説明

レオロジー調節剤

【課題】増大したICI/KU粘度比率を有する、疎水的に改質されたウレタンポリマー配合物の提供。
【解決手段】a)ポリイソシアナート分岐剤を化学量論的に過剰の水溶性ポリアルキレングリコールと接触させる工程;b)ポリアルキレングリコールと分岐ポリヒドロキシアルキレンオキシドウレタンとの混合物を、ジイソシアナート、エピハロヒドリン、およびgem−ジハロゲン化物からなる群から選択される二官能性結合剤と接触させる工程;c)ヒドロキシル反応性末端基を含む分岐ウレタンポリマーをキャッピング剤と接触させる工程からなる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は疎水的に改質されたウレタンポリマーに関し、これは水性コーティング配合物においてレオロジー調節剤として使用される。
【背景技術】
【0002】
レオロジー調節剤は水性コーティング配合物において、広い剪断速度範囲にわたって粘度を制御するために使用される。これらは会合性(これらは分散相と会合する)であってもよいし、または非会合性(これらは水相を増粘する)であってもよい。会合性増粘剤は疎水的に改質されたセルロースエーテルのような天然産物から得られることができ、または疎水的に改質されたエチレンオキシドウレタン(HEUR)ポリマーのような合成ポリマーから製造されてもよい。HEURポリマーおよびその製造の典型的な説明が米国特許出願公開第2009/0318595A1号に認められることができ、これはポリグリコール、疎水性アルコール、ジイソシアナートおよびトリイソシアナートを一緒にワンポット反応で反応させることにより、線状および分岐HEURポリマーの組み合わせを形成することを記載する。
【0003】
米国特許第4,155,892号(Emmonsら)は別々の例において線状並びに分岐HEURポリマーの製造を記載する。
【0004】
レオロジー調節剤は典型的には低剪断速度型粘度上昇剤(ストーマー粘度上昇剤、KU粘度上昇剤としても知られている)もしくは高剪断速度型粘度上昇剤(ICI上昇剤)として分類される。KU粘度を同時に増大させることなく、ICI粘度およびICI上昇型(building)レオロジー調節剤の効率を増大させることが望ましいが、これはこのような増大が配合物にKU上昇型レオロジー調節剤を添加する配合者の能力を制限するからである。
【0005】
商業的に入手可能なHEURポリマーであるACRYSOL商標5000およびACRYSOL商標6000レオロジー調節剤(ザダウケミカルカンパニーもしくはその関係会社の商標)は、アクリル系半光沢白色塗料においてそれぞれ1.75および2.40のICI粘度およびそれぞれ79.3および109.7のKU粘度を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0318595A1号明細書
【特許文献2】米国特許第4,155,892号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既知のレオロジー調節剤のと比べて増大したICI/KU粘度比率を有する、疎水的に改質されたウレタンポリマー配合物を得ることは有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の形態においては、本発明は、50,000〜約150,000ダルトンのMおよび2.5〜約5.0の多分散度を有することにより特徴付けられる、疎水的に改質されたアルキレンオキシドポリウレタンを含む組成物である。
第2の形態においては、本発明は、
a)ポリアルキレングリコールと分岐ポリヒドロキシアルキレンオキシドウレタンとの混合物を形成するような条件下で、ポリイソシアナート分岐剤を化学量論的に過剰の水溶性ポリアルキレングリコールと接触させる工程;
b)ヒドロキシル反応性末端基を含む分岐ウレタンポリマーを形成するような条件下で、ポリアルキレングリコールと分岐ポリヒドロキシアルキレンオキシドウレタンとの混合物を、ジイソシアナート、エピハロヒドリン、およびgem−ジハロゲン化物からなる群から選択される二官能性結合剤と接触させる工程;並びに
c)疎水的に改質されたアルキレンオキシドウレタンを形成するような条件下で、ヒドロキシル反応性末端基を含む分岐ウレタンポリマーをキャッピング剤と接触させる工程;
を含み、
前記キャッピング剤が下記式:
【化1】

