説明

レジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜及びその形成方法、並びにパターン形成方法

【課題】本発明の目的は、レジスト下層膜に求められる屈折率及び減衰係数についての特性を満たすと共に、形成されるレジスト下層膜パターンの高い曲がり耐性を維持しつつ、高い耐熱性を有するレジスト下層膜を形成することができるレジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜及びその形成方法、並びにパターン形成方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、[A]下記式(1)で表される構造単位(I)を有する重合体を含有するレジスト下層膜形成用組成物である。下記式(1)中、Ar1及びArは、それぞれ独立して、下記式(2)で表される2価の基である。下記式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して、2価の芳香族基である。Rは、単結合、−O−、−CO−、−SO−又は−SO−である。aは、0〜3の整数である。但し、aが2以上の場合、複数のR及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜及びその形成方法、並びにパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造において、今日では、より高い集積度を得るために、多層レジストプロセスが用いられている。このプロセスを簡単に説明すると、まずレジスト下層膜形成用組成物を基板上に塗布してレジスト下層膜を形成し、その上にフォトレジスト組成物を塗布してレジスト被膜を形成し、次いで、縮小投影露光装置(ステッパー)等によってマスクパターンをレジスト被膜に転写し、適当な現像液で現像することによりレジストパターンを得る。その後、ドライエッチングにより、このレジストパターンをレジスト下層膜に転写する。最後にドライエッチングにより、レジスト下層膜パターンを基板に転写することにより、所望のパターンが形成された基板を得ることができる。
【0003】
上述の多層レジストプロセスにおいては、形成されるパターンの微細化がさらに進んでおり、そのため、上記レジスト下層膜には、パターン転写性能及びエッチング耐性のさらなる向上が要求されている。そのような要求に対して、レジスト下層膜形成用組成物に含有される重合体等の構造や含まれる官能基について種々検討が行われている(特開2004−177668号公報参照)。
【0004】
一方、形成されるパターンの微細化と共に、上記ドライエッチングの方法として、RIE(Reactive Ion Etching)が普及しており、そのため、レジスト下層膜をマスクとして基板をエッチングする際に、レジスト下層膜パターンが折れ曲がったり、波打つ形状となったりする等の変形を生じるという不都合が顕著化してきている。
【0005】
また、従来から、レジスト下層膜の形成には、その形成に特別な装置を必要としない点で有機組成物が用いられているが、この有機組成物を用いたレジスト下層膜にあっては、耐熱性に難があり、低い耐熱性に起因して上記レジスト下層膜形成時等の加熱によりレジスト下層膜成分が昇華し、この昇華した成分が基板へ再付着して半導体デバイスの製造歩留まりを悪化させることがある。
【0006】
かかる状況下、更なるパターンの微細化に際し、レジスト下層膜に求められる屈折率及び減衰係数についての特性を満たすと共に、形成されるレジスト下層膜パターンの高い曲がり耐性を維持しつつ、高い耐熱性を有するレジスト下層膜を形成可能なレジスト下層膜形成用組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−177668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、レジスト下層膜に求められる屈折率及び減衰係数についての特性を満たすと共に、形成されるレジスト下層膜パターンの高い曲がり耐性を維持しつつ、高い耐熱性を有するレジスト下層膜を形成可能なレジスト下層膜形成用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]下記式(1)で表される構造単位(I)を有する重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)を含有するレジスト下層膜形成用組成物である。
【化1】

(式(1)中、Ar1及びArは、それぞれ独立して、下記式(2)で表される2価の基である。)
【化2】

(式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して、2価の芳香族基である。Rは、単結合、−O−、−CO−、−SO−又は−SO−である。aは、0〜3の整数である。但し、aが2以上の場合、複数のR及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0010】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物が上記特定の構造単位(I)を有する[A]重合体を含有することで、当該レジスト下層膜形成用組成物は、形成されるレジスト下層膜パターンの高い曲がり耐性を維持しつつ、高い耐熱性を有するレジスト下層膜を形成することができる。
【0011】
上記式(2)におけるR及びRは、それぞれ独立して、下記式(3)で表されることが好ましい。
【化3】

