説明

レシチン含有油脂組成物の製造方法及びレシチン沈降防止方法

【課題】充分な離型性を有しながら、保存性に優れたレシチン含有油脂組成物の製造方法及びレシチン含有油脂組成物のレシチン沈降防止方法を提供する。
【解決手段】酸価が0.6以上1.8以下になるように脂肪酸を油脂に添加して、レシチンを0.1重量%以上2重量%以下含有する油脂組成物を得ることにより、レシチン含有油脂組成物を製造する。また、レシチンを0.1重量%以上2重量%以下含有する油脂組成物の酸価が0.6以上1.8以下になるように脂肪酸を添加することにより、レシチン含有油脂組成物のレシチンの沈降を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存性、離型性に優れたレシチン含有油脂組成物の製造方法及びレシチン含有油脂組成物におけるレシチン沈降防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開平7−170910号公報)には、ポリグリセリン中鎖脂肪酸エステル及び中鎖脂肪酸トリグリセライド、またはポリグリセリン中鎖脂肪酸エステルに対し、所定量のレシチン、モノグリセライド、有機酸モノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコ−ル脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種もしくは2種以上の分散剤を配合してなる離型油が開示されている。
【0003】
また、特許文献2(特開平6−253738号公報)には、構成脂肪酸組成がモノエン酸に富む油脂、中鎖飽和トリグリセリド、HLBが7以下のポリグリセリン脂肪酸エステル、HLBが7以下の蔗糖脂肪酸エステル、並びにレシチン若しくはリゾレシチンを混合溶解してなる離型油組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献3(特開平5−209187号公報)には、飽和脂肪酸含有量と不飽和脂肪酸含有量との比が0.13以下でトランス型脂肪酸の含有量が5%以下の植物油にポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンを添加してなる耐寒性植物油が開示されている。
【0005】
しかしながら、いずれも、レシチンを含有する油脂の保存性の問題に着眼するところがなく、その解決手段についても何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−170910号公報
【特許文献2】特開平6−253738号公報
【特許文献3】特開平5−209187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、レシチンを含有する油脂組成物であって、充分な離型性を有しながら、保存性に優れた油脂組成物の製造方法及びレシチン含有油脂組成物におけるレシチン沈降防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来、酸価は油脂の劣化の指標となっており、酸価を低減するように油脂を精製していた。しかしながら、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、あえて、油脂組成物の酸価を所定値とすることで、レシチンを含む油脂組成物であっても、充分な離型性を有しながら、保存性に優れた油脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の1つは、酸価が0.6以上1.8以下になるように脂肪酸を油脂に添加して、レシチンを0.1重量%以上2重量%以下含有する油脂組成物を得ることを特徴とする、レシチン含有油脂組成物の製造方法である。
本発明のもう1つは、レシチンを0.1重量%以上2重量%以下含有する油脂組成物の酸価が0.6以上1.8以下になるように脂肪酸を添加することを特徴とする、レシチン含有油脂組成物のレシチン沈降防止方法である。
【0010】
本発明においては、前記レシチンが分画レシチンであることが好ましい。
【0011】
また、乳化剤を0.01重量%以上5重量%以下含有することが好ましい。
【0012】
また、前記乳化剤が、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、充分な離型性を有しながら、保存性に優れた、レシチンを含有する油脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において用いられる油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、落花生油、カボック油、胡麻油、月見草油、カカオ脂、シア脂、サル脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明では、これらの油脂から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0015】