(式中、RはC−C30アルキル、アリール、もしくはアルアルキル基であり;RはHまたはC−C30アルキル、アリールもしくはアルアルキル基であり;RはC−C30アルキル、アリールもしくはアルアルキル基であり;YはC−Cアルキレン基であり;WはNもしくはPであり;xは0〜200の整数であり;並びに、ZはOもしくはNHである)
のいずれかによって特徴付けられる
方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法により製造されるポリマーは、標準のワンポットプロセスによって同じ薬剤および比率を使用して製造されたポリマーよりも向上したICI/KU粘度バランスを有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は比較のHEUR組成物のサイズ排除クロマトグラフィトレースを示す。
【図2】図2は本発明のHEUR組成物のサイズ排除クロマトグラフィトレースを示す。
【図3】図3は本発明のHEUR組成物および比較のHEUR組成物の分子量分布を重ねて示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の形態においては、本発明は、50,000〜約150,000ダルトンのMおよび2.5〜約5.0の多分散度を有することにより特徴付けられる、疎水的に改質されたアルキレンオキシドポリウレタンを含む組成物である。
【0012】
本発明の疎水的に改質されたアルキレンオキシドポリウレタン組成物は部分的には親水性ポリアルキレンオキシド基によって特徴付けられ、その例には、親水性ポリエチレンオキシド、親水性ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、および親水性ポリエチレンオキシド/ポリブチレンオキシドコポリマーが挙げられる。好ましい疎水的に改質されたアルキレンオキシドポリウレタンは疎水的に改質されたエチレンオキシドポリウレタン(HEUR)である。
【0013】
疎水的に改質されたアルキレンオキシドポリウレタン組成物は、ポリアルキレンオキシド基、好ましくはポリエチレンオキシド基に結合するウレタン基によってさらに特徴付けられる。この組成物は線状および分岐ポリマーの混合物を含む。
【0014】
疎水的に改質されたアルキレンオキシドポリウレタン組成物は、ペンダント疎水性キャッピング基を含むことによってさらに特徴付けられ、このペンダント疎水性キャッピング基は以下の式のいずれかによって特徴付けられる:
【化2】

式中、RはC−C30アルキル、アリール、もしくはアルアルキル基であり;RはHまたはC−C30アルキル、アリールもしくはアルアルキル基であり;RはC−C30アルキル、アリールもしくはアルアルキル基であり;YはC−Cアルキレン基であり;WはNもしくはPであり;xは0〜200の整数であり;並びに、ZはOもしくはNHである。
【0015】
別の実施形態においては、本発明の組成物は70,000〜90,000ダルトンのMおよび2.9〜約3.3の多分散度を有する。
【0016】
別の実施形態においては、本発明の組成物は110,000〜140,000ダルトンのMおよび4.2〜約4.4の多分散度を有する。
【0017】
第2の形態においては、本発明は、
a)ポリアルキレングリコールと分岐ポリヒドロキシアルキレンオキシドウレタンとの混合物を形成するような条件下で、ポリイソシアナート分岐剤を化学量論的に過剰の水溶性ポリアルキレングリコールと接触させる工程;
b)ヒドロキシル反応性末端基を含む分岐ウレタンポリマーを形成するような条件下で、ポリアルキレングリコールと分岐ポリヒドロキシアルキレンオキシドウレタンとの混合物を、ジイソシアナート、エピハロヒドリン、およびgem−ジハロゲン化物からなる群から選択される二官能性結合剤と接触させる工程;並びに
c)疎水的に改質されたアルキレンオキシドウレタンを形成するような条件下で、ヒドロキシル反応性末端基を含む分岐ウレタンポリマーをキャッピング剤と接触させる工程;
を含み、
前記キャッピング剤が下記式:
【化3】

(式中、RはC−C30アルキル、アリール、もしくはアルアルキル基であり;RはHまたはC−C30アルキル、アリールもしくはアルアルキル基であり;RはC−C30アルキル、アリールもしくはアルアルキル基であり;YはC−Cアルキレン基であり;WはNもしくはPであり;xは0〜200の整数であり;並びに、ZはOもしくはNHである)