(式(3)中、Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基である。bは、0〜6の整数である。但し、bが2以上の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよい。cは、0又は1である。)
【0012】
上記R及びRが上記特定の基であることで、当該レジスト下層膜形成用組成物は、よりいっそう高い耐熱性を有するレジスト下層膜を形成することができる。
【0013】
[A]重合体のポリスチレン換算重量平均分子量は、500以上10,000以下であることが好ましい。上記[A]重合体のポリスチレン換算重量平均分子量が上記特定範囲であることで、当該レジスト下層膜形成用組成物は、塗布性を向上させることができる。
【0014】
当該レジスト下層膜形成用組成物は、[B]溶媒をさらに含有することが好ましい。当該レジスト下層膜形成用組成物が[B]溶媒をさらに含有することで、当該レジスト下層膜形成用組成物は、塗布性をより向上させることができる。
【0015】
当該レジスト下層膜形成用組成物は[C]酸発生剤をさらに含有することが好ましい。当該レジスト下層膜形成用組成物が[C]酸発生剤をさらに含有することで、当該レジスト下層膜形成用組成物は、レジスト下層膜を効率的に硬化させ、レジスト下層膜とレジスト被膜とのインターミキシングを抑制することができる。
【0016】
当該レジスト下層膜形成用組成物は、[D]架橋剤をさらに含有することが好ましい。当該レジスト下層膜形成用組成物が[D]架橋剤をさらに含有することで、当該レジスト下層膜形成用組成物は、この[D]架橋剤と[A]重合体や他の架橋剤分子が有する架橋性基とを結合させ、形成されるレジスト下層膜をより硬化させることができる。
【0017】
本発明のレジスト下層膜の形成方法は、
(1−1)当該レジスト下層膜形成用組成物を用い、基板上に塗膜を形成する工程、及び
(1−2)上記塗膜の加熱によりレジスト下層膜を形成する工程
を有する。
【0018】
当該レジスト下層膜の形成方法が上記特定の工程を有することで、当該レジスト下層膜の形成方法は、高い耐熱性を有するレジスト下層膜を形成することができる。
【0019】
本発明のレジスト下層膜は、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成される。
【0020】
当該レジスト下層膜は当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されているため、当該レジスト下層膜は、高い耐熱性を有する。
【0021】
本発明のパターン形成方法は、
(1)当該レジスト下層膜形成用組成物を用い、基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
(2)レジスト組成物を用い、上記レジスト下層膜上にレジスト被膜を形成する工程、
(3)上記レジスト被膜からレジストパターンを形成する工程、及び
(4)上記レジストパターンをマスクとして用い、上記レジスト下層膜及び上記基板を順次ドライエッチングして、上記基板に所定のパターンを形成する工程を有する。
【0022】
当該パターン形成方法では当該レジスト下層膜形成用組成物を用いてレジスト下層膜を形成するため、当該パターン形成方法は、形成されるレジスト下層膜パターンの高い曲がり耐性を維持しつつ、レジスト下層膜の耐熱性を高めることができる。その結果として、当該パターン形成方法は、より微細化なパターンを形成することができる。
【0023】
上記レジスト組成物がフォトレジスト組成物であり、
上記工程(3)が、
(3−1)上記レジスト被膜を、選択的な放射線の照射により露光する工程、及び
(3−2)露光された上記レジスト被膜を現像する工程
を含むことが好ましい。
【0024】
上記レジスト組成物がフォトレジスト組成物であり、上記工程(3)が上記工程を含むことで、当該パターン形成方法は、より微細化なパターンを簡便かつ確実に形成することができる。
【0025】
なお、[A]重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフ(検出器:示差屈折計)により測定したものをいう。
【発明の効果】
【0026】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜及びその形成方法、並びにパターン形成方法によれば、レジスト下層膜に求められる屈折率及び減衰係数についての特性を満たすと共に、形成されるレジスト下層膜パターンの高い曲がり耐性を維持しつつ、レジスト下層膜の耐熱性を高めることができる。そのため、本発明によれば、半導体製造プロセスにおいて、半導体デバイスの製造歩留まりを向上することができ、パターンの更なる微細化が進む半導体デバイスの製造プロセスに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<レジスト下層膜形成用組成物>
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、[A]重合体を含有する。また、当該レジスト下層膜形成用組成物は、好適成分として[B]溶媒、[C]酸発生剤、[D]架橋剤をさらに含有してもよい。さらに、当該レジスト下層膜形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0028】
<[A]重合体>
[A]重合体は、上記式(1)で表される構造単位(I)を有する重合体である。また、[A]重合体は、その他の構造単位を有していてもよい。なお、[A]重合体は、各構造単位を2種以上含んでもよい。
【0029】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、上記式(1)で表される構造単位である。本発明のレジスト下層膜形成用組成物が上記特定の構造単位(I)を有する[A]重合体を含有することで、当該レジスト下層膜形成用組成物は、形成されるレジスト下層膜パターンの高い曲がり耐性を維持しつつ、高い耐熱性を有するレジスト下層膜を形成することができる。
【0030】
上記式(1)中、Ar1及びArは、それぞれ独立して、上記式(2)で表される2価の基である。
【0031】
上記式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して、2価の芳香族基である。Rは、単結合、−O−、−CO−、−SO−又は−SO−である。aは、0〜3の整数である。但し、aが2以上の場合、複数のR及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0032】
上記R及びRで表される2価の芳香族基としては、炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基、炭素数3〜30の2価のヘテロ芳香族基が挙げられる。
【0033】
上記炭素数6〜30の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラニレン基等が挙げられる。
【0034】
上記炭素数3〜30の2価のヘテロ芳香族基としては、例えば、ピロール環、ピリジン環、インドール環、キノリン環、アクリジン環等を含む2価の基等が挙げられる。
【0035】
上記2価の芳香族炭化水素基及び2価のヘテロ芳香族基が有する水素原子は、置換基により置換されていてもよい。この置換基としては、例えば、後述するRで表される基を適用できる。
【0036】
構造単位(I)は、例えば、ベンゼン環の1,4位、ナフタレン環の2,6位、アントラセン環の2,6位等のように、上記2価の芳香族炭化水素基の芳香環及び2価のヘテロ芳香族基のヘテロ芳香環における相対する部位に、重合体主鎖が結合していない分子構造が好ましく、この分子構造は、上記Rが単結合である場合に特に好ましい。このようにすることで、溶媒に対する溶解性を向上させることができる。
【0037】
上記式(2)におけるR及びRは、それぞれ独立して、上記式(3)で表されることが好ましい。上記R及びRが上記特定の基であることで、当該レジスト下層膜形成用組成物は、よりいっそう高い耐熱性を有するレジスト下層膜を形成することができる。
【0038】
上記式(3)中、Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基である。bは、0〜6の整数である。但し、bが2以上の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよい。cは、0又は1である。
【0039】
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0040】
上記Rで表される炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、又はこれらの基を2種以上組み合わせた1価の基等が挙げられる。
【0041】
上記炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖状のアルキル基;i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の分岐状のアルキル基等が挙げられる。
【0042】
上記炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基等の単環式飽和炭化水素基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロオクタジエニル基、シクロデカジエン等の単環式不飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デシル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の多環式飽和炭化水素基等が挙げられる。
【0043】
上記これらの基を2種以上組み合わせた1価の基としては、例えば、上記炭素数1〜20のアルキル基及び炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基として例示した基を2種以上組み合わせた基等が挙げられる。
【0044】
上記Rで表される炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられる。
【0045】
上記Rで表される炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル基、2−ヒドロキシ−1−メチルエチル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
【0046】
なお、上記式(3)中、bは0が好ましく、cは0が好ましい。
【0047】
構造単位(I)としては、下記式で表される構造単位が好ましい。
【0048】
【化4】

