説明

レジスト下層膜形成用組成物、パターン形成方法及び重合体

【課題】本発明の目的は、形成されるレジストパターンの耐パターン倒れ性やドライエッチング時におけるレジストパターンに対する高いエッチング選択性を維持しつつ、高い屈折率及び吸光係数を有するレジスト下層膜を形成可能なレジスト下層膜形成用組成物、パターン形成方法並びに重合体を提供することである。
【解決手段】本発明は、[A]電子求引性基が結合する芳香族構造を有する構造単位(I)と、ラクトン構造を有する構造単位、環状カーボネート構造を有する構造単位及び環状イミド構造を有する構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位(II)とを含む重合体を含有するレジスト下層膜形成用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト下層膜形成用組成物、パターン形成方法及び重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造にあっては、従来からフォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。この微細加工は、一般的には、基板上にレジスト膜を形成する工程、このレジスト膜にマクスを介して紫外線等の活性光線を照射する露光工程、露光したレジスト膜を現像する現像工程、得られたレジストパターンを保護膜として基板をエッチングする工程が含まれる。
【0003】
近年、半導体デバイスの高集積化が進み、より微細な加工ができるように活性光線が短波長化され、ArFエキシマレーザー(193nm)に代表される短波長の活性光線が使用されている。この短波長化によるレジストパターンの微細化に伴い、基板からの活性光線の乱反射等がパターン形成に大きな影響を及ぼすことから、基板とレジスト膜との間に反射防止膜等のレジスト下層膜を設ける方法が検討されている。
【0004】
このようなレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜形成用組成物としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン等を含む無機組成物や、吸光性物質と高分子化合物とを含む有機組成物が知られている。無機組成物は、レジスト下層膜の形成に真空蒸着装置、CVD装置、スパッタリング装置等の設備を必要とするのに対し、有機組成物は、特別の設備を必要としない点で有利とされる。
【0005】
かかる有機組成物を用いたレジスト下層膜に求められる特性としては、活性光線に対して高い屈折率及び吸光係数を有すること、ドライエッチング時におけるレジスト膜に対する高いエッチング選択性を有すること、レジスト膜とのインターミキシングが起こらないこと等が挙げられる(Proc.SPIE,Vol.3678(1999),174−185及びProc.SPIE,Vol.3678(1999),800−809参照)。かかる高い屈折率を得るために、レジスト下層膜形成用組成物中にマレイミド又はその誘導体からなる構造単位を含むもの(特開2002−323771号公報参照)やフッ素原子を有する芳香環を含むもの(特開2010−139822号公報参照)が提案されている。しかしながら、これらのレジスト下層膜形成用組成物では、耐パターン倒れ性やドライエッチング時におけるレジスト膜に対する高いエッチング選択性の要求を満たしつつ、屈折率及び吸光係数を向上させるという今日的要求を満たすことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−323771号公報
【特許文献2】特開2010−139822号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Proc.SPIE,Vol.3678(1999),174−185
【非特許文献2】Proc.SPIE,Vol.3678(1999),800−809
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、形成されるレジストパターンの耐パターン倒れ性やドライエッチング時におけるレジストパターンに対する高いエッチング選択性を維持しつつ、高い屈折率及び吸光係数を有するレジスト下層膜を形成可能なレジスト下層膜形成用組成物、パターン形成方法並びに重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]電子求引性基が結合する芳香族構造を有する構造単位(I)と、ラクトン構造を有する構造単位、環状カーボネート構造を有する構造単位及び環状イミド構造を有する構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位(II)とを含む重合体(以下、「[A]重合体」とも称する)を含有するレジスト下層膜形成用組成物である。
【0010】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、[A]重合体を含有することで、形成されたレジストパターンの耐パターン倒れ性やドライエッチング時におけるレジストパターンに対する高いエッチング選択性を維持しつつ、高い屈折率及び吸光係数を有するレジスト下層膜を形成することができる。
【0011】
上記構造単位(I)は、下記式(1)で表される構造単位であることが好ましい。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基である。Rは、2価の連結基である。Rは、炭素数3〜30の1価の芳香族基である。但し、上記芳香族基が有する水素原子の少なくとも1つは、電子求引性基で置換されている。)
【0012】
このように、[A]重合体が、上記式(1)で表される構造単位(I)を有することで、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜の屈折率及び吸光係数をより高めることができる。
【0013】
上記ラクトン構造を有する構造単位は、下記式(2)で表される構造単位であることが好ましい。
【化2】

(式(2)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基である。Rは、2価の連結基である。mは、1〜3の整数である。但し、ラクトン構造が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。)
【0014】
このように、[A]重合体が、上記式(2)で表される構造単位(II)を有することで、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜の屈折率及び吸光係数をより高めることができる。
【0015】
上記環状カーボネート構造を有する構造単位は、下記式(3)で表される構造単位であることが好ましい。
【化3】

(式(3)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。Rは、2価の連結基である。pは、0〜3の整数である。qは、0又は1である。rは、0〜2の整数である。Rは、2価の連結基である。但し、rが2の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよい。)
【0016】
このように、[A]重合体が、上記式(3)で表される構造単位(II)を有することで、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜の屈折率及び吸光係数をより高めることができる。
【0017】
上記環状イミド構造を有する構造単位は、下記式(4)で表される構造単位であることが好ましい。
【化4】

