ループス治療のための方法および組成物
抗CD52抗体により患者のループスを治療する方法を提供する。さらに、患者身体の患側への制御性T細胞の浸潤を増大させる方法、尿タンパク質および/またはアルブミンレベルの減少させる方法、およびループス症状を緩和するためにリンパ球を枯渇させる方法を含む。本発明の一局面において、ループスの患者のFoxP3+制御性T細胞を増加させる方法が提供され、この方法は、抗CD52抗体の治療有効量をこのループスの患者に投与することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年5月13日に出願された米国特許仮出願第61/177、924号の優先権を主張する。上記出願のすべての開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ループスは、血液、中枢神経系(CNS)、心臓、肝臓、関節、腎臓、肺、皮膚、腸管、および血管系などの体の多くの部分に影響を与える自己免疫疾患である。ループスに侵された組織または臓器には炎症が通常認められる。ループスの症状は血液パネル異常、関節痛、アテローム硬化、CNS疾患、感染、関節痛、倦怠感、発疹、潰瘍、腎炎、心血管疾患、および自己抗体の産生を含む。ループスには、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、皮膚エリテマトーデス、CNSループス、心血管系の発現、肺の発現、肝臓の発現、血液学的な発現、消化管の発現、筋骨格系の発現、新生児エリテマトーデス、小児期発症全身性エリテマトーデス、薬剤誘導性エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、およびループス発現となる補体欠乏症候群を含有する発現がある。Robert G. Lahita, Editor, Systemic Lupus Erythematosus, 4th Ed., Elsevier Academic Press, 2004を参照。米国では約150万から200万人がループスに罹患している。ループス患者の90%が女性である。現在、典型的には、ループスはコルチコステロイドおよび免疫抑制薬で治療する。ループス治療のために改善された治療法と組成物が急務である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
抗CD52抗体(例えば、アレムツズマブ)を用いてループスの治療のために新規で有効な治療法と組成物を私たちは考案した。いくつかの実施形態では、リンパ球を有意に枯渇させる抗体を使用する。別の実施形態では、リンパ球を有意に枯渇することがない方法、抗体を使用することもできる。
【0004】
ある態様では、本発明はループスの患者のFoxP3+(例えば、CD4+CD25+FoxP3+)制御性T細胞を増加させる方法を提示し、抗CD52抗体の治療有効量を患者に投与することを含む。ある実施形態では、本発明の方法は前記制御性T細胞を刺激する薬剤、例えば、ラパマイシン、TGF−β(活性なまたは潜在性のTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、またはTGF−β5)、IL−10、IL−4、IFN−α、ビタミンD3、デキサメタゾン、またはミコフェノール酸モフェチルを患者に投与することをさらに含む。制御性T細胞がループスの患者の炎症部位、例えば、血液、中枢神経系(CNS)、心臓、肝臓、関節、腎臓、肺、皮膚、腸管、または血管系などに浸潤してもよい。
【0005】
別の様態では、本発明はループスの患者の尿タンパク質および/またはアルブミンのレベルを減少する方法を提示し、抗CD52抗体の治療有効量を患者に投与することを含む。
【0006】
別の様態では、本発明はループスの患者のリンパ球(例えば、B細胞およびT細胞)を枯渇させる方法をさらに提示し、抗CD52抗体の治療有効量を患者に投与することを含む。
【0007】
別の様態では、本発明は治療を必要としている患者(例えば、ループスの患者)の治療法をさらに提示し、少なくとも第2の化合物と混合した抗CD52抗体の治療有効量を患者に投与することを含む。典型的には第2の化合物は例えば、標準療法または実験的治療法などのループスの治療に使用するものである。
【0008】
本発明の方法は、限定はされないが、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、皮膚エリテマトーデス、中枢神経系(CNS)ループス、心血管系の発現、肺の発現、肝臓の発現、血液学的な発現、消化管の発現、筋骨格系の発現、新生児エリテマトーデス、小児期発症全身性エリテマトーデス、薬剤誘導性エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、またはループス発現となる補体欠乏症候群を含有する発現などの、ループスが1つ以上発現している患者の治療に使用することができる。
【0009】
本発明の併用療法においては、抗CD52抗体および追加の治療剤を患者に適宜、任意の順序で投与することができる。抗CD52抗体および追加の治療剤を同時にまたは連続的に、あるいはその両方で投与することができる。例えば、追加の治療剤を抗CD52治療法前後で投与することができる。本発明においては、かかる併用療法に有効なキットも提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、患者はヒト患者であり、抗CD52抗体はヒトCD52に対して直接働きかける。そのような実施形態では、抗CD52抗体がヒト抗体、ヒト化抗体、またはヒトFc部分を持つキメラ抗体であることが好ましい。
【0011】
本発明はさらに、本発明の治療法に有効な医薬を製造する抗CD52抗体の使用を提示する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】図1Aと1Bはモノクローナルラット抗マウスCD52 IgG2a抗体で治療したNZB/NZWF1マウスにおけるリンパ球の枯渇の欠如を示す。対照ラットIgGまたはラット抗マウスCD52抗体の初回の注射前にベースラインで、そして2日後の2回目の抗体注射前に個々のマウスから血液を採取した。CD3+T細胞およびCD19+B細胞の絶対数を得るために、血液試料を染色してフローサイトメトリーで分析した。
【図1B】図1Aと1Bはモノクローナルラット抗マウスCD52 IgG2a抗体で治療したNZB/NZWF1マウスにおけるリンパ球の枯渇の欠如を示す。対照ラットIgGまたはラット抗マウスCD52抗体の初回の注射前にベースラインで、そして2日後の2回目の抗体注射前に個々のマウスから血液を採取した。CD3+T細胞およびCD19+B細胞の絶対数を得るために、血液試料を染色してフローサイトメトリーで分析した。
【図2A】図2Aから2Fまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿タンパク質レベルを首尾よく減らしたことを示す。図2Aから2Eまでは抗マウスCD52治療マウスが陽性対照のシクロフォスファミド治療群のマウスと同等な尿タンパク質レベルであったことを示す一方、対照ラットIgG治療マウスが媒体対照(PBS)治療マウスと同等の尿タンパク質レベルであったことを示す。図2Fは試験の終わりまでに、67%のラットIgGと60%の媒体治療マウスと比べて、38%の抗マウスCD52抗体治療マウスと20%のシクロフォスファミド治療マウスだけが重度のタンパク尿(500mg/dL/日超)に達したことを示す。
【図2B】図2Aから2Fまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿タンパク質レベルを首尾よく減らしたことを示す。図2Aから2Eまでは抗マウスCD52治療マウスが陽性対照のシクロフォスファミド治療群のマウスと同等な尿タンパク質レベルであったことを示す一方、対照ラットIgG治療マウスが媒体対照(PBS)治療マウスと同等の尿タンパク質レベルであったことを示す。図2Fは試験の終わりまでに、67%のラットIgGと60%の媒体治療マウスと比べて、38%の抗マウスCD52抗体治療マウスと20%のシクロフォスファミド治療マウスだけが重度のタンパク尿(500mg/dL/日超)に達したことを示す。
【図2C】図2Aから2Fまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿タンパク質レベルを首尾よく減らしたことを示す。図2Aから2Eまでは抗マウスCD52治療マウスが陽性対照のシクロフォスファミド治療群のマウスと同等な尿タンパク質レベルであったことを示す一方、対照ラットIgG治療マウスが媒体対照(PBS)治療マウスと同等の尿タンパク質レベルであったことを示す。図2Fは試験の終わりまでに、67%のラットIgGと60%の媒体治療マウスと比べて、38%の抗マウスCD52抗体治療マウスと20%のシクロフォスファミド治療マウスだけが重度のタンパク尿(500mg/dL/日超)に達したことを示す。
【図2D】図2Aから2Fまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿タンパク質レベルを首尾よく減らしたことを示す。図2Aから2Eまでは抗マウスCD52治療マウスが陽性対照のシクロフォスファミド治療群のマウスと同等な尿タンパク質レベルであったことを示す一方、対照ラットIgG治療マウスが媒体対照(PBS)治療マウスと同等の尿タンパク質レベルであったことを示す。図2Fは試験の終わりまでに、67%のラットIgGと60%の媒体治療マウスと比べて、38%の抗マウスCD52抗体治療マウスと20%のシクロフォスファミド治療マウスだけが重度のタンパク尿(500mg/dL/日超)に達したことを示す。
【図2E】図2Aから2Fまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿タンパク質レベルを首尾よく減らしたことを示す。図2Aから2Eまでは抗マウスCD52治療マウスが陽性対照のシクロフォスファミド治療群のマウスと同等な尿タンパク質レベルであったことを示す一方、対照ラットIgG治療マウスが媒体対照(PBS)治療マウスと同等の尿タンパク質レベルであったことを示す。図2Fは試験の終わりまでに、67%のラットIgGと60%の媒体治療マウスと比べて、38%の抗マウスCD52抗体治療マウスと20%のシクロフォスファミド治療マウスだけが重度のタンパク尿(500mg/dL/日超)に達したことを示す。
【図2F】図2Aから2Fまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿タンパク質レベルを首尾よく減らしたことを示す。図2Aから2Eまでは抗マウスCD52治療マウスが陽性対照のシクロフォスファミド治療群のマウスと同等な尿タンパク質レベルであったことを示す一方、対照ラットIgG治療マウスが媒体対照(PBS)治療マウスと同等の尿タンパク質レベルであったことを示す。図2Fは試験の終わりまでに、67%のラットIgGと60%の媒体治療マウスと比べて、38%の抗マウスCD52抗体治療マウスと20%のシクロフォスファミド治療マウスだけが重度のタンパク尿(500mg/dL/日超)に達したことを示す。
【図3A】図3Aから3Gまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿中アルブミンレベルを首尾よく減らしたことを示す。尿中アルブミンレベルは半定量的な「Albustix」法(図3A)、および定量的なELISAアッセイ(図3B)により評価した。図3Aから3Fまでは抗CD52抗体治療マウス中の尿中アルブミンレベルが媒体(PBS)および対照ラットIgG治療マウスで見られるそれよりも低いことを示す。図3Gは試験の終わりまでに、80%の媒体治療マウスと89%のラットIgG治療マウスと比べて、50%の抗CD52抗体治療マウスだけに有意なアルブミン尿(40mg/dL/日超)を発症したことを示す。
【図3B】図3Aから3Gまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿中アルブミンレベルを首尾よく減らしたことを示す。尿中アルブミンレベルは半定量的な「Albustix」法(図3A)、および定量的なELISAアッセイ(図3B)により評価した。図3Aから3Fまでは抗CD52抗体治療マウス中の尿中アルブミンレベルが媒体(PBS)および対照ラットIgG治療マウスで見られるそれよりも低いことを示す。図3Gは試験の終わりまでに、80%の媒体治療マウスと89%のラットIgG治療マウスと比べて、50%の抗CD52抗体治療マウスだけに有意なアルブミン尿(40mg/dL/日超)を発症したことを示す。
【図3C】図3Aから3Gまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿中アルブミンレベルを首尾よく減らしたことを示す。尿中アルブミンレベルは半定量的な「Albustix」法(図3A)、および定量的なELISAアッセイ(図3B)により評価した。図3Aから3Fまでは抗CD52抗体治療マウス中の尿中アルブミンレベルが媒体(PBS)および対照ラットIgG治療マウスで見られるそれよりも低いことを示す。図3Gは試験の終わりまでに、80%の媒体治療マウスと89%のラットIgG治療マウスと比べて、50%の抗CD52抗体治療マウスだけに有意なアルブミン尿(40mg/dL/日超)を発症したことを示す。
【図3D】図3Aから3Gまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿中アルブミンレベルを首尾よく減らしたことを示す。尿中アルブミンレベルは半定量的な「Albustix」法(図3A)、および定量的なELISAアッセイ(図3B)により評価した。図3Aから3Fまでは抗CD52抗体治療マウス中の尿中アルブミンレベルが媒体(PBS)および対照ラットIgG治療マウスで見られるそれよりも低いことを示す。図3Gは試験の終わりまでに、80%の媒体治療マウスと89%のラットIgG治療マウスと比べて、50%の抗CD52抗体治療マウスだけに有意なアルブミン尿(40mg/dL/日超)を発症したことを示す。
【図3E】図3Aから3Gまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿中アルブミンレベルを首尾よく減らしたことを示す。尿中アルブミンレベルは半定量的な「Albustix」法(図3A)、および定量的なELISAアッセイ(図3B)により評価した。図3Aから3Fまでは抗CD52抗体治療マウス中の尿中アルブミンレベルが媒体(PBS)および対照ラットIgG治療マウスで見られるそれよりも低いことを示す。図3Gは試験の終わりまでに、80%の媒体治療マウスと89%のラットIgG治療マウスと比べて、50%の抗CD52抗体治療マウスだけに有意なアルブミン尿(40mg/dL/日超)を発症したことを示す。