【0049】
[A]重合体における全構造単位に対する構造単位(I)の含有割合としては50モル%以上100モル%以下が好ましく、80モル%以上100モル%以下がより好ましい。構造単位(I)の含有割合を、上記特定範囲とすることで、効果的に耐熱性を高めると共に、曲がり耐性を向上させることができる。
【0050】
[その他の構造単位]
[A]重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記構造単位(I)以外の構造単位を有してもよい。
【0051】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体の合成方法としては、例えば、所定の構造単位に対応する化合物(単量体)を、適当な反応溶媒に溶解し、触媒及び塩基性化合物の存在下で縮合重合反応を行うことにより合成できる。
【0052】
触媒としては、例えば、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)ジブロモパラジウム等のパラジウム化合物と、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)等の1価の銅化合物との組み合わせ等が挙げられる。これらの触媒は、1種又は2種以上を併用できる。
【0053】
塩基性化合物としては、例えば、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン等が挙げられる。これらの塩基性化合物は1種又は2種以上を併用できる。
【0054】
反応溶媒としては、縮合重合反応を阻害する溶媒以外の溶媒であれば、特に限定されない。反応溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ジエチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム、アニソール等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒等が挙げられる。
【0055】
縮合重合反応により得られた[A]重合体は再沈殿法により回収することが好ましい。即ち、縮合重合反応終了後、反応液を再沈溶媒に投入することにより、目的の[A]重合体を回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を1種又は2種以上を併用できる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、低分子成分を除去して、[A]重合体を回収することもできる。
【0056】
これらの合成方法における反応温度としては、構造単位(I)を与える化合物(単量体)、使用する触媒や塩基性化合物の種類等によって適宜決定される。
【0057】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)としては、500以上10,000以下が好ましく、1,000以上5,000以下がより好ましい。[A]重合体のMwを上記特定範囲とすることで、当該レジスト下層膜形成用組成物は、レジスト下層膜の面内均一性を向上させることができる。
【0058】
<[B]溶媒>
[B]溶媒は、当該レジスト下層膜形成用組成物が含有してもよい好適成分である。[B]溶媒としては、[A]重合体及び必要に応じて含有する任意成分を溶解又は分散することができれば特に限定されない。当該レジスト下層膜形成用組成物が[B]溶媒をさらに含有することで、当該レジスト下層膜形成用組成物は、塗布性をより向上させることができる。[B]溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒等が挙げられる。なお、[B]溶媒は、1種又は2種以上を併用できる。
【0059】
上記アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール等のモノアルコール系溶媒;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール等の多価アルコール系溶媒等が挙げられる。
【0060】
上記ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン等の脂肪族ケトン系溶媒;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒;2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン等が挙げられる。
【0061】
上記アミド系溶媒としては、例えば、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0062】
上記エーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジイソアミルエーテル等の脂肪族エーテル類;アニソール、フェニルエチルエーテル等の脂肪族−芳香族エーテル類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類等が挙げられる。
【0063】
上記エステル系溶媒としては、例えば、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等が挙げられる。
【0064】
これらの溶媒の中でエーテル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類、環状ケトン系溶媒がより好ましく、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノンが特に好ましい。
【0065】
<[C]酸発生剤>
[C]酸発生剤は当該レジスト下層膜形成用組成物が含有してもよい好適成分である。当該レジスト下層膜形成用組成物が[C]酸発生剤を含有することで、当該レジスト下層膜形成用組成物は、レジスト下層膜を効率的に硬化させ、レジスト下層膜とレジスト被膜とのインターミキシングを抑制することができる。なお、[C]酸発生剤は、1種又は2種以上を併用できる。
【0066】
[C]酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物等が挙げられる。これらのうち、オニウム塩化合物が好ましい。
【0067】
オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられる。
【0068】
スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。これらのうち、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルホスホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0069】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。これらのテトラヒドロチオフェニウム塩のうち、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート及び1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0070】
ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。これらのヨードニウム塩のうち、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0071】
スルホンイミド化合物としては、例えば、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等が挙げられる。
【0072】
[C]酸発生剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して1質量部以上50質量部以下が好ましく、3質量部以上20質量部以下がより好ましい。1質量部未満では、硬化性が低下する場合があり、50質量部を超えると塗布性が低下する場合がある。
【0073】
<[D]架橋剤>
