説明

レジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法

【課題】エッチング耐性に優れ、ドライエッチングプロセスにおいて、下層膜パターンが折れ曲がり難く、レジストパターンを忠実に再現性よく被加工基板に転写することが可能なレジスト下層膜形成用組成物を提供する。
【解決手段】レジスト下層膜形成用組成物は、(A)ターシャリブトキシカルボニル基を含むフラーレン誘導体化合物と、(B)溶剤と、を含有するレジスト下層膜形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の放射線を用いるリソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造に好適なレジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法に関する。更に詳しくは、エッチング耐性に優れ、ドライエッチングプロセスにおいて、下層膜パターンが折れ曲がり難く、レジストパターンを忠実に再現性よく被加工基板に転写することが可能なレジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスにおいては、シリコンウェハ上に被加工膜として複数の物質を堆積し、これを所望のパターンにパターニングする工程を多く含んでいる。被加工膜のパターニングにおいては、まず、一般にレジストと呼ばれる感光性物質を被加工膜上に堆積してレジスト膜を形成し、このレジスト膜の所定の領域に露光を施す。次いで、レジスト膜の露光部又は未露光部を現像処理により除去してレジストパターンを形成し、更にこのレジストパターンをエッチングマスクとして被加工膜をドライエッチングする。
【0003】
このようなプロセスにおいては、レジスト膜に露光を施すための露光光源としてArFエキシマレーザー等の紫外光が用いられている。現在、大規模集積回路(LSI)の微細化に対する要求が益々高まっており、必要とする解像度が露光光の波長以下になることがある。このように解像度が露光光の波長以下になると、露光量裕度、フォーカス裕度等の露光プロセス裕度が不足することとなる。このような露光プロセス裕度の不足を補うためには、レジスト膜の膜厚を薄くして解像性を向上させることが有効であるが、一方で被加工膜のエッチングに必要なレジスト膜厚を確保することが困難になってしまう。
【0004】
このようなことから、被加工膜上にレジスト下層膜(以下、単に「下層膜」ということがある)を形成し、レジストパターンを一旦、下層膜に転写して下層膜パターンを形成した後、この下層膜パターンをエッチングマスクとして用いて被加工膜に転写するプロセスの検討が行われている。このようなプロセスにおいて、下層膜としてはエッチング耐性を有する材料からなるものが好ましい。例えば、このような下層膜を形成する材料としては、エッチング中のエネルギーを吸収し、エッチング耐性があることで知られるベンゼン環を含む樹脂、特に、熱硬化フェノールノボラックを含有する組成物や、アセナフチレン骨格を有する重合体を含有する組成物等が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
また、下層膜を形成する材料として、フェノール性水酸基を有していてもよい炭素数6〜16のアリール基を有する特定のフラーレン類を含有する組成物についても提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−40293号公報
【特許文献2】特開2000−143937号公報
【特許文献3】特開2006−227391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エッチングパターンの更なる微細化に伴い、レジスト下層膜のオーバーエッチングが大きな問題となり、エッチング耐性の更なる向上が求められている。また、このエッチングパターンの更なる微細化に伴い、下層膜パターンのアスペクト比(下層膜パターンの膜厚に対するパターン幅(線幅)の比)が高くなり、被加工基板のエッチング時に下層膜パターンが折れ曲がるという問題も生じていた。例えば、特許文献3に記載された組成物は、下層膜パターンとしては曲がり耐性が弱いため、被加工基板のエッチング時に下層膜パターンが折れ曲がってしまい、レジストパターンを忠実に被加工基板に転写することができなかった。
【0008】
本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、各種の放射線を用いるリソグラフィープロセスにおける微細加工に好適に用いることができ、エッチング耐性に優れ、特に、ドライエッチングプロセスにおいて、下層膜パターンが折れ曲がり難く、レジストパターンを忠実に再現性よく被加工基板に転写することが可能なレジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、このようなレジスト下層膜形成用組成物を開発すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のフラーレン誘導体化合物を含有するレジスト下層膜形成用組成物から形成したレジスト下層膜が、従来のレジスト下層膜よりもエッチング耐性に優れ、且つ被加工基板エッチング時に下層膜パターンが折れ曲がらないことを見出し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下のレジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法が提供される。
【0010】
[1] 下記式(1)で表される(A)フラーレン誘導体化合物と、(B)溶剤と、を含有するレジスト下層膜形成用組成物。
【0011】
【化1】

(但し、式(1)中、tBuは、ターシャリーブチル基を示す)
【0012】
[2] 更に(C)酸発生剤を含有する前記[1]に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【0013】
[3] 更に(D)架橋剤を含有する前記[1]又は[2]に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【0014】
[4] 更に(E)熱硬化性樹脂を含有する前記[1]〜[3]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【0015】
[5] 前記[1]〜[4]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗布し、塗布した前記レジスト下層膜形成用組成物を前記被加工基板とともに不活性ガス雰囲気下で焼成することにより、前記被加工基板上にレジスト下層膜を形成するレジスト下層膜の形成方法。
【0016】
[6] 前記[1]〜[4]のいずれかに記載のレジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗布してレジスト下層膜を形成する工程(1)と、得られた前記レジスト下層膜上に、レジスト組成物を塗布してレジスト被膜を形成する工程(2)と、得られた前記レジスト被膜に、フォトマスクを透過させることにより選択的に放射線を照射して前記レジスト被膜を露光する工程(3)と、露光した前記レジスト被膜を現像して、レジストパターンを形成する工程(4)と、前記レジストパターンをマスクとして、前記レジスト下層膜及び前記被加工基板をドライエッチングしてパターンを形成する工程(5)と、を備えたパターン形成方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物によれば、エッチング耐性に優れ、且つ被加工基板エッチング時にレジスト下層膜に形成された下層膜パターンが折れ曲がらないレジスト下層膜を形成することができる。特に、エッチング耐性に優れたレジスト下層膜は、ドライエッチングプロセスにおいて、精密なパターン転写性能及び良好なエッチング選択性を有することになり、レジスト下層膜のオーバーエッチングが少なく、被加工基板にレジストパターンを再現性よく忠実に転写することができる。また、被加工基板エッチング時に下層膜パターンが折れ曲がらないため、リソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造において歩留りの向上が期待できる。
【0018】
また、本発明のレジスト下層膜の形成方法は、上記した本発明のレジスト下層膜形成用組成物を用いて、被加工基板上に、エッチング耐性に優れ、且つ被加工基板エッチング時に下層膜パターンが折れ曲がらないレジスト下層膜を形成することができる。また、本発明のパターン形成方法は、ドライエッチングプロセスにおいて、被加工基板にレジストパターンを再現性よく忠実に転写することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0020】
[1]レジスト下層膜形成用組成物:
まず、本発明のレジスト下層膜形成用組成物の実施形態について説明する。本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、下記式(1)で表される(A)フラーレン誘導体化合物と、(B)溶剤と、を含有する組成物である。
【0021】
【化2】

