説明

レジストパターンの形成方法

【課題】レジスト材料の使用量を大幅に削減し、かつ均一な皮膜形成を可能とするレジストパターンの形成方法の提供
【解決手段】基材上に設けられた、少なくとも1層からなるレジスト層をフォトリソグラフィー又はドライエッチング法によりパターン化してレジストパターンを形成する方法であって、該レジスト層の少なくとも最外層を、樹脂硬化物を表面に有する円筒状印刷版を用いて印刷法により形成することを特徴とするレジストパターンの形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストパターンの形成方法、より詳しくは大規模集積回路形成の半導体プロセスや回路基板形成のパターン形成プロセスで好適に用いられるレジストパターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路形成の半導体プロセスや回路基板形成のパターン形成プロセスでは、永年にわたり露光工程と現像工程を主プロセスとするフォトリソグラフィーが用いられてきた。すなわちフォトリソグラフィーを用いてレジストパターンを形成した後、エッチング、蒸着、めっき等の操作を繰り返し実施することにより、導体、半導体、絶縁体あるいは誘電体のパターンを形成していく方法が採用されている。現在も殆んど全てがこのプロセスで形成されていると言っても過言ではない。フォトリソグラフィーを用いたパターン形成プロセスでは、パターンの形成にレジスト材料が使用されており、このプロセスは、主として、レジスト塗布工程、乾燥工程、露光工程、現像工程からなる。レジスト材料を基板上に均一に塗布する方法としては、スピンコート法が多用されている。
【0003】
このスピンコート法の歴史は非常に古いが、現在でも主要なプロセスとして位置付けられている。しかしながら、スピンコート法では、基板上に液状のレジスト材料を垂らし、その後、基板を高速回転させて基板表面全面に広げるため、最初に基板上に垂らされたレジスト材料の大部分は、基板外にはじき出されてしまう。このはじき出されたレジスト材料は、回収されずに廃棄されてしまう。レジスト材料の消費量の多さはスピンコート法の大きな問題であった。近年、微細パターン形成用には、非常に高価なレジスト材料が使用されているため、コストアップにも繋がっている。非特許文献1(SANYO TECHNICAL REVIEW VOL.34 No.2 DEC.2002)には、最新のエキシマレーザー用化学増幅型フォトレジストの価格が極めて高いこと、製造原価低減のために使用量を削減する課題が記載されている。また、スピンコート法では、液状レジストを高速回転させることにより基板上に広げる際に、裏面への回りこみも起こり、裏面に付着したレジスト材料を洗浄除去するバック洗浄プロセスも必要となる。更に、フォトリソグラフィーの主要工程であるレジスト塗布工程、乾燥工程、露光工程、現像工程には夫々専用の装置が必要であり、装置の設置面積だけでも大きなものとなってしまうことも大きな問題であった。
【0004】
また、近年、インクジェット印刷技術が、家庭用の印刷機として普及し、産業用装置としても技術が改良されてきている。しかしながら、インクジェット印刷技術で用いるインキの粘度は極めて低く、1滴のインキで形成される膜厚は非常に薄いものとなってしまう問題がある。また、1滴1滴のインキを塗布することにより皮膜を形成するため、形成される膜厚分布の均一性にも大きな課題がある。そのため、インクジェット印刷技術により膜厚分布が均一なレジストパターンを形成することは困難であった。
特許文献1(特開2006−37059号公報)には、凸版反転オフセット法の記載があり、レジストパターン形成についても公知となっている。この方法は、ブランケットロール上全面に塗布されたレジストインキをパターンが形成されている凸版で除去し、ブランケットロール上に残存したレジストインキを基材上に転写する技術である。しかしながら、ブランケットロール上に残存したレジストインキは、基材にそのまま転写されるため、半導体プロセスで必要な高アスペクト比のパターン形成は困難である。勿論、基材に転写されたレジスト層を、その後、フォトリソグラフィーあるいはドライエッチング法を用いて更に加工して微細パターン化することは一切記載されていない。
したがって、従来技術ではレジスト材料の使用量を大幅に削減し、かつ均一な皮膜形成と高アスペクト比のパターン形成を可能とする技術はなかった。
【非特許文献1】SANYO TECHNICAL REVIEW VOL.34 No.2 DEC.2002
【特許文献1】特開2006−37059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、レジスト材料の使用量を大幅に削減し、かつ均一な皮膜形成を可能とするレジストパターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討し、樹脂硬化物を表面に有する円筒状印刷版を用いてレジストインキを基材上に塗布する方法で、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は下記の通りである。
1.基材上に設けられた、少なくとも1層からなるレジスト層をフォトリソグラフィー又はドライエッチング法によりパターン化してレジストパターンを形成する方法であって、該レジスト層の少なくとも最外層を、樹脂硬化物を表面に有する円筒状印刷版を用いて印刷法により形成することを特徴とするレジストパターンの形成方法。
2.レジスト層が複数層からなり、少なくとも最外層のレジスト層が表面にパターンを有する円筒状印刷版を用いる印刷法により形成されており、レジスト層をパターン化する方法が、前記最外層のレジスト層をマスク層として下層のレジスト層を、フォトリソグラフィーを用いてパターン形成する方法、あるいはドライエッチングする方法である、上記1.のレジストパターンの形成方法。
3.基材が、シリコンウエハー、ガラス板、セラミックス板、プラスチックフィルム、銅貼り積層板、銅貼り積層フィルムからなる群より選択される少なくとも1種類の基材である、上記1.又は2.のレジストパターンの形成方法。
4.溶剤を含有するレジストインキを基材上に塗布した後、溶剤を除去することによりレジスト層を形成する、上記1.〜3.のいずれかのレジストパターンの形成方法。
5.溶剤が、n−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、γ−ブチルラクトン、ブチルカルビトール、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ジエチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルソロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ターピネオール、ペンタンジオール、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラヒドロフランからなる群より選択される少なくとも1種類の化合物を含有する、上記4.のレジストパターンの形成方法。
6.円筒状印刷版として、レーザー光を照射して照射された部分の樹脂が除去されることにより凹部が形成されるレーザー彫刻法により表面に凹凸パターンが形成された印刷版を用いる、上記1.〜5.のいずれかのレジストパターンの形成方法。
7.樹脂硬化物が、感光性樹脂硬化物である、上記1.〜6.のいずれかのレジストパターンの形成方法。
8.感光性樹脂硬化物が、20℃において液状の感光性樹脂組成物を光硬化させて得られる硬化物である、上記7.のレジストパターンの形成方法。
9.レジスト層が、ポリアミック酸、メチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合樹脂、ノルボルネン−無水マレイン酸交互共重合樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、フッ素化ノルボルネン樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ベンゾシクロブテン、ポリカーボネート、ポリ(p−t−ブトキシカルボニルオキシスチレン)、ポリ(N−(t−ブトキシカルボニル)マレイミド)、ポリ(N−(p−t−ブトキシカルボニルオキシフェニル)マレイミド)、o−トリメチルシリルポリ(ビニルフェノール)、ポリフタルアルデヒド、ナフトキノンジアジド骨格を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種類の化合物を含有する、上記1.〜8.のいずれかのレジストパターンの形成方法。
10.レジスト層が、崩壊型光重合開始剤、水素引き抜き型光重合開始剤、崩壊型光重合開始剤として機能する部位と水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位を有する光重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤からなる群より選択される少なくとも1種類の化合物を含有する、上記1.〜9.のいずれかのレジストパターンの形成方法。
11.フォトリソグラフィーの露光工程で使用する光照射方法が、縮小投影露光法、プロキシミティー露光法、コンタクト露光法、レーザー直描法、電子線直描法からなる群より選択される少なくとも1種類の方法である、上記1.〜10.のいずれかのレジストパターンの形成方法。
