説明

レジスト下層膜材料およびこれを用いたパターン形成方法

【課題】短波長の露光において、最適なn値、k値を有し、かつ基板エッチング条件でのエッチング耐性と段差基板上での埋めこみ特性にも優れている、3層レジストプロセス用レジスト下層膜材料を提供する。
【解決手段】リソグラフィーで用いられる3層レジスト膜のレジスト下層膜材料であって、少なくとも、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物と、有機溶剤を含み、酸発生剤及び架橋剤を含有しないことを特徴とするレジスト下層膜材料。
【化26】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの製造工程における微細加工に用いられる反射防止膜材料として有効なレジスト下層膜材料及びこれを用いた遠紫外線、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F2レーザー光(157nm)、Kr2レーザー光(146nm)、Ar2レーザー光(126nm)、軟X線(EUV、13.5nm)、電子線(EB)、X線露光に好適なレジストパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光を用いたリソグラフィーにおいては、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。
【0003】
レジストパターン形成の際に使用するリソグラフィー用の光源として、水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられており、更なる微細化のための手段として、露光光を短波長化する方法が有効とされてきた。このため、64MビットDRAM加工方法の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。しかし、更に微細な加工技術(加工寸法が0.13μm以下)を必要とする集積度1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、特にArFエキシマレーザー(193nm)を用いたリソグラフィーが検討されてきている。
【0004】
一方、従来、段差基板上に高アスペクト比のパターンを形成するには2層レジスト法が優れていることが知られており、更に、2層レジスト膜を一般的なアルカリ現像液で現像するためには、ヒドロキシ基やカルボキシル基等の親水基を有する高分子シリコーン化合物が必要である。
【0005】
シリコーン系化学増幅ポジ型レジスト材料としては、安定なアルカリ可溶性シリコーンポリマーであるポリヒドロキシベンジルシルセスキオキサンのフェノール性水酸基の一部をt−Boc基で保護したものをベース樹脂として使用し、これと酸発生剤とを組み合わせたKrFエキシマレーザー用シリコーン系化学増幅ポジ型レジスト材料が提案された(特許文献1、非特許文献1等参照)。また、ArFエキシマレーザー用としては、シクロヘキシルカルボン酸を酸不安定基で置換したタイプのシルセスキオキサンをベースにしたポジ型レジスト材料が提案されている(特許文献2,3、非特許文献2等参照)。更に、Fレーザー用としては、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶解性基として持つシルセスキオキサンをベースにしたポジ型レジスト材料が提案されている(特許文献4等参照)。上記ポリマーは、トリアルコキシシラン、又はトリハロゲン化シランの縮重合によるラダー骨格を含むポリシルセスキオキサンを主鎖に含むものである。
【0006】
珪素が側鎖にペンダントされたレジスト用ベースポリマーとしては、珪素含有(メタ)アクリルエステル系ポリマーが提案されている(特許文献5、非特許文献3等参照)。
【0007】
2層レジスト法の下層膜としては、酸素ガスによるエッチングが可能な炭化水素化合物であり、更にその下の基板をエッチングする場合におけるマスクになるため、高いエッチング耐性を有することが必要である。酸素ガスエッチングにおいては、珪素原子を含まない炭化水素のみで構成される必要がある。また、上層の珪素含有レジスト膜の線幅制御性を向上させ、定在波によるパターン側壁の凹凸とパターンの崩壊を低減させるためには、反射防止膜としての機能も有し、具体的には下層膜からレジスト上層膜内への反射率を1%以下に抑える必要がある。
【0008】
ここで、最大500nmの膜厚までの反射率を計算した結果を図1,2に示す。露光波長は193nm、レジスト上層膜のn値を1.74、k値を0.02と仮定し、図1ではレジスト下層膜のk値を0.3に固定し、縦軸にn値を1.0〜2.0、横軸に膜厚0〜500nmの範囲で変動させたときの基板反射率を示す。膜厚が300nm以上の2層レジスト用レジスト下層膜を想定した場合、レジスト上層膜と同程度かあるいはそれよりも少し屈折率が高い1.6〜1.9の範囲で反射率を1%以下にできる最適値が存在する。
【0009】
また、図2では、レジスト下層膜のn値を1.5に固定し、k値を0〜0.8の範囲で変動させたときの反射率を示す。k値が0.24〜0.15の範囲で反射率を1%以下にすることが可能である。一方、40nm程度の薄膜で用いられる単層レジスト用の反射防止膜の最適k値は0.4〜0.5であり、300nm以上で用いられる2層レジスト用のレジスト下層膜の最適k値とは異なる。2層レジスト用のレジスト下層膜では、より低いk値、即ちより高透明なレジスト下層膜が必要であることが示されている。
【0010】
ここで、波長193nm用のレジスト下層膜材料として、非特許文献4に紹介されているようにポリヒドロキシスチレンとアクリル酸エステルの共重合体が検討されている。ポリヒドロキシスチレンは193nmに非常に強い吸収を持ち、そのもの単独ではk値が0.6前後と高い値である。そこで、k値が殆ど0であるアクリル酸エステルと共重合させることによって、k値を0.25前後に調整しているのである。
【0011】
しかしながら、ポリヒドロキシスチレンに対して、アクリル酸エステルの基板エッチングにおけるエッチング耐性は弱く、しかもk値を下げるためにかなりの割合のアクリル酸エステルを共重合せざるを得ず、結果的に基板エッチングの耐性はかなり低下する。エッチングの耐性は、エッチング速度だけでなく、エッチング後の表面ラフネスの発生にも現れてくる。アクリル酸エステルの共重合によってエッチング後の表面ラフネスの増大が深刻なほど顕著になっている。
【0012】
ベンゼン環よりも波長193nmにおける透明性が高く、エッチング耐性が高いものの一つにナフタレン環がある。例えば、特許文献6にナフタレン環、アントラセン環を有するレジスト下層膜が提案されている。しかしながら、ナフトール共縮合ノボラック樹脂、ポリビニルナフタレン樹脂のk値は0.3〜0.4の間であり、目標の0.1〜0.3の透明性には未達であり、更に透明性を上げなくてはならない。また、ナフトール共縮合ノボラック樹脂、ポリビニルナフタレン樹脂の波長193nmにおけるn値は低く、本発明者らの測定した結果では、ナフトール共縮合ノボラック樹脂で1.4、ポリビニルナフタレン樹脂に至っては1.2である。例えば、特許文献7、特許文献8で示されるアセナフチレン重合体においても、波長248nmに比べて193nmにおけるn値が低く、k値は高く、共に目標値には達していない。n値が高く、k値が低く透明でかつエッチング耐性が高い下層膜が求められている。
【0013】
一方、珪素を含まない単層レジストをレジスト上層膜、その下に珪素を含有するレジスト中間層膜、更にその下に有機膜のレジスト下層膜を積層する3層プロセスが提案されている(例えば、非特許文献5参照)。
一般的には珪素含有レジストより単層レジストの方が解像性に優れ、3層プロセスでは高解像な単層レジストを露光イメージング層として用いることができる。
レジスト中間層膜としては、スピンオングラス(SOG)膜が用いられ、多くのSOG膜が提案されている。
【0014】
ここで3層プロセスにおける基板反射を抑えるための最適な下層膜の光学定数は2層プロセスにおけるそれとは異なっている。
基板反射をできるだけ抑え、具体的には1%以下にまで低減させる目的は2層プロセスも3層プロセスも変わらないのであるが、2層プロセスは下層膜だけに反射防止効果を持たせるのに対して、3層プロセスは中間層と下層のどちらか一方あるいは両方に反射防止効果を持たせることができる。
【0015】
反射防止効果を付与させた珪素含有層材料が、特許文献9、特許文献10に提案されている。
一般的に単層の反射防止膜よりも多層反射防止膜の方が反射防止効果は高く、光学材料の反射防止膜として広く工業的に用いられている。
レジスト中間層膜とレジスト下層膜の両方に反射防止効果を付与させることによって高い反射防止効果を得ることができる。
3層プロセスにおいて珪素含有レジスト中間層膜に反射防止膜としての機能を持たせることができれば、レジスト下層膜に反射防止膜としての最高の効果は特に必要がない。
3層プロセスの場合のレジスト下層膜としては、反射防止膜としての効果よりも基板加工における高いエッチング耐性が要求される。
そのために、エッチング耐性が高く、芳香族基を多く含有するノボラック樹脂が3層プロセス用レジスト下層膜として用いられて来た。
【0016】
ここで、図3にレジスト中間層膜のk値を変化させたときの基板反射率を示す。
レジスト中間層膜のk値として0.2以下の低い値と、適切な膜厚設定によって、1%以下の十分な反射防止効果を得ることができる。
通常反射防止膜として、膜厚100nm以下で反射を1%以下に抑えるためにはk値が0.2以上であることが必要であるが(図2参照)、レジスト下層膜である程度の反射を抑えることができる3層構造のレジスト中間層膜としては0.2より低い値のk値が最適値となる。
【0017】
次に、レジスト下層膜のk値が0.2の場合と0.6の場合の、レジスト中間層膜とレジスト下層膜の膜厚を変化させたときの反射率変化を図4と5に示す。
図4のk値が0.2のレジスト下層膜は、2層プロセスに最適化されたレジスト下層膜を想定しており、図5のk値が0.6のレジスト下層膜は、波長193nmにおけるノボラックやポリヒドロキシスチレンのk値に近い値である。
レジスト下層膜の膜厚は基板のトポグラフィーによって変動するが、レジスト中間層膜の膜厚はほとんど変動せず、設定した膜厚で塗布できると考えられる。
【0018】
ここで、レジスト下層膜のk値が高い方(0.6の場合)が、より薄膜で反射を1%以下に抑えることができる。
レジスト下層膜のk値が0.2の場合、膜厚250nmでは反射を1%にするためにレジスト中間層膜の膜厚を厚くしなければならない。
レジスト中間層膜の膜厚を上げると、レジスト中間層膜を加工するときのドライエッチング時に最上層のレジストに対する負荷が大きく、好ましいことではない。
【0019】
近年微細化が急激に進行し、45nmLSの寸法においてはパターン倒れの観点から、レジストの膜厚が100nmを下回るようになってきた。3層プロセスにおいても100nm以下のレジストパターンを珪素含有レジスト中間層膜に転写することが困難になってきており、珪素含有レジスト中間層膜の薄膜化が進行している。図4、5ではレジスト下層膜のk値に依らず珪素含有レジスト中間層膜にk値が0.1程度の吸収があれば、例えば珪素含有レジスト中間層膜の膜厚が50nmであれば1%以下の反射率を達成できることが示されているが、珪素含有レジスト中間層膜のエッチング加工精度向上の観点から膜厚が50nm以下で使いたいという要求がある。珪素含有レジスト中間層膜の膜厚が50nm以下では、珪素含有レジスト中間層膜の反射防止効果は半減してくるので、バイレイヤーレジスト用レジスト下層膜の時と同様のn値、k値が必要になってくる。
【0020】
また、下地の被加工基板に段差がある場合、下層膜によって段差を平坦化させる必要がある。下層膜を平坦化させることによって、その上に成膜する中間層やフォトレジストの膜厚変動を抑え、リソグラフィーのフォーカスマージンを拡大することが出来る。
下層膜をスピンコーティングによって形成した場合、基板の凹凸を埋め込むことが出来る長所がある。一方、メタンガス、エタンガス、アセチレンガスなどを原料に用いたCVDによって形成されたアモルファスカーボン下層膜は、段差をフラットに埋め込むことが困難である。更に、塗布型の材料に於いて埋め込み特性を向上させるために特許文献11に示すように、分子量が低く、分子量分布が広いノボラックを用いる方法、特許文献12に示されるようにベースポリマーに低融点の低分子化合物をブレンドする方法が提案されている。
【0021】
ノボラック樹脂が加熱だけで分子間架橋し硬化することは従来からよく知られている(非特許文献6)。特許文献13にポリアリーレンやナフトールノボラック、アントラセノールノボラックなどの多環芳香族化合物を熱によって脱水素あるいは脱水縮合反応によって炭素密度を高めた下層膜を用いるパターン形成方法はこの様な熱架橋システムを用いている。
【0022】
【特許文献1】特開平6−118651号公報
【特許文献2】特開平10−324748号公報
【特許文献3】特開平11−302382号公報
【特許文献4】特開2002−55456号公報
【特許文献5】特開平9−110938号公報
【特許文献6】特開2002−14474号公報
【特許文献7】特開2001−40293号公報
【特許文献8】特開2002−214777号公報
【特許文献9】米国特許第6506497号明細書
【特許文献10】米国特許第6420088号明細書
【特許文献11】特開2002−47430号公報
【特許文献12】特開平11−154638号公報
【特許文献13】特許3504247号
【非特許文献1】SPIE vol.1925(1993)p377
【非特許文献2】SPIE vol.3333(1998)p62
【非特許文献3】J.Photopolymer Sci. and Technol.Vol.9 No.3(1996)p435−446
【非特許文献4】SPIE vol.4345(2001)p50
【非特許文献5】J.Vac.Sci.Technol.,16(6),Nov./Dec.1979
【非特許文献6】SPIE Vol.469 p72(1984)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、短波長の露光において、最適なn値、k値を有し、かつ基板エッチング条件でのエッチング耐性と段差基板上での埋めこみ特性にも優れている、3層レジストプロセス用レジスト下層膜材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、リソグラフィーで用いられる3層レジスト膜のレジスト下層膜材料であって、少なくとも、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物と、有機溶剤を含み、酸発生剤及び架橋剤を含有しないことを特徴とするレジスト下層膜材料を提供する(請求項1)。
【化2】