(但し、式(1)中、tBuは、ターシャリーブチル基を示す)
【0022】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物によれば、エッチング耐性に優れ、且つ被加工基板エッチング時に下層膜パターンが折れ曲がらないレジスト下層膜(以下、単に「下層膜」ということがある)を形成することができる。特に、ドライエッチングプロセスにおいて、精密なパターン転写性能及び良好なエッチング選択性を有することになり、レジスト下層膜のオーバーエッチングが少なく、被加工基板にレジストパターンを再現性よく忠実に転写することができる。また、被加工基板エッチング時に下層膜パターンが折れ曲がらないため、リソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造において歩留りの向上が期待できる。
【0023】
上記したようにレジスト下層膜の耐久性を向上させ、且つ下層膜パターンが折れ曲がらないようにするためには、レジスト下層膜の炭素含有量を高くし、水素含有量を低くすることが有効である。本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、例えば、単なるフラーレン誘導体を含有する公知のレジスト下層膜形成用組成物と比較して、レジスト下層膜の炭素含有量を増加させ、且つ水素含有量を減少させることができる。
【0024】
具体的には、本発明のレジスト下層膜形成用組成物に用いられる(A)フラーレン誘導体化合物は、フラーレン骨格に、四つのt−ブトキシカルボニルピペラジン基が結合し、更にこのフラーレン骨格にエポキシドが形成されたものであるため、レジスト下層膜を形成する際に実質的にレジスト下層膜の炭素含有量を下げ且つ水素含有量を上げる、四つのt−ブトキシカルボニルピペラジン基が分解し、レジスト下層膜の炭素含有量を増加させ、且つ水素含有量を減少させることができる。
【0025】
また、フラーレン骨格の一部がエポキシ化して形成されたエポキシドにより、比較的低温での架橋が可能となり、レジスト下層膜を形成する際の焼成工程において、焼成温度を低くすることができる。
【0026】
ここで、「フラーレン」とは、炭素原子が球状又はラグビーボール状に配置して形成される閉殻状の炭素クラスターを意味する。その炭素数は通常60以上、120以下である。具体例としては、C60(いわゆるバックミンスター・フラーレン)、C70,C76,C78,C82,C84,C90,C94,C96及びより高次の炭素クラスターが挙げられる。このうち、入手しやすい点で、C60,C70が好ましく、特にC60が好ましい。
【0027】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、フラーレン骨格にt−ブトキシカルボニルピペラジン基を有し、フラーレン骨格にエポキシドが形成された前記式(1)で表されるフラーレン誘導体化合物と、(B)溶剤とを含有するものあるが、(C)酸発生剤を更に含有してもよい。このような(C)酸発生剤を更に含有することにより、常温を含む比較的低温で(A)フラーレン誘導体化合物のt−ブトキシカルボニルピペラジン基の分解が促進されて、炭素含有量が高く、水素含有量の低いレジスト下層膜を良好に形成することができる。さらに、フラーレン骨格に形成されたエポキシドの分解が促進され低温での硬化が可能となる。
【0028】
また、本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、(D)架橋剤を更に含有してもよい。このような(D)架橋剤は、得られるレジスト下層膜と、その上に形成されるレジスト被膜との間のインターミキシングを防止し、更にレジスト下層膜におけるクラックの発生を防止することができる。
【0029】
また、本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、(E)熱硬化性樹脂を更に含有してもよい。このような(E)熱硬化性樹脂は、加熱により(E)熱硬化性樹脂が硬化して溶剤に不溶となり、得られるレジスト下層膜と、その上に形成されるレジスト被膜との間のインターミキシングを防止することができる。
【0030】
[1−1](A)フラーレン誘導体化合物:
本発明のレジスト下層膜形成用組成物に用いられる(A)フラーレン誘導体化合物は、フラーレン骨格に、四つのt−ブトキシカルボニルピペラジン基が結合し、更にこのフラーレン骨格にエポキシドが形成されたフラーレン誘導体化合物である。このような(A)フラーレン誘導体化合物は、フラーレンとt−ブトキシカルボニルピペラジンとを反応させて得ることができる。
【0031】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物に用いられる(A)フラーレン誘導体化合物は、具体的には、フロンティアカーボン社製、商品名「nanon spectra J201」や商品名「nanon spectra J202」などを用いることが可能である。
【0032】
上記したように、t−ブトキシカルボニルピペラジンを用いて合成された(A)フラーレン誘導体化合物は、レジスト下層膜を形成する際に、t−ブトキシカルボニルピペラジンの分解により、実質的にレジスト下層膜の炭素含有量を下げて、水素含有量を上げるアミノ基が分解して、レジスト下層膜の炭素含有量を高くし、水素含有量を低くすることができる。また、フラーレン骨格にあるエポキシドにより低温での架橋が可能となる。
【0033】
[1−2](B)溶剤:
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、(B)溶剤を含有するものである。(B)溶剤は、上記した(A)フラーレン誘導体化合物を溶解し得るものである。例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のトリエチレングリコールジアルキルエーテル類;
【0034】
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエテルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
【0035】
乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸i−プロピル、乳酸n−ブチル、乳酸i−ブチル等の乳酸エステル類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸n−プロピル、ギ酸i−プロピル、ギ酸n−ブチル、ギ酸i−ブチル、ギ酸n−アミル、ギ酸i−アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸i−アミル、酢酸n−ヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸i−プロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、酪酸i−ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;
【0036】
ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができ、これらを適宜選択して使用することができる。
【0037】
これらの(B)溶剤のうち、好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、酢酸n−ブチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等である。(B)溶剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0038】
(B)溶剤の使用量については特に制限はないが、例えば、本発明のレジスト下層膜形成用組成物の固形分濃度が5〜80質量%となるように含有されていることが好ましい。なお、本発明のレジスト下層膜形成用組成物の固形分濃度は、5〜40質量%であることが更に好ましく、10〜30質量%であることが特に好ましい。レジスト下層膜形成用組成物の固形分濃度が5〜80質量%であると、被加工基板上にレジスト下層膜形成用組成物を良好に塗工することができる。
【0039】
[1−3](C)酸発生剤:
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、本発明における所期の効果を損なわない限り、必要に応じて、(C)酸発生剤を含有していてもよい。
【0040】
この(C)酸発生剤は、露光或いは加熱により酸を発生する成分である。露光により酸を発生する酸発生剤(以下、「光酸発生剤」という)としては、例えば、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムナフタレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムナフタレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、トリフェニルスルホニウム10−カンファースルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−ヒドロキシフェニル・フェニル・メチルスルホニウムp−トルエンスルホネート、4−ヒドロキシフェニル・ベンジル・メチルスルホニウムp−トルエンスルホネート、
【0041】
シクロヘキシル・メチル・2−オキソシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジシクロヘキシルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、2−オキソシクロヘキシルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シアノ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シアノ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ニトロ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ニトロ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メチル−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メチル−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジエチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0042】