【図3F】図3Aから3Gまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿中アルブミンレベルを首尾よく減らしたことを示す。尿中アルブミンレベルは半定量的な「Albustix」法(図3A)、および定量的なELISAアッセイ(図3B)により評価した。図3Aから3Fまでは抗CD52抗体治療マウス中の尿中アルブミンレベルが媒体(PBS)および対照ラットIgG治療マウスで見られるそれよりも低いことを示す。図3Gは試験の終わりまでに、80%の媒体治療マウスと89%のラットIgG治療マウスと比べて、50%の抗CD52抗体治療マウスだけに有意なアルブミン尿(40mg/dL/日超)を発症したことを示す。
【図3G】図3Aから3Gまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿中アルブミンレベルを首尾よく減らしたことを示す。尿中アルブミンレベルは半定量的な「Albustix」法(図3A)、および定量的なELISAアッセイ(図3B)により評価した。図3Aから3Fまでは抗CD52抗体治療マウス中の尿中アルブミンレベルが媒体(PBS)および対照ラットIgG治療マウスで見られるそれよりも低いことを示す。図3Gは試験の終わりまでに、80%の媒体治療マウスと89%のラットIgG治療マウスと比べて、50%の抗CD52抗体治療マウスだけに有意なアルブミン尿(40mg/dL/日超)を発症したことを示す。
【図4】図4はラット抗マウスCD52抗体による治療がdsDNAに対する自己抗体の発生に対して何ら検出可能な効果がなかったことを示す。抗マウスCD52で治療されたマウスの抗体力価は媒体およびラットIgG治療マウスの力価と同等であった。シクロフォスファミド治療のみがdsDNAに対する血清抗体の上昇を効果的に減少させた。
【図5】図5はラット抗マウスCD52抗体での治療によりNZB/NZWF1マウスにおいて有意な生存上の利益を提供したことを示す。同等のレベルの生存は抗マウスCD52抗体の2つの用量(75%生存)とシクロフォスファミドの毎週の注射(80%)で得た(P値=0.9218、抗マウスCD52抗体 対 シクロフォスファミド)。対照ラットIgGで治療したマウスでは生存は20%だけであった(P値=0.0401、抗マウスCD52抗体 対 対照ラットIgG)(図5)。
【図6A】図6Aから6Cまでは採取したマウスの腎臓についての組織学検査の結果を示す。治療群間において正中糸球体症、間質性炎症またはタンパク質カスト重症度スコアには統計的に有意な違いは無かったが、図6Aに示すようにラットIgGおよび媒体対照群と比べて抗マウスCD52抗体およびシクロフォスファミドでの治療が正中糸球体症スコアを減少させた。図6Bに示すようにシクロフォスファミド投与群において間質性炎症の減少も認められた。
【図6B】図6Aから6Cまでは採取したマウスの腎臓についての組織学検査の結果を示す。治療群間において正中糸球体症、間質性炎症またはタンパク質カスト重症度スコアには統計的に有意な違いは無かったが、図6Aに示すようにラットIgGおよび媒体対照群と比べて抗マウスCD52抗体およびシクロフォスファミドでの治療が正中糸球体症スコアを減少させた。図6Bに示すようにシクロフォスファミド投与群において間質性炎症の減少も認められた。
【図6C】図6Aから6Cまでは採取したマウスの腎臓についての組織学検査の結果を示す。治療群間において正中糸球体症、間質性炎症またはタンパク質カスト重症度スコアには統計的に有意な違いは無かったが、図6Aに示すようにラットIgGおよび媒体対照群と比べて抗マウスCD52抗体およびシクロフォスファミドでの治療が正中糸球体症スコアを減少させた。図6Bに示すようにシクロフォスファミド投与群において間質性炎症の減少も認められた。
【図7A】図7Aから7Cまでは腎臓に浸潤するFoxP3+制御性T細胞の増大を示す。免疫蛍光的にタグを付けられた抗体を用いてマウス腎臓をCD4+、CD8+、およびFoxP3+細胞について染色した。陽性細胞の相対存在量について腎切片について盲検下で0から4までのスケールでスコアを付けた。シクロフォスファミド治療により腎臓に浸潤するCD4+、CD8+、およびFoxP3+細胞が有意に減少した。これに比べて、抗CD52抗体治療ではCD4+およびCD8+リンパ球により腎臓への浸潤を防ぐことができなかったが、制御性T細胞のマーカーであるFoxP3について陽性の細胞の存在を増大させた。
【図7B】図7Aから7Cまでは腎臓に浸潤するFoxP3+制御性T細胞の増大を示す。免疫蛍光的にタグを付けられた抗体を用いてマウス腎臓をCD4+、CD8+、およびFoxP3+細胞について染色した。陽性細胞の相対存在量について腎切片について盲検下で0から4までのスケールでスコアを付けた。シクロフォスファミド治療により腎臓に浸潤するCD4+、CD8+、およびFoxP3+細胞が有意に減少した。これに比べて、抗CD52抗体治療ではCD4+およびCD8+リンパ球により腎臓への浸潤を防ぐことができなかったが、制御性T細胞のマーカーであるFoxP3について陽性の細胞の存在を増大させた。
【図7C】図7Aから7Cまでは腎臓に浸潤するFoxP3+制御性T細胞の増大を示す。免疫蛍光的にタグを付けられた抗体を用いてマウス腎臓をCD4+、CD8+、およびFoxP3+細胞について染色した。陽性細胞の相対存在量について腎切片について盲検下で0から4までのスケールでスコアを付けた。シクロフォスファミド治療により腎臓に浸潤するCD4+、CD8+、およびFoxP3+細胞が有意に減少した。これに比べて、抗CD52抗体治療ではCD4+およびCD8+リンパ球により腎臓への浸潤を防ぐことができなかったが、制御性T細胞のマーカーであるFoxP3について陽性の細胞の存在を増大させた。
【図8A】図8Aと8BはNZB/NZWF1マウスにおいて異なる用量レベル(1mg/kg、5mg/kgおよび10 mg/kg)でのモノクローナルマウス抗マウスCD52抗体(クローンW19)による有効なリンパ球の枯渇を示す。血液(図8A)において、全でのリンパ球系集団において、5mg/kg用量と10mg/kg用量で用量−依存性枯渇が認められ、これにより全ての細胞型(CD4+細胞、CD8+細胞、NK細胞およびB細胞)のほぼ完全な枯渇がおこる。脾臓(図8B)において、類似した用量−依存性枯渇が認められる。特に、CD4+およびCD8+T細胞の両方の有意な枯渇が脾臓で認められる一方で、検査した全ての投与量レベルでB細胞がより少ない程度まで枯渇されるように思われる。
【図8B】図8Aと8BはNZB/NZWF1マウスにおいて異なる用量レベル(1mg/kg、5mg/kgおよび10 mg/kg)でのモノクローナルマウス抗マウスCD52抗体(クローンW19)による有効なリンパ球の枯渇を示す。血液(図8A)において、全でのリンパ球系集団において、5mg/kg用量と10mg/kg用量で用量−依存性枯渇が認められ、これにより全ての細胞型(CD4+細胞、CD8+細胞、NK細胞およびB細胞)のほぼ完全な枯渇がおこる。脾臓(図8B)において、類似した用量−依存性枯渇が認められる。特に、CD4+およびCD8+T細胞の両方の有意な枯渇が脾臓で認められる一方で、検査した全ての投与量レベルでB細胞がより少ない程度まで枯渇されるように思われる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は被験者への抗CD52抗体投与に関連した我々の発見に基づいている。抗CD52抗体がマウスループスモデルでの局所炎症組織へのFoxP3+制御性T細胞の浸潤を増大させることを発見した。さらに、このマウスループスモデルにおいて抗CD52抗体での治療が尿タンパク質およびアルブミンレベルを減少させることができることも発見した。
【0014】
従って、本発明は患者(例えば、ヒト患者)において抗CD52抗体によりループスを治療する方法を提示する。ある実施形態では、治療はCNS、腎臓、心臓、および肝臓などの局所炎症組織へのFoxP3+制御性T細胞の補充に役立ち、それによりループス患者の症状の緩和または予防を行う。ある実施形態では、治療はループス患者の尿タンパク質および/またはアルブミンレベルの減少に役立つ。ある実施形態では、治療はループス患者のリンパ球を枯渇する。本発明のさらなる実施態様では、患者の免疫系を制御を改善し、かつ自己免疫の症状を緩和するためにFoxP3+制御性T細胞の成長および/または活性化を刺激する薬剤で患者をさらに治療する。
Lupusループスの発現
本発明の方法は、限定するものではないが、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、皮膚エリテマトーデス、CNSループス、心血管系の、肺の、肝臓の、血液学的な、消化管の、および筋骨格系の発現、新生児エリテマトーデス、小児期発症全身性エリテマトーデス、薬剤誘導性エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、およびループス発現となる補体欠乏症候群を含めたループスの各種の発現に罹患している患者に用いることができる。本発明の方法は活性なループスエピソードに罹患している患者、または不活性なループスの患者の治療に用いることができる。
抗CD52抗体治療
本発明の方法ではCD52に対する抗体を罹患した器官系(例えば、ループス腎炎における血尿および/またはタンパク尿)のモニタリングによって、および/または数種類の器官系にわたっての疾患の重症度の複合スコアを示す疾患活動性指数(例えば、BILAG、SLAM、SLEDAI、ECLAM)を用いることによって測定される臨床的エンドポイントに達する治療有効量を患者に投与する。Mandl et al., ”Monitoring patients with systemic lupus erythematosus” in Systemic Lupus Erythematosus, 4th edition, pp. 619−631, R.G. Lahita, Editor, Elsevier Academic Press, (2004)を参照。抗CD52抗体の治療有効量とは、治療される被験者が1つ以上の所望の臨床エンドポイントへ到達するのに役立つ量である。
【0015】
CD52は正常および悪性のBとTリンパ球の両方により高レベルに発現される細胞表面タンパク質である(Hale et al., J Biol regul Homeost Agents 15:386−391 (2001); Huh et al., Blood 92: Abstract 4199 (1998); Elsner et al., Blood 88:4684−4693 (1996); Gilleece et al., Blood 82:807−812 (1993); Rodig et al., Clin Cancer Res 12:7174−7179 (2006); Ginaldi et al., Leuk Res 22:185−191 (1998))。CD52は単球、マクロファージ、および好酸球により低レベルに発現するが、成熟したナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、および血管系幹細胞での発現は僅かである。同文献。さらに、CD52は精巣上体および精管の上皮細胞により産生され、生殖管を通過する間に精子がこれを獲得する(Hale et al., 2001, supra; Domagala et al., Med Sci Monit 7:325−331 (2001))。CD52の正確な生物学的機能については分かっていないがT細胞の移動および共刺激に関与すると示唆するいくつかの証拠もある(Rowan et al., Int Immunol 7:69−77 (1995); Masuyama et al., J Exp Med 189:979−989 (1999); Watanabe et al., Clin Immunol 120:247−259 (2006))。
【0016】
ヒトCD52抗原ポリペプチド配列の例は、
MKRFLFLLLT ISLLVMVQIQ TGLSGQNDTS QTSSPSASSN ISGGIFLFFV ANAIIHLFCF S(配列番号1;NCBIアクセッション番号NP_001794)
である。成熟したヒトCD52抗原はわずか12個のアミノ酸を有し、(Xia et al., Eur J Immunol. 21(7):1677−84 (1991))、相当に短く、グリコシル化されている。例えば、成熟したヒトCD52抗原はGQNDTSQTSSPS(配列番号2)のようなポリペプチド配列である。
【0017】
本発明に含まれる抗CD52抗体治療は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4などの任意の好適なアイソタイプの抗体を含有する抗CD52抗体を用いた投与法を含む。さらに、有用な抗体は定常Fc領域が修飾されており、好中球および/またはNK細胞におけるFc受容体に同じかまたはより良好な親和性で結合するか、または他の方法で改善した抗体依存性細胞媒体性細胞傷害性(ADCC)および補体依存性細胞傷害性(CDC)を有する抗体を含む。本発明において有用な抗CD52抗体はCD52に特異的に結合するがCD52分子以外には特異的に結合しない抗体である。例えば、抗CD52抗体とCD52との間の特異的結合はフローサイトメトリーにより、CD52+細胞へ結合する抗体のEC50を計測することで決定できる。特異的結合は例えば、EC50が0.5から10μg/mlの範囲で表示することができる。臨床応用の場合、薬学的に許容される純度であれば好ましくは抗CD52抗体はモノクローナルであってもよい。例えば、患者が所望の臨床エンドポイントへ到達するのに役立つ量の治療有効量を任意に薬学的に許容される担体で抗体を好適な方法で投与してもよい。
【0018】
