説明

レジスト下層膜材料、レジスト下層膜形成方法、パターン形成方法、フラーレン誘導体

【課題】 リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜材料であって、ドライエッチング耐性に非常に優れ、基板エッチング中のよれの発生を高度に抑制できると共に、化学増幅型レジストを用いた上層パターン形成におけるポイゾニング問題を回避できるレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜材料、レジスト下層膜形成方法、パターン形成方法、及びフラーレン誘導体を提供することを目的とする。
【解決手段】 リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜材料であって、少なくとも、(A)フラーレン骨格を有する物質と電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体との反応生成物であるフラーレン誘導体、(B)有機溶剤とを含むものであることを特徴とするレジスト下層膜材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの製造工程における微細加工に用いられる多層レジスト工程において有効なレジスト下層膜材料、及びこれを用いたレジスト下層膜形成方法、及び本下層膜材料を用いた遠紫外線、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F2レーザー光(157nm)、Kr2レーザー光(146nm)、Ar2レーザー光(126nm)、軟X線(EUV)、電子ビーム(EB)、イオンビーム、X線等の露光に好適なレジストパターン形成方法、及びこれらの分野において有用なフラーレン誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターン寸法の微細化が急速に進んでいる。リソグラフィー技術は、この微細化に併せ、光源の短波長化とそれに対するレジスト組成物の適切な選択により、微細パターンの形成を達成してきた。その中心となったのは単層で使用するポジ型フォトレジスト組成物である。この単層ポジ型フォトレジスト組成物は、塩素系あるいはフッ素系のガスプラズマによるドライエッチングに対しエッチング耐性を持つ骨格をレジスト樹脂中に持たせ、かつ露光部が溶解するようなレジスト機構を持たせることによって、露光部を溶解させてパターンを形成し、残存したレジストパターンをエッチングマスクとしてレジスト組成物を塗布した被加工基板をドライエッチング加工するものである。
【0003】
ところが、使用するフォトレジスト膜の膜厚をそのままで微細化、即ちパターン幅をより小さくした場合、フォトレジスト膜の解像性能が低下し、また現像液によりフォトレジスト膜をパターン現像しようとすると、いわゆるアスペクト比が大きくなりすぎ、結果としてパターン崩壊が起こってしまう。このため微細化に伴いフォトレジスト膜厚は薄膜化されてきた。
【0004】
一方、被加工基板の加工には、通常パターンが形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより基板を加工する方法が用いられるが、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法がないため、基板を加工中にレジスト膜もダメージを受け、基板加工中にレジスト膜が崩壊し、レジストパターンを正確に被加工基板に転写できなくなる。そこで、パターンの微細化に伴い、レジスト組成物により高いドライエッチング耐性が求められてきた。
また、露光波長の短波長化によりフォトレジスト組成物に使用する樹脂は、露光波長における光吸収の小さな樹脂が求められたため、i線、KrF、ArFへの変化に対し、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、脂肪族多環状骨格を持った樹脂へと変化してきているが、現実的には上記ドライエッチング条件におけるエッチング速度は速いものになってきてしまっており、解像性の高い最近のフォトレジスト組成物は、むしろエッチング耐性が低くなる傾向がある。
【0005】
このことから、より薄くよりエッチング耐性の弱いフォトレジスト膜で被加工基板をドライエッチング加工しなければならないことになり、この加工工程における材料及びプロセスの確保は急務になってきている。
【0006】
このような問題点を解決する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜、即ちレジスト上層膜とエッチング選択性が異なる中間膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、上層レジストパターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより中間膜にパターンを転写し、更に中間膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0007】
多層レジスト法の一つである2層レジスト法では、例えば、上層レジスト組成物にケイ素を含有する樹脂を使用し、下層膜として炭素含有量が高い有機樹脂例えばノボラック樹脂を使用する方法である。ケイ素樹脂は、酸素プラズマによる反応性ドライエッチングに対してはよいエッチング耐性を示すが、フッ素系ガスプラズマを用いると容易にエッチング除去される。一方、ノボラック樹脂は酸素ガスプラズマによる反応性ドライエッチングでは容易にエッチング除去されるが、フッ素系ガスプラズマや塩素系ガスプラズマによるドライエッチングに対しては良好なエッチング耐性を示す。そこで、被加工基板上にノボラック樹脂膜をレジスト中間膜として成膜し、その上にケイ素含有樹脂を用いたレジスト上層膜を形成する。続いて、ケイ素含有レジスト膜にエネルギー線の照射及び現像等の後処理によりパターン形成を行い、それをドライエッチングマスクとして酸素プラズマによる反応性ドライエッチングでレジストパターンが除去されている部分のノボラック樹脂をドライエッチング除去することでノボラック膜にパターンを転写し、このノボラック膜に転写されたパターンをドライエッチングマスクとして、被加工基板にフッ素系ガスプラズマや塩素系ガスプラズマによるエッチングを用いてパターン転写をすることができる。
【0008】
このようなドライエッチングによるパターン転写は、エッチングマスクのエッチング耐性が十分である場合、比較的良好な形状で転写パターンが得られるため、レジスト現像時の現像液による摩擦等を原因としたパターン倒れのような問題が起き難く、比較的高いアスペクト比のパターンを得ることができる。従って、例えばノボラック樹脂を用いたレジスト膜を中間膜の膜厚に相当する厚さにした場合には、アスペクト比の問題から現像時のパターン倒れ等により直接形成できなかったような微細パターンに対しても、上記の2層レジスト法によれば、被加工基板のドライエッチングマスクとして十分な厚さのノボラック樹脂パターンが得られるようになる。
【0009】
更に多層レジスト法として、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。例えば、被加工基板上にノボラック等による有機膜をレジスト下層膜として成膜し、その上にケイ素含有膜をレジスト中間膜として成膜し、その上に通常の有機系フォトレジスト膜をレジスト上層膜として形成する。フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングに対しては、有機系のレジスト上層膜は、ケイ素含有レジスト中間膜に対して良好なエッチング選択比が取れるため、レジストパターンはフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを用いることでケイ素含有レジスト中間膜に転写される。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持ったパターンは形成することが難しいレジスト組成物や、基板を加工するためにはドライエッチング耐性が十分でないレジスト組成物を用いても、ケイ素含有膜にパターンを転写することができれば、2層レジスト法と同様に、加工に十分なドライエッチング耐性を持つノボラック膜のパターンを得ることができる。
【0010】
上述のような有機下層膜はすでに多数の技術が公知(例えば特許文献1等)となっているが、加工線幅の縮小に伴い、さらなるドライエッチング耐性の向上が望まれている。さらに、レジスト下層膜をマスクに被加工基板をエッチングするときにレジスト下層膜がよれたり曲がったりする現象(Wiggling)が起きる事が問題になってきており(非特許文献1)、特に40nm以下の微細パターンを形成する際により顕著である。これはフルオロカーボン系のガスによる基板エッチング中に、レジスト下層膜の水素原子がフッ素原子で置換される現象が示されており、これにより下層膜の体積増加により膨潤したり、ガラス転移点が低下することによって、より微細なパターンのよれが生じるものと考えられる(非特許文献2)。ドライエッチング耐性は高炭素原子含有率の、またよれの問題は低水素原子含有率の有機材料をレジスト下層膜に用いることによって防止できることが示されている。CVDで作成したアモルファスカーボン膜は、膜中の炭素原子含有率が非常に高く、かつ、水素原子含有率が極めて少ないため、優れたドライエッチング耐性を有するとともに、よれ防止にも有効である。しかしながら、CVDは段差基板に対する埋め込み特性が悪いという欠点を有し、またCVD装置は高価格および装置フットプリント占有面積の問題により導入が困難な場合が多い。このため、コーティング、特にスピンコート法で成膜可能なレジスト下層膜材料で、ドライエッチング耐性とよれの問題を解決することが出来れば、プロセスと装置の簡略化による低コスト化のメリットは大きい。
【0011】
上述のような高炭素原子含有率かつ低水素原子含有率の塗布成膜可能な成膜材料としては、極めて炭素比率の高いフラーレン誘導体を含む膜が提案されている。例えば最初期にはフラーレン(ここで、フラーレンとは、多数の炭素原子で構成される閉殻状クラスターを成す炭素の同素体の総称であり、C60、C70に代表され、C74、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96、C108、およびより高次の炭素クラスターをも含む。)そのもので膜を形成(特許文献2)する方法が提案されたが、フラーレンは一般的な基板塗布溶剤に対する溶解性が極めて低く、フラーレンそのものを使用することは困難であった。そこで、例えば特許文献3や4ではフラーレンを塗布溶剤に可溶性の誘導体に変換し、有機樹脂に分散させて硬化膜を得ているが、フラーレンの誘導体化により肝心の炭素原子含有率および水素原子含有率が大きく悪化してしまうという問題がある。この改善のため、特許文献5では、加熱により分解して、フラーレンもしくはフラーレンに近い炭素原子含有率および水素原子含有率を有する物質を生じる可能性のある誘導体であるフラーレンへのアミン付加体の使用を提案している。この技術はフラーレン誘導体を用いるメリットを最大に生かすという意味では重要なものであるが、一方で、多層レジスト法は、下層膜上に必要に応じて中間層を形成した後、上層レジストを形成してパターン形成を行うものであり、上層レジストとしては酸触媒反応を利用した化学増幅型レジストが用いられるため、フラーレン誘導体(アミン付加体)の熱分解により大量に生成するアミン塩基が、たとえ極微量であっても上層レジストに達した場合、上層レジストパターン形成時の酸触媒反応に影響を与え、パターン形状劣化や現像欠陥などのいわゆるポイゾニング問題を引き起こしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2004−205685号公報
【特許文献2】特開平6−61138号公報
【特許文献3】特開2004−264710号公報
【特許文献4】特開2006−227391号公報
【特許文献5】WO2008/62888号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Proc.of Symp.Dry.Process,(2005) p11
【非特許文献2】Proc.of SPIE Vol.6923、69232O,(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜材料であって、ドライエッチング耐性に非常に優れ、基板エッチング中のよれの発生を高度に抑制できると共に、化学増幅型レジストを用いた上層パターン形成におけるポイゾニング問題を回避できるレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜材料、レジスト下層膜形成方法、パターン形成方法、及びフラーレン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明によれば、リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜材料であって、少なくとも、(A)フラーレン骨格を有する物質と電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体との反応生成物であるフラーレン誘導体、(B)有機溶剤とを含むものであることを特徴とするレジスト下層膜材料を提供する。
【0016】
このようなレジスト下層膜材料であれば、フラーレン誘導体(A)が塗布有機溶剤に可溶であり、かつ、有機溶剤への溶解に必要な誘導化側鎖を熱分解させることにより、実質的に下層膜の炭素密度を増加、かつ、水素密度を低減せしめ、優れたドライエッチング耐性を与えるとともに、エッチング時のよれ発生を高度に抑制することができる。また、フラーレン誘導体(A)の構造上、誘導化側鎖の分解生成物は、アミン等の塩基性化合物ではないため、上層レジストパターニング時のパターン形状への悪影響を抑制することができる。
【0017】
また、前記フラーレン誘導体が、下記一般式(1)で示される部分構造をn個有するものであることが好ましい。
【化1】

