説明

レジストパターンの形成方法

【構成】 iso-プロペニルオキシカルボニル基と、該iso-プロペニルオキシカルボニル基と反応しうる官能基とを有する化合物と、光照射または電離放射線照射により酸を発生する化合物とからなるパターン形成材料を被処理基板上に塗布した後に乾燥し、次いで、iso-プロペニルオキシカルボニル基と、該iso-プロペニルオキシカルボニル基と反応しうる官能基とが反応しうる温度に加熱して架橋型レジスト膜を作り、該レジスト膜に光または電離放射線をパターン状に照射した後に、アルカリ性水溶液で現像することを特徴としている。
【効果】 本発明によれば、高コントラスト・高感度でポジ型レジストを形成することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は、解像性に優れたレジストパターンの形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】フォトレジストは、主として集積回路(ICパターン)を製造する際に、μm単位の微細画像(パターン)を形成するために用いられている。このようなフォトレジストは、一般に感光性樹脂とバインダー樹脂とからなり、写真フィルムと同様に、ネガ型フォトレジスト、ポジ型フォトレジストが知られている。回路パターン等の形成は、レジスト膜を基板上に形成した後、光または電離放射線をパターン状に照射し、現像することにより行なわれる。ネガ型レジストの場合は、露光部を現像剤に対して不溶化することにより、パターンが形成される。一方、ポジ型レジストの場合は溶剤不溶性の塗膜をパターン状に露光し、露光部を可溶化することによりパターンが形成される。
【0003】現用のポジ型フォトレジストの現像液はアルカリ性水溶液であり、将来もアルカリ性現像液が用いられる見込みである。ポジ型レジスト形成材料の一つとして、アルカリ水溶液可溶のフェノール樹脂をベース樹脂とし、酸発生剤および、酸触媒反応により溶解性変化を起こす化合物からなるレジスト形成材料が知られている。溶解性変化を起こす化合物として、アルカリ性水溶液に対する溶解阻害剤を用いるとポジ型フォトレジストになる。ここで、溶解阻害剤とは、本質的にはアルカリ性水溶液に対する溶解性を阻害する物質であるが、酸触媒反応により、溶解阻害性が消失する化合物である。このようなレジスト形成材料は、光または電離放射線を照射する以前は、溶解阻害剤のためにアルカリ性水溶液(現像剤)に対して不溶であるが、光または電離放射線を照射すると、酸発生剤から酸が発生して溶解阻害剤と反応し、溶解阻害性が消失するため、アルカリ性水溶液に対して可溶になる。したがって、光または電離放射線をパターン状に照射することによりパターン形成が可能になる。このようなアルカリ性水溶液に対する溶解阻害剤としては、アセタール化合物、ポリフタルアルデヒド、tert−ブチルオキシカルボニル基(以下t−BOC基と略記する)で保護したビスフェノールA(t−BOC−BA)、シリルエーテルポリマー、エステル、ポリヒドロキシスチレンをテトラヒドロピラリル基で保護したTHP−M等が報告されている。
【0004】このようなレジスト形成材料のさらに具体的な例として、特公平2−27660号公報には、カルボン酸のtert−ブチル・エステルまたはフェノールのt−BOC基を有する重合体と、光照射によって酸を発生する光重合開始剤とからなる光増幅型レジスト組成物が開示されている。このレジストでは、露光することにより、光重合開始剤から酸が発生し、発生した酸によってt−BOC基の脱離が起こり、この結果、露光部分がアルカリ不溶性からアルカリ可溶性に変わる。したがって、露光部をアルカリ性水溶液で洗い流すことにより、ポジ型レジストとなる。
【0005】また特開平4−215661号公報には、メタクリル酸エトキシエチルを成分とするポリマーと、光によって酸を発生する光重合開始剤とからなるレジスト組成物が開示されている。
【0006】しかしながら、集積化、小型化が常に求められ続けている半導体業界では、さらに高感度および高解像度のレジスト形成材料の提供が切望されている。
【0007】
【発明の目的】本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、解像性の優れたレジストパターンの形成方法を提供することを目的としている。
【0008】
【発明の概要】本発明に係る第1のレジストパターンの形成方法は、iso-プロペニルオキシカルボニル基と、該iso-プロペニルオキシカルボニル基と反応しうる官能基とを有する化合物と、光照射または電離放射線照射により酸を発生する化合物とからなるパターン形成材料を被処理基板上に塗布した後に乾燥し、次いで、iso-プロペニルオキシカルボニル基と、該iso-プロペニルオキシカルボニル基とが反応しうる温度に加熱して架橋型レジスト膜を作り、該レジスト膜に光または電離放射線をパターン状に照射した後に、アルカリ性水溶液で現像することを特徴としている。
【0009】また本発明に係る第2のレジストパターンの形成方法は、上記第1のプロセスにおいて、パターン形成材料として、iso-プロペニルオキシカルボニル基を有する化合物と、該iso-プロペニルオキシカルボニル基と反応しうる官能基とを有する化合物と、光照射または電離放射線照射により酸を発生する化合物とからなるパターン形成材料を用いることを特徴としている。
【0010】
【発明の具体的説明】以下、本発明をさらに具体的に説明する。本発明に係るレジストパターンの形成方法において用いられるパターン形成材料中には、iso-プロペニルオキシカルボニル基と、このiso-プロペニルオキシカルボニル基と反応しうる官能基(以下、反応性官能基と略記する)とが含有されている。iso-プロペニルオキシカルボニル基と、該反応性官能基とは同一分子内に結合していてもよく、あるいはiso-プロペニルオキシカルボニル基を有する化合物と、該反応性官能基を有する化合物とを同時に用いてもよい。
【0011】本発明に係る第1のレジストパターンの形成方法では、iso-プロペニルオキシカルボニル基と、該反応性官能基とが同一分子に結合している化合物(以下、成分〔A〕と略記する)を用いる。
【0012】成分〔A〕の分子量は、通常150〜200000程度であり、いわゆるモノマーであっても、オリゴマーであっても、ポリマーであってもよい。またこれらの2種以上の混合物であってもよい。
【0013】成分〔A〕の分子量が小さく、たとえば150〜1000程度のモノマーの場合には、iso-プロペニルオキシカルボニル基は、分子中に1〜5個程度存在することが好ましく、また反応性官能基も同数程度存在することが好ましい。
【0014】成分〔A〕の分子量が大きく、たとえば1000〜200000程度のポリマーの場合には、iso-プロペニルオキシカルボニル基は、側鎖の一部として存在し、同様に反応性官能基も側鎖の一部として存在する。この場合、iso-プロペニルオキシカルボニル基/反応性官能基(モル比)は、好ましくは1/10〜10/1程度である。
【0015】iso-プロペニルオキシカルボニル基は、下記式で示される。
【0016】
【化1】