治療対象の患者がヒトである場合、抗CD52抗体がヒトCD52に特異的に結合していることが好ましい。ヒト患者への反復投与時の免疫原性を最小限にするために、抗体がキメラ化(例えば、定常ドメインがヒト抗体の定常ドメインで置換されているマウス抗CD52抗体)、ヒト化(CDRが、マウス抗ヒトCD52抗体からのCDRで置換されているヒト抗体)、または完全ヒト抗体であることが更に好ましい。有用な抗体の例はアレムツズマブ(CAMPATH−1H(登録商標)およびそれらの改変体)である。アレムツズマブは28kDグリコシル化グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合細胞表面タンパク質であるヒトCD52(hCD52)に対する組換え型ヒト化IgG1モノクローナル抗体である(Hale et al., Tissue Antigens 35:118−27 (1990); Hale et al., 2001, supra)。現在、アレムツズマブはB細胞慢性リンパ性白血病に対する第1選択療法として承認されており、多発性硬化症の治療目的で第3段階臨床試験にある。有用な抗体は限定するものではなく、hCD52への結合に関してアレムツズマブと競合する抗体、および/またはアレムツズマブまたはhCD52上の他のエピトープと同じエピトープまたは重複エピトープと結合する抗体である。例えば、国際特許出願第PCT/US2010/034704号に記載されたヒト化抗体を使用することができる。
【0019】
当業者であれば例えば、XENOMOUSE(登録商標) technology (Amgen, Thousand Oaks, CA)を用いてヒト抗hCD52抗体を作製することができる。キメラおよびヒト化抗hCD52抗体を例えば、ラット抗hCD52抗体またはマウス抗hCD52抗体から十分に確立された抗体技術により作製することができる。
【0020】
所望により、本発明に有用な抗CD52抗体は例えば、治療、診断、あるいはアッセイでのモニタリングを可能にする検出可能な標識を含んでもよい。好適な検出可能な標識は例えば、放射性同位元素(例えば、インジウム111、テクネチウム99mまたはヨウ素131)、陽電子放出標識(フッ素19)、常磁性イオン(ガドリニウム(III)、マンガン(II))、エピトープ標識(タグ)、親和性標識(ビオチン、アビジン)、スピン標識、酵素、蛍光基、または化学発光基を含む。標識を用いない場合は、複合体形成を表面プラズモン共鳴、ELISA、フローサイトメトリー、またはその他の好適な方法で決定することができる。本発明に用いる抗CD52抗体は生物活性化合物(例えば、サイトカイン、および細胞毒性薬)などの別の治療剤に結合体化してもよい。本発明に用いる抗CD52抗体は、さらに例えば、半減期などの抗体の薬物動態を向上させる化学反応または遺伝子改変を経由して他の部分(例えば、PEG化部分)に結合体化してもよい。ある実施形態では、本発明に用いる抗CD52抗体は、例えば、化学的結合体化または遺伝子改変(インフレームでサイトカインのコード配列を抗体コード配列に付着させ、これにより抗体‐サイトカイン融合タンパク質を創製する)を経由して好適なサイトカインに結合することができる。
FoxP3+制御性T細胞の浸潤の増大
他のT細胞に比べた場合、例えば、炎症または組織障害部位などの局所組織へのこれら細胞の浸潤の増大を含めて、抗CD52抗体が、FoxP3+制御性T細胞を増大させる傾向があることを発見した。制御性T細胞(「Treg」またはサプレッサーT細胞としても知られる)は接触に依存するまたは接触に依存しない(例えば、サイトカインの産生)機構を経由して他のリンパ系細胞の増殖および/または機能を阻害することができる細胞である。γδT細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞およびダブルネガティブCD4−CD8−T細胞を含めて、いくつかのタイプの制御性T細胞が説明されている。Bachら、IMMUNOL. 3:189〜98(2003)を参照のこと。CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞は「天然に存在する」制御性T細胞として言及されており、CD4、CD25およびホークヘッドファミリー転写因子FoxP3(forkhead box p3)を発現する。
【0021】
治療している自己免疫疾患の症状を抑えるためにはTregの上昇が望ましくあり得る。従って、FoxP3+(例えば、CD4+CD25+FoxP3+)制御性T細胞を刺激する薬剤を患者に投与することができる。例えば、薬剤はこれらのT細胞を活性化し、これらの細胞の集団を拡大し、これらの細胞の循環を動員させかつ高め、および/またはこれらの細胞を標的部位に補充してもよい。かかる薬剤の例はラパマイシン、活性なまたは潜在性のTGF−β(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、およびTGF−β5)、IL−10、IL−4、IFN−α、ビタミンD3、デキサメタゾン、およびミコフェノール酸モフェチルである(例えば、Barrat et al., J. Exp. Med. 195:603−616 (2002); Gregori et al., J Immunol. 167: 1945−1953 (2001); Battaglia et al., Blood 105: 4743−4748 (2005); Battaglia et al., J. Immunol. 177: 8338−8347 (2010)を参照)。本発明のある実施形態では、Tregの増大は1か所または複数の炎症部位(例えば、血液、中枢神経系、心臓、肝臓、関節、腎臓、皮膚、腸管、または血管系)で起こりうる。
【0022】
抗CD52抗体による治療前、その間、またはその後にTreg刺激剤を投与してもよい。本発明で使用する抗CD52抗体は、Tエフェクター細胞およびB細胞を優先的に枯渇させるが、FoxP3+Tregには優先的に影響を及ぼさない(例えば、Hu et al., Immunology 128: 260−270 (2009)を参照)。従って、抗CD52抗体およびTreg刺激剤の両方を用いる治療計画は患者の免疫系を再平衡させることでループス治療、または他の自己免疫疾患の治療の有効性を大いに高める。
尿タンパク質および/またはアルブミンレベルの減少
ループス患者は尿中の過剰な血清タンパク質またはアルブミンであるタンパク尿またはアルブミン尿を示す。ループスでは、尿中のタンパク質またはアルブミンのレベルで測定した腎損傷は最も急性の損傷の1つであり、死亡率の少なくとも50%を占める。本発明の治療法(抗CD52抗体のみ、または抗CD52抗体とTreg刺激剤の併用)は患者の尿タンパク質および/またはアルブミンレベルを投与前のレベルと比べて少なくとも、25%、50%、75%、または90%減少させることができる。ある実施形態では、抗CD52抗体の投与前の尿タンパク質レベルは少なくとも500mg/L/日より大きいかまたは等しい(例えば、1、000mg/L/日、2、000mg/L/日、または3,000mg/L/日)。抗CD52抗体での最初の治療の後、尿タンパク質レベルが500mg/L/日未満または1、000mg/L/日未満に低下する。
併用療法
本発明のいくつかの様態では、併用療法ではループスの患者に1つ以上の追加の治療剤(例えば、免疫抑制剤)とともに抗CD52抗体を投与することができる。第2の治療剤は例えば、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)(例えば、シクロホスファミドまたはミコフェノール酸)、免疫抑制薬(例えば、メトトレキサートおよびアザチオプリン)、BまたはTリンパ球を標的とする分子(例えば、CD20抗体、例えば、Rituxan(登録商標)として知られているリツキシマブ、抗BLys抗体、または抗BAFF−R抗体)であり得る。いくつかの実施様態では、追加の薬剤は、抗CD52抗体によって媒介されたリンパ球除去の後に生じる再構成プロセスを歪曲し、操作し、および/または増強する、例えば、サイトカイン(例えば、IL‐7)、抗サイトカイン受容体抗体、または可溶性受容体である(Sportes et al., Cytokine Therapies: Ann. N.Y. Acad. Sci. 1182:28−38 (2009)を参照)。抗CD52抗体による治療前、その間、またはその後に追加の治療剤を投与することができる。
【0023】
別途定義されないかぎり、本明細書に用いられるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の技術者により一般に理解されるのと同じ意味をもつ。本願において記載した同様のまたは等価な方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することもできるが、代表的な例示的方法および材料について以下に記載する。本明細書で言及される全ての刊行物、および他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるものとする。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配するものとする。本明細書において多くの文献が引用されているが、この引用はこれらの文献のいかなるものも当該技術分野の技術常識の一部を形成するという容認を構成しない。本明細書および特許請求の範囲を通して、「含む」、「含んでいる」または「含む」などの変法は、所定の整数または整数の群を含むことを意味することを理解されるべきであるが、任意の他の整数または整数の群を排除するものではない。材料、方法および実施例は例示のみを目的とするもので、限定するものではない。
【実施例】
【0024】
実施例
以下の実施例は本発明の方法と材料を示すことを意図している。当該分野で通常見られるような記載した条件とパラメータについての好適な改変および調整は本発明の精神および範囲内にある。
【0025】
マウスループスモデル
NZB/NZWF1マウスは、ループスの自然発生モデルを示す。加齢とともに、動物は多くの細胞抗原に対する自己抗体を発生し、これは、最終的に腎臓における免疫複合体の沈着をもたらし、進行性の致死性の腎臓病となる(Peutz−Kootstra et al., J Lab Clin Med 137: 244−260 (2001)を参照)。以下の実施例では、雌のNZB/NZWF1マウスを使い全身性ループスの過程に対する抗CD52抗体の効果を研究した。
【0026】
抗CD52抗体
実施例1から6では、モノクローナルラット抗マウスCD52IgG2a抗体を使用した。そのラットアイソタイプはマウスでのエフェクター機能(例えば、補体結合および抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)において最適なアイソタイプではない。実施例7と8では、モノクローナルIgG2aマウス抗マウスCD52抗体を使用した。
【0027】
実施例1から6では、NZB/NZWF1マウス(15週齢、Jackson Labs)を4つの群に分け、それらを異なる試験項目で治療した(表1)。実施例1から6では、ナイトロジェンマスタードアルキル化剤であるシクロホスファミドを陽性対照として使用した。シクロホスファミドは各種の癌およびループスを含有した特定の自己免疫疾患の治療に使われてきた。
【0028】
【表1】
*ラットIgG2aELISAにより、原液中の全タンパク質含有量の内184μg/mlのみがラットIgG2aから構成されていることが示され、これは有効用量がわずか1.7mg/kgであることを示唆している。
【0029】
実施例1から6の時間ポイントは以下の通りである。
i)週齢19週から開始してその後の4週間ごとに、IgG抗2本鎖DNA(抗dsDNA)抗体力価を評価するために個々のマウスから血液を採取し、かつ、タンパク尿およびアルブミン尿を計測するために代謝ケージの中で24時間の尿採取を行った。
ii)試験項目での治療を動物がdsDNAに対する抗体の有意な力価および/またはタンパク尿の上昇を生じ始めた週齢31週で開始した。正常ラットIgGで治療するグループ2とラット抗マウスCD52抗体で治療するグループ3のそれぞれに合計2回の注射を与えた。シクロホスファミドで治療するグループ4は試験終了まで毎週注射を与えた。
iii)抗体の最初の注射の前に、ベースラインの蛍光活性化細胞分取(FACS)解析(CD3、CD19陽性細胞を染色、リンパ球の絶対数を計数)のためにグループ2とグループ3から血液を採取した。
iv)抗体の最初の注射から2日後、2回目の抗体の注射をグループ2とグループ3に行った。2回目の注射の前に、フローサイトメトリー分析(CD3、CD19陽性細胞を染色、絶対数を計数)のためにグループ2とグループ3から血液を採取した。さらにフローサイトメトリー染色のためにグループ2のマウス1匹およびグループ3のマウス1匹からの脾臓を採取した。
試験期間中に瀕死状態になったあらゆる動物は屠殺し、可能な場合は腎臓1つを採取した。マウスが43週齢に達したときに試験を終了し、組織学のために各動物から腎臓1つを採取した。
【0030】
実施例1
ラット抗マウスCD52抗体で治療したNZB/NZWF1マウスにおけるリンパ球の枯渇の欠如
モノクローナルラット抗マウスCD52抗体での治療がCD52+リンパ球の枯渇に繋がったのかどうかを測定するために、ラットIgGまたはラット抗マウスCD52の最初の注射の前にベースラインで、そしてその2日後抗体の第2回注射の前に個々のマウスから血液を採取した。CD3+T細胞およびCD19+B細胞の絶対数を得るために、血液試料を染色してフローサイトメトリーにより分析した。50μlの全血試料をRPMI培地中の10%正常マウス血清と0.05%アジ化ナトリウムでブロッキングし、次にラット抗マウスCD3‐APCおよびラット抗マウスCD19‐PE(BD Pharmingen, San Diego, CA)で染色した。FACSCaliburTM(Becton−Dickinson, San Diego, CA)で染色についてリンパ球を分析した。データ解析をCell Quest Pro Software (Becton−Dickinson)で行った。結果は、BまたはTリンパ球の有意な枯渇は無いことを示した(図1Aおよび1B)。
【0031】
実施例2
タンパク尿およびアルブミン尿のレベル
A.タンパク尿のレベル
製造業者(Microprotein−PR,Sigma)の指示書に従い総タンパク質濃度を測定するように設計された比色検定を用いて個々のマウスの尿中のタンパク質レベルを測定した。試験試料のタンパク質濃度を計算するために標準物質を使用した。計測時点でのリンパ球の枯渇の欠如にもかかわらず、ラット抗マウスCD52抗体での治療は、尿中総タンパク質レベルによって計測される腎臓病の進行を阻害において成功であった(図2Aから2E)。試験期間中、抗マウスCD52治療マウスが陽性対照のシクロフォスファミド治療群のマウスと同等な尿タンパク質レベルであったことを示した一方、対照ラットIgG治療マウスが媒体対照マウスと同等の尿タンパク質レベルを示した(図2Aから2E)。67%のラットIgGと60%の媒体治療マウスと比べて、38%の抗マウスCD52抗体治療マウスと20%のシクロフォスファミド治療マウスだけが重度の蛋白尿(500mg/dL/日超)に達した(図2F)。
B.アルブミン尿のレベル
