説明

レジオネラ属バクテリアを検出および/または同定するための反応培地

本発明は、少なくとも一つのケイ質化合物を含む、レジオネラ属バクテリアの培養および/または同定および/または検出のための反応培地であって、前記ケイ質化合物が非極性シリカであることを特徴とする反応培地に関する。本発明はレジオネラ属バクテリアの培養および/または同定および/または検出のための、少なくとも一つのケイ質化合物を含む反応培地の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレジオネラ用の反応培地、更には前記培地の使用とこの培地を使用する方法に関する。
【0002】
レジオネラ(レジオネラ属の種)は、ヒトの感染症、時には致死感染症を引き起こすことができる、水分環境(天然生態系と水分配ネットワーク)のバクテリアである。レジオネラ属のいくつかの種はヒトにおいて見つかっているが、最も重要なものはレジオネラ・ニューモフィラ(L.pneumophila)であり、それはレジオネラ症の症例のほぼ90%の原因である。他の種(例えばレジオネラ・ジョーダニス)は、通常は免疫抑制された個体で分離される。レジオネラ症は、重症の急性肺疾患によって特徴づけられる呼吸器病であり、その感染はレジオネラが、たとえば冷却塔、空調システム、健康ランド、シャワーなど混入することによっておこる。2から10日の潜伏期間後、患者は、インフルエンザ様症候群を示す。この後に、胃腸の問題(下痢、おう吐)又は時には神経病学的な問題(せん妄、嗜眠状態、混乱)さえをも伴った高熱、胸膜炎および激しい咳きが引き続いて起る。
2005年には、フランスでは1500件以上、ヨーロッパでは約5700件が報告された。米国では、CDC (Centers for Disease Control and Prevention) は、年間8000〜18000件のレジオネラ症があると推定している。
【0003】
レジオネラ症は非定型の典型的な肺疾患であり、特性がないので、レジオネラ症の診断は非常に複雑である。死亡率は平均して症例の20%であり、コミュニティ・ケースではむしろ低いが、一方、院内ケースにおいては高い。早期診断は、適切な治療を患者に提供するために不可欠である。
診断は、以下の方法に従って実施することができる:
・直接の免疫蛍光法による同定。
主要なレジオネラ・ニューモフィラ亜群に対する抗体を用いて試料上で実施する。この方法では、可溶性抗原を示すことが可能である。主に使用する方法は、ELISA(酵素免疫吸着測定法)、RIA(放射免疫学アッセイ)またはICM(膜上の免疫クロマトグラフィー)である。これらの技術の主な欠点は、それらが特定のレジオネラ・ニューモフィラ亜群が存在する可能性のみを検出することができることである;
・間接免疫蛍光法によるLPS O抗原に対する抗体の血清学的診断。この方法は、レジオネラ・ニューモフィラ亜群1だけを同定することが可能であり、マイコバクテリウム、レプトスピラ、クラミジア属、マイコプラズマ属、シュードモナス属、フラボバクテリウム属などとの交差反応による偽陽性の危険性が高い;
・培養方法による細菌の同定。レジオネラを増殖させることは困難である。レジオネラが血液寒天培地上で培養されず、pHは厳しく制御されなければならず(6.9+/−0.2)、バクテリアの必要条件を満たされなければならないためである。したがって、培養は、一般的には、ACESバッファー、L‐システインおよび鉄(これらの最後の2成分は必須の増殖因子である)を添加したBCYE(緩衝活性炭酵母抽出物:Buffered Charcoal Yeast Extract)寒天;又はGVPC寒天で実施される。コロニーは、37℃で48時間のインキュベーションにより観察することができる。レジオネラの同定は、大部分のレジオネラ種、特にレジオネラ・ニューモフィラの単離を促進する特異的な選択培地であるGVPCレジオネラ培地(ビオメリュー)上で実施することができる。3つの抗生物質の最適化された混合物によって、この培地は、グラム陽性菌、大部分のグラム陰性菌、酵母およびカビの増殖を抑制することができる。しかしながら、この培養培地はレジオネラによって産生されるか、又は培地(イースト抽出物、寒天等)に存在するか、培地の加圧滅菌(レジオネラにとって毒であるフリーラジカルも形成する)によって産生される毒性化合物を吸着するための活性炭を含む。結果として、これらの培地は黒色であり、培地の読みとりを促進できる発色性又は蛍光性酵素基質の組込みに不適当である。
【0004】
本発明は、レジオネラ属バクテリア用の新規な反応培地を提供することによって従来技術の問題を解決することを目的とする。
【0005】
驚くべきことに、本発明者は、反応培地のケイ質化合物の使用がレジオネラの迅速且つ簡便な検出を可能にすることを示した。
【0006】
本発明を示す前に、以下の定義は、本発明のより良好な理解を提供するために与えられるが、決して限定的ではない。
【0007】
