説明

レジスト下層膜形成方法、パターン形成方法、および組成物、レジスト下層膜形成材料用添加剤、架橋剤並びにレジスト下層膜

【課題】反射防止膜としての機能を有すると共にパターン転写性能及びエッチング耐性が良好なレジスト下層膜を形成することができるレジスト下層膜形成方法、微細化したパターン転写時においても曲がらない下層膜及びその形成方法、並びにパターン形成方法を提供する。
【解決手段】(A)芳香環を含む樹脂と、(B)一般式(i)で表される化合物と、を含む組成物によってレジスト下層膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト下層膜形成方法、パターン形成方法、および組成物、レジスト下層膜形成材料用添加剤、架橋剤並びにレジスト下層膜に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造方法においては、より高い集積度を得るために、多層レジストプロセスを用いる加工サイズの微細化が進んでいる。このプロセスにおいては、まず液状のレジスト下層膜形成用樹脂組成物を基板上に塗布した後、液状のフォトレジスト組成物を更に塗布する。次いで、縮小投影露光装置(ステッパー)によってマスクパターンを転写し、適当な現像液で現像することによりフォトレジストパターンを得る。引き続きドライエッチングによりこのパターンをレジスト下層膜に転写する。最後にドライエッチングによりレジスト下層膜パターンを基板に転写することにより所望のパターン付き基板を得ることができる。この際、レジスト下層膜を1種類用いる多層プロセスを2層レジストプロセスと呼び、2種類用いる場合を3層レジストプロセスと呼ぶことがある。
【0003】
一般にレジスト下層膜は、基板から反射した放射線を吸収する反射防止膜としての機能を有する。また、一般に基板直上のレジスト下層膜は炭素含有量の多い材料が用いられる。炭素含有量が多いと基板加工時のエッチング選択性が向上し、より正確なパターン転写が可能となる。このような下層膜としては、特に熱硬化フェノールノボラックがよく知られている。また、アセナフチレン系の重合体を含有する組成物が下層膜として良好な特性を示すことが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−143937号公報
【特許文献2】特開2001−40293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、エッチングパターンの更なる微細化に伴い、レジスト下層膜のオーバーエッチングが大きな問題となり、精密なパターン転写性能及びエッチング耐性の向上が求められているのが現状である。特に、微細なパターン転写時においては、レジスト下層膜をフォトマスクとして基板加工する際に、レジスト下層膜のパターンが曲がらないことが求められている。
【0006】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、反射防止膜としての機能を有すると共にパターン転写性能及びエッチング耐性が良好なレジスト下層膜を形成することができるレジスト下層膜形成方法、微細化したパターン転写時においても曲がらないパターン形成方法、およびこのようなレジスト下層膜の形成に好適に用いることができる組成物、さらにはレジスト下層膜形成用材料に対する添加剤や架橋剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有する化合物を添加した組成物によってレジスト下層膜を形成することにより上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレジスト下層膜形成方法によれば、反射防止膜としての機能を有すると共にパターン転写性能及びエッチング耐性が良好なレジスト下層膜を容易に形成することができる。また、本発明のレジスト下層膜形成方法によって得られるレジスト下層膜は、エッチング耐性に優れており、且つ被加工基板をエッチングする際、転写するパターンが微細であっても下層膜パターンが折れ曲がり難い。そのため、このレジスト下層膜は、ドライエッチングプロセスにおいて、精密なパターン転写性能及び良好なエッチング選択性を有することになり、レジスト下層膜のオーバーエッチングが少なく、被加工基板にレジストパターンを再現性よく忠実に転写することができる。更に、被加工基板をエッチングする際に、下層膜パターンが折れ曲がらないため、リソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造において歩留りの向上が期待できる。また、本発明のパターン形成方法によれば、被加工基板にレジストパターンを再現性よく忠実に転写することができる。更に、本発明の組成物によれば、被加工基板上に、エッチング耐性に優れ、且つ被加工基板をエッチングする際に下層膜パターンが折れ曲がり難いレジスト下層膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
[1]レジスト下層膜の形成方法
本発明のレジスト下層膜の形成方法は、(A)芳香環を含む樹脂(以下、「樹脂(A)」ともいう。)と、(B)特定の構造を有する化合物(以下、「化合物(B)」ともいう。)を含む組成物を被加工基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、得られた塗膜を前記被加工基板と共に加熱して、被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程と、を備える。尚、組成物については後述する。
【0010】
前記被加工基板としては、例えば、シリコンウェハー、アルミニウムで被覆したウェハー等を使用することができる。
また、被加工基板への組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の方法で実施することができる。
【0011】
また、前記塗膜の加熱は、通常、大気下で行われる。
この際の加熱温度は、通常、150〜500℃であり、好ましくは180〜350℃程度である。
この際の加熱時間は30〜1200秒であり、好ましくは60〜600秒である。
【0012】
更に、塗膜硬化時の酸素濃度は5容量%以上であることが望ましい。塗膜形成時の酸素濃度が低い場合、下層膜の酸化架橋が十分に進行せず、下層膜として必要な特性が発現できないおそれがある。
【0013】
また、塗膜を300〜500℃の温度で加熱する前に、60〜250℃の温度で予備加熱しておいてもよい。
予備加熱における加熱時間は特に限定されないが、10〜300秒であることが好ましく、より好ましくは30〜180秒である。
この予備加熱を行うことにより、溶剤を予め気化させて、膜を緻密にしておくことで、脱水素反応を効率良く進めることができる。
【0014】
また、本発明のレジスト下層膜の形成方法においては、通常、前記塗膜の加熱により塗膜が硬化され、レジスト下層膜が形成されるが、樹脂(A)と化合物(B)とを含む組成物に所定の光硬化剤(架橋剤)を含有させることにより、加熱された塗膜に対する露光工程を設けて、光硬化させ、レジスト下層膜を形成することもできる。この際に露光される放射線は、組成物に配合されている酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択される。
【0015】
[2]パターン形成方法
本発明のパターン形成方法は、(1)被加工基板上に、樹脂(A)と化合物(B)とを含む組成物によってレジスト下層膜を形成するレジスト下層膜形成工程(以下、「工程(1)」ともいう。)と、(2)前記レジスト下層膜が形成された被加工基板に、レジスト組成物を塗布してレジスト被膜を形成するレジスト被膜形成工程(以下、「工程(2)」ともいう。)と、(3)前記レジスト被膜に、選択的に放射線を照射して、該レジスト被膜を露光する露光工程(以下、「工程(3)」ともいう。)と、(4)露光された前記レジスト被膜を現像して、レジストパターンを形成するレジストパターン形成工程(以下、「工程(4)」ともいう。)と、(5)前記レジストパターンをマスクとして用い、前記レジスト下層膜及び前記被加工基板をドライエッチングして、該被加工基板に所定のパターンを形成するパターン形成工程(以下、「工程(5)」ともいう。)と、を備える。
【0016】
前記工程(1)では、被加工基板上にレジスト下層膜が形成される。尚、このレジスト下層膜の形成方法については、前述の説明をそのまま適用することができる。
この工程(1)で形成されるレジスト下層膜の膜厚は、通常、0.1〜5μmである。
【0017】
また、このパターン形成方法においては、前記工程(1)の後に、必要に応じて、レジスト下層膜上に中間層(中間被膜)を形成する工程(1’)を更に備えていてもよい。
この中間層は、レジストパターン形成において、レジスト下層膜及び/又はレジスト被膜が有する機能を更に補ったり、これらが有していない機能を得るために、これらの機能が付与された層のことである。例えば、反射防止膜を中間層として形成した場合、レジスト下層膜の反射防止機能を更に補うことができる。
【0018】
この中間層は、有機化合物や無機酸化物により形成することができる。有機化合物としては、例えば、塗布型反射防止膜を用いることができる。また、無機酸化物としては、例えば、塗布型スピンオングラスやCVD法により形成されるポリシロキサン、酸化チタン、酸化アルミナ、酸化タングステン等を用いることができる。
【0019】
中間層を形成するための方法は特に限定されないが、例えば、塗布法やCVD法等を用いることができる。これらのなかでも、塗布法が好ましい。塗布法を用いた場合、レジスト下層膜を形成後、中間層を連続して形成することができる。
また、中間層の膜厚は特に限定されず、中間層に求められる機能に応じて適宜選択されるが、10〜3000nmの範囲が好ましく、更に好ましくは20〜300nmである。