製造業者(Albuwell−M, Exocell, Inc.)の指示書に従って、尿中のアルブミンレベルは間接的競合ELISAキットを用いて評価した。尿試料中のアルブミン濃度はマウスアルブミンの既知濃度で得た標準曲線由来である(図3B)。さらに、半定量的な「Albustix」法(Roche Diagnostics)(図3A)を使用した。ここでは、尿にあるアルブミン量によって色が変わるインジケーター濾紙に尿が沈着し、対応する0から6までのスコアを割り当てた。総タンパク質レベルと同じように、抗マウスCD52抗体による治療はNZB/NZWF1マウスでのアルブミン尿の発現抑制に有効であった(図3Aから3G)。抗CD52抗体治療マウスの尿中アルブミンレベルは媒体およびラットIgG治療マウスに認められるレベルよりも低かった。しかしながら、この群に見られるアルブミン尿の抑制はシクロフォスファミド治療群で得られた抑制ほど大きくはなかった。試験の終わりまでに、80%の媒体治療マウスと89%のラットIgG治療マウスと比べて、50%の抗CD52抗体治療マウスだけに有意なアルブミン尿(40mg/dL/日超)を発症した(図3G)。
【0032】
実施例3
2本鎖DNAに対する抗体レベル
個々のマウスからの血清試料中のdsDNAに対するIgG抗体の力価をELISAで計測した。あらゆるssDNAを除去するためにマウスdsDNA(The Jackson Laboratory, BarHarbor, ME)をS1ヌクレアーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)により消化して、次に、4℃で一晩、96wellのELISAプレートのウエルをコーティングをするのに使用した(1μg/ml dsDNAの100μg/ウエル)。DNAの付着を促進するためにプレートを水中の0.01%硫酸プロタミンで予め処理した。コーティングをした後、プレートを2.5%のウシ血清アルブミンブロッキングバッファーと共に37℃で1時間インキュベートし、洗浄した。次に、血清の系列2倍希釈物100μlを2連のウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、dsDNAに結合した抗体を検出するために西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体化ヤギ抗マウスIgG(Pierce, Rockford, IL)を添加した(37℃で1時間)。洗浄した後、HRP基質を添加し、二重波長プレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)で参照波長650nMと共に490nMの比色分析産物の光学密度(OD)を読み取った。抗体力価は0.1より大きい、または等しいODを得る血清の希釈倍数の逆数として定義された。正常マウス血清を陰性対照(力価200以下、試験での最小希釈)として使用し、老齢ループスマウスからのプール血清を陽性対照(25,600の力価)として使用した。ラット抗マウスCD52抗体での治療はdsDNAに対する自己抗体の発生に対して何ら検出可能な効果がなかった(図4)。抗マウスCD52で治療されたマウスの抗体力価は媒体およびラットIgG治療マウスの力価と同等であった。シクロフォスファミド治療のみがdsDNAに対する血清抗体の上昇を効果的に減少させた(図4)。
【0033】
実施例4:生存の改善
NZB/NZWF1マウスにおいてラット抗マウスCD52抗体による治療の忍容性は良好であった。同等のレベルの生存は抗マウスCD52抗体の2回用量(75%生存)とシクロフォスファミドの毎週の注射(80%)で得た(P値=0.9218、抗マウスCD52抗体 対 シクロフォスファミド)(図5)。対照ラットIgGで治療されたマウスでは生存は20%だけであった(P値=0.0401、抗マウスCD52抗体 対 対照ラットIgG)(図5)。比較をすると、媒体治療マウスは60%の生存率を示し、このことは、対照ラットIgG群に大量の免疫グロブリンタンパク質の注射により恐らくは腎臓のストレスで疾患を悪化させ得るが、一方では、同量の抗マウスCD52材料では治療上の利益を提供したことを示唆する。
【0034】
実施例5
腎臓の組織学検査
屠殺時に、腎臓を収集し、10%の中性緩衝ホルマリンで固定し、次にパラフィン包埋した。切片は5μmの厚さに切断し、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)、リンタングステン酸ヘマトキシリン(PTAH)および過ヨウ素酸シッフ(PAS)染料で染色した。試験期間中に、陰性対照群(媒体およびラットIgG)の数匹の動物は屠殺する必要があったか、死亡で発見された。結果的に、試験終了時の解析に使える腎臓の数が少なくなり統計学的検出を限定した。
【0035】
採取した腎臓をさらに調べた。治療群間において正中糸球体症、間質性炎症またはタンパク質カスト重症度スコアには統計的に有意な違いは無かった(図6Aから6C)。しかしながら、ある種の傾向が認められた。ラットIgGおよび媒体対照群と比べて抗マウスCD52抗体およびシクロフォスファミドでの治療が正中糸球体症スコアを減少させた(図6A)。シクロフォスファミド治療群において間質性炎症の減少も認められた(図6B)。
【0036】
実施例6
腎臓におけるFoxP3+制御性T細胞の増大
免疫蛍光的にタグを付けられた抗体を用いて実施例5で得た腎臓の切片を、CD4+、CD8+、およびFoxP3+細胞の存在について更に染色した。CD4およびCD8陽性細胞の染色については、陽性細胞上に褐色染色を出すために腎臓凍結切片をアセトン固定し、ペルオキシダーゼ(Dako)、アビジン、ビオチン(Biocare)、およびタンパク質(Dako)ブロックで連続的にインキュベートし、次にビオチン化ラット抗マウスCD4(クローンL3T4; BD Pharmingen)またはビオチン化ヤギ抗マウスCD8(クローンLy−2; BD Pharmingen)、ストレプトアビジン‐HRPおよびDAB(3−3’‐ジアミノベンジジン)でインキュベートした。FoxP3陽性細胞の染色については、腎臓凍結切片を10%の中性緩衝ホルマリンで固定し、ペルオキシダーゼおよびタンパク質ブロックで連続的にインキュベートした。次に、陽性細胞上に褐色染色を出すためにラット抗マウスFoxP3抗体を添加し(eBioscience)、そして次にMach−2HRP結合体化抗ウサギ抗体(Biocare)およびDABを添加した。次に、細胞を可視化するために全ての切片をヘマトキシリンでさらに染色した。陽性細胞の相対存在量について盲検下で切片を0から4までのスケールでスコアを付けた。シクロフォスファミド治療により腎臓に浸潤するCD4+、CD8+、およびFoxP3+細胞が有意に減少した(図7Aから7C)。これに比べて、抗CD52抗体での治療ではCD4+およびCD8+リンパ球により腎臓への浸潤を防ぐことができなかったが、制御性T細胞のマーカーであるFoxP3について陽性の細胞の存在を増大させた(図7Aから7C)。
【0037】
実施例7
モノクローナルマウス抗マウスCD52抗体で治療したNZB/NZWF1マウスにおけるリンパ球の枯渇
所内で作製したモノクローナルIgG2aマウス抗マウスCD52抗体(クローンW19)を用いてマウスCD52を標的にすることを介したリンパ球枯渇にループスマウスが感受性であるかどうかを測定するために枯渇実験を実施した。NZB/NZWF1マウスを、媒体、1mg/kg、5mg/kg、または10mg/kgのモノクローナルマウス抗マウスCD52抗体で治療した。治療から3日後、脾細胞および末梢血を採取しフローサイトメトリーを用いてリンパ球枯渇の程度を評価した。抗体のすべての用量レベルで有意なレベルのリンパ球枯渇が血液と脾臓の両方で認められた。血液(図8A)において、全てのリンパ球系集団に用量−依存性枯渇が認められ、5mg/kg用量と10mg/kg用量は、全ての細胞型のほぼ完全な枯渇がおこる。脾臓(図8B)において、類似した用量−依存性枯渇が認められる。CD4+およびCD8+T細胞の両方の有意な枯渇が脾臓で認められる一方で、検査した全ての用量レベルでB細胞は、より少ない程度まで枯渇されるように思われる。
【0038】
実施例8
雌のNZB/NZWマウスにおける抗マウスCD52抗体の有効性の分析
実施例7で使用したモノクローナル抗マウスCD52抗体をNZB/NZWF1マウスループスモデルでの疾患の発症および/または進行に与える影響について試験した。初めに、明らかな疾患の発症の前に約21週齢の10匹のマウスの群に10mg/kgの対照抗体またはモノクローナルマウス抗マウスCD52抗体の2回の注射を1週間あけて与える。疾患の過程の間に、約32週齢の10匹のマウスの個別の群に10mg/kgの対照抗体またはモノクローナルマウス抗マウスCD52抗体の2回の注射を1週間あけて与える。約21週齢で開始し、陽性対照群に、50mg/kgのシクロフォスファミドを毎週与える。以下の読み取り値を調べる。1)フローサイトメトリーで測定したリンパ球の枯渇、2)ELISAで測定したdsDNAに対する自己抗体の発生、3)タンパク尿、および4)腎臓の組織学解析、ならびにこの方法によりCD52を標的にすることが腎損傷を緩和する程度をさらに測定する。
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年5月13日に出願された米国特許仮出願第61/177、924号の優先権を主張する。上記出願のすべての開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ループスは、血液、中枢神経系(CNS)、心臓、肝臓、関節、腎臓、肺、皮膚、腸管、および血管系などの体の多くの部分に影響を与える自己免疫疾患である。ループスに侵された組織または臓器には炎症が通常認められる。ループスの症状は血液パネル異常、関節痛、アテローム硬化、CNS疾患、感染、関節痛、倦怠感、発疹、潰瘍、腎炎、心血管疾患、および自己抗体の産生を含む。ループスには、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、皮膚エリテマトーデス、CNSループス、心血管系の発現、肺の発現、肝臓の発現、血液学的な発現、消化管の発現、筋骨格系の発現、新生児エリテマトーデス、小児期発症全身性エリテマトーデス、薬剤誘導性エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、およびループス発現となる補体欠乏症候群を含有する発現がある。Robert G. Lahita, Editor, Systemic Lupus Erythematosus, 4th Ed., Elsevier Academic Press, 2004を参照。米国では約150万から200万人がループスに罹患している。ループス患者の90%が女性である。現在、典型的には、ループスはコルチコステロイドおよび免疫抑制薬で治療する。ループス治療のために改善された治療法と組成物が急務である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
抗CD52抗体(例えば、アレムツズマブ)を用いてループスの治療のために新規で有効な治療法と組成物を私たちは考案した。いくつかの実施形態では、リンパ球を有意に枯渇させる抗体を使用する。別の実施形態では、リンパ球を有意に枯渇することがない方法、抗体を使用することもできる。
【0004】
ある態様では、本発明はループスの患者のFoxP3+(例えば、CD4+CD25+FoxP3+)制御性T細胞を増加させる方法を提示し、抗CD52抗体の治療有効量を患者に投与することを含む。ある実施形態では、本発明の方法は前記制御性T細胞を刺激する薬剤、例えば、ラパマイシン、TGF−β(活性なまたは潜在性のTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、またはTGF−β5)、IL−10、IL−4、IFN−α、ビタミンD3、デキサメタゾン、またはミコフェノール酸モフェチルを患者に投与することをさらに含む。制御性T細胞がループスの患者の炎症部位、例えば、血液、中枢神経系(CNS)、心臓、肝臓、関節、腎臓、肺、皮膚、腸管、または血管系などに浸潤してもよい。
【0005】
別の様態では、本発明はループスの患者の尿タンパク質および/またはアルブミンのレベルを減少する方法を提示し、抗CD52抗体の治療有効量を患者に投与することを含む。
【0006】
別の様態では、本発明はループスの患者のリンパ球(例えば、B細胞およびT細胞)を枯渇させる方法をさらに提示し、抗CD52抗体の治療有効量を患者に投与することを含む。
【0007】
別の様態では、本発明は治療を必要としている患者(例えば、ループスの患者)の治療法をさらに提示し、少なくとも第2の化合物と混合した抗CD52抗体の治療有効量を患者に投与することを含む。典型的には第2の化合物は例えば、標準療法または実験的治療法などのループスの治療に使用するものである。
【0008】
本発明の方法は、限定はされないが、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、皮膚エリテマトーデス、中枢神経系(CNS)ループス、心血管系の発現、肺の発現、肝臓の発現、血液学的な発現、消化管の発現、筋骨格系の発現、新生児エリテマトーデス、小児期発症全身性エリテマトーデス、薬剤誘導性エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、またはループス発現となる補体欠乏症候群を含有する発現などの、ループスが1つ以上発現している患者の治療に使用することができる。
【0009】
本発明の併用療法においては、抗CD52抗体および追加の治療剤を患者に適宜、任意の順序で投与することができる。抗CD52抗体および追加の治療剤を同時にまたは連続的に、あるいはその両方で投与することができる。例えば、追加の治療剤を抗CD52治療法前後で投与することができる。本発明においては、かかる併用療法に有効なキットも提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、患者はヒト患者であり、抗CD52抗体はヒトCD52に対して直接働きかける。そのような実施形態では、抗CD52抗体がヒト抗体、ヒト化抗体、またはヒトFc部分を持つキメラ抗体であることが好ましい。
【0011】
本発明はさらに、本発明の治療法に有効な医薬を製造する抗CD52抗体の使用を提示する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】図1Aと1Bはモノクローナルラット抗マウスCD52 IgG2a抗体で治療したNZB/NZWF1マウスにおけるリンパ球の枯渇の欠如を示す。対照ラットIgGまたはラット抗マウスCD52抗体の初回の注射前にベースラインで、そして2日後の2回目の抗体注射前に個々のマウスから血液を採取した。CD3+T細胞およびCD19+B細胞の絶対数を得るために、血液試料を染色してフローサイトメトリーで分析した。