「反応培地」なる用語は、微生物(例えばレジオネラ)の代謝の発現および/または増殖のために必要な全ての成分を含んで成る培地を意味することを目的とする。反応培地は、固体、半固体または液体であってもよい。「固形培地」なる用語は、例えば、ゲル化された培地を意味することを目的とする。寒天は、微生物を培養するための微生物学の従来のゲル化剤であるが、それはゲルライト、ゼラチン、アガロースまたは他の天然または人工のゲル化剤を使用してもよい。本発明による反応培地は、レジオネラの増殖を可能にしなければならない。
【0008】
反応培地は、一つ以上の成分、例えばアミノ酸、糖質、ヌクレオチド、ミネラル、ビタミンなどを組合せて含むことができる。培地は、着色剤を更に含んでもよい。例えば、着色剤として、エバンスブルー、ニュートラルレッド、乳白剤(例えば酸化チタン)、ニトロアニリン、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン、一つ以上の代謝インジケータ、一つ以上の代謝調節剤などを挙げることができる。
反応培地は、培養培地、検出(revealing)培地または培養且つ検出培地であってもよい。検出培地の場合、微生物は接種の前に培養され、培養且つ検出培地の場合、検出培地は培養培地をも構成する。当業者は、2つの培地が容易に比較できるように成っている双プレートを使用することができ、それはさまざまな基質またはさまざまな選択混合物を含み、その上に同じ生物学的サンプルが置かれる。
【0009】
選択混合物なる用語は、特定の微生物の選択培養を可能にする化合物の混合物を意味することを目的とする。本発明において、選択混合物は、レジオネラの選択培養を可能にすることができる。上記の培地は、特に以下の化合物:グリシン、硫酸ポリミキシンB、バンコマイシンまたはセファマンドール、シクロヘキシミドまたはアニソマイシンまたは他にナタマイシンを単独でまたは組合わせて含む。
選択培地は、更に、特定のレジオネラ種(たとえばレジオネラ・ニューモフィラ)の選択培養を可能にすることができる。この場合、選択混合物は、特に以下の化合物:グリシン、硫酸ポリミキシンB、バンコマイシンまたはセファマンドール、シクロヘキシミド、アニソマイシン、ナタマイシン、ブロムクレゾールパープル、ブロムチモールブルーを単独でまたは組合わせて含む。
【0010】
ケイ質化合物は、成分シリコンを含んでいる任意の化合物を意味することを目的とする。非限定的に、天然又は合成ゼオライト、粘土、好ましくはイライト、モンモリロナイト、好ましくはセピオライト、または他の非極性シリカを挙げることができる。
非極性シリカは、非極性の化学官能基、最も一般的には少なくとも2つの炭素原子を有するアルキル化された鎖がグラフトされている1又は複数のシリカ粒子を意味することを目的とする。好ましくは、それらは4から24の炭素原子、さらにより好ましくは18の炭素原子(オクタデシル)、8つの炭素原子(オクチル)または4つの炭素原子(ブチル)を有する。この非極性シリカはオクタデシルシリカまたはオクチル・シリカであることが望ましい。
【0011】
酵素基質なる用語は、酵素によって代謝されうる分子であって、生成物を生じることで、微生物の直接的または間接的な検出を可能にする分子を意味することを意図する。天然基質又は合成基質であってもよい。基質の代謝によって、反応培地の生理化学的性質または生物細胞に変化が生じる。この変化は物理化学的方法によって、特に光学的方法で、オペレータによる目によって、または計測器、分光法、電気的方法、磁気的方法などによって検出されることができる。好ましくは、それは、吸収、蛍光または発光の変性のような、光学的性質の変化である。
蛍光性又は発色性酵素の基質なる用語は、分子の代謝が基質とは異なる蛍光または色を有する生成物を生み出す分子を意味することを目的とする。
【0012】
本発明において、酵素の基質は、酸化還元酵素基質および加水分解酵素基質から選択されることが好ましい。この基質は、ニトロレダクターゼ、酸化還元酵素、アセトアセチル−CoAレダクターゼ、脱水素酵素、スーパーオキシドジスムターゼ、オシダーゼ、ペプチダーゼ、ヌクレアーゼまたはエステラーゼ基質であることが好ましい。
発色性基質として、アリザリン、α-グルコシダーゼ基質、特にアリザリン-α-グルコシドを元にしたものを挙げることができる。蛍光性基質として、特許EP0641351(Enzymatic analysis using substrates that yield fluorescent precipitates", Haugland et al.) 又は特許出願FR07/55371に記載のクマリン、レダクターゼ基質、特にニトロレダクターゼ基質、より好ましくは特許出願FR07/55373または特許EP1124986に記載されているものを挙げることができる。酸化還元酵素の酵素活性のための基質として、特にレダクターゼ基質、好ましくはニトロレダクターゼ基質を挙げることができる。すでにアリザリン-α-グルコシドを含んでいる培地に、第2の酵素基質、特に第2のα-グルコシダーゼ基質を導入することは、培地で増殖する他の属からレジオネラを区別することを高めることができる。
【0013】