のいずれかによって特徴付けられる
方法である。
【0018】
本発明の方法の第1の工程においては、未反応のポリエチレングリコールを伴うポリヒドロキシエチレンオキシドウレタンを形成するような条件下で、化学量論的に過剰の水溶性ポリアルキレングリコールがポリイソシアナート分岐剤と接触させられる。水溶性ポリアルキレングリコールとは、水溶性ポリエチレンオキシド、水溶性ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、水溶性ポリエチレンオキシド/ポリブチレンオキシドコポリマー、およびポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド/ポリブチレンオキシドターポリマーをいう。本明細書において使用される場合、用語「プロピレンオキシド」とは、−(OCHCHCH)−および/または−(OCH(CH)CH)−の繰り返し基を有するポリマーをいう。
【0019】
好ましい水溶性ポリアルキレンオキシドはポリエチレングリコール、特に4000から、より好ましくは6000から、および最も好ましくは7000から、20,000まで、より好ましくは12,000まで、および最も好ましくは9000ダルトンまでの範囲の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである。
【0020】
好適なポリエチレングリコールの例はPEG8000であり、これはCARBOWAX商標8000ポリエチレングリコール(ミシガン州ミッドランドのザダウケミカルカンパニー(Dow)もしくはその関係会社の商標)として商業的に入手可能である。
【0021】
本明細書において使用される場合、用語「ポリイソシアナート分岐剤」は少なくとも3つのイソシアナート基を含む化合物である。ポリイソシアナート分岐剤の好ましい種類の例には、シアヌレートトリマーおよびビウレットトリマーが挙げられ、これらは下記式によって特徴付けられる:
【化4】

式中、RはC−C30アルキレン基、より具体的にはC−C20アルキレン基である。本明細書において使用される場合、用語「アルキレン基」とは、線状、分岐もしくは環式脂肪族またはこれらの組み合わせである二価の飽和もしくは部分飽和ヒドロカルビル基をいう。好ましいものである好適なシアヌレートトリマーの具体的な例には、HDIイソシアヌレート(トリマー)、およびIPDIイソシアヌレート(トリマー)が挙げられる。これらシアヌレート化合物の構造は以下に示される:
【化5】

【0022】
イソシアヌレートトリマーは、この化合物に高次のイソシアナート官能性を付与するオリゴマー(ペンタマー、ヘプタマーなど)を一般的に低水準で含むことを当業者は認識する。よって、用語「イソシアナートトリマー」はトリマーを単独でもしくはトリマーと他のオリゴマーとの混合物として含むことができる。
【0023】
ヒドロキシルおよびイソシアナート基の結合を促進するように設計された触媒の存在下で、化学量論的に過剰のポリアルキレングリコールはポリイソシアナート分岐剤と有利に接触させられる。好適な触媒には、スズ触媒、例えば、ジブチルスズジラウラートおよびジブチルスズジアセタートが挙げられる。この反応はイソシアナート基の完全なもしくは実質的に完全な消費を確実にするように設計された条件下で行われる。ポリイソシアナート分岐剤はポリアルキレングリコールと場合によっては比較的高い沸点を有する非干渉溶媒、例えば、トルエンとのあらかじめ乾燥された混合物に簡単に添加される。
【0024】
ポリエチレングリコール:ポリイソシアナート分岐剤のモル当量:モル当量比は好ましくは2以上:1、より好ましくは3以上:1、および最も好ましくは5以上:1、並びに好ましくは20以下:1、より好ましくは10以下:1である。
【0025】