【図1B】図1Aと1Bはモノクローナルラット抗マウスCD52 IgG2a抗体で治療したNZB/NZWF1マウスにおけるリンパ球の枯渇の欠如を示す。対照ラットIgGまたはラット抗マウスCD52抗体の初回の注射前にベースラインで、そして2日後の2回目の抗体注射前に個々のマウスから血液を採取した。CD3+T細胞およびCD19+B細胞の絶対数を得るために、血液試料を染色してフローサイトメトリーで分析した。
【図2A】図2Aから2Fまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿タンパク質レベルを首尾よく減らしたことを示す。図2Aから2Eまでは抗マウスCD52治療マウスが陽性対照のシクロフォスファミド治療群のマウスと同等な尿タンパク質レベルであったことを示す一方、対照ラットIgG治療マウスが媒体対照(PBS)治療マウスと同等の尿タンパク質レベルであったことを示す。図2Fは試験の終わりまでに、67%のラットIgGと60%の媒体治療マウスと比べて、38%の抗マウスCD52抗体治療マウスと20%のシクロフォスファミド治療マウスだけが重度のタンパク尿(500mg/dL/日超)に達したことを示す。
【図2B】図2Aから2Fまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿タンパク質レベルを首尾よく減らしたことを示す。図2Aから2Eまでは抗マウスCD52治療マウスが陽性対照のシクロフォスファミド治療群のマウスと同等な尿タンパク質レベルであったことを示す一方、対照ラットIgG治療マウスが媒体対照(PBS)治療マウスと同等の尿タンパク質レベルであったことを示す。図2Fは試験の終わりまでに、67%のラットIgGと60%の媒体治療マウスと比べて、38%の抗マウスCD52抗体治療マウスと20%のシクロフォスファミド治療マウスだけが重度のタンパク尿(500mg/dL/日超)に達したことを示す。
【図2C】図2Aから2Fまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿タンパク質レベルを首尾よく減らしたことを示す。図2Aから2Eまでは抗マウスCD52治療マウスが陽性対照のシクロフォスファミド治療群のマウスと同等な尿タンパク質レベルであったことを示す一方、対照ラットIgG治療マウスが媒体対照(PBS)治療マウスと同等の尿タンパク質レベルであったことを示す。図2Fは試験の終わりまでに、67%のラットIgGと60%の媒体治療マウスと比べて、38%の抗マウスCD52抗体治療マウスと20%のシクロフォスファミド治療マウスだけが重度のタンパク尿(500mg/dL/日超)に達したことを示す。
【図2D】図2Aから2Fまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿タンパク質レベルを首尾よく減らしたことを示す。図2Aから2Eまでは抗マウスCD52治療マウスが陽性対照のシクロフォスファミド治療群のマウスと同等な尿タンパク質レベルであったことを示す一方、対照ラットIgG治療マウスが媒体対照(PBS)治療マウスと同等の尿タンパク質レベルであったことを示す。図2Fは試験の終わりまでに、67%のラットIgGと60%の媒体治療マウスと比べて、38%の抗マウスCD52抗体治療マウスと20%のシクロフォスファミド治療マウスだけが重度のタンパク尿(500mg/dL/日超)に達したことを示す。
【図2E】図2Aから2Fまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿タンパク質レベルを首尾よく減らしたことを示す。図2Aから2Eまでは抗マウスCD52治療マウスが陽性対照のシクロフォスファミド治療群のマウスと同等な尿タンパク質レベルであったことを示す一方、対照ラットIgG治療マウスが媒体対照(PBS)治療マウスと同等の尿タンパク質レベルであったことを示す。図2Fは試験の終わりまでに、67%のラットIgGと60%の媒体治療マウスと比べて、38%の抗マウスCD52抗体治療マウスと20%のシクロフォスファミド治療マウスだけが重度のタンパク尿(500mg/dL/日超)に達したことを示す。
【図2F】図2Aから2Fまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿タンパク質レベルを首尾よく減らしたことを示す。図2Aから2Eまでは抗マウスCD52治療マウスが陽性対照のシクロフォスファミド治療群のマウスと同等な尿タンパク質レベルであったことを示す一方、対照ラットIgG治療マウスが媒体対照(PBS)治療マウスと同等の尿タンパク質レベルであったことを示す。図2Fは試験の終わりまでに、67%のラットIgGと60%の媒体治療マウスと比べて、38%の抗マウスCD52抗体治療マウスと20%のシクロフォスファミド治療マウスだけが重度のタンパク尿(500mg/dL/日超)に達したことを示す。
【図3A】図3Aから3Gまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿中アルブミンレベルを首尾よく減らしたことを示す。尿中アルブミンレベルは半定量的な「Albustix」法(図3A)、および定量的なELISAアッセイ(図3B)により評価した。図3Aから3Fまでは抗CD52抗体治療マウス中の尿中アルブミンレベルが媒体(PBS)および対照ラットIgG治療マウスで見られるそれよりも低いことを示す。図3Gは試験の終わりまでに、80%の媒体治療マウスと89%のラットIgG治療マウスと比べて、50%の抗CD52抗体治療マウスだけに有意なアルブミン尿(40mg/dL/日超)を発症したことを示す。
【図3B】図3Aから3Gまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿中アルブミンレベルを首尾よく減らしたことを示す。尿中アルブミンレベルは半定量的な「Albustix」法(図3A)、および定量的なELISAアッセイ(図3B)により評価した。図3Aから3Fまでは抗CD52抗体治療マウス中の尿中アルブミンレベルが媒体(PBS)および対照ラットIgG治療マウスで見られるそれよりも低いことを示す。図3Gは試験の終わりまでに、80%の媒体治療マウスと89%のラットIgG治療マウスと比べて、50%の抗CD52抗体治療マウスだけに有意なアルブミン尿(40mg/dL/日超)を発症したことを示す。
【図3C】図3Aから3Gまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿中アルブミンレベルを首尾よく減らしたことを示す。尿中アルブミンレベルは半定量的な「Albustix」法(図3A)、および定量的なELISAアッセイ(図3B)により評価した。図3Aから3Fまでは抗CD52抗体治療マウス中の尿中アルブミンレベルが媒体(PBS)および対照ラットIgG治療マウスで見られるそれよりも低いことを示す。図3Gは試験の終わりまでに、80%の媒体治療マウスと89%のラットIgG治療マウスと比べて、50%の抗CD52抗体治療マウスだけに有意なアルブミン尿(40mg/dL/日超)を発症したことを示す。
【図3D】図3Aから3Gまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿中アルブミンレベルを首尾よく減らしたことを示す。尿中アルブミンレベルは半定量的な「Albustix」法(図3A)、および定量的なELISAアッセイ(図3B)により評価した。図3Aから3Fまでは抗CD52抗体治療マウス中の尿中アルブミンレベルが媒体(PBS)および対照ラットIgG治療マウスで見られるそれよりも低いことを示す。図3Gは試験の終わりまでに、80%の媒体治療マウスと89%のラットIgG治療マウスと比べて、50%の抗CD52抗体治療マウスだけに有意なアルブミン尿(40mg/dL/日超)を発症したことを示す。
【図3E】図3Aから3Gまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿中アルブミンレベルを首尾よく減らしたことを示す。尿中アルブミンレベルは半定量的な「Albustix」法(図3A)、および定量的なELISAアッセイ(図3B)により評価した。図3Aから3Fまでは抗CD52抗体治療マウス中の尿中アルブミンレベルが媒体(PBS)および対照ラットIgG治療マウスで見られるそれよりも低いことを示す。図3Gは試験の終わりまでに、80%の媒体治療マウスと89%のラットIgG治療マウスと比べて、50%の抗CD52抗体治療マウスだけに有意なアルブミン尿(40mg/dL/日超)を発症したことを示す。
【図3F】図3Aから3Gまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿中アルブミンレベルを首尾よく減らしたことを示す。尿中アルブミンレベルは半定量的な「Albustix」法(図3A)、および定量的なELISAアッセイ(図3B)により評価した。図3Aから3Fまでは抗CD52抗体治療マウス中の尿中アルブミンレベルが媒体(PBS)および対照ラットIgG治療マウスで見られるそれよりも低いことを示す。図3Gは試験の終わりまでに、80%の媒体治療マウスと89%のラットIgG治療マウスと比べて、50%の抗CD52抗体治療マウスだけに有意なアルブミン尿(40mg/dL/日超)を発症したことを示す。
【図3G】図3Aから3Gまではラット抗マウスCD52抗体による治療がNZB/NZWF1マウスにおいて尿中アルブミンレベルを首尾よく減らしたことを示す。尿中アルブミンレベルは半定量的な「Albustix」法(図3A)、および定量的なELISAアッセイ(図3B)により評価した。図3Aから3Fまでは抗CD52抗体治療マウス中の尿中アルブミンレベルが媒体(PBS)および対照ラットIgG治療マウスで見られるそれよりも低いことを示す。図3Gは試験の終わりまでに、80%の媒体治療マウスと89%のラットIgG治療マウスと比べて、50%の抗CD52抗体治療マウスだけに有意なアルブミン尿(40mg/dL/日超)を発症したことを示す。
【図4】図4はラット抗マウスCD52抗体による治療がdsDNAに対する自己抗体の発生に対して何ら検出可能な効果がなかったことを示す。抗マウスCD52で治療されたマウスの抗体力価は媒体およびラットIgG治療マウスの力価と同等であった。シクロフォスファミド治療のみがdsDNAに対する血清抗体の上昇を効果的に減少させた。
【図5】図5はラット抗マウスCD52抗体での治療によりNZB/NZWF1マウスにおいて有意な生存上の利益を提供したことを示す。同等のレベルの生存は抗マウスCD52抗体の2つの用量(75%生存)とシクロフォスファミドの毎週の注射(80%)で得た(P値=0.9218、抗マウスCD52抗体 対 シクロフォスファミド)。対照ラットIgGで治療したマウスでは生存は20%だけであった(P値=0.0401、抗マウスCD52抗体 対 対照ラットIgG)(図5)。
【図6A】図6Aから6Cまでは採取したマウスの腎臓についての組織学検査の結果を示す。治療群間において正中糸球体症、間質性炎症またはタンパク質カスト重症度スコアには統計的に有意な違いは無かったが、図6Aに示すようにラットIgGおよび媒体対照群と比べて抗マウスCD52抗体およびシクロフォスファミドでの治療が正中糸球体症スコアを減少させた。図6Bに示すようにシクロフォスファミド投与群において間質性炎症の減少も認められた。
【図6B】図6Aから6Cまでは採取したマウスの腎臓についての組織学検査の結果を示す。治療群間において正中糸球体症、間質性炎症またはタンパク質カスト重症度スコアには統計的に有意な違いは無かったが、図6Aに示すようにラットIgGおよび媒体対照群と比べて抗マウスCD52抗体およびシクロフォスファミドでの治療が正中糸球体症スコアを減少させた。図6Bに示すようにシクロフォスファミド投与群において間質性炎症の減少も認められた。
【図6C】図6Aから6Cまでは採取したマウスの腎臓についての組織学検査の結果を示す。治療群間において正中糸球体症、間質性炎症またはタンパク質カスト重症度スコアには統計的に有意な違いは無かったが、図6Aに示すようにラットIgGおよび媒体対照群と比べて抗マウスCD52抗体およびシクロフォスファミドでの治療が正中糸球体症スコアを減少させた。図6Bに示すようにシクロフォスファミド投与群において間質性炎症の減少も認められた。
【図7A】図7Aから7Cまでは腎臓に浸潤するFoxP3+制御性T細胞の増大を示す。免疫蛍光的にタグを付けられた抗体を用いてマウス腎臓をCD4+、CD8+、およびFoxP3+細胞について染色した。陽性細胞の相対存在量について腎切片について盲検下で0から4までのスケールでスコアを付けた。シクロフォスファミド治療により腎臓に浸潤するCD4+、CD8+、およびFoxP3+細胞が有意に減少した。これに比べて、抗CD52抗体治療ではCD4+およびCD8+リンパ球により腎臓への浸潤を防ぐことができなかったが、制御性T細胞のマーカーであるFoxP3について陽性の細胞の存在を増大させた。
【図7B】図7Aから7Cまでは腎臓に浸潤するFoxP3+制御性T細胞の増大を示す。免疫蛍光的にタグを付けられた抗体を用いてマウス腎臓をCD4+、CD8+、およびFoxP3+細胞について染色した。陽性細胞の相対存在量について腎切片について盲検下で0から4までのスケールでスコアを付けた。シクロフォスファミド治療により腎臓に浸潤するCD4+、CD8+、およびFoxP3+細胞が有意に減少した。これに比べて、抗CD52抗体治療ではCD4+およびCD8+リンパ球により腎臓への浸潤を防ぐことができなかったが、制御性T細胞のマーカーであるFoxP3について陽性の細胞の存在を増大させた。
【図7C】図7Aから7Cまでは腎臓に浸潤するFoxP3+制御性T細胞の増大を示す。免疫蛍光的にタグを付けられた抗体を用いてマウス腎臓をCD4+、CD8+、およびFoxP3+細胞について染色した。陽性細胞の相対存在量について腎切片について盲検下で0から4までのスケールでスコアを付けた。シクロフォスファミド治療により腎臓に浸潤するCD4+、CD8+、およびFoxP3+細胞が有意に減少した。これに比べて、抗CD52抗体治療ではCD4+およびCD8+リンパ球により腎臓への浸潤を防ぐことができなかったが、制御性T細胞のマーカーであるFoxP3について陽性の細胞の存在を増大させた。