【0017】このiso-プロペニルオキシカルボニル基は、−OH基、−COOH基、=NH基あるいは−NH2 基等に対する保護基として用いられており、酸触媒反応により容易に脱保護され、−OH基、−COOH基、=NH基あるいは−NH2 基等を生成する。
【0018】反応性官能基は、前記iso-プロペニルオキシカルボニル基と反応しうる官能基であり、具体的には、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(−SO3H)あるいは下記式のようなリン酸基等があげられるが、これらに限定されない。
【0019】
【化2】


【0020】上記のiso-プロペニルオキシカルボニル基と反応性官能基とは、適当な加熱等により、下記のように反応する。
【0021】
【化3】


【0022】このような成分〔A〕のさらに具体的な例として、たとえば分子量が比較的小さなモノマーの場合には、下記にあげる構造の化合物を例示できる。
【0023】
【化4】


【0024】低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、t-ブチル基等があげられる。Rとしては、特に水素原子またはメチル基が好ましい。このようなモノマーはたとえば、後述する〔C−1〕成分の製法に準じて、導入するiso-プロペニルオキシカルボニル基の量を適宜に調節することにより製造することができる。
【0025】また、分子量が比較的大きなポリマーの場合には、下記のような構造のポリマーを例示できる。
【0026】
【化5】