(式中、R、Rは独立して水素原子又はメチル基、R、Rは独立して水素原子あるいは酸不安定基である。p、qは独立して1〜4の正数である。a1+a2及びbは正数であり、0≦a1/(a1+a2+b)<1.0、0≦a2/(a1+a2+b)<1.0、0<(a1+a2)/(a1+a2+b)<1.0、0<b/(a1+a2+b)<1.0の範囲である。)
【0025】
このように一般式(1)で示される繰り返し単位を有するレジスト下層膜材料を用いることで、短波長の露光において、最適なn値、k値を有し、かつ基板エッチング条件でのエッチング耐性と段差基板上での埋めこみ特性にも優れている、3層レジストプロセス用レジスト下層膜を形成することができる。
【0026】
特に、埋め込み特性の優劣は、ビアホールなどの深い段差基板での埋めこみ過程において、コーティング後のベーク時に、埋め込まれる速度と架橋反応速度の差に依存する。
そこで、本発明のレジスト下層膜材料は、酸発生剤及び架橋剤は含有しないことで、架橋反応速度を抑えることにより、埋め込み特性の向上を図っている。
【0027】
また、3層レジスト膜は、レジスト中間層膜とレジスト下層膜の両方に反射防止効果を付与させることによって、2層レジスト膜に比べ、高い反射防止効果を有するものとすることができる。ここで、レジスト中間層膜に反射防止膜としての機能を持たせ、レジスト下層膜には高いエッチング耐性を持たせることも可能である。本発明のレジスト下層膜材料はエッチング耐性に優れているため、これを用いることでエッチング耐性も優れており、かつ2層レジスト膜に比べ高い反射防止効果を有する3層レジスト膜を形成することができる。従って、高精度で基板にパターンを形成することができる。
【0028】
また、本発明は、リソグラフィーで用いられる3層レジスト膜のレジスト下層膜の形成方法であって、基板上に前記本発明のレジスト下層膜材料をコーティングし、該レジスト下層膜材料を250℃以上450℃以下の温度で、10秒〜600秒間の範囲で熱処理して硬化させることによってレジスト下層膜を形成することを特徴とするレジスト下層膜形成方法を提供する(請求項2)。
【0029】
このような、本発明のレジスト形成方法により形成したレジスト下層膜は、膜厚均一性が良い。また、レジスト上層膜あるいはレジスト中間層膜とのインターミキシングの恐れが少ないため、レジスト上層膜等への低分子成分の拡散が少ないものとなる。その結果、本発明のレジスト形成方法により、エッチング耐性に優れ、高精度のパターンを形成することができるレジスト下層膜を形成することができる。
【0030】
また、本発明は、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に前記本発明のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、3層レジスト膜とし、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像してレジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてレジスト中間層膜をエッチングし、少なくともパターンが形成されたレジスト中間層膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、少なくともパターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する(請求項3)。
【0031】
このように、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成したレジスト下層膜は、短波長の露光において、最適なn値、k値を有し、必要により反射防止効果のあるレジスト中間層膜と併せることで優れた反射防止効果をもたらす。しかも、基板エッチング時のエッチング耐性と段差基板上での埋めこみ特性に優れている。したがって、これを、3層レジストプロセスのレジスト下層膜として用いれば、さらに高精度で基板にパターンを形成することができる。
【0032】
この場合、前記フォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料が、珪素原子を含有するポリマーを含まず、前記レジスト中間層膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うのが好ましい(請求項4)。
【0033】
レジスト上層膜に珪素原子を含有するポリマーを含まないものは、珪素原子を含有するポリマーを含むものと比較して、解像性に優れるという利点がある。したがって、レジスト中間層膜に転写されるパターン、さらには、該レジスト中間層膜をマスクにして酸素ガス又は水素ガスを主体とするドライエッチングにより下層膜に転写されるパターンも高精度とできる。従って、このようにパターンが転写されたレジスト下層膜をマスクにして基板をエッチングし、基板にパターンを形成すれば、より高精度のパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明のレジスト下層膜材料を用いれば、短波長の露光において、最適なn値、k値を有し、かつ基板エッチング条件でのエッチング耐性と段差基板上での埋め込み特性に優れている、3層レジストプロセス用レジスト下層膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明について、さらに詳しく説明する。
基板エッチング後の下層膜において、下層膜パターンの“うねり”が指摘されている。その原因として、フルオロカーボン系のガスによる基板エッチング中に、下層膜の水素原子がフッ素原子で置換される現象が示されている(Proc.of Symp.Dry.Process,(2005)p11)。下層膜表面がテフロン(登録商標)化されることによって下層膜が体積増加により膨潤したり、ガラス転移点が低下することによって、より微細なパターンのうねりが生じるものと考えられる。
【0036】
一方、フッ素ガスで現像後のレジスト表面をフッ素化し、レジストパターンの熱軟化点を下げて熱フローによってホールのサイズをシュリンクさせる技術が提案されている(SPIE vol.5753(2005)p195)。これによると、フッ素化の速度はクレゾールノボラックが最も早く、次いでポリヒドロキシスチレン、最も遅いのがポリメチルメタクリレートとなっている。フッ素による求電子反応は、脂環族基よりも芳香族基の方が早いことは一般的によく知られており、芳香族基の割合が最も高いクレゾールノボラックが最もフッ素化されやすいと考えられる。
【0037】
このような背景の下、ヒドロキシスチレン類、とノルボルナジエンとの共重合ポリマーをベースとし、酸発生剤と架橋剤を添加した下層膜が提案されている(特開2004−205658号公報)。
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエンであるノルボルナジエンはラジカル重合あるいはカチオン重合が可能で、メタセシス重合によるノルボルネン類を重合したポリノルボルネンや、ROMP(開環メタセシス重合)で問題であった脱金属触媒プロセスの必要がない。ノルボルナジエンを重合したノルトリシクレンは、炭素数7個の内、3級炭素が6個もある。ノルボルネンは炭素数7個の内の3級炭素数が4個である。1級、2級炭素よりも3級炭素の方が置換される水素原子が少ない分だけフッ素化されにくいために、エッチング中の水素原子のフッ素置換割合が少なくなることが予想され、エッチング後のパターンのうねりが少なくなることが期待される。
【0038】
しかし、上記の共重合ポリマーは反射防止膜機能としての屈折率、エッチング耐性は良いが、埋め込み特性が劣る問題があることを本発明者らは見出した。
埋め込み特性改善のために、特開2002−47430号公報や特開平11−154638号公報に示された低分子のフェノール化合物などを添加する手法は効果的であるが、ベーク時に低分子化合物が昇華することによってパーティクルが発生し、ベーク炉を汚染する問題が生じる。そのため当該手法は、ベーク時にパーティクル低減の観点から用いることが出来ない。
【0039】
そこで、本発明者らは、短波長の露光において、最適なn値、k値を有し、かつ基板エッチング条件でのエッチング耐性と段差基板上での埋めこみ特性にも優れている、3層レジストプロセス用レジスト下層膜材料を開発すべく鋭意検討を重ねた。
【0040】
その結果、本発明者らは、少なくとも、ヒドロキシスチレン類又は/及びヒドロキシビニルナフタレン類と、ノルボルナジエンとの繰り返し単位を有する高分子化合物と、有機溶媒を含み、酸発生剤及び架橋剤を含有しないことを特徴とするレジスト下層膜材料が、最適なn値、k値を有し、かつ基板エッチング条件でのエッチング耐性と段差基板上での埋め込み特性に優れている、3層レジストプロセス用レジスト下層膜を形成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0041】
すなわち、本発明のレジスト下層膜材料は、リソグラフィーで用いられる3層レジスト膜のレジスト下層膜材料であって、少なくとも、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物と、有機溶剤を含み、酸発生剤及び架橋剤を含有しないことを特徴とするレジスト下層膜材料である。
【化3】

