説明

レイアウト・スキャンニング・システム

【課題】 バッテリーを不要として安価な確実にファシリティーの位置を確認把握できるレイアウト・スキャンニング・ システムを提供すること。
【解決手段】本システムは、探索対象ファシリティー3上に貼付されICタグ5と、ICタグ5との間で通信を行うアンテナ71を含む通信手段7と、探索対象ファシリティー3の存在する空間上部に設置され搭載しているアンテナ71を探索対象ファシリティー3上で移動させるスキャンニング機構9と、アンテナ71からのスキャン情報およびスキャンニング機構の位置情報とを基に概算位置を算出する位置算出手段13と、位置算出手段13からの概算位置とICタグ5からの情報を取り込み、ICタグ5の情報を基に、各種データベースから取り出したデータで概算位置を補正処理をしてレイアウトデータを形成する情報処理手段15とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具・什器や工作機械、実験装置等の探索対象ファシリティーの配置情報を管理するレイアウト・スキャンニング・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス、病院、工場、研究所、その他の施設における家具・什器や工作機械、実験装置等(以下一括して「ファシリティー」と称する)は、施設保有者のファシリティーマネージャ等により管理され、それらのうち固定資産については、毎年の固定資産税額確定のため保有の有無および設置場所の確認が行われている。また、備品についても、各保有者の内部規定に従った確認作業が行われている。
これらの確認作業には、当該ファシリティーに、文字情報を記載したシールや1次元または2次元のバーコード、各種ICタグを貼付し、これらを調査担当者が目視または各種読み取り装置により確認し、別途用意された帳票または施設管理データベース等と突合することによりなされている。
【0003】
しかしながら、これらの作業にあたっては、(1)調査者が当該ファシリティーの存在について知っていること、(2)当該ファシリティーの設置場所、およびそれらが移動された場合にはその移動先について知っていることなどを前提としており、位置確認や対象物の同定に苦慮することが多い。
また、オフィスや工場、研究所等においては、その業務の内容(ワークスタイル)、生産ラインの変更、研究に必要とされる実験装置の組み替え等に伴い、取得済みのファシリティーが、短期間でその設置場所を変更されることも多い。
特に知的労働者(ナレッジワーカー)のオフィスにおいては、従来の固定的な組織に対応したオフィスレイアウトは、過去のものとなりつつあり、プロジェクトの内容に適応した柔軟な家具・什器等の配置をタイムリーに実現することが、業務効率の向上に必要不可欠な要素となりつつある。
【0004】
上述したように、施設保有者(経営者)にとっては、自らの資産である各種ファ シリティーについて、その保有の確認のみならず、それらがどこに置かれており、どのような用途に用いられているかについての情報をリアルタイムに把握することが、当該ファシリティーの有効利活用および、それを用いた生産性の向上の観点から重要管理項目となる。
ところで、検索ファシリティーの位置を検索するシステムとしては、ファシリティーに超音波タグを取り付け、当該超音波タグと位置計測処理部との間で通信を行い、その通信によって得た情報より当該ファシリティーの存在や位置情報を知るシステムが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−292129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この検索システムでは、超音波タグを必要とし、次のような問題がある。
(1)超音波タグでは、超音波を発生させるために、その内部にバッテリーを備えなければならず、超音波タグが高価にならざるを得ない。
(2)一定期間(数箇月から数年)毎にバッテリーを交換する必要があるため、管理対象のファシリティーが多数となる場合には、バッテリー交換のために相応数の手間がかかる。
(3)バッテリーが消耗した場合には位置の特定ができず、バッテリーの交換作業そのものができなくなってしまうという不都合がある。