(式(4)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基である。)
【0018】
このように、[A]重合体が、上記式(4)で表される構造単位(II)を有することで、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜の屈折率及び吸光係数をより高めることができる。
【0019】
[A]重合体は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルに由来する構造単位(III)をさらに含むことが好ましい。
【0020】
このように、[A]重合体が、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルに由来する構造単位(III)をさらに含むことで、この(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルに含まれる水酸基により架橋性基との架橋反応が促進し、形成されるレジスト下層膜とレジスト膜とのインターミキシングを抑制することができる。
【0021】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、[B]架橋剤をさらに含有することが好ましい。
【0022】
このように、当該レジスト下層膜形成用組成物が、[B]架橋剤をさらに含有することで、[B]架橋剤と[A]重合体との架橋反応が起こり、形成されるレジスト下層膜とレジスト膜とのインターミキシングをよりいっそう抑制することができる。
【0023】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、[C]架橋触媒をさらに含有することが好ましい。
【0024】
このように、当該レジスト下層膜形成用組成物が、[C]架橋触媒をさらに含有することで、[A]重合体の架橋を促進し、結果として高い屈折率及び吸光係数を有するレジスト下層膜を形成することができる。
【0025】
本発明のパターン形成方法は、
(1)当該レジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗布し、レジスト下層膜を形成する工程、
(2)上記レジスト下層膜上にレジスト組成物を塗布し、レジスト膜を形成する工程、
(3)上記レジスト膜にマスクを介して放射線を照射し、レジスト膜を露光する工程、
(4)上記露光されたレジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程、並びに
(5)上記レジストパターンをマスクとして、レジスト下層膜及び被加工基板を、順次ドライエッチングする工程を含む。
【0026】
当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜が上記特性を有しているため、本発明のパターン形成方法により、より微細なレジストパターンを形成することができる。
【0027】
本発明の重合体は、電子求引性基が結合する芳香族構造を有する構造単位(I)と、ラクトン構造を有する構造単位、環状カーボネート構造を有する構造単位及び環状イミド構造を有する構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位(II)とを含む。当該重合体は、例えば、本発明のレジスト下層膜形成用組成物の樹脂成分として好適である。
【発明の効果】
【0028】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物、パターン形成方法及び重合体によれば、形成されたレジストパターンの耐パターン倒れ性やドライエッチング時におけるレジストパターンに対する高いエッチング選択性を維持しつつ、高い屈折率及び吸光係数を有するレジスト下層膜を形成することができる。したがって、当該レジスト下層膜形成用組成物、パターン形成方法及び重合体は、レジストパターンの更なる微細化が進む半導体デバイスの製造プロセスに好適に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<レジスト下層膜形成用組成物>
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、[A]重合体を含有する。また、当該レジスト下層膜形成用組成物は、好適成分として[B]架橋剤及び[C]架橋触媒を含有してもよい。さらに、当該レジスト下層膜形成用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0030】
<[A]重合体>
[A]重合体は、電子求引性基が結合する芳香族構造を有する構造単位(I)と、ラクトン構造を有する構造単位、環状カーボネート構造を有する構造単位及び環状イミド構造を有する構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位(II)とを含んでいる。また、[A]重合体は、構造単位(III)をさらに含んでいてもよい。なお、[A]重合体は、各構造単位を2種以上含んでもよい。本発明のレジスト下層膜形成用組成物が、上記各構造単位を含むことで、形成されたレジストパターンの耐パターン倒れ性やドライエッチング時におけるレジスト膜に対する高いエッチング選択性を維持しつつ、高い屈折率及び吸光係数を有するレジスト下層膜を形成することができる。以下、各構造単位について詳述する。
【0031】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、電子求引性基が結合する芳香族構造を有する構造単位である。この構造単位(I)としては、電子求引性基が結合する芳香族構造を有していれば特に限定されないが、上記式(1)で表される構造単位であることが好ましい。構造単位(I)を上記式(1)の構造単位とすることで、より高い屈折率及び吸光係数を有するレジスト下層膜を形成することができる。
【0032】
上記式(1)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基である。Rは、2価の連結基である。Rは、炭素数3〜30の1価の芳香族基である。但し、上記芳香族基が有する水素原子の少なくとも1つは、電子求引性基で置換されている。
【0033】
上記Rで表される2価の連結基としては、例えば、炭素数1〜30の2価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜30の2価の脂環式基、炭素数6〜30の2価の芳香族基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、イミド基、アミド基又はこれらを組み合わせた2価の基等が挙げられる。
【0034】
上記炭素数1〜30の2価の鎖状炭化水素基としては、例えば、メタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基等が挙げられる。
【0035】
上記炭素数3〜30の2価の脂環式基としては、例えば、シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基等の単環式飽和炭化水素基、シクロブテンジイル基、シクロペンテンジイル基、シクロヘキセンジイル基等の単環式不飽和炭化水素基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンジイル基、ビシクロ[2.2.2]オクタンジイル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジイル基等の多環式飽和炭化水素基、ビシクロ[2.2.1]ヘプテンジイル基、ビシクロ[2.2.2]オクテンジイル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デセンジイル基等の多環式不飽和炭化水素基等が挙げられる。
【0036】
上記炭素数6〜30の2価の芳香族基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ベンジレン基、フェニレンエチレン基、フェニレンシクロへキシレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0037】
上記Rで表される炭素数3〜30の1価の芳香族基は、炭素数3〜30の1価の芳香族基が有する水素原子の少なくとも1つが、電子求引性基で置換されている基である。
【0038】
上記炭素数3〜30の1価の芳香族基としては、炭素数6〜30の1価の芳香族基、炭素数3〜30の1価のヘテロ芳香族基等が挙げられる。
上記炭素数6〜30の1価の芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0039】
上記炭素数3〜30の1価のヘテロ芳香族基としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、ホスホール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン等のヘテロ芳香環を有する化合物から水素原子を1つ取り除いた基等が挙げられる。
【0040】
上記電子求引性基としては、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アシル基等が挙げられる。
【0041】
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等
が挙げられる。
【0042】
上記ハロゲン化アルキル基は、アルキル基が有する水素原子の少なくとも1つが、ハロゲン原子で置換された基である。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル、n−プロピル基、i−プロピル基等が挙げられる。
【0043】
上記ハロゲン化アルコキシ基は、アルコキシ基が有する水素原子の少なくとも1つが、ハロゲン原子で置換された基である。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
【0044】
上記ハロゲン化アルキル基及びハロゲン化アルコキシ基における水素原子を置換するハロゲン原子としては、例えば、上記ハロゲン原子として例示した原子等を適用することができる。
【0045】
上記アシル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基等が挙げられる。
【0046】
これらの中で、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基が好ましく、フッ素原子、フッ素化アルキル基、フッ素化アルコキシ基がより好ましい。
【0047】
上記構造単位(I)としては、下記式で表される構造単位が好ましい。
【0048】
【化5】