第2の工程においては、未反応ポリアルキレングリコールと分岐ポリヒドロキシアルキレンオキシドウレタンとの得られた混合物は、ヒドロキシル反応性末端基を含む分岐ウレタンポリマーを形成するのに充分な条件下で、概して、80〜120℃の範囲の温度および1〜3時間の期間にわたって、二官能性結合剤と接触させられる。本明細書において使用される場合、用語「二官能性結合剤」とは、C−C20ジイソシアナート、エピハロヒドリンもしくはgem−ジハロゲン化物、またはこれらの組み合わせをいう。ジイソシアナートが好ましく、ジイソシアナートは脂肪族もしくは芳香族ジイソシアナートまたはこれらの組み合わせであり得る。本明細書において使用される場合、「脂肪族」とは飽和もしくは部分不飽和の線状、分岐もしくは環式脂肪族、またはこれらの組み合わせをいう。好適なジイソシアナートの例には、1,4−テトラメチレンジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−デカメチレンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(イソシアナトシクロヘキサン)、1,4−シクロヘキシレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、m−およびp−フェニレンジイソシアナート、2,6−および2,4−トルエンジイソシアナート、キシレンジイソシアナート、4−クロロ−1,3−フェニレンジイソシアナート、4,4’−ビフェニレンジイソシアナート、4,4’−メチレンジフェニルイソシアナート、1,5−ナフチレンジイソシアナートおよび1,5−テトラヒドロナフチレンジイソシアナートが挙げられる。好ましいジイソシアナートには、ヘキサメチレンジイソシアナートおよびイソホロンジイソシアナートが挙げられる。
【0026】
エピハロヒドリンには、エピクロロヒドリンおよびエピブロモヒドリンが挙げられ;gem−ジハロゲン化物には、gem−ジ塩化物およびgem−ジ臭化物、例えば、ジクロロメタン、ジブロモメタン、1,1−ジクロロエタン、1,1−ジブロモエタン、1,1−ジクロロトルエン、および1,1−ジブロモトルエンが挙げられる。
【0027】
二官能性結合剤は、分岐ポリヒドロキシアルキレンオキシドウレタン/ポリアルキレングリコール混合物を充分な量で含むポットに、ウレタン基へのヒドロキシル基の完全なもしくは実質的に完全な変換を確実にする条件下で簡単に添加される。よって、化学量論的に過剰な二官能性結合剤がこの工程において簡単に使用される。
【0028】
ヒドロキシル反応性末端基を含む得られた分岐ウレタンポリマーは、次いで、ウレタン基へのイソシアナート基の実質的に完全な変換を確実にする条件下で、概して、約70〜120℃の範囲の温度で、充分な量のキャッピング剤と接触させられる。本明細書において使用される場合、用語「キャッピング剤」とは、下記式のいずれかの化合物をいう:
【化6】

式中、R〜R、W、Y、Zおよびxは前述の通りである。キャッピング剤には、少なくとも6コの炭素原子を有する線状、分岐もしくは環式脂肪族アルコール、芳香族アルコール、もしくはアルアルキルアルコール、これらの例には、n−ヘキサノール、n−オクタノール、n−デカノール、n−ドデカノール、n−ヘキサデカノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−ブチル−1−オクタノール、2−ブチル−1−デカノール、2−ヘキシル−1−オクタノール、2−ヘキシル−1−デカノール、イソノニルアルコール、イソデシルアルコール、イソウンデシルアルコール、ノニルフェノール、シクロヘキサノールおよびベンジルアルコールが挙げられる;アルキルアミン、例えば、ヘキシルアミン、オクチルアミンおよびデシルアミン;並びに、界面活性剤、例えば、エトキシ化アルカノール、エトキシ化アルキルフェノール、およびポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。
【0029】
別の形態においては、キャッピング剤はC−C20線状もしくは分岐アルコールであり;別の形態においてはキャッピング剤はC−C20アルコールC−Cアルコキシラート、好ましくは、C−C20アルコールエトキシラートである。
【0030】
ロータリーエバポレーションのような簡単な手段によって揮発性化合物は有利に除去され、そして所望のポリマーが単離される。本明細書に記載される多工程アプローチは、単一ポット反応で製造されるポリマーと比べて優れたKUおよびICI粘度を有するポリマーをもたらすことが驚くべきことに見いだされた。
【0031】