1−(4−ヒドロキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシメトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシメトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(1−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−メトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−エトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−プロポキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、
【0043】
1−(4−i−プロポキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−t−ブトキシカルボニルオキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(2−テトラヒドロフラニルオキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−〔4−(2−テトラヒドロピラニルオキシ)ナフタレン−1−イル〕テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−ベンジルオキシ)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(ナフチルアセトメチル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート等のオニウム塩系光酸発生剤類;
【0044】
フェニルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−メトキシフェニルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1−ナフチルビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン含有化合物系光酸発生剤類;1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロリド、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロリド、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンの1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル等のジアゾケトン化合物系光酸発生剤類;4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン等のスルホン化合物系光酸発生剤類;ベンゾイントシレート、ピロガロールのトリス(トリフルオロメタンスルホネート)、ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート、トリフルオロメタンスルホニルビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメタンスルホネート等のスルホン酸化合物系光酸発生剤類等を挙げることができる。
【0045】
これらの光酸発生剤のなかでも、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムナフタレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムナフタレンスルホネート等を好適に用いることができる。なお、これらの光酸発生剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0046】
また、加熱により酸を発生する酸発生剤(以下、「熱酸発生剤」という)としては、例えば、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、アルキルスルホネート類等を挙げることができる。これらの熱酸発生剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。なお、(C)酸発生剤として、光酸発生剤と熱酸発生剤とを併用することもできる。
【0047】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、このような光酸発生剤や熱酸発生剤等の(C)酸発生剤を含有することにより、常温を含む比較的低温で(A)フラーレン誘導体化合物のアミノ基の分解が促進され、有効に炭素含有量が高く、且つ水素含有量が低いレジスト下層膜を得ることができる。
【0048】
(C)酸発生剤の配合量は、上記した(A)フラーレン誘導体化合物100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、0.1〜30質量部であることが更に好ましく、0.1〜10質量部であることが特に好ましい。このように構成することによって、上記した効果を良好に得ることができる。
【0049】
[1−4](D)架橋剤:
本発明の下層膜用組成物は、本発明における所期の効果を損なわない限り、必要に応じて、(D)架橋剤を含有していてもよい。この(D)架橋剤は、得られるレジスト下層膜と、その上に形成されるレジスト被膜との間のインターミキシングを防止し、更にはレジスト下層膜におけるクラックの発生を防止する作用を有する成分である。
【0050】
このような(D)架橋剤としては、多核フェノール類や、種々の市販の硬化剤を使用することができる。上記多核フェノール類としては、例えば、4,4’−ビフェニルジオール、4,4’−メチレンビスフェノール、4,4’−エチリデンビスフェノール、ビスフェノールA等の2核フェノール類;4,4’,4’’−メチリデントリスフェノール、4,4’−〔1−{4−(1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル)フェニル}エチリデン〕ビスフェノール等の3核フェノール類;ノボラック等のポリフェノール類等を挙げることができる。これらのなかでも、4,4’−〔1−{4−(1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル)フェニル}エチリデン〕ビスフェノール、ノボラック等が好ましい。なお、これらの多核フェノール類は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0051】
また、上記硬化剤としては、例えば、2,3−トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、3,4−トリレンジイソシアナート、3,5−トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、1,4−シクロヘキサンジイソシアナート等のジイソシアナート類や、以下商品名で、エピコート812、同815、同826、同828、同834、同836、同871、同1001、同1004、同1007、同1009、同1031〔以上、油化シェルエポキシ社製〕、アラルダイト6600、同6700、同6800、同502、同6071、同6084、同6097、同6099〔以上、チバガイギー社製〕、DER331、同332、同333、同661、同644、同667〔以上、ダウケミカル社製〕等のエポキシ化合物;サイメル300、同301、同303、同350、同370、同771、同325、同327、同703、同712、同701、同272、同202、マイコート506、同508〔以上、三井サイアナミッド社製〕等のメラミン系硬化剤;サイメル1123、同1123−10、同1128、マイコート102、同105、同106、同130〔以上、三井サイアナミッド社製〕等のベンゾグアナミン系硬化剤;サイメル1170、同1172〔以上、三井サイアナミッド社製〕、ニカラックN−2702〔三和ケミカル社製〕等のグリコールウリル系硬化剤等を挙げることができる。これらのなかでも、メラミン系硬化剤、グリコールウリル系硬化剤等が好ましい。なお、これらの硬化剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、(D)架橋剤として、多核フェノール類と硬化剤とを併用することもできる。
【0052】
(D)架橋剤の配合量は、上記した(A)フラーレン誘導体化合物100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、1〜50質量部であることが更に好ましく、1〜20質量部であることが特に好ましい。このように構成することによって、得られるレジスト下層膜と、その上に形成されるレジスト被膜との間のインターミキシングを有効に防止し、更にはレジスト下層膜におけるクラックの発生を有効に防止することができる。
【0053】
[1−5](E)熱硬化性樹脂:
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、本発明における所期の効果を損なわない限り、必要に応じて、(E)熱硬化性樹脂を更に含有していてもよい。
【0054】