[D]架橋剤は、当該レジスト下層膜形成用組成物が含有してもよい好適成分である。当該レジスト下層膜形成用組成物が[D]架橋剤を含有することで、当該レジスト下層膜形成用組成物は、この[D]架橋剤と[A]重合体や他の架橋剤分子が有する架橋性基とを結合させ、形成されるレジスト下層膜をより硬化させることができる。[D]架橋剤としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート化合物、エポキシ化合物、ヒドロキシメチル基置換フェノール化合物、アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物等が挙げられる。なお、[D]架橋剤は、1種又は2種以上を併用できる。
【0074】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0075】
上記エポキシ化合物としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0076】
上記ヒドロキシメチル基置換フェノール化合物としては、例えば、2−ヒドロキシメチル−4,6−ジメチルフェノール、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、3,5−ジヒドロキシメチル−4−メトキシトルエン[2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール]等が挙げられる。
【0077】
上記アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物としては、例えば、(ポリ)メチロール化メラミン、(ポリ)メチロール化グリコールウリル、(ポリ)メチロール化ベンゾグアナミン、(ポリ)メチロール化ウレア等の一分子内に複数個の活性メチロール基を有する含窒素化合物であって、そのメチロール基の水酸基の水素原子の少なくとも一つが、メチル基やブチル基等のアルキル基によって置換された化合物等が挙げられる。なお、アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物は、複数の置換化合物を混合した混合物でもよく、一部自己縮合してなるオリゴマー成分を含むものであってもよい。
【0078】
これらの架橋剤のうち、アルコキシアルキル化されたアミノ基を有する化合物が好ましく、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリルがより好ましい。
【0079】
[D]架橋剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、3質量部以上100質量部以下が好ましく、5質量部以上50質量部以下がより好ましい。[D]架橋剤の配合量が3質量部未満であると、形成されたレジスト下層膜の硬度が不十分となるおそれがある。一方、[D]架橋剤の配合量が100質量部を超えると、塗布性が悪化する場合がある。
【0080】
<その他の任意成分>
当該レジスト下層膜形成用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必須成分である[A]重合体、好適成分である[B]溶媒、[C]酸発生剤及び[D]架橋剤以外のその他の任意成分を含有してもよい。また、その他の任意成分の含有量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0081】
<レジスト下層膜形成用組成物の調製方法>
当該レジスト下層膜形成用組成物は、必須成分である[A]重合体、好適成分である[B]溶媒、[C]酸発生剤及び[D]架橋剤、必要に応じてその他の任意成分等を所定の割合で混合することにより調製できる。
【0082】
<レジスト下層膜の形成方法>
本発明のレジスト下層膜の形成方法は、
(1−1)当該レジスト下層膜形成用組成物を用い、基板上に塗膜を形成する工程(以下、「工程(1−1)」ともいう)、及び
(1−2)上記塗膜の加熱によりレジスト下層膜を形成する工程(以下、「工程(1−2)」ともいう)
を有する。
当該レジスト下層膜の形成方法が上記特定の工程を有することで、当該レジスト下層膜の形成方法は、高い耐熱性を有するレジスト下層膜を形成することができる。このレジスト下層膜の形成方法は、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法におけるレジスト下層膜の形成に用いられることが好ましい。以下、各工程について説明する。
【0083】
[工程(1−1)]
本工程では、当該レジスト下層膜形成用組成物を用い、基板上に塗膜を形成する。上記基板としては、例えば、シリコンウエハ、アルミニウムで被覆したウエハ等を使用することができる。また、基板へのレジスト下層膜形成用組成物の形成方法は特に限定されず、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の方法で実施することができる。
【0084】
[工程(1−2)]
本工程では、上記塗膜の加熱によりレジスト下層膜を形成する。上記塗膜の加熱は、通常、大気下で行われる。加熱温度としては、通常、300℃〜500℃であり、好ましくは350℃〜450℃程度である。加熱温度が300℃未満である場合、酸化架橋が十分に進行せず、レジスト下層膜として必要な特性が発現しないおそれがある。加熱時間は通常、30秒〜1200秒であり、好ましくは60秒〜600秒である。
【0085】
塗膜形成(硬化)時の酸素濃度は5容量%以上であることが好ましい。塗膜形成時の酸素濃度が低い場合、レジスト下層膜の酸化架橋が十分に進行せず、レジスト下層膜として必要な特性が発現できないおそれがある。
【0086】
上記塗膜を300℃〜500℃の温度で加熱する前に、60℃〜250℃の温度で予備加熱しておいてもよい。予備加熱における加熱時間は特に限定されないが、10秒〜300秒であることが好ましく、より好ましくは30秒〜180秒である。この予備加熱を行うことにより、溶媒を予め気化させて、膜を緻密にしておくことで、脱水素反応を効率良く進めることができる。
【0087】
なお、当該レジスト下層膜の形成方法においては、通常、上記塗膜の加熱により塗膜が硬化され、レジスト下層膜が形成されるが、レジスト下層膜形成用組成物に所定の光硬化剤(架橋剤)を含有させることにより、加熱された塗膜に対する光照射工程を設けて、光硬化させ、レジスト下層膜を形成することもできる。この際に露光される放射線は、レジスト下層膜形成用組成物に配合される[C]酸発生剤の種類等に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適宜選択される。
【0088】
<レジスト下層膜>
本発明のレジスト下層膜は、当該レジスト下層膜形成用組成物から形成される。このレジスト下層膜は、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法におけるレジスト下層膜として用いられることが好ましい。当該レジスト下層膜は当該レジスト下層膜形成用組成物から形成されているため、当該レジスト下層膜は、高い耐熱性を有する。
【0089】
<パターンの形成方法>
本発明のパターン形成方法は、
(1)当該レジスト下層膜形成用組成物を用い、基板上にレジスト下層膜を形成する工程(以下、「工程(1)」ともいう)、
(2)レジスト組成物を用い、上記レジスト下層膜上にレジスト被膜を形成する工程(以下、「工程(2)」ともいう)、
(3)上記レジスト被膜からレジストパターンを形成する工程(以下、「工程(3)」ともいう)、及び
(4)上記レジストパターンをマスクとして用い、上記レジスト下層膜及び上記基板を順次ドライエッチングして、上記基板に所定のパターンを形成する工程(以下、「工程(4)」ともいう)を有する。
当該パターン形成方法では当該レジスト下層膜形成用組成物を用いてレジスト下層膜を形成するため、当該パターン形成方法は、形成されるレジスト下層膜パターンの高い曲がり耐性を維持しつつ、レジスト下層膜の耐熱性を高めることができる。
【0090】
上記レジスト組成物がフォトレジスト組成物であり、
上記工程(3)が、
(3−1)上記レジスト被膜を、選択的な放射線の照射により露光する工程(以下、「(3−1)工程」ともいう)、及び
(3−2)露光された上記レジスト被膜を現像する工程(以下、「(3−2)工程」ともいう)
を含むことが好ましい。
上記レジスト組成物がフォトレジスト組成物であり、上記工程(3)が上記工程を含むことで、当該パターン形成方法は、より微細化なパターンを簡便かつ確実に形成することができる。以下、各工程について説明する。
【0091】
[工程(1)]