(式中、R、Rは独立して水素原子又はメチル基、R、Rは独立して水素原子あるいは酸不安定基である。p、qは独立して1〜4の正数である。a1+a2及びbは正数であり、0≦a1/(a1+a2+b)<1.0、0≦a2/(a1+a2+b)<1.0、0<(a1+a2)/(a1+a2+b)<1.0、0<b/(a1+a2+b)<1.0の範囲である。)
【0042】
このように一般式(1)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物、及び有機溶剤を含むレジスト下層膜材料を用いれば、例えば波長193nmといった短波長の露光において、最適なn値、k値を有し、かつ基板エッチング条件でのエッチング耐性と段差基板上での埋めこみ特性に優れている、3層レジストプロセス用レジスト下層膜を形成することができる。
そして、例えば、即ちポリヒドロキシスチレン、クレゾールノボラック、ナフトールノボラックなどよりも透明性が高いものとすることができる。また、波長193nmといった短波長での露光において膜厚200nm以上とした時にも優れた反射防止効果を示す。
【0043】
また、本発明のレジスト下層膜材料は、酸発生剤及び架橋剤は含有しないことで、埋め込み特性に関し優れた性質を示す。
埋め込み特性の優劣は、ビアホールなどの深い段差基板での埋めこみ過程において、コーティング後のベーク時に、埋め込まれる速度と架橋反応速度との差に依存する。すなわち、埋め込まれる速度より架橋反応速度の方が早い場合、埋め込みが不十分となる。
シクロオレフィン構造を有するポリマーはガラス転移点が高いため、架橋反応速度の方が埋め込まれる速度より速くなり、埋め込み特性が比較的劣る。このポリマーに、酸発生剤や架橋剤を添加すると、架橋反応が促進されるため、埋め込み特性が非常に劣る結果となることを本発明者らは見出した。
それゆえ、本発明のレジスト下層膜材料は、酸発生剤、架橋剤を含有しないことで架橋反応速度を抑えることにより、埋め込み特性に関し優れた性質を示す3層レジストプロセス用レジスト下層膜を形成する材料となり得る。
なお、本発明の下層膜材料は、架橋点となるヒドロキシ基を有しているため、酸発生剤、架橋剤を含有しなくても、埋め込み特性を適切に調節しながら、架橋反応を進めることができる。
【0044】
さらに、本発明のレジスト下層膜材料は、3層レジストプロセスで用いることを特徴とする。3層レジスト膜は、レジスト中間層膜とレジスト下層膜の両方に反射防止効果を付与させることによって、2層レジスト膜に比べ、高い反射防止効果を有することができる。また、レジスト中間層膜の膜厚を薄くしても、基板反射率を低く抑えることができる。
この3層レジストプロセスにおいて、レジスト中間層膜に反射防止膜としての機能を持たせ、レジスト下層膜には高いエッチング耐性を持たせることも可能であり、反射防止効果とエッチング耐性に優れた3層レジスト膜を形成することができる。
また、3層レジストプロセスのレジスト上層膜として、珪素原子を含有するポリマーを含まないものを用いることで、2層レジスト膜に比べ、格段に優れた解像性が得られるという利点もある。
以上より、本発明のレジスト下層膜材料を用いた3層レジスト膜は、エッチング耐性が優れており、2層レジスト膜に比べて、非常に優れた反射防止効果と解像性を有するものとできる。従って、高精度で基板にパターンを形成することができるという顕著な効果を奏する。
【0045】
また、一般式(1)中の繰り返し単位a1、a2は、例えば、下記一般式(2)で示されるヒドロキシスチレン類a1m、ヒドロキシビニルナフタレン類a2m、から得ることができ、一方、繰り返し単位bのノルトリシクレンは下記ノルボルナルジエンbmから得ることができる。
【0046】
【化4】

