造4を容易に形成することができる。エネルギー吸収体5を略直方体とすることで、略平面であるルーフライニング3の車室側と相反する面との一致性がよくなり接着固定した際の安定性が向上する。また、エネルギー吸収体5は、スペーサ6の基板61、支持板62および両端壁64の4面と接触するため、両部材を組付ける際の位置決めが容易となり、また固定した際の安定性が向上する。
【0021】
スペーサ6の第1突出壁63の突出高さを変更することで、クリアランスCの大きさ(高さ)を変更することができる。また、第1突出壁63に対する第2突出壁66の突出高さを変更することでスペーサ6の上部、すなわちルーフ衝撃吸収構造4の上部に形成される面のルーフパネル2に対する角度を変更することができ、ルーフ衝撃吸収構造4がルーフパネル2に対峙する範囲内のクリアランスCを一定とすることができる。このようなルーフ衝撃吸収構造4は、構造が簡潔である。
【0022】
また、適切な大きさのスペーサ6を用いることで、ルーフパネル2との間のクリアランスを適切な大きさにすることができるため、クリアランスの調整が容易である。このときに、エネルギー吸収体5の形状および大きさを空間の大きさに応じて変更する必要はないので、衝撃吸収性能を考慮することなく、空間の大きさに適合するスペーサを選択するだけで、適切なルーフ衝撃吸収構造を得ることができる。また、エネルギー吸収体5の形状および大きさを変更する必要がないことから、エネルギー吸収体5に標準規格品等の汎用品を使用することができる。
【0023】
以上の作用効果から、本発明のルーフ衝撃吸収構造は汎用性が高く、多様な形状を有する多種の車種に適用することができる。そのため、ルーフ衝撃吸収構造を各車種毎に設計し、部品を製造する必要がなくなるため、製造コストを低減することができる。
【0024】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、エネルギー吸収体に衝撃吸収管以外のスポンジ状部材やゴム材等の可撓性部材を用いてもよい。また、スペーサの形状は例示的なものであり本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係るルーフ衝撃吸収構造を適用した車両を一部破断して示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係るルーフ衝撃吸収構造を固定した車両のルーフライニングを示す斜視図である。
【図3】図2のII部を拡大して示す斜視図である。
【図4】実施形態に係るルーフ衝撃吸収構造のエネルギー吸収体を示す斜視図である。
【図5】図3の矢印V−V線に沿って見た断面図である。
【図6】図3の矢印VI−VI線に沿って見た断面図である。
【図7】一部変形実施したルーフ衝撃吸収構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
2 ルーフパネル
3 ルーフライニング
4 ルーフ衝撃吸収構造
5 エネルギー吸収体
6 スペーサ
61 基板
62 支持板
63 第1突出壁
64 端壁
65 第1リブ
66 第2突出壁
67 第2リブ
71 防音テープ
72 接着部材
73 接着剤
C クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフパネルと、前記ルーフパネルの下方に位置して車室空間の一部を画成するルーフライニングとの間に備えられた車両のルーフ衝撃吸収構造であって、
前記ルーフライニングのルーフパネル側の面に固定されたブロック状のエネルギー吸収体と、
前記エネルギー吸収体に固定され、前記エネルギー吸収体の配置位置における前記エネルギー吸収体と前記ルーフパネルとの間の距離に応じた大きさに構成され、前記エネルギー吸収体と前記ルーフパネルとの間の空間内に存在するスペーサと
を有することを特徴とする車両のルーフ衝撃吸収構造。
【請求項2】
前記エネルギー吸収体は、略直方体に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両のルーフ衝撃吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−61804(P2009−61804A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228897(P2007−228897)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】