【0027】上式中、n/mは、好ましくは1/10〜10/1である。このようなポリマーはたとえば、後述する〔C−2〕成分の製法に準じて、導入するiso-プロペニルオキシカルボニル基の量を適宜に調節することにより製造することができる。
【0028】本発明に係る第1のレジストパターンの形成方法においては、上記のような成分〔A〕と、光照射または電離放射線照射により酸を発生する化合物(以下、成分〔B〕と略記する)とからなるパターン形成材料が用いられる。
【0029】成分〔B〕としては、オニウム塩が用いられ、好適には、非置換または置換されたアリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩またはトリアリールスルホニウム塩が用いられる。トリアリールセレノニウム塩も有用である。置換されたアリールジアニウム塩も同様に用いられ得る。その他、トリハロゲン化メチルトリアジン、ハロゲン化イソシアヌレート、ニトロベンジルエステル、スルホン酸エステル、ビスアリールスルホニウムジアゾメタンも使用できる。本発明における塩の最も好ましい対アニオンは、テトラフルオロ硼素酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ヘキサフルオロ砒素酸塩およびヘキサフルオロ燐酸塩の如き錯体金属ハロゲン化物であるが、本発明はこれらに限定されることはない。
【0030】このような成分〔B〕は、上記成分〔A〕100重量部に対して、通常1〜30重量部、好ましくは3〜20重量部、特に好ましくは3〜15重量部の量で用いられる。
【0031】上記のパターン形成材料は、成分〔A〕および〔B〕を含み、通常は、溶剤に溶かして使用・塗布する。溶剤としては、沸点が80〜100℃程度であり、成分〔A〕および〔B〕を均一に溶解する溶媒、たとえば、ケトン類、エーテル類、エステル類、非プロトン性極性溶剤等が用いられる。さらに本発明の目的を損なわない範囲で、増感剤、染料等を含有していてもよい。パターン形成材料は、上記の各成分を公知の方法により混合することに得られる。
【0032】本発明に係る第1のレジストパターンの形成方法においては、上記のようなパターン形成材料を用いてレジスト膜を形成する。まず、パターン形成材料を用いて、パターンが形成されるべき基板上に被膜を形成する。被膜の膜厚は通常は、0.3〜30μm程度であり、好ましくは0.5〜10μm程度であり、さらに好ましくは0.5〜5μm程度であり、特に好ましくは0.5〜2μm程度である。
【0033】次いで、この被膜を乾燥する。乾燥は風乾または熱処理により行われる。熱処理は40〜80℃程度の温度で10〜30分間程度行なわれる。次いで、成分〔A〕中のiso-プロペニルオキシカルボニル基と反応性官能基との加熱反応を行ない、架橋型レジスト膜を形成する。加熱反応はレジスト膜を80〜200℃、好ましくは80〜150℃に加熱することにより行われる。加熱時間は、1〜20分間程度であり、好ましくは5〜15分間である。得られる架橋型レジスト膜はアルカリ性水溶液に対して難溶または不溶になる。
【0034】次いで、得られた架橋型レジスト膜に、光または電離放射線をパターン状に照射する。なお、本発明において光とは紫外線および可視光線を含み、波長が700〜430nm程度の光線を指す。また電離放射線とは電離作用を有する波長430nm〜1Å程度の放射線であって、遠紫外線、X線、γ線、荷電粒子線等を指す。光または電離放射線が照射された部分(露光部)において、成分〔B〕から酸が発生し、この酸によって架橋構造が破壊されるとともに、残存するiso-プロペニルオキシカルボニル基があったとしても酸で脱離・分解して、極性を有する基(−OH基、−COOH基、=NHまたは−NH2 基等)が形成される。この結果、露光部は、アルカリ性水溶液に対して可溶化する。
【0035】ついで、再度熱処理を施す(50〜130℃、10〜30分間程度)。露光部はアルカリ性水溶液、アルコール等の極性溶媒に可溶であるため、現像剤として極性溶媒を用いると露光部が除去され、ポジ型パターンが得られる。
【0036】このようなパターン形成材料を用いてのポジ型パターンの形成は、たとえば、下記のように示される。
■成分〔A〕として分子量の小さなモノマーを用いる場合
【0037】
【化6】


【0038】上式で示した反応は、厳密には架橋反応ではないが、芳香核に3個以上の官能基(iso-プロペニルオキシカルボニル基および反応性官能基)が結合した化合物を成分〔A〕として用いた場合には、架橋構造(網状構造)の重合体が得られる。
■成分〔A〕として分子量の大きなポリマーを用いる場合成分〔A〕として分子量の大きなポリマーを用いる場合には、次のような分子間架橋あるいは分子内架橋によりアルカリ不溶性の重合体が得られる。
【0039】分子間架橋のモデル
【0040】
【化7】