(式中、R、Rは独立して水素原子又はメチル基、R’、R’は独立して水素原子又は酸不安定基、アセチル基、ピバロイル基である。p、qは独立して1〜4の正数である。)
【0047】
ノルボルナジエンは、下記一般式(3)で示されるように、閉環重合によってノルトリシクレンの繰り返し単位bを有する高分子化合物を生じるが、少量であるがオレフィンを含む繰り返し単位b1を有する高分子化合物が生じることがある。
【化5】

【0048】
繰り返し単位a1、a2、bを得るためのモノマーとしてヒドロキシ基をアセチル基やピバロイル基で置換しておいて、重合後にアルカリ加水分解で脱保護しヒドロキシ基にしても良い。また、ヒドロキシ基の一部又は全てを酸不安定基で置換しても良い。
一般式(1)中、R、Rで示される酸不安定基は、種々選定されるが、同一でも異なっていてもよく、ヒドロキシル基の水素原子、すなわち、一般式(1)中のR、Rが、特に下記式(A−1)、(A−2)で示される基、下記式(A−3)で示される炭素数4〜40の3級アルキル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基、トリメチルシリル基等で置換されている構造のものが挙げられる。
【0049】
【化6】

【0050】
一般式(A−1)において、R30は炭素数4〜20、好ましくは4〜15の3級アルキル基、各アルキル基がそれぞれ炭素数1〜6のトリアルキルシリル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基又は上記一般式(A−3)で示される基を示し、3級アルキル基として具体的には、tert−ブチル基、tert−アミル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチルシクロペンチル基、1−ブチルシクロペンチル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−ブチルシクロヘキシル基、1−エチル−2−シクロペンテニル基、1−エチル−2−シクロヘキセニル基、2−メチル−2−アダマンチル基等が挙げられ、トリアルキルシリル基として具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基等が挙げられ、オキソアルキル基として具体的には、3−オキソシクロヘキシル基、4−メチル−2−オキソオキサン−4−イル基、5−メチル−2−オキソオキソラン−5−イル基等が挙げられる。dは0〜6の整数である。
【0051】
一般式(A−2)において、R31、R32は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基等を例示できる。R33は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には下記の置換アルキル基等が例示できる。
【0052】
【化7】

【0053】
31とR32、R31とR33、R32とR33とは結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはR31、R32、R33はそれぞれ炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示し、好ましくは環の炭素数は3〜10、特に4〜10である。
【0054】
上記式(A−1)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニル基、1,1−ジエチルプロピルオキシカルボニルメチル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニル基、1−エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニル基、1−エチル−2−シクロペンテニルオキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等が例示できる。
【0055】
更に、下記式(A−1)−1〜(A−1)−10で示される置換基を挙げることもできる。
【0056】
【化8】

【0057】
ここで、R37は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基、R38は水素原子、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基である。また、R39は互いに同一又は異種の炭素数2〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のアリール基である。aは0〜6の整数である。
【0058】
上記式(A−2)で示される酸不安定基のうち、直鎖状又は分岐状のものとしては、下記式(A−2)−1〜(A−2)−17のものを例示することができる。
【0059】
【化9】

【0060】
上記式(A−2)で示される酸不安定基のうち、環状のものとしては、テトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等、あるいは下記式(A−2)−18〜(A−2)−35が挙げられる。
【0061】
【化10】

【0062】
また、下記式(A−2a)あるいは(A−2b)で表される酸不安定基によってベース樹脂が分子間あるいは分子内架橋されていてもよい。
【0063】
【化11】

【0064】
上記式中、R40、R41は水素原子又は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。又は、R40とR41は結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはR40、R41は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。R42は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、b1、d1は0又は1〜10、好ましくは0又は1〜5の整数、c1は1〜7の整数である。Aは、(c1+1)価の炭素数1〜50の脂肪族もしくは脂環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ環基を示し、これらの基はヘテロ原子を介在してもよく、又はその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、カルボニル基又はフッ素原子によって置換されていてもよい。Bは−CO−O−、−NHCO−O−又は−NHCONH−を示す。
【0065】
この場合、好ましくは、Aは2〜4価の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルキルトリイル基、アルキルテトライル基、炭素数6〜30のアリーレン基であり、これらの基はヘテロ原子を介在していてもよく、またその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、アシル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、c1は好ましくは1〜3の整数である。
【0066】
上記式(A−2a)、(A−2b)で示される架橋型アセタール基は、具体的には下記式(A−2)−37〜(A−2)−44のものが挙げられる。
【0067】
【化12】

【0068】
次に、上記式(A−3)においてR34、R35、R36は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素などのヘテロ原子を含んでもよく、R34とR35、R34とR36、R35とR36とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に、炭素数3〜20の環を形成してもよい。
【0069】
上記式(A−3)に示される3級アルキル基としては、tert−ブチル基、トリエチルカルビル基、1−エチルノルボニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、2−(2−メチル)アダマンチル基、2−(2−エチル)アダマンチル基、tert−アミル基等を挙げることができる。
【0070】
また、3級アルキル基としては、下記一般式(A−3)−1〜(A−3)−18を具体的に挙げることもできる。
【0071】
【化13】