(式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、スルホ基、及び、炭素数1〜20のシアノ基、カルボキシル基、水酸基、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、スルホン基、ハロゲン原子のいずれか1以上を含んでもよい一価の有機基のいずれかを表し、Rのうち1つ以上は電子吸引基である。また、2つ以上のR同士が結合して、環を形成してもよい。Cは前記フラーレン誘導体のフラーレン骨格を構成する炭素原子を表す。nは1〜30の整数を表す。)
【0018】
このように、前記フラーレン誘導体(A)の好ましい形態として上記一般式(1)で示される部分構造をn個有するものが挙げられる。上記一般式(1)中、Rの存在は、フラーレン誘導体の下層膜用溶剤への溶解性を確保するために効果的である。また、上記一般式(1)で示される部分構造は、比較的容易に合成可能であり、かつ下層膜形成/熱処理時に分解することにより、実質的に下層膜の炭素密度を増加、かつ、水素密度を低減せしめる役割を有する。また、一般式(1)で示される部分構造の分解生成物はアミン等の塩基性化合物ではないため、上層レジストパターニング時のパターン形状への悪影響を抑制することが可能である。
【0019】
また、前記電子吸引基は、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルカンスルホニル基、及びトリフルオロメチル基のいずれかであることが好ましい。
【0020】
通常の1,3−ジエン化合物誘導体とフラーレン骨格を有する物質(フラーレン類)の反応生成物は、室温付近での安定性に劣る場合があるが、1,3−ジエン化合物誘導体が電子吸引基を有することにより安定性が確保される。一方で、下層膜形成/熱処理時には容易に熱分解して、高炭素密度、低水素密度のフラーレン類を生じ、優れたエッチング耐性と、よれ防止効果を与える。また、上記一般式(1)中のすべてのRが水素原子または炭化水素基である場合に比べ、塗布溶剤への溶解性、成膜性が改善する。
【0021】
また、前記電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体は、ソルビン酸エステルであることが好ましい。
【0022】
ソルビン酸エステルは各種誘導体が容易かつ安価に工業製造可能である。また、フラーレン類との反応性、反応生成物の溶剤溶解性/保存安定性に優れる。さらに、下層膜形成/熱処理時に分解することにより、実質的に下層膜の炭素密度を増加、かつ、水素密度を低減せしめることが可能である。
【0023】
また、前記フラーレン誘導体が、下記一般式(1a)で示される部分構造をn個有するものであることが好ましい。
【化2】

(式中、Rは、炭素数1〜19の直鎖状、分枝状または環状のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数4〜15のヘテロアリール基、及び、炭素数7〜19のアラルキル基のいずれかを表し、カルボニル基、エーテル基、エステル基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、及びハロゲン原子のいずれか1以上を含んでもよい。Cは前記フラーレン誘導体のフラーレン骨格を構成する炭素原子を表す。nは1〜30の整数を表す。)
【0024】
このように、前記フラーレン誘導体が上記一般式(1a)で示される部分構造をn個有する物質を主とする場合、フラーレン誘導体は溶剤溶解性/保存安定性に優れ、さらに、下層膜形成/熱処理時に分解することにより、実質的に下層膜の炭素密度を増加、かつ、水素密度を低減せしめることが可能である。
【0025】
また、前記レジスト下層膜材料が、更に、(C)芳香環含有樹脂を含有するものであることが好ましい。
【0026】
このように、レジスト下層膜材料が、更に(C)芳香環含有樹脂を含有するものであれば、スピンコーティングの成膜性や、段差基板での埋め込み特性を向上させることができるために好ましい。
【0027】
また、前記(C)芳香環含有樹脂が、ナフタレン環を含むものであることが好ましい。
【0028】
このように、レジスト下層膜材料中の(C)芳香環含有樹脂がナフタレン環を含むものであれば、エッチング耐性や、光学特性を向上させることができるために好ましい。
【0029】
また、前記(C)芳香環含有樹脂が、少なくとも、下記一般式(2)で示される化合物と下記一般式(3)で示される化合物とを酸性条件で重縮合して得られる化合物(C1)を含有するものであることが好ましい。
【化3】