本工程では、基板上に、レジスト下層膜形成用組成物を用いてレジスト下層膜を形成する。上記レジスト下層膜形成用組成物としては、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法に使用されるレジスト下層膜形成用組成物であることが好ましい。なお、レジスト下層膜の形成方法については、上述のレジスト下層膜の形成方法をそのまま適用することができる。この工程(1)で形成されるレジスト下層膜の膜厚は、通常、0.05μm〜5μmである。
【0092】
また、このパターン形成方法においては、工程(1)の後に、必要に応じて、レジスト下層膜上に中間層(中間被膜)を形成する工程(1’)をさらに有していてもよい。この中間層は、レジストパターン形成において、レジスト下層膜及び/又はレジスト被膜が有する機能をさらに補ったり、これらが有していない機能をこれらに与えたりするためにこれらの機能が付与された層のことである。例えば、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成方法において反射防止膜を中間層として形成した場合、レジスト下層膜の反射防止機能をさらに補うことができる。
【0093】
この中間層は、有機化合物や無機酸化物により形成することができる。上記有機化合物としては、市販品として、例えば、「DUV−42」、「DUV−44」、「ARC−28」、「ARC−29」(以上、Brewer Science製);「AR−3」、「AR−19」(以上、ローム アンド ハース製)等が挙げられる。上記無機酸化物としては、市販品として、例えば、「NFC SOG01」、「NFC SOG04」、「NFC SOG080」(以上、JSR製)等が挙げられる。また、CVD法により形成されるポリシロキサン、酸化チタン、酸化アルミナ、酸化タングステン等を用いることができる。
【0094】
中間層を形成するための方法は特に限定されないが、例えば、塗布法やCVD法等を用いることができる。これらの中でも、塗布法が好ましい。塗布法を用いた場合、レジスト下層膜を形成後、中間層を連続して形成することができる。また、中間層の膜厚としては特に限定されず、中間層に求められる機能に応じて適宜選択されるが、10nm〜3,000nmが好ましく、20nm〜300nmがより好ましい。
【0095】
[工程(2)]
本工程では、レジスト組成物を用い、上記レジスト下層膜上にレジスト被膜を形成する。具体的には、得られるレジスト被膜が所定の膜厚となるようにレジスト組成物を塗布した後、プレベークすることによって塗膜中の溶媒を揮発させることにより、レジスト被膜が形成される。
【0096】
上記レジスト組成物としては、例えば、光酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等のフォトレジスト組成物、特開2012−079865号公報に記載のナノインプリント法における組成物、特開2008−149447号公報に記載のナノ構造化されたパターン製造方法におけるブロックコポリマーを含有する組成物(以下、「自己組織化組成物」ともいう)等が挙げられる。
【0097】
上記レジスト組成物の全固形分濃度としては、通常、1〜50質量%程度である。また、上記レジスト組成物は、一般に、例えば、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過して、レジスト被膜の形成に供される。なお、この工程では、市販のレジスト組成物をそのまま使用することもできる。
【0098】
レジスト組成物の塗布方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート法等が挙げられる。また、プレベークの温度としては、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、通常、30℃〜200℃程度、好ましくは50℃〜150℃である。
【0099】
[工程(3)]
本工程では、上記レジスト被膜からレジストパターンを形成する。このレジストパターンの形成方法としては特に限定されず、例えば、ナノインプリント法を用いて形成する方法、自己組織化組成物を用いて形成する方法、フォトリソグラフィ法を用いて形成する方法等が挙げられる。これらの中で、より微細なパターンを簡便かつ確実に形成できる観点から、フォトリソグラフィ法を用いて形成する方法が好ましい。フォトリソグラフィ法を用いる場合、工程(3)には、通常上記工程(3−1)及び工程(3−2)が含まれる。
【0100】
[工程(3−1)]
本工程では、上記レジスト被膜を、選択的な放射線の照射により露光する。露光に用いられる放射線としては、フォトレジスト組成物に使用される光酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択される。これらの中で、遠紫外線が好ましく、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、Fエキシマレーザー光(波長157nm)、Krエキシマレーザー光(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー光(波長134nm)、極紫外線(波長13nm等)がより好ましい。
【0101】
上記露光後、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、ポストベークを行うことができる。このポストベークの温度は、使用されるフォトレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、通常、50℃〜200℃程度、好ましくは70℃〜150℃である。
【0102】
[工程(3−2)]
本工程では、露光された上記レジスト被膜を現像してレジストパターンを形成する。本工程で用いられる現像液は、使用されるフォトレジスト組成物の種類に応じて適宜選択される。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液が挙げられる。これらのアルカリ性水溶液には、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類などの水溶性有機溶媒、界面活性剤等を適量添加することもできる。
【0103】
上記現像液での現像後、洗浄し、乾燥することによって、所定のレジストパターンが形成される。
【0104】
[工程(4)]
本工程では、上記レジストパターンをマスクとして用い、上記レジスト下層膜及び上記基板を順次ドライエッチングして、上記基板に所定のパターンを形成する。このドライエッチングには、例えば、酸素プラズマ等のガスプラズマ等が用いられる。レジスト下層膜のドライエッチングの後、上記基板をドライエッチングすることにより、所定のパターンを有する基板が得られる。
【実施例】
【0105】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に制限されるものではない。
【0106】
なお、[A]重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、東ソー製のGPCカラム(G2000HXL:2本、G3000HXL:1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶剤:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフ(検出器:示差屈折計)により測定した。また、各膜厚は、分光エリプソメータ(M2000D、J.A.WOOLLAM製)を用いて測定した。
【0107】
<[A]重合体の合成>
[合成例1](A−1)の合成
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、単量体としての1,2−ジヨードベンゼン100質量部及び1,3−ジエチニルベンゼン100質量部、触媒としてのビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム3質量部及びヨウ化銅(I)2質量部、塩基性化合物としてのピペリジン200質量部、並びに溶媒としてのテトラヒドロフラン500質量部を配合し、攪拌しつつ、30℃で4時間縮合重合反応を行い反応液を得た。この反応液にメタノールを加えて再沈殿を行い、得られた沈殿物を乾燥させて下記式で表される構造単位を有する重合体(A−1)を得た。(A−1)のMwは、2,000であった。
【0108】
【化5】