本発明において用いられるレシチンとしては、食品または食品添加物の分野で慣用的に用いられているレシチンを総称するものであって、大豆、菜種、コーン、ヒマワリ、パーム、落花生などの植物油精製時の副産物(例えば、脱ガム工程で発生する水和物)や卵黄などの粗原料から調製したペースト状のレシチンや、この粗原料を溶剤で分別して得た分画レシチン、それにこの粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンなど、リン脂質を主成分とした混合物からなるレシチンである。 なお、このリン脂質とは、ホスファチジルコリン(以下「PC」と略称することもある)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸や、これらのリゾ体を含むアシルグリセロ型リン脂質を指す。
【0016】
本発明において、酸価とは、社団法人日本油化学会制定・基準油脂分析試験法(2.3.1−1996 酸価)に従って測定された値である。酸価は、油脂組成物中の遊離脂肪酸の含量の指標である。
【0017】
本発明の油脂組成物の酸価は、0.1より大きく8以下である。好ましくは、0.2以上5以下であり、より好ましくは0.5以上3以下であり、最も好ましくは、0.6以上1.8以下である。酸価が上記範囲よりも少ないと充分な沈降防止の効果が得られない場合がある。また、上記範囲を超えると発煙等の問題が生じる場合がある。
【0018】
本発明の油脂組成物の酸価を調整するための方法として、例えば、精製した油脂(これが酸価の調整を受けるベース油の一例となる)に脂肪酸を所定量添加することが挙げられる。添加する脂肪酸は、食用のものであれば使用できる。好ましくはオレイン酸、リノール酸、リノレン酸である。これらの脂肪酸を添加することで、油脂組成物の劣化等の影響を押さえることができる。
【0019】
油脂組成物の酸価を調整するために添加する、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の脂肪酸の、油脂組成物への添加量は、0.05重量%以上4重量%以下が好ましい。より好ましくは0.25重量%以上1.2重量%以下である。この範囲を超えて含有すると、発煙等の問題が生じる場合がある。
【0020】
また、油脂組成物の酸価を調整するための別の方法として、原油(精製工程の前の抽出油をいう)、精製工程の一部を省いた中間的油脂、ゴマ油、オリーブ油、及び、落花生油などを添加することが挙げられる。好ましくは、原油、脱酸処理工程を省いた中間的油脂、もしくは、ゴマ油、オリーブ油、落花生油がよく、より好ましくは脱酸処理工程を省いた中間的油脂、もしくは、ゴマ油、オリーブ油、落花生油であり、さらに好ましくは脱酸処理工程を省いた中間的油脂、もしくは落花生油であり、最も好ましくは脱酸処理工程を省いた中間的油脂である。
【0021】
油脂の精製工程を例示すると、一般に、(抽出油)原油→脱ガム油→脱酸油→脱色油→脱臭油(精製油)の順に不純物が除かれる。それぞれの間の操作である「脱ガム処理」、「脱酸処理」、「脱色処理」、「脱臭処理」の工程は、それ自体としては一般的な、脱ガム処理、脱酸処理、脱臭処理などが採用される。
【0022】
脱ガム処理は、油分中に含まれるリン脂質を主成分とするガム質を水和除去する工程である。脱酸処理は、アルカリ水で処理することにより、油分中に含まれる遊離脂肪酸をセッケン分として除去する工程である。
【0023】
脱色処理は、油分中に含まれる色素を活性白土に吸着させて除去する工程である。
【0024】
脱臭処理は、減圧下で水蒸気蒸留することによって油分中に含まれる揮発性有臭成分を除去する工程である。
そして、上記中間的油脂としては、上記の工程のうち、少なくとも脱酸処理工程を省いた油脂を用いることができる。
【0025】
油脂組成物の酸価を調整するために含有する、原油、精製工程の一部を省いた中間的油脂、ゴマ油、オリーブ油、及び、落花生油のいずれか1種または2種以上の、油脂組成物への添加量は、2重量%以上30重量%以下が好ましい。より好ましくは2重量%以上25重量%以下である。この範囲を超えて含有すると、油脂組成物の炒め時の臭い等に問題が生じる場合がある。
【0026】
本発明で使用するレシチンの油脂組成物中の含有量は、好ましくは0.05重量%以上4重量%以下である。より好ましくは0.08重量%以上3重量%以下であり、さらに好ましくは0.1重量%以上2重量%以下であり、最も好ましくは0.2重量%以上1重量%以下である。少なすぎると充分な離型性を得ることができない場合がある。多すぎると着色や発煙等に問題が生じる場合がある。
【0027】
また、本発明の油脂組成物に使用するレシチンとしては、離型性の点でペースト状レシチンと分画レシチンが好ましく、風味の点を加味すると、分画レシチンがより好ましい。分画レシチンは、通常の方法に従って、調製することができる。
【0028】
分画レシチンは、ホスファチジルコリンの含量を高めたものであるが、好ましくは、ホスファチジルコリンの含有量が25重量%以上のものであり、より好ましくは28重量%以上のものであり、さらに好ましくは30重量%以上のものである。ホスファチジルコリンの含量を高めることで、炒め時の離型性向上や油脂の着色を抑えること、油脂組成物の耐寒性向上が可能である。
【0029】
さらに、本発明では、その油脂組成物中に乳化剤を含有することが好ましい。乳化剤の含有量は、好ましくは0.01重量%以上5重量%以下であり、より好ましくは0.1重量%以上3重量%以下であり、さらに好ましくは0.3重量%以上2重量%以下である。乳化剤を添加することで、更にレシチンの沈降防止を向上することができる。