【図8A】図8Aと8BはNZB/NZWF1マウスにおいて異なる用量レベル(1mg/kg、5mg/kgおよび10 mg/kg)でのモノクローナルマウス抗マウスCD52抗体(クローンW19)による有効なリンパ球の枯渇を示す。血液(図8A)において、全でのリンパ球系集団において、5mg/kg用量と10mg/kg用量で用量−依存性枯渇が認められ、これにより全ての細胞型(CD4+細胞、CD8+細胞、NK細胞およびB細胞)のほぼ完全な枯渇がおこる。脾臓(図8B)において、類似した用量−依存性枯渇が認められる。特に、CD4+およびCD8+T細胞の両方の有意な枯渇が脾臓で認められる一方で、検査した全ての投与量レベルでB細胞がより少ない程度まで枯渇されるように思われる。
【図8B】図8Aと8BはNZB/NZWF1マウスにおいて異なる用量レベル(1mg/kg、5mg/kgおよび10 mg/kg)でのモノクローナルマウス抗マウスCD52抗体(クローンW19)による有効なリンパ球の枯渇を示す。血液(図8A)において、全でのリンパ球系集団において、5mg/kg用量と10mg/kg用量で用量−依存性枯渇が認められ、これにより全ての細胞型(CD4+細胞、CD8+細胞、NK細胞およびB細胞)のほぼ完全な枯渇がおこる。脾臓(図8B)において、類似した用量−依存性枯渇が認められる。特に、CD4+およびCD8+T細胞の両方の有意な枯渇が脾臓で認められる一方で、検査した全ての投与量レベルでB細胞がより少ない程度まで枯渇されるように思われる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は被験者への抗CD52抗体投与に関連した我々の発見に基づいている。抗CD52抗体がマウスループスモデルでの局所炎症組織へのFoxP3+制御性T細胞の浸潤を増大させることを発見した。さらに、このマウスループスモデルにおいて抗CD52抗体での治療が尿タンパク質およびアルブミンレベルを減少させることができることも発見した。
【0014】
従って、本発明は患者(例えば、ヒト患者)において抗CD52抗体によりループスを治療する方法を提示する。ある実施形態では、治療はCNS、腎臓、心臓、および肝臓などの局所炎症組織へのFoxP3+制御性T細胞の補充に役立ち、それによりループス患者の症状の緩和または予防を行う。ある実施形態では、治療はループス患者の尿タンパク質および/またはアルブミンレベルの減少に役立つ。ある実施形態では、治療はループス患者のリンパ球を枯渇する。本発明のさらなる実施態様では、患者の免疫系を制御を改善し、かつ自己免疫の症状を緩和するためにFoxP3+制御性T細胞の成長および/または活性化を刺激する薬剤で患者をさらに治療する。
Lupusループスの発現
本発明の方法は、限定するものではないが、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、皮膚エリテマトーデス、CNSループス、心血管系の、肺の、肝臓の、血液学的な、消化管の、および筋骨格系の発現、新生児エリテマトーデス、小児期発症全身性エリテマトーデス、薬剤誘導性エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、およびループス発現となる補体欠乏症候群を含めたループスの各種の発現に罹患している患者に用いることができる。本発明の方法は活性なループスエピソードに罹患している患者、または不活性なループスの患者の治療に用いることができる。
抗CD52抗体治療
本発明の方法ではCD52に対する抗体を罹患した器官系(例えば、ループス腎炎における血尿および/またはタンパク尿)のモニタリングによって、および/または数種類の器官系にわたっての疾患の重症度の複合スコアを示す疾患活動性指数(例えば、BILAG、SLAM、SLEDAI、ECLAM)を用いることによって測定される臨床的エンドポイントに達する治療有効量を患者に投与する。Mandl et al., ”Monitoring patients with systemic lupus erythematosus” in Systemic Lupus Erythematosus, 4th edition, pp. 619−631, R.G. Lahita, Editor, Elsevier Academic Press, (2004)を参照。抗CD52抗体の治療有効量とは、治療される被験者が1つ以上の所望の臨床エンドポイントへ到達するのに役立つ量である。
【0015】
CD52は正常および悪性のBとTリンパ球の両方により高レベルに発現される細胞表面タンパク質である(Hale et al., J Biol regul Homeost Agents 15:386−391 (2001); Huh et al., Blood 92: Abstract 4199 (1998); Elsner et al., Blood 88:4684−4693 (1996); Gilleece et al., Blood 82:807−812 (1993); Rodig et al., Clin Cancer Res 12:7174−7179 (2006); Ginaldi et al., Leuk Res 22:185−191 (1998))。CD52は単球、マクロファージ、および好酸球により低レベルに発現するが、成熟したナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、および血管系幹細胞での発現は僅かである。同文献。さらに、CD52は精巣上体および精管の上皮細胞により産生され、生殖管を通過する間に精子がこれを獲得する(Hale et al., 2001, supra; Domagala et al., Med Sci Monit 7:325−331 (2001))。CD52の正確な生物学的機能については分かっていないがT細胞の移動および共刺激に関与すると示唆するいくつかの証拠もある(Rowan et al., Int Immunol 7:69−77 (1995); Masuyama et al., J Exp Med 189:979−989 (1999); Watanabe et al., Clin Immunol 120:247−259 (2006))。
【0016】
ヒトCD52抗原ポリペプチド配列の例は、
MKRFLFLLLT ISLLVMVQIQ TGLSGQNDTS QTSSPSASSN ISGGIFLFFV ANAIIHLFCF S(配列番号1;NCBIアクセッション番号NP_001794)
である。成熟したヒトCD52抗原はわずか12個のアミノ酸を有し、(Xia et al., Eur J Immunol. 21(7):1677−84 (1991))、相当に短く、グリコシル化されている。例えば、成熟したヒトCD52抗原はGQNDTSQTSSPS(配列番号2)のようなポリペプチド配列である。
【0017】
本発明に含まれる抗CD52抗体治療は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4などの任意の好適なアイソタイプの抗体を含有する抗CD52抗体を用いた投与法を含む。さらに、有用な抗体は定常Fc領域が修飾されており、好中球および/またはNK細胞におけるFc受容体に同じかまたはより良好な親和性で結合するか、または他の方法で改善した抗体依存性細胞媒体性細胞傷害性(ADCC)および補体依存性細胞傷害性(CDC)を有する抗体を含む。本発明において有用な抗CD52抗体はCD52に特異的に結合するがCD52分子以外には特異的に結合しない抗体である。例えば、抗CD52抗体とCD52との間の特異的結合はフローサイトメトリーにより、CD52+細胞へ結合する抗体のEC50を計測することで決定できる。特異的結合は例えば、EC50が0.5から10μg/mlの範囲で表示することができる。臨床応用の場合、薬学的に許容される純度であれば好ましくは抗CD52抗体はモノクローナルであってもよい。例えば、患者が所望の臨床エンドポイントへ到達するのに役立つ量の治療有効量を任意に薬学的に許容される担体で抗体を好適な方法で投与してもよい。
【0018】
治療対象の患者がヒトである場合、抗CD52抗体がヒトCD52に特異的に結合していることが好ましい。ヒト患者への反復投与時の免疫原性を最小限にするために、抗体がキメラ化(例えば、定常ドメインがヒト抗体の定常ドメインで置換されているマウス抗CD52抗体)、ヒト化(CDRが、マウス抗ヒトCD52抗体からのCDRで置換されているヒト抗体)、または完全ヒト抗体であることが更に好ましい。有用な抗体の例はアレムツズマブ(CAMPATH−1H(登録商標)およびそれらの改変体)である。アレムツズマブは28kDグリコシル化グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合細胞表面タンパク質であるヒトCD52(hCD52)に対する組換え型ヒト化IgG1モノクローナル抗体である(Hale et al., Tissue Antigens 35:118−27 (1990); Hale et al., 2001, supra)。現在、アレムツズマブはB細胞慢性リンパ性白血病に対する第1選択療法として承認されており、多発性硬化症の治療目的で第3段階臨床試験にある。有用な抗体は限定するものではなく、hCD52への結合に関してアレムツズマブと競合する抗体、および/またはアレムツズマブまたはhCD52上の他のエピトープと同じエピトープまたは重複エピトープと結合する抗体である。例えば、国際特許出願第PCT/US2010/034704号に記載されたヒト化抗体を使用することができる。
【0019】
当業者であれば例えば、XENOMOUSE(登録商標) technology (Amgen, Thousand Oaks, CA)を用いてヒト抗hCD52抗体を作製することができる。キメラおよびヒト化抗hCD52抗体を例えば、ラット抗hCD52抗体またはマウス抗hCD52抗体から十分に確立された抗体技術により作製することができる。
【0020】
所望により、本発明に有用な抗CD52抗体は例えば、治療、診断、あるいはアッセイでのモニタリングを可能にする検出可能な標識を含んでもよい。好適な検出可能な標識は例えば、放射性同位元素(例えば、インジウム111、テクネチウム99mまたはヨウ素131)、陽電子放出標識(フッ素19)、常磁性イオン(ガドリニウム(III)、マンガン(II))、エピトープ標識(タグ)、親和性標識(ビオチン、アビジン)、スピン標識、酵素、蛍光基、または化学発光基を含む。標識を用いない場合は、複合体形成を表面プラズモン共鳴、ELISA、フローサイトメトリー、またはその他の好適な方法で決定することができる。本発明に用いる抗CD52抗体は生物活性化合物(例えば、サイトカイン、および細胞毒性薬)などの別の治療剤に結合体化してもよい。本発明に用いる抗CD52抗体は、さらに例えば、半減期などの抗体の薬物動態を向上させる化学反応または遺伝子改変を経由して他の部分(例えば、PEG化部分)に結合体化してもよい。ある実施形態では、本発明に用いる抗CD52抗体は、例えば、化学的結合体化または遺伝子改変(インフレームでサイトカインのコード配列を抗体コード配列に付着させ、これにより抗体‐サイトカイン融合タンパク質を創製する)を経由して好適なサイトカインに結合することができる。
FoxP3+制御性T細胞の浸潤の増大
他のT細胞に比べた場合、例えば、炎症または組織障害部位などの局所組織へのこれら細胞の浸潤の増大を含めて、抗CD52抗体が、FoxP3+制御性T細胞を増大させる傾向があることを発見した。制御性T細胞(「Treg」またはサプレッサーT細胞としても知られる)は接触に依存するまたは接触に依存しない(例えば、サイトカインの産生)機構を経由して他のリンパ系細胞の増殖および/または機能を阻害することができる細胞である。γδT細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞およびダブルネガティブCD4−CD8−T細胞を含めて、いくつかのタイプの制御性T細胞が説明されている。Bachら、IMMUNOL. 3:189〜98(2003)を参照のこと。CD4+CD25+FoxP3+制御性T細胞は「天然に存在する」制御性T細胞として言及されており、CD4、CD25およびホークヘッドファミリー転写因子FoxP3(forkhead box p3)を発現する。
【0021】
治療している自己免疫疾患の症状を抑えるためにはTregの上昇が望ましくあり得る。従って、FoxP3+(例えば、CD4+CD25+FoxP3+)制御性T細胞を刺激する薬剤を患者に投与することができる。例えば、薬剤はこれらのT細胞を活性化し、これらの細胞の集団を拡大し、これらの細胞の循環を動員させかつ高め、および/またはこれらの細胞を標的部位に補充してもよい。かかる薬剤の例はラパマイシン、活性なまたは潜在性のTGF−β(例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、およびTGF−β5)、IL−10、IL−4、IFN−α、ビタミンD3、デキサメタゾン、およびミコフェノール酸モフェチルである(例えば、Barrat et al., J. Exp. Med. 195:603−616 (2002); Gregori et al., J Immunol. 167: 1945−1953 (2001); Battaglia et al., Blood 105: 4743−4748 (2005); Battaglia et al., J. Immunol. 177: 8338−8347 (2010)を参照)。本発明のある実施形態では、Tregの増大は1か所または複数の炎症部位(例えば、血液、中枢神経系、心臓、肝臓、関節、腎臓、皮膚、腸管、または血管系)で起こりうる。
【0022】
抗CD52抗体による治療前、その間、またはその後にTreg刺激剤を投与してもよい。本発明で使用する抗CD52抗体は、Tエフェクター細胞およびB細胞を優先的に枯渇させるが、FoxP3+Tregには優先的に影響を及ぼさない(例えば、Hu et al., Immunology 128: 260−270 (2009)を参照)。従って、抗CD52抗体およびTreg刺激剤の両方を用いる治療計画は患者の免疫系を再平衡させることでループス治療、または他の自己免疫疾患の治療の有効性を大いに高める。
尿タンパク質および/またはアルブミンレベルの減少
ループス患者は尿中の過剰な血清タンパク質またはアルブミンであるタンパク尿またはアルブミン尿を示す。ループスでは、尿中のタンパク質またはアルブミンのレベルで測定した腎損傷は最も急性の損傷の1つであり、死亡率の少なくとも50%を占める。本発明の治療法(抗CD52抗体のみ、または抗CD52抗体とTreg刺激剤の併用)は患者の尿タンパク質および/またはアルブミンレベルを投与前のレベルと比べて少なくとも、25%、50%、75%、または90%減少させることができる。ある実施形態では、抗CD52抗体の投与前の尿タンパク質レベルは少なくとも500mg/L/日より大きいかまたは等しい(例えば、1、000mg/L/日、2、000mg/L/日、または3,000mg/L/日)。抗CD52抗体での最初の治療の後、尿タンパク質レベルが500mg/L/日未満または1、000mg/L/日未満に低下する。