本発明は、上述した従来技術の欠点を解消し、パッシヴ型タグを用いることによりバッテリーを不要として安価な確実にファシリティーの位置を確認把握できるレイアウト・スキャンニング・システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明に係るレイアウト・スキャンニング・システムは、探索対象ファシリティー上に貼付され探索対象ファシリティーの個別情報を格納したICタグと、前記ICタグとの間で通信を行うアンテナを含む通信手段と、探索対象ファシリティーの存在する空間上部に設置されるとともに前記アンテナを搭載し、かつ前記アンテナを前記探索対象ファシリティー上で移動させるスキャンニング機構と、前記スキャンニング機構を駆動制御する駆動制御手段と、前記個別アンテナからのスキャン情報およびスキャンニング機構の位置情報とを基に概算位置を算出する位置算出手段と、前記位置算出手段からの概算位置を取り込むとともに、前記アンテナを介して通信手段からのICタグの情報を取り込み、前記ICタグの情報を基に、探索対象ファシリティーの属性に関するオブジェクト属性データベースから取り出したデータ、属性情報を格納した付加データベースから取り出したデータおよびコンテキストリポジトリから探索対象ファシリティーの配置にかかわる規則のデータを取り出し、これら取り出したデータで前記概算位置を補正処理をしてレイアウトデータを形成する情報処理手段とを備えたことを特徴とするものである。
上記目的を達成するために、請求項2記載の発明に係るレイアウト・スキャンニング・システムは、探索対象ファシリティー上に貼付され探索対象ファシリティーの個別情報を格納した第1のICタグと、一時属性データを格納した第2のICタグと、前記各ICタグとの間で通信を行うアンテナを含む通信手段と、探索対象ファシリティーの存在する空間上部に設置されるとともに前記アンテナを搭載し、かつ前記アンテナを前記探索対象ファシリティー上で移動させるスキャンニング機構と、前記スキャンニング機構を駆動制御する駆動制御手段と、前記個別アンテナからのスキャン情報およびスキャンニング機構の位置情報とを基に概算位置を算出する位置算出手段と、前記位置算出手段からの概算位置を取り込むとともに、前記アンテナを介して通信手段からの第1のICタグおよび第2のICタグの情報を取り込み、前記両ICタグの情報を基に、探索対象ファシリティーの属性に関するオブジェクト属性データベースから取り出したデータ、属性情報を格納した付加データベースから取り出したデータおよびコンテキストリポジトリから探索対象ファシリティーの配置にかかわる規則のデータを取り出し、これら取り出したデータで前記探索対象ファシリティーと前記一時属性とを関連つける情報処理手段とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本願請求項1および2に係る発明によれば、その位置が頻繁に移動されることが想定されるファシリティーに、バッテリーが不要で安価なパッシヴ型のICタグを貼付し、その位置と方向を自動的に探査することができる。
本願請求項1に係る発明によれば、予め作成された建物平面図や各種ファシリティーの配置規則等と、探査された位置・方向情報等のデータとを連係させることにより、ファシリティーの配置状況を示した二次元または三次元情報データ(レイアウトデータ)を自動的に生成することができる。これにより、各種ファシリティーの検索および管理に関わる稼働の削減ができるとともに、それらファシリティーの有効利活用することができる。
本願請求項2に係る発明によれば、探索対象ファシリティーと、一時属性とを結びつけることができるので、探索対象ファシリティーと使用者、他の物品との関係等を関連つけることができるので、幅広い応用が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1ないし図5は本発明の実施形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムを説明するための図面である。ここに、図1は、本発明の実施形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムの全体構成を示すブロック図である。図2は、本発明の実施形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムの一部を示す側断面図である。図3は、本発明の実施形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムの一部であって机にICタグを取り付けた状態を示す斜視図である。
【0009】