【0109】
[合成例2](A−2)の合成
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、単量体としての1,3−ジヨードベンゼン100質量部及び4,4’−ジエチニルジフェニルエーテル100質量部、触媒としてのビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム3質量部及びヨウ化銅(I)2質量部、塩基性化合物としてのピペリジン200質量部、並びに溶媒としてのテトラヒドロフラン500質量部を配合し、攪拌しつつ30℃で4時間縮合重合反応を行い反応液を得た。この反応液にメタノールを加えて再沈殿を行い、得られた沈殿物を乾燥させて下記式で表される構造単位を有する重合体(A−2)を得た。(A−2)のMwは、3,000であった。
【0110】
【化6】

【0111】
[合成例3](A−3)の合成
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、単量体としての4,4’−(ジ−o−ヨードベンゾイル)ジフェニルエーテル100質量部及び4,4’−ジエチニルジフェニルエーテル100質量部、触媒としてのビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム3質量部及びヨウ化銅(I)2質量部、塩基性化合物としてのピペリジン200質量部、並びに溶媒としてのテトラヒドロフラン500質量部を配合し、攪拌しつつ30℃で4時間縮合重合反応を行い反応液を得た。この反応液にメタノールを加えて再沈殿を行い、得られた沈殿物を乾燥させて下記式で表される構造単位を有する重合体(A−3)を得た。(A−3)のMwは、4,000であった。
【0112】
【化7】