【0049】
上記式中、Rは、上記式(1)と同義である。
【0050】
[A]重合体における全構造単位に対する構造単位(I)の含有率としては、5モル%以上60モル%以下が好ましく、10モル%以上40モル%以下がより好ましい。構造単位(I)の含有率を上記特定範囲とすることで、効果的に屈折率及び吸光係数を高めることができる。
【0051】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、ラクトン構造を有する構造単位、環状カーボネート構造を有する構造単位及び環状イミド構造を有する構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位である。[A]重合体は、環状イミド構造を有する構造単位を含むことが好ましい。環状イミド構造を有する構造単位を含むことで、より高い屈折率及び特に高い吸収係数を有するレジスト下層膜を形成することができる。
【0052】
上記ラクトン構造を有する構造単位としては、ラクトン構造を有していれば特に限定されないが、上記式(2)で表される構造単位であることが好ましい。ラクトン構造を有する構造単位を上記式(2)の構造単位とすることで、より高い屈折率及び吸収係数を有するレジスト下層膜を形成することができる。
【0053】
上記式(2)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基である。Rは、2価の連結基である。mは、1〜3の整数である。但し、ラクトン構造が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。
【0054】
上記Rで表される2価の連結基としては、例えば、上記Rで表される2価の連結基として例示した基を適用することができる。
【0055】
上記ラクトン構造を有する構造単位としては、下記式で表される構造単位が好ましい。
【0056】
【化6】

【0057】
上記環状カーボネート構造を有する構造単位としては、環状カーボネート構造を有していれば特に限定されないが、上記式(3)で表される構造単位であることが好ましい。環状カーボネート構造を有する構造単位を上記式(3)の構造単位とすることで、より高い屈折率及び吸収係数を有するレジスト下層膜を形成することができる。
【0058】
上記式(3)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、2価の連結基である。pは、0〜3の整数である。qは、0又は1である。rは、0〜2の整数である。Rは、2価の連結基である。但し、rが2の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよい。
【0059】
上記Rで表される2価の連結基としては、例えば、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、−NHCOO−、−NHCONH−、−SO−、−CO−、又は、これらの基にメチレン基、炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基、アリーレン基、アリーレンアルキル基又はヘテロアリーレン基が結合した基等が挙げられる。但し、上記メチレン基、アルキレン基、アリーレン基、アリーレンアルキル基及びヘテロアリーレン基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。また、上記アルキレン基、アリーレン基、アリーレンアルキル基及びヘテロアリーレン基を構成する炭素鎖中に酸素原子を含んでいてもよい。
【0060】
上記炭素数2〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等が挙げられる。上記アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、メチルフェニレン基、メトキシフェニレン基、ニトロフェニレン基、1,4−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基等が挙げられる。上記アリーレンアルキル基としては、例えば、ベンジレン基、フェニレンエチレン基、ネフチレンメチレン基、ネフチレンエチレン基等が挙げられる。上記ヘテロアリーレン基としては、例えば、ピリジンジイル基、キノリンジイル基、キノキサリンジイル基等が挙げられる。
【0061】
上記Rで表される2価の連結基としては、例えば、−CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−SO−等が挙げられる。
【0062】
上記環状カーボネート構造を有する構造単位としては、下記式で表される構造単位が好ましい。
【0063】
【化7】

【0064】
上記式中、Rは、上記式(3)と同義である。
【0065】
上記環状イミド構造を有する構造単位としては、環状イミド構造を有していれば特に限定されないが、上記式(4)で表される構造単位であることが好ましい。環状イミド構造を有する構造単位を上記式(4)の構造単位とすることで、より高い屈折率及び吸収係数を有するレジスト下層膜を形成することができる。
【0066】
式(4)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基である。
【0067】
上記Rで表される炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の炭化水素基等が挙げられる。但し、上記炭素数1〜20の炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部は置換基により置換されていてもよい。
【0068】
上記炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式基、炭素数6〜20の芳香族基又はこれらを組み合わせた基等が挙げられる。
上記炭素数1〜20の鎖状若しくは分岐状の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0069】
上記炭素数3〜20の脂環式基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等の単環式飽和炭化水素基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環式不飽和炭化水素基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、アダマンチル基等の多環式飽和炭化水素基等が挙げられる。
【0070】
上記炭素数6〜20の芳香族基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
【0071】
上記これらを組み合わせた基としては、例えば、ベンジル基、トリチル基等が挙げられる。
【0072】
上記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アシル基等が挙げられる。
【0073】
上記ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基及びアシル基としては、例えば、上記電子求引性基として例示したそれぞれの基と同じ基等を適用することができる。
【0074】
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
【0075】
上記環状イミド構造を有する構造単位としては下記式で表される構造単位が好ましい。
【0076】
【化8】