これらの図において、本発明の実施形態に係るレイアウト・スキャンニング・システム1は、探索対象ファシリティー3の上に貼付され探索対象ファシリティー3の個別情報を格納したICタグ5と、前記ICタグ5との間で通信を行うアンテナ71を含む通信手段7と、探索対象ファシリティー3の存在する空間上部に設置されるとともに前記アンテナ71を搭載し、かつ前記アンテナ71を前記探索対象ファシリティー3上で移動させるスキャンニング機構9と、前記スキャンニング機構9を駆動制御する駆動制御手段11と、前記個別アンテナ71からのスキャン情報およびスキャンニング機構9の位置情報とを基に概算位置を算出する位置算出手段13と、前記位置算出手段13からの概算位置を取り込むとともに、前記アンテナ71を介して通信手段からのICタグ5の情報を取り込み、前記ICタグ5の情報を基に、探索対象ファシリティーの属性に関するオブジェクト属性データベースから取り出したデータ、属性情報を格納した付加データベースから取り出したデータおよびコンテキストリポジトリから取り出した探索対象ファシリティーの配置にかかわる規則に関するデータを取り出し、これら取り出したデータで前記概算位置を補正処理をしてレイアウトデータを形成する情報処理手段15とを備えたものである。
【0010】
さらに詳細に説明すると、探索対象ファシリティー3は、既に説明したように、オフィス、病院、工場、研究所、その他の施設に設置された家具・什器や工作機械、実験装置等のことである。
上記ICタグ5は、物体の識別に利用される微小な無線ICチップであって、自身の識別コードなどの情報が格納されていて、電波を使って通信手段7と情報を送受信する能力を持っている。このICタグ5は、数[cm]程度の大きさで、電波や電磁波で通信手段7のアンテナ71と交信でき、アンテナ71側からの非接触電力伝送技術によって、電池を持たない半永久的に利用可能なパッシヴ型タグとして構成されている。また、このICタグ5の形状は、一般に、ラベル型、カード型、コイン型、スティック型など様々な形状をしたものが提供されているが、本実施の形態では、ラベル型、カード型などを用いている。本発明の実施の形態では、図3に示すように、探索対象ファシリティー3の一種である机の両隅にICタグ5,5を固定している。
【0011】
前記通信手段7は、ICタグ5に対して電波を放射しICタグ5からの電波を受信するアンテナ71と、前記アンテナ71に電波を供給しかつ前記ICタグ5からの反射波をアンテナ71で受信しその受信電波からICタグ5に格納された情報を取り出す通信装置本体73とから構成されている。
前記スキャンニング機構9は、探索対象ファシリティー3,…が置かれた空間上に設置されたガイドレール91と、前記ガイドレール91により支持され前記ガイドレール91上を図示左右方向に移動可能とされたスキャンバー92とを備えている。スキャンバー92は、モータ(図示せず)で駆動される車輪(図示せず)を介して前記ガイドレール91上に設置されており、モータ(図示せず)の回転力により図示左右方向(X方向)に移動可能になっている。
【0012】
また、スキャンバー92には、アンテナ71が図示上下方向(Y方向)に移動可能に固定されている。すなわち、前記アンテナ71は、スキャンバー92上をモータの回転力によって移動できるようになっている。
前記スキャンバー92を移動させるモータ(図示せず)と、前記アンテナ71を移動させるモータは、駆動制御手段11によって駆動制御されている。また、駆動制御手段11は、前記各モータを駆動するとともに、それぞれの移動位置を検出できるようになっている。
前記アンテナ71は、図1に示すように、前記通信装置本体73に同軸ケーブル等で接続されている。前記通信装置本体73は、前記アンテナ71で読み取った前記ICタグ5の個別情報を取り出し、ケーブルを介して情報処理手段15に与えられるようになっている。なお、前記通信装置本体73は、情報処理手段15にケーブルを介して接続されており、情報処理手段15からの制御信号によって駆動されるようになっている。
【0013】
前記駆動制御手段11は、スキャンバー92を移動させるモータと、アンテナ71を移動させるモータに電気的に接続されており、これらモータを駆動制御するとともに、その移動距離を検出できるようになっている。前記駆動制御手段11は、通信装置本体73にケーブルを介して電気的に接続されている。また、前記駆動制御手段11は、情報処理手段15にケーブルを介して電気的に接続されており、駆動制御手段11で得た情報を情報処理手段15に送り、また、情報処理手段15からの制御信号を駆動制御手段11に供給できるようになっている。
【0014】
前記駆動制御手段11の内部には位置算出手段13が設けられており、前記位置算出手段13は、前記アンテナ71を介して通信装置本体73で得られたICタグ5のスキャン情報および前記駆動制御手段11からのスキャンニング機構9の位置情報とを基に概算位置を算出できるようになっている。すなわち、位置算出手段13は、マイクロコンピュータシステム(MPU)等で実現されるものであり、MPUは、演算処理部、RAM、ROM、入出力装置等で構成されていて、ROMに格納された位置算出アルゴリズムを演算処理部で処理することにより、位置算出手段13が実現されることになる。