生物学的試料なる用語は、気管支、気管又は肺吸引試料または胸膜液試料からの、気管支肺胞洗浄からの、喀痰からの、血液からのまたは肺生検からの、まれに関節滑液または心膜液からの臨床試料;体液又は食物試料を意味することを目的とする。従って、この試料は液体であっても固体であってもよく、非限定的に、血液、血漿、尿または糞便由来の臨床試料、または鼻から、のどから、皮膚から、損傷からまたは脳脊髄液から得られた試料、または水(飲み水)由来の食物試料を挙げることができる。
【0014】
環境試料なる用語は、水標本を意味することを目的とし、非限定的に、給水ネットワーク、空調システム、冷却塔、噴霧器、霧吹きなどを挙げることができる。
【0015】
この点で、本発明は、第1に、少なくとも一つの非極性シリカを含んで成る、レジオネラ属のバクテリアを培養および/または検出および/または同定するための反応培地に関する。前記非極性シリカはオクタデシルシリカであることが好ましい。好ましくは、前記非極性シリカは、粘土、好ましくはセピオライトと組合わせられる。好ましくは、オクタデシルシリカは、セピオラオトと組合わせられる。
本発明の好ましい一実施形態によれば、更に前記反応培地は、酵素基質を含む。好ましくは、前記酵素基質は、蛍光性または発色性であり、好ましくは発色性の酵素基質である。前記蛍光性又は発色性酵素基質は、酸化還元酵素基質または加水分解酵素基質であることが望ましい。
【0016】
本発明の好ましい一実施形態によれば、非極性シリカの濃度は、0.01〜100g/l、好ましくは1〜5g/lである。本発明による培地が粘土と組合わせて非極性シリカを含む場合には、粘土の濃度は、0.01〜100g/l、好ましくは1〜5g/lである。
本発明の好ましい一実施形態によれば、反応培地は、更にレジオネラ属バクテリアの選択培養を可能にする選択混合物を含む。
好ましくは、この選択混合物は、単独でまたは組合せにより、グリシン、硫酸ポリミキシンB、バンコマイシン、シクロヘキシミド、アニソマイシン、ブロムクレゾールパープルまたはブロムチモールブルーを含む。上記の培地の使用は、レジオネラ属バクテリアの選択的検出を可能にする。
本発明による培地は、レジオネラの特定の種(例えばレジオネラ・ニューモフィラ)の選択培養を可能にする選択混合物を含んでもよい。そのとき、この選択混合物は、単独でまたは組合せで、グリシン、硫酸ポリミキシンB、バンコマイシン、キノロンまたはフルオロキノロン、シクロヘキシミド、アニソマイシン、ブロムクレゾールパープルまたはブロムチモールブルーを含むことが好ましい。選択性の違いは、また、2.5g/l〜7.5g/lの範囲でグリシン濃度を変化させることによって得ることができる(Glycine-containing selective medium for isolation of Legionellaceae from environmental specimens, Robert M. Wadowski and Robert B. Yee)。
【0017】
本発明は、レジオネラ属バクテリアの培養、検出および/または同定のために、少なくとも一つのケイ質化合物を含んで成る反応培地の使用にも関する。前記ケイ質化合物は非極性シリカおよび/または粘土であることが望ましい。前記非極性シリカはオクタデシルシリカであることが望ましい。前記粘土はセピオライトであることが望ましい。
本発明の好ましい一実施形態によれば、使用する反応培地中のケイ質化合物の濃度は、0.01〜100g/l、好ましくは1〜5g/lである。使用する反応培地がケイ質化合物の組合せを含む場合には、各々の化合物の濃度は、0.01〜100g/l、好ましくは1〜5g/lである。
【0018】
最後に、本発明は、レジオネラ属バクテリアを検出および/または同定する方法に関するものであり、該方法は、
a)上記の反応培地にレジオネラ属バクテリアを含む可能性がある試料を接触させる工程、
b)インキュベートする工程、および
c)レジオネラ属バクテリアの検出する工程を含む。
【0019】
インキュベーションは、好ましくは30℃〜50℃、より好ましくは36℃〜42℃で実施される。レジオネラは、着色又は蛍光性のコロニーを得ることを可能にするα-グルコシダーゼまたは酸化還元酵素活性によって検出されることが好ましい。他属のコロニーは、それらが抑制されなかったならば、無色であるか、レジオネラ属のものと色が異なるか、色または蛍光が同一である。
【0020】
インキュベーション時間は、レジオネラ属バクテリアの増殖を可能にし、それらの検出を可能にする。非限定的に、48〜72時間のインキュベーションは適切であるが、より短いインキュベーションも可能である。
この培地が使われる場合、レジオネラは着色又は蛍光性のコロニーを得ることを可能にする酸化還元酵素活性によって検出されることが好ましい。他のバクテリアは抑制されるか、無色であるか、レジオネラのものとは色または蛍光が異なるか、または色または蛍光が同一である。
【0021】
下記の実施例は、説明のために与えられるものであり、限定するものではない。それらは、より明らかに本発明を理解することを可能にする。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
レジオネラ属のさまざまな菌株は、5つの異なる培地上で試験された。次に、皿は、72時間および96時間のインキュベーション後に読みとられる。