本発明に従うコーティング組成物は下記の添加剤の1種以上をさらに含むことができる:溶媒;充填剤;顔料、例えば、二酸化チタン、マイカ、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、粉砕ガラス、三水和アルミナ、タルク、三酸化アンチモン、フライアッシュおよびクレイ;ポリマーでカプセル化された顔料、例えば、ポリマーでカプセル化もしくは部分カプセル化された顔料粒子、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛もしくはリトポン粒子;二酸化チタンのような顔料の表面に吸着もしくは結合するポリマーもしくはポリマーエマルション;中空顔料、例えば、1以上の空隙を有する顔料;分散剤、例えば、アミノアルコールおよびポリカルボキシラート;界面活性剤;脱泡剤;防腐剤、例えば、殺生物剤、殺カビ剤、殺真菌剤、殺藻剤、およびこれらの組み合わせ;流動剤;レベリング剤;並びに追加の中和剤、例えば、水酸化物、アミン、アンモニアおよび炭酸塩。
【0032】
例えば、i)100nm〜500nmの範囲の直径および少なくとも1.8の屈折率を有する不透明化顔料粒子、例えば、二酸化チタン粒子;ii)カプセル形成性ポリマー;並びにiii)カプセル化された不透明化顔料粒子およびポリマーのためのポリマー系分散剤;を含む、ポリマーでカプセル化された不透明化顔料粒子をコーティング組成物が含むことができる。このようなポリマーでカプセル化された不透明化顔料粒子は、例えば、米国特許出願公開第2010/0298483A1号に記載されている。別の例においては、コーティング組成物は国際公開第2007/112503A1号に記載されるような、ポリマーでカプセル化された不透明化顔料粒子を含むことができる。
【0033】
図面の詳細な説明
図1は、比較サンプルのSECスキャンと狭い分子量のポリエチレンオキシド標準品から得られた10点較正曲線とを重ねて示す。図1は約15分〜約25分の範囲の保持時間にわたって溶出するポリマーを示す。この比較物の重量平均分子量(M)は40,000ダルトンであり、その多分散度は1.8であると計算された。
図2は、本発明の実施例についてのSECスキャンと狭い分子量のポリエチレンオキシド標準品から得られた10点較正曲線とを重ねて示す。図2は約14分〜約25分の範囲の保持時間にわたって溶出するポリマーを示す。本発明の実施例のMは78,000ダルトンであり、その多分散度は3.1であると計算された。
図3は、MeOH中100mMのNHAcの移動相において、GF−310HQ、GF−510HQ、GF−710HQとして孔サイズが特定され、粒子サイズ9μmの3本のアサヒパックカラム(300×7.5mmID)で、RI検出を用いて得られた比較のサンプル(破線)および実施例1(連続プロット)の分子量分布プロットを重ねて示す。
【0034】
塗料中の増粘剤評価の説明
以下の成分を混合することにより、ラテックス塗料組成物であるプレ塗料#1が製造された。
【表1】

【0035】
Kronos4311はKronos Incorporated(米国マサチューセッツ州ケルムスフォード)の製品である。Drewplus L−475脱泡剤はAshland Specialty Chemical Companyの製品である。TRITON商標X−405安定化剤、ROPAQUE商標Ultra不透明ポリマー、並びにRHOPLEX商標SG−30エマルションはザダウケミカルカンパニーもしくはその関連会社の製品である。
【0036】
水性増粘剤分散物および水をプレ塗料#1(963.5g)に添加することにより、配合された塗料が得られた。完全に配合された塗料の一定の固形分を維持するために、添加される増粘剤および水の合計重量は49.5gであった。完全に配合された塗料の密度は1013ポンド/100ガロン(1.2Kg/l)であった。完全に配合された塗料のpHは8.5〜9.0の範囲であった。
【0037】
配合された塗料は以下の方法によって製造された。963.5gのプレ塗料#1に水性増粘剤分散物(40.0g)および水(9.5g)をゆっくりと添加した。この混合物は10分間攪拌された。水性増粘剤分散物は乾燥固体増粘剤ワックス(10.0g)、メチル−ベータ−シクロデキストリン(ドイツ国ミュンヘンのWacker−Chemie Gmbhから入手可能、50%溶液の1.0g)および水(39.0g)を50mLのプラスチック遠心チューブに入れることにより製造された。このチューブは蓋をされ、水性増粘剤分散物が均質になるまで48時間にわたって連続回転する回転装置上に設置された。室温で、24時間の平衡化の後で、粘度の値を測定する前には、増粘された塗料は1分間ラボミキサー上で攪拌された。
【0038】