【0015】
前記情報処理手段15は、例えばパーソナルコンピュータで構成すればよく、例えば図1に示すように、処理装置本体151、キーボード153、ディスプレイ装置155等で構成されている。また、処理装置本体151は、図示しないが、演算処理部と、主記憶装置と、各種インターフェースと、補助記憶装置としてのハードディスク装置とを備えている。この処理装置本体151は、ハードディスク装置に格納されているオペレーティングシステムを主記憶装置に展開記憶して演算処理装置が主記憶装置に記憶されているオペレーティングシステムを実行することにより各種の処理が可能になる。
【0016】
また、本発明を実行するためのアプリケーションプログラムを主記憶装置に展開記憶し、オペレーティングシステムの制御下にこのアプリケーションプログラムを演算処理部で実行することにより本発明の実施の形態に係る処理を実行できることになる。なお、情報処理手段15の処理装置本体151におけるハードディスク装置には、探索対象ファシリティーの属性に関する補正データを格納するオブジェクトデータベースと、付加データに関する補正データを格納する付加データベースと、モジュール情報・配置角度情報、通路幅情報などの必要なデータを格納するコンテキストリポジトリとが設けられている。
【0017】
このように構成されたレイアウト・スキャンニング・システムの作用を図1ないし図3を基に、図4および図5を参照しながら説明する。ここで、図4は、本発明の実施の形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムの動作の概略を説明するための図である。図5は、本発明の実施の形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムの動作を説明するための図である。
まず、駆動制御手段11からの駆動信号によって、スキャンバー92をある位置に停止させるとともに、アンテナ71をある位置に停止させる。その停止時点において通信装置本体73から一定の発信間隔毎にごとにICタグ5に対応した電磁信号を複数回パルス状にアンテナ71に供給する。アンテナ71は、その電磁波をICタグ5に向けて発射する。
【0018】
アンテナ71から発射する電磁波のパルス発信は、発信ごとに同一の発信強度で行う方式と、強度および指向性を段階的に変化させながら、行う方式の二種類の方式を利用可能とする。後者は、探査環境における電波反射の影響等を考慮して、アンテナ71からの信号の伝搬距離および指向性角度(図2の角度θ)を変化させることにより、最適なスキャンデータの取得が可能となるようにするための機能である。
【0019】
スキャンバー92上において、例えば図1の一番下側の位置でアンテナ71から電磁波をパルス発信し、かつ、その発信に伴うICタグ5からの情報捕捉または非捕捉が完了後、駆動制御手段11はアンテナ71を所定距離dyだけ図1の上側に移動させて、その位置で停止させる(この位置を、下から2番目の位置という)。
下から2番目の位置において、アンテナ71から電磁波をパルス発信し、かつ、その発信に伴うICタグ5からの情報捕捉または非捕捉が完了後、駆動制御手段11はアンテナ71を所定距離dyだけ図1の上側に移動させて、その位置で停止させる(この位置を、下から3番目の位置という)。
このアンテナ71の移動・停止を繰り返し、各停止位置でアンテナ71から電磁波をパルス発信し、かつ、その発信に伴うICタグ5からの情報捕捉または非捕捉を行う。
【0020】
最後に、スキャンバー92上において、例えば図1の一番上側の位置でアンテナ71から電磁波をパルス発信し、かつ、その発信に伴うICタグ5からの情報捕捉または非捕捉が完了後、駆動制御手段11は、スキャンバー92を任意の間隔dxだけ、ガイドレール91上を移動させる。スキャンバー92の移動完了後の位置に停止した上で、上述したアンテナ71の移動と・アンテナ71から電磁波をパルス発信し、かつ、その発信に伴うICタグ5からの情報捕捉または非捕捉を繰り返す。
【0021】
この動作を探索空間の全長に渡って繰り返すことにより、仮想的に探索空間の全面に横方向dxの距離間隔と、縦方向dyの距離間隔に個別アンテナ71,71,…が配置されたのと同一のスキャン環境を実現することが可能となる。
上記処理がスキャン情報の取り込み処理工程となる(図5のS801)。
次に、上述したようにスキャンして得た情報からパッシヴ型タグ(ICタグ)からの概算位置取得法について図4を参照しながら説明する。