(式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数6〜20の炭化水素基を表す。Rはそれぞれ独立に、ベンゼン環、又はナフタレン環である。1≦m1+m2≦2、1≦m3+m4≦2、n1、n2はそれぞれ0又は1である。)
A−CHO (3)
(式中、Aは水素原子、飽和若しくは不飽和の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基、及び炭素数6〜20の芳香族炭化水素基のいずれかであり、エーテル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、クロル基を含んでも良い。)
【0030】
本発明のレジスト下層膜材料が、このような化合物(C1)を含有する(C)芳香環含有樹脂を含むものであれば、形成されるレジスト下層膜が、基板の段差埋め込み性に優れ、耐溶媒性を有するものとすることができ、更に、より効果的にエッチング耐性を向上するとともに基板エッチング中のよれ発生を抑制でき、エッチング後のパターンラフネスが良好となる。
【0031】
前記レジスト下層膜材料は、更に、(D)フェノール性水酸基含有化合物、(E)酸発生剤、(F)架橋剤、(G)界面活性剤のうち少なくとも1種以上を含有するものであること
が好ましい。
【0032】
このように、本発明のレジスト下層膜材料に、架橋反応を更に促進させるために、(D)フェノール性水酸基含有化合物、(E)酸発生剤、(F)架橋剤を加えることができ、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために(G)界面活性剤を加えることもできる。
【0033】
また、本発明は、リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜の形成方法であって、基板上に前記本発明のレジスト下層膜材料をコーティングし、該レジスト下層膜材料を200℃以上600℃以下の温度で、10秒〜600秒間の範囲で熱処理して硬化させることによってレジスト下層膜を形成することを特徴とするレジスト下層膜形成方法を提供する。
【0034】
このように、本発明のレジスト下層膜材料をコーティングし、該レジスト下層膜材料を200℃以上600℃以下の温度で、10秒〜600秒間の範囲で熱処理することにより、架橋反応を促進させ、レジスト上層膜やレジスト中間層膜とのミキシングを防止することができる。また、本発明のレジスト下層膜材料中のフラーレン誘導体(A)は、下層膜の成膜時に誘導化側鎖の一部が熱分解されることにより、優れたエッチング耐性を与えるとともにエッチング時のよれ発生を高度に抑制することができる。
【0035】
また、本発明は、リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜の形成方法であって、基板上に前記本発明のレジスト下層膜材料をコーティングし、該レジスト下層膜材料を、酸素濃度0.1%以上21%以下の雰囲気中で焼成して硬化させることによってレジスト下層膜を形成することを特徴とするレジスト下層膜形成方法を提供する。
【0036】
本発明のレジスト下層膜材料をこのような酸素雰囲気中で焼成することにより、十分に硬化したレジスト下層膜を得ることができる。
【0037】
また、本発明は、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に前記本発明のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜より上にケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜より上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、多層レジスト膜とし、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像してレジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてレジスト中間層膜をエッチングし、少なくともパターンが形成されたレジスト中間層膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、少なくともパターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0038】
このような3層レジストプロセスを用いたパターン形成方法であれば、基板に微細なパターンを高精度で形成することができ、本発明のレジスト下層膜材料は、その下層膜材料として好適である。
【0039】
また、前記レジスト中間層膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことができる。
【0040】
ケイ素原子を含むレジスト中間層膜は、酸素ガス又は水素ガスによるエッチング耐性を示すため、レジスト中間層膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことができる。
【0041】
また、本発明では、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に前記本発明のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜より上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記無機ハードマスク中間膜をエッチングし、得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0042】
また、本発明では、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に前記レジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスク中間膜をエッチングし、得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0043】
このようなパターン形成方法においても、本発明のレジスト下層膜材料は有効である。また、レジスト中間層膜の上にレジスト上層膜としてフォトレジスト膜を形成しても良いが、レジスト中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成することもできる。レジスト中間層膜としてSiON膜(ケイ素酸化窒化膜)を用いた場合、SiON膜とBARC膜の2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光に於いても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON直上でのフォトレジストパターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0044】
またこのとき、前記無機ハードマスク中間膜を、CVD法又はALD法によって形成することが好ましい。
【0045】
本発明で用いるレジスト下層膜材料は、高い耐熱性を有しており300℃〜500℃の高温に耐えることができるため、CVD法あるいはALD法で形成された無機ハードマスクと、スピンコート法で形成されたレジスト下層膜との組み合わせが可能である。
【0046】
また、本発明は、フラーレン骨格を有する物質とソルビン酸エステルとの反応生成物であるフラーレン誘導体を提供する。
【0047】
フラーレン骨格を有する物質(フラーレン類)とソルビン酸エステルとの反応生成物であるフラーレン誘導体は、フラーレン類とソルビン酸エステルを混合、加熱し付加反応を起こすことにより製造することができる。このようなフラーレン誘導体を有する多層レジスト膜用のレジスト下層膜材料であれば、優れたエッチング耐性を与え、パターンのよれが抑制されるとともに、上層パターン形成におけるポイゾニング問題を回避できる。
【0048】
また、本発明は、下記一般式(1a)で示される部分構造をn個有するものであることを特徴とするフラーレン誘導体を提供する。
【化4】

(式中、Rは、炭素数1〜19の直鎖状、分枝状または環状のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数4〜15のヘテロアリール基、及び、炭素数7〜19のアラルキル基のいずれかを表し、カルボニル基、エーテル基、エステル基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、及びハロゲン原子のいずれか1以上を含んでもよい。Cは前記フラーレン誘導体のフラーレン骨格を構成する炭素原子を表す。nは1〜30の整数を表す。)
【0049】
上記一般式(1a)で示される部分構造をn個有することを特徴とするフラーレン誘導体は、例えばフラーレン類とソルビン酸エステルを混合、加熱し付加反応を起こすことにより製造することができる。また、他のソルビン酸誘導体とフラーレン類との反応生成物を経由して製造することもできる。このようなフラーレン誘導体を有する多層レジスト膜用のレジスト下層膜材料であれば、優れたエッチング耐性を与え、パターンのよれが抑制されるとともに、上層パターン形成におけるポイゾニング問題を回避することができる。
【発明の効果】
【0050】
以上説明したように、本発明のレジスト下層膜材料は、優れたエッチング耐性を与え、概ね40nm以下の微細パターンを形成する際にパターンのよれが抑制されるとともに、化学増幅型レジストを用いた上層パターン形成におけるポイゾニング問題を回避でき、例えば、ケイ素含有2層レジストプロセス、ケイ素含有中間層膜を用いた3層レジストプロセス、またはケイ素含有中間層膜および有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセス、といった多層レジストプロセス用レジスト下層膜材料として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】3層レジストプロセスの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
前述のように、従来、より優れたエッチング耐性を与え、基板エッチング中のよれの発生を抑制できると共に、化学増幅型レジストを用いた上層パターン形成におけるポイゾニング問題を回避できるレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜材料が求められていた。
【0053】
本発明者らは、種々の塗布溶剤(有機溶剤)可溶性のフラーレン誘導体の合成を行い、その物性の検討を行ったところ、後述するフラーレン誘導体であれば、下層膜の焼結成膜時に、溶解に必要な誘導化側鎖を熱分解/脱離させることにより、フラーレンそのものに近い高炭素原子密度かつ低水素原子密度の物質を生じ、優れたドライエッチング耐性を与えるとともに、エッチング時のよれ発生を高度に抑制する効果が得られることを見出した。また、このようなフラーレン誘導体であれば、上記効果を発揮するに際し、レジストパターン形成に影響を与えず、即ち、ポイゾニング問題を回避することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0054】
すなわち、本発明のレジスト下層膜材料は、少なくとも、(A)フラーレン骨格を有する物質と電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体との反応生成物であるフラーレン誘導体、(B)有機溶剤とを含むものである。
【0055】
そして、上記(A)フラーレン骨格を有する物質と電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体との反応生成物である前記フラーレン誘導体の好ましい形態としては、下記一般式(1)で示される部分構造をn個有する物質が挙げられる。
【化5】

(式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、スルホ基、及び、炭素数1〜20のシアノ基、カルボキシル基、水酸基、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、スルホン基、ハロゲン原子のいずれか1以上を含んでもよい一価の有機基のいずれかを表し、Rのうち1つ以上は電子吸引基である。また、2つ以上のR同士が結合して、環を形成してもよい。Cは前記フラーレン誘導体のフラーレン骨格を構成する炭素原子を表す。nは1〜30の整数を表す。)
【0056】
上記一般式(1)で示される部分構造の存在は、フラーレン誘導体の下層膜用溶剤への溶解性を確保するために効果的であり、なおかつ、下層膜形成/熱処理時に分解することにより、下層膜の水素密度を実質的に低減せしめる役割を有する。また、部分構造(1)の分解生成物はアミンなどの塩基性化合物ではないため、上層レジストパターニング時のパターン形状への悪影響を抑制可能である。
【0057】
また、上記(A)フラーレン骨格を有する物質と電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体との反応生成物である前記フラーレン誘導体のより好ましい形態としては、フラーレン骨格を有する物質とソルビン酸エステルとの反応生成物が挙げられる。
【0058】
また、上記(A)フラーレン骨格を有する物質と電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体との反応生成物である前記フラーレン誘導体のより好ましい形態としては、下記一般式(1a)で示される部分構造をn個有する物質が挙げられる。
【化6】

(式中、Rは、炭素数1〜19の直鎖状、分枝状または環状のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数4〜15のヘテロアリール基、及び、炭素数7〜19のアラルキル基のいずれかを表し、カルボニル基、エーテル基、エステル基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、及びハロゲン原子のいずれか1以上を含んでもよい。C、nは前述の通りである。)
【0059】
上記一般式(1a)で示される部分構造の存在は、フラーレン誘導体の下層膜用溶剤への溶解性を確保するために非常に効果的であり、なおかつ、下層膜形成/熱処理時に分解することにより、下層膜の水素密度を実質的に低減せしめる役割を有する。また、部分構造(1a)の分解生成物はアミンなどの塩基性化合物ではないため、上層レジストパターニング時のパターン形状への悪影響を抑制可能である。
【0060】
本発明のレジスト下層膜材料は、上記一般式(1)、特に(1a)で表される部分構造をn(1〜30の整数)個有する単一のフラーレン誘導体を含むもの、また、nの値が異なる2種以上のフラーレン誘導体の混合物を含むものとすることもできるが、レジスト溶剤溶解性および成膜性の観点から2種以上のフラーレン誘導体の混合物を含む方が有利である。その場合、最も存在比率の高いフラーレン誘導体のnが2〜10であることが特に好ましい。nが2以上の場合はレジスト溶剤溶解性および成膜性に劣る恐れがなく、nが10以下の場合は前述のエッチング耐性向上、および、よれ抑制効果に劣る恐れがないために好ましい。
【0061】
上記一般式(1)および(1a)中、Cはフラーレン骨格を構成する炭素原子を表す。フラーレン骨格は炭素原子のみを構成原子とし、複数の5員環と6員環により閉殻状の炭素ネットワークが構成されていて、全ての炭素原子が他の炭素原子3個と結合しており、Cはフラーレン骨格中に存在するいずれの近接した6炭素をも代表して表すものである。
フラーレンの炭素数は通常60以上、120以下であり、本発明のフラーレン誘導体の出発物であるフラーレン骨格を有する物質のフラーレン骨格(フラーレン誘導体のフラーレン骨格)の種類に制限はなく、例えば、C60、C70、C76、C82、C84、C90等が挙げられる。中でも、C60及びC70が好ましく、C60がより好ましい。これらはフラーレンの製造時に主生成物として得られるので入手しやすいからである。
なお、フラーレン骨格は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び
比率で併用してもよく、またフラーレン製造時に得られる混合フラーレンを用いても構わ
ない。
以下に、フラーレンC60のフラーレン骨格を示す。なお、下記式中においては、単結合と2重結合とを区別せず、ともに実線または破線で示した。
【化7】