12.レジストパターンのアスペクト比が、0.5以上10以下である、上記1.〜11.のいずれかのレジストパターンの形成方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、レジスト材料の使用量を大幅に削減し、かつ均一な皮膜形成を可能とするレジストパターンの形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、さらに詳細に本発明の好ましい実施態様を説明する。
本発明は、印刷法を用いてレジストインキを基板上に塗布することによりレジスト層を形成し、その後、該レジスト層をフォトリソグラフィー又はドライエッチング法によりパターン化する方法であって、前記印刷法で使用する印刷版が、樹脂硬化物を表面に有する円筒状印刷版である。
本発明は、基材上に設けられたレジスト層をフォトリソグラフィー又はドライエッチング法によりパターン化してレジストパターンを形成する方法であり、レジスト層の少なくとも最外層は、印刷法を用いて、レジストインキを基板上に塗布することにより形成される。
【0009】
本発明は、レジスト層の形成方法として、大量のレジストインキを必要としていた従来のスピンコート法に代えて、特定の印刷法を用いることにより、レジストインキの使用量を大幅に低減し、かつ均一な皮膜形成を可能とする一方、パターン形成では、印刷法ではなく、フォトリソグラフィーあるいはドライエッチング法を用いることにより、特に、半導体プロセスで必要とされる、高アスペクト比の微細なパターンの形成を可能としたものである。スピンコート法と異なり印刷法では、印刷版表面に形成したパターンに対応する部位のみにレジストインキを塗布することができるので、基材上の一部分にレジストインキを塗布することが可能である。勿論、基材上全面に塗布することも可能である。
【0010】
[パターン形成]
本発明におけるレジストパターンの形成は、高アスペクト比の微細なパターンを得る点から、フォトリソグラフィー又はドライエッチング法による。これらのうち、ドライエッチング法が、フォトリソグラフィーのような、ステッパー等の高価な露光装置も必要とならないので、好ましい。
本発明で用いるフォトリソグラフィーとは、少なくとも露光工程、現像工程を含む。現像工程では、未硬化部分あるいは光反応した部分の樹脂を溶剤系現像液あるいは水系現像液で溶解あるいは分散させることにより除去する。また、炭酸ガスや水等の超臨界状態を現像液として用いることもできる。また、未硬化部分の樹脂を熱により溶融させ不織布などを用いて吸収除去する熱現像工程を用いることもできる。フォトリソグラフィーの露光工程で使用する光照射方法は、縮小投影露光法、プロキシミティー露光法、コンタクト露光法、レーザー直描法、電子線直描法から選択される少なくとも1種類の方法であることが好ましい。ここで使用する光源は、波長が狭い範囲に限定されていることが好ましい。例えば、超高圧水銀灯のg線(波長:436nm)やi線(波長:365nm)、フッ化クリプトン(波長:248nm)、フッ化キセノン、フッ化アルゴン(波長:193nm)、フッ素(波長:157nm)等のエキシマレーザー、固体レーザーの第三高調波や第四高調波、極端紫外線(波長:13nm)、波長0.7〜1nmのシンクロトロン等の装置から発生するX線、電子線が好ましい。プロキシミティー露光法とは、露光マスクとレジスト層が接触しないように、若干のギャップを設定して露光する方式をさす。高アスペクト比のレジストパターンを形成するには、露光機で使用する超高圧水銀灯やキセノン灯からの光線は平行光線であるように光学系が組み立てられていることが好ましい。
【0011】
本発明で用いるドライエッチング法とは、真空系あるいは大気圧系において、材料を蒸発除去する方法あるいは微粒子を材料に衝突させて物理的に除去する方法を包含する。ここで言う大気圧とは、1013hPa付近の圧力だけではなく500hPa〜2000hPaの範囲と定義する。真空系を用いるドライエッチング法として、半導体プロセスで用いられているような一般的な方法を用いることができる。例えば、真空系においてアルゴン、窒素、酸素、水素、塩素、六フッ化硫黄、四フッ化炭素、二フッ化メタン、三フッ化メタン、三フッ化窒素、オクタフルオロシクロペンタン、ヘキサフルオロプロペン、PFC−116、PFC−218、PFC−c318、HFE−227me、HFE−1216等のガスを導入したプラズマ状態に、印刷法で形成したレジスト層を曝すことによりレジスト層を形成する樹脂がガス化して除去される現象を利用する方法を挙げることができる。この方法では、加速イオンによる物理的な衝突以外に、反応性イオンエッチング(RIE)現象を用いることができる。反応性イオンエッチングは、物理的な衝突を利用する方法に比較してエッチング速度が速いという特徴がある。大気圧系を用いるドライエッチング法として、高エネルギー光を照射する方法、サンドブラスト法などの方法を挙げることができる。
【0012】
本発明のレジストパターンのアスペクト比は、レジストパターンを安定して形成できる観点から、0.5以上10以下であることが好ましい。より好ましくは1以上10以下、更に好ましくは2以上5以下である。アスペクト比が上記範囲のレジストパターンは、印刷法では形成できないものであり、複数のパターンが並列して存在する場合など現像工程等の工程においてパターン同士が接着することを避けることができる。本発明で用いるアスペクト比とは、幅が10μm以下の線状のレジストパターンを基材に対し垂直に、かつ該レジストパターンに対し直角に切断した断面形状においてレジストパターンの底部の幅に対するレジストパターンの高さの比と定義する。レジストパターンの断面形状が複数種類存在する場合は、最大値とする。
【0013】
[レジスト層形成]
本発明のレジストとは、各種の工程の後、除去されるプロセスレジスト、各種の工程の後、除去されずに系内に残る永久レジストのいずれであっても構わない。また、レジストインキとは、印刷法を用いて基材上に塗布できる液状のレジスト材料を意味する。したがって、レジストインキとしては、レジストインキ中に溶剤を含む溶剤型の材料、溶剤を含まない無溶剤型の材料が挙げられる。
レジストインキは、基板上の少なくとも一部分に塗布される。すなわち、基板上の全面に塗布しても良いが、パターンを形成する部分に粗いパターンを形成すべく基板上の一部分に塗布してもよい。基板上の一部分に塗布する場合は、用いる印刷版表面に対応するパターンが形成されていることが必要となる。
【0014】
レジスト層は1層でもよいし、2層以上の複数層からなってもよい。複数層の場合、各層の樹脂組成は異なっていることが好ましい。また、複数層の場合、最外層のレジスト層をマスク層として下層のレジスト層をパターン化することが可能である。フォトリソグラフィーを用いる場合、最外層として紫外線を遮光する黒色レジストインキを用いることにより露光用マスクを形成することが可能である。マスク層の厚さは、薄いことが好ましく、0.1μm以上5μm以下、より好ましくは0.1μm以上1μm以下、更に好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。薄いマスク層を用いることで、形成できるパターンを高精細化することが可能である。更に、最外層のマスク層と下層のレジスト層は、可能な限り密着していることが好ましい。パターンを高精細に形成する観点および両層の密着性確保の観点から、レジスト層の少なくとも最外層は樹脂硬化物を表面に有する円筒状印刷版を用いた印刷法により形成されていることが必要である。また、マスク層の紫外線遮光特性により、膜厚を制御することが好ましい。最外層のレジスト層の厚さを自由に設定できる観点からも、レジストインキの粘度やインキ転写ロールの表面パターン精細度等の印刷条件により膜厚を制御することが可能な印刷法が好ましい。
【0015】
ドライエッチング法によるレジストパターンの形成において、金属製マスク冶具をレジスト層に密着させてドライエッチングする場合等には、基材上に塗布されるレジスト層は単層で構わない。マスク冶具を用いないでドライエッチングを行う場合には、パターン精度確保の観点から、レジスト層は、少なくとも2層を使用することが好ましく、その最外層はドライエッチング耐性のあるレジスト層であることが好ましい。すなわち、このレジスト層をマスク層として下層のレジスト層をドライエッチングする方法が好ましい。マスク層と下層のレジスト層とは可能な限り密着していることが好ましい。両層の密着性確保の観点から、最外層のレジスト層は、印刷法で形成されることが好ましい。最外層のレジスト層は、パターン化されていることが好ましく、印刷版表面には対応するパターンが形成されている。また、最外層のレジストパターンの厚さは、ドライエッチング耐性により異なり、ドライエッチング耐性の高い材料であれば、薄い層であっても構わない。材料によりドライエッチング耐性が異なるため、最外層のレジスト層の厚さを自由に設定できる観点からも、レジストインキの粘度やインキ転写ロールの表面パターン精細度等の印刷条件により膜厚を制御することが可能な印刷法が好ましい。
【0016】
本発明で用いる基材は、シリコンウエハー、ガラス板、セラミックス板、プラスチックフィルム、銅貼り積層板、銅貼り積層フィルムから選択される少なくとも1種類の基材であることが好ましい。上記基材は、表面に導体、半導体、絶縁体、誘電体等が形成されているものであっても構わない。