【0072】
上記式(A−3)−1〜(A−3)−18中、R43は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数6〜20のフェニル基等のアリール基を示す。R44、R46は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R45は炭素数6〜20のフェニル基等のアリール基を示す。
【0073】
更に、下記式(A−3)−19、(A−3)−20に示すように、2価以上のアルキレン基、アリーレン基であるR47を含んで、ポリマーの分子内あるいは分子間が架橋されていてもよい。
【0074】
【化14】

【0075】
上記式(A−3)−19、(A−3)−20中、R43は前述と同様、R47は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、又はフェニレン基等のアリーレン基を示し、酸素原子や硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい。e1は1〜3の整数である。
【0076】
上記式(A−1)、(A−2)、(A−3)中のR30、R33、R36は、フェニル基、p−メチルフェニル基、p−エチルフェニル基、p−メトキシフェニル基等のアルコキシ置換フェニル基等の非置換又は置換アリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等や、これらの基に酸素原子を有する、あるいは炭素原子に結合する水素原子が水酸基に置換されたり、2個の水素原子が酸素原子で置換されてカルボニル基を形成する下記式で示されるようなアルキル基、あるいはオキソアルキル基を挙げることができる。
【0077】
【化15】

【0078】
また、上記一般式(1)中のR、Rが酸不安定基の場合、下層膜の架橋時の熱や酸によって脱保護反応が行われ、脱保護によって生じたヒドロキシ基によって架橋反応が進行する。予めヒドロキシ基を酸不安定基で置換しておくことによって溶媒への溶解性を上げることができる。
本発明のレジスト下層膜材料は、一般式(1)で示されるヒドロキシスチレン類又は/及びヒドロキシビニルナフタレン類と、ノルボルナジエンとの共重合体ベースとするが、さらに、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイミド類、ビニルピロリドン、ビニルエーテル類、ジビニルエーテル類、ジ(メタ)アクリレート類、ジビニルベンゼン類、インデン類、アセナフチレン類、スチレン類、ビニルナフタレン類、ビニルカルバゾール、ビニルアントラセン類、ノルボルネン類、トリシクロデセン類、テトラシクロドデセン類などの他のオレフィン化合物と共重合させたものを用いることもできる。
【0079】
ここで、a1、a2、bは前記の通りであるが、より好ましくは、0≦a1/(a1+a2+b)≦0.90、0≦a2/(a1+a2+b)≦0.90、0.05≦(a1+a2)/(a1+a2+b)≦0.9、0.1≦b/(a1+a2+b)≦0.95、更に好ましくは0≦a1/(a1+a2+b)≦0.80、0≦a2/(a1+a2+b)≦0.80、0.10≦(a1+a2)/(a1+a2+b)≦0.8、0.2≦b/(a1+a2+b)≦0.90である。
【0080】
また、繰り返し単位a1、a2、bを除く他のオレフィン化合物由来の繰り返し単位をcとした時、0≦c≦0.8であるのが好ましく、0≦c≦0.7であるのが更に好ましい。
そして、a1+a2+b+c=1であることが好ましいが、a1+a2+b+c=1とは、繰り返し単位a1、a2、b、cを含む高分子化合物(共重合体)において、繰り返し単位a1、a2、b、cの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%であることを示す。
【0081】
これら本発明のレジスト下層膜材料に含まれる共重合体を合成するには、1つの方法としては、置換又は非置換のヒドロキシスチレン類又は/及びヒドロキシビニルナフタレン類と、ノルボルナジエンと、繰り返し単位cを得るための一種類以上のオレフィンモノマーを有機溶剤中、ラジカル開始剤あるいはカチオン重合開始剤を加え加熱重合を行う。ヒドロキシ基を含むモノマーのヒドロキシ基をアセチル基で置換させておき、得られた高分子化合物を、有機溶剤中アルカリ加水分解を行い、アセチル基を脱保護することもできる。重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。ラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。カチオン重合開始剤としては、硫酸、燐酸、塩酸、硝酸、次亜塩素酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トシル酸などの酸、BF、AlCl、TiCl、SnClなどのフリーデルクラフツ触媒のほか、I、(CCClのようにカチオンを生成しやすい物質が使用される。
【0082】
反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。アルカリ加水分解時の塩基としては、アンモニア水、トリエチルアミン等が使用できる。また反応温度としては−20〜100℃、好ましく0〜60℃であり、反応時間としては0.2〜100時間、好ましくは0.5〜20時間である。
【0083】
本発明に係る共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は、1,500〜200,000の範囲が好ましく、より好ましくは2,000〜100,000の範囲である。分子量分布は特に制限がなく、分画によって低分子体及び高分子体を除去し、分散度を小さくすることも可能であり、分子量、分散度が異なる2つ以上の一般式(1)の重合体の混合、あるいは組成比の異なる2種以上の一般式(1)の重合体を混合してもかまわない。
【0084】
本発明のレジスト下層膜材料に含まれる共重合体、特には一般式(1)で示される繰り返し単位を有する共重合体の波長193nmにおける透明性を更に向上させるために、水素添加を行うことができる。好ましい水素添加の割合は、芳香族基の80モル%以下、より好ましくは60モル%以下である。
【0085】
本発明のレジスト下層膜材料用のベース樹脂は、少なくともヒドロキシスチレン類による繰り返し単位a1又は、ヒドロキシビニルナフタレン類による繰り返し単位a2とノルボルナジエンによる繰り返し単位bを有する重合体を含むことを特徴とするが、反射防止膜材料として挙げられている従来のポリマーとブレンドすることもできる。
【0086】
ヒドロキシスチレン類又は/及びヒドロキシビニルナフタレン類と、ノルトリシクレン共重合体のガラス転移点が150℃以上である。シクロオレフィン構造を有するポリマーはガラス転移点が高い傾向があるため、架橋反応速度の方が埋め込まれる速度より速くなり、それが埋め込み特性が劣る原因となる。
埋め込み特性の優劣は、ビアホールなどの深い段差基板での埋めこみ過程において、コーティング後のベーク時に、埋め込まれる速度と架橋反応速度との差に依存する。すなわち、埋めこまれる速度より架橋反応速度の方が早い場合、埋め込みが不十分になる。
架橋剤を添加すると架橋反応の方が早くなるために、ガラス転移点が高く埋めこみ速度の遅いシクロオレフィンベースの重合体では埋め込みが不完全となる。また、酸発生剤の添加も架橋反応を促進させるため、埋め込み特性が劣る結果を助長している。
ガラス転移点が高く埋めこみ速度の遅いシクロオレフィンベースの重合体では架橋速度を遅くする必要があり、その為に酸発生剤、架橋剤を含有しないことが重要である。
そこで、本発明のレジスト下層膜材料はシクロオレフィン構造を有するポリマーなので、酸発生剤、架橋剤も添加しないことで、上記埋め込み特性を向上させている。
なお、架橋速度を遅くするには、架橋点となるヒドロキシ基を酸不安定基で置換することも有効である。ヒドロキシ基の置換によってガラス転移点が低下するというメリットもあり、埋めこみ特性が向上する。
【0087】
また、ボイドを発生させずにホールを埋め込む手法として、ガラス転移点の低いポリマーを用い、架橋温度よりも低い温度で熱フローさせながらホールの底にまで樹脂を埋め込む手法が知られている(例えば、特開2000−294504号公報参照)。ガラス転移点の低いポリマー、特にガラス転移点が180℃以下、とりわけ100〜170℃のポリマー、例えばアクリル誘導体、ビニルアルコール、ビニルエーテル類、アリルエーテル類、スチレン誘導体、アリルベンゼン誘導体、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのオレフィン類から選ばれる1種あるいは2種以上の共重合ポリマー、メタセシス開環重合などによるポリマー、ノボラックレジン、ジシクロペンタジエンレジン、フェノール類の低核体、カリックスアレーン類、フラーレン類とブレンドすることによってガラス転移点を低下させ、ビアホールの埋め込み特性を向上させることができる。
【0088】
また、レジスト下層膜に要求される性能の一つとして、レジスト中間層膜とのインターミキシングがないこと、レジスト中間層膜ヘの低分子成分の拡散がないことが挙げられる(例えば、「Proc. SPIE vol.2195、p225−229(1994)」参照)。これらを防止するために、一般的にレジスト下層膜をスピンコート法などで基板に形成後、ベークで熱架橋するという方法がとられている。そのため、ポリマーに架橋性の置換基を導入する方法がある。架橋性の置換基として、メチロール基、アルコキシメチル基、アシロキシメチル基などが挙げられる。
【0089】
本発明のレジスト下層膜材料において使用可能な有機溶剤としては、前記のベースポリマー、その他添加剤等が溶解するものであれば特に制限はない。その具体例を列挙すると、シクロヘキサノン、メチル−2−アミルケトン等のケトン類;3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル,プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合使用できるが、これらに限定されるものではない。本発明のレジスト下層膜材料においては、これら有機溶剤の中でもジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びこれらの混合溶剤が好ましく使用される。
【0090】
有機溶剤の配合量は、全ベースポリマー(全樹脂分)100部(質量部、以下同様)に対して200〜10,000部が好ましく、特に300〜5,000部とすることが好ましい。
【0091】
本発明の下層膜材料には、界面活性剤を添加することが出来る。