【0062】
上記電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体として、具体的には、下記一般式(4)、好ましくはソルビン酸エステル(5)で表される化合物が挙げられる。
【化8】

(式中、R、Rは前記と同様である。)
【0063】
上記一般式(4)、好ましくは(5)で表される1,3−ジエン化合物誘導体はフラーレン類(フラーレン骨格を有する物質)に対して容易に付加反応を起こし、即ち、フラーレン骨格が有する二重結合と共役ジエン系(1,3−ジエン化合物誘導体)とが反応し、上記一般式(1)、好ましくは(1a)で示される部分構造をn個有する物質を主とする生成物を与える。本生成物は下層膜溶剤への溶解性が高く、また常温付近で十分な安定性を有する。なおかつ、下層膜形成/熱処理時に熱分解し、上記一般式(4)または(5)で表される1,3−ジエン化合物誘導体が脱離除去されることにより、下層膜の水素密度を実質的に低減せしめる役割を有する。また、分解により生じる上記一般式(4)または(5)で表される1,3−ジエン化合物誘導体は、構造上アミンなどの塩基性化合物ではないため、上層レジストパターニング時のパターン形状への悪影響を抑制可能である。
【0064】
上記一般式(1)および(4)中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、スルホ基、及び、炭素数1〜20のシアノ基、カルボキシル基、水酸基、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、スルホン基、ハロゲン原子のいずれか1以上を含んでもよい一価の有機基のいずれかを表し、Rの一つ以上は電子吸引基である。また、2つ以上のR同士が結合して、環を形成してもよい。
としてより具体的には、水素原子、ニトロ基、水酸基、スルホ基、シアノ基、カルボキシル基、又はメチル基、エチル基、ビニル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、プロピル基、イソプロピル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、デシル基、ドデシル基、イコサニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、ベンジル基、フルオレニル基、及びナフチルメチル基から選ばれる炭素数1〜20の一価の有機基、これらの基の水素原子の一部が、シアノ基(−CN)、カルボキシル基(−COOH)、水酸基(−OH)、ニトロ基(−NO)、スルホ基(−SOH)、ハロゲン原子で置換された基、これらの基のメチレン基の一部が、カルボニル(−CO−)、酸素原子(−O−)、エステル基(−COO−)、スルホン基(−SO−)で置換された基を例示できる。
【0065】
が電子吸引基である場合、具体的には、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルカンスルホニル基、トリフルオロメチル基を例示できる。二つ以上のR同士が結合して、環を形成する場合、形成する環として具体的には、シクロプロパン環、シクロプロペン環、シクロブタン環、シクロブテン環、シクロペンタン環、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、ヘキサン環、ヘキセン環、ヘキサジエン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環、ビシクロ[2.2.2]オクテン環を例示できる。
【0066】
通常の1,3−ジエン化合物とフラーレン類の反応生成物は、室温付近での安定性に劣る場合があるが、Rの一つ以上が電子吸引基であることにより安定性が確保される。一方で、下層膜形成/熱処理時には容易に熱分解して、高炭素密度、低水素密度のフラーレン類を生じ、優れたエッチング耐性と、よれ防止効果を与える。また、すべてのRが水素原子または炭化水素基である場合に比べ、塗布溶剤への溶解性、成膜性が改善する。各Rの構造の選択により、溶剤溶解性、熱分解温度等の性能を調整可能である。
【0067】
上記一般式(1a)および(5)中、Rは、炭素数1〜19の直鎖状、分枝状または環状のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数4〜15のヘテロアリール基、または、炭素数7〜19のアラルキル基を表し、カルボニル基、エーテル基、エステル基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン原子を含んでもよい。Rとしてより具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、アリル基、ホモアリル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビニル基、イソプロペニル基、プロペニル基、メタリル基、エチニル基、アセチル基、プロピオニル基、メトキシメチル基、メトキシカルボニルメチル基、シアノメチル基、カルボキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−ブトキシエチル基、2−(2−メトキシエトキシ)エチル基、2−(2−エトキシエトキシ)エチル基、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル基、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル基、2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エチル基、2−[2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エトキシ]エチル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、インダニル基、インデニル基、アントラニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ナフタセニル基、アセトキシフェニル基、メトキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、シアノフェニル基、カルボキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基、メトキシナフチル基、フラニル基、チオフェニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、フェノキサチイニル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ピレニルメチル基、2−フェニルビニル基、1−フェニルビニル基、フェニルエチニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基等を例示できる。
【0068】
なお、本発明のレジスト下層膜材料に用いるフラーレン誘導体(A)は、フラーレン骨格を有する物質と電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体との反応生成物であり、即ち、フラーレン骨格を有する物質としてフラーレン骨格上に官能基を有している化合物と電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体との反応生成物であってもよく、この場合、フラーレン誘導体(A)としては上記一般式(1)、特に(1a)で表される部分構造に加えて、効果を損なわない範囲でフラーレン骨格上にエポキシド、水酸基、アミノ基など他の官能基を有していてもよい。
【0069】
尚、一般式(1)で表される部分構造を有するフラーレン誘導体(フラーレン骨格C60、n=1)の例を以下に示す。
【化9】

【0070】
一般式(1)、(1a)で表される部分構造を有するフラーレン誘導体として、さらに具体的には下記の化合物を例示できるが、これらに限定されない。式中、nは前述の通りである。式中、
【化10】

はフラーレン骨格、Meはメチル基、Etはエチル基、Buはブチル基、Phはフェニル基、Acはアセチル基を表し、以下同様である。
【0071】
【化11】

【0072】
【化12】

【0073】
【化13】

【0074】
【化14】

【0075】
一般式(1)、(1a)で表される部分構造を有するフラーレン誘導体など、フラーレン類(フラーレン骨格を有する物質)と電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体との反応生成物であるフラーレン誘導体のレジスト下層膜材料への配合量は、レジスト下層膜材料全成分のうち有機溶剤を除いた全固形分100質量部中、10質量部以上100質量部以下であることが好ましく、15質量部以上85質量部以下であることがさらに好ましい。10質量部以上であるとエッチング耐性向上および、よれ耐性抑制の効果が顕著となり、15質量部以上であるとこれらの効果がより十分となり好ましい。85質量部以下であると塗布膜の均一性が向上し好ましい。
【0076】
フラーレン類への、ソルビン酸エステルなどの電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体の付加反応は構造に応じて最適な方法を選択して行うことができ、前記一般式(1)または(1a)で示される部分構造をn個有する物質を主とするフラーレン誘導体を製造できる。具体的には、例えば、Tetrahedron, vol.52, 4983 (1996)に記載の方法に準じて、下図のように、フラーレン(6)及び電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体(4)、(5)を用いて前記フラーレン誘導体を製造可能である。
【0077】
【化15】