(E)熱硬化性樹脂としては、種々の熱硬化性樹脂を使用することができる。(E)熱硬化性樹脂は、加熱により硬化して溶剤に不溶となり、得られるレジスト下層膜と、その上に形成されるレジスト被膜との間のインターミキシングを防止する作用を有する成分である。このような(E)熱硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂類(熱硬化アクリル系樹脂類)、フェノール樹脂類、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、アミノ系樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類、エポキシ樹脂類、アルキド樹脂類等を挙げることができる。これらのなかでも、尿素樹脂類、メラミン樹脂類、芳香族炭化水素樹脂類等が好ましい。
【0055】
(E)熱硬化性樹脂の配合量は、上記した(A)フラーレン誘導体化合物100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、1〜10質量部であることが更に好ましい。このように構成することによって、得られるレジスト下層膜と、その上に形成されるレジスト被膜との間のインターミキシングを有効に防止することができる。
【0056】
[1−6](F)他の添加剤:
本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、本発明における所期の効果を損なわない限り、必要に応じて、放射線吸収剤、界面活性剤等の各種の(F)他の添加剤を含有していてもよい。
【0057】
上記放射線吸収剤としては、例えば、油溶性染料、分散染料、塩基性染料、メチン系染料、ピラゾール系染料、イミダゾール系染料、ヒドロキシアゾ系染料等の染料類;ビクシン誘導体、ノルビクシン、スチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体等の蛍光増白剤類;ヒドロキシアゾ系染料、商品名「チヌビン234」、「チヌビン1130」〔以上、チバガイギー社製〕等の紫外線吸収剤類;アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体等の芳香族化合物等を挙げることができる。なお、これらの放射線吸収剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0058】
放射線吸収剤の配合量は、前記(A)フラーレン誘導体化合物100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、1〜50質量部であることが更に好ましい。
【0059】
また、上記界面活性剤は、塗布性、ストリエーション、ぬれ性、現像性等を改良する作用を有する成分である。このような界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン−n−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−n−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤や、以下商品名で、KP341〔信越化学工業社製〕、ポリフローNo.75、同No.95〔以上、共栄社油脂化学工業社製〕、エフトップEF101、同EF204、同EF303、同EF352〔以上、トーケムプロダクツ社製〕、メガファックF171、同F172、同F173〔以上、大日本インキ化学工業社製〕、フロラードFC430、同FC431、同FC135、同FC93〔以上、住友スリーエム社製〕、アサヒガードAG710、サーフロンS382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106〔以上、旭硝子社製〕等を挙げることができる。なお、これらの界面活性剤は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0060】
界面活性剤の配合量は、上記した(A)フラーレン誘導体化合物100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましく、0.001〜10質量部であることが更に好ましい。
【0061】
また、本発明のレジスト下層膜形成用組成物は、上記した放射線吸収剤や界面活性剤以外にも、例えば、保存安定剤、消泡剤、接着助剤等の他の添加剤を更に含有していてもよい。
【0062】
[2]レジスト下層膜の形成方法:
次に、本発明のレジスト下層膜の形成方法の実施形態について説明する。本発明のレジスト下層膜の形成方法は、これまでに説明した本発明のレジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗布し、塗布したレジスト下層膜形成用組成物を被加工基板とともに不活性ガス雰囲気下で焼成することにより、被加工基板上にレジスト下層膜を形成するものである。本発明のレジスト下層膜の形成方法によれば、エッチング耐性に優れ、ドライエッチングプロセスにおいて、下層膜パターンが折れ曲がり難く、レジストパターンを忠実に再現性よく被加工基板に転写することが可能なレジスト下層膜を形成することができる。
【0063】
本発明のレジスト下層膜の形成方法に用いられる被加工基板としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、ポリシロキサン等の絶縁膜、以下、全て商品名で、ブラックダイヤモンド〔AMAT社製〕、シルク〔ダウケミカル社製〕、LKD5109〔JSR社製〕等の低誘電体絶縁膜で被覆したウェハ等の層間絶縁膜を使用することができる。また、この被加工基板としては、配線講(トレンチ)、プラグ溝(ビア)等のパターン化された基板を用いることもできる。
【0064】
被加工基板上にレジスト下層膜形成用組成物を塗布する方法については特に制限はなく、例えば、スピンコート法等を挙げることができる。
【0065】
本発明のレジスト下層膜の形成方法においては、上記したレジスト下層膜形成用組成物(具体的には、レジスト下層膜形成用組成物によって被加工基板上に形成された塗膜)を被加工基板とともに不活性ガス雰囲気下で焼成することにより硬化して、被加工基板上にレジスト下層膜を形成する。ここで不活性ガスとは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、キセノンガス、クリプトンガスのいずれかである。不活性ガス雰囲気下でレジスト下層膜を形成することにより、レジスト下層膜中の酸素含有量の増加を防止することができ、これにより、レジスト下層膜のエッチング耐性を更に向上させることができる。
【0066】
本発明のレジスト下層膜の形成方法における焼成温度は、特に限定されることはないが、90〜550℃であることが好ましく、90〜450℃であることが更に好ましく、90〜300℃であることが特に好ましい。レジスト下層膜形成用組成物が熱酸発生剤を含有している場合には、例えば、90〜150℃程度でも塗膜を十分に硬化させることができる。
【0067】
本発明のレジスト下層膜の形成方法によって形成されるレジスト下層膜の膜厚については、特に制限はないが、100〜20000nmであることが好ましい。
【0068】
また、本発明のレジスト下層膜の形成方法においては、レジスト下層膜形成用組成物によって形成された塗膜を、露光することにより硬化する工程を更に含んでいてもよい。露光に用いる放射線は、例えば、レジスト下層膜形成用組成物に(C)酸発生剤が更に含有されている場合には、この(C)酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択される。レジスト下層膜形成用組成物が光酸発生剤を含有している場合には、常温でも塗膜を十分に硬化させることができる。
【0069】
[3]パターン形成方法:
次に、本発明のパターン形成方法の実施形態について説明する。本発明のパターン形成方法は、これまでに説明した本発明のレジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗布してレジスト下層膜を形成する工程(1)と、得られたレジスト下層膜上に、レジスト組成物を塗布してレジスト被膜を形成する工程(2)と、得られたレジスト被膜に、フォトマスクを透過させることにより選択的に放射線を照射してレジスト被膜を露光する工程(3)と、露光したレジスト被膜を現像して、レジストパターンを形成する工程(4)と、レジストパターンをマスク(エッチングマスク)として、レジスト下層膜及び被加工基板をドライエッチングしてパターンを形成する工程(5)と、を備えたパターン形成方法である。
【0070】
本発明のパターン形成方法によれば、ドライエッチングプロセスにおいて、被加工基板にレジストパターンを再現性よく忠実に転写することができる。以下、本発明のパターン形成方法における各工程について更に具体的に説明する。
【0071】
[3−1]工程(1):
本発明のパターン形成方法の工程(1)では、上記した本発明のレジスト下層膜形成用組成物を用いて、被加工基板上にレジスト下層膜を形成する。これにより、被加工基板上にレジスト下層膜が形成されたレジスト下層膜付き基板を得ることができる。
【0072】
被加工基板としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、ポリシロキサン等の絶縁膜、以下、全て商品名で、ブラックダイヤモンド〔AMAT社製〕、シルク〔ダウケミカル社製〕、LKD5109〔JSR社製〕等の低誘電体絶縁膜で被覆したウェハ等の層間絶縁膜を使用することができる。また、この被加工基板としては、配線講(トレンチ)、プラグ溝(ビア)等のパターン化された基板を用いることもできる。
【0073】
被加工基板上にレジスト下層膜形成用組成物を塗布する方法については特に制限はなく、例えば、スピンコート法等を挙げることができる。レジスト下層膜形成用組成物は、被加工基板の溝を充填することができるため、後述のエッチング工程時に所定のパターンを被加工基板にパターン化することができる。
【0074】
レジスト下層膜は、上記したレジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗布して形成された塗膜を、露光及び/又は加熱することにより硬化して形成することができる。露光に用いる放射線は、例えば、レジスト下層膜形成用組成物に(C)酸発生剤が更に含有されている場合には、この(C)酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択される。レジスト下層膜形成用組成物が光酸発生剤を含有している場合には、常温でも塗膜を十分に硬化させることができる。