【0020】
前記工程(2)では、レジスト組成物を用いて、レジスト下層膜が形成された被加工基板にレジスト被膜が形成される。具体的には、得られるレジスト被膜が所定の膜厚となるようにレジスト組成物を塗布した後、プレベークすることによって塗膜中の溶剤を揮発させ、レジスト被膜が形成される。
レジスト組成物としては、例えば、光酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等が挙げられる。
このようなレジスト組成物は、固形分濃度が、通常、5〜50質量%程度であり、一般に、例えば、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過して、レジスト被膜の形成に供される。尚、この工程では、市販のレジスト組成物をそのまま使用することもできる。
【0021】
レジスト組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、スピンコート法等により実施することができる。
また、プレベークの温度は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、通常、30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃である。
【0022】
前記工程(3)では、得られたレジスト被膜の所定領域に放射線が照射され、選択的に露光が行われる。
露光に用いられる放射線としては、レジスト組成物に使用される光酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択されるが、遠紫外線であることが好ましく、特にKrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(波長157nm)、Krエキシマレーザー(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー(波長134nm)、極紫外線(波長13nm等)等が好ましい。
尚、本発明におけるレジストパターン形成方法は、ナノインプリント法等の現像工程を経ないものであってもよい。
【0023】
前記工程(4)では、露光後のレジスト被膜を現像液で現像することで、レジストパターンが形成される。
この工程で用いられる現像液は、使用されるレジスト組成物の種類に応じて適宜選択される。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液が挙げられる。
また、これらのアルカリ性水溶液には、水溶性有機溶剤、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加することもできる。
【0024】
また、前記現像液での現像後、洗浄し、乾燥することによって、所定のレジストパターンが形成される。
尚、この工程では、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、現像前の前記露光後に、ポストベークを行うことができる。このポストベークの温度は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、通常、50〜200℃程度、好ましくは70〜150℃である。
【0025】
前記工程(5)では、得られたレジストパターンをマスクとし、例えば、酸素プラズマ等のガスプラズマを用いて、レジスト下層膜のドライエッチングを行うことにより、所定の基板加工用のレジストパターンが得られる。
【0026】
[3]組成物
本発明の組成物は、樹脂(A)と化合物(B)とを含むものである。このような組成物は、レジスト下層膜の形成に特に有効である。
【0027】
[樹脂(A)]
前記樹脂(A)としては、例えば、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、スチレン樹脂、アセナフチレン系樹脂、フラーレン骨格を有する樹脂、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
ノボラック樹脂の具体例としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ビスフェノールA、パラターシャリーブチルフェノール、パラオクチルフェノール等のフェノール類、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類からなる群より選ばれる1種又は2種以上のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、及びトリオキサン等のアルデヒド源のうちの1種又は2種以上のアルデヒド類と、を酸性触媒を用いて反応させて得られる樹脂が挙げられる。
このような樹脂としては、例えば、下記一般式(a1)や一般式(a2)で表されるもの等が挙げられる。
【0028】
【化1】