本発明で用いるレジストインキは溶剤を含有していることが好ましい。溶剤の含有率を変えることにより形成されるレジスト層の膜厚をコントロールすることが可能であり、フレキソ印刷法を用いる場合は、レジストインキの粘度は0.1Pa・s以上10Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは0.1Pa・s以上1Pa・s以下である。グラビア印刷法の場合は、0.05Pa・s以上5Pa・s以下であることが好ましい。より好ましくは0.05Pa・s以上0.5Pa・s以下である。また、平版印刷法の場合は、4Pa・s以上10Pa・s以下であることが好ましい。レジストインキに溶剤を含有する場合には、レジスト層を形成する工程の後に、更に溶剤を除去する工程を含むことが好ましい。1回の塗布工程で塗布されるレジスト層の厚さは、0.05μm以上10μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.1μm以上5μm以下である。複数回の塗布工程、乾燥工程を経て厚膜化させることもできる。
【0017】
レジストインキに用いる好ましい溶剤として、n−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、γ−ブチルラクトン、ブチルカルビトール、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ジエチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルソロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ターピネオール、ペンタンジオール、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラヒドロフランから選択される少なくとも1種類の化合物を挙げることができる。均一性膜性の観点から、溶剤の沸点は低過ぎず高過ぎないことが好ましい。好ましくは、60℃以上250℃以下、より好ましくは80℃以上200℃以下である。更に好ましくは、100℃以上200℃以下である。
【0018】
本発明で用いるレジストインキとして、無溶剤型の液状感光性インキを用いることも可能である。この場合、液状感光性インキの固定化は、光照射により行われる。したがって、現像工程への適応性を必要としない場合には、材料の選択の幅が極めて広くなる。
本発明で用いるレジストインキは、ポリアミック酸、メチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合樹脂、ノルボルネン−無水マレイン酸交互共重合樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、フッ素化ノルボルネン樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ベンゾシクロブテン、ポリカーボネート、ポリ(p−t−ブトキシカルボニルオキシスチレン)、ポリ(N−(t−ブトキシカルボニル)マレイミド)、ポリ(N−(p−t−ブトキシカルボニルオキシフェニル)マレイミド)、o−トリメチルシリルポリ(ビニルフェノール)、ポリフタルアルデヒド、キノンジアジド骨格を有する化合物から選択される少なくとも1種類の化合物を含有することが好ましい。上記の化合物を含有するレジストインキは、感光性化合物であることが好ましい。該感光性化合物を用いる場合には、フォトリソグラフィーを用いて露光、現像工程を経てパターンを形成することが可能である。露光により光が照射された部分が硬化するタイプのネガ型感光性化合物、光が照射された部分が光変性し現像可能となるタイプのポジ型感光性化合物のいずれであっても構わない。
レジストインキは、崩壊型光重合開始剤、水素引き抜き型光重合開始剤、崩壊型光重合開始剤として機能する部位と水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位を有する光重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤から選択される少なくとも1種類の化合物を含有することが好ましい。ラジカル重合反応を誘起させる光重合開始剤としては、水素引き抜き型光重合開始剤と崩壊型光重合開始剤が特に効果的な光重合開始剤として用いられる。
【0019】
水素引き抜き型光重合開始剤として、特に限定するものではないが、芳香族ケトンを用いることが好ましい。芳香族ケトンは光励起により効率良く励起三重項状態になり、この励起三重項状態は周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化学反応機構が提案されている。生成したラジカルが光架橋反応に関与するものと考えられる。本発明で用いる水素引き抜き型光重合開始剤として励起三重項状態を経て周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化合物であれば何でも構わない。芳香族ケトンとして、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、キサンテン類、チオキサントン類、アントラキノン類を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。ベンゾフェノン類とは、ベンゾフェノンあるいはその誘導体を指し、具体的には3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラメトキシベンゾフェノン等である。ミヒラーケトン類とはミヒラーケトンおよびその誘導体をいう。キサンテン類とはキサンテンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体をいう。チオキサントン類とは、チオキサントンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体をさし、エチルチオキサントン、メチルチオキサントン、クロロチオキサントン等を挙げることができる。アントラキノン類とはアントラキノンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基等で置換された誘導体をいう。水素引き抜き型光重合開始剤の添加量は、液状感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、硬化物表面の硬化性は充分に確保でき、また、退候性を確保することができる点から、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.5wt%以上5wt%以下である。
【0020】
崩壊型光重合開始剤とは、光吸収後に分子内で開裂反応が発生し活性なラジカルが生成する化合物を指し、特に限定するものではない。具体的には、ベンゾインアルキルエーテル類、2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類、アセトフェノン類、アシルオキシムエステル類、アゾ化合物類、有機イオウ化合物類、ジケトン類等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。ベンゾインアルキルエーテル類としては、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等の化合物を挙げることができる。2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン等を挙げることができる。アセトフェノン類としては、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン等を挙げることができる。アシルオキシムエステル類としては、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム等を挙げることができる。アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、テトラゼン化合物等を挙げることができる。有機イオウ化合物としては、芳香族チオール、モノおよびジスルフィド、チウラムスルフィド、ジチオカルバメート、S−アシルジチオカルバメート、チオスルホネート、スルホキシド、スルフェネート、ジチオカルボネート等を挙げることができる。ジケトン類としては、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート等を挙げることができる。崩壊型光重合開始剤の添加量は、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、硬化物内部の硬化性は充分に確保できる点から、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.3wt%以上3wt%以下である。
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する化合物を、光重合開始剤として用いることもできる。α−アミノアセトフェノン類を挙げることができる。例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、下記一般式(1)で示される化合物を挙げることができる。
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、Rは各々独立に、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。また、Xは炭素数1〜10のアルキレン基を表す。)
【0023】