【0041】
【化8】


【0042】分子内架橋のモデル
【0043】
【化9】


【0044】
【化10】


【0045】上記のような架橋重合体はアルカリ水溶液に対して不溶であるが、酸により架橋構造が破壊された部位はアルカリに可溶になる。したがって、成分〔B〕を用い、光または電離放射線をパターン状に照射することにより、露光部と非露光部との間に大きな溶解特性の差が生じ、高感度で高解像度のレジストパターンを形成することができる。
【0046】次に、本発明に係る第2のレジストパターンの形成方法について説明する。上記の第1のレジストパターンの形成方法においては、iso-プロペニルオキシカルボニル基と反応性官能基とが同一分子に結合している化合物(成分〔A〕)を用いた場合について説明したが、iso-プロペニルオキシカルボニル基と反応性官能基とは必ずしも同一分子に結合している必要はなく、iso-プロペニルオキシカルボニル基を有する化合物(以下、成分〔C〕と略記する)と、反応性官能基を有する化合物(以下、成分〔D〕と略記する)とを別々に用いて、反応せさ、架橋型レジスト膜を形成してもよい。
【0047】成分〔C〕の分子量は、通常150〜200000程度であり、いわゆるモノマーであっても、オリゴマーであっても、ポリマーであってもよい。またこれらの2種以上の混合物であってもよい。
【0048】成分〔C〕の分子量が小さく、たとえば150〜1000程度のモノマーの場合には、iso-プロペニルオキシカルボニル基は、分子中に2〜3個程度存在することが好ましい。以下、この成分を〔C−1〕と略記する。
【0049】成分〔C〕の分子量が大きく、たとえば1000〜200000程度のポリマーの場合には、iso-プロペニルオキシカルボニル基は、側鎖の一部として存在する。以下、この成分を〔C−2〕と略記する。
【0050】成分〔D〕の分子量は、通常150〜200000程度であり、成分〔C〕と同様に、いわゆるモノマーであっても、オリゴマーであっても、ポリマーであってもよい。またこれらの2種以上の混合物であってもよい。
【0051】成分〔D〕の分子量が小さく、たとえば150〜1000程度のモノマーの場合には、反応性官能基は、分子中に1〜3個程度存在することが好ましい。以下、この成分を〔D−1〕と略記する。
【0052】成分〔D〕の分子量が大きく、たとえば1000〜200000程度のポリマーの場合には、反応性官能基は、側鎖の一部として存在する。以下、この成分を〔D−2〕と略記する。
【0053】以下、成分〔C−1〕、〔C−2〕、〔D−1〕および〔D−2〕について詳細に説明する。成分〔C−1〕において、iso-プロペニルオキシカルボニル基は、−OH基、−COOH基、=NH基あるいは−NH2 基等に対する保護基として用いられており、酸触媒反応により容易に脱保護され、−OH基、−COOH基、=NH基あるいは−NH2 基等を生成する。
【0054】この化合物の例としては、たとえば−OH基、−COOH基が保護されているものとしては、下記にあげる構造の化合物を例示できる。
【0055】
【化11】


【0056】低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、t-ブチル基等があげられる。Rとしては、特に水素原子またはメチル基が好ましい。上記のようなiso-プロペニルオキシカルボニル基を有する化合物は、具体的には、−OH基、=NH基または−NH2 基の何れかを含む化合物を有機溶媒中で、塩基性化合物の存在下、iso-プロペニルクロロホーメートと反応させることにより得られる。−OH基、=NH基または−NH2 基の何れかを含む化合物としては、ビスフェノールA類、ナフトール類、フェノール類およびこれらからの誘導体等が用いられる。有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジクロルメタン、酢酸メチル、酢酸エチル等が用いられる。塩基性化合物としては、t−ブチルカリウム、トリエチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン等が用いられる。反応温度は、10〜60℃程度であり、反応時間は1〜24時間程度が好適である。
【0057】またiso-プロペニルオキシカルボニル基を有する化合物は、−COOH基を有する化合物を、アレーン−ルテニウム−リン錯体からなる触媒の存在下で、1-プロピン(CH≡C−CH3 )と反応させることによっても調製することができる。
【0058】なお、−OH基、−COOH基、=NH基または−NH2 基の全てが反応に関与する必要はなく、化合物中に一部、−OH基、−COOH基、=NH基または−NH2 基が残存していてもよい。
【0059】上記の反応は、下記(1)〜(4)式のように示される。なお、下記式では、フェノール(1)、アニリン(2)、ジフェニルアミン(3)、安息香酸(4)を出発物質として用いた場合を例示するが、本発明はこれらに限定されることはない。
【0060】
【化12】