〔一般式(a1)及び(a2)において、R21及びR22は、相互に独立に、ヒドロキシル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルコキシル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、置換若しくは非置換の炭素数6〜14のアリール基、置換若しくは非置換のグリシジルエーテル基、又は、置換若しくは非置換のアルキルグリシジルエーテル基(但し、アルキル部位の炭素数は1〜6である。)を示す。m2は0〜6の整数である。但し、m2が2〜6の整数である場合には、複数のR21は同一でも異なっていてもよい。m3は0〜4の整数である。但し、m3が2〜4の整数である場合には、複数のR22は同一でも異なっていてもよい。Zは、メチレン基、置換若しくは非置換の炭素数2〜20のアルキレン基、置換若しくは非置換の炭素数6〜14のアリーレン基、又は置換若しくは非置換のアルキレンエーテル基を示す。m1は1〜8の整数である。m1が2〜8の整数である場合には、複数のZは同一でも異なっていてもよい。また、m1〜m3は、1≦m1+m2≦8、1≦m1+m3≦8を満たす。〕
【0029】
一般式(a1)及び(a2)のR21及びR22における非置換の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0030】
21及びR22における非置換の炭素数1〜6のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基、2−プロピニルオキシ基等が挙げられる。
【0031】
21及びR22における非置換の炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0032】
21及びR22における非置換の炭素数6〜14のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0033】
21及びR22における非置換のアルキルグリシジルエーテル基としては、例えば、メチルグリシジルエーテル基、エチルグリシジルエーテル基、プロピルグリシジルエーテル基、ブチルグリシジルエーテル基等が挙げられる。
【0034】
また、一般式(a1)及び(a2)のZにおける非置換の炭素数2〜20のアルキレン基としては、例えば、エチレン基;1,3−プロピレン基、1,2−プロピレン基等のプロピレン基;テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基等が挙げられる。
【0035】
Zにおける非置換の炭素数6〜14のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等が挙げられる。
【0036】
Zにおけるアルキレンエーテル基のアルキレン部位の炭素数は2〜20であることが好ましい。具体的なアルキレンエーテル基としては、例えば、エチレンエーテル基;1,3−プロピレンエーテル基、1,2−プロピレンエーテル基等のプロピレンエーテル基;テトラメチレンエーテル基、ペンタメチレンエーテル基、ヘキサメチレンエーテル基等が挙げられる。
【0037】
また、一般式(a1)及び(a2)における、R21、R22及びZは、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜22のアリール基等が挙げられる。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。等が挙げられる。
また、前記炭素数1〜9のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
更に、前記炭素数6〜22のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0038】
レゾール樹脂の具体例としては、上述のフェノール性化合物と、上述のアルデヒド類とをアルカリ性触媒を用いて反応させて得られる樹脂が挙げられる。
【0039】
アセナフチレン系樹脂としては、例えば、下記一般式(a3)で表される繰り返し単位や、下記一般式(a4)で表される繰り返し単位を含むもの等が挙げられる。
【0040】
【化2】

〔一般式(a3)及び(a4)において、R23及びR24は、相互に独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルコキシル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、又は、置換若しくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。R25は水素原子、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルキル基、置換若しくは非置換の炭素数1〜6のアルコキシル基、置換若しくは非置換の炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、又は、置換若しくは非置換の炭素数6〜14のアリール基を示す。〕
【0041】
一般式(a3)及び(a4)のR23〜R25における非置換の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0042】
23〜R25における非置換の炭素数1〜6のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0043】
23〜R25における非置換の炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2−メチルプロポキシカルボニル基、1−メチルプロポキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0044】
23〜R25における非置換の炭素数6〜14のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0045】
また、一般式(a3)及び(a4)のR23及びR24におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0046】
また、一般式(a3)及び(a4)における、R23〜R25は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数6〜22のアリール基等が挙げられる。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。等が挙げられる。
また、前記炭素数1〜9のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
更に、前記炭素数6〜22のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0047】
このような樹脂は、アセナフチレン骨格を有する化合物の重合体に、酸性条件下でパラホルムアルデヒドを反応させる等して得ることができる。
【0048】
スチレン樹脂又はこの誘導体としては、例えば、下記一般式(a5)で表される構成のものが挙げられる。
【0049】
【化3】

〔一般式(a5)において、Mはラジカル重合性の単量体を示す。mは正の数であり、nは0又は正の数であり、5≦m+n≦200、m/(m+n)≧0.5を満たす。R31及びR32は、相互に独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基、酸素原子、アリール基、又はエステル基を示す。〕
【0050】
一般式(a5)におけるラジカル重合性の単量体は特に限定されず、種々の重合性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド等のアクリル系単量体、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、無水マレイン酸、酢酸ビニル、ビニルピリジン等が挙げられる。尚、本明細書中における「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
【0051】
一般式(a5)におけるR31及びR32におけるアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
また、R31及びR32におけるアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が挙げられる。具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
尚、R31及びR32は、それぞれ、主鎖に対してパラ位、オルソ位又はメタ位をとる。
【0052】
また、一般式(a5)における共重合成分であるM(ラジカル重合性の単量体)に由来する構成単位は、重合体を構成する構成単位の合計を100モル%とした場合に、50モル%未満であることが好ましい。
【0053】
このようなスチレン樹脂又はこの誘導体(特にポリビニルフェノール系の重合体)としては、市販品を用いることもでき、例えば、丸善石油化学製の「マルカリンカーM」(ポリ−p−ビニルフェノール)、「リンカーMB」(臭素化ポリ−p−ビニルフェノール)、「リンカーCMM」(p−ビニルフェノール/メタクリル酸メチル共重合体)、「リンカーCHM」(p−ビニルフェノール/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体)、「リンカーCST」(p−ビニルフェノール/スチレン共重合体)等が挙げられる。
【0054】
また、樹脂(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)は、500〜100,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜50,000、更に好ましくは1,200〜40,000である。
更に、重合体(A)のMwと、GPCで測定したポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」ともいう)との比(Mw/Mn)は、通常1〜5であり、より好ましくは1〜3である。
【0055】
また、本発明の組成物は、樹脂(A)を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
【0056】
[化合物(B)]
前記化合物(B)は、下記一般式(i)で表されるものである。
本発明の組成物は、この化合物(B)と樹脂(A)とが、脱水素反応を伴う酸化架橋反応を起こす事により、材料全体の水素含有量が低下すると共に、硬化性が上昇すると考えられる。このため、形成されたレジスト下層膜の曲がり耐性が向上するものと考えられる。従って、化合物(B)はレジスト下層膜形成材料用の添加剤として有効である。さらに、化合物(B)のこのような働きから、架橋剤として有効である。
【0057】
【化4】