「KU粘度」はクレブス(Krebs)粘度計によって測定される中剪断(mid−shear)粘度の指標である。このクレブス粘度計は、ASTM−D562に適合する回転パドル型粘度計である。KU粘度はBrookfield Engineering Labs(米国マサチューセッツ州のミドルボロ)から入手可能なブルックフィールドクレブスユニット粘度計KU−1+で測定された。
【0039】
「ICI粘度」はICI粘度計として知られる、高剪断速度コーンアンドプレート粘度計で測定されるポアズの単位で表される粘度である。ICI粘度計はASTM D4287に説明されている。それは約10,000秒−1で塗料の粘度を測定する。塗料のICI粘度はResearch Equipment London,Ltd(英国ロンドン)により製造される粘度計で測定された。同等のICI粘度計は、Elcometer,Incorporated(米国ミシガン州ロチェスターヒルズ)により製造されたElcometer2205である。塗料のICI粘度は、塗料のブラシ塗り中に経験する引きずり力の量と典型的に相関する。
【実施例】
【0040】
以下の実施例は例示目的のみのためであって、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0041】
比較例1
CARBOWAX商標8000ポリエチレングリコール(150g)およびトルエン(360g)の混合物が容器に入れられ、共沸蒸留によって乾燥させられた。この混合物は90℃まで冷却され、この混合物にDesmodur N3600ポリイソシアナート(1.36g)およびDesmodur H(4.14g)が添加された。この混合物は5分間攪拌され、次いでジブチルスズジラウラート(0.21g)が添加された。この混合物は1時間攪拌され、次いで、80℃に冷却され;次いで、n−デカノール(3.91g)が添加され、攪拌が1時間続けられた。この混合物は60℃に冷却され、次いでロータリーエバポレーションによってポリマーが単離された。ICIおよびKU粘度はそれぞれ1.90ポアズおよび87.0クレブス単位であると認められた。SECによって測定されるMは40,000であり、M/M多分散度は1.9に等しいことが認められた。
【0042】
比較例2
CARBOWAX商標8000ポリエチレングリコール(150g)およびトルエン(360g)の混合物が容器に入れられ、共沸蒸留によって乾燥させられた。この混合物は90℃まで冷却され、この混合物にDesmodur N3600ポリイソシアナート(1.81g)およびDesmodur H(3.94g)が添加された。この混合物は5分間攪拌され、次いでジブチルスズジラウラート(0.21g)が添加された。この混合物は1時間攪拌され、次いで、この混合物にn−デカノール(3.91g)が添加され、攪拌がさらに1時間続けられた。この混合物は60℃に冷却され、ロータリーエバポレーションによってポリマーが単離された。ICIおよびKU粘度はそれぞれ2.10ポアズおよび102.1クレブス単位であると認められた。SECによって測定されるMは43,000であり、M/M多分散度は1.9に等しいことが認められた。
【0043】
実施例1
CARBOWAX商標8000ポリエチレングリコール(150g)およびトルエン(360g)が容器に入れられ、共沸蒸留によって乾燥させられた。この混合物は90℃まで冷却され、この混合物にDesmodur N3600ポリイソシアナート(1.36g)が添加された。この混合物は5分間攪拌され、次いでジブチルスズジラウラート(0.21g)が添加された。この混合物は1時間攪拌され、その時間の後でDesmodur H(4.15g)が添加された。攪拌がさらに1時間続けられ、次いで80℃に冷却された。次いで、この混合物にn−デカノール(3.91g)が添加され、攪拌がさらに1時間続けられた。この混合物は60℃に冷却され、ロータリーエバポレーションの方法によってポリマーが単離された。ICIおよびKU粘度はそれぞれ2.40ポアズおよび90.2クレブス単位であると認められた。SECによって測定されるMは79,000であり、M/M多分散度は3.1に等しいことが認められた。
比較例1と実施例1のポリマーを製造するために使用される出発材料の特性および量は同じであるが、ICI/KU粘度プロファイルは、本発明の生成物についてさらに高いICI/KU比率で示されるように、本発明の方法により製造される生成物である実施例1について明らかに優れている。
【0044】
実施例2