【0077】
[A]重合体における全構造単位に対する構造単位(II)の含有率としては、5モル%以上60モル%以下が好ましく、10モル%以上40モル%以下がより好ましい。構造単位(II)の含有率を上記特定範囲とすることで、効果的に屈折率及び吸光係数を高めることができる。
【0078】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルに由来する構造単位である。[A]重合体は、構造単位(III)をさらに含むことが好ましい。[A]重合体が構造単位(III)をさらに含むことで、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルに含まれる水酸基により架橋性基との架橋反応が促進し、形成されるレジスト下層膜とレジスト膜とのインターミキシングを抑制することができる
【0079】
上記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2,3−ジヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル等が挙げられる。これらのうち、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルが好ましい。
【0080】
[A]重合体における全構造単位に対する構造単位(III)の含有率としては、5モル%以上60モル%以下が好ましく、10モル%以上40モル%以下がより好ましい。構造単位(III)の含有率を上記特定範囲とすることで、形成されるレジスト下層膜とレジスト膜とのインターミキシングを効果的に抑制することができる。
【0081】
[他の構造単位]
[A]重合体は本発明の効果を損なわない範囲で、上記構造単位(I)〜(III)以外の他の構造単位を含んでいてもよい。
【0082】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体の合成方法としては、例えば、所定の各構造単位に対応する化合物を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより合成できる。また、構造単位(I)又は構造単位(II)を与える化合物のいずれかが架橋性基を有する場合は、
好ましくは架橋剤、架橋触媒等の存在下において重合することができる。架橋剤及び架橋触媒としては、例えば後述する[B]架橋剤及び[C]架橋触媒として例示する化合物等が挙げられる。
【0083】
重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2−アゾビスイソ酪酸ジメチル等が挙げられる。これらの開始剤は単独又は2種以上を併用できる。
【0084】
重合溶媒としては、ラジカル重合を行なう場合は、重合を阻害する溶媒(重合禁止効果を有するニトロベンゼン、連鎖移動効果を有するメルカプト化合物等)以外の溶媒であれば特に限定されない。架橋剤及び架橋触媒下、重合を行なう場合は、溶媒の種類は特に限定されない。重合溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル・ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独又は2種以上を併用できる。
【0085】
重合反応により得られた[A]重合体は、再沈殿法により回収することが好ましい。即ち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の[A]重合体を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独又は2種以上を併用できる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、低分子成分を除去して、[A]重合体を回収することもできる。
【0086】
これらの合成方法における反応温度としては、各構造単位を与える化合物、使用する重合開始剤の種類等によって適宜決定される。
【0087】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)としては、1,000〜50,000が好ましく、10,000〜30,000がより好ましい。[A]重合体のMwが1,000未満の場合、レジスト下層膜とレジスト膜とのインターミキシングが起こり易くなる場合がある。一方、Mwが50,000を超えると、レジスト下層膜の面内均一性が低下する場合がある。また、[A]重合体のMwとGPC法によるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)としては、通常1〜3であり、好ましくは1〜2.5である。
【0088】
<[B]架橋剤>
[B]架橋剤は、熱や酸の作用により、樹脂等の配合組成物や他の架橋剤分子との結合を形成する化合物である。当該レジスト下層膜形成用組成物は、[B]架橋剤を含有していることが好ましい。当該レジスト下層膜形成用組成物が、[B]架橋剤を含有することで、[B]架橋剤と[A]重合体との架橋反応が起こり、形成されるレジスト下層膜とレジスト膜とのインターミキシングを抑制することができる。
【0089】
[B]架橋剤としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物、ヒドロキシメチル基置換フェノール化合物、アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物等が挙げられる。[B]架橋剤は、単独又は2種以上を併用できる。
【0090】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0091】
上記エポキシ化合物としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0092】
上記ヒドロキシメチル基置換フェノール化合物としては、例えば、2−ヒドロキシメチル−4,6−ジメチルフェノール、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、3,5−ジヒドロキシメチル−4−メトキシトルエン[2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール]等が挙げられる。
【0093】
上記アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物としては、例えば、(ポリ)メチロール化メラミン、(ポリ)メチロール化グリコールウリル、(ポリ)メチロール化ベンゾグアナミン、(ポリ)メチロール化ウレア等の一分子内に複数個の活性メチロール基を有する含窒素化合物であって、そのメチロール基の水酸基の水素原子の少なくとも一つが、メチル基やブチル基等のアルキル基によって置換された化合物等が挙げられる。なお、アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物は、複数の置換化合物を混合した混合物でもよく、一部自己縮合してなるオリゴマー成分を含むものであってもよい。
【0094】
これらの架橋剤のうち、アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物が好ましい。
【0095】
[B]架橋剤の配合量としては、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成される下層膜が十分に硬化する量となるように適宜設定され、当該レジスト下層膜形成用組成物に含まれる[A]重合体100質量部に対して、通常0.1質量部〜50質量部であり、好ましくは1質量部〜30質量部である。[B]架橋剤の配合量が0.1質量部未満であると、形成されレジスト下層膜の硬度が不十分となるおそれがある。一方、[B]架橋剤の配合量が50質量部を超えると、レジスト下層膜中の架橋剤とレジスト組成物との間で架橋反応が起きる可能性がある。
【0096】
<[C]架橋触媒>
[C]架橋触媒は、[A]重合体の架橋を促進する成分である。当該レジスト下層膜形成用組成物は、[C]架橋触媒を含有していることが好ましい。当該レジスト下層膜形成用組成物が[C]架橋触媒を含有することで、結果として高い屈折率及び吸光係数を有するレジスト下層膜を形成することができる。
【0097】
[C]架橋触媒としては、例えば、アミン化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メルカプタン系化合物、ヒドラジド類、ポリフェノール、多塩基酸、光又は熱酸発生剤等が挙げられる。これらのうち、生産性や残存触媒の光学特性への影響が少ない光又は熱酸発生剤が好ましい。
【0098】
[C]架橋触媒の配合量としては、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜が十分に硬化する量となるように適宜設定され、当該レジスト下層膜形成用組成物に含まれる[A]重合体100質量部に対して、通常0.1質量部〜15質量部であり、好ましくは0.1質量部〜10質量部である。[C]架橋触媒の配合量が0.1質量部未満であると、形成されレジスト下層膜の硬度が不十分となるおそれがある。一方、[C]架橋触媒の配合量が15質量部を超えると、レジスト下層膜中の架橋剤とレジスト組成物との間で架橋反応が起きる可能性がある。
【0099】
<[D]溶媒>
当該レジスト下層膜形成用組成物は通常、[D]溶媒を含有する。[D]溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独又は2種以上を併用できる。
【0100】
上記アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0101】
上記ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等が挙げられる。
【0102】
上記アミド系溶媒としては、例えば、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0103】
上記エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ヘキシルメチルエーテル、オクチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジシクロペンチルエーテル等の脂肪族エーテル類;アニソール、フェニルエチルエーテル等の脂肪族−芳香族エーテル類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類等が挙げられる。
【0104】
上記エステル系溶媒としては、例えば、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0105】
その他の溶媒としては、例えば、n−ペンタン、iso−ペンタン、n−ヘキサン、iso−ヘキサン、n−ヘプタン、iso−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、iso−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、iso−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、iso−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−iso−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒等が挙げられる。
【0106】
これらの[D]溶媒のうち、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンが好ましい。
【0107】
<その他の任意成分>