一般式(i)において、Rはそれぞれ独立に水素原子、RまたはRを示し、Rのうち少なくとも2つはRである。Rは炭素数2〜13のアルキルエステル基、炭素数7〜13のアリールエステル基、ヒドロキシメチル基、炭素数2〜13のアルコキシメチル基、炭素数7〜13のアリーロキシメチル基、または炭素数3〜14のアシロキシメチル基を示し、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Rはヒドロキシル基、炭素数1〜9のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基を示し、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0058】
一般式(i)のRにおける炭素数2〜13のアルキルエステル基としては、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、n−プロピルエステル基、i−プロピルエステル基、n−ブチルエステル基、2−メチルプロピルエステル基、1−メチルプロピル基、t−ブチルエステル基、ペンチルエステル基、ヘキシルエステル基、ヘプチルエステル基、オクチルエステル基、ノニルエステル基、デシルエステル基、ウンデシルエステル基、ドデシルエステル基等が挙げられる。
【0059】
一般式(i)のRにおける炭素数2〜13のアリールエステル基としては、例えば、フェニルエステル基、ナフチルエステル基等が挙げられる。
【0060】
一般式(i)のRにおける炭素数2〜13のアルコキシメチル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシエチル基、n−プロポキシメチル基、i−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、2−メチルプロポキシメチル基、1−メチルプロポキシメチル基、t−ブトキシメチル基、ペンチルオキシメチル基、ヘキシルオキシメチル基、ヘプチルオキシメチル基、オクチルオキシメチル基、ノニルオキシメチル基、デシルオキシメチル基、ウンデシルオキシメチル基、ドデシルオキシメチル基等が挙げられる。
【0061】
一般式(i)のRにおける炭素数3〜14のアシロキシメチル基としては、例えば、アセトキシメチル基、プロピオニロキシメチル基、ブチロキシメチル基、i−ブチロキシメチル基、ペンタノイロキシメチル基、ヘキサノイロキシメチル基、ヘプタノイロキシメチル基、オクタノイロキシメチル基、ノナノイロキシメチル基、デカノイロキシメチル基、ウンデカノイロキシメチル基、ドデカノイロキシメチル基、ベンゾイロキシメチル基等が挙げられる。
【0062】
一般式(i)中、Rのうち少なくとも2つはRであり、好ましくはRのうち4つがRである。
【0063】
一般式(i)のRにおける炭素数1〜9のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
また、Rにおける炭素数6〜30のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等が挙げられる。
【0064】
上述の構造を有する化合物(B)としては、例えば、下記一般式(b1−1)で表される化合物や、下記一般式(b2−1)で表される化合物等を挙げることが出来る。
【0065】
【化5】

〔一般式(b1−1)において、n21〜n24はそれぞれ独立に1〜3の整数を示す。n31〜n34はそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。また、1≦n21+n31≦3、1≦n22+32≦3、1≦n23+33≦3、1≦n24+34≦3である。Rは炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示し、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Rはヒドロキシル基、炭素数1〜9のアルキル基、又は炭素数6〜30のアリール基を示し、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕
【0066】
【化6】

〔一般式(b2−1)において、n41〜n44はそれぞれ独立に1〜3の整数を示す。n31〜n34はそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。また、1≦n41+n31≦3、1≦n42+32≦3、1≦n43+33≦3、1≦n44+34≦3である。Rはヒドロキシル基、炭素数1〜9のアルキル基、又は炭素数6〜30のアリール基を示し、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Rは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜13のアシル基を示し、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕
【0067】
一般式(b1−1)のRにおける炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
また、Rにおける炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等が挙げられる。
【0068】
一般式(b1−1)のRとしては、上述の一般式(i)におけるRの説明を適用することができる。
【0069】
一般式(b1−1)のn21、n22、n23およびn24はそれぞれ独立に1〜3の整数であり、1〜2の整数であることがより好ましい。
また、n31、n32、n33およびn34はそれぞれ独立に0〜2の整数であり、0〜1の整数であることがより好ましい。
更に、1≦n21+n31≦3、1≦n22+32≦3、1≦n23+33≦3、1≦n24+34≦3であり、1≦n21+n31≦2、1≦n22+32≦2、1≦n23+33≦2、1≦n24+34≦2であることがより好ましい。
【0070】
一般式(b2−1)のRとしては、上述の一般式(i)におけるRの説明を適用することができる。
【0071】
一般式(b2−1)のRにおける炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0072】
一般式(b2−1)のRにおける炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等が挙げられる。
【0073】
一般式(b2−1)のRにおける炭素数2〜13のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、n−ブチリル基、i−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0074】
一般式(b2−1)のnは0〜2の整数であり、0〜1の整数であることがより好ましい。
また、nは1〜3の整数であり、1〜2の整数であることがより好ましい。
更に、1≦n41+n31≦3、1≦n42+32≦3、1≦n43+33≦3、1≦n44+34≦3であり、1≦n41+n31≦2、1≦n42+32≦2、1≦n43+33≦2、1≦n44+34≦2であることがより好ましい。
【0075】
また、化合物(B)は、下記一般式(b1−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0076】
【化7】

〔一般式(b1−2)において、Rは、相互に独立して、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示す。〕
【0077】
一般式(b1−2)のRにおける炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
また、Rにおける炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等が挙げられる。
【0078】
特に、化合物(B)は、下記一般式(b2−2)又は(b2−3)で表される化合物であることが好ましい。
【0079】
【化8】

〔一般式(b2−2)において、Rは、相互に独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示す。〕
【0080】
【化9】