【0030】
また、前記乳化剤は、好ましくは、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルであり、より好ましくはショ糖脂肪酸エステルである。これらの乳化剤を添加することで、更にレシチンの沈降防止を向上することができる。
本発明による油脂組成物が使用できる食品としては、油脂を用いる食品であればいずれでもよく、特に制限を受けることはないが、特に炒め調理を施す食品であれば、良好な離型性が発揮されるので好ましい。例えば、焼きそば、ホイコウロウ、八宝菜、チャーハン等の料理、一般的な肉類、野菜類、魚介類、卵等を使用した炒め物、焼き肉、餃子などが挙げられる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
以下において、油脂は次のものを使用した。
大豆油(株式会社J−オイルミルズ社製、酸価:0.05)
菜種油(株式会社J−オイルミルズ社製、酸価:0.05)
ゴマ油(株式会社J−オイルミルズ社製、商品名:ごま油好きのごま油、酸価:1.5)
オリーブ油(株式会社J−オイルミルズ社製、商品名:オリーブオイルエクストラヴァージンオリーブ、酸価:0.5)
落花生油(株式会社太田油脂社製、酸価:0.8)
パームオレイン(株式会社J−オイルミルズ社製、ヨウ素価67、酸価:0.05)
大豆原油(株式会社J−オイルミルズ社製、酸価:1.2)
大豆脱酸油(株式会社J−オイルミルズ製、酸価:0.2)
大豆脱色油(株式会社J−オイルミルズ製、酸価:0.1)
【0033】
また、レシチン等は次のものを使用した。
ペースト状レシチン(株式会社J−オイルミルズ社製 商品名:AYレシチン)
酸価:25、PC含量:20重量%
分画レシチン(株式会社辻製油社製 商品名:PC−35)
酸価:18、PC含量:35重量%
酵素分解レシチン(株式会社花王社製 商品名:ベネコート)
酸価:50、PC含量:10重量%
ショ糖脂肪酸エステル(株式会社三菱化学フーズ社製 商品名:リョートーシュガーエステル ER−290)
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル(株式会社阪本薬品工業社製 商品名:SYグリスター CR−ED)
オレイン酸(和光純薬株式会社製)
リノール酸(SIGMA社製)
リノレン酸(SIGMA社製)
【0034】
〔酸価の測定方法〕
社団法人日本油化学会制定・基準油脂分析試験法(2.3.1−1996 酸価)に従って測定した。
【0035】
〔ホスファチジルコリン(PC)の測定方法〕
社団法人日本油化学会制定・基準油脂分析試験法(4.3.3.2−1996 リン脂質組成)に従って測定した。
【0036】
〔試験例1〕
水分量を100ppmとした大豆油を60℃に保温し、表1に記載した配合で他の原料を添加・混合して、充分に溶解し、油脂組成物を調製した。得られた油脂組成物について、酸価を測定後、以下の試験を行なった。
【0037】
〔高湿度条件での保存試験〕
100mlのガラス容器に油脂組成物50gを入れ、開栓状態、温度18℃、湿度90%で保管した。経時的に外観を観察し、曇り・沈殿の発生を下記評価基準により評価した。
(評価基準)
5:10日以上曇り・沈殿なし
4:7日後曇り・沈殿あり
3:5日後曇り・沈殿あり
2:3日後曇り・沈殿あり
1:1日後曇り・沈殿あり
【0038】
〔離型性の評価〕
中華鍋を200℃まで加熱し、高湿度条件で10日間保存後の油脂組成物20gを投入し、豚肉80g、もやし50g、麺200g、塩1g、こしょう1gの順で計2分炒めた。炒め調理後中華鍋にくっついている具材の量で離型性を下記評価基準により評価した。
(評価基準)
4:非常に良い
3:良い
2:やや良い
1:悪い
【0039】
〔炒め調理時の発煙評価〕
中華鍋を200℃まで加熱し、高湿度条件で10日間保存後の後の油脂組成物20gを投入し、豚肉80g、もやし50g、麺200g、塩1g、こしょう1gの順で計2分炒めた。炒め調理中の発煙量を下記評価基準により評価した。
(評価基準)
4:発煙なし
3:発煙少ない
2:発煙やや多い
1:発煙多い
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示されるように、レシチンを含有する油脂組成物においては、高湿度条件での保存時に、そのレシチンにより曇り・沈殿が生じてしまうことが明らかとなった(比較例1−2)。そして、リノール酸の添加により油脂組成物の酸価を0.1より大きくすると、曇り・沈殿の発生が抑制されることが明らかとなった(参考例1−1、参考例1−2、実施例1−3、実施例1−4、参考例1−5、参考例1−6)。特に酸価を1以上に調整すると、曇り・沈殿の発生に対する抑制効果が顕著であった。また、高湿度条件での保存時にレシチンによる曇り・沈殿が生じた油脂組成物では充分な離型性が得られなかったのに対して、酸価を調整して、曇り・沈殿の発生を抑制すると、充分な離型性を示した。一方、リノール酸を添加しすぎると、調理中の発煙が多くなる傾向がみられた。
【0042】
〔試験例2〕
水分量を100ppmとした大豆油を60℃に保温し、表2に記載した配合で他の原料を添加・混合して、充分に溶解し、油脂組成物を調製した。得られた油脂組成物について、酸価を測定後、試験例1と同様の試験を行なった。
【0043】
【表2】