1. 培地と微生物
以下の組成を有する培地を使用した(組成、g/l):
イースト抽出物:10g/l
α‐ケトグルタール酸:1g/l
ACES/KOH:4/1.65g/l
グリシン:3g/l
塩酸システイン:0.4g/l
ピロリン酸第二鉄:0.25g/l
グルタチオン:5g/l
寒天:17g/l。
5g/lの非極性シリカ(オクタデシルシリカ、培地1)、5g/lの極性シリカ(シリカゲル、培地2)、5g/lの高極性シリカ(3−アミノプロピルシリカ、培地3)または5g/lの非極性シリカ(オクチルシリカ、培地4)をこの培地に加えた。
BCYE培地(Feeley et al, J Clin Microbiol. 1979 10:437-41) は、増殖制御として働いた培地であった。

2. テスト
培地をペトリ皿に分配した。さまざまなレジオネラ属の菌株は、3つのクワドラント・ストリーキングによって接種した。皿は、COの存在下で、37℃で96時間インキュベートした。読取りは、72時間および96時間のインキュベーション後に、実施された。

3. 結果
結果を下記の表に記録する:

M(かたまり)カラムの記号「1」、「2」または「3」は、1つ、2つ又は3つのクワドラントにおける試験された菌株の増殖を示す;「0」は、増殖が無かったことを示す。
コロニー(C)のサイズは、ミリメータで示す。

4. 解釈
非極性の性質のシリカを含有するシリカは、試験された全ての菌株の増殖を可能にし、その増殖はBCYE培地より大きかった。
【0023】
(実施例2)
レジオネラ属のさまざまな菌株は、8つの異なる培地で試験された。次に、皿は、72時間および96時間のインキュベーション後に読み取られた。

1. 培地と微生物
以下の組成を有する培地が使用された(組成、g/l):
イースト抽出物:10g/l
α‐ケトグルタール酸:1g/l
ACES/KOH:4/1.65g/l
グリシン:3g/l
塩酸システイン:0.4g/l
ピロリン酸第二鉄:0.25g/l
グルタチオン:5g/l
寒天:17g/l。
1g/lの非極性シリカ(オクタデシルシリカ、培地T)、又はそれぞれ、0.1、0.5、1、2.5、5、7.5または10g/lのセピオライト(培地1、2、3、4、5、6および7)をこの培地に加えた。