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する化合物の添加量は、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合であっても、硬化物の機械的物性は充分に確保できる点から、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.3wt%以上3wt%以下である。
また、光を吸収して酸を発生することにより、付加重合反応を誘起させたり、t−ブチル基等の官能基を脱離させて樹脂を親水性化させる化学反応を誘起させることもできる。例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等の光酸発生剤、あるいは光を吸収して塩基を発生する光塩基発生剤などが挙げられる。これらの光酸発生剤あるいは光塩基発生剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下の範囲が好ましい。
【0024】
[レジスト層形成に用いる印刷版]
本発明で用いる印刷版は、樹脂硬化物を表面に有する円筒状印刷版である。本発明の方法は、このような印刷版を回転させながら表面のレジストインキを基材上に転写させることにより、膜厚精度高く印刷できるという効果を奏する。円筒状印刷版としては、シリンダー表面に、樹脂硬化物を表面に有するシート状印刷版を貼り付けた形態のもの、シリンダー等の円筒状支持体表面に樹脂硬化物を形成したもの、樹脂硬化物を表面に有する中空円筒状印刷版をエアーシリンダーに装着したものであっても構わない。ロール状に巻かれたフィルム等の基材上に印刷する場合、中空円筒状印刷版は、継ぎ目のないシームレス印刷版であることが特に好ましい。
本発明で使用する印刷版は、レジストインキへの耐性があることが好ましい。耐性とは、例えば、レジストインキに対する膨潤性、すなわち重量変化率が低いこと、硬度変化率が低いことなどを意味する。
印刷版表面の樹脂硬化物は、熱硬化性樹脂硬化物であっても、感光性樹脂硬化物であっても構わないが、硬化速度すなわち生産性の観点から、感光性樹脂硬化物であることが好ましい。
【0025】
樹脂硬化物を表面に有する印刷版として、フレキソ印刷版、ドライオフセット印刷版、グラビア印刷版、オフセット印刷版等を挙げることができる。硬質な基材表面にレジストインキを塗布する場合には、比較的軟質なフレキソ印刷版が好ましい。フレキソ印刷版表面にパターンを形成する場合は、フォトリソグラフィーを用いることもでき、また、レーザー光を照射して照射される部分の樹脂が除去されるレーザー彫刻法を用いることもできる。フォトリソグラフィーを用いる場合は、感光性樹脂組成物を露光、現像工程を経てパターン化される。露光条件は、厚膜を日光硬化させる条件が採用され、現像条件としては、現像液を用いて現像する方法、不織布等で未硬化部を加熱溶融吸着除去する熱現像法などを用いることができる。また、レーザー彫刻法を用いてパターンを形成する場合には、樹脂組成物を熱硬化あるいは光硬化させたものをレーザー光で彫刻することが好ましい。これらの印刷版の中でも、20℃において液状の感光性樹脂組成物を円筒状支持体上に塗布し感光性樹脂組成物層を形成させた後、形成された感光性樹脂組成物層を光硬化させ感光性樹脂硬化物層を形成し、更にレーザー彫刻法を用いて表面にパターンを形成した円筒状印刷版が、印刷版の版厚精度の観点から、特に好ましい。
【0026】
本発明においてレーザー彫刻する際に使用するレーザーは、炭酸ガスレーザー等の赤外線レーザー、近赤外線領域に発振波長を有するパルス発振の近赤外線レーザー、可視波長領域に発振波長を有するレーザー、紫外線波長領域に発振波長を有するレーザーなどを挙げることができる。
本発明に用いられる印刷版は、感光性樹脂硬化物を表面に有することが好ましく、該感光性樹脂硬化物は、20℃において液状の感光性樹脂組成物を光硬化させて形成されたものであることが特に好ましい。感光性樹脂組成物は、樹脂(a)、有機化合物(b)を含んでいることが好ましい。
樹脂(a)は、数平均分子量が1000以上30万以下の化合物であることが好ましい。樹脂(a)の数平均分子量のより好ましい範囲は、2000以上10万以下、更に好ましい範囲は5000以上5万以下である。樹脂(a)の数平均分子量は1000以上であれば、後に架橋して作製する印刷原版が強度を保ち、この原版から作製したレリーフ画像は強く、印刷版などとして用いる場合、繰り返しの使用にも耐えられるので好ましい。また、樹脂(a)の数平均分子量が30万以下であれば、感光性樹脂組成物の成形加工時の粘度が過度に上昇することもなく、シート状、あるいは円筒状のレーザー彫刻印刷原版を作製することができるので好ましい。ここで言う数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値である。
【0027】
樹脂(a)は、分子内に重合性不飽和基を有する化合物であっても構わない。本発明の「重合性不飽和基」の定義は、ラジカルまたは付加重合反応に関与する重合性不飽和基である。ラジカル重合反応に関与する重合性不飽和基の好ましい例としては、ビニル基、アセチレン基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。付加重合反応に関与する重合性不飽和基の好ましい例としては、シンナモイル基、チオール基、アジド基、開環付加反応するエポキシ基、オキセタン基、環状エステル基、ジオキシラン基、スピロオルトカーボネート基、スピロオルトエステル基、ビシクロオルトエステル基、環状イミノエーテル基等が挙げられる。特に好ましい樹脂(a)として1分子あたり平均で0.7以上の重合性不飽和基を有するポリマーを挙げることができる。1を越える量がよりに好ましい。1分子あたり平均で0.7以上であれば、樹脂組成物より得られる印刷原版の機械強度に優れ、レーザー彫刻時にレリーフ形状が崩れ難くなるので好ましい。さらに、その耐久性も良好で、繰り返しの使用にも耐えらるのものとなるので好ましい。樹脂(a)において、重合性不飽和基の位置は、高分子主鎖の末端、高分子側鎖の末端や高分子主鎖中や側鎖中に直接結合していることが好ましい。樹脂(a)1分子に含まれる重合性不飽和基の数の平均は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR法)による分子構造解析法で求めることができる。
【0028】
樹脂(a)として、分子主鎖中、分子末端あるいは側鎖中に重合性不飽和基を有する化合物を用いても良い。特に分子末端に重合性不飽和基を導入する方法として、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、アルコキシカルボニル基などの反応性基を複数有する数千程度の分子量の上記成分の反応性基と結合しうる基を複数有する結合剤(例えば水酸基やアミノ基の場合のポリイソシアネートなど)を反応させ、分子量の調節、及び末端の結合性基への変換を行った後、この末端結合性基と反応する基と重合性不飽和基を有する有機化合物と反応させて末端に重合性不飽和基を導入する方法などの方法が好適にあげられる。
【0029】
用いる樹脂(a)としては、レーザー彫刻時に液状化し易い樹脂や分解し易い樹脂が好ましい。分解し易い樹脂としては、分子鎖中に分解し易いモノマー単位としてスチレン、α−メチルスチレン、α−メトキシスチレン、アクリルエステル類、メタクリルエステル類、エステル化合物類、エーテル化合物類、ニトロ化合物類、カーボネート化合物類、カルバモイル化合物類、ヘミアセタールエステル化合物類、オキシエチレン化合物類、脂肪族環状化合物類等が含まれていることが好ましい。特にポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラエチレングリコール等のポリエーテル類、脂肪族ポリカーボネート類、脂肪族カルバメート類、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ニトロセルロース、ポリオキシエチレン、ポリノルボルネン、ポリシクロヘキサジエン水添物、あるいは分岐構造の多いデンドリマー等の分子構造を有するポリマーは、分解し易いものの代表例である。また、分子鎖中に酸素原子を多数含有するポリマーが分解性の観点から好ましい。これらの中でも、カーボネート基、カルバメート基、メタクリル基をポリマー主鎖中に有する化合物は、熱分解性が高く好ましい。例えば、(ポリ)カーボネートジオールや(ポリ)カーボネートジカルボン酸を原料として合成したポリエステルやポリウレタン、(ポリ)カーボネートジアミンを原料として合成したポリアミドなどを熱分解性の良好なポリマーの例として挙げることができる。これらのポリマー主鎖、側鎖に重合性不飽和基を含有しているものであっても構わない。特に、末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基等の反応性官能基を有する場合には、主鎖末端に重合性不飽和基を導入することも容易である。特に、分子内にカーボネート結合、エステル結合から選ばれる少なくとも1種類の結合を有し、且つウレタン結合、ウレア結合、アミド結合から選ばれる少なくとも1種類の結合を有する化合物が好ましい。これらの化合物を用いることにより、レーザー彫刻性および機械的物性の高い感光性樹脂硬化物をえることが可能である。
【0030】