〔一般式(b2−3)において、Rは、相互に独立して、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示す。〕
【0081】
一般式(b2−2)のRにおける炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
また、Rにおける炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等が挙げられる。
【0082】
一般式(b2−3)のRにおける炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
また、Rにおける炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基等が挙げられる。
【0083】
ここで、具体的な化合物(B)としては、例えば、ペリレンー3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラメチル、ペリレンー3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラエチル、ペリレンー3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラn−プロピル、ペリレンー3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラi−プロピル、ペリレンー3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラn−ブチル、ペリレンー3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラキス(2−メチルプロピル)、ペリレンー3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラキス(1−メチルプロピル)、ペリレンー3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラt−ブチル、ペリレンー3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラペンチル、ペリレンー3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラヘキシル、ペリレンー3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラヘプチル、ペリレンー3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラオクチル、ペリレンー3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラノニル、ペリレンー3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラデシル、ペリレンー3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラウンデシル、ペリレンー3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラドデシル等のペリレンテトラカルボン酸テトラエステル類;
【0084】
3,4,9,10−テトラキス(メトキシメチル)ペリレン、3,4,9,10−テトラキス(エトキシメチル)ペリレン、3,4,9,10−テトラキス(n−プロポキシメチル)ペリレン、3,4,9,10−テトラキス(i−プロポキシメチル)ペリレン、3,4,9,10−テトラキス(n−ブトキシメチル)ペリレン、3,4,9,10−テトラキス(2−メチルプロポキシメチル)ペリレン、3,4,9,10−テトラキス(1−メチルプロポキシメチル)ペリレン、3,4,9,10−テトラキス(t−ブトキシメチル)ペリレン、3,4,9,10−テトラキス(ペンチルオキシメチル)ペリレン、3,4,9,10−テトラキス(ヘキシルオキシメチル)ペリレン、3,4,9,10−テトラキス(ヘプチルオキシメチル)ペリレン、3,4,9,10−テトラキス(オクチルオキシメチル)ペリレン、3,4,9,10−テトラキス(ノニルオキシメチル)ペリレン、3,4,9,10−テトラキス(デシルオキシメチル)ペリレン、3,4,9,10−テトラキス(ウンデシルオキシメチル)ペリレン、3,4,9,10−テトラキス(ドデシルオキシメチル)ペリレン等のテトラキス(アルコキシメチル)ペリレン類;
【0085】
ペリレン−3,4,9,10−テトライルテトラキス(メチレン)テトラアセテート、ペリレン−3,4,9,10−テトライルテトラキス(メチレン)テトラプロピオネート、ペリレン−3,4,9,10−テトライルテトラキス(メチレン)テトラn−ブチレート、ペリレン−3,4,9,10−テトライルテトラキス(メチレン)テトラi−ブチレート、ペリレン−3,4,9,10−テトライルテトラキス(メチレン)テトラペンタノエート、ペリレン−3,4,9,10−テトライルテトラキス(メチレン)テトラヘキサノエート、ペリレン−3,4,9,10−テトライルテトラキス(メチレン)テトラヘプタノエート、ペリレン−3,4,9,10−テトライルテトラキス(メチレン)テトラオクタノエート、ペリレン−3,4,9,10−テトライルテトラキス(メチレン)テトラノナノエート、ペリレン−3,4,9,10−テトライルテトラキス(メチレン)テトラデカノエート、ペリレン−3,4,9,10−テトライルテトラキス(メチレン)テトラウンデカノエート、ペリレン−3,4,9,10−テトライルテトラキス(メチレン)テトラドデカノエート、ペリレン−3,4,9,10−テトライルテトラキス(メチレン)テトラベンゾエート等のペリレンテトライルテトラキス(メチレン)カルボキシレート類等が挙げられる。
【0086】
これらの化合物(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
化合物(B)の配合量は、組成物の樹脂(A)100質量部当たり、通常、0.1質量部以上500質量部以下、好ましくは1質量部以上100質量部以下である。
【0088】
[他の架橋剤]
本発明の組成物には、上述の化合物(B)以外に他の架橋剤が配合されていてもよい。
他の架橋剤としては、例えば、多核フェノール類や、種々の市販の硬化剤等が挙げられる。このような他の架橋剤としては、例えば、特開2004−168748号公報における段落[0085]〜[0086]に記載のもの等を用いることができる。
これらの他の架橋剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、多核フェノール類と硬化剤とを併用することもできる。
【0089】
他の架橋剤の配合量は、組成物の樹脂(A)100質量部当たり、通常、0.1質量部以上500質量部以下、好ましくは1質量部以上100質量部以下である。
【0090】
[(C)溶剤]
本発明の組成物は、上述の樹脂(A)及び化合物(B)を含むものであるが、この組成物は、通常、樹脂(A)及び化合物(B)を溶解する溶剤(以下、「溶剤(C)」ともいう)を含む液状の組成物である。
溶剤(C)としては、樹脂(A)及び化合物(B)を溶解しうるものであれば特に限定されないが、例えば、特開2004−168748号公報における段落[0070]〜[0073]に記載のもの等を用いることができる。
【0091】
これらの溶剤(C)のなかでも、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、酢酸n−ブチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル;2−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、シメン等の芳香族炭化水素類;γ−ブチロラクトン等が好ましい。
尚、溶剤(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
溶剤(C)の使用量は、得られる組成物の固形分濃度が、通常1〜80質量%、好ましくは3〜40質量%、更に好ましくは5〜30質量%となる範囲である。
【0093】
本発明の組成物には、本発明における所期の効果を損なわない限り、必要に応じて、酸発生剤(D)、促進剤(E)、添加剤(F)を配合することができる。これらのなかでも、促進剤(E)が配合されていることが好ましい。
【0094】
[酸発生剤(D)]
前記酸発生剤(D)は、露光或いは加熱により酸を発生する成分である。本発明の組成物は、この酸発生剤(D)を含有することにより、常温を含む比較的低温で樹脂の分子鎖間により有効に架橋反応を生起させることが可能となる。
露光により酸を発生する酸発生剤(以下、「光酸発生剤」という。)としては、例えば、特開2004−168748号公報における段落[0077]〜[0081]に記載のもの等を用いることができる。
【0095】