併用療法
本発明のいくつかの様態では、併用療法ではループスの患者に1つ以上の追加の治療剤(例えば、免疫抑制剤)とともに抗CD52抗体を投与することができる。第2の治療剤は例えば、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)(例えば、シクロホスファミドまたはミコフェノール酸)、免疫抑制薬(例えば、メトトレキサートおよびアザチオプリン)、BまたはTリンパ球を標的とする分子(例えば、CD20抗体、例えば、Rituxan(登録商標)として知られているリツキシマブ、抗BLys抗体、または抗BAFF−R抗体)であり得る。いくつかの実施様態では、追加の薬剤は、抗CD52抗体によって媒介されたリンパ球除去の後に生じる再構成プロセスを歪曲し、操作し、および/または増強する、例えば、サイトカイン(例えば、IL‐7)、抗サイトカイン受容体抗体、または可溶性受容体である(Sportes et al., Cytokine Therapies: Ann. N.Y. Acad. Sci. 1182:28−38 (2009)を参照)。抗CD52抗体による治療前、その間、またはその後に追加の治療剤を投与することができる。
【0023】
別途定義されないかぎり、本明細書に用いられるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の技術者により一般に理解されるのと同じ意味をもつ。本願において記載した同様のまたは等価な方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することもできるが、代表的な例示的方法および材料について以下に記載する。本明細書で言及される全ての刊行物、および他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるものとする。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配するものとする。本明細書において多くの文献が引用されているが、この引用はこれらの文献のいかなるものも当該技術分野の技術常識の一部を形成するという容認を構成しない。本明細書および特許請求の範囲を通して、「含む」、「含んでいる」または「含む」などの変法は、所定の整数または整数の群を含むことを意味することを理解されるべきであるが、任意の他の整数または整数の群を排除するものではない。材料、方法および実施例は例示のみを目的とするもので、限定するものではない。
【実施例】
【0024】
実施例
以下の実施例は本発明の方法と材料を示すことを意図している。当該分野で通常見られるような記載した条件とパラメータについての好適な改変および調整は本発明の精神および範囲内にある。
【0025】
マウスループスモデル
NZB/NZWF1マウスは、ループスの自然発生モデルを示す。加齢とともに、動物は多くの細胞抗原に対する自己抗体を発生し、これは、最終的に腎臓における免疫複合体の沈着をもたらし、進行性の致死性の腎臓病となる(Peutz−Kootstra et al., J Lab Clin Med 137: 244−260 (2001)を参照)。以下の実施例では、雌のNZB/NZWF1マウスを使い全身性ループスの過程に対する抗CD52抗体の効果を研究した。
【0026】
抗CD52抗体
実施例1から6では、モノクローナルラット抗マウスCD52IgG2a抗体を使用した。そのラットアイソタイプはマウスでのエフェクター機能(例えば、補体結合および抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)において最適なアイソタイプではない。実施例7と8では、モノクローナルIgG2aマウス抗マウスCD52抗体を使用した。
【0027】
実施例1から6では、NZB/NZWF1マウス(15週齢、Jackson Labs)を4つの群に分け、それらを異なる試験項目で治療した(表1)。実施例1から6では、ナイトロジェンマスタードアルキル化剤であるシクロホスファミドを陽性対照として使用した。シクロホスファミドは各種の癌およびループスを含有した特定の自己免疫疾患の治療に使われてきた。
【0028】
【表1】
*ラットIgG2aELISAにより、原液中の全タンパク質含有量の内184μg/mlのみがラットIgG2aから構成されていることが示され、これは有効用量がわずか1.7mg/kgであることを示唆している。
【0029】
実施例1から6の時間ポイントは以下の通りである。
i)週齢19週から開始してその後の4週間ごとに、IgG抗2本鎖DNA(抗dsDNA)抗体力価を評価するために個々のマウスから血液を採取し、かつ、タンパク尿およびアルブミン尿を計測するために代謝ケージの中で24時間の尿採取を行った。
ii)試験項目での治療を動物がdsDNAに対する抗体の有意な力価および/またはタンパク尿の上昇を生じ始めた週齢31週で開始した。正常ラットIgGで治療するグループ2とラット抗マウスCD52抗体で治療するグループ3のそれぞれに合計2回の注射を与えた。シクロホスファミドで治療するグループ4は試験終了まで毎週注射を与えた。
iii)抗体の最初の注射の前に、ベースラインの蛍光活性化細胞分取(FACS)解析(CD3、CD19陽性細胞を染色、リンパ球の絶対数を計数)のためにグループ2とグループ3から血液を採取した。
iv)抗体の最初の注射から2日後、2回目の抗体の注射をグループ2とグループ3に行った。2回目の注射の前に、フローサイトメトリー分析(CD3、CD19陽性細胞を染色、絶対数を計数)のためにグループ2とグループ3から血液を採取した。さらにフローサイトメトリー染色のためにグループ2のマウス1匹およびグループ3のマウス1匹からの脾臓を採取した。
試験期間中に瀕死状態になったあらゆる動物は屠殺し、可能な場合は腎臓1つを採取した。マウスが43週齢に達したときに試験を終了し、組織学のために各動物から腎臓1つを採取した。
【0030】
実施例1
ラット抗マウスCD52抗体で治療したNZB/NZWF1マウスにおけるリンパ球の枯渇の欠如
モノクローナルラット抗マウスCD52抗体での治療がCD52+リンパ球の枯渇に繋がったのかどうかを測定するために、ラットIgGまたはラット抗マウスCD52の最初の注射の前にベースラインで、そしてその2日後抗体の第2回注射の前に個々のマウスから血液を採取した。CD3+T細胞およびCD19+B細胞の絶対数を得るために、血液試料を染色してフローサイトメトリーにより分析した。50μlの全血試料をRPMI培地中の10%正常マウス血清と0.05%アジ化ナトリウムでブロッキングし、次にラット抗マウスCD3‐APCおよびラット抗マウスCD19‐PE(BD Pharmingen, San Diego, CA)で染色した。FACSCaliburTM(Becton−Dickinson, San Diego, CA)で染色についてリンパ球を分析した。データ解析をCell Quest Pro Software (Becton−Dickinson)で行った。結果は、BまたはTリンパ球の有意な枯渇は無いことを示した(図1Aおよび1B)。
【0031】
実施例2
タンパク尿およびアルブミン尿のレベル
A.タンパク尿のレベル
製造業者(Microprotein−PR,Sigma)の指示書に従い総タンパク質濃度を測定するように設計された比色検定を用いて個々のマウスの尿中のタンパク質レベルを測定した。試験試料のタンパク質濃度を計算するために標準物質を使用した。計測時点でのリンパ球の枯渇の欠如にもかかわらず、ラット抗マウスCD52抗体での治療は、尿中総タンパク質レベルによって計測される腎臓病の進行を阻害において成功であった(図2Aから2E)。試験期間中、抗マウスCD52治療マウスが陽性対照のシクロフォスファミド治療群のマウスと同等な尿タンパク質レベルであったことを示した一方、対照ラットIgG治療マウスが媒体対照マウスと同等の尿タンパク質レベルを示した(図2Aから2E)。67%のラットIgGと60%の媒体治療マウスと比べて、38%の抗マウスCD52抗体治療マウスと20%のシクロフォスファミド治療マウスだけが重度の蛋白尿(500mg/dL/日超)に達した(図2F)。
B.アルブミン尿のレベル
製造業者(Albuwell−M, Exocell, Inc.)の指示書に従って、尿中のアルブミンレベルは間接的競合ELISAキットを用いて評価した。尿試料中のアルブミン濃度はマウスアルブミンの既知濃度で得た標準曲線由来である(図3B)。さらに、半定量的な「Albustix」法(Roche Diagnostics)(図3A)を使用した。ここでは、尿にあるアルブミン量によって色が変わるインジケーター濾紙に尿が沈着し、対応する0から6までのスコアを割り当てた。総タンパク質レベルと同じように、抗マウスCD52抗体による治療はNZB/NZWF1マウスでのアルブミン尿の発現抑制に有効であった(図3Aから3G)。抗CD52抗体治療マウスの尿中アルブミンレベルは媒体およびラットIgG治療マウスに認められるレベルよりも低かった。しかしながら、この群に見られるアルブミン尿の抑制はシクロフォスファミド治療群で得られた抑制ほど大きくはなかった。試験の終わりまでに、80%の媒体治療マウスと89%のラットIgG治療マウスと比べて、50%の抗CD52抗体治療マウスだけに有意なアルブミン尿(40mg/dL/日超)を発症した(図3G)。
【0032】
実施例3
2本鎖DNAに対する抗体レベル
個々のマウスからの血清試料中のdsDNAに対するIgG抗体の力価をELISAで計測した。あらゆるssDNAを除去するためにマウスdsDNA(The Jackson Laboratory, BarHarbor, ME)をS1ヌクレアーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)により消化して、次に、4℃で一晩、96wellのELISAプレートのウエルをコーティングをするのに使用した(1μg/ml dsDNAの100μg/ウエル)。DNAの付着を促進するためにプレートを水中の0.01%硫酸プロタミンで予め処理した。コーティングをした後、プレートを2.5%のウシ血清アルブミンブロッキングバッファーと共に37℃で1時間インキュベートし、洗浄した。次に、血清の系列2倍希釈物100μlを2連のウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、dsDNAに結合した抗体を検出するために西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体化ヤギ抗マウスIgG(Pierce, Rockford, IL)を添加した(37℃で1時間)。洗浄した後、HRP基質を添加し、二重波長プレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)で参照波長650nMと共に490nMの比色分析産物の光学密度(OD)を読み取った。抗体力価は0.1より大きい、または等しいODを得る血清の希釈倍数の逆数として定義された。正常マウス血清を陰性対照(力価200以下、試験での最小希釈)として使用し、老齢ループスマウスからのプール血清を陽性対照(25,600の力価)として使用した。ラット抗マウスCD52抗体での治療はdsDNAに対する自己抗体の発生に対して何ら検出可能な効果がなかった(図4)。抗マウスCD52で治療されたマウスの抗体力価は媒体およびラットIgG治療マウスの力価と同等であった。シクロフォスファミド治療のみがdsDNAに対する血清抗体の上昇を効果的に減少させた(図4)。
【0033】
実施例4:生存の改善
NZB/NZWF1マウスにおいてラット抗マウスCD52抗体による治療の忍容性は良好であった。同等のレベルの生存は抗マウスCD52抗体の2回用量(75%生存)とシクロフォスファミドの毎週の注射(80%)で得た(P値=0.9218、抗マウスCD52抗体 対 シクロフォスファミド)(図5)。対照ラットIgGで治療されたマウスでは生存は20%だけであった(P値=0.0401、抗マウスCD52抗体 対 対照ラットIgG)(図5)。比較をすると、媒体治療マウスは60%の生存率を示し、このことは、対照ラットIgG群に大量の免疫グロブリンタンパク質の注射により恐らくは腎臓のストレスで疾患を悪化させ得るが、一方では、同量の抗マウスCD52材料では治療上の利益を提供したことを示唆する。
【0034】
実施例5
腎臓の組織学検査
屠殺時に、腎臓を収集し、10%の中性緩衝ホルマリンで固定し、次にパラフィン包埋した。切片は5μmの厚さに切断し、ヘマトキシリン・エオジン(H&E)、リンタングステン酸ヘマトキシリン(PTAH)および過ヨウ素酸シッフ(PAS)染料で染色した。試験期間中に、陰性対照群(媒体およびラットIgG)の数匹の動物は屠殺する必要があったか、死亡で発見された。結果的に、試験終了時の解析に使える腎臓の数が少なくなり統計学的検出を限定した。
【0035】
採取した腎臓をさらに調べた。治療群間において正中糸球体症、間質性炎症またはタンパク質カスト重症度スコアには統計的に有意な違いは無かった(図6Aから6C)。しかしながら、ある種の傾向が認められた。ラットIgGおよび媒体対照群と比べて抗マウスCD52抗体およびシクロフォスファミドでの治療が正中糸球体症スコアを減少させた(図6A)。シクロフォスファミド治療群において間質性炎症の減少も認められた(図6B)。
【0036】
実施例6
腎臓におけるFoxP3+制御性T細胞の増大
免疫蛍光的にタグを付けられた抗体を用いて実施例5で得た腎臓の切片を、CD4+、CD8+、およびFoxP3+細胞の存在について更に染色した。CD4およびCD8陽性細胞の染色については、陽性細胞上に褐色染色を出すために腎臓凍結切片をアセトン固定し、ペルオキシダーゼ(Dako)、アビジン、ビオチン(Biocare)、およびタンパク質(Dako)ブロックで連続的にインキュベートし、次にビオチン化ラット抗マウスCD4(クローンL3T4; BD Pharmingen)またはビオチン化ヤギ抗マウスCD8(クローンLy−2; BD Pharmingen)、ストレプトアビジン‐HRPおよびDAB(3−3’‐ジアミノベンジジン)でインキュベートした。FoxP3陽性細胞の染色については、腎臓凍結切片を10%の中性緩衝ホルマリンで固定し、ペルオキシダーゼおよびタンパク質ブロックで連続的にインキュベートした。次に、陽性細胞上に褐色染色を出すためにラット抗マウスFoxP3抗体を添加し(eBioscience)、そして次にMach−2HRP結合体化抗ウサギ抗体(Biocare)およびDABを添加した。次に、細胞を可視化するために全ての切片をヘマトキシリンでさらに染色した。陽性細胞の相対存在量について盲検下で切片を0から4までのスケールでスコアを付けた。シクロフォスファミド治療により腎臓に浸潤するCD4+、CD8+、およびFoxP3+細胞が有意に減少した(図7Aから7C)。これに比べて、抗CD52抗体での治療ではCD4+およびCD8+リンパ球により腎臓への浸潤を防ぐことができなかったが、制御性T細胞のマーカーであるFoxP3について陽性の細胞の存在を増大させた(図7Aから7C)。