当該レジスト下層膜形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤等のその他の任意成分を含有できる。その他の任意成分は、それぞれを、単独又は2種以上を併用できる。また、その他の任意成分の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0108】
<[E]界面活性剤>
界面活性剤は、当該レジスト下層膜形成用組成物の塗布性の改善、塗布ムラの低減、放射線照射部の現像性を改良するためにその他の任意成分として添加することができる。好ましい界面活性剤の例としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0109】
上記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸系共重合体類等が挙げられる。(メタ)アクリル酸系共重合体類の市販品としては、例えば、ポリフローNo.57、同No.95(共栄社化学製)等が挙げられる。
【0110】
上記フッ素系界面活性剤としては、例えば、1,1,2,2−テトラフルオロオクチル(1,1,2,2−テトラフルオロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフルオロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロペンチル)エーテル等のフルオロエーテル類;パーフルオロドデシルスルホン酸ナトリウム;1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフルオロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロデカン等のフルオロアルカン類;フルオロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム類;フルオロアルキルオキシエチレンエーテル類;フルオロアルキルアンモニウムヨージド類;フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル類;パーフルオロアルキルポリオキシエタノール類;パーフルオロアルキルアルコキシレート類;フッ素系アルキルエステル類等が挙げられる。
【0111】
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、エフトップEF301、303、352(新秋田化成製)、メガファックF171、172、173(大日本インキ製)、フロラードFC430、431(住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC−101、102、103、104、105、106(旭硝子製)、FTX−218(ネオス製)等が挙げられる。
【0112】
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、SH200−100cs、SH28PA、SH30PA、ST89PA、SH190(東レダウコーニングシリコーン製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業製)等が挙げられる。
【0113】
[E]界面活性剤を使用する場合の配合量は、[A]重合体100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上10質量部以下である。より好ましくは0.005質量部以上5質量部以下である。[E]界面活性剤の使用量を0.001質量部以上10質量部以下とすることによって、レジスト下層膜形成用組成物の塗布性を最適化することができる。
【0114】
<レジスト下層膜形成用組成物の調製方法>
当該レジスト下層膜形成用組成物は、[A]重合体と、必要に応じて[B]架橋剤、[C]架橋触媒、[D]溶媒、[E]界面活性剤等を所定の割合で混合することにより調製できる。
【0115】
<パターン形成方法>
本発明のパターン形成方法は、
(1)当該レジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗布し、レジスト下層膜を形成する工程、
(2)上記レジスト下層膜上にレジスト組成物を塗布し、レジスト膜を形成する工程、
(3)上記レジスト膜にマスクを介して放射線を照射し、レジスト膜を露光する工程、
(4)上記露光されたレジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程、並びに
(5)上記レジストパターンをマスクとして、レジスト下層膜及び被加工基板を、順次ドライエッチングする工程
を含む。
【0116】
当該パターン形成方法によると、形成されたレジストパターンの耐パターン倒れ性やドライエッチング時におけるレジスト膜に対する高いエッチング選択性を維持しつつ、高い屈折率及び吸光係数を有するレジスト下層膜を効率良く成形することができる。したがって、当該パターン形成方法は、さらなる微細化が進む半導体デバイスの製造プロセスにおいて好適に適用できる。以下、各工程について詳述する。
【0117】
[工程(1)]
本工程では、被加工基板上に当該レジスト下層膜形成用組成物を用いてレジスト下層膜を形成する。上記被加工基板としては、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、ポリシロキサン等の絶縁膜、並びに市販品であるブラックダイヤモンド(AMAT製)、シルク(ダウケミカル製)、LKD5109(JSR製)等の低誘電体絶縁膜で被覆したウェハ等の層間絶縁膜が挙げられる。また、この被加工基板としては、配線講(トレンチ)、プラグ溝(ビア)等のパターン化された基板を用いてもよい。
【0118】
上記レジスト下層膜の形成方法としては、例えば被加工基板や他の下層膜等の表面に塗布することにより、当該レジスト下層膜形成用組成物の塗膜を形成し、この塗膜を加熱処理、又は紫外光の照射及び加熱処理を行うことにより硬化させることで形成できる。当該レジスト下層膜形成用組成物を塗布する方法としては、例えばスピンコート法、ロールコート法、ディップ法等が挙げられる。また、加熱温度しては、通常50℃〜450℃である。加熱時間としては、通常30秒〜1,200秒であり、好ましくは45秒〜600秒である。
【0119】
また、上記被加工基板には、予め本発明のレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されレジスト下層膜とは異なる他の下層膜(以下、「他の下層膜」と称する)が形成されていてもよい。この他の下層膜は、反射防止機能、塗布膜平坦性、CF等のフッ素系ガスに対する高エッチング耐性等が付与された膜である。この他の下層膜としては、例えばNFC HM8005(JSR製)、NFC CT08(JSR製)等の市販品を使用することができる。
【0120】
上記レジスト下層膜の膜厚としては、通常5nm以上200nm以下であり、パターンニング性を高めるためには、10nm以上100nm以下が好ましい。
【0121】
[工程(2)〜(4)]
本工程では、レジスト下層膜の上面側にレジスト組成物を塗布し、露光、加熱及び現像し、レジストパターンを形成する。上記レジスト組成物としては、例えば光酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等が挙げられる。なお、本発明のパターン形成方法においては、このようなレジスト組成物として、市販品のレジスト組成物を使用することもできる。レジスト組成物の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法等の従来の方法によって塗布することができる。なお、レジスト組成物を塗布する際には、形成されるレジスト膜が所望の膜厚となるように、塗布するレジスト組成物の量を調整する。
【0122】
上記レジスト膜は、上記レジスト組成物を塗布することによって形成された塗膜をプレベークすることにより、塗膜中の溶媒(即ち、レジスト組成物に含有される溶媒)を揮発させて形成することができる。プレベークの温度としては、使用するレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、50℃〜200℃が好ましく、80℃〜150℃がより好ましい。加熱時間としては、通常30秒〜200秒であり、好ましくは45秒〜120秒である。なお、このレジスト膜の表面にさらに他の塗膜を設けてもよい。レジスト膜の膜厚としては、通常、0.01μm〜0.5μmであり、0.02μm〜0.3μmが好ましい。
【0123】
次いで、得られたレジスト膜に、マスクを介して選択的に放射線を照射してレジスト膜を露光する。放射線としては、レジスト組成物に使用されている酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択されるが、遠紫外線であることが好ましく、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(波長157nm)、Krエキシマレーザー(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー(波長134nm)、極紫外線(波長13nm等)がより好ましい。また、液浸露光法も採用することができる。
【0124】
露光後にレジスト膜の解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、ポストベークを行う。このポストベークの温度としては、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整される。加熱時間としては、通常30秒〜200秒であり、好ましくは45秒〜120秒である。
【0125】
ポストベーク後、レジスト膜を現像して、レジストパターンを形成する。現像に用いる現像液としては、使用されるレジスト組成物の種類に応じて適宜選択することができる。ポジ型化学増幅型レジスト組成物やアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト組成物の場合には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液が挙げられる。また、これらのアルカリ性水溶液は、水溶性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加したものであってもよい。
【0126】
また、ネガ型化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂を含有するネガ型レジスト組成物の場合には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ類の水溶液等が挙げられる。
【0127】
[工程(5)]
本工程では、上記レジストパターンをマスクとしてレジスト下層膜及び被加工基板をドライエッチングする。ドライエッチングは、公知のドライエッチング装置を用いて行うことができる。また、ドライエッチング時のソースガスとしては、被エッチング物の元素組成にもよるが、O、CO、CO等の酸素原子を含むガス、He、N、Ar等の不活性ガス、Cl、BCl等の塩素系ガス、CHF、CF等のフッ素系ガス、H、NHのガス等を使用することができる。なお、これらのガスは混合して用いることもできる。
【0128】
また、これらのプロセス後、被加工基板上に残存するレジスト下層膜を除去する工程を有していてもよい。
【実施例】
【0129】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に制限されるものではない。
【0130】
<[A]重合体の合成>
下記式(M−1)〜(M−9)で表される化合物を用いて、各重合体を合成した。
【0131】
【化9】