上述したようなアンテナ71によるICタグ5,…のスキャンにより取得された情報の総体は、図4(a)に示すように、複数個の探索対象ファシリティー3に対する複数のアンテナ71,…位置におけるパッシヴICタグ5からの複数回の応答信号情報200,…の集合となる。
【0022】
この時、パッシヴICタグ5に格納された固有のID情報400により識別される一個のICタグ5に注目すると、図4(b)に示すように、このICタグ5からの応答信号情報を一回以上捕捉した複数の個別アンテナ71,…の発信位置202,…を抽出することができる。また、個別アンテナ71は、個々の発信位置において複数回パルス発信を繰り返すため、特にアンテナ71の指向性(図2に示す角度θ)の限界域の近傍においては、応答の回数にばらつきが生ずる。
一個のパッシヴICタグ5に対して、一回以上の応答信号を捕捉した個別アンテナ71の発信位置は、発信時のスキャンバー92の位置および個別アンテナ71のスキャンバー92上の位置により確定できるので、これらを総合すると、図4(b)に示すように、横がdx間隔で、縦がdy間隔のマトリックス上に配置された仮想アンテナ群71a,71a,…としてとらえることが可能である。
【0023】
駆動制御手段11の内部に設けられた位置算出手段13は、この仮想アンテナ群71a,71a,…の情報を取り込むとともに(S241)、通信装置本体73から応答信号捕捉回数を取り込み(S241)、当該アンテナ群71a,71a,…の各位置を当該ICタグ5の応答信号捕捉回数により重み付けした上(S242)、その空間的広がりにおける重心位置を得る(S243)。これにより、位置算出手段13では、探索対象物の平面における概算位置を知ることができる。また、探索対象ファシリティー3に取り付けられた2枚のICタグ5については、得られた2個の概算位置から、探索対象物の概略の方向を把握することが可能である。
【0024】
さらに、一回以上の応答信号を捕捉した個別アンテナ発信位置における、パルス発信開始時から応答信号取得時までの時間差の応答回数による加重平均値を求めることにより、スキャンバー92と探索対象ファシリティー3上のパッシヴICタグ5との間の概算距離を取得することが可能である。
このようにして位置算出手段13から概算位置情報600を得ることができる。この位置算出手段13において概算位置算出アルゴリズムを実行することにより概算位置情報600を得る(図5のS802)。
この位置算出手段13からの概算位置情報600は、図4(c)に示す情報処理手段15に供給される。
【0025】
一方、上記通信手段7で得られたID情報400は、図4(c)に示す情報処理手段15に供給される。
上述したように情報処理手段15における処理装置本体151の演算処理部は、通信手段7の通信装置本体73からID情報400を取り込むとともに、位置算出手段13で算出した概算位置情報600を取り込むと、当該ID情報400を基に、オブジェクト属性データベース300から探索対象ファシリティーに関するデータを取り出し(S803)、かつ、付加データベース500から例えば社員のID等からなる探索対象ファシリティーに関する付加データを取り出す(S804)。
【0026】
また、情報処理手段15における処理装置本体151の演算処理部は、概算位置情報600に関し次のような処理を実行する。すなわち、情報処理手段15における処理装置本体151の演算処理部は、予め用意されたコンテキストリポジトリ700から配置間隔や角度、通路幅、対象物相互の空間的重複可否、スキャンバー原点位置等の情報を参照し(S805)、その情報を基に概算位置情報600の位置や配置角度の補正処理を行う(S806)。情報処理手段15における処理装置本体151の演算処理部は、この結果を、予め用意されたCAD平面図と組み合わせることにより、レイアウトデータ900を自動生成する(S807)。
情報処理手段15における処理装置本体151の演算処理部が上述したような処理動作を実行することによりレイアウトデータ900を得ることができる。
【0027】
本発明の実施の形態では、その位置が頻繁に移動されることが想定されるファシリティーに、バッテリーが不要で安価なパッシヴ型のICタグを貼付し、その位置と方向を自動的に探査することができる。
本発明の実施の形態では、予め作成された建物平面図や各種ファシリティーの配置規則等と、探査された位置・方向情報等のデータとを連係させることにより、ファシリティーの配置状況を示した二次元または三次元情報データ(レイアウトデータ)を自動的に生成することができる。これにより、各種ファシリティーの検索および管理に関わる稼働の削減ができるとともに、それらファシリティーの有効利活用することができる。
【0028】