【0044】
表2に示されるように、リノール酸の添加により酸価を1に調整した油脂組成物においては、レシチンを0.05重量%以上含有することで、離型性の向上の効果が得られた。特にレシチンを0.3重量%以上含有することで、より良好な離型性を示した。
【0045】
〔試験例3〕
水分量を100ppmとした大豆油を60℃に保温し、表3に記載した配合で他の原料を添加・混合して、充分に溶解し、油脂組成物を調製した。得られた油脂組成物について、酸価を測定後、試験例1と同様の試験を行なった。
【0046】
【表3】

【0047】
表3に示されるように、リノール酸の添加により酸価を1に調整した油脂組成物において、レシチンとしてペースト状レシチン、分画レシチン、酵素処理レシチンのいずれを用いた場合も、離型性に優れ、高湿度条件下で曇り・沈殿が生じにくかった。特に、分画レシチンが、離型性の効果に優れていた。
【0048】
〔試験例4〕
水分量を100ppmとした大豆油を60℃に保温し、表4に記載した配合で他の原料を添加・混合して、充分に溶解し、油脂組成物を調製した。得られた油脂組成物について、酸価を測定後、試験例1と同様の試験を行なった。
【0049】
【表4】

【0050】
表4に示されるように、油脂組成物の酸価を調整するための脂肪酸としてオレイン酸、リノール酸、リノレン酸のいずれを用いた場合も、高湿度条件下での曇り・沈殿の発生に対する抑制効果を有しており、充分な離型性が得られた。
【0051】
〔試験例5〕
水分量を100ppmとした大豆油を60℃に保温し、表5に記載した配合で他の原料を添加・混合して、充分に溶解し、油脂組成物を調製した。得られた油脂組成物について、酸価を測定後、試験例1と同様の試験を行なった。
【0052】
【表5】

【0053】
表5に示されるように、油脂組成物の酸価を調整するためにいずれの油を用いた場合も、高湿度条件下での曇り・沈殿の発生に対する抑制効果を有しており、離型性の向上の効果が得られた。特に、風味の面で脱酸油、落花生油が優れていた。
【0054】
〔試験例6〕
水分量を100ppmとした各油(大豆油、菜種油、又はパームオレイン)を60℃に保温し、表6に記載した配合で他の原料を添加・混合して、充分に溶解し、油脂組成物を調製した。得られた油脂組成物について、酸価を測定後、試験例1と同様の試験を行なった。
【0055】
【表6】

【0056】
表6に示されるように、ベース油として大豆油、菜種油、パームオレインのいずれを用いた場合も、レシチンを添加するとともに酸価を調整することで、高湿度条件下で曇り・沈殿が生じにくく、充分な離型性を有する油脂組成物が得られた。
【0057】
〔試験例7〕
水分を100ppmとした大豆油を60℃に保温し、表7に記載した配合で他の原料を添加・混合して、充分に溶解し、油脂組成物を調製した。得られた油脂組成物について、酸価を測定後、試験例1と同様の試験を行なった。
【0058】
【表7】

【0059】
表7に示されるように、乳化剤を添加することで、高湿度条件下での曇り・沈殿の発生に対する抑制効果を、更に向上させることができた。特にショ糖脂肪酸エステルの効果が高いことが判った。
【0060】
〔試験例8〕
中華鍋を200℃まで加熱し、参考例1−1の油脂組成物20gを投入し、豚肉80g、もやし50g、麺200g、塩1g、こしょう1gの順で計2分炒め、焼きそばを調理した。
焦げ付きが少なく、風味等良好な焼きそばを食することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸価が0.6以上1.8以下になるように脂肪酸を油脂に添加して、レシチンを0.1重量%以上2重量%以下含有する油脂組成物を得ることを特徴とする、レシチン含有油脂組成物の製造方法。
【請求項2】
レシチンを0.1重量%以上2重量%以下含有する油脂組成物の酸価が0.6以上1.8以下になるように脂肪酸を添加することを特徴とする、レシチン含有油脂組成物のレシチン沈降防止方法。

【公開番号】特開2013−81475(P2013−81475A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−4230(P2013−4230)
【出願日】平成25年1月15日(2013.1.15)
【分割の表示】特願2012−542052(P2012−542052)の分割
【原出願日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【出願人】(302042678)株式会社J−オイルミルズ (75)
【Fターム(参考)】