これらの光酸発生剤のなかでも、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムナフタレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムナフタレンスルホネート等が好ましい。
尚、これらの光酸発生剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
また、加熱により酸を発生する酸発生剤(以下、「熱酸発生剤」という。)としては、例えば、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、アルキルスルホネート類等を挙げることができる。
尚、これらの熱酸発生剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、酸発生剤(D)として、光酸発生剤と熱酸発生剤とを併用してもよい。
【0097】
酸発生剤(D)の配合量は、組成物の樹脂(A)100質量部当たり、通常、5000質量部以下、好ましくは0.1〜1000質量部、更に好ましくは0.1〜100質量部である。
【0098】
[促進剤(E)]
前記促進剤(E)は、酸化架橋に必要な脱水素反応を十分に引き起こすための一電子酸化剤等を示す。一電子酸化剤とは、それ自身が1電子移動を受ける酸化剤を意味する。例えば、硝酸セリウム(IV)アンモニウムの場合では、セリウムイオン(IV)が一電子を得てセリウムイオン(III)へと変化する。また、ハロゲン等のラジカル性の酸化剤は、一電子を得てアニオンへと転化する。このように、一電子を被酸化物(基質や触媒等)から奪うことにより、被酸化物を酸化する現象を一電子酸化と称し、この時一電子を受け取る成分を一電子酸化剤とよぶ。
一電子酸化剤の代表的な例として、(a)金属化合物、(b)過酸化物、(c)ジアゾ化合物、(d)ハロゲン又はハロゲン酸等が挙げられる。
【0099】
前記(a)金属化合物としては、例えば、セリウム、鉛、銀、マンガン、オスミウム、ルテニウム、バナジウム、タリウム、銅、鉄、ビスマス、ニッケルを含む金属化合物が挙げられる。具体的には、(a1)硝酸セリウム(IV)アンモニウム(CAN;ヘキサニトラトセリウム(IV)酸アンモニウム)、酢酸セリウム(IV)、硝酸セリウム(IV)、硫酸セリウム(IV)等のセリウム塩(例えば、四価のセリウム塩)、(a2)四酢酸鉛、酸化鉛(IV)等の鉛化合物(例えば、四価の鉛化合物)、(a3)酸化銀(I)、酸化銀(II)、炭酸銀(Fetizon試薬)、硝酸銀等の銀化合物、(a4)過マンガン酸塩、活性二酸化マンガン、マンガン(III)塩等のマンガン化合物、(a5)四酸化オスミウム等のオスミウム化合物、(a6)四酸化ルテニウム等のルテニウム化合物、(a7)VOCl、VOF、V、NHVO、NaVO等のバナジウム化合物、(a8)酢酸タリウム(III)、トリフルオロ酢酸タリウム(III)、硝酸タリウム(III)等のタリウム化合物、(a9)酢酸銅(II)、銅(II)トリフルオロメタンスルホネート、銅(II)トリフルオロボレート、塩化銅(II)、酢酸銅(I)等の銅化合物、(a10)塩化鉄(III)、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム等の鉄化合物、(a11)ビスマス酸ナトリウム等のビスマス化合物、(a12)過酸化ニッケル等のニッケル化合物等が挙げられる。
【0100】
前記(b)過酸化物としては、例えば、過酢酸、m−クロロ過安息香酸等の過酸;過酸化水素や、t−ブチルヒドロペルオキシド等のアルキルヒドロキシペルオキシド等のヒドロキシペルオキシド類;過酸化ジアシル、過酸エステル、過酸ケタール、ペルオキシ二炭酸塩、過酸化ジアルキル、過酸ケトン等が挙げられる。
前記(c)ジアゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
前記(d)ハロゲン又はハロゲン酸としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲンや、過ハロゲン酸、ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、次亜ハロゲン酸及びこれらの塩等が挙げられる。尚、ハロゲン酸におけるハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。また、ハロゲン酸若しくはその塩となる具体的な化合物としては、過塩素酸ナトリウム、臭素酸ナトリム等が挙げられる。
【0101】
これらの一電子酸化剤のなかでも、(b)過酸化物、(c)ジアゾ化合物が好ましく、特に、m−クロロ過安息香酸、t−ブチルヒドロペルオキシド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルが好ましい。これらを用いた場合には、基板上に金属残留物等が付着するおそれがないので好ましい。
尚、これらの一電子酸化剤等の促進剤(E)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
促進剤(E)の配合量は、組成物の樹脂(A)100質量部当たり、通常、1000質量部以下、好ましくは0.01〜500質量部、更に好ましくは0.1〜100質量部である。
【0103】
[添加剤(F)]
前記添加剤(F)としては、バインダー樹脂、放射線吸収剤、界面活性剤等が挙げられる。
これらの添加剤(F)としては、例えば、特開2004−168748号公報における段落[0088]〜[0093]に記載のもの等を用いることができる。
バインダー樹脂としては、種々の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂(上述の樹脂(A)を除く)を使用することができる。熱可塑性樹脂は、添加した熱可塑性樹脂の流動性や機械的特性等を下層膜に付与する作用を有する成分である。また、熱硬化性樹脂は、加熱により硬化して溶剤に不溶となり、得られるレジスト下層膜と、その上に形成されるレジスト被膜との間のインターミキシングを防止する作用を有する成分であり、バインダー樹脂として好ましく使用することができる。これらのなかでも、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類等の熱硬化性樹脂が好ましい。
尚、これらのバインダー樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
バインダー樹脂の配合量は、組成物における樹脂(A)100質量部当たり、通常、20質量部以下、好ましくは10質量部以下である。
【0105】
前記放射線吸収剤の配合量は、組成物の樹脂(A)100質量部当たり、通常、100質量部以下、好ましくは50質量部以下である。
【0106】
前記界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、ぬれ性、現像性等を改良する作用を有する成分である。
これらの界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
界面活性剤の配合量は、組成物の樹脂(A)100質量部当たり、通常、15質量部以下、好ましくは10質量部以下である。
【0108】
また、本発明における組成物には、上述の添加剤以外にも、例えば、保存安定剤、消泡剤、接着助剤等の他の添加剤を配合することができる。
【0109】
[4]レジスト下層膜
本発明のレジスト下層膜は、樹脂(A)と化合物(B)とを含む組成物によって形成されるものである。尚、組成物については、前述の本発明の組成物の説明をそのまま適用することができる。
このレジスト下層膜は、被加工基板上にレジスト下層膜を形成し、レジスト下層膜上にレジストパターンを形成後、レジストパターンを一旦、レジスト下層膜に転写して下層膜パターンを形成した後、この下層膜パターンをエッチングマスクとして用いて被加工基板に転写する多層レジストプロセスに好適に用いることができる。
【0110】
レジスト下層膜の水素含量は0〜50atom%であり、0〜35atom%であることが好ましい。尚、レジスト下層膜における水素含量の測定方法は、後述する実施例と同様である。
このようなレジスト下層膜を形成する方法は特に限定されないが、例えば、後述の本発明のレジスト下層膜の形成方法等により得ることができる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。ここで、「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。
【0112】
[1]芳香環を含む樹脂の合成
<合成例1>
コンデンサー、温度計、撹拌装置を備えた反応装置に2,7−ジヒドロキシナフタレン100部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、パラホルムアルデヒド50部を仕込み、蓚酸2部を添加し、脱水しながら120℃に昇温して、5時間反応させた後、下記構成単位を有する樹脂(A−1)を得た。
また、得られた樹脂(A−1)の重量平均分子量(Mw)は3,000であった。
【0113】
【化10】