上記一般式中、n、R、R
【化16】

は前記と同様である。
【0078】
上記反応において用いるフラーレン(6)としては、前述したように、C60またはC70を単独で用いてもよいし、C60/C70混合物またはさらに高次のフラーレンをも含む混合フラーレンを用いてもよい。電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体(4)は、市販のものを用いてもよいし、後述する公知の常法(例えば、Tetrahedron, vol.52, 4983 (1996)記載の方法)に準じて製造してもよい。ソルビン酸エステル(5)は市販のものを用いてもよいし、後述する常法に従って製造してもよい。
【0079】
上記反応における、電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体(4)およびソルビン酸エステル(5)の最適使用量は、フラーレン(6)1モルに対し、0.5モル〜1000モル、特に1モル〜100モルとすることが好ましい。
【0080】
上記付加反応は、各原料を溶媒中もしくは無溶媒で混合し、加熱することにより行うことができる。反応に溶媒を使用する場合、溶媒としてはヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メチルナフタレンなどの芳香族炭化水素類;ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトン、2−ブタノンなどのケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、t−ブチルアルコール、メトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;o−ジクロロベンゼン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ピリジン、キノリンなどのアミン類;水から選択して単独あるいは2種類以上を混合して用いることができるが、原料フラーレン(6)の溶解性確保の観点から、芳香族炭化水素類およびこれを含む混合溶媒を用いることがより好ましい。
【0081】
反応温度は50℃〜200℃が好ましく、80℃〜150℃がより好ましい。溶媒を使用する場合は溶媒の沸点程度を上限とすることが好ましい。反応温度50℃以上では反応が非常に遅い恐れがなく、200℃以下では生成物の分解反応が顕著になる恐れがないために好ましい。上記付加反応の反応時間は収率向上のため薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーなどにより反応の進行を追跡して決定することが好ましいが、通常2〜200時間程度である。反応終了後は通常の水系後処理(aqueous work−up)、および/または、不溶分のろ別処理により、目的物の上記一般式(1)または(1a)で示される部分構造をn個有する物質を主とするフラーレン誘導体(7)または(8)を得る。フラーレン誘導体(7)または(8)は必要に応じて、分液、晶析、クロマトグラフィーなどの常法により精製することも可能である。
【0082】
フラーレン(6)は酸素、および光に不安定な場合があり、窒素などの不活性雰囲気下、および遮光下での反応が好ましい。副反応を抑制するため、反応系中に、2,6−ジt−ブチル−4−メチルフェノール、4−メトキシフェノールなどの一般的な安定剤、酸化防止剤を加えてもよい。その場合の添加量は、フラーレン(6)に対し、1〜10000ppm程度が好ましい。
【0083】
この他、フラーレン誘導体(8)の製造方法として、上記と同様の方法により製造したRの構造が異なる別の(9)を中間体として、例えば文献(Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., Wiley−Interscience, New York, 1999)記載の常法に従って、以下の反応式のように脱保護反応(中間体(10))、再保護反応を行って製造することも可能であるが、工程数の増加により製造コストの増加が見込まれ、工業化の上では不利が見込まれる。
【0084】
【化17】

上記一般式中、Pは保護基を表し、n、R
【化18】

は前記と同様である。
【0085】
フラーレン誘導体(7)の製造に関連する上述の公知文献(Tetrahedron, vol.52, 4983 (1996))では、原料となる電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体(4)として下図の化合物を用いている。
【化19】

【0086】
しかしながら、上記文献中にも記載があるように、これらの化合物はいずれも安定性が低く、容易に二量化するため単離精製不能である。また、当然ながらフラーレン(6)との反応の際も、二量化反応が競争するため、目的反応の選択性が低いという問題が生じてしまうため、工業的適用にはやや不向きである。これに対し、本発明の、フラーレン骨格を有する物質(フラーレン類)とソルビン酸エステルとの反応生成物であるフラーレン誘導体、および、前記一般式(1a)で示される部分構造をn個有することを特徴とするフラーレン誘導体(8)の場合、原料となる電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体(4)として、ソルビン酸エステル(5)を用いている。ソルビン酸エステルは一般に安定であり、問題なく単離精製可能である。また、工業的に大量かつ安価に入手可能なソルビン酸、ソルビン酸カリウム、またはソルビン酸エチルなどを原料として、単純なエステル化またはエステル交換反応の一工程を経るだけで、各種誘導体が容易かつ安価に製造可能であり、工業的メリットが大きい。一方でフラーレン類との反応性は十分であり、かつ、反応生成物の溶剤溶解性/保存安定性、に優れる。さらに、下層膜形成/熱処理時に分解することにより、実質的に下層膜の炭素密度を増加、かつ、水素密度を低減せしめることが可能でありながら、上層レジストパターニング時に悪影響を与えうる塩基性物質の発生がない。以上のように、本発明の、フラーレン類とソルビン酸エステルとの反応生成物であるフラーレン誘導体、および、前記一般式(1a)で示される部分構造をn個有することを特徴とするフラーレン誘導体は、フラーレン誘導体を下層膜材料に工業的に適用するにあたり非常に好適な物質である。
【0087】
本発明のレジスト下層膜材料において使用可能な有機溶剤(B)としては、(A)成分のフラーレン誘導体を溶解できれば特に制限はなく、後述する芳香環含有樹脂、フェノール性水酸基含有化合物、酸発生剤、架橋剤、界面活性剤等が溶解できるものが良い。具体的には、特開2007−199653号公報中の(0091)〜(0092)段落に記載されている溶剤を添加することができる。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、及び、これらのうち2種以上の混合物が好ましく用いられる。
【0088】
また、本発明のレジスト下層膜材料は、スピンコーティングの成膜性や、段差基板での埋め込み特性、エッチング耐性を向上させるために、(C)芳香環含有樹脂を含むことが好ましい。(C)芳香環含有樹脂は、エッチング耐性、光学特性の観点からナフタレン環を含有することがより好ましい。
【0089】
本発明のレジスト下層膜材料に好適に配合される(C)芳香環含有樹脂として、より具体的には、後述する(C1)の他、下記芳香環含有化合物の1種または2種以上とホルムアルデヒド等価体(すなわち、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、1,3,5−トリオキサン、ホルムアルデヒドジメチルアセタールなど)を酸性条件で重縮合して得られる樹脂が挙げられる。
【0090】
【化20】

【0091】
本発明のレジスト下層膜材料に配合される(C)芳香環含有樹脂として、少なくとも、下記一般式(2)で示される化合物と下記一般式(3)で示される化合物とを酸性条件で重縮合して得られる化合物(C1)を含有するものが好ましい。
【化21】

(式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数6〜20の炭化水素基を表す。Rはそれぞれ独立に、ベンゼン環、又はナフタレン環である。1≦m1+m2≦2、1≦m3+m4≦2、n1、n2はそれぞれ0又は1である。)
A−CHO (3)
(式中、Aは水素原子、飽和若しくは不飽和の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基、及び炭素数6〜20の芳香族炭化水素基のいずれかであり、エーテル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、クロル基を含んでも良い。)
【0092】
一般式(2)で示される化合物としては、具体的には下記に例示される。
【化22】