2. テスト
培地をペトリ皿に分配した。さまざまなレジオネラ属の菌株は、3つのクワドラント・ストリーキングによって接種された。皿は、COの存在下で、37℃で96時間インキュベートされた。読取りは、72時間および96時間のインキュベーション後に、実施された。

3. 結果
結果を下記の表に記録する:

M(かたまり)カラムの記号「1」、「2」または「3」は、1つ、2つ又は3つのクワドラントにおける試験された菌株の増殖を示す;「0」は、増殖が無かったことを示す。コロニー(C)のサイズは、ミリメータで示す。

4.解釈
5〜10g/lの濃度でセピオライトを含有する培地は、レジオネラ・ニューモフィラの増殖を可能にし、その増殖が対照培地と実質的に同一だった。
【0024】
(実施例3)
レジオネラ属のさまざまな菌株は、3つの異なる培地上で試験された。次に、皿は、72時間および96時間のインキュベーション後に読み取られた。

1. 培地と微生物
以下の組成を有する培地が使用された(組成、g/l)。
イースト抽出物:10g/l
α‐ケトグルタール酸:1g/l
ACES/KOH:4/1.65g/l
グリシン:3g/l
塩酸システイン:0.4g/l
ピロリン酸第二鉄:0.25g/l
グルタチオン:5g/l
オクタデシルシリカ:1g/l。
17g/lの寒天(培地T)、17g/lのゲルライト(培地T1)および5g/lのセピオライトと17g/lの寒天(培地T2)をこの培地に加えた。

2. テスト
培地をペトリ皿に分配した。さまざまなレジオネラ属の菌株は、3つのクワドラント・ストリーキングによって接種した。皿は、COの存在下で、37℃で96時間インキュベートした。読取りは、72時間および96時間のインキュベーション後に、実施された。

3. 結果
結果を下記の表に記録する:

M(かたまり)カラムの記号「1」、「2」または「3」は、1つ、2つ又は3つのクワドラントにおける試験された菌株の増殖を示す;「0」は、増殖が無かったことを示す。コロニー(C)のサイズは、ミリメータで示す。
4. 解釈
ここで試験した全ての培地は、大きな単離コロニー・サイズを有する全てのレジオネラの増殖を可能にした。
【0025】
(実施例4)
レジオネラ属のさまざまな菌株は、ニトロレダクターゼ、すなわち、2-(5’-フルオロ-2’-ニトロフェニル)ベンゾチアゾールのための蛍光性基質を含んで成る、本発明の培地上で試験された。次に、皿は、72時間、96時間および120時間のインキュベーション後に読み取られた。

1. 培地と微生物
以下の組成を有する培地を使用した(組成、g/l):
イースト抽出物:10g/l
α‐ケトグルタール酸:1g/l
ACES/KOH:4/1.65g/l
グリシン:3g/l
塩酸システイン:0.4g/l
ピロリン酸第二鉄:0.25g/l
グルタチオン:5g/l
寒天:17g/l
オクタデシルシリカ:1g/l。

蛍光性基質2-(5’-フルオロ-2’-ニトロフェニル)ベンゾチアゾールの保存溶液は、DMSOタイプの溶媒で50g/lに調製した。基質の最終濃度5mg/lに対応する量を、前記の溶解した培地に加えた。

2. テスト
培地は、直径55mmのペトリ皿に注入され、次にレジオネラ属の菌株は、0.5マクファーランドの懸濁液から3つのクワドランドストリーキングによって接種をされた。皿は、37℃で5日間インキュベートされた。

3. 結果
形成されるコロニーは、72、96および120時間のインキュベーション後に、視覚的に調べられた。蛍光(366ナノメートルのUVランプ下で読みとられる)、更には強度を書き留めた。
結果は、下記の表に記録される:



0は、単離コロニーの欠如か、又は蛍光の欠如を示す。蛍光強度は、0(蛍光なし)から4(非常に強い蛍光)の範囲のスケールで読みとられる。

4. 解釈
蛍光性基質を含む本発明による培地は、試験される全ての菌株の増殖およびレジオネラの簡単な検出を可能にした。
【0026】
(実施例5)
レジオネラ属のさまざまな菌株は、α−グルコシダーゼ、すなわちアリザリン−α−グルコシド用の発色性基質を含んで成る本発明の培地上試験された。次に、皿は、72時間および96時間のインキュベーション後に読み取られた。

1. 培地と微生物
以下の組成を有する培地が使用された(組成、g/l):
イースト抽出物:10g/l
α‐ケトグルタール酸:1g/l
ACES/KOH:4/1.65g/l
グリシン:3g/l
塩酸システイン:0.4g/l
ピロリン酸第二鉄:0.25g/l
グルタチオン:5g/l
寒天:17g/l
オクタデシルシリカ:1g/l。
発色性基質(アリザリン-α-グルコシド)の保存溶液は、DMSOタイプの溶媒で40g/lに調製された。基質の最終濃度50mg/lに対応する量を、前記の溶解した培地に加えた。同様に、クエン酸鉄の保存溶液は、浸透水で調製され、次に溶液はろ過され、100mg/lで培地に加えた。

2. テスト
培地は直径55mmのペトリ皿に注入され、次にレジオネラ属の菌株は0.5マクファーランドの懸濁液から3つのクワドランド・ストリーキングで接種をされた。皿は、37℃で4日間インキュベートされた。

3. 結果
形成されたコロニーは、72と96時間のインキュベーション後に、視覚的に調べられた。着色、更には強度が、書きとめられた。結果は、下記の表に記録される:


0は、増殖の欠如か、又は単離コロニーの欠如か、又は着色の欠如を示す。着色強度は、0(着色なし)から4(非常に強い強度)の範囲のスケールで読みとられた。
色はピンク色(Pと示す)から、Pvi(ピンク/紫色)を経て、紫色(Vi)まで変化する。

4. 解釈
発色性基質を含む本発明の培地は、試験した8/10菌株の増殖を可能にし、かたまりとコロニーのピンクから紫色の着色の出現により、レジオネラの簡単な検出を可能にした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのケイ質化合物を含有する、レジオネラ属バクテリアを培養、検出および/または同定するための反応培地であって、前記ケイ質化合物が非極性シリカであることを特徴とする反応培地。
【請求項2】
非極性シリカの濃度が0.01〜100g/l、好ましくは1〜5g/lであることを特徴とする、請求項1に記載の反応培地。
【請求項3】
蛍光性又は発色性酵素基質を更に含む、請求項1又は2に記載の反応培地。
【請求項4】
前記蛍光性又は発色性酵素基質は、酸化還元酵素基質または加水分解酵素基質である、請求項3に記載の反応培地。
【請求項5】
レジオネラ属バクテリアの選択培養を可能にする選択混合物を更に含む、請求項1から4の何れか一項に記載の反応培地。
【請求項6】
レジオネラ属バクテリアを培養、検出および/または同定するための、少なくとも一つのケイ質化合物を含む反応培地の使用。
【請求項7】
前記ケイ質化合物が非極性シリカおよび/または粘土である、請求項6に記載の反応培地の使用。
【請求項8】
ケイ質化合物の濃度が0.01〜100g/l、好ましくは1〜5g/lである、請求項6または7に記載の反応培地の使用。
【請求項9】
蛍光性又は発色性酵素基質を含む、請求項6から8の何れか一項に記載の反応培地の使用。
【請求項10】
前記蛍光性又は発色性酵素基質が酸化還元酵素基質または加水分解酵素基質である、請求項8に記載の反応培地の使用。
【請求項11】
レジオネラ属バクテリアの選択培養を可能にする選択混合物を含む、請求項6から10の何れか一項に記載の反応培地の使用。
【請求項12】
レジオネラ属バクテリアを検出および/または同定する方法であって、
(a)請求項1から5の何れか一項に記載の反応培地に、レジオネラ属バクテリアを含む可能性がある試料を接触させる工程、
(b)インキュベートする工程、および
(c)レジオネラ属バクテリアの存在を検出する工程を含む方法。

【公表番号】特表2012−505648(P2012−505648A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531540(P2011−531540)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051961
【国際公開番号】WO2010/043818
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(504238301)ビオメリュー (74)
【Fターム(参考)】