樹脂(a)として、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン類等の分子主鎖あるいは側鎖に重合性不飽和基を有する化合物を挙げることができる。また、重合性不飽和基を有しない高分子化合物を出発原料として、置換反応、脱離反応、縮合反応、付加反応等の化学反応により重合性不飽和基を分子内に導入した高分子化合物を挙げることもできる。重合性不飽和基を有しない高分子化合物の例としてポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリ塩化ビニルポリ塩化ビニリデン等のポリハロオレフィン類、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルエーテル等のC-C連鎖高分子の他、ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル類、ポリフェニレンチオエーテル等のポリチオエーテル類、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド、ポリジアルキルシロキサン等の高分子化合物、或いはこれらの高分子化合物の主鎖にヘテロ原子を有する高分子化合物、複数種のモノマー成分から合成されたランダム共重合体、ブロック共重合体を挙げることができる。更に分子内に重合性不飽和基を導入した高分子化合物を複数種混合して用いることもできる。
【0031】
特にフレキソ印刷版用途のように柔軟なレリーフ画像が必要な場合には、樹脂(a)として、一部、ガラス転移温度が20℃以下の液状樹脂が好ましく、ガラス転移温度0℃以下の液状樹脂を用いることがより好ましい。このような液状樹脂として、例えばポリエチレン、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポイソプレン等の炭化水素類、アジペート、ポリカプロラクトン等のポリエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル類、脂肪族ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン類、(メタ)アクリル酸及び/またはその誘導体の重合体及びこれらの混合物やコポリマー類を用いて合成され、分子内に重合性不飽和基を有する化合物を用いることができる。その含有量は、樹脂(a)全体に対して30wt%以上含有することが好ましい。特に耐候性の観点からポリカーボネート構造を有する不飽和ポリウレタン類が好ましい。ここで言う液状樹脂とは、容易に流動変形し、かつ冷却により変形された形状に固化できるという性質を有する高分子体を意味し、外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには、短時間に元の形状を回復する性質を有するエラストマーに対応する言葉である。
【0032】
有機化合物(b)は、樹脂(a)との希釈のし易さから、数平均分子量が1000以下の重合性不飽和基を有する化合物であることが好ましい。重合性不飽和基の定義は、樹脂(a)の箇所でも記載したように、ラジカルまたは付加重合反応に関与する重合性不飽和基である。ラジカル重合反応に関与する重合性不飽和基の好ましい例としては、ビニル基、アセチレン基、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。付加重合反応に関与する重合性不飽和基の好ましい例としては、シンナモイル基、チオール基、アジド基、開環付加反応するエポキシ基、オキセタン基、環状エステル基、ジオキシラン基、スピロオルトカーボネート基、スピロオルトエステル基、ビシクロオルトエステル基、環状イミノエーテル基等が挙げられる。
【0033】
有機化合物(b)の具体例としては、ラジカル反応性化合物として、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類、アセチレン類、(メタ)アクリル酸及びその誘導体、ハロオレフィン類、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、アリールアルコール、アリールイソシアネート等のアリール化合物、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその誘導体、酢酸ビニル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール等があげられるが、その種類の豊富さ、価格、レーザー光照射時の分解性等の観点から(メタ)アクリル酸及びその誘導体が好ましい例である。前記化合物の誘導体の例としては、シクロアルキル−、ビシクロアルキル−、シクロアルケン−、ビシクロアルケン−などの脂環族骨格を有する化合物、ベンジル−、フェニル−、フェノキシ−、フルオレン−などの芳香族骨格を有する化合物、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、グリシジル基を有する化合物、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール−やトリメチロールプロパン等の多価アルコール類とのエステル化合物、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン等のポリシロキサン構造を有する化合物などがあげられる。また、窒素、硫黄等の元素を含有した複素芳香族化合物であっても構わない。
【0034】
また、付加重合反応するエポキシ基を有する化合物としては、種々のジオールやトリオールなどのポリオールにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物、分子中のエチレン結合に過酸を反応させて得られるエポキシ化合物などを挙げることができる。具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAにエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドが付加した化合物のジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(プロピレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(エチレングリコールアジペート)ジオールジグリシジルエーテル、ポリ(カプロラクトン)ジオールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物、エポキシ変性シリコーンオイル(信越化学工業社製、商標名「HF−105」)を挙げることができる。
【0035】
本発明において、これら重合性不飽和基を有する有機化合物(b)はその目的に応じて1種若しくは2種以上のものを選択できる。例えば印刷版として用いる場合、印刷インキの溶剤であるアルコールやエステル等の有機溶剤に対する膨潤を押さえるために用いる有機化合物として長鎖脂肪族、脂環族または芳香族の誘導体を少なくとも1種類以上有することが好ましい。
本発明で用いられる樹脂組成物より得られる印刷原版の機械強度を高めるためには、有機化合物(b)としては脂環族または芳香族の誘導体を少なくとも1種類以上有することが好ましく、有機化合物(b)の全体量の20wt%以上であることが好ましく、更に好ましくは50wt%以上である。また、前記芳香族の誘導体として、窒素、硫黄等の元素を有する芳香族化合物であっても構わない。
【0036】
本発明に用いる感光性樹脂組成物における樹脂(a)、有機化合物(b)の割合は、通常、樹脂(a)100重量部に対して、有機化合物(b)は5〜200重量部が好ましく、20〜100重量部の範囲がより好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物は光もしくは電子線の照射により架橋して印刷版などとしての物性を発現させるが、その際に光重合開始剤を添加することができる。光重合開始剤は一般に使用されているものから選択でき、例えば高分子学会編「高分子データ・ハンドブック−基礎編」1986年培風館発行、に例示されているラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合の開始剤等が使用できる。また、光重合開始剤を用いて光重合により架橋を行なうことは、本発明の樹脂組成物の貯蔵安定性を保ちながら、生産性良く印刷原版を生産出来る方法として有用であり、その際に用いる開始剤も公知のものが使用できる。ラジカル重合反応を誘起させる光重合開始剤としては、水素引き抜き型光重合開始剤(d)と崩壊型光重合開始剤(e)が、特に効果的な光重合開始剤として用いられる。
【0037】