【0114】
尚、本実施例における重量平均分子量(Mw)の測定は、東ソー社製「GPCカラム」(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本)を用い、流量:1.0ml/分、溶出溶剤:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフ(検出器:示差屈折計)により測定した。
【0115】
<合成例2>
コンデンサー、温度計、拡販装置を備えた反応装置にフェノール100部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、パラホルムアルデヒド50部を仕込み、蓚酸2部を添加し、脱水しながら120℃に昇温して、5時間反応させた後、下記構成単位を有する樹脂(A−2)を得た。
また、得られた樹脂(A−2)の重量平均分子量(Mw)は7,000であった。
【0116】
【化11】

【0117】
<合成例3>
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素下で、アセナフチレン100部、トルエン78部、ジオキサン52部、アゾビスイソブチロニトリル3部を仕込み、70℃で5時間撹拌した。ここで得られた分子量10,000の樹脂に、p−トルエンスルホン酸1水和物5.2部、パラホルムアルデヒド40部を添加して、120℃に昇温し、更に6時間撹拌した。その後、反応溶液を多量のイソプロパノール中に投入し、沈殿した樹脂をろ過して、樹脂(A−3)を得た。
また、得られた樹脂(A−3)の重量平均分子量(Mw)は20,000であった。
【0118】
[2]組成物の調製
(2−1)実施例1〜9
<実施例1>
表1に示すように、上述の樹脂(A−1)10部を、架橋剤[ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸テトラメチル(下記化合物(B−1))]1部、熱酸発生剤[ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート(C−1)]0.1部、溶剤[プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(D−1)]90部に溶解した。この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して、実施例1の組成物を調製した。
【0119】
<実施例2〜14>
表1に示す組成及び配合量としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜9の各組成物を調製した。
【0120】
尚、表1における実施例2〜3で用いられている樹脂(A−2)〜(A−3)は、上述の合成例2〜3で得られた樹脂である。また、表1における架橋剤(B−1)〜(B−7)の詳細は以下の通りである。
【0121】
【化12】

【0122】
【化13】

【0123】
(2−2)比較例1〜3
<比較例1>
表1に示すように、上述の樹脂(A−1)10部を、架橋剤[1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(下記化合物(b−1))]1部、熱酸発生剤[ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート(C−1)]0.1部、溶剤[プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(D−1)]90部に溶解した。この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して、比較例1の組成物を調製した。
【0124】
<比較例2〜3>
表1に示す組成及び配合量としたこと以外は、比較例1と同様にして、比較例2及び3の各組成物を調製した。
【0125】
尚、表1における他の架橋剤(b−1)〜(b−3)の詳細は以下の通りである。
【0126】
【化14】

【0127】
【表1】

【0128】
[3]組成物の評価
実施例1〜14及び比較例1〜3の各組成物について、下記の評価を行った。その結果を表2に示す。
【0129】
<基板加工後のパターン形状>
直径8インチのシリコンウェハー上に、実施例及び比較例の各組成物をスピンコートした後、酸素濃度20容量%のホットプレート内にて180℃で60秒間加熱し、引き続き、350℃で120秒間加熱して、膜厚0.3μmのレジスト下層膜を形成した。
その後、得られたレジスト下層膜上に3層レジストプロセス用スピンオングラス組成物溶液(JSR(株)製)をスピンコートし、200℃及び300℃のホットプレート上でそれぞれ60秒間加熱して、膜厚0.05μmの中間層被膜を形成した。次いで、得られた中間層被膜上に、ArF用レジスト組成物溶液[アクリル系ArF用フォトレジスト、JSR(株)製]をスピンコートし、130℃のホットプレート上で90秒間プレベークして、膜厚0.2μmのレジスト被膜を形成した。その後、NIKON社製ArFエキシマレーザー液浸露光装置「S610C」(レンズ開口数1.3、露光波長193nm)を用い、マスクパターンを介して、40nmのラインアンドスペースパターン(1L/1S)を形成するように最適露光時間だけ露光した。次いで、130℃のホットプレート上で90秒間ポストベークしたのち、2.38%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、25℃で1分間現像し、水洗し、乾燥して、ArF用ポジ型レジストパターンを得た。その後、このレジストパターンをマスクとし、中間被膜を加工し、続いて、加工した中間被膜をマスクとして、レジスト下層膜の加工を行った。次いで、加工したレジスト下層膜をマスクとして、被加工基板の加工を行った。
そして、基板加工後のパターン形状を走査型電子顕微鏡により観察し、下記の基準で評価した。
「○」;下層膜のパターンが立っている状態
「×」;下層膜のパターンが倒れたり曲がったりしている状態
【0130】
<エッチング耐性>
直径8インチのシリコンウェハー上に、実施例及び比較例の各組成物をスピンコートした後、酸素濃度20容量%のホットプレート内にて180℃で60秒間加熱し、引き続き、350℃で120秒間加熱して、膜厚0.3μmのレジスト下層膜を形成し、このレジスト下層膜をエッチング装置「EXAM」(神鋼精機社製)を用いて、CF/Ar/O(CF:40mL/min、Ar:20mL/min、O:5mL/min;圧力:20Pa;RFパワー:200W;処理時間:40秒;温度:15℃)でエッチング処理した。
そして、エッチング処理前後の膜厚を測定して、エッチングレートを算出し、下記の基準でエッチング耐性を評価した。
「○」:エッチングレートが150nm/min以下の場合
「△」:エッチングレートが150〜200nm/minの場合
「×」:エッチングレートが200nm/min以上の場合
【0131】
<元素組成>
直径8インチのシリコンウェハー上に、実施例及び比較例の各組成物をスピンコートした後、酸素濃度20容量%のホットプレート内にて180℃で60秒間加熱し、引き続き、350℃で120秒間加熱して、膜厚0.3μmのレジスト下層膜を形成し、このレジスト下層膜について、炭素・水素・窒素同時定量装置「JM10」(ジェイ・サイエンス・ラボ社製)を用いて、各元素の重量換算値を算出した。
そして、膜中に含まれる各元素の原子数を、[各元素の重量換算値(重量%)/各元素の質量(g)]により算出し、次いで、[膜中の水素原子数/膜中の全原子数]により、脱水素反応後の水素含有量(atom%)を求めた。
尚、脱水素反応前の水素含有量は、直径8インチのシリコンウェハー上に、実施例及び比較例の各組成物をスピンコートした後、酸素濃度20容量%のホットプレート内にて200℃で60秒間加熱して形成したレジスト下層膜を使用して測定した。
【0132】
【表2】