【0037】
実施例7
モノクローナルマウス抗マウスCD52抗体で治療したNZB/NZWF1マウスにおけるリンパ球の枯渇
所内で作製したモノクローナルIgG2aマウス抗マウスCD52抗体(クローンW19)を用いてマウスCD52を標的にすることを介したリンパ球枯渇にループスマウスが感受性であるかどうかを測定するために枯渇実験を実施した。NZB/NZWF1マウスを、媒体、1mg/kg、5mg/kg、または10mg/kgのモノクローナルマウス抗マウスCD52抗体で治療した。治療から3日後、脾細胞および末梢血を採取しフローサイトメトリーを用いてリンパ球枯渇の程度を評価した。抗体のすべての用量レベルで有意なレベルのリンパ球枯渇が血液と脾臓の両方で認められた。血液(図8A)において、全てのリンパ球系集団に用量−依存性枯渇が認められ、5mg/kg用量と10mg/kg用量は、全ての細胞型のほぼ完全な枯渇がおこる。脾臓(図8B)において、類似した用量−依存性枯渇が認められる。CD4+およびCD8+T細胞の両方の有意な枯渇が脾臓で認められる一方で、検査した全ての用量レベルでB細胞は、より少ない程度まで枯渇されるように思われる。
【0038】
実施例8
雌のNZB/NZWマウスにおける抗マウスCD52抗体の有効性の分析
実施例7で使用したモノクローナル抗マウスCD52抗体をNZB/NZWF1マウスループスモデルでの疾患の発症および/または進行に与える影響について試験した。初めに、明らかな疾患の発症の前に約21週齢の10匹のマウスの群に10mg/kgの対照抗体またはモノクローナルマウス抗マウスCD52抗体の2回の注射を1週間あけて与える。疾患の過程の間に、約32週齢の10匹のマウスの個別の群に10mg/kgの対照抗体またはモノクローナルマウス抗マウスCD52抗体の2回の注射を1週間あけて与える。約21週齢で開始し、陽性対照群に、50mg/kgのシクロフォスファミドを毎週与える。以下の読み取り値を調べる。1)フローサイトメトリーで測定したリンパ球の枯渇、2)ELISAで測定したdsDNAに対する自己抗体の発生、3)タンパク尿、および4)腎臓の組織学解析、ならびにこの方法によりCD52を標的にすることが腎損傷を緩和する程度をさらに測定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD52抗体の治療有効量をループスの患者に投与することを含む、前記患者のFoxP3+制御性T細胞を増加させる方法。
【請求項2】
前記制御性T細胞を刺激する薬剤を前記患者に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤がラパマイシン、TGF−β、IL−10、IL−4、IFN−α、ビタミンD3、デキサメタゾン、またはミコフェノール酸モフェチルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記TGF−βがTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、およびTGF−β5のうちのいずれか1つの活性形態または潜在性の形態である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記制御性T細胞が少なくとも1つの炎症部位で増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記炎症部位が血液、中枢神経系(CNS)、心臓、肝臓、関節、腎臓、肺、皮膚、腸管、または血管系である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
抗CD52抗体の治療有効量をループスの患者に投与することを含む、前記患者の尿タンパク質または尿中アルブミンのレベル、またはそれらの両方を減少させる方法。
【請求項8】
ループスの患者のFoxP3+制御性T細胞を増加させるための医薬を製造するための抗CD52抗体の使用。
【請求項9】
前記患者が前記制御性T細胞を刺激する薬剤を投与される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
ループスの患者の尿タンパク質または尿中アルブミンのレベル、またはそれらの両方を減少させるための医薬を製造するための抗CD52抗体の使用。
【請求項11】
前記患者が前記制御性T細胞を刺激する薬剤を投与される、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
前記薬剤がラパマイシン、TGF−β、IL−10、IL−4、IFN−α、ビタミンD3、デキサメタゾン、またはミコフェノール酸モフェチルである、請求項9または11に記載の使用。
【請求項13】
前記TGF−βがTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、およびTGF−β5のうちのいずれか1つの活性形態または潜在性の形態である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
(a)抗CD52抗体をループス患者に投与する、および(b)FoxP3+制御性T細胞を刺激する薬剤を前記患者に投与する、ことを含む前記患者の治療方法。
【請求項15】
第2の投与ステップの前、それと同時に、またはその後に第1の投与ステップが行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記薬剤がラパマイシン、TGF−β、IL−10、IL−4、IFN−α、ビタミンD3、デキサメタゾン、またはミコフェノール酸モフェチルである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記TGF−βがTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、およびTGF−β5のうちのいずれか1つの活性形態または潜在性の形態である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
抗CD52抗体、およびFoxP3+制御性T細胞を刺激する薬剤を含む、ループス治療用キット。
【請求項19】
前記薬剤がラパマイシン、TGF−β、IL−10、IL−4、IFN−α、ビタミンD3、デキサメタゾン、またはミコフェノール酸モフェチルである、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記TGF−βがTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、およびTGF−β5のうちのいずれか1つの活性形態または潜在性の形態である、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記患者がヒトであり、かつ、前記抗CD52抗体がヒト化抗ヒトCD52抗体またはヒト抗ヒトCD52抗体である、請求項1ないし7および14ないし17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記患者がヒトであり、かつ、前記抗CD52抗体がヒト化抗ヒトCD52抗体またはヒト抗ヒトCD52抗体である、請求項8ないし13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記抗CD52抗体がヒト化抗ヒトCD52抗体またはヒト抗ヒトCD52抗体である、請求項18ないし20のいずれか1項に記載のキット。
【請求項1】
抗CD52抗体の治療有効量をループスの患者に投与することを含む、前記患者のFoxP3+制御性T細胞を増加させる方法。
【請求項2】
前記制御性T細胞を刺激する薬剤を前記患者に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤がラパマイシン、TGF−β、IL−10、IL−4、IFN−α、ビタミンD3、デキサメタゾン、またはミコフェノール酸モフェチルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記TGF−βがTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、およびTGF−β5のうちのいずれか1つの活性形態または潜在性の形態である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記制御性T細胞が少なくとも1つの炎症部位で増大する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記炎症部位が血液、中枢神経系(CNS)、心臓、肝臓、関節、腎臓、肺、皮膚、腸管、または血管系である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
抗CD52抗体の治療有効量をループスの患者に投与することを含む、前記患者の尿タンパク質または尿中アルブミンのレベル、またはそれらの両方を減少させる方法。
【請求項8】
ループスの患者のFoxP3+制御性T細胞を増加させるための医薬を製造するための抗CD52抗体の使用。
【請求項9】
前記患者が前記制御性T細胞を刺激する薬剤を投与される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
ループスの患者の尿タンパク質または尿中アルブミンのレベル、またはそれらの両方を減少させるための医薬を製造するための抗CD52抗体の使用。
【請求項11】
前記患者が前記制御性T細胞を刺激する薬剤を投与される、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
前記薬剤がラパマイシン、TGF−β、IL−10、IL−4、IFN−α、ビタミンD3、デキサメタゾン、またはミコフェノール酸モフェチルである、請求項9または11に記載の使用。
【請求項13】
前記TGF−βがTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、およびTGF−β5のうちのいずれか1つの活性形態または潜在性の形態である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
(a)抗CD52抗体をループス患者に投与する、および(b)FoxP3+制御性T細胞を刺激する薬剤を前記患者に投与する、ことを含む前記患者の治療方法。
【請求項15】
第2の投与ステップの前、それと同時に、またはその後に第1の投与ステップが行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記薬剤がラパマイシン、TGF−β、IL−10、IL−4、IFN−α、ビタミンD3、デキサメタゾン、またはミコフェノール酸モフェチルである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記TGF−βがTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、およびTGF−β5のうちのいずれか1つの活性形態または潜在性の形態である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
抗CD52抗体、およびFoxP3+制御性T細胞を刺激する薬剤を含む、ループス治療用キット。
【請求項19】
前記薬剤がラパマイシン、TGF−β、IL−10、IL−4、IFN−α、ビタミンD3、デキサメタゾン、またはミコフェノール酸モフェチルである、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記TGF−βがTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、およびTGF−β5のうちのいずれか1つの活性形態または潜在性の形態である、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
前記患者がヒトであり、かつ、前記抗CD52抗体がヒト化抗ヒトCD52抗体またはヒト抗ヒトCD52抗体である、請求項1ないし7および14ないし17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記患者がヒトであり、かつ、前記抗CD52抗体がヒト化抗ヒトCD52抗体またはヒト抗ヒトCD52抗体である、請求項8ないし13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記抗CD52抗体がヒト化抗ヒトCD52抗体またはヒト抗ヒトCD52抗体である、請求項18ないし20のいずれか1項に記載のキット。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【公表番号】特表2012−526846(P2012−526846A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511015(P2012−511015)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/034741
【国際公開番号】WO2010/132683
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(500034653)ジェンザイム・コーポレーション (37)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/034741
【国際公開番号】WO2010/132683
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(500034653)ジェンザイム・コーポレーション (37)
【Fターム(参考)】
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