水素引き抜き型光重合開始剤(d)として、特に限定するものではないが、芳香族ケトンを用いることが好ましい。芳香族ケトンは光励起により効率良く励起三重項状態になり、この励起三重項状態は周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化学反応機構が提案されている。生成したラジカルが光架橋反応に関与するものと考えられる。本発明で用いる水素引き抜き型光重合開始剤(d)として励起三重項状態を経て周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化合物であれば何でも構わない。芳香族ケトンとして、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、キサンテン類、チオキサントン類、アントラキノン類を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。ベンゾフェノン類とは、ベンゾフェノンあるいはその誘導体を指し、具体的には3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラメトキシベンゾフェノン等である。ミヒラーケトン類とはミヒラーケトンおよびその誘導体をいう。キサンテン類とはキサンテンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体をいう。チオキサントン類とは、チオキサントンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体をさし、エチルチオキサントン、メチルチオキサントン、クロロチオキサントン等を挙げることができる。アントラキノン類とはアントラキノンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基等で置換された誘導体をいう。水素引き抜き型光重合開始剤(d)の添加量は、液状感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、硬化物表面の硬化性は充分に確保でき、また、退候性を確保することができる点から、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.5wt%以上5wt%以下である。
【0038】
崩壊型光重合開始剤(e)とは、光吸収後に分子内で開裂反応が発生し活性なラジカルが生成する化合物を指し、特に限定するものではない。具体的には、ベンゾインアルキルエーテル類、2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類、アセトフェノン類、アシルオキシムエステル類、アゾ化合物類、有機イオウ化合物類、ジケトン類等を挙げることができ、これらの群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。ベンゾインアルキルエーテル類としては、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、「感光性高分子」(講談社、1977年出版、頁228)に記載の化合物を挙げることができる。2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン等を挙げることができる。アセトフェノン類としては、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン等を挙げることができる。アシルオキシムエステル類としては、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム等を挙げることができる。アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、テトラゼン化合物等を挙げることができる。有機イオウ化合物としては、芳香族チオール、モノおよびジスルフィド、チウラムスルフィド、ジチオカルバメート、S−アシルジチオカルバメート、チオスルホネート、スルホキシド、スルフェネート、ジチオカルボネート等を挙げることができる。ジケトン類としては、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート等を挙げることができる。崩壊型光重合開始剤(e)の添加量は、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、硬化物内部の硬化性は充分に確保できる点から、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.3wt%以上3wt%以下である。
【0039】
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する化合物を、光重合開始剤として用いることもできる。α−アミノアセトフェノン類を挙げることができる。例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、前記一般式(1)で示される化合物を挙げることができる。
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する化合物の添加量は、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合であっても、硬化物の機械的物性は充分に確保できる点から、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下が好ましく、より好ましくは0.3wt%以上3wt%以下である。
また、光を吸収して酸を発生することにより、付加重合反応を誘起させる光重合開始剤を用いることもできる。例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等の光カチオン重合開始剤、あるいは光を吸収して塩基を発生する重合開始剤などが挙げられる。これらの光重合開始剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.1wt%以上10wt%以下の範囲が好ましい。
その他、本発明に用いる樹脂組成物には用途や目的に応じて重合禁止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、滑剤、界面活性剤、可塑剤、香料などを添加することができる。
【0040】
本発明に用いる樹脂組成物をシート状、もしくは円筒状に成形する方法は、既存の樹脂の成形方法を用いることができる。例えば、注型法、ポンプや押し出し機等の機械で樹脂をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚みを合わせる、ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法等が例示できる。その際、樹脂の性能を落とさない範囲で加熱しながら成形を行なうことも可能である。また、必要に応じて圧延処理、研削処理などをほどこしても良い。通常はPETやニッケルなどの素材からなるシート状支持体上に成形される場合が多いが、直接印刷機のシリンダー上に成形する場合などもありうる。また、繊維強化プラスチック(FRP)製、プラスチック製あるいは金属製の円筒状支持体を用いることもできる。円筒状支持体は軽量化のために一定厚みで中空のものを使用することができる。シート状支持体あるいは円筒状支持体の役割は、印刷原版の寸法安定性を確保することである。したがって、寸法安定性の高いものを選択する必要がある。線熱膨張係数を用いて評価すると、好ましい材料の上限値は100ppm/℃以下、更に好ましくは70ppm/℃以下である。材料の具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビスマレイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンチオエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂からなる液晶樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。また、これらの樹脂を積層して用いることもできる。
【0041】
成形された感光性樹脂組成物は光照射により架橋せしめ、凸版印刷版を形成する。また成型しながら光照射により架橋させることもできる。硬化に用いられる光源としては高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、殺菌灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等を挙げることができる。感光性樹脂組成物層に照射される光は、200nmから300nmの波長の光を有することが好ましい。特に水素引き抜き型光重合開始剤(d)は、この波長領域に強い光吸収を有するものが多いため、200nmから300nmの波長の光を有する場合、感光性樹脂硬化物層表面の硬化性を充分に確保することができる。硬化に用いる光源は、1種類でも構わないが、波長の異なる2種類以上の光源を用いて硬化させることにより、樹脂の硬化性が向上することがあるので、2種類以上の光源を用いることも差し支えない。
【0042】
レーザー彫刻に用いる原版の厚みは、その使用目的に応じて任意に設定して構わないが印刷版として用いる場合には、一般的に0.1〜7mmの範囲である。場合によっては組成の異なる材料を複数積層していても構わない。
本発明では、レーザー彫刻される層の下部にエラストマーからなるクッション層を形成することもできる。一般的に、レーザー彫刻される層の厚さは、0.1〜数mmであるため、それ以外の下部層は組成の異なる材料であっても構わない。クッション層としては、ショアA硬度が20から70度のエラストマー層であることが好ましい。ショアA硬度が20度以上である場合、適度に変形するため、印刷品質を確保することができる。また、70度以下であれば、クッション層としての役割を果たすことができる。より好ましいショアA硬度の範囲は、30〜60度である。
【0043】
前記クッション層は、特に限定せず、熱可塑性エラストマー、光硬化型エラストマー、熱硬化型エラストマー等ゴム弾性を有するものであれば何でも構わない。ナノメーターレベルの微細孔を有する多孔質エラストマー層であってもよい。特にシート状あるいは円筒状印刷版への加工性の観点から、光で硬化する液状感光性樹脂組成物を用い、硬化後にエラストマー化する材料を用いることが簡便であり好ましい。