【0061】なお、上記化合物においては、一部のiso-プロペニルオキシカルボニル基がtert−ブチルオキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基等で置換されていてもよい。ここで、tert−ブチルオキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基等の割合は、全iso-プロペニルオキシカルボニル基に対して、50モル%未満である。このように、iso-プロペニルオキシカルボニル基の一部をtert−ブチルオキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基等で置換することにより、後述する成分〔D〕等との相溶性、あるいは極性変化の割合を適宜に調節できる。
【0062】〔C−2〕成分は、iso-プロペニルオキシカルボニル基を側鎖の一部として有する重合体である。iso-プロペニルオキシカルボニル基は、−OH基、−COOH基、=NH基あるいは−NH2 基等に対する保護基として用いられており、酸触媒反応により容易に脱保護され、−OH基、−COOH基、=NH基あるいは−NH2 基等を生成する。iso-プロペニルオキシカルボニル基を含む側鎖の具体的な例としては、たとえば、下記のように、iso-プロペニルオキシカルボニル基が、炭素数1〜5のアルキレン基あるいは炭素数6〜14の芳香族基等に直接または、窒素あるいは酸素を介して結合した基があげられる。
【0063】
−(CH2n−O−iPOC−Ar−O−iPOC−(CH2n−NH−iPOC−Ar−NH−iPOC−(CH2n−COO−iPr−Ar−COO−iPrここで、nは1〜5の整数であり、Arは芳香族基を表す。
【0064】炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、プロピレン等があげられ、または炭素数6〜14の芳香族基としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン等があげられる。さらに、iso-プロペニルオキシカルボニル基が直接ポリマーの主鎖に結合していてもよい。
【0065】−OH基、−COOH基あるいは=NH基が保護されているものとしては、下記のような繰り返し単位を含む重合体を例示することができる。
【0066】
【化13】


【0067】低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等があげられる。Rとしては、特に水素原子またはメチル基が好ましい。上記のようなiso-プロペニルオキシカルボニル基を含有する繰り返し単位は、成分〔C−2〕中に、通常は5〜100モル%、好ましくは10〜90モル%の割合で含有されている。成分〔C−2〕は、本質的にはアルカリに対して不溶であるが、酸触媒反応によってiso-プロペニルオキシカルボニル基が脱離・分解し、極性を有する基(OH基等)が形成され、アルカリ可溶性になる。成分〔C−2〕中には、アルカリ水溶液に対する溶解性を調節する等のために、上記の繰り返し単位以外の構成単位が含有されていてもよい。アルカリ性水溶液に対する溶解性を調節するためには、たとえば、tert−ブチルオキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、−OH基、−COOH基、=NH基あるいは−NH2 基等を含む繰り返し単位を適宜に含有させればよい。また、この他にも、本発明の目的を損なわない範囲で、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等の単量体から導かれる単位が含有されていてもよい。
【0068】上記のような〔C−2〕成分において特に好ましい重合体としては、ポリ(p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン)、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、ポリ(p-ビニル安息香酸)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン・マレイン酸共重合体、スチレン・アクリル酸共重合体、スチレン・メタクリル酸共重合体、ノボラック等の樹脂の側鎖の一部を、前述した(1)〜(4)式に記載の方法に準じてiso-プロペニルオキシカルボニル化あるいはiso-プロペニルエステル化して得られる重合体があげられる。
【0069】たとえば、市販のポリ-p-ヒドロキシスチレン(たとえば丸善石油社製、商品名マルカリンカー)とiso-プロペニルクロロホーメートとの反応をテトラヒドロフラン溶媒中、0〜60℃、1〜24時間、tert-ブトキシカリウムまたはトリエチルアミン等の塩基性触媒が当量以上存在する条件下にて行ない、ポリ-p-ヒドロキシスチレンのヒドロキシ基をiso-プロペニルオキシカルボニルオキシ基で保護することによってポリ(p-iso-プロペニルオキシカルボニルオキシスチレン)を製造することができる。
【0070】成分〔D−1〕は、iso-プロペニルオキシカルボニル基と反応しうる官能基(反応性官能基)を有するモノマーであり、好ましくは、1〜3個の反応性官能基を有する分子量150〜1000の化合物である。このような化合物のさらに具体的な例としては、下記のような化合物があげられる。
【0071】
【化14】