界面活性剤の例としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノール等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノバルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノバルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系界面活性剤、エフトップEF301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ)、メガファックF171、F172、F173(大日本インキ化学工業)、フロラードFC−430、FC−431(住友スリーエム)、アサヒガードAG710、サーフロンS−381、S−382、SC101、SC102,SC103、SC104、SC105、SC106、サーフィノールE1004、KH−10、KH−20、KH−30、KH−40(旭硝子)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP−341、X−70−092、X−70−093(信越化学工業)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75,No.95(共栄社油脂化学工業)等が挙げられ、中でもFC−430、サーフロンS−381、サーフィノールE1004、KH−20、KH−30が好適である。これらは単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0092】
本発明の下層膜の硬化は加熱によって行うことが出来る。本発明の下層膜材料には酸発生剤や酸による架橋剤を添加しないことを特徴とするので、高温で熱処理して硬化させる必要がある。加熱温度は250℃以上450℃以下が好ましく、より好ましくは280℃以上400℃以下であり、熱処理時間は10秒〜600秒間の範囲が好ましく、より好ましくは15秒〜300秒間の範囲である。特許3504247号に多環芳香族化合物、アリーレン化合物をベークによる脱水素反応、脱水縮合反応によって硬化した炭素原子が80重量%以上の下層膜を用いたパターン形成方法が提案されている。ノボラック樹脂の脱水素反応、脱水縮合反応による硬化反応は良く知られた反応である。本発明の下層膜も脱水素反応、脱水縮合反応による硬化を用いている。
【0093】
また、本発明は、リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に上記記載のいずれかのレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、3層レジスト膜とし、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像してレジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてレジスト中間層膜をエッチングし、少なくともパターンが形成されたレジスト中間層膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、少なくともパターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0094】
以下、図6を参照して、本発明のパターン形成方法について説明する。図6は3層レジスト加工プロセスの一例の説明図である。
【0095】
パターン形成に用いる被加工基板11は、図6に示したように、被加工層11aとベース層11bとで構成されてもよい。基板11のベース層11bとしては、特に限定されるものではなく、Si、アモルファスシリコン(α−Si)、p−Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等で被加工層11aと異なる材質のものが用いられてもよい。被加工層11aとしては、Si、SiO、SiON、SiN、p−Si、α−Si、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si等及び種々の低誘電膜及びエッチングストッパー膜が用いられ、通常50〜10,000nm、特に100〜5,000nmの厚さに形成し得る。
【0096】
図6(A)に示すように、基板11上に本発明のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜12を形成し、該レジスト下層膜12の上に珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜14を形成し、該レジスト中間層膜14の上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜13を形成し、3層レジスト膜とする。
【0097】
このように、3層レジスト加工プロセスの場合は、レジスト下層膜12とレジスト上層膜13との間に珪素原子を含有するレジスト中間層膜14を介在させる。
レジスト下層膜12は、通常のフォトレジスト膜の形成法と同様にスピンコート法などで基板11上に形成することが可能である。スピンコート法などでレジスト下層膜12を形成した後、有機溶剤を蒸発させ、レジスト中間層膜14とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベークをすることが望ましい。ベーク温度は250〜450℃の範囲内で、10〜600秒の範囲で熱処理して硬化させることが好ましい。なお、このレジスト下層膜12の厚さは適宜選定されるが、100〜20,000nm、特に150〜15,000nmとすることが好ましい。
【0098】
レジスト下層膜12上のレジスト中間層膜14を形成する材料としては、ポリシルセスキオキサンをベースとするシリコーンポリマーあるいはテトラオルソシリケートガラス(TEOS)のような材料が挙げられる。そして、これらの材料のスピンコートによって作製される膜や、CVDで作製されるSiO、SiN、SiON膜を用いることができる。このレジスト中間層膜14の厚さとしては、10〜1,000nmが好ましい。
【0099】
また、フォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料が、珪素原子を含有するポリマーを含まないものであるのが好ましい。レジスト上層膜に珪素原子を含有するポリマーを含まないものは、珪素原子を含有するポリマーを含むものと比較して、解像性に優れるという利点がある。なお、レジスト上層膜13の厚さは特に制限されないが、30〜500nm、特に50〜400nmが好ましい。
【0100】
上記フォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜13を形成する場合、前記レジスト下層膜12を形成する場合と同様に、スピンコート法などが好ましく用いられる。レジスト上層膜13をスピンコート法などで形成後、プリベークを行うが、80〜180℃で、10〜300秒の範囲で行うのが好ましい。
【0101】
その後、常法に従い、レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後(図6(B)参照)、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、現像を行い、レジストパターンを得る(図6(C)参照)。なお、図6(B)において、13’は露光部分である。
【0102】
現像は、アルカリ水溶液を用いたパドル法、ディップ法などが用いられ、特にはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38質量%水溶液を用いたパドル法が好ましく用いられ、室温で10秒〜300秒の範囲で行われ、その後純水でリンスし、スピンドライあるいは窒素ブロー等によって乾燥される。
【0103】
次に、図6(D)に示すように、レジストパターンが形成されたレジスト上層膜13をマスクにして、フロン系ガスを主体とするエッチングガスを用いたドライエッチングなどで、レジスト中間層膜14をエッチングする。
このエッチングは常法によって行うことができる。フロン系ガスを主体とするドライエッチングの場合、CF、CHF、C、C、C10などを一般的に用いることができる。
【0104】
更に、レジスト中間層膜14をエッチングした後、図6(E)に示すように、少なくともパターンが形成されたレジスト中間層膜14をマスクにして、O(酸素ガス)又はH(水素ガス)を主体とするエッチングガスを用いたドライエッチングなどで、レジスト下層膜12のエッチングを行う。この場合、O、Hガスに加えて、He、Arなどの不活性ガスや、CO、CO、NH、SO、N、NOガスを加えることも可能である。特に後者のガスはパターン側壁のアンダーカット防止のための側壁保護のために用いられる。
【0105】
次に、図6(F)に示すように、少なくともパターンが形成されたレジスト下層膜12をマスクにして基板11をエッチングして基板11にパターンを形成する。
基板11のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば基板がSiO、SiNであればフロン系ガスを主体としたエッチング、ポリシリコン(p−Si)やAl、Wでは塩素系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行う。本発明のレジスト下層膜は、これら基板のエッチング時のエッチング耐性に優れる特徴がある。この時、レジスト中間層膜等は必要に応じ、除去した後に基板のエッチングをしてもよいし、レジスト中間層膜等をそのまま残して基板のエッチングを行うこともできる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例、比較例等を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【0107】
[合成例1]
1Lのフラスコに4−アセトキシスチレン32.4g、2,5−ノルボルナジエン73.6g、溶媒として1,2−ジクロロエタンを80g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、重合開始剤としてトリフルオロホウ素1g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール2.5L、水0.2Lの混合溶液中に沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体を得た。このポリマーをメタノール0.5L、テトラヒドロフラン1.0Lに再度溶解し、トリエチルアミン70g、水15gを加え、アセチル基の脱保護反応を行い、酢酸を用いて中和した。反応溶液を濃縮後、アセトン0.5Lに溶解し、上記と同様の沈殿、濾過、乾燥を行い、白色重合体を得た。
【0108】
得られた重合体を13C、H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
4−ヒドロキシスチレン:2,5−ノルボルナジエン=0.2:0.8
重量平均分子量(Mw)=9500
分子量分布(Mw/Mn)=1.61
この重合体を(ポリマー1)とする。
【0109】
【化16】