【0093】
【化23】

【0094】
【化24】

【0095】
【化25】

【0096】
上記のような化合物は4級炭素のカルド構造を有し、これによって非常に高い耐熱性を有する。レジスト下層膜上にCVD等でケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素窒化酸化膜等の無機ハードマスク中間膜を形成する場合、特に窒化膜系の膜に於いては300℃を超える高温が必要であり、レジスト下層膜としても高耐熱性が要求される。
【0097】
また、上記一般式(3)で示されるアルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、フルフラール等を挙げることができる。好ましくは、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド等が挙げられる。
【0098】
これらのうち、特にホルムアルデヒドを好適に用いることができる。また、これらのアルデヒド類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記アルデヒド類の使用量は、上記一般式(2)で示される化合物1モルに対して0.2〜5モルが好ましく、より好ましくは0.5〜2モルである。
【0099】
ホルムアルデヒドの供給形態としては、一般的に使用されるホルムアルデヒド水溶液の他に、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、ホルムアルデヒドジメチルアセタール等のアセタール類など、重縮合反応中にホルムアルデヒドと同じ反応性を示すものであれば、どのような化合物であっても使用することができる。
【0100】
また、化合物(C1)は、一般式(2)で示される化合物と一般式(3)で示される化合物とを酸触媒で縮合して得られるが、ここで、酸触媒は、具体的には塩酸、硝酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トシル酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸性触媒を挙げることができる。これらの酸触媒の使用量は、一般式(2)で示される化合物1モルに対して1×10−5〜5×10−1モルが好ましい。
【0101】
重縮合における反応溶媒として、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、塩化メチレン、ジクロロエタン、メチルセロソルブ、酢酸メトキシプロピル、γ−ブチロラクトン、ブチルセロソルブ、又はこれらの混合溶媒等を用いることができる。これらの溶媒は、反応原料100質量部に対して0〜2,000質量部の範囲であることが好ましい。
【0102】
反応温度は、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができるが、通常10〜200℃の範囲である。
【0103】
重縮合の方法としては、一般式(2)で示される化合物、一般式(3)で示される化合物、酸触媒を一括で仕込む方法や、触媒存在下に一般式(2)で示される化合物、一般式(3)で示される化合物を滴下していく方法がある。重縮合反応終了後、系内に存在する未反応原料、酸触媒等を除去するために、反応釜の温度を130〜230℃にまで上昇させ、1〜50mmHg程度で揮発分を除去することができる。
【0104】
上記一般式(2)で示される化合物は単独で重合してもよいが、他の一般式(2)で示される化合物と組み合わせて2種類以上を用いることもできる。
【0105】
一般式(2)で示される化合物と一般式(3)で示される化合物とを酸触媒で縮合して得られる化合物(C1)のポリスチレン換算の分子量は、重量平均分子量(Mw)が1,000〜30,000、特に1,500〜20,000であることが好ましい。分子量分布は1.2〜7の範囲内が好ましく用いられる。
【0106】
本発明のレジスト下層膜材料が、このような化合物(C1)を含む(C)芳香環含有樹脂を含有することにより、形成されるレジスト下層膜が、基板の段差埋め込み性に優れ、耐溶媒性を有するものとすることができ、更に、より効果的に基板のエッチング中によれが発生することを抑制でき、エッチング後のパターンラフネスが良好となる。
【0107】
また、その他の(C)芳香環含有樹脂としては、特開2006−227391号公報(0028)〜(0029)に記載の樹脂を用いることができる。
【0108】
また、本発明のレジスト下層膜材料は、(D)フェノール性水酸基含有化合物を含むものとすることが好ましい。このような(D)フェノール性水酸基含有化合物としては、上記一般式(2)で示される化合物が好ましい。また、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、2−ナフチルフェノール、3−ナフチルフェノール、4−ナフチルフェノール、4−トリチルフェノール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、カテコール、4−t−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、ピロガロール、チモール、イソチモール、1−ナフトール、2−ナフトール、1−アントラセノール、1−ピレノール、9−フェナントレノール等も用いることができる。
【0109】
本発明のレジスト下層膜材料には、熱による架橋反応を更に促進させるための酸発生剤(E)を添加することができる。酸発生剤は熱分解によって酸を発生するものや、光照射によって酸を発生するものがあるが、いずれのものも添加することができる。具体的には、特開2007−199653号公報中の(0061)〜(0085)段落に記載されている材料を添加することができる。
【0110】
本発明のレジスト下層膜材料に使用可能な架橋剤(F)は、特開2007−199653号公報中の(0055)〜(0060)段落に記載されている材料を添加することができる。これらは、熱による架橋反応を更に増進させるためにレジスト下層膜材料に加えることができ、このような場合、レジスト下層膜材料中のポリマーに架橋性の置換基を導入する方法が採られることもある。
【0111】
また、本発明のレジスト下層膜材料において、スピンコーティングにおける塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤(G)を添加することもできる。界面活性剤は、特開2009−269953号公報中の(0142)〜(0147)記載のものを用いることができる。
【0112】
更に、本発明のレジスト下層膜材料には、保存安定性を向上させるための塩基性化合物を配合することができる。塩基性化合物としては、酸発生剤より微量に発生した酸が架橋反応を進行させるのを防ぐための、酸に対するクエンチャーの役割を果たす。
このような塩基性化合物としては、具体的には特開2007−199653号公報中の(0086)〜(0090)段落に記載されている材料を添加することができる。
【0113】
本発明のレジスト下層膜形成方法では、上記のレジスト下層膜材料を、スピンコート法などで被加工基板上にコーティングする。スピンコート法などを用いることで、良好な埋め込み特性を得ることができる。スピンコート後、溶媒を蒸発し、レジスト上層膜やレジスト中間層膜とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベークを行う。ベークは200℃以上、600℃以下の範囲内で行い、10〜600秒、好ましくは10〜300秒の範囲内で行う。ベーク温度は、より好ましくは350℃以上500℃以下である。デバイスダメージやウェハーの変形への影響を考えると、リソグラフィーのウェハープロセスでの加熱できる温度の上限は600℃以下、好ましくは500℃以下である。
【0114】
SPIE Vol.469 p72(1984)に記載されているように、特に、ノボラック樹脂は、加熱によってフェノキシラジカルが生じ、ノボラック結合のメチレン基が活性化されてメチレン基同士が結合し架橋する。この反応はラジカル的反応なので、脱離する分子が生じないために耐熱性が高い材料であれば架橋による膜収縮は起こらない。
【0115】
また、本発明のレジスト下層膜形成方法では、上記のレジスト下層膜材料を、基板上にコーティングし、該レジスト下層膜材料を、酸素濃度0.1%以上21%以下の雰囲気中で焼成して硬化させることによってレジスト下層膜を形成することができる。
【0116】
本発明のレジスト下層膜材料をこのような酸素雰囲気中で焼成することにより、十分に硬化したレジスト下層膜を得ることができる。
【0117】
ベーク中の雰囲気としては空気中でもよいし、N、Ar、He等の不活性ガスを封入してもよい。
【0118】
なお、このレジスト下層膜の厚さは適宜選定されるが、30〜20,000nm、特に50〜15,000nmとすることが好ましい。レジスト下層膜を作製した後、3層プロセスの場合はその上にケイ素を含有するレジスト中間層膜、ケイ素を含まないレジスト上層膜を形成することができる。
【0119】
本発明のレジスト下層膜材料は、ケイ素含有2層レジストプロセス、ケイ素含有中間層膜を用いた3層レジストプロセス、またはケイ素含有中間層膜および有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセス、といった多層レジストプロセス用レジスト下層膜材料として極めて有用である。
【0120】
本発明のレジスト下層膜材料を用いたパターン形成方法について、以下に3層レジストプロセスを挙げて説明する。
本発明のパターン形成方法は、少なくとも、基板上に上記のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜より上にケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜より上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、多層レジスト膜とし、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像してレジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてレジスト中間層膜をエッチングし、少なくともパターンが形成されたレジスト中間層膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、少なくともパターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法である。
【0121】
ケイ素原子を含むレジスト中間層膜は、酸素ガス又は水素ガスによるエッチング耐性を示すため、上記のように、レジスト中間層膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことが好ましい。
【0122】
また、本発明は、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に前記本発明のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜より上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記無機ハードマスク中間膜をエッチングし、得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成するパターン形成方法を提供する。
【0123】
上記のように、レジスト下層膜の上に無機ハードマスク中間層膜を形成する場合は、CVD法やALD法等で、ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜、ケイ素酸化窒化膜(SiON膜)が形成される。窒化膜の形成方法としては、特開2002−334869号公報、WO2004/066377に記載されている。無機ハードマスクの膜厚は5〜200nm、好ましくは10〜100nmであり、中でも反射防止膜としての効果が高いSiON膜が最も好ましく用いられる。SiON膜を形成する時の基板温度は300〜500℃となるために、下層膜として300〜500℃の温度に耐える必要がある。本発明で用いるレジスト下層膜材料は、高い耐熱性を有しており300℃〜500℃の高温に耐えることができるため、CVD法あるいはALD法で形成された無機ハードマスクと、スピンコート法で形成されたレジスト下層膜の組み合わせが可能である。
【0124】
また、本発明は、有機反射防止膜を用いた4層レジストプロセスのレジスト下層膜としても好適に用いることができ、この場合、少なくとも、基板上に前記レジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスク中間膜をエッチングし、得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供することができる。
【0125】
レジスト中間層膜の上にレジスト上層膜としてフォトレジスト膜を形成しても良いが、上記のように、レジスト中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上にフォトレジスト膜を形成しても良い。レジスト中間層膜としてSiON膜を用いた場合、SiON膜とBARC膜の2層の反射防止膜によって1.0を超える高NAの液浸露光に於いても反射を抑えることが可能となる。BARCを形成するもう一つのメリットとしては、SiON直上でのフォトレジストパターンの裾引きを低減させる効果があることである。
【0126】
3層レジストプロセスのケイ素含有レジスト中間層膜としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層膜も好ましく用いられる。レジスト中間層膜に反射防止効果を持たせることによって、反射を抑えることができる。特に193nm露光用としては、レジスト下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高くなり、基板反射が高くなるが、レジスト中間層膜で反射を抑えることによって基板反射を0.5%以下にすることができる。反射防止効果があるレジスト中間層膜としては、248nm、157nm露光用としてはアントラセン、193nm露光用としてはフェニル基又はケイ素−ケイ素結合を有する吸光基をペンダントし、酸あるいは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用いられる。
【0127】
この場合、CVD法よりもスピンコート法によるケイ素含有レジスト中間層膜の形成の方が簡便でコスト的なメリットがある。
【0128】
3層レジスト膜におけるレジスト上層膜は、ポジ型でもネガ型でもどちらでもよく、通常用いられているフォトレジスト組成物と同じものを用いることができる。上記フォトレジスト組成物により単層レジスト上層膜を形成する場合、上記レジスト下層膜を形成する場合と同様に、スピンコート法が好ましく用いられる。フォトレジスト組成物をスピンコート後、プリベークを行うが、60〜180℃で10〜300秒の範囲が好ましい。その後常法に従い、露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行い、レジストパターンを得る。なお、レジスト上層膜の厚さは特に制限されないが、30〜500nm、特に50〜400nmが好ましい。
また、露光光としては、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、157nmのエキシマレーザー、3〜20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げることができる。
【0129】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。3層プロセスにおけるレジスト中間層膜、特に無機ハードマスクのエッチングは、フロン系のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行う。次いでレジスト中間層膜パターン、特に無機ハードマスクパターンをマスクにして酸素ガス又は水素ガスを用いてレジスト下層膜のエッチング加工を行う。
【0130】
次の被加工基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば基板がSiO、SiN、シリカ系低誘電率絶縁膜であればフロン系ガスを主体としたエッチング、p−SiやAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。基板加工をフロン系ガスでエッチングした場合、3層プロセスのケイ素含有中間層は基板加工と同時に剥離される。塩素系、臭素系ガスで基板をエッチングした場合は、ケイ素含有中間層の剥離は基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離を別途行う必要がある。
【0131】
本発明のレジスト下層膜は、これら被加工基板エッチング時のエッチング耐性に優れる特徴がある。
なお、被加工基板としては、被加工層が基板上に成膜される。基板としては、特に限定されるものではなく、Si、α−Si、p−Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等で被加工層と異なる材質のものが用いられる。被加工層としては、Si、SiO、SiON、SiN、p−Si、α−Si、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si等種々のLow−k膜及びそのストッパー膜が用いられ、通常50〜10,000nm、特に100〜5,000nm厚さに形成し得る。
【0132】
3層レジストプロセスの一例について図1を用いて具体的に示すと下記の通りである。
3層レジストプロセスの場合、図1(A)に示したように、基板1の上に積層された被加工層2上にレジスト下層膜3を形成した後、レジスト中間層膜4を形成し、その上にレジスト上層膜5を形成する。
【0133】
次いで、図1(B)に示したように、レジスト上層膜の所用部分6を露光し、PEB及び現像を行ってレジストパターン5aを形成する(図1(C))。この得られたレジストパターン5aをマスクとし、CF系ガスを用いてレジスト中間層膜4をエッチング加工してレジスト中間層膜パターン4aを形成する(図1(D))。レジストパターン5aを除去後、この得られたレジスト中間層膜パターン4aをマスクとしてレジスト下層膜3を酸素プラズマエッチングし、レジスト下層膜パターン3aを形成する(図1(E))。更にレジスト中間層膜パターン4aを除去後、レジスト下層膜パターン3aをマスクに被加工層2をエッチング加工し、パターン2aを形成する(図1(F))。
無機ハードマスク中間膜を用いる場合、レジスト中間層膜4が無機ハードマスク中間膜であり、BARCを敷く場合はレジスト中間層膜4とフレジスト上層膜5との間にBARC層を設ける。BARCのエッチングはレジスト中間層膜4のエッチングに先立って連続して行われる場合もあるし、BARCだけのエッチングを行ってからエッチング装置を変えるなどしてレジスト中間層膜4のエッチングを行うことができる。
【実施例】
【0134】
以下、実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
なお、分子量の測定法は具体的に下記の方法により行った。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
【0135】
(合成例)フラーレン誘導体、ポリマーの合成
(合成例1−1)フラーレン誘導体(F1)の合成
【化26】