【0072】低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、t-ブチル基等があげられる。Rとしては、特に水素原子またはメチル基が好ましい。成分〔D−2〕は、iso-プロペニルオキシカルボニル基と反応しうる官能基を有するポリマーであり、好ましくは側鎖の一部にOH基あるいはCOOH基を有する重合体である。このような〔D−2〕成分において特に好ましい重合体としては、ポリ(p-ヒドロキシ-α-メチルスチレン)、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、ポリ(p-ビニル安息香酸)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン・マレイン酸共重合体、スチレン・アクリル酸共重合体、スチレン・メタクリル酸共重合体、ノボラック等があげられる。成分〔D−2〕は、本質的にはアルカリに対して可溶であるが、前述した成分〔C−1〕あるいは〔C−2〕と架橋し、アルカリに対して不溶性の架橋型レジストを形成する。この架橋構造は、酸触媒反応によって破壊されるため、再びアルカリ可溶性の重合体となる。
【0073】本発明に係る第2のレジストパターンの形成方法においては、上記のような、成分〔C−1〕および〔C−2〕から選択される少なくとも1種(〔C〕成分)と、成分〔D−1〕および〔D−2〕から選択される少なくとも1種(〔C〕成分)と、前述した光酸発生剤(成分〔B〕)とからなるレジスト形成材料が用いられる。〔C〕成分と〔D〕成分との配合割合〔C〕/〔D〕(モル比)は、通常10/90〜80/20程度であり、好ましくは20/80〜60/40程度である。また〔B〕成分は、〔C〕成分と〔D〕成分との合計100重量部に対して、通常1〜30重量部、好ましくは3〜20重量部の量で配合されている。さらに、このレジスト形成材料には、所望に応じ、前述した成分〔A〕あるいは、希釈剤、増感剤、染料等を添加してもよい。
【0074】本発明に係る第2のレジストパターンの形成方法においては上記のようなパターン形成材料を用い、前述した第1のレジストパターンの形成方法と同様にしてレジスト膜を形成する。塗膜に熱処理を施すと、成分〔C〕のiso-プロペニルオキシカルボニル基と、成分〔D〕の反応性官能基との間に架橋が起こり、アルカリ不溶性またはアルカリ難溶性の架橋型レジスト膜が得られる。このレジスト膜に光または電離放射線を照射すると、成分〔B〕から発生する酸により架橋構造が破壊され、アルカリ可溶性になる。したがって、光または電離放射線をパターン状に照射することにより、露光部と非露光部との間に大きな溶解特性の差が生じ、高感度で高解像度のポジ型レジストパターンを形成することができる。
【0075】
【発明の効果】本発明によれば、高コントラスト・高感度でポジ型レジストを形成することが可能になる。
【0076】
【実施例】次に本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0077】
【実施例1】
2,2-Bis(p-isopropenyloxy-carbonyloxy-phenyl)-propane(融点70〜72℃);
【0078】
【化15】


【0079】3gとクレゾールノボラック樹脂(Mn=9000,Mw=12000)10gおよびジフェニルヨードニウム8-アニリノナフタレン-1-スルフォネート1gをプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート/アセトン=2/1の混合溶液40gに完全溶解し、レジスト溶液を調製した。
【0080】この溶液を0.2μmのテフロンフィルターで濾過した後、シリコンウェハ上に毎秒2000回の速度で回転被覆し、厚さ1μmのレジスト膜を形成した。この被膜を100℃で10分間熱処理することにより、架橋反応を促進させ(プリベイク)レジスト膜を作成した。次いで、石英マスクを介して波長365nmの紫外線を照射し、さらに80℃で10分間熱処理を行った。
【0081】2.4重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMAH)で90秒間現像を行ってポジ型像を得た。溶解速度は、0.09nm/秒であった。この結果、巾1μmの明瞭なラインアンドスペースパターンが得られた。感度は180mJ/cm2であった。また露光エネルギーと膜厚との関係を図1に示す。
【0082】
【実施例2、比較例1、2】プリベイク温度を変化させ、TMAH溶液に対する溶解速度を測定した。結果を表1に示す。
【0083】
【表1】


【0084】この結果、加熱に伴い、架橋反応が進行していることが確認された。また露光エネルギーと膜厚との関係を図1に示す。
【0085】
【比較例3】実施例1において、2,2-Bis(p-isopropenyloxy-carbonyloxy-phenyl)-propaneの代わりに、2,2-Bis(p-t-butyloxy-carbonyloxy-phenyl)-propane;
【0086】
【化16】