CARBOWAX商標8000ポリエチレングリコール(150g)およびトルエン(360g)の混合物が容器に入れられ、共沸蒸留によって乾燥させられた。この混合物は90℃まで冷却され、この混合物にDesmodur N3600ポリイソシアナート(1.81g)が添加された。この混合物は5分間攪拌され、次いでジブチルスズジラウラート(0.21g)が添加された。この混合物は1時間攪拌され、その時間の後でDesmodur H(3.94g)が添加された。攪拌がさらに1時間続けられ、次いで80℃に冷却された。次いで、この混合物にn−デカノール(3.91g)が添加され、攪拌がさらに1時間続けられた。この混合物は60℃に冷却され、ロータリーエバポレーションによってポリマーが単離された。ICIおよびKU粘度はそれぞれ2.80ポアズおよび109.1クレブス単位であると認められた。SECによって測定されるMは124,000であり、M/M多分散度は4.4に等しいことが認められた。
この場合も、ICI/KU粘度プロファイルは、比較例2と比べて実施例に2の方が優れている。
【0045】
上のように製造されたサンプルについて以下のようにサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)が行われた:
a)サンプル調製:
サンプルは約2mg/gの濃度でMeOH中100mM NHAc(FisherからのOptimaグレード)中で製造された。サンプルは周囲温度で機械式振とう機で一晩振とうさせることにより溶液にされた。サンプル溶液は0.45μmPTFEフィルタを使用して濾過された。サンプルは可溶性であると認められ(目視によりチェックされた)および濾過プロセス中に抵抗は観察されなかった。
【0046】
b)SECセットアップおよび分離条件:
Agilent 1100モデルアイソクラティックポンプおよびインジェクタ(ドイツ国ワルドボロン)並びに40℃で操作されたWaters 2414モデル示差屈折計(マサチューセッツ州ミルフォード)から構成される液体クロマトグラフで行われた。システムコントロール、データ獲得およびデータ処理はCirrus登録商標ソフトウェアバージョン3.1(英国チャーチストレットンのPolymer Laboratories)を用いて行われた。
以下のMのポリエチレンオキシド標準品を用いて較正曲線が得られた:615、1500、3930、12140、23520、62100、116300、442800、909500および1258000。これらの標準品の多分散度は約1.04〜1.16の範囲であった。この標準品は部品番号PL2080−0201として、Agilentの一部門であるPolymer Laboratoriesから商業的に得られた。
SEC分離は、MeOH中100mM NHAc(FisherからのOptimaグレード)の移動相を用いて1mL/分で行われた。この検討で使用されたSECカラムセットは、高架橋極性ゲルが充填された3本のアサヒパックカラム(300×7.5mmID)からなるものであった。カラム孔サイズはGF−310HQ、GF−510HQおよびGF−710HQとして特定され、粒子サイズは9μmであり、このカラムはShoko America(カリフォルニア州トランセ)から購入された。
【0047】
本発明の組成物の特徴付けにおいて、組成物のMおよび多分散度を計算するために使用される範囲は、上述のような組成物の成分を分析しかつ分離させるのに使用される較正標準品、カラムおよび検出器に関連することが理解される。よって、本明細書において使用される場合、Mおよび多分散度の値および範囲は、上述のSEC条件下でサンプルについて得られたMおよび多分散度をいう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリアルキレングリコールと分岐ポリヒドロキシアルキレンオキシドウレタンとの混合物を形成するような条件下で、ポリイソシアナート分岐剤を化学量論的に過剰の水溶性ポリアルキレングリコールと接触させる工程;
b)ヒドロキシル反応性末端基を含む分岐ウレタンポリマーを形成するような条件下で、ポリアルキレングリコールと分岐ポリヒドロキシアルキレンオキシドウレタンとの混合物を、ジイソシアナート、エピハロヒドリン、およびgem−ジハロゲン化物からなる群から選択される二官能性結合剤と接触させる工程;並びに
c)疎水的に改質されたアルキレンオキシドウレタンを形成するような条件下で、ヒドロキシル反応性末端基を含む分岐ウレタンポリマーをキャッピング剤と接触させる工程;