nanom mix ST(フロンティアカーボン社製フラーレン混合物、C60:約60%、C70:約25%、その他高次フラーレン含有)10.0g、ソルビン酸エチル40.0gを窒素雰囲気下、110℃で40時間加熱攪拌した。過剰のソルビン酸エチルを減圧留去した後、テトラヒドロフランを用いて可溶分を抽出した。抽出液を減圧濃縮後、得られた固体をメタノールで洗浄、乾燥し、上記フラーレン誘導体(F1)6.6gを黒褐色固体として得た。合成したフラーレン誘導体(F1)のIR、LC−QTOF分析結果を以下に示す。
【0136】
IR(KBr):ν=2971、1734、1453、1254、1179,527cm-1
LC−QTOF(Negative/aq.AcONH−MeCN)
m/z=859(C6811、n=1/C60)、999(C7623、n=2/C60)、979(C7811、n=1/C70)、1119(C8623、n=2/C70).
【0137】
(合成例1−2) フラーレン誘導体(F2)の合成
【化27】

【0138】
ソルビン酸エチルを、対応するソルビン酸エステルに変更した以外は(合成例1−1)に準じた方法により、上記フラーレン誘導体(F2)を黒褐色固体として得た。
合成したフラーレン誘導体(F2)のIR、1H−NMR、LC−QTOF分析結果を以下に示す。
IR(KBr):
ν=2872、1734、1453、1253、1175、1109、527cm-1
1H−NMR(600MHz/CDCl3):
δ=1.4−2.3(3H×n)、3.2−5.5(13H×n)、5.9−7.4(2H×n).
LC−QTOF(Positive/aq.AcONH−MeCN)
m/z=1380(C935412+NH、n=3/C60)、1166(C8236+NH、n=2/C60).
【0139】
(合成例1−3) フラーレン誘導体(F3)の合成
【化28】

【0140】
ソルビン酸エチルを、対応するソルビン酸エステルに変更した以外は(合成例1−1)に準じた方法により、フラーレン誘導体(F3)を黒褐色固体として得た。
合成したフラーレン誘導体(F3)のIR、1H−NMR、LC−QTOF分析結果を以下に示す。
IR(D−ATR):
ν=2877、1733、1455、1244、1187、1143、733cm-1
1H−NMR(600MHz/CDCl3):
δ=1.4−2.3(3H×n)、3.2−5.5(17H×n)、5.9−7.4(2H×n).
LC−QTOF(Positive/aq.AcONH−MeCN)
m/z=1512(C996615+NH、n=3/C60)、1254(C864410+NH、n=2/C60).
【0141】
(合成例1−4) フラーレン誘導体(F4)の合成
原料フラーレンの使用モル比率を半分とした以外は、Tetrahedron, vol.52, 4983 (1996)に記載の方法に準じて反応を行い、フラーレン誘導体(F4)を黒褐色固体として得た。フラーレン誘導体(F4)は、n=2を主とする混合物であった。
【化29】

【0142】
(合成例2) ポリマー(R1)の合成
1Lのフラスコに9、9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンを95g、37%ホルマリン水溶液7g、パラトルエンスルホン酸5g、ジオキサン200gを加え、100℃で24時間加熱撹拌した。メチルイソブチルケトン500mlを加え、水洗により触媒と金属不純物を除去した。溶媒を減圧除去し、ポリマー(R1)を得た。
GPCにより分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を求めた。
ポリマー(R1) Mw9,500、Mw/Mn3.90
【0143】
レジスト下層膜材料(UDL−1〜5、比較UDL−1、2)の調製
上記フラーレン誘導体(F1)〜(F4)、ポリマー(R1)、AG1で示される酸発生剤、CR1で示される架橋剤、溶剤を、FC−4430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表1に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによってレジスト下層膜材料(ULD−1〜5、比較例UDL−1、2)をそれぞれ調製した。酸発生剤として使用したAG1、架橋剤として使用したCR1を以下に示す。
【0144】
【表1】

PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0145】
【化30】

【0146】
溶媒耐性測定(実施例1〜5、比較例1,2)
上記で調整したレジスト下層膜材料(UDL−1〜5、比較UDL−1、2)をシリコン基板上に塗布し、表2に記載の条件で焼成した後、膜厚を測定し、その上にPGMEA溶液をディスペンスし、30秒間放置しスピンドライ、100℃で60秒間ベークしてPGMEAを蒸発させ、膜厚を測定しPGMEA処理前後の膜厚差を求めた。
【0147】
【表2】

いずれの本発明のレジスト下層膜材料においても、溶媒に不溶の膜が形成され、溶媒処理による減膜が大幅に抑えられ、溶媒耐性(耐溶媒性)が得られた。
【0148】
CF/CHF系ガスでのエッチング試験(実施例6〜10、比較例3、4)
上記と同様にレジスト下層膜を形成し、下記条件でCF/CHF系ガスでのエッチング試験を行った。

エッチング条件
チャンバー圧力 40.0Pa
RFパワー 1,300W
CHFガス流量 30ml/min
CFガス流量 30ml/min
Arガス流量 100ml/min
時間 60sec