【0113】
[合成例4](a−1)の合成
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、単量体としての1,3−ジエチニルベンゼン100質量部及びフェニルアセチレン150質量部、触媒としての塩化銅100質量部、並びに塩基性化合物としてのピリジン1,000質量部を配合し、攪拌しながら30℃で1時間縮合重合反応を行い反応液を得た。この反応液にイソプロピルアルコール/水(質量比:1/1)を加えて再沈殿を行い、得られた沈殿物を乾燥させて下記式で表される構造単位を有する重合体(a−1)を得た。(a−1)のMwは、1,500であった。
【0114】
【化8】

【0115】
<レジスト下層膜形成用組成物の調製>
[A]重合体以外の各成分について以下に示す。
【0116】
[B]溶媒
B−1:シクロヘキサノン
【0117】
[C]酸発生剤
下記式(C−1)で表される化合物
【0118】
【化9】

【0119】
[D]架橋剤
下記式(D−1)で表される化合物(ニカラックN−2702、三和ケミカル製)
【0120】
【化10】

【0121】
[実施例1]
[A]重合体として(A−1)10質量部及び[B]溶媒として(B−1)100質量部を混合して溶液を得た。そして、この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過することによりレジスト下層膜形成用組成物を調製した。
【0122】
[実施例2〜4及び比較例1]
混合する各成分の種類及び配合量(質量部)を表1に記載した通りとした以外は、実施例1と同様に操作して、各レジスト下層膜形成用組成物を調製した。なお、表1中、「−」で表記した欄は、その成分を配合していないことを示している。
【0123】
【表1】

【0124】
<フォトレジスト組成物に用いるベース重合体の合成>
[合成例5]
下記式で表される化合物(M−1)11.92g、化合物(M−2)41.07g、化合物(M−3)15.75g、化合物(M−4)11.16及び化合物(M−5)20.10g及びジメチル2,2’−アゾビス(2−イソブチロニトリル)3.88gを2−ブタノン200gに溶解した。1,000mLの三口フラスコに2−ブタノン100gを投入し、30分窒素パージした後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱した。そこへ、調製した溶液を4時間かけて滴下し、さらに滴下終了後2時間80℃にて熟成した。重合終了後、重合溶液を水冷することにより30℃以下に冷却した。その重合溶液をエバポレーターにて重合溶液の質量が200gになるまで減圧濃縮した。その後、重合液を1,000gのメタノールへ投入し、再沈操作を行った。析出したスラリーを吸引濾過して濾別し、固形分をメタノールにて3回洗浄した。得られた粉体を60℃15時間真空乾燥し、白色粉体(ベース重合体)を88.0g(収率88%)得た。得られたベース重合体のMwは9,300、Mw/Mnは1.60であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)、(M−2)、(M−3)、(M−4)及び(M−5)に由来する構造単位の含有割合は、それぞれ16mol%、26mol%、19mol%、11mol%及び28mol%であった。なお、13C−NMR分析は(日本電子製、JNM−ECP500)を使用した。
【0125】
【化11】

【0126】
<フォトレジスト組成物に用いるフッ素原子含有重合体の合成>
[合成例6]
下記式で表される化合物(M−6)3.8g及び化合物(M−7)1.2gを、2−ブタノン10gに溶解し、更に2,2’−アゾビス(2−イソブチロニトリル)0.09gを100mLの三口フラスコに投入した。30分窒素パージした後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、過熱開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液を水冷することにより30℃以下に冷却し、エバポレーターにて重合溶液の質量が12.5gになるまで減圧濃縮した。重合液を0℃に冷却したn−ヘキサン75gへゆっくり投入し、固形分を析出させた。混合液を濾過し、固形分をn−ヘキサンで洗浄し、得られた粉体を40℃で15時間真空乾燥し、白色の粉体(フッ素原子含有重合体)を3.75g(収率75%)得た。フッ素原子含有重合体のMwは9,400、Mw/Mnは1.50であった。13C−NMR分析の結果、化合物(M−6)及び(M−7)に由来する構造単位の含有割合は、それぞれ68.5mol%及び31.5mol%であった。フッ素原子含有率は、21.4質量%であった。
【0127】
【化12】