を含み、
前記キャッピング剤が下記式:
【化1】

(式中、RはC−C30アルキル、アリール、もしくはアルアルキル基であり;RはHまたはC−C30アルキル、アリールもしくはアルアルキル基であり;RはC−C30アルキル、アリールもしくはアルアルキル基であり;YはC−Cアルキレン基であり;WはNもしくはPであり;xは0〜200の整数であり;並びに、ZはOもしくはNHである)
のいずれかによって特徴付けられる方法。
【請求項2】
ポリアルキレングリコールが4000〜20,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリイソシアナート分岐剤がシアヌレートトリマーもしくはビウレットトリマーまたはこれらの組み合わせを含み、前記トリマーが下記式:
【化2】

(式中、RはC−C30アルキレン基である)
によって特徴付けられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ポリイソシアナート分岐剤がHDIイソシアヌレート(トリマー)もしくはIPDIイソシアヌレート(トリマー)またはこれらの組み合わせを含み、かつポリエチレングリコールが7000〜9000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
二官能性結合剤がC−C20ジイソシアナートである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
キャッピング剤がC−C20アルコールである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
キャッピング剤がC−C20アルコールC−Cアルコキシラートである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
a)ポリエチレングリコールと分岐ポリヒドロキシエチレンオキシドウレタンとの混合物を形成するような条件下で、HDIイソシアヌレートトリマーを、化学量論的に過剰の7000〜9000の範囲の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールと接触させる工程;
b)イソシアナート末端基を含む分岐ウレタンポリマーを形成するような条件下で、ポリエチレングリコールと分岐ポリヒドロキシエチレンオキシドウレタンとの混合物を、ヘキサメチレンジイソシアナートと接触させる工程;並びに
c)疎水的に改質されたエチレンオキシドウレタンを形成するような条件下で、イソシアナート末端基を含む分岐ウレタンポリマーをC−C20アルコールと接触させる工程;
を含む方法。
【請求項9】
キャッピング剤がn−デカノールもしくは2−ブチル−1−オクタノールである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
50,000〜約150,000ダルトンのMおよび2.5〜約5.0の多分散度を有することにより特徴付けられる、疎水的に改質されたアルキレンオキシドポリウレタンを含む組成物。
【請求項11】
疎水的に改質されたアルキレンオキシドポリウレタンが70,000〜約90,000ダルトンのMおよび2.9〜約3.3の多分散度を有する疎水的に改質されたエチレンオキシドポリウレタンである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
疎水的に改質されたアルキレンオキシドポリウレタンが110,000〜約140,000ダルトンのMおよび4.2〜約4.6の多分散度を有する疎水的に改質されたエチレンオキシドポリウレタンである、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
ポリマーでカプセル化されたもしくは部分的にカプセル化された不透明化顔料粒子をさらに含む、請求項10に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−92304(P2012−92304A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−200050(P2011−200050)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】