本発明の実施の形態では、スキャンバー92上のアンテナ71の数を1個とし、これをスキャンバー92の全長にわたりdyのピッチで移動させながらスキャンを行うとともに、ガイドレール91をx方向に移動させているので、空間全体のスキャンに時間を要するが、アンテナ数が一個であるため、コスト的には有利となる。
【0029】
上述したようなレイアウト・スキャンニング・システムによれば、次のような利点がある。
(1)バッテリーが不要で永久に使えるICタグ5を用いることにより、安価なシステム構成とすることができる。
(2)ICタグ5にはアンテナ71から電力が供給されるので、管理対象のファシリティーが多数となった場合でも、従来のようにバッテリーを交換する必要がないため、バッテリー交換の手間がかからない。
(3)バッテリーが不要なICタグ5を使用しているので、位置の特定ができないということがない。
【0030】
本発明の実施の形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムによれば、オブジェクト属性データベース300内に格納されている当該探索対象ファシリティー3の大きさに関するデータを用いることにより、他の探索対象ファシリティー3との空間的包含関係を把握することが可能なように応用できる。具体的に言えば、例えば、あるパーソナルコンピュータがどの机の上に配置されているかを知ることができるように応用可能である。
【0031】
図6は、本発明の実施の形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムの応用例を説明するためにICタグの他の配置を示す図である。
この図6に示すように、探索対象ファシリティー3の一種である机の両隅にICタグ5,5を配置するほか、例えば探索対象ファシリティー3の一種である机の中央に一時属性ICタグ50を置いておくことにより、本発明は次のような応用が可能となる。すなわち、本発明の実施の形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムによれば、探査実行時に、補助的IDを保持したパッシヴICタグ50またはICカード(IC社員証等)を机上に配置しておくことにより、例えばその机の使用者の属性と、探索対象ファシリティー3としての机の属性とを関連付けるように応用することもできる。これにより組織改編や人事異動で机等の配置や利用者が変更となった場合、家具・什器の使用者等のデータベースと、組織・人事等のデータベースとを簡易に関連付けすることができる。
【0032】
さらに、本発明の実施の形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムによれば、例えば一時属性ICタグ50を介して付加データベース500から得られる社員属人情報等を基に、特定パーソナルコンピュータからのネットワークへのアクセス制限等のセキュリティ管理やIPアドレス管理などへの応用も可能となる。
このように本発明の他の実施の形態によれば、探索対象ファシリティーと、一時属性とを結びつけることができるので、探索対象ファシリティーと使用者、他の物品との関係等を関連つけることができるので、幅広い応用が可能になる。
【0033】
図7は、本発明の他の実施の形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムに用いるアンテナの他の例を示す平面図である。
この図7に示す他の実施の形態では、探索対象ファシリティー3,・・・が置かれた空間上のガイドレール91に支持されたスキャンバー92に、個別アンテナ71,・・・を等間隔dyで取り付けたものである。
本発明の他の実施の形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムに用いるアンテナ71,…によれば、上記実施の形態のようにアンテナ71を図示上下方向に移動させる必要がないため、コスト的には高くなるが、スキャン速度を上昇させることができる。
【0034】
図8は、本発明のさらに他の実施の形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムの例を示す図である。
本発明のさらに他の実施の形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムは、図8に示すように、ガイドレール91が脚立95等の上に固定された状態で仮設的に設置したものである。
本発明のさらに他の実施の形態では、ガイドレール91・スキャンバー92が仮設的に設置された場合であるので、スキャン範囲の原点位置を予め情報処理手段15に入力しておく必要がある。