【0128】
<フォトレジスト組成物の調製>
[調製例] 酸発生剤としてトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート8質量部、合成例5で得られたベース重合体100質量部、合成例6で得られたフッ素原子含有重合体5質量部、並びに酸拡散制御剤としてN−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン0.6質量部を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1,881質量部、シクロヘキサノン806質量部及びγ−ブチロラクトン200質量部に加え溶液とした。この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して、フォトレジスト組成物を調製した。
【0129】
<評価>
屈折率、減衰係数、曲がり耐性及び耐熱性を測定し、その結果を表2に示す。
【0130】
[屈折率及び減衰係数]
上記調製した各レジスト下層膜形成用組成物を、基板となる直径8インチのシリコンウエハ表面にスピンコートした後、350℃で2分間加熱を行い、膜厚250nmのレジスト下層膜を形成した。そして、分光エリプソメータ(M2000D、J.A.WOOLLAM製)を用い、形成されたレジスト下層膜の波長193nmにおける屈折率及び減衰係数を測定した。このとき、屈折率が1.3以上1.6以下かつ減衰係数が0.2以上0.8以下の場合を良好とした。
【0131】
[曲がり耐性]
直径12インチのシリコンウエハ上にCVD法にてシリコン酸化膜を0.3μm堆積した。次に、各レジスト下層膜形成用組成物をスピンコートし、350℃で120秒間加熱して膜厚0.25μmのレジスト下層膜を形成した。次に、このレジスト下層膜上に3層レジストプロセス用中間層組成物溶液(NFC SOG508、JSR製)をスピンコートした後、200℃で60秒間加熱し、引き続き300℃で60秒間加熱して膜厚0.04μmの中間層被膜を形成した。次に、この中間層被膜上に上記調製例で得られたフォトレジスト組成物をスピンコートし、100℃で60秒間プレベークして膜厚0.1μmのレジスト被膜を形成した。
【0132】
次に、ArF液浸露光装置(レンズ開口数1.30、露光波長193nm、NIKON製)を用い、マスクを介して最適露光時間露光した。次に、100℃で60秒間ポストベークした後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いてレジスト被膜を現像した。その後、水洗し、乾燥し、ポジ型レジストパターンを形成した。次に、このパターンが形成されたレジスト被膜をマスクとし、リアクティブ・イオン・エッチング方式のエッチング装置(Telius SCCM、東京エレクトロン製)を用いて中間層被膜を四フッ化炭素ガスによりドライエッチング処理し、レジスト被膜開口部の下に位置する中間層被膜が無くなったところでエッチング処理を停止して中間層被膜にレジストパターンを転写した。
【0133】
次に、上記レジストパターンを転写した中間層被膜をマスクとして用い、上記エッチング装置を用いて酸素と窒素の混合ガスにてドライエッチング処理し、中間層被膜開口部の下に位置するレジスト下層膜が無くなったところでエッチング処理を停止してレジスト下層膜に中間層被膜のパターンを転写した。次に、中間層被膜のパターンが転写されたレジスト下層膜をマスクとして用い、上記エッチング装置を用いて四フッ化炭素とアルゴンの混合ガスにてドライエッチング処理し、レジスト下層膜開口部の下に位置するシリコン酸化膜を0.1μmだけ除去したところでエッチング処理を停止した。
【0134】
そして、基板上に残ったレジスト下層膜パターンのうち、直線状パターンが等間隔で並ぶいわゆるライン・アンド・スペース・パターンの形状をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察した。このライン・アンド・スペース・パターンは繰り返し間隔が84nm固定で直線状パターンが等間隔に100本並んでおり、これを1組と見なす。同一基板上にはパターン幅が異なる21組のパターン群があり、それぞれパターン幅は50nmから30nmまで1nm刻みとなっている。ここで言うパターン幅とは、レジスト下層膜で形成されている等間隔に配置された直線パターンの1本あたりの幅である。基板上の同一設計パターンのうち、任意の5箇所を上記SEMにより各パターン幅のパターンを観察し、この観察結果を曲がり耐性とした。このとき、レジスト下層膜のパターンが全て垂直に立っていれば曲がり耐性は良好「A」、一カ所でも曲がっていれば不良「B」とした。
【0135】
[耐熱性]
直径8インチのシリコンウエハ上に、各レジスト下層膜形成用組成物をスピンコートして塗膜(レジスト下層膜)を形成し、この塗膜の膜厚を上記分光エリプソメータを用いて測定した(この測定値をXとする)。次に、このレジスト下層膜を350℃で120秒間加熱し、加熱後のレジスト下層膜の膜厚を上記分光エリプソメータを用いて測定した(この測定値をYとする)。そして、加熱前後のレジスト下層膜の膜厚減少率△FT(%)(△FT(%)=100×(X−Y)/X)を算出し、この算出値を耐熱性(%)とした。なお、耐熱性(%)の値が小さいほど、レジスト下層膜の加熱時に発生する昇華物や膜分解物が少なく、良好(高い耐熱性)であることを表している。
【0136】
【表2】

【0137】
表2から明らかなように、実施例1〜4のレジスト下層膜形成用組成物は、屈折率、減衰係数及び曲がり耐性についての特性を満たすと共に、比較例1に比べ、高い耐熱性を有している。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、レジスト下層膜に求められる屈折率及び減衰係数についての特性を満たすと共に、形成されるレジスト下層膜パターンの高い曲がり耐性を維持しつつ、高い耐熱性を有するレジスト下層膜を形成可能なレジスト下層膜形成用組成物、レジスト下層膜及びその形成方法、並びにパターン形成方法を提供することができる。そのため、本発明によれば、半導体製造プロセスにおいて、半導体デバイスの製造歩留まりを向上することができ、パターンの更なる微細化が進む半導体デバイスの製造プロセスに好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]下記式(1)で表される構造単位(I)を有する重合体
を含有するレジスト下層膜形成用組成物。
【化1】

(式(1)中、Ar1及びArは、それぞれ独立して、下記式(2)で表される2価の基である。)
【化2】

(式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して、2価の芳香族基である。Rは、単結合、−O−、−CO−、−SO−又は−SO−である。aは、0〜3の整数である。但し、aが2以上の場合、複数のR及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
上記式(2)におけるR及びRが、それぞれ独立して、下記式(3)で表される請求項1に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【化3】

(式(3)中、Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、炭素数1〜20のアルコキシ基又は炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基である。bは、0〜6の整数である。但し、bが2以上の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよい。cは、0又は1である。)
【請求項3】
[A]重合体のポリスチレン換算重量平均分子量が、500以上10,000以下である請求項1又は請求項2に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項4】
[B]溶媒をさらに含有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項5】
[C]酸発生剤をさらに含有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項6】
[D]架橋剤をさらに含有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項7】
(1−1)請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物を用い、基板上に塗膜を形成する工程、及び
(1−2)上記塗膜の加熱によりレジスト下層膜を形成する工程
を有するレジスト下層膜の形成方法。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜。
【請求項9】
(1)請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成用組成物を用い、基板上にレジスト下層膜を形成する工程、
(2)レジスト組成物を用い、上記レジスト下層膜上にレジスト被膜を形成する工程、
(3)上記レジスト被膜からレジストパターンを形成する工程、及び
(4)上記レジストパターンをマスクとして用い、上記レジスト下層膜及び上記基板を順次ドライエッチングして、上記基板に所定のパターンを形成する工程
を有するパターン形成方法。
【請求項10】
上記レジスト組成物がフォトレジスト組成物であり、
上記工程(3)が、
(3−1)上記レジスト被膜を、選択的な放射線の照射により露光する工程、及び
(3−2)露光された上記レジスト被膜を現像する工程
を含む請求項9に記載のパターン形成方法。


【公開番号】特開2013−83939(P2013−83939A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182784(P2012−182784)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】