【0087】3gを用い、またプリベイク温度を80℃とした以外は、実施例1と同様の試験を行った。感度は180mJ/cm2であった。また露光エネルギーと膜厚との関係を図1に示す。
【0088】図1より、実施例および比較例は、感度において大差はないが、実施例の方が曲線の変化が鋭いことから、本願実施例の方が、より解像度に優れていることが確認された。
【0089】
【実施例3】市販のポリヒドロキシスチレン(分子量:5000)の全OH基の1/2をイソプロペニルオキシカルボニル化したポリマー:
【0090】
【化17】


【0091】10gと、光酸発生剤として、p-Nitrobenzyl-9,10-dimethoxyanthracene-2-sulfonate(NBAS)1.5gをシクロヘキサノン40gに完全溶解させた。実施例1で行った操作と同様にして、厚さ1μmのレジスト膜を形成した。この被膜を100℃で10分間熱処理(プリベイク)して、レジスト膜を作成した。次いで、石英マスクを介して波長365nmの紫外線を照射し、さらに80℃で10分間熱処理を行った。
【0092】TMAHで90秒間現像を行ってポジ型像を得た。感度は180mJ/cm2であった。また露光エネルギーと膜厚との関係を図2に示す。
【0093】
【比較例4】実施例3において、iso-プロペニルオキシカルボニル基の代わりに、t-ブチルオキシカルボニル基を導入した以外は、実施例3と同様の操作を行った。露光エネルギーと膜厚との関係を図2に示す。
【0094】
【実施例4】実施例3において、照射する紫外線の波長を254nmとした以外は、実施例3と同様の試験を行って、ポジ型像を得た。感度は20mJ/cm2であった。また露光エネルギーと膜厚との関係を図2に示す。
【0095】
【比較例5】実施例4において、iso-プロペニルオキシカルボニル基の代わりに、t-ブチルオキシカルボニル基を導入した以外は、実施例4と同様の操作を行った。露光エネルギーと膜厚との関係を図2に示す。
【0096】図2より、得られたレジスト膜は、高感度で高解像度のレジスト膜であることが判明した。
【0097】
【実施例5】2,2-Bis(p-isopropenyloxy-carbonyloxy-phenyl)-propane25重量部と、ポリヒドキシスチレン(分子量:6000)75重量部と、光酸発生剤としてトリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート10重量部とをシクロヘキサノンに溶解し、レジスト溶液を調製した。
【0098】この溶液をシリコンウェハ上に毎秒2000回の速度で回転被覆し、厚さ1μmのレジスト膜を形成した。この被膜を100℃で10分間熱処理することにより、架橋反応を促進させ(プリベイク)レジスト膜を作成した。次いで、KrFエキシマレーザーを照射し、さらに80℃で10分間熱処理を行った。
【0099】2.4重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMAH)で90秒間現像を行ってポジ型像を得た。この結果、巾0.8μmの明瞭なラインアンドスペースパターンが得られた。感度は15mJ/cm2であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、実施例1、2および比較例1〜3における露光エネルギーと膜厚との関係を示す図面である。
【図2】 図2は、実施例3、4および比較例4、5における露光エネルギーと膜厚との関係を示す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 iso-プロペニルオキシカルボニル基と、該iso-プロペニルオキシカルボニル基と反応しうる官能基とを有する化合物と、光照射または電離放射線照射により酸を発生する化合物とからなるパターン形成材料を被処理基板上に塗布した後に乾燥し、次いで、iso-プロペニルオキシカルボニル基と、該iso-プロペニルオキシカルボニル基とが反応しうる温度に加熱して架橋型レジスト膜を作り、該レジスト膜に光または電離放射線をパターン状に照射した後に、アルカリ性水溶液で現像することを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【請求項2】 iso-プロペニルオキシカルボニル基を有する化合物と、該iso-プロペニルオキシカルボニル基と反応しうる官能基とを有する化合物と、光照射または電離放射線照射により酸を発生する化合物とからなるパターン形成材料を被処理基板上に塗布した後に乾燥し、次いで、iso-プロペニルオキシカルボニル基と、該iso-プロペニルオキシカルボニル基とが反応しうる温度に加熱して架橋型レジスト膜を作り、該レジスト膜に光または電離放射線をパターン状に照射した後に、アルカリ性水溶液で現像することを特徴とするレジストパターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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