【0132】
[合成例1]
200mLのフラスコに、(M−1)4.49g(31モル%)、(M−4)6.20g(31モル%)、(M−8)4.32g(38モル%)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.57g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル30.0gを仕込み、窒素下、80℃で5時間攪拌し重合反応を行った。重合終了後、重合溶液を水冷することにより30℃以下に冷却した後、300gのメタノール:水(質量比9:1)の溶液へ投入して重合体を沈殿させた。上澄みの溶液を除いた後、沈殿した重合体にメタノール60gを加え、重合体を洗浄した。上澄み液を除いた後に、50℃にて17時間乾燥して、重合体(A−1)を得た(収量14.25g、収率95%)。この共重合体は、Mwが21,900であり、Mw/Mnが2.2であった。13C−NMR分析の結果、(M−1)、(M−4)、(M−8)に由来する構造単位の含有率はそれぞれ31.3モル%、30.8モル%、37.9モル%であった。なお、[A]重合体における各構造単位の含有率(モル%)を求めるための13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(JNM−ECX400、日本電子製)を使用した。なお、各重合体のMw、Mnは、GPCカラム(東ソー製、G2000HXL 2本、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃、試料濃度1.0質量%、試料注入量10μLの分析条件で、検出器(示差屈折計)を用いて単分散ポリスチレンを標準とするGPCにより測定した。
【0133】
[合成例2〜17]
配合する各成分の種類及び使用量を表1に記載の通りとした以外は、合成例1と同様に操作し、各重合体を合成した。各重合体のMw及びMw/Mnを表1に示す。
【0134】
【表1】