本発明のさらに他の実施の形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムによれば、ガイドレール91を脚立95の上に固定すればよいので、例えば会社の各部屋に持ち込んでスキャン等をするなど移動して使用することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムの一部を示す側断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムの一部であって机にICタグを取り付けた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムの動作の概略を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムの動作を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムの応用例を説明するためにICタグの他の配置を示す図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムに用いるアンテナを示す平面図である。
【図8】本発明のさらに他の実施の形態に係るレイアウト・スキャンニング・システムの例を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 レイアウト・スキャンニング・システム
3 探索対象ファシリティー
5 ICタグ
7 通信手段
9 スキャンニング機構
11 駆動制御手段
13 位置算出手段
15 情報処理手段
50 一時属性ICタグ
71 アンテナ
73 通信装置本体
151 処理装置本体
153 キーボード
155 ディスプレイ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
探索対象ファシリティー上に貼付され探索対象ファシリティーの個別情報を格納したICタグと、
前記ICタグとの間で通信を行うアンテナを含む通信手段と、
探索対象ファシリティーの存在する空間上部に設置されるとともに前記アンテナを搭載し、かつ前記アンテナを前記探索対象ファシリティー上で移動させるスキャンニング機構と、
前記スキャンニング機構を駆動制御する駆動制御手段と、
前記個別アンテナからのスキャン情報およびスキャンニング機構の位置情報とを基に概算位置を算出する位置算出手段と、
前記位置算出手段からの概算位置を取り込むとともに、前記アンテナを介して通信手段からのICタグの情報を取り込み、前記ICタグの情報を基に、探索対象ファシリティーの属性に関するオブジェクト属性データベースから取り出したデータ、属性情報を格納した付加データベースから取り出したデータおよびコンテキストリポジトリから探索対象ファシリティーの配置にかかわる規則のデータを取り出し、これら取り出したデータで記概算位置を補正処理をしてレイアウトデータを形成する情報処理手段とを備えたことを特徴とするレイアウト・スキャンニング・システム。
【請求項2】
探索対象ファシリティー上に貼付され探索対象ファシリティーの個別情報を格納した第1のICタグと、
一時属性データを格納した第2のICタグと、
前記各ICタグとの間で通信を行うアンテナを含む通信手段と、
探索対象ファシリティーの存在する空間上部に設置されるとともに前記アンテナを搭載し、かつ前記アンテナを前記探索対象ファシリティー上で移動させるスキャンニング機構と、
前記スキャンニング機構を駆動制御する駆動制御手段と、
前記個別アンテナからのスキャン情報およびスキャンニング機構の位置情報とを基に概算位置を算出する位置算出手段と、
前記位置算出手段からの概算位置を取り込むとともに、前記アンテナを介して通信手段からの第1のICタグおよび第2のICタグの情報を取り込み、前記両ICタグの情報を基に、探索対象ファシリティーの属性に関するオブジェクト属性データベースから取り出したデータ、属性情報を格納した付加データベースから取り出したデータおよびコンテキストリポジトリから探索対象ファシリティーの配置にかかわる規則のデータを取り出し、これら取り出したデータで前記探索対象ファシリティーと前記一時属性とを関連つける情報処理手段とを備えたことを特徴とするレイアウト・スキャンニング・システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−218644(P2007−218644A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37406(P2006−37406)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】