【0075】
また、レジスト下層膜形成用組成物を塗布して形成された塗膜を加熱する際の温度は、特に限定されることはないが、90〜550℃であることが好ましく、90〜450℃であることが更に好ましく、90〜300℃であることが特に好ましい。レジスト下層膜形成用組成物が熱酸発生剤を含有している場合には、例えば、90〜150℃程度でも塗膜を十分に硬化させることができる。
【0076】
また、レジスト下層膜形成用組成物を塗布して形成された塗膜を、露光及び/又は加熱する際には、特に限定されることはないが、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。ここで不活性ガスとは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、キセノンガス、クリプトンガスのいずれかである。不活性ガス雰囲気下でレジスト下層膜を形成することにより、レジスト下層膜中の酸素含有量の増加を防止することができ、これにより、レジスト下層膜のエッチング耐性を更に向上させることができる。
【0077】
この工程(1)において形成されるレジスト下層膜の膜厚については、特に制限はないが、100〜20000nmであることが好ましい。
【0078】
また、本発明のパターン形成方法は、この工程(1)の後に、必要に応じて、レジスト下層膜上に中間層を更に形成する工程(1’)を更に備えていてもよい。この中間層は、レジストパターン形成において、レジスト下層膜及び/又はレジスト被膜が有する機能を更に補ったり、これらが有していない機能を得るために、必要とされる所定の機能が付与された層のことである。例えば、反射防止膜を中間層として形成した場合には、レジスト下層膜の反射防止機能を更に補うことができる。
【0079】
この中間層は、有機化合物や無機酸化物を用いて形成することができる。有機化合物としては、例えば、ブルワー・サイエンス(Brewer Science)社製の「DUV−42」、「DUV−44」、「ARC−28」、「ARC−29」等の商品名で市販されている材料や、ローム アンド ハース社製の「AR−3」、「AR−19」等の商品名で市販されている材料等を用いることができる。また、無機酸化物としては、例えば、JSR社製の「NFC SOG01」、「NFC SOG04」等の商品名で市販されている材料やCVD法により形成されるポリシロキサン、酸化チタン、酸化アルミナ、酸化タングステン等を用いることができる。
【0080】
中間層を形成するための方法は特に制限はないが、例えば、塗布法やCVD法等を挙げることができる。これらのなかでも、塗布法が好ましい。塗布法を用いた場合、レジスト下層膜を形成した後に、連続して中間層を形成することができる。
【0081】
また、中間層の膜厚についても特に制限はなく、中間層に求められる機能に応じて適宜選択されるが、例えば、一般的なリソグラフィープロセスにおいては、中間層の膜厚が10〜3000nmであることが好ましく、20〜300nmであることが更に好ましい。中間層の膜厚が10nm未満の場合、レジスト下層膜のエッチング途中で中間層が削れてなくなってしまうことがある。一方、3000nmを超える場合、レジストパターンを中間層に転写する際に、加工変換差が大きくなってしまうことがある。
【0082】
[3−2]工程(2):
本発明のパターン形成方法の工程(2)では、レジスト組成物を用いて、工程(1)にて得られたレジスト下層膜上にレジスト被膜を形成する。なお、上記したように、レジスト下層膜上に中間層を更に形成した場合には、レジスト下層膜及び/又は中間層上にレジスト被膜を形成する。
【0083】
この工程(2)にて用いられるレジスト組成物としては、例えば、光酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等を好適例として挙げることができる。
【0084】
また、レジスト組成物の固形分濃度については特に制限はないが、例えば、5〜50質量%であることが好ましい。また、レジスト組成物としては、孔径0.2μm程度のフィルターを用いてろ過したものを好適に用いることができる。なお、本発明のパターン形成方法においては、このようなレジスト組成物として、市販品のレジスト組成物をそのまま使用することもできる。
【0085】
レジスト組成物を塗布する方法については特に制限はなく、例えば、スピンコート法等の従来の方法によって塗布することができる。なお、レジスト組成物を塗布する際には、得られるレジスト被膜が所定の膜厚となるように、塗布するレジスト組成物の量を調整する。
【0086】
レジスト被膜は、上記レジスト組成物を塗布することによって形成された塗膜をプレベークすることにより、塗膜中の溶剤(即ち、レジスト組成物に含有される溶剤)を揮発させて形成することができる。プレベークする際の温度は、使用するレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、30〜200℃であることが好ましく、50〜150℃であることが更に好ましい。
【0087】
[3−3]工程(3):
本発明のパターン形成方法の工程(3)では、工程(2)において得られたレジスト被膜に、フォトマスクを透過させることにより選択的に放射線を照射してレジスト被膜を露光する。
【0088】
この工程(3)において用いられる放射線としては、レジスト組成物に使用されている酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択されるが、遠紫外線であることが好ましく、特に、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(波長157nm)、Krエキシマレーザー(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー(波長134nm)、極紫外線(波長13nm等)等を好適例として挙げることができる。また、露光する方法についても特に制限はなく、従来公知のパターン形成において行われる方法に準じて行うことができる。
【0089】
[3−4]工程(4):
本発明のパターン形成方法の工程(4)では、工程(3)において露光したレジスト被膜を現像して、レジストパターンを形成する。
【0090】
現像に用いる現像液は、使用されるレジスト組成物の種類に応じて適宜選択することができる。ポジ型化学増幅型レジスト組成物やアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型レジスト組成物の場合には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液を用いることができる。また、これらのアルカリ性水溶液は、水溶性有機溶剤、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加したものであってもよい。
【0091】
また、ネガ型化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂を含有するネガ型レジスト組成物の場合には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ類の水溶液等を用いることができる。
【0092】
工程(4)においては、上記した現像液で現像を行った後、洗浄し、乾燥することによって、上記したフォトマスクに対応した所定のレジストパターンを形成することができる。
【0093】
なお、この工程(4)では、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、現像を行う前(すなわち、工程(3)における露光を行った後)に、ポストベークを行うことが好ましい。このポストベークの温度は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、50〜200℃であることが好ましく、80〜150℃であることが更に好ましい。
【0094】
[3−5]工程(5):
本発明のパターン形成方法の工程(5)では、工程(4)にて形成したレジストパターンをマスク(エッチングマスク)として、レジスト下層膜及び被加工基板をドライエッチングしてパターンを形成する。なお、レジスト下層膜上に中間層を形成した場合には、レジスト下層膜及び被加工基板とともに中間層もドライエッチングする。
【0095】
ドライエッチングは、公知のドライエッチング装置を用いて行うことができる。また、ドライエッチング時のソースガスとしては、被エッチ膜の元素組成にもよるが、O、CO、CO等の酸素原子を含むガス、He、N、Ar等の不活性ガス、Cl、BCl等の塩素系ガス、H、NHのガス等を使用することができる。なお、これらのガスは混合して用いることもできる。
【0096】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト下層膜形成用組成物は、実質的に炭素含有量が100質量%であるフラーレンと、熱や酸等によって比較的に分解されやすい2級アミンとにより形成された(A)フラーレン誘導体化合物を含有するため、上記工程(1)のレジスト下層膜を形成する際に、レジスト下層膜中の炭素含有量が高く、水素含有量が低いレジスト下層膜を形成することができる。このため、レジスト下層膜はエッチング耐性に優れ、被加工基板エッチング時の下層膜パターンが折れ曲がらなくなる。
【0097】
本発明のパターン形成方法では、これまでに説明した工程(1)〜(5)を適宜行うことにより、所定の基板加工用のパターンを形成することができる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0099】
〔1〕レジスト下層膜形成用組成物の調製:
本実施例及び比較例に用いるレジスト下層膜形成用組成物(U−1〜U−10)に用いた、(A)フラーレン誘導体化合物、(A’)比較例用フラーレン誘導体化合物、(B)溶剤、(C)酸発生剤、(D)架橋剤の詳細を下記に示す。
【0100】
<(A)フラーレン誘導体化合物>
(A)フラーレン誘導体化合物;下記式(2)で表されるフラーレン誘導体化合物(フロンティアカーボン社製、商品名「nanon spectra J201」)
【0101】
【化3】