クッション層に用いる熱可塑性エラストマーの具体例としては、スチレン系熱可塑性エラストマーであるSBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、シリコン系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。 光硬化型エラストマーとしては、前記熱可塑性エラストマーに光重合性モノマー、可塑剤および光重合開始剤等を混合したもの、プラストマー樹脂に光重合性モノマー、光重合開始剤等を混合した液状組成物などを挙げることができる。微細パターンの形成機能が重要な要素である感光性樹脂組成物の設計思想とは異なり、光を用いて微細なパターンの形成を行う必要がなく、全面露光により硬化させることにより、ある程度の機械的強度を確保できれば良いため、材料の選定において自由度が極めて高い。また、硫黄架橋型ゴム、有機過酸化物、フェノール樹脂初期縮合物、キノンジオキシム、金属酸化物、チオ尿素等の非硫黄架橋型ゴムを用いることもできる。更に、テレケリック液状ゴムを反応する硬化剤を用いて3次元架橋させてエラストマー化したものを使用することもできる。
【0044】
レーザーによる彫刻は酸素含有ガス下、一般には空気存在下もしくは気流下に実施するが、炭酸ガス、窒素ガス下でも実施できる。レーザー彫刻時に発生するガスあるいは微小な粉末状のカスが舞い上がる場合には、空気あるいは不活性ガスを彫刻部に吹き付けることが除去に効果がある。彫刻終了後、レリーフ印刷版面にわずかに発生する粉末状もしくは液状の物質は適当な方法、例えば溶剤や界面活性剤の入った水等で洗いとる方法、高圧スプレー等により水系洗浄剤を照射する方法、高圧スチームを照射する方法などを用いて除去しても良い。
本発明において、レーザー光を照射し微細な凹パターンを形成する彫刻後に、版表面に残存する粉末状あるいは粘性のある液状カスを除去する工程に引き続き、パターンを形成した印刷版表面に波長200nm〜450nmの光を照射する後露光を実施することもできる。表面のタック除去に効果がある方法である。後露光は大気中、不活性ガス雰囲気中、水中のいずれの環境で行っても構わない。用いる感光性樹脂組成物中に水素引き抜き型光重合開始剤が含まれている場合、特に効果的である。更に、後露光工程前に印刷版表面を、水素引き抜き型光重合開始剤を含む処理液で処理し露光しても構わない。また、水素引き抜き型光重合開始剤を含む処理液中に印刷版を浸漬した状態で露光しても構わない。
【0045】
本発明のレジストパターンの形成方法は、レジスト材料のパターン化に限定されるものではなく、機能性材料の微細パターン化、パターン形状をコントロールする必要がある場合などにも適用することができる。パターン形状をコントロールするとは、断面形状においてアスペクト比を高くする、形状を矩形にする、エッジ部分を急峻にする等を挙げることができる。具体的な例としては、液晶ディスプレイ等のカラーフィルター、ブラックマトリックス形成、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層、電荷移動層の形成、有機半導体パターン形成、誘電体のパターン化、光導波路形成などを挙げることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
(1)粘度
感光性樹脂組成物の粘度は、B型粘度計(B8H型;日本国、東京計器社製)を用い、20℃で測定した。
(2)数平均分子量の測定
樹脂(a)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)を用いて、分子量既知のポリスチレンで換算して求めた。高速GPC装置「HLC−8020」(日本国、東ソー社製、商標)とポリスチレン充填カラム「TSKgelGMHXL」(商標、日本国、東ソー社製)を用い、テトラヒドロフラン(THF)で展開して測定した。カラムの温度は40℃に設定した。GPC装置に注入する試料としては、樹脂濃度が1wt%のTHF溶液を調製し、注入量10μlとした。また、検出器としては、樹脂(a)に関しては紫外吸収検出器を使用し、モニター光として254nmの光を用いた。
(3)重合性不飽和基の数の測定
合成した樹脂(a)の分子内に存在する重合性不飽和基の平均数は、未反応の低分子成分を液体クロマトグラフ法を用いて除去した後、核磁気共鳴スペクトル法(NMR法)を用いて分子構造解析し求めた。
【0047】
(実施例1)
樹脂(a)として水添ポリブタジエンジオールとトリレンジイソシアネートとからウレタン化により両末端が水酸基のポリウレタンを合成し、更に、該ポリウレタンの両末端にメタクリロキシイソシアネートを付加させた不飽和ポリウレタンを作製した。合成された不飽和ポリウレタンの数平均分子量は、約20000であった。不飽和ポリウレタン79重量部、有機化合物(b)としてラウリルメタクリレート(分子量245)13重量部と1,3−ブチレングリコールジメタクリレート(分子量226)3重量部およびポリプロピレングリコールジメタクリレート(分子量660)3重量部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6重量部、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン1重量部を混合し感光性樹脂組成物(ア)を調製した。感光性樹脂組成物(ア)の20℃における粘度は、35Pa・sであり、液状であった。不飽和ポリウレタン末端の重合性不飽和基の数は、H−NMR法により2であることを確認した。
【0048】
作製した感光性樹脂組成物(ア)を、表面に接着剤層を形成した厚み125μmのPETフィルム上に厚さ2.67mmのシート状に成形し、その上に厚さ15μmのPETカバーフィルム(表面にシリコーン離型剤処理を施してある)を被覆して、高圧水銀灯から出てくる光を照射して感光性樹脂硬化物を得た。照射したエネルギー量は、4000mJ/cm(「UV−35−APRフィルター」(商標、オーク製作所社製)で測定した照度を時間積分した値)であった。得られたシート状の感光性樹脂硬化物をレーザー彫刻用の印刷原版とした。
感光性樹脂組成物(ア)を光硬化させて得られた感光性樹脂硬化物のショアA硬度は、45度であった。ショアA硬度測定に際し、表面のPETカバーフィルムは剥離した。
レジストインキを転写するガラス基板の大きさに合わせて、前記レーザー彫刻用の印刷原版の表面にレーザー彫刻機「ZED−mini−1000」(英国、ZED社製、商標)を用いて表面にパターンを有するシート状印刷版を形成した。深さは、0.5mmと設定した。
【0049】
上記のようにしてパターンを形成したシート状印刷版を、フレキソ印刷仕様の精密印刷機「JSC−m4050−M」(日本電子精機社製、商標)を用いて、アニロックスロール上のレジストインキを、前記シート状印刷版をシリンダー表面に貼り付けて形成した円筒状印刷版表面の凸部に転写し、更に、ガラス基板上にレジストインキを転写することにより印刷を行った。ガラス基板上に塗布したレジストインキは、溶剤成分としてn−メチルピロリドン(沸点:202℃)を、ポリマー成分としてメタクリル基を分子内に含有するポリアミック酸を含む、感光性ポリイミド前駆体インキであった。感光性ポリイミド前駆体インキをガラス基板の全面に塗布し、その後、溶剤成分を加熱乾燥除去する工程を2回繰り返し実施して、不揮発成分からなる厚さ5μmの皮膜を得た。感光性ポリイミド前駆体インキは、ほぼ100%の収率でガラス基板上に転写された。また、皮膜の厚みは均一であった。
【0050】
更に、得られた感光性ポリイミド前駆体を、フォトリソグラフィーを用いてパターン化した。超高圧水銀灯を光源とする平行光露光機「PLA−600マスクアライナー」(キヤノン社製、商標)を用いて、ガラスクロムマスクを通して光を照射し、感光性ポリイミド前駆体膜に潜像を形成し、その後溶剤での現像、リンス工程を経て5μmのライン/スペースのパターン形成した。得られたライン状のパターンのアスペクト比は、1であった。また、得られたライン状パターンの断面形状において、ほぼ矩形のパターンを得ることができた。その後、更に350℃の焼成炉で熱処理することによりポリイミド化した皮膜を得た。
【0051】
(実施例2)
樹脂(a)として4,6−ポリカーボネートジオールとトリレンジイソシアネートとからウレタン化により両末端が水酸基のポリウレタンを合成し、更に、該ポリウレタンの両末端にメタクリロキシイソシアネートを付加させた不飽和ポリウレタンを作製した。合成された不飽和ポリウレタンの数平均分子量は、約15000であった。不飽和ポリウレタン67重量部、有機化合物(b)としてフェノキシエチルメタクリレート(分子量:206)20重量部とジエチレングリコールモノブチルエーテルモノメタクリレート(分子量:230)13重量部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.6重量部とベンゾフェノン1重量部、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン1重量部を混合し感光性樹脂組成物(イ)を調製した。感光性樹脂組成物(イ)の20℃における粘度は、約1300Pa・sであり、液状であった。不飽和ポリウレタン末端の重合性不飽和基の数は、H−NMR法により2であることを確認した。
【0052】