東京エレクトロン製エッチング装置TE−8500を用いてエッチング前後の膜減りを求めた。結果を表3に示す。
【0149】
【表3】

本発明のレジスト下層膜材料(UDL−1〜5)は、比較例のレジスト下層膜材料(比較UDL−1、2)に比べてエッチング耐性が高いことが判った。
【0150】
パターンエッチング試験(実施例11〜15、比較例5、6)
レジスト下層膜材料(UDL−1〜5、比較UDL−1、2)を、膜厚200nmのSiO膜が形成された300mmSiウェハー基板上に塗布して、300℃で60秒間ベークし、膜厚250nmのレジスト下層膜を形成した。尚、レジスト下層膜のベーク雰囲気は窒素気流下で行った。
その上にレジスト中間層膜材料SOG1を塗布して200℃で60秒間ベークして膜厚35nmのレジスト中間層膜を形成し、その上にレジスト上層膜材料のArF用SLレジストを塗布し、105℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。フォトレジスト膜上に液浸保護膜材料(TC−1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。
【0151】
レジスト中間層膜材料(SOG−1)としては、以下のポリマーのプロピレングリコールエチルエーテル2%溶液を調製した。
【化31】

【0152】
レジスト上層膜材料(ArF用SLレジスト)としては、ArF単層レジストポリマー1で示される樹脂、酸発生剤PAG1、塩基化合物amine1をFC−430(住友スリーエム(株)製)0.1質量%を含む溶媒中に表4の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0153】
【表4】

用いたArF単層レジストポリマー1、PAG1、amine1を以下に示す。
【0154】
【化32】

【化33】

【0155】
液浸保護膜材料(TC−1)としては、保護膜ポリマーを有機溶剤中に表5の割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって調製した。
【0156】
【表5】

【0157】
用いた保護膜ポリマーを以下に示す。
保護膜ポリマー
分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化34】

【0158】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポールs偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、43nm1:1のポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。
【0159】
次いで、東京エレクトロン製エッチング装置Teliusを用いてドライエッチングによりレジストパターンをマスクにしてレジスト中間層膜をエッチング加工し、得られたレジスト中間層膜パターンをマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをマスクにしてSiO膜のエッチング加工を行った。エッチング条件は下記に示すとおりである。
レジストパターンのレジスト中間層膜への転写条件。
チャンバー圧力 10.0Pa
RFパワー 1,500W
CFガス流量 75sccm
ガス流量 15sccm
時間 15sec

レジスト中間層膜パターンのレジスト下層膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 500W
Arガス流量 75sccm
ガス流量 45sccm
時間 120sec

レジスト下層膜パターンのSiO膜への転写条件。
チャンバー圧力 2.0Pa
RFパワー 2,200W
12ガス流量 20sccm
ガス流量 10sccm
Arガス流量 300sccm
60sccm
時間 90sec

【0160】
パターン断面を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−4700)にて観察し、形状を比較し、結果を表6に示す。
【表6】

【0161】
実施例11〜15のフラーレン骨格を有する物質と電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体との反応生成物であるフラーレン誘導体が添加された本発明のレジスト下層膜材料は、上層パターン形成時におけるポイゾニングの問題がなく、更に、基板エッチング時のエッチング耐性が向上し、基板転写エッチング後のパターンよれが抑制され、基板へのパターン転写が良好となった。一方、比較例5、6では、基板転写エッチング後のよれが発生した。
【0162】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0163】
1…基板、 2…被加工層、 2a…基板に形成されるパターン、 3…レジスト下層膜、 3a…レジスト下層膜パターン、 4…レジスト中間層膜、 4a…レジスト中間層膜パターン、 5…レジスト上層膜、 5a…レジストパターン、 6…露光部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜を形成するためのレジスト下層膜材料であって、少なくとも、(A)フラーレン骨格を有する物質と電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体との反応生成物であるフラーレン誘導体、(B)有機溶剤とを含むものであることを特徴とするレジスト下層膜材料。
【請求項2】
前記フラーレン誘導体が、下記一般式(1)で示される部分構造をn個有するものであることを特徴とする請求項1に記載のレジスト下層膜材料。
【化1】

(式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、スルホ基、及び、炭素数1〜20のシアノ基、カルボキシル基、水酸基、ニトロ基、スルホ基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、スルホン基、ハロゲン原子のいずれか1以上を含んでもよい一価の有機基のいずれかを表し、Rのうち1つ以上は電子吸引基である。また、2つ以上のR同士が結合して、環を形成してもよい。Cは前記フラーレン誘導体のフラーレン骨格を構成する炭素原子を表す。nは1〜30の整数を表す。)
【請求項3】
前記電子吸引基は、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルカンスルホニル基、及びトリフルオロメチル基のいずれかであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項4】
前記電子吸引基含有1,3−ジエン化合物誘導体は、ソルビン酸エステルであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項5】
前記フラーレン誘導体が、下記一般式(1a)で示される部分構造をn個有するものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料。
【化2】

(式中、Rは、炭素数1〜19の直鎖状、分枝状または環状のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数4〜15のヘテロアリール基、及び、炭素数7〜19のアラルキル基のいずれかを表し、カルボニル基、エーテル基、エステル基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、及びハロゲン原子のいずれか1以上を含んでもよい。Cは前記フラーレン誘導体のフラーレン骨格を構成する炭素原子を表す。nは1〜30の整数を表す。)
【請求項6】
前記レジスト下層膜材料が、更に、(C)芳香環含有樹脂を含有するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項7】
前記(C)芳香環含有樹脂が、ナフタレン環を含むものであることを特徴とする請求項6に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項8】
前記(C)芳香環含有樹脂が、少なくとも、下記一般式(2)で示される化合物と下記一般式(3)で示される化合物とを酸性条件で重縮合して得られる化合物(C1)を含有するものであることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のレジスト下層膜材料。
【化3】

(式中、Rはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素数6〜20の炭化水素基を表す。Rはそれぞれ独立に、ベンゼン環、又はナフタレン環である。1≦m1+m2≦2、1≦m3+m4≦2、n1、n2はそれぞれ0又は1である。)
A−CHO (3)
(式中、Aは水素原子、飽和若しくは不飽和の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、環状の炭化水素基、及び炭素数6〜20の芳香族炭化水素基のいずれかであり、エーテル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、クロル基を含んでも良い。)
【請求項9】
前記レジスト下層膜材料は、更に、(D)フェノール性水酸基含有化合物、(E)酸発生剤、(F)架橋剤、(G)界面活性剤のうち少なくとも1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料。
【請求項10】
リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜の形成方法であって、基板上に請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料をコーティングし、該レジスト下層膜材料を200℃以上600℃以下の温度で、10秒〜600秒間の範囲で熱処理して硬化させることによってレジスト下層膜を形成することを特徴とするレジスト下層膜形成方法。
【請求項11】
リソグラフィーで用いられる多層レジスト膜のレジスト下層膜の形成方法であって、基板上に請求項1乃至9のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料をコーティングし、該レジスト下層膜材料を、酸素濃度0.1%以上21%以下の雰囲気中で焼成して硬化させることによってレジスト下層膜を形成することを特徴とするレジスト下層膜形成方法。
【請求項12】
リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜より上にケイ素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜より上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、多層レジスト膜とし、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像してレジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてレジスト中間層膜をエッチングし、少なくともパターンが形成されたレジスト中間層膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、少なくともパターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項13】
前記レジスト中間層膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことを特徴とする請求項12に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜より上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記無機ハードマスク中間膜をエッチングし、得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項15】
リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上にケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜及びケイ素酸化窒化膜から選ばれる無機ハードマスク中間膜を形成し、該無機ハードマスク中間膜の上に有機反射防止膜を形成し、該有機反射防止膜の上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像して前記レジスト上層膜にレジストパターンを形成し、得られたレジストパターンをエッチングマスクにして前記有機反射防止膜と前記無機ハードマスク中間膜をエッチングし、得られた無機ハードマスク中間膜パターンをエッチングマスクにして前記レジスト下層膜をエッチングし、得られたレジスト下層膜パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項16】
前記無機ハードマスク中間膜を、CVD法又はALD法によって形成することを特徴とする請求項14又は請求項15に記載のパターン形成方法。
【請求項17】
フラーレン骨格を有する物質とソルビン酸エステルとの反応生成物であるフラーレン誘導体。
【請求項18】
下記一般式(1a)で示される部分構造をn個有するものであることを特徴とするフラーレン誘導体。
【化4】

(式中、Rは、炭素数1〜19の直鎖状、分枝状または環状のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数4〜15のヘテロアリール基、及び、炭素数7〜19のアラルキル基のいずれかを表し、カルボニル基、エーテル基、エステル基、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、及びハロゲン原子のいずれか1以上を含んでもよい。Cは前記フラーレン誘導体のフラーレン骨格を構成する炭素原子を表す。nは1〜30の整数を表す。)

【図1】
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【公開番号】特開2012−42895(P2012−42895A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186579(P2010−186579)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】