【0110】
[合成例2]
1Lのフラスコに4−アセトキシ−αメチルスチレン35.2g、2,5−ノルボルナジエン73.6g、溶媒として1,2−ジクロロエタンを80g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、重合開始剤としてトリフルオロホウ素1g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール2.5L、水0.2Lの混合溶液中に沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体を得た。このポリマーをメタノール0.5L、テトラヒドロフラン1.0Lに再度溶解し、トリエチルアミン70g、水15gを加え、アセチル基の脱保護反応を行い、酢酸を用いて中和した。反応溶液を濃縮後、アセトン0.5Lに溶解し、上記と同様の沈殿、濾過、乾燥を行い、白色重合体を得た。
【0111】
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
4−ヒドロキシ−αメチルスチレン:2,5−ノルボルナジエン=0.2:0.8
重量平均分子量(Mw)=8200
分子量分布(Mw/Mn)=1.58
この重合体を(ポリマー2)とする。
【0112】
【化17】

【0113】
[合成例3]
1Lのフラスコに4−アセトキシスチレン32.4g、テトラシクロドデセン48g、2,5−ノルボルナジエン46g、溶媒として1,2−ジクロロエタンを80g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、重合開始剤としてトリフルオロホウ素1g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール2.5L、水0.2Lの混合溶液中に沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体を得た。
【0114】
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
4−ヒドロキシスチレン:テトラシクロドデセン:2,5−ノルボルナジエン=0.2:0.3:0.5
重量平均分子量(Mw)=6300
分子量分布(Mw/Mn)=1.55
この重合体を(ポリマー3)とする。
【0115】
【化18】

【0116】
[合成例4]
1Lのフラスコに4−アセトキシスチレン32.4g、2,5−ノルボルナジエン64.4g、アセナフチレン15.2g、溶媒として1,2−ジクロロエタンを80g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、重合開始剤としてトリフルオロホウ素1g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール2.5L、水0.2Lの混合溶液中に沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体を得た。このポリマーをメタノール0.5L、テトラヒドロフラン1.0Lに再度溶解し、トリエチルアミン70g、水15gを加え、アセチル基の脱保護反応を行い、酢酸を用いて中和した。反応溶液を濃縮後、アセトン0.5Lに溶解し、上記と同様の沈殿、濾過、乾燥を行い、白色重合体を得た。
【0117】
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
4−ヒドロキシスチレン:2,5−ノルボルナジエン:アセナフチレン=0.2:0.7:0.1
重量平均分子量(Mw)=4800
分子量分布(Mw/Mn)=1.55
この重合体を(ポリマー4)とする。
【0118】
【化19】

【0119】
[合成例5]
1Lのフラスコに上記合成例1で得られたポリマー1(4−ヒドロキシスチレン−ノルボルナジエン樹脂)125g、クロロメチルメチルエーテル100gを入れ溶解させ、80℃に加熱し、撹拌しながら20%水酸化ナトリウム220gを3時間かけて滴下し、1時間の熟成撹拌の後、下層の食塩水を分離、未反応のメトキシメチルクロリドを150℃加熱で蒸留除去した後MIBK(メチルイソブチルケトン)を300g加えて溶解させた後、水洗分離を3回繰り返して下層の水層を除去、乾燥濾過、150℃加熱によりMIBKを脱溶媒し、白色重合体を得た。
【0120】
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
4−メトキシメトキシスチレン:4−ヒドロキシスチレン:2,5−ノルボルナジエン=0.16:0.04:0.8
重量平均分子量(Mw)=9700
分子量分布(Mw/Mn)=1.61
この重合体を(ポリマー5)とする。
【0121】
【化20】

【0122】
[合成例6]
1Lのフラスコに上記合成例1で得られたポリマー1(4−ヒドロキシスチレン−ノルボルナジエン樹脂)125gをテトラヒドロフラン500mlに溶解させ、触媒量のメタンスルホン酸を添加した後、20℃で撹拌しながらエチルビニルエーテル20gを添加した。1時間反応させた後に、濃アンモニア水により中和し、水5Lに中和反応液を滴下したところ、白色固体が得られた。これを濾過後、アセトン500mlに溶解させ、水10Lに滴下し、濾過後、真空乾燥し、白色重合体を得た。
【0123】
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
4−エトキシエトキシスチレン:4−ヒドロキシスチレン:2,5−ノルボルナジエン=0.1:0.1:0.8
重量平均分子量(Mw)=9700
分子量分布(Mw/Mn)=1.61
この重合体を(ポリマー6)とする。
【0124】
【化21】

【0125】
[合成例7]
1Lのフラスコに6−アセトキシ−2−ビニルナフタレン74.2g、2,5−ノルボルナジエン59.8g、溶媒として1,2−ジクロロエタンを80g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、重合開始剤としてトリフルオロホウ素1g加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール2.5L、水0.2Lの混合溶液中に沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体を得た。このポリマーをメタノール0.5L、テトラヒドロフラン1.0Lに再度溶解し、トリエチルアミン70g、水15gを加え、アセチル基の脱保護反応を行い、酢酸を用いて中和した。反応溶液を濃縮後、アセトン0.5Lに溶解し、上記と同様の沈殿、濾過、乾燥を行い、白色重合体を得た。
【0126】
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
6−ヒドロキシ−2−ビニルナフタレン:2,5−ノルボルナジエン=0.35:0.65
重量平均分子量(Mw)=8600
分子量分布(Mw/Mn)=1.58
この重合体を(ポリマー7)とする。
【0127】
【化22】

【0128】
[比較合成例1]
500mLのフラスコに4−ヒドロキシスチレンを40g、2−メタクリル酸−1−アダマンタンを160g、溶媒としてトルエンを40g添加した。この反応容器を窒素雰囲気下、−70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素フローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてAIBNを4.1g加え、80℃まで昇温後、24時間反応させた。この反応溶液を1/2まで濃縮し、メタノール300mL、水50mLの混合溶液中に沈殿させ、得られた白色固体を濾過後、60℃で減圧乾燥し、白色重合体188gを得た。
【0129】
得られた重合体を13C,H−NMR、及び、GPC測定したところ、以下の分析結果となった。
共重合組成比(モル比)
4−ヒドロキシスチレン:2−メタクリル酸−1−アダマンタン=0.32:0.68
重量平均分子量(Mw)=10,900
分子量分布(Mw/Mn)=1.77
この重合体を比較ポリマー1とする。
【0130】
【化23】