感光性樹脂組成物(イ)を用いて、円筒状の感光性樹脂硬化物を形成した。エアーシリンダーに、厚さ1.5mmのガラス繊維強化プラスチック製のスリーブを嵌め込み、エアーシリンダーを回転させながら、前記スリーブ上に前記感光性樹脂組成物(イ)を厚さ3mmにドクターブレードを用いて塗布した。その後、エアーシリンダーを回転させながら、大気雰囲気下でケミカルランプ(中心波長:370nm)および殺菌灯(中心波長:253nm)の光をそれぞれ2000mJ/cm、500mJ/cm照射し、厚さ約3mmの感光性樹脂硬化物を得た。得られた感光性樹脂硬化物は、表面および内部まで完全に硬化しており、表面のタックは100N/m未満であった。得られた感光性樹脂硬化物の表面を研削、研磨して、レーザー彫刻可能な円筒状印刷原版を作製した。同様にして更に1本のレーザー彫刻可能な円筒状印刷原版を用意した。
【0053】
1本の円筒状印刷原版には、シリコンウエハーより若干小さい面積にノボラック系フォトレジストインキを塗布するための、四角形の凸パターンをレーザー彫刻法により作製した。レーザー彫刻した深さは0.5mmであった。
更にもう1本の円筒状印刷原版には、前記ノボラック系フォトレジスト層の上に有機珪素化合物レジスト材料(Hydrogen Silses Quioxane)パターンを形成するためのライン/スペースパターンを、レーザー彫刻法を用いて形成した。凸状のラインパターンの最表面での幅は5μm、底部での幅は15μmで、ラインパターンは30μm間隔で配列させた。凸部の高さは、50μmであった。
【0054】
上記のようにしてパターンを形成した円筒状状印刷版を、フレキソ印刷仕様の精密印刷機「JSC−m4050−M」(日本電子精機社製、商標)を用いて、アニロックスロール上のレジストインキを、前記円筒状状印刷版をシリンダー表面に貼り付けて形成した円筒状印刷版表面の凸部に転写し、更に、シリコンウエハー上にレジストインキを転写することにより印刷を行った。ガラス基板上に先ず、ノボラック系フォトレジスト「AZ」(AZ Electronic Materials社製、商標)を厚さ5μmで塗布し溶剤を乾燥除去した後、有機珪素化合物レジスト材料「HSQ」(米国、Dow Corning 社製、商標)を厚さ0.5μmで塗布し乾燥してライン状のパターンを形成した。いずれのレジストインキも、ほぼ100%の収率でガラス基板上に転写され、皮膜の厚みは均一であった。
上記のようにして2層のレジスト材料を、凸版印刷法を用いて形成したシリコンウエハーを、反応性イオンエッチング装置「RIE−10NR」(サムコインターナショナル研究所社製、商標)を用いて酸素プラズマ中で、ノボラック系フォトレジスト層をドライエッチング処理した。更に、トリフルオロメタンプラズマ中で、有機珪素化合物レジスト層を除去して、ノボラック系フォトレジスト層のラインパターンを得た。得られたラインパターンの断面形状は、ほぼ矩形であり、アスペクト比は、0.5であった。
【0055】
(比較例1)
実施例1で用いたものと同じ感光性ポリイミド前駆体インキを、ガラス基板上にスピンコーター「1H−360S」(ミカサ社製、商標)を用いて、回転数を段階的に上げる条件で厚さ5μmに塗布し、その後、溶剤を乾燥除去した。この際、ガラス基板上に滴下した感光性ポリイミド前駆体インキの重量とガラス基板上に残存した乾燥前の感光性ポリイミド前駆体インキの重量から、95wt%のインキがガラス基板外に排出された。
その後、実施例1と同様にしてフォトリソグラフィーを用いて、実施例1と同様のパターンを得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、レジスト材料の使用量を大幅に削減し、かつ均一な皮膜形成を可能とするレジストパターンの形成方法として最適である。従って、大規模集積回路形成の半導体プロセスや回路基板形成のパターン形成プロセス等で有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に設けられた、少なくとも1層からなるレジスト層をフォトリソグラフィー又はドライエッチング法によりパターン化してレジストパターンを形成する方法であって、該レジスト層の少なくとも最外層を、樹脂硬化物を表面に有する円筒状印刷版を用いて印刷法により形成することを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【請求項2】
レジスト層が複数層からなり、少なくとも最外層のレジスト層が表面にパターンを有する円筒状印刷版を用いる印刷法により形成されており、レジスト層をパターン化する方法が、前記最外層のレジスト層をマスク層として下層のレジスト層を、フォトリソグラフィーを用いてパターン形成する方法、あるいはドライエッチングする方法である、請求項1に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項3】
基材が、シリコンウエハー、ガラス板、セラミックス板、プラスチックフィルム、銅貼り積層板、銅貼り積層フィルムからなる群より選択される少なくとも1種類の基材である、請求項1又は2に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項4】
溶剤を含有するレジストインキを基材上に塗布した後、溶剤を除去することによりレジスト層を形成する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項5】
溶剤が、n−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、γ−ブチルラクトン、ブチルカルビトール、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ジエチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルソロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ターピネオール、ペンタンジオール、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラヒドロフランからなる群より選択される少なくとも1種類の化合物を含有する、請求項4に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項6】
円筒状印刷版として、レーザー光を照射して照射された部分の樹脂が除去されることにより凹部が形成されるレーザー彫刻法により表面に凹凸パターンが形成された印刷版を用いる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項7】
樹脂硬化物が、感光性樹脂硬化物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項8】
感光性樹脂硬化物が、20℃において液状の感光性樹脂組成物を光硬化させて得られる硬化物である、請求項7に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項9】
レジスト層が、ポリアミック酸、メチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合樹脂、ノルボルネン−無水マレイン酸交互共重合樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、フッ素化ノルボルネン樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ベンゾシクロブテン、ポリカーボネート、ポリ(p−t−ブトキシカルボニルオキシスチレン)、ポリ(N−(t−ブトキシカルボニル)マレイミド)、ポリ(N−(p−t−ブトキシカルボニルオキシフェニル)マレイミド)、o−トリメチルシリルポリ(ビニルフェノール)、ポリフタルアルデヒド、ナフトキノンジアジド骨格を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種類の化合物を含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項10】
レジスト層が、崩壊型光重合開始剤、水素引き抜き型光重合開始剤、崩壊型光重合開始剤として機能する部位と水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位を有する光重合開始剤、光酸発生剤、光塩基発生剤からなる群より選択される少なくとも1種類の化合物を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項11】
フォトリソグラフィーの露光工程で使用する光照射方法が、縮小投影露光法、プロキシミティー露光法、コンタクト露光法、レーザー直描法、電子線直描法からなる群より選択される少なくとも1種類の方法である、請求項1〜10のいずれか1項に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項12】
レジストパターンのアスペクト比が、0.5以上10以下である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のレジストパターンの形成方法。

【公開番号】特開2008−71936(P2008−71936A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249311(P2006−249311)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】