【0102】
<(A’)比較例用フラーレン誘導体化合物>
(A’−1)比較例用フラーレン誘導体化合物;下記式(3)及び(4)で表されるフラーレン誘導体化合物(フロンティアカーボン社製、商品名「nanon spectra E910」)
【0103】
【化4】

(但し、式(3)及び(4)中のnは2又は3である。)
【0104】
(A’−2)比較例用フラーレン誘導体化合物;下記式(5)で表されるフラーレン誘導体化合物(フロンティアカーボン社製、商品名「nanon spectra G100」)
【0105】
【化5】

【0106】
<(B)溶剤>
(B−1)溶剤;プロピレングリコールモノメチルアセテート
(B−2)溶剤;シクロヘキサノン
【0107】
<(C)酸発生剤>
(C−1)酸発生剤;ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート(ミドリ化学社製、商品名「BBI−109」)
(C−2)酸発生剤;下記式(6)で表される酸発生剤(チバスペシャリティケミカル社製、商品名「CGI−1397」)
【0108】
【化6】

【0109】
(C−3)酸発生剤;下記式(7)で表される酸発生剤(チバスペシャリティケミカル社製、商品名「CGI−1905」)
【0110】
【化7】

【0111】
<(D)架橋剤>
(D−1)架橋剤;下記式(8)で表される架橋剤(日本カーバイド工業社製、商品名「MX−279」)
【0112】
【化8】

【0113】
〔1−1〕レジスト下層膜形成用組成物(U−1)の調整:
(A)フラーレン誘導体化合物10質量部、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート[(C−1)酸発生剤]0.2質量部、及びテトラメトキシメチルグリコールウリル[(D−1)架橋剤]0.1質量部を、プロピレングリコールモノメチルアセテート[(B−1)溶剤]89.7質量部に溶解させた後、この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過して、レジスト下層膜形成用組成物(U−1)を調製した。表1にレジスト下層膜形成用組成物(U−1)の配合処方を示す。
【0114】
【表1】