【0131】
[実施例、比較例]
[レジスト下層膜材料の調製]
上記ポリマー1〜7で示される樹脂、比較ポリマー1で示される樹脂、下記AG1、2で示される酸発生剤、下記CR1で示される架橋剤を、FC−4430(住友スリーエム社製)0.1質量%を含む有機溶剤中に表1に示す割合で溶解させ、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによってレジスト下層膜材料(実施例1〜7、比較例1〜5)をそれぞれ調製した。
【0132】
ポリマー1〜7:上記合成例1〜7で得たポリマー
比較ポリマー1:比較合成例1で得たポリマー
【0133】
酸発生剤:AG1,2(下記構造式参照)
【化24】

【0134】
架橋剤:CR1(下記構造式参照)
【化25】

【0135】
有機溶剤:CyH(シクロヘキサノン)
PGMEA(プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート)
【0136】
上記で調製したレジスト下層膜材料(実施例1〜7、比較例2〜5)の溶液をシリコン基板上に塗布して、180℃で60秒間ベークし、その後350℃で60秒間ベークしてそれぞれ膜厚400nmのレジスト下層膜を形成した。比較例1の溶液はシリコン基板上に塗布して、100℃で60秒間ベークし、その後200℃で60秒間ベークしてそれぞれ膜厚400nmのレジスト下層膜を形成した。
レジスト下層膜の形成後、J.A.ウーラム社の入射角度可変の分光エリプソメーター(VASE)で波長193nmにおける屈折率(n,k)を求め、その結果を表1に示した。
【0137】
【表1】

【0138】
表1に示されるように、実施例1〜7では、レジスト下層膜の屈折率のn値が1.50〜1.71、k値が0.16〜0.29の範囲であり、特に200nm以上の膜厚で十分な反射防止効果を発揮できるだけの最適な屈折率(n)と消光係数(k)を有することがわかる。
【0139】
次いで、ドライエッチング耐性のテストを行った。まず、前記屈折率測定に用いたものと同じ下層膜(実施例1〜7、比較例1〜5)を作製し、これらの下層膜のCF/CHF系ガスでのエッチング試験として下記の条件で試験した。この場合、東京エレクトロン株式会社製ドライエッチング装置TE−8500Pを用い、エッチング前後の下層膜及びレジストの膜厚差を測定した。結果を表2に示す。
【0140】
CF/CHF系ガスでのエッチング試験
エッチング条件は下記に示す通りである。
チャンバー圧力 40.0Pa
RFパワー 1,000W
ギヤップ 9mm
CHFガス流量 30ml/min
CFガス流量 30ml/min
Arガス流量 100ml/min
時間 60sec
【0141】
【表2】

【0142】
次いで埋め込み試験を行った。シリコン基板上の膜厚500nmのシリコン酸化膜に形成された0.18μmの1:1の密集ホールパターン上に、上記で調製したレジスト下層膜材料(実施例1〜7、比較例2〜5)の溶液を塗布して、180℃で60秒間ベークし、その後350℃で60秒間ベークしてそれぞれ膜厚400nmのレジスト下層膜を形成した。
比較例1の溶液はシリコン基板上に塗布して、100℃で60秒間ベークし、その後200℃で60秒間ベークしてそれぞれ膜厚400nmのレジスト下層膜を形成した。
得られたウェーハを割断し、ホールパターンの下層膜による埋め込み状態をSEMで観察した。観察したポイントは、ホールの底まで下層膜が埋め込まれているかどうかと、ホールの上側が平坦化されているかどうかである。結果を表3に示す。
【0143】
【表3】

【0144】
以上の結果から、本発明のレジスト下層膜材料を用いて形成した下層膜は、表2に示すように、CF/CHFガスエッチングの速度が、比較例1よりも大幅に遅く、エッチング耐性が優れていることが認められる。また、表3に示すように比較例2〜5の架橋剤や酸発生剤を添加した場合よりもホールパターンの埋め込み特性に優れることが認められ、架橋剤や酸発生剤を添加しないことで埋め込み特性が優れていることがわかる。
【0145】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】2層プロセスにおける下層膜屈折率k値が0.3固定で、n値を1.0〜2.0の範囲で変化させた下層膜の膜厚と基板反射率の関係を示すグラフである。
【図2】2層プロセスにおける下層膜屈折率n値が1.5固定で、k値を0〜0.8の範囲で変化させた下層膜の膜厚と基板反射率の関係を示すグラフである。
【図3】3層プロセスにおける下層膜屈折率n値が1.5、k値が0.6、膜厚500nm固定で、中間層のn値が1.5、k値を0〜0.4、膜厚を0〜400nmの範囲で変化させたときの基板反射率の関係を示すグラフである。
【図4】3層プロセスにおける下層膜屈折率n値が1.5、k値が0.2、中間層のn値が1.5、k値を0.1固定で下層と中間層の膜厚を変化させたときの基板反射率の関係を示すグラフである。
【図5】3層プロセスにおける下層膜屈折率n値が1.5、k値が0.6、中間層のn値が1.5、k値を0.1固定で下層と中間層の膜厚を変化させたときの基板反射率の関係を示すグラフである。
【図6】3層レジスト加工プロセスの一例の説明図である。
【符号の説明】
【0147】
11…基板、 11a…被加工層、 11b…ベース層、 12…レジスト下層膜、
13…レジスト上層膜、 13’…露光部分、 14…レジスト中間層膜。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィーで用いられる3層レジスト膜のレジスト下層膜材料であって、少なくとも、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物と、有機溶剤を含み、酸発生剤及び架橋剤を含有しないことを特徴とするレジスト下層膜材料。
【化1】

(式中、R、Rは独立して水素原子又はメチル基、R、Rは独立して水素原子あるいは酸不安定基である。p、qは独立して1〜4の正数である。a1+a2及びbは正数であり、0≦a1/(a1+a2+b)<1.0、0≦a2/(a1+a2+b)<1.0、0<(a1+a2)/(a1+a2+b)<1.0、0<b/(a1+a2+b)<1.0の範囲である。)
【請求項2】
リソグラフィーで用いられる3層レジスト膜のレジスト下層膜の形成方法であって、基板上に請求項1に記載のレジスト下層膜材料をコーティングし、該レジスト下層膜材料を250℃以上450℃以下の温度で、10秒〜600秒間の範囲で熱処理して硬化させることによってレジスト下層膜を形成することを特徴とするレジスト下層膜形成方法。
【請求項3】
リソグラフィーにより基板にパターンを形成する方法であって、少なくとも、基板上に請求項1に記載のレジスト下層膜材料を用いてレジスト下層膜を形成し、該レジスト下層膜の上に珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いてレジスト中間層膜を形成し、該レジスト中間層膜の上にフォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料を用いてレジスト上層膜を形成して、3層レジスト膜とし、前記レジスト上層膜のパターン回路領域を露光した後、現像液で現像してレジスト上層膜にレジストパターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにしてレジスト中間層膜をエッチングし、少なくともパターンが形成されたレジスト中間層膜をマスクにしてレジスト下層膜をエッチングし、さらに、少なくともパターンが形成されたレジスト下層膜をマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
前記フォトレジスト組成物のレジスト上層膜材料が、珪素原子を含有するポリマーを含まず、前記レジスト中間層膜をマスクにして行うレジスト下層膜のエッチングを、酸素ガス又は水素ガスを主体とするエッチングガスを用いて行うことを特徴とする請求項3に記載のパターン形成方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−20456(P2009−20456A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184855(P2007−184855)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】