【0133】
表2によれば、実施例1〜9の各組成物によれば、パターン転写性能及びエッチング耐性が良好なレジスト下層膜を形成することができることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明のレジスト下層膜形成方法によれば、エッチング耐性に優れ、被加工基板をエッチングする際に下層膜パターンが折れ曲がらないレジスト下層膜を形成することができる。そのため、リソグラフィープロセスにおける微細加工に極めて好適に使用することができる。特に、ドライエッチングプロセスにおいて、精密なパターン転写性能及び良好なエッチング選択性を有することになり、レジスト下層膜のオーバーエッチングが少なく、被加工基板にレジストパターンを再現性よく忠実に転写することができる。また、被加工基板をエッチングする際に下層膜パターンが折れ曲がらないため、リソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造において歩留りの向上が期待できる。
また、本発明の組成物およびレジスト下層膜形成材料用添加剤は、レジスト下層膜を形成するための材料として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工基板上に(A)芳香環を含む樹脂と、(B)下記一般式(i)で表される化合物とを含む組成物を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を、前記被加工基板と共に加熱して、該被加工基板上にレジスト下層膜を形成する工程と、
を備えるレジスト下層膜の形成方法。
【化1】

〔一般式(i)において、Rはそれぞれ独立に水素原子、RまたはRを示し、Rのうち少なくとも2つはRである。
は炭素数2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜13のアリーロキシカルボニル基、ヒドロキシメチル基、炭素数2〜13のアルコキシメチル基、炭素数7〜13のアリーロキシメチル基、または炭素数3〜14のアシロキシメチル基を示し、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
はヒドロキシル基、炭素数1〜9のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基を示し、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項2】
(1)被加工基板上に、請求項1に記載のレジスト下層膜形成方法によってレジスト下層膜を形成するレジスト下層膜形成工程と、
(2)前記レジスト下層膜が形成された被加工基板に、レジスト組成物を塗布してレジスト被膜を形成するレジスト被膜形成工程と、
(3)前記レジスト被膜に、選択的に放射線を照射して、該レジスト被膜を露光する露光工程と、
(4)露光された前記レジスト被膜を現像して、レジストパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
(5)前記レジストパターンをマスクとして用い、前記レジスト下層膜及び前記被加工基板をドライエッチングして、該被加工基板に所定のパターンを形成するパターン形成工程と、
を備えるパターン形成方法。
【請求項3】
前記(1)レジスト下層膜形成工程の後にレジスト下層膜上に中間層を形成する工程(1’)を更に備える請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
(A)芳香環を含む樹脂と、
(B)下記一般式(i)で表される化合物とを含む組成物。
【化2】

〔一般式(i)において、Rはそれぞれ独立に水素原子、RまたはRを示し、Rのうち少なくとも2つはRである。
は炭素数2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素数7〜13のアリーロキシカルボニル基、ヒドロキシメチル基、炭素数2〜13のアルコキシメチル基、炭素数7〜13のアリーロキシメチル基、または炭素数3〜14のアシロキシメチル基を示し、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
はヒドロキシル基、炭素数1〜9のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基を示し、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項5】
前記(B)化合物として、下記一般式(b1−1)で表される化合物、及び下記一般式(b2−1)で表される化合物のうちの少なくとも一方を含む請求項4に記載の組成物。
【化3】

〔一般式(b1−1)において、n21〜n24はそれぞれ独立に1〜3の整数を示す。n31〜n34はそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。また、1≦n21+n31≦3、1≦n22+32≦3、1≦n23+33≦3、1≦n24+34≦3である。Rは炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示し、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Rは一般式(i)と同義であり、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕
【化4】

〔一般式(b2−1)において、n41〜n44はそれぞれ独立に1〜3の整数を示す。n31〜n34はそれぞれ独立に0〜2の整数を示す。また、1≦n41+n31≦3、1≦n42+32≦3、1≦n43+33≦3、1≦n44+34≦3である。Rは一般式(i)と同義であり、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Rは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜13のアシル基を示し、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項6】
前記(B)化合物が、下記一般式(b1−2)で表される化合物である請求項4または請求項5に記載の組成物。
【化5】

〔一般式(b1−2)において、Rは、相互に独立して、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示す。〕
【請求項7】
前記(B)化合物が、下記一般式(b2−2)、及び下記一般式(b2−3)で表される化合物のうちの少なくとも一方である請求項4〜6いずれか一項に記載の組成物。
【化6】

〔一般式(b2−2)において、Rは、相互に独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示す。
【化7】

〔一般式(b2−3)において、Rは、相互に独立して、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数6〜12のアリール基を示す。〕
【請求項8】
前記(A)樹脂が、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、スチレン樹脂、アセナフチレン系樹脂、又はフラーレン骨格を有する樹脂である請求項4〜7いずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
更に、(C)溶剤を含む請求項4〜8いずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
下記一般式(i)で表される化合物からなるレジスト下層膜形成材料用添加剤。
【化8】

〔一般式(i)において、Rはそれぞれ独立に水素原子、RまたはRを示し、Rのうち少なくとも2つはRである。
は炭素数2〜13のアルキルエステル基、炭素数7〜13のアリールエステル基、ヒドロキシメチル基、炭素数2〜13のアルコキシメチル基、炭素数7〜13のアリーロキシメチル基、または炭素数3〜14のアシロキシメチル基を示し、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
はヒドロキシル基、炭素数1〜9のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基を示し、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項11】
下記一般式(i)で表される化合物からなる架橋剤。
【化9】

〔一般式(i)において、Rはそれぞれ独立に水素原子、RまたはRを示し、Rのうち少なくとも2つはRである。
は炭素数2〜13のアルキルエステル基、炭素数7〜13のアリールエステル基、ヒドロキシメチル基、炭素数2〜13のアルコキシメチル基、炭素数7〜13のアリーロキシメチル基、または炭素数3〜14のアシロキシメチル基を示し、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
はヒドロキシル基、炭素数1〜9のアルキル基、または炭素数6〜30のアリール基を示し、Rが複数存在する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項12】
請求項4〜9のいずれか1項に記載の組成物によって形成されたレジスト下層膜。

【公開番号】特開2011−170059(P2011−170059A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33159(P2010−33159)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】