【0115】
〔1−2〕レジスト下層膜形成用組成物(U−2)〜(U−5)の調整:
(A)フラーレン誘導体化合物、(B)溶剤、(C)酸発生剤及び(D)架橋剤の種類と使用量とを表1のようにしたこと以外は、上記したレジスト下層膜形成用組成物(U−1)の調整と同様の方法によってレジスト下層膜形成用組成物(U−2)〜(U−5)を調整した。
【0116】
〔1−3〕レジスト下層膜形成用組成物(U−6)〜(U−9)の調製:
(A)フラーレン誘導体化合物の変わりに(A’)比較例用フラーレン誘導体化合物を用い、(B)溶剤、(C)酸発生剤及び(D)架橋剤の種類と使用量とを表1のようにしたこと以外は、上記したレジスト下層膜形成用組成物(U−1)の調整と同様の方法によってレジスト下層膜形成用組成物(U−6)〜(U−9)を調整した。
【0117】
〔1−4〕レジスト下層膜形成用組成物(U−10)の調製:
レジスト下層膜形成用組成物(U−10)として、JSR社製のレジスト下層膜形成用組成物(商品名「NFC CT08」)を用いた。
【0118】
〔2〕レジスト下層膜の形成:
(実施例1)
被加工基板上に、上記したレジスト下層膜形成用組成物(U−1)をスピンコート法により塗布し、大気雰囲気にて、250℃/60sの条件で焼成(ベーク)してレジスト下層膜を形成し、被加工基板上にレジスト下層膜が形成されたレジスト下層膜付き基板(実施例1)を得た。表2に、使用したレジスト下層膜形成用組成物の種類と、焼成条件、及び焼成雰囲気を示す。なお、本実施例においては、被加工基板として、シリコンウェハとTEOS基板の2種類の被加工基板を用い、それぞれの被加工基板上にレジスト下層膜を形成して、2種類のレジスト下層膜付き基板を得た。なお、TEOS基板には、厚さ600nmのレジスト下層膜を形成した。
【0119】
【表2】

【0120】
(実施例2〜17、及び比較例1〜7)
実施例1と同様に、シリコンウェハとTEOS基板の2種類の被加工基板を用い、表2に示すレジスト下層膜形成用組成物(U−1)〜(U−10)をスピンコート法により塗布し、表2に示す焼成条件、及び焼成雰囲気で焼成を行い、それぞれの被加工基板上にレジスト下層膜を形成して、2種類のレジスト下層膜付き基板を得た。
【0121】
〔3〕レジスト下層膜の評価:
実施例1〜17及び比較例1〜7にて得られたレジスト下層膜付き基板のレジスト下層膜の各種評価を行うため、以下のように、ArF用ポジ型レジスト組成物を調製した。
【0122】
〔3−1〕ArF用レジスト組成物の調製:
還流管を装着したセパラブルフラスコに、窒素気流下で、8−メチル−8−t−ブトキシカルボニルメトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン〔単量体(イ)〕29質量部、8−メチル−8−ヒドロキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン〔単量体(ロ)〕10質量部、無水マレイン酸〔単量体(ハ)〕18質量部、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジアクリレート4質量部、t−ドデシルメルカプタン1質量部、アゾビスイソブチロニトリル4質量部及び1,2−ジエトキシエタン60質量部を仕込み、攪拌しつつ70℃で6時間重合した。その後、反応溶液を大量のn−ヘキサン/i−プロピルアルコール(質量比=1/1)混合溶媒中に注いで、反応溶液中の樹脂を凝固させた。凝固した樹脂を前記混合溶媒で数回洗浄した後、真空乾燥して、前記単量体(イ)、(ロ)及び(ハ)のそれぞれに由来する下記式(a)、(b)及び(c)で表される繰り返し単位(a)、(b)及び(c)を有する樹脂を得た(収率60質量%)。なお、この樹脂は、繰り返し単位(a)、(b)及び(c)のモル比が64:18:18であり、重量平均分子量(Mw)が27000であった。
【0123】
【化9】

【0124】
【化10】

【0125】
【化11】

【0126】
その後、得られた樹脂80質量部、1−(4−メトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート1.5質量部及びトリ−n−オクチルアミン0.04質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート533質量部に溶解して、ArF用レジスト組成物を調製した。
【0127】
〔3−2〕性能評価:
実施例1〜17及び比較例1〜7にて得られたレジスト下層膜付き基板を用いて、レジスト下層膜の元素組成の測定、膜硬化性、エッチング耐性及び曲がり耐性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0128】
【表3】