【0135】
<レジスト下層膜形成用組成物の調製>
[A]重合体以外の各成分について以下に示す。
【0136】
[B]架橋剤
下記式(B−1)で表される化合物
【0137】
【化10】

【0138】
[C]架橋触媒
下記式(C−1)で表される化合物
【0139】
【化11】

【0140】
[D]溶媒
D−1:プロピレングリコールモノメチルエーテル
D−2:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0141】
[E]界面活性剤
E−1:FTX−218(ネオス製)
【0142】
[実施例1]
[A]重合体として(A−1)100質量部、[B]架橋剤として(B−1)20質量部、[C]架橋触媒として(C−1)5質量部、並びに[D]溶媒として(D−1)1,800質量部及び(D−2)1,800質量部を配合し、レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0143】
[実施例2〜14、比較例1〜4]
配合する各成分の種類及び配合量を表2に記載の通りとした以外は、実施例1と同様に操作して、各レジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0144】
【表2】

【0145】
<レジスト組成物に含有される重合体の合成>
下記式(M−10)〜(M−13)で表される化合物を用いて、重合体(R−1)及び(R−2)を調製した。
【0146】
【化12】

【0147】
[合成例18]
化合物(M−10)18.60g(15モル%)、化合物(M−11)6.20g(35モル%)、及び化合物(M−13)25.20g(50モル%)を2−ブタノン100gに溶解し、更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.86gを溶解させた単量体溶液を準備した。50gの2−ブタノンを投入した500mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、反応器を攪拌しながら80℃に加熱し、上述のように準備した単量体溶液を、滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液を水冷することにより30℃以下に冷却し、1,000gのメタノールへ投入して析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を200gのメタノールに分散させてスラリー状にして洗浄した後、ろ別する操作を2回行った。50℃にて17時間乾燥して白色粉末の共重合体を得た(収量39g、収率78%)。この共重合体は、Mwが6,300であり、Mw/Mnが1.4であった。この共重合体を重合体(R−1)とする。
【0148】
[合成例19]
化合物(M−10)17.69g(40モル%)、化合物(M−12)5.35g(10モル%)、及び化合物(M−13)26.96g(50モル%)を2−ブタノン100gに溶解し、更にジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)1.99gを溶解させた単量体溶液を準備した。50gの2−ブタノンを投入した500mLの三口フラスコを30分窒素パージした後、反応器を攪拌しながら80℃に加熱し、上述のように準備した単量体溶液を、滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液を水冷することにより30℃以下に冷却し、1,000gのメタノールへ投入して析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末を200gのメタノールに分散させてスラリー状にして洗浄した後、ろ別する操作を2回行った。50℃にて17時間乾燥して白色粉末の共重合体を得た(収量41g、収率82%)。この共重合体は、Mwが6,100であり、Mw/Mnが1.4であった。この共重合体を重合体(R−2)とする。
【0149】
<レジスト組成物の調製>
重合体(R−1)70質量部、重合体(R−2)30質量部、酸発生剤としてトリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートを4質量部、4−ブトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートを5質量部、酸拡散制御剤として、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジンを0.9質量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1,250質量部、シクロヘキサノン520質量部を混合してレジスト組成物を調製した。
【0150】
<レジスト下層膜の形成>
調製した各レジスト下層膜形成用組成物を、被加工基板となる8インチのシリコンウエハー表面に、スピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて205℃で60秒間ベークを行い、膜厚90nmのレジスト下層膜を形成した。なお、レジスト下層膜の膜厚は、リソグラフィ・シミュレータ(プロリス(Prolith)、KLA Tencor製)を用いて計算し、反射率の第二最小値となるようにした。
【0151】
<評価>
屈折率、吸光係数、耐パターン倒れ性及びエッチング選択性を測定し、各測定値を表3に示す。
[屈折率及び吸光係数]
分光エリプソメーターを用いて、形成されたレジスト下層膜の波長193nmにおける屈折率及び吸光係数を測定した。ここで、屈折率が1.80以上かつ吸光係数が0.25以上の場合を良好と判断した。
【0152】
<レジスト膜の形成>
このレジスト下層膜の上に調製したレジスト組成物をスピンコートにより塗布し、ホットプレート上にて、120℃60秒間ベークを行い、膜厚120nmのレジスト膜を形成した。このとき、レジスト膜とレジスト下層膜とのインターミキシングは認められなかった。
【0153】
<レジストパターンの形成>
得られたレジスト下層膜形成用組成物およびレジスト組成物を塗布したシリコンウエハーをArFエキシマレーザー露光装置(NSRS306C、NIKON製)を用いて、マスクを介して露光した。その後、115℃で60秒間ポストベークを行った後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により、25℃で30秒現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。
【0154】
[耐パターン倒れ性]
パターン設計寸法80nmの1対1ラインアンドスペースが9本並んだパターンを有するマスクを用い、上記レジストパターンの形成手順に従い露光を行った。露光量を0.5mJ/cmずつ増やしていき、9本並んだパターンのうち4本が倒れた時、残り5本の線幅の平均値を算出し、この値を耐パターン倒れ性とした。なお、レジストパターンの測長には走査型電子顕微鏡(S9380、日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。ここで、耐パターン倒れ性が65.0nm以下の場合を良好と判断した。
【0155】
[エッチング選択性]
得られた各レジスト下層膜形成用組成物溶液を、スピンナーを用い、シリコンウエハー(被加工基板)上にそれぞれ塗布し、ホットプレート上で205℃で1分間焼成し、レジスト下層膜をそれぞれ形成した。また、上記調製したレジスト組成物をスピンナーを用い、シリコンウエハー上に塗布し、ホットプレート上で100℃で1分間焼成し、レジスト膜を形成した。ドライエッチングガスとしてCFを使用した条件下でドライエッチング速度を測定した。レジスト膜のドライエッチング速度を1とした場合のレジスト下層膜のドライエッチング速度を算出し、この値をエッチング選択性とした。ここで、エッチング選択性が1.20以上の場合を良好と判断した。
【0156】
【表3】