【0129】
レジスト下層膜の元素組成の測定方法、膜硬化性、エッチング耐性及び曲がり耐性の評価方法は以下のとおりである。
【0130】
<レジスト下層膜の元素組成>
被加工基板としてシリコンウェハを用いた各レジスト下層膜付き基板のレジスト下層膜の、炭素、水素、酸素、及び窒素の含有量(質量%)を測定した。それぞれの含有量の測定は、ジェイ・サイエンス社製の有機元素分析装置(商品名「CHNコーダー JM10」)を用いた。
【0131】
<膜硬化性>
被加工基板としてシリコンウェハを用いた各レジスト下層膜付き基板のレジスト下層膜を、プロピルグリコールモノメチルエーテルアセテートに室温で1分間浸漬して、浸漬前後の膜厚変化率(膜厚変化率=(浸漬前の膜厚−浸漬後の膜厚)/浸漬前の膜厚×100)を、分光エリプソメーターUV1280E(KLA−TENCOR社製)を用いて測定して評価した。膜厚変化率が0%の場合を「〇」とし、膜厚変化率が0%を超えた場合を「×」とした。
【0132】
<エッチング耐性>
被加工基板としてシリコンウェハを用いた各レジスト下層膜付き基板を、エッチング装置(神鋼精機社製、商品名「EXAM」)を使用して、CF/Ar/O(CF:40mL/min、Ar:20mL/min、O:5mL/min;圧力:20Pa;RFパワー:200W;処理時間:40秒;温度:15℃)でレジスト下層膜をエッチング処理し、エッチング処理前後のレジスト下層膜の膜厚を測定して、エッチングレートを算出し、エッチング耐性を評価した。なお、このエッチングレートの算出に際しては、JSR社製のレジスト下層膜形成用組成物(商品名「NFC CT08」)により、基準レジスト下層膜を形成して行った。評価基準は、上記した基準レジスト下層膜に比べてエッチングレートが、−10%以下の場合を「◎」、−10%を超え、0%以下の場合を「○」、0%を超え、+10%以下の場合を「△」とした。
【0133】
<曲がり耐性>
各実施例及び比較例にて得られた、被加工基板としてTEOS基板を用いた各レジスト下層膜付き基板を用い、このレジスト下層膜(膜厚600nm)上に3層レジストプロセス用中間層組成物溶液(JSR社製、商品名「NFC SOG080」)をスピンコートし、200℃で60秒間、更に300℃で60秒間ホットプレート上にて加熱して、膜厚50nmの中間層を形成した。次に、この中間層上に、上記したArF用レジスト組成物の調製にて得られたArF用レジスト組成物溶液をスピンコートし、130℃のホットプレート上で90秒間プレベークして、膜厚200nmのフォトレジスト膜(レジスト被膜)を形成した。
【0134】
その後、ニコン(NIKON)社製のArFエキシマレーザー露光装置(レンズ開口数0.78、露光波長193nm)を用い、マスクパターンを介して、最適露光時間だけ露光した。その後、130℃のホットプレート上で90秒間ポストベークした後、2.38質量%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、25℃で1分間現像し、水洗し、乾燥して、ArF用ポジ型レジストパターンを形成した。
【0135】
形成したレジストパターンを、ドライエッチング法を用いて、中間層にパターン転写して中間層パターンを形成し、この中間層パターンをマスクとして、ドライエッチング法を用いて、レジスト下層膜にパターン転写してレジスト下層膜にレジスト下層膜パターンを形成した。更に、このレジスト下層膜パターンをマスクとして、CF/Ar/Oで300nmの深さまでTEOS基板にパターンを形成した。曲がり耐性を評価するために、下層膜パターン形状を走査型電子顕微鏡にて観察し、曲がり耐性を評価した。評価基準は、下層膜パターン形状に曲がりが無い場合を「○」、下層膜パターン形状に曲がりが有る場合を「×」とした。
【0136】
ここで、図1は、実施例8のレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されたレジスト下層膜パターンの断面における走査型電子顕微鏡写真であり、図2は、比較例1のレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されたレジスト下層膜パターンの断面における走査型電子顕微鏡写真である。図1に示す実施例8のレジスト下層膜パターン1は曲がりが無く、正常にパターンが形成されているが、図2に示す比較例1のレジスト下層膜パターン1は曲がりが有ることが確認できる。
【0137】
〔4〕考察:
表3に示すように、実施例1〜17においては、曲がり耐性が全て「○」であった。更に、エッチング耐性においても評価が「◎」であった。一方、比較例1〜7においては、曲がり耐性が全て「×」であり、更に、エッチング耐性においても評価が「〇」又は「×」であり、レジスト下層膜として必要な機能を全て満たしていないことが確認できた。更に実施例7〜10は200℃で60sの焼成条件でも膜硬化性については良好な結果を得ることができたが、比較例6及び7は上記条件よりも高温又は長時間の条件であっても(具体的には、比較例6は250℃で60s、比較例7は200℃で300s)膜硬化性が得られない(即ち、膜厚変化率が0%を超える)ことが確認できた。この原因としては、実施例の(A)フラーレン誘導体化合物には、フラーレン骨格にエポキシドが形成されているため、このエポキシドによって低温での架橋が容易に行えたものと推定される。
【0138】
また、エッチング耐性及び曲がり耐性の評価において、上記のような結果が得られた原因としては、それぞれのレジスト下層膜中の炭素含有量と水素含有量とに起因すると考えられる。例えば、レジスト下層膜の水素含有量が3質量%以下の各実施例(具体的には、水素含有量が0.0〜2.5質量%)は、曲がり耐性が「〇」であるが、一方、レジスト下層膜の水素含有量が5質量%を超える各比較例(具体的には、水素含有量が5.6〜7.6%)は、曲がり耐性が「×」である。なお、実施例1〜17におけるレジスト下層膜は、使用したレジスト下層膜形成用組成物として、フラーレン骨格に四つのt−ブトキシカルボニルピペラジン基が結合した(A)フラーレン誘導体化合物が用いられているため、レジスト下層膜が形成される際に、水素原子に由来するt−ブトキシカルボニルピペラジン基が分解し、結果として、形成されたレジスト下層膜中の水素含有量が減少したものと考えられる。
【0139】
また、各実施例及び比較例ともに炭素含有量(質量%)は同程度であるが、水素は分子量が最も低いため、レジスト下層膜中の原子数で換算した場合には、各実施例のレジスト下層膜における炭素の含有割合が多くなり、各比較例のレジスト下層膜に比べて実施例のレジスト下層膜のエッチング耐性が向上したと考えられる。
【0140】
以上のことから、上記式(2)で表される(A)フラーレン誘導体化合物を含有する本実施例のレジスト下層膜形成用組成物により形成されたレジスト下層膜は、良好なエッチング耐性と曲がり耐性を有していることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物によれば、エッチング耐性に優れ、被加工基板エッチング時に下層膜パターンが折れ曲がらないレジスト下層膜を形成することができるため、リソグラフィープロセスにおける微細加工に極めて好適に使用することができる。特に、ドライエッチングプロセスにおいて、精密なパターン転写性能及び良好なエッチング選択性を有することになり、レジスト下層膜のオーバーエッチングが少なく、被加工基板にレジストパターンを再現性よく忠実に転写することができる。また、被加工基板エッチング時に下層膜パターンが折れ曲がらないため、リソグラフィープロセスにおける微細加工、特に高集積回路素子の製造において歩留りの向上が期待できる。
【0142】
また、本発明のレジスト下層膜の形成方法及びパターン形成方法は、リソグラフィープロセス、特に、高集積回路素子の製造用プロセスとして極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】実施例8のレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されたレジスト下層膜パターンの断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】比較例1のレジスト下層膜形成用組成物を用いて形成されたレジスト下層膜パターンの断面における走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0144】
1:レジスト下層膜パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される(A)フラーレン誘導体化合物と、(B)溶剤と、を含有するレジスト下層膜形成用組成物。
【化1】

(但し、式(1)中、tBuは、ターシャリーブチル基を示す)
【請求項2】
更に(C)酸発生剤を含有する請求項1に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項3】
更に(D)架橋剤を含有する請求項1又は2に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項4】
更に(E)熱硬化性樹脂を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗布し、塗布した前記レジスト下層膜形成用組成物を前記被加工基板とともに不活性ガス雰囲気下で焼成することにより、前記被加工基板上にレジスト下層膜を形成するレジスト下層膜の形成方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成用組成物を被加工基板上に塗布してレジスト下層膜を形成する工程(1)と、
得られた前記レジスト下層膜上に、レジスト組成物を塗布してレジスト被膜を形成する工程(2)と、
得られた前記レジスト被膜に、フォトマスクを透過させることにより選択的に放射線を照射して前記レジスト被膜を露光する工程(3)と、
露光した前記レジスト被膜を現像して、レジストパターンを形成する工程(4)と、
前記レジストパターンをマスクとして、前記レジスト下層膜及び前記被加工基板をドライエッチングしてパターンを形成する工程(5)と、を備えたパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−164806(P2008−164806A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352683(P2006−352683)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】