【0157】
表3に示された結果から分かるように、実施例のレジスト下層膜は、比較例のものに比べ、高い屈折率及び吸光係数を有しており、耐パターン倒れ性及びエッチング選択性については、実施例と比較例とで共に良好、つまり、当該レジスト下層膜形成用組成物を用いたことによる耐パターン倒れ性及びエッチング選択性の劣化は認められなかった。また、レジスト下層膜とレジスト組成物とのインターミキシングが起きないことも明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明は、形成されたレジストパターンの耐パターン倒れ性やドライエッチング時におけるレジストパターンに対する高いエッチング選択性を維持しつつ、高い屈折率及び吸光係数を有するレジスト下層膜を形成可能なレジスト下層膜形成用組成物、パターン形成方法並びに重合体を提供することができる。したがって、当該レジスト下層膜形成用組成物、パターン形成方法及び重合体は、レジストパターンの更なる微細化が進む半導体デバイスの製造プロセスに好適に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]電子求引性基が結合する芳香族構造を有する構造単位(I)と、ラクトン構造を有する構造単位、環状カーボネート構造を有する構造単位及び環状イミド構造を有する構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位(II)とを含む重合体
を含有するレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項2】
上記構造単位(I)が、下記式(1)で表される請求項1に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基である。Rは、2価の連結基である。Rは、炭素数3〜30の1価の芳香族基である。但し、上記芳香族基が有する水素原子の少なくとも1つは、電子求引性基で置換されている。)
【請求項3】
上記ラクトン構造を有する構造単位が、下記式(2)で表される請求項1又は請求項2に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【化2】

(式(2)中、Rは、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基である。Rは、2価の連結基である。mは、1〜3の整数である。但し、ラクトン構造が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。)
【請求項4】
上記環状カーボネート構造を有する構造単位が、下記式(3)で表される請求項1、請求項2又は請求項3に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【化3】

(式(3)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基である。Rは、2価の連結基である。pは、0〜3の整数である。qは、0又は1である。rは、0〜2の整数である。Rは、2価の連結基である。但し、rが2の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項5】
上記環状イミド構造を有する構造単位が、下記式(4)で表される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【化4】

(式(4)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の1価の有機基である。)
【請求項6】
[A]重合体が、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルに由来する構造単位(III)をさらに含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項7】
[B]架橋剤をさらに含有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項8】
[C]架橋触媒をさらに含有する請求項7に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項9】
(1)請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗布し、レジスト下層膜を形成する工程、
(2)上記レジスト下層膜上にレジスト組成物を塗布し、レジスト膜を形成する工程、
(3)上記レジスト膜にマスクを介して放射線を照射し、レジスト膜を露光する工程、
(4)上記露光されたレジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程、並びに
(5)上記レジストパターンをマスクとして、レジスト下層膜及び被加工基板を、順次ドライエッチングする工程
を含むパターン形成方法。
【請求項10】
電子求引性基が結合する芳香族構造を有する構造単位(I)と、ラクトン構造を有する構造単位、環状カーボネート構造を有する構造単位及び環状イミド構造を有する構造単位からなる群より選択される少なくとも1種の構造単位(II)とを含む重合体。

【公開番号】特開2013−73125(P2013−73125A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213587(P2011−213587)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】